説明

画像形成装置

【課題】光学系の光の結像位置が像担持体の近くに位置させて、露光ヘッドによる良好な潜像の形成を可能とする技術を提供する。
【解決手段】第1の波長の光および第2の波長の光を発光する発光素子と、第1の波長の光を第1の結像位置に結像するとともに第2の波長の光を第1の結像位置と光軸方向に異なる第2の結像位置に結像する光学系と、を有する露光ヘッドと、露光ヘッドの光軸方向側に配設された像担持体と、露光ヘッドを支持して、光学系の光学面のうち像担持体に最も近い光学面と第1の結像位置との光軸方向への距離d1と、光学系の光学面のうち像担持体に最も近い光学面と第2の結像位置との光軸方向への距離d2と、光学系の光学面のうち像担持体に最も近い光学面と像担持体との光軸方向への距離diとに、関係式d1<di<d2を満足させる支持部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子からの光を光学系により結像する露光ヘッドを用いて像担持体を露光する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の画像形成装置では、発光素子と結像光学系とを有する露光ヘッド(同文献のラインヘッド)が像担持体に対向して配設されており、発光素子からの光を結像光学系が結像すると、像担持体(の表面)にスポットが形成される。そして、露光ヘッドが画像データに応じた位置にスポットを適宜形成することによって、像担持体の表面に所定の潜像を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−221790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような画像形成装置では、光学系の光の結像位置と像担持体との距離が重要となる。なぜなら、これらの距離が余りに離れると、光学系によって像担持体に形成されるスポットがぼやけてしまって、良好な潜像を形成できないおそれがあるからである。そこで、光学系の光の結像位置が像担持体(の表面)の近くに位置するように、露光ヘッドと像担持体とを位置決めする技術が求められていた。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、光学系の光の結像位置が像担持体の近くに位置するように、露光ヘッドと像担持体とを位置決めして、露光ヘッドによる良好な潜像の形成を可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、第1の波長および第2の波長を有する光を発光する発光素子と、発光素子で発光された光が入射される第1のレンズ面、および第1のレンズ面に入射された光を射出する第2のレンズ面を有する光学系とを備え、光学系により第1の波長の光を第1の結像位置に結像すると共に、第2の波長の光を第1の結像位置と光学系の光軸方向に異なる第2の結像位置に結像する露光ヘッドと、露光ヘッドの第2のレンズ面から射出された光が照射されて潜像が形成される潜像担持体と、露光ヘッドを支持する支持部と、を備え、露光ヘッドと潜像担持体とを次の関係を有するように、露光ヘッドを支持部材で支持することを特徴としている。d1<di<d2ここで、
d1:前記第2のレンズ面と前記第1の結像位置との間の前記光軸方向の距離
d2:前記第2のレンズ面と前記第2の結像位置との間の前記光軸方向の距離
di:前記第2のレンズ面と前記像担持体との間の前記光軸方向の距離
である。
【0007】
このように構成された画像形成装置では、第1のレンズ面および第2のレンズ面を有する光学系と発光素子とが設けられており、発光素子から発光されて第1のレンズ面に入射した光が第2のレンズ面から射出されて、像担持体に照射される。また、本発明の発光素子は、第1の波長および第2の波長を有する光を発光するものであり、光学系は各波長の光を光軸方向に異なる位置(第1の結像位置および第2の結像位置)に結像する。そして、このように構成された光学系を有する露光ヘッドと像担持体とを、支持部材が次の関係、d1<di<d2を満たすように支持する。ここで、
d1:前記第2のレンズ面と前記第1の結像位置との間の前記光軸方向の距離
d2:前記第2のレンズ面と前記第2の結像位置との間の前記光軸方向の距離
di:前記第2のレンズ面と前記像担持体との間の前記光軸方向の距離
である。
すなわち、この画像形成装置では、第1の結像位置と第2の結像位置との間に像担持体(の表面)が位置するように、露光ヘッドが像担持体に対して位置決めされている。そして、このように露光ヘッドを像担持体に対して位置決めすることで、光学系の2つの結像位置(第1および第2の結像位置)の少なくとも一方を像担持体(の表面)の近くに位置させることができる。そして、この像担持体の近くの結像位置に結像される光が像担持体へのスポット形成に供することで、ぼやけの少ないスポットによって良好な潜像を形成することができる。
【0008】
また、露光ヘッドは、光を発光する第2の発光素子と、第2の発光素子で発光された光を結像する第2の光学系を有していても良い。また、この際、第2の光学系により結像される光の結像位置は、光軸方向の第1の結像位置と第2の結像位置との間ににあるように露光ヘッドを構成しても良い。つまり、本発明では、光学系の2つの結像位置(第1および第2の結像位置)の少なくとも一方は像担持体(の表面)の近くに位置するように、露光ヘッドが像担持体に対して位置決めされている。したがって、第2の光学系により結像される光の結像位置を、光軸方向の第1の結像位置と第2の結像位置との間としておけば、第2の光学系により結像される光の結像位置を像担持体(の表面)の近くに位置させることができ、その結果、露光ヘッドによる良好な潜像形成が可能となる。
【0009】
なお、第1の結像位置と第2の結像位置との範囲以内とは、第1の結像位置および第2の結像位置を含んでこれらの結像位置の間の区間を指すものとする。
【0010】
また、支持部は、露光ヘッドを保持する保持部材と、保持部材に配設されて像担持体に当接する当接部材と、を有するように構成しても良い。このように、像担持体に当接する当接部材と露光ヘッドとを保持部材を介して接続することで、露光ヘッドの像担持体に対する位置決め精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図。
【図2】図1の画像形成装置が備える電気的構成を示すブロック図。
【図3】ラインヘッドの概略を示す部分斜視図。
【図4】厚さ方向からヘッド基板を平面視した部分平面図。
【図5】ラインヘッドのA−A線における部分断面図。
【図6】ラインヘッドの部分側面図。
【図7】ラインヘッド支持機構を示す長手方向部分断面図。
【図8】ラインヘッド支持機構を示す斜視図。
【図9】ラインヘッドの支持態様の詳細を示す図。
【図10】結像位置P1、P2の近傍(図9の破線円)を拡大した図面。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置が備える電気的構成を示すブロック図である。この装置は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。なお図1は、カラーモード実行時に対応する図である。この画像形成装置では、ホストコンピューターなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCはエンジンコントローラーECに制御信号などを与えるとともに画像形成指令に対応するビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。このとき、メインコントローラーMCは、ヘッドコントローラーHCから水平リクエスト信号HREQを受け取る毎に、主走査方向MDに1ライン分のビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。また、このヘッドコントローラーHCは、メインコントローラーMCからのビデオデータVDとエンジンコントローラーECからの垂直同期信号Vsyncおよびパラメータ値とに基づき各色のラインヘッド29を制御する。これによって、エンジン部ENGが所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0013】
画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラーMC、エンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット7、転写ベルトユニット8および給紙ユニット11もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、2次転写ユニット12、定着ユニット13、シート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット11は、装置本体1に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット11および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0014】
画像形成ユニット7は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーションY(イエロー用)、M(マゼンダ用)、C(シアン用)、K(ブラック用)を備えている。また、各画像形成ステーションY,M,C,Kは、主走査方向MDに所定長さの表面を有する円筒形の感光体ドラム21を設けている。そして、各画像形成ステーションY,M,C,Kそれぞれは、対応する色のトナー像を、感光体ドラム21の表面に形成する。感光体ドラム21は、軸方向が主走査方向MDに平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モーターに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより感光体ドラム21の表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送されることとなる。また、感光体ドラム21の周囲には、回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナー27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作及びトナー現像動作が実行される。したがって、カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーションY,M,C,Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8が有する転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、モノクロモード実行時は、画像形成ステーションKで形成されたトナー像のみを用いてモノクロ画像を形成する。なお、図1において、画像形成ユニット7の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号をつけて、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0015】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラーを備えている。この帯電ローラーは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って感光体ドラム21に対して従動方向に周速で従動回転する。また、この帯電ローラーは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を帯電させる。
【0016】
ラインヘッド29は感光体ドラム21に対して離間して配置されており、ラインヘッド29の長手方向は主走査方向MDに平行もしくは略平行であるとともに、ラインヘッド29の幅方向は副走査方向SDに平行もしくは略平行である。このラインヘッド29は複数の発光素子を備えており、各発光素子はヘッドコントローラーHCからのビデオデータVDに応じて発光する。そして、帯電した感光体ドラム21表面に発光素子からの光が照射されることで、感光体ドラム21表面に静電潜像が形成される。
【0017】
現像部25は、その表面にトナーを担持する現像ローラー251を有する。そして、現像ローラー251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラー251に印加される現像バイアスによって、現像ローラー251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラー251から感光体ドラム21に移動してラインヘッド29により形成された静電潜像が顕在化される。
【0018】
このように上記現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する1次転写位置TR1において転写ベルト81に1次転写される。
【0019】
また、この実施形態では、感光体ドラム21の回転方向D21の1次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナー27が設けられている。この感光体クリーナー27は、感光体ドラムの表面に当接することで1次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0020】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラー82と、図1において駆動ローラー82の左側に配設される従動ローラー83(ブレード対向ローラー)と、これらのローラーに張架され図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、感光体カートリッジ装着時において各画像形成ステーションY,M,C,Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の1次転写ローラー85Y,85M,85C,85Kを備えている。これらの1次転写ローラー85は、それぞれ1次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。そして、カラーモード実行時は、図1に示すように全ての1次転写ローラー85Y,85M,85C,85Kを画像形成ステーションY,M,C,K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーションY,M,C,Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に1次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで上記1次転写バイアス発生部から1次転写ローラー85に1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してカラー画像を形成する。
【0021】
一方、モノクロモード実行時は、4個の1次転写ローラー85のうち、カラー1次転写ローラー85Y,85M,85Cをそれぞれが対向する画像形成ステーションY,M,Cから離間させるとともにモノクロ1次転写ローラー85Kのみを画像形成ステーションKに当接させることで、モノクロ画像形成ステーションKのみを転写ベルト81に当接させる。その結果、モノクロ1次転写ローラー85Kと画像形成ステーションKとの間にのみ1次転写位置TR1が形成される。そして、適当なタイミングで前記1次転写バイアス発生部からモノクロ1次転写ローラー85Kに1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してモノクロ画像を形成する。
【0022】
さらに、転写ベルトユニット8は、モノクロ1次転写ローラー85Kの下流側で且つ駆動ローラー82の上流側に配設された下流ガイドローラー86を備える。また、この下流ガイドローラー86は、モノクロ1次転写ローラー85Kが画像形成ステーションKの感光体ドラム21に当接して形成する1次転写位置TR1での1次転写ローラー85Kと感光体ドラム21との共通内接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0023】
駆動ローラー82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、2次転写ローラー121のバックアップローラーを兼ねている。駆動ローラー82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する2次転写バイアス発生部から2次転写ローラー121を介して供給される2次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラー82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、駆動ローラー82と2次転写ローラー121との当接部分(2次転写位置TR2)へのシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達しにくく、画質の劣化を防止することができる。
【0024】
給紙ユニット11は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラー79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラー79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラー対80において給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って2次転写位置TR2に給紙される。
【0025】
2次転写ローラー121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、2次転写ローラー駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラー131と、この加熱ローラー131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が2次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラー131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラー1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラー1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラー131の周面に押し付けることで、加熱ローラー131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0026】
また、この装置では、ブレード対向ローラー83に対向してクリーナー部71が配設されている。クリーナー部71は、クリーナーブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナーブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラー83に当接することで、2次転写後に転写ベルトに残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。
【0027】
図3は、ラインヘッドの概略を示す部分斜視図である。同図では、ラインヘッド29の厚さ方向TKDの構成を理解しやすくするために、ラインヘッド29の長手方向LGDの端部(図3の左下端部)が断面で示されている。ここで、厚さ方向TKDは、長手方向LGDおよび幅方向LTDに垂直もしくは略垂直な方向であり、後述する発光素子Eが光を射出する側(つまり、ラインヘッド29から感光体ドラム21に向う側)を向いた方向とする。また、以後の実施形態の説明において、厚さ方向TKDの下流側(図3の上側)を「(厚さ方向TKDの)一方側」と称し、厚さ方向TKDの上流側(図3の下側)を「(厚さ方向TKDの)他方側」と称する。また、基板あるいは平板の一方側の面を表面と称し、基板あるいは平板の他方側の面を裏面と称することとする。
【0028】
なお、この厚さ方向TKDは、レンズアレイLA1のレンズLS1とレンズアレイLA2のレンズLS2とが構成する結像光学系の光軸(図9の光軸OA)に平行である。また、本実施形態のラインヘッド29では、複数の結像光学系LS1、LS2が配列されているが、各結像光学系の光軸OAは互いに平行となっている。また、以下に説明するように、発光素子Eと感光体ドラム21表面との間には、空気と屈折率が異なる部材として、レンズLS1、ガラス基板SB、レンズLS2、ガラス基板SBおよび支持ガラスSSがこの順番で並んでおり、これらの部材が協働して1つの結像光学系として機能する。ただし、本実施形態では、この結像光学系を結像光学系LS1、LS2(あるいはLS1s、LS2s)と略称する。
【0029】
ここで、光軸は次のように定義される。結像光学系は多くの場合、主走査方向MDに垂直な対称面に関して面対称(鏡映対称)であり、かつ、副走査方向SDに垂直な対称面に関して面対称(鏡映対称)である。このように、結像光学系は、主走査方向MDに垂直な第1対称面、および当該主走査方向MDと直交する副走査方向SDに垂直な第2対称面を有し、第1対称面と第2対称面の交線が定まる。結像光学系が回転対称である場合には、前述の第1対称面と第2対称面の交線は光軸と一致する。結像光学系が回転対称でない場合、厳密には結像光学系の光軸が定義されない場合があるが、そのような場合には、前述の交線を光軸として取り扱えばよい。
【0030】
ラインヘッド29は、ヘッド基板293、遮光部材297、絞り平板295、レンズアレイLA1およびレンズアレイLA2をこの順番で厚さ方向TKDに配置した概略構成を備えている。ヘッド基板293の裏面には、複数の発光素子Eが所定個数毎に発光素子グループEGとしてグループ化されて二次元的かつ離散的に配置されている。また、ヘッド基板293の裏面には、これら複数の発光素子Eを封止するための封止部材294が取り付けられており、さらに、この封止部材294の裏面にはラインヘッド29を構成する上記各部材を支持するための剛性部材299が取り付けられている。
【0031】
ヘッド基板293とレンズアレイLA1との間にはスペーサーSP1が設けられており、このスペーサーSP1がヘッド基板293とレンズアレイLA1との間隔を規定する。なお、ヘッド基板293とレンズアレイLA1との間には遮光部材297および当該遮光部材297に載設された絞り平板295が配置されており、スペーサーSP1は、絞り平板295に対して厚さ方向TKD一方側で若干の間隔を空けてレンズアレイLA1を支持する。また、レンズアレイLA1とレンズアレイLA2との間にはスペーサーSP2が設けられており、このスペーサーSP2がレンズアレイLA1とレンズアレイLA2との間隔を規定しながらレンズアレイLA2を支持する。
【0032】
こうしてラインヘッド29では、ヘッド基板293、遮光部材297、絞り平板295およびレンズアレイLA1、LA2がこの順番で並んでいる。そして、ヘッド基板293の発光素子Eからの光が、遮光部材297の導光孔2971と絞り平板295の開口絞り2951を通過して、レンズアレイLA1、LA2のレンズLS1、LS2により結像される。次に、各部材の詳細な構成について、図3、図4および図5を用いつつ説明する。
【0033】
図4は、厚さ方向TKDからヘッド基板293を平面視した部分平面図であり、厚さ方向TKDの一方側(図3の上側)からヘッド基板293の裏面293−tを透視した場合に相当する。図5は、ラインヘッドのA−A線における部分断面図であり、該断面を長手方向LGD(主走査方向MD)から見た場合に相当する。このA−A線断面は、長手方向LGDに距離Dgを空けるとともに幅方向LTDに距離Dtを空けて、一列に並ぶ3個の発光素子グループEG(あるいは、3枚のレンズLS1等)の各幾何重心(あるいは、各レンズ中心)を通る。また、図4、図5に示す方向Dlscは、A−A線に平行な方向である。さらに、図4では、ヘッド基板293に形成された発光素子グループEG、レンズアレイLA1に形成されたレンズLS1およびレンズアレイLA2に形成されたレンズLS2の位置関係を示すために、レンズLS1およびレンズLS2がそれぞれ一点鎖線で併記されている。ちなみに、レンズLS1およびレンズLS2についての図中記載は、これらの位置関係を示すためのものであり、レンズLS1およびレンズLS2がヘッド基板裏面293−t(図5)に形成されていることを示すものではない。また、図5において、光透過性(つまり透明)である部材には、点の集合からなるハッチングが施されている。
【0034】
ヘッド基板293は光を透過するガラス基板(光透過性基板)で構成されており、ヘッド基板裏面293−tでは、ボトムエミッション型の有機EL(Electro-Luminescence)素子である発光素子Eが複数形成されて、封止部材294により封止されている(図3、図5)。これら複数の発光素子Eは、互いに同一の発光スペクトルを有しており、光ビームを感光体ドラム21表面へ向けて射出する。また、図4に示すように、ヘッド基板裏面293−tに形成された複数の発光素子Eの配置態様は、グループ構造を有している。つまり、15個の発光素子Eが長手方向LGDに2行千鳥で配置されて1個の発光素子グループEGが構成されており、さらに複数の発光素子グループEGが長手方向LGDに3行千鳥で離散的に配置されている。
【0035】
より詳しくは、この配置態様は次のように説明することができる。つまり、各発光素子グループEG内では、15個の発光素子Eが長手方向LGDの互いに異なる位置に配置されており、しかも長手方向LGDにおける位置が隣り合う2つの発光素子E、Eの長手方向LGDへの距離は素子間距離Pelとなっている(言い換えれば、各発光素子グループEG内では、15個の発光素子EがピッチPelで長手方向LGDに配置されている)。そして、素子間距離Pelよりも長いグループ間距離Pegを空けて複数の発光素子グループEGが長手方向LGDに沿って離散的に並んで、1行の発光素子グループ行GRa等が構成されている。さらに、3行の発光素子グループ行GRa、GRb、GRcが距離Dtだけ空けて幅方向LTDの異なる位置に離散的に配置されており、しかも、発光素子グループ行GRa、GRb、GRcのそれぞれは、長手方向LGDに距離Dgだけ相互にシフトされている。こうして、3個の発光素子グループEGが、長手方向LGDに距離Dgを空けるとともに幅方向LTDに距離Dtを空けて、方向Dlscに一列に並ぶ。
【0036】
ここで、素子間距離Pelは、対象となる2個の発光素子Eの幾何重心間の長手方向LGDにおける距離として求めることができる。また、グループ間距離Pegは、対象となる2個の発光素子グループEGのうち、長手方向LGDの一方側の発光素子グループEGの他方側端部にある発光素子Eの幾何重心と、長手方向LGDの他方側の発光素子グループEGの一方側端部にある発光素子Eの幾何重心との長手方向LGDにおける距離として求めることができる。また、距離Dgは、長手方向LGDにおける位置が隣り合う2個の発光素子グループEGそれぞれの幾何重心間の長手方向LGDにおける距離として求めることができる。また、距離Dtは、幅方向LTDにおける位置が隣り合う2個の発光素子グループEGそれぞれの幾何重心間の幅方向LTDにおける距離として求めることができる。
【0037】
このようにヘッド基板293の裏面293−tには、複数の発光素子グループEGが二次元的かつ離散的に配置されている。一方、ヘッド基板293の表面293−hには、遮光部材297が配置されている。遮光部材297には厚さ方向TKDに貫通する導光孔2971が複数形成されている。各導光孔2971は厚さ方向TKDからの平面視において円形状を有しており、その内壁には黒色メッキが施されている。この導光孔2971は、発光素子グループEG毎に1個ずつ形成されており、すなわち、1個の発光素子グループEGに対して1個の導光孔2971が開口している。こうして、遮光部材297は、導光孔2971を発光素子グループEGに開口させた状態でヘッド基板表面293−hに当接して固定されている。
【0038】
このような遮光部材297を設ける目的は、いわゆる迷光がレンズLS1、LS2に入射するのを抑制するためである。つまり、各発光素子グループEGには、レンズ対LS1、LS2の対からなる結像光学系がそれぞれ専用に設けられている。このような構成では、光ビームは、それ自身の射出源である発光素子グループEGに設けられた結像光学系LS1、LS2にのみ入射して結像されることが望ましい。しかしながら、光ビームの一部には、その射出源である発光素子グループEGに設けられた結像光学系LS1、LS2に向わずに迷光となってしまうものもある。そして、このような迷光が、それ自身の射出源でない発光素子グループEGに設けられた結像光学系LS1、LS2に入射してしまうと、いわゆるゴーストが発生してしまうおそれがある。これに対して、この実施形態では、発光素子グループEGと結像光学系LS1、LS2との間に遮光部材297が設けられている。この遮光部材297には、内壁に黒色メッキが施された導光孔2971が発光素子グループEGに開口して設けられているため、迷光の多くは導光孔2971の内壁で吸収されることとなる。その結果、先ほどのゴーストを抑制して、良好な露光動作の実現が図られる。
【0039】
さらに、この遮光部材297の厚さ方向TKDの一方側には、絞り平板295が載設されている。この絞り平板295には、厚さ方向TKDに貫通する開口絞り2951が、各発光素子グループEG毎に1個ずつ形成されており、すなわち、1個の発光素子グループEGに対して、1個の開口絞り2951が開口している。この開口絞り2951は、レンズLS1、LS2で構成される結像光学系が所望の結像作用を発揮できるようにすることを目的として設けられている。つまり、開口絞り2951は、レンズLS1に入射する光ビームの量を制限して、最終的に形成されるスポットの大きさ、形状あるいはスポット形成に供する光の量を調整する。
【0040】
そして、上述のとおり、これらヘッド基板293、遮光部材297および絞り平板295の厚さ方向TKDの一方側には、レンズアレイLA1、LA2が設けられており、これらレンズアレイLA1、LA2はスペーサーSP1、SP2により支持されている。以下に、これらレンズアレイLA1、LA2の支持構造の詳細について、図3〜図5に加えて図6を用いて説明する。
【0041】
図6は、ラインヘッドの部分側面図であり、幅方向LTDからラインヘッド29を平面視した場合に相当する。ヘッド基板293の表面では、互いに同一の形状・大きさを有する複数のスペーサーSP1が長手方向LGDに間隔CL1を空けて一列に並んでいる。また、このスペーサーSP1の列は、幅方向LTDの両側に設けられている(図3、図5)。こうして、厚さ方向TKDからの平面視において、スペーサーSP1の列が、ヘッド基板裏面293−tの発光素子Eが形成された領域を幅方向LTDから挟んで2列配置されることとなる(換言すれば、遮光部材297を幅方向LTDから挟んで2列配置されることとなる)。なお、これらのスペーサーSP1は、ヘッド基板293の表面293−hに接着剤等により固定されている。
【0042】
このようにして、2列に配置されたスペーサーSP1に対して、レンズアレイLA1が幅方向LTDに架設されており、これにより、レンズアレイLA1がヘッド基板293の厚さ方向TKDの一方側で位置決めされる。このとき、レンズアレイLA1のレンズLS1が形成された領域が、幅方向LTDに並ぶ2列のスペーサーSP1の列の間に位置するように、レンズアレイLA1は配置される。このレンズアレイLA1は、長手方向LGDの両端が斜めに(方向Dlscと平行に)カットされた菱形形状のガラス基板SBを有している。そして、このガラス基板SBの裏面には、光硬化性樹脂で形成された複数のレンズLS1がアレイ配置されている。これら複数のレンズLS1は、対向する発光素子グループEGの配置に対応して3行千鳥で配置されている(図4)。
【0043】
そして、図3、図6に示すように、複数のレンズアレイLA1が長手方向LGDに並んで配設されている。つまり、この実施形態では、長手方向LGDに並ぶ複数のレンズアレイLA1をスペーサーSP1が支持して、1つの長尺レンズアレイL−LA1が構成されている。ちなみに、直方形状を有するスペーサーSP1の長さは、レンズアレイLA1の幅方向LTDの端辺の長手方向LGDの長さより短く、1枚のレンズアレイLA1は、長手方向LGDに並ぶ複数のスペーサーSP1で支持される。具体的には、これらスペーサーSP1のうち、中央スペーサーSP1−bはレンズアレイLA1の長手方向LGDの略中央を支持し、端部スペーサーSP1−aは長手方向LGDに隣り合う2枚のレンズアレイLA1、LA1の隙間BD1を跨いで、該レンズアレイLA1、LA1を支持する。なお、スペーサーSP1とレンズアレイLA1とは接着剤等により固定されている。
【0044】
このようにして構成された長尺レンズアレイL−LA1の厚さ方向TKDの一方面には、互いに同一の形状・大きさを有する複数のスペーサーSP2が長手方向LGDに間隔CL2を空けて一列に並んでいる。また、このスペーサーSP2の列は、幅方向LTDの両側に設けられている(図3、図5)。こうして、厚さ方向TKDからの平面視において、スペーサーSP2の列が、レンズアレイLA1のレンズLS1が形成された領域を幅方向LTDから挟んで2列配置されることとなる。なお、これらのスペーサーSP1は、レンズアレイLA1のガラス基板SBの表面に接着剤等により固定されている。
【0045】
このようにして、2列に配置されたスペーサーSP2に対して、レンズアレイLA2が幅方向LTDに架設されており、これにより、レンズアレイLA2がレンズアレイLA1の厚さ方向TKDの一方側で位置決めされる。このとき、レンズアレイLA2のレンズLS2が形成された領域が、幅方向LTDに並ぶ2列のスペーサーSP2の列の間に位置するように、レンズアレイLA2は配置される。このレンズアレイLA2は、長手方向LGDの両端が斜めに(方向Dlscと並行に)カットされた菱形形状のガラス基板SBを有している。そして、このガラス基板SBの裏面には、光硬化性樹脂で形成された複数のレンズLS2がアレイ配置されている。これら複数のレンズLS2は、対向する発光素子グループEGの配置に対応して3行千鳥で配置されている(図4)。
【0046】
そして、図3、図6に示すように、複数のレンズアレイLA2が長手方向LGDに並んで配設されている。つまり、この実施形態では、長手方向LGDに並ぶ複数のレンズアレイLA2をスペーサーSP2が支持して、1つの長尺レンズアレイL−LA2が構成されている。ちなみに、直方形状を有するスペーサーSP2の長さは、レンズアレイLA2の幅方向LTDの端辺の長手方向LGDの長さより短く、1枚のレンズアレイLA2は、長手方向LGDに並ぶ複数のスペーサーSP2で支持される。具体的には、これらスペーサーSP2のうち、中央スペーサーSP2−bはレンズアレイLA2の長手方向LGDの略中央を支持し、端部スペーサーSP2−aは長手方向LGDに隣り合う2枚のレンズアレイLA2、LA2の隙間BD2を跨いで、該レンズアレイLA2、LA2を支持する。なお、スペーサーSP2とレンズアレイLA2とは接着剤等により固定されている。
【0047】
こうして2枚のレンズアレイLA1およびレンズアレイLA2は厚さ方向TKDに対向して配置されている。その結果、レンズアレイLA1の複数のレンズLS1とレンズアレイLA2の複数のレンズLS2とは一対一の対応関係で対向しており、互いに対向するレンズLS1とレンズLS2とは厚さ方向TKDからの平面視において重なり合うように、レンズアレイLA1、LA2は位置調整がされている。
【0048】
さらに、この実施形態では、長手方向LGDに長尺な支持ガラスSSが設けられている。詳述すると、長手方向LGDにおいて、この支持ガラスSSはレンズアレイLA2よりも長く形成されて、長尺レンズアレイL−LA2と略同じ長さを備えている。そして、この支持ガラスSSが長尺レンズアレイL−LA2の一方面に取り付けられており、言わば、支持ガラスSSが複数のレンズアレイLA2をスペーサーSP2の逆側から支持している。そして、この支持ガラスSSの表面SS−h(一方平面)が、感光体ドラム21の表面21s(ドラム周面)にクリアランス(距離di)を空けて対向する(図7)。
【0049】
そして、この実施形態では、厚さ方向TKDに互いに対向するレンズLS1とレンズLS2とが1個の結像光学系を構成する。この結像光学系は、反転した縮小像を形成するものであり、その倍率は負であるとともに1未満の絶対値を有している。したがって、発光素子Eから射出された光ビームは、レンズLS1、LS2を透過した後に支持ガラスSSの表面SS−hから射出されてスポットSTとして感光体ドラム21表面に照射される(図5)。そして、特開2008−036937号公報の図11等に記載のように、感光体ドラム21表面の副走査方向SDへの移動に応じて各発光素子Eの発光を制御することで、主走査方向MDに伸びるライン潜像を形成することができる。
【0050】
ところで、ライン潜像形成に供する各スポットSTは、潜像の解像度に応じた大きさで形成される必要がある。しかしながら、上述したように、ラインヘッド29(露光ヘッド)と感光体ドラム21(像担持体)とが適切に位置決めされていないと、このスポットSTがぼやけてしまい、所望の大きさのスポットSTが形成できない場合があった。そこで、本実施形態の画像形成装置では、感光体ドラム21に対してラインヘッド29を正確に位置決めするために、ラインヘッド支持機構6が設けられている。
【0051】
図7は、ラインヘッド支持機構を示す長手方向部分断面図である。図8は、ラインヘッド支持機構を示す斜視図である。なお、このラインヘッド支持機構6は、ラインヘッド29の長手方向LGDの両端のそれぞれに対して配置されているが、各ラインヘッド支持機構6、6の構成は同じであるので、以下では、長手方向LGDの一方側に配置されたラインヘッド支持機構6の構成について詳述する。また、上述したとおり、厚さ方向TKDはレンズLS1、LS2で構成される結像光学系の光軸と平行である。そこで、図7、図8(および、後述する図9、図10)では、厚さ方向TKDに光軸方向OAが併記されている。
【0052】
図7および図8に示すように、ラインヘッド支持機構6は、ラインヘッド29を保持する保持部材61、感光体ドラム21の表面21s(ドラム周面21s)に当接するギャップコロ63、保持部材61に固定されてギャップコロ63を支持するコロ支持部材65、保持部材61に嵌合するスライダー67および保持部材61を厚さ方向TKDに付勢する押し付けバネ69を備えている。
【0053】
保持部材61は、感光体ドラム21の光軸方向OAの反対側からラインヘッド29を支持する。より具体的には、保持部材61の光軸方向OAの一方側は、光軸方向OAに直交する平面形状に仕上げられた保持面61sとなっており、この保持面61sがラインヘッド29の剛性部材299に当接して固定されている。さらに、この保持部材61の保持面61sには、コロ支持部材65が取り付けられている。コロ支持部材65は、感光体ドラム21の回転軸に平行なコロ支持軸651を有しており、このコロ支持軸651にギャップコロ63が回転自在に支持されている。ギャップコロ63はコロ支持軸651を中心とした円盤形状を有している。そして、ギャップコロ63は、その周面を感光体ドラム表面21sに当接させながら、感光体ドラム表面21sの回転に伴なって従動回転する。
【0054】
また、保持部材61とハウジング本体3の本体フレーム32との間には押し付けバネ69が光軸方向OAに向けて設けられている。そして、押し付けバネ69の一端が保持部材61の光軸方向OA他方側(保持面61sの反対側)に取り付けられるとともに、押し付けバネ69の他端が本体フレーム32に取り付けられている。したがって、保持部材61は、押し付けバネ69により光軸方向OAに付勢されて、光軸方向OAに移動自在となっている。また、保持部材61の光軸方向OAの他方側には円柱形状の嵌合孔61hが光軸方向OAに形成されており、この嵌合孔61hには円柱形状のスライダー67が嵌合している。
【0055】
以上のように、保持部材61は押し付けバネ69から付勢力を受けるが、保持部材61の移動は嵌合孔61hおよびスライダー67によって光軸方向OAへ向かうように規制されている。したがって、保持部材61は、光軸方向OAへと付勢されることとなる。これに対して保持部材61の一方側にはギャップコロ63が設けられている。したがって、保持部材61は、押し付けバネ69からの付勢力でギャップコロ63を感光体ドラム表面21sに押し付けた状態で、感光体ドラム表面21sから所定間隔を空けた位置で安定する。そして、このような保持部材61によりラインヘッド29を保持することで、感光体ドラム表面21sから所定のクリアランスを空けてラインヘッド29を支持することが可能となる。より具体的には、本実施形態では、次のような関係を満たすように、ラインヘッド29は支持されている。
【0056】
図9は、ラインヘッドの支持態様の詳細を示す図であり、A−A線断面を幅方向LTDから平面視した場合に相当する。同図に示す発光素子Esのように、本実施形態のラインヘッド29には、波長λ1および当該波長λ1と異なる波長λ2を有する光を発光する発光素子が設けられている。そして、同図に示す結像光学系LS1s、LS2sは、この発光素子Esに対向するとともに、波長λ1の光を結像位置P1に結像し、波長λ2の光を結像位置P1よりも光軸方向OAに距離Δだけ離れた結像位置P2に結像する。図10は、結像位置P1、P2の近傍(図9の破線円)を拡大した図面である。図10に示すように、発光素子Esからの光は、結像位置P1と、当該結像位置P1から光軸方向OAに距離Δだけ離れた結像位置P2とに結像されている。
【0057】
そして、本実施形態では、距離d1、距離d2および距離diが次の関係式、
d1<di<d2 …関係式A
を満たすように、ラインヘッド29は支持されている。ここで、
d1:結像光学系LS1s、LS2sの光学面のうち感光体ドラム表面21sに最も近い光学面(支持ガラスの表面SS−h)と結像位置P1との光軸方向OAへの距離、
d2:結像光学系LS1s、LS2sの光学面のうち感光体ドラム表面21sに最も近い光学面(支持ガラスの表面SS−h)と結像位置P2との光軸方向OAへの距離、
di:結像光学系LS1s、LS2sの光学面のうち感光体ドラム表面21sに最も近い光学面(支持ガラスの表面SS−h)と感光体ドラム表面21sとの光軸方向OAへの距離
である。
【0058】
なお、本実施形態では、上述のような発光素子Esおよび結像光学系LS1s、LS2sは、ラインヘッド29の潜像形成範囲の略中央(主走査方向MDの略中央)に配設されている。その場合、その他の結像光学系LS1、LS2が発光素子Eからの光を結像する結像位置は、感光体ドラム表面21sから大きく離れることは無く、ぼやけの少ないスポットSTによって良好な潜像を形成することができる。
【0059】
以上のように、本実施形態では、第1レンズLS1のレンズ面(第1のレンズ面)を入射面とするとともに、支持ガラスの表面SS−hを射出面とする結像光学系と、発光素子Esとが設けられている。また、この発光素子Esは、波長λ1(第1の波長)および波長λ2(第2の波長)を有する光を発光するものであり、結像光学系LS1s、LS2sは各波長λ1、λ2の光を光軸方向OAに異なる位置(結像位置P1および結像位置P2)に結像する。そして、このような光学系を有するラインヘッド29と感光体ドラム21とを、ラインヘッド支持機構6(支持部)が上記関係式Aを満たすように支持する。すなわち、この画像形成装置では、結像位置P1(第1の結像位置)と結像位置P2(第2の結像位置)との間に感光体ドラム21の表面21sが位置するように、ラインヘッド29が感光体ドラム21に対して位置決めされている。そして、このようにラインヘッド29を感光体ドラム21に対して位置決めすることで、結像光学系LS1s、LS2sの2つの結像位置P1とP2との範囲以内(つまり、図10の符号Δで示す範囲以内)に感光体ドラム21の表面21sを位置させることができ、その他の結像光学系LS1、LS2が発光素子Eからの光を感光体ドラム21の近くに結像させることができる。そして、ラインヘッド29はぼやけの少ないスポットSTによって良好な潜像を形成することができる。ちなみに、結像位置P1と結像位置P2との範囲以内とは、結像位置P1および結像位置P2を含んだこれらの結像位置の間の区間を指す。
【0060】
また、ラインヘッド29は、上記発光素子Esのほかに発光素子Eを有するとともに、上記結像光学系LS1s、LS2sのほかに発光素子Eからの光を結像する結像光学系LS1、LS2を有している。そして、結像光学系LS1s、LS2s以外の結像光学系LS1、LS2による光の結像位置は、光軸方向OA1に結像位置P1と結像位置P2との範囲以内にあることが望ましく、その場合、結像光学系LS1s、LS2s以外の結像光学系LS1、LS2は、さらにぼやけの少ないスポットSTを形成することが可能となっている。つまり、結像光学系LS1s、LS2sの2つの結像位置P1、P2の少なくとも一方は感光体ドラム21の表面の近くに位置するように、ラインヘッド29が感光体ドラム21に対して位置決めされている。したがって、結像光学系LS1s、LS2s以外の結像光学系LS1、LS2の光の結像位置を、光軸方向OAに結像位置P1と結像位置P2との範囲以内としておけば、結像光学系LS1s、LS2s以外の結像光学系LS1、LS2の光の結像位置を感光体ドラム21の表面21sから距離Δ以内に位置させることができ、その結果、ラインヘッド29による良好な潜像形成が可能となる。
【0061】
また、上記実施形態では、ラインヘッド支持機構6は、ラインヘッドを感光体ドラム21の光軸方向OAの反対側で保持する保持部材61と、保持部材61に配設されて感光体ドラム21に当接するギャップコロ63(当接部材)とを有している。このように、感光体ドラム21に当接するギャップコロ63とラインヘッド29とを保持部材61を介して接続することで、ラインヘッド29の感光体ドラム21に対する位置決め精度を向上させることができる。
【0062】
その他
以上のように、上記実施形態では、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当し、感光体ドラム21が本発明の「像担持体」に相当し、ラインヘッド支持機構が本発明の「支持部」に相当する。また、発光素子Esが本発明の「発光素子」に相当し、波長λ1の光が本発明の「第1の波長の光」に相当し、波長λ2の光が本発明の「第2の波長の光」に相当し、結像光学系LS1s、LS2sが本発明の「光学系」に相当し、結像位置P1が本発明の「第1の結像位置」に相当し、結像位置P2が本発明の「第2の結像位置」に相当する。また、発光素子Es以外の発光素子Eが本発明の「第2の発光素子」に相当し、結像光学系LS1s、LS2s以外の結像光学系が本発明の「第2の光学系」に相当する。また、ギャップコロ63が本発明の「当接部」に相当する。また、レンズLS1のレンズ面が本発明の「第1のレンズ面」に相当し、支持ガラス表面SS−hが本発明の「第2のレンズ面」に相当する。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、波長λ1、λ2の光を射出する発光素子Es以外の発光素子Eも2つの波長成分の光を射出するように構成しても良い。さらに、このような発光素子Eからの各波長の光を、結像光学系LS1s、LS2s以外の結像光学系LS1、LS2が光軸方向OAに互いに異なる結像位置に結像するように構成しても良い。
【0064】
この際、光軸方向OAに異なる2つの結像位置に光を結像する結像光学系LS1、LS2が複数存在することとなるが、これら複数の結像光学系LS1、LS2の全てが上記関係式Aを満たす必要は無い。つまり、少なくとも1つの結像光学系LS1、LS2(LS1s、LS2s)が上記関係式Aを満たしていれば良い。
【0065】
また、上記実施形態では、支持ガラスSSが設けられていたが、支持ガラスSSを排してラインヘッド29を構成しても良い。この場合は、レンズアレイLA2のガラス基板SBの表面SB−h(図5)が、「結像光学系LS1s、LS2sの光学面のうち感光体ドラム表面21sに最も近い光学面」となる。
【0066】
また、上記実施形態では、複数のレンズアレイLA1は、同一の形状および大きさを備えていたが、これらについても種々の変更が可能である。さらに、複数のレンズアレイLA2についても同様の変更が可能である。
【0067】
また、上記実施形態では、複数のスペーサーSP1は、同一の形状および大きさを備えていたが、これらについても種々の変更が可能である。さらに、複数のスペーサーSP2についても同様の変更が可能である。
【0068】
また、上記実施形態の結像光学系は、反転像を形成するものであったが、正転像(つまり、反転していない像)を形成するものであっても良い。
【0069】
また、上記実施形態の結像光学系は、縮小像を形成するものであったが、拡大像を形成するものであっても良い。
【0070】
また、上記実施形態では、レンズアレイLA1の裏面(厚さ方向TKDの他方面)にレンズLS1が形成されていたが、レンズLS1の形成位置はこれに限られない。レンズアレイLA2のレンズLS2についても同様である。
【0071】
また、上記実施形態では、各レンズアレイLA1、LA2において3行千鳥でレンズが並んでいたが、レンズの配置態様はこれに限られない。
【0072】
また、上記実施形態では、レンズアレイLA1、LA2は、ガラス製の光透過性基板SBに樹脂製のレンズLS1、LS2を形成したものであった。しかしながら、レンズアレイLA1、LA2を1つの材料で一体的に構成することもできる。
【0073】
また、上記実施形態では、複数の発光素子グループEGは3行千鳥で配置されていたが、複数の発光素子グループEGの配置態様はこれに限られない。
【0074】
また、上記実施形態では、15個の発光素子Eから発光素子グループEGが構成されている。しかしながら、発光素子グループEGを構成する発光素子Eの個数はこれに限られない。
【0075】
また、上記実施形態では、発光素子グループEG内において、複数の発光素子Eが2行千鳥で配置されていたが、発光素子グループEG内での複数の発光素子Eの配置態様はこれに限られない。
【0076】
また、上記実施形態では、発光素子Eとしてボトムエミッション型の有機EL素子が用いられている。しかしながら、トップエミッション型の有機EL素子を発光素子Eとして用いても良く、あるいは有機EL素子以外のLED(Light Emitting Diode)等を発光素子Eとして用いても良い。
【符号の説明】
【0077】
E、Es…発光素子、 293…ヘッド基板、 LA1、LA2…レンズアレイ、 LS1、LS2…レンズ(光学系)、 LS1s、LS2s…レンズ(光学系)、 21…感光体ドラム(像担持体)、 6…ラインヘッド支持機構(支持部)、 61…保持部材、 63…ギャップコロ(当接部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長および第2の波長を有する光を発光する発光素子と、前記発光素子で発光された光が入射される第1のレンズ面、および前記第1のレンズ面に入射された光を射出する第2のレンズ面を有する光学系とを備え、前記光学系により前記第1の波長の光を第1の結像位置に結像すると共に、前記第2の波長の光を前記第1の結像位置と前記光学系の光軸方向に異なる第2の結像位置に結像する露光ヘッドと、
前記露光ヘッドの前記第2のレンズ面から射出された光が照射されて潜像が形成される潜像担持体と、
前記露光ヘッドを支持する支持部と、
を備え、前記露光ヘッドと前記潜像担持体とを次の関係を有するように、前記露光ヘッドを前記支持部材で支持することを特徴とする画像形成装置。
d1<di<d2
ここで、
d1:前記第2のレンズ面と前記第1の結像位置との間の前記光軸方向の距離
d2:前記第2のレンズ面と前記第2の結像位置との間の前記光軸方向の距離
di:前記第2のレンズ面と前記像担持体との間の前記光軸方向の距離
である。
【請求項2】
前記露光ヘッドは、光を発光する第2の発光素子と、
前記第2の発光素子で発光された光を結像する第2の光学系と、を有する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2の光学系により結像される光の結像位置は、前記光軸方向の前記第1の結像位置と前記第2の結像位置との間にある請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記支持部は、前記露光ヘッドを保持する保持部材と、前記保持部材に配設されて前記潜像担持体と当接する当接部材と、を有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−62948(P2011−62948A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216522(P2009−216522)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】