説明

画像形成装置

【課題】 すべてのカートリッジに対して、一律でトナー撹拌シーケンスを行うと、撹拌の必要のないものまで撹拌してしまう可能性があり、トナー撹拌シーケンスにかかる時間により生産性が低下してしまう可能性があった。
【解決手段】 トナー撹拌シーケンスを実施する前に中間転写体の主走査方向の両端部近傍にトナー像を形成し、トナー像の濃度差を算出し、濃度差からトナー撹拌シーケンスを行う時間を制御することにより、一律決まった時間でトナーの撹拌シーケンスを行うことにより発生するダウンタイムを抑制することで、スループットの低下による生産性の低下を抑制することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やレーザビームプリンタやファクシミリ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置において、トナーを収容する現像部をカートリッジ化して、このカートリッジを画像形成装置本体に着脱可能とする方式が採用されている。この方式によれば、画像形成装置のメンテナンスをサービスマンによらずユーザが行うことができるので、利便性を向上させることができる。しかし、この方式では、長期間カートリッジを使用せず、一定の姿勢を保ったままにしておくと収容部に収容されたトナーが一方に偏って固まってしまう、いわゆるタッピングと呼ばれる現象が発生してしまう可能性がある。タッピングが発生したカートリッジによって画像形成を行うと、トナーの供給量が安定せず、画像濃度にムラが生じてしまう可能性がある。
【0003】
このようなタッピング状態を解消するために、特許文献1には画像形成を開始する前にトナーを撹拌する撹拌動作を一定時間実行するような方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−184200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような方法では、トナーの撹拌を行う必要があるか否かに関わらず、一律決められたトナーの撹拌動作を行った後に画像形成を開始する。よって、例えば、一律決められた分だけトナーの撹拌動作を行う必要がないような場合においても、撹拌動作が終わった後に画像形成を行うため、トナーの撹拌にかかる時間がダウンタイムとなり、ダウンタイムが発生してしまうことによりスループットが低下し生産性が低下してしまう可能性があった。
【0006】
本出願にかかる発明は、以上のような状況を鑑みてなされたものであり、トナーの撹拌を行うことにより発生するダウンタイムを抑制することで、スループットの低下による生産性の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、複数の像担持体と、前記複数の像担持体のそれぞれにトナー像を形成するための複数の現像器と、前記複数の現像器のそれぞれにおいて、現像器に収容された現像剤を撹拌する複数の撹拌手段と、前記像担持体に形成されたトナー像が転写される転写体と、を有する画像形成装置であって、前記現像器によって現像器の長手方向の位置で前記像担持体に形成され、前記転写体に転写されたトナー像の第1の位置の第1の濃度とトナー像の第2の位置の第2の濃度とを検知する検知手段と、前記検知手段によって検知された前記第1の濃度と前記第2の濃度の濃度差と予め定められた閾値に基づき、前記撹拌手段による撹拌動作を制御する制御手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成によれば、トナーの撹拌を行うことにより発生するダウンタイムを抑制することで、スループットの低下による生産性の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】画像形成装置の概略構成図
【図2】画像形成装置のシステム構成を示すブロック図
【図3】図1のプロセスカートリッジ9aを拡大した主断図
【図4】トナー撹拌シーケンスの時間を制御する動作を説明するためのフローチャート
【図5】トナー像218dを一次転写した時の中間転写体80を示した図
【図6】トナー像218dRと218dLの濃度差とトナー撹拌シーケンスの実施時間との関係を示したグラフ
【図7】トナー撹拌シーケンスの途中に再びトナー像を形成し、その濃度差によりトナー撹拌シーケンスを継続するか否かを判断する動作を説明するためのフローチャート
【図8】トナー撹拌シーケンスを3回実施した時の中間転写体80を示した図
【図9】トナー撹拌シーケンスのために形成したトナー像と、画像濃度制御のために形成したトナー像を同時にクリーニングする動作を説明するためのフローチャート
【図10】トナー撹拌シーケンスを2回実施した後に画像濃度制御を実施した時の中間転写体80を示した図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は画像形成装置としてのレーザプリンタの概略構成図である。まず、画像形成装置全体の構成について説明する。なお、以下の説明では、第1ステーションをイエロー(Y)色のトナー画像形成用のステーション、第2ステーションをマゼンタ(M)色のトナー画像形成用のステーション、第3ステーションをシアン(C)色のトナー画像形成用のステーション、第4ステーションをブラック(K)色のトナー画像形成用のステーションとする。
【0012】
1aは像担持体としての感光ドラムである。感光ドラム1aは金属円筒上に感光して電荷を生成するキャリア生成層、発生した電荷を輸送する電荷輸送層などからなる機能性有機材料が複数層積層されたものであり、最外層は電気的導電性が低くほぼ絶縁である。2aは、帯電手段としての帯電ローラである。帯電ローラ2aが感光ドラムに当接され、感光ドラム1aの回転にともない、従動回転しなから感光ドラム1aの表面を均一に帯電する。帯電ローラ2aには直流電圧もしくは交流電圧を重畳した電圧が印加され、帯電ローラ2aと感光ドラム1aの表面の当接ニップ部から上下流側の微小な空気ギャップで放電が発生することにより感光ドラム1aは帯電される。3aは、感光ドラム1a上の転写残トナーをクリーニングするクリーニングユニットである。8aは、現像手段としての現像ユニットである。現像ユニット8aは、現像ローラ4a、撹拌部5a、非磁性一成分現像剤6a、現像剤塗布ブレード7aを有している。上述の1a〜8aの各部材は、画像形成装置から着脱自在な一体型のプロセスカートリッジ9aとなっている。なお、ここでは一例として現像剤は非磁性一成分であるとしたが、トナーとキャリアの二成分の現像剤を用いてもよい。
【0013】
11aは露光手段であり、レーザ光を多面鏡によって走査させるスキャナユニットまたはLEDアレイから構成され、画像信号に基づいて変調された走査ビーム12aを感光ドラム1a上に照射する。また、帯電ローラ2a、現像ローラ4a、一次転写ローラ81aのそれぞれは、帯電ローラ2aへの電圧供給手段である帯電バイアス電源20a、現像ローラ4aへの電圧供給手段である現像バイアス電源21a、一次転写ローラ81aへの電圧供給手段である一次転写バイアス電源84aに接続されている。以上が第1ステーションの構成であり、第2、第3、第4ステーションも同様の構成をしているため、ここでの説明は省略する。また、以降の説明においても、説明の便宜上、第1ステーションを代表として説明を行うが、第2、第3、第4ステーションも同様の構成及び制御が可能である。なお、第1ステーションと同一の部材については付番の後ろの添え字が、それぞれ第2、第3、第4ステーションに対応して、b、c、dとなっている。なお、本実施形態における画像形成装置は、いわゆるタンデム系と呼ばれるものであり、第1乃至第4のカートリッジはそれぞれ固有の位置に配置されている。
【0014】
中間転写体80は、その張架部材として二次転写対向ローラ86と駆動ローラ14の2本のローラにより支持されており、適当なテンションが維持されるようになっている。駆動ローラ14を駆動させることにより中間転写体80は感光ドラム1a〜1dに対して順方向に略同速度で移動する。また、中間転写体80は、矢印方向に回転し、一次転写ローラ81aは中間転写体80を挟んで感光ドラム1aと対向する位置に配置されている。また、一次転写ローラ81aの中間転写体80の回転方向の下流側には除電部材23aが配置されている。駆動ローラ14、除電部材23a、二次転写対向ローラ86は電気的に接地されている。
【0015】
像担持体としての感光ドラム1aは、アルミニウム製シリンダの外周面に有機光導電体層(OPC)を塗布して構成したものである。感光ドラム1aはその両端部をフランジによって回転自在に支持しており、一方の端部に図示しない駆動モータから駆動力を伝達することにより、図に対して反時計回りに回転駆動される。帯電手段2aは、ローラ状に形成された導電性のローラで、これを感光ドラム1a表面に当接させると共に、図示しない電源によって帯電バイアス電圧を印加することにより、感光ドラム1a表面を一様に帯電させるものである。露光手段11aはポリゴンミラーを有し、このポリゴンミラーには図示しないレーザダイオードから画像信号に対応する画像光が照射される。現像手段は、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のトナーを収納したトナー収納部、感光ドラムの表面に当接し、図示しない駆動部により回転駆動されると共に、図示しない現像バイアス電源により現像バイアス電圧を印可することにより現像を行う現像ローラ4a〜4d等から構成される。
【0016】
また、中間転写体80の内側には、感光ドラム1a〜1dに対向して、中間転写体80に当接する一次転写ローラ81a〜81dがそれぞれ併設されている。これら一次転写ローラ81a〜81dは一次転写バイアス電源84a〜84dで接続されており、一次転写ローラ81a〜81dから正極性の電荷が感光ドラム1a〜1dに接触中の中間転写体80に付与され、感光ドラム1a〜1d上の負極性の各色トナー像が順次転写され、多色画像が形成される。
【0017】
本体カセット16から紙としての記録材Pを給紙する際には、カセットピックアップローラ17を駆動させることによって、本体カセット底板29が上昇し、本体カセット16内に設置された記録材Pを押し上げる。押し上げられた記録材Pの最上の一枚が、カセットピックアップローラ17と当接し、カセットピックアップローラ17の回転により、一枚ずつ記録材Pが分離給送され、レジストローラ18によって、二次転写位置である二次転写ローラ82と中間転写体80の当接部に搬送される。
【0018】
本体カセット16、又は手差しトレイ30より給紙された記録材Pは、レジストローラ18によって二次転写部に搬送される。中間転写体80は、感光ドラム1a〜1dのそれぞれに形成されたトナー像を静電吸着させるべく、駆動ローラ14によって循環移動する。これにより中間転写体80の外周に多色画像が形成され、ベルト上に形成された画像は二次転写位置である二次転写ローラ82と中間転写体80の当接部まで搬送される。記録材Pに中間転写体80のトナー像を転写する際には、二次転写ローラ82に電圧を印加することで、対向して配置された二次転写対向ローラ86に電界を形成し、中間転写体80及び記録材Pの間に誘電分極を発生させて両者に静電吸着力を生じさせている。
【0019】
定着手段19は、熱及び圧力を加えてトナー像を記録材上に定着させるものであり、図示しない定着ベルトと図示しない弾性加圧ローラとを有している。弾性加圧ローラは定着ベルトを挟み、図示しないベルトガイド部材と所定の圧接力をもって所定幅の定着ニップ部を形成している。定着ニップ部が所定の温度に立ち上がって温調された状態において、画像形成部から搬送された未定着トナー画像が形成された記録材Pが定着ニップ部の定着ベルトと弾性加圧ローラとの間に画像面が上向き、即ち定着ベルト面に対向して搬送される。定着ニップ部において画像面が定着ベルトの外面に密着して定着ベルトと一緒に定着ニップ部を挟持搬送されていく。この定着ニップ部を定着ベルトと一緒に記録材Pが挟持搬送されていく過程において、定着ベルトで加熱され、記録材P上の未定着トナー画像が記録材Pに加熱定着される。定着された記録材Pはが排出トレイ36に排出される。
【0020】
図2は、画像形成装置のシステム構成の一例を説明するためのハードウェア構成及び機能を示したブロック図である。ホストコンピュータ200は、PCLなどのページ記述言語で記載された印刷データ(文字コードや図形データ、イメージデータやプロセス条件など)をコントローラ部201に送信する。コントローラ部201は、ホストコンピュータ200から印刷データを受信する。受信した印刷データを色毎に順次解析処理し、プリンタで画像を形成するために必要なドットデータからなるビットマップである画像情報を生成し(以下、画像展開とする)、エンジン制御部202へ順次送信する。ここでは、一例としてコントローラ部201で画像展開を行う方法について示した。しかしながら、画像展開は必ずしもコントローラ部201で行う必要はなく、例えばホストコンピュータ200で画像展開し、画像情報をコントローラ部201へ送信してもよい。
【0021】
制御手段としてのエンジン制御部202は、コントローラ部201から順次入力される画像情報に基づき画像を形成するため、感光ドラム1への潜像の形成、各色のトナー像の形成、一次転写及び二次転写、定着処理等の一連の画像形成動作を制御する。潜像を形成してから一次転写を行うまで(以下、印字動作とする)の処理は、上記の画像展開と並列処理される。210はエンジン制御部202とコントローラ部201を接続するインターフェイス部である。インターフェイス部210は、シリアル通信部203と、画像形成信号通信部204からなる。シリアル通信部203は、コントローラ部201からエンジン制御部202に対して送信されるコマンドや信号を受信し、エンジン制御部202からコントローラ部201に画像形成装置の状態や画像情報を要求する信号などを送信する。画像形成信号通信部204は、コントローラ部201からエンジン制御部202に送信される画像情報などを受信する。なお、ここでは制御手段はエンジン制御部202としたが、これに限られるものではなく、例えばエンジン制御部202とコントローラ部201で制御する対象を分けて、2つで制御手段を形成することも可能である。
【0022】
211はエンジン制御部202内の各制御部や通信部の制御を行ったり、コントローラ部201に送られてきたデータとエンジン制御部の不図示のROM等に保持されたとの比較を行ったりするCPUである。CPU211は、中間転写体80上のホームポジションマーク(以下、HPマークとも呼ぶ)218bやトナー像218dを検知する光学センサ218aや218c等を制御するセンサ制御部218、中間転写体80や感光ドラム1などを制御する駆動制御部217を制御する。また、CPU211は、印字動作を開始するための垂直同期信号(以下、/TOP信号とも呼ぶ)の生成や、スキャナ部より出力された水平同期信号を制御する。さらに、スキャナモータやレーザ出力など、印字動作に関連する制御を行う画像形成制御部212、定着制御部213、給紙制御部214、高圧制御部215、不揮発性メモリ制御部216をそれぞれ制御する。
【0023】
図3は、プロセスカートリッジ9aを拡大した概略構成図である。図3では、トナーの撹拌を行う現像ユニット8aについて説明する。現像ユニット8aは、以下の部材から構成されている。感光ドラム1aと接触して図中の矢印方向に回転する現像剤担持体としての現像ローラ4a。現像剤規制部材としての現像剤塗布ブレード7a。収容された非磁性一成分現像剤6aを撹拌するとともに現像ローラ4aに搬送するための撹拌部材としての撹拌部5a。なお、撹拌部5aについては、本実施形態においては、回転可能な板状の撹拌部材を一例として説明したが、現像剤が撹拌できれば、例えばスクリュー状やローラ状など他の形状の撹拌部材を用いてもよい。また、それら複数を組み合わせて撹拌部としてもよい。
【0024】
次に図4〜図6を用いて、本実施形態におけるトナーの撹拌動作(以下、トナー撹拌シーケンスとも呼ぶ)の要否の制御及びトナー撹拌シーケンスの実施時間の制御について説明する。本実施形態においては、トナー撹拌シーケンスを行う必要がある可能性のあるカートリッジをイエローのカートリッジとして、説明を行う。イエローのカートリッジによってトナー像を形成し、形成されたトナー像の濃度差を検知し、その濃度差に応じてトナー撹拌シーケンスの実行時間を決定する。
【0025】
図4は、トナー撹拌シーケンスの時間を制御する動作を説明するためのフローチャートである。S401において、CPU211はトナー像218dを感光ドラム1aに形成させる。S402において、CPU211は形成したトナー像218dを中間転写体80上に一次転写させる。なお、トナー像を形成する位置は、現像ローラ4aの主走査方向の両端部近傍とする。このトナー像が中間転写体80に転写されることで、後述する図5に示すように中間転写体80の画像領域における主走査方向の両端部近傍にトナー像がある状態となる。
【0026】
図5はトナー像218dを一次転写した時の中間転写体80を示している。トナー像218dは、中間転写体80上の画像領域における主走査方向の両端部近傍にトナー像218dR、218dLとして一次転写される。トナー像218dRと218dLと2つの異なる位置にトナー像を形成しているのは、2つのトナー像の濃度差からトナー撹拌シーケンスの実施時間を算出するためである。トナー像218dRと218dLの長さPLと幅PWは、濃度センサ218cが濃度を確実に検知できるような長さと幅として形成される。なお、トナー像218dとは、トナー像218dRとトナー像218dLを合わせた総称である。また、ここでは一例として中間転写体80上のトナー像を検知する濃度センサ218cを説明したが、例えば各色の感光ドラム上のトナー像を検知するために、各色の感光ドラムにそれぞれセンサを配置して、感光ドラム上のトナー像を検知することも可能である。
【0027】
S403において、CPU211は検知したHPマーク218bを基準に中間転写体80の主走査方向の両端部近傍に転写されたトナー像218dR、218dLの濃度を濃度センサ218cにより検知を開始させる。S404において、CPU211は濃度センサ218cによりトナー像218dR、218dLの濃度検知が完了したか判断する。濃度センサ218cによりトナー像218dR、218dLの濃度が検知されると、S405において、CPU211はトナー像218dRと218dLの濃度差を算出する。なお、トナー像218dRと218dLの濃度は0から255のディジタル値として扱われる。そのため、濃度差の取り得る値も0から255degとなる。なお、トナー像218dR、218dLに濃度差が発生する状態とは、現像ユニット8の長手方向のどちらか一方にトナーが偏って固まってしまった状態である。
【0028】
S406において、CPU211は算出された結果であるトナー像218dRと218dLの濃度差に応じて、トナー撹拌シーケンスの実行時間を決定する。図6は、トナー像218dRと218dLの濃度差とトナー撹拌シーケンスの実施時間との関係を示したグラフである。濃度差が65deg未満となっているときは、トナーが十分に撹拌されていると判断し、トナー撹拌シーケンスは行わない。以降、濃度差が大きくなるにつれトナー撹拌シーケンスの実施時間を増やす。例えば、濃度差が65degの時は実施時間を所定時間として6秒間、濃度差が125degの時は実施時間を所定時間として30秒間、濃度差が200deg以上になると実施時間を所定時間として60秒間とする。このように、トナー像の濃度差が予め定められた所定値(閾値)を上回ったか否かにより、トナー撹拌シーケンスの実行時間を制御することにより、カートリッジ内のトナーの状況に応じた適切な時間のトナー撹拌シーケンスを行うことが可能となる。なお、本実施形態における閾値とは、例えば前で説明した65deg、125deg、200deg等である。なお、ここで示した濃度差とトナー撹拌シーケンスの実施時間との関係は一例であり、撹拌速度、トナー成分の特性、環境温度や濃検センサの検知能力等により、実施時間を決める閾値は適宜設定することが可能である。また、ここでは撹拌手段としての撹拌部5aを回転させることによるトナー撹拌シーケンスを説明したが、スクリュー状やローラ状など他の形状の撹拌部材を用いることも可能である。その際は、撹拌部材の形状により撹拌力が異なるため、撹拌時間を撹拌部材に応じて適宜設定する。あとの制御は本実施形態で説明することと同様でトナー撹拌シーケンスを行うことが可能である。
【0029】
S407において、CPU211はクリーニングユニット3aにより、中間転写体80上に形成したトナー像218dR、218dLをクリーニングさせる。S408において、CPU211は算出した濃度差により求めたトナー撹拌シーケンスの実施時間が0であるか判断する。実施時間が0でなければ、S409において、CPU211は算出した実施時間でトナー撹拌シーケンスを行う。実施時間が0である、又はS409のトナー撹拌シーケンスを開始すると、S410において、CPU211はクリーニング及びトナー撹拌シーケンスが完了したかを判断し、完了するとトナー撹拌シーケンスを終了する。
【0030】
このように、例えば新品であったり、長い時間画像形成が行われていなかったりする等でトナー撹拌シーケンスを行う必要がある可能性があるカートリッジによりトナー像を形成する。本実施形態においては、トナー撹拌シーケンスを行う必要がある可能性のあるカートリッジをイエローのカートリッジとしたが、他のカートリッジでも同様の手順で濃度差の算出を行って、撹拌シーケンスを行うことができる。また、トナー撹拌シーケンスを行う必要がある可能性のあるカートリッジが複数ある場合は、それぞれで同じ手順で濃度差の算出を行えば良い。濃度差を求めることにより、予め決まった時間のトナー撹拌シーケンスを行うのではなく、形成したトナー像の濃度差から、現像剤の偏り具合を検知することができ、現像剤の状態に合わせて適切な実施時間でトナー撹拌シーケンスを行うことが可能となる。よって、一律決まった時間でトナーの撹拌動作を行うことにより発生するダウンタイムを抑制することで、スループットの低下による生産性の低下を抑制することが可能となる。
【0031】
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、トナー撹拌シーケンスを行う前にトナー像を形成し、濃度差を検知することにより、トナーの状態に応じてトナー撹拌シーケンスの実施時間を制御する方法について説明した。本実施形態においては、トナー撹拌シーケンスが必要であると判断した後、トナー撹拌シーケンスの途中に再びトナー像を形成し、その濃度差によりトナー撹拌シーケンスを継続するか否かを判断することで、さらに精度良く制御を行う方法について説明する。なお、画像形成装置の構成等、先の第1の実施形態と同様のものはここでの説明は省略する。
【0032】
図7は、トナー撹拌シーケンスの途中に再びトナー像を形成し、その濃度差によりトナー撹拌シーケンスを継続するか否かを判断する動作を説明するためのフローチャートである。なお、先の図4のフローチャートと同様のステップについては同様の符番を付け、説明は省略する。
【0033】
S701において、CPU211はトナー像218dRとトナー像218dLの濃度差と所定値(閾値)を比較し、濃度差が所定値以下であるか(ここでは、一例として65deg以下であるか)否かを判断する。濃度差が所定値より大きい場合は、S702において、CPU211はトナー撹拌シーケンスを6秒間行う。なお、ここでは一例としてトナー撹拌シーケンスを6秒行う場合を説明したが、6秒に限らなくてもよい。スクリュー状やローラ状など他の形状の撹拌部材を用いるときは、それらの部材に応じたトナー撹拌シーケンスを行うことが可能である。図8は、トナー撹拌シーケンスを3回実施した時の中間転写体80の図である。トナー像218dは、中間転写体80上の画像領域における主走査方向の両端部近傍に、トナー像218dR1、218dL1、218dR2、218dL2、218dR3、218dL3として夫々が重ならないように一次転写される。各トナー像の間隔PIは、濃度センサ218cがトナー像の先端と後端を確実に検知できるような長さと幅として形成される。なお、ここでは一例として両端部近傍にトナー像が形成されているが、これに限られるものではなく、例えば一方は端部でもう一方は中央部というような位置に形成されてもよい。また、ここでは副走査方向(現像器の長手方向と直交する方向)にずれのない位置にトナー像を形成する例を示したが、これに限られるものではなく、副走査方向に形成位置がずれていてもよい。また、ここではトナー像を複数検知する例を示したが、2つの濃度センサにまたがるような1つのトナー像を形成してもよい。
【0034】
濃度差が所定値より小さい場合は、S703において、CPU211はクリーニングユニット3aによって中間転写体80上に形成したトナー像をクリーニングさせる。S704において、CPU211はクリーニングが完了したかを判断し、完了するとトナー撹拌シーケンスを終了する。
【0035】
このように、トナー撹拌シーケンスを行っている途中に、トナー像を形成し、その濃度差を検知し、その濃度差に応じてトナー撹拌シーケンスを継続するか否かを判断する。これにより、一律にトナー撹拌シーケンスを行うのではなく、形成したトナー像の濃度差から、現像剤の偏り具合を検知することができ、現像剤の状態に合わせて適切な実施時間でトナー撹拌シーケンスを行うことが可能となる。よって、一律決まった時間でトナーの撹拌動作を行うことにより発生するダウンタイムを抑制することで、スループットの低下による生産性の低下を抑制することが可能となる。
【0036】
(第3の実施形態)
第1の実施形態及び第2の実施形態では、トナー像を形成することにより、トナー撹拌シーケンスを行うか否かを判断する方法について説明した。本実施形態においては、トナー撹拌シーケンスのために形成したトナー像と、画像濃度制御のために形成したトナー像を同時にクリーニングすることによって、生産性の低下を抑制する方法について説明する。
なお、画像形成装置の構成等、先の第1の実施形態又は第2の実施形態と同様のものはここでの説明は省略する。
【0037】
まず、画像濃度制御について説明を行う。エンジン制御部202は、コントローラ部201から送信されたパッチパターンデータに基づいて潜像を形成する。そして、形成した潜像を現像し、中間転写体80上に画像濃度制御用のトナー像(パッチ)218dを一次転写する。本実施形態では、パッチパターンを発生するパッチパターン発生手段205はコントローラ部201に搭載している。しかしながら、このパッチパターン発生手段205は、コントローラ部201の替わりに、エンジン制御部202に搭載しても良い。エンジン制御部202は、画像濃度検知手段として濃度センサ218cが設けられている。濃度センサ218cは、中間転写体80上に形成されたパッチ218dに対し発光素子からの光を照射し、そこからの反射光を受光素子で受けることによりパッチ218dの濃度を測定する。濃度センサ218cで検知したパッチ218dの濃度は、センサ制御部218により0から255のディジタル値に変換され、CPU211に送信される。エンジン制御部202は、濃度センサ218cで検知し、センサ制御部218から送信された画像濃度のディジタル値を用いて画像濃度制御を行う。本実施形態における画像濃度制御は、画像の最大濃度を所定の濃度に合わせる最大濃度制御(Dmax制御)と、画像の階調特性を所定の特性に合わせる階調制御(Dhalf制御)とからなる。
【0038】
図9は、トナー撹拌シーケンスのために形成したトナー像と、画像濃度制御のために形成したトナー像を同時にクリーニングする動作を説明するためのフローチャートである。なお、先の図4及び図7のフローチャートと同様のステップについては同様の符番を付け、説明は省略する。
【0039】
S701において、CPU211はトナー像の濃度差が所定値以下であると判断すると、S901において、CPU211は濃度制御用のパッチを形成させる。S902において、CPU211は形成したトナー像を中間転写体80上に一次転写させる。S903において、CPU211は検知した中間転写体80に転写されたトナー像の濃度を濃度センサ218cにより検知を開始させる。S904において、CPU211は濃度センサ218cによりトナー像の濃度検知が完了したか判断する。濃度センサ218cによりトナー像の濃度が検知されると、S905において、CPU211は検知した濃度に応じて画像濃度制御を行う。画像濃度制御を行うと、S906において、CPU211はクリーニングユニット3aより中間転写体80上に形成したトナー像をクリーニングさせる。S907において、CPU211はクリーニングが完了したかを判断し、完了するとトナー撹拌シーケンスを終了する。
【0040】
図10は、トナー撹拌シーケンスを2回実施した後に画像濃度制御を実施した時の中間転写体80の図である。トナー像218dR1、218dL1、218dR2、218dL2と、画像濃度制御用のパッチK0〜7、Y0〜7、M0〜7、C0〜7は、夫々重ならないように一次転写される。トナー像218dR1、218dL1、218dR2、218dL2と画像濃度制御用のパッチの間隔をPIとする。また、トナー像218dR1、218dL1、218dR2、218dL2の長さをPL1、画像濃度制御用のパッチの長さをPL2、中間転写体80の周長をLとする。すると、中間転写体80上には、
(L−(PL2×4+PI×4))÷(PL1+PI) (1)
式(1)で算出される個数のトナー像218dを中間転写体80上に形成することが可能である。
【0041】
このように、トナー像の濃度差を検知し、その濃度差に応じてトナー撹拌シーケンスを継続するか否かを判断する。これにより、一律にトナー撹拌シーケンスを行うのではなく、トナーの状態に応じて適切な実施時間でトナー撹拌シーケンスを行うことが可能となる。さらに、画像濃度制御用のトナー像を形成し、トナー撹拌シーケンス用のトナー像と同時にクリーニングを行う。よって、トナー撹拌シーケンス及び画像濃度制御を行うことにより発生するダウンタイムを抑制することで、スループットの低下による生産性の低下を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
80 中間転写体
218a 光学センサ
218b HPマーク
218c 濃度センサ
218d トナー像
221 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の像担持体と、
前記複数の像担持体のそれぞれにトナー像を形成するための複数の現像器と、
前記複数の現像器のそれぞれにおいて、現像器に収容された現像剤を撹拌する複数の撹拌手段と、
前記像担持体に形成されたトナー像が転写される転写体と、を有する画像形成装置であって、
前記現像器によって現像器の長手方向の位置で前記像担持体に形成され、前記転写体に転写されたトナー像の第1の位置の第1の濃度とトナー像の第2の位置の第2の濃度とを検知する検知手段と、
前記検知手段によって検知された前記第1の濃度と前記第2の濃度の濃度差と予め定められた閾値に基づき、前記撹拌手段による撹拌動作を制御する制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検知手段によって検知された前記濃度差が前記閾値を上回ると前記撹拌手段による撹拌動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記濃度差が大きくなるにつれ前記撹拌手段による撹拌動作を行う時間を増やすように制御することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記撹拌手段による撹拌動作が完了する前に、再びトナー像を形成し、前記検知手段によって前記トナー像の第1の濃度及び前記トナー像の第2の濃度を検知し、前記第1の濃度と前記第2の濃度の濃度差と予め定められた閾値に基づき、前記撹拌手段による撹拌動作を継続するか否かを判断することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記検知手段は、前記トナー像の第1の位置の濃度を検知する第1のセンサと、前記トナー像の第2の位置の濃度を検知する第2のセンサとを備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記トナー像は、前記現像器の長手方向の両端部の位置で前記像担持体に形成され、前記転写体に転写されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記トナー像は、前記現像器の長手方向と直交する方向にずれていない位置で前記像担持体に形成され、前記転写体に転写されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記転写体のトナー像をクリーニングするクリーニング手段を有し、
前記撹拌手段による撹拌動作を制御するためのトナー像と画像濃度制御を行うためのトナー像がそれぞれ前記転写体に転写され、前記クリーニング手段により前記転写体に転写された前記各トナー像をクリーニングすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
像担持体と、
前記像担持体にトナー像を形成するための現像器と、
前記現像器において、現像器に収容された現像剤を撹拌する撹拌手段と、を有する画像形成装置であって、
前記現像器によって現像器の長手方向の位置で前記像担持体に形成されたトナー像の第1の位置の第1の濃度とトナー像の第2の位置の第2の濃度とを検知する検知手段と、
前記検知手段によって検知された前記第1の濃度と前記第2の濃度の濃度差と予め定められた閾値に基づき、前記撹拌手段による撹拌動作を制御する制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−44790(P2013−44790A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180550(P2011−180550)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】