説明

異常探査支援装置

【課題】火災発生による煙等によって現場作業者の視界を妨げるような状況下でも、作業者は直接赤外線画像を見ながら両手を用いて活動できるということを満足した上で、更に使い勝手が優れた異常探査支援装置を提供すること。
【解決手段】赤外線カメラと、少なくとも赤外線カメラ使用時には眼前に位置し且つ前記赤外線カメラで撮像した映像を再生するディスプレイを、顔面保護具又はヘルメットに設けてなる異常探査支援装置において、赤外線カメラが、左右両眼を結ぶ線の延長線上であって片眼の近傍に配置されているものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火災による煙等によって視界を遮られた状況で、救助活動等を行う好適な異常探査支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の異常探査支援装置としては、例えば、ヘルメットと、前記ヘルメットの外周面に固定された赤外線カメラと、ヘルメット装着者の顔前方に受像面が来るように前記ヘルメットに取り付けられ且つ前記赤外線カメラで撮像した映像を再生するディスプレイと、ヘルメットに取り付けられ且つ前記赤外線カメラの映像信号を遠隔地に設置される無線受信機へ無線送信する無線送信機とから構成されたものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記異常探査支援装置を使用すると、火災発生による煙等によって現場作業者の視界を妨げるような状況下でも、ヘルメットを装着した装着者(作業者)が直接赤外線画像を見ながら両手を用いて活動できる。また、赤外線で撮像した映像を、現場から離れた場所に設置されている無線受像機に無線送信することによって、より適格な監視や状況判断等を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−75892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記異常探査支援装置では、以下の(1)〜(3)に示すような問題を有している。
(1).赤外線カメラはヘルメットの外周面から側方に突出する態様で固定されているから、狭い所を通過するような場合において障害物に赤外線カメラが衝突して破損するという事態が生じる恐れがある。
(2).赤外線カメラは装着者の側頭部における耳位置よりもかなり高い位置に設定されているので、肉眼で見る実像と赤外線カメラで撮像したディスプレイ上の映像との間に比較的大きな差ができてしまう。
(3).赤外線カメラはヘルメットの外周面から側方に突出する態様で固定されているから左右の重量バランスが悪く、装着者の首に負担がかかる。
【0006】
つまり、この異常探査支援装置では、上記の(1)〜(3)に示した如く使い勝手が悪い。
【0007】
そこで、この発明は、火災発生による煙等によって現場作業者の視界を妨げるような状況下でも、作業者は直接赤外線画像を見ながら両手を用いて活動できるということを満足した上で、更に使い勝手が優れた異常探査支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1記載の発明)
この発明の異常探査支援装置は、赤外線カメラと、少なくとも赤外線カメラ使用時には眼前に位置し且つ前記赤外線カメラで撮像した映像を再生するディスプレイを、顔面保護具又はヘルメットに設けてなる異常探査支援装置において、赤外線カメラが、左右両眼を結ぶ線の延長線上であって片眼の近傍に配置されている。
【0009】
この発明の異常探査支援装置では、赤外線カメラが、左右両眼を結ぶ線の延長線上であって片眼の近傍に配置されているので、肉眼で見る実像と赤外線カメラで撮像したディスプレイ上の映像との間に大差はでない。
【0010】
(請求項2記載の発明)
この発明の異常探査支援装置は、赤外線カメラと、少なくとも赤外線カメラ使用時には眼前に位置し且つ前記赤外線カメラで撮像した映像を再生するディスプレイを、顔面保護具又はヘルメットに設けてなる異常探査支援装置において、仮想中央線上に重心がくるように赤外線カメラが配置されている。
【0011】
この発明の異常探査支援装置では、仮想中央線上に重心がくるように赤外線カメラが配置されているから、正面視左右の重量バランスが良く、装着者の首にかかる負担は小さい。
【0012】
(請求項3記載の発明)
この発明の異常探査支援装置は、赤外線カメラと、少なくとも赤外線カメラ使用時には眼前に位置し且つ前記赤外線カメラで撮像した映像を再生するディスプレイを、顔面保護具又はヘルメットに設けてなる異常探査支援装置において、赤外線カメラが、人体頭部の顎部近傍に配置されている。
【0013】
この発明の異常探査支援装置では、赤外線カメラが、人体頭部の顎部近傍に配置されているから首にかかるモーメント力が小さく、装着者の首にかかる負担は小さい。
【0014】
(請求項4記載の発明)
この発明の異常探査支援装置は、赤外線カメラと、少なくとも赤外線カメラ使用時には眼前に位置し且つ前記赤外線カメラで撮像した映像を再生するディスプレイを、顔面保護具又はヘルメットに設けてなる異常探査支援装置において、正面視でディスプレイから外れた位置に赤外線カメラが配置されており、赤外線カメラにより撮像した映像を光学的もしくは電気的な座標変換によって眼線位置でディスプレイに再生するようにしている。
【0015】
この発明の異常探査支援装置では、正面視でディスプレイから外れた位置に赤外線カメラが配置されており、赤外線カメラにより撮像した映像を光学的もしくは電気的な座標変換によって眼線位置でディスプレイに再生するようにしているから、肉眼で見る実像と赤外線カメラで撮像したディスプレイ上の映像との間に差はほとんどでない。
【0016】
(請求項5記載の発明)
この発明の異常探査支援装置は、上記請求項1乃至4のいずれかに記載の発明に関し、顔面保護具又はヘルメットに、赤外線カメラの映像信号を、遠隔地に設置される無線受信機へ無線送信する無線データ転送装置を具備させてある。
【0017】
この発明の異常探査支援装置では、赤外線で撮像した映像を、現場から離れた場所に設置されている無線受像機に無線送信することによって、より適格な監視や状況判断等を行うことができる。
【0018】
(請求項6載の発明)
この発明の異常探査支援装置は、上記請求項1乃至4のいずれかに記載の発明に関し、顔面保護具又はヘルメットの正面はシールドされており、前記シールドの内面、及びディスプレイの表面には曇り止め加工が施されている。
【0019】
この発明の異常探査支援装置では、顔面保護具又はヘルメットの正面はシールドされており、前記シールドの内面、及びディスプレイの表面には曇り止め加工が施されているから、前面が曇ることによる前方の視野の欠落を無くすことができ、活動上の安全性の確保ができる。
(請求項7記載の発明)
この発明の異常探査支援装置は、上記請求項1乃至4のいずれかに記載の発明に関し、ディスプレイの視野位置及び視野角を調整するための調整機構を具備している。
【0020】
この発明の異常探査支援装置では、ディスプレイの視野位置及び視野角を調整するための調整機構を具備しているから、ディスプレイを装着者の視線の最適位置に合わせることができる。
【0021】
(請求項8記載の発明)
この発明の異常探査支援装置は、上記請求項2記載の発明に関し、顔面保護具又はヘルメットに、カメラコントロール装置、無線データ転送装置又はバッテリーのうち少なくとも1つが設けられており、顔面保護具又はヘルメットの仮想中央線上に重心がくるように、カメラコントロール装置、無線データ転送装置又はバッテリーのうち少なくとも1つ、及び赤外線カメラが配置されている。
【0022】
この発明の異常探査支援装置では、顔面保護具又はヘルメットの仮想中央線上に重心がくるようにカメラコントロール装置、無線データ転送装置又はバッテリーのうち少なくとも1つ、及び赤外線カメラが配置されているから、正面視左右の重量バランスが良く、装着者の首にかかる負担は小さい。
【発明の効果】
【0023】
この発明は以下に示すような効果を奏する。
【0024】
発明の実施の形態の欄に記載した内容から明らかなように、火災発生による煙等によって現場作業者の視界を妨げるような状況下でも、作業者は直接赤外線画像を見ながら両手を用いて活動できるということを満足した上で、更に使い勝手が優れた異常探査支援装置を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施形態1の異常探査支援装置を示す斜視図。
【図2】前記実施形態1の異常探査支援装置の側面図である。
【図3】この発明の実施形態2の異常探査支援装置のゴーグル部分を示す斜視図。
【図4】前記実施形態2の異常探査支援装置の全体図。
【図5】この発明の実施形態3の異常探査支援装置の斜視図。
【図6】この発明の他の実施形態の異常探査支援装置。
【図7】光学的手法で眼線を合わせたこの発明の他の実施形態の異常探査支援装置。
【図8】この発明の他の実施形態の異常探査支援装置。
【図9】この発明の他の実施形態の異常探査支援装置。
【図10】この発明の他の実施形態の異常探査支援装置。
【図11】ディスプレイを別の位置に移動させるための機構の斜視図。
【図12】ディスプレイを別の位置に移動させるための機構の斜視図。
【図13】ディスプレイを別の位置に移動させるための機構の斜視図。
【図14】線合わせについての電気的な座標変換の概念図(横から見たとき)。
【図15】眼線合わせについての電気的な座標変換の概念図(真上からら見たとき)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、この発明の実施の形態の異常探査支援装置を図面を参照しつつ説明する。
【0027】
〔実施形態1〕
図1は、この発明の実施形態1の異常探査支援装置を示す斜視図であり、図2は、前記異常探査支援装置の側面図である。
【0028】
(この異常探査支援装置の基本的構成について)
この異常探査支援装置は、基本的には図1に示すように、消防用面体1と、前記消防用面体1内に装備された単眼式のディスプレイ2と、前記消防用面体1の左眼側の側頭部に取り付けられた赤外線カメラ3と、前記消防用面体1の右眼側の側頭部に取り付けられた電子部品ユニット4とから構成されている。
【0029】
(消防用面体1について)
消防用面体1は、透明な合成樹脂により構成されており、図1に示すように、上部にディスプレイ2を収容するための空間部10、及び下部に空気供給用のマスク11を有するものであり、内面側周縁部分に貼設した弾性部材により装着者の顔面に密閉状態で取り付けられるようになっている。
【0030】
また、この消防用面体1には、図1に示すように、左側の側頭部対応部分に赤外線カメラ3を取り付けるためのブラケット12が、右側の側頭部対応部分に電子部品ユニット4を取り付けるためのブラケット13が、最上部にディスプレイ2を取り付けるためのブラケット14が、それぞれ設けてある。
【0031】
さらに、図1や図2に示すように、この消防用面体1にはその後方にネット状の帽子体15を設けてあり、前記帽子体15に設けた止め紐16を消防用面体1に設けた止め金具17を通して締め込むことにより、消防用面体1を装着者の顔面に隙間を設けることなくしっかりと固定できるようになっている。
【0032】
(ディスプレイ2について)
ディスプレイ2は、図1に示すように、単眼式のものであり、ブラケット14を介して右眼部の視線付近に配置してある。ここで、この実施形態では、図1に示すように、ディスプレイ2は支持台20を介して取り付けられており、視線位置を装着者に適合させるべく、ネジ機構により支持台20に対してディスプレイ2を視線方向、水平、垂直の3次元的に移動できるようにしてある。なお、支持台20に対するディスプレイ2の移動は手動であっても、モータ等の回転力を利用して行われるものでもよい。
【0033】
また、このディスプレイ2は、不使用時には外部からの光を20%前後取り入れることができるシースルータイプとしてある。
【0034】
(赤外線カメラ3について)
赤外線カメラ3は、上述した如く左眼側の側頭部に取り付けられ、より具体的には、赤外線カメラ3が、左右両眼を結ぶ線の延長線上であって左眼近傍に配置されている。したがって、肉眼で見る実像と赤外線カメラで撮像したディスプレイ上の映像との間に大差はでない。
【0035】
なお、この赤外線カメラ3を使用していることから、火災発生による煙等によって現場作業者の視界を妨げるような状況下でも、装着者は直接赤外線映像を見ながら活動できる。
【0036】
(電子部品ユニット4について)
電子部品ユニット4は、カメラコントロール装置40と、赤外線カメラの映像信号を、遠隔地に設置される無線受信機へ無線送信する無線データ転送装置41とを有するものであり、これらの駆動電力をバッテリーとしている。
【0037】
なお、この電子部品ユニット4は、上述した如く右眼側の側頭部に取り付けられており、この電子部品ユニット4の重量によって生じるモーメント力により、上記赤外線カメラ3の重量によって生じるモーメント力をできるだけ相殺できるようにしてある。
(この異常探査支援装置の優れた作用・効果について)
(1).この異常探査支援装置を使用する場合、ネジ機構を操作して支持台20に対してディスプレイ2を視線方向、水平、垂直の3次元的に移動させ、視線位置を装着者に適合させる。この調整後、装着者は帽子体15を被り、帽子体15に設けた止め紐16を消防用面体1に設けた止め金具17に通して締め込むことにより、消防用面体1を装着者の顔面に隙間を設けることなくしっかりと固定する。
【0038】
上記状態において、ディスプレイ2上の映像位置は装着者の視線に適合して良好であり、装着者の動作時に生じた振動にもディスプレイ2上の映像が振れることがないといってよい。
(2).ディスプレイ2は、不使用時には外部からの光を20%前後取り入れることができるシースルータイプとなっているので、片側の眼とシースルーした眼で見た景色の合成は通常とほぼ同じであるので、不使用時においても作業に支障をきたすことがない。
(3).赤外線カメラ3は、左右両眼を結ぶ線の延長線上に配置されているので、ディスプレイ2上の映像の認識は、視覚的に大きな変化もなく、正しく行うことができる。
(4).電子部品ユニット4の重量と赤外線カメラ3の重量によって首に生じるモーメント力をできるだけ相殺できるようにしてあるから、静止時における姿勢維持、動作における機敏さを損なうことなく、ストレス無く作業を行うことができる。
(5).電子部品ユニット4は、右眼側の側頭部に取り付けられていることから、装着者自らが容易にスイッチ操作でき、非常に便利である。
【0039】
〔実施形態2〕
図3は、この発明の実施形態2の異常探査支援装置のゴーグル部分を示す斜視図であり、図4は、前記異常探査支援の全体図である。
(この異常探査支援装置の基本的構成について)
この異常探査支援装置は、消防活動の後方支援活動をする際に使用する形態のものであり、基本的には図3や図4に示すように、ゴーグル1Gと、前記ゴーグル1Gのレンズ部を切欠いた部分を塞ぐべく配置された単眼式のディスプレイ2と、前記ゴーグル1Gの左眼側の側頭部に取り付けられた赤外線カメラ3と、電子部品ユニット4とから構成されている。
【0040】
(ゴーグル1Gについて)
ゴーグル1Gは、図3に示すように、レンズ部10Gと、前記レンズ部10Gを顔面に密閉状態に取り付けるための弾性部材11Gと、レンズ部10Gを顔面に取り付けるためのベルト12Gとから構成されており、前記弾性部材11Gの存在により装着者の顔面に密閉状態で取り付けられるようになっている。
【0041】
上記レンズ部10Gの右眼対向部には、図3に示すように、単眼式のディスプレイ2を装着するための開口部18を設けてある。
【0042】
また、このゴーグル1Gには、図3に示すように、左側の側頭部に赤外線カメラ3を取り付けるためのブラケット12を設けてある。
【0043】
(ディスプレイ2について)
ディスプレイ2は、図3に示すように、正面視で開口部18を塞ぐ態様で配置されており、当該ディスプレイ2と開口部18との隙間部分を弾性部材で塞ぐようにしてある。なお、このディスプレイ2は、約2cmのHOEレンズ(一般にホログラフィック・オプチカル・エレメント、又はホログラムコンバイナと呼ばれる)を装備するものであり、前後方向に位置調整(上下左右方向はゴーグルを移動させることにより位置調整できる)できるようにしてある。
【0044】
(赤外線カメラ3について)
この赤外線カメラ3は、残火を識別することができるような近赤外線域が視認できる小型CCDカメラであり、上記ブラケット12を介してゴーグル1Gにおける左右両眼を結ぶ線の延長線上に配置されている。
【0045】
(電子部品ユニット4について)
電子部品ユニット4は、基本的には実施形態1と同様のものであるが、図4に示すように、装着者の腰部に取り付けるためのベルト42を具備させてある。
【0046】
(この異常探査支援装置の優れた作用・効果について)
この異常探査支援装置では、(1)小型CCDカメラを使用しているので重量が小さく、電子部品ユニット4はベルト42により腰に取り付けられるから、首への負担は実施形態1のものと比較してかなり軽減される、(2)ディスプレイ2上の映像位置は装着者の視線に適合して良好であり、装着者の動作時に生じた振動にもディスプレイ上の映像が振れることがない、(3)ディスプレイ2はHOEレンズを装備するものであるから、片側の眼とシースルーした眼で見た景色の合成は通常とほぼ同じになり、不使用時においても作業に支障をきたすことがない、(4)ディスプレイ2上の映像の認識は、視覚的に大きな変化もなく、正しく行い得る、(5)装着者自らが容易に電子部品ユニット4をスイッチ操作でき、非常に便利である等の優れている、という作用・効果を奏する。
【0047】
〔実施形態3〕
図5は、この発明の実施形態3の異常探査支援装置であり、ヘルメットタイプのものを示す斜視図である。
【0048】
この異常探査支援装置は、図5に示すように、前方が透明の面体で覆われ且つ内面にライナーが形成されたヘルメット1Hと、左眼の前方に配置された単眼式のディスプレイ2と、顎部の右側に配置された赤外線カメラ3と、ヘルメット1H内の頭頂部付近に内蔵された電子部品ユニット4とから構成されている。
【0049】
この異常探査支援装置では、ヘルメット1H内においてディスプレイ2は軸21を中心として眼線から外れた上方位置にはね上げることができるようにしてある。なお、ディスプレイ2のヘルメット1内での移動は、ガイドレールにしたがって平行移動等をさせる形態としてもよい。
【0050】
〔他の実施形態等について〕
(1).図6に示すように、人体頭部にヘルメット1Hが装着された際の正面視の輪郭内に、赤外線カメラ3及びディスプレイ2を配置させることが好ましい。この形態において、同図に示す如くヘルメット1Hの頭頂付近内部の仮想中央線上に電子部品ユニット4を内装させるようにしてもよい。この形態では、狭い所を通過するような場合において障害物に赤外線カメラ3が衝突して破損するという事態が生じる可能性は低くなり、また首に生ずるモーメント力は小さなものとなる
(2).図7に示すように、ヘルメット1Hに、ディスプレイ2、赤外線カメラ3及び電子部品ユニット4を内蔵させたものにできる。この場合においても図6の形態と同様の効果を有する。
(3).赤外線カメラ3が、人体頭部の正面を左右に分ける仮想中央線上(例えば額の中央部)に配置されていることが好ましい。この形態にすると、正面視左右の重量バランスが良く、装着者の首にかかる負担は小さい。
(4).図6に示すように、赤外線カメラ3を顎部の近傍に配置することが好ましい。この形態にすると、首にかかる負担を小さくできる。
(5).図8に示すように、正面視でディスプレイ2から外れた位置に赤外線カメラ3が配置されており、赤外線カメラ3により撮像した映像を光学的(もしくは電気的)座標変換により眼線位置でディスプレイ2に再生する構成とすることが好ましい。この形態にすると、肉眼で見る実像と赤外線カメラ3で撮像したディスプレイ上の映像との間に差はほとんどでない。なお、ここに言う電気的座標変換とは、カメラと眼の位置がずれている場合、下記の座標変換式(垂直の場合を例示)
y=(b−h)÷〔rtanφ/(N/2)〕
={〔(rtanθ)/(N/2)〕×d−h}×〔(N/2)/rtanφ〕
=〔(tanθ/tanφ)×d〕−{〔h×(N/2)〕/rtanφ}
x=a÷〔rtanφ’/(M/2)〕
=(tanθ’/tanφ’)×c
に基づいて、カメラの画素(c,d)を表示画像の画素(x,y)にすることで、カメラ画像をデータ化し、電子的に拡大又は縮小してトリミングすることである(図14及び図15参照)。
(6).図9に示すように、赤外線カメラ3がヘルメット1Hに対してワンタッチで着脱可能であることが好ましい。この形態にすると、離脱時には赤外線カメラ3の重量による首への負担を低く抑えることができ、他方、ハンディタイプカメラとして全体システム寸法より小さい孔などの内部の様子をも撮像することができる。
(7).図10に示すように、赤外線カメラ3とディスプレイ2とが人体頭部の正面を左右に分ける仮想中央線に対して、同じ側に配置されているものとすることが好ましい。この形態にすると、単眼タイプのディスプレイ2の視角方向を赤外線カメラ3の向く方向とを合わせることにより、遠近感、方向性をより現実に近づけることができる。
(8).図11〜図13に示すように、ディスプレイ2を固定された軸21に対して回動させる形式をとることにより、ディスプレイ2を、使用時以外は視界の妨げにならないように別の位置に移動させ得るものにできる。この形態にすると、使用時以外は視界の妨げにならないように別の位置に移動させることができるようになっているから、両眼による状況確認が容易に行える。
(9).ヘルメット1Hの正面は透明な樹脂板でシールドされており、前記シールドの内面、及びディスプレイ2の表面に曇り止め加工が施されているものとすることが好ましい。
(10).上記した実施形態ではディスプレイ2は単眼式であるが、双眼式でもよい。
(11).赤外線カメラ3の種類は、遠赤外線、中赤外線、近赤外のいずれを使用するものであってもよい。作業の内容により最適なものを選択すればよい。
(12).ディスプレイ2としては、非透過式、シースルー式、シーアラウンド式のいずれを採用してもよい。
(13).無線データ転送装置は、絶対的に不可欠なものではなく必要に応じて付加させることができる。
(14).無線データ転送装置に、遠隔地からの指令情報をディスプレイ2に表示させる機能や、聴覚的に指示を受ける機能を付加させるようにしてもよい。
(15). 顔面保護具又はヘルメットの仮想中央線上に重心がくるようにカメラコントロール装置、無線データ転送装置又はバッテリーのうち少なくとも1つ、及び赤外線カメラが配置されていることが好ましい。この形態にすると、正面視左右の重量バランスが良く、装着者の首にかかる負担は小さい。
(16).(1)〜(15)で示した構成は主としてヘルメット1Hについて記載しているが、実施可能であればゴーグルタイプ1Gや消防用面体1の如き顔面保護具に採用することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 消防用面体1(顔面保護具)
1G ゴーグル(顔面保護具)
1H ヘルメット
2 ディスプレイ
3 赤外線カメラ
4 電子部品ユニット
40 カメラコントロール装置
41 無線データ転送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線カメラと、少なくとも赤外線カメラ使用時には眼前に位置し且つ前記赤外線カメラで撮像した映像を再生するディスプレイを、顔面保護具又はヘルメットに設けてなる異常探査支援装置において、赤外線カメラが、左右両眼を結ぶ線の延長線上であって片眼の近傍に配置されていることを特徴とする異常探査支援装置。
【請求項2】
赤外線カメラと、少なくとも赤外線カメラ使用時には眼前に位置し且つ前記赤外線カメラで撮像した映像を再生するディスプレイを、顔面保護具又はヘルメットに設けてなる異常探査支援装置において、顔面保護具又はヘルメットの仮想中央線上に重心がくるように赤外線カメラが配置されていることを特徴とする異常探査支援装置。
【請求項3】
赤外線カメラと、少なくとも赤外線カメラ使用時には眼前に位置し且つ前記赤外線カメラで撮像した映像を再生するディスプレイを、顔面保護具又はヘルメットに設けてなる異常探査支援装置において、赤外線カメラが、人体頭部の顎部近傍に配置されていることを特徴とする異常探査支援装置。
【請求項4】
赤外線カメラと、少なくとも赤外線カメラ使用時には眼前に位置し且つ前記赤外線カメラで撮像した映像を再生するディスプレイを、顔面保護具又はヘルメットに設けてなる異常探査支援装置において、正面視でディスプレイから外れた位置に赤外線カメラが配置されており、赤外線カメラにより撮像した映像を光学的もしくは電気的な座標変換によって眼線位置でディスプレイに再生するようにしたことを特徴とする異常探査支援装置。
【請求項5】
顔面保護具又はヘルメットに、赤外線カメラの映像信号を、遠隔地に設置される無線受信機へ無線送信する無線データ転送装置を具備させてあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の異常探査支援装置。
【請求項6】
顔面保護具又はヘルメットの正面はシールドされており、前記シールドの内面、及びディスプレイの表面には曇り止め加工が施されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の異常探査支援装置。
【請求項7】
ディスプレイの視野位置及び視野角を調整するための調整機構を具備していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の異常探査支援装置。
【請求項8】
顔面保護具又はヘルメットに、カメラコントロール装置、無線データ転送装置又はバッテリーのうち少なくとも1つが設けられており、顔面保護具又はヘルメットの仮想中央線上に重心がくるように、カメラコントロール装置、無線データ転送装置又はバッテリーのうち少なくとも1つ、及び赤外線カメラが配置されていることを特徴とする請求項2記載の異常探査支援装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−199590(P2009−199590A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14748(P2009−14748)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【分割の表示】特願2003−34285(P2003−34285)の分割
【原出願日】平成15年2月12日(2003.2.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成13年度、経済産業省、特殊機能付きゴーグルへッドマウントディスプレイの開発に係る委託研究、産業再生法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000179926)山本光学株式会社 (49)
【出願人】(598138475)
【出願人】(503059105)
【Fターム(参考)】