説明

画像表示装置

【課題】精度よく管腔臓器の芯線を求める。
【解決手段】断層像から管腔臓器を抽出した複数の二値画像3を生成する。その二値画像3中に抽出領域A上の点(x、y)を中心とする3次元の小領域Bを設定し、小領域中Bに含まれる管腔臓器(抽出領域Aに相当)の平均座標(xav, yav)を求める。そして、平均座標の点と小領域Bの中心点との距離を求め、その距離が予め設定した距離より小の場合は、上記平均座標を芯線の座標として記録する。この芯線の座標を用いて芯線を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に係り、特に、管腔臓器の芯線をより精度よく求める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図11に示すように、複数の断層像を積み上げたボリューム画像110に撮影された血管などの管腔臓器111から、その管腔臓器111の各断面における中心点を結んだ芯線112を求める方法がある。
【0003】
例えば、特許文献1は、対象物(管腔臓器)の壁面の最も近い立体要素を繰り返し除去することにより、中心線(芯線)だけを残す方法を開示している。
【特許文献1】特表2001-502197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、求めるべき中心線(芯線)まで除去することを防ぐため、対象物の壁面の最も近い立体要素が中心線ではないという判定演算をしてから除去する必要があり、演算時間のかかる方法であった。また、稀に中心線に不連続点が現れることがあった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、芯線を精度よく、比較的短時間の演算で求めることのできる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る画像表示装置は、管腔臓器が撮影された複数の断層像に基づいて、前記管腔臓器の芯線を求め、その芯線を用いた画像を表示する画像表示装置であって、前記複数の断層像を入力する入力手段と、前記各断層像について前記管腔臓器が撮影された管腔臓器領域を二値化抽出し、複数の二値画像を生成する二値化手段と、前記二値画像に含まれる前記管腔臓器領域の一点を中心とする三次元の小領域であって、前記一点を含む二値画像に連続する他の二値画像の管腔臓器領域も更に包含する三次元の小領域を設定する小領域設定手段と、前記小領域に含まれる前記管腔臓器領域の平均座標と前記小領域の中心となる一点に対応する中心座標とを求める座標算出手段と、前記求められた平均座標と前記小領域の中心座標との距離を求める距離算出手段と、前記求められた距離と、前記平均座標を前記芯線の座標として用いるか否かを判断するための所定の距離と、を比較し、前記求められた距離が前記所定の距離より小さい場合は、前記平均座標を前記芯線の座標とすると判断する芯線座標判断手段と、前記芯線の座標に基づいて芯線を生成する芯線生成手段と、前記芯線を用いた画像を生成する画像生成手段と、前記芯線を用いた画像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小領域の中心座標とその小領域に含まれる抽出領域の平均座標との距離に基づいて芯線か否かを判断することにより、芯線に不連続点がなく、かつ比較的短時間の演算で芯線座標を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。なお、発明の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0009】
〔システム構成〕
図1は、本実施形態に係る医用画像表示システム1の構成を示すハードウェア構成図である。
【0010】
図1の医用画像表示システム1は、被検体の画像を撮影する医用画像撮影装置2と、医用画像撮影装置2が撮影した医用画像を蓄積する画像データベース4と、被検体の画像を表示する画像表示装置10とを備え、医用画像撮影装置2と画像データベース(画像DB)4と画像表示装置10とは、LAN3等のネットワークに接続される。LAN3には、画像表示装置10で生成した画像、例えば仮想内視鏡画像や擬似3次元画像等を表示させるための端末装置5を接続してもよい。
【0011】
医用画像撮影装置2は、例としてX線CT装置とMR装置と超音波撮影装置(US装置)とを記載したが、被検体の断層像を撮影できる医用画像撮影装置であればこれらに限らない。
【0012】
画像表示装置10は、主として各構成要素の動作を制御する制御装置としての中央処理装置(CPU)11、装置の制御プログラムが格納されたり、プログラム実行時の作業領域となったりする主メモリ12と、オペレーティングシステム(OS)、周辺機器のデバイスドライブ、後述する芯線抽出処理や画像生成処理を行うためのプログラムを含む各種アプリケーションソフト等が格納される磁気ディスク13と、表示用データを一時記憶する表示メモリ14と、この表示メモリ14からのデータに基づいて画像を表示するCRTモニタや液晶モニタ等のモニタ15と、位置入力装置としてのマウス16、マウス16の状態を検出してモニタ15上のマウスポインタの位置やマウス16の状態等の信号をCPU11に出力するコントローラ16aと、キーボード17と、通信インターフェース(以下「通信I/F」という)18と、上記各構成要素を接続するバス19とから構成される。
【0013】
次に図2に基づいて画像表示装置10が実行する画像処理プログラムについて説明する。図2は、画像表示プログラムの構成を示すブロック図である。
【0014】
画像表示プログラムは、断層像を体軸方向に積み上げたボリューム画像(3次元画像データ)を入力する入力部11a、入力されたボリューム画像に対し、対象臓器を抽出するために二値化処理を行う二値抽出部11b、芯線を抽出するための小領域を設定する小領域設定部11c、小領域に含まれる対象臓器領域の平均座標及び小領域の中心座標を求める座標算出部11d、上記平均座標と中心座標との距離を求める距離算出部11e、求められた距離と所定の閾値とを比較し、その結果に基づいて平均座標と芯線の座標として記録するか否かを判断し、磁気ディスク13や主メモリ12などの記録媒体からなる座標記録部11gに芯線の座標を記録する芯線座標判断部11f、記録された座標に基づいて芯線を生成する芯線生成部11h、その芯線を擬似3次元画像に重ねて表示した擬似3次元画像又は、その芯線に基づく画像(例えば仮想内視鏡画像、曲面任意多断面再構成像(以下CPR像という)、肝臓切除領域(血管支配領域ともいう))を生成する画像生成部11i、及びこれらの画像を表示する表示制御部11jにより構成される。
【0015】
画像表示装置10のCPU11は、上記画像プログラムを磁気ディスク13から読み出して主メモリ12にロードし、実行する。
【0016】
上記表示制御部11jは必ずしも備える必要がなく、CPU11が生成した画像をLAN3に接続された端末装置5に配信し、その端末装置5において画像を表示するように構成してもよい。
【0017】
〔処理の流れ〕
図3に基づいて本実施形態の処理の流れを説明する。図3は、本実施形態の処理の流れを示すフローチャートである。以下の処理は、入力部11aがX線CT装置、MR装置、US装置から複数の断層像からなるボリューム画像を取得し、又は画像DB4や磁気ディスク13などの記憶媒体に格納されたボリューム画像を読み込み、二値抽出部11bがしきい値処理などにより図4に示す二値画像3を得た後に開始される。二値画像3には、血管領域や気管支領域、また腸領域などの管腔臓器からなる抽出領域Aが存在する。
【0018】
ステップS1では、小領域設定部11cが芯線座標か否かを判断する為の小領域を設定する(S1)。この小領域は、抽出領域A上の点(x、y)を中心とする3次元の小領域である。以下ではこの点を中心点とよび、この座標を中心座標と呼ぶこともある。
【0019】
図4では、二値画像3−2、3−4に含まれる抽出領域A上の点41a、41bを中心とする立方体形状の小領域B4a、B4bを設定する。小領域B4aは、点41aを含む二値画像3−2上に連続する二値画像3−1及び3−3に含まれる抽出領域Aをも包含する。同様に、小領域B4bは、点41bを含む二値画像3−4上に連続する二値画像3−3及び3−5に含まれる抽出領域Aをも包含する。
【0020】
中心点41a、41bの座標は(x41a、y41a)、(x41b、y41b)であって、後の処理のためこれらの座標を座標記録部11gに記録していてもよい。
【0021】
小領域の形状は、図4のような立法体でもよく、図5のような球体でもよい。図5では、二値画像3−2、3−4に含まれる抽出領域A上の点51a(x51a、y51a)、点51b(x51b、y51b)を中心に、球状の小領域B5a、B5bを設定する。
【0022】
ステップS2では、座標算出部11dが、小領域Ba、Bb内に含まれる抽出領域Aの点の平均座標(xav, yav)を求める(S2)。
【0023】
図4では、小領域B4a、B4bの平均座標(xav1,yav1)、 (xav2,yav2)に対応する点を42a、42bで示す。同様に、図5で、小領域B5a、B5bの平均座標を(xav3,yav3) (xav4,yav4)とし、これに対応する点を52a、52bで示す。
【0024】
ステップS3では、距離算出部11eが、小領域Bの中心座標(x、y)とステップS2で求めた小領域に含まれる抽出領域Aの平均座標(xav,yav)との距離lを求める。そして、芯線座標判断部11fが、求めた距離lと、予め設定しておいた定数δと比較して、中心点(x、y)(例えば41b)と平均座標の点(xav,yav)(例えば42b)間の距離lがδよりも小さいか否かを判定する(S3)。
【0025】
なお、記述のしかたを変えただけの中心点(x、y)と平均座標の点(xav,yav)間の距離l <= δ´ の比較も本発明に含まれる。
【0026】
yesならステップS4に進み(例えば点41aや51aの場合)、noならステップS5へ進む(例えば点41bや51bの場合)。
【0027】
ステップS4では、芯線座標判断部11fが、平均座標(xav,yav)を芯線の座標として座標記録部11gに記録する(S4)。
【0028】
ステップS5では、芯線座標判断部11fが、抽出領域A上の全ての点(x、y)について、ステップS1〜ステップS4を行ったか否かを判断し、yesならステップS6へ、noならステップS1へ進む。
【0029】
ステップS6では、芯線生成部11hが、座標記録部11gから芯線の座標を読み出し、芯線を生成する(S6)。
【0030】
ステップS7では、画像生成部11iが、ステップS6で求めた芯線に基づく画像を生成し、表示制御部11jがモニタ15上に表示する(S7)。
【0031】
図6乃至図8には、上記のようにして抽出した芯線の応用例を示す。図6は、芯線60上に視点61を設定し、その視点61から仮想光線を管腔臓器の内壁に照射し、投影面62に中心投影法を用いて投影した場合の仮想内視法による内腔表示例である。
【0032】
図7は、CPRの作成、表示例を示す図である。図7(a)は、芯線60を示す。図7(b)は、芯線60を中心にして抽出領域Aからなる管腔臓器を切り開く処理を模式的に示す。図7(c)は、図7(b)の処理を芯線60を含む曲面に沿って行った場合のCPR像を示す。図7(d)は芯線60を含む曲面で断層像(管腔臓器)を切断し、さらに陰影づけをして三次元表示した場合である。
【0033】
図8には肝臓80の切断領域85を決定する例を示す。モニタ15に表示された肝臓80の血管上で、マウス16により点81をクリックして指定すると、末梢側(82側)の血管が支配する領域85を決定することができる。
【0034】
表示制御部11jは、これらの画像をモニタ15に表示する。
【0035】
図9は、上記実施の形態において芯線の太さの設定を行うためのGUI例を示す。
【0036】
画面90は、芯線の太さの指定手段であるバー91と、このバー91で指定された太さを表示する太さ表示ウィンドウ92とが表示される。バー91のポインタ91aを左に動かすと、上記ステップS3で用いた定数δが小さくなり、右に動かすと大きくなる。この定数δを比較的小さい値(δ=0,1,2等)にすると芯線は細くなり、比較的大きな値(δ=3,4や更に大きな値)にすると、芯線は太くなる。これに連動して太さ表示ウィンドウ92に表示された芯線93の太さも変わる。
【0037】
図10は、従来技術と上記実施形態による芯線抽出の結果を示す例である。図10のうち「旧」とあるのは従来技術による芯線抽出結果、「新」とあるのは、本実施形態による芯線抽出結果である。図10にグレーの抽出領域Aの中に走行している白い線が芯線100、101である。○印をつけた領域の芯線を比較すると明らかなように、従来技術による芯線100は白く表示された芯線100に一部不連続点があるが、本実施の形態による芯線101では、不連続点がなく、抹消部位に至るまで芯線101が連続的に表示されている。
【0038】
このように、上記実施形態によれば、連続する断層像に撮影された抽出領域の座標を考慮した上で芯線の座標を求めるため、従来技術に比べて芯線に不連続点が生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】医用画像表示システム1の構成を示すハードウェア構成図
【図2】プログラムブロック図
【図3】本実施形態の処理の流れを示すフローチャート
【図4】平均座標を求めるための小領域設定(立方体)の説明
【図5】平均座標を求めるための小領域設定(球)の説明
【図6】芯線上に視点を設定した場合の仮想内視法による内腔表示例
【図7】芯線を含む曲面で断層像を切断し、さらに陰影づけをして三次元表示した場合
【図8】肝臓中、特定血管の支配する部分領域を決定する例
【図9】芯線の太さを設定するGUI例
【図10】従来技術と本発明との芯線抽出結果の比較
【図11】断層像中の血管領域Aと血管の芯線112の説明図
【符号の説明】
【0040】
1:医用画像表示システム、2:医用画像撮影装置、3:LAN、4:画像DB、5:端末装置、10:画像表示装置、11:CPU、12:主メモリ、13:磁気ディスク、14:表示メモリ、15:モニタ、16:マウス、16a:コントローラ、17:キーボード、18:通信I/F,19:バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔臓器が撮影された複数の断層像に基づいて、前記管腔臓器の芯線を求め、その芯線を用いた画像を表示する画像表示装置であって、
前記複数の断層像を入力する入力手段と、
前記各断層像について前記管腔臓器が撮影された管腔臓器領域を二値化抽出し、複数の二値画像を生成する二値化手段と、
前記二値画像に含まれる前記管腔臓器領域の一点を中心とする三次元の小領域であって、前記一点を含む二値画像に連続する他の二値画像の管腔臓器領域も更に包含する三次元の小領域を設定する小領域設定手段と、
前記小領域に含まれる前記管腔臓器領域の平均座標と前記小領域の中心となる一点に対応する中心座標とを求める座標算出手段と、
前記求められた平均座標と前記小領域の中心座標との距離を求める距離算出手段と、
前記求められた距離と、前記平均座標を前記芯線の座標として用いるか否かを判断するための所定の距離と、を比較し、前記求められた距離が前記所定の距離より小さい場合は、前記平均座標を前記芯線の座標とすると判断する芯線座標判断手段と、
前記芯線の座標に基づいて芯線を生成する芯線生成手段と、
前記芯線を用いた画像を生成する画像生成手段と、
前記芯線を用いた画像を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記画像生成手段は、前記生成された芯線に仮想内視鏡の視点を設定し、その視点から前記管腔臓器の内部に仮想光線を照射し投影面上に投影した仮想内視鏡画像を生成し、
前記表示手段は、前記仮想内視鏡画像を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記画像生成手段は、前記生成された芯線に基づいて前記管腔臓器の走行方向に沿った曲面任意多断面再構成像を生成し、
前記表示手段は、前記曲面任意多断面再構成像を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記管腔臓器は、被検体の肝臓内を走行する血管であって、
前記肝臓内の任意の血管内の点を指定する指定手段を更に備え、
前記画像生成手段は、前記指定された点よりも抹消方向を走行する血管から血液が供給される血管支配領域を示す画像を生成し、
前記表示手段は、前記血管支配領域を示す画像を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記所定の距離を設定するための距離設定手段を更に備え、
前記芯線生成手段は、前記設定された距離が小さいほど細い芯線を生成し、前記設定された距離が大きいほど太い芯線を生成する、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−275258(P2007−275258A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104584(P2006−104584)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】