説明

画像読取装置

【課題】読取画像の色ずれを防止し、品質を向上させることのできる画像読取装置を提供する。
【解決手段】レジストローラー105と読取ローラーR1との間の原稿のループ量が予め規定されたループ量以下である場合、搬送経路を搬送される原稿の搬送方向に後端の位置が検出され、後端の位置に応じて、給紙ローラー103またはレジストローラー105の回転が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は画像読取装置に関し、特に、原稿を読取位置まで自動で搬送するシートスルータイプの画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシートスルータイプの画像読取装置には、搬送経路を挟んだローラー対が複数備えられて、複数のローラー対の回転によって搬送経路内で原稿が読取位置まで搬送される。すなわち、原稿台にセットされた原稿は、一枚ずつ給紙用のローラー(給紙ローラー)で搬送経路に送り出され、レジストローラーでいったん方向を整えられた後に読取位置に搬送されてその原稿面が光学的に読み取られる。
【0003】
図6は、従来の画像読取装置の構成の概略を表わした図である。図中、AからBに向う方向にガイドが設けられてガイド内を用紙が搬送される。図6に表わされたように、通常、画像読取装置のサイズの制約上、曲率を有するガイドが設けられ、そのカーブに沿って用紙が搬送される。
【0004】
最も上流側には図示しない原稿台が設けられ、原稿台とガイドとの境界位置に配されたピックローラーによって、原稿台にセットされた原稿束から1枚原稿が取り出される。そして、その下流側に設けられた給紙ローラーおよびさばきローラーからなるローラー対によって、取り出された原稿がガイドに投入(給紙)される。
【0005】
給紙ローラーおよびさばきローラーからなるローラー対よりも下流側に、原稿送りのタイミングやスキュー補正などを行なうためのレジストローラー対が設けられ、該ローラー対の回転によって、それより下流に配置された読取ガラスに向けて原稿が搬送される。
【0006】
読取ガラスは搬送経路に沿って配されている。搬送された原稿が読取ガラスを通過する際に当該ガラスを介して図示しない読取装置にガラスに接する側の面が光学的に読み取られる。読取部の上流側および下流側には、それぞれ、読取ローラー1(R1)および読取ローラー2(R2)が設けられ、各ローラー対の圧接力で用紙が把持されながらその回転によってガイド内を用紙が読取位置を通過するように搬送される。
【0007】
各ローラーの回転速度や圧接力は図示しないモーターの回転によって制御されている。
ここで、図6において太線で表わされたように、原稿がガイドのカーブの内側に沿うように搬送された場合、原稿は読取ローラーR1で引っ張られてたるみなく搬送されることになる。そのため、原稿後端が給紙ローラーとさばきローラーとの間のニップを脱するタイミングやレジストローラー対のニップを脱するタイミングに、原稿に衝撃が生じる。このときに、原稿先端がすでに読取装置に達している場合には、該衝撃によって読取画像上に色ずれが発生することになる。
【0008】
この問題を解消するために、従来技術では、レジストローラーの搬送速度差を読取ローラーR1の搬送速度よりも若干早くすることで、図6において点線で表わされたように、レジストローラーと読取ローラーR1との間にたるみ(ループ)を形成させる制御がなされている。これにより、原稿後端が各ローラーのニップを脱したタイミングで原稿に発生する衝撃がループ部分に吸収され、そのタイミングでの読取画像の色ずれを防止することがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−118116号公報
【特許文献2】特開平5−85644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、レジストローラーと読取ローラーR1との間のループ量をレジストローラーのローラー径を読取ローラーR1のローラー径に対して大きくしたり、レジストローラーの駆動源の速度を読取ローラーR1の駆動源の速度に対して早い速度に設定したりするだけでは、画像読取装置の機械耐久(部品の使用量)や機械バラツキの影響で安定したループ量を形成することができない場合があり、確実に上述の色ずれが防止できない場合もある、という問題があった。
【0011】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、読取画像の色ずれを防止し、品質を向上させることのできる画像読取装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、画像読取装置は搬送される原稿を読取機構で読み取ることで原稿面の読取画像を得るための画像読取装置であって、原稿を搬送経路に沿って搬送するための搬送手段と、搬送経路に配され、当該位置に原稿が存在することをセンシングするための第1のセンサーと、搬送経路に配され、当該位置における原稿のたわみ量をセンシングするための第2のセンサーと、搬送手段での搬送を制御するための制御装置とを備える。搬送手段は、搬送経路に投入された原稿の表面に接して回転することで当該原稿を搬送方向に押し出すための給紙ローラーと、回転状態と停止状態となるタイミングが制御されることで、給紙ローラーによって搬送されてきた原稿の傾きを補正し、傾き補正後の当該原稿を搬送方向に押し出すためのレジストローラーと、読取機構での読取位置を搬送方向に挟んで上流側に配置され、レジストローラーによって搬送されてきた原稿を読取位置に向けて搬送方向に押し出すための読取前ローラーとを含む。第1のセンサーは、給紙ローラーの配される位置での原稿の有無をセンシングするためのセンサーと、レジストローラーの配される位置での原稿の有無をセンシングするためのセンサーとを含む。第2のセンサーは、レジストローラーと読取前ローラーとの間に配されて、当該位置での原稿のたわみ量をセンシングする。制御装置は、第2のセンサーでセンシングされたたわみ量が予め規定されたたわみ量以下である場合、第1のセンサーでのセンシングに基づいて搬送経路を搬送される原稿の搬送方向に後端の位置を検出し、後端の位置に応じて、給紙ローラーまたはレジストローラーの回転を制御する。
【0013】
好ましくは、制御装置は、センシングされたたわみ量が予め規定されるたわみ量以下であり、かつ、後端の位置が給紙ローラーよりも搬送方向に上流側である場合に、給紙ローラーが回転停止状態であるときには給紙ローラーの回転を再開させ、センシングされたたわみ量が予め規定されるたわみ量以下であり、かつ、後端の位置が給紙ローラーからレジストローラーまでの間である場合に、レジストローラーの回転速度を増速させる。
【0014】
より好ましくは、制御装置は、回転停止状態である給紙ローラーの回転を再開させる場合、読取機構での読取速度に応じた初期速度よりも早い回転速度で給紙ローラーを回転させる。
【0015】
好ましくは、制御装置は、レジストローラーの回転速度を増速させた場合、原稿の後端がレジストローラーの位置を脱すると、またはセンシングされたたわみ量が予め規定されたたわみ量以上となると、レジストローラーの回転速度を初期速度に戻す。
【0016】
好ましくは、制御装置は、回転停止状態である給紙ローラーの回転を再開させる場合、原稿の後端が給紙ローラーの位置を脱すると、給紙ローラーの回転を停止させる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によると、読取画像の色ずれを防止し、品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態にかかる画像形成装置の装置構成の具体例を示す図である。
【図2】実施の形態にかかる画像形成装置の制御構成の具体例を示すブロック図である。
【図3】画像形成装置の画像処理部の機能構成の具体例を示すブロック図である。
【図4】実施の形態にかかる画像形成装置での制御概要を説明する図である。
【図5】画像形成装置での制御の流れを表わしたフローチャートである。
【図6】従来の画像読取装置の構成の概略を表わした図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。
【0020】
<装置構成>
図1は、本実施の形態にかかる画像形成装置100の装置構成の具体例を示す図である。
【0021】
図1を参照して、画像形成装置100は、シートスルータイプの自動原稿送り装置(以下、ADF(Auto Document Feeder)ともいう)1と読取装置2とを含む。ADF1は、画像読取装置とも称される。
【0022】
図1に表わされた画像形成装置100は、複写機、プリンター、スキャナー、ファクシミリ送受信機、またはこれら装置のうちのいずれか2以上の装置の機能を備えた複合機であるMFP(Multi-Function Peripheral)などが該当し、ADF1は読取装置2で原稿を読み取るための、後述する読取位置211に原稿を搬送する。
【0023】
ADF1は、搬送前の原稿を積載するためのトレイ101と搬送後の原稿を排紙するためのトレイ110とを有し、トレイ101とトレイ110との間に原稿の搬送経路が構成されている。
【0024】
搬送経路には、少なくとも読取位置211に面する位置が開放された図示しないガイドが設けられ、ガイドに沿って原稿が搬送される。
【0025】
トレイ101と搬送経路との境界位置にはピックローラー102と、給紙ローラーとさばきローラーとの対で構成される分離ローラー103とが備えられる。
【0026】
給紙ローラーは、トレイ101にセットされた原稿束Sからピックローラー102によって送り出されてくる1枚の原稿の表面に接して、これを搬送経路の進行方向へ送り出す。さばきローラーは給紙ローラーと対向し、給紙ローラーによって先へ送られる該原稿に裏面側から接して、当該原稿に重送されようとする他の原稿を受止めて先へ搬送されるのを防止する。
【0027】
さばきローラーは、一例として、ローラーをレバー等によって支持させた構成を有する。当該レバーに働かせたキックスプリングによりローラーが給紙ローラーに圧接する。これによって、さばきローラーは給紙ローラーに対して相対的に移動状態となり、搬送対象の原稿以外の原稿の重送を防止する。
【0028】
これにより、トレイ101に積載された原稿束Sは、ピックローラー102により給紙され、一対の分離ローラー103によって1枚ずつ分離されて、搬送経路に送り出される。
【0029】
なお、分離ローラー103の下流側には後述する分離後センサー113が配され、当該分離後センサー113の位置まで搬送された原稿が達したタイミングでさばきローラーの駆動は停止し、つまり、上述の給紙ローラーに対して相対的な移動状態は解消され、給紙ローラーに従動回転する。
【0030】
以降の説明において、搬送経路の搬送方向、つまりトレイ101からトレイ110に向かう方向のトレイ101側を「搬送方向の上流側」といい、トレイ110側を「搬送方向の下流側」ということもある。また、搬送経路の上流側を「前」、下流側を「後」ということもある。
【0031】
搬送経路には、搬送方向に沿って搬送経路を挟む一対のレジストローラー105が備えられる。分離ローラー103によって搬送経路に送り出された原稿はレジストローラー105まで達し、レジストローラー105によってスキュー補正される。ここでは、レジストローラー105が回転を停止している状態で分離ローラー103によって原稿が搬送されることで、原稿がレジストローラー105のニップ部を選択としたループを形成する。これによって原稿のスキューが補正される。
【0032】
所定のタイミングでレジストローラー105が回転することで、スキュー補正された後の原稿が読取装置2の読取位置211へ搬送される。読取位置211には読取ガラス204が設けられている。
【0033】
搬送経路の、読取装置2の読取位置211に対応する位置の上流側および下流側に、それぞれ一対の読取ローラー106,107が備えられる。これらローラー対の回転により、搬送されてきた原稿は読取装置2の読取位置211を通過して下流側に搬送される。これにより、原稿の、読取装置2に向く面が読取装置2によって読み取られる。なお、以降の説明において、読取ローラー106,107を、それぞれ、R1ローラー,R2ローラーとも称する。
【0034】
搬送経路とトレイ110との境界位置には排紙ローラー109が備えられる。この排紙ローラー109の回転により読取装置2で読み取られた後の原稿がトレイ110へ排出される。
【0035】
ADF1は、さらに、各ローラーを駆動するためのモーターとして、給紙モーター301、レジストモーター302、および読取モーター303を備える。以降の説明において、給紙モーター301、レジストモーター302、および読取モーター303を、それぞれ、モーターM2,M3,M4とも称する。
【0036】
給紙モーター301(M2)は図示しない給紙クラッチを経てピックローラー102および分離ローラー103に接続され、これらローラーを駆動する。レジストモーター302(M3)はレジストローラー105に接続され、該ローラを駆動する。読取モーター303(M4)は読取ローラー106,107および排紙ローラー109に接続され、これらローラーを駆動する。
【0037】
搬送経路の、読取位置211の上流側の読取位置211近傍、レジストローラー105よりも上流側のレジストローラー105近傍、および分離ローラー103の下流側の分離ローラー103近傍に、それぞれ、読取前センサー111、レジストセンサー112、および分離後センサー113が配される。これらセンサーは、その位置における原稿の有無を検出する。これらセンサーは後述する制御装置150と電気的に接続され、センシング範囲に原稿が存在することを表わすセンサー信号を制御装置150に対して出力する。
【0038】
搬送経路の、レジストローラー105と読取ローラー106(R1ローラー)との間の位置に、これらローラー間でループが形成されることによる用紙のたるみ量(以降、ループ量とも称する)を検出するためのループ量検出センサー114が配される。ループ量検出センサー114は後述する制御装置150と電気的に接続され、ループ量を表わすセンサー信号を制御装置150に対して出力する。
【0039】
なお、以降の説明では、ループ量をたとえば光学式などのセンサーを用いて検出するものとしているが、センサーに限定されず、たとえば、レジストローラー105および読取ローラー106(R1ローラー)それぞれの搬送速度を予め規定しておくことで搬送速度を測定することでループ量を得るようにしてもよい。
【0040】
ADF1は、さらに、制御装置150およびメモリー160を備える。制御装置150に含まれる図示しないCPU(Central Processing Unit)はメモリー160に記憶されるプログラムを読み出して実行する。これらモーターは制御装置150に電気的に接続されて、制御装置150からの制御信号に従って回転が制御される。
【0041】
読取装置2は一例としてCCD(Charged Coupled Device)を含む。この場合、読取装置2は、露光ランプ201と、複数のミラーからなるミラー群202と、読取部としてのCCDセンサー203と、CCDセンサー203を含む図示しない読取スライダーユニットを移動させるための駆動モーター205と、制御装置250と、メモリー260とを備える。また、読取位置211には画像読取ガラス204が配される。以降の説明において、駆動モーター205をモーターM1とも称する。
【0042】
駆動モーター205(M1)はCCDセンサー203を含む図示しない読取スライダーユニットに接続され、該ユニットを移動させる。駆動モーター205は制御装置250に電気的に接続されて、制御装置250からの制御信号に従って回転が制御される。
【0043】
原稿が読取位置211を通過すると、露光ランプ201が、原稿の表面を照射する。照射光によって原稿の表面から反射された光はミラー群202に反射されてCCDセンサー203まで導かれ、CCDセンサー203によって受光される。
【0044】
制御装置250は、図示しないCPUを含み、メモリー260に記憶されるプログラムを読み出して実行することで、画像形成部としての機能を発揮する。CCDセンサー203は、光電変換により、受光信号をRGBデーターに変換して制御装置250に対して出力する。画像形成部として機能する制御装置250は、RGBデーターに基づいて画像形成処理を実行する。
【0045】
<制御構成>
図2は、本実施の形態にかかる画像形成装置100の制御構成の具体例を示すブロック図である。
【0046】
図2を参照して、ADF1の制御装置150および読取装置2の制御装置250は、それぞれ、CPU151,251を含み、メモリー160,260に記憶されているプログラムを実行する。ADF1のCPU151と読取装置2のCPU251とは電気的に接続され、原稿のサイズ情報や動作モードや原稿を読み取るタイミング情報などの制御情報を互いに通信する。
【0047】
ADF1のCPU151は、給紙モーター301(M2)を駆動するためのモーター駆動IC152、レジストモーター302(M3)を駆動するためのモーター駆動IC153、および読取モーター303(M4)を駆動するためのモーター駆動IC154と接続される。CPU151は、励磁信号(φ0〜φ3)をモーター駆動ICに対して入力することにより、モーターの回転を制御する。
【0048】
また、CPU151はセンサー111〜114にそれぞれ接続され、各センサーからのセンサー信号が入力される。
【0049】
読取装置2のCPU251には、駆動モーター205(M1)を駆動するためのモーター駆動IC252が接続される。CPU251は、励磁信号をモーター駆動IC252に対して入力することにより駆動モーター205の回転を制御する。
【0050】
また、読取装置2の制御装置250にはCCD203からのRGBデーターの入力を受け付けるための画像入力部254と、RGBデーターを処理して画像データーを生成するための画像処理部253とが含まれ、画像処理部253はCPU251に接続される。
【0051】
図3は、画像処理部253の機能構成の具体例を示すブロック図である。
図3を参照して、画像処理部253は、入力部11で画像入力部254からのRGBデーターの入力を受け付ける。入力されたアナログ画像データーであるRGBデーターは、A/D(Analog/Digital)変換部12においてデジタルの画像データーに変換される。
【0052】
SH補正部13は予め設定されているSH値を読み出してA/D変換部12から入力される画像データーをシェーディング補正し、シェーディング補正後の画像データーを明度・色差分離部14に出力する。明度・色差分離部14は、画像データーを明度成分と色差成分とに分離し、それぞれを画像調整部に出力する。
【0053】
画像調整部は、シャープネス調整部15、HVC調整部16および濃度補正部17を含む。シャープネス調整部15は、画像を鮮明化する処理を実行し、HVC調整部16は、画像の色相(H)、明度(V)および彩度(C)を調整する。濃度補正部17は、画像の濃度を補正する。画像調整部は、処理したRGBそれぞれの画像データーを色空間変換部18に出力する。色空間変換部18は、画像データーの色空間をRGB色空間からL*a*b*色空間に変換し、圧縮伸張部19に出力する。圧縮伸張部19は、画像データーを圧縮する。圧縮伸張部19は、圧縮した画像データーを、HDD(ハードディスク)等の画像メモリー30に記憶する。または外部の装置に出力する。シャープネス調整部15・HVC調整部16・濃度補正部17に対しては、画像濃度等の調整のための画像パラメーター設定32により、読取画像の最適化が図られる。
【0054】
<制御概要>
(課題の説明)
<<シーン1>>
図6を用いて上で説明したように、搬送された原稿がガイドのカーブの内側に沿うように搬送された場合(図6の太線)、原稿は読取ローラー106(R1)で引っ張られてたるみなく搬送されることになる。そのため、原稿後端がレジストローラー105のニップ部を脱するタイミングにレジストローラー105での把持が解消されるため、原稿に衝撃が生じる。このときに、原稿先端がすでに読取装置に達している場合には、該衝撃によって読取部分がぶれることになり、読取画像上に色ずれが発生することになる。
【0055】
<<シーン2>>
搬送経路に投入された原稿の先端がレジストローラー105に達してレジストローラー105での把持によって搬送されるようになると、制御装置150は給紙ローラーの回転を停止させて、次の原稿の給紙に備える。給紙ローラーを停止させるタイミングは、搬送方向の辺の長さの最も短い原稿サイズに応じたタイミングで予め規定されており、制御装置150は、給紙後、当該タイミングを計時して給紙ローラーを停止させることで簡易な制御を実現できる。
【0056】
しかしながら、このとき、給紙された原稿が上記原稿サイズよりも大きいサイズの原稿であった場合、給紙ローラーが停止したタイミングでも原稿は給紙ローラーとさばきローラーとの対である分離ローラー103のニップ部に存在している。
【0057】
給紙クラッチは好適にはワンウェイクラッチが用いられて給紙モーター301(M2)がワンウェイクラッチを経て給紙ローラーに接続されている。そのため、原稿先端がレジストローラー105の搬送力で搬送されて分離ローラー103のニップ部から原稿が引き抜かれた場合には、給紙ローラーは空回りすることになり、原稿に負荷をかけない。一方、さばきローラーは上述のように好適にはキックスプリングを有して給紙ローラーに圧接しているため、分離ローラー103のニップ部から原稿が引き抜かれた場合に原稿に負荷をかけることになる。
【0058】
このため、レジストローラー105に原稿の先端が達したときに分離ローラー103よりも上流側に原稿の後端が存在する場合、レジストローラー105と分離ローラー103との間で原稿が引っ張られることになる。そのため、搬送された原稿がガイドのカーブの内側に沿うように搬送され(図6の太線)、かつ、原稿の先端が読取ローラー106(R1)に達して後端が分離ローラー103よりも上流側にある場合、原稿の後端が分離ローラー103のニップ部を脱するタイミングにレジストローラー105と分離ローラー103との間の原稿にかかる引っ張り力が変化するために原稿に衝撃が生じる。このときに、原稿先端がすでに読取装置に達している場合には、該衝撃によって読取部分がぶれることになり、読取画像上に色ずれが発生することになる。
【0059】
(課題を解決するための制御概要)
画像形成装置100では、通常の原稿搬送時には、読取装置2での読取線速度と同じ回転速度で各ローラーが回転している。
【0060】
しかしながら、上述のように、レジストローラー105と読取ローラー106との間のループ量が予め規定している適正なループ量以下であることが検出された場合、本実施の形態にかかる画像形成装置100では、搬送される原稿の後端が分離ローラー103を脱するタイミングおよびレジストローラー105を脱するタイミングのいずれのタイミングでも、レジストローラー105と読取ローラー106との間で原稿によって形成されるループのループ量を、予め規定された、上記タイミングで原稿に生じる衝撃を吸収するのに適切な所定のループ量となるように、分離ローラー103および/またはレジストローラー105の回転速度を制御する。具体的には、図4を用いて制御概要を説明する。
【0061】
図4を参照して、搬送される原稿のレジストローラー105と読取ローラー106との間でのループ量を監視し、そのループ量が予め規定された一定量以下となった場合に、後端が分離ローラー103よりも上流側に存在するか、分離ローラー103からレジストローラー105までの間に存在するかによって、モーター制御を分岐する。
【0062】
前者の場合、つまり、原稿の後端が分離ローラー103よりも上流側に存在する場合、次の原稿の搬送に備えて回転を給紙している、分離ローラー103のうちの給紙ローラーの回転を再開させる。これによって、さばきローラーも従動回転を開始することになり、原稿の後端が分離ローラー103のニップ部を脱するタイミングでさばきローラーが原稿に与える負荷が抑えられる。
【0063】
このとき、好ましくは、給紙ローラーの回転を、読取装置2の読取線速度と同じ初期速度よりも早い回転速度で再開させる。これによって、レジストローラー105と分離ローラー103との間の原稿に生じる引っ張り力を抑えることができ、原稿の後端が分離ローラー103のニップ部を脱するタイミングでさばきローラーが原稿に与える負荷をより抑えることができる。
【0064】
その後、後者の状態、つまり、原稿の後端が分離ローラー103からレジストローラー105までの間に存在する状態となると、レジストローラー105の回転速度を初期速度から徐々に増速させる。これによって、分離ローラー103との間のループ量が徐々に増加する。
【0065】
これにより、レジストローラー105と読取ローラー106との間で搬送される原稿に、当該画像形成装置100の駆動量や製造ばらつきなどの属性によらずに安定してループを形成させることができ、上記タイミングでの衝撃を適切に吸収させることができる。
【0066】
<動作フロー>
図5は、画像形成装置100での制御の流れを表わしたフローチャートである。図5のフローチャートに表わされた制御は、CPU151がメモリー160に記憶されるプログラムを読み出して実行することによって実現される。
【0067】
図5を参照して、原稿が搬送中の状態において(ステップS101でYES)、ステップS103でCPU151は、ループ量検出センサー114でのループ量の検出を開始する。検出されたレジストローラー105と読取ローラー106との間のループ量(Y)が予め規定されている適正なループ量の下限値(X)以下であった場合、つまりループ量が不足していた場合(ステップS105でYES)、CPU151は、さらに、分離後センサー113での検出結果を確認する。
【0068】
分離後センサー113がまだ原稿の後端の通過を検出していない場合、つまり、分離ローラー103のニップ部に原稿が存在している場合(ステップS107でNO)、CPU151は、さらに、給紙ローラーがすでに停止している状態であるか否かを確認する。すでに給紙ローラーが停止している場合には(ステップS109でYES)、ステップS111でCPU151は、給紙ローラーの回転を再開させる。そして、分離後センサー113で原稿の後端の通過が検出される、つまり、原稿の後端が分離ローラー103のニップ部を脱すると(ステップS113でYES)、ステップS115でCPU151は、あらためて給紙ローラーの回転を停止させる。
【0069】
なお、上記ステップS111で給紙ローラーの回転を再開させる際、好ましくは、CPU151は、読取装置2の読取線速度と同じ回転速度である給紙ローラーの初期速度よりも早い回転速度で給紙ローラーの回転を再開させる。これによって、レジストローラー105と分離ローラー103との間の原稿に生じる引っ張り力を抑えることができ、原稿の後端が分離ローラー103のニップ部を脱するタイミングでさばきローラーが原稿に与える負荷をより抑えることができる。
【0070】
一方、分離後センサー113がすでに原稿の後端の通過を検出している場合、つまり、レジストローラー105と分離ローラー103との間に原稿の後端が存在している場合(ステップS107でYES)、ステップS117でCPU151は、レジストローラー105の回転速度を初期速度よりも規定量速める。
【0071】
原稿の後端がレジストローラー105のニップ部を脱すると(ステップS119でYES)、または、ループ量検出センサー114で検出されたレジストローラー105と読取ローラー106との間のループ量(Y)が予め規定されている適正なループ量の下限値(X)を上回り適正なループ量となると(ステップS121でYES)、ステップS123でCPU151は、レジストローラー105の回転速度を初期速度に戻す。
【0072】
<実施の形態の効果>
以上の制御がなされることで、搬送経路内を搬送される原稿がガイドの内側に沿って搬送され、レジストローラー105と読取ローラー106との間でループ量が不足して引っ張られた状態で搬送されている場合に、原稿の後端が分離ローラー103よりも上流側にあって、給紙ローラーの回転がすでに停止している状態であるときには、給紙ローラーの回転が再開される。これによって、原稿の後端が分離ローラー103のニップ部を脱した際に当該原稿に与えられる負荷を軽減させることができる。
【0073】
原稿の後端が分離ローラー103のニップ部を脱し、レジストローラー105と分離ローラー103との間に位置している場合、レジストローラー105の回転速度が増速される。これによって、レジストローラー105と読取ローラー106との間のループ量が徐々に増加する。そのため、原稿の後端がレジストローラー105のニップ部を脱した際に当該原稿に衝撃が抑えられる。
【0074】
すなわち、本実施の形態にかかる画像形成装置100では、搬送される原稿の後端を実際のセンサーで検出して各ローラーの回転速度を制御する。そのため、画像形成装置100の駆動量や製造ばらつきなどの影響を受けずに安定したループ量で原稿にループを形成させることができ、読取部での原稿の衝撃を抑えることができる。その結果、読取画像の品質を向上させることができる。
【0075】
さらに、画像形成装置100に上述の制御を実行させるためのプログラムを提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびメモリカードなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0076】
なお、本発明にかかるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0077】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0078】
提供されるプログラム製品は、ハードディスクなどのプログラム格納部にインストールされて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0079】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
1 ADF、2 読取装置、11 入力部、12 A/D変換部、13 SH補正部、14 色差分離部、15 シャープネス調整部、16 HVC調整部、17 濃度補正部、18 色空間変換部、19 圧縮伸張部、30 画像メモリー、32 画像パラメーター設定、100 画像形成装置、101,110 トレイ、102 ピックローラー、103 分離ローラー、105 レジストローラー、106,107 読取ローラー、109 排紙ローラー、111 読取前センサー、112 レジストセンサー、113 分離後センサー、114 ループ量検出センサー、150,250 制御装置、152,153,154,252 モーター駆動IC、160,260 メモリー、201 露光ランプ、202 ミラー群、203 CCDセンサー、204 読取ガラス、205 駆動モーター、211 読取位置、253 画像処理部、254 画像入力部、301 給紙モーター、302 レジストモーター、303 読取モーター、S 原稿束。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される原稿を読取機構で読み取ることで原稿面の読取画像を得るための画像読取装置であって、
前記原稿を搬送経路に沿って搬送するための搬送手段と、
前記搬送経路に配され、当該位置に原稿が存在することをセンシングするための第1のセンサーと、
前記搬送経路に配され、当該位置における原稿のたわみ量をセンシングするための第2のセンサーと、
前記搬送手段での搬送を制御するための制御装置とを備え、
前記搬送手段は、
前記搬送経路に投入された原稿の表面に接して回転することで当該原稿を搬送方向に押し出すための給紙ローラーと、
回転状態と停止状態となるタイミングが制御されることで、前記給紙ローラーによって搬送されてきた前記原稿の傾きを補正し、傾き補正後の当該原稿を前記搬送方向に押し出すためのレジストローラーと、
前記読取機構での読取位置を前記搬送方向に挟んで上流側に配置され、前記レジストローラーによって搬送されてきた前記原稿を前記読取位置に向けて前記搬送方向に押し出すための読取前ローラーとを含み、
前記第1のセンサーは、
前記給紙ローラーの配される位置での原稿の有無をセンシングするためのセンサーと、
前記レジストローラーの配される位置での原稿の有無をセンシングするためのセンサーとを含み、
前記第2のセンサーは、前記レジストローラーと前記読取前ローラーとの間に配されて、当該位置での原稿のたわみ量をセンシングし、
前記制御装置は、
前記第2のセンサーでセンシングされた前記たわみ量が予め規定されたたわみ量以下である場合、前記第1のセンサーでのセンシングに基づいて前記搬送経路を搬送される原稿の前記搬送方向に後端の位置を検出し、前記後端の位置に応じて、前記給紙ローラーまたは前記レジストローラーの回転を制御する、画像読取装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記たわみ量が予め規定されるたわみ量以下であり、かつ、前記後端の位置が前記給紙ローラーよりも前記搬送方向に上流側である場合に、前記給紙ローラーが回転停止状態であるときには前記給紙ローラーの回転を再開させ、
前記たわみ量が予め規定されるたわみ量以下であり、かつ、前記後端の位置が前記給紙ローラーから前記レジストローラーまでの間である場合に、前記レジストローラーの回転速度を増速させる、請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記制御装置は、回転停止状態である前記給紙ローラーの回転を再開させる場合、前記読取機構での読取速度に応じた初期速度よりも早い回転速度で前記給紙ローラーを回転させる、請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記レジストローラーの回転速度を増速させた場合、前記原稿の後端が前記レジストローラーの位置を脱すると、または前記たわみ量が前記予め規定されたたわみ量以上となると、前記レジストローラーの回転速度を初期速度に戻す、請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記制御装置は、回転停止状態である前記給紙ローラーの回転を再開させる場合、前記原稿の後端が前記給紙ローラーの位置を脱すると、前記給紙ローラーの回転を停止させる、請求項2に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−11812(P2013−11812A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145727(P2011−145727)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】