説明

界面活性剤を含む固形化製剤

【課題】脂溶性又は水溶性の難・低吸収性薬物の臨床的に必要となる経口吸収を可能とする、安全かつより強力な自己微少乳化型界面活性剤であるC6−18脂肪酸のグリセロールエステルとC6−18脂肪酸のマクロゴールエステルとのエステル混合物(ラブラゾールなど)などを配合した固形化製剤を提供すること。
【解決手段】界面活性剤、多孔性吸着剤、及び有効成分薬物を含む固形化製剤。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液状、半固形状又は固形状の界面活性剤を含む固形化製剤に関する。より詳細には、本発明は、有効成分薬物の溶解性が低いか、あるいは消化管吸収膜透過性が低いために、経口投与後の消化管からの吸収が低い薬物の吸収を改善してバイオアベイラビリティや薬効を高めるために用いられる界面活性剤を含む固形製剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
脂溶性の難・低吸収性薬物の代表的なものとしては、リトナビル・サキナビル・ネルフィナビル・アンプレナビルなどのHIVプロテアーゼ阻害薬、タクロリムス・シクロスポリンなどの免疫抑制薬、グリセオフルビンなどの抗真菌薬、イリノテカンなどの制癌薬、などの薬物が知られている。これらの薬物の消化管からの吸収を高めるために自己微少乳化型ドラッグデリバリーシステムが考案されシクロスポリンAを含有するネオーラルソフトカプセルやアンプレナビルソフトカプセルが市販されている。
【0003】
一方、水溶性の難・低吸収性薬物としては、アミノグリコシド系抗生物質・ペニシリン系抗生物質・セファロスポリン系抗生物質・セフェム系抗生物質、バンコマイシンなどのペプチド系抗生物質、アシクロビルなどの抗ウイルス薬、インスリン・カルシトニン・インターフェロン・各種のインタロイキン類・バソプレッシンとその誘導体・顆粒球増殖因子G-CSF・エリスロポエチンなどの蛋白ペプチド、ペンタサッカライドなどが代表的な薬物である。これらの薬物では、経口投与後の吸収率が低いために、経口投与が断念されているかあるいは経口投与が行われても大量の投与量を用いる必要がある。また、現在開発中の薬物の中にもこれらの薬物と同様、脂溶性ならびに水溶性の難・低吸収性薬物が数多くあるが、経口投与後の吸収率(バイオアベイラビリティ)が悪いか、あるいは低いために、製品化が行われていないものがある。
【0004】
ポリソルベート80、C6-18脂肪酸のグリセロールエステルとC6-18脂肪酸のマクロゴールエステルとのエステル混合物(ラブラゾールなど)や“モノ-、ジ-グリセライドと界面活性剤と水の混合系”など液状の自己微少乳化型界面活性剤はこれらの脂溶性薬物や難・低吸収性薬物のバイオアベイラビリティを改善するための優れた溶解補助剤ならびに吸収促進剤である。しかし、常温で液体であるために、経口固形製剤化を行うに際しては、困難がつきまとう。
【0005】
“モノ-、ジ-グリセライドと界面活性剤と水の混合系”など液状自己微少乳化型界面活性剤の固形製剤化を容易にするために、結晶セルロースを用いて固形化する方法が提案されている(Michael Newton et al., J. Pharm. Sci., 90, 987-995, 2001)。しかし、結晶セルロースではその乾燥重量の42%までしか液状の自己微少乳化系を吸着することができず、経口固形医薬品製剤として利用するには至っていない。そこで、液状の界面活性剤、例えばC6-18脂肪酸のグリセロールエステルとC6-18脂肪酸のマクロゴールエステルとのエステル混合物(ラブラゾールなど)、の有する可溶化力ならびに吸収促進効果を維持しつつ、強力に固形化を可能とする技術が求められている。
【0006】
安全性に富む吸収促進剤としてC6-18脂肪酸のグリセロールエステルとC6-18脂肪酸のマクロゴールエステルとのエステル混合物(ラブラゾールなど商品名Labrasol)が開発されてきており、インスリン、カルシトニンなどへの経口吸収促進剤としての応用がある(米国特許第6,200,602号)。しかし、これらの界面活性剤は常温で液体であるため、経口液剤が開発候補として考えられる。しかし、医薬品製剤としての市場性・実用性を考えると、液剤よりも固形剤が望まれている。そこで、強力な吸収促進効果を維持しつつ自己微少乳化型界面活性剤C6-18脂肪酸のグリセロールエステルとC6-18脂肪酸のマクロゴールエステルとのエステル混合物(ラブラゾールなど)などの固形化を行う技術の登場が望まれている。
【0007】
【特許文献1】
米国特許第6,200,602号
【非特許文献1】
Michael Newton et al., J. Pharm. Sci., 90, 987-995, 2001
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、上記の脂溶性又は水溶性の難・低吸収性薬物の臨床的に必要となる経口吸収を可能とする、安全かつより強力な自己微少乳化型界面活性剤であるC6-18脂肪酸のグリセロールエステルとC6-18脂肪酸のマクロゴールエステルとのエステル混合物(ラブラゾールなど)などを配合した固形化製剤を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、界面活性剤と有効成分薬物を含む溶液に多孔性吸着剤を混合して固形化することにより、脂溶性又は水溶性の難・低吸収性薬物のバイオアベイラビリティを高めた固形化製剤を製造できることを見出した。
【0010】
即ち、ポリソルベート80、C6-18脂肪酸のグリセロールエステルとC6-18脂肪酸のマクロゴールエステルとのエステル混合物(ラブラゾールなど)などの液状の界面活性剤をフローライト、ノイシリン、多孔性リン酸カルシウムなどの多孔性吸着剤あるいはこれらの多孔性吸着剤に化学的処理を施したものに吸着させることによって固形化でき、これにより脂溶性又は水溶性の難・低吸収性薬物のバイオアベイラビリティを高めた固形化製剤を製造できることが今回判明した。
【0011】
医薬品製剤の場合には、例えば、界面活性剤に、フローライト・ノイシリン・多孔性リン酸カルシウムなどの多孔性吸着剤もしくは化学的処理を施すことにより薬物の吸着力を弱めた多孔性吸着剤を加えた後、薬物の粉末を加え、乳鉢を使用してよく混和することにより固形化を行うことができる。あるいはまた、予め薬物を水またはエタノールなどの溶媒を用いて溶解しておき、界面活性剤を加えて溶解し、その後、フローライト・ノイシリン・多孔性リン酸カルシウムなどの多孔性吸着剤もしくは化学的処理を施した多孔性吸着剤を添加して、混和することによって固形製剤を調製することができる。
【0012】
本発明者らは、得られた固形製剤をラットの小腸内に投与あるいはビーグル犬に経口投与し、経時的に得た血漿試料中の薬物濃度あるいは薬理活性を測定することにより界面活性剤や自己微少乳化型界面活性剤であるC6-18脂肪酸のグリセロールエステルとC6-18脂肪酸のマクロゴールエステルとのエステル混合物(ラブラゾールなど)などの持つ吸収促進効果を保持しつつ固形製剤化ができることを実証した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0013】
即ち、本発明によれば、界面活性剤、多孔性吸着剤、及び有効成分薬物を含む固形化製剤が提供される。
好ましくは、本発明の固形化製剤は、界面活性剤と有効成分薬物とを含む溶液と、多孔性吸着剤とを混合して固形化して得られる。
【0014】
好ましくは、界面活性剤は液状の自己微少乳化型界面活性剤である。
好ましくは、界面活性剤は、C6-18脂肪酸のグリセロールエステルとC6-18脂肪酸のマクロゴールエステルとのエステル混合物(ラブラゾール)、ポリソルベート80、モノオレイン酸、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、中鎖脂肪酸トリグリセライド、又はレシチンである。
【0015】
好ましくは、多孔性吸着剤は、多孔性のケイ酸金属塩、多孔性のメタケイ酸金属塩、又は多孔性のリン酸金属塩である。
好ましくは、多孔性吸着剤は、フローライトRE(多孔性ケイ酸カルシウム)又はノイシリン(メタケイ酸アルミン酸マグネシウムのタイプFH1, FH2, FL1, FL2, S1, S2, SG1, SG2, NFL2N, NS2N, UFL2, US2)である。
【0016】
好ましくは、化学的に処理を施すことにより界面活性剤に対する吸着力を保持しつつ有効成分薬物に対する吸着力を低下させた多孔性吸着剤を用いる。
好ましくは、有効成分薬物は、水溶性又は脂溶性の難・低吸収性薬物である。
【0017】
好ましくは、水溶性又は脂溶性の難・低吸収性薬物はアミノグリコシド系抗生物質・ペニシリン系抗生物質・セファロスポリン系抗生物質・セフェム系抗生物質、ペプチド系抗生物質、抗ウイルス薬、蛋白・ペプチド性薬物、ペンタサッカライド、HIVプロテアーゼ阻害薬、免疫抑制薬、抗カビ剤、又は制癌剤などである。
本発明の別の側面によれば、界面活性剤を含む溶液と多孔性吸着剤とを混合すること含む、固形化製剤の製造方法が提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の固形化製剤は、界面活性剤、多孔性吸着剤、及び有効成分薬物を含むことを特徴とする。以下、これらの各成分について説明する。
【0019】
(1)界面活性剤
本発明で用いる界面活性剤は、経口投与後の消化管からの吸収が低い薬物の吸収を改善してバイオアベイラビリティや薬効を高めるために使用されるものであり、所望の作用を発揮する限り、その種類は特に限定されないが、好ましくは自己微少乳化型界面活性剤である。本発明で用いることができる界面活性剤の具体例としては、C6-18脂肪酸のグリセロールエステルとC6-18脂肪酸のマクロゴールエステルとのエステル混合物(ラブラゾールなど)、ポリソルベート80、モノオレイン酸、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、中鎖脂肪酸トリグリセライド、又はレシチンなどが挙げられる。
【0020】
6-18脂肪酸のグリセロールエステルはC6-18脂肪酸のモノ、ジおよびトリグリセロールエステルの少なくとも1種を含むものであれば通常はそれらの混合物の形で使用する。C6-18脂肪酸は飽和または不飽和の炭素数6〜18の脂肪酸であればよいが、飽和脂肪酸、特に炭素数6−12の飽和脂肪酸、すなわちカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸およびラウリル酸が好ましい。
【0021】
6-18脂肪酸のマクロゴールエステルにおけるマクロゴールとしては、通常分子量100〜800、好ましくは200〜600のポリエチレングリコールがあげられ、そのエステルとしてはモノまたはジエステル、またはモノ・ジ混合エステルのいずれであってもよい。マクロゴールエステルを構成するC6-18脂肪酸は前述のグリセロールエステルにおけるものと同様である。グリセロールエステルとマクロゴールエステルの混合物の重量混合比は、グリセロールエステル対マクロゴールエステルが通常1対0.1〜10、好ましくは1対0.2〜5である。このグリセロールエステルとマクロゴールエステルの混合エステルは自己微小乳化型基剤(Self-microemulsifying agent)として既知の製剤添加物である。
【0022】
本発明においては、液状界面活性剤として、例えば、ヨーロッパ薬局方においてはカプリロカプロイルマクロゴールグリセリドcaprylocaproyl macrogolglyceridesとして記載され、ガッテフォッセ社(Gattefosse S. A.)よりラブラゾールLabrasol(商品名)として市販されているものを使用できる。
【0023】
本発明では、上記以外の液状、半固形又は固形の界面活性剤を使用することもできる。本発明で使用できる界面活性の具体例を以下に列挙する。
(a)非イオン性界面活性剤
アルキルグルコシド、アルキルマルトシド、アルキルチオグルコシド、ラウリルマクロゴルグリセリド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリグリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリド、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレン植物油、ポリオキシエチレン水素化植物油、多価アルコールと脂肪酸、グリセリド、植物油、水素化植物油およびステロールから群の少なくとも1種との反応混合物、ショ糖エステル、ショ糖エーテル、スクログリセリド、又はそれらの混合物。
【0024】
(b)親水性界面活性剤
PEG- 10 ラウリン酸エステル、PEG- 12ラウリン酸エステル、PEG-20ラウリン酸エステル、PEG-32ラウリン酸エステル、PEG-32ジラウリン酸エステル、PEG-12オレイン酸エステル、PEG-15オレイン酸エステル、PEG-20オレイン酸エステル、PEG-20ジオレイン酸エステル、PEG-32オレイン酸エステル、PEG-200オレイン酸エステル、PEG-400オレイン酸エステル、PEG- 15ステアリン酸エステル、PEG-32ジステアリン酸エステル、PEG-40ステアリン酸エステル、PEG- 100ステアリン酸エステル、PEG-20ジラウリン酸エステル、PEG-25グリセリルトリオレイン酸エステル、PEG-32ジオレイン酸エステル、PEG-20グリセリルラウリン酸エステル、PEG-30グリセリルラウリン酸エステル、PEG-20グリセリルステアリン酸エステル、PEG-20グリセリルオレイン酸エステル、PEG-30グリセリルオレイン酸エステル、PEG-30グリセリルラウリン酸エステル、PEG-40グリセリルラウリン酸エステル、PEG-40 パーム核油、PEG-50水素化ヒマシ油、PEG-40ヒマシ油、PEG-35ヒマシ油、PEG-60ヒマシ油、PEG-40水素化ヒマシ油、PEG-60水素化ヒマシ油、PEG-60コーン油、PEG-6カプレート/カプリレートグリセリド、PEG-8カプレート/カプリレートグリセリド、ポリグリセリル−10ラウリン酸エステル、PEG-30コレステロール、PEG-25フィトステロール、PEG-30大豆ステロール、PEG-20 トリオレイン酸エステル、PEG-40 ソルビタンオレイン酸エステル、PEG-80ソルビタンラウリン酸エステル、ポリソルベート20、ポリソルベート80、POE-9 ラウリルエーテル、POE-23ラウリルエーテル、POE-10オレイルエーテル、POE-20オレイルエーテル、POE-20ステアリルエーテル、トコフェリルPEG-100コハク酸エステル、PEG-24コレステロール、ポリグリセリル- 10オレイン酸エステル、Tween 40、 Tween 60、スクロースモノステアリン酸エステル、スクロースモノラウリン酸エステル、スクロースモノパルミチン酸エステル、PEG 10-100ノニルフェノール類、PEG 15-100オクチルフェノール類、ポロキサマー、及びそれらの混合物。
【0025】
(c)イオン性界面活性剤
アルキルアンモニウム塩;胆汁塩;フシジン酸;アミノ酸、オリゴペプチド及びポリペプチドの脂肪酸結合物;アミノ酸、オリゴペプチド及びポリペプチドのグリセリドエステル;アシルラクチレート;モノ及びジグリセリドのモノ及びジアセチル化酒石酸エステル;スクシニル化モノグリセリド;モノ及びジグリセリドのクエン酸エステル;アルギン酸塩;プロピレングリコールアルギン酸エステル;レシチン及び水素化レシチン;リゾレシチン及び水素化リゾレシチン;リゾリン脂質;カミチン脂肪酸エステル塩;リン脂質;アルキルサルフェートの塩;脂肪酸の塩;ドキュセートナトリウム;及びそれらの塩。
【0026】
イオン性界面活性剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。
レシチン、リゾレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルセリン、PEGホスファチジルエタノールアミン、PVPホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸のラクチル酸エステル、ステアロイル-2-ラクチレート、スクシニル化モノグリセリド、モノ/ジグリセリドのモノ/ジアセチル化酒石酸エステル、モノ/ジグリセリドのクエン酸エステル、コール酸エステル、タウロコール酸エステル、グリココール酸エステル、デオキシコール酸エステル、タウロデオキシコール酸エステル、ケノデオキシコール酸エステル、グリコデオキシコール酸エステル、グリコケノデオキシコール酸エステル、タウロケノデオキシコール酸エステル、ウルソデオキシコール酸エステル、リトコール酸エステル、タウロウルソデオキシコール酸エステル、グリコウルソデオキシコール酸エステル、コリサルコシン、N-メチルタウロコール酸エステル、カプロエート、カプリレート、カプレート、ラウレート、ミリステート、パルミテート、オレエート、リシノレート、リノレート、リノレエート、ステアレート、ラウリルサルフェート、テトラアセチルサルフェート、ドキュセート、ラウロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、及びそれらの塩およびそれらの混合物。
【0027】
(d)疎水性界面活性剤
アルコール;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;脂肪酸;胆汁酸;グリセロール脂肪酸エステル;アセチル化グリセロール脂肪酸エステル;低級アルコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリド;モノ/ジグリセリドの乳酸エステル;プロピレングリコールジグリセリド;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;エステル交換された植物油;ステロール;砂糖エステル;砂糖エーテル;スクログリセリド;ポリオキシエチレン植物油;ポリオキシエチレン水素化植物油;ポリオールと脂肪酸、グリセリド、植物油、水素化植物油およびステロールから成る群の少なくとも1種との反応混合物;及びそれらの混合物。
【0028】
疎水性界面活性剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。
ミリスチン酸;オレイン酸;ラウリン酸;ステアリン酸;パルミチン酸;PEG 1-4 ステアリン酸エステル; PEG 2-4 オレイン酸エステル; PEG-4 ジラウリン酸エステル; PEG-4 ジオレイン酸エステル; PEG-4 ジステアリン酸エステル; PEG-6ジオレイン酸エステル; PEG-6 ジステアリン酸エステル; PEG-8 ジオレイン酸エステル; PEG 3-16 ヒマシ油; PEG 5-10 水素化ヒマシ油; PEG 6-20コーン油; PEG 6-20 アーモンド油; PEG-6オリーブ油; PEG-6ピーナッツ油; PEG-6 パーム核油; PEG-6 水素化パーム核油; 植物油及びソルビトールのPEG-4 カプリック/カプリリックグリセリドモノ,ジ,トリ,テトラエステル;ペンタエリスリチルジ,テトラステアリン酸エステル、イソステアリン酸エステル;オレイン酸エステル;カプリレン酸エステル又はカプリン酸エステル;ポリグリセリル2-4 オレイン酸エステル, ステアリン酸エステル又はイソステアリン酸エステル; ポリグリセリル4-10 ペンタオレイン酸エステル; ポリグリセリル-3 ジオレイン酸エステル; ポリグリセリル-6ジオレイン酸エステル; ポリグリセリル-10トリオレイン酸エステル; ポリグリセリル-3 ジステアリン酸エステル; C.sub.6 からC.sub.22 脂肪酸のプロピレングリコールモノ又はジエステル;C.sub.6からC.sub.22脂肪酸のモノグリセリド; C.sub.6 からC.sub.22脂肪酸のアセチル化モノグリセリド; C.sub.6からC.sub.22脂肪酸のジグリセリド;モノグリセリドの乳酸エステル;ジグリセリドの乳酸エステル;コレステロール;フィトステロール; PEG 5-20 醤油ステロール;PEG-6 ソルビタンテトラ,ヘキサステアリン酸エステル; PEG-6ソルビタンテトラオレイン酸エステル; ソルビタンモノラウリン酸エステル;ソルビタンモノパルミチン酸エステル;ソルビタンモノ,トリオレイン酸エステル;ソルビタンモノ,トリステアリン酸エステル; ソルビタンモノイソステアリン酸エステル; ソルビタンセスクオレイン酸エステル;ソルビタンセスクステアリン酸エステル; PEG 2-5オレイルエーテル; POE 2-4 ラウリルエーテル; PEG-2セチルエーテル; PEG-2ステアリルエーテル;スクロースジステアリン酸エステル;スクロースジパルミチン酸エステル;オレイン酸エチル;ミリスチン酸イソプロピル;パルミチン酸イソプロピル;リノレイン酸エチル;リノレイン酸イソプロピル;ポロキサマー; コール酸;ウルソデオキシコール酸;グリココール酸;タウロコール酸; リゾコール酸;デオキシコール酸;ケノデオキシコール酸;およびそれらの混合物。
【0029】
本発明で用いることができる界面活性剤のさらなる具体例としては以下のものが挙げられる。
水不混和性トリグリセリド植物油(ベニバナ油、ゴマ油、コーン油、ひまし油、ココナッツ油、綿実油、大豆油、オリーブ油など;水不混和性精製及び合成及び半合成油(例えば、鉱油)、MIGLYOL.RTMとして既知のトリグリセリド(カプリル酸/カプリン酸のトリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸のトリグリセリド、トリオレイン等の長鎖トリグリセリド、室温で液体である他の混合鎖トリグリセリド、モノグリセリド、ジグリセリド、及びモノ、ジ、及びトリグリセリドの混合物を含む);脂肪酸およびエステル;水溶性アルコール、グリセリン及びプロピレングリコール;PEG-400などの常温で液体である水混和性ポリエチレングリコール。
【0030】
市販品としては、コーン油、プロピレングリコール、CREMOPHOR RH-40 (ポリオキシ-40水素化ひまし油)、LABRAFIL M 2125 (リノレオイルポリオキシ-6グリセリド)及び1944 (オレオイルポリオキシ-6 グリセリド)、エタノール、PEG 400、Polysorbate 80、グリセリン、ペパーミント油、大豆油(長鎖トリグリセリド)、ゴマ油 (長鎖トリグリセリド)、プロピレンカーボネート、及びトコフェロイルTPGS、MIGLYOL 812 (カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)、オレイン酸、オリーブ油(長鎖トリグリセリド)、CAPMUL MCM (中鎖モノグリセリド)、CAPMUL PG-8 (プロピレングリコールカプリリルモノ及びジグリセリド)、CREMOPHOR EL (ポリオキシ 35 ひまし油)、LABRASOL (カプリロカプロイルポリオキシ-8 グリセリド)、トリアセチン(アセチルトリグリセリド), MAISINE 35-1 (グリセリルモノリノレイン酸), OLICINE (グリセリルモノオレイン酸エステル/リノール酸エステル), PECEOL (グリセリルモノオレイン酸エステル), TRANSCUTOL P (ジエチレングリコールモノエチルエーテル), PLUROL Oleique CC (ポリグリセリル-6ジオレイン酸エステル), LAUROGLYCOL 90 (プロピレングリコールモノラウリン酸エステル), CAPRYOL 90 (プロピレングリコールモノカプリル酸), MYVACETS (アセチル化モノグリセリド), ARLACELS (ソルビタン脂肪酸エステル), PLURONICS (プロピレン及びエチレンオキシドのコポリマー), BRIJ 30 (ポリオキシエチレン4ラウリルエーテル), GELUCIRE 44/14 (ラウロイルポリオキシル-32グリセリド)、及びGELUCIRE 33/01 (脂肪酸のグリセロールエステル)などが挙げられる。
【0031】
市販の界面活性剤の他の具体例としては、塩化ベンゼタニウム(HYAMINE.RTM. 1622, Lonza, Inc., Fairlawn, N.J.); DOCUSATE SODIUM (Mallinckrodt Spec. Chem., St. Louis, Mo.); ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(TWEEN.RTM., ICI Americas Inc., Wilmington, Del.); LIPOSORB.RTM. P-20 (Lipochem Inc., Patterson N.J.); CAPMUL.RTM. POE-0 (Abitec Corp., Janesville, Wis.)などが挙げられる。
【0032】
(2)多孔性吸着剤
本発明で用いることができる多孔性吸着剤は、界面活性剤を吸着して固形化できるものであれば特に限定されないが、例えば、多孔性のケイ酸金属塩、多孔性のメタケイ酸金属塩、又は多孔性のリン酸金属塩などを使用することができる。多孔性吸着剤の具体例としては、フローライトRE(多孔性ケイ酸カルシウム)又はノイシリン(メタケイ酸アルミン酸マグネシウムのタイプFH1, FH2, FL1, FL2, S1, S2, SG1, SG2, NFL2N, NS2N, UFL2, US2)が挙げられる。
【0033】
フローライトREとは(株)エーザイの製品であり、多孔性のケイ酸カルシウムであり、賦形剤・結合剤・崩壊剤・吸着粉末化剤として錠剤・散剤・顆粒剤・カプセル剤などの品質改善に用いられている。また、ノイシリンとは富士化学工業(株)の製品であり、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよびケイ酸アルミン酸マグネシウムの医薬品用製品(FH1, FH2, FL1, FL2, S1, S2, SG1, SG2, NFL2N, NS2N, UFL2, US2)で、同様に、賦形剤・結合剤・崩壊剤・吸着粉末化剤として錠剤・散剤・顆粒剤・カプセル剤などの品質改善に用いられている。
【0034】
多孔性吸着剤としては、化学的に処理を施すことにより界面活性剤に対する吸着力を保持しつつ有効成分薬物に対する吸着力を低下させた多孔性吸着剤を用いることもできる。化学的処理としては、吸着させようとする薬物分子に存する官能基に類似した化合物を用いて予め吸着剤を処理し、薬物分子の吸着部位を他の化合物で飽和させておく方法が好ましい。
【0035】
本発明において、フローライト又はノイシリンなどの多孔性吸着剤と、界面活性剤との配合比は特に限定されないが、一般的には1:10〜30であり、望ましくは1:1〜3である。
【0036】
(3)有効成分薬物
本発明で用いる有効成分薬物の種類は特に限定されず、任意の薬物を使用することができる。好ましくは、水溶性又は脂溶性の難・低吸収性薬物である。水溶性又は脂溶性の難・低吸収性薬物の具体例としては、アミノグリコシド系抗生物質・ペニシリン系抗生物質・セファロスポリン系抗生物質・セフェム系抗生物質、バンコマイシンなどのペプチド系抗生物質、アシクロビルなどの抗ウイルス薬、インスリン・カルシトニン・インターフェロン・各種のインタロイキン類・バソプレッシンとその誘導体・顆粒球増殖因子G-CSF・エリスロポエチンなどの蛋白ペプチド性薬、ペンタサッカライドなどが挙げられる。これらの水溶性の難・低吸収性薬物はin vitroの薬理実験においては極めて強力な活性を有する化合物であるものの、in vivoにおいては経口投与後の消化管からの吸収率が低いために弱い薬効しか示すことができない。しかし、これらの薬物は臨床においては必須の薬物であり、経口製剤化が強く望まれている。本発明によれば、これらの既存および新規の化合物ならびに薬物のバイオアベイラビリティを改善した経口固形製剤を開発することができる。即ち、本発明で用いる有効成分薬物は、上記した代表的な水溶性の難・低吸収性薬物にとどまらず、他の水溶性の難・低吸収性薬物あるいは今後開発されてくる当該薬物ならびに薬物候補化合物をも包含する。
【0037】
本発明で用いることができる有効成分薬物としては、上記に挙げたものの他にも以下の薬剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アドレナリン作用薬(エフェドリン、デスオキシフェネドリン、フェニレフリン、エピネフリンなど);
コリン作動薬(フィゾスチグミン、ネオスチグミンなど);
鎮痙薬(アトロピン、メタンテリン、パパベリンなど);
鎮痛剤及び筋肉弛緩剤(フルフェナジン、クロルプロマジン、トリフルプロマジン、メフェネシン、メプロバメートなど);
抗うつ剤(アミトリプチリン、ノルトリプチリンなど);
抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート、トリペレナミン、ペルフェナジン、クロロプロフェナジン、クロロプロフェンピラジミンなど);
血圧降下剤(ラウオルフィア、レセルピンなど);
心臓作用薬(ベンドロフルメチアジド、フルメチアジド、クロロチアザイド、アミノトレート、プロプラノロール、ナドロール、プロカインアミドなど);
アンギオテンシン転化酵素阻害剤(カプトプリル及びエナラプリルなど);
気管支拡張薬(テオフィリンなど);
ステロイド(テストステロン、プレドニソロンなど);
抗菌剤(スルホンアミド、例えば、スルファジアジン、スルファメラジン、スルファメタジン、スルフィソキサゾールなど);
抗マラリア薬(クロロキンなど);
抗生物質(テトラサイクリン、ナイスタチン、ストレプトマイシン、セフラジン、及び他のセフロスポリン、ペニシリン、半合成ペニシリン、グリセオフルビンなど);
鎮静薬(抱水クロラール、フェノバルビタール及び他のバルビツール酸塩、グルテチミド);
抗結核薬(イソニアジドなど)
鎮痛薬(アスピリン、アセトアミノフェン、フェニルブタゾン、プロポキシフェン、メタドン、メペリジンなど)
【0038】
本発明の固形化製剤における有効成分薬物の含有量は特に限定されないが、一般的には0.1〜50重量%程度である。
【0039】
(4)配合及び製剤化
本発明の固形化製剤は、例えば、界面活性剤と有効成分薬物とを含む溶液と、多孔性吸着剤とを混合して固形化することによって製造することができる。この場合、有効成分薬物は、界面活性剤との混液として多孔性吸着剤と混合される。界面活性剤と有効成分薬物とを含む溶液を作製する際には、水やエタノールなどの適当な溶媒に有効成分薬物を溶解した後に、界面活性剤と混合することができる。
【0040】
あるいはまた、本発明の固形化製剤は、界面活性剤溶液と多孔性吸着剤とを混合して固形化した後に、粉末状態の有効成分薬物を添加することによっても製造することができる。
【0041】
上記のようにして固形化した製剤はそのまま患者に投与することもできるが、製剤分野で公知の種々の製剤形態に調製後、患者に投与することができる。即ち、本発明の固形化製剤は、医薬上許容される賦形剤、担体及び希釈剤などの製剤助剤を適宜用いて、常法によりカプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤又は粉体製剤などの製剤として利用できる。例えば、カプセル剤、錠剤、散剤、又は顆粒剤などの固体製剤の製造の場合には、必要に応じて、乳糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニットなどの賦形剤、澱粉、アルギン酸ソーダなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤などを用いることができる。
【0042】
本発明の固形化製剤の投与方法、投与量及び投与回数は、患者の年齢、体重及び症状に応じて適宜選択できるが、通常、難溶性薬剤が薬効を発揮しうる量を1日、1回から数回に分割して投与することが好ましい。たとえば、薬剤がゲンタマイシンの場合、1日当たり1〜100mg/kgを1回から数回に分割して投与すればよい。
本発明を以下の実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0043】
【実施例】
実施例1
精製水100μlにゲンタマイシン硫酸塩 37.15mg(ゲンタマイシン 25mg)を溶解させる。そこにラブラゾール 300μlを加えて透明な液とする。得られた液とFlorite−RE(エーザイ、特殊ケイ酸カルシウム)100mgとを混合し、固形化を行う。約13等分して、各々を棒状に成形した後、HP55にて調製した腸溶性フィルム(サイズは2.5cm×0.7cm)で包み、ラット用製剤とする。ゲンタマイシンの投与量は 5mg/kg。
【0044】
(評価)
体重約361±39gのWistar系雄性ラットにペントバルビタール麻酔下、開腹手術を施し、頸静脈よりブランク血液を採取した後、上記製剤を回腸内に投与した。その後、30分、1時間、2時間、3時間、4時間後に頚静脈から採血を行い、血漿中のゲンタマイシン濃度をポストラベル化蛍光HPLC法にて測定した。以下、血漿中ゲンタマイシン濃度の3例の平均値±SEであらわす(単位はμg/ml)。
0(ブランク)、1.00±0.68 (30分後)、1.50±0.55 (1時間後)、2時間目以降はすべて検出限界以下の値であった。
なお、ゲンタマイシン原末を充填した対照群用製剤を投与した群では血漿中ゲンタマイシン濃度はいずれのサンプルも検出限界以下であった。
【0045】
実施例2
精製水200μlにゲンタマイシン硫酸塩 74.29mg(ゲンタマイシン 50mg)を溶解させる。そこにラブラゾール 600μlを加えて透明な液とする。得られた液とFlorite−RE(エーザイ、特殊ケイ酸カルシウム)100mgとを混和し、腸溶性ポリマーであるEudragit S100にて調製したカプセルに入れることによりビーグル犬用の製剤とする。
【0046】
(評価)
雄性ビーグル犬(体重約10.3から12.8kg)の頸静脈からブランク血液を採取した後、上記で作製した試験製剤を経口投与し、その後、30分、1時間、2時間、3時間、4時間後に頚静脈から採血を行い、血漿中のゲンタマイシン濃度をポストラベル化蛍光HPLC法にて測定した。以下、血漿中ゲンタマイシン濃度の3例の平均値±SEであらわす(単位はμg/ml)。
0(ブランク)、0.30±0.12 (30分)、0.56±0.09 (1時間)、0.42±0.02(2時間)、0.29±0.02 (3時間)、0.25±0.04(4時間)、5時間目以降はすべて検出限界以下の値であった。
なお、ゲンタマイシン原末を充填した対照群用製剤を投与した群では血漿中ゲンタマイシン濃度はいずれのサンプルも検出限界以下であった。
【0047】
実施例3
Florite−RE(エーザイ、特殊ケイ酸カルシウム)200mgにセルロースファイバー 100mgを加え、蒸留水100mlにて分散させる。ブフナーロートに濾紙を敷き濾過する。濾過後、濾紙から離して50℃にて乾燥し、Florite−RE(エーザイ、特殊ケイ酸カルシウム)およびセルロースからなる混合吸着紙を調製する。混合吸着紙を切断して、幅7mm、長さ2.5cmの短冊6片を調製する。6片の各々をサージカルテープ(3M社製BD12D)に貼り付ける。サージカルテープの余った分を切断して除去する。精製水200μlにゲンタマイシン硫酸塩 74.29mg(ゲンタマイシン 50mg)を溶解させる。そこにラブラゾール 600μlを加えて透明な液とする。得られた液を、前述の短冊状に成形した吸着剤に染み込ませる。これをオイドラギットS100にて調製した腸溶性フィルム、幅1.8cm、長さ2.8cm、で包み、濃厚オイドラギットS100液を塗布してラップする。ゼラチンカプセルに入れて製剤とする。ビーグル犬1頭あたり6カプセルを投与する。
【0048】
(評価)
雄性ビーグル犬(体重約10.3〜12.8kg)の頸静脈からブランク血液を採取した後、試験製剤を経口投与し、その後、 1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間後に頚静脈から採血を行い、血漿中のゲンタマイシン濃度をポストラベル化蛍光HPLC法にて測定した。以下、血漿中ゲンタマイシン濃度の3例の平均値±SEであらわす(単位はμg/ml)。
0(ブランク), 0(1時間), 0.1±0.07(1.5時間), 0.18±0.06(2時間), 0.50±0.05(3時間),0.19±0.03 (4時間)
対照製剤としてはゲンタマイシン原末をゼラチンカプセルに充填して投与したが、血中ゲンタマイシン濃度は測定限界以下の値であった。
【0049】
実施例4
Florite−RE(エーザイ、特殊ケイ酸カルシウム)200mgにセルロースファイバー100mgを加え、蒸留水100mlにて分散させる。ブフナーロートに濾紙を敷き、濾過する。濾過後、濾紙から分離して50℃にて乾燥し、Florite−RE(エーザイ、特殊ケイ酸カルシウム)およびセルロースからなる混合吸着紙を調製する。混合吸着紙を切断して、幅7mm,長さ2.5cmの短冊6片を調製する。6片の各々をサージカルテープ(3M社製BD12D)に貼り付ける。サージカルテープの余った分を切断して除去する。精製水300μlにペンタサッカライド(シグマ社製) 500μgを溶解させる。そこにラブラゾール 300μlを加えて透明な液とする。得られた液を、前述の短冊に成形した吸着剤に染み込ませる。これをオイドラギットS100にて調製した腸溶性フィルム、幅1.8cm、長さ2.8cm、で包み、濃厚オイドラギットS100液を塗布してシールする。ゼラチンカプセルに入れて製剤とする。
【0050】
実施例5
ランソプラゾール25mgおよびHCO-60 100mgにアセトン5mlを加え溶解する。攪拌下、炭酸カリウム25mgおよびFlorite−RE(エーザイ、特殊ケイ酸カルシウム)100 mgを徐々に加え、60℃に加温しながらよく混和する。減圧下、アセトンを留去する。室温にもどした後、棒状に整形する。ラット体重1kgあたり90mgの固形製剤とする。
【0051】
(評価)ラット吸収実験
体重約373±31gのWistar系雄性ラットにペントバルビタール麻酔下、開腹手術を施し、頸静脈よりブランク血液を採取した後、上記製剤を十二指腸内に投与した。その後、30分, 1時間, 1.5時間, 2時間, 3時間, 4時間, 5時間後に頚静脈から採血を行い、血漿中のランソプラゾール濃度をHPLC法にて測定した。以下、血漿中ランソプラゾール濃度の3例の平均値±SEであらわす(単位はμg/ml)。0(ブランク)、0.420±0.070(30分)、0.288±0.062(1時間)、0.184±0.049(1.5時間)、0.100±0.036(2時間)、0(3時間)、0(4時間)、0(5時間)
対照群としてランソプラゾール原末を同じ投与量を同様の投与法にてラットに投与したが、血中ランソプラゾール濃度は測定限界以下の値であった。
【0052】
実施例6
ランソプラゾール25mgおよびHCO-60 100mgにアセトン5mlを加え溶解する。攪拌下、炭酸カリウム25mg、およびノイシリンUS2 100 mg を徐々に加え、60℃に加温しながらよく混和する。減圧下、アセトンを留去する。室温にもどした後、棒状に整形する。ラット体重1kgあたり90mgの固形製剤とする。
【0053】
(評価)ラット吸収実験
体重約391±29gのWistar系雄性ラットにペントバルビタール麻酔下、開腹手術を施し、頸静脈よりブランク血液を採取した後、上記製剤を十二指腸内に投与した。その後、30分, 1時間, 1.5時間, 2時間, 3時間, 4時間, 5時間後に頚静脈から採血を行い、血漿中のランソプラゾール濃度をHPLC法にて測定した。以下、血漿中ランソプラゾール濃度の3例の平均値±SEであらわす(単位はμg/ml)。
0(ブランク)、0.446±0.123(30分)、0.584±0.153(1時間)、0.287±0.089(1.5時間)、0.169±0.049(2時間)、0(3時間)、0(4時間)、0(5時間)
【0054】
実施例7
精製水150μlにセファゾリンナトリウム 25mgを溶解させた後、ラブラゾール 450μlを加えて透明な液とする。次にFlorite−RE(エーザイ、特殊ケイ酸カルシウム)75mgを混和し、固形化する。約13等分して、各々を棒状に成形した後、HP55にて調製した腸溶性フィルム(サイズは1.0cm x 1.0cm)で包み、ラット用製剤とする。セファゾリンナトリウムのラットへの投与量は 5mg/kg。
【0055】
(評価)ラット吸収実験
体重約353±33gのWistar系雄性ラットにペントバルビタール麻酔下、開腹手術を施し、ブランク血液を採取した後、上記製剤を十二指腸内に投与した。その後、30分, 1, 1.5, 2, 3, 4, 5時間後に頚静脈から採血を行い、血漿中のセファゾリン濃度をHPLC法にて測定した。以下、血漿中のセファゾリン濃度の3例の平均値±SEであらわす(単位はμg/ml)。
0(ブランク)、1.54±0.14(30分)、1.18±0.08(1時間)、1.25±0.14(1.5時間)、1.32±0.21(2時間)、1.29±0.18(3時間)、1.40±0.16(4時間)、1.41±0.21(5時間)
対照群としてセファゾリンナトリウム原末を同じ投与量で同様の投与法にてラットに投与したが、血中にセファゾリン濃度は測定限界以下の値であった。
【0056】
実施例8
タクロリムス10mgにエタノール1mlを加え溶解する。Labrasol 150mgを加え混和した後、減圧下、Florite−RE(エーザイ、特殊ケイ酸カルシウム)50 mgを加えよく混和することにより固形剤とする。
【0057】
実施例9
シクロスポリン100mgにエタノール10mlを加え溶解する。Labrasol 500mgを加え混和した後、減圧下、エタノールを留去する。Florite−RE(エーザイ、特殊ケイ酸カルシウム) 300 mgを加えよく混和することにより固形剤とする。
【0058】
実施例10
ネルフィナビル100mgにエタノール20mlを加え溶解する。Labrasol 500mgを加え混和した後、減圧下、エタノールを留去する。Florite−RE(エーザイ、特殊ケイ酸カルシウム)400 mgを加えよく混和することにより固形剤とする。
【0059】
実施例11
リトナビル100mgにエタノール20mlを加え溶解する。Labrasol 500mgを加え混和した後、減圧下、エタノールを留去する。Florite−RE(エーザイ、特殊ケイ酸カルシウム)400 mgを加えよく混和することにより固形剤とする。
【0060】
実施例12
pH7.4のリン酸緩衝液0.4mlにインスリンナトリウム塩(アルドリッチ社製)の1.0mgを溶解させた後、ラブラゾール480μlを加えて透明な液とする。次にFlorite−RE(エーザイ、特殊ケイ酸カルシウム)120mgを混和し、固形化する。約10等分して、各々を棒状に成形した後、HP55にて調製した腸溶性フィルム(サイズは2.5cm x 0.7cm)で包み、ラット用製剤とする。インスリンの投与量は 5 IU/kg。
【0061】
(評価)ラット吸収実験
体重約323±38gのWistar系雄性ラットをペントバルビタール麻酔下、手術台に固定する。ブランク血液を頸静脈より採取した後、上記製剤を直腸内に投与した。その後、30分, 1時間, 1.5時間, 2時間, 3時間, 4時間後に頚静脈から採血を行い、血清中グルコース濃度をグルコースB-テストワコー(和光純薬)を用いて測定した。以下、血清中グルコース濃度(mg/dl)の時間的な推移を示す。
106.7(ブランク), 81.8 (0.5時間), 85.5 (1時間), 92.0 (1.5時間), 103.7 (2時間), 106.0 (3時間), 109.0 (4時間)
【0062】
実施例13
リン酸緩衝液(pH6.86)の10mlもしくは飽和硫酸マグネシウム水溶液を2倍に希釈した溶液10mlにノイシリンUS2 1.0gを加え、室温において終夜撹拌する。遠心分離後、上清を捨て、蒸留水10mlを加えて攪拌する。遠心分離後、上清を捨て、再度、蒸留水10mlを加えて攪拌する。この洗浄操作を合計3回行う。得られたノイシリンを60°Cで1時間乾燥させ、さらに、8時間減圧乾燥させて、修飾ノイシリンとする。
【0063】
修飾ノイシリン20mgにラブラゾール 20μl を加える。得られた粉末に、ペンタサッカライド(シグマ社製) 500μg を加え、混和する。棒状に成形した後、HP55にて調製した腸溶性フィルム(サイズは2.5cm x 0.7cm)で包み製剤とする。
【0064】
実施例14
酢酸セルロース4gとHP−55 4gをアセトン32mlにて溶解する。100μmのクリアランスを有するベーカーアプリケーターを用いてガラス板上に伸展することにより、膜厚約50μmの難水溶性ポリマー混合フィルムを作成する。オイドラギット L100の9g およびタルク0.9gをアセトン30mlにて溶解する。同様のアプリケーターを用いてガラス板上に伸展することにより、膜厚約50μmの腸溶性ポリマーフィルムを作成する。
【0065】
Florite−RE(エーザイ、特殊ケイ酸カルシウム)20mgにラブラゾール 140 mgを加えて混和して得られる粉末にペンタサッカライド(シグマ社製)500μgおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LHPC)5mgを加え、混和する。この粉末85mgをハンドプレス(島津製作所SSP-10A)でペレットにする。得られたペレットを直径2mmのパンチャーで打ち抜くことによりディスクにする。ディスク1つあたりの重量は約2mg。
【0066】
混合フィルムに直径3mm深さ1.5mmのディンプルを形成する。ディンプルに15%HPMC(6cps)水溶液を塗布し、調製したディスクを置き、60℃のオーブンに1時間入れ、水分を蒸発させる。調製した腸溶性フィルムをかぶせてリング状にヒートシールする。これを直径5mmのパンチャーで打ち抜くことによりパッチを調製する。HP-55にて調製した#000のサイズの腸溶性カプセルにパッチを入れ製剤とする。
【0067】
【発明の効果】
自己微少乳化型界面活性剤であるラブラゾール(C6-18脂肪酸のグリセロールエステルとC6-18脂肪酸のマクロゴールエステルとのエステル混合物)などは水溶性の難・低吸収性薬物に対する優れた吸収促進剤であるが、常温で液体であるため経口固形製剤化に困難をともなっていた。自己微少乳化型界面活性剤を固形化することができれば、難・低吸収性薬物の経口製剤化を行う場合に、一層の進展が期待される。そこで、自己微少乳化型界面活性剤に対してフローライトRE・ノイシリン・多孔性リン酸カルシウムなどの多孔性吸着剤もしくは化学的処理を施した多孔性吸着剤を配合することにより吸収促進効果を維持しつつ容易に自己微少乳化型界面活性剤系を固形化する方法を確立した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤、多孔性吸着剤、及び有効成分薬物を含む固形化製剤。
【請求項2】
界面活性剤と有効成分薬物とを含む溶液と、多孔性吸着剤とを混合して固形化して得られる、請求項1に記載の固形化製剤。
【請求項3】
界面活性剤が液状の自己微少乳化型界面活性剤である、請求項1又は2に記載の固形化製剤。
【請求項4】
界面活性剤が、C6-18脂肪酸のグリセロールエステルとC6-18脂肪酸のマクロゴールエステルとのエステル混合物(ラブラゾール)、ポリソルベート80、モノオレイン酸、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、中鎖脂肪酸トリグリセライド、又はレシチンである、請求項1から3の何れかに記載の固形化製剤。
【請求項5】
多孔性吸着剤が、多孔性のケイ酸金属塩、多孔性のメタケイ酸金属塩、又は多孔性のリン酸金属塩である、請求項1から4の何れかに記載の固形化製剤。
【請求項6】
多孔性吸着剤が、フローライトRE(多孔性ケイ酸カルシウム)又はノイシリン(メタケイ酸アルミン酸マグネシウムのタイプFH1, FH2, FL1, FL2, S1, S2, SG1, SG2, NFL2N, NS2N, UFL2, US2)である、請求項1から5の何れかに記載の固形化製剤。
【請求項7】
化学的に処理を施すことにより界面活性剤に対する吸着力を保持しつつ有効成分薬物に対する吸着力を低下させた多孔性吸着剤を用いる、請求項1から6の何れかに記載の固形化製剤。
【請求項8】
有効成分薬物が、水溶性又は脂溶性の難・低吸収性薬物である、請求項1から7の何れかに記載の固形化製剤。
【請求項9】
水溶性又は脂溶性の難・低吸収性薬物がアミノグリコシド系抗生物質・ペニシリン系抗生物質・セファロスポリン系抗生物質・セフェム系抗生物質、ペプチド系抗生物質、抗ウイルス薬、蛋白・ペプチド性薬物、ペンタサッカライド、HIVプロテアーゼ阻害薬、免疫抑制薬、抗カビ剤、又は制癌剤などである、請求項1から8の何れかに記載の固形化製剤。
【請求項10】
界面活性剤を含む溶液と多孔性吸着剤とを混合すること含む、請求項1から9の何れかに記載の固形化製剤の製造方法。

【公開番号】特開2006−56781(P2006−56781A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−331549(P2002−331549)
【出願日】平成14年11月15日(2002.11.15)
【出願人】(502414389)株式会社バイオセレンタック (24)
【Fターム(参考)】