説明

異常履歴保持装置

【課題】二次電池における過放電等の異常履歴を、簡便な構成で確実に記録かつ保持できる二次電池の異常履歴保持装置の提供。
【解決手段】本発明の異常履歴保持装置1は、二次電池E0の出力に基づいて前記二次電池E0の異常を検出し、その検出結果を出力する異常検出回路2と、前記検出結果に応じて導通するスイッチング素子S1と、前記スイッチング素子S1が導通した時に、前記二次電池E0から放電電流I1が流れて発熱する発熱素子3と、前記発熱素子3からの熱を受けて溶断される温度ヒューズ4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の異常履歴保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の二次電池(充電式電池)は、自動車、パーソナルコンピュータ等の種々の装置に搭載され、それらの電源として利用されている。このような二次電池の中には、例えば、航空機システム等におけるバックアップ用電源として利用されるものもある。この種の電源は、主電源が利用できない場合に、確実に電力を供給できるものでなければならないから、特に高い信頼性が求められている。
【0003】
ところで、二次電池は、許容される終止電圧(放電終止電圧)を超えて放電する(つまり、過放電する)と、液漏れ、内部物質の析出等が発生し、その性能が著しく低下することが知られている。一旦、過放電して劣化した二次電池は、一般的に、過放電前の状態に復元させることは難しい。特にリチウムイオン電池はこの問題が顕著である。そのため、過放電によって劣化した二次電池は、別の新たな二次電池に取換えられることが好ましい。特にバックアップ用電源、とりわけ航空、宇宙及び海洋システムのバックアップ用電源として利用されるものについては、高い信頼性が求められているため、過放電が発生した場合には必ず交換することが望まれる。
【0004】
なお、交換対象である二次電池及びその周辺回路等に、過放電記録(履歴)が確実な形で保存されていれば、二次電池の交換必要性等を判断し易い。
【0005】
特許文献1には、過放電保護回路を利用して二次電池を過放電から保護する技術が記載されている。過放電保護回路が、二次電池の出力電圧に基づいて過放電を検出し、その結果をスイッチング素子に出力すると、その検出結果に基づいてスイッチング素子のオン状態とオフ状態とが切換えられる。このスイッチング素子は、二次電池の出力端子間において二次電池と直列に接続されており、上記のように過放電が検出されるとオフ状態となる。スイッチング素子がオフ状態となると、二次電池の放電が禁止され、二次電池が過放電から保護される。更に、特許文献1に記載の二次電池は、放電禁止後、二次電池の出力電圧が回復すれば、再び放電を開始できるように構成されている。そして、二次電池の放電禁止及び放電再開が繰り返されることによって、使用者が二次電池の過放電状態を把握できるように構成されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、二次電池及びその周辺回路等において過放電履歴が残らない。そのため、過放電事後が起こった後では、二次電池の周辺回路等に基づいて、その二次電池において過放電が発生したか否かを把握できない。もっとも、スイッチング素子が一度でもオフ状態になったことを検出し、これをメモリーに記憶して過放電の履歴を残すことも考えられるが、電子的記憶は信頼性に乏しく、何らかの原因でシステムへの電力供給が途絶えた場合などには電子的記憶が失われることもある。
【0007】
また、特許文献1に記載の技術は、例えば、過放電した場合であっても放電を停止できない電源(例えば、バックアップ用電源)には、適用できない。つまり、特許文献1に記載の技術では、過放電が発生したことを、負荷に対する二次電池の放電を停止させることなく使用者に報知できない。
【0008】
なお、特許文献2には、二次電池の過放電履歴ではないものの、制御装置内の熱履歴を、電流ヒューズを利用して記録する技術が記載されている。しかしながら、電流ヒューズの溶断時間は、長くて数百ミリ秒程度である。そのため、電流ヒューズを使用したものでは、万一、例えば外部ノイズに起因してスイッチング素子が短時間でも誤作動した場合(回路が誤検出した場合)には、直ちに溶断してしまうため、履歴記録の信頼性を十分に高めることができない。
【0009】
なお、電流ヒューズであっても、定格電流以上でありかつ溶断電流以下での使用であれば、溶断時間を長くすることは可能である。しかしながら、1秒以上の長い溶断時間を精度よく制御することは難しく、そのため、電流ヒューズを用いると、実使用上の機能を保証することは困難となる。
【0010】
また、電流ヒューズを溶断させるためには、通常は、1A以上の電流を流す必要がある。そのため、過放電している二次電池からは、ヒューズを溶断するために必要な電流を供給することが難しい場合がある(例えば、小容量の二次電池を使用する場合)。また、1A以上の電流を流すためのプリント基板回路パターンが大がかりになってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−104876号公報
【特許文献2】特開2008−305286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、二次電池における過放電等の異常履歴を、簡便な構成で確実に記録でき、かつ確実に保持できる二次電池の異常履歴保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る二次電池の異常履歴保持装置は、二次電池の出力に基づいて前記二次電池の異常を検出し、その検出結果を出力する異常検出回路と、前記検出結果に応じて導通するスイッチング素子と、前記スイッチング素子が導通した時に、前記二次電池から放電電流が流れる発熱素子と、前記発熱素子から熱を受けて溶断される温度ヒューズと、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の異常履歴保持装置において、異常検出回路が、二次電池の出力に基づいて前記二次電池の異常を検出すると、その検出結果がスイッチング素子へ出力される。その検出結果に応じてスイッチング素子は導通(ターンオン)する。導通後、発熱素子に前記二次電池から放電電流が流れて前記発熱素子が発熱する。そして、温度ヒューズは、前記発熱素子からの熱を受けて溶断される。
【0015】
本発明の異常履歴保持装置によれば、二次電池の異常履歴を、温度ヒューズの溶断という簡便な方法によって確実に記録でき、かつ保持できる。また、温度ヒューズを使用しているから、仮にスイッチング素子がパルス的に導通するような誤作動を発生させたとしても、温度ヒューズは直ちに溶断せず、誤った履歴が記録されてしまうことはない。なお、二次電池の異常としては、例えば、過放電、過電圧、逆接続等の不正使用等が挙げられる。
【0016】
前記異常履歴保持装置において、前記異常検出回路は、例えば、前記二次電池の出力電圧に基づいて前記二次電池の過放電を検出し、その検出結果を出力する過放電検出回路からなる。前記異常履歴保持装置がこのような構成であれば、二次電池の過放電履歴を、温度ヒューズの溶断という簡便な方法によって確実に記録できかつ保持できる。
【0017】
前記異常履歴保持装置において、前記温度ヒューズの溶断を検出して外部へ報知する溶断検出回路を設けることが好ましい。これにより使用者に対して、二次電池における過放電等の異常を報知できる。
【0018】
前記異常履歴保持装置において、温度ヒューズは二次電池からの熱的影響を抑えて設けられることが好ましい。そうすると、二次電池の温度上昇によって誤った履歴が記録されてしまうこともなく、総じて、異常履歴の記録の信頼性を高くすることができる。
【0019】
前記異常履歴保持装置において、前記温度ヒューズと前記二次電池とが互いに接触しないように離れて配置されることが好ましい。前記異常履歴保持装置がこのような構成であれば、前記温度ヒューズは、前記二次電池から発せられた熱を受けて溶断されることが抑制される。
【0020】
前記異常履歴保持装置において、前記温度ヒューズが基板上に実装され、前記基板が二次電池との間に隙間が形成されるように配置されることが好ましい。前記異常履歴保持装置がこのような構成であれば、前記二次電池と前記温度ヒューズが実装された基板との間に隙間が設けられるため熱が伝わり難くなり、その結果、前記温度ヒューズが前記二次電池から発せられた熱を受けて溶断されることが抑制される。
【0021】
なお、温度ヒューズを二次電池からの熱的影響を抑えて設けるためには、上記のように、温度ヒューズが二次電池に直接に接触しないように配置してもよく、或いは二次電池との間に断熱材を介するように配置してもよく、要は、二次電池からの熱がスイッチング素子の導通時に発熱する発熱素子からの熱による温度ヒューズの溶断に影響を与えないように配置すればよい。
【0022】
前記異常履歴保持装置は、前記二次電池の周囲温度低下に応じて、前記温度ヒューズの溶断時間が長くなることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る二次電池の異常履歴保持装置によれば、二次電池における過放電等の異常履歴を、簡便な構成で確実に記録でき、かつ確実に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係る異常履歴保持装置の構成を表すブロック図
【図2】電池パックを示す斜視図
【図3】図2に示される電池パックの側面図
【図4】基板上に温度ヒューズ等が実装された異常履歴保持装置の一部分を模式的に表した平面図
【図5】第2実施形態に係る異常履歴保持装置の構成を表すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る二次電池の異常履歴保持装置を、図1を参照しつつ説明する。図1に示される異常履歴保持装置1は、4個の単位二次電池(セル)E1、E2、E3及びE4が直列接続してなる組電池(二次電池)E0の過放電履歴を記録し、保持する装置である。異常履歴保持装置1は、図1に示されるように、主として、過放電検出回路(異常検出回路)2、第1スイッチング素子S1、発熱素子3及び温度ヒューズ4を備える。本実施形態の異常履歴保持装置1は、更に、第2スイッチング素子S2、第3スイッチング素子S3及び第4スイッチング素子S4を備える。なお、本実施形態の組電池E0は、配線L20を利用して負荷に接続されている。組電池E0の各単位二次電池E1、E2、E3及びE4は、リチウムイオン電池からなる。
【0026】
本実施形態の異常履歴保持装置1には、4個の過放電検出回路2a、2b、2c及び2dが設けられており、各過放電検出回路2a、2b、2c及び2dが、組電池E0の各単位二次電池E1、E2、E3及びE4に対して、それぞれ並列接続されている。本実施形態において各過放電検出回路2a、2b、2c及び2dは、それぞれ対応する各単位二次電池E1、E2、E3及びE4の出力電圧を検出する。つまり、過放電検出回路2aは、単位二次電池E1の出力電圧V1を検出し、過放電検出回路2bは、単位二次電池E2の出力電圧V2を検出し、過放電検出回路2cは、単位二次電池E1の出力電圧V3を検出し、過放電検出回路2dは、単位二次電池E4の出力電圧V4を検出する。
【0027】
各過放電検出回路2には、それぞれ1個ずつ第4スイッチング素子S4が接続されている。この第4スイッチング素子S4は、過放電検出回路2によってオン状態とオフ状態とが切換えられるように構成されている。過放電検出回路2は、検出された出力電圧Vが、予め設定されている許容電圧Vxよりも小さい場合(即ち、過放電が発生している場合)に、常時はオフ状態にある第4スイッチング素子S4をオン状態に切換える。
【0028】
具体的には、過放電検出回路2aは、単位二次電池E1の出力電圧V1が許容電圧Vxよりも小さい場合に、第4スイッチング素子S4aをオン状態にする。過放電検出回路2bは、単位二次電池E2の出力電圧V2が許容電圧Vxよりも小さい場合に、第4スイッチング素子S4bをオン状態にする。過放電検出回路2cは、単位二次電池E3の出力電圧V3が許容電圧Vxよりも小さい場合に、第4スイッチング素子S4cをオン状態にする。過放電検出回路2dは、単位二次電池E4の出力電圧V4が許容電圧Vxよりも小さい場合に、第4スイッチング素子S4dをオン状態にする。なお、検出された出力電圧Vが許容電圧Vx以上の場合、第4スイッチング素子S4はオフ状態のまま維持される。
【0029】
過放電検出回路2は、汎用のディスクリート部品から構成されても良いし、CPU、FPGA(Field‐Programmable Gate Array)等を備える構成であってもよい。
【0030】
本実施形態の第4スイッチング素子S4は、所定のバイアス抵抗等が接続されたPNPトランジスタからなる。各スイッチング素子S4のコレクタC側は、一本の信号線にまとめられ、第3スイッチング素子S3のベースBに接続されている。
【0031】
第3スイッチング素子S3は、所定のバイアス抵抗等が接続されたNPNトランジスタからなる。この第3スイッチング素子のエミッタE側は、組電池E0の負極に接続されている。そして第3スイッチング素子S3のコレクタC側は、第2スイッチング素子S2のベースBに接続されている。第3スイッチング素子S3は、そのベースBから入力される信号に基づいて、オン状態とオフ状態とが切換えられる。本実施形態において、第3スイッチング素子は、4個の単位二次電池E1、E2、E3及びE4のうち、少なくとも1つの単位二次電池において過放電が発生すれば、第3スイッチング素子がオフ状態からオン状態へ切換えられるように構成されている。
【0032】
第2スイッチング素子S2は、所定のバイアス抵抗等が接続されたPNPトランジスタからなる。第2スイッチング素子S2のエミッタE側は、配線L2を介して、組電池E0の正極(単位二次電池E1の正極)と繋がった配線L1に接続されている。また、第2スイッチング素子S2のコレクタC側は、第1スイッチング素子S1のベースBに接続されている。第2スイッチング素子S2は、そのベースBから入力される信号に基づいて、オン状態とオフ状態とが切換えられる。本実施形態において、第2スイッチング素子S2は、第3スイッチング素子S3がオン状態になると、それに連動してオン状態となる。
【0033】
第1スイッチング素子S1は、所定のバイアス抵抗等が接続されたNPNトランジスタからなる。第1スイッチング素子S1のコレクタC側は、配線L3を介して前記配線L1に接続されている。そして、第1スイッチング素子S1のエミッタE側は、接地されている。第1スイッチング素子S1は、そのベースBから入力される信号に基づいて、オン状態とオフ状態とが切換えられる。本実施形態において、第1スイッチング素子S1は、第2スイッチング素子S2がオン状態になると、それに連動してオン状態となる。
【0034】
第1スイッチング素子S1は、要するに、4個の単位二次電池E1、E2、E3及びE4のうち、少なくとも1つの単位二次電池において過放電が発生すれば、導通(ターンオン)するように構成されている。なお、この第1スイッチング素子が、本発明の「スイッチング素子」に相当する。
【0035】
発熱素子3は、前記配線L3上に設けられた所定の抵抗値を有する電気抵抗器である。そして、この発熱素子3の近傍であり、配線L1及び配線L3の接点Pから延長された配線L4上に、温度ヒューズ4が設けられている。この温度ヒューズ4は、各単位二次電池E1ないしE4の電池ケースから離して設けてあり、これにより各単位二次電池E1ないしE4からの熱の影響を抑える、すなわち組電池E0の通常運転時(充放電を含む)の発熱によって溶断することがないようにしてある。温度ヒューズ4は、発熱素子3から発せられた熱を受けると、所定時間T後に溶断される。この時間(溶断時間)Tは、温度ヒューズ4に使用される材料(合金)、発熱素子4の電気抵抗値、発熱素子4と温度ヒューズとの距離等の諸条件を適宜、設定すれば調整できる。溶断時間Tは、通常、数秒ないし数十秒に調整可能である。なお、本実施形態の温度ヒューズ4は、それ自身に流れる電流によって発熱して溶断されるものではない。
【0036】
配線L4の一端には、溶断検出回路5が接続されている。この溶断検出回路5は、温度ヒューズ4が溶断していない状態ではその入力端子5aに組電池E0の出力電圧が印加され、温度ヒューズ4が溶断した場合には、その電圧が印加されなくなることに基づいて、温度ヒューズ4の溶断を検出する。また、溶断検出回路5は、LED等の発光素子(不図示)を備え、発光素子の点灯によって使用者に異常(過放電)を報知する。
【0037】
以下、図1を参照しつつ、組電池E0において過放電が発生した場合の異常履歴保持装置1の動作を説明する。組電池E0が過放電状態に陥ると、各単位二次電池E1ないしE4の出力電圧は低下してゆく。そして、各単位二次電池E1ないしE4のいずれかにおいて、出力電圧が許容電圧Vxよりも小さくなる。例えば、過放電検出回路2bによって検出される単位二次電池E2の出力電圧V2が、許容電圧Vxよりも小さくなったとすると、過放電検出回路2bは、その検出結果に応じて第4スイッチング素子S4bのベース電圧を低下させる信号を出力し、第4スイッチング素子S4bをオフ状態からオン状態に切換える。
【0038】
第4スイッチング素子S4bがオン状態になると、それに連動して、第3スイッチング素子S3がオフ状態からオン状態に切換る。そして、第3スイッチング素子S3がオン状態になると、それに連動して、第2スイッチング素子S2がオフ状態からオン状態に切換る。更に、第2スイッチング素子S2がオン状態になると、それに連動して、第1スイッチング素子S1がオフ状態からオン状態に切換る。
【0039】
このようにして第1スイッチング素子S1がオン状態になると、配線L3上の発熱素子3に、組電池E0からの放電電流I1が流れるようになる。すると発熱素子3においてジュール熱が発生し、その近傍に配置する温度ヒューズ4に熱が伝わる。温度ヒューズ4は、発熱素子3から熱を受けると、徐々に温度が高くなり、その温度が融点(ヒューズ合金の融点)に達すると、溶断される。温度ヒューズ4は、一旦、溶断されると元の繋がった状態には戻らない。そのため、組電池E0において発生した過放電の記録は、溶断された温度ヒューズ4によって確実に異常履歴保持装置1に残される、温度ヒューズ4の状態を外部から観察することにより異常(過放電)があったことを確認することができる。
【0040】
なお、本実施形態の異常履歴保持装置1では、配線L4の一端に溶断検出回路5が接続されているため、入力端子5aに組電池E0の出力電圧が印加されなくなることに基づいて、温度ヒューズ4の溶断が検出される。使用者は、この検出結果(溶断報知信号)に基づいて、組電池E0の過放電を把握できる。
【0041】
ところで、二次電池は、一般的に低温環境下では、その内部抵抗が高くなり、過放電状態ではなくても、大電流放電時に一時的に許容電圧を下回る程に大きく電圧降下する場合がある。このような電圧降下は、二次電池の起動時等に発生する一時的な現象であり、通常は、二次電池が発熱して暖まると解消される。
【0042】
一方、異常履歴保持装置1の温度ヒューズ4は、低温環境下では、その溶断時間が、常温時(例えば、25℃)のものと比べて長くなる。そのため、上記のような過放電によらない大きな電圧降下が発生し、温度ヒューズ4が発熱素子3によって加熱され始めても、通常は、温度ヒューズ4が溶断される前に、前記電圧降下が解消される。そのため、異常履歴保持装置1は、上記のような電圧降下を誤検出することが抑制される。
【0043】
なお、本明細書において、異常履歴保持装置と共に組電池(二次電池)を含んだ構成を、電池パックと称する。本実施形態の場合、異常履歴保持装置1及び組電池E0を含んだ構成が、電池パックとなる。
【0044】
ここで、図2ないし図4を参照しつつ、異常履歴保持装置1を備える電池パックについて説明する。
【0045】
図2に示されるように、電池パック100は、発熱素子、温度ヒューズ等が基板10上に実装されたものからなる異常履歴保持装置1と、4個の単位二次電池E1ないしE4が直列接続されてなる組電池E0とを備える。本実施形態における組電池E0の外観形状は略直方体であり、同じ大きさの各単位二次電池E1ないしE4が積層されたものからなる。各単位二次電池E1ないしE4の外観形状も略直方体であり、各単位二次電池の各端面が、互いに同一平面上に配置されるように各単位二次電池E1ないしE4が並べられている。なお、電池パック100は、外観形状が略直方体のケーシング30内に収納されている。
【0046】
図3に示されるように、異常履歴保持装置1の基板10と、組電池E0とは、互いに接触しないように離れて配置されている。異常履歴保持装置1の基板10は、少なくともその下面12が、組電池E0の上面41と直に接触しないように配置されている。このようにして、基板10と、組電池E0との間には、隙間Dが積極的に設けられている。なお、基板10は、その側端面と、組電池E0の側端面との間を結ぶ支持部材(不図示)によって、上記のように下面12が組電池E0の上面41と接触しないように(隙間Dを保つように)固定されている。
【0047】
図4に示されるように、異常履歴保持装置1の発熱素子3及び温度ヒューズ4は、互いに近接するように基板10上(上面11)に実装されている。このように発熱素子3を、温度ヒューズ4に近接配置することによって、発熱素子3の熱を温度ヒューズ4に伝え易くしている。なお、図4に示されるように、基板10の縁側に、単位二次電池の出力電圧を検出するためのコネクタ15が配置されている。
【0048】
組電池(二次電池)E0は、充放電時に発熱する。そのため、組電池E0から発せられた熱が、基板10等を伝って基板10上に実装されている温度ヒューズ4に加えられることも考えられる。このような場合、溶断に充分な熱が温度ヒューズ4に加わってしまうと、組電池E0の過放電時以外に、温度ヒューズ4が溶断されてしまうことも考えら、異常履歴保持装置1としては好ましくない。そのため、図3等に示されるように、温度ヒューズ4が実装された基板10と、組電池E0との間に積極的に隙間Dを設けて、組電池E0から基板10上の温度ヒューズ4へ熱が伝わり難く(熱伝導率を低く)することが好ましい。なお、隙間Dの距離等は、目的に応じて適宜調整すればよい。また、隙間D内に断熱材を介在させてもよい。
【0049】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る二次電池の異常履歴保持装置を、図5を参照しつつ説明する。図5に示される異常履歴保持装置1Aの基本的な構成は、図1に示される第1実施形態の異常履歴保持装置1のものと同様である。そのため、同一構成については同一符号を付し、それらの説明を省略する。本実施形態の異常履歴保持装置1Aは、上記異常履歴保持装置1と比べて、配線L1上に温度ヒューズ4(4b)を更に備えている点が異なっている。以下、この点を中心に本実施形態の異常履歴保持装置1Aを説明する。
【0050】
本実施形態の異常履歴保持装置1Aは、2個の温度ヒューズ4(4a及び4b)を備えている。温度ヒューズ4bは、配線L4上に配置されている温度ヒューズ4aと同種のものからなる。溶断される前の温度ヒューズ4bは、配線L1の一部をなしている。そして、この温度ヒューズ4bは、温度ヒューズ4aと同様、発熱素子3の近傍に配置されている。2個の温度ヒューズ4a及び4bは、配線L1、配線L3及び配線L4の接点Pを挟むように配置されている。
【0051】
組電池E0において過放電が発生すれば、第1実施形態と同様、第1スイッチング素子S1が導通して発熱素子3に組電池Eからの放電電流I1が流れる。発熱素子3に放電電流I1が流れると、発熱素子3からジュール熱が発生し、それらの近傍に配置する2個の温度ヒューズ4a及び4bに熱が伝わる。所定時間経過後、各温度ヒューズ4の温度が融点(ヒューズ合金の融点)に達すると、2個の温度ヒューズ4a及び4bは、それぞれ溶断される。このようにして、本実施形態の異常履歴保持装置1Aについても、組電池E0において発生した過放電の記録を、溶断された温度ヒューズ4によって確実に記録される。
【0052】
また、2個の温度ヒューズ4a及び4bのうち、配線L1上の温度ヒューズ4bが溶断すると、配線L3上の発熱素子3に組電池Eからの放電電流I1が流れなくなる。つまり、温度ヒューズ4bの溶断によって、発熱素子3の発熱が停止される。
【0053】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0054】
(1)第1実施形態等では、組電池E0の各単位二次電池E1、E2、E3及びE4に対して、それぞれ過放電検出回路(異常検出回路)2a、2b、2c及び2dを並列接続して、各単位二次電池の出力電圧(過放電)を検出していたが、他の実施形態においては、複数個の単位二次電池をまとめたもの(単位二次電池群)を、1個の過放電検出回路2を用いて出力電圧(過放電)を検出してもよい。そしてその検出結果を利用して、第1スイッチング素子S1を導通させ、発熱素子3の発熱、及び温度ヒューズ4の溶断を行ってもよい。なお、組電池E0全体を、1個の過放電検出回路2を用いて出力電圧(過放電)を検出し、この検出結果を利用して組電池E0の過放電を検出してもよい。
【0055】
(2)第1実施形態等では、二次電池の過放電を検出し、その事実(履歴)を温度ヒューズ4の溶断によって記録し、保持するものであったが、他の実施形態においては、過放電以外の二次電池の異常(例えば、過放電、過電圧、逆接続等の不正使用等)を検出し、その履歴を温度ヒューズ4に溶断によって記録し、保持するものであってもよい。
【0056】
(3)第1実施形態等では、第1スイッチング素子S1等として、PNPトランジスタ或いはNPNトランジスタを使用しているが、他の実施形態においては、第1スイッチング素子S1等として、例えばMOSFET(Metal‐Oxide‐Semiconductor Field‐Effect Transistor)を利用してもよい。
【0057】
(4)第1実施形態等では、温度ヒューズ4を配線L4(又は配線L1)上に配置したが、他の実施形態においては、少なくとも過放電の記録(履歴)保持を目的とするものであれば、温度ヒューズ4を配線上に配置しなくてもよい。つまり、第1スイッチング素子S1が導通した際に、組電池(二次電池)E0からの放電電流が、温度ヒューズ4に流れない構成(配線に接続されていたい独立した構成)であってもよい。ただし、このような場合であっても、温度ヒューズ4は、発熱素子3から熱を受けて溶断できるように、発熱素子3の近傍に配置する必要がある。
【0058】
(5)第1実施形態等では、組電池E0の過放電を、溶断検出回路5を用いて検出していたが、他の実施形態においては、例えば、溶断検出回路5に替えて、LED等の発光素子を用いてもよい。つまり、温度ヒューズ4が溶断していない状態では、発光素子を発光させ、温度ヒューズ4が溶断した場合には、発光素子を消灯させることによって、組電池E0の過放電を検出してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 異常履歴保持装置
2 過放電検出回路
3 発熱素子
4 温度ヒューズ
5 溶断検出回路
S1 第1スイッチング素子(本発明のスイッチング素子に相当)
E0 組電池(二次電池)
E1 単位二次電池(セル1)
E2 単位二次電池(セル2)
E3 単位二次電池(セル3)
E4 単位二次電池(セル4)
I1 組電池からの放電電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の出力に基づいて前記二次電池の異常を検出し、その検出結果を出力する異常検出回路と、
前記検出結果に応じて導通するスイッチング素子と、
前記スイッチング素子が導通した時に、前記二次電池から放電電流が流れて発熱する発熱素子と、
前記発熱素子からの熱を受けて溶断される温度ヒューズと、を備える二次電池の異常履歴保持装置。
【請求項2】
前記異常検出回路は、前記二次電池の出力電圧に基づいて前記二次電池の過放電を検出し、その検出結果を出力する過放電検出回路からなる請求項1に記載の二次電池の異常履歴保持装置。
【請求項3】
温度ヒューズの溶断を検出して溶断報知信号を外部へ出力する溶断検出回路を備える請求項1又は請求項2に記載の二次電池の異常履歴保持装置。
【請求項4】
前記温度ヒューズと前記二次電池とが互いに接触しないように離れて配置される請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の二次電池の異常履歴保持装置。
【請求項5】
前記温度ヒューズが基板上に実装され、前記基板が二次電池との間に隙間が形成されるように配置される請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の二次電池の異常履歴保持装置。
【請求項6】
前記二次電池の周囲温度低下に応じて、前記温度ヒューズの溶断時間が長くなる請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の二次電池の異常履歴保持装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の異常履歴保持装置と、二次電池とを備える電池パック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−79513(P2012−79513A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222706(P2010−222706)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】