説明

画像形成装置

【課題】画像形成条件が変化したときに現像剤担持体上の現像剤が媒体上の画像が形成されない部分に付着することがないようにすることができるようにする。
【解決手段】現像剤を担持する現像剤担持体と、現像剤供給部材と、現像剤担持体に電圧を印加する現像剤担持体電圧印加部と、現像剤供給部材に電圧を印加する現像剤供給部材電圧印加部と、リセットモード時に、現像剤供給部材電圧印加部によって印加される電圧と、現像剤担持体電圧印加部によって印加される電圧とのバイアス差を、印刷モード時のバイアス差より小さくするリセット動作処理部とを有する。リセットモード時に、バイアス差が、印刷モード時のバイアス差より小さくされるので、現像剤担持体上の現像剤の付着量が増加するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置、例えば、プリンタは、画像形成ユニットを備え、該画像形成ユニットにおいて、感光体ドラムの表面が、帯電ローラによって一様に帯電させられ、LEDヘッドによって露光されて静電潜像が形成され、該静電潜像に、現像剤担持体としての現像ローラ上で薄層化された現像剤としてのトナーが静電的に付着させられてトナー像が形成されるようになっている。そして、該トナー像は、転写ローラによって媒体としての用紙に転写され、定着器において定着させられ、画像が形成される。
【0003】
ところで、画像形成ユニットの本体、すなわち、画像形成ユニット本体内のトナーはトナー供給ローラによって前記現像ローラに供給されるようなっている。そのために、前記トナー供給ローラに供給バイアス電圧が印加され、現像ローラとトナー供給ローラとの間に電位差が形成される。そして、用紙上に形成された画像の濃度、すなわち、画像濃度を調整するために供給バイアス電圧が変更される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−305501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のプリンタにおいては、画像濃度を調整する場合以外には、供給バイアス電圧を変更することができないので、プリンタが置かれた環境、印刷デューティ等の条件、すなわち、画像形成条件が変化して、現像ローラ上へのトナーの供給量が増加することがあり、その場合、トナーが用紙上の画像が形成されない部分に付着して、画像品位を低下させてしまうことがある。
【0006】
本発明は、前記従来のプリンタの問題点を解決して、画像形成条件が変化したときに現像剤担持体上の現像剤が媒体上の画像が形成されない部分に付着することがなく、画像品位を向上させることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明の画像形成装置においては、所定の極性に帯電させられた現像剤を付着させて現像剤を担持する現像剤担持体と、該現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給部材と、前記現像剤担持体に電圧を印加する現像剤担持体電圧印加部と、前記現像剤供給部材に電圧を印加する現像剤供給部材電圧印加部と、所定の時間にわたりリセットモードを設定し、該リセットモード時に、前記現像剤供給部材電圧印加部によって印加される電圧と、前記現像剤担持体電圧印加部によって印加される電圧とのバイアス差を、印刷モード時のバイアス差より小さくするリセット動作処理部とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像形成装置においては、所定の極性に帯電させられた現像剤を付着させて現像剤を担持する現像剤担持体と、該現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給部材と、前記現像剤担持体に電圧を印加する現像剤担持体電圧印加部と、前記現像剤供給部材に電圧を印加する現像剤供給部材電圧印加部と、所定の時間にわたりリセットモードを設定し、該リセットモード時に、前記現像剤供給部材電圧印加部によって印加される電圧と、前記現像剤担持体電圧印加部によって印加される電圧とのバイアス差を、印刷モード時のバイアス差より小さくするリセット動作処理部とを有する。
【0009】
この場合、所定の時間にわたりリセットモードが設定され、該リセットモード時に、前記現像剤供給部材電圧印加部によって印加される電圧と、前記現像剤担持体電圧印加部によって印加される電圧とのバイアス差が、印刷モード時のバイアス差より小さくされるので、現像剤担持体上の現像剤の付着量が増加するのを防止することができる。したがって、現像剤が媒体上の画像が形成されない部分に付着することがなく、画像品位を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態における画像形成ユニットの概念図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概略図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における現像ローラ上のトナーの付着量を測定する測定装置の概念図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における低印刷デューティ時の現像ローラ上のトナーの付着量を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における印刷制御部の動作を示すタイムチャートである。
【図6】本発明の第1の実施の形態におけるリセットモード時のバイアス差と現像ローラ上のトナーの付着量との関係を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における印刷制御部の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
【0012】
図1は本発明の第1の実施の形態における画像形成ユニットの概念図、図2は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概略図である。
【0013】
図において、10はプリンタの本体、すなわち、装置本体であり、該装置本体10内には、媒体としての用紙Pを搬送するための搬送路25が配設され、該搬送路25に搬送ローラ26〜29が配設される。また、前記搬送路25に沿って、各色の現像剤像としてのトナー像を形成するためにブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色の画像形成ユニットBk(Black)、Y(Yellow)、M(Magenta)、C(Cyan)が配設され、該各画像形成ユニットBk、Y、M、Cに像担持体としての感光体ドラム11が配設される。そして、前記画像形成ユニットBk、Y、M、Cより下方には、用紙Pを搬送するとともに、前記各トナー像を用紙Pに転写するための転写ユニット34が配設され、各画像形成ユニットBk、Y、M、Cと転写ユニット34との間を前記用紙Pが搬送される。なお、前記転写ユニット34によってベルト駆動ユニットが構成される。
【0014】
また、画像形成ユニットBk、Y、M、Cにおける各感光体ドラム11と対向させて露光装置としてのLEDヘッド23が配設される。そして、前記転写ユニット34の下流側には、転写されたトナー像を用紙Pに定着させるための定着装置としての定着器35が配設される。
【0015】
各画像形成ユニットBk、Y、M、Cにおいては、前記感光体ドラム11が、図示されない駆動部としてのドラムモータによって所定の回転速度で回転させられると、前記感光体ドラム11に一定の圧力で接触させられた帯電装置としての帯電ローラ12が、感光体ドラム11の回転に伴って、感光体ドラム11と反対方向に回転させられ、前記感光体ドラム11の表面に所定の電圧を印加し、感光体ドラム11の表面を一様に帯電させる。なお、本実施の形態において、前記感光体ドラム11は、導電性支持体としてのアルミニウムの金属パイプに、光導電層としての電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層して形成された有機系感光体であり、前記帯電ローラ12は金属シャフト及び半導電性ゴム層から成る。
【0016】
そして、前記LEDヘッド23が感光体ドラム11の表面を露光すると、感光体ドラム11の表面に潜像としての図示されない静電潜像が形成される。
【0017】
また、45は、前記感光体ドラム11に隣接させて配設され、静電潜像を現像してトナー像を形成する現像器であり、該現像器45は、感光体ドラム11に現像剤としてのトナーを付着させる現像剤担持体としての現像ローラ16、該現像ローラ16上のトナーの厚さを規制し、現像剤層としてのトナー層を形成する現像剤層形成部材としての、かつ、現像剤規制部材としての現像ブレード17、前記現像ローラ16にトナーを供給する現像剤供給部材としてのトナー供給ローラ18等を備える。前記現像ローラ16は、感光体ドラム11に一定の圧力で接触させられ、前記感光体ドラム11と反対方向に回転させられ、前記トナー供給ローラ18は、現像ローラ16に一定の圧力で接触させられ、該現像ローラ16と同じ方向に回転させられる。
【0018】
前記現像ローラ16は金属シャフト及び半導電性ウレタンゴム材等から成り、前記現像ブレード17は、例えば、厚さが0.08〔mm〕であり、長手方向の長さが現像ローラ16の弾性体の幅とほぼ一致する薄板によって形成され、長手方向の一端は図示されないフレームに固定され、他端は先端からわずかに内側の面が現像ローラ16に当接するように配設される。
【0019】
そして、19は前記感光体ドラム11と接触させて配設され、弾性体から成るクリーニング装置としてのクリーニングブレードであり、該クリーニングブレード19は感光体ドラム11に残留したトナーを掻き取る。
【0020】
前記感光体ドラム11、帯電ローラ12、現像器45等は、画像形成ユニットBk、Y、M、Cの本体、すなわち、画像形成ユニット本体を構成する筐体20内に収容され、該筐体20の上方には、トナーを収容する現像剤収容部としてのトナーカートリッジ15が筐体20に対して着脱自在に配設される。
【0021】
前記転写ユニット34は、走行自在に配設された転写ベルト21、及び各感光体ドラム11と対向させて回転自在に配設された転写部材としての転写ローラ22を備える。前記転写ベルト21及び転写ローラ22は、図示されない電源によって所定の電圧が印加され、感光体ドラム11上の各トナー像を用紙Pに転写する。
【0022】
また、38はロワフレーム、40は、該ロワフレーム38に対して揺動自在に配設され、排出された用紙Pを積載するためのスタッカ31を備えたアッパフレームである。そして、前記転写ユニット34より下方において、前記搬送路25の端部に、用紙Pを収容する媒体収容部としての用紙カセット30が配設され、該用紙カセット30に、用紙Pを繰り出すための繰出部32が配設される。
【0023】
さらに、前記各画像形成ユニットBk、Y、M、Cにはそれぞれ電源部50が接続され、各電源部50は、トナーと同じ極性のバイアスを発生させ、帯電ローラ12に印加する帯電装置電圧印加部としての帯電ローラ用電源51、トナーと同じ極性のバイアス又は逆の極性のバイアスのいずれかを発生させ、現像ローラ16に印加する現像剤担持体電圧印加部としての現像ローラ用電源52、及びトナーと同じ極性のバイアスを発生させ、トナー供給ローラ18に印加する現像剤供給部材電圧印加部としてのトナー供給ローラ用電源53を備える。なお、トナーは任意の極性に帯電させることができるが、本実施の形態において、トナーは負の極性に帯電させられる。
【0024】
また、前記各画像形成ユニットBk、Y、M、Cにおいて各画像を形成するために、印刷制御部55が配設される。該印刷制御部55は、印刷モードを設定するための印刷動作処理部61、リセットモードを設定するためのリセット動作処理部62、印刷動作処理部61及びリセット動作処理部62によって設定されたモードに従って印刷速度を制御する速度制御部60、並びに印刷動作処理部61及びリセット動作処理部62によって設定されたモードに従って、前記各電源部50における帯電ローラ用電源51、現像ローラ用電源52及びトナー供給ローラ用電源53の各出力(電圧)を制御する電圧制御部70を備える。なお、プリンタが置かれた環境の変量、例えば、温度、湿度等を検出するために、環境情報を提供する環境変量検出部64として温度センサ、湿度センサ等をプリンタ内の所定の位置に配設することができる。
【0025】
次に、前記構成のプリンタの動作について説明する。
【0026】
まず、前記各画像形成ユニットBk、Y、M、Cにおいて、感光体ドラム11の表面は、帯電ローラ用電源51に接続された帯電ローラ12によって、トナーと同じ極性の任意の極性及び電位に帯電させられる。そして、前記印刷制御部55の図示されない書込制御部によって生成された画像データが、LEDヘッド23に送られると、該LEDヘッド23の発光素子としての図示されないLED素子が選択的に発光させられ、前記感光体ドラム11の表面に、印刷パターンに応じた静電潜像が形成される。
【0027】
また、前記トナー供給ローラ用電源53に接続されたトナー供給ローラ18は、現像ローラ用電源52に接続された現像ローラ16と当接させられ、回転に伴ってトナーを前記現像ローラ16に供給し、該現像ローラ16上のトナーは、現像ローラ16に当接させられた現像ブレード17との摩擦等によって帯電させられる。なお、現像ローラ16上のトナー層の厚さは、現像ローラ16に対する現像ブレード17の押圧力等によって決定される。
【0028】
前記現像ローラ16は、感光体ドラム11に当接させられ、電圧制御部70によって制御された電圧が現像ローラ用電源52により印加されると、トナーを静電潜像に付着させ、トナー像を形成する。
【0029】
一方、繰出部32によって1枚ずつ繰り出された用紙Pは、搬送ローラ26、27によって搬送され、静電気によって転写ベルト21に付着させられ、該転写ベルト21の走行に伴って、各画像形成ユニットBk、Y、M、Cと転写ユニット34との間を搬送され、その間に、各色のトナー像が、感光体ドラム11と転写ローラ22との間に形成される電界によって用紙Pに重ねて転写され、カラーのトナー像が形成される。用紙P上のカラーのトナー像は定着器35において定着させられ、カラーの画像が形成される。続いて、用紙Pは、搬送ローラ28、29によって更に搬送され、装置本体外に排出され、スタッカ31に積載される。なお、転写後に前記感光体ドラム11上に残留したトナーはクリーニングブレード19によって掻き取られる。
【0030】
ところで、現像ローラ用電源52によって発生させられる電圧をV1とし、トナー供給ローラ用電源53によって発生させられる電圧をV2としたとき、電圧V1、V2は同じ極性であり、絶対値で表した電圧V1、V2を|V1|、|V2|とすると、
|V1|≦|V2|
の関係に置かれる。なお、電圧V1、V2の値は、プリンタが置かれた環境、印刷デューティ等の画像形成条件、及び画像形成ユニットBk、Y、M、Cの使用状況等によって変更される。
【0031】
ここで、前記電圧|V1|、|V2|のバイアス差をVb
Vb=|V2|−|V1|
とする。バイアス差Vbが最適な値に設定されていても、前記画像形成条件によってトナーの帯電特性、トナーの流動性等が変化したときに、現像ローラ16上のトナーの付着量が多くなることがあり、その場合、用紙P上における画像が形成されない部分にトナーが付着して、画像品位を低下させてしまうことがある。
【0032】
図3は本発明の第1の実施の形態における現像ローラ上のトナーの付着量を測定する測定装置の概念図、図4は本発明の第1の実施の形態における低印刷デューティ時の現像ローラ上のトナーの付着量を示す図である。なお、図4において、横軸に所定時間当たりの印刷枚数を、縦軸にトナーの付着量を採ってある。
【0033】
図3において、16は現像ローラ、160はプローブ、161は電源である。
【0034】
この場合、現像ローラ16上のトナーの付着量を、以下の条件で実験を行うことによって測定した。
【0035】
すなわち、プリンタ((株)沖データ製 C9500 Series)を使用し、印刷速度を30〔ppm〕として印刷を行い、印刷が停止されたときに、図3に示されるように、1〔cm2 〕の面を持つプローブ160を現像ローラ16に近接させ、プローブ160に電源161によって300〔V〕の直流の電圧を印加し、現像ローラ160の表面のトナーを採取した。そして、トナーを採取する前及び後のプローブ160の重量を測定し、各重量の差から、トナーの付着量を測定した。
【0036】
また、印刷デューティは、A4判のサイズの用紙Pに対する印刷密度であり、本実施の形態における低デューティは、30〔%〕以下の印刷密度である。
【0037】
図4から分かるように、低印刷デューティで連続的に印刷を行うと、現像ローラ16上のトナーの付着量は、所定の時間(例えば、30〔分〕)当たりの印刷枚数が多いほど多くなる。これは、低印刷デューティの印刷においては、前記現像ローラ16に供給された後、感光体ドラム11に付着させられるトナーの量が少なくなり、現像ローラ16上において前記現像ブレード17との摩擦が繰り返され、トナーの帯電量が多くなるからである。
【0038】
図5は本発明の第1の実施の形態における印刷制御部の動作を示すタイムチャートである。
【0039】
まず、印刷制御部55の印刷動作処理部61(印刷動作処理手段)は、印刷動作処理を行い、タイミングt1で印刷を開始し、所定の印刷ジョブの印刷動作を行い、少なくとも1枚の印刷を行う。続いて、タイミングt2で印刷ジョブの印刷動作が終了すると、印刷制御部55のリセット動作処理部62(リセット動作処理手段)は、リセット動作処理を行い、モードを、印刷動作が行われる印刷モードからリセットモードに移行させる。該リセットモードにおいては、所定の時間T1にわたり、印刷動作が行われず、現像ローラ16上のトナーが新しいトナーと入れ替えられ、現像ローラ16上のトナーの付着量が適正な値にされる。そして、前記印刷動作処理部61は、タイミングt3でモードを、リセットモードから印刷モードに移行させ、再び印刷動作を行う。
【0040】
前記リセットモードにおいては、現像ローラ16及びトナー供給ローラ18のそれぞれに印加される電圧|V1|、|V2|のバイアス差Vb′が印刷モード時より小さくされる。その結果、現像ローラ16上に付着していたトナーが剥がれやすくなる等の現象が生じ、現像ローラ16上のトナーの付着量を減少させることができる。
【0041】
また、前記印刷モードにおいては、現像ローラ16及びトナー供給ローラ18のそれぞれに印加される電圧|V1|、|V2|によって印刷動作を行うために必要なバイアス差Vbが形成される。
【0042】
なお、リセットモードが継続される時間T1が長いほど、現像ローラ16上のトナーを十分に入れ替えることができるので、トナーの付着量を十分に少なくすることができるが、時間T1が長すぎると、印刷パフォーマンスが低下してしまう。そこで、本実施の形態において、時間T1は、現像ローラ16が少なくとも1周分回転する時間にされる。
【0043】
ここで、時間T1を現像ローラ16が1周分回転する時間とした理由は、本来、現像ローラ16上のトナーの付着量が所定量、すなわち、現像ローラ16が1周分回転することによって減少する(消費される)量だけトナーを少なくするためである。また、時間T1は、現像ローラ16の表面の全体に対して一様に効果を得ることができる最短の時間でもある。本実施の形態においては、現像ローラ16に付着しているトナーを、前記所定の量として20〔%〕以上少なくすることによって、用紙P上における画像が形成されない部分にトナーが付着するのを防止することができるのを確認している。なお、前記所定の量については、プリンタごとに異なるので、適宜決定されるのが好ましい。
【0044】
次に、前記リセットモード時における現像ローラ16上のトナーの付着量について説明する。
【0045】
図6は本発明の第1の実施の形態におけるリセットモード時のバイアス差と現像ローラ上のトナーの付着量との関係を示す図である。なお、図において、横軸にバイアス差Vb′を、縦軸にトナーの付着量を採ってある。
【0046】
この場合、現像ローラ16上のトナーの付着量を、以下の条件で実験を行うことによって測定した。
【0047】
すなわち、プリンタ((株)沖データ製 C9500 Series)を使用し、A4判のサイズの900枚の用紙Pに対して連続して印刷を行った。また、印刷画像として低デューティのパターンを使用した。
【0048】
続いて、印刷が停止されたときに、前述されたように(図3)、1〔cm2 〕の面を持つプローブ160を現像ローラ16に近接させ、プローブ160に電源161によって300〔V〕の直流の電圧を印加し、現像ローラ160の表面のトナーを採取した。そして、トナーを採取する前及び後のプローブ160の重量を測定し、各重量の差から、トナーの付着量を測定した。そして、トナーの付着量の測定をバイアス差Vb′を変化させながら繰り返した。
【0049】
図に示されるように、バイアス差Vb′と現像ローラ16上のトナーの付着量の変化とはほぼ比例関係にあり、バイアス差Vb′を小さくすると、前記現像ローラ16上のトナーの付着量を少なくすることができる。
【0050】
ところで、前記リセットモードにおいては、現像ローラ16上のトナーの付着量を十分に少なくするために、前記バイアス差Vb′を印刷モード時のバイアス差Vbの1/2以下にするとよい。例えば、感光体ドラム11(図1)の寿命、プリンタの置かれた環境条件等によって異なるが、バイアス差Vb′を印刷モード時のバイアス差Vbの1/2の値にすると、現像ローラ16上のトナーの付着量を約20〜40〔%〕少なくすることができた。
【0051】
次に、リセットモード時のバイアス差Vb′を印刷モード時のバイアス差Vbの0.5倍、すなわち、1/2とする理由及びその実証について説明する。
【0052】
図に示されるように、現像ローラ16とトナー供給ローラ18とのバイアス差Vb′によって現像ローラ16上のトナーの付着量が変化することが分かる。
【0053】
実験の結果によると、前述されたように、バイアス差Vb′と現像ローラ16上のトナーの付着量の変化とは、ほぼ比例関係にある。例えば、印刷モード時のバイアス差Vbが約90〔V〕である場合、現像ローラ16上のトナーの付着量は約0.9〔mg/cm2 〕である。そして、リセットモード時の現像ローラ16上のトナーの付着量を印刷モード時の付着量に対して約20〔%〕減少させ、約0.7〔mg/cm2 〕にすると、この場合のバイアス差Vb′は約45〔V〕になる。
【0054】
なお、バイアス差Vb′を小さくするほどトナー供給ローラ18から現像ローラ16へのトナーの移動が少なくなる。例えば、現像ローラ16に−150〔V〕の電圧を、トナー供給ローラ18に−200〔V〕の電圧を印加した場合、現像ローラ16とトナー供給ローラ18との間には50〔V〕の電位差が生じる。ここで、負の極性に帯電させられたトナーは、この50〔V〕の電位差によって、トナー供給ローラ18から現像ローラ16に付着する。一方、トナー供給ローラ18に印加される電圧を−180〔V〕にすると、現像ローラ16に印加される電圧との電位差は30〔V〕になるので、トナー供給ローラ18から現像ローラ16に付着するトナーの量は少なくなる。
【0055】
さらに、前述されたように、バイアス差Vb′を小さくすると、現像ローラ16上に付着していたトナーが剥がれやすくなる。
【0056】
したがって、図の実験結果及び上述のバイアス差Vb′の大きさによる現像ローラ16上のトナーの付着量の変化に基づいて、リセットモード時に、印刷モード時のバイアス差Vbの1/2の値以下のバイアス差Vb′を形成することによって、リセットモード時の現像ローラ16上のトナーの付着量を印刷モード時より20〔%〕以上少なくすることができる。
【0057】
つまり、前記リセット動作処理部62による指示に基づいて、電圧制御部70は、印刷モード時に、現像ローラ用電源52によって電圧V1を現像ローラ16に印加し、トナー供給ローラ用電源53によって電圧V2をトナー供給ローラ18に印加し、電圧V1、V2の差電圧をバイアス差Vbとして形成するのに対して、前記リセットモード時に、バイアス差Vb′を、前記バイアス差Vbより小さい値、本実施の形態においては、
0≦Vb′≦Vb×0.5
の範囲の値にする。
【0058】
このように、本実施の形態においては、印刷ジョブが終了したときに、モードが、印刷モードからリセットモードに移行させられ、バイアス差Vb′が小さくされるので、現像ローラ16上のトナーの付着量を少なくすることができる。したがって、トナーが用紙Pにおける画像が形成されない部分に付着することがなく、画像品位を向上させることができる。
【0059】
なお、本実施の形態においては、印刷ジョブが終了するたびに、モードがリセットモードに移行させられるようになっているが、図示されないドラムカウンタのカウント値等に基づいて印刷枚数を計数し、印刷枚数があらかじめ設定された値になったときに、モードをリセットモードに移行させることもできる。
【0060】
また、前記リセット動作処理部62は、前記環境変量検出部64によって検出された温度、湿度等に基づいて、リセットモードへの移行の頻度を変更することができる。
【0061】
ここで、具体例として、プリンタとして、(株)沖データ製 C9500 Seriesを使用したときのリセットモードへの移行の頻度について説明する。
【0062】
例えば、湿度が高くなると、トナーの帯電量が低くなるので、リセットモードへの移行の頻度を低くすることができる。この場合、湿度が50〔%〕より高くなると、トナーの帯電量は30〔%〕低くなるので、リセットモードへの移行の頻度を通常時より30〔%〕低く設定することができる。
【0063】
次に、印刷動作が終了する前にモードをリセットモードに移行させるようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態におけるプリンタの構造については、前記第1の実施の形態におけるプリンタの構造と同様であるので、図1及び2を援用して説明する。また、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0064】
図7は本発明の第2の実施の形態における印刷制御部の動作を示すタイムチャートである。
【0065】
まず、前記印刷制御部55の印刷動作処理手段は、タイミングt11で印刷を開始し、所定の印刷ジョブの印刷動作を行い、少なくとも1枚の印刷を行う。続いて、印刷ジョブの印刷動作が終了すると、前記リセット動作処理手段は、タイミングt12、t13、t14及びt15で、順次画像形成ユニットBk、Y、M、Cにおけるモードを印刷モードからリセットモードに移行させる。該リセットモードにおいては、印刷動作が行われず、現像剤担持体としての現像ローラ16上の現像剤としてのトナーが新しいトナーと入れ替えられ、前記現像ローラ16上のトナーの付着量が適正な値にされる。そして、前記印刷動作処理手段は、タイミングt16で印刷動作を停止させる。このとき、電圧制御部70は、帯電装置電圧印加部としての帯電ローラ用電源51、現像剤担持体電圧印加部としての現像ローラ用電源52、及び現像剤供給部材電圧印加部としてのトナー供給ローラ用電源53による電圧の発生を停止させる。
【0066】
本実施の形態においては、印刷ジョブの最後の媒体としての用紙Pが画像形成ユニットBk、Y、M、Cを通過するのに伴って順次リセットモードに移行するので、迅速に現像ローラ16上のトナーを新しいトナーと入れ替えることができる。
【0067】
前記各実施の形態においては、プリンタについて説明しているが、本発明を、複写機、ファクシミリ装置、複合機等に適用することができる。
【0068】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0069】
16 現像ローラ
18 トナー供給ローラ
52 現像ローラ用電源
53 トナー供給ローラ用電源
62 リセット動作処理部
T1 時間
V1、V2 電圧
Vb′ バイアス差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)所定の極性に帯電させられた現像剤を付着させて現像剤を担持する現像剤担持体と、
(b)該現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給部材と、
(c)前記現像剤担持体に電圧を印加する現像剤担持体電圧印加部と、
(d)前記現像剤供給部材に電圧を印加する現像剤供給部材電圧印加部と、
(e)所定の時間にわたりリセットモードを設定し、該リセットモード時に、前記現像剤供給部材電圧印加部によって印加される電圧と、前記現像剤担持体電圧印加部によって印加される電圧とのバイアス差を、印刷モード時のバイアス差より小さくするリセット動作処理部とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記印刷モード時のバイアス差をVbとし、前記リセットモード時のバイアス差をVb′としたとき、バイアス差Vb′は、
0≦Vb′≦Vb×0.5
の範囲にされる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記リセットモードへの移行は、印刷枚数があらかじめ設定された値になったときに行われる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記リセットモードへの移行は、印刷ジョブが終了したときに行われる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記リセットモードが継続される時間は、現像剤担持体が少なくとも1周分回転する時間にされる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
(a)前記画像形成装置が置かれた環境の変量を検出する環境変量検出部を有するとともに、
(b)前記リセット動作処理部は、前記環境の変量に基づいて、リセットモードへの移行の頻度を変更する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
(a)媒体の搬送方向に沿って配設された複数の画像形成ユニットを備えるとともに、
(b)上流側から下流側にかけて、順次各画像形成ユニットにおけるリセットモードへの移行が開始される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
像担持体を更に有する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記現像剤担持体は、前記像担持体の表面に形成された潜像に、所定の極性に帯電させられた前記現像剤を付着させて現像剤像を形成する請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記環境変量検出部は、温度センサ及び/又は湿度センサである請求項6に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−79269(P2010−79269A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171226(P2009−171226)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】