画像投影装置
【課題】装置コストアップおよび装置サイズの大型化を抑えつつ台形歪みを補正することができる画像投影装置を提供する。
【解決手段】画像処理部53の補正部53bは、第2光学系の傾きを検知する傾き検知センサ55の検知結果に基づいて、画像データの画素を間引き、間引き後補完処理を行って、投影画像と逆の台形形状補正画像データを作成する。駆動部53aは、この補正画像データに基づいて、画像形成部としての液晶パネルの各液晶素子に変調信号を入力し、画像生成部10に補正画像を生成する。
【解決手段】画像処理部53の補正部53bは、第2光学系の傾きを検知する傾き検知センサ55の検知結果に基づいて、画像データの画素を間引き、間引き後補完処理を行って、投影画像と逆の台形形状補正画像データを作成する。駆動部53aは、この補正画像データに基づいて、画像形成部としての液晶パネルの各液晶素子に変調信号を入力し、画像生成部10に補正画像を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、光像を生成する光像生成部と、複数のレンズからなる第1光学系と、凹面鏡からなる第2光学系とを備えた投影光学系とを備えた画像投影装置が知られている。この画像投影装置は、第1光学系で、第1光学系と第2光学系との間に光像生成部で形成された光像に共役な中間光像を形成し、第2光学系で中間光像に共役な像を、スクリーンなどの投影面に形成する。投影面に形成された投影画像の上下方向の位置を調整するときは、第2光学系を回転させ、第2光学系の姿勢を変更することで投影画像が上下方向へ移動し、位置が調整される。しかし、第2光学系の姿勢を変更して、投影画像を上下方向へ移動させると、投影画像が、台形状に歪む所謂台形歪みが発生してしまう。
【0003】
特許文献1には、第2光学系と投影面との間に偏向素子を配置し、第2光学系から偏向素子を介して投影面に投影画像を形成するように構成し、この偏向素子の偏向角度を調整することにより、台形歪みを補正する画像投影装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、台形歪みを補正するための偏向素子などの光学系部品や、この光学系部品を動かすための機構などが必要となり、部品点数が増加して装置のコストアップに繋がるという課題があった。また、部品点数の増加に伴って装置サイズが大型化するという課題もある。
【0005】
本発明は以上の課題に鑑みなされたものであり、装置コストアップおよび装置サイズの大型化を抑えつつ台形歪みを補正することができる画像投影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、画像データに基づいて、光像を生成する光像生成手段と、複数の光学系部材で構成され、上記光像生成手段により生成された光像に共役な光像を投影画像として投影面に形成する投影光学系と、上記投影光学系を構成する上記光学系部品の少なくともひとつの姿勢を変化させて、上記投影画像を移動させる投影画像移動手段とを備えた画像投影装置において、上記投影画像移動手段により姿勢を変化させる光学系部品の姿勢を検出する姿勢検出手段と、上記姿勢検出手段の検知結果に基づいて、上記投影画像の台形歪みが生じないように上記光像生成手段で生成する光像を補正する台形歪み補正手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、上記投影画像移動手段により姿勢を変化させる光学系部品の姿勢に基づいて、光像生成手段で生成する光像を補正して、投影画像の台形歪みを補正している。光学系部品の姿勢の変化量と投影画像の移動量とには、相関関係があり、投影画像の移動量と投影画像の台形歪み量とにも相関関係がある。よって、光学系部品の姿勢を検出することにより、投影画像の台形歪み量を把握することができ、光学系部品の姿勢に基づき、光像を補正することにより、投影画像の台形歪みを補正することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光像生成手段で生成する光像を補正することにより、投影画像の歪みを補正するので、特許文献1に記載の構成とは異なり、台形歪みを補正するための光学系部品と、この光学系部品を動かすための機構とを用いることなく投影画像の台形歪み補正することができる。これにより、特許文献1に記載の画像投影装置に比べて、部品点数の増加を抑えることができ、装置コストアップおよび装置サイズの大型化を抑えて、台形歪みを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係るプロジェクタから投影面までの光路図。
【図2】同プロジェクタの構成を示す概略図。
【図3】同プロジェクタの利用シーンの一例を示す図。
【図4】(a)は、第2光学系が基準姿勢のときの光路図であり(b)は、第2光学系を回動させたときの光路図。
【図5】第1光学系の概略図。
【図6】画像生成部で生成される生成画像と、投影面に投影される投影画像との関係を示す図。
【図7】(a)は、画像処理部で補正した画像を画像生成部に表示した図であり、(b)は、台形歪み補正後の投影画像を示す図。
【図8】投影画像移動方向下流側端部に対応する箇所を基準に入力画像を補正した場合の生成画像と、投影画像とを示す図。
【図9】解像度を評価するための画像生成部における光線の位置f1〜f9を示す図。
【図10】上記f1〜f9の投影面に投影されたスポットダイアグラムを示す図。
【図11】投射画像でのf1、f3、f7、f9の座標をプロットしたグラフ。
【図12】第2光学系の傾斜角度を、−39.47°にしたときの上記f1〜f9の投影面に投影されたスポットダイアグラムを示す図。
【図13】第2光学系の傾斜角度が、−39.47°ときの投射画像でのf1、f3、f7、f9の座標をプロットしたグラフ。
【図14】CASE1の補正を実施したときの投射画像でのf1’、f3’、f7’、f9’の座標をプロットしたグラフ。
【図15】CASE2の補正を実施したときの投射画像でのf1’、f3’、f7’、f9’の座標をプロットしたグラフ。
【図16】第2光学系の傾斜角度を、−39.87°にしたときの上記f1〜f9の投影面に投影されたスポットダイアグラムを示す図。
【図17】第2光学系の傾斜角度が、−39.87°ときの投射画像でのf1、f3、f7、f9の座標をプロットしたグラフ。
【図18】第2光学系の傾斜角度が、−39.87°ときのCASE1の補正を実施した場合の投射画像でのf1’、f3’、f7’、f9’の座標をプロットしたグラフ。
【図19】第2光学系の傾斜角度が、−39.87°ときのCASE2の補正を実施した場合の投射画像でのf1’、f3’、f7’、f9’の座標をプロットしたグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明が適用される画像投影装置としてのプロジェクタの実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るプロジェクタ1から投影面101までの光路図であり、図2はプロジェクタ1の構成を示す概略図である。なお、以下の説明では、投影面101の長軸方向をX、短軸方向をY、投影面101の法線方向をZとする。
【0011】
図1、2に示すように、プロジェクタ1は、画像生成手段たる画像生成部10と、画像生成部10で形成された画像を投影面101に投影するための投影光学系3とを有している。投影光学系3は、屈折光学系を少なくとも一つ含み、正のパワーを有する共軸系の第1光学系20、正のパワーを有する反射面を少なくとも一つ含んだ第2光学系30で構成されている。
【0012】
画像生成部10は、複数の画像形成素子(例えば、液晶素子)を備え、変調信号に応じて画像を形成する画像形成部(例えば、液晶パネル)、この画像形成部に対して光を照射する光源などからなる透過型、反射型ドットマトリクス液晶、DMD(Digital MicromirrorDevice)を用いることができる。一例を示すと、光源から出射された光を、複数の光学系部品によりR,G,Bの各色成分光に分離し、R,G,Bの各色に対応して設けられた複数の画像形成素子に入射する。画像処理部53の駆動部53aで、PC(パーソナルコンピュータ)などから入力された画像データに基づいて、変調信号を生成し、各画像形成素子に入力し、各画像素子で画像データに応じた光変調が行われる。その後、ダイクロイックプリズムなどの公知の合成手段により合成して、第1光学系20に向けて、画像光を出射する。
【0013】
投影光学系3は、第1光学系20と第2光学系30とを有し、第1光学系20は、複数の光学系部品からなり、画像生成部10で生成された画像光に共役な中間像を第1光学系20と第2光学系30との間に形成する。この中間像は、第1光学系20と第2光学系30との間に曲面像として結像される。
【0014】
第2光学系30は、1枚の凹面鏡により構成され、投影面101に中間像を「さらに拡大した画像」が投影結像される。投影光学系3を上述のように構成することで、投影距離を短くでき、狭い会議室などでも使用することができる。更に、従来のプロジェクタのように発表者がプロジェクタ1の投影画像の間に入ることで投影画像に影が生じるという問題が軽減される。
【0015】
図3に示すように、本実施形態に係るプロジェクタ1は、例えば会議室などで使用する場合、プロジェクタ1をテーブル100に置いてホワイトボードなどの投影面101に画像を投影して使用される。この場合、投影面101の高さ、プロジェクタ1の設置される高さが固定である。この状態で全画面が投影面101に映らない場合、設置する台を別途用意するなどして投影の高さを調節する必要が生じ、大変煩わしい。そこで、投影面101の高さを調整する機能をプロジェクタ1が備えていればこのような煩わしさがなくなり、ユーザーにとって使いやすいものとなる。
【0016】
本実施形態においては、第2光学系30が、x方向回りに回動可能になっており、第2光学系30をx方向回りに回動させることにより、投影画像の高さ(y方向)の位置が調整可能となっている。具体的には、図2に示すように、第2光学系30は、端部にギヤ41が固定されたx方向に延びる回転軸31に固定されている。ギヤ41には、モータ42のモータギヤ42aが噛み合っている。モータ42を駆動することにより、第2光学系30が、図中時計回りまたは図中反時計回りに回動し、投影画像が、y方向へ移動して、投影画像の位置を調整することができる。図2に示すように、プロジェクタ1には赤外線入力部52を有しており、不図示のリモコンをユーザーが操作すると、不図示のリモコンから赤外線信号が発信され、プロジェクタ1の赤外線入力部52に入力される。赤外線入力部52で、赤外線信号を受信したら、制御部51は、その信号に基づいて、モータ42を駆動して、第2光学系30を図中時計回りまたは図中反時計回りに回動させ、投影画像のy方向の位置が調整される。なお、本実施形態においては、ギヤ41とモータ42とを用いて第2光学系30を回動させているが、これに限られず、公知の手法を用いることができる。また、ユーザーが手動でギヤ41を回すことで第2光学系30を回転させてもよい。
【0017】
図4(a)は、第2光学系30が基準姿勢のときの光路図であり、(b)は、第2光学系30を図中時計回りに回動させたときの光路図である。
図4(a)に示すように、第2光学系30が基準姿勢のときは、投影画像は、投影面101の基準位置に投影される。図4(b)に示すように、基準姿勢から第2光学系30を図中時計回りに回動させると、投影画像が、+y方向にシフトする。これにより、投影画像のテーブル100からの高さが、AからBへと変更することができる。逆に、基準姿勢から第2光学系30を図中反時計回りに回動させると、投影画像が、−y方向にシフトする。
【0018】
第2の光学系30を回転させて、投影画像をy方向へシフトさせると、投影面101に到達する光線の投影面101への入射角度や投射距離がシフト前後で変化するため、シフト後のピントがずれてしまう。投影距離の短いプロジェクタ1ほど投影面101への光線入射角が大きくなるため、このピントずれは顕著にあらわれる。しかし、本実施形態においては、第2の光学系30を凹面鏡として正のパワーを持たせているので、設計の最適化をすることでこの問題を解消し、解像度(ピント)を保ちつつ画面シフトすることが可能となっている。第2光学系30の光を反射する面は、球面、回転対称非球面、自由曲面形状などにすることができる。ここで、自由曲面形状の一例として多項式自由曲面の式を以下に示しておく。
【0019】
「Z=X2・x2+Y2・y2+X2Y・x2y+Y3・y3+X4・x4+X2Y2・x2y2+Y4・y4+X4Y・x4y+X2Y3・x2y3+Y5・y5+X6・x6+X4Y2・x4y2+X2Y4・x2y4+Y6・y6+・・」
ここで、投影画像を基準として上下方向をY方向、左右方向をX方向、曲面のデプスをZ方向、とし、「X2、Y2、X2Y、Y3、X2Y2など」は係数である。第2光学系30の形状に自由度を持たせる程設計の自由度が上がるため、自由曲面形状にすることで解像度(ピント)を維持できる画面のシフトの量を大きくできる。
【0020】
さらに、第2光学系30をx方向回りに回動させるときに、第2光学系30をy方向に移動させてもよい。第2光学系30をy方向に移動させることにより、ピントずれを抑制して、投影画像をy方向に移動させることが可能となる。また、第2光学系30の曲面形状と、第2光学系30のy方向の移動とを組み合わせることにより、ピントを維持するための第2光学系30の曲面形状の設計の自由度が上がるため、ピントを維持しながら投影画像をシフトできる量を大きくできる。第2光学系30のy方向の移動は、第2光学系30を回転させながら移動するのが好ましい。このため、第2光学系30とギヤ41が固定された回転軸31、モータ42、後述する傾き検知センサ55を一体的に支持した枠体を設け、枠体ごとy方向へ移動させる構成が好ましい。
【0021】
また、投影画像をy方向へ移動させるときに、第1光学系20の光学系部品の少なくとも一つを移動させることで、ピントを維持するようにしてもよい。
図5に示すように、第1光学系20を1〜4群に分けると、投影画像を+y方向にシフトする場合は、第2光学系30の回転に合わせて、第1光学系20の第1群を−z方向、第2群を+z方向、第3群を−z方向へ移動させる。これにより、ピントを維持しながら、投影画像を+y方向へシフトさせることができる。
【0022】
次に、本実施形態の特徴点について説明する。
本実施形態においては、上述したように、ピントを維持しつつ投影画像をシフトすることができる。しかし、投影画像をシフトすべく第2光学系30を、基準の姿勢から回転させると第2光学系30から投影面101までの距離が変化するため台形歪みが発生する。画面シフト量が小さければ、第2光学系30の曲面形状を最適化することで台形歪みが生じるのを抑えることができるが、画面シフト量が大きい場合は、第2光学系30の曲面形状の最適化では対処できず、台形歪みが発生してしまう。
【0023】
図6は、画像生成部10で生成される生成画像と、投影面101に投影される投影画像との関係を示す図である。(a)が、画像生成部10で生成される生成画像を示しており、(b)は、投影面101に投影された投影画像を示している。
図に示すように、第2光学系30が基準姿勢のときは、図4(b)の破線で示すように、生成画像のアスペクト比と同じアスペクト比の拡大投影画像が、投影面101に投影される。一方、第2光学系30を回転させて、投影画像を+y方向へシフトさせると、図6(b)に示すように、台形歪みが発生してしまう。
【0024】
そこで、本実施形態では、入力画像を補正することにより投影画像の台形歪みを補正している。以下に、具体的に説明する。
先の図2に示すように、本実施形態のプロジェクタ1には、入力画像を補正する台形歪み補正手段としての画像処理部53を有している。画像処理部53には、第2光学系30の傾きを検知するための傾き検知センサ55と、記憶手段54とが接続されている。記憶手段54には、第2光学系30の傾きと、画像補正係数とが関連づけられたテーブルが記憶されている。画像処理部53は、傾き検知センサ55の検知結果と、記憶手段54に記憶されているテーブルとから、画像補正係数を把握し、把握した画像補正係数に基づいて、入力画像を補正する。そして、補正した入力画像を、画像生成部10に送信する。
【0025】
姿勢検出手段としての傾き検知センサ55としては、ポテンショメータを用いることができる。ポテンショメータを、回転軸31に取り付け、第2光学系30の傾きに比例して変化する抵抗値を読み取ることで傾きを検知することができる。また、傾き検知センサ55として加速度センサを用いてもよい。加速度センサを用いた場合は、重力加速度Gを検出し、このG正弦関数により傾きを求めることができる。なお、これらの方法に限定するものではなく、公知の方法を適宜用いることができる。
【0026】
図7(a)は、画像処理部53の補正部53bで補正した画像を画像生成部10に表示した図であり、(b)は、台形歪み補正後の投影画像を示す図である。図7(a)の一点鎖線は、画像処理部53の補正部53bで補正していない画像を画像生成部10に表示した場合を示しており、図7(b)の一点鎖線は、台形歪み補正前の投影画像を示しており、図7(b)の破線は、第2光学系30が基準姿勢のときの投影画像を示している。
画像処理部53の補正部53bで入力された画像データは、図7(b)の一点鎖線で示す台形歪み補正前の投影画像の台形形状とは、逆台形形状に補正される。画像処理部53の補正部は、傾き検知センサ55の検知結果に基づいて、画像データの画素を間引き、間引き後補完処理を行って補正画像データを生成する。駆動部53aは、この補正画像データに基づいて、画像形成部の各画像形成素子に変調信号を入力し、画像形成部に補正画像が生成される。図7(b)の破線と、図7(b)の一点鎖線を比べるとわかるように、台形歪みの投影画像は、図中上側(+y方向)にいくにつれて、x方向、y方向に引き延ばされている。このため、画像処理部53の補正部53bでは、画像データのx方向ラインの画素を所定のアルゴリズムにより間引いて、入力画像のy方向の高さを補正する。これにより、投影画像のy方向の歪みが補正され、図7(b)に示すように、補正後の投影画像のy方向の長さを、図中破線で示す基準位置の投影画像の長さと同じにすることができる。次に、間引かれずに残ったx方向ラインに並ぶ複数の画素のうちいくつかを、補正後のy方向の位置に基づいて、所定のアルゴリズムにより間引く。これにより、画像データが、投影画像の台形形状とは逆の台形形状に補正される。これにより、図7(b)に示すように、補正後の投影画像のアスペクト比を、図中破線で示す基準位置の投影画像のアスペクト比と同じにすることができる。
【0027】
本実施形態のy方向の長さを補正するためのx方向ラインの間引きは、画像データの投影画像移動方向上流側端部(図中下端)に対応する箇所を基準にして行われる。すなわち、補正後の生成画像の下端と、補正前の生成画像の下端とを一致させるのである。このように、下端基準とすることで、入力画像を台形形状にする際のy方向の位置に基づいて、間引かれる画素の量を、上端基準にした場合に比べて、少なくすることができ、結果として補正によるx方向の解像劣化を抑えることができる。
【0028】
上述では、画面シフト方向を+y方向とした場合について説明したが、画面を−y方向にシフトした場合、投影画像移動方向上流側端部に対応する箇所は、画像の上端側となり、この場合は、画像の上端を基準にして入力画像の補正が行われる。
【0029】
このようにして、画像処理部53の補正部53bで所定のアルゴリズムに基づき、入力画像の画素を間引いて、画像データを、図7(a)に示すような台形形状に補正することにより、図7(b)に示すように、投影画像の台形歪みを補正することができる。
【0030】
また、上記では、投影画像のy方向の歪み補正を、画像データの投影画像移動方向上流側端部に対応する箇所を基準に行っているが、これとは逆に画像データの投影画像移動方向下流側端部に対応する箇所を基準に行ってもよい。
図8は、画像データの投影画像移動方向下流側端部に対応する箇所を基準に画像データを補正した場合の生成画像と、投影画像とを示す図である。
この図8においても、投影画像を+y方向にシフトする場合について説明する。
図8(a)に示すように、投影画像を+y方向にシフトする場合は、投影画像移動方向下流側端部は、図中上側となる。この場合は、図8(a)に示すように、補正後の生成画像の図中下端の位置が、図中一点鎖線の補正前の生成画像の下端位置に比べて、+y方向側となる。その結果、補正後の投影画像が、入力画像の投影画像移動方向上流側端部に対応する箇所を基準にした補正後の投影画像に比べて、+y方向へシフトさせることができる(図7(b)、図8(b)参照)。すなわち、画像データの投影画像移動方向下流側端部に対応する箇所を基準にすると、第2光学系の回転量に対する投影画像のシフト量を大きくすることができるのである。これにより、投影画像のシフト量が同じ場合、投影画像移動方向上流側端部に対応する箇所を基準にした場合に比べて、第2光学系の回転量(姿勢の変化量)を少なくすることができる。よって、投影画像移動方向上流側端部に対応する箇所を基準にした場合に比べて、x方向ラインの画素の間引き量を低減することができ、y方向の解像度の低下を抑制することができる。また、第2光学系の回転量(姿勢の変化量)を少なくできるので、結果的に、x方向の解像度の劣化の抑制も見込める。
【0031】
投影画像移動方向上流側端部に対応する箇所を基準にするか、下流側端部に対応する箇所を基準にするかは、装置の構成により適宜決めればよい。投影画像をy方向へ移動させたとき、x方向の歪みが、y方向の歪みよりも大きい場合は、投影画像移動方向上流側端部に対応する箇所を基準にすることで、解像度の低下を効果的に抑制することができる。これとは逆に、y方向の歪みが大きい場合は、投影画像移動方向下流側端部に対応する箇所を基準にすることで、解像度の低下を効果的に抑制することができる。
【0032】
また、上述では、投影画像をy方向にシフトさせる場合について説明したが、第2光学系30をy方向回りに回転する構成にすることで画面を±x方向にシフトさせることができる。また、上記では、テーブルに基づいて、第2光学系30の傾きに対する画像補正係数を特定しているが、演算式を用いて、第2光学系30の傾きに対する画像補正係数を特定してもよい。
【0033】
以下に、実施例に基づいて、本発明を、具体的に説明する。
【0034】
[実施例]
実施例のプロジェクタの画像生成部10は0.64インチ、縦横比16:10であり、実施例のプロジェクタの拡大倍率は、94倍である。なお、拡大倍率とは、画像生成部10で生成された画像サイズと、投影面101に投影された投影画像サイズのおおよその比である。また、実施例のプロジェクタのFナンバーは、F2.5である。また、表2は、実施例1のプロジェクタ1の諸元を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示す面番号は、光像が通過する面を、画像生成部10の画像生成面を0にして、光像が通過する順に番号を振ったもので、面番号26は、投影面101である。例えば、面番号1は、画像形成部10の画像生成面に対向配置された透過ガラスの光像の入射面であり、面番号2は、透過ガラスの光像出射面である。また、面番号5、24は、ダミーである。また、面形状が球で、曲率半径が無限大のものは、平面であることを示している。面番号3〜23が、第1光学系20の各レンズの入射面および出射面であり、面番号14、15が、先の図5に示す第3群のレンズであり、面番号16〜21が、先の図5に示す第2群のレンズであり、面番号22、23が、先の図5に示す第1群のレンズである。また、面番号25は、第2光学系30である。
【0037】
また、表のシフトとは、Y方向のシフト偏心量であり、チルトとは、X軸を回転軸としたチルト偏心量である。また、表1の曲率半径、面間隔、シフト偏心量の単位は、ミリである。また、シフトの符号は、図2における上方向のシフトを、+の符号とし、下方向のシフトを−の符号とした。また、チルトの符号は、X軸まわりにおける左回転のチルトを、+の符号とし、X軸まわりにおける右回転のチルトを、−の符号とした。また、第2光学系30の反射面のY軸に対する傾斜角度は、−39.07°である。
【0038】
また、表1の面番号3、4、20〜23の面の非球面は、回転対称非球面であるが、非対称の非球面でも良い。 回転対称非球面は周知のとおり、Zを光軸方向のデプス、cを近軸曲率半径、rを光軸からの光軸直交方向の距離、kを円錐係数、A、B、C、・・・等を高次の非球面係数とすると、 Z=c・r2/[1+√{1−(1+k)c2・r2}]+A・r4+B・r6+C・r8・・・ という非球面式となり、k、A、B、C・・・の値を与えて形状を特定する。このように、第1光学系20に非球面レンズを用いることにより設計の自由度が高くなり、スクリーン上での結像性能が上がる。表2に、本実施例における上記式の各係数の値を示す。
【0039】
【表2】
【0040】
本実施例の第2光学系30の反射面(面番号25)は、アナモフィックな多項式自由曲面形状である。第2光学系30の正のパワーを持つ反射ミラーがアナモフィックな多項式自由曲面形状であれば、「それぞれの像高に対する反射領域」ごとに、反射面の曲面形状を調整することができ、収差補正性能がよくなる。本実施例の多項式自由曲面の式(Z=X2・x2+Y2・y2+X2Y・x2y+Y3・y3+X4・x4+X2Y2・x2y2+Y4・y4+X4Y・x4y+X2Y3・x2y3+Y5・y5+X6・x6+X4Y2・x4y2+X2Y4・x2y4+Y6・y6+・・)の各係数の値を、表3に示す。
【表3】
【0041】
次に、本実施例の解像度について、説明する。
図9は、解像度を評価するための画像生成部10における光線の位置の定義を説明する図である。
図9に示すように、XY平面の画像形成部10のX方向中央部の位置をX軸方向の基準位置とし、この基準位置より図中左側を−、図中右側を+とした。また、画像形成面の図中下端の位置をY軸方向の基準位置とし、この基準位置より図中下側を−、図中上側を+とした。そして、画像生成部10のX≦0のエリアについて、X方向に3等分割、Y方向に3等分割して得られる9個の格子点f1〜f9を、解像度を評価するための評価点とした。なお、図1に示すように、投影画像面(投影面101)はXY面上にあり、投影画像面上のスポット特性は、Y軸に対して±X方向には対称なスポット特性を示すため、X≦0のエリアについてのみ解像度を評価すればよい。
【0042】
図10は、上記f1〜f9の投影面101に投影されたスポットダイアグラムを示す図である。図10に示すように、各評価点f1〜f9のスポットは良く集光していることがわかる。本実施例ではWXGAクラスの解像度が得られている。WXGAの解像周波数において、白色のModulation Transfer Function(MTF)として、画面全域で50%以上の性能が得られる。
【0043】
下記表4は、画像生成部10と投射画像におけるf1、f3、f7、f9の座標を示したものであり、図11は、投射画像でのf1、f3、f7、f9の座標をプロットしたものである。図より、歪みのない画像の得られていることがわかる。
【表4】
【0044】
下記表5は、第2光学系30を回転させて、第2光学系30の反射面のY軸に対する傾斜角度を、−39.47°とした諸元を示すものである。
【0045】
【表5】
【0046】
上記のように、第2光学系をさらに傾けることで、投影画像は、+y方向へシフトする。よって、このときは、先の図5を用いて説明したように、第1光学系20の第1群を−z方向、第2群を+z方向、第3群を−z方向へ移動させて、ピントを維持する。よって、表5の○で標記したところに示すように、第1光学系の第3群が、−z方向へ移動するので、面番号13(第1光学系の第4群の光進行方向最下流に配置されたレンズの出射面)と、面番号14(第1光学系の第3群の光進行最上流に配置されたレンズの入射面)との間の距離(面間隔)が、0.13mmとなり、0.03mm距離が縮まる。
【0047】
同様に、第1光学系の第2群が、+z方向に移動するので、面番号15(第1光学系の第3群の光進行最下流に配置されたレンズの出射面)と、面番号16(第1光学系の第2群の光進行最上流に配置されたレンズの入射面)との距離(面間隔)が、0.17mmとなり、0.07mm距離が広がる。また、第1光学系20の第1群が、−z方向へ移動するので、面番号21(第1光学系の第2群の光進行最下流に配置されたレンズの出射面)と、面番号22(第1光学系の第1群の光進行最上流に配置されたレンズの入射面)との距離(面間隔)が、8.68mmとなり、0.15mm距離が縮まる。また、面番号23(第1光学系の第1群の光進行最下流に配置されたレンズの出射面)とダミーの面である面番号24との距離が、0.30mmとなり、0.1mm距離が広がる。
【0048】
図12は、第2光学系30を回転させて、第2光学系30の反射面のY軸に対する傾斜角度を、−39.47°にしたときの上記f1〜f9の投影面101に投影されたスポットダイアグラムを示す図である。
図に示すように、第1光学系の第1群〜第3群をそれぞれ移動させることにより、良好に集光できることがわかる。これにより、WXGAの解像周波数において、白色のMTFとして画面全域で50%以上の性能が得られる。
【0049】
下記表6は、第2光学系30を回転させて、第2光学系30の反射面のY軸に対する傾斜角度を−39.47°にしたときの画像生成部10と投射画像におけるf1、f3、f7、f9の座標を示したものであり、図13は、投射画像でのf1、f3、f7、f9の座標をプロットしたものである。
先の図11と、図13とを比較するとわかるように、投影画像の上側が、+y方向にシフトしていることがわかる。しかし、図13に示すように、台形歪みが増大していることがわかる。また、図11と図13に示すように、画像がY方向に延びていることもわかる。
【0050】
【表6】
【0051】
よって、上述したように、画像データの画素を間引いて、図13に示すような投影画像の歪みを補正する。以下に、上述したように投影画像のy方向の長さを補正するためのx方向ラインの間引きを、画像データの投影画像移動方向上流側端部(本実施例では、下端)に対応する箇所を基準にした場合を、CASE1とし、画像データの投影画像移動方向下流側端部(本実施例では、上端)に対応する箇所を基準にした場合を、CASE2として説明する。なお、本実施例では、CASE1、CASE2共に拡大倍率94倍を維持するよう補正する。
【0052】
下記表7は、CASE1の補正を実施したときの画像生成部と投射画像におけるf1’、f3’、f7’、f9’の座標をしたものであり、図14は、CASE1の補正を実施したときの投射画像でのf1’、f3’、f7’、f9’の座標をプロットしたものである。
【0053】
【表7】
【0054】
上記表6と上記表7を比べてわかるように、CASE1の場合は、画像データの投影画像移動方向上流側端部(本実施例では、下端)に対応する箇所を基準にしてx方向ラインの間引きを行うため、画像生成部10のf1’、f7’のY方向の位置は、表6に示す補正前のf1、f7のY方向位置と同じである。一方、Y方向上端側にあるf3’、f9’は、画像処理部53で画像データのX方向ラインが複数間引かれている関係で、表6の示すf3、f9の位置よりも下方へ移動している。
【0055】
また、間引かれずに残ったx方向ラインに並ぶ複数の画素のうちいくつかを、補正後のy方向の位置に基づいて、所定のアルゴリズムにより間引くため、f9’が、f9よりx方向内側へ移動する。
【0056】
このようにして、画像データの画素を間引くことで、図14に示すように、投影画像を+y方向へシフトしながら歪みのない画像を得ることができる。
【0057】
下記表8は、CASE2の補正を実施したときの画像生成部と投射画像におけるf1’、f3’、f7’、f9’の座標をしたものであり、図15は、CASE2の補正を実施したときの投射画像でのf1’、f3’、f7’、f9’の座標をプロットしたものである。
【0058】
【表8】
【0059】
上記表6、表8を比べてわかるように、CASE2の場合は、画像データの投影画像移動方向下流側端部(本実施例では、上端)に対応する箇所を基準にしてx方向ラインの間引きを行うため、画像生成部10のf1’、f7’のY方向の位置が、画像処理部53で画像データのX方向ラインが複数間引かれている関係で、表6の示すf3、f9の位置よりも上方へ移動している。また、CASE1と同様に、間引かれずに残ったx方向ラインに並ぶ複数の画素のうちいくつかを、補正後のy方向の位置に基づいて、所定のアルゴリズムにより間引くため、f9’が、f9よりx方向内側へ移動する。
【0060】
このようにして、画像データの画素を間引くことでも、図15に示すように、投影画像を+y方向へシフトしながら歪みのない画像を得ることができる。
【0061】
CASE1およびCASE2においては、画像データの画素を間引くことで、投影画像の歪みを補正しているため、解像度が劣化する。
【0062】
下記表9は、CASE1、CASE2の補正をした場合の画像処理後解像度と画面シフト量とを示したものである。ここで画像処理後解像度とは、画像処理前後での画像生成部10の使用領域の面積比である。画像処理をしない場合、画像生成部10の有効面積は6.92×8.64×2≒120mm2である。例えば、CASE1の場合の画像処理後解像度は(115/120)×100=96%となる。
【0063】
【表9】
【0064】
CASE1では、画像データの画素を間引いて、画像生成部10で生成する画像を、先の図7(a)に示すような台形形状として、先の図6(a)に示すように、画像データを間引かず、画像生成部10の全体を使用するときよりも画像生成部10の使用する面積の小さくする。また、CASE2では、画像生成部10で生成する画像を、先の図8(a)に示すような台形形状として、先の図6(a)に示すように、画像データを間引かず、画像生成部10の全体を使用するときよりも画像生成部10の使用する面積の小さくする。よって、この面積比の分、解像度が劣化する。従って、画像処理前後での画像生成部10の使用領域の面積比を調べることで、解像度の劣化を調べることができる。
【0065】
表9から分かるように、CASE1の補正を行った場合CASE2に比べ解像度劣化を抑制することができ、CASE2の補正を行った場合CASE1に比べ画面シフト量を大きくすることができる。
【0066】
次に、第2光学系30をさらに回転させて、第2光学系30の反射面のY軸に対する傾斜角度を、−39.87°とした場合について説明する。
【0067】
下記表10は、第2光学系30を回転させて、第2光学系30の反射面のY軸に対する傾斜角度を、−39.87°としたときの諸元を示すものである。
【0068】
【表10】
【0069】
上記表10の面番号13、15、21、23の面間隔に○で表示したように、表5の○で表示した面番号13、15、21、23の面間隔の数値に対して、数値が変化している。これは、第2光学系30を、傾斜角度をさらに大きくして、投影画像をさらに+y方向へシフトせることで、第1光学系20の第1群をさらに−z方向へ移動させ、第2群をさらに+z方向、第3群をさらに−z方向へ移動させて、ピントを維持するためである。
【0070】
図16は、第2光学系30を回転させて、第2光学系30の反射面のY軸に対する傾斜角度を、−39.87°にしたときの上記f1〜f9の投影面101に投影されたスポットダイアグラムを示す図である。
図に示すように、第1光学系20の第1群〜第3群をそれぞれ移動させることにより、良好に集光できることがわかる。これにより、WXGAの解像周波数において、白色のMTFとして画面全域で50%以上の性能が得られる。
【0071】
下記表11は、第2光学系30を回転させて、第2光学系30の反射面のY軸に対する傾斜角度を−39.47°にしたときの画像生成部10と投射画像におけるf1、f3、f7、f9の座標を示したものであり、図17は、投射画像でのf1、f3、f7、f9の座標をプロットしたものである。
【0072】
【表11】
【0073】
先の図13と、図17とを比較するとわかるように、投影画像が、+y方向にさらにシフトしていることがわかる。しかし、図17に示すように、台形歪みがさらに増大していることがわかる。また、図17に示すように、画像がY方向にさらに延びていることもわかる。
【0074】
下記表12は、CASE1の補正を実施したときの画像生成部と投射画像におけるf1’、f3’、f7’、f9’の座標をしたものであり、図18は、CASE1の補正を実施したときの投射画像でのf1’、f3’、f7’、f9’の座標をプロットしたものである。
【0075】
【表12】
【0076】
上記表12に示すように画像生成部10の座標を補正することで、図18に示すように、歪みのない画像の得られることが分かる。上記表11と上記表12を比べてわかるように、Y方向上端側にあるf3’、f9’は、画像処理部53で画像データのX方向ラインが複数間引かれている関係で、表11の示すf3、f9の位置よりも下方へ移動している。また、表7と表11とを比べてわかるように、第2光学系30の傾斜角度が−39.47°の場合に比べて、投影画像の歪みが大きく、画像データのX方向ラインの間引き量が多いため、第2光学系30の傾斜角度が−39.47°の場合に比べて、f3’、f9’の位置がより下方へ移動している。また、同様に、第2光学系30の傾斜角度が−39.47°の場合に比べて、f’9のx方向の移動量が大きくなる。
【0077】
下記表13は、CASE2の補正を実施したときの画像生成部と投射画像におけるf1’、f3’、f7’、f9’の座標をしたものであり、図19は、CASE2の補正を実施したときの投射画像でのf1’、f3’、f7’、f9’の座標をプロットしたものである。
【0078】
【表13】
【0079】
上記表13に示すように画像生成部10の座標を補正することで、図18に示すように、歪みのない画像の得られることが分かる。また、上記表8、上記表13を比べてわかるように、第2光学系30の傾斜角度が−39.47°の場合に比べて、f’3、f’9の位置が上方へ移動する。また、第2光学系30の傾斜角度が−39.47°の場合に比べて、f’9のx方向の移動量が大きくなる。また、Y方向下端のX方向ライン画素も複数間引いているため、f7’の位置が、表11の画像データ補正前のf7の位置よりもx方向内側へ移動する。
【0080】
下記表14は、第2光学系30の傾斜角度が−39.87°にしたときにおけるCASE1、CASE2の補正をした場合の画像処理後解像度と画面シフト量とを示したものである。
【0081】
【表14】
【0082】
この場合も、CASE1の補正を行った場合CASE2に比べ解像度劣化を抑制することができ、CASE2の補正を行った場合CASE1に比べ画面シフト量を大きくすることができる。また、表9と表14とを比べるとわかるように、第2光学系30の傾斜角度が−39.47°の場合に比べて、投影画像の歪みが大きく、間引く画素が多いため、解像度が低下していることがわかる。
【0083】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の(1)〜(9)態様毎に特有の効果を奏する。
(1)
画像データに基づいて、光像を生成する画像生成部10などの光像生成手段と、複数の光学系部材で構成され、上記光像生成手段により生成された光像に共役な光像を投影画像として投影面に形成する投影光学系(本実施形態においては、第1光学系20と第2光学系30とで構成)と、上記投影光学系を構成する上記光学系部品(本実施形態においては、第2光学系30)の少なくともひとつの姿勢を変化させて、上記投影画像を移動させる投影画像移動手段(本実施形態においては、ギヤ41とモータ42とで構成)とを備えたプロジェクタ1などの画像投影装置において、上記投影画像移動手段により姿勢を変化させる光学系部品の姿勢を検出する傾き検知センサ55などの姿勢検出手段と、上記姿勢検出手段の検知結果に基づいて、上記投影画像の台形歪みが生じないように上記光像生成手段で生成する光像を補正する画像処理部53などの台形歪み補正手段とを備えている。かかる構成を有することにより、光学系部品や光学系部品を移動させる移動機構などからなる台形歪み補正機構を設けずとも、台形歪みを補正することができ、部品点数を削減することができる。その結果、装置の省スペース化を図ることができ、また、装置のコストダウンを図ることができる。
【0084】
(2)
また、上記(1)に記載の態様の画像投影装置において、上記台形歪み補正手段は、上記画像データを上記投影画像の台形歪みが生じないように補正することを特徴とするものである。
かかる構成を備えることで、投影画像の台形歪みを抑制することができる。
【0085】
(3)
また、上記(2)に記載の態様の画像投影装置において、上記台形歪み補正手段は、上記画像データの上記投影画像の移動方向下流端に対応する箇所を基準にして、上記投影画像の上記投影画像移動方向の歪みを補正する。これにより、上述したように、投影画像移動方向に対して直交する方向(x方向)の歪みを補正するときの画素の間引き量を、上記投影画像の移動方向上流端に対応する箇所を基準にした場合に比べて、少なくすることができ、x方向の解像度の低下を抑制することができる。
【0086】
(4)
また、上記(2)に記載の態様の画像投影装置において、上記台形歪み補正手段は、上記画像データの上記投影画像の移動方向上流端に対応する箇所を基準にして、上記投影画像の上記投影画像移動方向の歪みを補正する。これにより、第2光学系30の回転量に対する投影画像のシフト量を多くすることができる。
【0087】
(5)
また、上記(1)乃至(4)いずれかに記載の態様の画像投影装置において、上記投影光学系は、上記光像生成手段により生成された光像に共役な中間光像を形成する第1光学系と、上記中間光像に共役な光像を投影画像として上記投影面に形成する第2光学系とを有し、上記姿勢検出手段は、第2光学系の姿勢を変化させる。かかる構成を備えることで、投影画像を移動させることができる。
【0088】
(6)
また、上記(5)に記載の態様の画像投影装置において、上記第2光学系の姿勢を維持した状態で、上記第2光学系移動させてピントを調整するピント調整手段を備えた。これにより、第2光学系30の姿勢を変化させたときのピントずれを抑制することができる。
【0089】
(7)
また、上記(5)または(6)に記載の態様の画像投影装置において、上記第1光学系は、複数の光学系部品により構成されており、上記第1光学系を構成する複数の光学系部品のうちの少なくともひとつを移動させることでピントを調整するピント調整手段を備えた。かかる構成を備えることで、第2光学系30の姿勢を変化させたときのピントずれを抑制することができる。
【0090】
(8)
また、上記(5)乃至(7)いずれかに記載の態様の画像投影装置において、上記第2光学系は、凹面鏡であり、上記凹面鏡の鏡面を、自由曲面形状にした。これにより、設計の自由度を高めることができ、また、第2光学系30を回転させたときのピントずれを抑制することができる。
【0091】
(9)
また、上記(1)乃至(8)いずれかに記載の態様の画像投影装置において、上記光像生成手段は、変調信号に応じて画像を形成する画像形成部と、上記画像形成部に光を照射する光源とを備えた。かかる構成を備えることで、光像を生成することができる。
【符号の説明】
【0092】
1:プロジェクタ
3:投影光学系
10:画像生成部
20:第1光学系
30:第2光学系
31:回転軸
41:ギヤ
42:モータ
53:画像処理部
54:記憶手段
55:傾き検知センサ
100:テーブル
101:投影面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】
【特許文献1】特開2010−197837号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、光像を生成する光像生成部と、複数のレンズからなる第1光学系と、凹面鏡からなる第2光学系とを備えた投影光学系とを備えた画像投影装置が知られている。この画像投影装置は、第1光学系で、第1光学系と第2光学系との間に光像生成部で形成された光像に共役な中間光像を形成し、第2光学系で中間光像に共役な像を、スクリーンなどの投影面に形成する。投影面に形成された投影画像の上下方向の位置を調整するときは、第2光学系を回転させ、第2光学系の姿勢を変更することで投影画像が上下方向へ移動し、位置が調整される。しかし、第2光学系の姿勢を変更して、投影画像を上下方向へ移動させると、投影画像が、台形状に歪む所謂台形歪みが発生してしまう。
【0003】
特許文献1には、第2光学系と投影面との間に偏向素子を配置し、第2光学系から偏向素子を介して投影面に投影画像を形成するように構成し、この偏向素子の偏向角度を調整することにより、台形歪みを補正する画像投影装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、台形歪みを補正するための偏向素子などの光学系部品や、この光学系部品を動かすための機構などが必要となり、部品点数が増加して装置のコストアップに繋がるという課題があった。また、部品点数の増加に伴って装置サイズが大型化するという課題もある。
【0005】
本発明は以上の課題に鑑みなされたものであり、装置コストアップおよび装置サイズの大型化を抑えつつ台形歪みを補正することができる画像投影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、画像データに基づいて、光像を生成する光像生成手段と、複数の光学系部材で構成され、上記光像生成手段により生成された光像に共役な光像を投影画像として投影面に形成する投影光学系と、上記投影光学系を構成する上記光学系部品の少なくともひとつの姿勢を変化させて、上記投影画像を移動させる投影画像移動手段とを備えた画像投影装置において、上記投影画像移動手段により姿勢を変化させる光学系部品の姿勢を検出する姿勢検出手段と、上記姿勢検出手段の検知結果に基づいて、上記投影画像の台形歪みが生じないように上記光像生成手段で生成する光像を補正する台形歪み補正手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、上記投影画像移動手段により姿勢を変化させる光学系部品の姿勢に基づいて、光像生成手段で生成する光像を補正して、投影画像の台形歪みを補正している。光学系部品の姿勢の変化量と投影画像の移動量とには、相関関係があり、投影画像の移動量と投影画像の台形歪み量とにも相関関係がある。よって、光学系部品の姿勢を検出することにより、投影画像の台形歪み量を把握することができ、光学系部品の姿勢に基づき、光像を補正することにより、投影画像の台形歪みを補正することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光像生成手段で生成する光像を補正することにより、投影画像の歪みを補正するので、特許文献1に記載の構成とは異なり、台形歪みを補正するための光学系部品と、この光学系部品を動かすための機構とを用いることなく投影画像の台形歪み補正することができる。これにより、特許文献1に記載の画像投影装置に比べて、部品点数の増加を抑えることができ、装置コストアップおよび装置サイズの大型化を抑えて、台形歪みを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係るプロジェクタから投影面までの光路図。
【図2】同プロジェクタの構成を示す概略図。
【図3】同プロジェクタの利用シーンの一例を示す図。
【図4】(a)は、第2光学系が基準姿勢のときの光路図であり(b)は、第2光学系を回動させたときの光路図。
【図5】第1光学系の概略図。
【図6】画像生成部で生成される生成画像と、投影面に投影される投影画像との関係を示す図。
【図7】(a)は、画像処理部で補正した画像を画像生成部に表示した図であり、(b)は、台形歪み補正後の投影画像を示す図。
【図8】投影画像移動方向下流側端部に対応する箇所を基準に入力画像を補正した場合の生成画像と、投影画像とを示す図。
【図9】解像度を評価するための画像生成部における光線の位置f1〜f9を示す図。
【図10】上記f1〜f9の投影面に投影されたスポットダイアグラムを示す図。
【図11】投射画像でのf1、f3、f7、f9の座標をプロットしたグラフ。
【図12】第2光学系の傾斜角度を、−39.47°にしたときの上記f1〜f9の投影面に投影されたスポットダイアグラムを示す図。
【図13】第2光学系の傾斜角度が、−39.47°ときの投射画像でのf1、f3、f7、f9の座標をプロットしたグラフ。
【図14】CASE1の補正を実施したときの投射画像でのf1’、f3’、f7’、f9’の座標をプロットしたグラフ。
【図15】CASE2の補正を実施したときの投射画像でのf1’、f3’、f7’、f9’の座標をプロットしたグラフ。
【図16】第2光学系の傾斜角度を、−39.87°にしたときの上記f1〜f9の投影面に投影されたスポットダイアグラムを示す図。
【図17】第2光学系の傾斜角度が、−39.87°ときの投射画像でのf1、f3、f7、f9の座標をプロットしたグラフ。
【図18】第2光学系の傾斜角度が、−39.87°ときのCASE1の補正を実施した場合の投射画像でのf1’、f3’、f7’、f9’の座標をプロットしたグラフ。
【図19】第2光学系の傾斜角度が、−39.87°ときのCASE2の補正を実施した場合の投射画像でのf1’、f3’、f7’、f9’の座標をプロットしたグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明が適用される画像投影装置としてのプロジェクタの実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るプロジェクタ1から投影面101までの光路図であり、図2はプロジェクタ1の構成を示す概略図である。なお、以下の説明では、投影面101の長軸方向をX、短軸方向をY、投影面101の法線方向をZとする。
【0011】
図1、2に示すように、プロジェクタ1は、画像生成手段たる画像生成部10と、画像生成部10で形成された画像を投影面101に投影するための投影光学系3とを有している。投影光学系3は、屈折光学系を少なくとも一つ含み、正のパワーを有する共軸系の第1光学系20、正のパワーを有する反射面を少なくとも一つ含んだ第2光学系30で構成されている。
【0012】
画像生成部10は、複数の画像形成素子(例えば、液晶素子)を備え、変調信号に応じて画像を形成する画像形成部(例えば、液晶パネル)、この画像形成部に対して光を照射する光源などからなる透過型、反射型ドットマトリクス液晶、DMD(Digital MicromirrorDevice)を用いることができる。一例を示すと、光源から出射された光を、複数の光学系部品によりR,G,Bの各色成分光に分離し、R,G,Bの各色に対応して設けられた複数の画像形成素子に入射する。画像処理部53の駆動部53aで、PC(パーソナルコンピュータ)などから入力された画像データに基づいて、変調信号を生成し、各画像形成素子に入力し、各画像素子で画像データに応じた光変調が行われる。その後、ダイクロイックプリズムなどの公知の合成手段により合成して、第1光学系20に向けて、画像光を出射する。
【0013】
投影光学系3は、第1光学系20と第2光学系30とを有し、第1光学系20は、複数の光学系部品からなり、画像生成部10で生成された画像光に共役な中間像を第1光学系20と第2光学系30との間に形成する。この中間像は、第1光学系20と第2光学系30との間に曲面像として結像される。
【0014】
第2光学系30は、1枚の凹面鏡により構成され、投影面101に中間像を「さらに拡大した画像」が投影結像される。投影光学系3を上述のように構成することで、投影距離を短くでき、狭い会議室などでも使用することができる。更に、従来のプロジェクタのように発表者がプロジェクタ1の投影画像の間に入ることで投影画像に影が生じるという問題が軽減される。
【0015】
図3に示すように、本実施形態に係るプロジェクタ1は、例えば会議室などで使用する場合、プロジェクタ1をテーブル100に置いてホワイトボードなどの投影面101に画像を投影して使用される。この場合、投影面101の高さ、プロジェクタ1の設置される高さが固定である。この状態で全画面が投影面101に映らない場合、設置する台を別途用意するなどして投影の高さを調節する必要が生じ、大変煩わしい。そこで、投影面101の高さを調整する機能をプロジェクタ1が備えていればこのような煩わしさがなくなり、ユーザーにとって使いやすいものとなる。
【0016】
本実施形態においては、第2光学系30が、x方向回りに回動可能になっており、第2光学系30をx方向回りに回動させることにより、投影画像の高さ(y方向)の位置が調整可能となっている。具体的には、図2に示すように、第2光学系30は、端部にギヤ41が固定されたx方向に延びる回転軸31に固定されている。ギヤ41には、モータ42のモータギヤ42aが噛み合っている。モータ42を駆動することにより、第2光学系30が、図中時計回りまたは図中反時計回りに回動し、投影画像が、y方向へ移動して、投影画像の位置を調整することができる。図2に示すように、プロジェクタ1には赤外線入力部52を有しており、不図示のリモコンをユーザーが操作すると、不図示のリモコンから赤外線信号が発信され、プロジェクタ1の赤外線入力部52に入力される。赤外線入力部52で、赤外線信号を受信したら、制御部51は、その信号に基づいて、モータ42を駆動して、第2光学系30を図中時計回りまたは図中反時計回りに回動させ、投影画像のy方向の位置が調整される。なお、本実施形態においては、ギヤ41とモータ42とを用いて第2光学系30を回動させているが、これに限られず、公知の手法を用いることができる。また、ユーザーが手動でギヤ41を回すことで第2光学系30を回転させてもよい。
【0017】
図4(a)は、第2光学系30が基準姿勢のときの光路図であり、(b)は、第2光学系30を図中時計回りに回動させたときの光路図である。
図4(a)に示すように、第2光学系30が基準姿勢のときは、投影画像は、投影面101の基準位置に投影される。図4(b)に示すように、基準姿勢から第2光学系30を図中時計回りに回動させると、投影画像が、+y方向にシフトする。これにより、投影画像のテーブル100からの高さが、AからBへと変更することができる。逆に、基準姿勢から第2光学系30を図中反時計回りに回動させると、投影画像が、−y方向にシフトする。
【0018】
第2の光学系30を回転させて、投影画像をy方向へシフトさせると、投影面101に到達する光線の投影面101への入射角度や投射距離がシフト前後で変化するため、シフト後のピントがずれてしまう。投影距離の短いプロジェクタ1ほど投影面101への光線入射角が大きくなるため、このピントずれは顕著にあらわれる。しかし、本実施形態においては、第2の光学系30を凹面鏡として正のパワーを持たせているので、設計の最適化をすることでこの問題を解消し、解像度(ピント)を保ちつつ画面シフトすることが可能となっている。第2光学系30の光を反射する面は、球面、回転対称非球面、自由曲面形状などにすることができる。ここで、自由曲面形状の一例として多項式自由曲面の式を以下に示しておく。
【0019】
「Z=X2・x2+Y2・y2+X2Y・x2y+Y3・y3+X4・x4+X2Y2・x2y2+Y4・y4+X4Y・x4y+X2Y3・x2y3+Y5・y5+X6・x6+X4Y2・x4y2+X2Y4・x2y4+Y6・y6+・・」
ここで、投影画像を基準として上下方向をY方向、左右方向をX方向、曲面のデプスをZ方向、とし、「X2、Y2、X2Y、Y3、X2Y2など」は係数である。第2光学系30の形状に自由度を持たせる程設計の自由度が上がるため、自由曲面形状にすることで解像度(ピント)を維持できる画面のシフトの量を大きくできる。
【0020】
さらに、第2光学系30をx方向回りに回動させるときに、第2光学系30をy方向に移動させてもよい。第2光学系30をy方向に移動させることにより、ピントずれを抑制して、投影画像をy方向に移動させることが可能となる。また、第2光学系30の曲面形状と、第2光学系30のy方向の移動とを組み合わせることにより、ピントを維持するための第2光学系30の曲面形状の設計の自由度が上がるため、ピントを維持しながら投影画像をシフトできる量を大きくできる。第2光学系30のy方向の移動は、第2光学系30を回転させながら移動するのが好ましい。このため、第2光学系30とギヤ41が固定された回転軸31、モータ42、後述する傾き検知センサ55を一体的に支持した枠体を設け、枠体ごとy方向へ移動させる構成が好ましい。
【0021】
また、投影画像をy方向へ移動させるときに、第1光学系20の光学系部品の少なくとも一つを移動させることで、ピントを維持するようにしてもよい。
図5に示すように、第1光学系20を1〜4群に分けると、投影画像を+y方向にシフトする場合は、第2光学系30の回転に合わせて、第1光学系20の第1群を−z方向、第2群を+z方向、第3群を−z方向へ移動させる。これにより、ピントを維持しながら、投影画像を+y方向へシフトさせることができる。
【0022】
次に、本実施形態の特徴点について説明する。
本実施形態においては、上述したように、ピントを維持しつつ投影画像をシフトすることができる。しかし、投影画像をシフトすべく第2光学系30を、基準の姿勢から回転させると第2光学系30から投影面101までの距離が変化するため台形歪みが発生する。画面シフト量が小さければ、第2光学系30の曲面形状を最適化することで台形歪みが生じるのを抑えることができるが、画面シフト量が大きい場合は、第2光学系30の曲面形状の最適化では対処できず、台形歪みが発生してしまう。
【0023】
図6は、画像生成部10で生成される生成画像と、投影面101に投影される投影画像との関係を示す図である。(a)が、画像生成部10で生成される生成画像を示しており、(b)は、投影面101に投影された投影画像を示している。
図に示すように、第2光学系30が基準姿勢のときは、図4(b)の破線で示すように、生成画像のアスペクト比と同じアスペクト比の拡大投影画像が、投影面101に投影される。一方、第2光学系30を回転させて、投影画像を+y方向へシフトさせると、図6(b)に示すように、台形歪みが発生してしまう。
【0024】
そこで、本実施形態では、入力画像を補正することにより投影画像の台形歪みを補正している。以下に、具体的に説明する。
先の図2に示すように、本実施形態のプロジェクタ1には、入力画像を補正する台形歪み補正手段としての画像処理部53を有している。画像処理部53には、第2光学系30の傾きを検知するための傾き検知センサ55と、記憶手段54とが接続されている。記憶手段54には、第2光学系30の傾きと、画像補正係数とが関連づけられたテーブルが記憶されている。画像処理部53は、傾き検知センサ55の検知結果と、記憶手段54に記憶されているテーブルとから、画像補正係数を把握し、把握した画像補正係数に基づいて、入力画像を補正する。そして、補正した入力画像を、画像生成部10に送信する。
【0025】
姿勢検出手段としての傾き検知センサ55としては、ポテンショメータを用いることができる。ポテンショメータを、回転軸31に取り付け、第2光学系30の傾きに比例して変化する抵抗値を読み取ることで傾きを検知することができる。また、傾き検知センサ55として加速度センサを用いてもよい。加速度センサを用いた場合は、重力加速度Gを検出し、このG正弦関数により傾きを求めることができる。なお、これらの方法に限定するものではなく、公知の方法を適宜用いることができる。
【0026】
図7(a)は、画像処理部53の補正部53bで補正した画像を画像生成部10に表示した図であり、(b)は、台形歪み補正後の投影画像を示す図である。図7(a)の一点鎖線は、画像処理部53の補正部53bで補正していない画像を画像生成部10に表示した場合を示しており、図7(b)の一点鎖線は、台形歪み補正前の投影画像を示しており、図7(b)の破線は、第2光学系30が基準姿勢のときの投影画像を示している。
画像処理部53の補正部53bで入力された画像データは、図7(b)の一点鎖線で示す台形歪み補正前の投影画像の台形形状とは、逆台形形状に補正される。画像処理部53の補正部は、傾き検知センサ55の検知結果に基づいて、画像データの画素を間引き、間引き後補完処理を行って補正画像データを生成する。駆動部53aは、この補正画像データに基づいて、画像形成部の各画像形成素子に変調信号を入力し、画像形成部に補正画像が生成される。図7(b)の破線と、図7(b)の一点鎖線を比べるとわかるように、台形歪みの投影画像は、図中上側(+y方向)にいくにつれて、x方向、y方向に引き延ばされている。このため、画像処理部53の補正部53bでは、画像データのx方向ラインの画素を所定のアルゴリズムにより間引いて、入力画像のy方向の高さを補正する。これにより、投影画像のy方向の歪みが補正され、図7(b)に示すように、補正後の投影画像のy方向の長さを、図中破線で示す基準位置の投影画像の長さと同じにすることができる。次に、間引かれずに残ったx方向ラインに並ぶ複数の画素のうちいくつかを、補正後のy方向の位置に基づいて、所定のアルゴリズムにより間引く。これにより、画像データが、投影画像の台形形状とは逆の台形形状に補正される。これにより、図7(b)に示すように、補正後の投影画像のアスペクト比を、図中破線で示す基準位置の投影画像のアスペクト比と同じにすることができる。
【0027】
本実施形態のy方向の長さを補正するためのx方向ラインの間引きは、画像データの投影画像移動方向上流側端部(図中下端)に対応する箇所を基準にして行われる。すなわち、補正後の生成画像の下端と、補正前の生成画像の下端とを一致させるのである。このように、下端基準とすることで、入力画像を台形形状にする際のy方向の位置に基づいて、間引かれる画素の量を、上端基準にした場合に比べて、少なくすることができ、結果として補正によるx方向の解像劣化を抑えることができる。
【0028】
上述では、画面シフト方向を+y方向とした場合について説明したが、画面を−y方向にシフトした場合、投影画像移動方向上流側端部に対応する箇所は、画像の上端側となり、この場合は、画像の上端を基準にして入力画像の補正が行われる。
【0029】
このようにして、画像処理部53の補正部53bで所定のアルゴリズムに基づき、入力画像の画素を間引いて、画像データを、図7(a)に示すような台形形状に補正することにより、図7(b)に示すように、投影画像の台形歪みを補正することができる。
【0030】
また、上記では、投影画像のy方向の歪み補正を、画像データの投影画像移動方向上流側端部に対応する箇所を基準に行っているが、これとは逆に画像データの投影画像移動方向下流側端部に対応する箇所を基準に行ってもよい。
図8は、画像データの投影画像移動方向下流側端部に対応する箇所を基準に画像データを補正した場合の生成画像と、投影画像とを示す図である。
この図8においても、投影画像を+y方向にシフトする場合について説明する。
図8(a)に示すように、投影画像を+y方向にシフトする場合は、投影画像移動方向下流側端部は、図中上側となる。この場合は、図8(a)に示すように、補正後の生成画像の図中下端の位置が、図中一点鎖線の補正前の生成画像の下端位置に比べて、+y方向側となる。その結果、補正後の投影画像が、入力画像の投影画像移動方向上流側端部に対応する箇所を基準にした補正後の投影画像に比べて、+y方向へシフトさせることができる(図7(b)、図8(b)参照)。すなわち、画像データの投影画像移動方向下流側端部に対応する箇所を基準にすると、第2光学系の回転量に対する投影画像のシフト量を大きくすることができるのである。これにより、投影画像のシフト量が同じ場合、投影画像移動方向上流側端部に対応する箇所を基準にした場合に比べて、第2光学系の回転量(姿勢の変化量)を少なくすることができる。よって、投影画像移動方向上流側端部に対応する箇所を基準にした場合に比べて、x方向ラインの画素の間引き量を低減することができ、y方向の解像度の低下を抑制することができる。また、第2光学系の回転量(姿勢の変化量)を少なくできるので、結果的に、x方向の解像度の劣化の抑制も見込める。
【0031】
投影画像移動方向上流側端部に対応する箇所を基準にするか、下流側端部に対応する箇所を基準にするかは、装置の構成により適宜決めればよい。投影画像をy方向へ移動させたとき、x方向の歪みが、y方向の歪みよりも大きい場合は、投影画像移動方向上流側端部に対応する箇所を基準にすることで、解像度の低下を効果的に抑制することができる。これとは逆に、y方向の歪みが大きい場合は、投影画像移動方向下流側端部に対応する箇所を基準にすることで、解像度の低下を効果的に抑制することができる。
【0032】
また、上述では、投影画像をy方向にシフトさせる場合について説明したが、第2光学系30をy方向回りに回転する構成にすることで画面を±x方向にシフトさせることができる。また、上記では、テーブルに基づいて、第2光学系30の傾きに対する画像補正係数を特定しているが、演算式を用いて、第2光学系30の傾きに対する画像補正係数を特定してもよい。
【0033】
以下に、実施例に基づいて、本発明を、具体的に説明する。
【0034】
[実施例]
実施例のプロジェクタの画像生成部10は0.64インチ、縦横比16:10であり、実施例のプロジェクタの拡大倍率は、94倍である。なお、拡大倍率とは、画像生成部10で生成された画像サイズと、投影面101に投影された投影画像サイズのおおよその比である。また、実施例のプロジェクタのFナンバーは、F2.5である。また、表2は、実施例1のプロジェクタ1の諸元を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示す面番号は、光像が通過する面を、画像生成部10の画像生成面を0にして、光像が通過する順に番号を振ったもので、面番号26は、投影面101である。例えば、面番号1は、画像形成部10の画像生成面に対向配置された透過ガラスの光像の入射面であり、面番号2は、透過ガラスの光像出射面である。また、面番号5、24は、ダミーである。また、面形状が球で、曲率半径が無限大のものは、平面であることを示している。面番号3〜23が、第1光学系20の各レンズの入射面および出射面であり、面番号14、15が、先の図5に示す第3群のレンズであり、面番号16〜21が、先の図5に示す第2群のレンズであり、面番号22、23が、先の図5に示す第1群のレンズである。また、面番号25は、第2光学系30である。
【0037】
また、表のシフトとは、Y方向のシフト偏心量であり、チルトとは、X軸を回転軸としたチルト偏心量である。また、表1の曲率半径、面間隔、シフト偏心量の単位は、ミリである。また、シフトの符号は、図2における上方向のシフトを、+の符号とし、下方向のシフトを−の符号とした。また、チルトの符号は、X軸まわりにおける左回転のチルトを、+の符号とし、X軸まわりにおける右回転のチルトを、−の符号とした。また、第2光学系30の反射面のY軸に対する傾斜角度は、−39.07°である。
【0038】
また、表1の面番号3、4、20〜23の面の非球面は、回転対称非球面であるが、非対称の非球面でも良い。 回転対称非球面は周知のとおり、Zを光軸方向のデプス、cを近軸曲率半径、rを光軸からの光軸直交方向の距離、kを円錐係数、A、B、C、・・・等を高次の非球面係数とすると、 Z=c・r2/[1+√{1−(1+k)c2・r2}]+A・r4+B・r6+C・r8・・・ という非球面式となり、k、A、B、C・・・の値を与えて形状を特定する。このように、第1光学系20に非球面レンズを用いることにより設計の自由度が高くなり、スクリーン上での結像性能が上がる。表2に、本実施例における上記式の各係数の値を示す。
【0039】
【表2】
【0040】
本実施例の第2光学系30の反射面(面番号25)は、アナモフィックな多項式自由曲面形状である。第2光学系30の正のパワーを持つ反射ミラーがアナモフィックな多項式自由曲面形状であれば、「それぞれの像高に対する反射領域」ごとに、反射面の曲面形状を調整することができ、収差補正性能がよくなる。本実施例の多項式自由曲面の式(Z=X2・x2+Y2・y2+X2Y・x2y+Y3・y3+X4・x4+X2Y2・x2y2+Y4・y4+X4Y・x4y+X2Y3・x2y3+Y5・y5+X6・x6+X4Y2・x4y2+X2Y4・x2y4+Y6・y6+・・)の各係数の値を、表3に示す。
【表3】
【0041】
次に、本実施例の解像度について、説明する。
図9は、解像度を評価するための画像生成部10における光線の位置の定義を説明する図である。
図9に示すように、XY平面の画像形成部10のX方向中央部の位置をX軸方向の基準位置とし、この基準位置より図中左側を−、図中右側を+とした。また、画像形成面の図中下端の位置をY軸方向の基準位置とし、この基準位置より図中下側を−、図中上側を+とした。そして、画像生成部10のX≦0のエリアについて、X方向に3等分割、Y方向に3等分割して得られる9個の格子点f1〜f9を、解像度を評価するための評価点とした。なお、図1に示すように、投影画像面(投影面101)はXY面上にあり、投影画像面上のスポット特性は、Y軸に対して±X方向には対称なスポット特性を示すため、X≦0のエリアについてのみ解像度を評価すればよい。
【0042】
図10は、上記f1〜f9の投影面101に投影されたスポットダイアグラムを示す図である。図10に示すように、各評価点f1〜f9のスポットは良く集光していることがわかる。本実施例ではWXGAクラスの解像度が得られている。WXGAの解像周波数において、白色のModulation Transfer Function(MTF)として、画面全域で50%以上の性能が得られる。
【0043】
下記表4は、画像生成部10と投射画像におけるf1、f3、f7、f9の座標を示したものであり、図11は、投射画像でのf1、f3、f7、f9の座標をプロットしたものである。図より、歪みのない画像の得られていることがわかる。
【表4】
【0044】
下記表5は、第2光学系30を回転させて、第2光学系30の反射面のY軸に対する傾斜角度を、−39.47°とした諸元を示すものである。
【0045】
【表5】
【0046】
上記のように、第2光学系をさらに傾けることで、投影画像は、+y方向へシフトする。よって、このときは、先の図5を用いて説明したように、第1光学系20の第1群を−z方向、第2群を+z方向、第3群を−z方向へ移動させて、ピントを維持する。よって、表5の○で標記したところに示すように、第1光学系の第3群が、−z方向へ移動するので、面番号13(第1光学系の第4群の光進行方向最下流に配置されたレンズの出射面)と、面番号14(第1光学系の第3群の光進行最上流に配置されたレンズの入射面)との間の距離(面間隔)が、0.13mmとなり、0.03mm距離が縮まる。
【0047】
同様に、第1光学系の第2群が、+z方向に移動するので、面番号15(第1光学系の第3群の光進行最下流に配置されたレンズの出射面)と、面番号16(第1光学系の第2群の光進行最上流に配置されたレンズの入射面)との距離(面間隔)が、0.17mmとなり、0.07mm距離が広がる。また、第1光学系20の第1群が、−z方向へ移動するので、面番号21(第1光学系の第2群の光進行最下流に配置されたレンズの出射面)と、面番号22(第1光学系の第1群の光進行最上流に配置されたレンズの入射面)との距離(面間隔)が、8.68mmとなり、0.15mm距離が縮まる。また、面番号23(第1光学系の第1群の光進行最下流に配置されたレンズの出射面)とダミーの面である面番号24との距離が、0.30mmとなり、0.1mm距離が広がる。
【0048】
図12は、第2光学系30を回転させて、第2光学系30の反射面のY軸に対する傾斜角度を、−39.47°にしたときの上記f1〜f9の投影面101に投影されたスポットダイアグラムを示す図である。
図に示すように、第1光学系の第1群〜第3群をそれぞれ移動させることにより、良好に集光できることがわかる。これにより、WXGAの解像周波数において、白色のMTFとして画面全域で50%以上の性能が得られる。
【0049】
下記表6は、第2光学系30を回転させて、第2光学系30の反射面のY軸に対する傾斜角度を−39.47°にしたときの画像生成部10と投射画像におけるf1、f3、f7、f9の座標を示したものであり、図13は、投射画像でのf1、f3、f7、f9の座標をプロットしたものである。
先の図11と、図13とを比較するとわかるように、投影画像の上側が、+y方向にシフトしていることがわかる。しかし、図13に示すように、台形歪みが増大していることがわかる。また、図11と図13に示すように、画像がY方向に延びていることもわかる。
【0050】
【表6】
【0051】
よって、上述したように、画像データの画素を間引いて、図13に示すような投影画像の歪みを補正する。以下に、上述したように投影画像のy方向の長さを補正するためのx方向ラインの間引きを、画像データの投影画像移動方向上流側端部(本実施例では、下端)に対応する箇所を基準にした場合を、CASE1とし、画像データの投影画像移動方向下流側端部(本実施例では、上端)に対応する箇所を基準にした場合を、CASE2として説明する。なお、本実施例では、CASE1、CASE2共に拡大倍率94倍を維持するよう補正する。
【0052】
下記表7は、CASE1の補正を実施したときの画像生成部と投射画像におけるf1’、f3’、f7’、f9’の座標をしたものであり、図14は、CASE1の補正を実施したときの投射画像でのf1’、f3’、f7’、f9’の座標をプロットしたものである。
【0053】
【表7】
【0054】
上記表6と上記表7を比べてわかるように、CASE1の場合は、画像データの投影画像移動方向上流側端部(本実施例では、下端)に対応する箇所を基準にしてx方向ラインの間引きを行うため、画像生成部10のf1’、f7’のY方向の位置は、表6に示す補正前のf1、f7のY方向位置と同じである。一方、Y方向上端側にあるf3’、f9’は、画像処理部53で画像データのX方向ラインが複数間引かれている関係で、表6の示すf3、f9の位置よりも下方へ移動している。
【0055】
また、間引かれずに残ったx方向ラインに並ぶ複数の画素のうちいくつかを、補正後のy方向の位置に基づいて、所定のアルゴリズムにより間引くため、f9’が、f9よりx方向内側へ移動する。
【0056】
このようにして、画像データの画素を間引くことで、図14に示すように、投影画像を+y方向へシフトしながら歪みのない画像を得ることができる。
【0057】
下記表8は、CASE2の補正を実施したときの画像生成部と投射画像におけるf1’、f3’、f7’、f9’の座標をしたものであり、図15は、CASE2の補正を実施したときの投射画像でのf1’、f3’、f7’、f9’の座標をプロットしたものである。
【0058】
【表8】
【0059】
上記表6、表8を比べてわかるように、CASE2の場合は、画像データの投影画像移動方向下流側端部(本実施例では、上端)に対応する箇所を基準にしてx方向ラインの間引きを行うため、画像生成部10のf1’、f7’のY方向の位置が、画像処理部53で画像データのX方向ラインが複数間引かれている関係で、表6の示すf3、f9の位置よりも上方へ移動している。また、CASE1と同様に、間引かれずに残ったx方向ラインに並ぶ複数の画素のうちいくつかを、補正後のy方向の位置に基づいて、所定のアルゴリズムにより間引くため、f9’が、f9よりx方向内側へ移動する。
【0060】
このようにして、画像データの画素を間引くことでも、図15に示すように、投影画像を+y方向へシフトしながら歪みのない画像を得ることができる。
【0061】
CASE1およびCASE2においては、画像データの画素を間引くことで、投影画像の歪みを補正しているため、解像度が劣化する。
【0062】
下記表9は、CASE1、CASE2の補正をした場合の画像処理後解像度と画面シフト量とを示したものである。ここで画像処理後解像度とは、画像処理前後での画像生成部10の使用領域の面積比である。画像処理をしない場合、画像生成部10の有効面積は6.92×8.64×2≒120mm2である。例えば、CASE1の場合の画像処理後解像度は(115/120)×100=96%となる。
【0063】
【表9】
【0064】
CASE1では、画像データの画素を間引いて、画像生成部10で生成する画像を、先の図7(a)に示すような台形形状として、先の図6(a)に示すように、画像データを間引かず、画像生成部10の全体を使用するときよりも画像生成部10の使用する面積の小さくする。また、CASE2では、画像生成部10で生成する画像を、先の図8(a)に示すような台形形状として、先の図6(a)に示すように、画像データを間引かず、画像生成部10の全体を使用するときよりも画像生成部10の使用する面積の小さくする。よって、この面積比の分、解像度が劣化する。従って、画像処理前後での画像生成部10の使用領域の面積比を調べることで、解像度の劣化を調べることができる。
【0065】
表9から分かるように、CASE1の補正を行った場合CASE2に比べ解像度劣化を抑制することができ、CASE2の補正を行った場合CASE1に比べ画面シフト量を大きくすることができる。
【0066】
次に、第2光学系30をさらに回転させて、第2光学系30の反射面のY軸に対する傾斜角度を、−39.87°とした場合について説明する。
【0067】
下記表10は、第2光学系30を回転させて、第2光学系30の反射面のY軸に対する傾斜角度を、−39.87°としたときの諸元を示すものである。
【0068】
【表10】
【0069】
上記表10の面番号13、15、21、23の面間隔に○で表示したように、表5の○で表示した面番号13、15、21、23の面間隔の数値に対して、数値が変化している。これは、第2光学系30を、傾斜角度をさらに大きくして、投影画像をさらに+y方向へシフトせることで、第1光学系20の第1群をさらに−z方向へ移動させ、第2群をさらに+z方向、第3群をさらに−z方向へ移動させて、ピントを維持するためである。
【0070】
図16は、第2光学系30を回転させて、第2光学系30の反射面のY軸に対する傾斜角度を、−39.87°にしたときの上記f1〜f9の投影面101に投影されたスポットダイアグラムを示す図である。
図に示すように、第1光学系20の第1群〜第3群をそれぞれ移動させることにより、良好に集光できることがわかる。これにより、WXGAの解像周波数において、白色のMTFとして画面全域で50%以上の性能が得られる。
【0071】
下記表11は、第2光学系30を回転させて、第2光学系30の反射面のY軸に対する傾斜角度を−39.47°にしたときの画像生成部10と投射画像におけるf1、f3、f7、f9の座標を示したものであり、図17は、投射画像でのf1、f3、f7、f9の座標をプロットしたものである。
【0072】
【表11】
【0073】
先の図13と、図17とを比較するとわかるように、投影画像が、+y方向にさらにシフトしていることがわかる。しかし、図17に示すように、台形歪みがさらに増大していることがわかる。また、図17に示すように、画像がY方向にさらに延びていることもわかる。
【0074】
下記表12は、CASE1の補正を実施したときの画像生成部と投射画像におけるf1’、f3’、f7’、f9’の座標をしたものであり、図18は、CASE1の補正を実施したときの投射画像でのf1’、f3’、f7’、f9’の座標をプロットしたものである。
【0075】
【表12】
【0076】
上記表12に示すように画像生成部10の座標を補正することで、図18に示すように、歪みのない画像の得られることが分かる。上記表11と上記表12を比べてわかるように、Y方向上端側にあるf3’、f9’は、画像処理部53で画像データのX方向ラインが複数間引かれている関係で、表11の示すf3、f9の位置よりも下方へ移動している。また、表7と表11とを比べてわかるように、第2光学系30の傾斜角度が−39.47°の場合に比べて、投影画像の歪みが大きく、画像データのX方向ラインの間引き量が多いため、第2光学系30の傾斜角度が−39.47°の場合に比べて、f3’、f9’の位置がより下方へ移動している。また、同様に、第2光学系30の傾斜角度が−39.47°の場合に比べて、f’9のx方向の移動量が大きくなる。
【0077】
下記表13は、CASE2の補正を実施したときの画像生成部と投射画像におけるf1’、f3’、f7’、f9’の座標をしたものであり、図19は、CASE2の補正を実施したときの投射画像でのf1’、f3’、f7’、f9’の座標をプロットしたものである。
【0078】
【表13】
【0079】
上記表13に示すように画像生成部10の座標を補正することで、図18に示すように、歪みのない画像の得られることが分かる。また、上記表8、上記表13を比べてわかるように、第2光学系30の傾斜角度が−39.47°の場合に比べて、f’3、f’9の位置が上方へ移動する。また、第2光学系30の傾斜角度が−39.47°の場合に比べて、f’9のx方向の移動量が大きくなる。また、Y方向下端のX方向ライン画素も複数間引いているため、f7’の位置が、表11の画像データ補正前のf7の位置よりもx方向内側へ移動する。
【0080】
下記表14は、第2光学系30の傾斜角度が−39.87°にしたときにおけるCASE1、CASE2の補正をした場合の画像処理後解像度と画面シフト量とを示したものである。
【0081】
【表14】
【0082】
この場合も、CASE1の補正を行った場合CASE2に比べ解像度劣化を抑制することができ、CASE2の補正を行った場合CASE1に比べ画面シフト量を大きくすることができる。また、表9と表14とを比べるとわかるように、第2光学系30の傾斜角度が−39.47°の場合に比べて、投影画像の歪みが大きく、間引く画素が多いため、解像度が低下していることがわかる。
【0083】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の(1)〜(9)態様毎に特有の効果を奏する。
(1)
画像データに基づいて、光像を生成する画像生成部10などの光像生成手段と、複数の光学系部材で構成され、上記光像生成手段により生成された光像に共役な光像を投影画像として投影面に形成する投影光学系(本実施形態においては、第1光学系20と第2光学系30とで構成)と、上記投影光学系を構成する上記光学系部品(本実施形態においては、第2光学系30)の少なくともひとつの姿勢を変化させて、上記投影画像を移動させる投影画像移動手段(本実施形態においては、ギヤ41とモータ42とで構成)とを備えたプロジェクタ1などの画像投影装置において、上記投影画像移動手段により姿勢を変化させる光学系部品の姿勢を検出する傾き検知センサ55などの姿勢検出手段と、上記姿勢検出手段の検知結果に基づいて、上記投影画像の台形歪みが生じないように上記光像生成手段で生成する光像を補正する画像処理部53などの台形歪み補正手段とを備えている。かかる構成を有することにより、光学系部品や光学系部品を移動させる移動機構などからなる台形歪み補正機構を設けずとも、台形歪みを補正することができ、部品点数を削減することができる。その結果、装置の省スペース化を図ることができ、また、装置のコストダウンを図ることができる。
【0084】
(2)
また、上記(1)に記載の態様の画像投影装置において、上記台形歪み補正手段は、上記画像データを上記投影画像の台形歪みが生じないように補正することを特徴とするものである。
かかる構成を備えることで、投影画像の台形歪みを抑制することができる。
【0085】
(3)
また、上記(2)に記載の態様の画像投影装置において、上記台形歪み補正手段は、上記画像データの上記投影画像の移動方向下流端に対応する箇所を基準にして、上記投影画像の上記投影画像移動方向の歪みを補正する。これにより、上述したように、投影画像移動方向に対して直交する方向(x方向)の歪みを補正するときの画素の間引き量を、上記投影画像の移動方向上流端に対応する箇所を基準にした場合に比べて、少なくすることができ、x方向の解像度の低下を抑制することができる。
【0086】
(4)
また、上記(2)に記載の態様の画像投影装置において、上記台形歪み補正手段は、上記画像データの上記投影画像の移動方向上流端に対応する箇所を基準にして、上記投影画像の上記投影画像移動方向の歪みを補正する。これにより、第2光学系30の回転量に対する投影画像のシフト量を多くすることができる。
【0087】
(5)
また、上記(1)乃至(4)いずれかに記載の態様の画像投影装置において、上記投影光学系は、上記光像生成手段により生成された光像に共役な中間光像を形成する第1光学系と、上記中間光像に共役な光像を投影画像として上記投影面に形成する第2光学系とを有し、上記姿勢検出手段は、第2光学系の姿勢を変化させる。かかる構成を備えることで、投影画像を移動させることができる。
【0088】
(6)
また、上記(5)に記載の態様の画像投影装置において、上記第2光学系の姿勢を維持した状態で、上記第2光学系移動させてピントを調整するピント調整手段を備えた。これにより、第2光学系30の姿勢を変化させたときのピントずれを抑制することができる。
【0089】
(7)
また、上記(5)または(6)に記載の態様の画像投影装置において、上記第1光学系は、複数の光学系部品により構成されており、上記第1光学系を構成する複数の光学系部品のうちの少なくともひとつを移動させることでピントを調整するピント調整手段を備えた。かかる構成を備えることで、第2光学系30の姿勢を変化させたときのピントずれを抑制することができる。
【0090】
(8)
また、上記(5)乃至(7)いずれかに記載の態様の画像投影装置において、上記第2光学系は、凹面鏡であり、上記凹面鏡の鏡面を、自由曲面形状にした。これにより、設計の自由度を高めることができ、また、第2光学系30を回転させたときのピントずれを抑制することができる。
【0091】
(9)
また、上記(1)乃至(8)いずれかに記載の態様の画像投影装置において、上記光像生成手段は、変調信号に応じて画像を形成する画像形成部と、上記画像形成部に光を照射する光源とを備えた。かかる構成を備えることで、光像を生成することができる。
【符号の説明】
【0092】
1:プロジェクタ
3:投影光学系
10:画像生成部
20:第1光学系
30:第2光学系
31:回転軸
41:ギヤ
42:モータ
53:画像処理部
54:記憶手段
55:傾き検知センサ
100:テーブル
101:投影面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】
【特許文献1】特開2010−197837号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて、光像を生成する光像生成手段と、
複数の光学系部材で構成され、上記光像生成手段により生成された光像に共役な光像を投影画像として投影面に形成する投影光学系と、
上記投影光学系を構成する上記光学系部品の少なくともひとつの姿勢を変化させて、上記投影画像を移動させる投影画像移動手段とを備えた画像投影装置において、
上記投影画像移動手段により姿勢を変化させる光学系部品の姿勢を検出する姿勢検出手段と、
上記姿勢検出手段の検知結果に基づいて、上記投影画像の台形歪みが生じないように上記光像生成手段で生成する光像を補正する台形歪み補正手段とを備えたことを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
請求項1の画像投影装置において、
上記台形歪み補正手段は、上記画像データを上記投影画像の台形歪みが生じないように補正することを特徴とする画像投影装置。
【請求項3】
請求項2の画像投影装置において、
上記台形歪み補正手段は、上記画像データの上記投影画像の移動方向下流端に対応する箇所を基準にして、上記投影画像の上記投影画像移動方向の歪みを補正することを特徴とする画像投影装置。
【請求項4】
請求項2の画像投影装置において、
上記台形歪み補正手段は、上記画像データの上記投影画像の移動方向上流端に対応する箇所を基準にして、上記投影画像の上記投影画像移動方向の歪みを補正することを特徴とする画像投影装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかの画像投影装置において、
上記投影光学系は、上記光像生成手段により生成された光像に共役な中間光像を形成する第1光学系と、上記中間光像に共役な光像を投影画像として上記投影面に形成する第2光学系とを有し、
上記姿勢検出手段は、第2光学系の姿勢を変化させることを特徴とする画像投影装置。
【請求項6】
請求項5の画像投影装置において、
上記第2光学系の姿勢を維持した状態で、上記第2光学系移動させてピントを調整するピント調整手段を備えたことを特徴とする画像投影装置。
【請求項7】
請求項5または6の画像投影装置において、
上記第1光学系は、複数の光学系部品により構成されており、
上記第1光学系を構成する複数の光学系部品のうちの少なくともひとつを移動させることでピントを調整するピント調整手段を備えたことを特徴とする画像投影装置。
【請求項8】
請求項5乃至7いずれかの画像投影装置において、
上記第2光学系は、凹面鏡であり、
上記凹面鏡の鏡面を、自由曲面形状にしたことを特徴とする画像投影装置。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれかの画像投影装置において、
上記光像生成手段は、変調信号に応じて画像を形成する画像形成部と、上記画像形成部に光を照射する光源とを備えたことを特徴と画像投影装置。
【請求項1】
画像データに基づいて、光像を生成する光像生成手段と、
複数の光学系部材で構成され、上記光像生成手段により生成された光像に共役な光像を投影画像として投影面に形成する投影光学系と、
上記投影光学系を構成する上記光学系部品の少なくともひとつの姿勢を変化させて、上記投影画像を移動させる投影画像移動手段とを備えた画像投影装置において、
上記投影画像移動手段により姿勢を変化させる光学系部品の姿勢を検出する姿勢検出手段と、
上記姿勢検出手段の検知結果に基づいて、上記投影画像の台形歪みが生じないように上記光像生成手段で生成する光像を補正する台形歪み補正手段とを備えたことを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
請求項1の画像投影装置において、
上記台形歪み補正手段は、上記画像データを上記投影画像の台形歪みが生じないように補正することを特徴とする画像投影装置。
【請求項3】
請求項2の画像投影装置において、
上記台形歪み補正手段は、上記画像データの上記投影画像の移動方向下流端に対応する箇所を基準にして、上記投影画像の上記投影画像移動方向の歪みを補正することを特徴とする画像投影装置。
【請求項4】
請求項2の画像投影装置において、
上記台形歪み補正手段は、上記画像データの上記投影画像の移動方向上流端に対応する箇所を基準にして、上記投影画像の上記投影画像移動方向の歪みを補正することを特徴とする画像投影装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかの画像投影装置において、
上記投影光学系は、上記光像生成手段により生成された光像に共役な中間光像を形成する第1光学系と、上記中間光像に共役な光像を投影画像として上記投影面に形成する第2光学系とを有し、
上記姿勢検出手段は、第2光学系の姿勢を変化させることを特徴とする画像投影装置。
【請求項6】
請求項5の画像投影装置において、
上記第2光学系の姿勢を維持した状態で、上記第2光学系移動させてピントを調整するピント調整手段を備えたことを特徴とする画像投影装置。
【請求項7】
請求項5または6の画像投影装置において、
上記第1光学系は、複数の光学系部品により構成されており、
上記第1光学系を構成する複数の光学系部品のうちの少なくともひとつを移動させることでピントを調整するピント調整手段を備えたことを特徴とする画像投影装置。
【請求項8】
請求項5乃至7いずれかの画像投影装置において、
上記第2光学系は、凹面鏡であり、
上記凹面鏡の鏡面を、自由曲面形状にしたことを特徴とする画像投影装置。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれかの画像投影装置において、
上記光像生成手段は、変調信号に応じて画像を形成する画像形成部と、上記画像形成部に光を照射する光源とを備えたことを特徴と画像投影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図17】
【図18】
【図19】
【図10】
【図12】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図17】
【図18】
【図19】
【図10】
【図12】
【図16】
【公開番号】特開2012−209927(P2012−209927A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236011(P2011−236011)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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