説明

画像診断装置及びその制御方法

【課題】 画像診断装置において、送受信部を精度よく移動させる。
【解決手段】 送受信部をラジアル動作させることで生成したラインデータに基づいて、体腔内の断面画像を生成する画像診断装置であって、前記送受信部の基準位置からのカウント値を受信する手段(614)と、前記生成したラインデータをカウント値に基づいて配列することで縦断面画像を構築する手段(604)と、縦断面画像を表示する手段(315)と、表示された縦断面画像上においてユーザにより指定された位置に配列されたラインデータに対応するカウント値を用いて、該配列されたラインデータを生成可能な位置に前記送受信部を移動させるための移動量を算出する手段(606)と、該算出された移動量に基づいて前記送受信部を移動させる手段(606)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像診断装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、動脈硬化の診断や、バルーンカテーテルまたはステント等の高機能カテーテルによる血管内治療時の術前診断、あるいは、術後の結果確認のために、画像診断装置が広く利用されている。
【0003】
代表的な画像診断装置として、例えば血管内超音波診断装置(IVUS)が知られている。一般に血管内超音波診断装置は、超音波振動子からなる送受信部が内蔵された超音波プローブ部を血管内に挿入した状態で、送受信部を回転させながら血管内に超音波を出射し、生体からの反射波を受信することでラジアル走査を行い、これにより得られた反射波に対して増幅、検波等の処理を施すことで生成された超音波エコー信号の強度に基づいて、血管の断面画像を描出するものである。
【0004】
また、他の画像診断装置として、例えば、光の可干渉性を利用して画像診断を行う光干渉断層画像診断装置(OCT)が知られている。
【0005】
光干渉断層画像診断装置は、先端に光学レンズおよび光学ミラーを取り付けた送受信部と光ファイバとが内蔵された光プローブ部を血管内に挿入した状態で、送受信部を回転させながら血管内に測定光を出射し、生体組織からの反射光を受光することでラジアル走査を行い、これにより得られた反射光と予め測定光から分割された参照光とを干渉させることで、干渉光に基づく血管の断面画像を描出するものである。
【0006】
さらに、最近では、光干渉断層画像診断装置の改良型として、波長掃引を利用した光干渉断層画像診断装置(OFDI)も開発されている。
【0007】
波長掃引利用の光干渉断層画像診断装置(OFDI)は、基本的な構成は、光干渉断層画像診断装置(OCT)と同様であるが、光干渉断層画像診断装置(OCT)よりも波長の長い光源を用い、かつ波長の異なる光を連続して出射する点に特徴がある。そして、生体組織の深さ方向の各点の反射光強度を、干渉光の周波数解析により求める構成とすることで、参照光の光路長を可変させるための機構を不要としている。
【0008】
なお、以下、本明細書において血管内超音波診断装置(IVUS)と、光干渉断層画像診断装置(OCT)と、波長掃引を利用した光干渉断層画像診断装置(OFDI)とを総称して、「画像診断装置」と呼ぶこととする。
【0009】
一般に、このような画像診断装置を用いて描出された複数の断面画像は、送受信部のラジアル動作の際に、リアルタイムに、表示装置に表示される。また、表示装置に表示された複数の断面画像(あるいは断面画像を描出するのに用いられるラインデータ)は、並行して所定のメモリへと格納され、必要に応じて、何度でも表示装置に再表示することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−79007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、これまでの画像診断装置では、ラジアル動作を開始してから終了するまでの間に描出された複数の断面画像(あるいはラインデータ)が、送受信部のラジアル動作の動作速度(具体的には、血管の軸方向の動作速度)の変動の有無に関わらず、メモリ内の所定の位置に、順次、再表示可能に格納される構成となっていた。
【0012】
このため、複数の断面画像を表示装置に再表示させた場合、各断面画像は、実際の軸方向の位置とは無関係に、表示されることとなっていた。つまり、ユーザは、ラジアル動作を開始させてから、送受信部が、実際に血管の軸方向のどの位置まで移動した際の断面画像であるのかを、再表示された断面画像からでは正確に把握することができなかった。
【0013】
このため、例えば、ラジアル動作を行った後に、再表示させた断面画像に基づいて疾患部位を推定し、再度、当該推定した疾患部位の位置にてラジアル動作を行い、詳細な断面画像を描出させたいと考えた場合であっても、ユーザは、当該疾患部位の正確な位置を把握することができず、当該位置に送受信部を精度よく移動させることができないという問題があった。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、表示された画像上においてユーザが指定した指定内容に応じた軸方向の位置に、送受信部を精度よく移動させることが可能な画像診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために本発明に係る画像診断装置は以下のような構成を備える。即ち、
信号の送受信を連続的に行う送受信部を、体腔内において軸方向に移動させながら該体腔内からの反射信号を取得し、該取得した反射信号に基づいて該体腔内の断面画像の構築に用いられるラインデータを生成するとともに、該生成したラインデータを用いて、該体腔内の断面画像を軸方向に複数構築する画像診断装置であって、
前記送受信部の所定の基準位置からの軸方向の移動量に関する情報を受信する受信手段と、
それぞれの前記断面画像の構築に用いられる複数の前記ラインデータの中から、それぞれの前記断面画像における所定の座標位置に対応するラインデータを抽出するとともに、該抽出したラインデータが生成された際に受信した、前記送受信部の所定の基準位置からの軸方向の移動量に関する情報を取得し、該抽出したラインデータを、該取得した移動量に関する情報に応じた位置に配列することで、前記軸方向に複数構築された断面画像に対する縦断面画像を構築する構築手段と、
前記構築された縦断面画像を表示する表示手段と、
前記表示された縦断面画像上において、ユーザにより指定された位置に配列された前記ラインデータを識別するとともに、該ユーザにより位置が指定された際に受信した、前記送受信部の所定の基準位置からの軸方向の移動量に関する情報を用いて、該識別したラインデータを生成可能な軸方向の位置まで前記送受信部を移動させるための、前記送受信部の移動量及び移動方向を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された移動量及び移動方向に基づいて、前記送受信部の動作を制御する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表示された画像上においてユーザが指定した指定内容に応じた軸方向の位置に、送受信部を精度よく移動させることが可能な画像診断装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】画像診断装置の外観構成を示す図である。
【図1B】スキャナ/プルバック部の詳細構成を示す図である。
【図2】血管内超音波診断装置の機能構成を示す図である。
【図3】光干渉断層画像診断装置の機能構成を示す図である。
【図4】波長掃引利用の光干渉断層画像診断装置の機能構成を示す図である。
【図5】送受信部のラジアル動作を説明するための模式図である。
【図6】信号処理部の詳細構成ならびに関連する機能ブロックを示す図である。
【図7】信号処理部における処理の概要を示す図である。
【図8】ラインデータメモリに格納されたラインデータの一例を示す図である。
【図9】LCDモニタの表示例を示す図である。
【図10】断面画像を取得する際の作業フローの一例を示す図である。
【図11】軸方向の位置情報表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】位置合わせ処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、必要に応じて添付図面を参照しながら本発明の各実施形態を詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
1.画像診断装置の外観構成
図1Aは本発明の一実施形態にかかる画像診断装置(血管内超音波診断装置(IVUS)、光干渉断層画像診断装置(OCT)または波長掃引利用の光干渉断層画像診断装置(OFDI))100の外観構成を示す図である。
【0020】
図1Aに示すように、画像診断装置100は、プローブ部101と、スキャナ/プルバック部102と、操作制御装置103とを備え、スキャナ/プルバック部102と操作制御装置103とは、信号線104により接続されている。
【0021】
プローブ部101は、直接血管内(体腔内)に挿入され、送受信部を用いて血管内部の状態を測定する。スキャナ/プルバック部102は、プローブ部101と着脱可能で、モータを内蔵し、プローブ部101内の送受信部のラジアル動作を規定する。
【0022】
操作制御装置103は、血管内の断面画像を描出するにあたり、各種設定値を入力するための機能や、測定により得られたデータを処理し、断面画像等の処理結果として表示するための機能を備える。
【0023】
操作制御装置103において、111は本体制御部であり、測定により得られたデータを処理したり、処理結果を出力したりする。111−1はプリンタ/DVDレコーダであり、本体制御部111における処理結果を印刷したり、データとして記憶したりする。
【0024】
112は操作パネルであり、ユーザは該操作パネル112を介して、各種設定値の入力を行う。113は表示装置としてのLCDモニタであり、本体制御部111における処理結果を表示する。
【0025】
2.スキャナ/プルバック部の詳細構成
図1Bは、スキャナ/プルバック部102の詳細構成を示す図である。スキャナ/プルバック部102は、プローブ部101内の送受信部のラジアル動作を規定する、回転駆動装置120と直線駆動装置130とを備える。
【0026】
このうち、回転駆動装置120はプローブ部101内の送受信部の円周方向の回転(回転動作)を規定する役割を果たす。回転動作は、不図示のラジアル走査モータを駆動させることで実現される。
【0027】
一方、直線駆動装置130は、プローブ部101内の送受信部の軸方向(体腔内の末梢方向及びその反対方向)の移動(軸方向動作)を規定する役割を果たす。軸方向動作は、直線駆動モータ131を駆動し、ボールネジ133を回転させ、回転駆動装置120を支持する支持部135を直線方向に動作させることで、実現される。
【0028】
なお、直線駆動装置130は、直線駆動モータ131の動作を検出し、回転駆動装置120の所定の基準位置からの軸方向の移動量を算出するための移動量検出器132を備える。本実施形態では、移動量検出器132として、3相のエンコーダを用いられるものとする。なお、134は、3相のエンコーダにより出力されるA相、B相及びZ相のパルス信号の一例を示している。
【0029】
操作制御装置103では、移動量検出器132より出力されるパルス信号134のパルス数をカウントするとともに位相を検出することにより、回転駆動装置120の軸方向の移動量及び移動方向を判断する。
【0030】
3.血管内超音波診断装置の機能構成
次に、本実施形態にかかる画像診断装置100のうち、血管内超音波診断装置(IVUS)の主たる機能構成について図2を用いて説明する。
【0031】
図2は、図1に示した血管内超音波診断装置100の機能構成を示す図である。
【0032】
同図に示すように、血管内超音波診断装置100は、プローブ部101と、スキャナ/プルバック部102と、操作制御装置103とを備える。
【0033】
プローブ部101は、先端内部に超音波振動子からなる送受信部201を備えており、送受信部201は、プローブ部101が血管内に挿入された状態で、超音波信号送受信器221より送信されたパルス波に基づいて、超音波を血管の断面方向(=出射方向)に出射するとともに、その反射波(超音波エコー)を受信し、コネクタ/アダプタ部202及びロータリジョイント211を介して超音波エコー信号として超音波信号送受信器221に送信する。
【0034】
スキャナ/プルバック部102は、ロータリジョイント211を備える回転駆動装置120と、直線駆動装置130とを備える。プローブ部101内の送受信部201は、非回転部と回転部との間を結合するロータリジョイント211により回動自在に取り付けられており、ラジアル走査モータ213により回転駆動される。送受信部201が血管内でプローブ部101の軸を中心に回転することで、超音波信号が円周方向に走査(スキャン)され、これにより血管内の所定の位置における断面画像の描出に必要な超音波エコー信号を得ることができる。
【0035】
なお、ラジアル走査モータ213の動作は信号処理部225からモータ制御回路226を介して送信された制御信号に基づいて制御される。また、ラジアル走査モータ213の回転角度は、エンコーダ部214により検出される。エンコーダ部214において出力される出力パルスは、モータ制御回路226を介して信号処理部225に入力され、断面画像及び縦断面画像(詳細は後述)の構築に利用される。
【0036】
スキャナ/プルバック部102は、更に、直線駆動装置130を備え、信号処理部225からの指示に基づいて、送受信部201の軸方向動作を規定している。なお、直線駆動モータ131の制御回路(ドライバ)は、直線駆動装置130内に設置されているものとし、ここでは図示を省略している。ラジアル走査モータ213と直線駆動モータ131とは着脱可能に接続されていても、一体的に構成されていてもよい。
【0037】
超音波信号送受信器221は、送信回路と受信回路とを備える(不図示)。送信回路は、信号処理部225から送信された制御信号に基づいて、プローブ部101内の送受信部201にパルス波を送信させる。
【0038】
また、受信回路は、プローブ部101内の送受信部201が検出した超音波エコー信号を受信する。受信した超音波エコー信号はアンプ222により増幅される。
【0039】
更に、A/D変換器224では、アンプ222より出力された超音波エコー信号をサンプリングして、1ラインのデジタルデータ(超音波エコーデータ)を生成する。
【0040】
A/D変換器224にて生成されたライン単位の超音波エコーデータは信号処理部225に入力される。信号処理部225では、超音波エコーデータを検波してラインデータを生成した後、該ラインデータに基づいて血管内の各位置での断面画像を描出し、LCDモニタ227(図1の参照番号113に対応する)に出力する。なお、断面画像の描出に用いられたラインデータ(または描出された断面画像そのもの)は、信号処理部225内に読み出し可能に格納され、指示入力部228を介してユーザより指示が入力された場合に、LCDモニタ227上に断面画像として再表示されるものとする。
【0041】
ここで、本実施形態に係る信号処理部225では、ラインデータ(または断面画像)を格納するにあたり、直線駆動装置130の移動量検出器132より出力されたパルス信号のカウント値と対応付けて格納するものとする。なお、信号処理部225におけるこれらの処理の詳細は後述するものとする。
【0042】
4.光干渉断層画像診断装置の機能構成
次に、本実施形態にかかる画像診断装置100のうち、光干渉断層画像診断装置の主たる機能構成について図3を用いて説明する。
【0043】
309は超高輝度発光ダイオード等の低干渉性光源である。低干渉性光源309は、その波長が1310nm程度で、その可干渉距離(コヒーレント長)が数μm〜10数μm程度の短い距離範囲でのみ干渉性を示す低干渉性光を出力する。
【0044】
このため、この光を2つに分割した後、再び混合した場合には分割した点から混合した点までの2つの光路長の差が数μm〜10数μm程度の短い距離範囲内の場合には干渉光として検出されることとなり、それよりも光路長の差が大きい場合は干渉光として検出されることがない。
【0045】
低干渉性光源309の光は、第1のシングルモードファイバ327の一端に入射され、先端面側に伝送される。第1のシングルモードファイバ327は、途中の光カップラ部308で第2のシングルモードファイバ328及び第3のシングルモードファイバ331と光学的に結合されている。
【0046】
光カップラ部とは、1つの光信号を2つ以上の出力に分割したり、入力された2つ以上の光信号を1つの出力に結合したりすることができる光学部品であり、低干渉性光源309の光は、当該光カップラ部308により最大で3つの光路に分割して伝送されうる。
【0047】
第1のシングルモードファイバ327の光カップラ部308より先端側には、スキャナ/プルバック部102が設けられている。スキャナ/プルバック部102の回転駆動装置120内には、非回転部と回転部との間を結合し、光を伝送する光ロータリジョイント303が設けられている。
【0048】
更に、光ロータリジョイント303内の第4のシングルモードファイバ329の先端側は、プローブ部101の第5のシングルモードファイバ330と、コネクタ/アダプタ部302を介して着脱自在に接続されている。これにより光の送受信を繰り返す送受信部301内に接続され回転駆動可能な第5のシングルモードファイバ330に、低干渉性光源309からの光が伝送される。
【0049】
第5のシングルモードファイバ330に伝送された光は、送受信部301の先端側から血管内の生体組織に対してラジアル走査しながら照射される。そして、生体組織の表面あるいは内部で散乱した反射光の一部は送受信部301により取り込まれ、逆の光路を経て第1のシングルモードファイバ327側に戻り、光カップラ部308によりその一部が第2のシングルモードファイバ328側へと移り、第2のシングルモードファイバ328の一端から出射されることで、光検出器(例えばフォトダイオード310)にて受光される。
【0050】
なお、光ロータリジョイント303の回転部側は回転駆動装置120内に配されたラジアル走査モータ305により回転駆動される。また、ラジアル走査モータ305の回転角度は、エンコーダ部306により検出される。更に、スキャナ/プルバック部102は、直線駆動装置130を備え、信号処理部314からの指示に基づいて、送受信部301の軸方向動作を規定している。なお、直線駆動モータ131の制御回路(ドライバ)は、直線駆動装置130内に設置されるが、ここでは図示を省略している。
【0051】
なお、ラジアル走査モータ305と直線駆動モータ131とは着脱可能に接続されていても、一体的に構成されていてもよい。
【0052】
一方、第3のシングルモードファイバ331の光カップラ部308より先端側(参照光路)には、参照光の光路長を変える光路長の可変機構316が設けられている。
【0053】
この光路長の可変機構316は生体組織の深さ方向(測定光の出射の方向)の測定範囲に相当する光路長を高速に変化させる第1の光路長変化手段と、プローブ部101を交換して使用した場合の個々のプローブ部101の長さのばらつきを吸収できるように、その長さのバラツキに相当する光路長を変化させる第2の光路長変化手段とを備えている。
【0054】
第3のシングルモードファイバ331の先端に対向して、この先端とともに1軸ステージ320上に取り付けられ、矢印323に示す方向に移動自在のコリメートレンズ321を介して、ミラー319が配置されている。また、このミラー319と対応するレンズ318を介して微小角度回動可能なガルバノメータ317が第1の光路長変化手段として取り付けられている。このガルバノメータ317はガルバノメータコントローラ324により、矢印322方向に高速に回転される。
【0055】
ガルバノメータ317はガルバノメータのミラーにより光を反射させるものであり、参照ミラーとして機能するガルバノメータに交流の駆動信号を印加することによりその可動部分に取り付けられたミラーが高速に回転するように構成されている。
【0056】
つまり、ガルバノメータコントローラ324より、ガルバノメータ317に対して駆動信号が印加され、該駆動信号により矢印322方向に高速に回転することで、参照光の光路長が、生体組織の深さ方向の測定範囲に相当する光路長だけ高速に変化することとなる。この光路差の変化の一周期が一ライン分の干渉光を取得するための周期となる。
【0057】
一方、1軸ステージ320はプローブ部101を交換した場合に、プローブ部101の光路長のバラツキを吸収できるだけの光路長の可変範囲を有する第2の光路長変化手段として機能する。さらに、1軸ステージ320はオフセットを調整する調整手段としても機能する。例えば、プローブ部101の先端が生体組織の表面に密着していない場合でも、1軸ステージ320により光路長を微小変化させることにより、生体組織の表面位置からの反射光と干渉させる状態に設定することができる。
【0058】
光路長の可変機構316で光路長が変えられた光は第3のシングルモードファイバ331の途中に設けられた光カップラ部308で第1のシングルモードファイバ327側から得られた光と混合されて、干渉光としてフォトダイオード310にて受光される。
【0059】
このようにしてフォトダイオード310にて受光された干渉光は光電変換され、アンプ311により増幅された後、復調器312に入力される。
【0060】
復調器312では干渉光の信号部分のみを抽出する復調処理を行い、その出力はA/D変換器313に入力される。
【0061】
A/D変換器313では、干渉光信号を例えば200ポイント分サンプリングして1ラインのデジタルデータ(「干渉光データ」)を生成する。この場合、サンプリング周波数は、光路長の1走査の時間を200で除した値となる。
【0062】
A/D変換器313で生成されたライン単位の干渉光データは、信号処理部314に入力される。信号処理部314では生体組織の深さ方向の干渉光データ(ラインデータ)に基づいて、血管内の各位置での断面画像及び縦断面画像(詳細は後述)を描出した後、LCDモニタ315(図1の参照番号113に対応する)に出力する。なお、断面画像の描出に用いられたラインデータ(または描出された断面画像そのもの)は、信号処理部314内に読み出し可能に格納され、指示入力部334を介してユーザから指示が入力された場合に、LCDモニタ315に断面画像として再表示されるものとする。
【0063】
ここで、本実施形態に係る信号処理部314では、ラインデータ(または断面画像)を格納するにあたり、直線駆動装置130の移動量検出器132より出力されたパルス信号のカウント値と対応付けて格納するものとする。なお、信号処理部314におけるこれらの処理の詳細は後述するものとする。
【0064】
更に、信号処理部314は、光路長調整手段制御装置326と接続されており、光路長調整手段制御装置326を介して1軸ステージ320の位置を制御する。また、信号処理部314はモータ制御回路325と接続されており、ラジアル走査モータ305の回転駆動を制御する。
【0065】
また、信号処理部314は、参照ミラー(ガルバノメータミラー)の光路長の走査を制御するガルバノメータコントローラ324と接続されており、ガルバノメータコントローラ324からの駆動信号を受信する。モータ制御回路325では、信号処理部314が受信した駆動信号を用いることによりガルバノメータコントローラ324との同期をとっている。
【0066】
5.波長掃引利用の光干渉断層画像診断装置の機能構成
次に、本実施形態にかかる画像診断装置100のうち、波長掃引利用の光干渉断層画像診断装置(OFDI)の主たる機能構成について図4を用いて説明する。
【0067】
図4は、波長掃引利用の光干渉断層画像診断装置100の機能構成を示す図である。
【0068】
408は波長掃引光源であり、Swept Laserが用いられる。Swept Laserを用いた波長掃引光源408は、SOA415(semiconductor optical amplifier)とリング状に結合された光ファイバ416とポリゴンスキャニングフィルタ(408b)よりなる、Extended−cavity Laserの一種である。
【0069】
SOA415から出力された光は、光ファイバ416を進み、ポリゴンスキャニングフィルタ408bに入り、ここで波長選択された光は、SOA415で増幅され、最終的にcoupler414から出力される。
【0070】
ポリゴンスキャニングフィルタ408bでは、光を分光する回折格子412とポリゴンミラー409との組み合わせで波長を選択する。具体的には、回折格子412により分光された光を2枚のレンズ(410、411)によりポリゴンミラー409の表面に集光させる。これによりポリゴンミラー409と直交する波長の光のみ同一の光路を戻り、ポリゴンスキャニングフィルタ408bから出力されるため、ミラーを回転させることで、波長の時間掃引を行うことができる。
【0071】
ポリゴンミラー409は、例えば、32面体のミラーが使用され、回転数が50000rpm程度である。ポリゴンミラー409と回折格子412とを組み合わせた波長掃引方式により、高速、高出力の波長掃引が可能となっている。
【0072】
Coupler414から出力された波長掃引光源408の光は、第1のシングルモードファイバ430の一端に入射され、先端側に伝送される。第1のシングルモードファイバ430は、途中の光カップラ部434において第2のシングルモードファイバ437及び第3のシングルモードファイバ431と光学的に結合されている。従って、波長掃引光源408の光は、この光カップラ部434により最大で3つの光路に分割されて伝送される。
【0073】
第1のシングルモードファイバ430の光カップラ部434より先端側には、非回転部と回転部との間を結合し、光を伝送する光ロータリジョイント403が回転駆動装置120内に設けられている。
【0074】
更に、光ロータリジョイント403内の第4のシングルモードファイバ435の先端側は、プローブ部101の第5のシングルモードファイバ436とコネクタ/アダプタ部402を介して着脱自在に接続されている。これにより光の送受信を繰り返す送受信部401内に接続され回転駆動可能な第5のシングルモードファイバ436に、波長掃引光源408からの光が伝送される。
【0075】
伝送された光は、送受信部401の先端側から体腔内の生体組織に対してラジアル走査しながら出射される。そして、生体組織の表面あるいは内部で散乱した反射光の一部が送受信部401により取り込まれ、逆の光路を経て第1のシングルモードファイバ430側に戻る。さらに、光カップラ部434によりその一部が第2のシングルモードファイバ437側に移り、第2のシングルモードファイバ437の一端から出射され、光検出器(例えばフォトダイオード419)にて受光される。
【0076】
スキャナ/プルバック部102は、光ロータリジョイント403が配された回転駆動装置120を備える。プローブ部101内の送受信部401は、非回転部と回転部との間を結合する光ロータリジョイント403により回動自在に取り付けられており、ラジアル走査モータ405により回転駆動される。送受信部401が血管内でプローブ部101の軸を中心に回転することで、測定光が円周方向に走査(スキャン)され、これにより血管内の所定の位置における断面画像の描出に必要な光干渉信号を得ることができる。
【0077】
なお、ラジアル走査モータ405の動作は信号処理部423からモータ制御回路424を介して送信された制御信号に基づいて制御される。また、ラジアル走査モータ405の回転角度は、エンコーダ部406により検出される。エンコーダ部406において出力される出力パルスは、モータ制御回路424を介して信号処理部423に入力され、断面画像及び縦断面画像(詳細は後述)の構築に利用される。
【0078】
スキャナ/プルバック部102は、更に、直線駆動装置130を備え、信号処理部423からの指示に基づいて、送受信部401の軸方向動作を規定している。なお、直線駆動モータ131の制御回路(ドライバ)は、直線駆動装置130内に設置されるものとし、ここでは図示を省略している。
【0079】
なお、ラジアル走査モータ405と直線駆動モータ131とは着脱可能に接続されていても、一体的に構成されていてもよい。
【0080】
一方、第3のシングルモードファイバ431の光カップラ部434より先端側には、参照光の光路長を微調整する光路長の可変機構425が設けられている。
【0081】
この光路長の可変機構425はプローブ部101を交換して使用した場合の個々のプローブ部の長さのばらつきを吸収できるように、その長さのばらつきに相当する光路長を変化させる光路長変化手段を備えている。
【0082】
第3のシングルモードファイバ431およびコリメートレンズ426は、その光軸方向に矢印433で示すように移動自在な1軸ステージ432上に設けられ、光路長変化手段を形成している。
【0083】
具体的には、1軸ステージ432はプローブ部101を交換した場合に、プローブ部101の光路長のばらつきを吸収できるだけの光路長の可変範囲を有する光路長変化手段として機能する。さらに、1軸ステージ432はオフセットを調整する調整手段としても機能する。例えば、プローブ部101の先端が生体組織の表面に密着していない場合でも、1軸ステージ432により光路長を微小変化させることにより、生体組織の表面位置からの反射光と干渉させる状態に設定することができる。
【0084】
光路長の可変機構425で光路長が微調整された光は第3のシングルモードファイバ431の途中に設けた光カップラ部434で第1のシングルモードファイバ430側から得られた光と混合されて、干渉光としてフォトダイオード419にて受光される。
【0085】
このようにしてフォトダイオード419にて受光された干渉光は光電変換され、アンプ420により増幅された後、復調器421に入力される。この復調器421では干渉光の信号部分のみを抽出する復調処理を行い、その出力は干渉光信号としてA/D変換器422に入力される。
【0086】
A/D変換器422では、干渉光信号を例えば90MHzで2048ポイント分サンプリングして、1ラインのデジタルデータ(干渉光データ)を生成する。なお、サンプリング周波数を90MHzとしたのは、波長掃引の繰り返し周波数を40kHzにした場合に、波長掃引の周期(25.0μsec)の90%程度を2048点のデジタルデータとして抽出することを前提としたものであり、特にこれに限定されるものではない。
【0087】
A/D変換器422にて生成されたライン単位の干渉光データは、信号処理部423に入力される。信号処理部423では干渉光データをFFT(高速フーリエ変換)により周波数分解して深さ方向のデータ(ラインデータ)を生成し、これを座標変換することにより、血管内の各位置での断面画像を描出した後、LCDモニタ417(図1の参照番号113に対応する)に出力する。また、並行して、当該生成されたラインデータを用いて縦断面画像(詳細は後述)を描出し、LCDモニタ417に出力する。なお、断面画像の描出に用いられたラインデータ(または描出した断面画像そのもの)は、信号処理部423内に読み出し可能に格納され、指示入力部439を介してユーザから指示が入力された場合に、LCDモニタ417に断面画像として再表示されるものとする。
【0088】
ここで、本実施形態に係る信号処理部423では、ラインデータ(または断面画像)を格納するにあたり、直線駆動装置130の移動量検出器132より出力されたパルス信号のカウント値と対応付けて格納するものとする。なお、信号処理部423におけるこれらの処理の詳細は後述するものとする。
【0089】
更に、信号処理部423は、光路長調整手段制御装置418と接続されている。信号処理部423は光路長調整手段制御装置418を介して上述した1軸ステージ432の位置を制御する。
【0090】
6.送受信部のラジアル動作
図5は送受信部のラジアル動作を説明するための模式図である。図5(a)、(b)はそれぞれプローブ部101が挿入された状態の血管の断面図および斜視図である。
【0091】
図5(a)において、503はプローブ部101が挿入された血管断面を示している。上述のように、プローブ部101はその先端内部に送受信部(201、301、401)が取り付けられており、ラジアル走査モータ213、305、405により矢印502方向に回転する。
【0092】
送受信部(201、301、401)では、各回転角度にて超音波または測定光の送信/受信を行う。ライン1、2、・・・512は各回転角度における超音波または測定光の送信方向を示している。本実施形態に係る画像診断装置100では、送受信部(201、301、401)が所定の血管断面503にて360度回動する間に、512回の超音波または測定光の送信/受信が断続的に行われる。なお、360度回動する間における超音波または測定光の送信/受信回数は特にこれに限られず、任意に設定可能であるものとする。
【0093】
このような超音波または測定光の送信/受信は、血管内を矢印504方向(図5(b))に進みながら行われる。なお、矢印504方向への送受信部(201、301、401)の進行に合わせて、各血管断面における送受信部(201、301、401)による信号の送信/受信を繰り返すスキャン(走査)を、一般に「ラジアルスキャン(ラジアル走査)」と呼んでいる。
【0094】
7.信号処理部の詳細構成
次に、画像診断装置100の信号処理部225、314、423において、断面画像及び縦断面画像を構築する構築処理、ならびにラインデータを信号処理部225、314、423内に格納する格納処理を実現するための機能構成について、図6、図7、図8を用いて説明する。なお、以下に説明する構築処理及び格納処理は、専用のハードウェアを用いて実現してもよいし、各部の機能をソフトウェアにより(コンピュータがプログラムを実行することにより)実現してもよい。
【0095】
図6は、画像診断装置100の信号処理部225、314、423における構築処理と格納処理とを実現するための機能構成ならびに関連する機能ブロックを示した図である。また、図7は、信号処理部225、314、423における構築処理及び格納処理の具体例を模式的に示した図である。更に、図8は、信号処理部225、314、425において生成されたラインデータをラインデータメモリに格納した様子を示した図である。
【0096】
なお、以下では、説明を簡略化するために、光干渉断層画像診断装置100(図3)の信号処理部314について説明するものとする(他の画像診断装置の場合も、同様であるため、ここでは説明は省略する)。
【0097】
A/D変換器313で生成された干渉光データは、図6に示すラインデータ生成部601において、モータ制御回路325から出力されるラジアル走査モータ305のエンコーダ部306の信号を用いてラジアル走査モータ1回転あたりのライン数が512本となるように処理される。
【0098】
なお、ここでは一例として、512ラインから断面画像を構築することとしているが、このライン数に限定されるものではない。
【0099】
ラインデータ生成部601より出力されたラインデータ614は、制御部606からの指示に基づいて、ラジアル走査モータ1回転分ごとに、ラインデータメモリ602に格納される。このとき、制御部606では、直線駆動装置130の移動量検出器132より出力されたパルス信号をカウントしておき、ラインデータ614をラインデータメモリ602に格納する際、それぞれのラインデータ614を生成した際のカウント値と対応付けて格納する(図7の615は、ラインデータ614が、ラジアル走査モータ1回転分(512ライン)ごとに、カウント値と対応付けて格納された様子を示しており、図8は具体的な対応関係を示している)。
【0100】
なお、ここでは、ラインデータメモリ602を配し、ラインデータ614を、直線駆動装置130の移動量検出器132より出力されたパルス信号のカウント値と対応付けて格納する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、断面画像構築部603の後に断面画像データメモリを配し、断面画像617を、直線駆動装置130の移動量検出器132より出力されたパルス信号のカウント値と対応付けて格納するように構成してもよい。
【0101】
図6〜図8の説明に戻る。カウント値と対応付けて格納されたラインデータ615は、制御部606からの指示に基づいて、断面画像構築部603にて各種処理(ライン加算平均処理、フィルタ処理等)が施された後、Rθ変換されることで、順次断面画像617として出力される。図7の617は、カウント値と対応付けられた複数の断面画像の一例を示している。
【0102】
更に、画像処理部605において、LCDモニタ315に表示するための画像処理が施された後、断面画像617’としてLCDモニタ315に出力される。
【0103】
また、カウント値と対応付けて格納されたラインデータ615は、制御部606からの指示に基づいて、縦断面画像構築部604により読み出される。縦断面画像構築部604では、読み出されたラインデータ615を用いて縦断面画像616を構築する。
【0104】
なお、ここでは一例としてラインデータ615から縦断面画像の構築を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、断面画像617から縦断面画像を構築するようにしてもよい。
【0105】
図7の616は、縦断面画像構築部604において、ラインデータ615に基づいて縦断面画像を構築する様子を示している。同図に示すように、縦断面画像構築部604では、まず、読み出した各カウント値における各ラインデータ615(ライン1〜ライン512までのラインデータがそれぞれ含まれる)について、所定のラインデータ(断面画像を構築した場合の断面画像の中心座標を通る任意の座標軸に対応する2本のラインデータ(互いに180°の関係にあるラインデータ))をそれぞれ抽出する(図7の例では、ライン1とライン256のラインデータが抽出されている)。続いて、各ラインデータ615より抽出された2ラインずつのラインデータを、各ラインデータ615に対応付けられたカウント値に対応する軸方向の位置に配列する。これにより、横軸をカウント値、縦軸をラインデータ(具体的にはラインデータの画素値)とする縦断面画像616が構築される。
【0106】
このように、抽出したラインデータの画像値を各ラインデータ615に対応付けられたカウント値に対応する軸方向の位置に配列する構成とすることで、ラジアル動作の開始位置を基準位置とする送受信部301の軸方向の各位置に対応する縦断面画像を構築することが可能となる。
【0107】
構築された縦断面画像616は、制御部606からの指示に基づいて、画像処理部605により読み出され、LCDモニタ315に表示するための画像処理が施された後、縦断面画像616’としてLCDモニタ315に出力される。
【0108】
LCDモニタ315では、画像処理部605において画像処理された断面画像617’と縦断面画像616’とを並列して表示する。また、指示入力部334を介してユーザから入力された指示に対応する位置に配列されたラインデータと同じカウント値が対応付けられた、ラインデータメモリ602内の各ラインデータを用いて構築された断面画像617’を再表示する。
【0109】
更に、指示入力部334を介してユーザから入力された移動指示に基づいて、再表示された断面画像617’を撮像した際(断面画像617’の構築に用いられたラインデータを生成するための反射光を取得した際)の送受信部の軸方向の位置まで送受信部が移動するよう、送受信部301の軸方向動作を制御する。
【0110】
なお、LCDモニタ315における断面画像617’及び縦断面画像616’の表示、指示入力部334を介してユーザから入力された指示に対応する断面画像617’の再表示、ならびに再表示された断面画像617’が撮像された位置までの送受信部301の移動についての詳細は、以下に説明する。
【0111】
8.LCDモニタにおける表示例及び指示入力部
図9は、LCDモニタ315における断面画像617’及び縦断面画像616’の表示、および、指示入力部334を介してユーザから入力された指示に対応する断面画像617’の再表示、ならびに再表示された断面画像617’が撮像された位置までの送受信部301の移動について説明するための図である。
【0112】
図9に示すように、LCDモニタ315は、断面画像617’を表示する断面画像表示領域901と、縦断面画像616’を表示する縦断面画像表示領域902とを有する。断面画像表示領域901には、送受信部301のラジアル動作に伴って生成された複数の断面画像617’が、リアルタイムに順次表示される。
【0113】
一方、縦断面画像表示領域902では、送受信部301のラジアル動作に伴って、縦断面画像616’が徐々に構築されていき、ラジアル動作が停止するまで、縦断面画像616’の構築が継続する。
【0114】
縦断面画像表示領域902には、軸方向の所定の位置を指定するための指示子903が表示されており、ユーザは、指示入力部334を介して当該指示子903を軸方向に移動させることで、縦断面画像616’の軸方向の所定の位置を指定することができる。
【0115】
本実施形態に係る画像診断装置100では、指定された軸方向の位置に対応する位置に配列されたラインデータを用いて構築された断面画像617’が、断面画像表示領域901内に表示されるように構成されている。このように構成することにより、ユーザは、血管の軸方向の位置を指定するだけで、当該位置に対応する断面画像617’を視認することが可能となる。
【0116】
つまり、従来の画像診断装置では、ユーザは、ラジアル動作を開始させてから、送受信部が実際に血管の軸方向のどの位置まで移動した際の断面画像であるのかを、再表示された断面画像からでは正確に把握することができなかったところ、本実施形態に係る画像診断装置では、ユーザは、血管の軸方向の位置と対応付けて断面画像を視認することが可能となる。
【0117】
更に、LCDモニタ315は、送受信部位置合わせボタン904を有する。送受信部位置合わせボタン904が押下されると、現在、断面画像表示領域901に表示されている断面画像617’が撮像された際の送受信部301の位置まで送受信部301が移動するよう送受信部301の軸方向動作が制御される。
【0118】
9.断面画像を取得する際の作業フローの説明
次に、断面画像を取得する際の作業フローについて図10を用いて説明する。なお、以下に説明する作業フローは、光干渉断層画像診断装置または波長掃引利用の光干渉断層画像診断装置100を用いて血管内の断面画像を取得する場合を示したものである。
【0119】
ステップS1001において、ユーザはフラッシュ操作を行う。フラッシュ操作とは、撮像対象となる部位において血管内の血液を予め除去する操作である。具体的には、送受信部301が収納されるガイドカテーテル(不図示)から生理食塩水、乳酸リンゲル、造影剤などを放出し、撮像部位の血管内の血液を除去する操作をいう。
【0120】
これは、光干渉断層画像診断装置または波長掃引利用の光干渉断層画像診断装置で用いられる干渉光は、波長が800nm〜1550nm程度であり、血液に対して不透過であり、血管の断面画像の描出に際しては、撮像部位において血管内の血液を予め除去しておく必要があるからである。そこで、光干渉断層画像診断装置または波長掃引利用の光干渉断層画像診断装置100による断面画像の描出に際しては、予め、プローブ部101から生理食塩水、乳酸リンゲル、造影剤などを放出し、撮像部位の血管内の血液を除去するフラッシュ操作を行っておく。
【0121】
ステップS1002では、ユーザは、広範囲における断面画像を取得するための操作を行う。具体的には、送受信部301を適当な速度で引き抜くプルバックを行うことにより、疾患部分を含む広範囲にわたって、断面画像を取得する。
【0122】
ステップS1003では、広範囲断面画像取得操作に伴って取得された断面画像をLCDモニタ113に表示する表示処理を行う。なお、当該表示処理は、広範囲断面画像取得操作において、ユーザが、送受信部301をプルバックさせるのと並行して、実行される。
【0123】
ステップS1004では、断面画像の表示に伴って表示された縦断面画像から、ユーザが、再度、表示させたい位置を指示子903を用いて指定する(疾患部分と予想される位置を指定する)。ステップS1005では、ステップS1004において指定された位置に対応する位置に配列されたラインデータと同じカウント値が対応付けられたラインデータを用いて構築された断面画像について再表示する“軸方向の位置情報表示処理”を行う。なお、ステップS1005の“軸方向の位置情報表示処理”の詳細は後述する。
【0124】
ステップS1006では、ステップS1005において再表示された断面画像が撮像された位置まで送受信部が移動するよう軸方向動作を制御する。なお、送受信部の位置合わせ処理の詳細は後述する。
【0125】
ステップS1007では、ユーザは、再度フラッシュ操作を行う。そして、フラッシュ操作後、ステップS1008では、ユーザは、局所断面画像を取得するための操作を行う。具体的には、ステップS1006において移動された位置をラジアル動作開始位置として、送受信部301をプルバックさせることにより、疾患部分について再度、詳細な断面画像を取得する。
【0126】
以上のような作業フローにより、ユーザは、広範囲断面画像取得操作に基づいて取得された断面画像に基づいて、疾患部分を確認したのち、当該疾患部分まで、送受信部を移動させ、再度、疾患部分について局所断面画像取得操作を行うといった作業を行うことが可能となり、疾患部分についてより詳細な断面画像を取得することが可能となる。
【0127】
10.軸方向の位置情報表示処理の詳細
次に軸方向の位置情報表示処理(ステップS1005)の詳細について説明する。図11は、軸方向の位置情報表示処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
【0128】
ステップS1101では、縦断面画像上においてユーザにより指定された指示子903の位置を認識する。
【0129】
ステップS1102では、ステップS1101において認識された縦断面画像上の指示子903の位置に対応する位置に配列されたラインデータのカウント値を取得することで、指示子903の位置に対応する位置情報を取得し表示する。なお、指示子が2回選択された場合には、2つの位置に対応する位置情報を取得し表示する。
【0130】
ステップS1103では、ステップS1102において取得された位置情報に対応するラインデータを、ラインデータメモリ602に格納されたラインデータ(図8参照)の中から判別する。なお、位置情報に対応するラインデータとは、位置情報が示す位置に配列されたラインデータ、または位置情報が示す位置に最も近い位置に配列されたラインデータをいうものとする。
【0131】
ステップS1104では、ステップS1103において判別されたラインデータと同じカウント値が対応付けられたラインデータを読み出し、ステップS1105では、当該読み出したラインデータに基づいて構築された断面画像をLCDモニタ315に再表示する。
【0132】
11.送受信部の位置合わせ処理の詳細
次に送受信部の位置合わせ処理(ステップS1006)の詳細について説明する。図12は、位置合わせ処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
【0133】
ステップS1201では、LCDモニタ315において、ユーザにより送受信部位置合わせボタン904が押下された場合に、これを受け付ける。
【0134】
ステップS1202では、送受信部位置合わせボタン904が押下された時点での、送受信部の位置(現在位置)に対応するカウント値を認識する。
【0135】
ステップS1203では、送受信部位置合わせボタン904が押下された際に、指示子903により指定された位置に配列されたラインデータに対応付けられたカウント値を取得する。
【0136】
ステップS1204では、ステップS1202において認識したカウント値と、ステップS1203において取得したカウント値とを対比し、ステップS1203においてカウント値により特定される軸方向の位置まで、送受信部を移動させるための移動量及び移動方向を算出する。
【0137】
具体的には、ステップS1202において認識したカウント値とステップS1203において取得したカウント値との差分を算出し、該差分値に所定の係数を積算することで得られたカウント値に対応する移動量を算出する。また、送受信部の移動方向は、算出された差分値の正負に応じて判断する。
【0138】
なお、差分値に所定の係数を積算するのは、送受信部のラジアル動作を、所望の位置よりもやや手前から(送受信部の軸方向動作において、やや上流側から)開始させるためである。送受信部のラジアル動作は、動作速度が安定するまでに多少の時間がかかるため、所望の位置から送受信部のラジアル動作を開始させてしまうと、動作速度が安定する前に、所望の位置での断面画像が撮像されてしまうこととなるからである。
【0139】
このため、差分値に積算される所定の係数は、送受信部の移動方向が、軸方向と反対側(上流側への移動)である場合には、1.0以上の値を用いる。また、送受信部の移動方向が、軸方向(下流側への移動)である場合には、所定の係数は、1.0未満となる。
【0140】
なお、上記説明では、差分値に所定の係数を積算することとしたが、本発明はこれに限定されず、差分値に対応する移動量を算出した後に、移動方向に応じて、所定量を加算/減算するように構成してもよい。
【0141】
図12に戻る。ステップS1205では、ステップS1204において算出された移動量及び移動方向に基づいて、制御部606は、直線駆動装置130の直線駆動モータ131を制御する。
【0142】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る画像診断装置では、取得されたラインデータを、スキャナ/プルバック部の直線駆動装置から出力されたパルス信号のカウント値と対応付けて格納する構成とした。また、当該ラインデータ及びカウント値を用いて、縦断面画像を構築し、表示する構成とした。
【0143】
これにより、本実施形態に係る画像診断装置100では、縦断面画像上の指定された軸方向の位置に対応する断面画像を、断面画像表示領域内に再表示させることが可能となった。
【0144】
更に、送受信部位置合わせボタンを設け、送受信部位置合わせボタンが押下された場合に、縦断面画像上の指定された軸方向の位置に対応する断面画像が撮像された際の送受信部の位置まで、送受信部を軸方向動作させるよう制御する構成とした。
【0145】
この結果、従来の画像診断装置では、ユーザは、ラジアル動作を開始させてから、送受信部が実際に血管の軸方向のどの位置まで移動した際の断面画像であるのかを、再表示された断面画像からでは正確に把握することができなかったところ、本実施形態に係る画像診断装置によれば、ユーザは、血管の軸方向の位置と対応付けて断面画像を視認することが可能となる。
【0146】
また、従来の画像診断装置では、再度、疾患部位の位置において撮像を行いたい場合であっても、当該位置に精度よく送受信部を移動させることができなかったところ、本実施形態に係る画像診断装置によれば、ユーザは、縦断面画像上において位置を指定するだけで、当該位置に対応する軸方向の位置まで、自動的に送受信部を移動させることが可能となる。
【0147】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、ラインデータメモリを配し、ラインデータとカウント値とを対応付けて格納する構成を前提としていた。このため、縦断面画像上において指定された軸方向の位置に配列されたラインデータを識別し、該識別したラインデータに対応付けられたカウント値を取得することで、送受信部の移動量及び移動方向を算出する構成としていた。
【0148】
しかしながら、本発明はこれに限定されず、断面画像データメモリを配し、断面画像とカウント値とを対応付けて格納する構成としてもよい。この場合、送受信部位置合わせボタン904が押下された際に、断面画像表示領域901に表示されていた断面画像を識別し、該識別した断面画像に対応付けられたカウント値を取得することで、送受信部の移動量及び移動方向が算出されることとなる。
【0149】
あるいは、断面画像データメモリに格納された断面画像を、直接、ユーザが指定することで、該指定された断面画像に対応付けられたカウント値を取得し、該取得したカウント値を用いて送受信部の移動量及び移動方向を算出するように構成してもよい。
【0150】
なお、このように断面画像データメモリを配する構成とした場合、縦断面画像は、断面画像に基づいて構築されることとなる。具体的には、各断面画像より、所定の座標軸上の画素値を抽出し、各断面画像に対応付けて格納されたカウント値に応じた位置に、該抽出した画素値を配列することで構築されることとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号の送受信を連続的に行う送受信部を、体腔内において軸方向に移動させながら該体腔内からの反射信号を取得し、該取得した反射信号に基づいて該体腔内の断面画像の構築に用いられるラインデータを生成するとともに、該生成したラインデータを用いて、該体腔内の断面画像を軸方向に複数構築する画像診断装置であって、
前記送受信部の所定の基準位置からの軸方向の移動量に関する情報を受信する受信手段と、
それぞれの前記断面画像の構築に用いられる複数の前記ラインデータの中から、それぞれの前記断面画像における所定の座標位置に対応するラインデータを抽出するとともに、該抽出したラインデータが生成された際に受信した、前記送受信部の所定の基準位置からの軸方向の移動量に関する情報を取得し、該抽出したラインデータを、該取得した移動量に関する情報に応じた位置に配列することで、前記軸方向に複数構築された断面画像に対する縦断面画像を構築する構築手段と、
前記構築された縦断面画像を表示する表示手段と、
前記表示された縦断面画像上において、ユーザにより指定された位置に配列された前記ラインデータを識別するとともに、該ユーザにより位置が指定された際に受信した、前記送受信部の所定の基準位置からの軸方向の移動量に関する情報を用いて、該識別したラインデータを生成可能な軸方向の位置まで前記送受信部を移動させるための、前記送受信部の移動量及び移動方向を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された移動量及び移動方向に基づいて、前記送受信部の動作を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする画像診断装置。
【請求項2】
前記ユーザにより指定された位置に配列されたラインデータには、前記ユーザにより指定された位置に最も近い位置に配列されたラインデータが含まれることを特徴とする請求項1に記載の画像診断装置。
【請求項3】
信号の送受信を連続的に行う送受信部を、体腔内において軸方向に移動させながら該体腔内からの反射信号を取得し、該取得した反射信号に基づいて、該体腔内の断面画像を軸方向に複数構築する画像診断装置であって、
前記送受信部の所定の基準位置からの軸方向の移動量に関する情報を受信する受信手段と、
前記構築された複数の断面画像それぞれを、該複数の断面画像それぞれが構築された際に受信した、前記送受信部の所定の基準位置からの軸方向の移動量に関する情報と対応付けて格納する格納手段と、
前記格納手段に格納された断面画像の中から、ユーザの指示に対応する断面画像を識別し、該識別した断面画像に対応付けて格納された前記移動量に関する情報を読み出す読出手段と、
ユーザより移動指示が入力された際に受信した、前記送受信部の所定の基準位置からの軸方向の移動量に関する情報を判別し、前記読出手段により読み出された前記移動量に関する情報を用いて、前記識別した断面画像を構築するための軸方向の位置まで前記送受信部を移動させるための、前記送受信部の移動量及び移動方向を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された移動量及び移動方向に基づいて、前記送受信部の動作を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする画像診断装置。
【請求項4】
前記格納手段に格納された前記複数の断面画像それぞれについて、所定の座標軸上の画素値を抽出し、該各断面画像に対応付けて格納された前記移動量に関する情報に応じた位置に、該抽出したそれぞれの画素値を配列することで、前記構築された複数の断面画像に対する縦断面画像を構築する構築手段を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の画像診断装置。
【請求項5】
前記構築された複数の断面画像のいずれかを表示する断面画像表示領域と、前記構築された縦断面画像を表示する縦断面画像表示領域とを表示する表示手段を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の画像診断装置。
【請求項6】
前記表示手段により前記縦断面画像表示領域に表示された縦断面画像上において、前記軸方向の所定の位置を指定する指定手段を更に備え、
前記表示手段は、前記指定手段により指定された位置に配列された画素値が抽出された断面画像を、前記断面画像表示領域に表示することを特徴とする特徴とする請求項5に記載の画像診断装置。
【請求項7】
前記指定手段により指定された位置に配列された画素値には、指定された位置に最も近い位置に配列された画素値が含まれることを特徴とする請求項6に記載の画像診断装置。
【請求項8】
前記読出手段は、前記ユーザより移動指示が入力された際に、前記断面画像表示領域に表示されている断面画像を、前記ユーザの指示に対応する断面画像として識別することを特徴とする請求項6または7に記載の画像診断装置。
【請求項9】
信号の送受信を連続的に行う送受信部を、体腔内において軸方向に移動させながら該体腔内からの反射信号を取得し、該取得した反射信号に基づいて該体腔内の断面画像の構築に用いられるラインデータを生成するとともに、該生成したラインデータを用いて、該体腔内の断面画像を軸方向に複数構築する画像診断装置の制御方法であって、
前記送受信部の所定の基準位置からの軸方向の移動量に関する情報を受信する受信工程と、
それぞれの前記断面画像の構築に用いられる複数の前記ラインデータの中から、それぞれの前記断面画像における所定の座標位置に対応するラインデータを抽出するとともに、該抽出したラインデータが生成された際に受信した、前記送受信部の所定の基準位置からの軸方向の移動量に関する情報を取得し、該抽出したラインデータを、該取得した移動量に関する情報に応じた位置に配列することで、前記軸方向に複数構築された断面画像に対する縦断面画像を構築する構築工程と、
前記構築された縦断面画像を表示する表示工程と、
前記表示された縦断面画像上において、ユーザにより指定された位置に配列された前記ラインデータを識別するとともに、該ユーザにより位置が指定された際に受信した、前記送受信部の所定の基準位置からの軸方向の移動量に関する情報を用いて、該識別したラインデータを生成可能な軸方向の位置まで前記送受信部を移動させるための、前記送受信部の移動量及び移動方向を算出する算出工程と、
前記算出工程において算出された移動量及び移動方向に基づいて、前記送受信部の動作を制御する制御工程と
を備えることを特徴とする画像診断装置の制御方法。
【請求項10】
信号の送受信を連続的に行う送受信部を、体腔内において軸方向に移動させながら該体腔内からの反射信号を取得し、該取得した反射信号に基づいて、該体腔内の断面画像を軸方向に複数構築する画像診断装置の制御方法であって、
前記送受信部の所定の基準位置からの軸方向の移動量に関する情報を受信する受信工程と、
前記構築された複数の断面画像それぞれを、該複数の断面画像それぞれが構築された際に受信した、前記送受信部の所定の基準位置からの軸方向の移動量に関する情報と対応付けて格納する格納工程と、
前記格納工程において格納された断面画像の中から、ユーザの指示に対応する断面画像を識別し、該識別した断面画像に対応付けて格納された前記移動量に関する情報を読み出す読出工程と、
ユーザより移動指示が入力された際に受信した、前記送受信部の所定の基準位置からの軸方向の移動量に関する情報を判別し、前記読出工程により読み出された前記移動量に関する情報を用いて、前記識別した断面画像を構築するための軸方向の位置まで前記送受信部を移動させるための、前記送受信部の移動量及び移動方向を算出する算出工程と、
前記算出工程において算出された移動量及び移動方向に基づいて、前記送受信部の動作を制御する制御工程と
を備えることを特徴とする画像診断装置の制御方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−72597(P2011−72597A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227839(P2009−227839)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】