説明

画像情報提供装置および画像情報提供方法

【課題】提供される画像情報から、ユーザが車両に生じている異常を容易に認識するができるように画像情報を作成する。
【解決手段】カメラ11a〜11dから出力される画像がマッピングされた三次元空間のモデルSMを視点変換することにより、車両周囲画像を作成する。視点変換を行う際には、車両Caに生じている異常の検出結果に基づいて、車両周囲画像に車両Caに生じている異常が含まれるように仮想視点の計算を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像情報提供装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、駐車中といったように、車両のユーザが車両から離れているような場合には、車両や車内の物品が盗まれたり、誤って車両を傷つけられまたは衝突されたりといったように、ユーザが認識し得ない種々の異常が車両に生じることがある。
【0003】
たとえば、特許文献1には、車両から離れているユーザに対して、車両の現況や異常発生状況の確認を行えるようにした車両監視装置が開示されている。この車両監視装置は、一定時間ごとに、車両において衝突や盗難等といった異常が生じているか否かを検出する。車両監視装置は、異常を検出した場合、車両の屋根に取り付けられた複数のカメラによって車両の外観を撮影することにより、複数の画像からなる画像データを取得し、この画像データをユーザの保有する携帯電話機に転送する。これにより、ユーザは携帯電話機の表示画面上で画像データを確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−317177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された手法によれば、複数のカメラから得られた画像のそれぞれがユーザに表示されるため、車両のどこに異常が生じているのかをユーザが素早く認識することが難しいといった不都合がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、提供される画像情報から、ユーザが車両に生じている異常を容易に認識するができるように画像情報を作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本発明は、画像情報としての車両周囲画像をユーザに提供する手法を提供する。かかる手法は、車両周囲の画像がマッピングされる三次元空間のモデルを視点変換することにより車両周囲画像を作成するものであり、視点変換を行う際には、車両に生じている異常の検出結果に基づいて、車両に生じている異常が車両周囲画像に含まれるように仮想視点の計算を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両に生じている異常という、ユーザの欲している視点から車両周囲画像が作成されるので、当該車両周囲画像から、車両に生じている異常をユーザが容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態にかかる画像情報提供装置の構成を模式的に示す説明図
【図2】本体装置1の構成を模式的に示すブロック図
【図3】カメラ11a〜11dの取り付け位置を示す説明図
【図4】第1の実施形態にかかる外部装置2の構成を模式的に示すブロック図
【図5】車両周囲画像Pacの作成概念を説明する説明図
【図6】仮想視点データの計算概念を説明する説明図
【図7】第1の実施形態にかかる車両周囲画像Pacの提示方法を示すフローチャート
【図8】第2の実施形態にかかる外部装置2の構成を模式的に示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態にかかる画像情報提供装置の構成を模式的に示す説明図である。この画像情報提供システムは、ユーザが車両Caから離れているような場合(例えば、駐車場への駐車中)において、車両Caに異常が生じた際に、ユーザに画像情報としての車両周囲画像Pacを提供するシステムである。ここで、車両周囲画像Pacは、仮想視点を適切に設定することにより、車両Caに生じている異常を含んた状態で車両Caを眺めたように作成される画像であり、その詳細については後述する。車両Caに生じる異常としては、不審者もしくは不審物が近づいたこと、ドアが無断で開けられたこと、窓ガラスが割られたこと、車内へ侵入されること、車両を傷つけられたこと、衝突されたことといったように、ユーザの了知し得ない車両に対する異常および異常が生じ得る可能性をいう。
【0011】
画像情報提供装置は、車両Caに搭載される本体装置1を主体に構成されている。本体装置1は、異常を検出する機能、車両周囲画像を作成する機能および車両周囲画像を送信する機能を有している。
【0012】
本体装置1は、ユーザが保有する外部装置2と通信可能に構成されている。外部装置2は、画像情報を受信する機能およびその画像情報を提示する機能を有しており、例えば、携帯電話や、通信機能付きの携帯情報端末(PAD:Personal Digital Assistant)などを用いることができる。本体装置1は、外部装置2との間で情報を直接的に送受信してもよいし、本体装置1と外部装置2との間に通信サーバ3を設けてこの通信サーバ3を介して外部装置2との間で情報を送受信してもよい。
【0013】
図2は、本体装置1の構成を模式的に示すブロック図である。本体装置1は、車両周囲画像Pacを作成し、作成した車両周囲画像Pacを外部装置2に送信する。本体装置1は、制御ユニット10、撮影部11、異常検出部12、通信部13および記憶部14を主体に構成されている。
【0014】
制御ユニット10は、装置全体を統合的に制御する機能を担っており、制御プログラムに従って動作することにより、車両周囲画像Pacの作成および送信を行う。制御ユニット10としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。制御ユニット10には、撮影部11、異常検出部12、通信部13および記憶部14がそれぞれ接続されている。
【0015】
撮影部11は、車両Caからその周囲を撮影することにより画像を出力する撮影手段であり、それぞれが車体の周囲に配置された複数のカメラ11a〜11dによって構成されている。複数のカメラ11a〜11dは、それぞれが180°程度の画角を持つ広角カメラであり、それぞれの撮影方向がオフセットするように設定されている。撮影部11は、これらのカメラ11a〜11dにより得られる画像により、車両周囲の全範囲をカバーする画像を得ることができる。
【0016】
図3に示すように、個々のカメラ11a〜11dは、例えば、車両Caのリア、左ドアミラー、車両Caのフロント、右ドアミラーの合計4箇所にそれぞれ取り付けられている。車両Caのリアに取り付けられたカメラ11aは、車両後方を撮影し、左ドアミラーに取り付けられたカメラ11bは、車両左側方を撮影する。また、車両Caのフロントに取
り付けられたカメラ11cは、車両前方を撮影し、車両Caの右ドアミラーに取り付けられたカメラ11dは、車両右側方を撮影する。
【0017】
個々のカメラ11a〜11dは、イメージセンサ(例えば、CCDまたはCMOSセンサ等)やA/D変換器を内蔵している。各カメラ11a〜11dは、制御ユニット20からの画像の読み込み動作に対応して撮影を行い、撮影された画像に相当する画像データを制御ユニット10に出力する。
【0018】
異常検出部12は、ユーザ不在の状態の車両に生じる異常と、その異常が生じている位置とを検出する(異常検出手段)。この異常検出部12としては、物体検出センサまたは衝撃検出センサ、あるいは、これらの両方を用いることができる(本実施形態において、異常検出部12は、物体検出センサおよび衝撃検出センサの双方から構成される)。異常検出部12による検出結果は、制御ユニット10に入力される。
【0019】
物体検出センサは、撮影部11と同様に、センサ検知範囲が車両周囲の全範囲をカバーするように、車室内または車室外に一つ以上配置されている。物体検出センサは、例えば、車両周囲に不審物(人間や動物など)が所定時間存在することを条件に、車両に異常が生じていること、および、車両に対する異常の位置および方向を検出する。物体検出センサとしては、音波(例えば、超音波)、電波(例えば、ミリ波)、レーザ(例えば、赤外線)を利用する周知のセンサを用いることができる。
【0020】
衝撃検出センサは、センサ検知範囲が車両周囲の全範囲をカバーするように、車両の側面部、前面部や後面部といった任意の位置に複数取り付けられている。衝撃検出センサは、車両に対する衝撃、具体的には、車両Caへの衝突や、車両Caに傷がつけられたりしたことを条件に、車両に異常が生じていること、および、車両に対する異常の位置を検出する。衝撃検出センサとしては、センサ内部にある接点が衝撃によってスイッチオンとされるタイプ(振り子タイプ)や、一対の極板間に存在する誘電体が衝撃で移動することにより、その静電容量の変化を読み取るタイプ(静電容量タイプ)を用いることができる。
【0021】
通信部13は、本体装置1が外部装置2または通信サーバ3と通信する機能を担っている(通信手段)。通信部13による装置間の通信としては、移動通信機、携帯電話または自動車電話といった公衆通信網を用いる手法を挙げることができる。ただし、これ以外にも、無線LAN(Local Area Network)や、狭域通信を利用して手法を単独で、あるいは、組み合わせて利用することができる。
【0022】
記憶部14は、制御ユニット10からの格納指示にともない、車両周囲画像Pacを格納する機能を担っている(記憶手段)。格納されている車両周囲画像Pacは、制御ユニット10により読み出されることができる。記憶部14としては、例えば、装置に対して固定的に設置されるハードディスク(HD:Hard Disk)装置などを用いることができる。な
お、記憶部14として、フラッシュメモリといった半導体メモリを搭載した各種リムーバブルメディアなどを用いてもよい。
【0023】
再び図2を参照するに、制御ユニット10は、これを機能的に捉えた場合、画像データ処理部10aと、異常判断部10bと、マッピング部10cと、仮想視点計算部10dと、視点変換部10eと、合成部10fとを有している。
【0024】
画像データ処理部10aは、撮影部11を構成する4つのカメラ11a〜11dから画像データをそれぞれ読み込む。画像データ処理部10aは、読み込んだ画像データのそれぞれをマッピング部10cに対して出力する。なお、画像データ処理部10aは、必要に応じて、読み込んだ画像データのそれぞれに種々の画像処理を施した上で、マッピング部
10cに出力することができる(処理手段)。
【0025】
異常判断部10bは、異常検出部12を構成する物体検出センサおよび衝撃検出センサからセンサ信号をそれぞれ読み込む。異常判断部10bは、読み込んだセンサ信号に基づいて、車両Caに異常が発生しているか否かを判断する。車両Caに異常が発生している場合、異常判断部10bは、異常検出部12による検出結果を仮想視点計算部10dに出力する。
【0026】
マッピング部10cは、4つのカメラ11a〜11dから得られる画像データのそれぞれを処理対象として、各カメラ11a〜11dの性能(諸元)や取り付けパラメータに基づいて、画像データを構成する画素毎に投影マッピングを行う(マッピング手段)。マッピングされる対象は、車両位置を座標系の基準とする三次元空間のモデル(以下「三次元空間モデルSM」という)である。投影マッピングにより作成された空間データは、視点変換部10eに出力される。
【0027】
仮想視点計算部10dは、三次元空間における仮想視点の位置および方向を計算する(仮想視点計算手段)。本実施形態における仮想視点の位置および方向は、車両Caに生じている異常(あるいはその一部)が車両周囲画像Pacに含まれるように計算される。すなわち、仮想視点計算部10dは、異常検出部12が検出した異常の位置と、各カメラ11a〜11dの取り付け位置との関係に基づいて上記の計算を行う。計算された仮想視点の位置および方向に相当する仮想視点データは、視点変換部10eに出力される。
【0028】
視点変換部10eは、仮想視点データに基づいて、空間データを視点変換することにより、車両周囲画像Pacを作成する(視点変換手段)。作成された車両周囲画像Pacは、仮想視点データによって規定される仮想視点の位置および方向から車両Caおよびその周囲を撮影したような画像となっており、この画像には、車両Caに生じている異常が含まれるようになっている。作成された車両周囲画像Pacは、合成部10fに出力される。
【0029】
合成部10fは、仮想視点データによって規定される仮想視点の位置および方向から車両Caを撮影したような車両の形状モデルPcaを作成する。車両の形状モデルPcaは例えばCG(Computer Graphics)であり、その基本となるデータは、例えば、ROMなどに
予め格納されている。合成部10fは、車両周囲画像Pacに、作成された車両の形状モデルPcaを重畳することにより、最終的な車両周囲画像Pacを作成する(合成手段)。作成された車両周囲画像Pacは、通信部13により、外部装置2へと送信される。
【0030】
図4は、外部装置2の構成を模式的に示すブロック図である。外部装置2は、本体装置1から送信される車両周囲画像Pacを受信し、この受信した車両周囲画像Pacをユーザに提示(表示)する。外部装置2は、制御ユニット20と、入力部21と、表示部22と、通信部23と、記憶部24とを有している。
【0031】
制御ユニット20は、装置全体を統合的に制御する機能を担っており、制御プログラムに従って動作することにより、車両周囲画像Pacの受信および表示を行う。制御ユニット20としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。制御ユニット20には、入力部21、表示部22、通信部23および記憶部24がそれぞれ接続されている。
【0032】
入力部21は、例えば、キーボード、表示部22上に付設されたタッチパネル、スイッチ等、あるいはこれらの組み合わせで構成されている。ユーザは、キーボード、タッチパネル、スイッチの操作を通じて、各種の入力操作や選択操作を行うことができる。例えば、ユーザは、入力部21を操作することにより、車両周囲画像Pacの作成を要求するリク
エスト信号を本体装置1に送信することで、車両周囲画像Pacの作成を本体装置1に依頼することができる。この場合、本体装置1により作成された車両周囲画像Pacは、外部装置2が受信することでこれを表示部22に表示してもよいし、必要な場所に格納しておいてもよい。車両周囲画像Pacの格納場所としては、本体装置1の記憶部14であってもよいし、外部装置2の記憶部24としてもよいし、通信サーバ3であってもよい。これにより、ユーザが自分の希望するタイミングで車両周囲画像Pacを取得できたり、事後的に車両周囲画像Pacを取得することができる。
【0033】
表示部22は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置であり、制御ユニット20によって制御され、受信した車両周囲画像Pacをユーザに表示する。
【0034】
通信部23は、外部装置2が本体装置1または通信サーバ3と通信するため機能を担っている。通信部23による装置間の通信としては、移動通信機、携帯電話または自動車電話といった公衆通信網を用いた手法を挙げることができる。ただし、これ以外にも、無線LAN(Local Area Network)や、狭域通信を利用してもよい。
【0035】
記憶部24は、制御ユニット20からの格納指示にともない、車両周囲画像Pacを格納する機能を担っている(記憶手段)。格納されている車両周囲画像Pacは、制御ユニット20により読み出されることができる。記憶部24としては、例えば、ハードディスク(HD:Hard Disk)装置などを用いることができる。なお、記憶部24として、フラッシ
ュメモリといった半導体メモリを搭載した各種リムーバブルメディアなどを用いるようにしてもよい。
【0036】
図5は、車両周囲画像Pacの作成概念を説明する説明図である。同図において、(a)は、三次元空間モデルSMを、仮想的に示す車両Bcaの斜め前方から眺めた図であり、(b)は、三次元空間モデルSMを、仮想的に示す車両Bcaの前方から眺めた図である。三次元空間モデルSMは、お椀のような半球形状の曲面で構成されており、凹面形状にラウンドする底面領域と、概ね垂直面からなる円筒形状の側面領域とで構成されている。三次元空間モデルSMの座標系の基準は、仮想的な車両Bcaを重畳的に示すように、車両Caの位置と対応する、底面領域の中央部(底部)に設定されている。
【0037】
三次元空間モデルSMは、車両Bcaの後方に対応する領域SMaと、車両Bcaの左側方に対応する領域SMbと、車両Bcaの前方に対応する領域SMcと、車両Bcaの右側方に対応する領域SMdとで構成されている。マッピング部10cは、車両Caのリアに取り付けられたカメラ11aからの画像データを領域SMaにマッピングし、車両Caの左ドアミラーに取り付けられたカメラ11bからの画像データを領域SMbにマッピングする。また、マッピング部10cは、車両Caのフロントに取り付けられたカメラ11cからの画像データを領域SMcにマッピングし、車両Caの右ドアミラーに取り付けられたカメラ11dからの画像データを領域SMdにマッピングする。
【0038】
なお、三次元空間モデルSMの形状は、曲面形状であることに限らない。三次元空間モデルSMは、複数の平面によって構成してもよい、平面と曲面との組み合わせによって構成してもよい。
【0039】
図5(c)は、車両周囲画像Pacの説明図である。同図に示す車両周囲画像Pacは、同図(a)、(b)の矢印Aに示すように、車両Bcaの右側上方位置から車両Bcaを見下ろすように設定された仮想視点と、空間データとに基づいて視点変換部10eが車両周囲画像Pacを作成し、この車両周囲画像Pacに合成部10fが車両の形状モデルPcaを合成することにより作成される。矢印Aのように仮想視点を設定した場合、車両周囲画像Pacは、車両Caの左側に対応する画像データを含んで作成される。一方で、矢印Aのように仮
想視点を設定した場合、車両周囲画像Pacには、車両Caの右側に対応する画像データは含まれない。
【0040】
たとえば、図3に示すように、車両Caの左前方に高さ成分を持つ立体物Obが存在するとする。この立体物Obは、図5(a),(b)に示すように、三次元空間モデルSMにおいて立体物Pobで示す位置にマッピングされる。この場合、矢印Aに示すように仮想視点を設定することにより、立体物Pobは、車両周囲画像Pacに含まれることとなる。
【0041】
一方、図5(b)の矢印Bに示すように、立体物Obの存在する位置、すなわち、車両Bcaの左側位置から車両Bcaを見下ろすように仮想視点を設定した場合には、車両周囲画像Pacには立体物Pobが含まれない、すなわち、表示されない場合がある。車両Caに異常が生じている場合、作成する車両周囲画像Pacには、少なくとも異常の一部が含まれるように仮想視点を設定する必要がある。
【0042】
図6は、仮想視点の計算概念を説明する説明図である。以下、仮想視点計算部10dによる仮想視点の計算、すなわち、三次元空間における仮想視点の位置および方向の計算方法について説明する。この計算方法には、4つのカメラ11a〜11dのうち一つのカメラ11a〜11dから得られる画像データのみに異常が写り込んでいる場合に適用される第1の手法と、複数のカメラ11a〜11dから得られる画像データに異常が写り込んでいる場合に適用される第2の手法とがある。以下の説明では、車両Caに生じている異常を車両Caの近傍に存在する立体物(例えば、不審者)Obと想定する。
【0043】
まず、第1の手法について説明する。仮想視点計算部10dは、異常検出部12の検出結果に基づいて、車両Caに対する立体物Obの位置を認識する。例えば、図6(a)に示す位置に立体物Obが存在する場合、この立体物Obは、車両Caの左ドアミラーに取り付けられたカメラ11bから得られる画像データにしか写り込まない。
【0044】
立体物Obの地面座標をA、立体物Obを写すカメラ11bの地面座標をBとし、地面座標Aを通過しかつ線分ABと交差する垂線をCDとする。演算の前提となる座標は、車両Caを中心に考えている。この場合、仮想視点の方向(ベクトル)は、座標Cからほぼ座標Aに向かうベクトル30aから、座標Bからほぼ座標Aに向かうベクトル30cを経由して、座標Dからほぼ座標Aに向かうベクトル30eの範囲で、任意のベクトルを一つ選択することができる。当然、仮想視点のベクトルは、ベクトル30aからベクトル30cまでの間に存在し、ほぼ座標Aに向かうベクトル30bであっもよいし、ベクトル30cからベクトル30eまでの間に存在し、ほぼ座標Aに向かうベクトル30dであっもよい。換言すれば、仮想視点のベクトルは、垂線CDによって確定される領域のうち座標Bを含む領域内のいずれかの地点を始点として座標Aへと向かう任意のベクトルを選択することができる。
【0045】
三次元空間モデルSMにおいて、立体物Obは、カメラ11a〜11dの位置から車両外側に向かって放射状にマッピングされる。そのため、前述のような手法で仮想視点のベクトルを設定することにより、車両周囲画像Pacを通じて車両Caに生じている異常を把握する上でユーザの理解を容易とする効果がある。
【0046】
つぎに、第2の手法について説明する。仮想視点計算部10dは、異常検出部12の検出結果に基づいて、車両Caに対する立体物Obの位置を認識する。例えば、図6(b)に示す位置に立体物Obが存在する場合、この立体物Obは、車両Caの左ドアミラーに取り付けられたカメラ11bおよび車両Caのリアに取り付けられたカメラ11aから得られる画像データにそれぞれ写り込む。
【0047】
まず、立体物Obの地面座標をEとし、一方のカメラである左ドアミラーのカメラ11bの地面座標をFとするとともに、他方のカメラであるリアのカメラ11aの地面座標をIとする。そして、地面座標Eを通過しかつ線分EFと交差する垂線をGHとする。また、地面座標Eを通過しかつ線分EIと交差する垂線をJKとする。この場合、仮想視点の方向(ベクトル)は、座標Hからほぼ座標Eに向かうベクトル40aから、座標Iからほぼ座標Eに向かうベクトル、座標Fからほぼ座標Eに向かうベクトル40cを経由して、座標Jからほぼ座標Eに向かうベクトル40dの範囲で、任意のベクトルを一つ選択することができる。当然、仮想視点のベクトルは、ベクトル40aから、座標Iからほぼ座標Eに向かうベクトルまでの間に存在し、ほぼ座標Eに向かうベクトル40bであっもよい。換言すれば、仮想視点のベクトルは、垂線JKによって確定される領域のうち座標Iを含む領域内であって、かつ垂線GHによって確定される領域のうち座標Fを含む領域内のいずれかの地点を始点として座標Eへと向かう任意のベクトルを選択することができる。
【0048】
また、仮想視点の計算において、ベクトル(方向)とともに設定する仮想視点の位置は、作成する車両周囲画像Pacに車両の形状モデルPcaの少なくとも一部が含まれるように設定することが好ましい。このように仮想視点の位置を設定することにより、車両Caと立体物Obとの位置関係をユーザが把握しやすいという効果を得ることができる。なお、仮想視点の高さ方向の位置については、任意に設定することができる。
【0049】
なお、異常検出部12として衝撃検出センサを用いる場合には、車両Caの前方、後方といったように衝撃が与えられた部位を特定することはできるものの、衝撃を与えた立体物Obの位置を具体的に把握することは困難であることがある。そこで、衝撃検出センサによる検出範囲毎に、車両Caに対する立体物Obの位置を予め設定しておき、これに基づいて立体物Obの位置を決定してもよい。例えば、車両Caのフロントに取り付けられた衝撃検出センサによって異常が検出された場合には、立体物Obの位置を車幅中心線上かつ車両Caから50cm離間した位置とするといった如くである。
【0050】
図7は、第1の実施形態にかかる車両周囲画像Pacの提示方法を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、本体装置1の制御ユニット10によって実行される。
【0051】
まず、ステップ1(S1)において、画像データ処理部10aは、撮影部11を構成する個々のカメラ11a〜11dから画像データをそれぞれ読み込む。そして、ステップ2(S2)において、異常判断部10bは、異常検出部12を構成する物体検出センサおよび衝撃検出センサからセンサ信号を読み込む。
【0052】
ステップ3(S3)において、異常判断部10bは、異常検出部12からのセンサ信号に基づいて、車両Caに異常が生じているか否かを判断する。ステップ3において肯定判定された場合、すなわち、異常が発生している場合には、ステップ4(S4)に進む。一方、ステップ3において否定判定された場合、すなわち、異常が発生していない場合には、ステップ1の処理に戻る。
【0053】
ステップ4において、制御ユニット10が所定の制御信号を通信部13に出力することにより、通信部13は、トリガー信号を外部装置2に対して送信する。このトリガー信号は、ユーザに対して車両Caに異常が生じたことを通知するための信号である。外部装置2において、通信部23がトリガー信号を受信した場合、制御ユニット20は、例えば、表示部22を制御することにより、その旨を表示するとともに、車両周囲画像Pacの作成を行うか否かの選択を表示する。制御ユニット20は、入力部21の操作信号を通じて、車両周囲画像Pacの作成を要求することを認識した場合には、所定の制御信号を通信部23に出力する。そして、通信部23は、車両周囲画像Pacの作成を要求するリクエスト信
号を本体装置1に対して送信する。一方、制御ユニット20は、入力部21の操作信号を通じて、車両周囲画像Pacの作成を要求しないことを認識した場合、または、ユーザによる入力部21の操作が所定時間無いことを判断した場合には、リクエスト信号の送信を通信部23へ指示しない。
【0054】
ステップ5(S5)において、制御ユニット10は、通信部13が外部装置2からリクエスト信号を受信したか否かを判断する。ステップ5において肯定判定された場合、すなわち、リクエスト信号を受信した場合には、ステップ6(S6)に進む。一方、ステップ5において否定判定された場合、すなわち、リクエスト信号を受信していない場合には、ステップ1の処理へ戻る。なお、外部装置2からリクエスト信号が応答性よく返信されない場合もあるので、ステップ5における否定判定の回数が所定回数以上となった場合に、ステップ1の処理に戻るようにしてもよい。
【0055】
ステップ6において、マッピング部10cは、カメラ11a〜11dから得られた個々の画像データに基づいてマッピング処理(投影マッピング)を行うことにより、空間データを作成する。
【0056】
ステップ7(S7)において、仮想視点計算部10dは、異常検出部12の検出結果に基づいて前述の演算を行うことにより、仮想視点の位置および方向を計算し、これにより、仮想視点データを作成する。
【0057】
ステップ8(S8)において、視点変換部10eは、空間データと、仮想視点データとに基づいて、車両周囲画像Pacを作成する。そして、ステップ9(S9)において、合成部10fは、車両周囲画像Pacに車両の形状モデルPcaを重畳することにより(重畳処理)、最終的な車両周囲画像Pacを作成する。
【0058】
ステップ10(S10)において、制御ユニット10は、作成された車両周囲画像Pacの送信指示を通信部13に対して出力する。通信部13は、当該指示に応じて、車両周囲画像Pacを外部装置2に対して送信する。外部装置2において、通信部23が車両周囲画像Pacを受信した場合には、制御ユニット20は、例えば、表示部22を制御することにより、車両周囲画像Pacを表示する。
【0059】
このように本実施形態によれば、画像情報提供装置は、カメラ11a〜11dから出力される画像がマッピングされる三次元空間のモデルを視点変換することにより車両周囲画像Pacを作成する。ここで、視点変換を行う際には、車両Caに生じている異常の検出結果に基づいて、車両周囲画像Pacに車両Caに生じている異常が含まれるように仮想視点の計算を行う。
【0060】
かかる構成によれば、車両Caに生じている異常という、ユーザの欲している視点から車両周囲画像Pacが作成される。これにより、車両周囲画像Pacを見た際にユーザが車両Caに生じている異常を容易に認識することができる画像情報を作成することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態において、車両周囲画像Pacは、ユーザが保有する外部装置2に送信されている。かかる構成によれば、ユーザにとって理解しやすい状態の画像情報(車両周囲画像Pac)が外部装置2に送信されるので、車両Caから離れた場所にいるユーザであっても、外部装置2を通じて車両周囲画像Pacを見た際に、車両Caに生じている異常を容易に認識することができる。
【0062】
また、本実施形態では、検出した異常の位置と、カメラ11a〜11dの車両Caへの
取り付け位置とに基づいて、仮想視点の計算が行われる。かかる構成によれば、車両Caに生じている異常が車両周囲画像Pac内に含まれる仮想視点を特定することができる。これにより、ユーザにとって認識し易い車両周囲画像Pacの作成が可能となる。
【0063】
具体的には、例えば、車両Caに生じている異常が複数のカメラ11a〜11dのうち一のカメラ11bのみの撮影範囲に含まれる場合を想定する。この場合には、垂線CDによって確定される領域のうち座標Bを含む領域内のいずれかの地点を始点として座標Aへと向かう任意のベクトルを計算することにより、仮想視点の計算を行う。かかる構成によれば、車両Caに生じている異常が車両周囲画像Pac内に含まれる仮想視点を特定することができる。これにより、ユーザにとって認識し易い車両周囲画像Pacの作成が可能となる。
【0064】
また、例えば、車両Caに生じている異常が複数のカメラ11a〜11dのうち二つのカメラ11a,1bの撮影範囲のそれぞれに含まれる場合を想定する。この場合、垂線JKによって確定される領域のうち座標Iを含む領域内であって、かつ垂線GHによって確定される領域のうち座標Fを含む領域内のいずれかの地点を始点として座標Eへと向かう任意のベクトルを計算することにより、仮想視点の計算を行う。かかる構成によれば、車両Caに生じている異常が車両周囲画像Pac内に含まれる仮想視点を特定することができる。これにより、ユーザにとって認識し易い車両周囲画像Pacの作成が可能となる。
【0065】
また、本実施形態において、異常の検出とタイミング的に対応して、トリガー信号が外部装置2に送信される。かかる構成によれば、異常が生じるたびに車両周囲画像Pcaを外部装置2に送信するのではなく、第1次的に、トリガー信号が外部装置2送信される。これにより、車両周囲画像Pcaの作成を要求するか否かをユーザに確認することができるので、ユーザの判断で車両周囲画像Pcaの送信を決定することができる。これにより、ユーザが希望しないシーンで車両周囲画像Pcaが送信されるといった状況を抑制することができ、不要な通信コストの発生を抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態において、マッピング部10c、仮想視点計算部10d、視点変換部10e、合成部10fおよび通信部13は、外部装置2と独立した本体装置1に含まれている。これにより、本体装置1側にて車両周囲画像Pcaを作成することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、車両Caに異常が生じている場合に、本体装置1と外部装置2との間で車両周囲画像Pacのやりとりを行っている。しかしながら、外部装置2を通じてユーザが任意のタイミングでリクエスト信号を送信した場合に、本体装置1と外部装置2との間で車両周囲画像Pacのやりとりを行ってもよい。この場合、ユーザは、リクエスト信号とともに、あるいは、リクエスト信号そのものとして、仮想視点の位置および方向を任意に指定してもよい。なお、仮想視点の位置および方向をユーザに指定させる場合には、仮想視点の位置および方向の候補を予め複数用意しておき、複数の候補の中からユーザに選択させればよい。これにより、ユーザが車両Caから離れた場所にいる場合であっても、ユーザの希望する仮想視点から作成された車両周囲画像Pacを、ユーザの希望するタイミングで提供することが可能となる。
【0068】
また、本体装置1と、外部装置2とがそれぞれ自己位置を検出する機能を備えている場合には、以下に示す通信形態を採用してもよい。具体的には、本体装置1が外部装置2の位置情報を取得した場合、本体装置1は、外部装置2が狭域通信可能なエリアにいる場合には狭域通信を選択し、一方、外部装置がそのエリアにいない場合には公衆通信網を選択する。このように、本体装置1の通信部13が、外部装置2との通信経路を複数有して場合には、外部装置2との位置関係に応じて通信経路を選択してもよい。これにより、適切な通信経路を選択することにより、通信コストの低減を図ることができる。
【0069】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態にかかる外部装置2の構成を模式的に示すブロック図である。本実施形態にかかる画像情報提供装置が、第1の実施形態のそれと相違する点は、外部装置2自身が車両周囲画像Pacを作成することにある。この場合、本体装置1において、制御ユニット10は、マッピング部10cから合成部10fまでの各機能を省略することができる。第1の実施形態と共通する点については説明を省略することとし、以下、相違点を中心に説明を行う。
【0070】
本実施形態において、外部装置2の制御ユニット20は、これを機能的に捉えた場合、マッピング部20a、仮想視点計算部20b、視点変換部20cおよび合成部20dを有している。これらの機能は、第1の実施形態に示す本体装置1におけるマッピング部10c、仮想視点計算部10d、視点変換部10eおよび合成部10fと同様の機能を担っている。すなわち、制御ユニット20は、マッピング部10cから合成部10fの各機能により、所定の仮想視点を基準とした車両周囲画像Pacを作成することができ、また、自ら作成した車両周囲画像Pacを表示部22に表示することができる。
【0071】
制御ユニット20は、ユーザの操作を通じて入力部21から車両周囲画像Pacの作成要求を認識すると、これにともない通信部23がリクエスト信号を本体装置1に対して送信する。本体装置1において、通信部13がリクエスト信号を受信すると、制御ユニット10(画像データ処理部10a)は、個々のカメラ11a〜11dにより撮影された画像データを読み込む。そして、通信部13は、読み込んだ画像データを外部装置2に対して送信する。そして、外部装置2において、通信部23が画像データを受信した場合には、制御ユニット20は画像データのそれぞれに基づいて車両周囲画像Pacを作成する。
【0072】
この場合、車両周囲画像Pacを作成する上で必要となる仮想視点は、予め設定された基準方向および基準位置を用いてもよいし、車両周囲画像Pacの取得要求を認識した際に、ユーザに仮想視点の位置および方向を指定させてもよい。
【0073】
また、外部装置2は、受信した画像データをもとに、ユーザによる入力部21の操作を通じて仮想視点の位置および方向を適宜変更さることにより、車両周囲画像Pacの仮想視点を適宜変更してもよい。
【0074】
一方、本体装置1において、制御ユニット10が外部装置2からリクエスト信号を受信した場合には、制御ユニット10(異常判断部10b)は、異常検出部12を構成する物体検出センサおよび衝撃検出センサからセンサ信号を読み込んでもよい。この場合、異常判断部10bは、異常検出部12からのセンサ信号に基づいて、異常が発生しているか否かを判断する。異常判断部10bが車両Caに異常が生じていると判断した場合には、画像データ処理部10aは、通信部23を介して各画像データとともに異常検出部12の検出結果を外部装置2に送信する。これにより、外部装置2は、異常検出部12の検出結果および画像データに基づいて、車両Caに生じている異常が含まれるように車両周囲画像Pを作成することができる。
【0075】
このように本実施形態において、通信部13は、外部装置2と独立した本体装置1に含まれており、マッピング部20a、仮想視点計算部20b、視点変換部20cおよび合成部10fは、外部装置2に含まれている。この場合、本体装置1は、外部装置2からリクエスト信号を受信した場合に、通信部13が外部装置2に対してカメラ11a〜11dから出力される画像データのそれぞれを送信する。
【0076】
かかる構成によれば、画像データを受信さえすれば、本体装置1との通信を必要とする
ことなく、外部装置2により車両周囲画像Pacを作成することができる。当然、外部装置2はユーザが保持する装置であるため、車両周囲画像Pacの作成においては、入力部21の操作を通じて、任意に仮想視点を設定することも可能である。これにより、ユーザの希望する仮想視点の車両周囲画像Pacを作成することができるので、認識が容易な車両周囲画像Pacを提供することができる。
【0077】
また、本実施形態において、外部装置2からリクエスト信号を受信したタイミングにおいて異常が検出される場合には、カメラ11a〜11dから出力される画像データとともに、異常検出の検出結果が外部装置2に送信される。かかる構成によれば、異常検出の検出結果を参照することにより、外部装置2が、車両Caに生じている異常を含む車両周囲画像Pacを作成することが可能となる。これにより、車両周囲画像Pacを見た際にユーザが車両Caに生じている異常を容易に認識することができる画像情報を作成することが可能となる。
【0078】
なお、前述のように、外部装置2自身が本体装置1から送信される画像データに基づいて車両周囲画像Pacを作成する場合には、本体装置1は、以下に示す手法にて画像データを送信することもできる。
【0079】
第1の手法は、異常が写り込んでいる画像データを優先的に送信する手法である。本体装置1において、画像データ処理部10aは、異常判断部10bの判断結果に基づいて、各カメラ11a〜11dから得られる画像データのそれぞれを、異常が写り込んでいる画像データと、異常が写り込んでいない画像データとに分類する。つぎに、画像データ処理部10bは画像データの送信を通信部13に依頼する。この場合、送信部13は、異常が写り込んでいる画像データを外部装置2に優先的に送信し、その後、残余の画像データである、異常が写り込んでいない画像データを外部装置2に送信する。一方、外部装置2の制御ユニット20は、通信部23を介して画像データを受信すると、前述の通り、車両周囲画像Pacを作成する。この場合、制御ユニット20は、車両周囲画像Pacの作成の前に、優先的に送られた画像データ、すなわち、異常が写り込んでいる画像データを表示部22に表示してもよい。これにより、緊急度の高い画像データをいち早くユーザに表示することができる。
【0080】
第2の手法は、異常が写り込んでいない画像データのデータ容量を、異常が写り込んでいる画像データのデータ容量よりも小さくして送信する手法である。例えば、本体装置1において、画像データ処理部10aは、各カメラ11a〜11dから得られる画像データのそれぞれを、異常が写り込んでいる画像データと、異常が写り込んでいない画像データとに分類する。つぎに、画像データ処理部10aは、異常が写り込んでいない画像データを処理対象として、例えば、カメラ11a〜11dからの出力データの解像度よりも解像度が低くなるような処理を行い、画像データのデータ容量が小さくする。そして、画像データ処理部10aは、異常が写り込んでいない画像データ(データ容量が小さい画像データ)、および、異常が写り込んでいる画像データのそれぞれを通信部13を介して外部装置2に送信する。これにより、画像データの送信時のデータ容量を低く抑えることができるので、通信コストの低減を図ることができる。
【0081】
第3の手法は、送信対象となる各画像データのうち、表示時に不鮮明となる画像データについては送信しない手法である。例えば、夜間、車両の周囲に街灯が少ないといったように照度が不足する状況において車両周囲画像Pacを作成することを考える。このケースでは、各画像データから得られる画像(表示画像)がそもそも不鮮明となる。そのため、これらの画像データに基づいて車両周囲画像Pacを作成したとしても、車両周囲の状況の認識が難しく、車両周囲画像Pacからユーザが得られる情報は少ない。そこで、本体装置1において、画像データ処理部10aは、各カメラ11a〜11dから出力される画像デ
ータのそれぞれを処理対象として、画像データの鮮明度を判断する。鮮明度の判断手法としては、例えば、画像データを構成する全画素を対象に濃度値のヒストグラムを作成し、このヒストグラムを参考に鮮明度を判断するといった如くである。画像データ処理部10aは、予め設定された基準値と鮮明度とを比較し、鮮明度が低い画像データについては、外部装置2への送信候補からはずし、鮮明度が高い画像データのみを外部装置2へ送信する。かかる構成によれば、画像データの送信時のデータ容量を低く抑えることができるので、通信コストの低減を図ることができる。
【0082】
なお、上述した第1の手法から第3の手法は、それぞれ単独で用いることもできるが、これらを組み合わせて行ってもよい。
【0083】
また、第2の実施形態に示す手法では、外部装置1が車両周囲画像Pacを作成する関係上、本体装置1の制御ユニット10が車両周囲画像Pacを作成する機能(マッピング部10c〜合成部10f)を備えていない。しかしながら、車両周囲画像Pacを作成する機能を備えない外部装置1との間でも、車両周囲画像Pacのやりとりを可能とするため、第1の実施形態と同様に、本体装置1の制御ユニット10がマッピング部10c〜合成部10fを備えていてもよい。この場合、本体装置1は、通信相手が車両周囲画像Pacを作成する機能を有する外部装置1である場合には、画像データ(必要に応じて異常)を送信し、通信相手が車両周囲画像Pacを作成する機能を有しない外部装置1である場合には、車両周囲画像Pacを作成し、これを外部装置2に送信するといった如くである。
【0084】
(第3の実施形態)
第3の実施形態にかかる画像情報提供装置が、第1の実施形態のそれと相違する点は、各画像データのマッピング対象となる三次元空間のモデルを作成することにある。三次元空間モデルSMを作成する理由は、高さ成分のある立体物Obと、三次元空間モデルSMとの位置が離れすぎいる場合には、車両周囲画像Pacに表現される立体物Pobが歪んでしまうといった事態が生じ得るからである。なお、第1の実施形態と共通する点については説明を省略することとし、以下、相違点を中心に説明を行う。
【0085】
具体的には、マッピング部10cは、異常検出部12からのセンサ信号を取得し、立体物Obに関する車両Caからの距離(以下「立体物距離」という)を特定する。そして、マッピング部10cは、車両Caから立体物距離だけ離れた位置のマッピング先が、三次元空間モデルSMの側面領域と底面領域との境、あるいは、底面領域側となるように当該三次元空間モデルSMを作成する。この場合、三次元空間モデルSMは、車両Caの周囲の全域において、立体物距離だけ離れた位置から側面領域が立ち上がるようにしてもよいし、立体物Obの存在方向についてだけモデルを変形させてもよい。
【0086】
かかる構成によれば、立体物Obが三次元空間モデルSMにおいて車両から近い位置にマッピングされるので、立体物Obのゆがみが少ない車両周囲画像Pacを作成することができる。これにより、これにより、ユーザにとって認識し易い車両周囲画像Pacの作成が可能となる。
【0087】
なお、本実施形態に示す手法は、第1の実施形態に適用可能のみならず、第2の実施形態に示す外部装置2に適用してもよい。
【0088】
以上、本発明の実施形態にかかる車両情報提供装置およびその方法について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0089】
1 本体装置
10 制御ユニット
10a 画像データ処理部
10b 異常判断部
10c マッピング部
10d 仮想視点計算部
10e 視点変換部
10f 合成部
11 撮影部
11a〜11d カメラ
12 異常検出部
13 通信部
14 記憶部
2 外部装置
20 制御ユニット
20a マッピング部
20b 仮想視点計算部
20c 視点変換部
20d 合成部
21 入力部
22 表示部
23 通信部
24 記憶部
3 通信サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報をユーザに提供する画像情報提供装置において、
車両から当該車両の周囲を撮影することにより、画像を出力する撮影手段と、
車両に生じている異常を検出する異常検出手段と、
前記撮影手段から出力される画像を、車両位置を座標系の基準とする三次元空間のモデルにマッピングすることにより、空間データを作成するマッピング手段と、
前記三次元空間における仮想視点の位置および方向を計算する仮想視点計算手段と、
前記空間データを視点変換することにより、前記仮想視点計算手段により計算された仮想視点から眺めた画像となる車両周囲画像を作成する視点変換手段と、
前記視点変換手段により作成された車両周囲画像に、前記仮想視点計算手段により計算された仮想視点から眺めた車両の形状モデルを重畳する合成手段とを有し、
前記仮想視点計算手段は、前記異常検出手段による検出結果に基づいて、前記視点変換手段により作成される車両周囲画像に前記車両に生じている異常が含まれるように前記仮想視点の計算を行うことを特徴とする画像情報提供装置。
【請求項2】
前記合成手段により車両の形状モデルが重畳された車両周囲画像を、ユーザが保有する外部装置に送信する通信手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載された画像情報提供装置。
【請求項3】
前記仮想視点計算手段は、前記異常検出手段が検出した異常の位置と、前記撮影手段の車両への取り付け位置とに基づいて、前記仮想視点の計算を行うことを特徴とする請求項1に記載された画像情報提供装置。
【請求項4】
前記撮影手段は、それぞれが異なる方向の車両の周囲を撮影する複数のカメラから構成されており、
前記仮想視点計算手段は、前記車両に生じている異常が前記複数のカメラのうち一のカメラのみの撮影範囲に含まれる場合、前記異常の地面座標である第1の座標と前記一のカメラの地面座標である第2の座標とを結ぶ線分に対する、前記第1の座標を通過する垂線を演算し、前記垂線によって確定される領域のうち前記第2の座標を含む領域内のいずれかの地点を始点として前記第1の座標へと向かう任意のベクトルを計算することにより、前記仮想視点の計算を行うことを特徴とする請求項3に記載された画像情報提供装置。
【請求項5】
前記撮影手段は、それぞれが異なる方向の車両の周囲を撮影する複数のカメラから構成されており、
前記仮想視点計算手段は、前記車両に生じている異常が前記複数のカメラのうち二つのカメラの撮影範囲のそれぞれに含まれる場合、前記異常の地面座標である第1の座標と前記二つのカメラのうちの一方のカメラの地面座標である第2の座標とを結ぶ線分に対する、前記第1の座標を通過する第1の垂線を演算し、前記第1の座標と前記二つのカメラのうちの他方のカメラの地面座標である第3の座標とを結ぶ線分に対する、前記第1の座標を通過する第2の垂線を演算するとともに、前記第1の垂線によって確定される領域のうち前記第2の座標を含む領域内であって、かつ前記第2の垂線によって確定される領域のうち前記第3の座標を含む領域内のいずれかの地点を始点として前記第1の座標へと向かう任意のベクトルを計算することにより、前記仮想視点の計算を行うことを特徴とする請求項3に記載された画像情報提供装置。
【請求項6】
前記通信手段は、前記異常検出手段による異常の検出とタイミング的に対応して、前記異常が生じていることを通知するトリガー信号を前記外部装置に送信することを特徴とする請求項2に記載された画像情報提供装置。
【請求項7】
前記視点変換手段は、前記通信手段が前記外部装置から車両周囲画像の作成を要求するリクエスト信号とともにユーザが指定する仮想視点の位置および方向に関する信号を受信した場合には、ユーザが指定する仮想視点に基づいて車両周囲画像を作成することを特徴とする請求項2に記載された画像情報提供装置。
【請求項8】
前記マッピング手段、前記仮想視点計算手段、前記視点変換手段、前記合成手段および前記通信手段は、前記外部装置と独立した本体装置に含まれることを特徴とする請求項2に記載された画像情報提供装置。
【請求項9】
前記通信手段は、前記外部装置と独立した本体装置に含まれ、
前記マッピング手段、前記仮想視点計算手段、前記視点変換手段および前記合成手段は、前記外部装置に含まれており、
前記通信手段は、前記外部装置から車両周囲画像の作成を要求するリクエスト信号を受信した場合、前記外部装置に対して前記撮影手段から出力される画像を送信することを特徴とする請求項2に記載された画像情報提供装置。
【請求項10】
前記通信手段は、前記外部装置から前記リクエスト信号を受信したタイミングにおいて前記異常検出手段により異常が検出される場合には、前記撮影手段から出力される画像とともに、前記異常検出手段による検出結果を前記外部装置に送信することを特徴とする請求項9に記載された画像情報提供装置。
【請求項11】
前記本体装置に含まれており、それぞれが異なる方向の車両の周囲を撮影する複数のカメラから構成される前記撮影手段から得られる画像のそれぞれを処理対象として、異常が写る画像を特定する処理手段をさらに有し、
前記通信手段は、前記処理手段の結果に基づいて、前記撮影手段から得られる複数の画像のうち、異常が写る画像を前記外部装置に対して優先的に送信することを特徴とする請求項9に記載された画像情報提供装置。
【請求項12】
前記処理手段は、前記撮影手段から得られる複数の画像を処理対象として、異常が写る画像を除く他の画像に関するデータ容量を小さくする処理を行うことを特徴とする請求項11に記載された画像情報提供装置。
【請求項13】
前記マッピング手段は、車両から異常までの距離に応じて、前記三次元モデルの形状を設定することを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載された画像情報提供装置。
【請求項14】
車両周囲画像の作成を要求するリクエスト信号を前記外部装置から受信することにより作成された車両周囲画像を格納する記憶手段をさらに有することを請求項2から13のいずれかに記載された画像情報提供装置。
【請求項15】
前記通信手段は、前記外部装置との通信経路を複数有しており、前記外部装置から送信される位置情報に応じて通信経路を選択することを特徴とする請求項2に記載された画像情報提供装置。
【請求項16】
画像情報をユーザに提供する画像情報提供方法において、
車両の周囲が撮影された画像を、車両位置を座標系の基準とする三次元空間のモデルにマッピングすることにより、空間データを作成する第1のステップと、
前記三次元空間における仮想視点の位置および方向を計算する第2のステップと、
前記空間データを視点変換することにより、前記第2のステップにおいて計算された仮想視点から眺めた画像となる車両周囲画像を作成する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて作成された車両周囲画像に、前記第2のステップにおいて
計算された仮想視点から眺めた車両の形状モデルを重畳する第4のステップとを有し、
前記第2のステップは、車両に生じている異常に基づいて、前記車両周囲画像に当該異常が含まれるように前記仮想視点の計算を行うことを特徴とする画像情報提供方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−221686(P2011−221686A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88430(P2010−88430)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】