説明

画像形成装置

【課題】生産性を低下させることなく、常に色ずれ補正された高品位な画像を形成する。
【解決手段】中間転写体と、テストパターンデータを生成する生成部と、色ずれ量を保持する保持部と、現時点での前記保持部に保持されている色ずれ量に基づき、前記テストパターンデータおよび画像データを補正する補正部と、前記補正部により補正された前記テストパターンデータに基づいたテストパターンを所定間隔ごとに前記中間転写体に形成し、かつ、前記画像データに基づいた画像を前記中間転写体に形成する形成部と、前記中間転写体に形成されたテストパターンを検知する検知部と、前記検知部の検知結果から、色ずれ量の変化量を求め、該色ずれ量の変化量を用いて、前記保持部に保持されている色ずれ量を更新する更新部と、を有することを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のカラー画像形成装置では、複数の画像形成部を直列に配置して、1パスでフルカラー画像を形成するタンデム方式が主流となっている。しかし、このタンデム方式では、各色の画像形成部における感光体ドラムや露光装置等の位置精度や径のずれや、光学系の精度ずれなどに起因して、各色の記録用紙上での位置ずれによる色ずれ(レジずれ)となって現れる。このため、タンデム方式では、色ずれ制御(レジストレーション制御ともいう)が不可欠である。
【0003】
この色ずれ制御の方法として、一般的に、中間転写ベルト上に各色の色ずれ検出用のテストパターンを形成して、このテストパターンの位置をセンサで検知してその結果からレジずれ量を算出する。そして、算出されたレジずれ量を基に、各光学系の光路を補正したり、各色の画像書き出し位置や画素クロック周波数を補正する色ずれ制御方法が知られている。
【0004】
しかし、従来の色ずれ制御方法では、2つの問題点があった。1つ目の問題点として、光学系の光路を補正するためには、光源やf−θレンズを含む補正光学系や光路内のミラー等を、機械的に動作させ、各色の位置を合わせ込む必要があった。しかし、このためには高精度な可動部材が必要となり、高コスト化を招く。 更に、補正の完了までに時間がかかるため、頻繁に補正を行うことができない。
【0005】
2つ目の問題点として、機内温度の変化などにより光学系や支持部材などに変形が生じるなどして、レジずれ量が経時的に変化することがあり、色ずれ制御を行った直後の高品位な画像を常に保つことが困難である。
【0006】
1つ目の問題点を解決するものとしては、例えば、座標変換手段が、検出されたレジずれ量に基づいて、各色毎の画像データの出力座標位置を、レジずれを補正した出力座標位置に自動変換する方法が提案されている(特許文献1等参照)。
【0007】
また、レジずれ補正手段は、レジずれ検出用パターン形成時や画像形成時で、記録媒体に対する画像位置補正量の成分のうち(例えば、主走査方向倍率ずれ)、少なくとも1つ以上を変更可能とする方法が提案されている(特許文献2等参照)。
【0008】
また、2つ目の問題点を解決するには、機内の温度を検知して一定の温度変化があったときや時間経過に伴い、上述した色ずれ制御を繰り返し行う方法が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1、2記載の技術では、色ずれ制御直後には、色ずれの少ない高品位な画像を形成できるが、時間経過につれ色ずれ量が変化するために、常にこの状態を保つことが困難である。機内温度を検知して色ずれ制御を行うようにしても同様であり常に色ずれが制御されている訳ではない。また、色ずれ量を直接検知していないので、所定の色すれ量に収まるようにタイミングよく正確に色ずれ制御を行うのは困難であり、色ずれ制御の頻度過多や不足になりやすい。
【0010】
また、色ずれ検出用のテストパターンを形成して、該テストパターンを検知し、検知結果からずれ量を算出する処理に時間がかかる。そして、該テストパターン形成時には通常の画像が印刷できず、さらには機械的制御を伴う場合には安定動作する補正完了までの時間も印刷できない。よって、高品位な画像形成を保つため頻繁に色ずれ制御を行うと、生産性が低下してしまうという問題が生じる。
【0011】
また、特許文献1、2記載の技術では、機内温度の変化や時間経過や連続画像形成枚数などの情報に基づき実行される1回の色ずれ制御内で、テストパターンの形成と、テストパターンからの色ずれ量検出と、検出された色すれ量に基づき次の色ずれ制御工程が実行されるまでに使用する画像位置補正量の算出とが行われる。このとき色ずれ量検出値に検出誤差やノイズ要因が生じると、誤った(誤差の生じた)画像位置補正量が算出され、次の色ずれ制御工程が実行されるまでは、これに基づいて色ずれの生じた画像が形成されてしまう。そのため検出誤差の低減は不可欠である。そのため、コストをかけて高精度な部品を使用するか、色ずれ検出用のテストパターンを複数組形成して、この複数組の検出値の平均値から色ずれ量を算出することで、検出誤差を低減するようにしている。しかし、この場合、テストパターン長が長くなり通常画像の印刷が出来ない期間も増えるため、色ずれ補正精度向上と引き換えに生産性の低下を招くという第1の問題が生じる。
【0012】
特に、連続印刷中には機内の温度上昇が著しいため色ずれ変化量が大きく、頻繁な色ずれ制御を必要とする。一方、色ずれ制御を高頻度で行うとテストパターン形成及びずれ量検知による印刷できない時間(ダウンタイムと呼ぶ)が多くなってしまうことによる生産性の低下が生じてしまうという第2の問題が生じる。これら第1の問題、第2の問題を同時に解決することは困難であった。
【0013】
すなわち、色ずれ制御の頻度不足により色ずれ量の変動に対し対応できなかったり、検出誤差やノイズの影響により誤った補正がなされ高品位な画像を形成できないという懸念がある。この懸念を解決するために色ずれ制御の頻度を増やしたり、検出精度向上のためテストパターン長を長くすることで、生産性を低下させていた。さらには、ディジタル印刷機と呼ばれる電子写真方式の印刷機では、常に高品位な画像と高生産性との両立が求められるため、この問題点はより顕著となる。
【0014】
そこで、本発明は、上記のような問題を鑑みて、生産性を低下させることなく、常に色ずれ補正された高品位な画像を形成する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、中間転写体と、テストパターンデータを生成する生成部と、色ずれ量を保持する保持部と、現時点での前記保持部に保持されている色ずれ量に基づき、前記テストパターンデータおよび画像データを補正する補正部と、前記補正部により補正された前記テストパターンデータに基づいたテストパターンを所定間隔ごとに前記中間転写体に形成し、かつ、前記補正部により補正された前記画像データに基づいた画像を前記中間転写体に形成する形成部と、前記中間転写体に形成されたテストパターンを検知する検知部と、前記検知部の検知結果から、色ずれ量の変化量を求め、該色ずれ量の変化量を用いて、前記保持部に保持されている色ずれ量を更新する更新部と、を有することを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の画像形成装置によれば、生産性を低下させることなく、常に色ずれの少ない高品質な画像を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例の画像形成装置の機能構成例を示したブロック図である。
【図2】本実施例の印刷ジョブのタイミングを示した図である。
【図3】本実施例の中間転写ベルトを真上から見た図である。
【図4】本実施例のテストパターンの機能構成例を示した図である。
【図5】本実施例の検知部の機能構成例を示した図である。
【図6】本実施例の画像形成装置の処理フローを示した図である。
【図7】別の実施例の画像形成装置の処理フローを示した図である。
【図8】本実施例の印刷ジョブ開始指示を制御する処理フローである。
【図9】本実施例の画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[用語の説明]
実施例の説明の前に、用語の説明を行う。
【0019】
画像形成装置とは例えば、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機などである。
【0020】
また、記録媒体は、例えば、紙、糸、繊維、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなどの媒体である。以下では、記録媒体を用紙として説明する。
【0021】
画像形成とは、文字や図形、パターンなどの画像を記録媒体や中間転写体に付与することなどをいう。
【0022】
また、中間転写体とは、例えば、中間転写ベルトであり、以下の説明では、中間転写体を中間転写ベルトであるとして説明する。
[要部の構成図]
図1に本実施例の画像形成装置の要部の構成図の一例を示す。以下の例では、タンデム方式と称される複数色の画像形成部を有する多色対応の画像形成装置について説明する。また、複数色とは、C(シアン)M(マゼンダ)Y(イエロー)K(ブラック)であるが、これらのうち、少なくとも2つの色を用いればよく、他の色を用いても良い。さらには他の色を追加して5色以上としてもよい。本実施例の画像形成装置では、画像およびテストパターンを中間転写ベルト8に形成するのであるが、該形成の流れを簡単に説明する。
【0023】
図1の例では、生成部1、画像パス切替部2、補正部3、書込制御部5、走査光学系6、各色CMYKに対応する像担持体(以下では、「感光体」という。)7K、7M、7C、7Y、中間転写ベルト6、二次転写部9、検知部11などを含む。また、以下では、感光体7K、7M、7C、7Yをまとめていう場合には、感光体7という。
【0024】
図1に記載されている各構成部について簡単に説明する。生成部1は、印刷ジョブ制御部13からのパターン出力指示信号(後述する)を受信すると、各色Y、C、M、KごとのテストパターンデータTPDy、TPDc、TPDm、TPDkを生成する。このテストパターンデータは、テストパターンの基となるデータである。また、テストパターンとは、色ずれ検知に用いられるものである。
【0025】
画像パス切換部2は、各色Y、C、M、Kごとの画像データVDy、VDc、VDm、VDkと、生成部1から出力されるテストパターンデータTPDy、TPDc、TPDm、TPDkとを切り換えて出力する。画像データVDy、VDc、VDm、VDkは制御部206から転送される。図1では、画像データVDy、VDc、VDm、VDkと、テストパターンデータTPDy、TPDc、TPDm、TPDkとをまとめて、それぞれ21c、21m、21y、21kと示す。画像パス制御部2の切替は、印刷ジョブ制御部13からの切替信号により行われる。
【0026】
補正部3は、保持部4に保持されている現時点での色ずれ量を用いて、この色ずれ量を打ち消すように、画像パス切換部2の出力する画像データおよびテストパターンデータ21C,21M,21Y,21Kを補正し、補正画像データおよび、補正テストパターンデータ22C,221M,22Y,22Kを出力する。色ずれ量の参照は画像データの先頭で行い1枚(あるいはテストパターン1組)を補正する間は同一の色ずれ量で補正する。この補正方法については後述する。
【0027】
保持部4には、現時点での色ずれ量が保持されている。そして、更新部12が、保持部4内の色ずれ量を更新する。この更新手法について後述する。
【0028】
書込制御部5は、各色毎に各色のライン同期信号24C,24M,24Y,24Kから主走査同期信号を生成する。各色のライン同期信号24C,24M,24Y,24Kとは、各色の走査光学系6から入力される、光ビームが所定位置を通過したことを示すものである。主走査同期信号とは、主走査方向の書き出し位置を示す信号である。
【0029】
また、入力される印刷ジョブ開始指示信号あるいはエンジンコントローラ部からの書込み開始指示を基準とし、各感光体間の距離(例えばPyとPcとの距離)と中間転写ベルト8の線速Vとに基づき決定される各色間の時間差により、各色毎に副走査同期信号を生成する。副走査同期信号とは、副走査方向の書き出し位置を示す信号である。そして、書込制御部5内部で生成される画素クロックを基準として、主走査同期信号および副走査同期信号に同期し、各色毎に補正画像データおよび補正テストパターンデータ22C,22M,22Y,22Kから走査光学系6内にある光源の変調信号である書込信号23C,23M,23Y,23Kへと変換する。このようにして、各色の補正画像データは、それぞれ対応する感光体上に顕像化され、中間転写ベルト8上に多重に転写される。
【0030】
走査光学系6は、各色の感光体7に対応して備えられる。図1の例では、各色ごとの走査光学系をまとめて走査光学系6として図示する。走査光学系6内の光源は、補正画像データおよび補正テストパターンデータ22C,22M,22Y,22Kについての光ビームをそれぞれの感光体7Y、7C、7M、7Kに走査することで、画像(静電潜像)およびテストパターンをそれぞれの感光体7上に形成する。未図示の現像部は、それぞれの潜像を顕像化する。それぞれの感光体上に顕像化された画像は、一次転写位置(一次転写部)Py、Pc、Pm、Pkで、中間転写ベルト8上に多重に一次転写される。一次転写後、多重に転写された各色の画像は、二次転写部9により用紙10上に一括して二次転写される。そして、定着手段(図示せず)は、記録用紙10上に画像を定着することにより、カラー画像を形成する。これらの動作のタイミング制御は制御部206(またはエンジンコントローラ部)で行われる。
【0031】
また、形成部40とは、走査光学系6および感光体7を含む。つまり、形成部40は、補正部で補正された、画像データに基づいた画像およびテストパターンデータに基づいた
テストパターンを中間転写ベルト8に形成する。また、以下で言及する色ずれとは、書込み制御部5以降で生じるものであるとする。
【0032】
印刷ジョブ制御部13は、印刷ジョブのタイミングを制御するものである。ここで、印刷ジョブとは、画像1個の中間転写ベルト8への形成処理または、テストパターン1組の中間転写ベルト8への形成処理をいう。印刷ジョブ制御部13は、画像印刷要求に伴い印刷ジョブ開始信号を生成、出力する。また、印刷ジョブ制御部13は、画像の印刷ジョブの合間に所定間隔ごとに(後述する)テストパターンの印刷ジョブを挿入し、印刷ジョブ開始信号を生成、出力する。通常画像の印刷ジョブ開始により画像データ転送要求信号を生成し、テストパターンの印刷ジョブ開始によりテストパターン出力指示信号を生成する。また、印刷ジョブ開始信号はエンジンコントローラ部及び書込制御部5にも出力し、これを開始基準として各部でタイミング制御が図られる。
【0033】
エンジンコントローラ部(未図示)は、これらタイミング制御を含む各部の様々な制御を司る。
[印刷ジョブのタイミング]
図2は、各部における印刷ジョブのタイミングを説明するためのタイミングチャートの一例である。図2の例では、3つの画像形成ごとに、1個のテストパターンを形成する例について説明する。また、図2の(a)〜(h)において、横軸は時間を示す。
【0034】
(a)は印刷ジョブ開始指示信号を表す。TP1、TP2・・・下矢印を付したものは、それぞれ1つ目、2つ目のテストパターンの印刷ジョブの開始時刻を示す。また、V1、V2、V3・・・にそれぞれ下矢印を付したものは、それぞれ1つ目、2つ目、3つ目の画像の印刷ジョブの開始時刻を示す。
【0035】
(b)〜(e)は中間転写ベルト8上の各点での印刷ジョブのタイミングを表す。また、括弧で囲まれた数字は、それぞれ、印刷ジョブ開始信号で説明した、印刷ジョブの開始時刻の「V」に付加した数字と対応する。つまり、印刷ジョブ開始信号V1、V2・・・により、例えば、イエロー色の画像(1)(2)、・・・は、中間転写ベルト8に形成される。
【0036】
(b)はイエローの感光体7Y上に顕像化された画像(トナー画像)が中間転写ベルト8の一次転写位置Pyに転写されるタイミングについて示す。印刷ジョブ開始信号から遅延時間Tdy後にイエローの画像Vyは中間転写ベルト8上に形成される。遅延時間Tdyは、印刷ジョブ開始信号から各部での処理・遅延時間が加算された時間である。
【0037】
(c)は、シアンの感光体7C上に顕像化された画像(トナー画像)が中間転写ベルト8の一次転写位置Pcに転写されるタイミングについて示す。印刷ジョブ開始信号から遅延時間Tdc後にシアンの画像Vcは中間転写ベルト8上に形成される。遅延時間Tdcは、以下の式により求められる。
【0038】
Tdc=Tdy+(Py−Pc)/V
ただし、(Py−Pc)は、一次転写位置Py、Pc間の距離を示し、Vは、中間転写ベルト8の線速を示す。
【0039】
(d)は、マゼンダの感光体7M上に顕像化された画像(トナー画像)が中間転写ベルト8の一次転写位置Pmに転写されるタイミングについて示す。印刷ジョブ開始信号から遅延時間Tdm後にマゼンダの画像Vmは中間転写ベルト8上に形成される。遅延時間Tdmは、以下の式により求められる。
【0040】
Tdm=Tdy+(Py−Pm)/V
ただし、(Py−Pm)は、一次転写位置Py、Pm間の距離を示す。
【0041】
(e)は、ブラックの感光体7K上に顕像化された画像(トナー画像)が中間転写ベルト8の一次転写位置Pmに転写されるタイミングについて示す。印刷ジョブ開始信号から遅延時間Tdk後にブラックの画像Vkは中間転写ベルト8上に形成される。遅延時間Tdkは、以下の式により求められる。
【0042】
Tdk=Tdy+(Py−Pk)/V
ただし、(Py−Pk)は、一次転写位置Py、Pk間の距離を示す。
【0043】
(f)は検知部(センサ)11の検出点(検出位置)Psでのテストパターン通過タイミングを表す。イエローの一次転写位置Pyと、検出点Psとの間の距離に応じて印刷ジョブ開始時刻からテストパターン通過時刻までの時間が決まる。また、テストパターンの通過タイミング付近以外では検知部11が動作を停止させるようにしておくと、誤検出防止及び省電力となる。この検知部11の動作の停止は、制御部206(またはエンジンコントローラ部)により行われる。
【0044】
(g)は検知部11によるテストパターンの検知が完了する時刻を表し、色ずれ量のサンプリング点に相当する。印刷ジョブ開始時刻からの遅延時間Tdsは、以下の式により求められる。
Tds=Tdy+(Py−Ps+L)/V
ただし、Lは、テストパターンの長さを示す。その後、色ずれ量の演算時間τ後に新しい色ずれ量に更新される。この更新については後述する。時間Tds+τが、テストパターンの印刷ジョブ開始時刻から色ずれ量更新までの時間となる。
【0045】
(h)は二次転写部9における、印刷ジョブのタイミングである。二次転写部9は、中間転写ベルト1上に重畳形成された画像を用紙10に転写(二次転写)する。
【0046】
なお、図2中の時間Tsについては後述する。
【0047】
図3に、中間転写ベルト8を上方から垂直方向に見た図を示す。図3では、中間転写ベルト8上に形成された画像及びテストパターンや、検知部(センサー)11の位置なども示す。また、以下の説明では、中間転写ベルト8の移動方向を副走査方向とする。また、中間転写ベルト8上での画像形成の際に、画像が走査される方向を主走査方向という。主走査方向をx軸方向とし、副走査方向をy軸方向とする。
【0048】
斜線を付した領域51は画像形成領域である。画像形成領域とは、中間転写ベルト8の全領域のうち、画像が形成される領域である。また、画像形成領域に付した括弧で囲った数字(1)〜(3)は、図2で説明した(1)〜(3)に対応する。
【0049】
また、図2の例では検知部11は主走査方向一列に3つ配置される。これら3つの検知部をそれぞれ11a、11b、11cとする。また、52a、52b、52cはそれぞれテストパターンが形成される領域(以下、「テストパターン形成領域」という。)であり、主走査方向の位置は検知部11a、11b、11c位置(図2では一点鎖線a、b、cで示す)に対応(対向)している。テストパターン形成領域は、画像形成領域外に設定される。もし、テストパターン形成領域が、画像形成領域内に設定されると、二次転写部11において、用紙10にテストパターンが転写されるからである。
【0050】
ここで、本実施例の画像形成装置の形成部40(図1参照)は、所定間隔ごとにテストパターンを形成する。そして、所定間隔について更に詳細に説明する。
[所定間隔(その1)]
所定間隔(その1)を、所定個数の画像間の間隔とする。図3に実線で示すように、テストパターンTPは、副走査方向において、所定個数の画像間(画像形成領域51の間(いわゆる紙間))に形成される。図3の例では、所定個数とは3個である。つまり、図3の例では、3個の画像ごとに、テストパターンは形成される。そして、所定個数(3個)の画像をおいて、画像間に次のテストパターン53a、53b、53cが形成される。この間隔は厳密に一定距離である必要はなく、その付近の画像間に挿入するよう印刷ジョブが制御される。つまり図3の例では、画像の所定個数ごとに、テストパターンは形成される。
[所定間隔(その2)]
所定間隔(その2)を所定時間の間隔とする。テストパターンは、画像形成領域外であれば、どこに形成してもよい。例えば、破線54a、54cに示すように、テストパターンを中間転写ベルト8上の主走査方向両端に形成するようにしても良い。この場合、検知部11はその主走査位置に対応して、55a、55cの位置に配置される。テストパターンを中間転写ベルト8上の主走査方向両端に形成するようにすれば、画像間を開ける必要がなく、生産性を向上させることが出来る。また、テストパターン形成間隔も自由に選択できる。
[所定間隔(その3)]
所定間隔(その3)を所定個数の画像間の間隔であり、かつ、所定時間の間隔とする。例えば、形成される画像のサイズがそれぞれ異なる場合、例えば、画像サイズが、A4.A3、A4・・・などと形成される場合には、所定時間ごとであり、かつ、画像の所定個数ごとに、テストパターンを形成すると、更に好ましい。
[テストパターンの構成]
次に、テストパターンの構成例について説明する。図4に、テストパターンの構成例を示す。図4の例では、主走査方向と平行な直線パターン61と、主走査方向と45度の角をなす斜線パターン62を一つのテストパターンTPとする。これが各色(例えばC,K,Y,M)順に副走査方向に並んでいる。つまり、直線パターン61C、61K、61Y、61M、斜線パターン62C、62K、62Y、62Mの順番で並んでいる。これらのテストパターンTPを主走査方向に複数(図3の例では3箇所、52a〜cおよび53a〜c)それぞれに形成して、1組のテストパターンとする。図4中のL1c、L2k、L2cについては後述する。
[検知部11の構成]
次に、検知部11の構成について説明する。図5に検知部11の構成例を示す。検知部11は、発光部65と受光部66とを一対として構成される。発光部65は中間転写ベルト8に対して、光を照射する。そして、受光部66は、中間転写ベルト8で反射された反射光を受光し、該受光を電気信号に変換する。中間転写ベルト8上にテストパターンが形成されていない(トナーがない)状態では反射光量は強いが、テストパターンが形成されている(トナーが存在する)と照射光が散乱するため受光部66で受光する反射光量が減る。また、反射光量についての閾値を予め定めておく。検知部11は、反射光量が、該閾値より大きければ、テストパターンは形成されていないと判断し、該閾値より小さければ、テストパターンは形成されていると判断するようにする。このようにして、検知部11は、テストパターンの有無が検出できる。
【0051】
そして受光部66が出力する電気信号(検知部出力信号)を、更新部12(図1参照)内のA/D変換器などがデジタル信号に変換する。そして、更新部12内の信号処理部が、該デジタル信号を信号処理することにより、各パターン61、62の中心が検知部11の位置を通過した時間などを求める。
[実施形態1]
次に、本実施例の実施形態1について説明する。また、本実施例において、色ずれ量の構成要素として、スキューずれd、主走査方向倍率ずれa、主走査方向レジストずれc、副走査方向レジストずれf、のうち、少なくとも1つを含むものであればよい。ただし、d、a、c、fは実数であるとする。また、色ずれ量の構成要素として、他の要素を含んでいても良い。また、「ずれ」とは誤差を意味する。以下の説明での色ずれ量は、スキューずれd、主走査方向倍率ずれa、主走査方向レジストずれc、副走査方向レジストずれfの全てを含むものとして説明する。
【0052】
「スキューずれ」とは、「中間転写ベルト8上に形成された画像やテストパターンが、所定の傾きを持ってしまうことから生じるずれ」をいう。「主走査方向倍率ずれ」とは「画像の倍率を変更した場合の主走査方向のずれ」をいう。「主走査方向レジストずれ」とは、「理想的な走査線に対し、主走査方向の平行方向のずれ」をいう。「副走査方向レジストずれ」とは、「理想的な走査線に対し、副走査方向の平行方向のずれ」をいう。
【0053】
また、主走査方向の倍率ずれにおいて、主走査方向の全体倍率はa'=1+aで表される。つまり、以下の説明では、a'、c、d、fが、色ずれ量の構成要素となる。また、a'、c、d、fは更新されるのであるが、N回(Nは自然数)更新されたものをそれぞれa'、c、d、fとする。
【0054】
図6に実施形態1の画像形成装置の処理フローを示す。図6を用いて、実施形態1の画像形成装置の処理を説明する。なお、図6記載のフローは各色(C、M、Y、K)それぞれについて実行される。
<ステップS101>
ステップS101では、色ずれ量の初期値a'、c、d、fを設定する。設定された色ずれ量の初期値a'、c、d、fは保持部4(図1参照)に保持される。初期値の設定手法は様々ある。例えば、初期値を色ずれ量なしとして、a'=1、c=0、d=0、f=0としてもよい。また、前回使用時の色ずれ量を保持部4に保持させておき、該保持された色ずれ量を初期値としても良い。また、色ずれ量を補正せずにテストパターンを形成して、このテストパターンの検出結果から上述したように色ずれ量を算出する色ずれ量初期値検出ステップを含み、これを初期値として設定しても良い。色ずれ量の補正については後述する。また、この色ずれ量初期値検出ステップでは、テストパターンを複数組形成して検出した結果の平均を色ずれ量の初期値とし、誤差を平滑化するようにしても良い。
<ステップS102>
ステップS102では、補正部3が、保持部4に保持されている現時点での色ずれ量に基づき、テストパターンデータ及び画像データを補正する。ここで、補正部3による補正と、色ずれ量の関係について説明する。
【0055】
補正部3に入力される画像データVD及びテストパターンデータTPDの座標系を(x、y)とする。また、補正部3により補正された画像データVD'及びテストパターンデータTPD'の座標系を(x'、y')とする。また、中間転写ベルト8上に形成される画像およびテストパターンの座標系を(x''、y'')とする。なお、x、x'、x''は、主走査方向の座標であり、y、y'、y''は副走査方向の座標である。
【0056】
そうすると、(x'、y')と(x''、y'')の関係は以下の式(1)で表すことができる。
x''=a'x'+0y+c
y''=dx'+1y+f (1)
また、式(1)を行列を用いて、以下の式(2)で表すことができる。
【0057】
【数1】

ここで、式(3)において、行列Aを乗算することは、色ずれが生じたこと(色ずれを生じさせる)を意味する。以下では、行列Aを「色ずれ変換行列」という。また、上記の式(1)〜(3)は各色について成り立つものである。
【0058】
そこで、補正部3は、式(4)に示すように、色ずれ変換行列Aの逆行列A−1を用いて座標(x、y)を補正する。逆行列A−1を補正行列という。
【0059】
【数2】

補正部3の式(4)による補正により、以下の式(5)に示すように、色ずれ変換行列Aを打ち消すことができ、つまり、中間転写ベルト8上に形成される画像の色ずれ量を補正できる(色ずれを生じなくさせることができる)。色ずれ変換行列Aの逆行列を補正行列A−1という。
【0060】
【数3】

つまり、補正部3は、色ずれ量の各成分a'、c、d、fを要素とする行列Aの逆行列A−1を用いて、画像データVDおよびテストパターンデータTPDを補正する。そして、補正された形成部(走査光学系6と感光体7)は補正されたテストパターンデータおよび画像データに基づいて、中間転写ベルト8上にテストパターンおよび画像を形成する。
<ステップS103>
ステップS103では、検知部11が、テストパターンTPを検知する(図5の説明参照)。そして、更新部12が、検知部11からの出力信号をサンプリングする。更新部12のサンプリングは、図2で説明した印刷ジョブ開始信号に従って、定められる。そのタイミングまでは、このステップS103で待機となる。そして、更新部12は、隣接するテストパターン間の距離(図4参照)などを求める。
<ステップS104>
ステップS104では、更新部12は、色ずれ量の変化量を求める。今回は1回目の色ずれ量の変化量を求める演算であるので、色ずれ量の初期値a'、c、d、fからの変化量を求める。N回目の変化量(つまり、N個目のテストパターンを用いて求められた変化量)をそれぞれ、Δa'、Δc、Δd、Δf、とする。今回は1回目の変化量の演算であるので、Δa'、Δc、Δd、Δfとなる。
【0061】
次に、色ずれ量の変化量の求め方について説明する。
【0062】
以下の例では、ブラック(K)を基準とした各色(C,M,Y)の色ずれ量の変化量の演算方法を説明する。また、パターンの構成例を図4である場合について説明する。基準色Kの横線パターン61Kと対象色(例えばC)の横線パターン61Cとの測定された距離をL1cとする。M,Yも同様にL1m,L1y(未図示)とする。また、同色の横線パターン61と斜線パターン62との測定された距離をL2とし添え字にその色を表す。例えばシアンであればL2cとし、ブラックであればL2kとする。また、単位はmmとする。
【0063】
また、基準色Kの横線パターン61Kと対象色(例えばC)の横線パターン61Cとの理想的な距離(つまり、生成部1が出力するパターン間の距離)をL1refとする。KとYの横線パターン間の距離も同一でありL1refとし、KとMとの横線パターン間の距離はその倍で2L1refとなる。
【0064】
さらに、検知部11a、11b,11cそれぞれで測定される上記の距離をそれぞれ「_a」,「_b」,「_c」を付けて区別する。例えば、検知部11aで検知した、直線パターン61Cと61Kとの距離は、L1c_aとなる。また、検知部11aで検知した、直線パターン61Kと斜線パターン62Kとの距離は、L2k_aとなる。また、検知部11aと検知部11c間の距離をLacとする。このように測定された距離を用いて、色ずれ量の各成分の演算は以下のように表せる。
(スキューずれ)
各色(C,M,Y)のブラック(K)に対するスキューずれd(C)、d(M)、d(Y)の変化量Δd(C)、Δd(M)、Δd(Y)はそれぞれ以下の式で表される。これらの式をまとめて(式6)とする。ただし、Lacは、検知部11aと検知部11cとの距離を示し、予め定められているものである。
Δd(C)= (L1c_c-L1c_a)/Lac
Δd(M)= (L1m_c-L1m_a)/Lac
Δd(Y)= (L1y_c-L1y_a)/Lac (6)
(副走査方向のレジストずれ)
各色(C,M,Y)のブラック(K)に対する副走査方向のレジストずれf(C)、f(M)、f(Y)の変化量Δf(C)、Δf(M)、Δf(Y)はそれぞれ以下の式で表される。これらの式をまとめて(式7)とする。
Δf(C)=((0.25・L1c_a +0.5・L1c_b +0.25・L1c_c)-L1ref)・κ
Δf(M)= ((0.25・L1m_a +0.5・L1m_b +0.25・L1m_c)-2・L1ref)・κ
Δf(Y)= ((0.25・L1y_a +0.5・L1y_b +0.25・L1y_c)-L1ref)・κ (7)
ここで、κは距離の単位を[mm]から[dot]に変換する係数で、例えば画像データが1200dpiとすると、κ=1200/25.4である。
(主走査方向の倍率ずれ)
各色(C,M,Y)のブラック(K)に対する主走査方向の倍率ずれa(C)、a(M)、a(Y)の変化量Δa(C)、Δa(M)、Δa(Y)はそれぞれ以下の式で表される。これらの式をまとめて式(8)とする。
Δa(C)= ((L2c_c-L2k_c)-(L2c_a-L2k_a))/Lac
Δa(M)= ((L2m_c-L2k_c)-(L2m_a-L2k_a))/Lac
Δa(Y)= ((L2y_c-L2k_c)-(L2y_a-L2k_a))/Lac (8)
(主走査方向のレジストずれ)
各色(C,M,Y)のブラック(K)に対する主走査方向のレジストずれc(C)、c(M)、c(Y)の変化量Δc(C)、Δc(M)、Δc(Y)はそれぞれ以下の式で表される。これらの式をまとめて式(9)とする。
Δc(C)= ((L2c_a-L2k_a)-Lbd・a(C))・κ
Δc(M)= ((L2m_a-L2k_a)-Lbd・a(M))・κ
Δc(Y)= ((L2y_a-L2k_a)-Lbd・a(Y))・κ (9)
ここで、式(9)中のLbdについて説明する。走査光学系6(図1参照)内に、各色毎に同期検知センサが備えられている。同期検知センサは、光ビームが通過した時にライン同期信号24Y、24C、24M、24Kを生成するものである。Lbdは、この同期検知センサと検知部11aとの距離を示すものであり、予め定められているものである。また、Lbd・a(C)の項は主走査方向の同期位置となる同期検知センサから検知部11aまで走査する期間に、主走査方向の倍率ずれによって生じる位置ずれをレジストずれから減じて校正する項である。
【0065】
また、テストパターンを54の位置(図3参照)に形成する場合は、副走査方向のレジストずれについては、式(7)を以下の式(7')に変えればよく、他の各ずれ成分(スキューずれ、主走査方向倍率ずれ、主走査方向レジストずれ、)は同一式で求められる。
f(C)=f(M)=f(Y)=((0.5・L1c_a + 0.5・L1c_c)-L1ref)・κ (7')
式(6)(7)(7')(8)(9)で用いられる値のうち、予め定められている値(例えば、Lacなど)以外の全ての値をまとめて、「更新必要値」という。更新必要値とは、予め定められない値であり、例えば、L1c_cなどである。これらの求め方の手法の一例を、L1c_cを例にして説明する。
【0066】
検知部11cは、直線パターン61cを検知した時刻と、直線パターン61kを検知した時刻と、の差である時間sを求める。そして、更新部12が、中間転写ベルト8の線速Vに、時間sを乗算することで、L1c_cを求めることができる。また、他の値についても同様に求めることができる。このようにして、全ての更新必要値は、ステップS103で求められる。
【0067】
また、図4以外のテストパターンの構成である場合には、適宜、色ずれ量の変化量の求め方は変更される。
<ステップS105>
ステップS105では、更新部12は、ステップS104で求められた色ずれ量の変化量を用いて、保持部4で保持されている直近の色ずれ量を更新する。更新の手法は様々あるが、ここでは、3つの手法を説明する。また、以下の3つの更新手法では、色ずれ量の各構成要素のうち、主走査方向倍率ずれaの更新手法のみについて説明するが、他の構成要素であるスキューずれd、主走査方向レジストずれc、副走査方向レジストずれfについても、同様の式で更新させることができる。また、全ての色C,M、Y、Kについて、色ずれ量の更新は行われる。
(第1の更新手法)
まず第1の更新手法について説明する。第1の更新手法では、以下の式(10)のように、保持部4に保持されている直近の(前回の)色ずれ量に、今回求められた色ずれ量の変化量を加算することで、色ずれ量を更新させる。
=an−1+Δa (10)
ただし、a、an−1は、それぞれn回目、n−1回目の更新により求められた色ずれ量の主走査方向の倍率ずれである。また、ΔaはN回目に求められた色ずれ量の主走査方向の倍率ずれの変化量である。また、今回の更新は1回目の更新(n=1)であることから、初期値aは以下の式(10')により更新され、aが算出される。
=a+Δa (10')
(第2の手法)
1組のテストパターンから算出した色ずれ量には、テストパターン形成時の誤差、あるいはセンサの読取り誤差などが含まれることがある。従って、式(10)のように、初期値aと色ずれ量の変化量Δaを単純に加算するだけでは、テストパターン形成時の誤差、あるいはセンサの読取り誤差などの誤差(以下、「ノイズ」という。)に反応して演算される色ずれ量がばらついてしまう場合がある。このノイズを制限するために、下式(11)のように、色ずれ量の変化値に所定の係数Kpを掛けた値を加算し新しい色ずれ量a(n)を計算する。この式(11)の演算により、ノイズ成分が平滑化されるため高精度に色ずれ量が求められる。なお、Kpは比例ゲイン係数であり、予め定められる定数である。
=an−1+Kp・Δa (11)
また、今回の更新は1回目の更新であることから、初期値aは以下の式(11')により更新され、aが算出される。
=a+Kp・Δa (11')
式(11)(11')を用いて、更新することで、ノイズが平滑化されるために、高精度に色ずれ量を更新することができる。
(第3の更新手法)
次に第3の更新手法について説明する。第3の更新手法では、以下の式(12)のように、更新部12は、今回求められた色ずれ量の変化量に所定の第1係数Kpを乗じた値と、今回求められた色ずれ量の変化量の積算値に所定の第2係数Kiを乗じた値と、保持部4に保持されている直近の色ずれ量と、を加算することで、色ずれ量を更新する。いわゆるPI制御により、色ずれ量を更新する。
【0068】
【数4】


また、今回の更新は1回目の更新であることから、初期値aは以下の式(12')により更新され、aが算出される。
=a+Kp・Δa+Ki・Δa (12')
ここで、Kpは比例ゲイン係数、Kiは積分ゲイン係数、であり予め定められる値である。KpとKiのゲイン係数により制御帯域が決まり、この制御帯域より高周波成分のノイズが制限される。つまり、第3の更新手法を用いると、複数組のテストパターンを形成しなくても良いという効果を奏する。更に、複数のテストパターンについての色ずれ量の変化量の平均値を求める必要がなくなり、1組の短いテストパターンでも十分精度良く色ずれ量が求められるという効果も奏する。色ずれ量の変化量Δaの積算値も反映しているので、定常誤差を低減できる。
【0069】
また、この制御帯域は、以下の変動に対して追従して色ずれ量が求められる。ここでは温度変化などによる緩やかな変動に対して追従するよう色ずれ量を求めればよい。従って、例えばサンプリング周期を数秒オーダーとすれば、制御帯域はサンプリング周期の数十分の1〜数百分の1でよく、こうなるように第1係数Kp及び第2係数Kiを定めればよい。
【0070】
また、第1係数Kpおよび第2係数Kiは、色ずれ量の各成分の演算ごとに異なるようにすることが好ましい。換言すれば、a,c,d,fの各要素ごとに要求される制御帯域が異なるのであれば(例えば温度変化に敏感な要素があれば)、その要素に対するKp,Kiのみ変える。また、各要素に対するKp,Kiを変えて制御帯域を互いに異なるようにしてもよい。このようにすることで、各要素の色ずれ量の更新処理において、互いに干渉することを防ぐことができ、さらに正確な、色ずれ量の更新を行うことができる。
【0071】
また、第1の更新手法、第2の更新手法以外の更新手法を用いても良い。そして、更新部12は、更新された色ずれ量を、保持部4に保持されている直近の色ずれ量を、求められた色ずれ量に更新する。
[2回目以降の更新処理]
<ステップS102>
ステップS105の1回目の更新処理が終了すると、ステップS102に戻る。そして、補正部3は、更新された色ずれ量(現時点での色ずれ量)に基づき、入力された画像データおよびテストパターンデータを、式(4)を用いて補正する。補正行列A−1を構成する各要素であるa'、c、d、fはステップS105で更新された値を用いる。そして、形成部40は、補正された画像データおよびテストパターンに基づいた画像及びテストパターンを中間転写ベルト8上に形成する。
【0072】
そして、ステップS103で、中間転写ベルト8上に形成されたテストパターンを検知する。
【0073】
また、ステップS104で、ステップS103で求められた更新必要値(例えば、L1c_c)などを用いて、上記式(6)(7)(または(7'))(8)(9)により色ずれ量の変化量が求められる。
【0074】
そして、ステップS105で、更新部12は、上記更新式(10)〜(12)の何れか、または、他の更新式により、直近に求められた色ずれ量の変化量を用いて、保持部4で保持されている色ずれ量を更新する。そして、ステップS102に戻り、処理が繰り返される。
【0075】
このように、本実施形態1の画像形成装置の形成部40は、所定間隔ごとに、かつ、画像形成を妨げないように(つまり、画像形成領域外に)テストパターンを形成する。従って、色ずれ量更新の精度を上げるべく、テストパターン形成の周期(間隔)を短くしても、生産性が低下することはない。また、色ずれの補正も、安定動作するまでに、比較的、時間のかかる機械的な補正を伴わずに行うので、テストパターン形成や色ずれ量の検知や機械的な補正によるダウンタイムが発生せず、生産性も低下しない。
【0076】
また、本実施形態1の画像形成装置であれば、ステップS102において、補正部3がテストパターンデータおよび画像データを補正する。そして、検知部11が、直近に補正部3により補正されたテストパターンデータに基づいたテストパターンを検知することで、更新必要値を求める。そして、ステップS104において、更新部12が、求められた更新必要値から、色ずれ量の変化量を求め、保持部4に保持されている色ずれ量を更新させる(つまり、色ずれ量についてフィードバック制御を行うことができる)。つまり、本実施例の画像形成装置であれば、色ずれ量の定常誤差を低減しつつ、該色ずれ量を更新することができ、結果として、画像形成装置内の温度変化などに随時適応した色ずれ量を更新することができる。よって、正確な色ずれ量の更新を行うことができる。
[実施形態2]
次に実施形態2の画像形成装置について説明する。図7に実施形態2の画像形成装置の処理フローを示す。図7は、ステップS110が、ステップS104とステップS105との間に介在されている点で、図6と異なる。以下では、ステップS110を中心に説明する。
【0077】
ステップS104で、色ずれ量の変化量が求められる。そして、ステップS110では、更新部12が、ステップS110で、色ずれ量の変化量Δa, Δc、Δd、Δf(n=1、...、N)が所定範囲(正常範囲)内に属しているか否かを判断する。そして更新部12が、色ずれ量の変化量が正常範囲に属していると判断すると(ステップS110のYes)、ステップS105に移行する。この正常範囲とは予め実験的に求められる。
【0078】
また、更新部12が、色ずれ量の変化量が正常範囲に属していないと判断すると(ステップS110のNo)、更新部12が色ずれ量の更新処理を行うことなく、ステップS102に戻る。色ずれ量の変化量が正常範囲に属していないということは、更新部12は、検知部11によるテストパターンの検知がエラーである等を判断するからである。以下では、色ずれ量の変化量が、正常範囲内に属している場合には、色ずれ量の変化量が正常値であるといい、正常範囲内の属していない場合には、色ずれ量の変化量が異常値であるという。
【0079】
色ずれの変化量が正常範囲に属していないと判断することについて説明する。例えば、中間転写ベルト8に傷などがある場合に、検知部11がその傷を検知すると、検知部11はその傷についての検知結果を出力する場合がある。従って、テストパターン付近に傷があると、更新部12により算出される色ずれ量の変化量が実際とは異なる値となる。そして該色ずれ量の変化量を用いて、色ずれ量を更新すると、誤った更新がなされることになる。
【0080】
従って、色ずれ量の変化量が正常範囲に属しているか否か判断する処理(ステップS110)を設けることで、色ずれ量の更新に反映させないようにすれば、誤った色ずれ量の更新がなされることないという効果を奏する。
【0081】
本実施形態においては、上述したように定期的に色ずれ量の変化量を検出するようになっている。定期的に検出している短時間での色ずれ量の変化量は通常大きくないので、正常範囲の幅を小さめに(例えばプラスマイナス数十ミクロン相当)にしておけばよい。
【0082】
また、色ずれ量の変化量の1つの要素が、異常値である場合、中間転写ベルト8上の傷などの影響を受け、正常な色ずれ量の変化量の別の要素においても正常値が検知できていない場合がある。よって色ずれ量の変化量の1つの要素において異常値が検出された場合は、色ずれ量の変化量の他の要素の演算と更新を行わないようにしても良い。
【0083】
また、色ずれ量の変化量の要素うち、少なくとも、2つ以上が、異常値である場合に、色ずれ量の変化量の他の要素の演算と更新を行わないようにしても良い。
[その他の実施形態(その1)]
次に、その他の実施形態(その1)について説明する。図2(g)において、色ずれ量の更新時間τに時間Tdsを加えたものが、テストパターンの印刷ジョブ開始時刻から色ずれ量の更新までの時間となる。そして、保持部4で保持されている色ずれ量を常にその時点での色ずれ量になるように制御する制御系にとってのむだ時間となる。テストパターンの印刷ジョブ間隔Tsが制御系にとってのサンプリング周期となり、本実施例では、前述のむだ時間より長くなるようにしている。制御対象となる色ずれ量の変動は温度変化が主因となるので、比較的遅く(緩やかに変化する)、例えば数分の間隔で変化していく。これに対してサンプリング周期Tsが十分短ければよいので、例えばTsを数秒と設定する。例えば、毎分60枚の印刷ができる装置では数枚に一回テストパターンを挿入することになる。なお、図3の例では3枚に1つのテストパターンが挿入されている例である。なお、このときのサンプリング時間精度は特段厳密である必要はない。
[その他の実施形態(その2)]
次に、その他の実施形態(その2)について説明する。図3において、検知部11a〜cの組付け精度、位置の経時変化などにより、検出される各々の色の位置ずれ検出値の絶対精度は依存してしまう。また、検知部11の位置の組付け精度を向上させるにはコストアップになる。また、事前にキャリブレーションなどを行っても、支持部材の熱変形などにより経時的な位置変動を生じるおそれもあり、テストパターン検出の度にキャリブレーション動作を行っていては、本発明の課題である生産性を落とさずに色ずれ補正を行うという主旨にも反する。
【0084】
そこで本実施例では、所定の基準色(例えばブラックK)に対する各色(C,M,Y)の相対的な色ずれを求め、この色ずれを補正するようにする(式(6)〜(9)参照)。人間の視覚特性として相対的なずれの方が認識しやすいので、相対的な色ずれの補正でも十分である。
【0085】
もちろん、ここで説明した以外にもテストパターン及び検出部11は既存技術が存在するので、本画像形成装置の実施形態にそれらを適用することも可能であり、その形態によっては上述したことはその限りではない。
[その他の実施形態(その3)]
次に、その他の実施形態(その3)について説明する。また、図2において、1つの印刷ジョブに対し、書込制御部5(図1参照)が、それぞれの色毎に各感光体間の距離に応じた時間差をつけて出力する。書込制御部5内に備えるバッファメモリの低減のため、テストパターンデータ及び画像データを色毎に上記時間差をつけて出力するようにすると良い。すなわち、書込制御部5が、上述した副走査同期信号に基づき色毎のテストパターン出力指示信号を生成部1に出力し、色毎の画像データ転送要求信号を発行するようにしても良い。あるいは、副走査同期信号を印刷ジョブ制御部13に入力し、該印刷ジョブ制御部13で色毎のテストパターン出力指示信号及び画像データ転送要求信号を生成するようにしてもよい。
[その他の実施形態(その4)]
図8は、印刷ジョブ制御部13において、印刷ジョブ開始指示を制御する方法を示す処理フローである。
【0086】
ステップS201では、テストパターンデータの生成要求があるか否かを判別し、該生成要求があればステップS202へ進む。ステップS202では、印刷ジョブ制御部13が印刷ジョブ開始指示信号およびテストパターン出力指示信号を生成し、生成部1に出力する。そして、ステップS203では、テストパターンの出力時間に相当する時間(図2におけるTtp)だけ待機し、つまりその間他の印刷ジョブが発行されないようにして、ステップS201に戻る。
【0087】
また、ステップS201において、テストパターンデータの生成要求がなければステップS204へ移行する。テストパターンの生成要求は、印刷ジョブ制御部13内に別途、前回のテストパターン出力指示信号から上記時間Tsが経過すると生成要求を発行するルーチンを持ち行われる。あるいは前回のテストパターン出力指示信号から所定個数の印刷ジョブ開始指示信号が発行されると生成要求を発行するルーチンを持ち行われる。ステップS204では、印刷ジョブ制御部13が、印刷要求があるか否か判別し、あればステップS205へ移行し、なければステップS201へ戻る。
ステップS205では、印刷ジョブ制御部13が、印刷ジョブ開始指示信号を生成し、画像データ転送要求を行う。ステップS206では、画像データの出力時間に相当する時間(図2におけるTprintであり、印刷する用紙サイズにより異なる)だけ待機する。つまりその間他の印刷ジョブが生成されないようにして、ステップS201に戻る。
【0088】
図8記載フローチャートに従って、テストパターン及び通常画像の印刷ジョブ開始指示を行うことにより、画像形成領域と重なることなく、テストパターンを所定間隔で形成できる。
[その他の実施形態(その5)]
図9は、更新部12、保持部4及び印刷ジョブ制御部13の機能を果たすプログラムなどが実行されるハードウェア構成の一例である。また、前述した画像形成装置内各部の動作タイミング制御を行うエンジンコントローラと兼ねても良い。
【0089】
A/D変換器101は、検知部11の出力が入力され、これをディジタルデータへ変換し、I/O(入出力)ポート105へ接続される。または、フィルタ処理などの信号処理を行う信号処理部やバッファメモリ(ともに未図示)などを介してI/Oポート105へ接続される。
【0090】
I/Oポート105は、A/D変換器101及び外部ブロックと接続され、CPU102との入出力信号のやり取りを行う。印刷要求信号の入力や印刷ジョブ開始指示信号の発行、補正部3への色ずれ量の更新などはこのI/Oポート105を介して行う。
【0091】
CPU102は、I/Oポート105を介して外部との入出力が行われ、色ずれ量の演算や印刷ジョブ開始制御などが実行される。またメモリバス106を介してRAM103及びROM104と接続される。
【0092】
ROM104には、色ずれ量を演算・更新するためのプログラムを始め、各種プログラムが格納されている。
【符号の説明】
【0093】
1・・・生成部、2・・・画像パス切替部、3・・・補正部、4・・・保持部、5・・・書込制御部、6・・・走査光学系、7・・・感光体、8・・・中間転写体、9・・・二次転写部、10・・・用紙、11・・・検知部、12・・・更新部、13・・・印刷ジョブ制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0094】
【特許文献1】特開平8−85236号公報
【特許文献2】特開2005−274919号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間転写体と、
テストパターンデータを生成する生成部と、
色ずれ量を保持する保持部と、
現時点での前記保持部に保持されている色ずれ量に基づき、前記テストパターンデータおよび画像データを補正する補正部と、
前記補正部により補正された前記テストパターンデータに基づいたテストパターンを所定間隔ごとに前記中間転写体に形成し、かつ、前記補正部により補正された前記画像データに基づいた画像を前記中間転写体に形成する形成部と、
前記中間転写体に形成されたテストパターンを検知する検知部と、
前記検知部の検知結果から、色ずれ量の変化量を求め、該色ずれ量の変化量を用いて、前記保持部に保持されている色ずれ量を更新する更新部と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記所定間隔とは、所定個数の画像間の間隔であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記所定間隔とは、所定時間の間隔であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記所定間隔とは、所定個数の画像間の間隔であり、かつ、所定時間の間隔であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記更新部は、該更新部により求められた色ずれ量の変化量のうち、少なくとも1つの成分が、予め定められた所定範囲内に属していない場合には、色ずれ量の更新を行わないことを特徴とする請求項1〜4何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記色ずれ量は、スキューずれ、主走査方向倍率ずれ、主走査方向レジストずれ、副走査方向レジストずれ、のうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜5何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記補正部は、色ずれ量の各成分を要素とする行列の逆行列を用いて、前記テストパターンデータおよび前記画像データを補正することを特徴とする請求項1〜6何れか1項に記載画像形成装置。
【請求項8】
前記更新部は、前記保持部に保持されている直近の色ずれ量に、現在求められた色ずれ量の変化量を加算することで、色ずれ量を更新することを特徴とする請求項1〜7何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記更新部は、現在求められた色ずれ量の変化量に第1係数を乗じた値と、
現在求められた色ずれ量の変化量の積算値に所定の第2係数を乗じた値と、
前記保持部に保持されている直近の色ずれ量と、を加算することで、色ずれ量を更新することを特徴とする請求項1〜7何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第1係数及び前記第2係数は、色ずれ量の各成分の演算ごとに異なることを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記形成部は、前記テストパターンを前記中間転写体上の、主走査方向両端に形成することを特徴とする請求項1〜10何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記形成部は、前記テストパターンを前記中間転写体に形成された画像間に形成することを特徴とする請求項1〜10何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
現時点での保持部に保持されている色ずれ量に基づき、生成部により生成されたテストパターンデータおよび画像データを補正する補正工程と、
前記補正工程により補正された前記テストパターンデータに基づいたテストパターンを所定間隔ごとに中間転写体に形成し、かつ、前記画像データに基づいた画像を前記中間転写体に形成する形成工程と、
前記中間転写体に形成されたテストパターンを検知する検知工程と、
前記検知工程の検知結果から、色ずれ量の変化量を求め、該色ずれ量の変化量を用いて、前記保持部に保持されている色ずれ量を更新する更新工程と、を有することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−63499(P2012−63499A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206520(P2010−206520)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】