説明

画像読取レンズ、画像読取装置及び画像形成装置

【課題】35度以上の広画角であり、バックフォーカスが短く、高い画像品質が得られる画像読取レンズ、これを用いた装置を提供する。
【解決手段】負の屈折力を有する第1レンズL1からなる第1群G1、両凸形状の第2レンズL2からなる第2群G2、両凹形状の第3レンズL3からなる第3群G3、両凸形状の第4レンズL4と物体側に凹面を向けた負の屈折力を有するメニスカス形状の第5レンズL5とを接合してなる第4群G4、及び負の屈折力を有する第6レンズL6からなる第5群G5で構成され、第3群G3と第4群G4との間に絞りSを有する5群6枚構成で、レンズ第1面から結像面までの距離TL、画像読取レンズ全系の焦点距離f、絞りSより物体側のレンズ群の合成焦点距離f123が以下の条件式(1)及び(2)を満足する画像読取レンズ、該画像読取レンズを用いた装置。(1)1.7<TL/f<2.1(2)−0.7<f/f123<0.3

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像読取レンズ、及び該画像読取レンズを備える装置に関し、詳しくは、原稿の画像情報をライン状に素子を配列した撮像素子上に縮小結像させ、該撮像素子により該画像情報を読取るようにしたデジタル複写機やファクシミリ等の画像読取部や各種のイメージスキャナに利用される画像読取レンズ、該画像読取レンズを備える画像読取装置、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル複写機やファクシミリの画像読取部やイメージスキャナは、読み取るべき原稿の画像情報を、画像読取レンズで縮小してCCD(Charge Coupled Device)のような撮像素子上に結像させて画像情報を信号化する。原稿の画像情報をカラー用で読取るために、例えば、赤、緑、青のフィルタを持つ撮像素子を1つの基板上に3列に配列してなる、所謂3ラインCCDが多く採用されている。該3ラインCCDを用い、この撮像素子面に原稿の画像情報を結像させることにより、3原色に色分解してカラーの画像情報を信号化する光学系がある。
【0003】
このような画像読取レンズとしては、一般的に、像面である撮像素子上において、高空間周波数領域での高いコントラストが要求されると共に、開口効率が画角周辺部まで100%近くあることが要求されている。また、カラー原稿を良好に読み取るために、像面上において赤、緑、青の各色の結像位置を光軸方向に合致させる必要があり、各色について良好に色収差を補正する必要がある。
【0004】
近年、画像読取レンズ及び画像読取装置においては、結像性能に加え、装置の小型化と低コスト化のために広画角の画像読取レンズを用い、照明系、ミラー、及び撮像素子を一体にした読取ユニットを用いることが求められている。
【0005】
広画角な読取りレンズとしては、球面レンズだけで構成した4群5枚,4群6枚構成の凹レンズを第1レンズとする画像読取レンズ(特許文献1及び特許文献2)、非球面レンズを用いて画像読取レンズの広角化をめざしたもの(特許文献3)などが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の画像読取レンズは、画角が24度前後であるため、原稿面から撮像素子までの距離が長くなり、読取ユニットとして一体化するときの光路の折り返し回数が多くなることにより読取ユニットの小型化が困難になるという問題がある。さらに、画像読取レンズから撮像素子までの距離も、その画角分必要となる。
【0007】
画像読取レンズから撮像素子までの間は、照明系や原稿面から直接照射されてくる光線が撮像素子に入射することがないよう遮光する必要があるため、この間に原稿面から画像読取レンズまでの光路を引くことができない。よって、画像読取レンズと撮像素子との間が長くなり、読取ユニットの小型化が難しくなり、画像読取装置の小型化も難しくなる。
【0008】
特許文献3に記載された画像読取レンズは、非球面レンズを用いることにより、さらなる広角化をめざしているが、それでも30度前後である。また、回転非対称な非球面レンズを用いていることから、レンズの組付け時に回転非対称な非球面レンズとそれ以外の球面レンズとを別々に調整する必要が生じ、レンズの組付けのばらつきにより良好な結像性能を満足させることが困難であるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、35度以上の広画角であり、画像情報を結像させるのに必要なバックフォーカスが短く、結像性能の劣化が少なく高い画像品質が得られる画像読取レンズ、並びに前記画像読取レンズを用い小型化が可能な画像読取装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像読取レンズは、
物体側から像側へ向かって順に、負の屈折力を有する第1レンズからなる第1群、両凸形状の第2レンズからなる第2群、両凹形状の第3レンズからなる第3群、両凸形状の第4レンズと物体側に凹面を向けた負の屈折力を有するメニスカス形状の第5レンズとを接合してなる第4群、及び負の屈折力を有する第6レンズからなる第5群で構成され、前記第3群と前記第4群との間に絞りを有する5群6枚構成の画像読取レンズであって、
レンズ第1面から結像面までの距離をTL、画像読取レンズ全系の焦点距離をf、前記絞りより物体側に配置されたレンズ群の合成焦点距離をf123とするとき、これらが条件式(1)及び(2)を満足することを特徴とする画像読取レンズである。
(1)1.7<TL/f<2.1
(2)−0.7<f/f123<0.3
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像読取装置は、
本発明の画像読取レンズと、原稿配置面に配置された原稿を照明する照明系と、前記照明系で照明された前記原稿の画像情報が結像されるライン状の撮像素子と、少なくとも1枚のミラーとが一体に保持されてなる画像読取ユニットを備え、該画像読取ユニットを走査させて前記原稿の画像情報を読取ることを特徴とする画像読取装置である。
上記課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、
画像信号に対応する画像を書込んで画像を形成する画像形成装置であって、原稿の画像情報を読取って画像信号化する手段として、本発明の画像読取装置を用いたことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の画像読取レンズによれば、35度以上の広画角であり、画像情報を結像させるのに必要なバックフォーカスが短く、結像性能の劣化が少なく、高い画像品質が得られる画像読取レンズを提供することができる。
また、前記画像読取レンズを備え、小型化を実現可能な画像読取装置及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の画像読取レンズの構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】第1の実施態様に係るレンズ構成を示す概略断面図である。
【図3】図2のレンズ構成における球面収差、非点収差、歪曲収差、及びコマ収差を示す収差曲線図である。
【図4】第2の実施態様に係るレンズ構成を示す概略断面図である。
【図5】第2の実施態様のレンズ構成における球面収差、非点収差、歪曲収差、及びコマ収差を示す収差曲線図である。
【図6】第3の実施態様に係るレンズ構成を示す概略断面図である。
【図7】第3の実施態様のレンズ構成における球面収差、非点収差、歪曲収差、及びコマ収差を示す収差曲線図である。
【図8】第4の実施態様に係るレンズ構成を示す概略断面図である。
【図9】第4の実施態様のレンズ構成における球面収差、非点収差、歪曲収差、及びコマ収差を示す収差曲線図である。
【図10】第5の実施態様に係るレンズ構成を示す概略断面図である。
【図11】第5の実施態様における球面収差、非点収差、歪曲収差、及びコマ収差を示す収差曲線図である。
【図12】第6の実施態様に係るレンズ構成を示す概略断面図である。
【図13】第6の実施態様のレンズ構成における球面収差、非点収差、歪曲収差、及びコマ収差を示す収差曲線図である。
【図14】第6レンズが非円形レンズであるレンズ構成の一例を示す概略斜視図である。
【図15】本発明の画像読取装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【図16】本発明の画像形成装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る画像読取レンズ、画像読取装置及び画像形成装置について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施例の実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0015】
本発明の画像読取レンズの構成の一例を図1に示す。
図1に示すように、本発明の画像読取レンズは、物体側から像側へ向かって順に、負の屈折力を有する第1レンズL1からなる第1群(G1)、両凸形状の第2レンズL2からなる第2群(G2)、両凹形状の第3レンズL3からなる第3群(G3)、両凸形状の第4レンズL4と物体側に凹面を向けた負の屈折力を有するメニスカス形状の第5レンズL5とを接合してなる第4群(G4)、及び負の屈折力を有する第6レンズL6からなる第5群(G5)で構成され、第3群(G3)と第4群(G4)との間に絞りSを有する5群6枚構成である。
第1群(G1)の物体側にはコンタクトガラスCG1が配置され、第5群(G5)の像側にはCCDカバーガラスCG2が配置されている。
【0016】
なお、図1における符号の意味は下記の通りである。
(j=1〜12):物体側から数えてi番目のレンズ面の曲率半径
(j=1〜11):物体側から数えてi番目の面間隔
(j=1,3,5,8,9,11):物体側から数えてj番目の面間隔のレンズ材料の屈折率
νd(j=1,3,5,8,9,11):物体側から数えてj番目の面間隔のレンズ材料のアッベ数
c1:コンタクトガラスの物体側の曲率半径
c2:コンタクトガラスの像側の曲率半径
c3:CCDカバーガラスの物体側の曲率半径
c4:CCDカバーガラスの像側の曲率半径
c1:コンタクトガラスの肉厚
c3:CCDカバーガラスの肉厚
c1:コンタクトガラスの屈折率
c3:CCDカバーガラスの屈折率
νdc1:コンタクトガラスのアッベ数
νdc3:CCDカバーガラスのアッベ数
【0017】
本発明の画像読取レンズは、レンズ第1面から結像面までの距離をTL、画像読取レンズ全系の焦点距離をf、前記絞りSより物体側に配置されたレンズ群の合成焦点距離をf123とするとき、これらが以下の条件式(1)及び(2)を満足する。
(1)1.7<TL/f<2.1
(2)−0.7<f/f123<0.3
【0018】
条件式(1)は、画像読取レンズから撮像素子までの距離(大きさ)を規定するものである。このレンズ第1面から結像面までの距離TLは、原稿面から画像読取レンズまでの光路とは分離して考えておかなくてはならない値である。この値が小さい方が、画像読取レンズを備える装置を小さくできることを示す。
【0019】
条件式(2)は、画像読取レンズ全系の焦点距離fに対する絞りSよりも物体側に配置されたレンズ群(第1〜第3群)の合成焦点距離f123の比を規定するものである。
f/f123の値が小さくなると、物体側(前側)のレンズのパワーが弱くなり、主点位置をレンズ前方に配置させる効果がある。これによりレンズ最終面から結像面までの距離が短くなり、レンズ第1面から結像面までの距離も小さくすることができ、小型化に優位となる。下限値(−0.7)以下となると、球面収差が負に倒れてしまい、レンズの高い解像力を得ることが難しくなる。一方、条件式(2)の上限値(0.3)以上となると、レンズ第1面から結像面までの距離が伸びてしまい小型化に不利となる。
よって、条件式(1)及び(2)は、広画角な画像読取レンズにおいて、良好な解像力を得るとともに、該画像読取レンズを備える装置の小型化を達成するために必要となる条件である。
【0020】
本発明の画像読取レンズは、少なくとも第1レンズL1及び第6レンズL6が、回転対称な非球面を有することが好ましい。
すなわち、絞りSから物体側及び像側の最も離れた第1レンズL1及び第6レンズL6の凹レンズを、それぞれ回転対称な非球面とする。両方の負レンズを非球面にすることにより、各レンズの非球面量を大きくする必要がなくなり、レンズの加工を容易にすることができる。また、各像高に対する光線が分かれた位置で補正を行うことができるため、良好に像面湾曲とコマ収差を補正することが可能となり、像面湾曲を補正し広い像面深度を実現することができる。さらに、高い組付け安定性や,温度補償性能も得られる。
このように、両方の負レンズを非球面とすることは、広画角な読取レンズにおいて像面を一致させるために必要な条件である。
【0021】
さらに、本発明の画像読取レンズは、第4群(G4)の合成焦点距離をf45とするとき、以下の条件式(3)を満足することが好ましい。
(3)0.3<f45/f<0.8
条件式(3)は、第4群(G4)の第4レンズL4と第5レンズL5の接合後の合成焦点距離f45と、画像読取レンズ全系の焦点距離fとの比を表す。条件式(3)は、画像読取レンズの大きさを小さくして良好な像面深度を確保するために必要な条件である。
45/fの値が上限値(0.8)以上となると、画像読取レンズの全長がのびるため、レンズ第1面から結像面までの距離TLが大きくなることにつながる。一方、値が小さくなることは画像読取レンズの小型化には有利であるが、下限値(0.3)以下となると、レンズの非点収差が大きくなり、像面深度を確保することが難しくなる。
【0022】
本発明の画像読取レンズは、6枚のレンズは全てガラスレンズであり、該ガラスレンズのガラス材料が、鉛、砒素、及びこれらに類する有害物質を含有していないことが好ましい。
全てのレンズを化学的に安定で鉛や砒素等の有害物質を含まない光学ガラスで構成することにより、材料のリサイクル化が可能であり、加工時の廃液による水質汚染の無い、地球環境を考慮した読取用レンズとすることができる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る画像読取レンズの諸収差及び具体的な数値データを示す。各実施態様(実施例)における記号の意味は下記の通りである。
f :全系の合成焦点距離
FNo:Fナンバ
m :縮率
Y :物体高
ω :半画角(度)
r :レンズ面の曲率半径
d :面間隔
nd :レンズ材料の屈折率
vd :レンズ材料のアッベ数
【0024】
面番号jは物体側から順番に付与する。C1、C2は原稿を設置するコンタクトガラスの第1面、第2面を示し、C3、C4は撮像素子のカバーガラスの第1面、第2面を示す。
【0025】
また、非球面の面形状は、下記数式を用いて表わされる。
【数1】

【0026】
すなわち、非球面の形状は、Cを近軸曲率(近軸曲率半径の逆数)、Yを光軸と直交する方向の光軸からの距離とするとき、非球面の面形状は任意の距離Yにおいて、光軸と交わる面頂点から光軸方向に距離Xで表すことができる。
上記数式中、kは円錐定数、Aiは次数iに対する非球面係数を示す。
【0027】
〔第1の実施態様(実施例1)〕
図2は、本発明の第1の実施態様に係るレンズの構成図を示したものである。
表1に、レンズの構成表を示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表2に、第1の実施形態の非球面の円錐定数k及び非球面係数Aiを示す。
【0030】
【表2】

【0031】
図3は、図2に示したレンズ構成における収差図を示したものである。
なお、収差図において、e線(e)は546.07nm、g線(g)は436.83nm、c線(c)は656.27nm、F線(F)は486.13nmを示す。また、球面収差の図において、波線は正弦条件を示し、非点収差の図において、実線はサジタル光線、点線はメリディオナル光線を示す。これらは以下に示す他の実施態様(実施例)の収差図においても同様である。
【0032】
〔第2の実施態様(実施例2)〕
図4は、本発明の第2の実施態様に係るレンズの構成図を示したものである。以下に、レンズの構成表を示す。
【0033】
【表3】

【0034】
表4に、第2の実施形態の非球面の円錐定数及び非球面係数を示す。
【0035】
【表4】

【0036】
図5は、図4に示したレンズ構成における収差図を示したものである。
【0037】
〔第3の実施態様(実施例3)〕
図6は、本発明の第3の実施態様に係るレンズの構成図を示したものである。以下に、レンズの構成表を示す。
【0038】
【表5】

【0039】
表6に、第3の実施形態の非球面の円錐定数及び非球面係数を示す。
【0040】
【表6】

【0041】
図7は、図6に示したレンズ構成における収差図を示したものである。
【0042】
〔第4の実施態様(実施例4)〕
図8は、本発明の第4の実施態様に係るレンズの構成図を示したものである。以下に、レンズの構成表を示す。
【0043】
【表7】

【0044】
表8に、第4の実施形態の非球面の円錐定数及び非球面係数を示す。
【0045】
【表8】

【0046】
図9は、図8に示したレンズ構成における収差図を示したものである。
【0047】
〔第5の実施態様(実施例5)〕
図10は、本発明の第5の実施態様に係るレンズの構成図を示したものである。以下に、レンズの構成表を示す。
【0048】
【表9】

【0049】
表10に、第5の実施形態の非球面の円錐定数及び非球面係数を示す。
【0050】
【表10】

【0051】
図11は、図10に示したレンズ構成における収差図を示したものである。
【0052】
〔第6の実施態様(実施例6)〕
図12は、本発明の第6の実施態様に係るレンズの構成図を示したものである。以下に、レンズの構成表を示す。
【0053】
【表11】

【0054】
表12に、第6の実施形態の非球面の円錐定数及び非球面係数を示す。
【0055】
【表12】

【0056】
図13は、図12に示したレンズ構成における収差図を示したものである。
【0057】
以下に、上述の各実施態様(実施例)における条件式の値を示す。
【0058】
【表13】

【0059】
本発明の画像読取レンズは、レンズの少なくとも1枚が、非円形の外形形状であることが好ましい。
図14に、第6レンズL6が非円形レンズの外形形状である画像読取レンズの例を示す。物体側より、負の屈折力を有する第1レンズL1からなる第1群(G1)、両凸の第2レンズL2からなる第2群(G2)、両凹の第3レンズL3からなる第3群(G3)、両凸の第4レンズL4と物体側に凹面を向けた負の屈折力を有するメニスカス形状の第5レンズL5とを接合してなる第4群(G4)と、負の屈折力を有する第6レンズL6からなる第5群(G5)からなり、第3群(G3)と第4群(G4)との間に絞り(図示せず)を有する5群6枚構成の画像読取レンズにおいて、CCDラインセンサの光電変換素子の配列方向と直交する方向に対しては、第5群(G5)の第6レンズL6においても他のレンズと同程度の光束が通る大きさを有していればよいため,図14に示すように上下を切り落とした非円形のレンズとすることにより、画像読取レンズをより小型化することが可能となる。図14中、Aは光軸、Bは撮像素子の配列方向を示す。
【0060】
非円形の外形形状としたレンズは、図14に示す第6レンズL6に限定されないが、他のレンズに比べ光線の通る高さが高いため、レンズ径が大きくなりやすい第1レンズL1及び第6レンズL6の外形形状を非円形とすることは、小型化に有利である。
本発明の画像読取レンズを用いた装置においてラインセンサを用いる場合、ラインセンサの方向と垂直な方向には絞りと同等又は若干大きい程度の幅しか光線が通らないため、ラインセンサと垂直方向にはレンズを小さくすることが可能となる。
よって、第1レンズL1及び第6レンズL2の少なくともいずれかを、ラインセンサと垂直な方向を小さくした非円弧形状のレンズを用いることにより、装置の小型化が達成できる。
【0061】
〔画像読取装置〕
本発明の画像読取装置は、本発明の画像読取レンズと、原稿配置面に配置された原稿を照明する照明系と、前記照明系で照明された前記原稿の画像情報が結像されるライン状の撮像素子と、少なくとも1枚のミラーとが一体に保持されてなる画像読取ユニットを備え、該画像読取ユニットを走査させて前記原稿の画像情報を読取る。
図15に、本発明の画像読取装置の一例を示す。
【0062】
図15に示すように、読取られるべき画像を有する原稿42は、原稿台としてのコンタクトガラス41上に平面的に定置される。
画像読取ユニット43は、図面に直交する方向を長手方向とし、原稿台41の原稿載置面に対して鏡面を傾けて配置されたミラー43e,43f,43gを保持し、図15において符号43で示す位置から符号43’で示す位置まで一定速度Vで移動する。
画像読取ユニット43は、原稿42を照明する照明系として、図面に直交する方向に長い蛍光ランプ43a,43c、及び反射鏡43b,43dを保持している。蛍光ランプ43a,43cは、画像読取ユニット43が図15の右方へ変位するときに発光し、原稿台41上の原稿42を照明する。従って、画像読取ユニット43が符号43’で示す位置まで変位する間に原稿42は照明走査される。
蛍光ランプ43a,43cとしては、ハロゲンランプや、キセノンランプ、冷陰極管等の管灯、LED等の点光源を用い一列に並べたもの、もしくは点光源を線光源に変換する導光体を用いた線状光源を用いることができ、さらには有機ELに代表される面発光光源を用いることもできる。
【0063】
原稿42が照明走査されるとき、原稿42の被照明部からの反射光は、ミラー43e,43f,43gで順次反射され、結像光束として画像読取レンズ44に入射する。このときすべてのミラーは画像読取ユニット43に一体で保持されているため、原稿42の照明走査中において、原稿被照明部から画像読取レンズ44に至る光路長は一定である。
【0064】
画像読取レンズ44に入射した結像光束は、画像読取レンズ44の結像作用により撮像素子45の受光面に原稿4の縮小像を結像する。
撮像素子45はCCDラインセンサであり、微小な光電変換部が図面に直交する方向へ密接して配列しており、原稿42の照明走査に伴い原稿画像を画素単位の電気信号として出力する。この電気信号はA/D変換等の信号処理を受けて画像信号となり、必要に応じてメモリ(図示せず)に記憶される。
【0065】
なお、撮像素子45は、結像画像を3色(赤,緑,青)に色分解して色情報を読取ることができ、各光電変換部で変換された電気信号を合成することでカラー原稿を読取ることができる。色分解を行う方法としては、画像読取レンズ44とラインセンサ(CCD)45との間に色分解プリズムやフィルタを選択的に挿入し、R(赤)、G(緑)、B(青)に色分解する方法や、R、G、Bの光源を順次点灯させて原稿を照明する方法等を用いることができる。
また、結像光路中に色分解素子を有さず、原稿情報をモノクロとして読取ることも可能である。
【0066】
広画角な本発明の画像読取レンズ44を用い、一体で画像読取ユニット43を形成することにより、画像読取装置をより小型化することが可能であるととともに、一体で移動するために画像読取ユニット43の移動時の性能劣化を小さく抑えることが可能となる。
【0067】
〔画像形成装置〕
本発明の画像形成装置は、画像信号に対応する画像を書込んで画像を形成する画像形成装置であって、原稿の画像情報を読取って画像信号化する手段として本発明の画像読取装置を用いる。
本発明の画像形成装置の一例の構成を図16に示す。
【0068】
図16に示すように、この画像形成装置は、装置上部に位置する画像読取装置200と、その下位に位置する画像形成部100とを有する。画像読取装置200の部分は、図15に即して説明したのと同様のものであり、各部には図15と同じ符号を付してある。
【0069】
画像読取装置200の画像読取ユニット43の3ラインのCCDラインセンサ(撮像素子)45から出力される画像信号は信号処理部120に送られ、信号処理部120において処理されて「書込み用の信号(イエロー・マゼンタ・シアン・黒の各色を書込むための信号)」に変換される。
【0070】
画像形成部は,「潜像担持体」として円筒状に形成された光導電性の感光体110を有し、その周囲に、帯電手段としての帯電ローラ111、リボルバ式の現像装置113、転写ベルト114、クリーニング装置115が配設されている。帯電手段としては帯電ローラ111に代えて「コロナチャージャ」を用いることもできる。
信号処理部120から書込み用の信号を受けて光走査により感光体110に書込みを行う光走査装置117は、帯電ローラ111と現像装置113との間において感光体110の光走査を行うようになっている。
【0071】
符号116は定着装置、符号118はカセット、符号119はレジストローラ対、符号122は給紙コロ、符号121はトレイ、符号130は「記録媒体」としての転写紙を示している。
画像形成を行うときは、光導電性の感光体110が時計回りに等速回転され、その表面が帯電ローラ111により均一帯電され、光走査装置117のレーザビームの光書込による露光を受けて静電潜像が形成される。形成された静電潜像は所謂「ネガ潜像」であって画像部が露光されている。
【0072】
「画像の書込み」は、感光体110の回転に従い、イエロー画像、マゼンタ画像、シアン画像、黒画像の順に行われ、形成された静電潜像はリボルバ式の現像装置113の各現像ユニットY(イエロートナーによる現像を行う)、M(マゼンタトナーによる現像を行う)、C(シアントナーによる現像を行う)、K(黒トナーによる現像を行う)により順次反転現像されてポジ画像として可視化され、得られた各色トナー画像は、転写ベルト114上に転写電圧印加ローラ114Aにより順次転写され、上記各色トナー画像が転写ベルト114上で重ね合わせられてカラー画像となる。
【0073】
転写紙130を収納したカセット118は、画像形成装置本体に脱着可能であり、図のごとく装着された状態において、収納された転写紙Sの最上位の1枚が給紙コロ122により給紙され、給紙された転写紙Sはその先端部をレジストローラ対119に捕えられる。
レジストローラ対119は、転写ベルト114上の「トナーによるカラー画像」が転写位置へ移動するのにタイミングを合わせて転写紙130を転写部へ送り込む。送り込まれた転写紙130は、転写部においてカラー画像と重ね合わせられ、転写ローラ114Bの作用によりカラー画像を静電転写される。転写ローラ114Bは、転写時に転写紙Sをカラー画像に押圧させる。
【0074】
カラー画像を転写された転写紙130は定着装置116へ送られ、定着装置116においてカラー画像を定着され、図示されないガイド手段による搬送路を通り、図示されない排紙ローラ対によりトレイ121上に排出される。各色トナー画像が転写されるたびに、感光体110の表面はクリーニング装置115によりクリーニングされ、残留トナーや紙粉等が除去される。
【0075】
なお、本発明にかかる画像形成装置は、感光体を各色に対応して複数配置した、いわゆるタンデム式の画像形成装置であってもよい。勿論、画像形成装置を「モノクロームの画像形成を行うように構成」できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0076】
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
L6 第6レンズ
CG1 コンタクトガラス
CG2 CCDカバーガラス
41 原稿台(コンタクトガラス)
42 原稿
43 画像読取ユニット
44 画像読取レンズ
45 ラインセンサ(CCD)
200 画像読取装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【特許文献1】特開2005−266771号公報
【特許文献2】特開2006−285158号公報
【特許文献3】特許第3862446号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ向かって順に、負の屈折力を有する第1レンズからなる第1群、両凸形状の第2レンズからなる第2群、両凹形状の第3レンズからなる第3群、両凸形状の第4レンズと物体側に凹面を向けた負の屈折力を有するメニスカス形状の第5レンズとを接合してなる第4群、及び負の屈折力を有する第6レンズからなる第5群で構成され、前記第3群と前記第4群との間に絞りを有する5群6枚構成の画像読取レンズであって、
レンズ第1面から結像面までの距離をTL、画像読取レンズ全系の焦点距離をf、前記絞りより物体側に配置されたレンズ群の合成焦点距離をf123とするとき、これらが以下の条件式(1)及び(2)を満足することを特徴とする画像読取レンズ。
(1)1.7<TL/f<2.1
(2)−0.7<f/f123<0.3
【請求項2】
少なくとも前記第1レンズ及び前記第6レンズが、回転対称な非球面を有することを特徴とする請求項1に記載の画像読取レンズ。
【請求項3】
前記第4群の合成焦点距離をf45とするとき、以下の条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取レンズ。
(3)0.3<f45/f<0.8
【請求項4】
6枚のレンズが全てガラスレンズであり、該ガラスレンズのガラス材料が、鉛、砒素、及びこれらに類する有害物質を含有していないことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像読取レンズ。
【請求項5】
レンズの少なくとも1枚が、非円形の外形形状であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像読取レンズ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の画像読取レンズと、原稿配置面に配置された原稿を照明する照明系と、前記照明系で照明された前記原稿の画像情報が結像されるライン状の撮像素子と、少なくとも1枚のミラーとが一体に保持されてなる画像読取ユニットを備え、該画像読取ユニットを走査させて前記原稿の画像情報を読取ることを特徴とする画像読取装置。
【請求項7】
画像信号に対応する画像を書込んで画像を形成する画像形成装置であって、原稿の画像情報を読取って画像信号化する手段として、請求項6に記載の画像読取装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−54295(P2013−54295A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193962(P2011−193962)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】