説明

画像形成装置

【課題】 複数の現像器をもつ画像形成装置で溝形状の現像スリーブを使用する場合、溝形状のバンディングが残ってしまうが、各現像スリーブの溝の形状が同じ場合にはバンディングが重なりあって、より顕在化してしまう。
【解決手段】 複数の現像器を持ち現像スリーブに溝形状の処理を施す画像形成装置において、各々の溝を現像スリーブのスラスト方向に対して斜めにすると共に各々の溝の角度を変える。こうすることにより、各現像器の溝の角度で発生するバンディングが打ち消しあうことで、フルカラー出力画像においてバンディングが見えにくくなることを実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式等によって像担持体上に形成された静電潜像を現像して可視画像を形成する現像装置を有する画像形成装置に関する。特に、現像剤を現像位置へ担持搬送する現像剤担持体の表面が溝加工されている現像装置を複数有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機などの画像形成装置では、感光体ドラムなどの像担持体上に形成された静電潜像に現像剤を付着させて可視像化する現像装置が設けられる。このような現像装置では、感光体ドラムと対向する現像位置に現像剤を担持搬送させる現像スリーブが設けられている。現像スリーブの表面には、搬送性を向上させるためにサンドブラストによって表面に凹凸を形成した現像スリーブがある。サンドブラストを用いて凹凸を持たせた現像スリーブは、使用して表面が摩耗すると凹凸量が小さくなり現像剤搬送能力が低下する問題があった。そこで、特許文献1及び2のように、現像スリーブの表面に複数の溝を形成し、表面の摩耗による搬送能力低下を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−333691号
【特許文献2】特開2007−127907号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2のように表面に溝を備えた現像スリーブは、現像スリーブ上のコート量を規制する現像剤規制部材を通過する際に溝の領域と溝のない領域でスリーブ表面に搬送される現像剤の量が変わる。このため、溝のある領域と溝のない領域で感光体ドラム上に移動するトナーの量が変化してしまい、出力画像状には溝のピッチでムラ(バンディング)が発生してしまう場合がある。
【0005】
とりわけ、複数の現像装置がある場合、各々の現像スリーブの溝形状が同じであると、転写工程後で各色の出力が重なり合ってしまい、単一の現像装置で画像出力する場合よりもより顕著にバンディングが発生してしまう虞があった。そこで、本発明の目的は、各現像装置の現像剤担持体の溝によって生じたピッチムラが画像上で重なりあってしまうことによる画像不良を低減可能な現像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
像担持体と対向する現像位置に現像剤を担持搬送する現像剤担持体を備え、前記像担持体に形成された静電潜像を現像する複数の現像装置と、を備え、前記複数の現像装置によって現像されたトナー像を重ねて記録材に画像形成する画像形成装置であって、
前記複数の現像装置は、前記現像剤担持体の表面に溝加工が施された現像装置を少なくとも2つ以上有しており、前記現像剤担持体の軸線に対する前記溝の角度が各現像装置によって異なっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
各現像装置の現像剤担持体の溝によって生じたピッチムラが画像上で重なりあってしまうことによる画像不良を低減可能な現像装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1、2に係る画像形成装置の概略構成説明図である。
【図2】本発明に係る現像装置の横断面図である。
【図3】本発明に係る現像装置の縦断面図である。
【図4】本発明の実施例1に係る現像スリーブの概略説明図である。
【図5】本発明の実施例2に係る現像スリーブの概略説明図である。
【図6】本発明の実施例1に係る現像スリーブの概略説明図である。
【図7】本発明の実施例1に係る画像処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施例1)
図1に、本発明が適用できる画像形成装置の一実施形態である、電子写真方式を採用したフルカラー画像形成装置の概略構成図を示す。
【0010】
本実施形態にて、画像形成装置は、4つの画像形成部P(Pa、Pb、Pc、Pd)を備える。各画像形成部Pa〜Pdは、像担持体としての矢印方向(反時計方向)に回転するドラム状の電子写真感光体、即ち、感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)を備える。各感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)の周囲には、帯電器2(2a、2b、2c、2d)、露光手段としてのレーザービームスキャナ3(3a、3b、3c、3d)、現像装置4(4a、4b、4c、4d)が設けられている。更に、転写ローラ6(6a、6b、6c、6d)、クリーニング手段19(19a、19b、19c、19d)を有する。
【0011】
各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは同様の構成とされる。例えば、各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdに配置された感光体ドラム1a、1b、1c、1dは同じ構成とされる。従って、感光体ドラム1a、1b、1c、1dを「感光体ドラム1」と総称する。同様に、各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdに配置されたプロセス手段も又、各画像形成部においてそれぞれ同じ構成のものなので、それぞれ、帯電器2、レーザービームスキャナ3、現像装置4、転写ローラ6、クリーニング手段19と総称する。
【0012】
次に、上記構成の画像形成装置全体の通常モードにおける画像形成シーケンスについて説明する。
【0013】
先ず、感光体ドラム1が、帯電器2によって一様に帯電される。通常モードでは感光体ドラム1は、矢示の時計方向に286mm/secのプロセススピード(周速度)で回転する。
【0014】
上記一様に帯電された感光体ドラム1は、次に、上記のレーザービームスキャナ3により、画像信号により変調されたレーザー光により走査露光が行われる。レーザービームスキャナ3は、半導体レーザーを内蔵しており、この半導体レーザーは、CCD等の光電変換素子を有する原稿読み取り装置が出力する原稿画像情報信号に対応して制御され、レーザー光を射出する。
【0015】
これによって、帯電器2によって帯電された感光体ドラム1の表面電位が画像部において変化して、感光体ドラム1上に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置4によって反転現像され、可視画像、即ち、トナー像とされる。
【0016】
本実施形態では、現像装置4は、現像剤としてトナーとキャリアを混合した現像剤を使用する二成分現像方式を用いる。
【0017】
又、上記工程を各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pd毎に行うことによって、感光体ドラム1a、1b、1c、1d上に、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色のトナー像が形成される。
【0018】
本実施形態では、各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdの下方位置には、中間転写ベルトとされる中間転写体5が配置される。中間転写ベルト5は、ローラ51、52、53に懸架され、矢印方向に移動自在とされる。
【0019】
上記感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)上のトナー像は、一次転写手段としての転写ローラ6(6a、6b、6c、6d)によって一度中間転写体である中間転写ベルト5に転写される。これによって、中間転写ベルト5上にてイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされ、フルカラー画像が形成される。また、感光体ドラム1上に転写されずに残ったトナーはクリーニング手段19に回収される。
【0020】
この中間転写ベルト5上のフルカラー画像は、給紙カセット12から取り出され、給紙ローラ13、給紙ガイド11を経由して進行した紙などの転写材Sに、二次転写手段としての二次転写ローラ10の作用により転写される。転写されずに中間転写ベルト5表面に残ったトナーは中間転写ベルトクリーニング手段18に回収される。
【0021】
一方、トナー像が転写された転写材Sは、定着器(熱ローラ定着器)16に送られ、画像の定着が行われ、排紙トレー17に排出される。
【0022】
尚、本実施形態では、像担持体として、通常使用されるドラム状の有機感光体である感光体ドラム1を使用したが、勿論、アモルファスシリコン感光体等の無機感光体を使用することもできる。また、ベルト状の感光体を用いることも可能である。帯電方式、転写方式、クリーニング方式、定着方式に関しても、上記方式に限られるものではない。また、中間転写体を用いずに、各像担持体から直接記録材にて転写する構成であってもよい。
【0023】
次に、図2及び図3を参照して、現像装置4の動作を説明する。図2及び図3は本実施形態に係る現像装置4の断面図であり、所謂、縦攪拌型の現像装置となっている。
【0024】
本実施形態に係る現像装置4は、現像容器22を備え、現像容器22内に現像剤としてトナーとキャリアを含む二成分現像剤が収容されている。また、現像容器22内には、感光体と対向する現像位置に現像剤を担持搬送する現像剤担持体としての現像スリーブ28が設けられており、現像スリーブ28上に担持された現像剤の穂を規制する穂切り部材29が設けられている。
【0025】
本実施形態にて、現像容器22の内部は、その略中央部が紙面に垂直方向に延在する隔壁27によって現像室23と攪拌室24に上下に区画されており、現像剤は現像室23及び攪拌室24に収容されている。
【0026】
攪拌室24及び現像室23には、現像剤攪拌・搬送手段として第一及び第二の搬送スクリュー25、26がそれぞれ配置されている。第二の搬送スクリュー26は、現像室23の底部に現像スリーブ28の軸方向に沿ってほぼ平行に配置されており、回転して現像室23内の現像剤を軸線方向に沿って一方向に搬送する。また、第一の搬送スクリュー25は、攪拌室24内の底部に第二の搬送スクリュー26とほぼ平行に配置され、攪拌室24内の現像剤を第二の搬送スクリュー26と反対方向に搬送する。このように、第一及び第二の搬送スクリュー25、26の回転による搬送によって、現像剤が隔壁27の両端部の開口部(即ち、連通部)11、12を通じて現像室23と攪拌室24との間で循環される。
【0027】
なお、第一の搬送スクリュー25は外径Φ20mm、軸径6mm、ピッチ25mmの形状で回転速度は650rpmに設定している。また、第二の搬送スクリュー26は外径Φ20mm、軸径6mm、ピッチ25mmの形状で回転速度は680rpmに設定している。
【0028】
本実施形態においては、現像容器22の感光体ドラム1に対向した現像領域に相当する位置には開口部があり、この開口部に現像スリーブ28が感光体ドラム方向に一部露出するように回転可能に配設されている。
【0029】
ここで、現像スリーブ28の直径は20mm、感光体ドラム1の直径は40mm、又、この現像スリーブ28と感光体ドラム1との最近接領域を約380μmの距離としている。こうすることによって、現像部に搬送した現像剤を感光体ドラム1と接触させた状態で、現像が行えるように設定されている。なお、この現像スリーブ28はアルミニウムやステンレスのような非磁性材料で構成され、その内部には磁界手段であるマグネットローラ28mが非回転状態で設置されている。このマグネットローラ28mは、現像部における感光体ドラム1に対向して配置された現像極S2と、更に、穂切り部材29に対向して配置された磁極S1を備える。更に、前記磁極S1、S2の間に配置された磁極N1、現像室23及び撹拌室24にそれぞれ対向して配置された磁極N2及びN3を有している。また、画像形成時における現像スリーブ28の回転数は492rpm(対感光ドラム周速比=180%)に設定されている。
【0030】
現像スリーブ28は、現像時に図示矢印方向(反時計方向)に回転する。現像スリーブ28は、前記穂切り部材29による磁気ブラシの穂切りによって層厚を規制された2成分現像剤を担持して、これを感光体ドラム1と対向した現像領域に搬送する。こうして、感光体ドラム1上に形成された静電潜像に現像剤を供給して潜像を現像する。
【0031】
前記穂切り部材である規制ブレード29は、現像スリーブ28の長手方向軸線に沿って延在した板状のアルミニウムなどで形成された非磁性部材29aと、鉄材のような磁性部材29bで構成される。規制ブレード29は、感光体ドラム1よりも現像スリーブ回転方向上流側に配設されている。そして、この穂切り部材29の先端部と現像スリーブ28との間を現像剤のトナーとキャリアの両方が通過して現像領域へと送られる。尚、規制ブレード29の現像スリーブ28の表面との間隙を調整することによって、現像スリーブ28上に担持した現像剤磁気ブラシの穂切り量が規制されて現像領域へ搬送される現像剤量が調整される。本実施形態においては、規制ブレード29によって、現像スリーブ28上の単位面積当りの現像剤コート量を30mg/cm2に規制している。なお、規制ブレード29と現像スリーブ28は、間隙を200〜1000μm、好ましくは400〜700μmに設定される。本実施形態では580μmに設定した。
【0032】
次に、本実施形態における現像剤の補給方法について図2及び図3を用いて説明する。
現像装置4の上部には、トナーとキャリアを混合した補給用二成分現像剤を収容するホッパー31が配置される。トナー補給手段を構成するこのホッパー31は、下部にスクリュー状の搬送部材32を備え、搬送部材32の一端が現像装置4の前端部に設けられた現像剤補給口30の位置まで延びている。
【0033】
画像形成によって消費された分のトナーは、搬送部材32の回転力と、現像剤の重力によって、ホッパー31から現像剤補給口30を通過して、現像容器22に補給される。このようにしてホッパー31から現像装置1に現像剤が補給される。
【0034】
現像剤の補給量は、搬送部材である補給スクリュー32の回転数によっておおよそ定められるが、この回転数は図示しないトナー補給量制御手段によって定められる。トナー補給量制御の方法としては二成分現像剤のトナー濃度を光学的或いは磁気的に検知するものや、感光体ドラム1上の基準潜像を現像してそのトナー像の濃度を検知する方法などさまざまな方法が知られている。いずれかの方法を適宜選択することが可能である。
【0035】
本発明における2値化手法について説明する。
階調再現の2値化手法としては多くの方法が提案されている。通常最も多く用いられる方法としてディザ法(Dither Method)がある。ディザ法は読み取った入力信号の1画素を、2値記録の1画素に対応させる。
【0036】
この様な2値化手法によるm×nの画素からなる基本網点(基本セル)のディザパターンを1ブロックとし、図7に示すようにこのブロックが複数ある場合に各ブロックを適当にずらして配置することにより、スクリーン角を持った網点ドットを作ることができる。ずらす値(変位ベクトル)をu=(a、b)とすると、得られるスクリーン角θは、
θ=tan^−1(b/a)
より求められる。
ここで出力する濃度が変わった場合、1ブロック内でのディザパターン内の基本網点の形状は変わってくるが、それを複数配置する時のスクリーン角は一定の角度で配置することで、出力物のスクリーン角の角度は一定に維持される。
また、各色に異なるスクリーン角を設ける効果としては、中間転写ベルトの速度ムラやレジストのズレにより、各色の位置がずれた場合でも色の一様性を保てること、更に、モアレ縞の発生を抑えることなどが挙げられる。
【0037】
以下、本実施例で使用した現像スリーブ28の条件について詳細に説明する。
図4は現像スリーブ28表面の拡大図である。本実施例の現像スリーブ28表面上には斜線状の溝を形成している。斜線状溝とは、現像スリーブの軸方向(スラスト方向)に対して傾斜した複数の溝によって形成されるものである。このような斜線状溝のスリーブによれば、現像剤が現像剤量をある一定量に規制する規制ブレード29を通過する際に、搬送溝が斜めでストレスを受けることがなくなるので、現像剤寿命を延ばすことが出来る。また、剤搬送溝が斜めのため規制ブレード29通過時の衝撃が緩和でき、衝撃による画像不良も改善される。
【0038】
上述のように本実施例で使用している画像形成装置はフルカラー作像システムであり、4台の現像装置4(4a、4b、4c、4d)を配置している。そこで本実施例においては図4に記載しているように4台の各現像スリーブで斜線状の溝を形成する際、溝の現像スリーブ28のスラスト方向に対する角度をそれぞれ変化させた。各々の現像スリーブ28(28a、28b、28c、28d)に対して、溝の角度θをそれぞれθa、θb、θc、θdとして溝を形成した。本実施例では各角度の一例として、θa=約35度、θb=約145度、θc=約15度、θd=約165度となるように溝の角度を調整し、各々異なる色のトナーの現像を行うようにした。
【0039】
ここで、本実施例で採用した溝スリーブの製造方法について説明する。本実勢例の溝スリーブは切削加工により作成する。円形形状に溝本数分の刃物が存在するダイスを用いることで、現像スリーブ表面を切削し溝スリーブを作成することができる。ここで、本実施例で採用した斜線状の溝の角度のつけ方について説明する。上記の切削加工機において現像ローラの回転軸両端を支持し、現像スリーブを回転させながらダイスに向かって長手方向に現像スリーブを押しだすことで、所定の角度をもった溝を切削することが可能となる。本実施例で採用している斜線状の角度を変えた溝スリーブは、上述の切削方法において現像スリーブの回転速度を変更し、現像スリーブを押しだし切削加工することで角度を変化させた溝スリーブの角度調整品を作成することができる。
【0040】
その結果、単色で各々の溝スリーブの角度方向にわずかに現れていたバンディングがフルカラー画像出力において、溝の角度が変わったことによってバンディングが強調されて出力されるようなことはなくなる。それに加え、各々の角度で現れていたバンディングが打ち消しあう効果が得られて、結果として最終的な出力画像においてバンディングを低減することが可能となった。
【0041】
ここで、本実施例で4台の現像装置がある中で、どの色にどの溝スリーブの現像器を採用するかについては、どの組み合わせを用いても最終的に各色の画像を転写工程後に重ね合わせた時にはバンディング低減の効果を得ることができる。
【0042】
ただし、現像スリーブの溝の角度の設定の1例として、各溝の角度は画像処理で使用するスクリーン処理の角度と対応させることが可能である。斜線状の溝のスラスト方向に対する角度を画像処理のスクリーンの角度から90度ずらすことでバンディングの発生をさらに目立たなくさせることが可能となる。通常、モアレ対策のため各色のスクリーン角は異なるように設定されているため、現像する画像のスクリーン角に対して直交するように溝を形成すれば、互いの溝の角度を異ならせることができる。加えて、スクリーン角と溝の角度によって生じるピッチムラを最小にでき、より画質の向上を図れる。尚、本実施例においては、溝の角度θが90度になるものは、スリーブの溝による搬送力が低下してしまうため、スクリーン角は0度のものは除外している。
【0043】
また、本実施例では上述のように斜線状の溝を形成した現像スリーブ28を採用したが、図6に示すようなあやめ状の溝を形成した現像スリーブを用いても同様の効果を得ることができる。あやめ状の溝とは、現像スリーブのスラスト方向に対して傾斜した複数の溝と、スラスト方向に対して反対側に傾斜した複数の溝とが交差するように形成されるものである。あやめ状の溝における互いに交差する溝の傾斜の角度は必ずしも互いに同一でなくてもよい。
【0044】
また、本実施例では、各現像スリーブの溝はスラスト方向に対してすべて傾斜する構成であったが、各色の現像装置の溝が重ならなければスラスト方向に対して平行の溝のものがあってもよい。また、各現像スリーブは全て溝加工されているものを例に説明したが、溝加工された現像スリーブを有する現像装置が少なくとも2つ以上有するものであれば本発明は適用することができる。例えば、一部の現像装置はブラスト処理された現像スリーブを用いた現像装置を用いてもよい。
【0045】
(実施例2)
実施例1記載の画像形成装置において、各現像器の溝の傾きを変えた場合、それぞれの現像器で現像剤の搬送性が異なってきてしまう。
【0046】
溝形状のスリーブの搬送性は溝の垂直方向に対して搬送力が働く。斜線状の溝の場合、図5に示すように溝と現像スリーブのスラスト方向からなる角度をθとした時、斜線状の溝の垂直方向に対してcosθ分の搬送力がスリーブの回転方向に働く。
【0047】
このため、斜線状の溝の傾きが変わると現像スリーブの搬送力が変わるために、現像スリーブ上に搬送される現像剤の量が変わってくる。
【0048】
現像スリーブ上の現像剤の量が変わると、現像特性が変わってきてしまう。 ここでいう現像特性は、現像スリーブと感光体ドラム間に所定の電界を印加したときのトナーの移動量を意味している。
【0049】
そのため、本実施例においては、複数の現像器をもつ系において斜線状の溝の角度が異なる現像器を持っていても現像特性の変わらない現像器を提供する。
【0050】
斜線状の溝の角度が変わっても現像スリーブの搬送力を変えないようにするためには、斜線状の溝の数を溝の角度に応じて変化させる。現像スリーブの搬送力は溝の数に比例するので、溝の角度が大きくなってくると、現像スリーブの回転方向の搬送力cosθ成分が小さくなってくるので、その分、溝の数を増加させる。これにより、溝の角度が変わっても搬送力を変化させない斜線形状の現像スリーブを提供することが可能となる。図5において溝の角度が変わった場合と溝の数について、モデル図を示している。
【0051】
このとき、現像スリーブの回転方向の現像剤の搬送力αは上述の(1)式α=Acosθ+Bであらわすことができる。
【0052】
ここで、Aは各溝における垂直方向の搬送力であり、溝の深さにより決まってくる。またBはスリーブ表面の粗さによる搬送力である。
【0053】
溝の深さはスリーブ表面からの深さが深い方がスリーブ表面の現像剤の搬送力が大きくなり、逆に溝の深さが浅い方がスリーブ表面の現像剤の搬送量は小さくなってくる。
【0054】
本実施例においては、搬送力をスリーブ時に搬送される現像剤の搬送量で換算している。上記のA,Bの設定として、スリーブ表面の粗さによる搬送力Bは溝がない状態でスリーブ上に搬送される現像剤の量、溝の垂直方向の搬送力Aはスラスト方向に溝を形成したときの現像剤の量からBの値をひいたときの値を採用した。
【0055】
本実施例ではA=20mg/cm2、B=10mg/cm2の値を使用した。
ただしこのA,Bは本実施例以外の別の手段で測定した搬送力を定義してもよい。
本実施例ではスリーブの搬送力αが一定となるように、溝の角度θが変化する場合は、溝の本数を変えて対応する。すなわち溝がスラスト方向に対してθ1が大きくなり、cosθ1が小さくなってきた場合は溝の本数N1を増やす(溝のピッチを小さくする)。一方、逆にスラスト方向に対して溝の角度θ2が小さくなり、cosθ2が大きくなった時は、溝の本数N2を減らしていく(溝のピッチを大きくする)。
【0056】
その結果、バンディングが低減しかつ、階調特性の優れた高画質の画像形成装置の提供が可能となる。上記方法の他に、色毎に溝の本数を変えずに溝の深さをかえることで搬送力のばらつきを抑制してもよい。
【0057】
また、本実施例においても上記では一例として斜線状の溝を形成した現像スリーブを採用したが、あやめ状の溝を形成した現像スリーブを用いても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
複写機、プリンタ、記録画像表示装置、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる。
【符号の説明】
【0059】
1 感光体ドラム(像担持体)
4 現像装置
22 現像容器
23 現像室
24 撹拌室
25、26 搬送スクリュー(現像剤撹拌・搬送手段)
28 現像スリーブ(現像剤担持手段)
30 現像剤補給口
31 トナーホッパー(補給手段)
32 搬送部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と対向する現像位置に現像剤を担持搬送する現像剤担持体を備え、前記像担持体に形成された静電潜像を現像する複数の現像装置と、を備え、前記複数の現像装置によって現像されたトナー像を重ねて記録材に画像形成する画像形成装置であって、
前記複数の現像装置は、前記現像剤担持体の表面に溝加工が施された現像装置を少なくとも2つ以上有しており、前記現像剤担持体の軸線に対する前記溝の角度が各現像装置によって異なっていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記溝加工が施された現像剤担持体の回転方向に対する搬送力の差が小さくなるように、前記現像剤担持体の溝と前記現像剤担持体の軸線方向とのなす角が小さいほど溝のピッチが広くなっていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記溝加工が施された現像剤担持体の回転方向に対する搬送力の差が小さくなるように、前記現像剤担持体の溝と前記現像剤担持体の軸線方向とのなす角が小さいほど溝の深さが浅くなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記溝の角度は、現像する画像のスクリーン角に対して直交する方向に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−97264(P2013−97264A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241442(P2011−241442)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】