画像生成装置
【課題】複数の分割画像を合成して大サイズの画像を形成する構成において、合成による解像力の劣化を可及的に小さくする。
【解決手段】画像生成装置が、互いに間隙を介して離散的に配置された複数の撮像素子と、撮像素子との相対位置が固定されている撮像光学系と、撮像素子と撮像光学系の相対位置を変えながら撮像した複数の画像を繋ぎ合せて被写体全体の画像を生成する合成手段と、を有する。各撮像素子で得られる画像における撮像光学系の収差は、撮像光学系と撮像素子との相対位置により予め定まっている。合成手段は、繋ぎ合せる2つの画像同士が重複する重複領域内に補正領域を設定し、補正領域内の画素に対して補正処理を施すことによって2つの画像の繋ぎ目を滑らかにする。補正領域の大きさは、繋ぎ合せる2つの画像を撮像した撮像素子の組み合わせにより決まる収差の違いに応じて、定められる。
【解決手段】画像生成装置が、互いに間隙を介して離散的に配置された複数の撮像素子と、撮像素子との相対位置が固定されている撮像光学系と、撮像素子と撮像光学系の相対位置を変えながら撮像した複数の画像を繋ぎ合せて被写体全体の画像を生成する合成手段と、を有する。各撮像素子で得られる画像における撮像光学系の収差は、撮像光学系と撮像素子との相対位置により予め定まっている。合成手段は、繋ぎ合せる2つの画像同士が重複する重複領域内に補正領域を設定し、補正領域内の画素に対して補正処理を施すことによって2つの画像の繋ぎ目を滑らかにする。補正領域の大きさは、繋ぎ合せる2つの画像を撮像した撮像素子の組み合わせにより決まる収差の違いに応じて、定められる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の離散的に配置された撮像素子を用いて被写体を分割して撮像し、それら複数の分割画像を合成して大サイズの画像を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
病理分野において、病理診断のツールである光学顕微鏡の代替として、プレパラートに載置された被検試料を撮像しデジタル化してディスプレイ上での病理診断を可能とするバーチャル・スライド装置がある。バーチャル・スライド装置による病理診断のデジタル化により、従来の被検試料の光学顕微鏡像をデジタルデータとして取り扱える。それによって、遠隔診断の迅速化、デジタル画像を使った患者への説明、希少症例の共有化、教育・実習の効率化、などのメリットが得られる。
【0003】
光学顕微鏡での操作をバーチャル・スライド装置によるデジタル化で実現するためには、プレパラート上の被検試料全体をデジタル化する必要がある。被検試料全体のデジタル化により、バーチャル・スライド装置で作成したデジタルデータをPCやWSで動作するビューワソフトで観察することができる。被検試料全体をデジタル化した場合の画素数は、通常、数億画素から数十億画素と非常に大きなデータ量となる。そのためバーチャル・スライド装置では、数十万から数百万程度の画素数を有する2次元撮像素子、または、数千程度の画素数を有する1次元撮像素子を用いて被検試料の領域を複数に分割して撮像することが行われる。そして、被検試料全体の画像の生成には、レンズ収差などによる画像の歪曲やずれを考慮しながら、分割画像同士を合成する(繋ぎ合せる)技術が必要となる。
【0004】
画像合成技術として以下の提案がされている(特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1では、パノラマ画像を生成する画像合成装置において、推定した収差情報に基づいて少なくとも画像の重複領域について収差補正を行い、補正されたそれぞれの画像を合成する技術が開示されている。特許文献2では、マルチカメラと被写体の距離に応じてスティッチングポイントを動的に変化させて視差現象を無視できるようにし、シームレスな広角画像を得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−004660号公報
【特許文献2】特開2010−050842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の画像合成技術は、隣接する画像の間に重複領域(繋ぎ目)を設け、その重複領域内の画素に対し画像補正処理(画素補間)を施すことで、2つの画像を繋ぎ合せるという方法が一般的である。この方法は、画像の繋ぎ目を目立たなくできるという利点がある反面、重複領域の部分で画像補正による解像力の劣化が生じてしまうという課題がある。特に、バーチャル・スライド装置にあっては、病理診断での診断精度向上のため、画像補正による解像力劣化は極力少なくし、オリジナルに忠実な画像を得ることが望まれる。
【0007】
しかしながら、特許文献1の実施例1では、2つの画像の同一領域を撮像した重複領域で歪曲収差補正を行うことで、画像補間に伴うぼけが発生する面積を低減しているが、その面積は2つの画像の重複領域に依存し、重複領域そのものとある。そして、重複領域内
で補正領域を更に低減することには言及していない。
また、特許文献1の実施例2では、回転座標変換時に焦点距離値を変化させることでより滑らかに画像を合成する実施例が開示されているが、補正領域自体を低減させるものではない。
また、特許文献1の実施例3では、推定した収差情報により補正曲線を定めるものであるが、補正しない点を予め決めているために、補正範囲の決め方に推定した収差情報が反映されていない。
【0008】
また、特許文献2には、レンズ収差による画像歪曲の影響や補正領域をどのように定めるかについての言及がない。そのため、シームレスな広角画像を得ることができるが、画像を合成する領域では画像補間のために解像力が劣化するという課題がある。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、複数の離散的に配置された撮像素子を用いて被写体を分割して撮像し、それら複数の分割画像を合成して大サイズの画像を形成する構成において、合成による解像力の劣化を可及的に小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像生成装置は、被写体を支持する支持手段と、互いに間隙を介して離散的に配置された複数の撮像素子を有する撮像手段と、前記被写体の像を拡大して前記撮像手段に導く撮像光学系であって、前記複数の撮像素子との相対位置が固定されている撮像光学系と、前記被写体の像に対する前記複数の撮像素子の撮像位置を変えて複数回の撮像を行うために、前記複数の撮像素子と前記被写体との相対位置を変化させる移動手段と、各撮像位置において各撮像素子から得られた複数の画像を繋ぎ合せて、前記被写体の全体の画像を生成する合成手段と、を有する画像生成装置であって、各撮像素子で得られる画像における前記撮像光学系の収差は、前記撮像光学系と撮像素子との相対位置により、撮像素子ごとに予め定まっており、前記移動手段は、繋ぎ合せる2つの画像同士が一部で重複するように、前記複数の撮像素子と前記被写体との相対位置を変化させ、前記合成手段は、繋ぎ合せる2つの画像同士が重複する重複領域内に補正領域を設定し、前記補正領域内の画素に対して補正処理を施すことによって前記2つの画像の繋ぎ目を滑らかにするものであり、前記補正領域の大きさは、繋ぎ合せる2つの画像を撮像した撮像素子の組み合わせにより決まる前記2つの画像における収差の違いに応じて、定められていることを特徴とする画像生成装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の離散的に配置された撮像素子を用いて被写体を分割して撮像し、それら複数の分割画像を合成して大サイズの画像を形成する構成において、合成による解像力の劣化を可及的に小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像生成装置の撮像に関わる概略構成を説明する模式図。
【図2】撮像シーケンスを説明する模式図。
【図3】画像データ読み出しを説明するフローチャート。
【図4】分割撮像と画像データ合成を説明する機能ブロック図。
【図5】画像データ合成領域を説明する模式図。
【図6】画像データ合成の動作シーケンスを説明する模式図。
【図7】歪曲収差の一例と合成での画像組み合わせを説明する模式図。
【図8】補正領域を説明するための模式図。
【図9】第1の画像と第2の画像の真値からのずれの相対的差分を説明する模式図。
【図10】補正領域、重複領域を定める流れを説明するフローチャート。
【図11】相対座標ずれ量の算出を説明するフローチャート。
【図12】重複領域の決定を説明するフローチャート。
【図13】補正方法の一例を説明するための模式図。
【図14】補間座標と参照座標を説明する模式図。
【図15】座標変換処理、画素補間処理の流れを説明するフローチャート。
【図16】第2の実施の形態での補正領域を説明するための模式図。
【図17】第3の実施の形態での補正領域を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
(画像生成装置の構成)
図1(a)〜図1(c)は、画像生成装置の撮像に関わる概略構成を説明する模式図である。この画像生成装置は、プレパラート103上の被検試料の光学顕微鏡像を高解像度のデジタル画像として取得するための装置である。
【0014】
図1(a)に模式的に示すように、画像生成装置は、光源101、照明光学系102、移動機構10、撮像光学系104、撮像部105、現像・補正部106、合成部107、圧縮部108、伝送部109を備えて構成される。光源101は撮像用の照明光を発生する手段であり、RGB3色の発光波長を有する光源、例えばLED(発光ダイオード)やLD(レーザーダイオード)等が好ましく用いられる。光源101と撮像部105は同期して動作する。光源101ではRGBを順次発光させ、撮像部105は光源101の発光タイミングに同期して露光しRGBそれぞれの画像を取得する。RGB各画像から1枚の撮像画像の生成は後段の現像・補正部106で行う。照明光学系102は、光源101の光を効率良くプレパラート103上の撮像対象領域110aに導光する。
【0015】
プレパラート103は、病理診断の対象となる被検試料を支持する支持手段であり、被検試料をスライドグラスに載置し、マウント液を使ってカバーグラスで封入したものである。図1(b)には、プレパラート103とその上に設定された撮像対象領域110aのみを図示している。プレパラートは76mm×26mm程度の大きさであり、ここでは被写体となる被検試料の撮像対象領域として20mm×20mmを想定している。
【0016】
撮像光学系104は、プレパラート103上の撮像対象領域110aからの透過光を拡大して導光し、撮像部105面上に撮像対象領域110aの実像である撮像対象領域像110bを形成する。また、撮像光学系の有効視野112は、撮像素子群111a〜111q、及び、撮像対象領域110bを包含する大きさである。
【0017】
撮像部105は、互いに間隙を介してX方向とY方向の2次元的に離散的に配置された複数の2次元撮像素子で形成される撮像手段である。本実施形態では17個の2次元撮像素子が用いられるが、これらの撮像素子は同一の基板上に実装してもよいし、別々の基板上に実装してもよい。なお、個々の撮像素子を区別するために、参照符号に対し、1行目の左から順にa〜c、2行目にd〜g、3行目にh〜j、4行目にk〜n、5行目にo〜qのアルファベットを付しているが、図示の便宜のため図面中では「111a〜111q」のように略記する。他の図面においても同様である。図1(c)は、撮像素子群111a〜111q、結像面での撮像対象領域像110b、撮像光学系の有効視野112、の3者のそれぞれの位置関係を模式的に図示している。撮像素子群111a〜111qと撮像光学系の有効視野112の位置関係は固定であるが、結像面での撮像対象領域像110bは、プレパラート側に設けた移動機構10により前述2者に対して相対位置が変化する。本実施形態では、移動機構を簡便な構成としてコストを抑え、且つ、精度を上げるために、移動軸は1軸とする。すなわち、撮像素子群111a〜111qと結像面での撮像対象領域像110bの相対位置を1軸方向(Y方向)に移動させて複数回の撮像が行われ、複
数のデジタルデータ(RAWデータ)が得られる。
【0018】
現像・補正部106は、撮像部105で取得したデジタルデータの現像処理、補正処理を行う。機能としては、黒レベル補正、DNR(Digital Noise Reduction)、画素欠陥補正、撮像素子の個体ばらつきやシェーディングに対する輝度補正、現像処理、ホワイトバランス処理、強調処理、などを含む。合成部107は、現像・補正部106から出力される複数の撮像画像を繋ぎ合わせる処理を行う。合成部107の繋ぎ目補正は、全ての画素に対して処理を行うわけではなく、繋ぎ合わせ処理が必要な領域のみに対して処理を行う。合成処理について詳しくは図7〜図15で説明する。
【0019】
圧縮部108は、合成部107から出力されるブロック画像毎に逐次圧縮処理を行う。伝送部109は、圧縮ブロック画像の信号をPC(Personal Computer)やWS(Work Station)に出力する。PCやWSへの信号伝送では、ギガビット・イーサネット(登録商標)などの大容量の伝送が可能な通信規格を用いるとよい。
【0020】
PCやWSでは、送られてくる圧縮ブロック画像毎に順次ストレージに格納する。取得した被検試料の撮像画像の閲覧にはビューワソフトを用いる。ビューワソフトは閲覧領域の圧縮ブロック画像を読み出して伸張しディスプレイに表示する。以上の構成により、20mm角相当の被検試料の高解像大画面撮像と取得画像の表示が実現できる。
【0021】
(撮像対象領域の撮像手順)
図2(a)および図2(b)から図2(e)は、1軸の複数回撮像で撮像対象領域全体を撮像していく流れを説明する模式図である。後段の合成処理を簡易なシーケンスで行うために、撮像素子の水平読み出し方向(X方向)と移動方向(Y方向)は直交しており、X方向に隣り合う撮像小領域のY方向の読み出し画素数は概略一致している。また、撮像素子群が撮像対象領域像をY方向に沿って順々に埋めるように撮像素子群111a〜111qと結像面での撮像対象領域像110bを相対的に移動させる制御を行う。合成処理について詳しくは図7〜図15で説明する。
【0022】
図2(a)は、撮像素子群111a〜111q、結像面での撮像対象領域像110bの位置関係を模式的に示している。撮像素子群111a〜111qと結像面での撮像対象領域像110bは、プレパラート側に設けた移動機構により相対位置が矢印方向(Y方向)に変化する。図2(b)から(e)は、撮像対象領域像110bを撮像素子群111a〜111qでどのように撮像していくかの変遷を示す図である。実際には、プレパラート側に設けた移動機構10により、撮像素子群111a〜111qに対して撮像対象領域像110bが移動することになる。しかし、ここでは、撮像対象領域像110bがどのように分割されて撮像されるかの説明を強調するため、撮像対象領域像110bを固定して図示している。また、合成部107での繋ぎ目補正を行うために、隣接する撮像素子間には重複領域が必要となるが、説明を簡単にするために、ここでは重複領域を省略している。重複領域は図5で説明する。
【0023】
図2(b)には1回目の撮像で取得するエリアを黒ベタで示している。1回目の撮像位置では光源の発光波長を切り替えてRGBの各画像を取得する。図2(c)には移動機構によりプレパラートを移動させた後の、2回目の撮像で取得するエリアを斜線(左下がり斜線)で示している。図2(d)には3回目の撮像で取得するエリアを逆斜線(右下がり斜線)で、図2(e)には4回目の撮像で取得するエリアを網掛けで示している。
以上より、撮像素子群により4回の撮像(移動機構によるプレパラート移動回数が3回)で撮像対象領域全体を隙間なく撮像することができる。
【0024】
(撮像処理の流れ)
図3(a)、(b)は、撮像対象領域全体の撮像の流れ、および画像データ読み出しを説明するフローチャートである。
【0025】
図3(a)は複数回撮像で撮像対象領域全体を撮像する処理フローを示している。
ステップS301では、撮像エリアの設定を行う。撮像対象領域として20mm角を想定しているが、プレパラート上の被検試料の位置に合わせて20mm角の位置を設定する。
ステップS302では、1回目の撮像(N=1)を行う初期位置へプレパラートを移動させる。図2を例にすると、撮像素子群111a〜111qと結像面での撮像対象領域像110bの相対位置が図2(b)で示す状態となるようにプレパラートを移動させる。
ステップS303では、N回目のレンズ画角内撮像を行う。
ステップS304では、撮像対象領域全体の撮像が終了したか否かを判断する。撮像対象領域全体の撮像が終了していなければ、S305へ進む。撮像対象領域全体の撮像が終了していれば、すなわち、本実施形態の場合にはN=4の場合には、処理を終了する。
ステップS305では、撮像素子群と撮像対象領域像の相対位置がN回目(N≧2)の撮像を行う位置となるように、移動機構によりプレパラートを移動させる。
【0026】
図3(b)はステップS303のレンズ画角内撮像での処理をさらに分解した処理フローを示している。なお、本実施形態ではローリングシャッタ方式の撮像素子を用いた場合の説明を行う。
【0027】
ステップS306では、単色光源(R光源、G光源、または、B光源)の発光を開始し、プレパラート上の撮像対象領域に光を照射する。
ステップS307では、撮像素子群の露光と単色画像信号(R画像信号、G画像信号、または、B画像信号)の読み出しを行う。ローリングシャッタ方式のため、撮像素子群の露光と信号読み出しはライン毎に行われる。単色光源の点灯タイミングと撮像素子群の露光タイミングは同期して動作するように制御される。単色光源は撮像素子の1ライン目の露光開始に合わせて発光を開始し、最終ラインの露光が終了するまで発光している。このとき撮像素子群は撮像を行う撮像素子のみ動作させれば良い。例えば図2(b)の場合では黒塗りつぶしで示される撮像素子のみが動作すれば良く、最上段の3つの撮像素子は撮像対象領域像外にあるため、動作させる必要はない。
【0028】
ステップS308では、撮像素子の全ラインに対して露光と信号読み出しが終了したかどうかを判断する。全ライン終了するまでは、S307に戻って処理を継続する。全ライン終了すれば、S309へ進む。
ステップS309では、RGB画像の撮像が全て終了したかどうかを判断する。RGB各画像の撮像が終了していなければS306へ戻り、終了していれば処理を終了する。
以上の処理ステップにしたがって、RGB各画像の4回撮像により撮像対象領域全体の撮像を行う。
【0029】
(画像合成)
図4は、分割撮像と画像データ合成を説明する機能ブロック図である。画像合成を簡単に説明するために、2次元撮像素子群の機能ブロック、合成処理に関わる機能ブロックを分解して示している。2次元撮像素子401a〜401q、カラーメモリ402a〜402q、現像・補正部403a〜403q、センサメモリ404a〜404q、メモリ制御部405、水平方向合成部406、垂直方向合成部407、水平合成メモリ408、垂直合成メモリ409、圧縮部410、伝送部411を備えて構成される。
【0030】
図4〜図6の説明では、図2で説明したように、撮像素子の水平読み出し方向(X方向
)と移動方向(Y方向)は直交しており、X方向に隣り合う撮像領域のY方向の読み出し画素数は概略一致しているとする。
【0031】
2次元撮像素子401a〜401qは、図2で説明した2次元撮像素子群111a〜111qに対応する。図2で説明したように、撮像素子群111a〜111qと結像面での撮像対象領域像110bの相対位置を変化させながら撮像対象領域全体を撮像する。カラーメモリ402a〜402qは、2次元撮像素子401a〜401qそれぞれに付属する、RGB各画像信号を格納するためのメモリである。後段の現像・補正部403a〜403qでは、RGB3色の画像信号を必要とするため、少なくとも、R画像信号、G画像信号、B画像信号の内、少なくとも2色が格納できるメモリ容量を必要とする。
【0032】
現像・補正部403a〜403qは、R画像信号、G画像信号、B画像信号から現像処理、補正処理を行う。機能としては、黒レベル補正、DNR(Digital Noise Reduction)、画素欠陥補正、撮像素子の個体ばらつきやシェーディングに対する輝度補正、現像処理、ホワイトバランス処理、強調処理、などを含む。
【0033】
センサメモリ404a〜404qは、現像・補正した画像信号を一時格納するフレームメモリである。
メモリ制御405は、センサメモリ404a〜404qに格納されている画像信号に対してメモリ領域を指定し、圧縮部410、水平方向合成部406、垂直方向合成部407のいずれかへ画像信号を転送する制御を行う。メモリ制御の動作について詳しくは図6で説明する。
【0034】
水平方向合成部406は、水平方向の画像ブロックの合成処理を行う。垂直方向合成部407は、垂直方向の画像ブロックの合成処理を行う。水平方向、及び、垂直方向の合成処理は隣接する撮像素子間での重複領域内で行うことになるが、その重複領域については図5で説明する。水平合成メモリ408は、水平合成処理後の画像信号を一時格納するメモリである。垂直合成メモリ409は、垂直合成処理後の画像信号を一時格納するメモリである。
【0035】
圧縮部410は、センサメモリ404a〜404q、水平合成メモリ408、垂直合成メモリ409から転送されてくる画像信号を転送ブロックごとに逐次圧縮処理を行う。伝送部411は、圧縮ブロック画像の電気信号を光信号に変換しPCやWSに出力する。
以上の構成により、2次元撮像素子401a〜401qで離散的に取得した画像から合成処理により撮像対象領域全体の画像を生成することができる。
【0036】
図5は、画像データ合成領域を説明する模式図である。図2で説明したように、画像取得は2次元撮像素子111a〜111qにより離散的に順次行われる。また、合成部107での繋ぎ目補正を行うために、繋ぎ合せの対象となる隣接する画像同士が一部重複するように撮像が行われる。図5はその重複領域を明示している。
【0037】
図5(a)は、撮像対象領域全体と、撮像対象領域全体の一部を切り出した図である。ここでは時間概念をなくし、撮像対象領域が空間的にどのように分割されて撮像されているかを示している。破線は各撮像画像の重複領域を示しており、領域は誇張して表現している。簡単のため、撮像対象領域全体の一部を切り出した図で説明を行う。ここで、単体2次元撮像素子で1回に撮像される領域は領域1(A、B、D、E)、領域2(B、C、E、F)、領域3(D、E、G、H)、領域4(E、F、H、I)であり、それぞれ異なる時間に撮像される。正確には、領域1の上部と左部、領域2の上部と右部、領域3の左部と下部、領域4の右部と下部にも重複領域が存在するが、画像合成の説明を簡単にするためにここでは省略する。
【0038】
図5(b)は、領域1〜4が図2で説明したように(b−1)〜(b−4)の時間順序で取得された場合、撮像領域がどのように画像として取得されていくかを示している。(b−1)では領域1(A、B、D、E)が撮像され画像として取得される。(b−2)では領域2(B、C、E、F)が撮像され画像として取得される。ここで、領域(B、E)は重複して撮像された領域であり、水平方向の画像合成処理が行われる領域である。(b−3)では領域3(D、E、G、H)が撮像され画像として取得される。ここで、領域(D、E)は重複して撮像された領域である。(b−2)において領域(A、B、C、D、E、F)の1枚の撮像画像が得られていると考えて、領域(D、E)に対しては垂直方向の画像合成処理が行われる。ここで、X方向を2次元撮像素子の水平読み出し方向としているため、垂直方向の画像合成処理は領域3(D、E、G、H)を全て取得する前に(つまりD、Eのデータが得られた時点で)処理を開始できる。(b−4)では領域4(E、F、H、I)が撮像され画像として取得される。ここで、領域(E、F、H)は重複して撮像された領域である。(b−3)において領域(A、B、C、D、E、F、G、H)の1枚の撮像画像が得られていると考えて、領域(E、F)に対する垂直方向の画像合成処理、領域(E、H)に対する水平方向の画像合成処理が順次行われる。ここで、X方向を2次元撮像素子の水平読み出し方向としているため、垂直方向の画像合成処理は領域4(E、F、H、I)を全て取得する前に(つまりE、Fのデータが得られた時点で)処理を開始できる。
【0039】
X方向に隣り合う撮像領域のY方向の読み出し画素数は概略一致しているため、領域(A〜I)ごとに画像合成処理を行うことができ、撮像対象領域全体に対しても容易に適用範囲を拡張することができる。撮像素子群が撮像対象領域像をY方向に沿って順々に埋めるように撮像領域を取得するため、簡易なメモリ制御で画像合成処理が実現できる。
【0040】
以上、撮像対象領域全体の一部を切り出した領域で説明したが、画像合成を行う領域、及び、合成方向の説明は適用範囲を広げて撮像対象領域全体に対して行うことができる。
【0041】
図6は、画像合成の動作シーケンスを説明する模式図である。各機能ブロックの時間軸が示してあり、時間経過に対して図5で説明した領域A〜Iがどのように処理されていくかを示してある。RGBの順で光源を発光させて撮像する例を示している。ここでの制御はメモリ制御部405で行われる。
【0042】
(a)では、1回目のR画像、G画像が撮像され、それぞれカラーメモリ402d〜402qに格納されている状況で、B画像が撮像されて順次読み出されている。現像・補正部403d〜403qでは、2次元撮像素子から読み出されるB画像と同期するように、カラーメモリ402d〜402qからR画像とG画像を読み出し、順次、現像・補正処理を行っていく。現像・補正処理が行われた画像は、順次センサメモリ404d〜404qに格納される。ここで格納される画像は、領域(A、B、D、E)である。
(b)では、(a)でセンサメモリ404d〜404qに格納された領域(A、B、D、E)のうち、領域(A)を圧縮部410へ転送する。領域(A)に対しての合成処理は行わない。
【0043】
(c)では、2回目のR画像、G画像が撮像され、それぞれカラーメモリ402a〜402nに格納されている状況で、B画像が撮像されて順次読み出されている。現像・補正部403a〜403nでは、2次元撮像素子から読み出されるB画像と同期するように、カラーメモリ402a〜402nからR画像とG画像を読み出し、順次、現像・補正処理を行っていく。現像・補正処理が行われた画像は、順次センサメモリ404a〜404nに格納される。ここで格納される画像は、領域(B、C、E、F)である。
(d)では、(c)でセンサメモリ404a〜404nに格納された領域(B、C、E
、F)の内、領域(C)を圧縮部410へ転送する。領域(C)に対しての合成処理は行わない。
【0044】
(e)では、領域(B、E)がセンサメモリ404a〜404qから読み出され、水平方向の画像合成処理が行われる。
(f)では、水平方向の画像合成処理後の画像が順次水平合成メモリ408に格納される。
(g)では、水平合成メモリ408に格納されている領域(B)を圧縮部410へ転送する。
【0045】
(h)では、3回目のR画像、G画像が撮像され、それぞれカラーメモリ402d〜402qに格納されている状況で、B画像が撮像されて順次読み出されている。現像・補正部403d〜403qでは、2次元撮像素子から読み出されるB画像と同期するように、カラーメモリ402d〜402qからR画像とG画像を読み出し、順次、現像・補正処理を行っていく。現像・補正処理が行われた画像は、順次センサメモリ404d〜404qに格納される。ここで格納される画像は、領域(D、E、G、H)である。
【0046】
(i)では、(h)でセンサメモリ404d〜404qに格納された領域(D、E、G、H)の内、領域(G)を圧縮部410へ転送する。領域(G)に対しての合成処理は行わない。
(j)では、領域(D、E)がセンサメモリ404d〜404q、及び、水平合成メモリ408から読み出され、垂直方向の画像合成処理が行われる。
(k)では、垂直方向の画像合成処理後の画像が順次垂直合成メモリ409に格納される。
(l)では、垂直合成メモリ409に格納されている領域(D)を圧縮部410へ転送する。
【0047】
(m)では、4回目のR画像、G画像が撮像され、それぞれカラーメモリ402a〜402nに格納されている状況で、B画像が撮像されて順次読み出されている。現像・補正部403a〜403nでは、2次元撮像素子から読み出されるB画像と同期するように、カラーメモリ402a〜402nからR画像とG画像を読み出し、順次、現像・補正処理を行っていく。現像・補正処理が行われた画像は、順次センサメモリ404a〜404nに格納される。ここで格納される画像は、領域(E、F、H、I)である。
【0048】
(n)では、(m)でセンサメモリ404a〜404nに格納された領域(E、F、H、I)の内、領域(I)を圧縮部410へ転送する。領域(I)に対しての合成処理は行わない。
(o)では、領域(E、F)がセンサメモリ404a〜404n、及び、垂直合成メモリ409から読み出され、垂直方向の画像合成処理が行われる。
(p)では、垂直方向の画像合成処理後の画像が順次垂直合成メモリ409に格納される。
(q)では、垂直合成メモリ409に格納されている領域(F)を圧縮部410へ転送する。
【0049】
(r)では、領域(E、H)がセンサメモリ404a〜404q、及び、垂直合成メモリ409から読み出され、水平方向の画像合成処理が行われる。
(s)では、水平方向の画像合成処理後の画像が順次水平合成メモリ408に格納される。
(t)では、水平合成メモリ408に格納されている領域(E、H)を順次圧縮部410へ転送する。
以上のように、メモリ制御部405がメモリ転送を制御することで逐次合成処理を行い、撮像対象領域全体の画像を逐次圧縮部410へ転送することができる。
【0050】
ここでは、領域(A)、(C)、(G)、(I)は合成処理を行わずに圧縮するシーケンスを説明したが、領域(A)、(C)、(G)、(I)と合成処理を行った領域を繋ぎ合わせてから圧縮するシーケンスも実現できる。
【0051】
(歪曲収差)
図7は、歪曲収差の一例と合成での画像組み合わせを説明する模式図である。
図7(a)は、歪曲収差の一例を示す模式図である。撮像素子群111a〜111qと撮像光学系の有効視野112の相対位置関係は固定であるため、各撮像素子111a〜111qはそれぞれに決まった歪曲収差をもつ。また各撮像素子111a〜111qの歪曲収差は互いに異なる。
【0052】
図7(b)は、合成での画像組み合わせを説明する模式図であり、各撮像素子が撮像対象領域像110bのどの領域を撮像するかを示している。図2で説明したように、撮像素子群が撮像対象領域像をY方向に沿って順々に埋めるように、撮像素子群111a〜111qと結像面での撮像対象領域像110bを相対的に移動させる制御を行う。そのため、撮像対象領域像110bは各撮像素子111a〜111qにより分割して撮像される。図7(b)中の各分割領域に付されたアルファベットa〜qは、その分割領域を撮像する撮像素子111a〜111qとの対応関係を示している。各撮像素子111a〜111qはそれぞれに決まった歪曲収差をもち、各重複領域で2つの画像の歪曲収差はそれぞれ異なる。例えば、重複領域の第1列(C1)の水平方向の画像合成に着目した場合、重複領域は8箇所であり、そこでの撮像素子の組み合わせは4パターン(d、a)、(d、h)、(k、h)、(k、o)である。すなわち、重複領域の第1列(C1)では画像の繋ぎ合わせ方が4パターンあることになる。また、重複領域の第1行(R1)の垂直方向の画像合成に着目した場合、重複領域は7箇所であり、そこでの撮像素子の組み合わせは7パターン(d、d)、(a、a)、(e、e)、(b、b)、(f、f)、(c、c)、(g、g)である。先の例と同様に、重複領域の第1行(R1)では画像の繋ぎ合わせ方が7パターンあることになる。このように各重複領域で2つの画像の歪曲収差は異なるため、画像の繋ぎ合わせ方も各重複領域で異なることになる。
【0053】
(補正領域)
歪曲収差の異なる2つの画像を滑らかに繋ぎ合せるには、重複領域内の画素に対して補正処理(すなわち、画素の座標と画素値を変更する処理)を施す必要がある。しかしながら、前述したように、補正処理を施すと解像力が劣化するという問題がある。そこで、本実施形態では、解像力劣化の影響を可及的に小さくするために、重複領域全体の画素に対して補正処理を施すことはせず、重複領域のなかの一部の領域(以下、この領域を「補正領域」とよぶ)の画素に対してのみ補正処理を施す。このとき、繋ぎ合せる2つの画像の歪曲収差の違い(これは画像を撮像した撮像素子の組み合わせにより決まる)に応じて、補正領域の大きさが定められる。補正領域が小さくなるほど、解像力の劣化を低減することができる。
【0054】
図8および図9を参照して、補正領域の決定方法の一例を説明する。
図8(a)は、各撮像素子による分割撮像の領域を示しており図5(a)や図7(b)に対応する。
図8(b)は、水平方向の画像合成に着目して図8(a)の点線部を切り出した図である。図5(a)との対応を示すと、図8(b)の領域は図5の領域(A、B、C、D、E、F)に対応し、第1の画像は領域1(A、B、D、E)に対応し、第2の画像は領域2(B、C、E、F)に対応し、重複領域は領域(B、E)に対応する。ただし、図5(a
)では説明を簡単にするため省略した第1の画像と第2の画像の上部に位置する重複領域を、図8(b)では図示している。
【0055】
重複領域の幅をKとし、重複領域の中心線上に3つの代表点A、B、Cを考える。図7(b)との対応関係をみると、第1の画像は撮像素子111hで取得した画像であり、第2の画像は撮像素子eで取得した画像である。そのため、第1の画像にはレンズ内での撮像素子111hの配置に起因する歪曲収差の影響があり、第2の画像にはレンズ内での撮像素子111eの配置に起因する歪曲収差の影響がある。
【0056】
図8(c)は、図8(b)の重複領域だけを切り出した図である。
L(A)は代表点Aにおいて第1の画像と第2の画像を滑らかに繋ぎ合せるために必要な幅である。L(A)は、第1の画像における代表点Aの真値からのずれと第2の画像における代表点Aの真値からのずれの相対的な差分M(A)を用いて機械的に決定する。真値からのずれとは、歪曲収差の影響で発生する座標ずれのことである。図7(a)を参考にすると、第1の画像における真値からのずれは撮像素子111hがもつ歪曲収差により発生する座標ずれであり、第2の画像における真値からのずれは撮像素子111eがもつ歪曲収差により発生する座標ずれである。
【0057】
代表点Aの真値を(Ax、Ay)とし、第1の画像における代表点Aのずれ値を(ΔAx1、ΔAy1)、第2の画像における代表点Aのずれ値を(ΔAx2、ΔAy2)とする(図9(a)、(b)参照)。このとき、M(A)は、
M(A)
=|(Ax+ΔAx1、Ay+ΔAy1)−(Ax+ΔAx2、Ay+ΔAy2)|=|(ΔAx1−ΔAx2、ΔAy1−ΔAy2)|
で表現される(図9(c)参照)。
【0058】
そして、
L(A)=α×M(A) α:任意に決定する正の数
により、繋ぎ合わせのための領域L(A)が決定する。
【0059】
第1の画像における代表点Aの真値からのずれと第2の画像における代表点Aの真値からのずれの相対的な差分がM(A)=4.5(画素)であり、α=10とすると、L(A)=45(画素)となり、繋ぎ合せ領域として45画素分が必要ということになる。αは繋ぎ合せの滑らかさを決定するパラメータであり、大きいほど滑らかな繋ぎ合せとなるが、大きすぎると重複領域も大きくなるため、適度な数値を任意に決定する。
【0060】
L(B)、L(C)に対しても同様に考える。代表点B、Cの真値をそれぞれ(Bx、By)、(Cx、Cy)とし、第1の画像における代表点B、Cのずれ値をそれぞれ(ΔBx1、ΔBy1)、(ΔCx1、ΔCy1)、第2の画像における代表点B、Cのずれ値をそれぞれ(ΔBx2、ΔBy2)、(ΔCx2、ΔCy2)とする。このとき、M(B)、M(C)は、それぞれ、
M(B)
=|(Bx+ΔBx1、By+ΔBy1)−(Bx+ΔBx2、By+ΔBy2)|=|(ΔBx1−ΔBx2、ΔBy1−ΔBy2)|
M(C)
=|(Cx+ΔCx1、Cy+ΔCy1)−(Cx+ΔCx2、Cy+ΔCy2)|=|(ΔCx1−ΔCx2、ΔCy1−ΔCy2)|
で表現される。
【0061】
そして、
L(B)=α×M(B)
L(C)=α×M(C)
により、繋ぎ合わせのための領域L(B)、L(C)が決定する。
【0062】
そして、L(A)、L(B)、L(C)の中の最大値を補正領域の幅Nに決定する。たとえば、L(A)、L(B)、L(C)の関係が図8(c)に示すように、
L(A)>L(B)>L(C)
である場合には、補正領域の幅N=L(A)とする。
【0063】
以上の方法により、歪曲収差による相対的な座標ずれ量が小さいほど補正領域が小さくなるように、各補正領域の大きさが適応的に定められる。より詳しくいうと、2つの画像の並ぶ方向を第1の方向、それに直交する方向を第2の方向とした場合に、補正領域の第1の方向の幅は、歪曲収差による相対的な座標ずれ量が小さいほど狭くなる。なお、補正領域は第2の方向に沿って重複領域を横切るように設けられる。ここでは説明を簡単にするため、重複領域の中心線上に3点の代表点を考えたが、これに限定されるものではなく、代表点の数が多いほど補正領域を正確に見積もることができる。
【0064】
図8(a)の重複領域の第1列(C1)の水平方向の画像合成を見ると、重複領域は8箇所である。これらの重複領域それぞれに対して上記説明した補正領域Nを決定する。そして、第1列(C1)において最大の補正領域Nmaxと同じかそれより大きくなるように
第1列(C1)での重複領域Kの大きさが決められる。すなわち、第1列(C1)では重複領域Kは共通であるが、補正領域Nは8箇所ある重複領域ごとに異なる大きさとなる。
【0065】
各列(C1〜C6)、各行(R1〜R7)に対して同様の考えを適用し、各重複領域での補正領域を決定するとともに、各行、各列の重複領域を決定する。すなわち、各行、各列ではそれぞれ独立した重複領域を有し、補正領域は重複領域ごとに異なる大きさとなる。このように重複領域の大きさを必要最小限にすると、撮像素子を小型化できたり、カラーメモリとセンサメモリの容量を小さくできるという利点がある。ただし、全ての重複領域の大きさを同じに設定しても構わない。
【0066】
ここでは、真値からのずれを歪曲収差の影響で発生する座標ずれとして説明したが、座標ずれを画素値ずれと読み替えても同様の説明が可能である。
【0067】
以上の考え方により、各重複領域における補正領域を定める。重複領域内に補正領域を設けることで、以下のメリットがある。1つ目は、取得画像に位置ずれがある場合に、2つの画像に対して特徴抽出などの手法を用いることで、画像情報で位置補正を行うことができることである。2つ目は、2つの画像から座標、画素値を参照できるため、補正精度を向上でき画像を滑らかに繋ぎ合せることができることである。
【0068】
(補正領域と重複領域の決定処理)
図10は、補正領域と重複領域の決定処理の流れを説明するフローチャートである。
ステップS1001では、撮像領域の分割数の設定を行う。撮像対象領域像110bを撮像素子群111a〜111qによりどのように分割するかを設定する。図7(b)では撮像対象領域110bを8×7=56分割している。この分割数は、2次元撮像素子の概略の大きさと撮像対象領域像110bの大きさの関係で決まる。まずは、利用を想定している2次元撮像素子の画素ピッチ、解像度から、1個の2次元撮像素子で撮像できるX方向、Y方向の大きさを見積もる。そして、少なくとも撮像対象領域像110bを過不足なく撮像できるような分割数を求める。ここでの分割領域の境界線が図8(b)、(c)で示した重複領域の中心線となる。分割領域の境界線、すなわち、重複領域の中心線を基準にして画像の繋ぎ合せを行っていく。
【0069】
ステップS1002では、相対座標ずれ量の算出を行う。各列、各行それぞれの代表点において、繋ぎ合せの対象となる画像間の真値からのずれの相対的な差分を算出する。真値からのずれとは、歪曲収差の影響で発生する座標ずれのことである。算出方法は図9で説明した通りである。
【0070】
ステップS1003では、各重複領域における補正領域を決定する。補正領域決定方法は図8で説明した通りである。ただし、この段階では重複領域の大きさはまだ決定していない。
【0071】
ステップS1004では、各行、各列の重複領域を決定する。各行、各列での最大相対座標ずれ量から最大補正領域を決定し、各行、各列での最大補正領域に所定の余裕領域を加えた領域をそれぞれの重複領域とする。ここでは、撮像素子群111a〜111qとして同一サイズの2次元撮像素子を用いることを前提としているため、各行、各列で重複領域が同一となる。余裕領域の決め方については後述する。
以上の処理ステップから、各重複領域における補正領域を決定する。
【0072】
図11は、図10のステップS1002の相対座標ずれ量の算出をさらに分解して説明するフローチャートである。
ステップS1101では、行Rnの相対座標ずれ量の算出を行う。重複領域中心線上の代表点において、繋ぎ合せの対象となる画像間の真値からのずれの相対的な差分を算出する。ステップS1102では、S1101の結果を受けて行Rnの最大相対座標ずれ量を決定する。ステップS1103では、全行について相対座標ずれ量の算出、及び、各行の最大相対座標ずれ量の決定が終わったかどうかを判定する。全行の処理が終了するまでS1101とS1102を繰り返す。ステップS1104では、列Cnの相対座標ずれ量の算出を行う。重複領域中心線上の代表点において、繋ぎ合せの対象となる画像間の真値からのずれの相対的な差分を算出する。ステップS1105では、S1104の結果を受けて列Cnの最大相対座標ずれ量を決定する。ステップS1106では、全列について相対座標ずれ量の算出、及び、各列の最大相対座標ずれ量の決定が終わったかどうかを判定する。全列の処理が終了するまでS1104とS1105を繰り返す。以上の処理ステップから、重複領域中心線上の代表点における相対座標ずれ量の算出、及び、各行、各列における最大相対座標ずれ量の決定を行う。
【0073】
図12は、図10のステップS1004の重複領域の決定をさらに分解して説明するフローチャートである。
ステップS1201では、行Rnの重複領域の決定を行う。S1003の補正領域の決定を受けて、各行で補正領域が最大となる領域を重複領域とする。ステップS1202では、全行について重複領域の決定が終わったかどうかを判定する。全行の処理が終了するまでS1201を繰り返す。ステップS1203では、列Cnの重複領域の決定を行う。
S1003の補正領域の決定を受けて、各列で補正領域が最大となる領域を重複領域とする。ステップS1204では、全列について重複領域の決定が終わったかどうかを判定する。全列の処理が終了するまでS1203を繰り返す。以上の処理ステップから、各行、各列における重複領域を決定する。
【0074】
図8から図12で説明した処理は、補正領域、重複領域を定める処理ステップであるが、同時に、撮像素子群111a〜111qの配置と大きさを決めることにもなる。これを、図7を用いて説明する。撮像素子111hに着目すると、この撮像素子の受光面のX方向の大きさは重複領域の第1列(C1)と第2列(C2)により決まる。また、撮像素子111hの受光面のY方向の大きさは重複領域の第2行(R2)と第3行(R3)、第3行(R3)と第4行(R4)、第4行(R4)と第5行(R5)、第5行(R5)と第6行(R6)のうち、最も大きくなる組み合わせにより決まる。このようにして決定した撮像素子の受光面のX方向とY方向の大きさに合うように撮像素子の設計、もしくは、選択を行い、該当領域に配置することになる。ここで、本発明での重複領域(データ重複領域)とは画像データを重複して取得する領域であり、2次元撮像素子で実際に形成される重複領域(物理的重複領域)とは異なることに注意する。物理的重複領域は、少なくともデータ重複領域を含む。本実施形態では、撮像素子群111a〜111qに異なる大きさの2次元撮像素子を用いる場合には、X方向のデータ重複領域(C1〜C6)を物理的重複領域と一致させることができるが、移動方向であるY方向のデータ重複領域(R1〜R7)は必ずしも実重複領域とは一致しない。物理的重複領域がデータ重複領域よりも大きい場合、データ重複領域は2次元撮像素子のROI(Region Of Interest)制御により実現できる。
【0075】
(補正処理)
図13は、補正処理の一例を説明するための模式図である。図8から図12では補正領域の範囲を設定する方法を説明したが、ここでは設定した補正範囲でどのように画像が繋がるかを簡単に説明する。
【0076】
図13(a)は画像繋ぎ合せの対象となる第1の画像と第2の画像を示している。重複領域は省略して補正領域のみ示している。補正領域の第1の画像側の境界を境界線1、第2の画像側の境界を境界線2とよぶ。P11〜P13は、第1の画像における境界線1上の点を示し、P31〜P33は、P11〜P13に対応する第2の画像における境界線1上の点を示している。一方、P41〜P43は、第2の画像における境界線2上の点を示し、P21〜P23は、P41〜P43に対応する第1の画像における境界線2上の点を示している。このとき、第1の画像における境界線1上の画素(例えば、P11、P12、P13)、第2の画像における境界線2上の画素(例えば、P41、P42、P43)は処理を行わずに、補正領域内の画素に対して補間処理を行う、というのが繋ぎ合せの基本的な考え方である。一例としては、第1の画像の補正領域と第2の画像の補正領域に対して補間処理を行い、境界線での繋ぎ合せが滑らかになるようにαブレンディングにより画像合成を行う。
【0077】
第1の画像に対して補間処理を行う場合を考えると、座標P21の位置を座標P41の位置に変換する処理を行う。同様に、座標P22は座標P42へ、座標P23は座標P43へ変換する処理を行う。座標P21、P22、P23は画素の重心と必ずしも一致する必要はないが、P41、P42、P43の位置は画素の重心と一致している。ここでは、代表点のみを図示しているが、実際には第1の画像の境界線2上の全画素に対して処理を実施することになる。第2の画像に対して補間処理を行う場合を考えると、座標P31の位置を座標P11の位置に変換する処理を行う。同様に、座標P32は座標P12へ、座標P33は座標P13へ変換する処理を行う。座標P31、P32、P33は画素の重心と必ずしも一致する必要はないが、P11、P12、P13の位置は画素の重心と一致し
ている。ここでは、代表点のみを図示しているが、実際には第2の画像の境界線1上の全画素に対して処理を実施することになる。このように、第1の画像、及び、第2の画像それぞれの補正画像を生成し、境界線1付近では第1の画像の比率を高く、境界線2付近では第2の画像の比率を高くしたαブレンディングにより滑らかな繋ぎ目となる画像合成が実現できる。
【0078】
図13(b)には境界線1と境界線2の座標値を単純に直線で結んで補正領域内の座標情報を生成し、その座標における画素値を補間により求める例を示している。座標情報の生成方法はこれに限らず、第1の画像における補正領域外で重複領域内の座標情報と、第2の画像における補正領域外で重複領域内の座標情報を用いて、補正領域の座標情報を内挿しても良い。前述の単純な直線による内挿よりも、より自然な座標が生成できることが期待される。
【0079】
ここでの補間処理は、予め保持している座標情報を基に実施する。図7(a)に示すように各撮像素子での歪曲収差は既知であるとして設計値である座標情報を保持する形態でも良いし、実測して求めた歪曲情報を保持する形態でも良い。
【0080】
図14は、補間座標と参照座標を説明する模式図である。図14(a)は、座標変換前の補間座標Q’と参照座標P’(m、n)の位置関係を示している。図14(b)は、座標変換後の補間座標Qと参照座標P(m、n)の位置関係を示している。
【0081】
図15(a)は、座標変換処理の流れの一例を示すフローチャートである。
ステップS1501では、参照点の座標P’(m、n)を指定する。
ステップS1502では、参照点の変換後のアドレスP(m、n)を得るために必要な補正値を収差補正テーブルから取得する。収差補正テーブルは、座標変換前後の画素の位置の対応関係を保持するテーブルである。参照点の座標に対応する変換後の座標値を算出するための補正値が格納されている。
【0082】
ステップS1503では、ステップS1502の処理で得られた収差補正テーブルに格納されている値に基づいて参照画素における変換後の座標P(m、n)を取得する。歪曲収差であれば画素のずれに基づいて参照画素における変換後の座標を取得する。ここで、収差補正テーブルに格納されている値、すなわち、参照点が、間引きされた代表点の値(代表値)である場合は、その間の値は、補間演算によって算出することになる。
【0083】
ステップS1504では、処理対象となる全画素に対して座標変換処理を実施したか否かを判断し、全画素に対して処理が終了している場合は、この座標変換処理を終了する。終了していない場合は、ステップS1501に戻り、再度、上述した処理を繰り返し実行する。以上の処理ステップで、座標変換処理を行う。
【0084】
ここで、図13の座標P21の位置を座標P41の位置に変換する処理との対応関係を示す。座標P21がちょうど画素重心と一致する際には、座標P21の位置を座標P41の位置に変換する処理を行うことになるが、座標P21が画素重心と一致しない場合には、図15に示した座標の補間処理を行うことになる。このとき、補間位置の座標QはP41であり、座標変換前の補間座標Q’は座標P21、参照画素の座標P’(m、n)は座標P21の周辺16画素である。
【0085】
図15(b)は、画素補間処理の流れを説明するフローチャートである。
ステップS1505では、補間を行なう位置である座標Qの指定を行なう。
ステップS1506では、補間位置に生成する画素の周辺にある数点から数十点の参照画素P(m、n)を指定する。
ステップS1507では、参照画素である周辺画素P(m、n)のそれぞれの座標を取得する。
ステップS1508では、補間画素Qと各参照画素P(m、n)との距離を、補間画素を原点としたベクトル形式で求める。
ステップS1509では、ステップS1508の処理で算出した距離を補間曲線又は直線に代入して各参照画素の重み係数を求める。ここでは、座標変換時の補間演算と同じ三次補間式の採用を想定しているが、線形補間(バイリニア)アルゴリズムを採用しても構わない。
ステップS1510では、各参照画素の値と、x、y座標における重み係数との積を加算し、補間画素の値を演算する。
ステップS1511では、処理対象となる全画素に対して画素補間処理を実施したか否かを判断し、全画素に対して処理が終了している場合は、この画素補間処理を終了する。終了していない場合は、ステップS1505に戻り、再度、上述した処理を繰り返し実行する。以上の処理ステップで、画素補間処理を行う。
【0086】
図13に示す補正領域に対して座標変換処理、画素補間処理を行う場合を考えると、簡単な例では第1の画像、及び、第2の画像の重複領域内の画素値並びに座標値を利用することになる。そのため、境界線1と境界線2及びその近辺の領域を処理する際の参照画素を重複領域内に確保しておく必要がある。これは図6で示したように領域を分割して高速に処理を行う構成では、重複領域外の画素の参照を行わないためである。図10のステップS1004で説明した余裕領域は、この参照画素群を確保するための領域である。第1の画像と第2の画像それぞれに対して座標変換と画素補間を行い、それらの画像をαブレンディングすることで、境界線付近での繋ぎ目を目立たなくして滑らかに画像を合成することができる。
【0087】
(本実施形態の利点)
ここで本実施形態の画像生成装置における特徴的な前提と構成について説明し、さらに技術的効果に言及する。
【0088】
本実施形態の画像生成装置は、特に、病理分野におけるバーチャル・スライド装置を対象としている。バーチャル・スライド装置で取得する被検試料のデジタル画像、すなわち、人体組織や細胞の拡大画像には直線などの幾何学的模様が少ない、という特徴があるため、見た目に対する画像歪曲の影響が少ない。また、病理診断での診断精度向上のためには、画像処理などでの解像力劣化は極力少なくすることが望ましい。これらの前提のため、画像繋ぎ合せにおける画像歪曲の影響よりも解像力確保を優先し、画像補正により解像力が劣化する面積を低減する、という画像設計指針を採ることができる。
【0089】
また、本実施形態の画像生成装置は撮像領域を包含するレンズ径内に離散的に配置された複数の2次元撮像素子を用いて撮像領域を分割して撮像し、それら複数の分割画像を合成して大サイズの画像を生成する、という構成である。
【0090】
一方、同一サイズ、同一収差をもつカメラを規則的に配置したマルチカメラの構成では、重複領域の2つのカメラのレンズ収差が行方向、列方向で略一致する。そのため、重複領域の画像合成は、行方向、列方向それぞれで固定的な処理で対応できる。しかしながら、撮像領域を包含するレンズ径内に離散的に配置された複数の2次元撮像素子を用いる場合には、2つの2次元撮像素子のレンズ収差が重複領域ごとに異なる。
別の構成となるパノラマ撮影では、重複領域を自由に制御できる。しかしながら、撮像領域を包含するレンズ径内に離散的に配置された複数の2次元撮像素子を用いる場合には、マルチカメラのように重複領域は固定配置される。
【0091】
このように、本実施形態の画像生成装置(撮像装置)は、固定された重複領域でありながら2次元撮像素子のレンズ収差が重複領域ごとに異なるという、マルチカメラ、パノラマ撮影にはない構成上の特徴がある。このような構成において、特に、収差情報に応じて各重複領域の補正領域を適応的に定めることで解像力が劣化する面積を可及的に削減できる、という効果が得られる。
【0092】
以上の説明による本実施形態の効果は、撮像領域を包含するレンズ径内に離散的に配置された複数の2次元撮像素子を用いて撮像領域を分割して撮像し、それら複数の分割画像を合成して大サイズの画像を生成する構成を前提とする。この分割画像の合成処理(繋ぎ合せ処理)において、収差情報に応じて補正領域を適応的に定めて補正を行うため、画像補正により解像力が劣化する面積を低減できる。
【0093】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。前述した第1の実施形態では、重複領域内の最も大きな相対座標ずれ量に合わせて補正領域を定めた。すなわち補正領域の幅は一定である。これに対し、第2の実施形態では、重複領域中心線の相対座標ずれ量に応じて重複領域内で適応的に補正領域を定める。これにより、補正領域の幅は相対座標ずれ量に応じて変化する。このように、本実施形態と前述した第1の実施形態とでは、補正領域の定め方だけが異なる。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分についての詳細な説明を省略する。例えば、図1から図6に示した画像生成装置の撮像、画像合成に関わる構成と処理シーケンス、図7に示した歪曲収差例と画像組み合わせ例、図10から図12に示した補正領域、重複領域を定める処理ステップ、図13に示した補正手法の例、図14と図15で説明した座標変換処理と画素補間処理は、第1の実施形態と同じである。
【0094】
図9(a)〜(c)と図16(a)〜(c)を参照して、本実施形態における補正領域の決定方法を説明する。なお、図16(a)、(b)は第1実施形態の図8(a)、(b)と同様であるため、以下、図16(c)を中心に説明する。
【0095】
図16(c)は、図16(b)の重複領域だけを切り出した図である。
L(A)は代表点Aにおいて第1の画像と第2の画像を滑らかに繋ぎ合せるために必要な幅であり、第1の実施形態と同じ方法により決定する。L(B)、L(C)についても同様である。
【0096】
ここで図に示すようにL(A)、L(B)、L(C)の範囲を連続的に繋げることで補正領域を形成する。各代表点における補正幅を繋ぎ合せるときには線形補間や各種非線形補間で内挿することができる。ここでは説明を簡単にするため重複領域の中心線上に3点の代表点を考えたが、これに限定されるものではなく、代表点の数が多いほど補間による推測領域が少なくなるため、補正領域を正確に見積もることができる。
【0097】
図16(a)の重複領域の第1列(C1)に対して上記説明した重複領域中心線の相対座標ずれ量に応じて適応的に変化する補正領域を決定する。そして、第1列(C1)において最大の補正領域と同じかそれより大きくなるように第1列(C1)での重複領域Kの大きさが決められる。各列(C1〜C6)、各行(R1〜R7)に対して同様の考えを適用し、各列、各行での補正領域を決定し、それらの最大補正領域からそれぞれの重複領域を決定する。すなわち、各行、各列ではそれぞれ独立した重複領域を有し、補正領域は重複領域中心線の相対座標ずれ量に応じて適応的に変化する大きさとなる。
【0098】
ここでは、真値からのずれを歪曲収差の影響で発生する座標ずれとして説明したが、座標ずれを画素値ずれと読み替えても同様の説明が可能である。
【0099】
以上述べた本実施形態によれば、第1の実施形態よりもさらに補正領域を小さくすることができるため、画像補正により解像力が劣化する面積をより小さくすることが可能となる。
【0100】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。前述した第1の実施形態及び第2の実施形態では、重複領域中心線上の代表点を基準にして補正領域を定める方法を説明した。これに対し、第3の実施形態では、重複領域内における2つの画像の相関に基づいて適応的に補正領域の位置を定める。相対座標ずれ量の算出が重複領域中心線に依存しないところが、第1及び第2の実施形態との差異となる。このように、本実施形態と前述した第1及び第2の実施形態とでは、補正領域の定め方だけが異なる。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分についての詳細な説明を省略する。例えば、図1から図6に示した画像生成装置の撮像、画像合成に関わる構成と処理シーケンス、図7に示した歪曲収差例と画像組み合わせ例、図10から図12に示した補正領域、重複領域を定める処理ステップ、図13に示した補正手法の例、図14と図15で説明した座標変換処理と画素補間処理は、第1の実施形態と同じである。
【0101】
図17(a)〜(d)を参照して、本実施形態の補正領域の決定方法について説明する。図17(a)は第1実施形態の図8(a)と同様である。以下、第1の実施形態と異なる図17(b)、(c)、(d)を中心に説明する。
【0102】
図17(b)は、水平方向の画像合成に着目して図17(a)の点線部を切り出した図である。図5(a)との対応を示すと、切り出した領域は図5(a)の領域(A、B、C、D、E、F)に対応し、第1の画像は領域1(A、B、D、E)に対応し、第2の画像は領域2(B、C、E、F)に対応し、重複領域は領域(B、E)に対応する。ただし、図5(a)では説明を簡単にするため省略した第1の画像と第2の画像の上部に位置する重複領域を、図17(b)では図示している。図7(a)との対応関係をみると、第1の画像は撮像素子111hで取得した画像であり、第2の画像は撮像素子eで取得した画像である。そのため、第1の画像にはレンズ内での撮像素子111hの配置に起因する歪曲収差の影響があり、第2の画像にはレンズ内での撮像素子111eの配置に起因する歪曲収差の影響がある。
【0103】
まず、幅Kの重複領域内において、第1の画像と第2の画像の間で水平方向のブロックマッチングを行うことにより、両画像の相関が最も大きい部分(すなわち、両画像が最も類似している部分)を検出する。具体的には、探査ブロックの重複領域内での位置を水平方向に少しずつずらしながら、各位置での探査ブロック内の第1の画像と第2の画像の画素の相関(一致度)を求め、最も相関が大きい位置を検出する。この処理を、重複領域内の垂直方向の複数の位置について行うことにより、第1の画像と第2の画像の相関の大きいブロック群を得ることができる。図17(c)は、図17(b)の重複領域だけを切り出した図であり、第1の画像と第2の画像の相関の大きいブロック群を示している。ブロック間の相関を評価する関数としては、SAD(Sum of Absolute Difference)(画素値の差の絶対値の総和)や、SSD(Sum of Squared Difference)(画素値の差の二乗の総和)を用いることができる。
【0104】
次に、図17(c)に示すように、相関の大きいブロック群から補正中心線を導出する。補正中心線は、例えば、各ブロックの重心を結ぶか、各ブロックの重心を直線又は曲線で補間することで求めることができる。このようにして求めた補正中心線は、第1の画像と第2の画像とが最も類似している境界、言い換えると、第1の画像と第2の画像のずれが最も小さくなる境界を示すものである。したがって、この補正中心線を基準にして補正
領域を定めることで、補正領域のサイズを最小にできるものと期待できる。なお、上記では水平方向の画像合成の場合について述べたが、垂直方向の画像合成の場合には、垂直方向のブロックマッチングを行うことで、同じように補正中心線を求めればよい。
【0105】
図17(d)は、補正中心線上の複数の点Aにおいて繋ぎ合せに必要な補正幅L(A)を算出して、それらを繋ぎ合せた補正領域を図示している。Aは補正中心線上の任意の点を選ぶことができる。L(A)は、第1の実施形態と同じ方法により算出する。
【0106】
図17(a)の重複領域の第1列(C1)に対して上記説明した補正中心線の相対座標ずれ量に応じて適応的に変化する補正領域Nを決定する。そして、第1列(C1)において補正領域がとる最大幅が第1列(C1)での重複領域Kとなる。各列(C1〜C6)、各行(R1〜R7)に対して同様の考えを適用し、各列、各行での補正領域を決定し、それらの補正領域がとる最大幅からそれぞれの重複領域を決定する。すなわち、各行、各列ではそれぞれ独立した重複領域を有し、補正領域は補正中心線の相対座標ずれ量に応じて適応的に変化する大きさとなる。
【0107】
本実施形態では探査ブロックで探索するための仮決めした重複領域と、補正領域の最大幅から決まる最終的な重複領域をわけて設定しなければならない。仮決めの重複領域が大きいほど滑らかな繋ぎ合せとなるが、大きすぎると最終的な重複領域も大きくなる可能性があるため、適度な数値を任意に決定する。
【0108】
以上述べた本実施形態によれば、第1及び第2の実施形態よりもさらに補正領域を小さくすることができるため、画像補正により解像力が劣化する面積をより小さくすることが可能となる。
【符号の説明】
【0109】
10:移動機構、103:プレパラート、104:撮像光学系、105:撮像部、107:合成部、111a〜111q:撮像素子群
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の離散的に配置された撮像素子を用いて被写体を分割して撮像し、それら複数の分割画像を合成して大サイズの画像を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
病理分野において、病理診断のツールである光学顕微鏡の代替として、プレパラートに載置された被検試料を撮像しデジタル化してディスプレイ上での病理診断を可能とするバーチャル・スライド装置がある。バーチャル・スライド装置による病理診断のデジタル化により、従来の被検試料の光学顕微鏡像をデジタルデータとして取り扱える。それによって、遠隔診断の迅速化、デジタル画像を使った患者への説明、希少症例の共有化、教育・実習の効率化、などのメリットが得られる。
【0003】
光学顕微鏡での操作をバーチャル・スライド装置によるデジタル化で実現するためには、プレパラート上の被検試料全体をデジタル化する必要がある。被検試料全体のデジタル化により、バーチャル・スライド装置で作成したデジタルデータをPCやWSで動作するビューワソフトで観察することができる。被検試料全体をデジタル化した場合の画素数は、通常、数億画素から数十億画素と非常に大きなデータ量となる。そのためバーチャル・スライド装置では、数十万から数百万程度の画素数を有する2次元撮像素子、または、数千程度の画素数を有する1次元撮像素子を用いて被検試料の領域を複数に分割して撮像することが行われる。そして、被検試料全体の画像の生成には、レンズ収差などによる画像の歪曲やずれを考慮しながら、分割画像同士を合成する(繋ぎ合せる)技術が必要となる。
【0004】
画像合成技術として以下の提案がされている(特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1では、パノラマ画像を生成する画像合成装置において、推定した収差情報に基づいて少なくとも画像の重複領域について収差補正を行い、補正されたそれぞれの画像を合成する技術が開示されている。特許文献2では、マルチカメラと被写体の距離に応じてスティッチングポイントを動的に変化させて視差現象を無視できるようにし、シームレスな広角画像を得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−004660号公報
【特許文献2】特開2010−050842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の画像合成技術は、隣接する画像の間に重複領域(繋ぎ目)を設け、その重複領域内の画素に対し画像補正処理(画素補間)を施すことで、2つの画像を繋ぎ合せるという方法が一般的である。この方法は、画像の繋ぎ目を目立たなくできるという利点がある反面、重複領域の部分で画像補正による解像力の劣化が生じてしまうという課題がある。特に、バーチャル・スライド装置にあっては、病理診断での診断精度向上のため、画像補正による解像力劣化は極力少なくし、オリジナルに忠実な画像を得ることが望まれる。
【0007】
しかしながら、特許文献1の実施例1では、2つの画像の同一領域を撮像した重複領域で歪曲収差補正を行うことで、画像補間に伴うぼけが発生する面積を低減しているが、その面積は2つの画像の重複領域に依存し、重複領域そのものとある。そして、重複領域内
で補正領域を更に低減することには言及していない。
また、特許文献1の実施例2では、回転座標変換時に焦点距離値を変化させることでより滑らかに画像を合成する実施例が開示されているが、補正領域自体を低減させるものではない。
また、特許文献1の実施例3では、推定した収差情報により補正曲線を定めるものであるが、補正しない点を予め決めているために、補正範囲の決め方に推定した収差情報が反映されていない。
【0008】
また、特許文献2には、レンズ収差による画像歪曲の影響や補正領域をどのように定めるかについての言及がない。そのため、シームレスな広角画像を得ることができるが、画像を合成する領域では画像補間のために解像力が劣化するという課題がある。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、複数の離散的に配置された撮像素子を用いて被写体を分割して撮像し、それら複数の分割画像を合成して大サイズの画像を形成する構成において、合成による解像力の劣化を可及的に小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像生成装置は、被写体を支持する支持手段と、互いに間隙を介して離散的に配置された複数の撮像素子を有する撮像手段と、前記被写体の像を拡大して前記撮像手段に導く撮像光学系であって、前記複数の撮像素子との相対位置が固定されている撮像光学系と、前記被写体の像に対する前記複数の撮像素子の撮像位置を変えて複数回の撮像を行うために、前記複数の撮像素子と前記被写体との相対位置を変化させる移動手段と、各撮像位置において各撮像素子から得られた複数の画像を繋ぎ合せて、前記被写体の全体の画像を生成する合成手段と、を有する画像生成装置であって、各撮像素子で得られる画像における前記撮像光学系の収差は、前記撮像光学系と撮像素子との相対位置により、撮像素子ごとに予め定まっており、前記移動手段は、繋ぎ合せる2つの画像同士が一部で重複するように、前記複数の撮像素子と前記被写体との相対位置を変化させ、前記合成手段は、繋ぎ合せる2つの画像同士が重複する重複領域内に補正領域を設定し、前記補正領域内の画素に対して補正処理を施すことによって前記2つの画像の繋ぎ目を滑らかにするものであり、前記補正領域の大きさは、繋ぎ合せる2つの画像を撮像した撮像素子の組み合わせにより決まる前記2つの画像における収差の違いに応じて、定められていることを特徴とする画像生成装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の離散的に配置された撮像素子を用いて被写体を分割して撮像し、それら複数の分割画像を合成して大サイズの画像を形成する構成において、合成による解像力の劣化を可及的に小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像生成装置の撮像に関わる概略構成を説明する模式図。
【図2】撮像シーケンスを説明する模式図。
【図3】画像データ読み出しを説明するフローチャート。
【図4】分割撮像と画像データ合成を説明する機能ブロック図。
【図5】画像データ合成領域を説明する模式図。
【図6】画像データ合成の動作シーケンスを説明する模式図。
【図7】歪曲収差の一例と合成での画像組み合わせを説明する模式図。
【図8】補正領域を説明するための模式図。
【図9】第1の画像と第2の画像の真値からのずれの相対的差分を説明する模式図。
【図10】補正領域、重複領域を定める流れを説明するフローチャート。
【図11】相対座標ずれ量の算出を説明するフローチャート。
【図12】重複領域の決定を説明するフローチャート。
【図13】補正方法の一例を説明するための模式図。
【図14】補間座標と参照座標を説明する模式図。
【図15】座標変換処理、画素補間処理の流れを説明するフローチャート。
【図16】第2の実施の形態での補正領域を説明するための模式図。
【図17】第3の実施の形態での補正領域を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
(画像生成装置の構成)
図1(a)〜図1(c)は、画像生成装置の撮像に関わる概略構成を説明する模式図である。この画像生成装置は、プレパラート103上の被検試料の光学顕微鏡像を高解像度のデジタル画像として取得するための装置である。
【0014】
図1(a)に模式的に示すように、画像生成装置は、光源101、照明光学系102、移動機構10、撮像光学系104、撮像部105、現像・補正部106、合成部107、圧縮部108、伝送部109を備えて構成される。光源101は撮像用の照明光を発生する手段であり、RGB3色の発光波長を有する光源、例えばLED(発光ダイオード)やLD(レーザーダイオード)等が好ましく用いられる。光源101と撮像部105は同期して動作する。光源101ではRGBを順次発光させ、撮像部105は光源101の発光タイミングに同期して露光しRGBそれぞれの画像を取得する。RGB各画像から1枚の撮像画像の生成は後段の現像・補正部106で行う。照明光学系102は、光源101の光を効率良くプレパラート103上の撮像対象領域110aに導光する。
【0015】
プレパラート103は、病理診断の対象となる被検試料を支持する支持手段であり、被検試料をスライドグラスに載置し、マウント液を使ってカバーグラスで封入したものである。図1(b)には、プレパラート103とその上に設定された撮像対象領域110aのみを図示している。プレパラートは76mm×26mm程度の大きさであり、ここでは被写体となる被検試料の撮像対象領域として20mm×20mmを想定している。
【0016】
撮像光学系104は、プレパラート103上の撮像対象領域110aからの透過光を拡大して導光し、撮像部105面上に撮像対象領域110aの実像である撮像対象領域像110bを形成する。また、撮像光学系の有効視野112は、撮像素子群111a〜111q、及び、撮像対象領域110bを包含する大きさである。
【0017】
撮像部105は、互いに間隙を介してX方向とY方向の2次元的に離散的に配置された複数の2次元撮像素子で形成される撮像手段である。本実施形態では17個の2次元撮像素子が用いられるが、これらの撮像素子は同一の基板上に実装してもよいし、別々の基板上に実装してもよい。なお、個々の撮像素子を区別するために、参照符号に対し、1行目の左から順にa〜c、2行目にd〜g、3行目にh〜j、4行目にk〜n、5行目にo〜qのアルファベットを付しているが、図示の便宜のため図面中では「111a〜111q」のように略記する。他の図面においても同様である。図1(c)は、撮像素子群111a〜111q、結像面での撮像対象領域像110b、撮像光学系の有効視野112、の3者のそれぞれの位置関係を模式的に図示している。撮像素子群111a〜111qと撮像光学系の有効視野112の位置関係は固定であるが、結像面での撮像対象領域像110bは、プレパラート側に設けた移動機構10により前述2者に対して相対位置が変化する。本実施形態では、移動機構を簡便な構成としてコストを抑え、且つ、精度を上げるために、移動軸は1軸とする。すなわち、撮像素子群111a〜111qと結像面での撮像対象領域像110bの相対位置を1軸方向(Y方向)に移動させて複数回の撮像が行われ、複
数のデジタルデータ(RAWデータ)が得られる。
【0018】
現像・補正部106は、撮像部105で取得したデジタルデータの現像処理、補正処理を行う。機能としては、黒レベル補正、DNR(Digital Noise Reduction)、画素欠陥補正、撮像素子の個体ばらつきやシェーディングに対する輝度補正、現像処理、ホワイトバランス処理、強調処理、などを含む。合成部107は、現像・補正部106から出力される複数の撮像画像を繋ぎ合わせる処理を行う。合成部107の繋ぎ目補正は、全ての画素に対して処理を行うわけではなく、繋ぎ合わせ処理が必要な領域のみに対して処理を行う。合成処理について詳しくは図7〜図15で説明する。
【0019】
圧縮部108は、合成部107から出力されるブロック画像毎に逐次圧縮処理を行う。伝送部109は、圧縮ブロック画像の信号をPC(Personal Computer)やWS(Work Station)に出力する。PCやWSへの信号伝送では、ギガビット・イーサネット(登録商標)などの大容量の伝送が可能な通信規格を用いるとよい。
【0020】
PCやWSでは、送られてくる圧縮ブロック画像毎に順次ストレージに格納する。取得した被検試料の撮像画像の閲覧にはビューワソフトを用いる。ビューワソフトは閲覧領域の圧縮ブロック画像を読み出して伸張しディスプレイに表示する。以上の構成により、20mm角相当の被検試料の高解像大画面撮像と取得画像の表示が実現できる。
【0021】
(撮像対象領域の撮像手順)
図2(a)および図2(b)から図2(e)は、1軸の複数回撮像で撮像対象領域全体を撮像していく流れを説明する模式図である。後段の合成処理を簡易なシーケンスで行うために、撮像素子の水平読み出し方向(X方向)と移動方向(Y方向)は直交しており、X方向に隣り合う撮像小領域のY方向の読み出し画素数は概略一致している。また、撮像素子群が撮像対象領域像をY方向に沿って順々に埋めるように撮像素子群111a〜111qと結像面での撮像対象領域像110bを相対的に移動させる制御を行う。合成処理について詳しくは図7〜図15で説明する。
【0022】
図2(a)は、撮像素子群111a〜111q、結像面での撮像対象領域像110bの位置関係を模式的に示している。撮像素子群111a〜111qと結像面での撮像対象領域像110bは、プレパラート側に設けた移動機構により相対位置が矢印方向(Y方向)に変化する。図2(b)から(e)は、撮像対象領域像110bを撮像素子群111a〜111qでどのように撮像していくかの変遷を示す図である。実際には、プレパラート側に設けた移動機構10により、撮像素子群111a〜111qに対して撮像対象領域像110bが移動することになる。しかし、ここでは、撮像対象領域像110bがどのように分割されて撮像されるかの説明を強調するため、撮像対象領域像110bを固定して図示している。また、合成部107での繋ぎ目補正を行うために、隣接する撮像素子間には重複領域が必要となるが、説明を簡単にするために、ここでは重複領域を省略している。重複領域は図5で説明する。
【0023】
図2(b)には1回目の撮像で取得するエリアを黒ベタで示している。1回目の撮像位置では光源の発光波長を切り替えてRGBの各画像を取得する。図2(c)には移動機構によりプレパラートを移動させた後の、2回目の撮像で取得するエリアを斜線(左下がり斜線)で示している。図2(d)には3回目の撮像で取得するエリアを逆斜線(右下がり斜線)で、図2(e)には4回目の撮像で取得するエリアを網掛けで示している。
以上より、撮像素子群により4回の撮像(移動機構によるプレパラート移動回数が3回)で撮像対象領域全体を隙間なく撮像することができる。
【0024】
(撮像処理の流れ)
図3(a)、(b)は、撮像対象領域全体の撮像の流れ、および画像データ読み出しを説明するフローチャートである。
【0025】
図3(a)は複数回撮像で撮像対象領域全体を撮像する処理フローを示している。
ステップS301では、撮像エリアの設定を行う。撮像対象領域として20mm角を想定しているが、プレパラート上の被検試料の位置に合わせて20mm角の位置を設定する。
ステップS302では、1回目の撮像(N=1)を行う初期位置へプレパラートを移動させる。図2を例にすると、撮像素子群111a〜111qと結像面での撮像対象領域像110bの相対位置が図2(b)で示す状態となるようにプレパラートを移動させる。
ステップS303では、N回目のレンズ画角内撮像を行う。
ステップS304では、撮像対象領域全体の撮像が終了したか否かを判断する。撮像対象領域全体の撮像が終了していなければ、S305へ進む。撮像対象領域全体の撮像が終了していれば、すなわち、本実施形態の場合にはN=4の場合には、処理を終了する。
ステップS305では、撮像素子群と撮像対象領域像の相対位置がN回目(N≧2)の撮像を行う位置となるように、移動機構によりプレパラートを移動させる。
【0026】
図3(b)はステップS303のレンズ画角内撮像での処理をさらに分解した処理フローを示している。なお、本実施形態ではローリングシャッタ方式の撮像素子を用いた場合の説明を行う。
【0027】
ステップS306では、単色光源(R光源、G光源、または、B光源)の発光を開始し、プレパラート上の撮像対象領域に光を照射する。
ステップS307では、撮像素子群の露光と単色画像信号(R画像信号、G画像信号、または、B画像信号)の読み出しを行う。ローリングシャッタ方式のため、撮像素子群の露光と信号読み出しはライン毎に行われる。単色光源の点灯タイミングと撮像素子群の露光タイミングは同期して動作するように制御される。単色光源は撮像素子の1ライン目の露光開始に合わせて発光を開始し、最終ラインの露光が終了するまで発光している。このとき撮像素子群は撮像を行う撮像素子のみ動作させれば良い。例えば図2(b)の場合では黒塗りつぶしで示される撮像素子のみが動作すれば良く、最上段の3つの撮像素子は撮像対象領域像外にあるため、動作させる必要はない。
【0028】
ステップS308では、撮像素子の全ラインに対して露光と信号読み出しが終了したかどうかを判断する。全ライン終了するまでは、S307に戻って処理を継続する。全ライン終了すれば、S309へ進む。
ステップS309では、RGB画像の撮像が全て終了したかどうかを判断する。RGB各画像の撮像が終了していなければS306へ戻り、終了していれば処理を終了する。
以上の処理ステップにしたがって、RGB各画像の4回撮像により撮像対象領域全体の撮像を行う。
【0029】
(画像合成)
図4は、分割撮像と画像データ合成を説明する機能ブロック図である。画像合成を簡単に説明するために、2次元撮像素子群の機能ブロック、合成処理に関わる機能ブロックを分解して示している。2次元撮像素子401a〜401q、カラーメモリ402a〜402q、現像・補正部403a〜403q、センサメモリ404a〜404q、メモリ制御部405、水平方向合成部406、垂直方向合成部407、水平合成メモリ408、垂直合成メモリ409、圧縮部410、伝送部411を備えて構成される。
【0030】
図4〜図6の説明では、図2で説明したように、撮像素子の水平読み出し方向(X方向
)と移動方向(Y方向)は直交しており、X方向に隣り合う撮像領域のY方向の読み出し画素数は概略一致しているとする。
【0031】
2次元撮像素子401a〜401qは、図2で説明した2次元撮像素子群111a〜111qに対応する。図2で説明したように、撮像素子群111a〜111qと結像面での撮像対象領域像110bの相対位置を変化させながら撮像対象領域全体を撮像する。カラーメモリ402a〜402qは、2次元撮像素子401a〜401qそれぞれに付属する、RGB各画像信号を格納するためのメモリである。後段の現像・補正部403a〜403qでは、RGB3色の画像信号を必要とするため、少なくとも、R画像信号、G画像信号、B画像信号の内、少なくとも2色が格納できるメモリ容量を必要とする。
【0032】
現像・補正部403a〜403qは、R画像信号、G画像信号、B画像信号から現像処理、補正処理を行う。機能としては、黒レベル補正、DNR(Digital Noise Reduction)、画素欠陥補正、撮像素子の個体ばらつきやシェーディングに対する輝度補正、現像処理、ホワイトバランス処理、強調処理、などを含む。
【0033】
センサメモリ404a〜404qは、現像・補正した画像信号を一時格納するフレームメモリである。
メモリ制御405は、センサメモリ404a〜404qに格納されている画像信号に対してメモリ領域を指定し、圧縮部410、水平方向合成部406、垂直方向合成部407のいずれかへ画像信号を転送する制御を行う。メモリ制御の動作について詳しくは図6で説明する。
【0034】
水平方向合成部406は、水平方向の画像ブロックの合成処理を行う。垂直方向合成部407は、垂直方向の画像ブロックの合成処理を行う。水平方向、及び、垂直方向の合成処理は隣接する撮像素子間での重複領域内で行うことになるが、その重複領域については図5で説明する。水平合成メモリ408は、水平合成処理後の画像信号を一時格納するメモリである。垂直合成メモリ409は、垂直合成処理後の画像信号を一時格納するメモリである。
【0035】
圧縮部410は、センサメモリ404a〜404q、水平合成メモリ408、垂直合成メモリ409から転送されてくる画像信号を転送ブロックごとに逐次圧縮処理を行う。伝送部411は、圧縮ブロック画像の電気信号を光信号に変換しPCやWSに出力する。
以上の構成により、2次元撮像素子401a〜401qで離散的に取得した画像から合成処理により撮像対象領域全体の画像を生成することができる。
【0036】
図5は、画像データ合成領域を説明する模式図である。図2で説明したように、画像取得は2次元撮像素子111a〜111qにより離散的に順次行われる。また、合成部107での繋ぎ目補正を行うために、繋ぎ合せの対象となる隣接する画像同士が一部重複するように撮像が行われる。図5はその重複領域を明示している。
【0037】
図5(a)は、撮像対象領域全体と、撮像対象領域全体の一部を切り出した図である。ここでは時間概念をなくし、撮像対象領域が空間的にどのように分割されて撮像されているかを示している。破線は各撮像画像の重複領域を示しており、領域は誇張して表現している。簡単のため、撮像対象領域全体の一部を切り出した図で説明を行う。ここで、単体2次元撮像素子で1回に撮像される領域は領域1(A、B、D、E)、領域2(B、C、E、F)、領域3(D、E、G、H)、領域4(E、F、H、I)であり、それぞれ異なる時間に撮像される。正確には、領域1の上部と左部、領域2の上部と右部、領域3の左部と下部、領域4の右部と下部にも重複領域が存在するが、画像合成の説明を簡単にするためにここでは省略する。
【0038】
図5(b)は、領域1〜4が図2で説明したように(b−1)〜(b−4)の時間順序で取得された場合、撮像領域がどのように画像として取得されていくかを示している。(b−1)では領域1(A、B、D、E)が撮像され画像として取得される。(b−2)では領域2(B、C、E、F)が撮像され画像として取得される。ここで、領域(B、E)は重複して撮像された領域であり、水平方向の画像合成処理が行われる領域である。(b−3)では領域3(D、E、G、H)が撮像され画像として取得される。ここで、領域(D、E)は重複して撮像された領域である。(b−2)において領域(A、B、C、D、E、F)の1枚の撮像画像が得られていると考えて、領域(D、E)に対しては垂直方向の画像合成処理が行われる。ここで、X方向を2次元撮像素子の水平読み出し方向としているため、垂直方向の画像合成処理は領域3(D、E、G、H)を全て取得する前に(つまりD、Eのデータが得られた時点で)処理を開始できる。(b−4)では領域4(E、F、H、I)が撮像され画像として取得される。ここで、領域(E、F、H)は重複して撮像された領域である。(b−3)において領域(A、B、C、D、E、F、G、H)の1枚の撮像画像が得られていると考えて、領域(E、F)に対する垂直方向の画像合成処理、領域(E、H)に対する水平方向の画像合成処理が順次行われる。ここで、X方向を2次元撮像素子の水平読み出し方向としているため、垂直方向の画像合成処理は領域4(E、F、H、I)を全て取得する前に(つまりE、Fのデータが得られた時点で)処理を開始できる。
【0039】
X方向に隣り合う撮像領域のY方向の読み出し画素数は概略一致しているため、領域(A〜I)ごとに画像合成処理を行うことができ、撮像対象領域全体に対しても容易に適用範囲を拡張することができる。撮像素子群が撮像対象領域像をY方向に沿って順々に埋めるように撮像領域を取得するため、簡易なメモリ制御で画像合成処理が実現できる。
【0040】
以上、撮像対象領域全体の一部を切り出した領域で説明したが、画像合成を行う領域、及び、合成方向の説明は適用範囲を広げて撮像対象領域全体に対して行うことができる。
【0041】
図6は、画像合成の動作シーケンスを説明する模式図である。各機能ブロックの時間軸が示してあり、時間経過に対して図5で説明した領域A〜Iがどのように処理されていくかを示してある。RGBの順で光源を発光させて撮像する例を示している。ここでの制御はメモリ制御部405で行われる。
【0042】
(a)では、1回目のR画像、G画像が撮像され、それぞれカラーメモリ402d〜402qに格納されている状況で、B画像が撮像されて順次読み出されている。現像・補正部403d〜403qでは、2次元撮像素子から読み出されるB画像と同期するように、カラーメモリ402d〜402qからR画像とG画像を読み出し、順次、現像・補正処理を行っていく。現像・補正処理が行われた画像は、順次センサメモリ404d〜404qに格納される。ここで格納される画像は、領域(A、B、D、E)である。
(b)では、(a)でセンサメモリ404d〜404qに格納された領域(A、B、D、E)のうち、領域(A)を圧縮部410へ転送する。領域(A)に対しての合成処理は行わない。
【0043】
(c)では、2回目のR画像、G画像が撮像され、それぞれカラーメモリ402a〜402nに格納されている状況で、B画像が撮像されて順次読み出されている。現像・補正部403a〜403nでは、2次元撮像素子から読み出されるB画像と同期するように、カラーメモリ402a〜402nからR画像とG画像を読み出し、順次、現像・補正処理を行っていく。現像・補正処理が行われた画像は、順次センサメモリ404a〜404nに格納される。ここで格納される画像は、領域(B、C、E、F)である。
(d)では、(c)でセンサメモリ404a〜404nに格納された領域(B、C、E
、F)の内、領域(C)を圧縮部410へ転送する。領域(C)に対しての合成処理は行わない。
【0044】
(e)では、領域(B、E)がセンサメモリ404a〜404qから読み出され、水平方向の画像合成処理が行われる。
(f)では、水平方向の画像合成処理後の画像が順次水平合成メモリ408に格納される。
(g)では、水平合成メモリ408に格納されている領域(B)を圧縮部410へ転送する。
【0045】
(h)では、3回目のR画像、G画像が撮像され、それぞれカラーメモリ402d〜402qに格納されている状況で、B画像が撮像されて順次読み出されている。現像・補正部403d〜403qでは、2次元撮像素子から読み出されるB画像と同期するように、カラーメモリ402d〜402qからR画像とG画像を読み出し、順次、現像・補正処理を行っていく。現像・補正処理が行われた画像は、順次センサメモリ404d〜404qに格納される。ここで格納される画像は、領域(D、E、G、H)である。
【0046】
(i)では、(h)でセンサメモリ404d〜404qに格納された領域(D、E、G、H)の内、領域(G)を圧縮部410へ転送する。領域(G)に対しての合成処理は行わない。
(j)では、領域(D、E)がセンサメモリ404d〜404q、及び、水平合成メモリ408から読み出され、垂直方向の画像合成処理が行われる。
(k)では、垂直方向の画像合成処理後の画像が順次垂直合成メモリ409に格納される。
(l)では、垂直合成メモリ409に格納されている領域(D)を圧縮部410へ転送する。
【0047】
(m)では、4回目のR画像、G画像が撮像され、それぞれカラーメモリ402a〜402nに格納されている状況で、B画像が撮像されて順次読み出されている。現像・補正部403a〜403nでは、2次元撮像素子から読み出されるB画像と同期するように、カラーメモリ402a〜402nからR画像とG画像を読み出し、順次、現像・補正処理を行っていく。現像・補正処理が行われた画像は、順次センサメモリ404a〜404nに格納される。ここで格納される画像は、領域(E、F、H、I)である。
【0048】
(n)では、(m)でセンサメモリ404a〜404nに格納された領域(E、F、H、I)の内、領域(I)を圧縮部410へ転送する。領域(I)に対しての合成処理は行わない。
(o)では、領域(E、F)がセンサメモリ404a〜404n、及び、垂直合成メモリ409から読み出され、垂直方向の画像合成処理が行われる。
(p)では、垂直方向の画像合成処理後の画像が順次垂直合成メモリ409に格納される。
(q)では、垂直合成メモリ409に格納されている領域(F)を圧縮部410へ転送する。
【0049】
(r)では、領域(E、H)がセンサメモリ404a〜404q、及び、垂直合成メモリ409から読み出され、水平方向の画像合成処理が行われる。
(s)では、水平方向の画像合成処理後の画像が順次水平合成メモリ408に格納される。
(t)では、水平合成メモリ408に格納されている領域(E、H)を順次圧縮部410へ転送する。
以上のように、メモリ制御部405がメモリ転送を制御することで逐次合成処理を行い、撮像対象領域全体の画像を逐次圧縮部410へ転送することができる。
【0050】
ここでは、領域(A)、(C)、(G)、(I)は合成処理を行わずに圧縮するシーケンスを説明したが、領域(A)、(C)、(G)、(I)と合成処理を行った領域を繋ぎ合わせてから圧縮するシーケンスも実現できる。
【0051】
(歪曲収差)
図7は、歪曲収差の一例と合成での画像組み合わせを説明する模式図である。
図7(a)は、歪曲収差の一例を示す模式図である。撮像素子群111a〜111qと撮像光学系の有効視野112の相対位置関係は固定であるため、各撮像素子111a〜111qはそれぞれに決まった歪曲収差をもつ。また各撮像素子111a〜111qの歪曲収差は互いに異なる。
【0052】
図7(b)は、合成での画像組み合わせを説明する模式図であり、各撮像素子が撮像対象領域像110bのどの領域を撮像するかを示している。図2で説明したように、撮像素子群が撮像対象領域像をY方向に沿って順々に埋めるように、撮像素子群111a〜111qと結像面での撮像対象領域像110bを相対的に移動させる制御を行う。そのため、撮像対象領域像110bは各撮像素子111a〜111qにより分割して撮像される。図7(b)中の各分割領域に付されたアルファベットa〜qは、その分割領域を撮像する撮像素子111a〜111qとの対応関係を示している。各撮像素子111a〜111qはそれぞれに決まった歪曲収差をもち、各重複領域で2つの画像の歪曲収差はそれぞれ異なる。例えば、重複領域の第1列(C1)の水平方向の画像合成に着目した場合、重複領域は8箇所であり、そこでの撮像素子の組み合わせは4パターン(d、a)、(d、h)、(k、h)、(k、o)である。すなわち、重複領域の第1列(C1)では画像の繋ぎ合わせ方が4パターンあることになる。また、重複領域の第1行(R1)の垂直方向の画像合成に着目した場合、重複領域は7箇所であり、そこでの撮像素子の組み合わせは7パターン(d、d)、(a、a)、(e、e)、(b、b)、(f、f)、(c、c)、(g、g)である。先の例と同様に、重複領域の第1行(R1)では画像の繋ぎ合わせ方が7パターンあることになる。このように各重複領域で2つの画像の歪曲収差は異なるため、画像の繋ぎ合わせ方も各重複領域で異なることになる。
【0053】
(補正領域)
歪曲収差の異なる2つの画像を滑らかに繋ぎ合せるには、重複領域内の画素に対して補正処理(すなわち、画素の座標と画素値を変更する処理)を施す必要がある。しかしながら、前述したように、補正処理を施すと解像力が劣化するという問題がある。そこで、本実施形態では、解像力劣化の影響を可及的に小さくするために、重複領域全体の画素に対して補正処理を施すことはせず、重複領域のなかの一部の領域(以下、この領域を「補正領域」とよぶ)の画素に対してのみ補正処理を施す。このとき、繋ぎ合せる2つの画像の歪曲収差の違い(これは画像を撮像した撮像素子の組み合わせにより決まる)に応じて、補正領域の大きさが定められる。補正領域が小さくなるほど、解像力の劣化を低減することができる。
【0054】
図8および図9を参照して、補正領域の決定方法の一例を説明する。
図8(a)は、各撮像素子による分割撮像の領域を示しており図5(a)や図7(b)に対応する。
図8(b)は、水平方向の画像合成に着目して図8(a)の点線部を切り出した図である。図5(a)との対応を示すと、図8(b)の領域は図5の領域(A、B、C、D、E、F)に対応し、第1の画像は領域1(A、B、D、E)に対応し、第2の画像は領域2(B、C、E、F)に対応し、重複領域は領域(B、E)に対応する。ただし、図5(a
)では説明を簡単にするため省略した第1の画像と第2の画像の上部に位置する重複領域を、図8(b)では図示している。
【0055】
重複領域の幅をKとし、重複領域の中心線上に3つの代表点A、B、Cを考える。図7(b)との対応関係をみると、第1の画像は撮像素子111hで取得した画像であり、第2の画像は撮像素子eで取得した画像である。そのため、第1の画像にはレンズ内での撮像素子111hの配置に起因する歪曲収差の影響があり、第2の画像にはレンズ内での撮像素子111eの配置に起因する歪曲収差の影響がある。
【0056】
図8(c)は、図8(b)の重複領域だけを切り出した図である。
L(A)は代表点Aにおいて第1の画像と第2の画像を滑らかに繋ぎ合せるために必要な幅である。L(A)は、第1の画像における代表点Aの真値からのずれと第2の画像における代表点Aの真値からのずれの相対的な差分M(A)を用いて機械的に決定する。真値からのずれとは、歪曲収差の影響で発生する座標ずれのことである。図7(a)を参考にすると、第1の画像における真値からのずれは撮像素子111hがもつ歪曲収差により発生する座標ずれであり、第2の画像における真値からのずれは撮像素子111eがもつ歪曲収差により発生する座標ずれである。
【0057】
代表点Aの真値を(Ax、Ay)とし、第1の画像における代表点Aのずれ値を(ΔAx1、ΔAy1)、第2の画像における代表点Aのずれ値を(ΔAx2、ΔAy2)とする(図9(a)、(b)参照)。このとき、M(A)は、
M(A)
=|(Ax+ΔAx1、Ay+ΔAy1)−(Ax+ΔAx2、Ay+ΔAy2)|=|(ΔAx1−ΔAx2、ΔAy1−ΔAy2)|
で表現される(図9(c)参照)。
【0058】
そして、
L(A)=α×M(A) α:任意に決定する正の数
により、繋ぎ合わせのための領域L(A)が決定する。
【0059】
第1の画像における代表点Aの真値からのずれと第2の画像における代表点Aの真値からのずれの相対的な差分がM(A)=4.5(画素)であり、α=10とすると、L(A)=45(画素)となり、繋ぎ合せ領域として45画素分が必要ということになる。αは繋ぎ合せの滑らかさを決定するパラメータであり、大きいほど滑らかな繋ぎ合せとなるが、大きすぎると重複領域も大きくなるため、適度な数値を任意に決定する。
【0060】
L(B)、L(C)に対しても同様に考える。代表点B、Cの真値をそれぞれ(Bx、By)、(Cx、Cy)とし、第1の画像における代表点B、Cのずれ値をそれぞれ(ΔBx1、ΔBy1)、(ΔCx1、ΔCy1)、第2の画像における代表点B、Cのずれ値をそれぞれ(ΔBx2、ΔBy2)、(ΔCx2、ΔCy2)とする。このとき、M(B)、M(C)は、それぞれ、
M(B)
=|(Bx+ΔBx1、By+ΔBy1)−(Bx+ΔBx2、By+ΔBy2)|=|(ΔBx1−ΔBx2、ΔBy1−ΔBy2)|
M(C)
=|(Cx+ΔCx1、Cy+ΔCy1)−(Cx+ΔCx2、Cy+ΔCy2)|=|(ΔCx1−ΔCx2、ΔCy1−ΔCy2)|
で表現される。
【0061】
そして、
L(B)=α×M(B)
L(C)=α×M(C)
により、繋ぎ合わせのための領域L(B)、L(C)が決定する。
【0062】
そして、L(A)、L(B)、L(C)の中の最大値を補正領域の幅Nに決定する。たとえば、L(A)、L(B)、L(C)の関係が図8(c)に示すように、
L(A)>L(B)>L(C)
である場合には、補正領域の幅N=L(A)とする。
【0063】
以上の方法により、歪曲収差による相対的な座標ずれ量が小さいほど補正領域が小さくなるように、各補正領域の大きさが適応的に定められる。より詳しくいうと、2つの画像の並ぶ方向を第1の方向、それに直交する方向を第2の方向とした場合に、補正領域の第1の方向の幅は、歪曲収差による相対的な座標ずれ量が小さいほど狭くなる。なお、補正領域は第2の方向に沿って重複領域を横切るように設けられる。ここでは説明を簡単にするため、重複領域の中心線上に3点の代表点を考えたが、これに限定されるものではなく、代表点の数が多いほど補正領域を正確に見積もることができる。
【0064】
図8(a)の重複領域の第1列(C1)の水平方向の画像合成を見ると、重複領域は8箇所である。これらの重複領域それぞれに対して上記説明した補正領域Nを決定する。そして、第1列(C1)において最大の補正領域Nmaxと同じかそれより大きくなるように
第1列(C1)での重複領域Kの大きさが決められる。すなわち、第1列(C1)では重複領域Kは共通であるが、補正領域Nは8箇所ある重複領域ごとに異なる大きさとなる。
【0065】
各列(C1〜C6)、各行(R1〜R7)に対して同様の考えを適用し、各重複領域での補正領域を決定するとともに、各行、各列の重複領域を決定する。すなわち、各行、各列ではそれぞれ独立した重複領域を有し、補正領域は重複領域ごとに異なる大きさとなる。このように重複領域の大きさを必要最小限にすると、撮像素子を小型化できたり、カラーメモリとセンサメモリの容量を小さくできるという利点がある。ただし、全ての重複領域の大きさを同じに設定しても構わない。
【0066】
ここでは、真値からのずれを歪曲収差の影響で発生する座標ずれとして説明したが、座標ずれを画素値ずれと読み替えても同様の説明が可能である。
【0067】
以上の考え方により、各重複領域における補正領域を定める。重複領域内に補正領域を設けることで、以下のメリットがある。1つ目は、取得画像に位置ずれがある場合に、2つの画像に対して特徴抽出などの手法を用いることで、画像情報で位置補正を行うことができることである。2つ目は、2つの画像から座標、画素値を参照できるため、補正精度を向上でき画像を滑らかに繋ぎ合せることができることである。
【0068】
(補正領域と重複領域の決定処理)
図10は、補正領域と重複領域の決定処理の流れを説明するフローチャートである。
ステップS1001では、撮像領域の分割数の設定を行う。撮像対象領域像110bを撮像素子群111a〜111qによりどのように分割するかを設定する。図7(b)では撮像対象領域110bを8×7=56分割している。この分割数は、2次元撮像素子の概略の大きさと撮像対象領域像110bの大きさの関係で決まる。まずは、利用を想定している2次元撮像素子の画素ピッチ、解像度から、1個の2次元撮像素子で撮像できるX方向、Y方向の大きさを見積もる。そして、少なくとも撮像対象領域像110bを過不足なく撮像できるような分割数を求める。ここでの分割領域の境界線が図8(b)、(c)で示した重複領域の中心線となる。分割領域の境界線、すなわち、重複領域の中心線を基準にして画像の繋ぎ合せを行っていく。
【0069】
ステップS1002では、相対座標ずれ量の算出を行う。各列、各行それぞれの代表点において、繋ぎ合せの対象となる画像間の真値からのずれの相対的な差分を算出する。真値からのずれとは、歪曲収差の影響で発生する座標ずれのことである。算出方法は図9で説明した通りである。
【0070】
ステップS1003では、各重複領域における補正領域を決定する。補正領域決定方法は図8で説明した通りである。ただし、この段階では重複領域の大きさはまだ決定していない。
【0071】
ステップS1004では、各行、各列の重複領域を決定する。各行、各列での最大相対座標ずれ量から最大補正領域を決定し、各行、各列での最大補正領域に所定の余裕領域を加えた領域をそれぞれの重複領域とする。ここでは、撮像素子群111a〜111qとして同一サイズの2次元撮像素子を用いることを前提としているため、各行、各列で重複領域が同一となる。余裕領域の決め方については後述する。
以上の処理ステップから、各重複領域における補正領域を決定する。
【0072】
図11は、図10のステップS1002の相対座標ずれ量の算出をさらに分解して説明するフローチャートである。
ステップS1101では、行Rnの相対座標ずれ量の算出を行う。重複領域中心線上の代表点において、繋ぎ合せの対象となる画像間の真値からのずれの相対的な差分を算出する。ステップS1102では、S1101の結果を受けて行Rnの最大相対座標ずれ量を決定する。ステップS1103では、全行について相対座標ずれ量の算出、及び、各行の最大相対座標ずれ量の決定が終わったかどうかを判定する。全行の処理が終了するまでS1101とS1102を繰り返す。ステップS1104では、列Cnの相対座標ずれ量の算出を行う。重複領域中心線上の代表点において、繋ぎ合せの対象となる画像間の真値からのずれの相対的な差分を算出する。ステップS1105では、S1104の結果を受けて列Cnの最大相対座標ずれ量を決定する。ステップS1106では、全列について相対座標ずれ量の算出、及び、各列の最大相対座標ずれ量の決定が終わったかどうかを判定する。全列の処理が終了するまでS1104とS1105を繰り返す。以上の処理ステップから、重複領域中心線上の代表点における相対座標ずれ量の算出、及び、各行、各列における最大相対座標ずれ量の決定を行う。
【0073】
図12は、図10のステップS1004の重複領域の決定をさらに分解して説明するフローチャートである。
ステップS1201では、行Rnの重複領域の決定を行う。S1003の補正領域の決定を受けて、各行で補正領域が最大となる領域を重複領域とする。ステップS1202では、全行について重複領域の決定が終わったかどうかを判定する。全行の処理が終了するまでS1201を繰り返す。ステップS1203では、列Cnの重複領域の決定を行う。
S1003の補正領域の決定を受けて、各列で補正領域が最大となる領域を重複領域とする。ステップS1204では、全列について重複領域の決定が終わったかどうかを判定する。全列の処理が終了するまでS1203を繰り返す。以上の処理ステップから、各行、各列における重複領域を決定する。
【0074】
図8から図12で説明した処理は、補正領域、重複領域を定める処理ステップであるが、同時に、撮像素子群111a〜111qの配置と大きさを決めることにもなる。これを、図7を用いて説明する。撮像素子111hに着目すると、この撮像素子の受光面のX方向の大きさは重複領域の第1列(C1)と第2列(C2)により決まる。また、撮像素子111hの受光面のY方向の大きさは重複領域の第2行(R2)と第3行(R3)、第3行(R3)と第4行(R4)、第4行(R4)と第5行(R5)、第5行(R5)と第6行(R6)のうち、最も大きくなる組み合わせにより決まる。このようにして決定した撮像素子の受光面のX方向とY方向の大きさに合うように撮像素子の設計、もしくは、選択を行い、該当領域に配置することになる。ここで、本発明での重複領域(データ重複領域)とは画像データを重複して取得する領域であり、2次元撮像素子で実際に形成される重複領域(物理的重複領域)とは異なることに注意する。物理的重複領域は、少なくともデータ重複領域を含む。本実施形態では、撮像素子群111a〜111qに異なる大きさの2次元撮像素子を用いる場合には、X方向のデータ重複領域(C1〜C6)を物理的重複領域と一致させることができるが、移動方向であるY方向のデータ重複領域(R1〜R7)は必ずしも実重複領域とは一致しない。物理的重複領域がデータ重複領域よりも大きい場合、データ重複領域は2次元撮像素子のROI(Region Of Interest)制御により実現できる。
【0075】
(補正処理)
図13は、補正処理の一例を説明するための模式図である。図8から図12では補正領域の範囲を設定する方法を説明したが、ここでは設定した補正範囲でどのように画像が繋がるかを簡単に説明する。
【0076】
図13(a)は画像繋ぎ合せの対象となる第1の画像と第2の画像を示している。重複領域は省略して補正領域のみ示している。補正領域の第1の画像側の境界を境界線1、第2の画像側の境界を境界線2とよぶ。P11〜P13は、第1の画像における境界線1上の点を示し、P31〜P33は、P11〜P13に対応する第2の画像における境界線1上の点を示している。一方、P41〜P43は、第2の画像における境界線2上の点を示し、P21〜P23は、P41〜P43に対応する第1の画像における境界線2上の点を示している。このとき、第1の画像における境界線1上の画素(例えば、P11、P12、P13)、第2の画像における境界線2上の画素(例えば、P41、P42、P43)は処理を行わずに、補正領域内の画素に対して補間処理を行う、というのが繋ぎ合せの基本的な考え方である。一例としては、第1の画像の補正領域と第2の画像の補正領域に対して補間処理を行い、境界線での繋ぎ合せが滑らかになるようにαブレンディングにより画像合成を行う。
【0077】
第1の画像に対して補間処理を行う場合を考えると、座標P21の位置を座標P41の位置に変換する処理を行う。同様に、座標P22は座標P42へ、座標P23は座標P43へ変換する処理を行う。座標P21、P22、P23は画素の重心と必ずしも一致する必要はないが、P41、P42、P43の位置は画素の重心と一致している。ここでは、代表点のみを図示しているが、実際には第1の画像の境界線2上の全画素に対して処理を実施することになる。第2の画像に対して補間処理を行う場合を考えると、座標P31の位置を座標P11の位置に変換する処理を行う。同様に、座標P32は座標P12へ、座標P33は座標P13へ変換する処理を行う。座標P31、P32、P33は画素の重心と必ずしも一致する必要はないが、P11、P12、P13の位置は画素の重心と一致し
ている。ここでは、代表点のみを図示しているが、実際には第2の画像の境界線1上の全画素に対して処理を実施することになる。このように、第1の画像、及び、第2の画像それぞれの補正画像を生成し、境界線1付近では第1の画像の比率を高く、境界線2付近では第2の画像の比率を高くしたαブレンディングにより滑らかな繋ぎ目となる画像合成が実現できる。
【0078】
図13(b)には境界線1と境界線2の座標値を単純に直線で結んで補正領域内の座標情報を生成し、その座標における画素値を補間により求める例を示している。座標情報の生成方法はこれに限らず、第1の画像における補正領域外で重複領域内の座標情報と、第2の画像における補正領域外で重複領域内の座標情報を用いて、補正領域の座標情報を内挿しても良い。前述の単純な直線による内挿よりも、より自然な座標が生成できることが期待される。
【0079】
ここでの補間処理は、予め保持している座標情報を基に実施する。図7(a)に示すように各撮像素子での歪曲収差は既知であるとして設計値である座標情報を保持する形態でも良いし、実測して求めた歪曲情報を保持する形態でも良い。
【0080】
図14は、補間座標と参照座標を説明する模式図である。図14(a)は、座標変換前の補間座標Q’と参照座標P’(m、n)の位置関係を示している。図14(b)は、座標変換後の補間座標Qと参照座標P(m、n)の位置関係を示している。
【0081】
図15(a)は、座標変換処理の流れの一例を示すフローチャートである。
ステップS1501では、参照点の座標P’(m、n)を指定する。
ステップS1502では、参照点の変換後のアドレスP(m、n)を得るために必要な補正値を収差補正テーブルから取得する。収差補正テーブルは、座標変換前後の画素の位置の対応関係を保持するテーブルである。参照点の座標に対応する変換後の座標値を算出するための補正値が格納されている。
【0082】
ステップS1503では、ステップS1502の処理で得られた収差補正テーブルに格納されている値に基づいて参照画素における変換後の座標P(m、n)を取得する。歪曲収差であれば画素のずれに基づいて参照画素における変換後の座標を取得する。ここで、収差補正テーブルに格納されている値、すなわち、参照点が、間引きされた代表点の値(代表値)である場合は、その間の値は、補間演算によって算出することになる。
【0083】
ステップS1504では、処理対象となる全画素に対して座標変換処理を実施したか否かを判断し、全画素に対して処理が終了している場合は、この座標変換処理を終了する。終了していない場合は、ステップS1501に戻り、再度、上述した処理を繰り返し実行する。以上の処理ステップで、座標変換処理を行う。
【0084】
ここで、図13の座標P21の位置を座標P41の位置に変換する処理との対応関係を示す。座標P21がちょうど画素重心と一致する際には、座標P21の位置を座標P41の位置に変換する処理を行うことになるが、座標P21が画素重心と一致しない場合には、図15に示した座標の補間処理を行うことになる。このとき、補間位置の座標QはP41であり、座標変換前の補間座標Q’は座標P21、参照画素の座標P’(m、n)は座標P21の周辺16画素である。
【0085】
図15(b)は、画素補間処理の流れを説明するフローチャートである。
ステップS1505では、補間を行なう位置である座標Qの指定を行なう。
ステップS1506では、補間位置に生成する画素の周辺にある数点から数十点の参照画素P(m、n)を指定する。
ステップS1507では、参照画素である周辺画素P(m、n)のそれぞれの座標を取得する。
ステップS1508では、補間画素Qと各参照画素P(m、n)との距離を、補間画素を原点としたベクトル形式で求める。
ステップS1509では、ステップS1508の処理で算出した距離を補間曲線又は直線に代入して各参照画素の重み係数を求める。ここでは、座標変換時の補間演算と同じ三次補間式の採用を想定しているが、線形補間(バイリニア)アルゴリズムを採用しても構わない。
ステップS1510では、各参照画素の値と、x、y座標における重み係数との積を加算し、補間画素の値を演算する。
ステップS1511では、処理対象となる全画素に対して画素補間処理を実施したか否かを判断し、全画素に対して処理が終了している場合は、この画素補間処理を終了する。終了していない場合は、ステップS1505に戻り、再度、上述した処理を繰り返し実行する。以上の処理ステップで、画素補間処理を行う。
【0086】
図13に示す補正領域に対して座標変換処理、画素補間処理を行う場合を考えると、簡単な例では第1の画像、及び、第2の画像の重複領域内の画素値並びに座標値を利用することになる。そのため、境界線1と境界線2及びその近辺の領域を処理する際の参照画素を重複領域内に確保しておく必要がある。これは図6で示したように領域を分割して高速に処理を行う構成では、重複領域外の画素の参照を行わないためである。図10のステップS1004で説明した余裕領域は、この参照画素群を確保するための領域である。第1の画像と第2の画像それぞれに対して座標変換と画素補間を行い、それらの画像をαブレンディングすることで、境界線付近での繋ぎ目を目立たなくして滑らかに画像を合成することができる。
【0087】
(本実施形態の利点)
ここで本実施形態の画像生成装置における特徴的な前提と構成について説明し、さらに技術的効果に言及する。
【0088】
本実施形態の画像生成装置は、特に、病理分野におけるバーチャル・スライド装置を対象としている。バーチャル・スライド装置で取得する被検試料のデジタル画像、すなわち、人体組織や細胞の拡大画像には直線などの幾何学的模様が少ない、という特徴があるため、見た目に対する画像歪曲の影響が少ない。また、病理診断での診断精度向上のためには、画像処理などでの解像力劣化は極力少なくすることが望ましい。これらの前提のため、画像繋ぎ合せにおける画像歪曲の影響よりも解像力確保を優先し、画像補正により解像力が劣化する面積を低減する、という画像設計指針を採ることができる。
【0089】
また、本実施形態の画像生成装置は撮像領域を包含するレンズ径内に離散的に配置された複数の2次元撮像素子を用いて撮像領域を分割して撮像し、それら複数の分割画像を合成して大サイズの画像を生成する、という構成である。
【0090】
一方、同一サイズ、同一収差をもつカメラを規則的に配置したマルチカメラの構成では、重複領域の2つのカメラのレンズ収差が行方向、列方向で略一致する。そのため、重複領域の画像合成は、行方向、列方向それぞれで固定的な処理で対応できる。しかしながら、撮像領域を包含するレンズ径内に離散的に配置された複数の2次元撮像素子を用いる場合には、2つの2次元撮像素子のレンズ収差が重複領域ごとに異なる。
別の構成となるパノラマ撮影では、重複領域を自由に制御できる。しかしながら、撮像領域を包含するレンズ径内に離散的に配置された複数の2次元撮像素子を用いる場合には、マルチカメラのように重複領域は固定配置される。
【0091】
このように、本実施形態の画像生成装置(撮像装置)は、固定された重複領域でありながら2次元撮像素子のレンズ収差が重複領域ごとに異なるという、マルチカメラ、パノラマ撮影にはない構成上の特徴がある。このような構成において、特に、収差情報に応じて各重複領域の補正領域を適応的に定めることで解像力が劣化する面積を可及的に削減できる、という効果が得られる。
【0092】
以上の説明による本実施形態の効果は、撮像領域を包含するレンズ径内に離散的に配置された複数の2次元撮像素子を用いて撮像領域を分割して撮像し、それら複数の分割画像を合成して大サイズの画像を生成する構成を前提とする。この分割画像の合成処理(繋ぎ合せ処理)において、収差情報に応じて補正領域を適応的に定めて補正を行うため、画像補正により解像力が劣化する面積を低減できる。
【0093】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。前述した第1の実施形態では、重複領域内の最も大きな相対座標ずれ量に合わせて補正領域を定めた。すなわち補正領域の幅は一定である。これに対し、第2の実施形態では、重複領域中心線の相対座標ずれ量に応じて重複領域内で適応的に補正領域を定める。これにより、補正領域の幅は相対座標ずれ量に応じて変化する。このように、本実施形態と前述した第1の実施形態とでは、補正領域の定め方だけが異なる。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分についての詳細な説明を省略する。例えば、図1から図6に示した画像生成装置の撮像、画像合成に関わる構成と処理シーケンス、図7に示した歪曲収差例と画像組み合わせ例、図10から図12に示した補正領域、重複領域を定める処理ステップ、図13に示した補正手法の例、図14と図15で説明した座標変換処理と画素補間処理は、第1の実施形態と同じである。
【0094】
図9(a)〜(c)と図16(a)〜(c)を参照して、本実施形態における補正領域の決定方法を説明する。なお、図16(a)、(b)は第1実施形態の図8(a)、(b)と同様であるため、以下、図16(c)を中心に説明する。
【0095】
図16(c)は、図16(b)の重複領域だけを切り出した図である。
L(A)は代表点Aにおいて第1の画像と第2の画像を滑らかに繋ぎ合せるために必要な幅であり、第1の実施形態と同じ方法により決定する。L(B)、L(C)についても同様である。
【0096】
ここで図に示すようにL(A)、L(B)、L(C)の範囲を連続的に繋げることで補正領域を形成する。各代表点における補正幅を繋ぎ合せるときには線形補間や各種非線形補間で内挿することができる。ここでは説明を簡単にするため重複領域の中心線上に3点の代表点を考えたが、これに限定されるものではなく、代表点の数が多いほど補間による推測領域が少なくなるため、補正領域を正確に見積もることができる。
【0097】
図16(a)の重複領域の第1列(C1)に対して上記説明した重複領域中心線の相対座標ずれ量に応じて適応的に変化する補正領域を決定する。そして、第1列(C1)において最大の補正領域と同じかそれより大きくなるように第1列(C1)での重複領域Kの大きさが決められる。各列(C1〜C6)、各行(R1〜R7)に対して同様の考えを適用し、各列、各行での補正領域を決定し、それらの最大補正領域からそれぞれの重複領域を決定する。すなわち、各行、各列ではそれぞれ独立した重複領域を有し、補正領域は重複領域中心線の相対座標ずれ量に応じて適応的に変化する大きさとなる。
【0098】
ここでは、真値からのずれを歪曲収差の影響で発生する座標ずれとして説明したが、座標ずれを画素値ずれと読み替えても同様の説明が可能である。
【0099】
以上述べた本実施形態によれば、第1の実施形態よりもさらに補正領域を小さくすることができるため、画像補正により解像力が劣化する面積をより小さくすることが可能となる。
【0100】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。前述した第1の実施形態及び第2の実施形態では、重複領域中心線上の代表点を基準にして補正領域を定める方法を説明した。これに対し、第3の実施形態では、重複領域内における2つの画像の相関に基づいて適応的に補正領域の位置を定める。相対座標ずれ量の算出が重複領域中心線に依存しないところが、第1及び第2の実施形態との差異となる。このように、本実施形態と前述した第1及び第2の実施形態とでは、補正領域の定め方だけが異なる。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分についての詳細な説明を省略する。例えば、図1から図6に示した画像生成装置の撮像、画像合成に関わる構成と処理シーケンス、図7に示した歪曲収差例と画像組み合わせ例、図10から図12に示した補正領域、重複領域を定める処理ステップ、図13に示した補正手法の例、図14と図15で説明した座標変換処理と画素補間処理は、第1の実施形態と同じである。
【0101】
図17(a)〜(d)を参照して、本実施形態の補正領域の決定方法について説明する。図17(a)は第1実施形態の図8(a)と同様である。以下、第1の実施形態と異なる図17(b)、(c)、(d)を中心に説明する。
【0102】
図17(b)は、水平方向の画像合成に着目して図17(a)の点線部を切り出した図である。図5(a)との対応を示すと、切り出した領域は図5(a)の領域(A、B、C、D、E、F)に対応し、第1の画像は領域1(A、B、D、E)に対応し、第2の画像は領域2(B、C、E、F)に対応し、重複領域は領域(B、E)に対応する。ただし、図5(a)では説明を簡単にするため省略した第1の画像と第2の画像の上部に位置する重複領域を、図17(b)では図示している。図7(a)との対応関係をみると、第1の画像は撮像素子111hで取得した画像であり、第2の画像は撮像素子eで取得した画像である。そのため、第1の画像にはレンズ内での撮像素子111hの配置に起因する歪曲収差の影響があり、第2の画像にはレンズ内での撮像素子111eの配置に起因する歪曲収差の影響がある。
【0103】
まず、幅Kの重複領域内において、第1の画像と第2の画像の間で水平方向のブロックマッチングを行うことにより、両画像の相関が最も大きい部分(すなわち、両画像が最も類似している部分)を検出する。具体的には、探査ブロックの重複領域内での位置を水平方向に少しずつずらしながら、各位置での探査ブロック内の第1の画像と第2の画像の画素の相関(一致度)を求め、最も相関が大きい位置を検出する。この処理を、重複領域内の垂直方向の複数の位置について行うことにより、第1の画像と第2の画像の相関の大きいブロック群を得ることができる。図17(c)は、図17(b)の重複領域だけを切り出した図であり、第1の画像と第2の画像の相関の大きいブロック群を示している。ブロック間の相関を評価する関数としては、SAD(Sum of Absolute Difference)(画素値の差の絶対値の総和)や、SSD(Sum of Squared Difference)(画素値の差の二乗の総和)を用いることができる。
【0104】
次に、図17(c)に示すように、相関の大きいブロック群から補正中心線を導出する。補正中心線は、例えば、各ブロックの重心を結ぶか、各ブロックの重心を直線又は曲線で補間することで求めることができる。このようにして求めた補正中心線は、第1の画像と第2の画像とが最も類似している境界、言い換えると、第1の画像と第2の画像のずれが最も小さくなる境界を示すものである。したがって、この補正中心線を基準にして補正
領域を定めることで、補正領域のサイズを最小にできるものと期待できる。なお、上記では水平方向の画像合成の場合について述べたが、垂直方向の画像合成の場合には、垂直方向のブロックマッチングを行うことで、同じように補正中心線を求めればよい。
【0105】
図17(d)は、補正中心線上の複数の点Aにおいて繋ぎ合せに必要な補正幅L(A)を算出して、それらを繋ぎ合せた補正領域を図示している。Aは補正中心線上の任意の点を選ぶことができる。L(A)は、第1の実施形態と同じ方法により算出する。
【0106】
図17(a)の重複領域の第1列(C1)に対して上記説明した補正中心線の相対座標ずれ量に応じて適応的に変化する補正領域Nを決定する。そして、第1列(C1)において補正領域がとる最大幅が第1列(C1)での重複領域Kとなる。各列(C1〜C6)、各行(R1〜R7)に対して同様の考えを適用し、各列、各行での補正領域を決定し、それらの補正領域がとる最大幅からそれぞれの重複領域を決定する。すなわち、各行、各列ではそれぞれ独立した重複領域を有し、補正領域は補正中心線の相対座標ずれ量に応じて適応的に変化する大きさとなる。
【0107】
本実施形態では探査ブロックで探索するための仮決めした重複領域と、補正領域の最大幅から決まる最終的な重複領域をわけて設定しなければならない。仮決めの重複領域が大きいほど滑らかな繋ぎ合せとなるが、大きすぎると最終的な重複領域も大きくなる可能性があるため、適度な数値を任意に決定する。
【0108】
以上述べた本実施形態によれば、第1及び第2の実施形態よりもさらに補正領域を小さくすることができるため、画像補正により解像力が劣化する面積をより小さくすることが可能となる。
【符号の説明】
【0109】
10:移動機構、103:プレパラート、104:撮像光学系、105:撮像部、107:合成部、111a〜111q:撮像素子群
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を支持する支持手段と、
互いに間隙を介して離散的に配置された複数の撮像素子を有する撮像手段と、
前記被写体の像を拡大して前記撮像手段に導く撮像光学系であって、前記複数の撮像素子との相対位置が固定されている撮像光学系と、
前記被写体の像に対する前記複数の撮像素子の撮像位置を変えて複数回の撮像を行うために、前記複数の撮像素子と前記被写体との相対位置を変化させる移動手段と、
各撮像位置において各撮像素子から得られた複数の画像を繋ぎ合せて、前記被写体の全体の画像を生成する合成手段と、
を有する画像生成装置であって、
各撮像素子で得られる画像における前記撮像光学系の収差は、前記撮像光学系と撮像素子との相対位置により、撮像素子ごとに予め定まっており、
前記移動手段は、繋ぎ合せる2つの画像同士が一部で重複するように、前記複数の撮像素子と前記被写体との相対位置を変化させ、
前記合成手段は、繋ぎ合せる2つの画像同士が重複する重複領域内に補正領域を設定し、前記補正領域内の画素に対して補正処理を施すことによって前記2つの画像の繋ぎ目を滑らかにするものであり、
前記補正領域の大きさは、繋ぎ合せる2つの画像を撮像した撮像素子の組み合わせにより決まる前記2つの画像における収差の違いに応じて、定められている
ことを特徴とする画像生成装置。
【請求項2】
前記補正領域の大きさは、前記2つの画像における歪曲収差による相対的な座標ずれ量が小さいほど前記補正領域が小さくなるように、定められていることを特徴とする請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項3】
繋ぎ合せる2つの画像の並ぶ方向を第1の方向、前記第1の方向に直交する方向を第2の方向とした場合に、
前記補正領域は、前記重複領域よりも前記第1の方向の幅が狭く、かつ、前記第2の方向に沿って前記重複領域を横切るように設けられた領域である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像生成装置。
【請求項4】
前記補正領域の前記第1の方向の幅は、前記2つの画像における歪曲収差による相対的な座標ずれ量が小さいほど狭くなるように、定められる
ことを特徴とする請求項3に記載の画像生成装置。
【請求項5】
前記補正領域の前記第1の方向の幅が、前記第2の方向の位置によらず一定であることを特徴とする請求項3または4に記載の画像生成装置。
【請求項6】
前記補正領域の前記第1の方向の幅が、前記第2の方向の位置ごとの前記歪曲収差による相対的な座標ずれ量に応じて異なっていることを特徴とする請求項3または4に記載の画像生成装置。
【請求項7】
前記補正領域の前記第1の方向の位置は、前記重複領域の中で前記2つの画像の相関が最も大きい位置になるように、定められることを特徴とする請求項3〜6のうちいずれか1項に記載の画像生成装置。
【請求項8】
前記複数の撮像素子は、行方向及び列方向に揃って配置されており、
行ごと、及び、列ごとに、重複領域の大きさが定められていることを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の画像生成装置。
【請求項1】
被写体を支持する支持手段と、
互いに間隙を介して離散的に配置された複数の撮像素子を有する撮像手段と、
前記被写体の像を拡大して前記撮像手段に導く撮像光学系であって、前記複数の撮像素子との相対位置が固定されている撮像光学系と、
前記被写体の像に対する前記複数の撮像素子の撮像位置を変えて複数回の撮像を行うために、前記複数の撮像素子と前記被写体との相対位置を変化させる移動手段と、
各撮像位置において各撮像素子から得られた複数の画像を繋ぎ合せて、前記被写体の全体の画像を生成する合成手段と、
を有する画像生成装置であって、
各撮像素子で得られる画像における前記撮像光学系の収差は、前記撮像光学系と撮像素子との相対位置により、撮像素子ごとに予め定まっており、
前記移動手段は、繋ぎ合せる2つの画像同士が一部で重複するように、前記複数の撮像素子と前記被写体との相対位置を変化させ、
前記合成手段は、繋ぎ合せる2つの画像同士が重複する重複領域内に補正領域を設定し、前記補正領域内の画素に対して補正処理を施すことによって前記2つの画像の繋ぎ目を滑らかにするものであり、
前記補正領域の大きさは、繋ぎ合せる2つの画像を撮像した撮像素子の組み合わせにより決まる前記2つの画像における収差の違いに応じて、定められている
ことを特徴とする画像生成装置。
【請求項2】
前記補正領域の大きさは、前記2つの画像における歪曲収差による相対的な座標ずれ量が小さいほど前記補正領域が小さくなるように、定められていることを特徴とする請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項3】
繋ぎ合せる2つの画像の並ぶ方向を第1の方向、前記第1の方向に直交する方向を第2の方向とした場合に、
前記補正領域は、前記重複領域よりも前記第1の方向の幅が狭く、かつ、前記第2の方向に沿って前記重複領域を横切るように設けられた領域である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像生成装置。
【請求項4】
前記補正領域の前記第1の方向の幅は、前記2つの画像における歪曲収差による相対的な座標ずれ量が小さいほど狭くなるように、定められる
ことを特徴とする請求項3に記載の画像生成装置。
【請求項5】
前記補正領域の前記第1の方向の幅が、前記第2の方向の位置によらず一定であることを特徴とする請求項3または4に記載の画像生成装置。
【請求項6】
前記補正領域の前記第1の方向の幅が、前記第2の方向の位置ごとの前記歪曲収差による相対的な座標ずれ量に応じて異なっていることを特徴とする請求項3または4に記載の画像生成装置。
【請求項7】
前記補正領域の前記第1の方向の位置は、前記重複領域の中で前記2つの画像の相関が最も大きい位置になるように、定められることを特徴とする請求項3〜6のうちいずれか1項に記載の画像生成装置。
【請求項8】
前記複数の撮像素子は、行方向及び列方向に揃って配置されており、
行ごと、及び、列ごとに、重複領域の大きさが定められていることを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の画像生成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−138068(P2012−138068A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183092(P2011−183092)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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