説明

画像形成装置

【課題】画像品位を向上させることができるようにする。
【解決手段】像担持体と、該像担持体の表面を帯電させる帯電部と、該帯電部によって帯電させられた像担持体の表面に静電潜像を形成する露光部と、該露光部によって形成された静電潜像を現像して現像剤像を形成する現像部と、該現像部によって形成された現像剤像を被転写体に転写する転写部とを有する。そして、像担持体は、帯電部によって印加される帯電電圧の極性と逆の極性の電荷の暗減衰特性率が95〔%〕以下にされる。像担持体は、帯電部によって印加される帯電電圧の極性と逆の極性の電荷の暗減衰特性率が95〔%〕以下にされるので、像担持体に蓄積した正の極性の電荷が原因で画像欠陥が発生するのを防止することができ、画像品位を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置、例えば、プリンタにおいては、感光体ドラムの表面を、帯電ローラによって帯電させ、LEDヘッドによって露光して静電潜像を形成し、該静電潜像に現像ローラ上で薄層化されたトナーが静電的に付着させられてトナー像を形成し、該トナー像を転写ローラによって記録媒体上に転写し、画像を形成するようになっている。また、転写後に前記感光体ドラム上に残留したトナーは、クリーニング装置によって除去される。
【0003】
ところで、前記構成のプリンタにおいては、継続して画像の形成、すなわち、印刷を行うと、前記感光体ドラム、帯電ローラ、現像ローラ、クリーニングローラ等の各部材が消耗してしまう。そこで、各部材をユニット化して画像形成ユニットとし、該画像形成ユニットをプリンタの装置本体に対して着脱自在に配設し、画像形成ユニットが寿命になったときに消耗部品として交換することができるようにしている。
【0004】
ところで、前記画像形成ユニットが製造された後、交換部品としてプリンタに搭載され、使用されるまでに長期間にわたって画像形成ユニットが保管されると、前記感光体ドラムと帯電ローラ、現像ローラ等のローラ部材との接触部分において、ローラ部材の成分が析出し、感光体ドラムの表面に付着し、感光体ドラムを汚してしまうことがある。
【0005】
そこで、感光体ドラムと各ローラ部材との間に樹脂フィルムを挟み、画像形成ユニットをプリンタに搭載する際に前記樹脂フィルムを除去するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−156986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のプリンタにおいては、操作者が樹脂フィルムを除去する際に、樹脂フィルムは、感光体ドラムと各ローラ部材との間の摩擦抵抗に抗して引き抜かれることになるので、感光体ドラムと樹脂フィルムとの間で摩擦帯電が生じ、それによって発生した電荷が感光体ドラムに残存することがある。
【0007】
その場合、帯電ローラによって感光体ドラムの表面を帯電させようとしたときに、残存する電荷によって、感光体ドラムを一様に、かつ、均一に帯電させることができなくなってしまう。したがって、印刷結果に、濃い染み、筋状部等の画像欠陥が生じ、画像品位が低下してしまう。
【0008】
さらに、例えば、感光体ドラムと外部環境との間で静電気の放電が発生すると、転写ローラによって転写電圧を印加する場合等にトナー像に乱れが発生し、画像品位が低下してしまう。
【0009】
本発明は、前記従来のプリンタの問題点を解決して、画像品位を向上させることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために、本発明の画像形成装置においては、像担持体と、該像担持体の表面を帯電させる帯電部と、該帯電部によって帯電させられた像担持体の表面に静電潜像を形成する露光部と、該露光部によって形成された静電潜像を現像して現像剤像を形成する現像部と、該現像部によって形成された現像剤像を被転写体に転写する転写部とを有する。
【0011】
そして、前記像担持体は、前記帯電部によって印加される帯電電圧の極性と逆の極性の電荷の暗減衰特性率が95〔%〕以下にされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、画像形成装置においては、像担持体と、該像担持体の表面を帯電させる帯電部と、該帯電部によって帯電させられた像担持体の表面に静電潜像を形成する露光部と、該露光部によって形成された静電潜像を現像して現像剤像を形成する現像部と、該現像部によって形成された現像剤像を被転写体に転写する転写部とを有する。
【0013】
そして、前記像担持体は、前記帯電部によって印加される帯電電圧の極性と逆の極性の電荷の暗減衰特性率が95〔%〕以下にされる。
【0014】
この場合、前記像担持体は、帯電部によって印加される帯電電圧の極性と逆の極性の電荷の暗減衰特性率が95〔%〕以下にされるので、像担持体に蓄積した正の極性の電荷が原因で画像欠陥が発生するのを防止することができ、画像品位を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
【0016】
図1は本発明の第1の実施の形態における保管時のイメージドラムカートリッジの概念図、図2は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【0017】
図において、11は導電性支持体上に感光層を有する像担持体としての感光体ドラム、12は、該感光体ドラム11と接触部分pA1において接触させて回転自在に配設された、導電性ゴム製のローラ部材としての、かつ、帯電部としての帯電ローラ、13は、前記感光体ドラム11と接触部分pA2において接触させて回転自在に配設された、導電性ゴム製のローラ部材としての、かつ、現像剤担持体としての現像ローラ、14は、板状ゴムによって形成され、先端を感光体ドラム11に接触させて配設されたクリーニング装置としてのクリーニングブレードである。また、21は画像形成ユニットとしてのイメージドラムカートリッジであり、該イメージドラムカートリッジ21は、前記感光体ドラム11、帯電ローラ12、現像ローラ13、クリーニングブレード14、図示されない供給ローラ等をユニット化することによって形成され、プリンタの装置本体に対して着脱自在に配設され、寿命になったときに消耗部品として交換される。なお、前記帯電ローラ12、供給ローラ等によって現像部が構成される。
【0018】
また、22は感光体ドラム11と対向させて配設された露光部としてのLEDヘッド、23は現像剤としてのトナー、24は転写部としての転写ローラ、25は被転写材としての、かつ、媒体としての用紙、26は該用紙25を搬送する搬送部材としての、かつ、ベルト部材としての転写ベルトである。
【0019】
前記構成のプリンタにおいて、印字動作が開始されると、感光体ドラム11が図2に示される矢印方向に回転し始め、このとき、同時に、感光体ドラム11に接触している帯電ローラ12に所定の負の極性の帯電電圧が印加され、帯電ローラ12は、感光体ドラム11に従動する方向(矢印方向)に回転しながら感光体ドラム11の表面を一様に、かつ、均一に負の極性に帯電させる。
【0020】
続いて、負の極性に帯電させられた感光体ドラム11に、LEDヘッド22から所定のタイミングで光が照射され、感光体ドラム11の表面に潜像としての静電潜像が形成される。そして、現像ローラ13が前記静電潜像を現像し、可視像化し、現像剤像としてのトナー像を形成する。そのために、現像ローラ13に所定の電圧が印加され、現像ローラ13の表面に負の極性のトナー23が付着し、感光体ドラム11の静電潜像上に移動することによってトナー像を形成する。
【0021】
そして、所定の正の極性の転写電圧が印加された転写ローラ24は、所定のタイミングにおいて、前記トナー像を、転写ベルト26によって搬送される用紙25に転写する。続いて、用紙25は、定着装置としての図示されない定着器に送られ、定着器によってトナー像は用紙25に定着させられる。また、転写後、用紙25上に転写されずに感光体ドラム11上に残ったトナー23はクリーニングブレード14によって掻き落とされる。
【0022】
次に、感光体ドラム11について説明する。
【0023】
図3は本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムの断面図である。
【0024】
図において、31は基材としての導電性支持体、32は、該導電性支持体31上に形成され、導電性支持体31からの電荷注入を防止するためのブロッキング層、33は、該ブロッキング層32上に形成され、受光によって電荷を発生させる電荷発生層、34は、該電荷発生層33上に形成され、電荷発生層33によって発生させられた電荷を輸送するための電荷輸送層である。なお、前記感光体ドラム11においては、電荷発生層33及び電荷輸送層34によって感光層40が形成される。
【0025】
前記導電性支持体31としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル、亜鉛、インジウム、金、銀等の材料が使用され、このうちのアルミニウムを使用するのが最も好ましい。
【0026】
また、ブロッキング層32としては、例えば、アルミニウムの陽極酸化被膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機層、及びポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の有機層が使用される。
【0027】
さらに、電荷発生層33は、バインダ樹脂及び電荷発生物質から成り、前記バインダ樹脂としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルアルコール等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、セルロースエステル、フェノキシ樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂等が使用される。前記電荷発生物質としては、例えば、セレン及びその合金、ヒ素−セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の酸化物系半導体、アモルファスシリコン等のシリコン系材料、その他の無機光導電性物質、フタロシアニン、アゾ色素、キナクドリン、多環キノン、ピリリウム塩、ペリレン、インジゴ、チオインジゴ、アントアントロン、ピラントロン、シアニン等の各種の有機顔料、色素等が使用される。該有機顔料、色素のうちの、ペリレン、無金属フタロシアニン、銅、塩化インジウム、塩化ガリウム、シリコン、錫、オキシチタニウム、亜鉛、バナジウム等の金属、又は酸化物、塩化物、水酸化物の配位したフタロシアニン類、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ、ポリアゾ類等のアゾ顔料を使用するのが好ましい。
【0028】
そして、電荷輸送層34は、バインダ樹脂及び電荷輸送物質から成り、バインダ樹脂としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルアルコール等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、セルロースエステル、フェノキシ樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。前記電荷輸送物質としては、例えば、ジフェノキノン誘導体、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、チオジアゾール誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン化合物、これらの化合物が複数結合されたもの、又はこれらの化合物から成る基を、主鎖若しくは側鎖に有する重合体等が使用される。
【0029】
次に、前記感光体ドラム11の製造方法について説明する。
〔実施例1〕
前記導電性支持体31としては、表面が鏡面加工された外径30〔mm〕、長さ351〔mm〕、肉厚1.0〔mm〕のアルミニウム合金から成るシリンダを使用した。前記ブロッキング層32は、前記導電性支持体31の表面に陽極酸化膜処理を行い、その後、酢酸ニッケルを主成分とする封孔処理を行うことによって、約6〔μm〕の陽極酸化被膜(アルマイト被膜)が形成されることにより、形成される。
【0030】
前記電荷発生層33はフタロシアニン系電荷発生物質10重量部を1,2−ジメトキシエタン150重量部に加え、サンドグラインドミルによって粉砕分散処理を行うことにより、顔料分散液を作成し、該顔料分散液を電荷発生層用塗布液として使用し、電荷発生層用塗布液にブロッキング層32が形成された導電性支持体31を浸漬塗布し、乾燥重量が0.3〔g/m2 〕となるように電荷発生層33を形成した。
【0031】
前記電荷輸送層34は、ヒドラゾン系化合物から成る電荷輸送物質47重量部、酸化防止剤8重量部、及びポリカーボネート樹脂100重量部を、
テトラヒドロフラン:トルエン=80:20
の混合溶媒に溶解させて電荷輸送層用塗布液を形成し、該電荷輸送層用塗布液に、ブロッキング層32及び電荷発生層33が形成された導電性支持体31を浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が18〔μm〕になるように形成した。このようにして形成された感光体ドラム11を使用する。
〔実施例2〕
前記電荷輸送層34に電子吸引性化合物を0.2重量部加えた点以外は、実施例1と同じである。
【0032】
なお、前記電子吸引性化合物は、電荷輸送層34中に残留電位が形成されるのを抑制する物質であり、本実施の形態においては、次の化学式で示される物質を使用した。
【0033】
【化1】

〔実施例3〕
前記電荷輸送層34の電荷輸送物質を約30重量部にした点以外は、実施例1と同じである。
〔比較例〕
従来の技術の感光体ドラム11であり、前記電荷輸送層34の電荷輸送物質の置換基の配置を変更した点以外は、実施例3と同じである。
【0034】
なお、前記実施例1〜3及び比較例は、正の極性の電荷の暗減衰特性、すなわち、時間が推移したときの帯電後の感光体ドラム11の表面電位の減衰特性の差に着目して作成される。
【0035】
ところで、前記イメージドラムカートリッジ21が製造された後、交換部品としてプリンタに搭載され、使用されるまでに長期間にわたってイメージドラムカートリッジ21が保管されると、前記感光体ドラム11と帯電ローラ12、現像ローラ13等のローラ部材との接触部分pA1、pA2において、ローラ部材の成分が析出し、感光体ドラム11の表面に付着し、感光体ドラム11を汚してしまうことがある。
【0036】
そこで、図1に示されるように、イメージドラムカートリッジ21を製造する時点で、感光体ドラム11と各ローラ部材との間に被挟持部材としての樹脂フィルム15を挟むようにしている。そして、操作者は、イメージドラムカートリッジ21を入手すると、感光体ドラム11と各ローラ部材との間に挟まれた樹脂フィルム15を引き抜き、イメージドラムカートリッジ21をプリンタの装置本体の所定の位置に搭載する。このようにして、プリンタは印刷可能な状態になる。
【0037】
ところで、操作者が、前記樹脂フィルム15を引き抜く際に、接触部分pA1、pA2で摩擦帯電が生じ、それによって発生した電荷が感光体ドラムに残存することがある。
【0038】
その場合、帯電ローラ12によって感光体ドラム11の表面を帯電させようとしたときに、残存する電荷によって、感光体ドラム11を一様に、かつ、均一に帯電させることができなくなってしまう。すなわち、静電潜像を現像してトナー像を形成する際に、感光体ドラム11おける接触部分pA1、pA2でトナー23が所定より多く付着し、その結果、用紙25おける接触部分pA1、pA2に相当する部分に、濃い染み、筋状部等の画像欠陥が生じ、画像品位が低下してしまう。そして、前記画像欠陥は、一度発生すると、数時間から数十時間消えないので、その間、印刷を行うことができなくなってしまう。
【0039】
次に、画像欠陥が生じる原因について説明する。
【0040】
図4は本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムの表面に正の極性の電荷を蓄積させるための装置の概念図である。
【0041】
図において、11は感光体ドラム、12は帯電ローラ、13は現像ローラ、14はクリーニングブレード、21はイメージドラムカートリッジ、41は静電気を発生させる静電気発生装置、43は電極である。
【0042】
ところで、操作者が、前記樹脂フィルム15(図1)を引き抜く際に、接触部分pA1、pA2で摩擦帯電が生じ、それによって正の極性の電荷が発生し、感光体ドラム11に残存し、蓄積されることがある。したがって、感光体ドラム11を帯電ローラ12によって帯電させたとき、感光体ドラム11における接触部分pA1、pA2において、蓄積された正の極性の電荷によって、絶対値で本来の帯電電位より低い電位、すなわち、0〔V〕に近い電位に帯電させられることになる。その結果、現像工程において、接触部分pA1、pA2にトナー23(図2)が所定より多く付着するので、濃い染み、筋状部等の画像欠陥が生じてしまう。
【0043】
ところで、該画像欠陥が生じるのを抑制するためには、正の極性の電荷を蓄積させないようにする必要がある。そこで、本実施の形態においては、通常、負の極性に帯電させて使用される感光体ドラム11を正の極性に帯電させ、そのときの、正の極性の電荷の暗減衰特性率ρを算出するようにした。
【0044】
該暗減衰特性率ρは、感光体ドラム11を正の極性に帯電させたときの帯電直後の感光体ドラム11の表面電位をVaとし、感光体ドラム11を正の極性に帯電させてから10秒が経過したときの感光体ドラム11の表面電位をVbとしたとき、
ρ=(Vb/Va)×100 ……(1)
で表される。そして、本実施の形態においては、前記暗減衰特性率ρが95〔%〕以下になるような感光体ドラム11が使用される。
【0045】
実施例1〜3及び比較例について、画像欠陥のレベルを評価したときの、評価結果を表1に表す。
【0046】
【表1】

この場合、実施例1〜3及び比較例の感光体ドラム11を備えたイメージドラムカートリッジ21を使用し、操作者が行う作業を実験的に再現し、樹脂フィルム15を引き抜いた直後の画像欠陥の有無、及びレベルを調べた。そのために、樹脂フィルム15を引き抜いた直後に、各感光体ドラム11を+1300〔V〕の電圧で正の極性に帯電させ、帯電直後の表面電位Va、及び正帯電させてから10秒が経過したときの表面電位Vbを測定し、暗減衰特性率ρを算出した。
【0047】
前記画像欠陥のレベルは、濃い染み、筋状部等がまったく形成されない場合を○とし、濃い染み、筋状部等であるかどうか不明で、画像品位上問題にならない程度の微小な跡が形成された場合を△とし、明らかに濃い染み、筋状部等が形成された場合を×とした。
【0048】
また、感光体ドラム11の表面に蓄積された正の極性の電荷が消失するまでの消失時間を、画像欠陥の消失時間として測定した。そのために、図4に示されるように、イメージドラムカートリッジ21において、感光体ドラム11が露出している部分、すなわち、位置pCに臨ませて、静電気発生装置41の電極43を配設し、約2〔kV〕の電圧によって静電気を発生させ、感光体ドラム11の表面に強制的に正の極性の電荷を蓄積させた。続いて、イメージドラムカートリッジ21をプリンタに搭載し、濃い染み、筋状部等がまったく形成されなくなるまでの時間を測定し、画像欠陥の消失時間とした。
【0049】
表1から明らかなように、暗減衰特性率ρと画像欠陥のレベル及び画像欠陥の消失時間とには相関があり、正の極性の電荷の暗減衰特性率ρが低いほど、画像欠陥のレベルが低く、画像欠陥の消失時間が短い。
【0050】
そして、樹脂フィルム15の引抜きによる感光体ドラム11に蓄積した正の極性の電荷が原因で生じる画像欠陥を生じさせないためには、感光体ドラム11の暗減衰特性率ρを95〔%〕以下とし、好ましくは91〔%〕以下とすることが必要となる。
【0051】
このように、本実施の形態においては、実施例1〜3のような、暗減衰特性率ρが95〔%〕以下となる感光体ドラム11を使用することによって、感光体ドラム11に蓄積した正の極性の電荷が原因で画像欠陥が発生するのを防止することができ、画像品位を向上させることができる。
【0052】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0053】
図5は本発明の第2の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【0054】
図において、51は転写部としての転写ローラ24に転写電圧を印加するための転写電源、52はローラ部材としての、かつ、帯電部としての帯電ローラ12に帯電電圧を印加するための帯電電源である。なお、本実施の形態においては、実施例1の像担持体としての感光体ドラム11を使用した。また、pBは感光体ドラム11と転写ローラ24とが搬送部材としての、かつ、ベルト部材としての転写ベルト26を介して接触する位置である。
【0055】
この場合、実施例1の感光体ドラム11が使用されるので、感光体ドラム11に蓄積した正の極性の電荷が原因で画像欠陥が発生するのを防止することができた。
【0056】
ところで、転写工程において、被転写材としての、かつ、媒体としての用紙25が所定のタイミングで位置pBに到達する際に、転写電源51によって正の極性の転写電圧が転写ローラ24に印加され、現像剤像としてのトナー像が用紙25に転写されるが、前記転写電圧が転写ローラ24に印加される瞬間に、位置pBで発生する放電によって、正の極性の電荷が感光体ドラム11の位置pBに蓄積することがあり、その場合、位置pBに蓄積する正の極性の電荷が原因で画像欠陥が発生してしまう。
【0057】
そこで、本実施の形態においては、感光体ドラム11の電荷輸送層34(図3)の厚さをDt〔μm〕とし、帯電電源52によって帯電ローラ12に負の極性の所定の帯電電圧が印加されることによって一様に、かつ、均一に帯電させられた感光体ドラム11の表面電位をVo〔V〕とし、転写工程において前記転写電圧が転写ローラ24に印加されるときに、転写ローラ24と感光体ドラム11との間を流れる電流、すなわち、転写電流をIt〔μA〕としたとき、次の式(2)の条件が成立する場合、位置pBに画像欠陥が発生するのが防止されることが分かった。
【0058】
|Vo|/(It・Dt)>2 ……(2)
該式(2)の条件を見い出すに当たって以下のような実験を行った。
【0059】
電荷輸送層34の厚さDtをそれぞれ18〔μm〕又は21〔μm〕とした2種類の感光体ドラム11を使用し、帯電電圧を−1200〔V〕、−1300〔V〕、−1400〔V〕とし、感光体ドラム11の表面電位を測定しながら、各帯電電圧ごとに、転写電流Itを0〔μA〕から段階的に多くして、転写電流Itごとに画像欠損のレベルを評価した。
【0060】
該画像欠陥のレベルは、第1の実施の形態と同様に、濃い染み、筋状部等がまったく形成されない場合を○とし、濃い染み、筋状部等であるかどうか不明で、画像品位上問題にならない程度の微小な跡が形成された場合を△とし、明らかに濃い染み、筋状部等が形成された場合を×とした。
【0061】
表2は、帯電電圧を−1200〔V〕とし、電荷輸送層34の厚さDtを18〔μm〕としたときの評価結果を示す。
【0062】
【表2】

表3は、帯電電圧を−1300〔V〕とし、電荷輸送層34の厚さDtを18〔μm〕としたときの評価結果を示す。
【0063】
【表3】

表4は、帯電電圧を−1400〔V〕とし、電荷輸送層34の厚さDtを18〔μm〕としたときの評価結果を示す。
【0064】
【表4】

表5は、帯電電圧を−1200〔V〕とし、電荷輸送層34の厚さDtを21〔μm〕としたときの評価結果を示す。
【0065】
【表5】

表6は、帯電電圧を−1300〔V〕とし、電荷輸送層34の厚さDtを21〔μm〕としたときの評価結果を示す。
【0066】
【表6】

表7は、帯電電圧を−1400〔V〕とし、電荷輸送層34の厚さDtを21〔μm〕としたときの評価結果を示す。
【0067】
【表7】

このように、本実施の形態においては、式(2)の条件が成立する場合、位置pBに蓄積する正の極性の電荷が原因で画像欠陥が発生するのを防止することができる。
【0068】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施の形態における保管時のイメージドラムカートリッジの概念図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムの断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムの表面に正の極性の電荷を蓄積させるための装置の概念図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【符号の説明】
【0070】
11 感光体ドラム
12 帯電ローラ
22 LEDヘッド
24 転写ローラ
25 用紙
34 電荷輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)像担持体と、
(b)該像担持体の表面を帯電させる帯電部と、
(c)該帯電部によって帯電させられた像担持体の表面に静電潜像を形成する露光部と、
(d)該露光部によって形成された静電潜像を現像して現像剤像を形成する現像部と、
(e)該現像部によって形成された現像剤像を被転写体に転写する転写部とを有するとともに、
(f)前記像担持体は、前記帯電部によって印加される帯電電圧の極性と逆の極性の電荷の暗減衰特性率が95〔%〕以下にされることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
(a)少なくとも電荷輸送層を備えた像担持体と、
(b)該像担持体の表面を帯電させる帯電部と、
(c)該帯電部によって帯電させられた像担持体の表面に静電潜像を形成する露光部と、
(d)該露光部によって形成された静電潜像を現像して現像剤像を形成する現像部と、
(e)該現像部によって形成された現像剤像を被転写体に転写する転写部とを有するとともに、
(f)前記電荷輸送層の厚さをDt〔μm〕とし、前記帯電部によって帯電させられた像担持体の表面電位の絶対値を|Vo|〔V〕とし、前記転写部から前記像担持体に流れる転写電流をIt〔μA〕としたとき、
|Vo|/(It・Dt)>2
にされることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記像担持体は、前記帯電部によって印加される帯電電圧の極性と逆の極性の電荷の暗減衰特性率が95〔%〕以下にされる請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−33911(P2007−33911A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217600(P2005−217600)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】