説明

画像形成装置

【課題】画像形成の累積、温度湿度変化等を生じても静電像指標をベルト部材へ適正に転写して、トナー像の重ね合わせ精度を高く維持できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光ドラム12aに静電像目盛り31aを形成して静電像転写領域25へ転写し、アンテナ型の電位センサ330により検出してトナー像を走査線レベルでリアルタイムに位置合わせする。非画像形成時に、複数段階の静電像転写電圧を静電像転写ローラ47に印加して、ベルト目盛り読み取りセンサ33bの検出信号が最大振幅となる静電像転写電圧を選択して画像形成時に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に形成された静電像指標をベルト部材に転写して複数のトナー像の位置合わせを行う画像形成装置、詳しくはベルト部材に静電像指標を転写する際の電気的条件を設定する制御に関する。
【背景技術】
【0002】
像担持体(感光ドラム等)に形成された複数のトナー像を、ベルト部材(中間転写ベルト又は記録材搬送ベルト)を用いて重ね合わせる画像形成装置が広く用いられている(図1参照)。ベルト部材を用いてトナー像を重ね合わせる場合、最初に転写されたトナー像に対して後から転写されるトナー像を精密に位置合わせする必要がある。このため、像担持体に形成される画像のトナー像に対応させた各種の指標をベルト部材に記録して、後から転写されるトナー像の位置決め(又は形成タイミングの調整)に用いることが提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1では、複数の感光ドラムでそれぞれ画像の静電像を形成するタイミングを調整するために、画像形成に先立たせて、位置決め用の静電像指標を、複数の像担持体に形成して記録材搬送ベルトに転写している。
【0004】
特許文献2では、中間転写ベルトに転写された画像のトナー像に対して感光ドラム上のトナー像をリアルタイムに位置決めるために、中間転写ベルトの磁気記録トラックに目盛りパタ−ンを磁気記録している。
【0005】
特許文献3では、複数の感光ドラムに同時に形成したトナー像指標を記録材搬送ベルトに転写して、複数の感光ドラムの下流側で光学式センサにより検出して、複数の感光ドラムにおける露光開始タイミングを調整している。
【0006】
特許文献4には、像担持体(感光ドラム)に形成された静電像目盛りを検出可能なアンテナ型電位センサが記載されている。アンテナ型電位センサは、極めて小型であることに加えて、静電像を通過する際に検出面の電位分布の微分波形の検出信号を出力するため、静電像の位置を精密に検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−39571号公報
【特許文献2】特開2004−145077号公報
【特許文献3】特開2003−066677号公報
【特許文献4】特開2010−60761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に示される磁気記録指標を用いてトナー像の重ね合わせを制御する場合、磁気記録指標の書き込み/読み取りを行うための装置を追加する必要がある。また、露光装置によって感光ドラムに形成される画像の静電像と磁気記録指標との間に100μレベルの誤差が発生する可能性があり、トナー像の位置合わせを走査線レベルの精度で行うには困難を伴う。
【0009】
そこで、図1に示すように、画像の静電像の走査線露光と同期させて感光ドラム12aに静電像目盛り31aを形成し、静電像目盛り31aを中間転写ベルト24に転写することが提案された。この場合、下流側の感光ドラム12bで、アンテナ型電位センサを用いて静電像目盛り31aを検出して、中間転写ベルト24上のトナー像に対して感光ドラム12b上のトナー像をリアルタイムに位置合わせする。
【0010】
しかし、中間転写ベルト24に転写された静電像目盛り31aをアンテナ型電位センサを用いて検出している場合、画像形成の累積、温度湿度変化等によってトナー像の重ね合わせ精度が低下することが判明した。そして、検討の結果、画像形成の累積、温度湿度変化等によって、感光ドラム12aから中間転写ベルト24へ静電像目盛り31aを転写する際の転写電圧が不適正になる結果、静電像目盛り31aの検出精度が低下することが判明した。
【0011】
本発明は、画像形成の累積、温度湿度変化等を生じても静電像指標をベルト部材へ適正に転写して、トナー像の重ね合わせ精度を高く維持できる画像形成装置を提供することを目的としている。本発明は、アンテナ型電位センサを用いて静電像指標の検出精度を評価することで、特別なセンサや装置を追加することなく、静電像指標の転写条件を調整できる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、画像のトナー像の転写部で前記像担持体に当接するとともに前記画像のトナー像の転写に用いる画像領域と並列に並べて未現像の静電像を転写させる静電像転写領域を設けたベルト部材と、画像の静電像を前記像担持体に形成する静電像形成手段と、前記静電像形成手段を用いて前記像担持体に形成した静電像指標を未現像で前記静電像転写領域に転写する静電像転写部材と、前記静電像転写領域上の前記静電像指標の誘導電流を前記ベルト部材の回転に伴って検出するアンテナ型電位センサと、を備え、前記静電像転写領域上の前記静電像指標を前記アンテナ型電位センサにより検出して、前記画像領域で転写される複数の前記画像のトナー像の重ね合わせを制御するものである。そして、非画像形成時に、前記静電像指標を形成して、画像形成時とは異なる電気的条件を用いて前記静電像転写領域に転写して、前記アンテナ型電位センサにより検出し、その検出結果に基づいて画像形成時に前記静電像指標を前記静電像転写領域へ転写する際の電気的条件を設定する制御手段を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像形成装置では、適正な電気的条件(電流又は電圧)で転写された静電像指標と、不適正な電気的条件で転写された静電像指標とを、トナー像の重ね合わせ制御に用いるアンテナ型電位センサによる検出結果に基づき判別する。
【0014】
したがって、特別なセンサや装置を追加することなく、静電像指標を転写する際の電気的条件を過不足なく調整できる。そして、画像形成の累積、温度湿度変化等を生じても静電像指標をベルト部材へ適正に転写してトナー像の重ね合わせ精度を高く維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】画像形成装置の全体構成の説明図である。
【図2】中間転写ベルトの画像のトナー像の転写部の斜視図である。
【図3】イエロー画像形成部の構成の説明図である。
【図4】中間転写ベルトに転写された静電像目盛りの説明図である。
【図5】マゼンタ画像形成部の構成の説明図である。
【図6】アンテナ型電位センサの配置の説明図である。
【図7】アンテナ型電位センサの構成の説明図である。
【図8】アンテナ型電位センサによる静電像目盛りの読み取りの説明図である。
【図9】アンテナ型電位センサの出力信号の説明図である。
【図10】出力信号の信号波形の説明図である。
【図11】中間転写ベルト上の画像先端の静電像目盛りの拡大図である。
【図12】感光ドラムと中間転写ベルトの目盛り合わせの説明図である。
【図13】目盛り合わせ制御のブロック図である。
【図14】目盛り合わせ制御のフローチャートである。
【図15】静電像転写電圧を最適化する際の制御ブロック図である。
【図16】実施例1の静電像転写電圧設定制御のフローチャートである。
【図17】静電像転写電圧設定パターンの説明図である。
【図18】最適な静電像転写電圧の説明図である。
【図19】静電像目盛りのピッチと最適な静電像転写電圧の関係の説明図である。
【図20】静電像目盛りのピッチと検出信号の振幅の関係の説明図である。
【図21】静電像転写電圧の違いによる検出信号の振幅差の説明図である。
【図22】実施例2における電位センサの配置の説明図である。
【図23】実施例2の静電像転写電圧設定制御のフローチャートである。
【図24】静電像転写電圧と検出信号の標準偏差の関係の説明図である。
【図25】実施例3における画像形成時の色ずれ補正制御の説明図である。
【図26】実施例4における色ずれ補正制御の説明図である。
【図27】静電像指標の位置ずれが発生した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、アンテナ型電位センサで静電像指標を検出して転写電圧等を調整する限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0017】
したがって、ベルト部材を用いて複数のトナー像を重ね合わせる画像形成装置であれば、1ドラム型/タンデム型、中間転写方式/記録材搬送体方式の区別なく実施できる。像担持体の数、像担持体の帯電方式、静電像の形成方式、現像剤及び現像方式、転写方式等の区別無く実施できる。
【0018】
また、ベルト部材を用いたトナー像の重ね合わせ制御は、図1に示すような画像形成中のリアルタイムの調整に限らず、特許文献1、3のような非画像形成時に行う露光開始タイミングの設定も含む。
【0019】
また、本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途の画像形成装置で実施できる。
【0020】
なお、特許文献1〜4に示される画像形成装置及びアンテナ型の電位センサの一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
【0021】
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の全体構成の説明図である。図1に示すように、画像形成装置100は、中間転写ベルト24に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部43a、43b、43c、43dを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
【0022】
画像形成部43aでは、感光ドラム12aにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト24に転写される。画像形成部43bでは、感光ドラム12bにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト24に転写される。画像形成部43c、43dでは、それぞれ感光ドラム12c、12dにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて中間転写ベルト24に転写される。中間転写ベルト24に転写された四色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送されて記録材Pへ二次転写される。
【0023】
記録材カセット80から引き出された記録材Pは、分離ローラ82によって1枚ずつに分離されて、レジストローラ83へ給送され、レジストローラ83によって二次転写部T2へ送り込まれる。
【0024】
そして、記録材Pが二次転写部T2を搬送される過程で、二次転写ローラ44に正極性の電圧が印加されることにより、中間転写ベルト24から記録材Pへトナー像が二次転写される。トナー像が二次転写された記録材Pは、定着装置84へ搬送され、定着装置84で加熱加圧を受けてトナー像を定着された後に、排出ローラ85によって機体外へ排出される。
【0025】
中間転写ベルト24は、テンションローラ37、ベルト駆動ローラ36、及び対向ローラ38に張架され、テンションローラ37によって所定の張力が与えられる。ベルト駆動ローラ36は、不図示の駆動モータによって回転駆動されて、中間転写ベルト24を矢印R2方向に所定のプロセススピ−ドで回転させる。
【0026】
画像形成部43a、43b、43c、43dは、現像装置18a、18b、18c、18dで用いるトナーの色が異なる以外は、同一に構成される。以下では、画像形成部43aについて説明し、画像形成部43b、43c、43dについては、画像形成部43aの構成部材に付した符号末尾のaをb、c、dに読み替えて説明されるものとする。
【0027】
画像形成部43aは、感光ドラム12aの周囲に、帯電ローラ14a、露光装置16a、現像装置18a、一次転写ローラ4a、ドラムクリーニング装置22aを配置している。
【0028】
感光ドラム12aは、アルミニウムシリンダの外周面に厚さ30μm、帯電極性が負極性のOPC感光体層が形成され、所定のプロセススピ−ドで矢印R1方向に回転する。帯電ローラ14aは、直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を印加されて、感光ドラム12aの表面を一様な負極性の暗部電位VD(−600V)に帯電させる。
【0029】
露光装置16aは、レーザービームを回転ミラーで走査露光して、感光ドラム12aの表面電位を明部電位VL(−100V前後)に低下させて画像の静電像を書き込む。現像装置18aは、トナーとキャリアを含む二成分現像剤を用いて静電像を現像して、感光ドラム12aの表面にトナー像を形成する。露光された明部電位VLの部分にイエロートナーが付着して、イエロートナー像が反転現像される。
【0030】
一次転写ローラ4aは、中間転写ベルト24の内側面を押圧して、感光ドラム12aと中間転写ベルト24との間に転写位置Taを形成する。一次転写ローラ4aに正極性の直流電圧(+1000V程度)を印加することで、感光ドラム12aのトナー像が中間転写ベルト24へ一次転写される。
【0031】
ドラムクリーニング装置22aは、感光ドラム12aにクリーニングブレードを摺擦させて、中間転写ベルト24へ転写されないで感光ドラム12aに残った転写残トナーを回収する。ベルトクリーニング装置45は、駆動ローラ36に内側面を支持された中間転写ベルト24にクリーニングブレードを摺擦させて、二次転写部T2を通過した中間転写ベルト24から転写残トナーを回収する。
【0032】
感光ドラム12aは、ドラム駆動モータ6aからドラム回転軸5aに駆動力を伝達する駆動系を介して駆動力が伝達される。ドラム回転軸5aには図示しないカップリングを介してドラムエンコーダ8aが連結されている。画像形成部43aでは、ドラムエンコーダ8aからの出力信号をもとにドラム駆動モータ6aを回転させることで、感光ドラム12aが矢印方向に等角速度回転するように制御される。
【0033】
これに対して、感光ドラム12b、12c、12dは、後述するように、感光ドラム12aに形成されて中間転写ベルト24に転写された静電像目盛り31aの検出信号に基づいて刻々の回転速度を調整される。これにより、感光ドラム12aに形成されて中間転写ベルト24に転写された画像のトナー像に、感光ドラム12b、12c、12dの画像のトナー像を位置決めて重ね合わせる。
【0034】
中間転写ベルト24の静電像転写領域25と対向する位置を挟み込むようにコロナ帯電器46a、46bが配置される。コロナ帯電器46a、46bに逆位相の交流電圧を印加することで、感光ドラム12aに形成されて中間転写ベルト24の静電像転写領域25に転写されてトナー像の重ね合わせ制御に使用された静電像目盛り31aが確実に消去される。
【0035】
中間転写ベルト24の静電像転写領域25を除電する構成として、静電像転写領域25と接触して、接地電位に接続した除電ブラシを配置してもよい。
【0036】
<静電像転写領域>
図2は中間転写ベルトの画像のトナー像の転写部の斜視図である。高速化を狙った複数の画像形成部を有するタンデム型の画像形成装置では、機械精度等の原因により、複数の感光ドラムや中間転写ベルトの速度変動や、中間転写ベルトの蛇行などが生じる。その結果、各画像形成部の転写位置で、感光ドラム外周面と中間転写ベルトの移動量の相違等が各色毎にバラバラに発生し、画像を重ね合わせたときに一致せず、100〜150μmの色ずれを生じることがある。
【0037】
そこで、各色の画像形成部において、感光ドラムに目盛り線の静電像を形成し、現像して可視像にしてから中間転写ベルトに転写し、目盛り線のトナー像を光学式センサで検出して色ずれを補正していた。
【0038】
しかし、印刷以外にトナーが消費されると資源の有効利用という点で不十分である。また、光学式センサの汚れ、中間転写ベルトの汚れや傷などによって、目盛り線のトナー像を精度良く検出することは困難であった。
【0039】
そこで、画像形成装置100では、位置決め用の目盛り線として、トナー像の代わりに未現像の静電像を用いている。最も上流の感光ドラム12aに静電像目盛りを形成し、電界をかけて中間転写ベルト24に転写することで静電像の目盛り線を中間転写体に形成している。
【0040】
図2に示すように、ベルト部材の一例である中間転写ベルト24は、画像のトナー像の転写部で像担持体の一例である感光ドラムに当接する。中間転写ベルト24は、画像のトナー像の転写に用いる画像領域と並列に並べて未現像の静電像を転写させる静電像転写領域25を設けている。静電像形成手段の一例である露光装置16aは、画像の静電像を感光ドラムに形成する。中間転写ベルト24の回転方向における感光ドラム12aの下流側に、イエロートナー像に重ね合わせるためのマゼンタトナー像が形成される感光ドラム12bが配置される。
【0041】
静電像指標の一例である静電像目盛り31aは、静電像形成手段の一例である露光装置16aを用いて感光ドラム12aに形成される。静電像目盛り31aは、感光ドラム12aの回転方向に直角な輪郭を持たせて露光装置16aにおける所定走査線本数間隔で配列するように形成される。静電像目盛り31aは、感光ドラム12aの回転方向に複数種類のピッチで1つのピッチごとに複数が配列するように形成される。静電像転写電圧制御部49は、静電像指標のピッチが小さいほど静電像転写ローラ47に印加する転写電圧の絶対値を大きくするように静電像転写電圧を設定する。
【0042】
静電像転写部材の一例である静電像転写ローラは、静電像目盛り31aを未現像で静電像転写領域25に転写する。アンテナ型電位センサの一例であるベルト目盛り読み取りセンサ33bは、静電像転写領域上の静電像目盛り31aの誘導電流を中間転写ベルト24の回転に伴って検出する。ベルト目盛り読み取りセンサ33bは、感光ドラム12bがマゼンタトナー像を中間転写ベルト24へ転写する位置に配置されて、感光ドラム12aで形成されて静電像転写領域25へ転写された静電像目盛り31aを検出する。
【0043】
画像形成時は、静電像転写領域上の静電像目盛り31aをベルト目盛り読み取りセンサ33bにより検出して、画像領域で転写される複数の画像のトナー像の重ね合わせを制御する。感光ドラム12aから転写された静電像目盛り31aのベルト目盛り読み取りセンサ33bによる検出結果に基づいて感光ドラム12bの刻々の回転速度が調整される。
【0044】
中間転写ベルト24は、カーボン粒子を含有させて体積抵抗率1010Ω・cmに調整されたポリイミドの樹脂ベルトであって、画像のトナー像が転写される有効画像領域90を幅方向の中央に配置している。有効画像領域90の両方の外側には、感光ドラム12aから静電像目盛り31aが転写される静電像転写領域25が配置される。静電像転写領域25は、転写された静電像目盛り31aの減衰を防止するために、体積低効率1014Ω・cm以上のPET、PTFE、ポリイミド等の樹脂フィルムを、中間転写ベルト24の表面に積層して形成される。ただし、中間転写ベルト24に積層できる高抵抗材料であれば、これらに限定するものではない。
【0045】
有効画像領域90は、画像のトナー像の転写性能を確保するために、体積抵抗率が10〜1010Ω・cmの中抵抗の材料で形成される。このため、中間転写ベルト24に静電像目盛り31aを直接に転写した場合、一旦は電荷が移動して静電像目盛り31aの帯電パターンが中間転写ベルト24に形成される。しかし、その後、抵抗値が低いため電荷が移動してしまい、静電像目盛り31aが下流側の感光ドラム12b、12c、12dへ到達するまでに消滅して電気的に検出できなくなる。
【0046】
したがって、静電像転写領域25は、体積抵抗率を1014Ω・cm以上とすることが好ましい。プロセススピードにもよるが、体積抵抗率が1014Ω・cm以上あれば、感光ドラム12aから転写された電荷は移動することなく保持され、下流の感光ドラム12b、12c、12dへ到達して電気的に検出される。このため、中間転写ベルト24よりも高い体積抵抗値を有する材質のものを貼り付ける。または、スプレーなどで塗装、あるいはドクターブレードでコーティングして加熱硬化させる等により体積抵抗率を高くする。
【0047】
静電像転写領域25の材質に関しては、体積抵抗率1014Ω・cm以上の材料で、中間転写ベルト24に接合できるものであれば、PET、PTFEなどのフッ素樹脂、あるいはポリイミドなどを利用できるが、これらに限定するものではない。
【0048】
ここでは、静電像転写領域25は、体積抵抗率1014Ω・cm以上で幅5mmのテープ状に形成された厚さ0.005mmポリイミドを、接着剤を用いて中間転写ベルト24の外側面の表面に積層している。
【0049】
画像のトナー像を転写する一次転写ローラ4aの長手方向の外側には、一次転写ローラ4aと同軸上に、静電像目盛り31a転写用の静電像転写ローラ47が配置されている。一次転写ローラ4aと静電像転写ローラ47は、同一材料、同一構造の導電性のスポンジローラで構成される。しかし、画像のトナー像の転写に最適な転写電圧と静電像目盛り31aの転写に最適な転写電圧とは一般的には異なるため、静電像転写ローラ47は、一次転写ローラ4aから電気的に独立させて、別々の転写電圧が印加される。
【0050】
一次転写ローラ4aは、転写部を流れる電流値が所定値になるように定めた定電圧(+1000V程度)が印加されることにより、感光ドラム12上のトナー像を中間転写ベルト24の有効画像領域90へ静電気力で吸引して転写させる。
【0051】
静電像転写ローラ47は、一次転写ローラ4aに印加される定電圧とは異なる定電圧(例えば+500V)が印加されることにより、静電像目盛り31aを形成している電荷を静電像転写領域25に転写させる。
【0052】
なお、静電像目盛り31aを中間転写ベルト24へ転写する構成は、導電性のスポンジローラには限定されず、ワイヤーを用いたコロナ帯電器や、ブレード帯電器などを用いてもよい。
【0053】
<静電像目盛りの転写部>
図3はイエロー画像形成部の構成の説明図である。図4は中間転写ベルトに転写された静電像目盛りの説明図である。
【0054】
図1を参照して図3に示すように、感光ドラム12aの露光位置42aを長手方向に延長した有効画像領域90外の両端部に、画像を書き込む前後のレーザー光の照射により静電像目盛り31aを書き込む。静電像目盛り31aの長さは、感光ドラム12aの主走査方向(長手方向)に5mm程度である。静電像目盛り31aは、画像を感光ドラム12aに書き込む前の感光ドラム12aが回転駆動を開始した直後から形成され、感光ドラム12aでの画像形成が終了するまで書き込みが続けられる。
【0055】
感光ドラムから中間転写ベルト、さらに、中間転写ベルトから記録材Pへトナー像を転写する際には、速度差を0.5%程度つけてお互いに滑らせながら転写の動作を行うのが一般的である。しかし、ここでは、説明を簡単にするために、搬送方向のすべり量がゼロで、記録材Pに対し転写後のトナー像と同じ大きさのトナー像を感光ドラムおよび中間転写ベルトに形成するものとする。
【0056】
図3を参照して図4に示すように、画像形成部43aでは、A4ヨコサイズの記録材Pに転写するトナー像が中間転写ベルト24上に転写されると同時に、静電像転写領域25に静電像目盛り31aが転写される。中間転写ベルト24の幅方向の両端には、静電像転写領域25が形成され、静電像転写領域25には静電像目盛り31aが転写されている。
【0057】
A4ヨコの記録紙に対し、全面に画像形成が可能であるわけではなく、記録材Pの前後、左右それぞれに余白を持たせて画像形成を行う。先端・後端の余白は2.5mm、左右の余白は2mmとなっている。画像形成部43aの感光ドラム12aに1ページ分の画像形成を行う際には、記録紙の先端に相当する部分から露光動作を開始し、トナー像を形成する領域の2.5mm前から感光ドラム12aの両端部に静電像目盛り31aの形成を開始する。
【0058】
静電像目盛り31aの副走査方向(回転方向)の大きさ(ピッチ)は、走査線の幅を用いて表現される。画像の解像度が600dpiの場合、静電像目盛り31aの最少のピッチは、1ライン1スペースとなり、25.4÷600×2=0.08466・・mmより、84.6μmのピッチとなる。ただし、後述するように、ここでは、4ライン4スペースの静電像目盛り31aを採用しており、338.4μmのピッチである。
【0059】
感光ドラム12aの有効画像領域90には、現像装置18aによりマイナスに帯電したイエロートナーが付着されてイエロートナー像が形成される。このとき、感光ドラム12aの両端部の静電像目盛り31aにトナーが付着しないように、現像装置18の現像領域91が決められている。一方、中間転写ベルト24の両端部に静電像転写領域25が設けられ、静電像転写領域25が存在する部分には静電像転写ローラ47が配置されている。
【0060】
感光ドラム12aに形成された静電像目盛り31aは、中間転写ベルト24の両端部の静電像転写領域25に接触する。そして、静電像転写ローラ47に予め決定した定電圧(例えば、+500V)を印加することで、静電像目盛り31aを形成している電荷の一部が静電像転写領域25に転写される。その結果、感光ドラム12aの静電像目盛り31aと同じピッチの静電像目盛り31aが静電像転写領域25に形成される。
【0061】
このとき、感光ドラム12aの露光部(−100V)と静電像転写領域25(+500V)との電位差は600Vであるのに対し、感光ドラム12aの非露光部(−600V)と静電像転写領域25(+500V)との電位差は1100Vである。この電位差の違いにより、感光ドラム12aと静電像転写領域25との間の放電による電荷移動量に差が生じて、非露光部では放電による移動電荷量が多くなり、露光部では放電による移動電荷量が少なくなる。その結果、感光ドラム12aから静電像転写領域25へ静電像目盛り31aがパターンとして転写される。
【0062】
ここで、中間転写ベルト24の体積抵抗率が1010Ω・cmで、静電像転写領域25の体積抵抗率が1014Ω・cmのとき、静電像転写領域25に転写された静電像目盛り31aの表面電位を測定した。静電像目盛り31aは微細で直接には電位を測定できないため、走査線1000本(42.3mm)の露光部と非露光部による84.6mmの静電像目盛りを形成して、静電像転写領域25に転写し、従来の静電容量型の電位センサで静電像転写領域の電圧を測定した。その結果、感光ドラム12a上の−600Vと−100Vの表面電位の違いが、静電像転写領域25上では、+50Vと0Vの表面電位の違いとして転写されていた。
【0063】
<静電像目盛りの検出部>
図5はマゼンタ画像形成部の構成の説明図である。図6はアンテナ型電位センサの配置の説明図である。図中、(a)はドラム目盛り読み取りセンサの配置、(b)はベルト目盛り読み取りセンサの配置である。上述したように、画像形成部43b、43c、43dは、ほぼ同じ構成を用いて同様にトナー像の重ね合わせ制御を実行するため、以下では、画像形成部43bについて説明し、画像形成部43c、43dに関する重複した説明を省略する。
【0064】
図1を参照して図5に示すように、画像形成部43bでは画像形成部43aと同じ形状の感光ドラム12bを用い、ベルト目盛り読み取りセンサ33bを中間転写ベルト24の内側面に配置した。中間転写ベルト24の外側面に転写された静電像目盛り31aを中間転写ベルト24の内側面から検出することで、感光ドラム12aに干渉することなく、ベルト目盛り読み取りセンサ33aを転写部Tbに配置できる。また、中間転写ベルト24の外側面ほどには、センサ摺擦面に飛散トナーが侵入しないで済む。
【0065】
中間転写ベルト24の端部からはみ出した感光ドラム12bの両端部の露光範囲には、マゼンタ画像の静電像と同期させて静電像目盛り31bが形成されている。静電像目盛り31bは、図3に示すように感光ドラム12aに形成される静電像目盛り31aと同一ピッチ同一長さで形成される。
【0066】
図6の(a)に示すように、感光ドラム12bから中間転写ベルト24へマゼンタ画像のトナー像が転写される転写部Tbの転写線上に、感光ドラム12bの静電像目盛り31bを読み取るドラム目盛り読み取りセンサ34bが配置される。そして、図6の(b)に示すように、その同じ転写線上に、中間転写ベルト24の静電像転写領域25に転写された静電像目盛り31aを読み取るベルト目盛り読み取りセンサ33bが配置されている。
【0067】
すなわち、画像形成部43bでは、ベルト目盛り読み取りセンサ33bとドラム目盛り読み取りセンサ34bとが同一転写線上に配列される。そして、感光ドラム12b上の静電像目盛り31bと、静電像目盛り31bに一対一に対応させた静電像目盛り31aとが同時に読み取られる。
【0068】
したがって、静電像転写領域25の静電像目盛り31aに対して、感光ドラム12bの対応する静電像目盛り31bを刻々と位置決める制御を行う。これにより、中間転写ベルト24のイエロートナー像に対して感光ドラム12bのマゼンタトナー像が走査線レベルで位置合わせされる。
【0069】
なお、ベルト目盛り読み取りセンサ33bは、中間転写ベルト24の表側に配置しても構わない。中間転写ベルト24の外側面に転写された静電像目盛り31aを中間転写ベルト24の外側面から検出する場合、ベルト目盛り読み取りセンサ33bと静電像目盛り31aの距離が短くなるので、よりピッチの小さい静電像目盛り31aを読み取り可能になる。実験の結果、中間転写ベルト24の場合、外側面から読み取る場合には1ライン1スペースの静電像目盛り31aを読み取り可能であるが、内側面から必要な精度で読み取るためには、4ライン4スペースにする必要があった。
【0070】
したがって、静電像転写領域25の静電像目盛り31aを中間転写ベルト24の外側面側から読み取るか内側面側から読み取るかは、感光ドラムや中間転写ベルトを含む静電像転写プロセスの特性と製品仕様に応じて選択可能である。
【0071】
静電像目盛り読み取りセンサ34bとベルト目盛り読み取りセンサ33bは、図7に示すように、空間電位の変化を検出することが可能な同一構成の電位センサ330である。
【0072】
<アンテナ型電位センサ>
図7はアンテナ型電位センサの構成の説明図である。図8はアンテナ型電位センサによる静電像目盛りの読み取りの説明図である。図9はアンテナ型電位センサの出力信号の説明図である。図10は出力信号の信号波形の説明図である。
【0073】
電位センサ330の基本構成については、特開平11−183542に詳細に記載されているので、ここでは、電位センサ330に特有な部分について記載する。
【0074】
図7の(a)に示すように、直径20μmの金属線からなる導線331をL字型に曲げて、その先端が検出部334となり、検出部334の長さは約2mmである。検出部334の反対側の端部が信号の出力部335である。
【0075】
L字型の導線331は、横幅4mm、縦幅15mm、厚さ25μmのポリイミドのフィルムからなるベースフィルム332の上に接着剤を塗布した後に配置されている。L字型の導線331を覆って、ベースフィルム332と同等な大きさと厚さを有するポリイミドのフィルムからなる保護フィルム333が接着されている。
【0076】
図8の(a)に示すように、静電像目盛り31aは、電位が相対的に高い高電位部341と相対的に低い低電位部342とが交互に現れるインクリメンタルパターンである。静電像転写領域25の低電位部342は、上述したように、感光ドラム12a上の露光部が転写された部分であって表面電位が約0Vである。また、静電像転写領域25の高電位部341は、感光ドラム12a上の非露光部が転写された部分であって表面電位が+50V程度である。静電像目盛り31aは、600dpiの画像解像度で、4ラインの露光部と4スペースの未露光部を繰り返して形成されているため、高電位部341の幅が169μm、低電位部342の間隔が169μm、1周期のピッチが338μmである。
【0077】
ベルト目盛り読み取りセンサ33としての電位センサ330は、検出部334と静電像目盛り31aの目盛り線が平行になるように位置決めて、図示しない支持部に根本を固定されている。
【0078】
図8の(b)に示すように、ベースフィルム332側が中間転写ベルト24と接触するように、電位センサ330は先端側を湾曲させている。湾曲のばね力によって電位センサ330は中間転写ベルト24に密着しているが、導線331(検出部)と中間転写ベルト24の間隔が変動しないように、保護フィルム333の上から、バネで押し付けてもよい。
【0079】
図9の(b)に示すように、静電像目盛り31aの高電位部341と低電位部342の電位分布は、レーザーの露光スポットがガウス分布状の光量分布を持つため、周辺部で電位が減少して矩形波にはならない。このような電位分布の静電像目盛り31aに沿って図8の(a)に示すように電位センサが相対移動すると、高電位部341と低電位部342の電位分布に応答して図9の(c)に示すような信号出力が得られる。相対移動に伴って近傍の電位が変化することで、電位センサ330の検出部334に誘導電流が発生し、電位センサ330の出力部335から、図9の(b)の電位分布を微分した波形の出力電圧が出力される。
【0080】
図9の(b)に示す電位分布のピーク(傾き0)の点が静電像目盛り31aの中心線の位置であり、中心線の位置で電位センサ330の出力電圧が0になっている。このため、電位センサ330の出力電圧が0になる時刻を、静電像目盛り31aの目盛り線を検出した時刻と特定できる。
【0081】
図9の(c)では、静電像目盛り31aのピッチが粗いため、電位変化が生じてから次の電位変化が生じるまでに時間間隔がある程度あくので、電位センサ330の出力信号が正弦波とは異なる形状である。
【0082】
図10の(a)に示すように静電像目盛り31aを2ライン2スペースで形成してピッチを半分の169μmにした場合、図10の(b)に示す電位分布となり、図10の(c)に示すように電位センサ330によって正弦波の出力信号が得られた。
【0083】
<画像位置合わせ制御>
図11は中間転写ベルト上の画像先端の静電像目盛りの拡大図である。図12は感光ドラムと中間転写ベルトの目盛り合わせの説明図である。図13は目盛り合わせ制御のブロック図である。図14は目盛り合わせ制御のフローチャートである。感光ドラム12c、12dについては、感光ドラム1bと同様に制御がされるため、図13、図14には示さず、重複する説明も省略する。
【0084】
図11に示すように、画像形成部43bで画像の先頭の目盛り合わせを確実に行うために、1ページ分の画像形成を行う際の先端余白部分において、有効画像領域よりピッチの大きな目盛りが形成されている。図11は図4のA部の拡大図であり、画像先端の余白部に形成する静電像目盛りの構成を示す。
【0085】
感光ドラム12aから転写されて、中間転写ベルト24には、余白の先頭に相当する部分に有効画像部の目盛りピッチの8倍に相当するピッチの目盛り線が4本形成される。続いて、その半分のピッチの目盛り線が3本形成され、その次に、さらに半分のピッチの目盛り線が3本形成され、その後、有効画像部に形成するのと同じピッチの目盛り線が後端余白の領域まで形成される。有効画像部の目盛りピッチより大きな目盛りピッチを形成する領域は、先端余白より短い領域である。
【0086】
感光ドラム12bでも同様に、画像の先端余白部の目盛りピッチは有効画像部の目盛りピッチの8倍のものから始めて、4倍、2倍、と徐々にピッチを細かくして、最小ピッチの目盛りにつなげていく。
【0087】
従来の画像形成装置においては、画像位置ズレが100〜150μm程度生ずるものであったので、画像形成部43aで転写された静電像目盛り31aに対し、画像形成部43bの転写位置での静電像目盛り34bの位置は最大でも150μm程度のズレであった。このため、感光ドラム12bまたは中間転写ベルト24のいずれかの静電像目盛りを検知した後は、必ずもう一方の静電像目盛りを検知することなり、対応させるべき目盛り線が交互に検知される。よって、感光ドラム12bの静電像目盛り31bを検知するたびに静電像目盛り31bを中間転写ベルト24の静電像目盛り31aの位置に合わせるように感光ドラム12bの回転速度を調整する。先端余白部で、徐々に目盛りピッチを小さくしていくことで、有効画像領域に至るまで対応する目盛りを見失うことなく位置合わせを継続して行うことができる。
【0088】
図12は、中間転写ベルト24の静電像目盛り31aに対して、感光ドラム12bの静電像目盛り31bの先頭が150μmずれた場合の目盛り合わせ制御のイメージを示している。先頭の目盛り線は、大きくても150μm程度しかずれないので、先頭の目盛りm0とM0が150μmずれているものとする。次の目盛りを合わせるために、それぞれの目盛り線の位置を読み取った結果から、ドラム駆動モータ6bの回転速度を変化させて、次の目盛り線m1とM1をあわせるように動作させる。しかし、位置誤差が大きすぎて、合わせきれていない。さらに、m2とM2、m3とM3をそれぞれ合わせるように、回転制御していくと、ほぼ目盛り線を合わせることができる。ここから先、目盛りピッチが小さくなっていっても、感光ドラム12bの静電像目盛り31bを中間転写ベルト24の静電像目盛り31aに位置合わせし続けることができる。最少の目盛りピッチとなっても同様である。これにより、有効画像の先頭から中間転写ベルト24の静電像目盛り31aに対して感光ドラム12bの静電像目盛り31bを合わせることができる。すなわち、画像形成部43aで中間転写ベルト24に転写されたトナー像に対して、画像形成部43b以降では少ない色ずれでトナー像を転写し続けることが可能となる。
【0089】
図13に示すように、感光ドラム12a、12b及び中間転写ベルト24に速度変動がなく、トナー像が一定の時間間隔で転写位置Ta、Tb間を搬送される場合、中間転写ベルト24に重ねて形成されるトナー像に位置ズレは発生しない。しかし、ベルト駆動ローラ36の偏芯、中間転写ベルト24の厚みムラなどにより、中間転写ベルト24の速度ムラが生じたり、ドラム駆動モータ6a、6bに速度変動が生じたりすると、位置ズレが発生する。そして、ベルト駆動ローラ36の偏芯、中間転写ベルト24の厚みムラはあらかじめ測定することで速度ムラを補正することも可能である。また、ドラム駆動モータ6a、6bの速度変動は、それそれ同じ軸上に取り付けられたドラムエンコーダ8a、8bにより速度を補正することも可能である。
【0090】
しかし、画像形成部43a、43bにおいて転写されるトナーの量の違いなどにより、中間転写ベルト24にテンション変動が発生して、中間転写ベルト24には、画像によって異なる伸縮が発生する。このようなテンション変動は、画像形成部43aで転写された中間転写ベルト24上のトナー像が画像形成部43bに到達するまでの時間を変動させて、変動時間相当の色ずれを発生させる。プロセス条件で決定される転写トナー量、一次転写電圧の値などによって中間転写ベルト24の伸縮は変化するため、伸縮に伴う位置ズレは予測ができず、補正することは困難である。
【0091】
このように予測できない中間転写ベルト24の速度変動が生じた場合であっても、制御部48は、感光ドラム12bに接続されているドラム駆動モータ6bの回転を制御して色ずれを防止する。転写位置Tbにおいて静電像目盛り31bを、対応する静電像目盛り31aに位置合わせするようにドラム駆動モータ6bの回転を制御する。
【0092】
図13を参照して図14に示すように、制御部48は、印字開始信号を受け取ると(S1)、ドラム駆動モータ6a、6bと図示しないベルト駆動モータに回転開始指示を与える。ドラムエンコーダ8a、8bの信号を読み取りながらドラム駆動モータ6a、6bを等速回転させて、感光ドラム12a、12bを矢印R1方向に等速回転させる。同様に、ベルト駆動ローラ36に取り付けられたベルト駆動ローラエンコーダの信号により、図示しないベルト駆動モータを等速回転駆動させて、ベルト駆動ローラ36を駆動して中間転写ベルト24を一定速度で矢印R2方向に回転させる(S2)。
【0093】
制御部48は、帯電ローラ14a、14b、一次転写ローラ4a、4bに所定の高圧の印加を開始する(S3)。これにより、感光ドラム12a、12bの表面は−600Vに帯電される。
【0094】
制御部48は、画像信号を受け取ると、露光装置16aに露光動作を開始させ、先端余白に相当する部分から静電静電像目盛り31aを所定のピッチで形成する(S4)。画像データの露光動作が開始されたら、静電像目盛り31aとともに、1ページ分の画像データが終了するまで露光動作を継続する。
【0095】
ここで、感光ドラム径を84mmとし、画像形成部43aと画像形成部43bとの間のピッチ(ステーション間ピッチ)を250mmとする。感光ドラム12aの露光位置から転写部taまでの露光−転写間距離を125mmとし、プロセススピードを300mm/sとする。このとき、画像形成部43aで画像形成開始してから、画像形成部43bで画像形成開始するまでの待ち時間は以下となる。
250(mm)÷300(mm/sec)=0.833秒
【0096】
したがって、制御部48は、露光装置16aが露光動作を開始してから、0.833秒経過するのを待って(S5のYes)、露光装置16bの露光動作を開始させる(S6)。
【0097】
制御部48は、次に、i=0として(S7)、ベルト目盛り読み取りセンサ33bによって、i番目(i=0)の静電像目盛りを検知する(S8a)。また、ドラム目盛り読み取りセンサ34bによって、i番目(i=0)の静電像目盛りを検知する(S8b)。
【0098】
図12に示すように、先端余白部の目盛りピッチは8倍に広げてあるので、少なくとも中間転写ベルト24上の次の目盛り線を検知する前に、感光ドラム12b上の目盛り線を検知するはずである。
【0099】
制御部48は、感光ドラム12bと中間転写ベルト24の先頭の目盛り線を検知した時間差Δiを計算して(S9)、Δiと目盛りピッチPiを搬送速度300mm/sで割った値を比較する(S10)。
【0100】
ΔiがPi/300の値より小さい場合(S10のYes)、2番目の目盛り線を検知する前に相手方の目盛り線を検知するということであり、どの目盛り線を対応させればよいのかが明確になる。
【0101】
一方、ΔiがPi/300の値より大きい場合(S10のNo)、2番目の目盛り線を検知するまでに相手方の目盛り線を検知することができなかったため、相手方のどの目盛り線を対応させればよいのか判断ができなくなる。その場合は、エラーと判断して装置の動作を停止させる(S11)。
【0102】
制御部48は、次に、算出したΔiを元に、感光ドラム12bと中間転写ベルト24の静電像目盛りの位置ズレがなくなるように、ドラム駆動モータ6bの速度の補正量を算出する(S12)。そして、補正量に基づいてドラム駆動モータ6bの回転速度を補正して(S13)、iをi+1にする(S14)。このようにして、有効画像領域に達するまでに目盛りピッチを最小のピッチに収束させるとともに、目盛り線の位置ズレも小さくなるようにドラム駆動モータ6bの回転速度を補正する(S8a〜S15)。
【0103】
1ページ分の画像データが終了するまで(S15のNo)これを繰り返して、画像データが終了したら(S15のYes)、露光動作を停止する(S16)。
【0104】
制御部48は、次のページの印字データがある場合(S17のYes)、画像形成と静電像目盛りの形成とを繰り返して、画像の位置合わせ行いながら画像形成を行っていく。
【0105】
制御部48は、印字データが終了している場合(S17のNo)、帯電ローラ14a、14b、一次転写ローラ4a、4bなどの高圧を停止させる(S18)。記録材Pへの二次転写が終了すると(S19のYes)、感光ドラム12a、12bおよび中間転写ベルト24の回転を停止させて(S20)、印字動作を終了する(S21)。
【0106】
以上説明したように、画像形成部43aで転写されたトナー像に対応した静電像目盛り31a対し、画像形成部43bでトナー像に対応した静電像目盛り線31bの位置を合わせる。トナー像と対応した静電像目盛り31a、31bを電位センサ330で読取り、対応する目盛り線を常に位置合わせするように感光ドラム12bを動作させる。
【0107】
よって、中間転写ベルト24上に形成されたトナー像に対して画像形成部43bで高精度にトナー画像を重ねて転写することが可能となり、色ずれのないフルカラー出力画像を得ることができる。中間転写ベルト24の伸縮による画像位置ズレに対しても、高精度に補正することが可能となる。
【0108】
また、電位センサ330は、フレキシブル基板に導線パターンを配置しただけのものであり、非常に低コストで小型に構成できる。電位センサ330は、静電像そのものを読み取るため、他の書き込み・読取り手段を必要しないことから画像との位置ずれ誤差を少なくすることができるので、高精度の画像形成装置を提供できる。
【0109】
<静電像目盛りの問題点>
図3に示すように、静電像目盛り31aの転写に最適な電気的条件の一例である静電像転写電圧は、画像のトナー像の転写電圧の場合と同様に、環境変動に伴って変化することが判明した。環境変動に伴って静電像転写ローラ47の電気抵抗が変化すると、感光ドラム12bの静電像目盛り31bに対して中間転写ベルト24の静電像目盛り31aの位置がずれてしまう。
【0110】
そして、感光ドラム12aから中間転写ベルト24へ静電像目盛り31aを転写する際に静電像転写ローラ47に印加する静電像転写電圧を最適化すると、位置ずれ量が小さくなることが判明した。
【0111】
さらに、感光ドラム12aに形成される静電像目盛り31aのピッチの違いによって、位置ずれ量を小さく保って中間転写ベルト24へ転写するための静電像転写電圧が変化することが確認された。静電像目盛り線31aの目盛り線の間隔が広いほど、最適な転写電圧は低くなる傾向にある。
【0112】
これは、静電像転写ローラ47に印加する静電像転写電圧が不適正な場合、静電像目盛り31aの目盛り線の輪郭を静電像転写領域25へ精密に写し取ることができないためと考えられる。静電像転写領域25に転写された静電像目盛り31aの目盛り線の輪郭が乱れると、電位センサ330が誘導電流を感知するポイントが回転方向にシフトし易くなるためと考えられる。静電像目盛り31aは固まりとして転写されることから、目盛り線の間隔が広いほど移動する電荷量が変動し易く、異常放電を発生して輪郭を乱し易いと考えられる。
【0113】
そこで、以下の実施例では、静電像転写ローラ47に印加する最適な転写電圧の環境変動等による変化に対応して、最適な転写電圧に修正する静電像転写電圧設定制御を導入している。
【0114】
<実施例1>
図15は静電像転写電圧を最適化する際の制御ブロック図である。図16は実施例1の静電像転写電圧設定制御のフローチャートである。図17は静電像転写電圧設定パターンの説明図である。図18は最適な静電像転写電圧の説明図である。図19は静電像目盛りのピッチと最適な静電像転写電圧の関係の説明図である。図20は静電像目盛りのピッチと検出信号の振幅の関係の説明図である。図21は静電像転写電圧の違いによる検出信号の振幅差の説明図である。
【0115】
実施例1では、画像形成部43aの感光ドラム12aに静電像転写電圧調整用の静電像目盛り31を形成して中間転写ベルト24の静電像転写領域25に転写する。その静電像転写の際に静電像転写ローラ47に印加する静電像転写電圧を複数段階に変化させておく。その後、画像形成部43bでベルト目盛り読み取りセンサ33bを用いて静電像転写電圧調整用の静電像目盛り31を読み取り、検出信号の振幅が最も大きくなった静電像転写電圧を最適値として選択する。
【0116】
図15は、静電像転写電圧を最適化する際に必要な構成である画像形成部43aと画像形成部43bと静電像転写電圧制御部49と静電像転写電圧印加部50との関係のみを拡大したものである。
【0117】
図15に示すように、静電像転写電圧制御部49は、非画像形成時に、静電像目盛り31aを形成して画像形成時とは異なる電気的条件を用いて静電像転写領域25に転写して、ベルト目盛り読み取りセンサ33bにより検出する。静電像転写電圧制御部49は、その検出結果に基づいて画像形成時に静電像目盛り31aを静電像転写領域25へ転写する際の電気的条件を設定する。静電像転写電圧制御部49は、静電像目盛り31aのベルト目盛り読み取りセンサ33aによる検出信号の振幅が大きくなるように静電像転写電圧を設定する。静電像転写電圧制御部49は、静電像目盛り31aのベルト目盛り読み取りセンサ33aによる検出信号の位相変動が小さくなるように静電像転写電圧を設定する。静電像転写電圧制御部49は、静電像目盛り31aのベルト目盛り読み取りセンサ33aによる検出信号の振幅変動が小さくなるように静電像転写電圧を設定する。静電像転写電圧制御部49は、静電像転写ローラ47に複数段階の転写電圧を印加して静電像目盛り31aを中間転写ベルト24へ転写させる。そして、静電像転写電圧が異なる静電像目盛り31aの検出結果に基づいて画像形成時に静電像目盛り31aを静電像転写領域25へ転写する際の静電像転写電圧を設定する。
【0118】
図17は、静電像転写電圧設定制御の際に感光ドラム12aに形成する静電像目盛り31を時系列に示している。図17では、静電像転写ローラ47への印加電圧を時間差を設けずに変更している図となっているが、電源の能力や電源の先につながる負荷によって、任意に変更可能である。
【0119】
図15を参照して図16に示すように、静電像転写電圧制御部49は、画像形成装置の電源が印加される時に行われる準備動作である前多回転か、画像形成後の後回転の信号を受け取る(S1)。すると、静電像転写電圧制御部49は、静電像目盛り31aの静電像転写効率に影響を与える静電ベルト目盛り転写ローラ47近傍の温度、湿度を検知する指示を与える(S2)。
【0120】
続いて、静電像転写電圧制御部49は、温湿度の検知結果を元に、メモリに格納されたテーブルを読み出して、静電像転写電圧の最適値が中心付近となるように静電ベルト目盛り転写ローラ47に印加する電圧の範囲を決定する。メモリに格納されたテーブルは、製品出荷前に作成されており、中味は横軸温度、縦軸湿度のマトリックスになっており、マトリックス毎に静電像転写電圧印加部50への印加電圧の範囲が決められている(S3)。
【0121】
図11に示すように、画像形成時のトナー像の位置合わせ制御では、静電像目盛り線31bと静電像目盛り31aのピッチを最大ピッチから、1/2倍、1/4倍、1/8倍と徐々に細かくすることで、目盛り線を見失うことを防いでいる。そして、静電像目盛り線31a、31bのピッチ毎に、最適な静電像転写電圧が異なっている。
【0122】
以上のことから、図17に示すように、感光ドラム12aには、最大ピッチから、1/2倍、1/4倍、1/8倍と徐々に細かくする静電像目盛り線31をピッチ毎に複数本形成していく。
【0123】
静電像転写電圧制御部49は、i=0として制御を開始し(S4)、テーブルから決定した電圧の最小電圧をVminとして、静電像転写ローラ47にVminを印加する(S5)。
【0124】
静電像転写電圧制御部49は、続いて、露光装置16aの露光動作を開始し、静電像転写電圧設定制御の際に必要となる静電像目盛り31を感光ドラム12aに形成する(S6)。
【0125】
静電像転写電圧制御部49は、続いて、静電像目盛り線31が画像形成部43aの転写位置Taに移動した際に、各ピッチの静電像目盛り31が順次、中間転写ベルト24上に転写され、静電像転写領域25の静電像目盛り31が形成される(S7)。
【0126】
静電像転写電圧制御部49は、続いて、画像形成部43bに配置されているベルト目盛り読み取りセンサ33bにて、静電像転写領域25の静電像目盛り31を読み取る(S8)。読み取るタイミングは、感光ドラム12a上の露光位置から転写位置Taを経由してベルト目盛り読み取りセンサ33bに至る距離と、各ピッチの目盛りの数を元に割り出された時間となっている。
【0127】
静電像転写電圧制御部49は、続いて、ピッチ毎の静電像目盛り31におけるベルト目盛り読み取りセンサ33bの出力について振幅平均演算を行い、その結果をメモリに書き込む(S9)。
【0128】
静電像転写電圧制御部49は、続いて、i=nか否かを判定する(S10)。ここで、nは、静電像転写ローラ47へ何種類の電圧を印加するかを示している。例えば、n=6とすると、ステップS5でのVminが650Vとすると、静電像転写電圧を最適化する際に、650Vから50V刻みで、950Vまで印加電圧を変化させるという意味である。
【0129】
静電像転写電圧制御部49は、i=nでない場合(S10のno)、iに1が加えられてステップS5に戻る。このiに1が加えられたループでは、一つ前のループよりも50Vプラスした電圧が静電像転写ローラ47に印加されることになる。実施例1では50Vずつ変化させたが、この値は50V以外でもよい。
【0130】
静電像転写電圧制御部49は、ステップS5からS9まで前記したようにジョブを実行する。そしてi=nとなると(S10のyes)、最適な静電像転写電圧を選択する(S11)。
【0131】
静電像転写電圧制御部49は、静電像目盛り31のピッチ毎に、図18に示すような、静電像転写ローラ47への印加電圧と、ベルト目盛り読み取りセンサ33bによる読み取り電圧の振幅の関係を導き、振幅が最大値となる印加電圧を求める。
【0132】
図18に示すように、最少ピッチ(最大ピッチの1/8倍ピッチ)の静電像目盛り線31を転写した場合、印加電圧が800Vの際にベルト目盛り読み取りセンサ33bの電圧値が最大となっている。このため、最適な静電像転写電圧は800Vに決定される。
【0133】
図19に示すように、各ピッチでの振幅が最大となる静電像転写ローラ47の静電像転写電圧がプロットされている。このピッチと最適静電像転写電圧の関係を、静電像転写電圧制御部49内のメモリに書き込む(S11)。
【0134】
そして、図11に示すように、画像形成時の目盛り合わせ制御の際には、目盛り間隔毎に静電像転写電圧を変化させて、静電像目盛り31aの静電像転写を行う。
【0135】
実施例1のは静電像転写電圧設定制御によれば、環境や材料劣化による電気特性の変化が生じても、細かいピッチの静電像目盛りを静電像転写することが可能となるので、高精度に色ずれを補正することができる。
【0136】
次に、8ドット8スペース(ピッチ676.8μm)の静電像目盛り31aと4ドット4スペース(ピッチ338.4μm)の静電像目盛り31aとでベルト目盛り読み取りセンサ33bによる検出波形の違いを調べた。
【0137】
最初に、感光ドラム12aに8ドット8スペースの静電像目盛り31aを形成して中間転写ベルト24の静電像転写領域25に転写してベルト目盛り読み取りセンサ33bにより検出した。静電像目盛り31a静電像転写ローラ47への印加電圧を振って最大振幅となる転写電圧を調べたところ、図20の(a)に示すように、800Vであった。
【0138】
続いて、感光ドラム12aに4ドット4スペースの静電像目盛り31aを形成して中間転写ベルト24の静電像転写領域25に転写してベルト目盛り読み取りセンサ33bにより検出した。8ドット8スペースの場合と同様に、800Vを静電像転写ローラ47への印加して静電像転写領域25に転写したところ、図20の(b)に示すように、信号波形が得られなかった。
【0139】
そこで、この信号波形が得られない状態で4ドット4スペースの静電像目盛り31aを形成し、静電像転写ローラ47への印加電圧を振って最大振幅となる転写電圧を調べたところ、図21に示すように、1000Vであった。
【0140】
なお、実施例1では、非画像形成時に静電像転写電圧を最適化する際には、ベルト目盛り読み取りセンサとして、画像形成部43bのベルト目盛り読み取りセンサ33bを用いている。しかし、画像形成部43c(画像形成部43d)のベルト目盛り読み取りセンサ33c(33d)を用いてもよい。
【0141】
実施例1によれば、位置指標にトナー像を用いないため、資源の有効活用が可能となる。また、静電像指標による位置検出用マークは、環境や静電像指標の間隔に応じて、静電像転写電圧が最適化されて形成されるため、ベルトへの書き込み精度が上がり、その結果、色ずれ補正の精度を上げられる。
【0142】
<実施例2>
図22は実施例2における電位センサの配置と検出信号の説明図である。図23は実施例2の静電像転写電圧設定制御のフローチャートである。図24は静電像転写電圧と検出信号の標準偏差の関係の説明図である。
【0143】
実施例1では、ベルト目盛り読み取りセンサ33bの検出信号の振幅を測定して静電像目盛り31aの転写精度を評価した。これに対して、実施例2では、ベルト目盛り読み取りセンサ33bの検出信号の立ち上がりの遅れ進みを測定して静電像目盛り31aの転写精度を評価する。
【0144】
図22の(a)に示すように、実施例2では、図8の(a)に示す実施例1のベルト目盛り読み取りセンサ33bが、中間転写ベルト24の回転方向と直角な方向に2本並べて配置される。画像形成部43b(43c、43d)の転写位置近傍に2本配置したベルト目盛り読み取りセンサ33b、33b‘によって、静電像転写領域25の静電像 そもそも静電像転写電圧が最適化されていないとは、2通りある。1つは、静電像目盛り31aを転写する際の転写電界が弱過ぎて、静電像転写領域25へ静電像目盛り31aが転写されない場合である。もう1つは、静電像目盛り31aを転写する際の転写電界が強過ぎて、感光ドラム12aと静電像転写領域25とが離れた位置でも放電が生じて、転写された静電像目盛り31aの輪郭が乱れる場合である。
【0145】
図22の(a)に示すような静電像目盛り31aの形状は、静電像転写電圧が最適化されている状態である。図22の(b)に示すように、静電像転写電圧が最適化されている状態では、ベルト目盛り読み取りセンサ33bと、ベルト目盛り読み取りセンサ33b’の出力信号の立ち上がりが揃って遅れ進みが小さくなる。静電像転写電圧が適切であると、正常な放電によって静電像目盛りが規則正しく転写されるため、静電像目盛り31aの転写および読み取りの精度が高くなる。ベルト目盛り読み取りセンサ33bとベルト目盛り読み取りセンサ33b’の出力信号の立ち上がり時間差の標準偏差σはゼロに近づく。
【0146】
一方、図22の(c)に示すような静電像目盛り31aの形状は、静電像転写電圧が高過ぎて静電像目盛り31aの輪郭が乱れている状態である。図22の(d)に示すように、静電像転写電圧が不適正な状態では、ベルト目盛り読み取りセンサ33bと、ベルト目盛り読み取りセンサ33b’の出力信号の立ち上がりがばらついて遅れ進みが大きくなる。異常な放電によって静電像目盛り31aが不規則に転写されるため、ベルト目盛り読み取りセンサ33bとベルト目盛り読み取りセンサ33b’の出力信号の立ち上がり時間差の標準偏差σは大きくなる。
【0147】
実際は、静電像転写電圧が適切で、正常な放電で静電像目盛り31aが転写されていても、中間転写ベルト24の寄りや搬送速度のムラ、電位センサ330による読み取り誤差などいくつかの要因によって標準偏差σはゼロからはずれる。
【0148】
図15を参照して図23に示すように、ステップS1からS7までは、図16の実施例1と同様の動作のため、説明は省略する。
【0149】
静電像転写電圧制御部49は、続いて、2本のベルト目盛り読み取りセンサ33b、33b‘によって静電像目盛り31aを検出する(S8)。具体的には、図22の(b)(d)に示すように、出力波形の立ち上り領域が電位ゼロを通過する時間を測定する。2つのベルト目盛り読み取りセンサ33b、33b‘の一つ目の通過時間をt1、t1’、二つ目の通過時間をt2、t2’として以下1000ポイントを測定し、t1000、t1000’を得る。
【0150】
静電像転写電圧制御部49は、続いて、各ポイントに対して2つのベルト目盛り読み取りセンサ33b、33b‘の通過時間の差、(t1−t1’)、(t2−t2’)・・・の分散を求めて標準偏差σを算出する(S9)。上述したように、静電像転写電圧が適正であれば標準偏差σはゼロに近づき、静電像転写電圧が不適正であるほど標準偏差σはゼロからはずれる。標準偏差σは、静電像転写電圧制御部49内のメモリに書き込まれる。
【0151】
静電像転写電圧制御部49は、実施例1と同様に、静電像転写ローラ47に印加する静電像転写電圧を50Vづつ高めて、同様な静電像目盛り31aの形成、転写、検出を行って標準偏差σを算出する(S5〜S10)。
【0152】
すべての静電像転写電圧での標準偏差σが求められると(S10のyes)、静電像転写電圧制御部49には、図24に示すように、静電像転写電圧と標準偏差σの関係がプロットされている。
【0153】
静電像転写電圧制御部49は、標準偏差σが最少となる静電像転写電圧を選択してメモリに書き込む(S11)。図24の場合は、静電像転写電圧が800Vのとき標準偏差σが最少となるため、画像形成時の静電像転写電圧はが800Vに設定される。そして、静電像転写電圧制御部49は、画像形成時の目盛り合わせ制御において、静電像転写ローラ47に800Vを印加する。
【0154】
実施例2の構成によれば、環境や材料劣化による電気特性の変化が生じても、細かいピッチの静電像目盛り31aを静電像転写領域25へ転写することが可能となるので、高精度に色ずれを補正することができる。
【0155】
<実施例3>
図25は実施例3における画像形成時の色ずれ補正制御の説明図である。
【0156】
図1に示すように、実施例1では、中間転写ベルト24の静電像目盛り31aを読み取って感光ドラム12bの回転速度をリアルタイムに制御した。これに対して、実施例3では、中間転写ベルト24の静電像目盛り31aを読み取って中間転写ベルト24の速度ムラをリアルタイムに除去する。ベルト駆動ローラ36の偏心や摩擦による中間転写ベルト24の搬送速度の変化による位置ずれ要因を解消する。
【0157】
図25に示すように、感光ドラム12dの下流には、回転方向に静電像目盛り31aのピッチよりも短い間隔を隔てて第1ベルト目盛り読み取りセンサ33と第2ベルト目盛り読み取りセンサ39が配置される。第1ベルト目盛り読み取りセンサ33と第2ベルト目盛り読み取りセンサ39は、いずれも図7に示すアンテナ型の電位センサ330であって中間転写ベルト24の静電像転写領域25に転写された同一の静電像目盛り31aを検出する。
【0158】
感光ドラム12dにおいて、実施例1と同様に、4ドット4スペースの露光タイミングで露光装置16dを用いて有効画像領域90の外側に静電像目盛り31dを形成し、静電像転写ローラ47を用いて静電像転写領域25に転写する。
【0159】
第1のベルト目盛り読み取りセンサ33と第2のベルト目盛り読み取りセンサ39の間隔が静電像目盛り31aのピッチよりも短いため、同一目盛り線での検出信号の立ち上がり時間差から中間転写ベルト24の刻々の移動速度を算出可能である。回転方向に一定ピッチで配列した静電像目盛り31aに対して同様の検出及び演算を行うことで、中間転写ベルト24の移動速度変動が算出される。
【0160】
また、多数の静電像目盛り31aでそれぞれ移動速度を演算して平均することで、中間転写ベルト24の平均移動速度が算出される。
【0161】
制御部48は、測定された中間転写ベルト24の刻々の移動速度を平均速度へ近づけるようにベルト駆動ローラ36を駆動して、中間転写ベルト24の速度変動を解消させる。中間転写ベルト24の移動速度変動を無くして平均速度となるように速度調整を行う。
【0162】
あるいは、中間転写ベルト24の速度変動に応じて、速度変動を相殺する方向に、露光タイミングや、感光ドラム12dの回転速度を調整することによって、位置ずれを補正する。
【0163】
そして、このような実施例3の画像形成装置100Bにおいても、実施例1、2と同様にして、静電像転写ローラ47に印加する静電像転写電圧を最適化できる。
【0164】
<実施例4>
図26は実施例4における色ずれ補正制御の説明図である。図27は静電像指標の位置ずれが発生した状態の説明図である。
【0165】
図1に示すように、実施例1では、中間転写ベルト24の静電像目盛り31aを読み取って感光ドラム12bの回転速度をリアルタイムに制御した。これに対して、実施例2では、感光ドラム12a、12b、12c、12dから中間転写ベルト24へ転写した4つの静電像指標を感光ドラム12dの下流で読み取って、感光ドラム12a、12b、12c、12dの露光開始タイミングを設定する。
【0166】
図1を参照して図26に示すように、ベルト目盛り読み取りセンサ33は、感光ドラム12dの下流側に配置される。そして、感光ドラム12a、12b、12c、12dがそれぞれ形成して静電像転写領域25に転写した静電像指標149、150、151、152を検出する。画像形成時は、静電像指標149、150、151、152のベルト目盛り読み取りセンサ33による検出結果に基づいて感光ドラム12a、12b、12c、12dにおけるトナー像の形成タイミングが設定される。
【0167】
感光ドラム12dの下流には、ベルト目盛り読み取りセンサ33が配置され、感光ドラム12a、12b、12cは、それぞれ静電像転写ローラ(47:不図示)が配置される。感光ドラム12a、12b、12cには、それぞれ静電像指標152、151、150が形成されて、静電像転写ローラを用いて中間転写ベルト24の静電像転写領域25に転写される。
【0168】
中間転写ベルト24上に形成される2つの静電像指標148、149は、色ずれを検出する際の基準となる目盛り線であって、静電像指標148、149の間隔は、感光ドラム12a、12b、12c、12dの間隔と等しく設定されている。そのため、感光ドラム12a、12b、12c、12dに静電像指標149、150、151、152を同時に形成すると、静電像転写領域25には、静電像指標148、149、150、151、152が等間隔に転写される。ベルト目盛り読み取りセンサ33によって静電像指標148、149、150、151、152が等しい時間間隔で検出される。
【0169】
したがって、静電像指標148、149、150、151、152をベルト目盛り読み取り電位センサ330が検出する時間間隔を測定すれば、トナー像を転写した際の位置ずれ量を検出することが可能である。静電像指標148、149が検出される時間間隔を基準にして感光ドラム12a、12b、12cでの書き始めタイミングを調整することで、中間転写ベルト24に静電像指標148、149、150、151、152を等間隔に転写できる。
【0170】
具体的には、位置ずれを検出する際の基準の位置関係にある静電像指標148、149の検出時刻の間隔をT0とする。静電像指標149、150の検出時刻の間隔をT1、静電像指標150、151の検出時刻の間隔をT2、静電像指標151、152の検出時刻の間隔をT3、とする。このとき、次式の関係が成立すればトナー像の位置ずれ量は0と言える。
T1=2×T0
T2=3×T0
T3=4×T0
【0171】
しかし、トナー像の位置ずれが生じた場合、図27に示すように、T1、T2、T3がT0に対して、2倍、3倍、4倍とはならず、次式で計算される位置ずれ量ΔT1、ΔT2、ΔT3が生じる。
ΔT1=T1−2×T0
ΔT2=T2−3×ΔT0
ΔT3=T3−4×T0
【0172】
この位置ずれ量の分だけ、感光ドラム12a、12b、12cの露光開始タイミング(又は感光ドラムの回転速度)を調節して、位置ずれを補正することができる。
【0173】
そして、このような実施例4の画像形成装置100Cにおいても、実施例1、2と同様にして、静電像転写ローラ47に印加する静電像転写電圧を最適化できる。感光ドラム12c(12b、12a)で形成された静電像指標を静電像転写電圧を振って静電像転写領域に転写し、ベルト目盛り読み取りセンサ33で検出して最適と評価された静電像転写電圧を画像形成時に設定する。
【符号の説明】
【0174】
4a、4b、4c、4d 一次転写ローラ
6a、6b、6c、6d ドラム駆動モータ
8a、8b、8c、8d ドラムエンコーダ
12a、12b、12c、12d 感光ドラム
14a、14b、14c、14d 帯電ローラ
16a、16b、16c、16d 露光装置
18a、18b、18c、18d 現像装置
24 中間転写ベルト、25 静電像転写領域
31、31a、31b、31c、31d 静電像目盛り
33b、33c、33d ベルト目盛り読み取りセンサ
34b、34c、34d ドラム目盛り読み取りセンサ
36 ベルト駆動ローラ、37 ベルト従動ローラ
43a、43b、43c、43d 画像形成部
46a、46b コロナ帯電器
47 静電像転写ローラ、48 制御部
49 静電像転写電圧制御部、50 静電像転写電圧印加部
148、149、150、151、152 静電像指標
330 電位センサ、331 導線、332 ベースフィルム
333 保護フィルム、334 検出部、341 高電位部
342 低電位部、Ta、Tb、Tc、Td 転写部
P 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、画像のトナー像の転写部で前記像担持体に当接するとともに前記画像のトナー像の転写に用いる画像領域と並列に並べて未現像の静電像を転写させる静電像転写領域を設けたベルト部材と、画像の静電像を前記像担持体に形成する静電像形成手段と、前記静電像形成手段を用いて前記像担持体に形成した静電像指標を未現像で前記静電像転写領域に転写する静電像転写部材と、前記静電像転写領域上の前記静電像指標の誘導電流を前記ベルト部材の回転に伴って検出するアンテナ型電位センサと、を備え、前記静電像転写領域上の前記静電像指標を前記アンテナ型電位センサにより検出して、前記画像領域で転写される複数の前記画像のトナー像の重ね合わせを制御する画像形成装置であって、
非画像形成時に、前記静電像指標を形成して、画像形成時とは異なる電気的条件を用いて前記静電像転写領域に転写して、前記アンテナ型電位センサにより検出し、その検出結果に基づいて画像形成時に前記静電像指標を前記静電像転写領域へ転写する際の電気的条件を設定する制御手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記静電像指標の前記アンテナ型電位センサによる検出信号の振幅が大きくなるように前記転写電圧を設定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記静電像指標の前記アンテナ型電位センサによる検出信号の位相変動が小さくなるように前記転写電圧を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記静電像指標の前記アンテナ型電位センサによる検出信号の振幅変動が小さくなるように前記転写電圧を設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記静電像指標は、前記像担持体の回転方向に直角な輪郭を持たせて前記静電像形成手段における所定走査線本数間隔で配列するように形成され、
前記制御手段は、前記静電像転写部材に複数段階の転写電圧を印加して前記静電像指標を前記ベルト部材へ転写させ、転写電圧が異なる前記静電像指標の検出結果に基づいて、画像形成時に前記静電像指標を前記静電像転写領域へ転写する際の転写電圧を設定することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ベルト部材の回転方向における前記像担持体の下流側に、前記画像のトナー像に重ね合わせるための別の画像のトナー像が形成される別の像担持体が配置され、
前記アンテナ型電位センサは、前記別の像担持体が前記別の画像のトナー像を前記ベルト部材へ転写する位置に配置されて、前記像担持体で形成されて前記静電像転写領域へ転写された静電像指標を検出し、
画像形成時は、前記像担持体から転写された前記静電像指標の前記アンテナ型電位センサによる検出結果に基づいて前記別の像担持体の刻々の回転速度が調整されることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ベルト部材の回転方向における前記像担持体の下流側に、前記画像のトナー像に重ね合わせるための別の画像のトナー像が形成される別の像担持体が配置され、
前記アンテナ型電位センサは、前記別の像担持体の下流側に配置されて、前記像担持体と前記別の像担持体とでそれぞれ形成して前記静電像転写領域に転写した静電像指標を検出し、
画像形成時は、前記像担持体から転写された静電像指標と前記別の像担持体から転写された静電像指標の前記アンテナ型電位センサによる検出結果に基づいて前記別の像担持体におけるトナー像の形成タイミングが設定されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記静電像指標は、前記像担持体の回転方向に複数種類のピッチで1つのピッチごとに複数が配列するように形成されて前記静電像転写領域に転写され、
前記制御手段は、前記静電像指標のピッチが小さいほど前記静電像転写部材に印加する転写電圧の絶対値を大きくするように転写電圧を設定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−103649(P2012−103649A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254481(P2010−254481)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】