説明

画像形成装置

【課題】転写電圧印加手段への流入電流が存在しても、適切な転写電流の調整を行うことのできる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】画像形成装置は、転写電圧Vtpの印加に応じて、像担持手段27に担持された現像剤像を被記録媒体に転写する転写手段30と、転写電圧Vtpを転写手段30に印加する印加手段62と、転写電圧Vtpを検出する電圧検出手段73と、帯電されている像担持手段27から印加手段62に流入する流入電流Iiを検出する流入電流検出手段84と、転写電圧Vtpの印加による転写電流Itpを検出する転写電流検出手段84とを備える。決定手段61は、流入電流Iiを引き起こす起因電圧Vxを決定し、算出手段61は、転写電圧Vtp、転写電流Itp、および起因電圧Vxを用いて、印加手段62の負荷抵抗を算出する。調整手段61は、算出された負荷抵抗に応じて転写電流Itpを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、詳しくは、転写電流の調整に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真等の画像形成装置においては、感光体(像担持手段)上に形成された像を用紙に転写する場合、感光体と転写手段、例えば転写ローラとの間に適切な転写電流が流れるように調整されている。この転写電流を適切に調整するには、転写ローラに転写電圧を印加する印加手段の負荷抵抗を正確に求める必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、画像形成媒体が転写ローラに進入した直後、所定の電圧を印加してその電流を測定する場合に、同時に給紙ローラ等の部分でのリーク電流を測定し、その結果から、実際に転写ローラの部分で流れた正味の電流を計算することで、正確な負荷抵抗を測定する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平9−160402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1では、感光体から転写ローラへリークするリーク電流(以下、「流入電流」という)については考慮されていなかった。一般に、転写ローラが起動する前に感光体が帯電されるため、帯電した感光体から転写ローラを介して上記印加手段への流入電流が発生する場合があった。このような流入電流の影響によって、印加手段の正確な負荷抵抗が求められず、その結果として、適切な転写電流を流すことができないおそれがあった。
【0005】
本発明は、像担持手段から転写電圧印加手段への流入電流がある場合であっても、適切な転写電流の調整を行うことのできる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、第1の発明に係る画像形成装置は、現像剤によって現像された現像剤像を担持する像担持手段と、前記像担持手段を帯電させる帯電手段と、転写電圧の印加に応じて前記現像剤像を被記録媒体に転写する転写手段と、前記転写電圧を生成し、前記転写電圧を前記転写手段に印加する印加手段と、前記転写電圧を検出する電圧検出手段と、前記像担持手段の帯電に起因して前記印加手段に流入する流入電流を検出する流入電流検出手段と、前記転写電圧が前記転写手段に印加された際に流れる転写電流を検出する転写電流検出手段と、前記流入電流を引き起こす起因電圧を決定する決定手段と、検出された前記転写電圧、検出された前記転写電流、および決定された前記起因電圧を用いて、前記印加手段の負荷抵抗を算出する算出手段と、算出された前記負荷抵抗に応じて前記転写電流を調整する調整手段とを備える。
【0007】
本構成によれば、像担持手段の帯電に起因する流入電流を考慮して印加手段の負荷抵抗が算出される。そして、その負荷抵抗に応じて転写電流が調整される。そのため、流入電流が存在しても、あるいは流入電流の大きさに応じて、印加手段の負荷抵抗を正確に算出することができる。その結果、像担持手段から印加手段への流入電流がある場合であっても、適切な転写電流の調整を行うことができる。
【0008】
なお、本発明において、流入電流の方向は、像担持手段側から転写手段を介した印加手段側への方向のみならず、印加手段側から転写手段を介した像担持手段側への方向も含む。また、用語「起因電圧」は、負荷抵抗を算出する回路ループにおける、帯電電荷による像担持手段の電位を意味する。
【0009】
第2の発明は、第1の発明の画像形成装置において、前記決定手段は、前記被記録媒体が前記像担持手段と前記転写手段との間に供給されていない状態において検出された、前記転写電圧、前記流入電流、および前記転写電流を用いて前記起因電圧を算出する。
【0010】
本構成によれば、起因電圧は、電圧検出手段および各電流検出手段によって検出された転写電圧、流入電流、および転写電流を用いて算出される。この場合、電圧検出手段および電流検出手段として既存の構成を利用することができるため、何ら新たに構成を追加することなく、すなわち、構成の追加によるコストの増加を伴わずに、起因電圧を演算によって容易に決定することができる。
【0011】
第3の発明は、第1の発明の画像形成装置において、前記転写電圧と逆極性の逆電圧を前記転写手段に印加する逆電圧印加手段をさらに備え、前記決定手段は、前記被記録媒体が前記像担持手段と前記転写手段との間に供給されていない状態において、前記流入電流が所定値以上である場合、前記逆電圧を徐々に増加させるように前記逆電圧印加手段を制御し、前記逆電圧の増加によって前記流入電流が所定値未満となった場合、そのときの前記逆電圧を前記起因電圧と決定する。
【0012】
本構成によれば、流入電流を所定値未満、例えば、画像形成に影響を及ぼさない値未満まで打ち消す逆電圧の値によって、流入電流の起因電圧を決定することができる。また、逆電圧印加手段は、転写手段に付着したトナーを除去するために設けられる場合があり、その場合、その逆電圧印加手段を起因電圧の決定に好適に利用することができる。
【0013】
第4の発明は、第3の発明の画像形成装置において、前記決定手段は、前記逆電圧の増加によって前記流入電流がゼロとなった場合、そのときの前記逆電圧を前記起因電圧と決定するとともに、前記逆電圧をOFFするように前記逆電圧印加手段を制御する。
本構成によれば、流入電流を完全に打ち消す逆電圧の値によって、流入電流の起因電圧を決定するため、負荷抵抗の算出の際における流入電流の影響をより抑制することができる。
【0014】
第5の発明は、第1の発明の画像形成装置において、前記転写電圧と逆極性の逆電圧を前記転写手段に印加する逆電圧印加手段をさらに備え、前記決定手段は、前記被記録媒体が前記像担持手段と前記転写手段との間に供給されていない状態において、前記流入電流が所定値以上である場合、前記逆電圧を徐々に増加させるように前記逆電圧印加手段を制御し、前記逆電圧の増加によって前記流入電流が所定値未満となった場合、その逆電圧を印加した状態を維持するように前記逆電圧印加手段を制御し、前記算出手段は、前記決定手段により前記流入電流が所定値未満となるように前記逆電圧が印加されている状態で、前記負荷抵抗を算出する。
本構成によれば、負荷抵抗の算出が、流入電流を所定値未満、例えば、画像形成に影響を及ぼさない値未満まで打ち消す逆電圧が転写手段へ印加された状態で行われる。そのため、流入電流が存在する場合であっても、流入電流の影響をなくして、好適に負荷抵抗を算出することができる。
【0015】
第6の発明は、第5の発明の画像形成装置において、前記決定手段は、前記逆電圧の増加によって前記流入電流がゼロとなった場合、前記起因電圧をゼロと決定するとともに、そのときの前記逆電圧を印加した状態を維持するように前記逆電圧印加手段を制御する。
本構成によれば、負荷抵抗の算出が、流入電流を完全に打ち消す逆電圧が転写手段へ印加された状態で行われる。そのため、負荷抵抗の算出の際における流入電流の影響をより抑制することができる。
【0016】
第7の発明に係る画像形成装置は、現像剤によって現像された現像剤像を担持する像担持手段と、前記像担持手段を帯電させる帯電手段と、転写電圧の印加に応じて前記現像剤像を被記録媒体に転写する転写手段と、前記転写電圧を生成し、前記転写電圧を前記転写手段に印加する印加手段と、前記転写電圧を検出する電圧検出手段と、前記像担持手段の帯電に起因して前記印加手段に流入する流入電流を検出する流入電流検出手段と、前記転写電圧が前記転写手段に印加された際に流れる転写電流を検出する転写電流検出手段と、前記転写電圧と逆極性の逆電圧を前記転写手段に印加する逆電圧印加手段と、前記被記録媒体が前記像担持手段と前記転写手段との間に供給されていない状態において、前記流入電流が所定値以上である場合、前記逆電圧を徐々に増加させるように前記逆電圧印加手段を制御し、前記逆電圧の増加によって前記流入電流が所定値未満となった場合、その逆電圧を印加した状態を維持するように前記逆電圧印加手段を制御する制御手段と、検出された前記転写電圧、および検出された前記転写電流を用いて、前記印加手段の負荷抵抗を算出する算出手段であって、前記制御手段により前記流入電流が所定値未満となるように前記逆電圧が印加されている状態で、前記負荷抵抗を算出する算出手段と、算出された前記負荷抵抗に応じて前記転写電流を調整する調整手段とを備える。
【0017】
本構成によれば、負荷抵抗の算出が、流入電流を所定値未満、例えば、画像形成に影響を及ぼさない値未満まで打ち消す逆電圧が転写手段へ印加された状態で行われる。そのため、流入電流が存在する場合であっても、流入電流の影響をなくして、好適に負荷抵抗を算出することができる。その結果、像担持手段から印加手段への流入電流がある場合であっても、適切な転写電流の調整を行うことができる。
【0018】
第8の発明は、第7の発明の画像形成装置において、前記制御手段は、前記逆電圧の増加によって前記流入電流がゼロとなった場合、そのときの前記逆電圧を印加した状態を維持するように前記逆電圧印加手段を制御する。
本構成によれば、負荷抵抗の算出が、流入電流を完全に打ち消す逆電圧が転写手段へ印加された状態で行われる。そのため、負荷抵抗の算出の際における流入電流の影響をより抑制することができる。
【0019】
第9の発明は、第1から第8のいずれかの発明の画像形成装置において、前記算出手段は、画像形成処理の要求に応じて前記負荷抵抗を算出する。
本構成によれば、画像形成処理が要求されるたびに負荷抵抗が算出される。そのため、正確な負荷抵抗に基づいて画像形成処理を行うことができ、湿度等によって流入電流が変動する場合においても、所望の画質を維持できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の画像形成装置によれば、像担持手段から転写電圧印加手段への流入電流がある場合であっても、適切な転写電流の調整を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を、図1〜図4を参照しつつ説明する。
1.画像形成装置の全体構成
図1は、本発明の画像形成装置としてのレーザプリンタの本実施形態を示す概略的な要部側断面図である。図1において、レーザプリンタ1は、画像形成装置の装置本体としての本体フレーム2内に、用紙(被記録媒体の一例)3を給紙するためのフィーダ部4や、給紙された用紙3に画像を形成するための画像形成部5などを備えている。なお、画像形成装置は、レーザプリンタに限られず、例えば、LEDプリンタ、ファクシミリ装置、あるいはコピー機能及びスキャナ機能等を備えた複合機も本発明の画像形成装置に含まれる。
【0022】
(1)フィーダ部
フィーダ部4は、本体フレーム2内の底部に設けられ、給紙トレイ6、給紙トレイ6の一端側(以下、一端側(図1で紙面右側)を前側、その反対側(図1で紙面左側)を後側とする)端部の上方に設けられる給紙ローラ8、給紙ローラ8に対し用紙3の搬送方向の下流側に設けられるレジストローラ12等を含む。
【0023】
給紙トレイ6の最上位にある用紙3は、給紙ローラ8の回転によって1枚毎に給紙される。給紙された用紙3は、レジストローラ12に送られる。レジストローラ12は、用紙3をレジスト後に、画像形成位置に送る。なお、画像形成位置は、感光体ドラム27と転写ローラ30との接触位置(ニップ部)とされる。
【0024】
(2)画像形成部
画像形成部5は、スキャナ部16、プロセスカートリッジ17および定着部18を含む。
スキャナ部16は、本体フレーム2内の上部に設けられ、レーザ発光部(図示せず)、ポリゴンミラー19、反射鏡22,23等を含む。レーザ発光部から発光される、画像データに基づくレーザビームは、鎖線で示すように、ポリゴンミラー19、反射鏡22、23等を介して、感光体ドラム27の表面上に高速走査にて照射される。
【0025】
プロセスカートリッジ17は、スキャナ部16の下方に設けられ、ドラムユニット51と、ドラムユニット51に収容される現像カートリッジ28とを含む。現像カートリッジ28は、ドラムユニット51に対して着脱自在に収容されており、例えば、現像ローラ31、供給ローラ33、およびトナーホッパ34等を含む。
【0026】
トナーホッパ34内には、例えば正帯電性のトナー(現像剤の一例)が充填されている。トナーホッパ34の後方位置には、供給ローラ33が設けられており、また、この供給ローラ33に対向して、金属製のローラ軸31aを有する現像ローラ31が設けられている。現像時に、ローラ軸31aには所定の現像バイアス電圧が印加される。トナーホッパ34から放出されるトナーは、供給ローラ33の回転により、現像ローラ31に供給され、この時、供給ローラ33と現像ローラ31との間で正に摩擦帯電される。
【0027】
ドラムユニット51は、感光体ドラム(像担持体の一例)27、スコロトロン型帯電器(帯電手段の一例)29、および転写ローラ30(転写手段の一例)等を備えている。感光体ドラム27は、現像ローラ31と対向配置され、筒状のドラム本体と、そのドラム本体の軸心に、接地された金属製のドラム軸27aとを含む。ドラム本体の表面には、正帯電性の感光層が形成されている。また、感光体ドラム27の上方には、レーザビームの通路として露光窓が設けられている。
【0028】
スコロトロン型帯電器(以下、単に「帯電器」と記す)29は、感光体ドラム27の上方に、感光体ドラム27に接触しないように所定間隔を隔てて対向配置されている。帯電器29は、帯電ワイヤ29aとグリッド29bとを含み、帯電ワイヤ29aからの放電によって、グリッド29bを介して感光体ドラム27の表面を一様に正極性(例えば、約870V)に帯電させる。帯電ワイヤ29aには所定の帯電電圧(例えば、5kV〜8kV)が印加される。
【0029】
感光体ドラム27の表面は、感光体ドラム27の回転に伴って、まず、帯電器29により一様に正帯電される。その後、帯電表面は、スキャナ部16からのレーザビームの高速走査により露光され、画像データに基づく静電潜像が形成される。次いで、現像ローラ31の回転により、現像ローラ31の表面上に担持されかつ正極性に帯電されているトナーが、感光体ドラム27の表面上の静電潜像に供給され、静電潜像が現像される。
【0030】
転写ローラ30は、金属製のローラ軸30aを有し、感光体ドラム27の下方において、感光体ドラム27に対向配置される。ローラ軸30aには、例えば導電性のゴム材料からなるローラが被覆されている。
【0031】
転写ローラ30のローラ軸30aには、図2に示されるように、回路基板52に実装されたバイアス印加回路60が接続されている。そして、転写位置において現像ローラ31に担持されたトナー像を用紙3に転写するための転写動作時には、転写ローラ30のローラ軸30aに、バイアス印加回路60から、例えば−6kVの順転写バイアス電圧(転写電圧)Vtpが印加される。
【0032】
また、本実施形態では、画像形成動作の前後や、画像形成動作中における各用紙3への転写動作の間などにおいては、転写ローラ30には順転写バイアス電圧Vtpとは逆極性であって、残存トナー除去用の、例えば600Vの逆バイアス電圧Vtnがバイアス印加回路60から印加される。これにより、転写ローラ30に付着したトナーは、感光体ドラム27上に電気的に吐出されて、感光体ドラム27の表面上に残存する残存トナーとともに、例えば現像ローラ31によって回収される。
【0033】
定着部18は、図1に示すように、プロセスカートリッジ17の後方下流側に設けられ、加熱ローラ41、加熱ローラ41を押圧する押圧ローラ42を含む。そして、定着部18では、用紙3上に転写されたトナーが、用紙3が加熱ローラ41と押圧ローラ42との間を通過する間に熱定着される。その後、用紙3は、排紙ローラ45に送られて、その排紙ローラ45によって排紙トレイ46上に排紙される。
【0034】
2.バイアス印加回路
次に、図2を参照してバイアス印加回路について説明する。図2は、転写ローラ30に対して転写電圧Vtpを印加するバイアス印加回路60の要部構成のブロック図である。前述したように、バイアス印加回路60は、転写ローラ30に対して、順転写動作時に順転写バイアス電圧Vtpを印加する。一方、バイアス印加回路60は、残存トナー除去時には逆バイアス電圧Vtnを印加する。また、バイアス印加回路60は、後述する流入電流Iiを引き起こす起因電圧Vxの決定時、または起因電圧Vxを打ち消した状態において負荷抵抗Zrを算出するために、逆バイアス電圧Vbを印加する。
【0035】
バイアス印加回路60は、CPU(決定手段、算出手段および調整手段の一例)61と、順転写バイアス電圧Vtpを生成する順転写バイアス印加回路(印加手段の一例)62と、逆バイアス電圧(VtnおよびVb)を生成する逆バイアス印加回路(逆電圧印加手段の一例)63とを備えている。なお、各バイアス印加回路62,63は、転写ローラ30のローラ軸30aに接続される接続ライン90に、順転写バイアス印加回路62および逆バイアス印加回路63の順序で直列に接続されている。また、CPU61は、バイアス印加回路60の制御の他に、画像形成に係るプリンタ1の各部の制御も行う。
【0036】
また、バイアス印加回路60は、接続ライン90に流れる電流値に応じた検出信号S3を出力する電流検出回路(流入電流検出手段および転写電流検出手段の一例)84を含む。なお、バイアス印加回路60は、その他の高電圧、例えば帯電電圧等を印加するための回路を含むが、その図示は省略されている。また、バイアス印加回路60およびCPU61は、図1に示される回路基板52上に配置されている。
【0037】
順転写バイアス印加回路62は、CPU61のPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御によって定電流制御され、逆バイアス印加回路63はCPU61のPWM制御によって定電圧制御される。また、CPU61にはメモリ100が接続されている。このメモリ100には、バイアス印加回路60を制御するプログラム、転写電流Itpの初期値(基準値)、および各種テーブルデータ等が格納されている。
【0038】
(a)順転写バイアス印加回路
順転写バイアス印加回路62は、高電圧(負電圧)発生回路であり、順転写PWM信号平滑回路70、順転写トランスドライブ回路71、順転写昇圧・平滑整流回路72、および順転写出力電圧検出回路(電圧検出手段の一例)73を含む。
【0039】
順転写PWM信号平滑回路70は、CPU61のPWMポート61aからのPWM信号S1を平滑し、平滑されたPWM信号S1を順転写トランスドライブ回路71に提供する。順転写トランスドライブ回路71は、平滑されたPWM信号S1に基づき、順転写昇圧・平滑整流回路72の1次側巻線75bに発振電流を流す。
【0040】
順転写昇圧・平滑整流回路72は、トランス75、ダイオード76、平滑コンデンサ77等を備えている。トランス75は、2次側巻線75a,1次側巻線75b及び補助巻線75cを備えている。2次側巻線75aの一端は、ダイオード76を介して接続ライン90に接続されている。一方、2次側巻線75aの他端は、逆バイアス印加回路63の出力端に共通接続されている。また、平滑コンデンサ77及び抵抗78がそれぞれ2次側巻線75aに並列に接続されている。
【0041】
このような構成により、1次側巻線75bの電圧は、順転写昇圧・平滑整流回路72において昇圧及び整流され、バイアス印加回路60の出力端Aに接続された転写ローラ30のローラ軸30aに順転写バイアス電圧Vtpとして印加される。
【0042】
順転写出力電圧検出回路73は、順転写昇圧・平滑整流回路72のトランス75の補助巻線75cと、CPU61とに接続されている。順転写出力電圧検出回路73は、順転写バイアス印加回路62による順転写動作時において、補助巻線75cの間で発生する出力電圧Vdを検出して、その検出信号S2をCPU61のA/Dポート61bに供給する。CPU61は、検出信号S2に基づいて、順転写出力電圧Vtpを検出する。
【0043】
(b)逆バイアス印加回路
逆バイアス印加回路63は、順転写バイアス印加回路62と同様に高電圧(正電圧)発生回路であり、逆バイアスPWM信号平滑回路80、逆バイアストランスドライブ回路81、逆バイアス昇圧・平滑整流回路82、および逆バイアス出力電圧検出回路83を含む。
【0044】
逆バイアスPWM信号平滑回路80は、CPU61のPWMポート61dからのPWM信号S4を平滑し、平滑されたPWM信号S4を逆バイアストランスドライブ回路81に供給する。逆バイアストランスドライブ回路81は、平滑されたPWM信号S4に基づき、逆バイアス昇圧・平滑整流回路82の1次側巻線85bに発振電流を流す。
【0045】
逆バイアス昇圧・平滑整流回路82は、トランス85、ダイオード86、平滑コンデンサ87等を備えている。トランス85は、2次側巻線85a,1次側巻線85b及び補助巻線85cを含む。2次側巻線85aの一端は、ダイオード86を介して順転写バイアス印加回路62の2次側巻線75aの他端に接続されている。一方、2次側巻線85aの他端は電流検出回路84の検出抵抗89を介して接地されている。また、この2次側巻線85aに対し平滑コンデンサ87および抵抗88がそれぞれ並列に接続されている。また、抵抗88に直列接続された検出抵抗89が電流検出抵抗とされ、この検出抵抗89に流れる電流値に応じた検出信号(電圧値)S3がCPU61のA/Dポート61cにフィードバックさせる。
【0046】
このような構成により、1次側巻線85bの電圧は、逆バイアス昇圧・平滑整流回路82において昇圧及び整流され、バイアス印加回路60の出力端Aに接続された転写ローラ30のローラ軸30aに、残存トナー除去用の逆バイアス電圧Vtnとして印加される。さらに、逆バイアス印加回路63の出力電圧は、起因電圧Vxの決定用、あるいは起因電圧Vxを打ち消すための逆バイアス電圧Vbとして転写ローラ30に印加される。
【0047】
逆バイアス出力電圧検出回路83は、逆バイアス昇圧・平滑整流回路82のトランス85の補助巻線85cと、CPU61とに接続されている。逆バイアス出力電圧検出回路83は、逆バイアス印加回路63による逆バイアス動作時において、補助巻線85cの間で発生する出力電圧Veを検出して、その検出信号S5をCPU61のA/Dポート61eに供給する。CPU61は、検出信号S5に基づいて、逆バイアス出力電圧(Vtn、Vb)を検出する。
【0048】
以上により、CPU61は、順転写動作時には、PWM信号S1を順転写バイアス印加回路62に与えて駆動させつつ、接続ライン90に流れる電流値に応じた検出信号S3に基づきこの電流値が転写目標電流値になるように、デューティ比を適宜変更したPWM信号S1を順転写PWM信号平滑回路70に出力する定電流制御を実行する。
【0049】
また、CPU61は、逆バイアス動作時には、PWM信号S4を逆バイアス印加回路63に与えて駆動させつつ、逆バイアス出力電圧検出回路83の検出信号S5に基づき、逆バイアス電圧(VtnおよびVb)が所定の定電圧値になるように、デューティ比を適宜変更したPWM信号S4を逆バイアスPWM信号平滑回路80に出力する定電圧制御を実行する。
【0050】
なお、逆バイアス動作時においても電流検出回路84からの検出信号(電圧信号)S3がフィードバックされ、逆バイアス電圧(VtnおよびVb)が制御されるようにしてもよい。すなわち、電流検出回路84は、転写電流Itpおよび流入電流Iiの検出の他に、順転写バイアス電圧Vtpおよび逆バイアス電圧(Vtn、Vb)の検出にも利用可能である。
【0051】
3.負荷抵抗の算出および転写電流の調整
次に、図4を参照して本実施形態による、流入電流Iiがある場合であっても、適正な負荷抵抗Zrを算出でき、適切に転写電流を調整できる方法を説明する。その説明の前に、流入電流Iiおよび負荷抵抗Zrに関して記載する。
【0052】
通常、レーザプリンタ(以下、単に「プリンタ」と記す)1において、感光体ドラム27の表面上のトナー像を用紙3に転写する際に、上記したように、順転写バイアス印加回路62から転写ローラ30に所定の順転写バイアス電圧Vtp(例えば、−7kV)が印加される。一方、トナー像の転写時において、感光体ドラム27は、帯電器29や現像ローラ31によって約500V〜870Vに帯電されている。従って、転写ローラ30に対して順転写バイアス電圧Vtpを印加した状態において、転写電流Itpが検出される。しかしながら、一般に転写ローラ30へ順転写バイアス電圧を印加する前に感光体ドラム27を帯電させるので、感光体ドラム27の帯電による電荷に起因して電位(本発明における「起因電圧」に相当)が生じ、その電位によって、図3に示されるように、感光体ドラム27に接触する転写ローラ30を介して、感光体ドラム27側から順転写バイアス印加回路62側に流入電流Iiが流入する。
【0053】
また、プリンタ1において、上記したように、転写電流Itpは定電流制御される。しかしながら、感光体ドラム27および転写ローラ30等により構成される、順転写バイアス印加回路62の負荷抵抗Zrは、周囲の湿度等の影響によって変化する。そのため、例えば、負荷抵抗Zrが高くなった場合には、所定の転写電流Itpを得るために順転写バイアス電圧Vtpが高くなる。その際、順転写バイアス電圧Vtpが高くなり過ぎると、搬送ベルト(図示せず)等に悪影響を及ぼす。そのため、それを防止するために、通常、負荷抵抗Zrを求め、定電流制御する転写電流Itpの値が負荷抵抗Zrに応じて適正化される。
【0054】
その際、負荷抵抗Zrは、通常、検出される順転写バイアス電圧Vtpおよび転写電流Itpを用いて算出される。しかしながら、上記流入電流Iiによって、検出される転写電流Itpが影響されるため、適正な負荷抵抗Zrが求められず、その結果として、適切な転写電流Itpを流すことができない虞がある。
【0055】
そのため、以下において、本実施形態による、流入電流Iiがある場合であっても適正な負荷抵抗Zrを算出できる方法を説明する。すなわち、検出される転写電流Itpに流入電流Iiが含まれる場合であっても、適正な負荷抵抗Zrを算出でき、適切に転写電流Itpを調整できる方法を説明する。図4は、負荷抵抗Zrに応じた転写電流の調整に係る各処理を示すフローチャートである。各処理は、所定のプログラムにしたがって、CPU61によって実行される。その際、CPU61は、印字処理(画像形成処理)の要求に応じて負荷抵抗Zrを算出する。
【0056】
プリンタ1に対するユーザの印字指示によって印字処理が開始されると、図4のステップS100において、CPU61は、帯電電圧発生回路(図示せず)によって帯電器29に所定の帯電電圧(例えば、5kV〜8kV)を印加して感光体ドラム27の表面上を帯電させ、所定時間、待機する(ステップS115参照)。ここで所定時間、待機するのは、流入電流Iiを安定した状態とするためである。
【0057】
所定待機時間が経過すると、ステップS120において、CPU61は、用紙3が、感光体ドラム27と転写ローラ30との間(画像形成位置)にまだ供給されていない状態において、検出抵抗89によって検出された検出信号S3に基づいて流入電流Iiを検知する。次いで、ステップS125において、CPU61は、逆バイアス電圧Vbの初期値を「0」Vとする。すなわち、CPU61は、逆バイアス印加回路63によって逆バイアス電圧Vbを発生させない。
【0058】
次いで、ステップS130において、CPU61は、検出信号S3に基づいて流入電流Iiが有るかどうか、すなわち、流入電流Iiが検出されたかどうか(ゼロでないかどうか)を判定する。流入電流Iiが検出された場合(ステップS130においてYesの判定)、ステップS135に移行して、CPU61は、現在設定されている逆バイアス電圧Vbに所定量の増加電圧Vuを加算する。そして、逆バイアス印加回路63によって、増加された逆バイアス電圧(Vb=Vb+Vu)を発生させ、逆バイアス電圧(Vb=Vb+Vu)を転写ローラ30に印加させる。
【0059】
次いで、ステップS130の処理に戻って、CPU61は、検出信号S3に基づいて、逆バイアス電圧Vbが転写ローラ30に印加された後においても、流入電流Iiが有るかどうかを判定する。流入電流Iiが検出される場合には、ステップS135への移行を繰返す。
【0060】
一方、ステップS130において、流入電流Iiが検出されない場合(ステップS130においてNo判定)、ステップS140において、CPU61は、流入電流Iiが検出されなくなった場合(流入電流Iiがゼロである場合)の逆バイアス電圧Vbの値を、逆バイアス出力電圧検出回路83によって検出された検出信号S5に基づいて検知する。そして、CPU61は、検知された電圧値Vbを、流入電流Iiを引き起こしている起因電圧Vxと決定する。
【0061】
続いて、ステップS142において、CPU61は、逆バイアス電圧Vbの印加をOFFするかどうかを判定する。逆バイアス電圧Vbの印加をOFFにする場合(Yes判定)、逆バイアス電圧Vbの印加をOFFしてステップS145に移行する。一方、逆バイアス電圧Vbの印加をOFFしない場合(No判定)、ステップS144に移行して、起因電圧Vxの値を「ゼロ」に設定(決定)し、ステップS145に移行する。すなわち、逆バイアス電圧Vbを起因電圧Vxの決定時のみに利用する場合には、ステップS142において、逆バイアス電圧Vbの印加がOFFされる。一方、流入電流Iiを打ち消す、すなわち、起因電圧Vxを打ち消す逆バイアス電圧Vbの印加を継続して負荷抵抗Zrを算出する場合には、ステップS142において、逆バイアス電圧Vbの印加がOFFされない。
【0062】
このように、ステップS142の判定において、逆バイアス電圧Vbの利用方法が選択されるとともに、負荷抵抗Zrの算出方法が選択される。なお、その選択のための指示、すなわち、ステップS142の判定に係る指示は、例えば、CPU61に対する設定スイッチ(設定信号)によって行われる。
【0063】
次いで、ステップS145において、CPU61は、転写電流Itpの初期値(基準値)を、例えば、15μAに設定し、ステップS150において、レジストローラ12等を制御して、用紙3の画像形成位置への供給を開始させる(図3参照)。
【0064】
そして、ステップS155において、用紙3が画像形成位置に供給された状態において、CPU61は、基準値の転写電流Itpが得られるように、順転写バイアス印加回路62によって順転写バイアス電圧Vtpを発生させ、順転写バイアス電圧Vtpを転写ローラ30に印加させる。CPU61は、このときの順転写バイアス電圧Vtpおよび転写電流Itp(ほぼ基準値に等しい)を、それぞれ検出信号S2および検出信号S3によって検知する。そして、ステップS140において決定した起因電圧Vx、あるいはステップS144において「ゼロ」に設定された起因電圧Vxと、検出された順転写バイアス電圧Vtpおよび転写電流Itpを用いて、以下の式1から順転写バイアス印加回路62の負荷抵抗Zrを算出する。なお、ここで、負荷には、感光体ドラム27、用紙3および転写ローラ30等が含まれる。また、流入電流Iiが存在する場合、検出される転写電流Itpには、流入電流Iiが含まれる。
【0065】
Zr=(−Vtp+Vx)/Itp 式1
すなわち、本実施形態においては、負荷抵抗Zrを算出する際に、流入電流Iiの要素が起因電圧(Vx=Zr*Ii)として取り込まれている。そのため、流入電流Iiが存在しても、あるいは流入電流Iiの大きさに応じて、負荷抵抗Zrを正確に算出することができる。
【0066】
そして、CPU61は、算出された負荷抵抗Zrと転写電流Itpとの関係を示すテーブルデータにしたがって、定電流制御する転写電流Itpの値を、基準値の例えば15μAから、算出された負荷抵抗Zrに対応した値に更新する。テーブルデータは、例えばメモリ100に格納されている。そのため、印字処理中の周囲湿度等によって負荷抵抗Zrが変化する場合であっても、その変化に応じた適正な転写電流Itpを設定することができる。
【0067】
そして、CPU61は、用紙3にトナー像が転写される際に、更新された転写電流Itpが得られるように順転写バイアス印加回路62を制御する。
【0068】
次いで、ステップS160において、印字指示による印字処理が全て終了したかどうかを判定する。印字処理が全て終了していないと判定された場合には(ステップS160においてNo判定)、ステップS155に戻ってその処理を繰返す。一方、印字処理が全て終了したと判定された場合には(ステップS160においてYes判定)、ステップS165において、CPU61は、バイアス印加回路60による印字に係る高電圧の印加を終了させて、本印字処理を終了する。
【0069】
<実施形態1の効果>
実施形態1においては、感光体ドラム27から順転写バイアス印加回路62への流入電流Iiを考慮して順転写バイアス印加回路62の負荷抵抗Zrが算出される。そして、算出された負荷抵抗Zrに応じて転写電流Itpが調整される。そのため、流入電流Iiが存在しても、あるいは流入電流Iiの大きさに応じて、順転写バイアス印加回路62の負荷抵抗Zrを正確に算出することができる。その結果、感光体ドラム27から順転写バイアス印加回路62への流入電流Iiがある場合であっても、適切な転写電流Itpの調整を行うことができる。
【0070】
また、流入電流Iiを完全に打ち消す(ゼロにする)逆バイアス電圧Vbの値によって、流入電流Iiの起因電圧Vxを決定する。その際、逆バイアス電圧Vbを発生させる逆バイアス印加回路63は、転写ローラ30に付着したトナーを除去するために設けられている。そのため、何ら新たな構成を追加せずに、既存の構成を利用して、起因電圧Vxを好適に決定することができる。
【0071】
また、CPU61は、印字処理の要求に応じて負荷抵抗Zrを算出する。そのため、正確な負荷抵抗Zr、すなわち、正確な転写電流Itpに基づいて印字処理を行うことができ、湿度等によって流入電流Ii(負荷抵抗Zr)が変動する場合においても、所望の印字画質を維持できる。
【0072】
<実施形態2>
次に本発明の実施形態2を、図5を参照して説明する。図5は、実施形態2における、負荷抵抗Zrに応じた転写電流Itpの調整に係る各処理を示すフローチャートである。図5の各処理は、実施形態1と同様に、所定のプログラムにしたがって、CPU(制御手段の一例)61によって実行される。なお、図5において実施形態1の図4のフローチャートと同一の処理は同一のステップ番号を付し、その説明を省略し、実施形態1との相違点のみを説明する。
【0073】
実施形態1との相違点は、負荷抵抗Zrに応じた転写電流Itpの調整に処理において、起因電圧Vxを決定する処理が省略される点にある。具体的には、図5のステップS130の判定処理において、流入電流Iiが検出されない場合(No判定)、処理はステップS145に移行する。すなわち、図4のステップS140、S142、およびS144の処理が省略される。
【0074】
そして、ステップS155Aにおいて、CPU61は、流入電流Iiを打ち消す逆バイアス電圧Vbが転写ローラ30に印加された状態において、順転写出力電圧検出回路73によって検出される順転写バイアス電圧Vtp、および、電流検出回路84によって検出される転写電流Itpを用いて、以下の式2から負荷抵抗Zrを算出する。
Zr=−Vtp/Itp 式2
次いで、ステップS160以降において、CPU61は、実施形態1と同様の処理を実行する。
【0075】
<実施形態2の効果>
このように、実施形態2においては、負荷抵抗Zrの算出が、逆バイアス電圧Vbの転写ローラ30への印加によって、流入電流Iiが打ち消された状態で行われる。そのため、流入電流Iiが存在する場合であっても、流入電流Iiの影響をなくして、好適に負荷抵抗Zrを算出することができる。その際、起因電圧Vxを決定する処理が省略されるため、実施形態1と比べて負荷抵抗Zrの算出にかかる処理が簡略化される。
【0076】
<実施形態3>
次に本発明の実施形態3を、図6および図7を参照して説明する。図6は、実施形態3における、バイアス印加回路60Aの要部構成のブロック図である。なお、実施形態3のバイアス印加回路60Aは、実施形態1のバイアス印加回路60から逆バイアス印加回路63が除かれたものである。そのため、その詳細な説明を省略する。
【0077】
また、図7は、実施形態3における、負荷抵抗Zrに応じた転写電流Itpの調整に係る各処理を示すフローチャートである。図7の各処理は、実施形態1と同様に、所定のプログラムにしたがって、CPU61によって実行される。なお、図7において実施形態1の図4のフローチャートと同一の処理は同一のステップ番号を付し、その説明を省略し、実施形態1との相違点のみを説明する。また、プリンタ1の全体構成は、実施形態1と同一のためその説明を省略する。
【0078】
実施形態1と実施形態3とにおいて、起因電圧Vxを決定する方法のみが異なる。すなわち、実施形態3においては、用紙3が感光体ドラム27と転写ローラ30との間(画像形成位置)に供給されていない状態において検出された、転写電圧Vtp、流入電流Ii、および転写電流Itpを用いて起因電圧Vxが決定される。
【0079】
図7のフローチャートのステップS120において、CPU61は、用紙3が画像形成位置に供給されていない状態において、まず流入電流Iiを検知する。また、ステップS210において、CPU61は、同状態において、順転写バイアス印加回路62を制御して、転写電圧Vtpの印加によって転写出力電流Itoを出力させる。そして、流入電流Iiおよび転写出力電流Itoを含む転写電流Itpを検知する。ここでは、例えば、転写電流Itpが上記初期値である、15μAとなるように、出力電流Itoが出力される。
【0080】
さらに、ステップS220において、CPU61は、同状態において、転写電圧Vtpを検知する。その際、図6に示されるように、流入電流Iiおよび転写電流Itpは、電流検出回路84を介して検出信号S3に基づいて検知される。また、転写電圧Vtpは、順転写出力電圧検出回路73を介して検出信号S2に基づいて検知される。
【0081】
次いで、ステップS230において、CPU61は、検知された転写電圧Vtp、流入電流Iiおよび転写電流Itpを用いて、以下の式3から起因電圧Vxを算出する。すなわち、実施形態3においては、CPU61は、起因電圧Vxを演算によって決定する。
【0082】
Vx=Vtp/(1−Itp/Ii) 式3
なお、式3は、以下の式4および式5から導かれる。
【0083】
負荷抵抗をZrとすると、
Zr=(−Vtp+Vx)/Itp 式4
の関係があり、
ここで、上記したように、Vx=Zr*Ii 式5
の関係があるため、
式5を式4に代入することにより、式3が導き出される。
【0084】
なお、詳しくは、転写電圧Vtpの印加によって生じる転写出力電流Ito、流入電流Ii、および検出される転写電流Itpとにおいては、以下の式6の関係がある。
Itp=Ito+Ii 式6
すなわち、転写電圧Vtpが転写ローラ30に印加された際に電流検出回路84を介して検出される転写電流Itpの値には、流入電流Iiの値が含まれる。なお、流入電流Iiがない場合には、転写電流Itpと転写出力電流Itoとは等しい。
【0085】
次いで、ステップS230以降において、CPU61は、実施形態1と同様に、上記ステップS145からステップS165までの処理を実行する。
【0086】
<実施形態3の効果>
実施形態3では、起因電圧Vxは、順転写出力電圧検出回路73によって検出された転写電圧Vtp、並びに電流検出回路84によって検出された流入電流Iiおよび転写電流Itpを用いて算出される。その際、順転写出力電圧検出回路73および電流検出回路84は既存の構成であるため、何ら新たに構成を追加することなく、すなわち、構成の追加によるコストの増加を伴わずに、起因電圧Vxを演算によって容易に決定することができる。
【0087】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0088】
(1)上記各実施形態においては、本発明における転写電流検出手段および流入電流検出手段を同一の電流検出回路84によって構成する例を示したが、これに限られない。転写電流Itpおよび流入電流Iiは、個別に設けられた転写電流検出手段および流入電流検出手段によって、それぞれ個別に検出されるようにしてもよい。
【0089】
(2)実施形態1および2において起因電圧Vxを決定する際に、図4のステップS130において、流入電流Iiが有るかどうか、すなわち、流入電流Iiが検出されたかどうか(ゼロでないかどうか)を判定する例を示したが、これに限られない。
【0090】
流入電流Iiが所定値以上である場合、逆電圧Vbを徐々に増加させるように制御し、逆電圧Vbの増加によって流入電流Iiが所定値未満となった場合、そのときの逆電圧Vbを起因電圧Vxと決定する、あるいは起因電圧Vxを打ち消すための電圧値として決定するようにしてもよい。
【0091】
この構成においても、例えば、流入電流Iiの所定値を、画像形成に影響を及ぼさない値に設定し、流入電流Iiをその所定値まで打ち消す逆電圧Vbの値によって、起因電圧Vxを好適に決定することができる。あるいは、起因電圧Vxを打ち消すための電圧値として、逆電圧Vbを決定することができる。
【0092】
(3)実施形態1のステップS140に続く処理において、ステップS142およびステップS144の処理に替えて、単に、逆バイアスVbの出力をOFFする処理を行うようにしてもよい。すなわち、逆バイアスVbを起因電圧Vxの決定のために用い、起因電圧Vxが決定されたら逆バイアスVbをOFFするようにしてもよい。
【0093】
(4)実施形態3における起因電圧Vxの決定を、逆バイアス印加回路63を有する実施形態1のバイアス印加回路60を用いて実施してもよい。その際、実施形態3における起因電圧Vxの決定を、実施形態1のバイアス印加回路60の順転写バイアス印加回路62のみを用いて行うようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係るレーザプリンタの内部構成を示す側断面図
【図2】本発明の実施形態1におけるバイアス印加回路の要部構成のブロック図
【図3】流入(リーク)電流を示す説明図
【図4】実施形態1に係る処理内容を示すフローチャート
【図5】実施形態2に係る処理内容を示すフローチャート
【図6】本発明の実施形態3におけるバイアス印加回路の要部構成のブロック図
【図7】実施形態3に係る処理内容を示すフローチャート
【符号の説明】
【0095】
1…レーザプリンタ(画像形成装置)
27…感光体ドラム(像担持体、負荷)
30…転写ローラ(転写手段、負荷)
61…CPU(決定手段、算出手段、調整手段、制御手段)
62…順転写バイアス印加回路(印加手段)
63…逆バイアス印加回路(逆電圧印加手段)
84…電流検出回路(流入電流検出手段、転写電流検出手段)
73…順転写出力電圧検出回路(電圧検出手段)
Vtp…順転写バイアス電圧(転写電圧)
Vb…逆バイアス電圧(逆電圧)
Vx…起因電圧
Ii…流入電流
Itp…転写電流
Zr…負荷抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤によって現像された現像剤像を担持する像担持手段と、
前記像担持手段を帯電させる帯電手段と、
転写電圧の印加に応じて前記現像剤像を被記録媒体に転写する転写手段と、
前記転写電圧を生成し、前記転写電圧を前記転写手段に印加する印加手段と、
前記転写電圧を検出する電圧検出手段と、
前記像担持手段の帯電に起因して前記印加手段に流入する流入電流を検出する流入電流検出手段と、
前記転写電圧が前記転写手段に印加された際に流れる転写電流を検出する転写電流検出手段と、
前記流入電流を引き起こす起因電圧を決定する決定手段と、
検出された前記転写電圧、検出された前記転写電流、および決定された前記起因電圧を用いて、前記印加手段の負荷抵抗を算出する算出手段と、
算出された前記負荷抵抗に応じて前記転写電流を調整する調整手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記決定手段は、前記被記録媒体が前記像担持手段と前記転写手段との間に供給されていない状態において検出された、前記転写電圧、前記流入電流、および前記転写電流を用いて前記起因電圧を算出する。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記転写電圧と逆極性の逆電圧を前記転写手段に印加する逆電圧印加手段をさらに備え、
前記決定手段は、
前記被記録媒体が前記像担持手段と前記転写手段との間に供給されていない状態において、
前記流入電流が所定値以上である場合、前記逆電圧を徐々に増加させるように前記逆電圧印加手段を制御し、前記逆電圧の増加によって前記流入電流が所定値未満となった場合、そのときの前記逆電圧を前記起因電圧と決定する。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記決定手段は、前記逆電圧の増加によって前記流入電流がゼロとなった場合、そのときの前記逆電圧を前記起因電圧と決定するとともに、前記逆電圧をOFFするように前記逆電圧印加手段を制御する。
【請求項5】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記転写電圧と逆極性の逆電圧を前記転写手段に印加する逆電圧印加手段をさらに備え、
前記決定手段は、
前記被記録媒体が前記像担持手段と前記転写手段との間に供給されていない状態において、
前記流入電流が所定値以上である場合、前記逆電圧を徐々に増加させるように前記逆電圧印加手段を制御し、前記逆電圧の増加によって前記流入電流が所定値未満となった場合、その逆電圧を印加した状態を維持するように前記逆電圧印加手段を制御し、
前記算出手段は、
前記決定手段により前記流入電流が所定値未満となるように前記逆電圧が印加されている状態で、前記負荷抵抗を算出する。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、
前記決定手段は、前記逆電圧の増加によって前記流入電流がゼロとなった場合、前記起因電圧をゼロと決定するとともに、そのときの前記逆電圧を印加した状態を維持するように前記逆電圧印加手段を制御する。
【請求項7】
現像剤によって現像された現像剤像を担持する像担持手段と、
前記像担持手段を帯電させる帯電手段と、
転写電圧の印加に応じて前記現像剤像を被記録媒体に転写する転写手段と、
前記転写電圧を生成し、前記転写電圧を前記転写手段に印加する印加手段と、
前記転写電圧を検出する電圧検出手段と、
前記像担持手段の帯電に起因して前記印加手段に流入する流入電流を検出する流入電流検出手段と、
前記転写電圧が前記転写手段に印加された際に流れる転写電流を検出する転写電流検出手段と、
前記転写電圧と逆極性の逆電圧を前記転写手段に印加する逆電圧印加手段と、
前記被記録媒体が前記像担持手段と前記転写手段との間に供給されていない状態において、前記流入電流が所定値以上である場合、前記逆電圧を徐々に増加させるように前記逆電圧印加手段を制御し、前記逆電圧の増加によって前記流入電流が所定値未満となった場合、その逆電圧を印加した状態を維持するように前記逆電圧印加手段を制御する制御手段と、
検出された前記転写電圧、および検出された前記転写電流を用いて、前記印加手段の負荷抵抗を算出する算出手段であって、前記制御手段により前記流入電流が所定値未満となるように前記逆電圧が印加されている状態で、前記負荷抵抗を算出する算出手段と、
算出された前記負荷抵抗に応じて前記転写電流を調整する調整手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記逆電圧の増加によって前記流入電流がゼロとなった場合、そのときの前記逆電圧を印加した状態を維持するように前記逆電圧印加手段を制御する。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記算出手段は、画像形成処理の要求に応じて前記負荷抵抗を算出する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−169957(P2010−169957A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13329(P2009−13329)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】