説明

画像形成装置

【課題】画像濃度ムラが生じ難い電子写真感光体及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】本発明は、略円筒状の基体の外周面に、潜像形成領域を有する感光層21が形成された電子写真感光体2と、電子写真感光体2の軸方向に対して略平行に配置された接触型の帯電手段41と、を備えた画像形成装置1に関するものである。感光層21と帯電器41との接触領域におけるニップ幅Npは、前記潜像形成領域に対応する部分において、中央部22Aのほうが両端部22Bに比べて大きい。ニップ幅Npは、潜像形成領域22の両端部22Bから中央部22Aに向かって漸次あるいは段階的に大きくなっているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の複写機やプリンタなどの画像形成装置は、電子写真感光体を備えている。このような画像形成装置では、電子写真感光体を駆動伝達機構により回転させ、その回転周期に同期させて帯電・露光・現像・転写・クリーニング等の動作を繰り返し行なうことにより記録媒体に画像が形成される。
【0003】
より具体的には、前記画像形成装置では、表面を帯電させた電子写真感光体を回転させながら、画像パターンに応じてレーザ光を照射して露光することにより電子写真感光体の表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は、トナーを付着させることにより現像される。電子写真感光体に付着したトナーは、記録媒体に転写される。記録媒体へのトナー転写後は、電子写真感光体を回転させながら、その表面にクリーニングブレードを押圧させることにより、残留するトナーが除去される。
【0004】
電子写真感光体としては、金属からなる円筒状基体に感光層が形成されたものが使用される。感光層は、たとえば円筒状基体上に形成される無機物材料からなる光導電層と、この光導電層を被覆する無機物材料からなる表面層と、を含んでいる。このような構成の電子写真感光体における光導電層及び表面層の厚みは、通常、それぞれ円筒状基体の軸方向全体にわたって略一定となるように設定されている。ここで、略一定とは、基体の中央における厚み(T)と、基体の一方端あるいは他方端の厚み(T)との比(T/T)が1.001倍以下であることを意味する。
【0005】
【特許文献1】特開平08−272190号公報
【特許文献2】特開平08−137115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子写真感光体には、その内部から感光層を加熱するための加熱手段が設けられることがある。これは、感光層への水分吸着を防ぐことにより画像流れの発生を抑制するためである。
【0007】
しかしながら、加熱手段により電子写真感光体をその内部から加熱すると、基体における軸方向の中央部がその両端部に比べて放熱し難いため、中央部の温度が両端部の温度よりも相対的に高くなる傾向がある。このような傾向は、加熱手段による加熱状態が長時間続く場合(たとえば連続印刷の枚数が多数枚となる場合)に顕著となる。
【0008】
一方、電子写真感光体では、その表面温度が高いほど電荷の移動が活発になる傾向がある。そのため、上述の電子写真感光体では、その軸方向の中央部において両端部より帯電能(電荷を保持する能力)が低下する傾向にある。したがって、上述の電子写真感光体では、その軸方向において帯電ムラ、ひいては画像濃度ムラが生じる傾向にあった。
【0009】
本発明は、画像濃度ムラが生じ難い電子写真感光体及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面では、略円筒状の基体の外周面に、潜像形成領域を有する感光層が形成された電子写真感光体と、前記基体の軸方向に対して略平行に配置された接触型の帯電手段と、を備えた画像形成装置であって、前記感光層と前記接触型帯電器との接触領域における前記基体の周方向の寸法であるニップ幅は、前記潜像形成領域に対応する部分において、中央部のほうが両端部に比べて大きいことを特徴とする、画像形成装置が提供される。
【0011】
前記ニップ幅は、たとえば前記潜像形成領域に対応する部分において、両端部から中央部に向かって漸次大きくなっている。この場合、前記基体の外径は、前記潜像形成領域に対応する部分において、両端部から中央部に向かって漸次大きくなっているのが好ましい。
【0012】
前記ニップ幅は、前記潜像形成領域に対応する部分において、両端部から中央部に向かって段階的に大きくなっていてもよい。この場合、前記基体の外径は、前記潜像形成領域に対応する部分において、両端部から中央部に向かって段階的に大きくなっているのが好ましい。
【0013】
本発明の第2の側面では、略円筒状の基体の外周面に、潜像形成領域を有する感光層が形成された電子写真感光体と、前記基体の軸方向に対して略平行に配置された接触型の帯電手段と、を備えた画像形成装置であって、前記電子写真感光体の潜像形成領域における基準点を含む部位のニップ幅は、前記基準点における温度に応じて調整されることを特徴とする、画像形成装置が提供される。
【0014】
本発明に係る画像形成装置は、駆動時において、前記潜像形成領域における温度は、たとえば前記潜像形成領域の中央部のほうが両端部に比べて高い。
【0015】
前記電子写真感光体は、前記感光層における潜像形成領域を加熱するための加熱用部材をさらに備えていてもよい。
【0016】
前記感光層は、たとえば無機物材料からなる光導電層と、無機物材料からなり、前記光導電層上に積層形成される表面層と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の側面に係る画像形成装置において、ニップ幅は、電子写真感光体の軸方向における潜像形成領域の中央部が、電子写真感光体の軸方向における潜像形成領域の両端部に比べて広い。そのため、本発明の画像形成装置では、加熱用部材などによる加熱に起因して潜像形成領域の中央部がその両端部に比べて高温となり、該中央部の帯電能が該両端部に比べて低下する場合であっても、潜像形成領域の中央部の方がその両端部よりもニップ幅が広いため、中央部における帯電能の低下を抑制することができる。したがって、本発明の画像形成装置は、電子写真感光体の軸方向における帯電ムラを抑制し、画像濃度ムラを抑制することができる。
【0018】
本発明の第1の側面に係る画像形成装置において、ニップ幅を、潜像形成領域の両端部から中央部に向かって漸次あるいは段階的に大きくすれば、電子写真感光体の軸方向における帯電能を、電子写真感光体を加熱した場合に生じる熱分布に近い状態に近い状態とすることができるため、熱分布に起因する帯電能の軸方向のムラをより適切に抑制し、画像濃度ムラをより適切に抑制することができる。
【0019】
本発明の第2の側面に係る画像形成装置で、潜像形成領域における基準点を含む部位のニップ幅が、基準点における温度に応じて調整される。そのため、本発明の画像形成装置では、加熱手段による加熱によって感光層における潜像形成領域に熱分布が生じる場合であっても、その熱分布に応じて基準点を含む部位のニップ幅が調整することができ、ひいては電子写真感光体の熱分布に起因する帯電能のバラツキを調整することができる。したがって、本発明の画像形成装置では、電子写真感光体の軸方向における帯電ムラを抑制し、画像濃度ムラを抑制することができる。
【0020】
本発明の画像形成装置では、帯電手段が、感光層が、無機物材料からなる光導電層と、無機物材料からなり、光導電層上に積層形成される表面層とを含んで構成される場合であって、電子写真感光体の軸方向における帯電ムラを適切に抑制し、画像濃度ムラを適切に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る画像形成装置および電子写真感光体ついて、添付図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0022】
図1および図2に示した画像形成装置1は、画像形成方式としてカールソン法を採用したものであり、電子写真感光体2、回転機構3、帯電ローラ41、露光器42、現像器43、転写器44、定着器45、クリーニング器46、および除電器47を備えたものである。
【0023】
電子写真感光体2は、画像信号に基づいた静電潜像やトナー像が形成されるものであり、回転機構3によって図1の矢印A方向に回転可能とされている。図3に示したように、電子写真感光体2は、円筒状基体20の表面に、感光層21が形成されたものである。
【0024】
円筒状基体20は、電子写真感光体2の骨格をなすとともに、その外周面上で静電潜像を担持するものである。円筒状基体20の軸方向の長さLは、使用が予定される記録紙などの記録媒体Pの最大のものの長さよりも若干長くされている。具体的には、円筒状基体20の軸方向の長さLは、たとえば記録媒体Pの両端から0.5cm以上5cm以下程度長くなるように設定されている。このため、感光層21は、記録媒体Pの最大長さに対応した潜像形成領域22と、この潜像形成領域22に隣接して両端部に設けられた非潜像形性領域23と、を有することとなる。すなわち、非潜像形成領域23とは、どのような画像サイズに対応した潜像を感光層21に形成するに当たっても、使用が予定されない感光層21の領域(潜像形成領域22の軸方向の外側)をいう。
【0025】
円筒状基体20は、その軸方向における潜像形成領域22の中央部22Aの外径が、潜像形成領域22の両端部22Bの外径より大きくされている。より具体的には、円筒状基体20は、潜像形成領域22における両端部22Bから中央部22Aに向かって、外径が漸次大きくなっている。円筒状基体20としては、図4(a)に示したように、円筒状基体20は、潜像形成領域22における両端部22Bから中央部22Aに向かって、外径が一定の傾斜で漸次大きくなっていてもよく、図4(b)に示したように、円筒状基体20は、外径が潜像形成領域22において両端部22Bから中央部22Aに向かって段階的に大きくなっていてもよい。
【0026】
図3、図4(a)および図4(b)に示した円筒状基体20では、潜像形成領域22における両端部22Bの外径と、潜像形成領域22における中央部22Aの外径との差が、5μm以上150μm以下であることが好ましい。このような範囲に円筒状基体20の外径を設定すれば、画像形成時に円筒状基体20(電子写真感光体2)をその内部から後述するヒータ6によって加熱したとしても、円筒状基体20(電子写真感光体2)の軸方向における温度ムラに起因する画像濃度ムラの発生を適切に抑制することができる。
【0027】
ここで、円筒状基体20の外径は、円筒状基体20の周方向における外表面から対向する外表面までの直径寸法のことであり、円筒状基体20の円周方向に対して任意の10点を測定したときの10点の平均値として定義される。外径の測定方法としては、たとえば非接触式レーザ外径測定器を用いる方法を挙げることができる。
【0028】
円筒状基体20は、内径が相対的に大きいインロー部24,25を有している。インロー部24は後述する回転機構3の駆動伝達フランジ30が嵌合される部分であり(図2参照)、インロー部25は後述する回転機構3の軸受フランジ31が嵌合される部分である(図2参照)。図示したインロー部24,25は、非潜像形成領域23に対応する部分に収まっているが、潜像形成領域22に対応する部分にまで及んでも構わない。インロー部24,25はまた、フランジ30,31との嵌め合いに支障がなければ必ずしも設ける必要は無い。
【0029】
このような円筒状基体20は、少なくとも表面に導電性を有するものとされている。すなわち、円筒状基体20は、全体を導電性材料により形成してもよいし、絶縁性材料により形成した円筒体の表面に導電性膜を形成したものであってもよい。円筒状基体20のための導電性材料としては、たとえばAlあるいはSUS(ステンレス)、Zn、Cu、Fe、Ti、Ni、Cr、Ta、Sn、Au、およびAgなどの金属材料、それらの金属の合金材料を使用することができる。円筒状基体20のための絶縁材料としては、樹脂、ガラスあるいはセラミックなどを挙げることができる。導電性膜のための材料としては、先に例示した金属の他、ITO(Indium Tin Oxide)、SnOなどの透明導電性材料を挙げることができる。これらの透明導電性材料は、たとえば蒸着などの公知の手法により、絶縁性を有する円筒体の表面に被着させることができる。
【0030】
円筒状基体20としては、アルミニウム合金や銅合金などの金属が好ましい。アルミニウム合金ではAl−Mn(3000)系合金やAl−Mg(5000)系合金やAl−Mg−Si(6000)系合金が特に好ましい。このようなアルミニウム合金を用いる場合、円筒状基体20は、鋳造、均質化処理、熱間押出加工、冷間抽伸加工を施し、場合によっては軟化処理を施してアルミニウム合金管を形成した後に、このアルミ合金管を所定の長さに切断し、工作機械などにより外周面、端面、インロー内面などに切削加工を施すことにより形成することができる。
【0031】
円筒状基体20はさらに、外周面を所定の表面粗さ、所定の外径寸法にするために、ダイヤモンド切削バイトを使用した超精密旋盤によって仕上げ切削を行うことにより形成される。この際、円筒状基体20の軸方向における潜像形成領域22の中央部22Aの外径が、潜像形成領域22の両端部22Bの外径に比して大きくなるように外径を加工するとよい。円筒状基体20の外周面形状は基体製造工程における外面切削加工を行う際に、NC旋盤を用いて、切削バイトの動きをNCプログラム制御することで容易に得られる。また、研削盤を用いた研磨加工でも得られる。
【0032】
その後、切削時(研磨時)に用いた切削油の脱脂や切削切屑などの汚れを除去するために円筒状基体20の洗浄を行う。洗浄に用いる洗浄液としては水系洗剤、石油系洗剤、アルコール系洗浄剤、塩素系溶剤などを用いるとよい。洗浄する設備としては、少なくとも二槽以上の洗浄槽と一層以上のすすぎ槽あるいは引上げ槽を有する洗浄機が好ましく、各洗浄槽には洗浄液に超音波を印加することが好ましい。超音波の代わりにシャワー洗浄や不活性ガスを用いたバブリングを行ってもよい。洗浄設備の洗浄液は設備出口側の槽の方が、清浄度が良く、入口側の槽へオーバーフロー供給を行う構造がよい。
【0033】
円筒状基体20の内部には、感光層21を加熱するためのヒータ6が設けられている。ヒータ6は、感光層21における水分を低減することにより画像流れの発生を抑制するためのものである。
【0034】
図5および図6に示したように、ヒータ6は、全体としてシート状に形成されており、筒状に丸められた状態で円筒状基体20の内部に収容されている。このヒータ6は、一対の絶縁性シート60,61の間に、抵抗体62を挟持した構成を有している。
【0035】
絶縁性シート60,61は、たとえばシリコン樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、あるいはアクリル樹脂の絶縁樹脂により、その厚みが0.5mm以上3.5mm以下に形成されている。
【0036】
抵抗体62は、一方の絶縁性シート61上にパターン化して形成されたものである。図示した例では、抵抗体62は、中央部の密度が両端部に比べて疎となるように波線状にパターン形成されている。すなわち、抵抗体62(ヒータ6)は、中央部における発熱温度が両端部に比べて小さくなるようになされている。
【0037】
この抵抗体62を形成するための材料としては、通電により発熱するものであれば特に限定されることはなく、たとえばニッケル−クロム合金や銅などの金属材料、カーボン系や金属酸化物系の発熱材料を使用することができる。また、抵抗体62は、線材を引き回したもの、あるいは例示した材料などを絶縁性シート61に膜付けしたものでもよい。
【0038】
このようなヒータ6は、絶縁性シート60,61の弾力により円筒状基体20の内周面密着した状態で配置されている。そのため、ヒータ6は、ネジや接着剤等を使用することなく、円筒状基体20の内部に配置することができる。
【0039】
もちろん、ヒータ6は、図5および図6に示した形態のものには限定されない。たとえば、ヒータ6は、抵抗体62の中央部を疎とすることなく、一定の配線密度に形成してもよく、抵抗体62のパターンも波線状やシート状のものに限らず柱状などの他の形状のものであってもよい。
【0040】
図2に示したように、ヒータ6は、画像形成装置1における電源7に接続されており、電源7により供給される電力により抵抗体62が発熱し、電子写真感光体2の感光層21が30℃以上60℃以下に昇温される。これにより、感光層21における水分が低減され、画像流れが抑制される。
【0041】
図3に示したように、感光層21は、電荷注入阻止層27、光導電層28、および表面層29を積層形成したものである。
【0042】
電荷注入阻止層27は、円筒状基体20からの電子や正孔が光導電層28に注入されるのを抑制するためのものである。この電荷注入阻止層27は、光導電層28の材料に応じて種々のものを用いることができる。電荷注入阻止層27は、たとえば無機材料により形成されており、光導電層28にa−Si系材料を用いる場合であれば、電荷注入阻止層27のための無機材料としてa−Si系の材料のものを使用するのが好ましい。そうすることにより、円筒状基体20と光導電層28との密着性に優れた電子写真特性を得ることができる。
【0043】
a−Si系の電荷注入阻止層27を設ける場合は、a−Si系光導電層28と比べて、より多くの周期律表第13族元素(以下、「第13族元素」と略す)や周期律表第15族元素(以下、「第15族元素」と略す)を含有させて導電型を調整し、また多くの硼素(B)、窒素(N)、あるいは酸素(O)を含有させて高抵抗化するとよい。
【0044】
なお、電界注入阻止層27は、選択的なものであり、必ずしも必要なものではない。また、電荷注入阻止層27に代えて、長波長光吸収層を設けてもよい。この長波長光吸収層を設けると、露光時に入射した長波長光(波長が0.8μm以上の光をいう。)が円筒状基体20の表面で反射し、記録画像に干渉縞が発生することを抑制することが可能となる。
【0045】
光導電層28は、露光器42によるレーザ光の照射によって電子が励起され、自由電子あるいは正孔などのキャリアを発生させるためのものである。光導電層28の厚みは、使用する光導電性材料および所望の電子写真特性により適宜設定すればよい。
【0046】
光導電層28は、たとえばa−Si系材料、a−Se、Se−Te、およびAsSeなどのアモルファスセレン系(a−Se系)材料、あるいはZnO、CdS、CdSeなどの周期律表第12族元素と周期律表第16族元素との化合物などにより形成されている。a−Si系材料としては、a−Si、a−SiC、a−SiN、a−SiO、a−SiGe、a−SiCN、a−SiNO、a−SiCOおよびa−SiCNOなどを使用することができる。特に、光導電層28をa−Siあるいはa−SiにC、N、Oなどの元素を加えたa−Si系の合金材料により形成した場合には、高い光感度特性、高速応答性、繰り返し安定性、耐熱性、および耐久性などの優れた電子写真特性が安定して得られるのに加え、表面層29をa−SiC:Hにより形成する場合における表面層29との整合性が優れたものとなる。なお、光導電層28は、前述の無機物系材料を粒子化し、それを樹脂に分散させた形態、あるいはOPC系光導電層として形成してもよい。
【0047】
光導電層28は、全体を無機物として膜形成する場合には、たとえばグロー放電分解法、各種スパッタリング法、各種蒸着法、ECR法、光CVD法、触媒CVD法、あるいは反応性蒸着法など公知の成膜手法により形成することができる。光導電層28の成膜に当たっては、ダングリングボンド終端用に水素(H)やハロゲン元素(F、Cl)を、膜中に1原子%以上40原子%以下含有させてもよい。また、光導電層28の形成に当たっては、各層の暗導電率や光導電率などの電気的特性および光学的バンドギャップなどについて所望の特性を得るために、第13族元素や第15族元素を含有させたり、C、N、O等の元素の含有量を調整することにより、上記諸特性を調整する。
【0048】
また、第13族元素および第15族元素としては、共有結合性に優れて半導体特性を敏感に変え得る点および優れた光感度が得られる点で、ホウ素(B)およびリン(P)を用いるのが望ましい。第13属元素および第15属元素をC、N、O等の元素とともに含有させる場合には、第13族元素は
0.1ppm以上20000ppm以下であるのが好ましく、第15族元素は0.1ppm以上10000ppm以下であるのが好ましい。
【0049】
光導電層28にC、N、O等の元素を含有させないか、あるいは微量(0.01ppm以上100ppm以下)含有させる場合は、第13族元素の含有量は0.01ppm以上200ppm以下、第15族元素の含有量は0.01ppm以上100ppm以下であるのが好ましい。これらの元素の含有率は層厚方向にわたって濃度勾配があってもよく、その場合には層全体の平均含有量が上記範囲内であればよい。
【0050】
光導電層28をa−Si系材料により形成する場合には、μc−Si(微結晶シリコン)を含有させてもよく、その場合には、暗導電率および光導電率を高めることができるので、光導電層3の設計自由度が増すという利点がある。このようなμc−Siは、先に説明したのと同様の形成法を採用し、その成膜条件を変えることによって形成することができる。たとえばグロ−放電分解法では、円筒状基体20の温度および高周波電力をa−Siの場合よりも高めに設定し、希釈ガスとしての水素流量を増すことによって形成できる。また、μc−Siを含む場合にも上記と同様の不純物元素を添加させてもよい。
【0051】
図3に示した表面層29は、光導電層28の摩擦・磨耗を防ぐためのものであり、光導電層28の表面に積層形成されている。この表面層29は、たとえばa−SiCなどのa−Si系材料に代表される無機材料により、厚みが0.2μm以上1.5μm以下に形成されている。表面層29の厚みを0.2μm以上にすることで耐刷による画像キズおよび画像濃度ムラの発生を充分に抑制することが可能となり、表面層29の厚みを1.5μm以下にすることで初期特性(残留電位による画像不良等)を充分良好にすることが可能となる。表面層29の厚みは、好適には0.5μm以上1.0μm以下とされる。
【0052】
このような表面層29は、a−SiCに水素を含有させたa−SiC:Hにより形成するのが好ましい。a−SiC:Hは、元素比率を組成式a−Si1−X:Hと表した場合、たとえばX値が0.55以上0.93未満とされる。X値を0.55以上にすることで表面層29として適切な硬度を得ることが可能となり、表面層29ひいては電子写真感光体2の耐久性を確保でき、X値を0.93未満にすることで同様に表面層29として適切な硬度を得ることができる。好適には、X値は0.6以上0.7以下とされる。表面層29をa−SiC:Hにより形成する場合におけるH含有量は、1原子%以上70原子%以下程度に設定するとよい。この範囲内では、Si−H結合がSi−C結合に比して少なくなり、表面層29の表面に光が照射されたときに生じた電荷のトラップを抑えることができ、残留電位を防止することができる点で好ましい。本発明者らの知見によれば、このH含有量を約45原子%以下とすると、より良好な結果が得られる。
【0053】
このような感光層21(電荷注入阻止層27、光導電層28および表面層29)は、たとえば図7に示したCVD装置5を用いて形成することができる。図示したCVD装置5は、円筒状基体20が装着される基体ホルダー51を備えたものである。基体ホルダー51には、ヒータ51Aが内装されている。ヒータ51Aには、その温度を調整するための温度制御装置51Bが付属されている。基体ホルダー51は、モータ装置52により回転可能とされている。
【0054】
CVD装置5は、基体ホルダー51(円筒状基体20)を取り囲む様に設置された、反応路を規定するための各種部品、たとえばチャンバー53、放電用電極板54、反応炉ベース55、反応炉蓋56、絶縁リング57A,57Bを備えている。チャンバー53には、反応ガスを導入するためのガス導入口53Aが、反応炉ベース55にはCVD装置5を圧力制御するための排気口55Aが、その先には排気バルブ55Bが設けられている。CVD装置5はさらに、円筒状基体20と放電用電極板54との間で放電を発生させるための高周波電源装置58を備えており、この高周波電源装置58にはグロー放電を安定させるためのマッチングボックス59が接続されている。
【0055】
CVD措置5を用いて円筒状基体20に感光層21を形成する場合には、まず、洗浄された円筒状基体20を位置決めリング50A,50Bとともに基体ホルダー51に挿入し、円筒状基体20を反応炉内に設置する。その一方で、排気口55Aを介して反応炉内の気体を排気し、反応炉内を減圧する。
【0056】
次いで、モータ装置52により基体ホルダー51とともに円筒状基体20を回転させつつ、円筒状基体20の温度をヒータ51Aおよび温度制御装置51Bにより上昇させる。なお、円筒状基体20の昇温と反応炉の減圧は、同時に行ってもよいし、また順序が逆であってもよい。
【0057】
次いで、ガス導入口53Aを介して流入する供給ガスの量と排気口55Aを介して流出する排気ガスの量により、反応炉内の圧力を制御する。
【0058】
供給ガスは、原料ガスと希釈ガスの混合ガスとして供給される。原料ガスとしては、電荷注入阻止層27の形成する場合には、たとえばSiH、B、NOが用いられ、光導電層28を形成する場合には、たとえばSiH、Bが用いられ、表面層29を形成する場合には、たとえばSiH、CHが用いられる。原料ガスは、例示したものと同質・同系統のガスであれば問題無く使用でき、たとえばSiHの代わりにSiを、Bの代わりにB10を、NOの代わりにNOを、CHの代わりにアセチレンガスやブタンガスを用いても良い。一方、希釈ガスとしては、たとえば水素ガス、ヘリウムガス、あるいはアルゴンガスを用いることができる。
【0059】
一方、高周波電源装置58からマッチングボックス59を介してチャンバー53および放電用電極板54に高周波電力印加することで、円筒状基体20と放電用電極板54の間にグロー放電を生じさせる。これにより、原料混合ガスが分解され、原料ガスは円筒状基体20に被着され、電荷注入阻止層27、光導電層28あるいは表面層29が形成される。このとき、円筒状基体20が回転モータ装置52により回転させられているので、感光層21(電荷注入阻止層27、光導電層28あるいは表面層29)の膜厚や光導電特性については円周方向に均一化される。
【0060】
図2に示したように、画像形成装置1の回転機構3は、電子写真感光体2を回転させるためのものである。この回転機構3により、電子写真感光体2は、その表面での周速度において、たとえば320mm/secの一定速度で回転させられる。この回転機構3は、駆動ギア30、駆動伝達フランジ31および軸受フランジ32を備えている。
【0061】
駆動ギア30は、モータ(図示略)の回転力を駆動伝達フランジ31に伝達するためのものである。
【0062】
駆動伝達フランジ31は、駆動ギア30からの回転動力を電子写真感光体2に伝達するためのものである。この駆動伝達フランジ31は、円筒状基体20のインロー部24に嵌め込まれている。
【0063】
軸受フランジ32は、電子写真感光体2を回転可能に支持するためのものである。この軸受フランジ32は、円筒状基体20のインロー部25に嵌め込まれている。
【0064】
図1および図2に示したように、帯電ローラ41は、接触型のものであり、電子写真感光体2の表面に対して5N以上50N以下の圧接力で押圧するように、電子写真感光体2の軸方向に対して実質的に平行に配置されている。この帯電ローラ41は、直流電圧、または直流電圧と交流電圧を重畳した振動電圧を印加することにより、感光層を帯電させるように構成されており、導電性部材41Aおよび抵抗層41Bを備えている。
【0065】
導電性部材41Aは、たとえば鉄、ステンレス、鋼、あるいはアルミニウム合金により円筒状あるいは円柱状形成されている。
【0066】
抵抗層41Bは、導電性部材41Aを覆うものであり、体積固有抵抗10Ω・cm以上1012Ω・cm以下に形成されている。このような抵抗層41B′は、たとえば樹脂材料に導電性材料を添加した材料を用いて射出成形を行なうことにより樹脂ローラとして形成される。樹脂材料としては、たとえばEEA樹脂(エチレンエチルアクリレート)、POM樹脂(ポリアセタール)、PA樹脂(ナイロン、ポリアミド)、PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート)、PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド)を使用することができる。導電性材料としては、たとえばフェライト系、アルニコ系、ネオジウム系の磁性体を使用することができる。また、抵抗層41Bはウレタンゴムやシリコンゴムなどにカーボンブラックなどの導電性粒子を添加して、場合によっては硫化剤や発砲剤を加え、加熱発砲などの処理を行い作製してもよい。上述のように、帯電ローラ41は、電子写真感光体2の表面と当接して電子写真感光体2を帯電させるものであることから、その抵抗層41Bの硬度が低すぎると当接の押圧力により形状が安定せず、硬度が高すぎるとニップ幅を十分に確保できない。そのため、抵抗層41Bをゴム材料により形成する場合には、抵抗層41Bのスプリング硬さ(アスカーC)は、20度以上70度以下の範囲に設定するのが好ましい。
【0067】
帯電器としては、図8に示した接触型の帯電ベルト41′を用いることもできる。この帯電ベルト41′は、一対のローラ41A′,41B′の間を無端ベルト41C′により架橋したものである。
【0068】
一対のローラ41A′,41B′は、少なくともローラ41A′については導電性部材により形成されている。このような導電性部材としては、先に説明した帯電ローラ41の導電性部材41A(図1参照)と同様なものを使用することができる。
【0069】
無端ベルト41C′は、たとえば体積固有抵抗10Ω・cm以上1012Ω・cm以下に形成されている。このような無端ベルト41C′は、先に説明した帯電ローラ41の抵抗層41A(図1参照)と同様な材料により形成することができる。
【0070】
図1および図2に示した接触型の帯電ローラ41、および図8に示した接触型の帯電ベルト41′では、感光層21とのニップ幅が大きいほど感光層21の帯電電位は高くなり、ニップ幅が小さいと帯電電位は低くなる。その一方で、電子写真感光体2は、軸方向における潜像形成領域22の中央部22Aの外径が、潜像形成領域22の両端部22Bの外径に比して大きい。そのため、電子写真感光体2と帯電器41,41′との間のニップ幅は、潜像形成領域22の中央部22Aでは大きく、潜像形成領域22の両端部22Bでは小さくなる。
【0071】
より具体的には、図3に示した電子写真感光体2を用いる場合には、図9(a)に示したように、ニップ幅Npは、潜像形成領域22の両端部22Bから中央部22Aに向かって、傾斜が徐々に小さくなるように漸次大きくなる。図4(a)に示した電子写真感光体2を用いる場合には、図9(b)に示したように、ニップ幅Npは、潜像形成領域22の両端部22Bから中央部22Aに向かって、一定の傾斜で漸次大きくなる。図4(b)に示した電子写真感光体2を用いる場合には、図9(c)に示したように、ニップ幅Npは、潜像形成領域22の両端部22Bから中央部22Aに向かって、段階的に大きくなる。
【0072】
本発明に係る画像形成装置1ではさらに、潜像形成領域22における基準点を含む部位のニップ幅Npは、基準点における温度に応じて調整するようにしてもよい。このような画像形成装置1では、ヒータ6による加熱によって感光層21における潜像形成領域22に熱分布が生じる場合であっても、その熱分布に応じて潜像形成領域22と帯電器41,41′とのニップ幅Npが調整されるため、熱分布に起因する電子写真感光体2の帯電能のバラツキを調整することができる。
【0073】
図1に示した露光器42は、電子写真感光体2に静電潜像を形成するためのものであり、特定波長(たとえば650nm以上780nm以下)の光を出射可能とされている。この露光器42によると、画像信号に応じて電子写真感光体2の表面に光を照射して光照射部分の電位を減衰させることにより、電位コントラストとしての静電潜像が形成される。露光器42としては、たとえば約680nmの波長の光を出射可能なLED素子を600dpiの密度で配列させたLEDヘッドを採用することができる。
【0074】
もちろん、露光器42としては、レーザ光を出射可能なものを使用することもできる。また、LEDヘッド等の露光器42に代えて、レーザービームやポリゴンミラー等からなる光学系や原稿からの反射光を通すレンズやミラー等からなる光学系を用いることにより、複写機の構成の画像形成装置とすることもできる。
【0075】
現像器43は、電子写真感光体2の静電潜像を現像してトナー像を形成するためのものである。この現像器43は、現像剤(トナー)を磁気的に保持する磁気ローラ43A、電子写真感光体2との隙間(Gap)を略一定に保持するためのコロと呼ばれる車輪(図示略)などを備えている。
【0076】
現像剤は、電子写真感光体2の表面に形成されるトナー像を構成するためのものであり、現像器43において摩擦帯電させられるものである。現像剤としては、磁性キャリアと絶縁性トナーとから成る二成分系現像剤、あるいは磁性トナーから成る一成分系現像剤を使用することができる。
【0077】
磁気ローラ43Aは、電子写真感光体2の表面(現像領域)に現像剤を搬送する役割を果すものである。
【0078】
現像器43においては、磁気ローラ43Aにより摩擦帯電したトナーが一定の穂長に調整された磁気ブラシの形で搬送され、電子写真感光体2の現像領域において、トナーが静電潜像との静電引力により感光体表面に付着して可視化される。トナー像の帯電極性は、正規現像により画像形成が行われる場合には、電子写真感光体2の表面の帯電極性と逆極性とされ、反転現像により画像形成が行われる場合には、電子写真感光体2の表面の帯電極性と同極性とされる。
【0079】
なお、現像器43は、乾式現像方式を採用しているが、液体現像剤を用いた湿式現像方式を採用してもよい。
【0080】
転写器44は、電子写真感光体2と転写器44との間の転写領域に供給された記録媒体Pに、電子写真感光体2のトナー像を転写するためのものである。この転写器44は、転写用チャージャ44Aおよび分離用チャージヤ44Bを備えている。転写器44では、転写用チャージャ44Aにおいて記録媒体Pの背面(非記録面)がトナー像とは逆極性に帯電され、この帯電電荷とトナー像との静電引力によって、記録媒体P上にトナー像が転写される。転写器44ではさらに、トナー像の転写と同時的に、分離用チャージャ44Bにおいて記録媒体Pの背面が交流帯電させられ、記録媒体Pが電子写真感光体2の表面から速やかに分離させられる。
【0081】
なお、転写器44としては、電子写真感光体2の回転に従動し、かつ電子写真感光体2とは微小間隙(通常、0.5mm以下)を介して配置された転写ローラを用いることも可能である。この場合の転写ローラは、たとえば直流電源により、電子写真感光体2上のトナー像を記録媒体P上に引きつけるような転写電圧を印加するように構成される。転写ローラを用いる場合には、分離用チャージャ44Bのような転写分離装置は省略される。
【0082】
定着器45は、記録媒体Pに転写されたトナー像を記録媒体Pに定着させるためのものであり、一対の定着ローラ45A,45Bを備えている。定着ローラ45A,45Bは、たとえば金属ローラ上にテフロン(登録商標)等で表面被覆したものとされている。この定着器45では、一対の定着ローラ45A,45Bの間に記録媒体Pを通過させることにより、熱や圧力等によって記録媒体Pにトナー像を定着させることができる。
【0083】
図1および図2に示したクリーニング器46は、電子写真感光体2の表面に残存するトナーを除去するためのものであり、クリーニングブレード46Aを備えている。
【0084】
クリーニングブレード46Aは、電子写真感光体2の表面層29の表面から、残留トナーを掻きとる役割を果たすものである。このクリーニングブレード46Aは、その先端が電子写真感光体2の潜像形成領域22を押圧するように、バネ46B等の付勢手段を介してケース46Cに支持されている。クリーニングブレード46Aは、たとえばポリウレタン樹脂を主成分としたゴム材料からなり、表面層29に接する先端部の厚みが1.0mm以上1.2mm以下、ブレード線圧が14gf/cm(一般的には5gf/cm以上30gf/cm以下)、硬度がJIS硬度で74度(好適範囲67度以上84度以下)とされている。
【0085】
除電器47は、電子写真感光体2の表面電荷を除去するためのものである。この除電器47は、たとえばLED等の光源によって電子写真感光体2の表面(表面層29)全体を一様に光照射することにより、電子写真感光体2の表面電荷(残余の静電潜像)を除去するように構成されている。
【0086】
次に、画像形成装置1の動作を説明する。
【0087】
画像形成装置1では、画像形成時において、回転機構3により電子写真感光体2を回転させながら、ヒータ6により電子写真感光体2(感光層21)を加熱する。その一方で、電子写真感光体2の表面(感光層21)は、帯電器41,41′により帯電させられる。
【0088】
ここで、電子写真感光体2は、軸方向における潜像形成領域22の中央部22Aの外径が、潜像形成領域22の両端部22Bの外径に比して大きいことから、潜像形成領域22の中央部22Aでは帯電器41,41′とのニップ幅Npが大きく、潜像形成領域22の両端部22Bではニップ幅Npが小さくなっている。一方、電子写真感光体2(感光層21)をヒータ6により加熱した場合には、電子写真感光体2に接続された駆動伝達用フランジ31や軸受フランジ32より熱が逃げる一方、中央部22Aには熱がこもる。そのため、電子写真感光体2の潜像形成領域22の中央部22Aの温度は、潜像形成領域22の両端部22Bの温度より高くなる傾向がある。また、電子写真感光体2の感光層21は温度依存性を有するために、温度の高い部分の帯電能は下がる傾向にある。したがって、本発明の電子写真感光体2の潜像形成領域22の中央部22Aは温度が高く帯電能は低くなる反面、帯電器41,41′とのニップ幅Npが大きい。これに対して、潜像形成領域22の両端部22Bは温度が低く帯電能は高くなる反面、帯電器41,41′とのニップ幅Npが小さい。その結果、電子写真感光体2では帯電器41,41′とのニップ幅Npを電子写真感光体2の軸方向に対して異なったものとすることより、電子写真感光体2の軸方向の温度ムラに起因する帯電能ムラを抑制することができる。
【0089】
電子写真感光体2ではさらに、円筒状基体20の外径が、潜像形成領域22において両端部22Bから中央部22Aに向かって漸次あるいは段階的に大きくなされている。そのため、電子写真感光体2の軸方向における帯電能をより連続的に近い状態(ヒータ6に起因して生じる熱分布に近い状態)とすることができる。これにより、電子写真感光体2では、軸方向における帯電ムラをより適切に抑制することができる。
【0090】
次いで、露光器42により電子写真感光体2が露光されることにより、電子写真感光体2の表面上に電位コントラストとしての静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像器43により現像される。すなわち、トナーが静電潜像との静電引力により電子写真感光体2の表面に付着して可視化される。
【0091】
電子写真感光体2の表面のトナー像は、紙などの記録媒体Pの裏面より、転写器44によってトナーと逆極性の電界が加えられて静電転写され、これにより画像が記録媒体P上に転写される。記録媒体P上に転写されたトナー像は、定着器45において、熱や圧力等によって記録媒体Pに定着させられる。
【0092】
一方、画像形成装置1では、電子写真感光体2の表面の残留トナーがクリーニング器46により機械的に除去されるとともに、除電器47によって電子写真感光体2の表面を強い光で全面露光することにより、残余の静電潜像を除去される。
【0093】
画像形成装置1は、電子写真感光体2の軸方向における帯電ムラが抑制されている。そのため、電子写真感光体2に対しては、適切に静電潜像を形成し、また適切にトナー像を形成することができる。その結果、記録媒体Pに転写・定着されたトナー像は、画像濃度ムラの抑制されたものとなる。
【0094】
画像形成装置1は、電子写真感光体2の軸方向における帯電ムラを抑制し、画像濃度ムラを抑制することができるが、このような効果は、電子写真感光体2の感光層が、無機物材料からなる光導電層28と、無機物材料からなり、光導電層28上に積層形成される表面層29とを含んでいる構成であっても適切に享受することができる。
【0095】
本発明は、上述した実施の形態には限定されず、種々に変更可能である。たとえば、電子写真感光体と帯電器との間のニップ幅は、帯電器の構成を工夫することにより、潜像形成領域の中央部が両端部に比べて小さくなるようにしてもよい。たとえば帯電ローラの外径を、軸方向における中央部を両端部に比べて大きくし、また帯電器を軸方向に対して勾配を設けて配置するなどしてニップ幅を調節してもよい。
【0096】
また、電子写真感光体の加熱は、電子写真感光体の内部に設けたヒータなどの加熱手段には限定されず、たとえば電子写真感光体の外部に設けた加熱手段や、画像形成装置に搭載される電子写真感光体以外のものから発生する熱により行なってもよい。
【実施例】
【0097】
本実施例では、接触型の帯電ローラを用いた場合に、電子写真感光体の円筒状基体の外径寸法が、画像ムラに与える影響を検討した。
【0098】
(電子写真感光体の作製)
円筒状基体は、外径φ30.3mm、内径φ25mm、長さ340mmの5052−Oアルミニウム合金抽伸管を用いた作製した。より具体的には、円筒状基体は、旋盤((株)エグロ社製RL600)を用いて抽伸管の両端面、内面、および外面を粗切削し、次いで仕上げ加工として、NC旋盤((株)エグロ社製RL600)を用いて、ダイヤモンド切削バイトでもって抽伸管の外面に鏡面切削を施すことにより作製した。この仕上げ加工の際に、NCコントロールにより円筒状基体の軸方向に対して外径寸法を変化させて、外径寸法の異なる複数の円筒状基体を作製した。
【0099】
このようにして作製した円筒状基体を超音波洗浄した後に、図7に示したCVD装置の反応炉内にセットし、下記表1に示す成膜条件で感光層を膜厚31μmに成膜した。
【0100】
図7のCVD装置では、感光層の軸方向の膜厚を均一にするために、位置決めリング50A,50Bの長さを調節し、円筒状基体20を放電安定領域に位置させた。また感光層の周方向の膜厚を均一にするために、円筒状基体1を基体ホルダー51とともにモータ装置52により1rpmの回転速度で回転させた。
【0101】
【表1】

【0102】
次いで、円筒状基体の内部にヒータを組み込んだ。ヒータは、一対の絶縁性シートの間に抵抗体を挟み込んだ構成のものを使用した。一対の絶縁性シートは、円筒状基体の内面に接する側の絶縁性シートについては厚さが1mmのPETフィルムを用い、もう一方の絶縁性シートについては厚さが0.3mmのPETフィルムを用いた。抵抗体としては、線径0.8mmのニクロム線にシリコンゴムを被覆したものを波線状に引き回した。ただし、抵抗体の配線密度は、図5および図6に示したヒータ6のように中央部を疎、両端部を密とはすることなく、一定とした。
【0103】
(円筒状基体の外径寸法の測定)
円筒状基体の外径寸法は、円筒状基体の円周方向に対して任意の10点について測定し、それらの10点の平均値とした。測定器としては非接触式レーザ外径測定器((株)ミツトヨ社製DV−305・LSM506/6000)を使用した。測定点は、潜像形成領域の中央部は円筒状基体の片端面より軸方向に160mmの位置、潜像形成領域の両端部の端部外径1は円筒状基体の片端面より軸方向に40mmの位置、端部外径2は円筒状基体の片端面より軸方向に320mmの位置とした。外径寸法の測定結果については、下記表2に示した。
【0104】
(画像ムラの評価)
画像ムラは、電子写真感光体を画像形成装置(京セラミタ(株)製複合機KM‐8030(改造))に搭載し、装置使用環境として、室温5℃、湿度15%RHから室温40℃、湿度85%RHまで繰返し変化させて、ハーフトーン画像の画像濃度ムラを目視にて画像判定を行った。電子写真感光体は、ヒータにより約35℃になるようにコントロールした。
【0105】
接触式帯電ローラとしては、丸棒状ステンレス鋼基材に体積固有抵抗2×10Ω・cmの抵抗層を設けたものを用いた。抵抗層としてはシリコンゴムにカーボンブラックを分散・混合させたものであり、硬度が50度(アスカーC)のものを使用した。帯電ローラは、7N以上10N以下の範囲の押圧力で電子写真感光体へ接触させた。また、画像形成装置のプロセス条件は以下の通りとした。
【0106】
画像形成装置のプロセス条件(潜像形成領域中央部於)
感光体周速:130mm/sec
帯電電圧 :280V
感光体表面温度:35℃
帯電器:帯電ローラ(接触式)
ニップ幅・・・2mm
露光器:レーザーユニット
波 長・・・680nm
露光量・・・0.3μJ/cm
除電器:LEDユニット
波 長・・・660nm
露光量・・・5.5μJ/cm
【0107】
画像判定は優(◎)、良(○)、可(△)、不可(×)の4段階で行い、優、良、可までが実使用上問題無しの画像品質である。画像判定の結果については、円筒状基体の外径寸法の測定結果とともに下記表2に示した。表2には各試料のニップ幅の測定結果も同時に示した。
【0108】
【表2】

【0109】
表2から分かるように、試料No.1は本発明の範囲外であるが、ニップ幅が均一であるために、装置使用環境の変化にともなって、画像濃度ムラが生じていた。
【0110】
これに対して、No.2〜No.4は本発明であるが、画像濃度ムラが生じていなかった。特に、No.2およびNo.3では良好な画像判定結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1に示した画像形成装置における電子写真感光体と帯電器との関係を説明するための要部断面図である。
【図3】図1に示した画像形成装置における電子写真感光体の一例を示す断面図およびその要部拡大図である。
【図4】図1に示した画像形成装置における電子写真感光体の他の例を示す断面図である。
【図5】図3あるいは図4に示した電子写真感光体におけるヒータを示す全体斜視図である。
【図6】図5に示したヒータの分解斜視図である。
【図7】図3あるいは図4に示した電子写真感光体の感光層を形成するためのCVD装置を示す断面図である。
【図8】本発明に係る画像形成装置の他の例を示す図1に相当する概略構成図である。
【図9】電子写真感光体と帯電ローラとの間のニップ幅を説明するための平面図である。
【符号の説明】
【0112】
1 画像形成装置
2 電子写真感光体
20 円筒状基体
21 感光層
22 潜像形成領域
22A (潜像形成領域の)中央部
22B (潜像形成領域の)両端部
28 光導電層
29 表面層
41 帯電ローラ(帯電手段)
41′ 帯電ベルト(帯電手段)
6 ヒータ(加熱用部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状の基体の外周面に、潜像形成領域を有する感光層が形成された電子写真感光体と、
前記基体の軸方向に対して略平行に配置された接触型の帯電手段と、
を備えた画像形成装置であって、
前記感光層と前記接触型帯電器との接触領域におけるニップ幅は、前記潜像形成領域に対応する部分において、中央部のほうが両端部に比べて大きいことを特徴とする、画像形成装置。
【請求項2】
前記ニップ幅は、前記潜像形成領域に対応する部分において、両端部から中央部に向かって漸次大きくなっている、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記基体の外径は、前記潜像形成領域に対応する部分において、両端部から中央部に向かって漸次大きくなっている、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ニップ幅は、前記潜像形成領域に対応する部分において、両端部から中央部に向かって段階的に大きくなっている、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記基体の外径は、前記潜像形成領域に対応する部分において、両端部から中央部に向かって段階的に大きくなっている、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記電子写真感光体は、前記感光層における潜像形成領域を加熱するための加熱用部材をさらに備えている、請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
駆動時において、前記潜像形成領域における温度は、前記潜像形成領域の中央部のほうが両端部に比べて高い、請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記感光層は、無機物材料からなる光導電層と、無機物材料からなり、前記光導電層上に積層形成される表面層と、を含んでいる、請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
略円筒状の基体の外周面に、潜像形成領域を有する感光層が形成された電子写真感光体と、
前記基体の軸方向に対して略平行に配置された接触型の帯電手段と、
を備えた画像形成装置であって、
前記電子写真感光体の潜像形成領域における基準点を含む部位のニップ幅は、前記基準点における温度に応じて調整されることを特徴とする、画像形成装置。
【請求項10】
前記電子写真感光体は、前記感光層における潜像形成領域を加熱するための加熱用部材をさらに備えている、請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記感光層は、無機物材料からなる光導電層と、無機物材料からなり、前記光導電層上に積層形成される表面層と、を含んでいる、請求項9または10に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−33225(P2008−33225A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21416(P2007−21416)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】