説明

病原体‐制御薬剤

(a)水溶性培地において溶解して銅イオンを形成することができる少なくとも1つの水溶性銅化合物;(b)水溶性培地において溶解してアンモニウムイオンを形成することができる少なくとも1つの水溶性アンモニウム剤;(c)少なくとも1つの水溶性酸、および(d)成分(a)、(b)および(c)が溶解する水溶性培地、(e)酸性pHおよび(f)50 mVを上回る分解電圧を含む抗菌製剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原体による疾患の制御、および感染を引き起こすと考えられるあるいは感染を引き起こしやすい病原性種の存在との闘いに有用な製剤および他の医薬品に関するものである。病原体の群においては、細菌、真菌およびウイルスと分類される。感染していない(即ち環境あるいは周囲に存在する可能性のあるような)状態や病原体が宿主の体内に侵入し結果として特定の臓器に関連した症状に至る感染状態において、病原体を制御できる抗感染薬および殺菌剤に関する研究を継続することが望ましい。
【背景技術】
【0002】
従来より、病原体に起因すると考えられる多くの疾患は、このような感染の治療用に発明され市販されてきた代表的な薬剤である抗生物質によって治療が行なわれる。病棟、もしくは診療所、手術室、外科あるいは同様の環境において、市販の殺菌剤は、床、壁、洗面器、ドア等のような表面に存在する可能性のある細菌のような病原体を殺しあるいは無害にするための予防法として用いられる。ハロゲン化された/芳香族の炭化水素を基にしているこのような広範囲に利用できる多くの殺菌剤が存在する。他の種類の薬剤も知られている。
【0003】
市販の殺菌剤は、家庭とオフィスの環境で、例えば家庭および/もしくは医療従事者のオフィスで用いられる。病院の中あるいは病院に関連した環境に対して感染制御システムを備えることが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、抗生物質耐性病原株、例えば:MRSA(メチシリン耐性Staphylococcus
aureus):VRE(バンコマイシン耐性Enterococcus);クラリスロマイシン、メトロニダゾールに耐性のあるHelicobacter pyloriに関する社会共通の懸念がある。抗生物質耐性菌は、このような獲得された耐性のために、従来の抗生物質を用いて治療するには問題がある。したがって、現在の薬剤に依存することなしに代替療法および予防的治療法を可能にすることあるいは更に抗生物質を発見することが望ましい。
【0005】
芳香族のハロゲン化された殺菌剤に関する健康上の懸念もあり、またハロゲン化された芳香族成分に依存しない代替殺菌剤および抗感染薬を開発することが同様に望ましい。
【発明の効果】
【0006】
組成物を含んだ広範囲の金属イオンは病原体の処理に有益である可能性があるということが、我々の先に公示された特許出願WO 01/15554の中で示唆されている。驚くべきことに、前記の我々の先の公報で開示された組成物の選択は、抗生物質耐性であるかそうでなければ処理あるいは制御することが困難であり、かつ/もしくは病院、外科、診療所と手術室、家庭および生きたヒト細胞に対する著しい損傷または有害作用のない治療法を受けている環境で存在する可能性がある、特定の病原体と闘うのに有用であるということを今回確認した。我々はさらに、我々の先の前記の公報の中で開示したものと類似しているがそれにもかかわらず異なっている組成物のこのような有益な作用も確認した。我々はさらに驚くべきことに、一つの基質にこの明細書の中に記載した組成物を浸透させることが可能で、驚くほど有効で長時間持続する抗菌作用が得られることを確認した。例えば、病院の表面を洗浄するために現在市販されているようなマイクロファイバークロスおよび/もしくはウルトラマイクロファイバークロスに、この明細書のなかに記載した組成物を浸透させることが可能で、また強力な広域抗菌剤および/もしくは抗真菌性殺菌補助剤として用いることができる。我々は更にこのようなマイクロファイバークロスが洗濯可能で、繰り返し含浸でき、また何回も再使用可能で、かなりの経済的有益性が得られることを確認した。
【0007】
我々はさらに意外なことに、この明細書の中で記載したイオンの形で修飾された銅含有組成物が同時に複数の異なる病原体に対して有効であり、またこのような複数の異なる病原体による感染と再感染に対する保護作用を示すことが可能であるということを確認した。
【0008】
この明細書の中で記載した組成物は感染した患者に対して局所的に適用でき、たとえばMRSAおよび/もしくはVREを予防あるいは治療するために患者の皮膚に局所的に適用することができる。
【0009】
我々はさらに好ましくは、micro fluidic検定法、検出結果の表示または他の方法による提示、検出された病原性種の治療によって、この明細書の中で記載した種類の一つあるいは複数の組成物の表面あるいは大気環境に適用することによって、少なくとも一つの病原体の表面もしくは大気環境中における存在の検出に基づいた感染制御システムを開発した。このような工程は実際の感染制御システムをもたらす。
【0010】
この組成物は、病原性種と闘うための噴霧によるミスト(mist)、細かいミストまたは霧(fog)の形で使用あるいは適用できる。このような適用において、殺菌剤として作用する組成物はその後、細かい噴霧あるいはミストとして適用され、曝露されたおよび/もしくは隠れた表面を覆う水滴の上へ消散し、建築物内部の割れ目および亀裂に入る。いったん表面に適用した場合,複合体を形成した銅イオンの殺菌作用は有効でかなりの時間作用が残る。噴霧の様々な装置が用いられ水滴の大きさおよび適用された組成物の濃度が異なる。このような目的のためのこれらの組成剤に界面活性剤を含有させることができる。
【0011】
本発明はさらに、この銅含有組成物を組み込む洗浄性組成物を含む。詳細には、このような洗浄剤は、殺菌性を有するようになり、感染した患者と接触した医療従事者またはその他の人が着ていた衣服を洗濯するために用いられる場合、細菌および薬剤耐性菌のような病原性種を制御することができるであろう。同様にこのような殺菌性洗浄剤は感染した患者の衣服およびシーツ類を洗濯するために用いることができる。
【0012】
以下に記載した組成物は、一部の症例で、例えば少なくとも150
mV程度、但し一部の実施形態で350 mV未満の低い範囲で始まる分解電圧を得るために酸の追加が制限されるおそれがあるということを除けば、我々が先に引用した特許出願に略述された全手順に従って都合よく調製される。他の成分、例えば表面洗浄用抗感染性医薬品の補助となる界面活性剤が存在する場合、このことは表(表1)に示されている。
【表1】

【0013】
他の実施形態では、より低濃度の銅、例えば80 gから140
g までで90 gから130 gなどやあるいは100 gから120 g程度の硫酸銅が望ましく、仮に他の成分でも同じ量が望ましい。このことは局所適用およびH.
pylori感染に対して有用であるといえる。
【0014】
前記の表(表1)において、組成物は、溶解したアンモニウム剤由来の水溶性アンモニウムイオンの存在下で、またもしかするとそれと結合して、銅が溶解した金属イオンとして存在する銅含有水溶性溶液として存在し、また組成物は、一部の好ましい実施形態において少なくとも350
mVなど300 mVを超えるが、少なくとも150 mVの明らかな分解電圧を示す。驚くべきことに我々は、これらのE. coli細胞の培養組織に100 ppm未満、例えば50
ppmの濃度で適用した場合、少なくとも2つの異なるヒト細胞培養組織、例えばHT-29およびU-937に対する細胞毒性が同時に認められない、E. coliの潜伏期間が長い株など処理するのが困難な菌株に対して前記の組成物は非常に有効であるということを確認した。しかしながら、1000
ppm相当の銅と同じくらいの高い濃度が一部の実施形態において計画されている。
【0015】
本組成物の銅に相当する濃度は、10から50 g/L程度、好ましくは20から40g/L、さらに好ましくは25から35
g/Lであり、溶媒相が蒸留水(脱イオン水に対して)であることが好ましい。
【0016】
標的となる病原菌は、環境温度で、1 分から12 時間、あるいは1分から6
時間または0.25時間 から3 時間、0.01 から100 ppm相当の範囲で銅を含有した組成物を用いて処理することが好ましい。しかしながら、噴霧/霧処理の場合では、噴霧が一気にできるため適用時間は非常に短いといえる。
【0017】
本銅組成物は、共に胃潰瘍/消化性潰瘍の主な原因であるHelicobacter
pylori(H. pylori)および特に薬剤耐性Helicobacter pyloriに対して、例えば0.5 から500 ppm相当の銅の濃度で用いることができる。とりわけ、本銅組成物によって治療することができる耐性株はクラリスロマイシン耐性H.
pylori、メトロニダゾール耐性H. pyloriおよび(まれであるが)アモキシシリン耐性H. pyloriである。
【0018】
本銅組成物は皮膚と粘膜表面に適用するためのクリーム、ゲル、および噴霧溶液などの局所製剤、浸み込ませたガーゼおよび洗浄液に製剤化することができる。
【0019】
本銅組成物はこのような表面を殺菌するために、表面の洗浄に有用な吸収性担体に浸み込ませるために用いることができる。その好ましい担体はJohnson Diversity社から入手したマイクロファイバークロスおよび/もしくはウルトラマイクロファイバークロス(UMF)と呼ばれる。前記の通り、このような浸み込ませたマイクロファイバークロスは洗濯可能で何回も繰り返し使用できる。浸み込ませたこのようなクロスによって、細菌の増殖および/もしくは発現を制御する好都合な方法、例えば細菌の増殖および/もしくは発現を阻害すること、例えば細菌の増殖および/もしくは複製を阻害すること、あるいは少なくともこのような細菌の菌活性を阻害することが可能になる。広い領域において本発明は十分範囲が広く、あらゆる抗菌剤を浸み込ませたマイクロファイバーの担体の組み合わせを含むが、本発明にはさらに、前記の表から抽出した銅組成物を浸み込ませたこのようなマイクロファイバーの担体、あるいはそうでなく本発明の範囲に含まれるような銅含有組成物に一致した他の物質の個々の実施形態も含まれる。
【0020】
マイクロファイバーまたはウルトラマイクロファイバークロスのような担体の中に、銅をベースにしたこの金属イオン殺菌剤を組み込むことの有益性は、これがなければ実際に危険である表面の二次汚染を防ぐことができるということである。
【0021】
詳細には、このようなマイクロファイバークロスは、引き続きこの明細書の中で記載するような処理が困難な院内感染MRSA(野生株)、ACCB(野生株)、VRE(野生株)、C.diff(胞子懸濁液)、LPn(Legionella)、およびSalmonellaに対して表面(例えば、病院、外科、診療所、手術室のような)を殺菌するために用いることができる。
【0022】
本組成物およびそれらを浸み込ませた担体は十分なかなりの細菌活性阻害を可能にし、すなわち従来の抗生物質および/もしくは従来の殺菌体制では今まで処理が困難であったこのような院内の病原菌の増殖、発現および/もしくは複製を妨げ、それによって制御することができる。驚くべきことに、このような病原菌活性の阻害は、周囲のヒトの細胞に罹患させるかなりの付随する細胞毒性なしに起こることもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1の実施形態)
はじめに:この明細書の中の表1の実施形態1〜8に従って得られたCuAL42、CuPC33およびCuWB50とコードされた3つの金属イオン製剤を以下の標的細菌に対する作用について検証した:メチシリン耐性Staphyrococcus
aureus (MRSA);Acinetobacter calcoceticus- baumanii(ACCB);Enterococus sp.(バンコマイシン耐性;VRE);Clostridium
difficileの胞子; Legionella pneumophila.
【0024】
個々の3つの金属イオン製剤保存溶液における元素銅相当の濃度は蒸留水で希釈する前には30.43
g/Lであった。個々の3つの銅製剤保存製剤は脱イオン水で十分希釈し、その後微生物に対して元素銅相当の0.25、0.5および1.0 ppmの最終希釈後濃度で検証した。同じ組成物をさらに定常期の微生物に対しても1ppmで検証した。
【0025】
略語:ACCB, Acinetobacter
calcoaceticus-baumanii; MRSA, メチシリン耐性Staphylococcus aureus; PBS, リン酸緩衝生理食塩液;
VRE, Enterococcus sp.(バンコマイシン耐性).
【0026】
材料および方法:血液寒天、栄養培養液およびBYCE培地はOxoid社(UK)から購入し、MRSA、ACCB、およびVREは血液寒天上での純粋培養で増殖させ、1つのコロニーを栄養培養液に移し、37℃で6時間振とうしながらインキュベートした。6時間培養液中培養細胞(対数期細胞)をその後遠心分離し細胞を沈殿させ、培養液を廃棄し、菌細胞を洗浄し、pH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて3回遠心分離した。最終的な懸濁液はPBS中で調製し、生育可能な細胞カウント数を実験に必要な接種原に合わせた(1.5×108)。その後これらの細胞は0.25、0.5および1.0
ppmの最終濃度でここで例として示した銅製剤に曝露した。
【0027】
これらの培養細胞から得られた検体は15、30、60および120分の時点で採取し生育可能なカウント数をMiles
and Misra 法で確認した。15および120分の時点におけるPBS検体の対照培養を実施し接種原の生存度および安定性を確認した。
【0028】
前記の実施例は24時間寒天プレート培養細胞由来の細胞を採取することによって、また最初のPBS洗浄し接種原を1.5×108cells/mlに調整した後、それらを直接PBS内で懸濁することによって定常期の細胞を用いて1.0
ppmで反復した。
【0029】
Clostridium difficile胞子懸濁液は50:50アルコール‐生理食塩液中で嫌気的にインキュベートした血液寒天上で細菌の5日間培養細胞を懸濁することによって作成される。その後この懸濁液上でMiles
and Misraカウントを実施し、生育可能な胞子および試験用に5×105spores/mlに最終的に調製した接種原の最終濃度を測定した。
【0030】
PBS中でBCYE培地上で5日間培養細胞からLegionella
peumophilaの懸濁液を作製し、生菌数を用いて懸濁液を5×10cells/mlに合わせた。
【0031】
3つのすべての銅製剤を、栄養培養液中で6時間培養細胞を用いてMRSA、ACCBおよびVREに対して検証した。
【0032】
結果:3つのすべての銅製剤、CuAL42(表A)、CuPC33(表2)およびCuWB50(表3)は用量依存性の方法で細菌数が減少した。1
ppmの濃度で、3つのすべての銅製剤はMRSA、ACCBおよびVREの約103分の1の阻害を示した。CuAL42およびCuPC33によってC.
difficile胞子の102分の1の阻害が得られ、一方CuWB50によってC. difficile胞子の103分の1の阻害が得られた。
【0033】
CuAL42およびCuWB50によってLegionella
peumophilaの102分の1の阻害が得られ、CuPC33によって約103分の1の阻害が得られた。
【0034】
表4に示したように、3つの銅製剤の阻害作用は、MRSA、ACCBおよびVREを用いた場合対数期と定常期細胞について共に類似している。
【0035】
他の実施形態では、細菌はPBS中で増殖し、有意な殺菌作用が観察された。表5に示したように、栄養培養液中で増殖させる場合MRSA、ACCBおよびVREは殺菌作用に対してほとんど感受性がなく、タンパクもしくは他の成分が銅製剤の作用を阻害していることが示唆された。C.
difficileおよびLegionella pneumophilaは細菌を増殖させることが技術的に困難であるため栄養培養液中では検証しなかった。
【0036】
考察:この結果は3つの銅製剤が1ppmまでの濃度で病原菌に対する高い殺菌作用を有することを示している。しかしながら、細菌が栄養培養液中で増殖する場合、この作用はある程度無効であり、培養液のタンパクあるいは他の成分が銅製剤の効力を低下させているということが示唆される。
【0037】
興味深いことに銅製剤は増殖中の細菌および定常期における細菌に対して高い活性があり、単に静態的効果というよりむしろ菌細胞に対する細胞毒性作用を示唆している。
【0038】
我々は10日間0.1 ppmのCuAL42の存在下で増殖したMRSAが1
ppmのCuAL42に対する曝露によって100 %殺菌されたことを立証した。
【表A】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0039】
(第2の実施形態)
はじめに:この明細書の中の表1の実施形態1〜8に従って得られたCuAL42、CuPC33およびCuWB50とコードされた同じ3つの金属イオン(銅)製剤を、ウルトラマイクロファイバー(UMF)クロスに吸収させ、その後共有の環境である院内の表面(合板の作業台の表面)から生育可能な菌(MRSA、ACCBあるいはC
diff)の高レベルの接種原を除去するために使用した場合の殺菌作用について検証した。
【0040】
略語:ACCB: Acinetobacter
calcoceticus- baumanii; C. diff: Clostridium difficile(胞子);MRSA: メチシリン耐性Staphyrococcus
aureus; PBS: リン酸緩衝生理食塩液; ppm: parts per million; UMF: ウルトラマイクロファイバークロス
【0041】
材料および方法:本試験で用いられたMRSA、ACCBおよびC
diff(胞子)菌は臨床的分離物であった。
【0042】
合板の表面に、2×108コロニー形成単位(cfu)の
MRSAまたはACCBあるいは3×10spores/mlのC diff を含む100μlのリン酸緩衝生理食塩液(PBS)を接種し、100
cm2の領域にわたって滅菌フラットスプレッダーで拡散させ、乾燥させた。
【0043】
この領域は、その後滅菌水(対照)または最終濃度75 ppmのそれぞれの銅製剤UMFで湿潤の推奨限界まで湿らせたUMFを用いて洗浄した。
【0044】
この領域はその後再びプレートに接触させUMFによる接種原の除去を評価した。UMFはその後ミニグリップバッグに入れ、室温で16
時間放置し、洗濯場まで移動するか病棟に静置保存する模擬実験を行なった。16 時間後にUMFは100 mlのPBS中に置き250 rpmで3分間ストマッカー(Seward社、英国)中で攪拌した。
【0045】
溶出液および10分間3500 rpmで遠心分離した10 mlの溶出液および血液寒天上で培養した沈着物上で生菌数を計数した。
【0046】
平板のバックグラウンドのカウント数およびPBSのカウント数をあらゆる環境汚染について検証した。示された結果は3つの別々の工程の平均値である。
【0047】
結果:表6に示したように、コンタクトプレートすることにより、UMFによって非常に効果的に除去された非常に生育可能な接種原が明らかになった。しかしながら銅製剤を用いない場合は、細菌はUMFクロス上で依然として生育可能である。3つのすべての銅製剤は100
%のAcinetobacterおよびC. difficile胞子を死滅させ、MRSAを104分の1に死滅させた。UMF-Cu製剤を浸み込ませたクロスのストマッカー溶出液から回復不能なAcinetobacterまたはC.
difficile菌を認めた。
【0048】
考察:これらの試験は、銅をベースにした抗菌製剤を用いた場合および用いない場合の、汚染された表面を洗浄するためのウルトラマイクロファイバークロスの能力について検討した。UMFクロスは表面からの細菌の除去に非常に有効であることが立証されたが、細菌は少なくとも16 時間クロス状で相変わらず生育している。UMFクロスが3つの銅をベースにした製剤のいずれかで前処理された場合、洗浄の有効性は変化しなかったが、ACCBおよびC.
diff胞子についてクロス上での細菌の生存率は完全に妨害され、MRSAに関して104分の1に減少した。これらの結果はUMFクロスが汚染された表面を洗浄にするのに非常に有効であるが、本発明の実施例による銅をベースにした抗菌製剤によるクロスの前処理によってクロス上のこれらの病原菌の生存率が大きく低下し、それによって病院および家庭において大きな有益性が得られるかもしれない。
【表6】

【0049】
(第3の実施形態)
はじめに:駆除が困難なメチシリン耐性Staphylococcurs
aureus(MRSA)およびバンコマイシン耐性Enterococci、およびClostridium diffcileのような抗生物質耐性菌の病院における存在はますます深刻な問題となっている。これらの細菌は看護師の制服にコロニーを作ることが可能であり、このことは細菌が病院および一般の環境に拡散する恐れがある方法を示している。
【0050】
したがって、この第3の実施形態はMRSA, Acinetobacter
sp., E.coliおよびClostridium diffcileに対して有効であるすでにこの明細書の中で示したCuWB50(この明細書に記載したように)と呼ばれる銅をベースにした金属イオン製剤が、in
vitroにおいてArielTM生物学的洗浄剤を用いた場合と用いない場合のモデル洗浄システムにおいて活性があるかどうか確認するために始められた。
【0051】
略語:C diff:Clostridium
difficile; MRSA:メチシリン耐性 Staphylococcus aureus; ppm,parts per million
【0052】
材料および方法:本試験で用いられたMRSAおよびC
diff(胞子)菌は臨床的に分離された。ストマッカー 400 Clrculator をSeward社(英国)から購入した。
【0053】
1. 銅製剤の実施形態を用いてあるいは用いないでAriel洗浄剤を使用した洗浄プロトコールは、ここではCuWB50を引用する。看護師の制服の生地見本(100
cm2)をMRSAあるいはC diff胞子で汚染させ、3時間室温で乾燥させた。個々の見本を200 ppmのCuWB50を用いた場合あるいは用いない場合に製造業者の推奨濃度でAriel洗浄剤を含んだ20
mlの水を入れたプラスチックバッグに添加した。個々の見本は、室温で240 rpmで15分間循環ストマッカー内で処理し、低温洗浄サイクルの模擬実験を行なった。洗浄後、2
mlの溶出液を2 mlのカルシウムに富んだリンゲル液と混合し、残り全部のCuWB50を中和した。その後中和した溶出液(0.1 ml)を血液寒天プレート上に拡散させ、コロニーが2枚のプレート上にカウントされた場合、空気中(MRSA)もしくは嫌気的に(C
diff胞子)37℃で一晩インキュベートした。
【0054】
2.CuWB50による洗浄プロトコールをすすぎサイクルに追加した。看護師の制服の生地見本(100
cm2)はMRSAあるいはC diff胞子で汚染し、3時間室温で乾燥させた。個々の見本を20 mlの水を入れたプラスチックバッグに加え、その後室温で240
rpmで15分間循環ストマッカー内で処理し、低温洗浄サイクルの模擬実験を行なった。水のみの洗浄サイクルの後、水は200 ppmのCuWB50を含む20 mlの水で置き換えられ、その後5分間ストマッカー内で再び処理しすすぎサイクルの模擬実験を行なった。2
mlの溶出液を2 mlのカルシウムに富んだリンゲル液と混合し、残り全部のCuWB50を中和した。中和した溶出液(0.1 ml) をその後血液寒天プレート上に拡散させ、コロニーが2枚のプレート上にカウントされた場合、空気中で(MRSA)もしくは嫌気的に(C
diff胞子)37℃で一晩インキュベートした。
【0055】
結果:表7に示したように、看護師の制服の生地見本をAriel洗浄剤のみで洗浄した場合、洗浄後のMRSAおよびC.
diffの回復は元の接種原レベルから102分の1〜103分の1に低下した。それと対照的に、200 rpmの洗浄剤CuWB50を添加したArielを含んだ場合、完全な106分の1までの殺菌が認められた。
【0056】
看護師の制服の生地見本が水中のみで洗浄された場合、MRSAおよびC.
diffの洗浄後の回復は、表8に示したように個々の場合において10分の1未満に軽度低下するにすぎなかった。しかしながら、200 ppmのCuWB50を含む水中で5分間すすいだ後、すべての残りの菌は殺菌されコロニーは全く観察されなかった。
【0057】
考察:我々は、メチシリン耐性Staphylococcus
aureus(MRSA)あるいはClostridium difficile(C diff)胞子に汚染された看護師の制服の生地見本を用いたモデル洗浄システムを使用し、すすぎサイクルにCuWB50を添加した場合および添加しない場合のAriel生物学的洗浄剤を用いた洗浄の抗菌作用を評価した。この結果は、洗浄サイクルかすすぎサイクルかのいずれかに添加した場合、Arielは細菌汚染を102分の1〜103分の1に低下させるが、CuWB50は細菌の除去/殺菌においては100%有効であることを示している。本発明に一致した、銅をベースにした金属イオン製剤を病院および家庭の洗濯に追加することは、クロスを滅菌するためには経済的で有効な方法であると考えられる。
【表7】

【表8】

【0058】
(第4の実施形態)
はじめに:糖尿病性潰瘍は、詳細には嫌気性菌もしくは抗生物質耐性菌に感染した場合に、治療が困難な重篤な症状を示す。糖尿病性足潰瘍はたびたび身体障害を引き起こし、足指、足および脚さえも切断を余儀なくされることがある。
【0059】
糖尿病性潰瘍は通常1つあるいは複数の以下の細菌によって引き起こされる:メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)、Pseudomonas aeruginosa、A
calcoaceticus-baumanii、Klebsiella pneumoniae、Bacteroides fragilis、Porphyromonas
asaccharolytica、Finegoldia magna、Peptostreptococcus anaerobius [1-3]。
【0060】
本実施形態6の目的は、MRSA、Acinetobacter
sp.、E. coliおよびClostridium difficileに対して有効であると立証されている、CuAL42、CuPC33およびCuWB50と呼ばれる、この明細書の中に記載されているような、3つの銅をベースにした金属イオン製剤が、前に列挙した糖尿病性潰瘍に関係する細菌に対する作用を有するかどうか確認することである。
【0061】
材料および方法:本試験に用いられた細菌は臨床的分離物である。表1で用いられた株の名称と略称は以下の通りである:メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)、A
calcoaceticus-baumanii(ACCB)、Pseudomonas aeruginosa(P aerug)、Klebsiella
pneumoniae(K pneum)、Bacteroides fragilis(B fragilis)、Porphyromonas
asaccharolytica(P. asacch)、Finegoldia magna(F. magna)、Peptostreptococcus
anaerobius(P. anaerob)。
【0062】
MacFarland 0.5 ml標準懸濁液を、緩衝液で処理された等張の生理食塩液中で個々のこれらの細菌から作製した。綿棒を細菌懸濁液中に浸し、その後寒天プレート上の細菌のローンを発現させるために回転式プレーターを用いて血液寒天上に塗布した。
【0063】
様々な濃度のCuAL42、CuPC33およびCuWB50(ディスクあたりの元素銅のμg数として算出した)を含むペーパーディスクを寒天の表面上に置き、プレートを37℃で24時間(嫌気性菌)Don
Whitley Anaerobic Workstation中で嫌気的に、あるいは空気中で24時間(好気性菌)インキュベートした。
【0064】
阻害領域を電子キャリパーを用いて測定し記録した。表9に示された結果は2回行なわれた試験結果である。
【0065】
結果:表9および図15と16に示されたように、3つすべての銅製剤は100μgを超える元素銅の濃度で検証された8つのすべての微生物に対して常に極めて有効であった。3つの異なる製剤に対していくつかの細菌の感受性に一部の軽度のばらつきが見られ、例えばA
calcoaceticus-baumaniiは、50μg のCuWB50に比較してCuAL42とCuPC33に対してより感受性が高く、K.
pneumoniaeは50μgのCuAL42に対してのみ感受性を示した。
【0066】
MRSA、B. fragilis、P.
asaccharolyticaは検証した最も低い濃度である10μgの3つのすべての銅製剤に対して感受性があった。
【0067】
考察:ディスク上の元素銅が100 μgを超える、3つのすべての銅製剤の濃度によって、8つのすべての細菌に対する有意な阻害領域が形成されたことは明らかである。これらの結果は、少なくとも75
μgの銅製剤が栄養培養液の存在下で細菌を阻害するために必要であったtube dilution testを用いた試験と一致し、また更に保管されたクロス上で75μgの銅が完全に細菌を死滅させたマイクロファイバークロスに関する試験とも一致する。糖尿病患者の感染した潰瘍に通常認められる好気性菌と嫌気性菌は共に、これらのディスクテストにおいて幅広い領域の阻害によって明らかになったように100
μg以上の銅の濃度に感受性がある。異なる銅製剤およびいくつかの細菌によって多少の作用の違いがあるがこれらはわずかであった。
【0068】
1つまたは複数の例として示した銅製剤を含む洗浄剤、石けんおよびゲルは、糖尿病性潰瘍の持続と拡大の原因である細菌を死滅させる能力、および皮膚の治癒プロセスを促進する能力のために、糖尿病性潰瘍の治療に有用であると考えられる。
【表9】

【0069】
(第5の実施形態)
はじめに:HSG(95)18に記載されたように洗濯に対する推奨時間/温度の関わりは、院内感染において特に重要である細菌に有効である。さらに、これらの洗濯条件に対する科学的な裏づけはほとんどない。したがって、低温洗浄条件下でリネンの汚染を軽減させる条件を記載するために、本実施形態は始められた。
【0070】
低温洗浄サイクルは、抗菌銅製剤の最も厳しいテストと考えられた。さらに詳細には、生地に対しても「やさしい」、十分使用しやすい経済的な抗菌製品が開発されうる場合、益々高いエネルギーコストによって工業用洗浄においても家庭用洗浄においても共に低い洗浄温度が利用されるようになるであろうと考えられる。
【0071】
本試験では、標識微生物に汚染されている生地を用いた洗濯の汚染除去に関する試験について記載されている。テストの材料はCuWB50と呼ばれる金属イオン(銅)製剤で低温(18℃)洗浄を用いたElectrolux洗濯機の2種の市販の洗浄剤(指定されたAとP)である。
【0072】
略語:ACCB:Acinetobacter sp;BSA:ウシ血清アルブミン;cfu:コロニー形成単位;MRSA:メチシリン耐性Staphylococcus
aureus;PBS:リン酸緩衝生理食塩液
【0073】
(材料および方法)
代表的な市販の病院用高品質制服生地の見本はCarrington
Career & Work Wear社(英国)から提供を受けた。この見本の組成はポリエステル67%、綿33%の混合で生地重量は195g/m2であった。
【0074】
新しいClaris制御システムを用いてアップグレードした市販の洗濯機をElectrolux社から購入した。Claris制御システムは、個々の洗浄サイクルの制御時間および温度を制御するために完全な適応性があるリサーチャーを提供する。Claris制御システムはまた個々の洗浄サイクルの規格を記録する電子データー出力を提供する。ストマッカー
400サーキュレーターをSeward社(英国)から購入した。
【0075】
洗浄剤AとPは地方のスーパーマーケットから購入した。ウシ血清アルブミン(BSA)はSigma-Aldrich社から購入した。すべての微生物学的試薬および寒天プレートはOxoid社(英国)から購入した。PBSおよびBSAはSigma社から購入した。
【0076】
その見本は中でメチシリン耐性Staphylosoccus A(MRSA)もしくは多剤耐性Acinetobacter
sp.(ACCD)の臨床的分離物の、7%BSAを含むPBS溶液2 ml中の、2×108 の細菌の接種原で個々に汚染させた。その見本は室温で乾燥しその後洗浄試験で用いた。
【0077】
その見本は、15 分の標準洗浄時間で15リットルの水中で普通の洗濯量を負荷した模擬実験を行なうためにバラストリネンに付着させ、低温水洗浄あたり最終重量を5
kgにした。6つの洗浄条件は2つの菌株を用いて評価した:1.水単独;2.水+洗剤A;3.水+洗剤P;4.水+CuWB50;5.水+洗剤A+CuWB50;6.水+洗剤P+CuWB50。他に言及されなければ、CuWB50の濃度は100
ppmで、1カプセルの洗剤A(50 ml)もしくは洗剤P(25 g)を用いた。個々の洗浄の最後に1リットルの洗濯機の洗浄後の水を回収し、100 mlを遠心分離し細菌のペレットをコロニー形成単位(cfu)について検証した。
【0078】
汚染された見本を洗浄し(n=3)、汚染されていない(清潔な)対照見本(n=2;;洗濯中に汚染された見本からの細菌の移動を評価するために用いた)、またcfuとして細菌汚染の実際の基準を示すための洗浄していない見本を個々に20
mlのPBSを入れたプラスチックバッグに置き室温で15分間ストマッカー中でマッサージした。
【0079】
結果として生じたストマッカー細菌懸濁液の10倍希釈および洗浄後の洗濯機の水を、2枚の寒天プレート上に塗布し37℃で24時間のインキュベーション後cfuの数をカウントした。
【0080】
結果:以下の個々の表においてこの結果は(i)対照の汚染された見本=cfuにおける初回の細菌接種原、(ii)洗浄後の汚染された見本=洗浄後の汚染された見本上の残りの細菌のcfu、(iii)洗濯機の洗浄後の溶出液=15分の洗浄サイクルの最後に洗浄水中の遊離菌のcfu、および(iv)洗浄後の清潔な見本=洗浄後の汚染されていない見本上の細菌のcfuについて示している。
【0081】
表10における結果は、低温水洗浄によって汚染された見本上のcfuの数のわずかな減少(ACCBによる102分の1までの減少およびMRSAによる104分の1までの減少)が生じたことを示している。洗浄後の洗濯機の溶出液中のACCBとMRSAのcfuは2つの細菌について類似しており、清潔な見本に対する細菌のcfuの移動は洗浄後の汚染された見本に残ったcfuのレベルに比較して約102分の1まで低下した。これらの結果は、低温の水単独による15分間の洗浄サイクルによって一部の細菌が汚染された見本から水中へ除去され、これらの遊離菌の一部が洗浄サイクル中に清潔な見本に付着するおそれがあるということを示している。
【0082】
表11における結果は、いずれかの洗浄剤を用いた低温の水洗浄のよって汚染された見本上のAcinetobacter cfuの数の僅かな減少が起こった。(洗浄剤Aでは102分の1より僅かに多く減少し、洗浄剤Pでは102分の1よりわずかに少ない減少だった)。洗濯後の洗濯機の溶出液ACCBのcfuは洗浄剤Pに比較して洗浄剤Aで軽度大きく、とはいえ最初の接種原は洗浄剤Aを用いた実施例においても軽度より高かった。清潔な見本への細菌cfuの移動は洗浄後の汚染された見本上に残存したcfuのレベルに比較して約102分の1低かった。これらの結果は低温の水と洗浄剤を用いた15分間の洗浄サイクルによって汚染された見本から水中に一部のAcinetobacterを取り除くことが出来、また一部の遊離された細菌が洗浄サイクル中に清潔な見本に付着するおそれがあるということを示している。しかしながら、この結果はこれらの洗浄剤がAcinetobacterに対する抗菌作用をほとんど持たないということを示した、水のみの洗浄による表10に示した結果とそれほど異なるものではなかった。
【0083】
表12の結果は二つの洗浄剤を用いた低温水洗浄によって汚染された見本上のMRSAの数の10から10の十分な減少を引き起こされることを示しており、二つの洗浄剤がMRSAに対する強力な抗菌作用を持つことを示唆している。洗浄後の洗濯機の溶出液中の、また清潔な見本に移動したMRSAのcfuのレベルは洗浄剤がMRSAに対して強力な抗菌作用を有するという見解をわずかに裏付けている。これらの結果は二つの洗浄剤がAcinetobacterに関しては認められないMRSAに対する強力な抗菌作用を有しているということを示している(表11)。
【0084】
表13の結果は、CuWB50を用いた低温水洗浄が広範囲の濃度にわたって細菌汚染を低下させるのに非常に有効であるということを示している。AcinetobacterはCuWB50に対してより感受性があり、100
ppmと15 ppmの濃度で完全に死滅される。1から10 ppmのCuWB50の濃度で、Acinetobacter cfuの10分の1から10分の1までの減少によるかなりの抗菌作用が依然として存在する。ほとんどすべてのCuWB50の濃度において、Acinetobacterは洗濯機の溶出液中で生存することができず、あるいは清潔な見本に移動することができなかった。CuWB50はさらに1から100
ppmまでの濃度で10分の1から10分の1までの殺菌を引き起こすMRSAに対しても有効であった。Acinetobacterの場合と同じく、いくらかの濃度のCuWB50が含まれる洗濯機の溶出液中あるいは清潔な見本上で検出されたのは非常にわずかなMRSA
cfuであった。これらの結果から、MRSAと比較してAcinetobacterの方がやや感受性があるが、2つの菌株がCuWB50に非常に感受性があるということが示されている。
【0085】
表14の結果は明らかに、洗浄剤AもしくはPのいずれかを併用した100
ppmのCuWB50が、洗浄後の検体のいずれかにおいてcfuが全く検出されず、AcinetobacterとMRSAを共に完全に死滅させることを示している。表11の結果は、いずれかの洗浄剤単独では、Acinetobacterに対する抗菌作用がわずかであることを示しており(102分の1までの殺菌)、一方表13の結果は100
ppmのCuWB50がAcinetobacterを完全に死滅させることを示しており、このことは前記の結果の説明となる。
【0086】
表12の結果は、2つの洗浄剤単独ではMRSA に対して非常に有効で10分の1までの殺菌を引き起こすことを示しており、表13の結果はCuWB50もMRSAに対して非常に有効であることを示している(10分の1までの殺菌)。したがって、前記の結果は完全なMRSAの死滅を引き起こすCuWB50を併用した洗浄剤の追加的作用を示唆している。
【0087】
表15に示された結果は、表14で示された洗浄剤Aを併用した100
ppmのCuWB50が低温洗浄条件でAcinetobacterとMRSAを共に死滅させるということを裏付けている。さらに、表15の結果は洗浄剤Aと5 ppmの程度まで低下した濃度のCuWB50は二つの細菌を死滅させるのに非常に有効であることを示している。MRSAは更に2
ppmのCuWB50を併用した洗浄剤Aによって完全に死滅し、一方Acinetobacterはわずか10分の1までの死滅を引き起こすにすぎないこの濃度ではほとんど感受性がなかった。これらの結果は、洗浄剤Aを併用した5
ppm以上の濃度のCuWB50によって、低温洗浄を用いた場合でも強力な抗菌作用のある併用法が可能になることを示している。
【0088】
考察:2つの市販の洗浄剤を用いた場合および用いない場合における、看護師の制服の生地のMRSAまたはAcinetobacterに汚染された見本の低温水洗浄において、殺菌性銅化合物、CuWB50の作用を工業用Electrolux洗濯機を用いて評価した。低温水のみによる洗浄では、汚染された見本上のMRSAおよびACCBの102分の1〜10分の1までの低下を生じたが(表10)、放出された細菌が洗浄後の洗濯機の溶出液中および滅菌した見本上に検出された。
【0089】
単独で用いられた2つの市販の洗浄剤は、汚染された見本から得られたACCB(cfuの10分の1〜10分の1までの低下;表11)に比較してMRSA(cfuの10分の1〜10分の1までの低下;表12)の除去により有効であった。2つの場合において、洗浄後の洗濯機の溶出液中に生菌が検出されたが、MRSAの場合には回復した菌数が低下せず、この菌株に対する洗浄剤の抗菌作用はわずかであることが示唆された。表13に示したようにCuWB50単独で100
ppmと15 ppmでACCBが完全に死滅し、1 ppmの低い濃度でcfuが10分の1〜10分の1まで低下した。CuWB50単独では1〜100
ppmでMRSAのcfuが10分の1〜10分の1低下した。2つの場合に、洗浄後の洗濯機の溶出液および滅菌した見本上に回復した細菌数は実質的に低下し、低い濃度でも低温水洗浄におけるCuWB50単独の抗菌作用を示した。
【0090】
いずれかの洗浄剤を併用した100 ppmのCuWB50は、汚染された見本上、洗浄後の洗濯機の溶出液中および滅菌した見本上で、ACCBとMRSA共に100%死滅という結果に至った(表14)。100
ppmのCuWB50はMRSAに対してのみ完全に有効であるわけではなく(表13)、2つの洗浄剤はMRSAを死滅させる能力にいくらかのばらつきを示したため、2つの製品を同時に用いて完全に汚染除去する追加的作用が明らかに認められる。ACCBは比較的2つの洗浄剤単独に対して耐性を示したが(表11)、CuWB50に対しては非常に感受性があり(表13)、CuWB50といずれかの洗浄剤を併用することによってACCBの完全な死滅に至った。
【0091】
実際に、CuWB50と洗浄剤Aとの併用は、MRSAに対してはCuWB50(2〜100
ppm)のすべての濃度で、またACCBに対してはCuWB50の濃度が5〜100 ppmで非常に有効であった。すべての場合において、洗浄後の洗濯機の溶出液中にあるいは滅菌した見本上に生菌は回復しなかった。
【0092】
最後に、これらの結果から洗浄剤単独による看護師の制服の低温水洗浄が、すべての細菌汚染の除去に有効であると考えられることが示唆されている。低温水洗浄を用いたいずれかの洗浄剤と併用して5〜10 ppmの少量のCuWB50を追加することによって、MRSAおよびACCBに汚染された見本および洗浄後の洗濯機の溶出液および滅菌した見本の完全な殺菌という結果に至った。10
ppmの濃度のCuWB50は,15リットルの水にちょうど5 mlの製剤化された組成物保存溶液を添加することによって、またこれらの実験に用いられた見本上の高レベルの細菌汚染(約108
cfu)を考慮に入れることよって作製できるため、その結果は、通常量の市販の洗濯用洗浄剤を用いた機械洗浄にCuWB50を追加することは、すべての病院の洗濯場における細菌汚染を減少するために役立つかもしれないということを示唆している。C.
diffcile胞子は検証されなかったが、この明細書の中の我々の結果から、C. diffcile胞子はCuWB50/洗浄剤併用によって効果的に汚染除去させるであろうということが示唆される。
【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【0093】
(第7の実施形態)
はじめに:院内の衛生状態において重要な考慮すべき要件は手の清潔である。PurellTM(Gojo
Industries社、米国)は英国における病院の看護職員によって現在広く用いられているアルコールをベースにしたハンドゲルである。銅金属イオン組成物CuAL42は、この明細書の中で5つの一般的な病原菌株に対する強力な殺菌作用を有することが示されている。したがって、アロエベラをベースにした、Xgelと呼ばれる314
ppmのCuAL42を含むアルコールを含まないハンドゲルが製剤化され、この第7の実施形態の中のPurellと比較されている。用いられたプロトコールは、検証している製品が必要な基準に達するために60秒で10分の1までの殺菌を示すに違いない場合、標準化された手順であるEN(Europeam
Norm)12054(1997)に基づいた。
【0094】
略語:ACCB:Acinetobacter sp,; BSA:ウシ血清アルブミン;cfu:コロニー形成単位;MRSA:メチシリン耐性
Staphylococcus aureus; PBS:リン酸緩衝生理食塩水液;
【0095】
結果:図5から7に示したように、それぞれMRSAおよびACCBの場合に、PurellTMおよびXgel
はともに60秒で必要な10分の1までの死滅をもたらした。しかしながら2つの場合においてはPurellに比較して非常に有効で、その場合Xgelは100
%の2つの菌株を死滅させた。C. diffcile胞子の場合、Purellは無効であり、一方Xgelは60秒で必要な10分の1までの死滅をもたらした(3000倍の殺菌)。
【0096】
材料および方法:標準EN12054(1997)プロトコールは以下の通りであった。簡単に言えば、テスト用ハンドゲル9
mlは1 mlの細菌懸濁液を用いて接種され混合された。その後30秒および60秒の時点で1 mlのアリコートを採取し9 mlのリンゲル液と5分間混合した。その後アリコートを取り寒天プレート上に拡散させ、CFUがカウントされた場合、一晩インキュベートした。
【0097】
考察:細菌またはその胞子は、手の接触によって容易に病院中に広がる恐れがあるため、手の清潔は院内の衛生状態において非常に重要である。PurellTMは英国の病院では現在医療従事者によって広く使用されるアルコールをベースにしたハンドゲルである。
【0098】
本試験の結果は、314 ppmのCuAL42を含むアロエベラをベースにしたハンドゲルであるXgelは、3つの重要な病原菌、MRSA、Acinetobacter
sp.およびC. diffcile胞子に対して、PurellTMと比較してより有効であることを示している。この点において、C.
diffcileはMRSAと比較して患者にとってより大きな脅威になっており、また更に多くの患者が現在MRSAに比較してC. diffcileのために死亡しているということに注目することが重要である。
【0099】
すべてのアルコールをベースにしたハンドゲルと同じく、PurellTMは繰り返し長期間使用する場合、皮膚乾燥とひび割れを引き起こすことが知られている。これと対照的に、アルコールを含まないアロエベラをベースにしたXgelはより手にやさしい。さらに我々の予備試験では、アルコールが蒸発した場合、残ったPurellTM由来の残渣が少なくとも3時間MRSAとAcinetobacter
sp.の増殖を依然として補助することもあり、一方Xgelの残渣は細菌の生存を全く許さないことが示されている。
【0100】
(第8の実施形態)
(CuAL42、CuPC33およびCuWB50とコードされた銅組成物、それらの成分結合剤および硫酸銅溶液に対してMRSAおよびAcinetobacter
sp.(ACCB)に対する時間-殺菌曲線(TK)に関する報告)
(はじめに)
我々は、これらの低濃度の銅組成物CuAL42、CuPC33およびCuWB50が、2時間にわたって103分の1から104分の1までの死滅をもたらしたことを立証した(図17から19を参照)。我々は、RPMI-1460培地を用いたMIC/MBC試験管法によって測定したように、また150
ppmで(実験的環境における洗浄状態で用いられたように)最小殺菌濃度(MBC)で一連の時間殺菌実験を実施した。
【0101】
(MIC/MBC測定)
個々の化合物、適切な結合剤および硫酸銅に対するMIC/MBCを、RPMI-1460培地(Sigma)において100
ppmから1 ppmまで低下した範囲の個々の最終濃度を作製することによって測定し、その後試験管あたり2×105の細菌の接種原を播種した。すべての試験管は37℃で一晩インキュベートし、最初の試験管と同様にMICを算出し、増殖が認められないことが明らかになった(1ppm以上から読み取る)。血液寒天に対して増殖を示さないすべての試験管を継代培養することによってMBCを測定し、37℃で一晩インキュベートし、生存しているコロニーのいくらかの増殖を読み取った。MBCは最初の試験管と同様に算出し、寒天プレート上に増殖を全く認められなかった。
【0102】
(時間殺菌曲線)
時間殺菌曲線はRPMI-1460培地(Sigma)を用いて実施した。
【0103】
MRSAは個々の組成物、20 ppmと150 ppmの結合剤および硫酸銅の濃度で検証した(図1と2を参照)。ACCBは個々の組成物、結合剤および硫酸銅の40
ppmと150 ppmの濃度で検証した(図3と4を参照)。個々の実験に対する増殖の対照はRPMI-1460および試験細菌のみから成る。
【0104】
個々の反応試験管は、必要な濃度の組成物、結合剤あるいは硫酸銅を含む10 mlのRPMI-1460からなり、2×106の細菌を播種し、直ちに37℃でインキュベートした。アリコートを0、15、30、60、120、360および960分の時点で採取し、希釈液として4分の1の濃さのリンゲル液を用いて生菌カウントを3回行い、中和剤を37℃で一晩インキュベートした血液寒天上に接種した。コロニーをカウントし、生存しているコロニーの数をコロニー形成単位として表した。コロニー数の対数値を個々の時点に対してプロットし、個々の化合物、結合剤および硫酸銅に対する個々の濃度で個々の細菌についてのTK曲線を作成した。増殖制御のための曲線を、増殖率の比較についての個々の曲線上にプロットした。結合剤という語句はこの明細書の中では口語的に用いられ、銅化合物から分離した銅組成物中に存在する組成物を含む。
【0105】
(結果の要約)
MRSAに対するMIC/MBC測定の結果は10/20
ppmであった。
ACCBに対するMIC/MBC測定の結果は10/20
ppmであった。
【0106】
(時間殺菌曲線)
MRSAに対して:20ppmでCuAL42およびCuWB50は6時間後に104分の1に、また6時間と16時間の間のいずれかの時点で106分の1まで死滅した。CuPC33に対する死滅はそれぞれ103分の1および106分の1であった。150
ppmでCuAL42 およびCuWB50は60分後に、CuPC33は120分後に106分の1まで死滅した。すべての結合剤および硫酸銅はいくらかの作用を有するが細菌は回復した。
【0107】
ACCBに対して:40 ppmで3つのすべての組成物は6時間後に104分の1まで死滅し、6時間と16時間の間に106分の1まで死滅した。150
ppmで3つのすべての組成物は60分後に106分の1まで死滅した。すべての結合剤と硫酸銅はほとんど初期の作用を有しなかったが細菌は回復した。
【0108】
貼付の図1から4は、0、15、30、60、120および360分間最終的に960分後に個々に登録された併用に対する増殖曲線を示している(26時間のインキュベーション)。
【0109】
(第9の実施形態)
(銅をベースにした殺菌剤を含む非アルコール性ハンドゲルの汚染除去の有効性)
特別に作られたハンドゲルの適用による汚染除去は感染制御のために欠くことのできないものである。大部分のハンドゲルは、殺菌作用があり、またゲルに対して速乾作用のあるイソプロピルアルコールを含む。アルコールは手にも環境にも優しくなく、血流中に吸収される。我々は314 ppmなどの 300 ppm台の有効な銅を含む3つの無機殺菌剤(CuWB50、CuAl42、およびCuPC33)のうちの1つを含む4つの非アルコール性aloe
veraハンドゲルを製剤化した。106のCFUまたはMRSA、あるいはE coliを参加者の手に適用し、その後直ちに手掌/指の押印を取った。その後4つのハンドゲルのうちの1つを手にこすりつけ、一定時間間隔で引き続き押印を取った。対照であるアロエベラとは違って、MRSAは適用後直ちにCuAL42またはCuWB50含有ゲルのいずれかから回収することはできず、その後もずっと回収できなかった。MRSAは15分間 CuPC33で処理した手から回収できた。対照とは違って、E coliはいつの時点でもCuAL42含有ゲルで処理された手から回収できなかった;細菌の完全な消失は他の2つのゲルに対して後の時点で確認されたにすぎなかった。我々は、CuAL42含有ゲルが迅速かつ効果的に手から生菌を除去し、アルコール含有ゲルに対するより個人的にまた生態学的に許容できる代替物を提案することができると結論づけている。結果は図5、6および7に示している。
【0110】
(第10の実施形態)
(CuAL42、CuPC33およびCuWB50の安全性:組織培養における生きたヒト細胞に対する細胞毒性作用に関する試験)
(背景、目的[aims and
objectives])
他の実施形態はこの明細書の中で、これらの組成物は著しい抗菌作用を有し、それは予想外に個々の成分より優れているということを示している。本実施形態は病原菌に対するCuWB5、CuPC33およびCuAL42の抗菌作用および毒性作用が哺乳動物(ヒト)細胞に拡がるかどうか検討するためにデザインされている。
【0111】
(材料および方法)
3つの銅含有抗菌性溶液−CuPC33、CuAL42およびCuWB50−が提供され、個々の溶液は30.43
g/Lの銅イオンを含有した。硫酸銅の対照液は蒸留水中で同じ濃度に作成された。2つのヒト細胞系がこの実施形態に対して用いられた:腸上皮細胞系であるHT-29、およびU937、単球性リンパ腫。適切な完全培地中に様々な濃度で銅を含有する抗生物質溶液あるいは硫酸銅の検体を添加し、細胞培養組織を作製しその細胞をさらに24時間または48時間培養した。顕微鏡による検査の後、細胞を固定し染色し、国立癌研究所で開発し、妥当性が確認されたスルホローダミン(SRB)細胞毒性検定法を用いて細胞毒性を定量的に測定した。
【0112】
CuPC33(■)、CuAL42(▲)、CuWB50(▼)、および硫酸銅(◆)の毒性の割合は24時間と48時間の時点で、5 %または25 %ウシ胎児血清(FCS)を含む培地でHT-29を用いて評価した。すべての培養試験は3回実施した。結果は図8に示している。
【0113】
CuPC33(■)、CuAL42(▲)、CuWB50(▼)、および硫酸銅(◆)の%毒性は24時間と48時間の時点で、5 %または25 %ウシ胎児血清(FCS)を含む培地においてU937細胞を用いて評価した。すべての培養試験は3回実施した。結果は図9に示している。
【0114】
(結果)
顕微鏡による検査で、5 %または25 %のFCS を添加したいずれかの細胞系に対して1〜100 ppmの濃度で抗生物質溶液あるいは硫酸銅を含む銅金属イオンのはっきりした毒性作用は認められなかった。しかしながら、1000 ppmで銅を含有する抗生物質溶液および硫酸銅は、25 %FCSを添加した培地のHT-29細胞のラウンディングを引き起こし、一方5 %FCSを加えた培地のHT-29細胞は細胞死の明らかな徴候を示した(顆粒状の細胞質によるラウンディングおよび屈折力の喪失)。これらの作用は24時間と48時間培養で類似していた。5%または25%FCSを加えた倍地中でHT-29は等しく十分増殖し(図8の凡例において対照の吸光値を参照)、血清濃度の増加が、結果として銅含有抗生物質溶液の細胞毒性作用を多少予防した。U937 細胞は5%FCSを加えた培地に比較して25%FCSを加えた培地でより増殖したが(図9の凡例において対照の吸光値を参照)、銅含有抗生物質溶液およびHT-29のような硫酸銅による細胞毒性の類似パターンを示した。
【0115】
SRB検定法の結果は、100 ppm までの濃度で抗菌性溶液を含む3つの銅金属イオンのいずれかによって、あるいは硫酸銅によって、HT-29細胞(図8)あるいはU937細胞(図9)のいずれかに対する有意な細胞毒性を認めなかったということを裏付けている。1000ppmでは、3つのすべての銅を含有する抗菌溶液によって2つの細胞系を用いた24時間と48時間の培養で共に全般的に80〜100%の細胞毒性を認めた。血清中濃度の増加によるわずかな保護作用は、SRB検定法によって識別できず、細胞の顕微鏡学的評価の価値を強調させている。硫酸銅は25 %FCSを含む培地においてHT-29とU937細胞に対して共に毒性をほとんど示さなかった(図8と9、パネルCとD)。
【0116】
(結論)
3つの銅含有抗生物質CuPC33,CuAL42およびCuWB50および硫酸銅は1〜100 ppmからの濃度で2つの異なるヒト細胞系に対して有意な細胞毒性を示さなかった。1000 ppmの濃度で3つのすべての銅を含有する抗生物質溶液は、2つのヒト細胞系に対して強い細胞毒性を示し(80〜100 %)、この作用は培地中のFCS濃度が増加することによってほんのわずかに低下するにすぎなかった。1000 ppmで硫酸銅はさらに2つの細胞系に対して強い毒性を示し、これは血清濃度を増加させることによって十分低下し、またSRB検定法によって視覚化できた。
【0117】
3つのすべての銅組成物の毒性の非常に大きな生物学的安全性有効投与量は哺乳動物(ヒト細胞)というよりむしろ細菌に対する作用に関して存在する。この結論は1から100ppmの濃度範囲での組成物の明らかな抗菌作用に基づいており、その濃度においてヒト細胞系に対する細胞毒性は検出できなかった。
【0118】
(第11の実施形態)
(CuAL42、CuWB50、およびCuPC33の汚染された洗浄中のクロス上に存在する細菌のバイオバーデンを低下あるいは消失させる能力)
(背景、目的)
細菌は、多くの場合特許権のある湿ったループをベースにした方法、あるいはさらに現代的な(かつ有効な)マイクロファイバーをベースにしたクロスのいずれかを用いて表面から除去される。ウルトラマイクロファイバーをベースとしたクロス(UMF)は詳細には固い表面から細菌を除去するのに有効である。これらのクロスは洗剤を含まない水で最適に機能する。病院の環境で用いた後、このようなクロスは、何十億とまでいかないが、何百万もの生菌を含むため、少なくともそれらのうちの一部は院内感染の原因であることが知られている。これらのクロスは水で湿らせた場合最適に機能するため、我々は水にCuAL42、CuWB50、およびCuPC33を追加することにより、クロスによって集められたこれらの細菌の生存能力が低下もしくは失するかを調査した。
【0119】
(材料および方法)
薄板の表面に適当な濃度のMRSA、Acinetobacter、もしくはClostridium difficile胞子を含む緩衝液で処理した生理食塩液を接種し、100 cm2の面積に滅菌した平板スプレッターを用いて広げ乾燥させた。この領域は生きた生育可能な病原菌を十分確実に付着させるためにコンタクトプレートさせた。その後この領域を75 ppmの最終濃度でそれぞれの銅組成物を用いて湿潤の推奨限界まで湿らせたウルトラマイクロファイバークロス(UMF)で洗浄した。その後この領域を再びUMFによる接種原の除去を評価するためにコンタクトプレートさせた。その後UMFをミニグリップバッグに入れ、室温で16時間放置し洗濯場まで移動する模擬実験を行なった。16時間後に100 mlのリン酸緩衝液中に置き、ストマッカー(生地と食品から生菌を遊離させるようデザインされた装置)内で250 rpmで3分間振とうした。溶液に対して生菌数カウントを行い、10 mlの溶出液を3500 rpmで10分間遠心分離し、沈殿物は血液寒天上で培養した。平板のバックグラウンドのカウント数およびPBSのカウント数をあらゆる環境汚染について検証した。この結果は以下の表16に示している。
【表16】

【0120】
(結論)
コンタクトプレートは、UMFを用いて効果的に除去された生育可能な接種原を明らかにした。AcinetobacterおよびC. difficile胞子に対して16時間のタイムフレームで3つのすべての銅組成物によって完全に殺菌され、MRSAに対しては10分の1(99.99%)殺菌した。AcinetobacterもしくはC. difficile UMF-Cuクロスからの溶出液の遠心分離された沈殿物から回復可能な細菌は認められなかった。本実施形態から、75 ppmで存在する3つのすべての銅組成物は、現在評価されつつあるNHSを経由して提供されたクロス洗浄技術と併用して用いた場合、非常に有効な殺菌剤であることを示唆する。他の殺菌剤(4級アンモニウム化合物、ハロゲン等などのような)はこの状況では等しく有効であるが、環境的理由のためにこれらを排除するという現在の傾向はより安全な代替物に対する必要性を生み出すと考えられる。ここに示されたデータはこれらの銅金属イオン組成物がこのような代替物質を提案するという前提を裏付けている。
【0121】
(第12の実施形態)
(H- pyloriに対する銅抗菌剤CuAL42およびCuPC33の有効性)
本実施形態において標準的NCCLS法は検証するために用いられ、NCTC CagA陽性、NCTC CagA陰性、およびACTC J5(ゲノム配列は知られている)の株を使用する。臨床的分離物はUK1メトロニダゾール耐性およびB1クラリスロマイシン耐性であった。107 cfu/ml(ミリリットルあたりのコロニー形成単位)の最終的接種原が用いられた。
【0122】
本方法においてこれらの個々の抗菌剤の0.5、1.0、5.0、および12 ppm濃度における標準殺菌曲線が15、30、60および120分の時点で検体から推定された。
【0123】
用いられた中和剤は1/4乳酸塩リンゲル液であった。定量に関して、10倍希釈で調製され100マイクロリットルを塗布した。プレートはCampyGemによって作製された雰囲気中で37℃で5日間インキュベートした。
【0124】
(結果:)
添付の図10から14に示すように、CuAL42はCuPC33と比較してより有効である。5 ppmにおけるCuAL42は120分にわたって生菌数を105分の1から106分の1まで減少させた。12 ppmのCuAL42は30分後に生菌数を105分の1から106分の1まで減少させ60分から120分後に増殖は認められないという結果に至った。CagAの有無やメトロニダゾールまたはクラリスロマイシンに対する耐性も2つの銅金属イオン組成物の有効性に何らかの影響を与えるとは考えられなかった。
【0125】
(第13の実施形態)
(ハンドゲルの残渣の抗MRSA作用)
方法:このハンドゲルは10 cm2あたり1 mlで薄板の表面平板上に拡散させ室温で一晩乾燥させた。0.1 mlのMRSA懸濁液のPBS溶液(106CFU/ml)を慎重に個々の10 cm2の印をつけた領域上に拡散させ10分間乾燥させた。そのスクエアに直ちに(t=0時間)またその後24時間までの様々な時点に接触塗布した。接触プレートは24時間インキュベートしコロニー形成単位(CFU)をカウントした。
【0126】
結果:図20に示したように、おそらく残渣内にCuAL42が存在するためXgelの残渣上にいずれの時点においてもCFUは存在しなかった。これに対照的に、CFUはPurell残渣上に3時間までのすべての時点において検出され、一方時間依存性の方法におけるこれらの減少から、残渣における防腐剤または一部の他の成分がわずかな抗菌作用を持つ事が示唆されている。これは一晩の乾燥の間に蒸発するであろうことから、このことはPurell残渣中のアルコールの存在が原因であることは考えられない。
【0127】
結論:Xgel残渣はすべての時点でMRSAの生存と増殖を妨げ、一方Purell残渣は少なくとも3時間のMRSAの生存を裏付けた。1リットルのPurellは1ヶ月に床あたりで用いられるとNHSは推定している。70%のアルコールを含むため、約300 mlの残渣が、1ヶ月あたり個々の床の周りに沈殿し、このことはMRSAの生存を裏付ける可能性がある(予備試験の結果では抗生物質耐性Acinetobacter株を用いて同様の結果が示された)。これと対照的にXgel残渣はMRSAの生存を裏付けるものではなく(もしくはAcinetobacter-予備試験の結果)、それゆえ細菌の増殖および医療のセッティングの中での生存を予防するために役立つであろう。
【0128】
(第14の実施形態)
(75 ppmにおける3つの銅組成物によるMRSAに汚染されたUMFクロスの滅菌)
方法:MRSA(2×106)のPBS溶液は薄板表面平板(50 cm2)上に拡散させ10分間乾燥させた。1つのスクエアを直ちにウルトラマイクロファイバー(UMF)クロスで軽くこすり、ストマッカー処理、塗布し、また、24時間後にコロニー形成単位(CFU)をカウントし、接種が正しく行なわれ、UMFクロスによって十分除去されたことを確認した。他の平板は水で湿らせた対照のUMFか、75 ppmの3つの銅組成物を含む水で湿らせたUMFかのいずれかで軽くこすった。これらの汚染されたUMFは16時間プラスチックバッグ内に置きその後ストマッカー処理、塗布し、24時間後のCFUをカウントした。
【0129】
結果:図21に示したように、2×106のCFUを含む接種原の対照はUMFクロスがすべてのMRSA菌を取り除くということを示している。水のみで湿らせ16時間保存した対照UMFクロスは1×106のMRSAを含有し、一方3つの銅化合物で湿らせたUMFクロスは、16時間保存後生菌を含まなかった。
【0130】
結論:これらの結果は、UMFクロスが病院で用いられるなど薄板の表面からMRSAの除去に非常に有効であるということをはっきりと実証している。しかしながら、UMFクロスに対する細菌の生存率は非常に良好で、これらのクロスの廃棄あるいは洗浄は他の場所に生菌を伝播する深刻な危険性を有する。したがって、銅化合物で湿らせたUMFクロスが16時間後に生存しているMRSAを含まないという事実が非常に重要である。3つの銅組成物を用いて見られたこの100%有効な汚染除去は、危険な細菌が表面から除去される必要がある病院および他の場所で大きな価値があるかもしれない。
【0131】
(第15の実施形態)
(A431ヒト皮膚細胞系に対するハンドゲルの細胞毒性)
方法:ヒト扁平上皮細胞系A431は、空気雰囲気中で5%CO2と共に37℃で湿らせたインキュベーター内の75 cm2組織培養フラスコ内で、10%FCS、2 g/Lおよび炭酸ナトリウムおよび2 mMのL‐グルタミン(完全培地)を補ったRPMI 1640中で培養した。毒性実験のために、A431細胞を200μlの完全培地中でウェルあたり5×104細胞で96穴プレートの平底のウェルに塗布した。実験実施当日に、劣化した培地を吸引し、100μlの新鮮な完全培地に置換した。ハンドゲルの検体を完全培地で希釈し、図に示された濃度を2倍にし、100μlの個々の検体をさらに24時間培養した細胞に添加した。顕微鏡検査の後、細胞を固定し染色して以下に記載したように定量的に細胞毒性を測定した。スルホローダミンB(SRB)細胞毒性検定法は国立癌研究所で開発され、妥当性が確認された。簡単に言えば、細胞をRTMI培地(FCSでなく)で2回洗浄し、その後4℃で1時間10%トリクロロ酢酸で固定した。水道水で2回洗浄後、細胞を室温で30分間SRB(0.4%w/vSRB含1%酢酸溶液)で染色した。水道水で2回洗浄後、残りの染料を10 mMのトリスベースで溶解しウェルの吸光度(O.D.)を540 nmでDynatech社製 マルチプレートELISAリーダーで測定した。細胞生存率はテストO.D.を対照のO.D.で割り、100を掛けることによって算出した。
【0132】
結果:貼付の図22に示したように、Xgelベース(増粘剤としてキサンタンガムとクエン酸を加えたアロエベラゲル)は検証されたあらゆる濃度でA431細胞の生存率に有意な影響を与えなかった。Xgelは銅をベースにした殺菌剤である314
ppmのCuAL42を添加したXgelベースからなる非アルコール性ハンドゲルである;この製品は最も高い濃度で約25%細胞生存率を低下させたが、低濃度では効果が認められなかった。10%エタノールは約50%A431細胞生存率を低下させたが、低濃度ではほとんど効果が得られなかった。Purellは手の消毒のために現在病院で用いられるアルコールベースのハンドゲルである。Purell は62%の変性アルコールに加えて、ミリスチン酸イソプロピル、プロピレングリコール、酢酸トコフェロール、アンモノメチルプロパノールを含み、10%の濃度で95%を超えるA431細胞を死滅させたが、低濃度ではほとんど効果がなかった。SpirigelおよびSoftalindは更にアルコール含有ハンドゲルであるが、SpirigelはPurellと類似した特徴を有しており、Softalindはちょうど1%の濃度でA431細胞の約50%を死滅させた。しかしながら、Softalindは変性したアルコールとプロパノールの混合物ならびにPEG-6カプリル/カプリン酸グリセリルおよびアジピン酸ジイソプロピルを含み、おそらくA431細胞に対する有意により大きな毒性作用の原因となるであろう。Nexanは0.2%のトリクロサン+洗浄剤と含み、著しい細胞毒性を示し、検証されたすべての濃度でA431細胞を死滅させるハンドゲルである。高濃度では(#)Nexanは実際にA431細胞を溶解し(顕微鏡的観察)、この効果はおそらく洗浄剤によると考えられた。最後に、4級アンモニウム化合物を含有する2つの洗浄剤CBCとActiv8はA431細胞に対しても強い細胞毒性が認められる。より高い濃度(*)において、これらの製品はプラスチックプレートに死滅したA431細胞を固定させるため(顕微鏡学的観察)、細胞生存率が改善したという間違った印象を与えた。
【0133】
結論:この結果は、アルコール含有ハンドゲルが培養組織中のA431皮膚上皮細胞に対してわずかな細胞毒性を有しているということを示している。しかしながら、これらの細胞毒性作用は1/10以下の濃度で認められ、これらの製品は医療従事者によって手に使用し、例えばPurellが頻繁な連日の使用によって皮膚乾燥とひび割れを引き起こすということが十分実証されている。
【0134】
Xgelは、Xgelベースがいずれかの濃度でA431細胞に対する有意な作用を有しないため、(おそらくCuAL42殺菌剤の存在による作用)1/10の通常の強さ(1/33の通常の強さでPurellとだいたい同じ効果)で非常にわずかな細胞毒性を示した。これらの結果によって、XgelはPurellに比較して皮膚により優しいということが示唆されている;他の試験では、Xgelは、Purellに比較して、MRSA、抗生物質耐性AcinetobacterおよびClostridium
difficile胞子を死滅させることにおいてかなりより有効であることが示されている。実際に、PurellはC. difficile胞子に対してまったく効果がなく、致命的な下痢を引き起こすおそれがあるこの細菌は現在MRSAと比較して病院における死亡のより大きな原因であるため、Purell というよりむしろXgelの使用は論理的な選択肢であると考えられる。
【0135】
Nexanは0.2%のトリクロサンおよび洗浄剤を含み検証されたすべての濃度で完全にA431細胞を死滅させた。驚くべきことに、Nexanはイタリアの病院の医療従事者によって標準的なハンドゲルとして用いられている。2つの洗浄用製品CBCおよびActiv8は、それらの原料と同様の4級アンモニウム化合物を含み、A431細胞に対して強い毒性を示したが、これらの製品はおそらくゴム手袋をした人々によって用いられるため皮膚の問題を引き起こすことはないであろう。
【0136】
(第16の実施形態)
(病院における突然の発生から分離された異なる菌種に対する3つの銅組成物の感受性の測定)
目的:Enterobacteriaceae、Pseudomonads、StaphylococciおよびEnterococciのような一連の細菌に対する3つの銅組成物の作用を確認すること。
【0137】
(要約)
合計170の異なる細菌分離物(22のAcinetobacter、18のEnterobacter、27のKlebsiella、26のEnterococci、10のPseudomonads、37のSerratiaおよび45のStaphylococci)をMIC測定法を用いて3つの銅組成物に対する感受性について検証した。領域サイズは11〜31 mmで変化し、耐性のパターンを示さなかった。
【0138】
(材料)
1)この明細書の中に記載されコード化されたように、用いられた銅組成物:表1の実施形態1から8より抽出したCuAL42、CuWB50およびCuPC33
2)イソセンシテスト用寒天(ISO Agar)
3)イソセンシテスト用培養液(ISO
broth)
4)抗菌感受性テストディスク(OXOID
CT0998B)
5)ストアから入手した滅菌綿棒
6)一晩の増殖させた細菌培養組織
【0139】
(方法)
抗菌感受性テストディスク(OXOID
CT0998B)を20μlの個々の銅組成物で飽和させ、2時間熱風炉で別々に乾燥し、4℃で保存した。細菌培養組織を適切な培地(栄養寒天またはMacConkey)上に接種し、一晩インキュベートした。5ウェル分離コロニーにループで接触し、5 mlのイソセンシテスト用培養液(ISO broth)に接種した。この培養液は36℃±20℃で好気的に一晩インキュベートした。接種原は一晩培養液を攪拌し、次の通りのISO broth 5mlにロングプラスチックパスツールピペットから一晩培養物“x”滴をピペット操作することによって調製した。
Enterobacteriaceae 1滴
Pseudomonas 1滴
Enterococci 5滴
Staphylococci 2滴
滅菌した綿棒を攪拌した接種原懸濁液に浸し、試験管の壁に擦りつけ、過剰の液体を除去するために回した。プレートは回転式プレーターを用いて接種した。滅菌した鉗子を用いて、寒天と完全に接触するようにプレート上にディスクを置いた。一度適用したディスクは取り除かなかった。
【0140】
(読み取り)
阻害領域は増殖が本組成物によって阻害された場合、測定された。
結果を記録した。
A= CuAL42
B=CuWB50
C=CuPC33
領域サイズはmmで示された。
【0141】
(結果)
Staphylococcus aureus
【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【表22】

【表23】

【0142】
(結論)
合計170の株、22のAcinetobacter、18のEnterobacter、27のKlebsiella、26のEnterococci、10のPseudomonads、37のSerratiaおよび45のStaphylococciを3つの銅組成物に対して検証した。耐性は認められなかった。領域サイズは11〜31 mmまで変化した。
【図面の簡単な説明】
【0143】
本発明はこの明細書の添付の請求項に記載している。本発明を図示し当業者が容易に評価し実行に移すことができるように、それらの実施形態はここでは限定されない実施例のみによって示され、添付の図について記載する(図面の詳細な説明)。
【図1】図1は、20 ppm相当の銅における銅塩単独および比較のための組成物の残留成分(この明細書の中では口語的に「結合剤(binder)」と呼んだ)のMRSA時間−殺菌曲線である。
【図2】図2は図1と同様の時間−殺菌曲線であるが、150 ppm相当の銅における曲線である。
【図3】図3は図1と同様の40 ppmにおける時間−殺菌曲線である。
【図4】図4は図3と同様の150 ppmにおける時間−殺菌曲線である。
【図5】図5は標準的なEN12054プロトコールを用いたMRSA菌の生存率に対する、CuAL42 [▲] およびPurellTM [■] ハンドゲルを含む製剤化されたX-gel水性培地の抗菌作用を示している。
【図6】図6は図5に類似した図であるが、ACCBの生存率に対する、同じ製剤を用いた作用を示している。
【図7】図7は図5と6に類似した図であるが、C.diff(胞子)の生存率に対する、同じ製剤を用いた作用を示している。
【図8】図8Aから8Dは、ヒト腸上皮HT-29細胞に対する、3つの銅製剤および硫酸銅単独 [□] の細胞毒性を示すグラフである。
【図9】図9Aから9Dは、図8Aから8Dと類似したグラフであるが、ヒト単球性リンパ腫細胞U937に対する硫酸銅単独[□]と比較した3つの銅製剤の細胞毒性作用を示している。
【図10−14】図10から14は、第12の実施形態のH. pyloriに関連した、例として示した銅製剤の作用を示したグラフであり、ここでALはCuAL42、PCはCuPC33の略語として用いられ、濃度はppmで示され、0は対照を示す。
【図15】図15はコード化されたCuAL42を例として示した銅製剤を用いて得られた阻害領域および糖尿病性足潰瘍に関連した8つの細菌性微生物を示している。
【図16】図16は図15と同様の阻害領域を示しているが、CuWB50とコード化された銅抗菌性組成物を用いた図である。
【図17−19】図17から19は処理が困難な様々な菌および/もしくは抗生物質耐性菌に対して低用量(1ppm)における3つの銅組成物の時間−殺菌曲線を表すプロットである。
【図20】図20は本発明(Xgel)に従って、ゲルタイプの水性培地を市販の製品と比較した第13の実施形態に関連する、ハンドゲルの残渣の抗MRSA作用を示している。
【図21】図21は、3つの製剤化された銅抗菌組成物を浸み込ませることによって、表14に関連した汚染されたUMF(ウルトラマイクロファイバー)を示している。
【図22】図22は、第15の実施形態で説明したような他の適切な製品を用いた、ハンドゲルのA431ヒト皮膚細胞系との比較である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水性培地において溶解して銅イオンを形成することができる少なくとも1つの水溶性銅化合物;
(b)水性培地において溶解してアンモニウムイオンを形成することができる少なくとも1つの水溶性アンモニウム化合物;
(c)少なくとも1つの水溶性の酸;および
(d)成分(a)、(b)および(c)が溶解する水性培地を含み、
(e)酸性のpHおよび(f)50 mVを上回る分解電圧を有する抗菌製剤。
【請求項2】
(a)例えば硫酸銅、塩酸銅、硝酸銅のような1つあるいは複数の無機銅の塩を含む請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
(b)少なくとも1つの無機アンモニウム塩あるいは水酸化物を含む請求項1または請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
(c)例えば塩酸、硫酸、硝酸、およびリン酸のうちの1つのような、1つあるいは複数の無機酸を含む先のいずれかの請求項に記載の製剤。
【請求項5】
(c)クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、乳酸から成る群から選択される1つあるいは複数の酸を含む請求項1から3のうちのいずれか1つに記載の製剤。
【請求項6】
前記水性培地が純粋な蒸留水を含む、あるいは本質的に純粋な蒸留水から成る先のいずれかの請求項に記載の製剤。
【請求項7】
前記pH値が5未満、好ましくは4未満、さらに好ましくは3未満、最も好ましくは2.5未満である先のいずれかの請求項に記載の製剤。
【請求項8】
前記pH値(e)が2以下である請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
前記分解電圧の値(f)が100 mVを上回る、好ましくは150 mVを上回る、さらに好ましくは200
mVを上回る、さらにいっそう好ましくは300から400 mVの範囲など300 mVを上回る先のいずれかの請求項に記載の製剤。
【請求項10】
前記水性培地がゲルベースを含む先のいずれかの請求項に記載の抗菌製剤。
【請求項11】
前記ゲルベースがアロエベラおよび1つもしくは複数の増粘剤を含む請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
前記増粘剤が少なくとも1つのキサンタンガムを含む請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
前記銅化合物(a)が有機塩であって、25から500 ppm、好ましくは50から400 ppm、さらに好ましくは100から350 ppmの濃度で存在する請求項10から12のうちのいずれか1つに記載の製剤。
【請求項14】
本質的に前記成分だけから成る先のいずれかの請求項に記載の製剤。
【請求項15】
いずれかの避けられない不純物の存在の可能性とは別に、前記成分だけから成る請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
前記銅化合物(a)が結晶性硫酸銅水和物であり、前記酸(c)が硫酸、塩酸およびリン酸から成る群から選択される1つの酸を含むものであって、前記アンモニウム剤(b)が硫酸アンモニウム、塩酸アンモニウムおよびリン酸アンモニウムから成る群から選択される1つのアンモニウム化合物を含む先のいずれかの請求項に記載の製剤。
【請求項17】
細菌の増殖および/もしくは繁殖の制御に用いられる先のいずれかの請求項に記載の製剤。
【請求項18】
前記細菌が、処理が困難なあるいはそうでなければ潜伏期が長い細菌である請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
前記細菌が院内細菌もしくはそうでなければ薬剤耐性菌である請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
細菌あるいは細菌感染の処理に用いられる薬物の調製に用いられる先のいずれかの請求項に記載の製剤。
【請求項21】
前記細菌が院内細菌あるいはそうでなければ薬剤耐性菌など処理が困難な、もしくは潜伏期が長い菌である請求項20に記載の製剤。
【請求項22】
抗菌製剤として先のいずれかの請求項に記載の製剤の使用。
【請求項23】
前記表面もしくは材料に、請求項1から21のいずれか1つに記載の製剤を適用することを含む、院内細菌あるいはそうでなければ薬剤耐性菌のような、細菌を含む表面あるいは材料を処理する方法。
【請求項24】
少なくとも1つの洗浄剤と併用する、請求項1から21のいずれか1つに記載の抗菌製剤。
【請求項25】
請求項1から21のいずれか1つに記載の抗菌製剤と併用する、1つもしくは複数の洗浄剤を含む洗浄性組成物。
【請求項26】
請求項1から21のいずれか1つに記載の少なくとも1つの抗菌製剤を浸み込ませた生地の担体。
【請求項27】
組織の原料である請求項26に記載の担体。
【請求項28】
織物あるいは繊維の生地である請求項26に記載の担体。
【請求項29】
クロスの生地である請求項28に記載の担体。
【請求項30】
マイクロファイバークロスの生地である請求項29に記載の担体。
【請求項31】
ウルトラマイクロファイバークロスの生地である請求項29に記載の担体。
【請求項32】
許容できるそれらの基剤、希釈剤あるいは添加物と共に請求項1から21のいずれか1つに記載の製剤を含む抗菌剤。
【請求項33】
請求項26から31のいずれか1つに記載の生地担体の表面に適用することを含む表面の滅菌方法。
【請求項34】
請求項24に記載の製剤を用いた洗浄、あるいは請求項25に記載の洗浄性組成物に生地を曝露させることを含む、細菌を含む生地を洗濯する方法。
【請求項35】
クリーム、石けん、洗浄剤、噴霧溶液、包帯剤溶液、洗浄液、あるいはスプレーミスト製剤の形状の請求項1から21のいずれか1つに記載の抗菌製剤。
【請求項36】
請求項1から21あるいは35のいずれか1つに記載の抗菌性組成物のスプレーのミストあるいは霧に表面を曝露させることによって表面を滅菌する方法。
【請求項37】
(i)細菌の検出(ii)検出された結果の提示(iii)あるいは請求項1から21あるいは35のいずれか1つに記載の組成物を表面に適用することによって、(iv)あるいはスプレーによって検出された細菌の治療。
【請求項38】
検出段階(i)がmicro fluidic assayによって実施された請求項37に記載の感染制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2009−519220(P2009−519220A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540688(P2008−540688)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004285
【国際公開番号】WO2007/057678
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(508149478)レメディ リサーチ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】