説明

画像形成装置

【課題】
帯電させた搬送ベルトにより記録用紙を吸着して印刷を行う画像形成装置において、搬送ベルトの磨耗に起因する用紙吸着力の低下を防止する。
【解決手段】
自装置の周囲温湿度に応じて印刷動作に使用すべき紙種を規定した用紙情報を記憶する用紙情報記憶手段41と、自装置に入力された印刷要求において指定された紙種が、現在の周囲温度及び湿度において使用すべき紙種であるか否かを、前記用紙情報に基づいて判断する紙種判断手段44と、紙種判断手段44が前記指定された紙種は前記使用すべき紙種でないと判断したとき、前記搬送ベルトへの汚れの付着量を考慮した給紙条件を設定する給紙条件設定手段47と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記録用紙を搬送する搬送ベルトの清掃手段を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出して記録用紙に印刷を行うインクジェット方式の画像形成装置では、一般に、搬送ベルトと称する可動ベルト機構(ベルトコンベア機構)により、記録用紙を用紙トレイからインクジェットヘッドまで搬送し、この搬送ベルト上に記録用紙を載せたまま印刷を行う。
このため、搬送ベルト上での記録用紙の位置がずれると印刷画像が乱れてしまうことから、通常、搬送ベルトを帯電させ、この帯電により記録用紙を吸着して、記録用紙の位置ずれを防止する。
【0003】
この搬送ベルトの帯電による記録用紙を吸着する力(用紙吸着力)は、画像形成装置の使用に伴って搬送ベルト上に紙粉や印刷用インクの飛沫(ミスト)等が付着することにより、経時的に低下していく。このため、必要に応じて、低下した用紙吸着力を回復する必要があり、その方法として、給紙動作を行なわない期間に搬送ベルトを帯電させないまま回転させ、クリーニングブラシと称されるブラシ部材を搬送ベルトに当接することにより、付着物を掻き取って清掃する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
他方、記録用紙を搬送する搬送ローラの不要な清掃を避けるべく、搬送ローラ周辺に紙粉の受取部材を設け、受取部材に溜まった紙粉の量に基づいて搬送ローラの清掃を実施する方法も知られている(特許文献2参照)。
【0005】
ところで、用紙吸着力の低下要因である紙粉の発生量は、使用する記録用紙の種類(紙種)に依存し、また、紙粉の発生量及びミストの発生量は、共に、周囲の温度・湿度が低くなるにつれて増加する。
このため、ユーザの使用条件や環境条件によっては、紙粉やミストの発生量が増加して、搬送ベルトの清掃動作を頻繁に行なう必要が生ずる。
【0006】
しかしながら、上述した従来の搬送ベルトの清掃方法では、搬送ベルトの清掃に際し記録用紙の給紙を停止して印刷動作を中断する必要があり、搬送ベルトの清掃が頻繁に実行されると、画像形成装置の印刷処理能力(時間当たりの印刷枚数)が低くなってしまうという問題がある。
【0007】
また、清掃動作により、紙粉等の付着による用紙吸着力の低下は回復しても、搬送ベルトの磨耗による用紙吸着力の低下が進行するため、紙粉やミストの発生しやすい条件で継続的に使用され清掃動作が頻繁に行なわれた場合には、搬送ベルトの磨耗による用紙吸着力の低下が加速されてしまうという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献2の方法を用いれば紙粉の発生量に基づいて不要な清掃を回避できるとしても、ユーザが紙粉の発生しやすい条件で継続的に画像形成装置を使用すれば清掃の頻度は高くなり、搬送ベルトの消耗により用紙吸着力が低下するという上記の問題は回避できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、記録用紙を搬送する搬送ベルトの清掃手段を備えた画像形成装置において、搬送ベルトへの汚れの吸着を抑制し清掃頻度を下げ、搬送ベルトの磨耗に起因する用紙吸着力の低下を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、記録用紙を搬送する搬送ベルトの清掃手段を備えた画像形成装置であって、自装置の周囲温度及び湿度に応じて印刷動作に使用すべき紙種を規定した用紙情報を記憶する記憶手段と、自装置に入力された印刷要求において指定された紙種が、現在の周囲温度及び湿度において使用すべき紙種であるか否かを、前記用紙情報に基づいて判断する紙種判断手段と、前記紙種判断手段が前記指定された紙種は前記使用すべき紙種でないと判断したとき、前記搬送ベルトへの汚れの付着量を考慮した給紙条件を設定する給紙条件設定手段を有する画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録用紙を搬送する搬送ベルトの清掃手段を備えた画像形成装置において、搬送ベルトへの汚れの吸着を抑制し清掃頻度を下げ、搬送ベルトの磨耗に起因する用紙吸着力の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の、印刷部の構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の、処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の、用紙情報記憶手段が記憶する用紙情報の例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の、枚数情報記憶手段が記憶する累積印刷枚数及び使用上限枚数の例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の、動作手順を示すフロー図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の、動作手順を示すフロー図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る画像形成装置の、動作手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
本画像形成装置1は、記録用紙への印刷に用いる印刷データを外部のPC(パーソナルコンピュータ)等から受信する通信インタフェース2と、記録用紙への印刷を行う印刷部3と、外部から受信した印刷データに基づいて印刷部3に印刷動作を行わせる処理部4と、画像形成装置1がユーザに印刷動作に関する情報を表示したり、ユーザが画像形成装置1への指示やデータを入力するためのユーザ端末5と、自装置の周囲の温度及び湿度を測定する測定手段であるセンサ部6と、を有している。
【0014】
図2は、印刷部3の構成を示す図である。
印刷部3は、その内部に収納した黒インクを吐出するインクジェットヘッド31と、インクジェットヘッド31の下に記録用紙を搬送する搬送ベルト32と、搬送ベルト32を記録用紙の搬送方向に周回させる搬送ローラ331、332と、搬送ベルト32を帯電させて記録用紙を吸着させる帯電手段である帯電ローラ34と、それぞれ種類の異なる記録用紙を収納する用紙トレイ351〜354と、用紙トレイ351〜354からそれぞれ記録用紙を1枚ずつ搬送ベルト32へ分離給送する給紙コロ3511〜3541とを有している。
【0015】
また、印刷部3は、給紙コロ3511〜3541により給送された記録用紙を搬送ベルト32へ導く給紙ガイド36と、搬送ベルト32から記録用紙を回収する排紙ローラ371、372と、搬送ベルト32の清掃時に搬送ベルト32に当接してその付着物を掻き取るクリーニングブラシ38を有している。なお、インクジェットヘッド31は、それぞれその内部に収納したシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのインクを吐出する複数のインクジェットヘッドで構成されていてもよい。
【0016】
搬送ベルト32には、搬送ローラ331と帯電ローラ34との間に交流電圧を印加することにより、記録用紙の搬送方向に正電圧帯と負電圧帯が所定の幅で交互に繰り返す帯状の帯電パターンが形成される。この帯電パターンの繰り返し幅(帯電ピッチ)は、搬送ローラ331と帯電ローラ34との間に印加される交流電圧の周波数と、搬送ローラ331の回転数により決定される。
【0017】
記録用紙は、まず、用紙トレイ351〜354のいずれかから、その用紙トレイに対応する給紙コロ3511〜3541により搬送ベルト32へ向けて1枚ずつ分離給送され、搬送ベルト32により吸着されてインクジェットヘッド31に向かって搬送される。その後、インクジェットヘッド31による印刷が完了した記録用紙は、排紙ローラ371、372により回収されて、画像形成装置1の外部に排紙される。
【0018】
ここで、インクジェットヘッド31による記録用紙への印刷は、搬送ベルト32により搬送される記録用紙の上を、インクジェットヘッド31が、記録用紙の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復移動しながらインクを吐出することにより行なわれる。
【0019】
図3は、処理部4の構成を示すブロック図である。
処理部4は、CPU(Central Processing Unit)、プログラムが書き込まれたROM(Read Only Memory)、データの一時記憶のためのRAM(Random Access Memory)等を有するコンピュータであり、画像形成装置1の周囲の温度、湿度、及び記録用紙の種類(紙種)により異なる紙粉の発生量に基づき、印刷動作において「使用すべき紙種」を規定した用紙情報を記憶する記憶手段である用紙情報記憶手段41を有している。ここで、「使用すべき紙種」とは、周囲の温度及び湿度に応じて規定される、紙粉の発生量が所定量以下となる紙種をいう。
【0020】
また、処理部4は、搬送ベルト32についての直近の清掃後(以下、単に「直近の清掃後」という)における各紙種の記録用紙の累積印刷枚数、及び、周囲温度・湿度に応じて、用紙情報記憶手段41が記憶する用紙情報に規定されている「使用すべき紙種」以外の紙種について、直近の清掃後における紙粉の発生量が所定量を超えないように、その使用枚数の上限を規定した使用上限枚数を記憶する枚数情報記憶手段42を有している。
【0021】
さらに、処理部4は、外部から受信した印刷要求で指定された紙種(以下、単に「指定された紙種」という)を特定する紙種特定手段43と、紙種特定手段43が特定した「指定された紙種」が現在の周囲温度及び湿度に応じた「使用すべき紙種」であるか否かを、センサ部6が測定する周囲温度及び湿度並びに用紙情報記憶手段41が記憶している用紙情報に基づいて判断する紙種判断手段44と、用紙トレイ351〜354に収容されている紙種毎に、搬送ベルト32の清掃後における累積印刷枚数を計数する計数手段45と、計数手段45が計数した、搬送ベルト32の直近の清掃後における前記「指定された紙種」の累積印刷枚数が、枚数情報記憶手段42が記憶している使用上限枚数を超えているか否かを判断する枚数判断手段46と、紙種判断手段44及び枚数判断手段46の判断結果に基づいて、搬送ベルトへの汚れの付着量を考慮した給紙条件を設定する給紙条件設定手段47と、を有している。
【0022】
ここで、上記の用紙情報及び使用上限枚数は、例えば、予めユーザが画像形成装置1のユーザ端末5により入力して、用紙情報記憶手段41及び枚数情報記憶手段42にそれぞれ記憶させておくものとする。また、用紙情報記憶手段41及び枚数情報記憶手段42は、共にEEPROM等の不揮発性メモリで構成されており、画像形成装置1の電源が断になった後も、記憶内容を保持しているものとする。
【0023】
なお、上述した各手段は、プログラムにより実現される処理部(コンピュータ)4の機能実現手段である。また、コンピュータ・プログラムは、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。
【0024】
図4は、用紙情報記憶手段41が記憶する用紙情報の一例を示す図である。
図4には、周囲温度及び湿度に応じて「使用すべき紙種」(専用紙、上質紙、普通紙、及び再生紙)を規定した用紙情報を示している。
【0025】
紙粉の発生量は、同一の周囲温度・湿度の下では、専用紙が最も少なく、上質紙、普通紙、再生紙の順に多くなる。このため、図4の表の各欄には、その周囲温度・湿度の下における「使用すべき紙種」のうち、紙粉の発生量が最も多い紙種が記載されている。例えば、図4の表では、温度10〜15℃、湿度40%〜60%に対応する欄に「普通紙」と記載されているので、この条件下においては、普通紙、上質紙、及び専用紙が「使用すべき紙種」となる。
【0026】
一般に、高温かつ高湿の下では、いずれの種類の記録用紙においても紙粉が発生し難いため、紙粉の発生量が最も多い再生紙であってもベルトへの紙粉の付着量は少ない。そのため、高温かつ高湿の環境に対応する図4の表右下の欄には「再生紙」が記載されている。また、温度・湿度が低下するにつれて紙粉の発生量は多くなるため、中温・中湿の環境に対応する図4の表中央部分には、再生紙よりも紙粉の発生量が少ない「普通紙」が記載され、さらに低温・低湿となる図4の表左上部分に向かって、より紙粉の発生量の少ない「上質紙」、「専用紙」が記載されている。
【0027】
図5は、枚数情報記憶手段42が記憶する、累積印刷枚数及び使用上限枚数の一例を示す図である。図5(a)は、各紙種の累積印刷枚数を示しており、図5(b)及び(c)は、それぞれ、再生紙及び普通紙についての、各温度・湿度条件の下における使用上限枚数を示している。なお、図5には示していない上質紙の使用上限枚数についても、図5(b)(c)と同様に規定される。ただし、専用紙については、全ての温湿度条件下において「使用すべき紙種」であることから、使用上限枚数は規定されない。
【0028】
図5(a)の累積印刷枚数は、搬送ベルト32についての直近の清掃後における印刷枚数を表しており、この枚数は、印刷動作が実行されるにつれて更新される。
【0029】
図5(b)は、再生紙の使用上限枚数である。図5(b)の斜線部分の欄は、再生紙が「使用すべき紙種」となる温度・湿度条件に対応していることから、使用上限枚数は規定されていない。また、図5(b)の左上部分、すなわち、低温・低湿の温湿度条件になるにしたがって、紙粉の発生量が増加していくことから、使用上限枚数は減少するように規定されている。
【0030】
図5(c)は、普通紙の使用上限枚数であり、普通紙が「使用すべき紙種」となる右下の斜線部分の欄では使用上限枚数は規定されず、左上部分の欄に向かって、使用上限枚数が減少するように規定されている。
【0031】
上記の給紙条件設定手段47は、周囲温度及び湿度に基づいて、用紙情報記憶手段41が記憶している用紙情報、例えば図4に示すような用紙情報から、「使用すべき紙種」を特定し、特定した紙種が画像形成装置1に入力された印刷要求で指定された紙種(以下、単に「指定された紙種」という)と合致しないときは、枚数情報記憶手段42から、例えば図5に示すような情報を読み出して、「指定された紙種」についての、直近の清掃後における累積印刷枚数と、使用上限枚数を特定し、累積印刷枚数が使用上限枚数を超えているか否かを判断する。
【0032】
そして、累積印刷枚数が使用上限枚数を超えるまでは、「指定された紙種」の記録用紙を優先的に使用し、累積印刷枚数が使用上限枚数を超えたときは、予め定めた動作条件の設定動作として、例えば、「使用すべき紙種」のうちいずれかの紙種の記録用紙を、印刷に使用する記録用紙として設定して、紙粉の発生量を低減する。これにより、搬送ベルト32への汚れの付着量を低減して清掃頻度を低くすることができ、搬送ベルト32の磨耗に起因する用紙吸着力の低下を防止できる。
【0033】
なお、本実施形態に係る画像形成装置1は、搬送ベルト32を帯電させない構成、例えば、搬送ベルトに開けた小径の穴から空気を吸引することにより記録用紙を吸着する構成とした場合にも、記録用紙からの紙粉の発生を抑制し、搬送ベルトの清掃頻度を低減して、印刷能力(単位時間当たりの印刷枚数)の低下を防止できるという効果を発揮する。
【0034】
次に、本画像形成装置1の動作手順を、図6に示すフロー図にしたがって説明する。ここで、用紙トレイ351〜354には、同じサイズの異なる紙種の記録用紙、例えば、再生紙、普通紙、上質紙、専用紙が、それぞれ収容されているものとする。
【0035】
まず、ユーザが画像形成装置1の電源を投入すると(S101)、処理部4は、通常の印刷動作条件として、帯電ローラ34へ印加する交流電圧の振幅を調整して、搬送ベルト32の帯電電圧をV1にすると共に、交流電圧の周波数を調整して、搬送ベルト32の帯電ピッチをL1に設定する(S102)。この帯電電圧V1は、通常、所定の用紙吸着力が得られる電圧に所定の余裕度を付加して設定される。また、帯電ピッチL1は、狭すぎると、隣接する正負の電圧帯間に生じる斥力により用紙吸着力が低下し、広すぎると、搬送ベルト32の正負の電圧帯に対応して記録用紙の印刷面表面に誘起される負電荷及び正電荷の間の距離が長くなり、電荷移動による電荷の中和時間が長くなる結果、印刷面表面が帯電して不要なミストが吸着される。このため、帯電ピッチL1は、通常、用紙吸着力に影響を与えない範囲で狭く設定される。
【0036】
続いて、処理部4は、外部からの印刷要求を待機し(S103、No)、印刷要求を受信すると(S103、Yes)、紙種特定手段43が、その印刷要求で指定された記録用紙の紙種(指定された紙種)を特定する(S104)。
次に、紙種判断手段44は、センサ部6により自装置の周囲の温度及び湿度(周囲温度及び湿度)を測定し(S105)、用紙情報記憶手段41から用紙情報を読み出して(S106)、周囲温度及び湿度の測定値に基づき、用紙情報から、使用すべき記録用紙の紙種「使用すべき紙種」を特定する(S107)。
【0037】
例えば、温度10〜15℃、湿度20〜40%の条件下では、図4より、使用すべき紙種は上質紙及び専用紙となる。なお、画像形成装置1の周囲の温度及び湿度は、画像形成装置1に接続された他の装置、例えば画像形成装置1に印刷要求を送信するパーソナルコンピュータにより与えられるものとすることもでき、この場合には、センサ部6は不要となる。
【0038】
また、紙種判断手段44は、「指定された紙種」が「使用すべき紙種」であるか否かを判断し(S108)、「使用すべき紙種」であるときは(S108、Yes)、処理部4は、印刷要求に従い、「指定された紙種」の記録用紙を収容した用紙トレイを選択して、すべての画像を印刷した後(S109)、ステップS103に戻って、次の印刷要求を待機する。例えば、上記の例(温度10〜15℃、湿度20〜40%の例)では、「指定された紙種」が上質紙であれば、「使用すべき紙種」に該当するので、上質紙を収容した用紙トレイ353を選択して、最後のページまで印刷を行う。
【0039】
一方、「指定された紙種」が「使用すべき紙種」以外の紙種であるときは(S108、No)、枚数判断手段46は、枚数情報記憶手段42から、「指定された紙種」の累積印刷枚数を読み出すと共に(S110)、ステップS105で測定した周囲温度及び湿度における「指定された紙種」についての使用上限枚数を読み出す(S111)。
【0040】
また、枚数判断手段46は、上記指定された紙種の累積印刷枚数が上記使用上限枚数を超えているか否かを判断し(S112)、超えているときは(S112、Yes)、給紙条件設定手段47は、予め定めた設定動作として、「使用すべき紙種」の記録用紙を印刷に使用する記録用紙として設定する。すなわち、用紙トレイ351〜354の中から、「使用すべき紙種」の記録用紙を収容した用紙トレイを、印刷に用いる用紙トレイとして設定する(S113)。
【0041】
例えば、上記の例(温度10〜15℃、湿度20〜40%)では、「使用すべき紙種」の一つである上質紙を収容した用紙トレイ353を選択する。ここで、上記の例のように「使用すべき紙種」が2種類以上あるときは(上記の例では上質紙と専用紙の2種類)、例えば、最も紙粉発生量の多い紙種を使用する等の所定のルールを予め設けておき、このルールに基づいて、「使用すべき紙種」のうちいずれかの紙種を印刷に用いる紙種として選択することができる。
【0042】
続いて、処理部4は、「指定された紙種」以外の紙種を印刷に使用した旨の通知を、ユーザ端末5に表示し(S114)、印刷要求に従い、最後のページまで印刷して(S115)、ステップS103に戻る。
【0043】
一方、ステップS112において、累積印刷枚数が使用上限枚数を超えていないときは(S112、No)、給紙条件設定手段47は、「指定された紙種」の記録用紙を収容した用紙トレイを、印刷動作に用いる用紙トレイとして選択し(S116)、処理部4は、1枚分の印刷動作を実行すると共に、計数手段45により、その「指定された紙種」の累積印刷枚数に1を加算する(S117)。続いて、印刷要求に含まれた全ページを印刷したか否かを判断し(S118)、終了していれば(S118、Yes)、累積印刷枚数を枚数情報記憶手段42に記憶して(S119)、ステップS103に戻り、終了していなければ(S118、No)、ステップS112に戻る。
【0044】
なお、画像形成装置1の電源投入(図6のステップS101)の後に、ユーザが適切な紙種を指定できるように、ユーザ端末5に周囲の温度・湿度に応じた「使用すべき紙種」を表示したり、「使用すべき紙種」以外の紙種についての累積印刷枚数及び使用上限枚数を表示することもできる。
【0045】
次に、本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置について説明する。
本画像形成装置では、第1の実施形態に係る給紙条件設定手段47は、予め定めた動作条件の設定動作として、搬送ベルト32の帯電電圧を、現在設定されている電圧よりも低い所定の電圧に設定し、搬送ベルト32の用紙吸着力を許容範囲内で低下させ、用紙吸着力の余裕度を犠牲にして紙粉の吸着を抑制するものとする。
【0046】
本実施形態によれば、印刷に使用する記録用紙の紙種を、「指定された紙種」以外の紙種に変更できないときにも、搬送ベルト32への紙粉の吸着を抑制して搬送ベルト32の清掃頻度を下げることができるので、搬送ベルト32の磨耗に起因する用紙吸着力の低下を防止することができる。
【0047】
図7は、本実施形態に係る画像形成装置の動作手順を示すフロー図である。
本画像形成装置においては、図5に示した第1の実施形態に係るフロー図のステップS113及びS114の代わりに、帯電ローラ34に印加する交流電圧の振幅を調整して、通常動作条件である帯電電圧V1から予め定めた電圧V2(<V1)に変えた後(S213)、印刷要求に従って最後のページまで印刷を行う。これ以外のステップS201〜212及びS214〜218は、図5のステップS101〜112及びS115〜119と同じであるので説明を省略する。
【0048】
次に、本発明の第3の実施形態に係る画像形成装置について説明する。
本画像形成装置では、第1の実施形態に係る給紙条件設定手段47は、予め定めた動作条件の設定動作として、搬送ベルト32の帯電ピッチを、現在設定されているピッチよりも広い所定のピッチに設定する。
【0049】
本実施形態によれば、搬送ベルト32の帯電ピッチを広くすることにより、搬送ベルト32上の正負の電圧帯間に生ずる電界が小さくなることから、搬送ベルト32へのミストの付着量が少なくなる。このため、本実施形態に係る画像形成装置では、印刷に使用する記録用紙の紙種を「指定された紙種」以外の紙種に変更できないときにも、紙粉の吸着を抑制する代わりにミストの吸着を抑制して搬送ベルト32に吸着される汚れの総量を低減し、搬送ベルト32の清掃頻度を下げて、搬送ベルト32の磨耗に起因する用紙吸着力の低下を防止することができる。
【0050】
なお、帯電ピッチを広くした場合には、前述したように、記録用紙の印刷表面に生ずる電荷の中和時間が長くなり、印刷面表面にミストが吸着されやすくなるが、記録用紙の電荷の移動度が高くなる高温・高湿の条件下では、電荷の中和時間の延伸が緩和される。このため、本実施形態は、高温・高湿の環境下で実施するのが好ましい。また、上記の「所定の帯電ピッチ」は、周囲の温度・湿度条件に応じて定めることもできる。
【0051】
図8は、本実施形態に係る画像形成装置の動作手順を示すフロー図である。
本画像形成装置においては、図5に示した第1の実施形態に係るフロー図のステップS113及びS114の代わりに、帯電ローラ34に印加する交流電圧の周波数を変えて、搬送ベルト32の帯電ピッチを、通常動作条件であるL1から予め定めた値L2(>L1)に変えた後(S313)、印刷要求に従って最後のページまで印刷を行う。これ以外のステップS301〜312及びS314〜318は、図5のステップS101〜112及びS115〜119と同じであるので説明を省略する。
【0052】
以上説明したように、第1ないし第3の実施形態に係る画像形成装置では、各紙種の紙粉の発生量に基づき「使用すべき紙種」を予め定めておき、ユーザが印刷要求において「使用すべき紙種」以外の紙粉の発生量の多い紙種を指定した場合には、その「指定された紙種」での累積印刷枚数が所定の使用上限枚数を越えるまでは「指定された紙種」を使用し、累積印刷枚数が使用上限枚数を超えたときは、予め定められた、搬送ベルトへの汚れの付着が抑制されるような動作条件への変更、すなわち、印刷に使用する紙種の変更、搬送ベルトの帯電電圧の変更、又は帯電ピッチの変更を行なう。その結果、搬送ベルトの清掃頻度が低減され、搬送ベルトの磨耗に起因する用紙吸着力の低下を防止することができる。
【0053】
なお、以上の説明では、本発明を画像形成装置として実施した場合の形態について説明したが、本発明は、給紙条件の設定方法、及び、その給紙条件の設定方法を画像形成装置のコンピュータにより実行するプログラムとして実施することもできる。
【0054】
例えば、本発明は、自装置の周囲温度及び湿度に応じて印刷動作に使用すべき紙種を規定した用紙情報を記憶する工程と、自装置に入力された印刷要求において指定された紙種が、現在の周囲温度及び湿度において使用すべき紙種であるか否かを、前記用紙情報に基づいて判断する工程と、前記紙種判断手段が前記指定された紙種は前記使用すべき紙種でないと判断したとき、前記搬送ベルトへの汚れの付着量を考慮した給紙条件を設定する工程と、を有する給紙条件の設定方法として実施することができる。
【0055】
また、本発明は、例えば、上記の給紙条件の設定方法を、画像形成装置のコンピュータにより実行するプログラムとして実施することもできる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・画像形成装置、2・・・通信インタフェース、3・・・印刷部、4・・・処理部、5・・・ユーザ端末、6・・・センサ部、31・・・インクジェットヘッド、32・・・搬送ベルト、331、332・・・搬送ローラ、34・・・帯電ローラ、351〜354・・・用紙トレイ、3511〜3541・・・給紙コロ、36・・・給紙ガイド、371、372・・・排紙ローラ、38・・・クリーニングブラシ、41・・・用紙情報記憶手段、42・・・枚数情報記憶手段、43・・・紙種特定手段、44・・・紙種判断手段、45・・・計数手段、46・・・枚数判断手段、47・・・給紙条件設定手段。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特開2007−145523号公報
【特許文献2】特開2008−26717号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録用紙を搬送する搬送ベルトの清掃手段を備えた画像形成装置であって、
自装置の周囲温度及び湿度に応じて印刷動作に使用すべき紙種を規定した用紙情報を記憶する記憶手段と、
自装置に入力された印刷要求において指定された紙種が、現在の周囲温度及び湿度において使用すべき紙種であるか否かを、前記用紙情報に基づいて判断する紙種判断手段と、
前記紙種判断手段が前記指定された紙種は前記使用すべき紙種でないと判断したとき、前記搬送ベルトへの汚れの付着量を考慮した給紙条件を設定する給紙条件設定手段を有する画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載された画像形成装置において、
紙種の異なる記録用紙をそれぞれ収容した複数の用紙トレイと、
前記指定された紙種の、前記搬送ベルトの清掃後における累積印刷枚数を計数する計数手段と、
前記累積印刷枚数が、前記指定された紙種からの紙粉発生量が所定量を超えないように定められた所定の使用上限枚数に達したか否かを判断する枚数判断手段と、
を有し、
前記給紙条件設定手段は、前記枚数判断手段により、直近の前記清掃後における累積印刷枚数が前記使用上限枚数未満であると判断されたときは、前記指定された紙種の記録用紙により印刷するように前記給紙条件を設定し、前記枚数判断手段により、直近の前記清掃後における累積印刷枚数が前記使用上限枚数に達したと判断されたときは、前記指定された紙種に代わって、前記使用すべき紙種の記録用紙により印刷するように前記給紙条件を設定する画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載された画像形成装置において、
前記搬送ベルトを帯電させて記録用紙を吸着させる帯電手段と、
前記指定された紙種の、前記搬送ベルトの清掃後における累積印刷枚数を計数する計数手段と、
前記累積印刷枚数が、前記指定された紙種からの紙粉発生量が所定量を超えないように定められた所定の使用上限枚数に達したか否かを判断する枚数判断手段と、
を有し、
前記給紙条件設定手段は、前記枚数判断手段により、直近の前記清掃後における累積印刷枚数が前記使用上限枚数未満であると判断されたときは、前記帯電手段により発生する前記搬送ベルトの帯電電圧を所定の電圧とするように前記給紙条件を設定し、前記枚数判断手段により、直近の前記清掃後における累積印刷枚数が前記使用上限枚数に達したと判断されたときは、前記帯電手段により発生する前記搬送ベルトの帯電電圧を前記所定の電圧よりも低い電圧に変更するように前記給紙条件を設定する画像形成装置。
【請求項4】
請求項1に記載された画像形成装置において、
前記搬送ベルトを帯電させて記録用紙を吸着させる帯電手段と、
前記指定された紙種の、前記搬送ベルトの清掃後における累積印刷枚数を計数する計数手段と、
前記累積印刷枚数が、前記指定された紙種からの紙粉発生量が所定量を超えないように定められた所定の使用上限枚数に達したか否かを判断する枚数判断手段と、
を有し、
前記給紙条件設定手段は、前記枚数判断手段により、直近の前記清掃後における累積印刷枚数が前記使用上限枚数未満であると判断されたときは、前記帯電手段により発生する前記搬送ベルトの帯電ピッチを所定のピッチとするように前記給紙条件を設定し、前記枚数判断手段により、直近の前記清掃後における累積印刷枚数が前記使用上限枚数に達したと判断されたときは、前記帯電手段により発生する前記搬送ベルトの帯電ピッチを前記所定のピッチよりも広いピッチに変更するように前記給紙条件を設定する画像形成装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに記載された画像形成装置において、
前記所定の枚数は、周囲の温度及び湿度に応じて紙種毎に定められている画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−56109(P2012−56109A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198960(P2010−198960)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】