説明

画像形成装置

【課題】連続印字時の異音の発生を抑制することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置(カラープリンタ1)は、トナー像が形成される複数の感光体ドラム42Aと、複数の感光体ドラム42Aとの間で用紙Sを搬送する無端状の搬送ベルト43Cと、搬送ベルト43Cに接触して搬送ベルト43Cに付着したトナーを回収するクリーニングローラ61と、クリーニングローラ61との間に電流が流れることでクリーニングローラ61に付着したトナーを回収する回収ローラ62と、クリーニングローラ61と回収ローラ62の間に流れる電流の大きさを制御する制御装置10とを備える。制御装置10は、印字開始から基準時間が経過したときには、印字終了前であってもクリーニングローラ61と回収ローラ62の間に流れる電流を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の感光体との間で記録シートを搬送する搬送ベルトを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の感光体との間で記録シートを搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトに付着した現像剤を回収するクリーニングユニットとを備えた画像形成装置が知られている。特許文献1には、感光体の表面に接触しているローラ(特許文献1における回収部材)に感光体上に残留した現像剤を一時的に蓄積しておき、印字終了後などに、ローラに蓄積した現像剤を感光体を介して搬送ベルトに吐き出し、クリーニングユニットで回収するように構成された画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−3377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の画像形成装置においては、動作モードに拘わらずに、クリーニングユニットに同じバイアスが印加されていたため、特に印字動作が連続して行われた場合、1次クリーニングローラと搬送ベルトとの間の摩擦力が上昇していき、異音が発生する可能性があった。これは、1次クリーニングローラと搬送ベルトとの間において、いわば潤滑剤として作用する現像剤が、1次クリーニングローラ(クリーニングローラ)から2次クリーニングローラ(回収部材)に回収されることで徐々に少なくなっていくことに起因する。
【0005】
本発明は、以上のような背景に鑑みてなされたものであり、連続印字時の異音の発生を抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、現像剤像が形成される複数の感光体と、前記複数の感光体との間で記録シートを搬送する無端状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトに接触して前記搬送ベルトに付着した現像剤を回収するクリーニングローラと、前記クリーニングローラとの間に電流が流れることで前記クリーニングローラに付着した現像剤を回収する回収部材と、前記クリーニングローラと前記回収部材の間に流れる電流の大きさを制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、印字開始から基準時間が経過したときには、印字終了前であっても前記クリーニングローラと前記回収部材の間に流れる電流を小さくすることを特徴とする。
【0007】
このように構成された画像形成装置によれば、印字開始から基準時間が経過したときには、印字終了前であってもクリーニングローラと回収部材の間に流れる電流を小さくするので、クリーニングローラから回収部材に回収される現像剤の量を減らすことができる。これにより、搬送ベルトとクリーニングローラとの間に、潤滑剤として作用する現像剤をある程度残すことができるので、クリーニングローラと搬送ベルトとの間の摩擦力の上昇を抑制することができ、連続印字時の異音の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搬送ベルトとクリーニングローラとの間に現像剤をある程度残すことができるので、クリーニングローラと搬送ベルトとの間の摩擦力の上昇を抑制することができ、連続印字時の異音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態に係る画像形成装置の一例としてのカラープリンタの概略構成を示す図である。
【図2】湿度とクリーニング電流の関係を示すテーブルである。
【図3】クリーニング電流の制御を示すタイムチャートである。
【図4】印字動作時のクリーニング電流の制御を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態に係るクリーニング電流の制御を示すタイムチャートである。
【図6】第3実施形態に係る前回印字動作時に入力された印字ジョブに含まれる印字ドット数と次回印字開始後の基準時間の関係を示すテーブルである。
【図7】変形例に係るクリーニング電流の制御を示すタイムチャート(a),(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、まず、画像形成装置の一例としてのカラープリンタ1の概略構成と基本的な動作について簡単に説明した後、本発明の特徴部分に係る構成および制御について詳細に説明する。
【0011】
また、以下の説明において、方向は、カラープリンタ1を使用するユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1における左側を「前」、右側を「後」とし、手前側を「右」、奥側を「左」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0012】
<カラープリンタの概略構成>
図1に示すように、カラープリンタ1は、装置本体の一例としての本体筐体2内に、用紙S(記録シート)を供給する給紙部3と、供給された用紙Sに画像を形成する画像形成部4と、画像が形成された用紙Sを排出する排紙部5と、クリーニング部6とを主に備えている。
【0013】
給紙部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、給紙トレイ31と、用紙押圧板32と、給紙機構33とを主に備えている。給紙トレイ31に収容された用紙Sは、用紙押圧板32によって上方に寄せられ、給紙機構33によって画像形成部4に供給される。
【0014】
画像形成部4は、露光ユニット41と、4つ(複数)のプロセスユニット42と、転写ユニット43と、定着ユニット44とを主に備えている。
【0015】
露光ユニット41は、本体筐体2内の上部に設けられ、図示しないレーザ光源と、符号を省略して示すポリゴンミラー、複数のレンズおよび複数の反射鏡とを主に備えている。画像データに基づいてレーザ光源から出射されたレーザ光は、ポリゴンミラーや反射鏡で反射されたり、レンズを通過したりして、各感光体ドラム42Aの表面で高速走査される。
【0016】
プロセスユニット42は、給紙トレイ31と露光ユニット41の間で前後に並んで配置され、感光体の一例としての感光体ドラム42Aと、帯電器42Bと、保持ローラ42Cと、符号を省略して示す現像ローラ、供給ローラ、層厚規制ブレードおよびトナー(現像剤)を収容するトナー収容部とを主に備えている。各プロセスユニット42は、トナー収容部内に収容されるトナーの色が相違するのみであり、構成は略同一である。
【0017】
保持ローラ42Cは、金属製のローラ軸を導電性のゴム材などからなるローラ体で被覆したローラであり、感光体ドラム42Aに接触した状態で配置されている。この保持ローラ42Cは、公知の制御により、印字動作のときには感光体ドラム42Aの表面に残留したトナーを吸着して一時的に保持し、クリーニング動作のときには保持したトナーを感光体ドラム42Aに吐き出すようなバイアスが印加される。
【0018】
転写ユニット43は、給紙トレイ31とプロセスユニット42の間に設けられ、駆動ローラ43Aと従動ローラ43Bの間で張設された無端状の搬送ベルト43Cと、4つの転写ローラ43Dとを主に備えている。搬送ベルト43Cは、外側の面が各感光体ドラム42Aに接し、その内側に各転写ローラ43Dが各感光体ドラム42Aとの間で搬送ベルト43Cを挟持するように配置されていることで、複数の感光体ドラム42Aとの間で用紙Sを搬送する。
【0019】
定着ユニット44は、プロセスユニット42の後方に設けられ、加熱ローラ44Aと、加熱ローラ44Aと対向配置されて加熱ローラ44Aを押圧する加圧ローラ44Bとを主に備えている。
【0020】
排紙部5は、定着ユニット44から搬出された用紙Sを案内するための排紙経路51と、用紙Sを搬送する複数の搬送ローラ52とを主に備えている。
【0021】
<印字動作>
次に、カラープリンタ1における印字動作の概略について説明する。
カラープリンタ1は、パーソナルコンピュータ(パソコン)などの外部の装置から、印字開始の指示や、印字すべき画像データ、印字枚数の情報などを含む印字ジョブが入力されると、まず、感光体ドラム42Aや搬送ベルト43Cを回転駆動させる。
【0022】
そして、回転駆動する感光体ドラム42Aの表面が、帯電器42Bにより一様に帯電された後、露光ユニット41からのレーザ光によって露光されることで、感光体ドラム42A上に画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0023】
また、このとき、トナー収容部内のトナーは、供給ローラを介して現像ローラに供給され、現像ローラと層厚規制ブレードの間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ上に担持される。そして、現像ローラ上に担持されたトナーが、静電潜像が形成された感光体ドラム42Aに供給されることで、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム42A上にトナー像(現像剤像)が形成される。
【0024】
ここまでの間の適宜なタイミングにおいて、給紙機構33が給紙トレイ31に収容された用紙Sを画像形成部4に供給する。なお、本実施形態においては、給紙機構33が給紙トレイ31に収容された用紙S(1枚目の用紙S)を画像形成部4に向けて送り出したとき(ピックアップしたとき)を、後述する基準時間のカウントを開始する時点としての「印字開始」のときとする。
【0025】
その後、給紙部3から供給された用紙Sが、感光体ドラム42Aと搬送ベルト43C(転写ローラ43D)の間を搬送されることで、各感光体ドラム42A上に形成されたトナー像が用紙S上に順次重ね合わせて転写される。トナー像が転写された用紙Sは、加熱ローラ44Aと加圧ローラ44Bの間を搬送されることでトナー像が熱定着される。
【0026】
そして、トナー像が熱定着された用紙S(画像が形成された用紙S)は、搬送ローラ52によって排紙経路51を搬送され、本体筐体2の外部に排出されて排紙トレイ22上に載置される。
【0027】
<クリーニング部の構成とクリーニング動作>
次に、クリーニング部6の構成とクリーニング動作の概略について説明する。
クリーニング部6は、搬送ベルト43Cの下方に設けられ、クリーニングローラ61と、回収部材の一例としての回収ローラ62と、掻き取りブレード63と、トナー貯留部64と、クリーニングローラ61との間で搬送ベルト43Cを挟持するように配置されたバックアップローラ65とを主に備えている。
【0028】
クリーニングローラ61は、金属製のローラ軸を導電性の発泡材料(例えばウレタンなど)からなるローラ体で被覆した発泡ローラであり、搬送ベルト43Cに接触した状態で配置されている。このクリーニングローラ61は、搬送ベルト43Cを介して、バックアップローラ65との間に電流が流れることで、搬送ベルト43Cに付着したトナーや紙粉などをその表面に付着させて回収する。
【0029】
回収ローラ62は、クリーニングローラ61に圧接する金属等の導電性の硬質材料からなるローラ(例えばメタルローラなど)であり、クリーニングローラ61との間に電流が流れることでクリーニングローラ61に付着したトナーなどをその表面に付着させて回収する。
【0030】
なお、カラープリンタ1は、搬送ベルト43Cの回転駆動の開始とほぼ同じタイミングで、バックアップローラ65と回収ローラ62の間にバイアスを印加するように構成されている。このバイアスは、搬送ベルト43Cに付着したトナーなどが搬送ベルト43Cからクリーニングローラ61へ移動し、さらにクリーニングローラ61から回収ローラ62へ移動するような電流が流れるバイアスである。また、バイアスの印加は、搬送ベルト43Cの駆動停止とほぼ同じタイミングで停止するように構成されている。
【0031】
掻き取りブレード63は、回収ローラ62に圧接して回収ローラ62の表面に付着したトナーなどを掻き落とすブレードである。
トナー貯留部64は、掻き取りブレード63によって掻き落とされたトナーなどを貯留する容器状の部材である。
【0032】
印字動作の終了後などに実行されるクリーニング動作のときには、感光体ドラム42Aや搬送ベルト43Cを回転駆動させるとともに、バックアップローラ65と回収ローラ62の間にバイアスが印加される。そして、保持ローラ42Cに保持されたトナーが感光体ドラム42Aを介して搬送ベルト43Cに吐き出され、搬送ベルト43Cに移動する。
【0033】
その後、搬送ベルト43Cに付着したトナーは、搬送ベルト43Cの回転駆動により、搬送ベルト43C(バックアップローラ65)とクリーニングローラ61の間に移動し、クリーニングローラ61で回収される。クリーニングローラ61で回収されたトナーは、回収ローラ62によって回収され、掻き取りブレード63によって回収ローラ62から掻き落とされてトナー貯留部64に貯留される。
【0034】
<印字動作時のクリーニング電流の制御>
次に、本発明の特徴部分に係る構成および制御(印字動作時のクリーニング電流の制御)について詳細に説明する。
【0035】
本実施形態において、カラープリンタ1は、本体筐体2内に、湿度センサ91と、制御装置10をさらに備えている。
湿度センサ91は、本体筐体2内の湿度を検出する公知のセンサであり、本体筐体2内の適宜な位置に設けられている。湿度センサ91が検出した湿度は、制御装置10に出力される。
【0036】
制御装置10は、図示しないCPU、RAM、ROM、入出力インターフェースなどを有しており、外部の装置から入力される印字ジョブや、湿度センサ91などの各種センサからの出力に基づいて、カラープリンタ1の動作を制御する。
【0037】
本実施形態において、制御装置10は、印字動作が実行されているときに、バックアップローラ65と回収ローラ62の間に印加するバイアス、言い換えると、バックアップローラ65、クリーニングローラ61および回収ローラ62の間に流れる電流(以下、クリーニング電流という。)の大きさを制御する。
【0038】
なお、本発明において特に重要なのは、印字動作時にクリーニングローラ61と回収ローラ62の間に流れる電流を制御することなので、以下の説明においては、「クリーニングローラ61と回収ローラ62の間」ということがある。しなしながら、本実施形態において、実際にクリーニング電流が印加されているのはバックアップローラ65と回収ローラ62の間である。
【0039】
制御装置10による制御をより詳細に説明すると、制御装置10は、印字開始(1枚目の用紙Sがピックアップされたとき)から基準時間が経過したときには、印字終了前であってもクリーニングローラ61と回収ローラ62の間に流れるクリーニング電流を基準時間が経過する前よりも小さくする。
【0040】
ここで、本実施形態において、基準時間は、印字開始から所定枚数(一例として10枚とする。)の用紙Sに連続して印字(画像形成)が行われるまでの間(時間)である。なお、10枚目の用紙Sに印字が行われた否かは、例えば、排紙経路51に設けられた図示しない用紙センサが10枚目の用紙Sの通過を検知したか否かなど、公知の構成や方法によって判定することができるので、本明細書においては詳細な説明を省略する。
【0041】
また、「印字終了」とは、印字動作が終了するときをいい、本実施形態においては、カラープリンタ1に蓄積されたすべての印字ジョブの処理(用紙Sへの印字)が終了するときとする。
【0042】
クリーニングローラ61と回収ローラ62の間に流すクリーニング電流は、湿度センサ91が検出した湿度に基づいて、図2に示すような、予め設定され、制御装置10に記憶されたテーブルによって決定される。なお、図2の湿度欄の各行は、左の数値以上、右の数値未満(例えば、7行目について、45%RH以上50%RH未満)であることを示し、最も下の行のみ、80%RH以上100%RH以下であることを示している。また、クリーニング電流欄の値は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
カラープリンタ1に印字ジョブが入力されたとき、例えば、本体筐体2内の湿度が20%RH以上25%RH未満であった場合、制御装置10は、図2に示すテーブルから、基準時間経過前のクリーニング電流を35μAに決定し、図3に示すように、35μAのクリーニング電流をクリーニングローラ61と回収ローラ62の間に印加する(印加開始参照)。
【0044】
その後、印字開始から基準時間が経過したとき(10枚の用紙Sに連続して印字が行われたとき)には、制御装置10は、図2に示すテーブルから、基準時間経過時以後のクリーニング電流を15μAに決定し、図3に示すように、15μAのクリーニング電流をクリーニングローラ61と回収ローラ62の間に印加する(10枚連続印字参照)。
【0045】
ここで、図2に示すように、制御装置10は、本体筐体2内の湿度が50%RH以上である場合、基準時間経過の前後においてクリーニング電流をいずれも35μAとして切り替えないように構成されている。すなわち、本実施形態において、制御装置10は、本体筐体2内の湿度が50%RH未満(所定値以下)であることを条件として、印字開始から基準時間が経過したときにクリーニングローラ61と回収ローラ62の間に流れるクリーニング電流を基準時間が経過する前よりも小さくするように構成されている。
【0046】
また、図2に示すように、基準時間経過時以後のクリーニング電流は、本体筐体2内の湿度が、45%RH以上50%RH未満のとき30μA、35%RH以上45%RH未満のとき25μA、25%RH以上35%RH未満のとき20μA、0%RH以上25%RH未満のとき15μAと徐々に小さくなるように設定されている。すなわち、本実施形態において、制御装置10は、本体筐体2内の湿度が低い場合には、本体筐体2内の湿度が高い場合よりも、クリーニングローラ61と回収ローラ62の間に流れるクリーニング電流を小さくするように構成されている。
【0047】
以上の印字動作時のクリーニング電流の一連の制御について、図4を参照しながらより詳細に説明する。
【0048】
図4に示すように、印字ジョブが入力されたとき(スタート)、制御装置10は、湿度センサ91の出力値(本体筐体2内の湿度)を取得する(S10)。そして、制御装置10は、取得した湿度に基づいて、図2に示すテーブルから、基準時間経過前のクリーニング電流を決定し(S20)、クリーニングローラ61と回収ローラ62の間に決定したクリーニング電流(35μA)を印加する(S30、図3の印加開始参照)。
【0049】
その後、制御装置10は、印字動作を開始する(1枚目の用紙Sをピックアップする)(図3の印字開始参照)。次いで、制御装置10は、適宜なタイミングにおいて、印字ジョブが終了したか(すべて処理されたか)否かを判定する(S40)。そして、例えば、印字ジョブに含まれる印字枚数が1枚であった場合のように、印字ジョブが終了した場合(S40,Yes)、制御装置10は、クリーニング電流(35μA)の印加を停止し(S90)、処理を終了する(エンド)。
【0050】
一方、印字ジョブが終了していない場合(S40,No)、制御装置10は、印字開始から基準時間が経過したか否か、すなわち、印字開始から10枚の用紙Sに連続して印字が行われたか否かを判定する(S50)。そして、印字開始から基準時間が経過していない場合(S50,No)、制御装置10は、ステップS40に戻る。
【0051】
印字開始から基準時間が経過した場合(S50,Yes)、制御装置10は、ステップS10で取得した湿度に基づいて、図2に示すテーブルから、基準時間経過時以後のクリーニング電流を決定する(S60)。
【0052】
ここで、湿度が50%RH以上であった場合には、図2に示すテーブルから、基準時間経過時以後のクリーニング電流の値が35μAと決定される。その後、制御装置10は、クリーニングローラ61と回収ローラ62の間に決定したクリーニング電流(35μA)を印加する(S70)。なお、この場合、決定されたクリーニング電流の値は、基準時間経過の前後において変化していないので、実際の制御としては、クリーニング電流を連続的に印加することとなる(図3の二点鎖線参照)。
【0053】
また、湿度が50%RH未満、例えば、20%RH以上25%RH未満であった場合には、図2に示すテーブルから、基準時間経過時以後のクリーニング電流の値が15μAと決定される(S60)。その後、制御装置10は、クリーニングローラ61と回収ローラ62の間に決定したクリーニング電流(15μA)を印加する(S70)。これにより、制御装置10は、クリーニングローラ61と回収ローラ62の間に流れるクリーニング電流を小さい値(15μA)に変更することとなる(図3の10枚連続印字参照)。
【0054】
その後、制御装置10は、適宜なタイミングにおいて、印字ジョブが終了したか否かを判定する(S80)。そして、印字ジョブが終了していない場合(S80,No)、制御装置10は、印字ジョブが終了するまで、ステップS80を繰り返す。印字ジョブが終了した場合(S80,Yes)、制御装置10は、クリーニング電流の印加を停止し(S90、図3の印加終了参照)、処理を終了する(エンド)。
【0055】
以上によれば、本実施形態において以下のような作用効果を得ることができる。
印字開始から基準時間が経過したときには、印字終了前であってもクリーニングローラ61と回収ローラ62の間に流れるクリーニング電流を小さくするので、クリーニングローラ61から回収ローラ62に回収されるトナーの量を減らすことができる。これにより、搬送ベルト43Cとクリーニングローラ61との間に、潤滑剤として作用するトナーをある程度残すことができるので、クリーニングローラ61と搬送ベルト43Cとの間の摩擦力の上昇を抑制することができ、結果として、連続印字時の異音の発生を抑制することができる。
【0056】
なお、念のための述べておくと、クリーニング電流を小さくすることによって搬送ベルト43Cとクリーニングローラ61との間に残るトナーは、搬送ベルト43Cによって感光体ドラム42Aとの間に運ばれても、用紙Sの裏に汚れとして現れることがない程度の量となっている。
【0057】
本実施形態では、本体筐体2内の湿度が所定値以下(50%RH未満)であることを条件としてクリーニング電流を小さくするので、特にトナーが搬送ベルト43Cからクリーニングローラ61を介して回収ローラ62に移動しやすい低湿環境のときに、連続印字時の異音の発生をより確実に抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態では、本体筐体2内の湿度が50%RH未満のときにおいて、湿度が低い場合には湿度が高い場合よりもクリーニング電流をより小さくするので、湿度に応じて、連続印字時の異音の発生を一層確実に抑制することができる。
【0059】
なお、本実施形態では、基準時間として、印字開始から所定枚数(10枚)の用紙Sに連続して印字が行われるまでの間を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、基準時間は、印字開始から所定時間(一例として20秒など)が経過するまでの間などであってもよい。
【0060】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下説明する実施形態では、先に説明した実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付して、その説明を省略することとする。
【0061】
前記第1実施形態では、基準時間(印字開始から所定枚数の用紙Sに連続して印字が行われるまでの間)が略一定の時間である例、すなわち、制御装置10が基準時間を変化させない例を示した。本実施形態は、制御装置10が、基準時間を所定のパラメータ(一例として本体筐体2内に湿度)に応じて変化させる形態である。
【0062】
図5に示すように、本実施形態の制御装置10は、印字ジョブが入力されたとき、クリーニング電流I1をバックアップローラ65と回収ローラ62の間に印加する(印加開始参照)。その後、制御装置10は、印字開始から基準時間(5枚連続印字または10枚連続印字参照)が経過したとき、クリーニング電流をI1よりも小さいI2とし、バックアップローラ65と回収ローラ62の間に印加する。
【0063】
本実施形態の制御装置10は、本体筐体2内の湿度が予め設定された閾値以上の場合、基準時間を印字開始から10枚の用紙Sに連続して印字が行われるまでの間とし、湿度が閾値未満の場合、基準時間を印字開始から5枚の用紙Sに連続して印字が行われるまでの間とするように構成されている。すなわち、本実施形態において、制御装置10は、本体筐体2内の湿度が低い場合には、本体筐体2内の湿度が高い場合よりも基準時間を短くするように構成されている。
【0064】
したがって、図5に示すように、制御装置10は、高湿環境(閾値以上)の場合、印字開始から10枚の用紙Sに連続して印字が行われたとき(10枚連続印字のとき)にクリーニング電流を小さくし、低湿環境(閾値未満)の場合、印字開始から5枚の用紙Sに連続して印字が行われたとき(5枚連続印字のとき)にクリーニング電流を小さくする。
【0065】
このような構成によれば、トナーが搬送ベルト43Cからクリーニングローラ61を介して回収ローラ62に移動しやすい低湿環境のときに、早めにクリーニング電流を小さくできるので、搬送ベルト43Cとクリーニングローラ61との間のトナーを減らしすぎないようにすることが可能となる。その結果、湿度に応じて、連続印字時の異音の発生をより確実に抑制することが可能となる。
【0066】
なお、上記した10枚や5枚などの用紙Sの具体的な連続印字枚数(基準時間)は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。また、基準時間は、印字開始から所定枚数の用紙Sに連続して印字が行われるまでの間に限定されず、例えば、印字開始から所定時間が経過するまでの間などであってもよい。さらに、湿度の「閾値」は、複数設定してもよい。
【0067】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態も、制御装置10が基準時間を変化させる形態である。
本実施形態のカラープリンタ1は、印字終了後(すべての印字ジョブの処理が終了した後)にクリーニング動作が実行されるように構成されている。
【0068】
このような構成では、前回の印字動作で入力された印字ジョブ(すべての印字ジョブ)に含まれる画像データの印字ドット数(総印字ドット数)が小さいとき、すなわち、前回の印字動作で使用されたトナーの量が少ないときには、クリーニング動作のときに搬送ベルト43Cに吐き出されるトナーの量が少なくなる。そうすると、クリーニング動作後に搬送ベルト43Cに残るトナーの量も少なくなるので、次回の印字動作のときに基準時間が長いと、クリーニング電流を小さくする前に、搬送ベルト43Cとクリーニングローラ61との間のトナーが減りすぎてしまう可能性がある。
【0069】
そこで、本実施形態では、前回の印字動作で使用されたトナーの量の大小を、前回の印字動作で印字された用紙Sの総印字枚数として把握し、この総印字枚数の大小に応じて、制御装置10が次回の印字開始後の基準時間を変化させている。
【0070】
具体的に、制御装置10は、図6に示すような、予め設定されたテーブル(数値は一例である。)を記憶しており、前回の印字動作での総印字枚数が多い場合には、次回の印字開始後において印字開始からの連続印字枚数を多くすることで基準時間を長くし、前回の印字動作での総印字枚数が少ない場合には、次回の印字開始後において印字開始からの連続印字枚数を少なくすることで基準時間を短くするように構成されている。
【0071】
これにより、本実施形態において、制御装置10は、前回の印字動作において入力された印字ジョブに含まれる印字ドット数が小さい場合には、入力された印字ジョブに含まれる印字ドット数が大きい場合よりも、次回印字開始後の基準時間を短くするように構成されることとなる。
【0072】
これによれば、クリーニング電流を小さくする前に搬送ベルト43Cとクリーニングローラ61との間のトナーが減りすぎてしまうことがなくなるので、クリーニング電流を小さくした後に搬送ベルト43Cとクリーニングローラ61との間に適量のトナーを残すことが可能となる。その結果、連続印字時の異音の発生をより確実に抑制することが可能となる。
【0073】
なお、図6に示したテーブルでは、総印字枚数を2つの閾値(50枚および100枚)で区分しているが、本発明はこれに限定されず、閾値は1つとしてもよいし、3つ以上としてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、前回の印字動作で使用されたトナーの量(前回の印字動作で入力された印字ジョブに含まれる画像データの印字ドット数)を、前回の印字動作で印字された用紙Sの総印字枚数として把握しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、印字ドット数をカウントする公知の構成や方法によって、印字ドット数そのものを直接カウントし、その値の情報を基づいて制御を実行するようにしてもよい。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0076】
前記実施形態では、制御装置10は、基準時間が経過したときにクリーニングローラ61と回収ローラ62(回収部材)の間に流れるクリーニング電流を小さくし、その後はクリーニング電流を一定値としていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図7(a)に示すように、制御装置は、基準時間が経過したときから、クリーニングローラと回収部材の間に流れるクリーニング電流を連続的に小さくするように制御してもよい。また、図7(b)に示すように、制御装置は、基準時間が経過したときから、クリーニングローラと回収部材の間に流れるクリーニング電流を段階的に小さくするように制御してもよい。これによれば、搬送ベルトとクリーニングローラとの間のトナーを適量に維持することが可能となるので、結果として、連続印字時の異音の発生をより確実に抑制することが可能となる。
【0077】
前記実施形態では、バックアップローラ65と回収ローラ62の間にクリーニング電流を印加する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、バックアップローラ65とクリーニングローラ61の間に第1の電流を印加しつつ、クリーニングローラ61と回収ローラ62の間に第2の電流(クリーニング電流)を印加するように構成してもよい。この場合、第1の電流は一定とし、第2の電流だけを印字開始から基準時間が経過したときに小さくするように制御してもよい。
【0078】
前記実施形態では、本体筐体2内の湿度を検出するために湿度センサ91を設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、装置本体内の湿度を検出(推定)するための構成は広く公知の構成や方法を採用することができる。例えば、前記実施形態の転写ローラ43Dがイオン導電材料を含む場合、多湿環境下においては抵抗値が小さくなるので、この抵抗値から湿度を推定して(または抵抗値そのものを用いて)、クリーニングローラと回収部材の間に流れる電流の大きさを制御するように構成してもよい。
【0079】
前記実施形態では、本体筐体2内の湿度が所定値以下であることを条件として、クリーニング電流を小さくする構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、装置本体内の湿度に拘わらず、印字開始から基準時間が経過したときにクリーニングローラと回収部材の間に流れる電流を小さくするように構成してもよい。
【0080】
前記実施形態では、レーザ光により感光体を露光するカラープリンタ1(レーザプリンタ)を例示したが、本発明を適用可能な画像形成装置はこれに限定されるものではない。例えば、感光体に近接して配置され、配列された複数の発光部(LEDなど)を有する露光ヘッドで感光体を露光するように構成されたプリンタなどであってもよい。また、画像形成装置は、プリンタに限定されず、例えば、フラットベッドスキャナなどの原稿読取装置を備える複写機や複合機などであってもよい。
【0081】
前記実施形態では、「印字開始」のときとして、給紙機構33が1枚目の用紙Sをピックアップしたときを採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、「印字開始」のときとして、印字ジョブが入力されたときや搬送ベルト43Cが回転駆動したとき、露光ユニット41がレーザ光の出射を開始したときなどを採用してもよい。
【0082】
また、前記実施形態では、「印字終了」のときとして、カラープリンタ1に蓄積されたすべての印字ジョブの処理が終了するときを採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、「印字終了」のときとして、最後の用紙Sを排紙経路51に設けられた用紙センサが検知したときなどを採用してもよい。
【0083】
前記実施形態では、記録シートの一例として、いわゆる普通紙や厚紙などの用紙Sを示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、OHPシートなどであってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 カラープリンタ
2 本体筐体
10 制御装置
42A 感光体ドラム
43C 搬送ベルト
61 クリーニングローラ
62 回収ローラ
91 湿度センサ
S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤像が形成される複数の感光体と、
前記複数の感光体との間で記録シートを搬送する無端状の搬送ベルトと、
前記搬送ベルトに接触して前記搬送ベルトに付着した現像剤を回収するクリーニングローラと、
前記クリーニングローラとの間に電流が流れることで前記クリーニングローラに付着した現像剤を回収する回収部材と、
前記クリーニングローラと前記回収部材の間に流れる電流の大きさを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、印字開始から基準時間が経過したときには、印字終了前であっても前記クリーニングローラと前記回収部材の間に流れる電流を小さくすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御装置は、装置本体内の湿度が所定値以下であることを条件として、印字開始から基準時間が経過したときに前記クリーニングローラと前記回収部材の間に流れる電流を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御装置は、装置本体内の湿度が低い場合には、装置本体内の湿度が高い場合よりも、前記クリーニングローラと前記回収部材の間に流れる電流を小さくすることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記基準時間は、印字開始から所定時間が経過するまでの間であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記基準時間は、印字開始から所定枚数の記録シートに連続して印字が行われるまでの間であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御装置は、装置本体内の湿度が低い場合には、装置本体内の湿度が高い場合よりも基準時間を短くすることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御装置は、入力された印字ジョブに含まれる印字ドット数が小さい場合には、入力された印字ジョブに含まれる印字ドット数が大きい場合よりも、次回印字開始後の基準時間を短くすることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御装置は、基準時間が経過したときから、前記クリーニングローラと前記回収部材の間に流れる電流を連続的または段階的に小さくすることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−103583(P2012−103583A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253591(P2010−253591)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】