説明

画像形成装置

【課題】管理が煩雑となったり、装置が複雑となったりすることなく、印刷物の複写制限が可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】複写制限を掛けたい元原稿から、その配布用印刷物を作成するときに、背景となる地紋画像に複写制限の内容を電子透かしとして埋め込むとともに、必要に応じて複写を許可するトークンを外部記憶媒体に格納しておき、作成された配布用印刷物を複写するときには、その背景の地紋画像に埋め込まれた電子透かしから複写制限の内容を抽出し、複写を許可するトークンが格納された外部記憶媒体が装着されている場合にのみ、元の配布用印刷物と同等の複写物を作成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機等の画像形成装置において印刷物の複写を制限する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機の性能向上に伴い、印刷物の偽造防止や著作権保護、あるいは情報漏洩防止等の対策として、印刷物の複写を制限する技術に対する要求が高まっている。
印刷物の偽造防止等に役立つ技術として、印刷物の画像の中に人間の目では認知されにくい潜像を埋め込んでおき、それを複写するとその潜像が浮かび上がって印刷されるようにする技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
又、著作権保護等に役立つ技術として、印刷物の画像の中に人間が知覚できない方法で秘密のデータを埋め込む電子透かしの技術が開示されている(例えば、特許文献2)。
【0003】
さらに、特許文献3では、印刷物の作成時に、潜像と、複写を許可するための許諾条件(例えば、ユーザのパスワード、文書の識別番号、クレジットカード情報など)を含んだ電子透かしとを埋め込んでおくことにより、指定された許諾条件を満たすユーザだけが原本と同等の複写物を印刷でき、それ以外のユーザは潜像が浮かび上がった複写物しか印刷できないようにする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭53−98829号公報
【特許文献2】特開2003−101762号公報
【特許文献3】特開2004−228897号公報(段落0033〜0037、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3で開示された技術では、複写を許可するための許諾条件の管理が煩雑となったり、装置が複雑となったりするという課題があった。
この技術は、ユーザのパスワードを許諾条件とした場合には、複写機を使うすべてのユーザ名とパスワードとの対応を管理する必要があり、文書の識別番号を許諾条件とした場合には、個別の文書に付与される識別番号を、複写が許可されるユーザだけに別途通知する手間が必要であり、さらに、万一識別番号が漏洩すると、第三者による不正な複写を防ぐことができない。又、クレジットカード情報を許諾条件とした場合には、通信回線等を介してクレジットカード認証システムと接続する機能を装備しなければならない。
【0006】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたものであり、管理が煩雑となったり、装置が複雑となったりすることなく、印刷物の複写制限が可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、複写制限を掛けたい元原稿から、その配布用印刷物(複写制限付き原本)を作成するときに、背景となる地紋画像に複写制限の内容を電子透かしとして埋め込むとともに、必要に応じて複写を許可する管理情報を外部記憶媒体に格納しておき、作成された配布用印刷物を複写するときには、その背景の地紋画像に埋め込まれた電子透かしから複写制限の内容を抽出し、複写を許可する管理情報が格納された外部記憶媒体が装着されている場合にのみ、元の配布用印刷物と同等の複写物を作成するようにした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、管理が煩雑となったり、装置が複雑となったりすることなく、印刷物の複写制限が可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による複写制限の原理を説明するため概念図である。
【図2】第1実施形態の複合機の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図3】複写制限付き原本作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態における複写処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態の複合機の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図6】第2実施形態における複写制限指定画面の表示例である。
【図7】各種オプションに対応する印刷処理の結果を模式的に表現したものである。
【図8】第2実施形態における複写処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態につき、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
《第1実施形態》
本発明に係る画像形成装置の第1実施形態として、複写を制限したい元の原稿から、その配布用印刷物である複写制限付き原本を作成することによって、複写制限を行う画像形成装置の事例を説明する。
【0012】
図1は、本発明による複写制限の原理を説明するため概念図である。
まず始めに、ユーザは、複写制限を掛けたい元原稿P1を本発明に係る画像形成装置の第1実施形態である複合機10に読み込ませて、複写制限付き原本P2を作成する。このとき、複合機10は、作成される複写制限付き原本P2に、それが不正な複写物であることを示す潜像を埋め込む。それにより、作成された複写制限付き原本P2が他の複写機30で複写された場合は、埋め込まれた潜像が顕像化された顕像入り複写物P3が作成されるので、それが不正な複写物であることが明確となる。
【0013】
又、複写制限付き原本P2を作成するとき、複合機10は、その地紋画像に、複写制限が掛けられていることを示す情報を電子透かしとして埋め込む。それにより、作成された複写制限付き原本P2を他の同種の複合機10で複写しようとした場合は、その複合機10が、複写制限付き原本P2に埋め込まれた電子透かしから複写制限の情報を抽出して、画面に警告メッセージM1(例えば、「複写禁止!」)を表示し、複写を許可しない。
【0014】
一方、複写制限付き原本P2を作成するときには、ユーザは必要に応じて、その複写を許可する管理情報(以下、「複写許可トークン」という)を発行し、それをUSB(Universal Serial Bus)メモリやSDカードなどの外部記憶媒体に格納することで複写許可媒体8を作成する。それにより、他のユーザがその複写許可媒体8を他の複合機10に装着して複写制限付き原本P2を複写すれば、その複写制限付き原本P2と同等の(潜像が顕像化されていない)複写制限付き複写物P4を作成することができる。このとき、複合機10は、作成される複写制限付き複写物P4にも複写制限付き原本P2と同じ複写制限を掛けるので、さらに他のユーザが次に複写制限付き複写物P4を複写しようとした場合にも前記と同様な処理が行われ、複写許可媒体8を使ったときだけにその複写物を作成することができる。
【0015】
なお、1つの複写許可媒体8には複数の複写許可トークンを格納でき、又、格納された複写許可トークンを他の複写許可媒体8に移動できるようにしてもよいが、複写許可トークンの複写は、公知のコピーガード技術などによって禁止することが好ましい。
【0016】
以上説明したように、複合機10を利用して、元原稿P1から複写制限付き原本P2を作成するとともに、必要に応じて複写許可媒体8を作成することにより、元原稿P1に記載された情報を印刷物として流通させる場合に、情報の不正利用を防止したり、複写を禁止したりする一方で、特定の人には複写を許可することが可能となる。
【0017】
図2は、複合機10の概略構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、複合機10は、記憶部2と、表示操作部3と、原稿読取部4と、印刷部5と、記憶媒体入出力部6と、通信インタフェース部7と、これらを含む装置全体の制御を司る制御部1とを備えて構成される。又、複合機10は、ネットワーク40を介してホストPC50と接続されており、ホストPC50から受信したデータを印刷することもできる。ホストPC50は、複合機10とのデータの送受信を司る通信インタフェース部51と、複合機10の印刷設定などを制御するプリンタドライバ52と、通信ガイダンスなどを表示してユーザの操作を受け付ける表示操作部53とを備えて構成される。、
【0018】
記憶部2には、地紋画像テーブル21が備えられる。「地紋」とは、ここでは印刷物の背景として通常は淡い色で描かれる縞模様などを指すものとする。地紋画像テーブル21には、そのままでは人間の目には認知されにくいが、複写すると文字や画像がはっきりと浮き上がって見える潜像(例えば、複写物であることを示す「これはコピーです」なる文字列など)を含む地紋(以下、「潜像入り地紋」という)の画像と、その潜像が読み取られて顕像化したときの地紋(以下、「顕像入り地紋」という)の画像とが格納される。本実施形態においては、「複写は制限されています」なる潜像を含む潜像入り地紋画像SAと、その顕像入り地紋画像TAと、「不正コピー」なる潜像を含む潜像入り地紋画像SBと、その顕像入り地紋画像TBとの4種類の地紋画像が格納されているものとする。
【0019】
表示操作部3は、例えば、タッチパネル式の液晶ディスプレイと各種操作キーとにより構成され、制御部1からの指令にしたがって、ユーザ向けの操作ガイダンスやメッセージを表示したり、複写制限付き原本P2を作成する際の複写制限の内容の入力を受け付けたりする。
【0020】
原稿読取部4は、ADF(Auto Document Feeder)を備えており、制御部1からの指令にしたがって、ADFにセットされた複数枚の原稿の画像を連続して読み取る。
【0021】
印刷部5は、制御部1からの指令にしたがって、複写制限付き原本P2又はその複写制限付き複写物P4の画像を、コピー用紙等の印刷媒体に印刷する。
【0022】
記憶媒体入出力部6は、制御部1からの指令にしたがって、例えば、USBメモリやSDカードなどの着脱可能な外部記憶媒体に、複写許可トークンを格納し、又、装着された外部記憶媒体に格納されている複写許可トークンを読み出す。
【0023】
通信インタフェース部7は、制御部1がネットワーク40を介してホストPC50とデータを送受信するための通信制御を司り、ホストPC50から印刷データやユーザの操作情報を受信したり、ホストPC50に表示するメッセージを送信したりする。
【0024】
制御部1は、複写制限設定部11、電子透かし挿入部12、画像合成部13、複写制限解除部14、画像分離部15、電子透かし抽出部16、読取処理部17、及び印刷処理部18の各機能を実現する。これらを含む制御部1の機能は、不図示のCPUが不図示のROM等に格納された各種プログラムを不図示のメモリにロードして実行することにより、実現される。
【0025】
読取処理部17は、複写制限設定部11又は複写制限解除部14からの指令にしたがって、原稿読取部4の動作を制御し、ADFにセットされている原稿の画像を読み取らせる機能をもつ。
【0026】
印刷処理部18は、複写制限設定部11の指令にしたがって、印刷部5の動作を制御し、画像合成部13によって生成された、複写制限付き原本P2又はその複写制限付き複写物P4の画像を、コピー用紙等の印刷媒体に印刷させる機能をもつ。
【0027】
複写制限設定部11は、表示操作部3、読取処理部17、電子透かし挿入部12、画像合成部13、及び印刷処理部18を制御して、元原稿P1から複写制限付き原本P2を作成するとともに、必要に応じて複写許可媒体8を作成する機能と、複写制限解除部14からの依頼により、読み取られた複写制限付き原本P2の画像から、その複写制限付き複写物P4を作成する機能とをもつ。
【0028】
元原稿P1から複写制限付き原本P2を作成する場合、複写制限設定部11は、表示操作部3を制御して、設定すべき複写制限の指定をユーザから受け付け、受け付けた複写制限に対応する複写制限情報を生成する。
本実施形態においては、標準の複写制限が「複写禁止」であり、ユーザが「複写許可あり」を指定したときのみ複写許可媒体8を作成するものとする。そのような複写制限の指定は、例えば、表示操作部3にガイダンスを表示して、複写許可の有無をユーザに選択入力してもらえばよい。
【0029】
ユーザが「複写許可あり」を指定したときには、複写制限設定部11は、作成する複写制限付き原本P2の「複写禁止」を解除するための複写許可トークンを生成し、それを記憶媒体入出力部6に装着されたUSBメモリなどの外部記憶媒体に格納させることによって、複写許可媒体8を作成する。複写許可トークンを生成する場合は、それによって解除される複写制限と対応付けるために、複写制限情報と複写許可トークンとの両者に同一のトークン識別IDを付与する。このトークン識別IDには、例えば、装置のユニークな識別名称と作成日時あるいは作成シリアル番号等を組み合わせることによって生成される、ユニークな値を用いる。なお、複写許可トークンは、必要に応じて複数個生成してもよく、又、複写可能部数を付加し、複写した部数を減算していくことによって、複写部数を制限するようにしてもよい。
【0030】
その後、複写制限設定部11は、指定された複写制限に対応する潜像入り地紋画像に、作成した複写制限情報を電子透かしとして埋め込むよう、電子透かし挿入部12に指令し、その結果として得られる画像を背景画像として、原稿読取部4から読み取った元原稿P1の画像を合成するよう、画像合成部13に指令することによって、複写制限付き原本P2の画像を生成させ、その合成画像を印刷するよう、印刷処理部18に指令することによって、複写制限付き原本P2の画像の印刷を実行させる。
【0031】
一方、読み取られた複写制限付き原本P2の画像からその複写制限付き複写物P4を作成する場合、読み取られた複写制限付き原本P2の地紋に含まれていた潜像は顕像化されてしまうので、複写制限付き原本P2と同等の複写物を作成するためには、元の潜像入り地紋画像を再合成する必要がある。さらに、作成する複写制限付き複写物P4にも原本と同じ複写制限を掛ける必要がある。
【0032】
そこで、複写制限設定部11は、複写制限解除部14からの依頼により、読み取られた複写制限付き原本P2の画像からその複写制限付き複写物P4を作成する場合、読み取られた複写制限付き原本P2の画像から分離された、顕像化後の地紋画像に対応する潜像入り地紋画像に、電子透かし抽出部16によって抽出された、元の複写制限情報と同じ情報を、再度電子透かしとして埋め込むよう、電子透かし挿入部12に指令し、その結果として得られる画像を背景画像として、複写制限付き原本P2から分離され地紋が除去された後の原稿画像を合成するよう、画像合成部13に指令することによって、複写制限付き複写物P4の画像を生成させ、その合成画像を印刷するよう、印刷処理部18に指令することによって、複写制限付き複写物P4の画像の印刷を実行させる。
【0033】
電子透かし挿入部12は、複写制限設定部11からの指令にしたがって、複写制限設定部11によって指示された複写制限情報を、指示された潜像入り地紋画像の中に電子透かしとして埋め込む機能をもつ。画像に情報を電子透かしとして埋め込む技術は公知であるため(例えば、特許文献3)、ここでの説明は省略する。ただし、作成された複写制限付き原本P2が、後に他の装置で読み取られるときには、潜像入り地紋画像が顕像化された状態で読み取られるので、電子透かしは顕像化後の地紋画像に情報が残るように生成する必要がある。
【0034】
画像合成部13は、複写制限設定部11からの指令にしたがって、電子透かし挿入部12によって複写制限情報が埋め込まれた潜像入り地紋画像を背景として、これに元原稿P1の画像又は潜像画像が除去された後の複写制限付き原本P2の画像を合成し、複写制限付き原本P2又はその複写制限付き複写物P4の画像を生成する。
【0035】
複写制限解除部14は、読取処理部17、画像分離部15、及び電子透かし抽出部16を制御しつつ、読み取られた複写制限付き原本P2からその複写制限付き複写物P4を作成することの可否を判定し、作成可と判定した場合は複写制限設定部11に複写制限付き複写物P4の作成を依頼する機能をもつ。
【0036】
ユーザが、原稿読取部4にセットされた複写制限付き原本P2の複写操作を行った場合、複写制限解除部14は、まず、読取処理部17によって読み取られた複写制限付き原本P2の画像から地紋画像を分離するよう、画像分離部15に指令し、分離された顕像化後の地紋画像から電子透かしを取り出すよう、電子透かし抽出部16に指令して、複写制限付き原本P2の画像に埋め込まれている複写制限情報を抽出させる。そして、複写制限解除部14は、抽出された複写制限情報が「複写禁止」であれば、表示操作部3にその旨を示すメッセージを表示させるなどして複写制限付き複写物P4の作成を禁じ、抽出した複写制限情報が「複写許可あり」であれば、対応する複写許可媒体8の有無によって複写制限付き複写物P4の作成の可否を判定する。
【0037】
具体的には、複写制限解除部14は、記憶媒体入出力部6に装着されているUSBメモリなどの外部記憶媒体に格納されているすべての複写許可トークンを読み出させ、その中に、抽出された複写制限情報と同一のトークン識別IDをもつものがあるか否かを判定し、該当するものがなければ複写禁止のメッセージを表示するなどして複写制限付き複写物P4の作成を禁じ、該当するものがあれば複写制限設定部11に複写制限付き複写物P4の作成を依頼する。
複写制限設定部11に複写制限付き複写物P4の作成を依頼する場合、複写制限解除部14は、画像分離部15によって分離された地紋画像の種類と、電子透かし抽出部16によって抽出された複写制限情報とを複写制限設定部11に引き渡す。
【0038】
画像分離部15は、複写制限解除部14からの指令にしたがって、読取処理部17によって読み取られた複写制限付き原本P2の画像から地紋画像を分離し、地紋画像と地紋が除去された後の複写制限付き原本P2の原稿画像とを生成する機能をもつ。このとき読み取られる地紋画像は、潜像の部分が顕像化されているので、画像分離部15は、地紋画像テーブル21に格納されている顕像入り地紋画像とのパターンマッチングにより、最も相関の高い顕像入り地紋画像を用い、電子透かしの情報が消失しないように地紋画像の分離を行う。
【0039】
電子透かし抽出部16は、複写制限解除部14からの指令にしたがって、画像分離部15によって分離された顕像化後の地紋画像の中から、電子透かしとして埋め込まれている複写制限情報を抽出する。画像に電子透かしとして埋め込まれた情報を抽出する技術は公知であるため(例えば、特許文献3)、ここでの説明は省略する。
【0040】
以下、図3及び図4を参照しながら、制御部1(図2)によって実行される複写制限付き原本作成処理と複写処理の流れを説明する。なお、各ステップにおける処理の詳細については前記した通りであるので、ここでは、全体の処理の流れを簡単に述べる。
【0041】
図3は、制御部1(図2)によって実行される複写制限付き原本作成処理の流れを示すフローチャートである。
ユーザによって表示操作部3を介して複写制限付き原本P2の作成が指示されると、この処理が起動される。複写制限設定部11は、まず、ステップS301で、表示操作部3を介してユーザから複写制限指定を受け付ける。次に、ステップS302で、複写制限設定部11は、解除が必要か否か、つまり、ユーザから「複写許可あり」が指定されたか否かを判定し、解除が必要と判定した場合は(ステップS302でYes)ステップS303〜S306の各処理を実行し、そうでなければ(ステップS302でNo)ステップS307〜S308の各処理を実行する。
【0042】
複写制限設定部11は、ステップS303で、生成する複写許可トークンに付与するトークン識別IDを生成し、ステップS304で、それぞれがそのトークン識別IDを有する、「複写許可あり」を表す複写制限情報と複写許可トークンとを生成した後、ステップS305で、複写許可媒体8にその複写許可トークンを格納させる。続いて、複写制限設定部11は、ステップS306で、背景とする地紋画像として、「複写は制限されています」なる潜像を含む、地紋画像SAを選択する。
他方、複写制限設定部11は、ステップS307で、「複写禁止」を表す複写制限情報を生成し、ステップS308で、背景とする地紋画像として、「不正コピー」なる潜像を含む、地紋画像SBを選択する。
【0043】
次に、複写制限設定部11は、ステップS309で、ステップS306又はS308で選択した地紋画像に、ステップS304又はS307で生成した複写制限情報を電子透かしとして埋め込ませ、ステップS310で、元原稿P1の画像を読み取らせ、この元原稿P1の画像とステップS309で複写制限情報が埋め込まれた地紋画像とを合成させ、最後に、ステップS311で、その合成画像を印刷媒体に印刷させることによって複写制限付き原本P2の作成を完了する。
【0044】
図4は、制御部1(図2)によって実行される複写処理の流れを示すフローチャートである。
ユーザによって表示操作部3を介して複写制限付き原本P2の複写が指示されるとこの処理が起動される。複写制限解除部14は、まずステップS401で、原稿読取部4にセットされた原稿を読み取らせ、次に、ステップS402で、読み取られた原稿の画像を地紋画像と原稿画像とに分離させる。続いて、複写制限解除部14は、ステップS403で、分離された地紋画像から電子透かしとして埋め込まれている複写制限情報を抽出させ、ステップS404で、解除が可能か否か、つまり、抽出された複写制限情報が「複写禁止」(解除不可)か「複写許可あり」(解除可能)かを判定し、解除が可能と判定した場合は(ステップS404でYes)ステップS405〜S410の各処理を実行し、そうでなければ(ステップS404でNo)ステップS411の処理を実行する。
【0045】
複写制限解除部14は、ステップS405で、複写許可媒体8から複写許可トークンを読み出させ、ステップS406で、該当するトークンがあるか、つまり、ステップS403で抽出された複写制限情報と同一のトークン識別IDをもつ複写許可トークンがあるか否かを判定し、該当するトークンがあれば(ステップS406でYes)、複写制限設定部11にステップS407以下の各処理を実行するように依頼し、そうでなければ(ステップS406でNo)ステップS411の処理を実行する。
【0046】
複写制限設定部11は、ステップS407で、ステップS402で分離された顕像化後の地紋画像に対応する元の潜像入り地紋画像を選択し、ステップS408で、その地紋画像にステップS403で抽出された元の複写制限情報を電子透かしとして埋め込ませ、ステップS409で、ステップS402で分離された原稿画像と複写制限情報が埋め込まれた地紋画像とを合成させ、最後に、ステップS410で、その画像を印刷媒体に印刷させることによって複写制限付き原本P2の複写を完了する。
一方、複写制限解除部14は、ステップS411で、読み取られた複写制限付き原本P2は複写禁止である旨を示すメッセージを表示操作部3に表示させ、処理を終了する。
【0047】
なお、本実施形態では、ユーザが複合機10を直接操作することによって複写制限付き原本P2を作成する構成としたが、プリンタドライバ52(図2)に同等の機能をもたせ、ユーザがホストPC50を操作することによって作成する構成としてもよい。
又、本実施形態では、複写制限付き原本P1やその複写制限付き複写物P4を作成するユーザには特に制限を設けていないが、例えば、そのような操作を実行するためには所定のパスワード入力を必要としたり、別途個人識別用IDカードなどによるユーザ認証手段を備え、認められたユーザだけが操作を実行できるようにしてもよい。
又、複写許可トークンの格納時にパスワードを設定しておき、そのパスワードを入力しないと複写時に当該トークンが有効にならないようにしてもよい。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、複合機10やホストPC50に着脱可能な外部記憶媒体を用いて配布用印刷物の複写制限を解除することができるので、個別にパスワード等の暗証情報を設定して複写制限を解除する方法に比べて管理が容易で安全性が高く、かつ、装置が複雑となることなしに印刷物の複写制限が可能な画像形成装置が提供される。
【0049】
《第2実施形態》
続いて、本発明に係る画像形成装置の第2実施形態として、複写制限付き原本や複写物の出力様式を、より詳細に設定できる画像形成装置の事例を説明する。
【0050】
図5は、本発明に係る画像形成装置の第2実施形態である複合機10aの概略構成を示す機能ブロック図である。図5に示した複合機10aは、第1実施形態の複合機10の記憶部2に、網かけ画像テーブル22と上書きデータテーブル23とを追加した構成になっており、その他は複合機10と同様であるので、同一の構成要素には同一の番号を付して重複する説明を省略し、複合機10との違いを中心に説明する。
【0051】
複合機10aを利用した複写制限の基本的な原理は、図1に示した第1実施形態の複合機10を利用した場合と同様である。又、複合機10aの制御部1(図5)によって実行される複写制限付き原本作成処理の流れも、図3に示した第1実施形態と同様である。
第1実施形態との主たる違いは、複写制限情報の内容であり、第1実施形態では複写制限情報が「複写禁止」と「複写許可あり」との区別しかなかったのに対し、第2実施形態は、ユーザが複写制限情報をより詳細に設定することができる点で相違する。第2実施形態の複合機10aを利用すれば、ユーザは、複写制限時の動作を、「複写禁止」以外に「特定領域を塗りつぶす」や「特定領域をスクランブルする」に変更したり、複写制限解除時の動作を、「複写許可あり」以外に「元原稿を復元」に変更したりすることができる。
【0052】
そのような動作の指定は、図3に示した複写制限付き原本作成処理のステップS301において、より詳細な複写制限指定をユーザから受け付けることによって行われる。
図6は、ユーザが複写制限指定を行うときに表示操作部3に表示される、複写制限設定画面の表示例を示したものである。この例では、ユーザは第1実施形態の複写制限に相当する「標準複写制限」以外に、「オプション指定」を選択することができるようになっている。
又、ユーザは、「複写許可あり」のチェックボックスにチェックマークを付すことで複写許可媒体8の生成を指定でき、「元原稿を復元」のチェックボックスにチェックマークを付すことで元原稿P1を復元するよう指定することができる。
ユーザが「オプション指定」を選択した場合は、さらに6種類の出力オプションを選択指定できる。これらの出力オプションは、対応するチェックボックスにチェックマークを付すことによって指定が有効となり、図6の例は、「地紋選択」と「カラー複写禁止」と「塗りつぶし領域設定」との3つの指定が有効となっている状態を示している。
【0053】
「地紋選択」は、ユーザがそれぞれ「複写禁止」及び「複写許可あり」の複写制限付き原本P2を作成するときに、使用したい潜像入り地紋画像を指定するオプションであり、ユーザは、不図示の詳細選択画面に表示される地紋画像テーブル21に格納されている潜像入り地紋の一覧の中から、使用したい潜像入り地紋画像を選択入力することができる。
「カラー複写禁止」は、カラーで作成された複写制限付き原本P2のカラー複写を禁止するオプションである。
「塗りつぶし領域設定」、「網かけ領域設定」、及び「スクランブル領域設定」の3つは、いずれも複写制限付き原本P2又はその複写制限付き複写物P4を作成するときに、指定した領域に対して、それぞれ、塗りつぶし、網かけ、及びスクランブルの処理を施すためのオプションであり、ユーザは、不図示の領域設定画面に表示される原稿画像の中から、当該処理を施したい特定の領域を指定することができる。網かけを指定する場合、さらにユーザは、不図示の詳細選択画面に表示される網かけ画像テーブル22に格納されている網かけパターンの一覧の中から、使用したい網かけパターンを選択入力することができる。
【0054】
図7(a)は、氏名の情報の塗りつぶしが指定された場合、図7(b)は、一覧表の網かけが指定された場合、図7(c)は、写真の画像のスクランブルが指定された場合の、印刷処理の結果をそれぞれ模式的に表現したものである。
又、「上書き画像追加」は、出力する原稿画像上に特定の文字列や画像を上書き処理するためのオプションであり、ユーザは不図示の詳細選択画面に表示される上書きデータテーブル23に格納されている上書きデータ一覧の中から使用したい上書きデータを選択入力することができる。
図7(d)は、著作権表示の上書きデータが指定された場合の印刷処理の結果を模式的に表現したものである。
【0055】
以上のようにしてユーザが指定した複写制限の内容は、図3のステップS304において生成される複写制限情報に反映される。又、ユーザによって指定された地紋画像の選択は、図3のステップS306及びステップS308における地紋画像の選択に反映され、塗りつぶしなどの領域の指定や上書き画像の追加は、図3のステップS310において、指定された領域の背景となる地紋画像を所定のものとすることや、合成後の画像に指定された上書きデータの画像を上書きすることによって行われる。
その他の複写制限付き原本作成処理は、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
図8は、複合機10aの制御部1(図5)によって実行される複写処理aの流れを示すフローチャートである。
図8に示した複写処理aは、図4に示した第1実施形態の複写処理のステップS403とS404との間に、ステップS801〜S804が追加されたものとなっているので、追加された部分について詳しく説明する。
【0057】
ユーザによって複写制限付き原本P2の複写が指示され、読み取られた複写制限付き原本P2の画像から複写制限情報を抽出させた後、複写制限解除部14は、ステップS801で印刷禁止か否かを判定する。このとき、複写制限解除部14は、抽出された複写制限情報を参照して、複写制限として「カラー複写禁止」、「塗りつぶし領域設定」、「網かけ領域設定」、「スクランブル領域設定」、及び「上書き画像追加」のいずれも指定されていなければ、印刷禁止と判定し、そうでなければ印刷禁止ではないと判定する。
そして、複写制限解除部14は、印刷禁止と判定した場合(ステップS801でYes)、ステップS404〜S409の各処理を実行し、印刷禁止ではないと判定した場合(ステップS801でNo)、ステップS802〜S804の各処理を実行する。
【0058】
ステップS802で、複写制限解除部14は、指定されている複写制限の内容をユーザに知らせる確認メッセージ(例えば、「いくつかの領域が塗りつぶされますが、複写しますか?」など)を表示させ、ステップS803で複写を実行するか否かのユーザの指示内容を判定する。そしてユーザから複写を実行するよう指示があれば(ステップS803でYes)、複写制限解除部14は、ステップS804で指定されている複写制限の内容にしたがって(例えば、図7(a)のように指定された領域を塗りつぶして)出力画像を生成させ、そうでなければ(ステップS803でNo)ステップS404〜S409の各処理を実行する。
【0059】
ステップS404〜S409の各処理は、第1実施形態と同様であるが、ステップS403で抽出した複写制限情報において「元原稿を復元」が指定されている場合、複写制限解除部14は、元原稿P1を復元するよう複写制限設定部11に依頼し、複写制限設定部11は、ステップS407〜S409の各処理を実行せずに、ステップS410では、ステップS402で分離され地紋が除去された後の原稿画像をそのまま印刷媒体に印刷させることにより、元原稿を同等の複写物を作成する。
複写処理aのそれ以外の処理は実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
以上説明したように、第2実施形態によれば、ユーザが複写制限時及び複写制限解除時の動作や、複写制限付き原本P2や複写制限付き複写物P4の出力様式を指定することができるので、印刷物に記載された情報の機密度などに応じた柔軟な運用が可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 制御部
2 記憶部
3 表示操作部
8 複写許可媒体
10,10a 複合機
11 複写制限設定部
12 電子透かし挿入部
13 画像合成部
14 複写制限解除部
15 画像分離部
16 電子透かし抽出部
17 読取処理部
18 印刷処理部
21 地紋画像テーブル
22 網かけ画像テーブル
23 上書きデータテーブル
P1 元原稿
P2 複写制限付き原本
P3 顕像入り複写物
P4 複写制限付き複写物
M1 警告メッセージ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
元原稿から、不正コピーされたときに顕像化する潜像を含む前記元原稿の配布用印刷物を作成する機能を具備した画像形成装置において、
前記潜像を含む潜像入り地紋画像を記憶する記憶部と、
前記配布用印刷物に対する複写制限内容をユーザから受け付けて、前記配布用印刷物の複写を許可する管理情報を生成して外部記憶媒体に格納するとともに、前記管理情報の識別情報を含む複写制限情報を生成して、前記複写制限情報を前記潜像入り地紋画像に電子透かしとして埋め込み、この電子透かしが埋め込まれた前記潜像入り地紋画像を背景として前記元原稿の画像を合成した結果を、前記配布用印刷物の画像とする複写制限設定部と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
印刷物の画像を読み取って、その複写物を作成する画像形成装置において、
印刷物が不正コピーされたときに顕像化する潜像を含む潜像入り地紋画像と、前記潜像が読み取られて顕像化した後の顕像入り地紋画像とを記憶する記憶部と、
読み取った印刷物の画像に地紋画像が含まれるとき、読み取った印刷物の画像を地紋画像と地紋が除去された原稿画像とに分離し、分離した前記地紋画像から電子透かしとして埋め込まれている複写制限情報を抽出し、前記複写制限情報に含まれる複写を許可する管理情報の識別情報と一致する管理情報が格納されている外部記憶媒体が、当該装置に装着されているときにのみ、前記印刷物の複写を許可する複写制限解除部と、
前記複写制限情報を、分離した前記地紋画像の元の潜像を含む前記潜像入り地紋画像に電子透かしとして埋め込み、この電子透かしが埋め込まれた前記潜像入り地紋画像を背景として前記地紋が除去された原稿画像と合成した結果を、前記印刷物の複写物の画像とする複写制限設定部と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記複写制限設定部は、
前記配布用印刷物を作成するときに、ユーザによる複写制限時の動作と複写解除時の動作との指定が可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記指定が可能な動作は、元原稿の復元、地紋選択、カラー複写禁止、塗りつぶし領域設定、網かけ領域設定、スクランブル領域設定、及び上書き画像追加のいずれか一つ又は、これらの組合せである
ことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記憶部は、
さらに、ユーザが選択可能な潜像を含む他の地紋画像と、ユーザが選択可能な網かけパターン画像と、ユーザが選択可能な上書き画像との少なくとも一つを記憶し、
前記複写制限設定部は、
前記複写制限情報に含まれるユーザ指定の動作にしたがって、前記印刷物の複写物の画像を作成する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−177742(P2010−177742A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15176(P2009−15176)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】