説明

発信機及び火災報知システム

【課題】発信機の設置コスト及び設置の手間を低減することができる、発信機及び火災報知システムを提供すること。
【解決手段】火災を報知する火災信号を送信する発信機20であって、ユーザによる火災信号の送信指示を受け付ける押しボタン部と、押しボタン部がユーザから火災信号の送信指示を受け付けた場合には、火災信号を無線にて送信する無線送信部とを備える。また、発信機20は、当該発信機20を識別するための識別情報を格納する記憶部と、押しボタン部がユーザから火災信号の送信指示を受け付けた場合に、識別情報を記憶部から取得し、当該取得した識別情報を火災信号に付加する火災信号生成部とを備え、無線送信部は、火災信号生成部にて識別情報が付加された火災信号を無線にて送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発信機及び火災報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な種類の端末機器を用いて火災発生を報知する防災システムが利用されている。図12は、従来の防災システム101の概略図である。図12に示すように、この防災システム101は、建物の各階層において、火災が検知された場合に火災を報知する火災信号を送信する有線式感知器110及び無線式感知器120と、押しボタンが操作された場合に火災信号を送信する発信機130と、無線式感知器120から受信した火災信号を受信機150に中継する受信装置140と、受信装置140から信号線102を介して火災信号を受信する受信機150とを備えて構成されている。また、この信号線102は、A線102a、C線102b、及びL線102cを含んで構成されている。A線102aは、発信機130と受信装置140とを相互に接続し、受信装置140と受信機150とを相互に接続している。また、A線102aは、建物の各階層毎に設けられた発信機130に渡り接続されている。一方、C線102b及びL線102cは、発信機130と有線式感知器110とを相互に接続し、有線式感知器110と受信装置140とを相互に接続し、及び受信装置140と受信機150とを相互に接続している。なお、A線102aとC線102bとの間、及びL線102cとC線102bとの間には、受信機150から所定の電圧が印加されている。また、L線102c及びC線102bの終端には図示しない終端器(例えば抵抗器)が接続されており、受信機は、電気的に終端器の接続の有無を判断することで(例えば、前述のL線102cから終端器を介してC線102bに流れる電流が所定範囲にあるか否かを判断することで)、L線102c及びC線102bが断線しているか否かの確認を行っている。
【0003】
このような防災システム101の構成においては、端末機器の火災信号を受信機150に送信する方法としては、例えば、端末機器が、当該端末機器と接続された信号線102を短絡させることにより、当該端末機器の火災信号を受信機150に送信する。具体的には、発信機130の火災信号の場合には、当該発信機130が、当該発信機130と接続されたA線102a、C線102b、及びL線102cを短絡させることによりA線102a及びL線102cからC線102bに向けて電流が流れるようにし、その電流を受信機150に検知させることにより、当該発信機130の火災信号を受信機150に送信する。また、有線式感知器110の火災信号の場合には、当該有線式感知器110が、当該有線感知器と接続されたC線102b及びL線102cを短絡させることにより、当該有線式感知器110の火災信号を受信機150に送信する。また、無線式感知器120の火災信号の場合には、受信装置140が、無線式感知器120から火災信号を受信した後に、当該受信装置140と接続されたC線102b及びL線102cを短絡させることにより、L線102cからC線102bに向けて電流が流れるようにし、その電流を受信機150に検知させることにより、当該有線式感知器110の火災信号を受信機150に送信する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−185590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の防災システム101において、発信機130の設置に関して問題があった。例えば、図12に示す発信機130は、信号線102によって受信機150と接続しなければならないので、当該発信機130の設置台数が多い場合には、設置コスト及び設置の手間がかかっていた。また、この発信機130は建物の各階層毎に設けられており、発信機130同士がA線102aによって渡り接続されている。具体的には、建物の各階層毎の天井又は床に設けられた貫通孔を介して発信機130同士がA線102aと接続されている。このような発信機130の設置においては、貫通孔の穿設が必要であるので、このことが更に設置コスト及び設置の手間がかかる要因となっていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、発信機の設置コスト及び設置の手間を低減することができる、発信機及び火災報知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の発信機は、火災を報知する火災信号を送信する発信機であって、ユーザによる前記火災信号の送信指示を受け付ける操作手段と、前記操作手段がユーザから前記火災信号の送信指示を受け付けた場合には、前記火災信号を無線にて送信する無線送信手段とを備える。
【0008】
また、請求項2に記載の発信機は、請求項1に記載の発信機において、当該発信機を識別するための識別情報を格納する識別情報格納手段と、前記操作手段がユーザから前記火災信号の送信指示を受け付けた場合に、前記識別情報を前記識別情報格納手段から取得し、当該取得した前記識別情報を前記火災信号に付加する火災信号生成手段と、を備え、前記無線送信手段は、前記火災信号生成手段にて前記識別情報が付加された火災信号を無線にて送信する。
【0009】
また、請求項3に記載の発信機は、請求項1又は2に記載の発信機において、前記無線送信手段は、前記操作手段がユーザから前記火災信号の送信指示を受け付けた場合に、前記火災信号を所定時間ごとに無線にて繰り返し送信する。
【0010】
また、請求項4に記載の発信機は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発信機において、前記発信機は火災復旧を報知する火災復旧信号を送信するものであって、前記操作手段がユーザから前記火災信号の送信指示を受け付けた状態を維持しながら、前記無線送信手段が前記火災信号を無線にて送信している場合において、前記操作手段がユーザによって前記火災信号の送信指示を受け付ける前の状態に復旧された場合には、前記無線送信手段は当該火災信号の送信を停止すると共に、前記火災復旧信号を無線にて送信する。
【0011】
また、請求項5に記載の発信機は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発信機において、前記発信機は自己から送信される信号の送信状況を確認するための試験信号を送信するものであって、ユーザによる前記試験信号の送信指示を受け付ける試験操作手段を備え、前記無線送信手段は、前記試験操作手段がユーザから前記試験信号の送信指示を受け付けた場合に、前記試験信号を無線にて送信する。
【0012】
また、請求項6に記載の発信機は、請求項5に記載の発信機において、前記試験操作手段がユーザから前記試験信号の送信指示を受け付けた場合に、その旨を表示する表示手段を備える。
【0013】
また、請求項7に記載の発信機は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発信機において、前記発信機は電力を供給するための電池を備えたものであり、かつ前記電池の出力電圧低下を報知するための出力電圧低下信号を送信するものであって、前記電池の出力電圧を検出する出力電圧検出手段と、前記出力電圧検出手段にて検出された出力電圧が所定電圧よりも低いか否かを判定する出力電圧判定手段と、を備え、前記無線送信手段は、前記出力電圧判定手段にて前記電池の出力電圧が所定電圧よりも低いと判定された場合に、前記出力電圧低下信号を送信する。
【0014】
また、請求項8に記載の火災報知システムは、監視領域における火災を検知して警報を行う火災報知システムであって、火災を報知する火災信号を送信する発信機と、前記発信機から受信した火災信号を受信機に中継する受信装置と、を備え、前記発信機は、ユーザによる前記火災信号の送信指示を受け付ける操作手段と、前記操作手段がユーザから前記火災信号の送信指示を受け付けた場合に、前記火災信号を無線にて送信する無線送信手段と、を備え、前記受信装置は、前記発信機から受信した信号を前記受信機に移報するための移報手段と、前記発信機から前記火災信号を受信した場合に、当該受信した火災信号の前記受信機に対する移報を前記移報手段によって行わせる制御手段と、を備える。
【0015】
また、請求項9に記載の火災報知システムは、請求項8に記載の火災報知システムにおいて、前記発信機は、自己から送信される信号の送信状況を確認するための試験信号を送信するものであって、ユーザによる前記試験信号の送信指示を受け付ける試験操作手段を備え、前記試験操作手段がユーザから前記試験信号の送信指示を受け付けた場合に、前記無線送信手段が前記試験信号を無線にて送信し、前記受信装置は、前記発信機から受信した試験信号の受信強度を測定する受信強度測定手段と、前記受信強度測定手段にて測定された受信強度を表示する表示手段を備え、前記発信機から前記試験信号を受信した場合に、前記受信強度測定手段が当該受信した試験信号の受信強度を測定し、前記制御部が当該測定した受信強度を前記表示手段によって表示させる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発信機によれば、発信機は、ユーザによる火災信号の送信指示を受け付ける操作手段と、この操作手段がユーザから火災信号の送信指示を受け付けた場合には、火災信号を無線にて送信する無線送信手段とを備えるので、信号線がなくても他の機器に火災信号を送信することができ、有線式の発信機と比べて設置コスト及び設置の手間を低減することができる。
【0017】
また、請求項2に記載の発信機によれば、無線送信手段は、火災信号生成手段にて発信機識別情報が付加された火災信号を無線にて送信するので、受信装置又は受信機側に火災信号を送信した個別の感知器を識別できるかたちで火災状態を表示する機能があれば、発信機の火災信号であることを容易に識別でき、火災の位置を容易に特定することができる。
【0018】
また、請求項3に記載の発信機によれば、無線送信手段は、操作手段がユーザから火災信号の送信指示を受け付けた場合に、火災信号を所定時間ごとに無線にて繰り返し送信するので、他の機器に火災信号の受信の確実性を向上させることができ、有線式の発信機と同等の通信の安定性を確保することができる。
【0019】
また、請求項4に記載の発信機によれば、操作手段がユーザから火災信号の送信指示を受け付けた状態を維持しながら、無線送信手段が火災信号を無線にて送信している場合において、操作手段がユーザによって火災信号の送信指示を受け付ける前の状態に復旧された場合には、無線送信手段は当該火災信号の送信を停止すると共に、火災復旧信号を無線にて送信するので、信号線がなくても他の機器に火災復旧信号を送信することができ、有線式の発信機と比べて設置コスト及び設置の手間を一層低減することができる。
【0020】
また、請求項5に記載の発信機によれば、無線送信手段は、試験操作手段がユーザから試験信号の送信指示を受け付けた場合に、試験信号を無線にて送信するので、試験信号を用いて発信機から送信される信号の送信状況を確認することができ、有線式の発信機と同等の通信の安定性を一層確保することができる。
【0021】
また、請求項6に記載の発信機によれば、試験操作手段がユーザから試験信号の送信指示を受け付けた場合に、表示手段がその旨を表示するので、ユーザに対して試験信号が送信されていることを提示することができ、発信機が試験処理を行っていることを容易に識別することができる。
【0022】
また、請求項7に記載の発信機によれば、無線送信手段は、出力電圧判定手段にて電池の出力電圧が所定電圧よりも低いと判定された場合に、出力電圧低下信号を送信するので、ユーザに対して電池の出力電圧が低下したことを報知することができ、例えば、その報知があった後にユーザが電池のメンテナンスを行うようにすることで、有線式の発信機と同等の通信の安定性をさらに一層確保することができる。
【0023】
また、請求項8に記載の火災報知システムによれば、火災報知システムは、発信機と受信装置とを備えて構成され、このうち発信機は、ユーザによる火災信号の送信指示を受け付ける操作手段と、操作手段がユーザから火災信号の送信指示を受け付けた場合に、火災信号を無線にて送信する無線送信手段と、を備え、受信装置は、発信機から受信した信号を受信機に移報するための移報手段と、発信機から火災信号を受信した場合に、当該受信した火災信号の受信機に対する移報を移報手段によって行わせる制御手段と、を備えるので、受信装置が発信機から火災信号を無線で受信して、当該受信した火災信号の受信機に対する移報を行うことができ、有線式の発信機を備えて構成される火災報知システムと比べて設置コスト及び設置の手間を低減することができる。
【0024】
また、請求項9に記載の火災報知システムによれば、発信機から試験信号を受信した場合に、受信装置の受信強度測定手段が当該受信した試験信号の受信強度を測定し、制御手段が当該測定した受信強度を表示手段によって表示させるので、試験信号の受信強度に基づいて、発信機から送信される信号の送信状況をユーザに提示することができ、この送信状況に基づいて十分な強度で電波が届く設置環境となる設置位置をユーザが選ぶことができるため、有線式の発信機と同等の通信の安定性を確保することができる。また、受信装置の制御手段が、移報手段によって受信機に対して試験信号の移報を行わせないので、受信機が試験信号を受信しないようにすることができ、試験処理時に受信機において火災警報等が誤って発せられることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】火災報知システムの構成を示す概略図である。
【図2】受信装置と受信機との信号線の接続状況を示す概要図である。
【図3】発信機の電気的構成を示したブロック図である。
【図4】中継装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図5】受信装置の電気的構成を概念的に示すブロック図である。
【図6】信号出力部の各端子の接続状況を示す概略図である。
【図7】移報方法テーブルに格納される情報の内容を例示した表である。
【図8】感知器、発信機、中継装置、及び受信装置によって実行される中継処理のフローチャートである。
【図9】発信機及び受信装置によって実行される中継処理のフローチャートである。
【図10】発信機及び受信装置によって実行される試験処理のフローチャートである。
【図11】発信機及び受信装置によって実行される出力電圧判定処理のフローチャートである。
【図12】従来の防災システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る発信機及び火災報知システムの実施の形態を詳細に説明する。最初に、この発信機を備えて構成された火災報知システムの全体構成を説明し、次に、この発信機の構成を説明し、火災報知システムを構成する各機器が実行する中継処理の流れについて説明し、さらに、この発信機の中継処理、試験処理、及び出力電圧判定処理について説明し、最後に本実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。なお、実施の形態に係る発信機の設置対象や適用対象は任意であるが、以下では、オフィスビルの屋内に設置された発信機に適用した場合を例として説明を行う。
【0027】
〔実施の形態〕
(構成−火災報知システム)
図1は、火災報知システムの構成を示す概略図である。図1に示すように、火災報知システム1は、感知器10、発信機20、中継装置30、受信装置40、及び受信機50を備えて構成されている。感知器10、発信機20、中継装置30、及び受信装置40は、建物の各階における天井や壁に配置されている。このうち、感知器10及び発信機20は、それぞれ法定の設置間隔を満たすように、各階毎に1台又は複数台が配置されている。中継装置30は、各階において中継対象となる感知器10及び発信機20と、受信装置40との相互間に配置されている。受信装置40は、各階に1台配置されている。受信機50は、建物に1台配置されており、例えば建物の管理人室に設置されている。また、これら受信装置40及び受信機50は、信号線2及び電源線3により接続されている。
【0028】
ここで、感知器10は、火災を報知する火災信号又は火災からの復旧を報知する火災復旧信号を送信する無線式の火災報知端末である。発信機20は、火災信号、火災復旧信号、当該発信機20から送信される信号の送信状況を確認するための試験信号、又は後述する当該発信機20の電源部25の出力電圧低下を報知するための出力電圧低下信号を送信する無線式の火災報知端末である。中継装置30は、感知器10又は発信機20から火災信号、火災復旧信号、試験信号、又は出力電圧低下信号を受信し、当該受信した火災信号、火災復旧信号、試験信号、又は出力電圧低下信号を受信装置40に中継するものである。受信装置40は、感知器10、発信機20、及び/又は中継装置30から送信された火災信号、火災復旧信号、試験信号、又は出力電圧低下信号を受信し、当該受信した火災信号又は出力電圧低下信号を信号線2を介して受信機50に出力するものである。受信機50は、受信装置40から信号線2を介して入力された情報に基づき、警報表示や警報音の出力等の各種処理を実行したり、電源線3を介して受信装置40への電力供給を行うものである。
【0029】
次に、信号線2を介した各端末機器の接続形態について説明する。本実施の形態において、火災報知システム1は、いわゆるP型2級の火災報知システムとして構成されている。図2は、受信装置40と受信機50との信号線2の接続状況を示す概要図である。図2に示すように、信号線2は、A線2a、C線2b、及びL線2cを含んで構成されており、これらA線2a、C線2b、及びL線2cは、受信装置40及び受信機50を相互に接続する。また、A線2aは、建物の各階毎に設けられた受信装置40に渡り接続されている(図示省略)。A線2aとC線2b(以下「A−C線」2dという)は、受信装置40にて受信された発信機20の火災信号を受信機50に向けて送信する線である。また、L線2cとC線2b(以下「L−C線」2eという)は、受信装置40にて受信された感知器10の火災信号を送信する線であり、発信機20の火災信号又は出力電圧低下信号を送信する線でもある。各系統(ここでは、建物の各階毎)のL−C線2eにおける終端には、図示しない終端抵抗が設けられている。
【0030】
(構成−火災報知システム−感知器)
次に、感知器10の構成について説明する。感知器10は、センサ部、無線送信部、及び電源部を備えて構成されている(図示省略)。センサ部は、温度や煙濃度等を検知するための検知手段である。無線送信部は、火災信号又は火災復旧信号を送信する無線送信手段である。この無線送信部は、例えば、図示しない火災判断部によって、センサ部における温度や煙濃度の検知結果をもとに、この検知結果が閾値よりも高いと判断された場合に、無線送信部は火災信号を送信する。また、当該火災信号が送信された後、図示しない火災判断部によって、検知結果が閾値よりも低いと判断された場合に、無線送信部は火災復旧信号を送信する。また、この無線送信部は、例えば、感知器10が備える公知の記憶手段(図示省略)に予め記憶された情報であって、当該感知器10を一意に識別する感知器識別情報を火災信号又は火災復旧信号に含めて送信する。ここで、公知の記憶手段に記憶される、感知器識別情報としては、例えば感知器10のアドレス番号又はシリアル番号を用いることができる(後述する発信機20の発信機識別情報についても同様)。電源部は、感知器10の各部に電力を供給する電池であり、例えば公知の乾電池や充電池を備えて構成される(後述する発信機20の電源部25、及び中継装置30の電源部34についても同様)。
【0031】
(構成−火災報知システム−発信機)
次に、発信機20の構成について説明する。図3は、発信機20の電気的構成を示したブロック図である。図3に示すように、発信機20は、押しボタン部21、テストスイッチ部22、無線送信部23、表示部24、電源部25、出力電圧検出部26、制御部27、及び記憶部28を備えて構成されている。なお、電源部25の構成については上述の感知器10における電源部と同様であるので、特記する部分を除き説明を省略する。
【0032】
押しボタン部21は、ユーザによる火災信号又は火災復旧信号の送信指示を受け付ける操作手段である。また、テストスイッチ部22は、試験信号の送信指示をユーザから受け付ける試験操作手段であり、例えばリードスイッチ等を備えて構成されている。
【0033】
無線送信部23は、火災信号、火災復旧信号、試験信号、又は出力電圧低下信号を送信する無線送信手段である。この無線送信部23は、例えばユーザによって押しボタン部21が押し下げられた場合に火災信号を送信し、ユーザによって押しボタン部21が押し下げられる前の状態に復旧された場合に火災信号を停止すると共に、火災復旧信号を送信する。また、ユーザによってテストスイッチ部22が操作された場合に試験信号を送信する。また、後述する出力電圧判定部27bにて電源部25の出力電圧が所定電圧よりも低いと判定された場合に、出力電圧低下信号を送信する。
【0034】
表示部24は、発信機20に関する情報を表示するための表示手段であり、例えば公知のLEDランプ、蛍光ランプ等を備えて構成される。出力電圧検出部26は、電源部25の出力電圧を検出する出力電圧検出手段である。
【0035】
制御部27は、発信機20の各部を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成される(後述する中継装置30の制御部35、及び受信装置40の制御部46についても同様)。
【0036】
この制御部27は、機能概念的に火災信号生成部27a及び出力電圧判定部27bを備えている。火災信号生成部27aは、押しボタン部21がユーザから火災信号の送信指示を受け付けた場合に、後述する発信機識別情報を後述する記憶部28から取得し、当該取得した発信機識別情報を火災信号に付加し、又はユーザによって押しボタン部21が押し下げられる前の状態に復旧された場合に、後述する記憶部28から取得した後述する発信機識別情報を火災復旧信号に付加する火災信号生成手段である。出力電圧判定部27bは、出力電圧検出部26にて検出された出力電圧が所定電圧よりも低いか否かを判定する出力電圧判定手段である。なお、この制御部27によって実行される処理の詳細については後述する。
【0037】
記憶部28は、当該発信機20を一意に識別する発信機識別情報等を格納する識別情報格納手段である。この記憶部28は、書き換え可能な記録媒体を用いて構成され、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性記録媒体を用いることができる(後述する中継装置30の記憶部36、及び受信装置40の記憶部47についても同様)。
【0038】
(構成−火災報知システム−中継装置)
次に、中継装置30の構成について説明する。図4は、中継装置30の電気的構成を示したブロック図である。図4に示すように、中継装置30は、操作部31、表示部32、無線通信部33、電源部34、制御部35、及び記憶部36を備えている。なお、電源部34の構成については上述の感知器10における電源部と同様であるので、特記する部分を除き説明を省略する。
【0039】
操作部31は、中継装置30に対する操作入力を受け付ける操作手段であり、例えばスイッチやタッチパネル等の公知の操作手段を用いて構成される(後述する受信装置40の操作部41についても同様)。
【0040】
表示部32は、中継装置30に関する情報を表示するための表示手段であり、例えば公知の7セグメントディスプレイや液晶ディスプレイ等を備えて構成される(後述する受信装置40の表示部42についても同様)。
【0041】
無線通信部33は、火災信号、火災復旧信号、試験信号、又は出力電圧低下信号の受信及び送信を行う無線通信手段である。この無線通信部33は、例えば無線信号の受信回路及び送信回路(いずれも図示せず)を備え、受信回路を介して感知器10、又は発信機20から送信された火災信号又は火災復旧信号の受信を行い、あるいは受信回路を介して発信機20から送信された試験信号又は出力電圧低下信号の受信を行い、送信回路を介して受信装置40への火災信号、火災復旧信号、試験信号、又は出力電圧低下信号の送信を行う。
【0042】
制御部35は、中継装置30の各部を制御する制御手段である。記憶部36は、制御部35による制御に必要なプログラム及び各種のデータを記憶する記憶手段である。
【0043】
(構成−火災報知システム−受信装置)
次に、受信装置40の構成について説明する。図5は、受信装置40の電気的構成を概念的に示すブロック図である。図5に示すように、受信装置40は、操作部41、表示部42、無線受信部43、信号出力部44、電源回路部45、制御部46、及び記憶部47を備えている。なお、操作部41及び表示部42の構成については上述の中継装置30における操作部31及び表示部32と同様であるので、特記する部分を除き説明を省略する。
【0044】
無線受信部43は、火災信号、火災復旧信号、試験信号、又は出力電圧低下信号の受信を行う無線受信手段である。この無線受信部43は、火災信号、火災復旧信号、試験信号、又は出力電圧低下信号の受信回路(図示せず)を備え、受信回路を介して感知器10、発信機20、及び/又は中継装置30から送信された火災信号又は火災復旧信号の受信を行い、あるいは受信回路を介して発信機20、及び/又は中継装置30から送信された試験信号、又は出力電圧低下信号の受信を行う。
【0045】
信号出力部44は、感知器10、発信機20、及び/又は中継装置30から受信した火災信号を受信機50に出力し、又は発信機20、及び/又は中継装置30から受信した出力電圧低下信号を受信機50に出力する移報手段である。この信号出力部44は、A−C出力部44a及びL−C出力部44bを備えて構成されている。A−C出力部44aは、A−C線2dを介して、発信機20及び/又は中継装置30から受信した火災信号を受信機50に出力するA−C出力手段である。L−C出力部44bは、L−C線2eを介して、感知器10、及び/又は中継装置30から受信した火災信号を受信機50に出力したり、発信機20、及び/又は中継装置30から受信した火災信号又は出力電圧低下信号を受信機50に出力するL−C出力手段である。
【0046】
図6は、信号出力部44の各端子の接続状況を示す概略図である。図6に示すように、信号出力部44は、A線出力端子2a1、A線入力端子2a2、C線出力端子2b1、C線入力端子2b2、L線出力端子2c1、及びL線入力端子2c2を備えて構成されている。これらA線出力端子2a1、C線出力端子2b1、及びL線出力端子2c1は、火災信号又は出力電圧低下信号を受信機50に出力するためのものであり、受信機50側とは逆側(受信装置40を挟んで受信機50側と反対に位置する側)のA線2a、C線2b、及びL線2cと各々接続されている。また、これらA線入力端子2a2、C線入力端子2b2、及びL線入力端子2c2は、火災信号又は出力電圧低下信号を受信機50に入力するためのものであり、受信機50側のA線2a、C線2b、及びL線2cと各々接続されている。
【0047】
L線出力端子2c1とL線入力端子2c2とを接続するL線2cには、当該L線2cの接続切替のためのリレー2fが設けられている。また、L線出力端子2c1とL線入力端子2c2とを接続するL線2cとC線出力端子2b1とC線入力端子2b2とを接続するC線2bとの間には、これらL線2c及びC線2bの接続切替のためのリレー2gが設けられている。このリレー2gは、リレー2fよりも受信機50側から近い側に配置されている。また、A線出力端子2a1とA線入力端子2a2とを接続するA線2aとL線出力端子2c1とL線入力端子2c2とを接続するL線2cとの間には、これらA線2a及びC線2bの接続切替のためのリレー2hが設けられている。
【0048】
ここで、この信号出力部44が火災信号又は出力電圧低下信号を受信機50に対して出力する方法としては、例えば、信号出力部44が、受信装置40と接続された信号線2を導通可能にさせたり、短絡させたり、又は断線させることにより、感知器10又は発信機20の火災信号を受信機50に送信したり、あるいは発信機20の出力電圧低下信号を受信機50に送信する。具体的には、信号出力部44が通常動作を行う場合には、L−C出力部44bは、L−C線2eが導通可能になるように、L線2cをリレー2fにより接続させる。また、信号出力部44が感知器10の火災信号を受信機50に対して出力する場合には、L−C出力部44bは、L−C線2eが短絡するように、当該L−C線2eをリレー2gにより接続させる。また、信号出力部44が発信機20の火災信号を受信機50に対して出力する場合には、A−C出力部44aは、A−C線2dが短絡するように、当該A−C線2dをリレー2hにより接続させると共に、L−C出力部44bは、L−C線2eが短絡するように、当該L−C線2eを公知のリレー2gにより接続させる。また、信号出力部44が発信機20の出力電圧低下信号を受信機50に対して出力する場合には、L−C出力部44bは、L−C線2eが断線するように、L線2cをリレー2fにより切り離す。なお、以下、「断線」とは、A線2a、C線2b、又はL線2cのいずれかを、受信装置40の信号出力部44の内部において、受信機50に近い側と遠い側に切り離すことを意味する。このことにより、終端器を受信機50から電気的に切り離し、出力電圧低下信号を受信機50に送信する。
【0049】
図5に戻り、電源回路部45は、電源線3を介して受信機50から供給された電力を受信装置40の各部に供給する(なお、電源回路部45から受信装置40の各部に対する電力供給線の図示は省略する)。
【0050】
制御部46は、受信装置40の各部を制御する制御手段である。この制御部46は、機能概念的に識別情報取得部46a及び受信強度測定部46bを備えている。識別情報取得部46aは、受信装置40が火災信号又は火災復旧信号を受信した場合に、当該火災信号又は火災復旧信号から感知器識別情報又は発信機識別情報を取得する識別情報取得手段である。受信強度測定部46bは、発信機20から受信した試験信号の受信強度を測定する受信強度測定手段である。なお、この制御部46によって実行される処理の詳細については後述する。
【0051】
記憶部47は、制御部46が信号出力部44によって、火災信号を受信機50に送信する際に参照するための移報方法テーブル47aを備えている。図7は、移報方法テーブル47aに格納される情報の内容を例示した表である。図7に示すように、移報方法テーブル47aには、テーブル項目「端末ID」、「種別」、及び「移報方法」に対応する情報が相互に関連付けて格納される。項目「端末ID」に対応して格納される情報は、感知器10又は発信機20を一意に識別する識別情報であり、例えば感知器10等のアドレス番号(図9では「0101」、「0102」、「0103」等)が格納される。項目「種別」に対応して格納される情報は、機器の種別を特定する種別情報であり、例えば「感知器」、「発信機」等が格納される。項目「移報方法」に対応して格納される情報は、感知器10又は発信機20の火災信号の移報方法を特定するための移報方法情報であり、例えば「L−C線短絡」、「L−C線、及びA−C線短絡」等が格納される。
【0052】
(構成−火災報知システム−受信機)
次に、受信機50の構成について説明する。この受信機50としては、例えば公知の防災受信機を用いることができる。
【0053】
(処理)
次に、このように構成された火災報知システム1によって実行される処理について説明する。火災報知システム1によって実行される処理は、感知器10又は発信機20から送信された火災信号又は火災復旧信号を、受信装置40を介して受信機50に中継する中継処理、発信機20から送信される信号の送信状況を確認するための試験処理、及び発信機20の電源部25の出力電圧が所定電圧に比べて低下したか否かを判定する出力電圧判定処理に大別される。以下、これらの処理について説明する。
【0054】
(処理−火災報知システムを構成する各機器が実行する中継処理について)
まず、火災報知システム1を構成する各機器が実行する中継処理について説明する。図1に示すように、建物の3階に感知器10、発信機20、中継装置30、及び受信装置40が設置されている場合を例に挙げて説明する。図8は、感知器10、発信機20、中継装置30、及び受信装置40によって実行される中継処理のフローチャートである(なお、中継装置30の動作の図示は省略する)。なお、以下の説明では、「ステップ」を「S」と略記する。また、感知器10のステップを「SA」、発信機20のステップを「SB」、及び受信装置40のステップを「SC」と略記する。また、受信装置40の動作中に発生したイベントは、受信装置40の制御部46によって記憶部47に記録されるものとする。
【0055】
図8に示すように、感知器10の検知部にて火災が検知されたことによって、当該感知器10の無線送信部が火災信号を送信した場合(SA1)、受信装置40の無線受信部43は、感知器10から火災信号を無線で受信し(SC1)、信号出力部44は、当該無線受信部43にて受信した感知器10の火災信号の移報を受信機50に対して行う(SC2)。なお、感知器10の無線送信部は、検出部が火災を検出しなくなるまで火災信号を継続してまたは断続的に送信する。
【0056】
次に、発信機20の押しボタン部21が押し下げられたことによって、当該発信機20の無線送信部23が火災信号を送信した場合(SB1)、受信装置40の無線受信部43は、発信機20、及び/又は中継装置30から火災信号を受信する(SC3)。ここで、受信装置40の信号出力部44は、SC2の感知器10の火災信号の移報を行っている状態であるが、発信機20が火災信号を出力していることを受信機50に知らせるために、この感知器10の火災信号の移報に替えて、無線受信部43にて受信した発信機20の火災信号の移報を受信機50に対して行う(SC4)。なお、発信機20の押しボタン部21は、押し下げられた状態を維持しながら、押し下げられる前の状態に復旧するまで火災信号を継続してまたは断続的に送信する。
【0057】
次に、発信機20の押しボタン部21がユーザによって押し下げられた状態から押し下げられる前の状態に復旧されたことによって、発信機20の無線送信部23が火災復旧信号を送信した場合(SB2)、受信装置40の無線受信部43は、発信機20、及び/又は中継装置30から火災復旧信号を受信する(SC5)。これにより、受信装置40の信号出力部44が、SC4の発信機20の火災信号の移報を行っている状態から当該発信機20の火災信号の移報を行う前の状態に復旧させる、すなわち発信機20の火災信号の移報を停止する(SC6)。ここで、SC1の処理以降、受信装置40の無線受信部43は、感知器10及び/又は中継装置30から感知器10の火災信号を継続して受信している。そのため、SC6の処理後、受信装置40の信号出力部44は、無線受信部43にて受信した感知器10の火災信号の移報を受信機50に対して行う(SC7)。
【0058】
次いで、感知器10の検知部にて火災が検知されなくなったことによって、感知器10の無線送信部が火災復旧信号を送信した場合(SA2)、受信装置40の無線受信部43は、感知器10及び/又は中継装置30から火災復旧信号を受信し(SC8)、受信装置40の信号出力部44は、SC7の感知器10の火災信号の移報を停止する(SC9)。
【0059】
(処理−中継処理)
次に、発信機20及び受信装置40によって実行される中継処理を、図8に示すSB1〜SB2、SC1〜SC9の中継処理と関連づけて説明する。図9は、発信機20及び受信装置40によって実行される中継処理のフローチャートである。この中継処理の実行タイミングは任意で、例えば、発信機20の電源が投入され、当該受信装置40の操作部41を介して中継処理を実行する旨の操作入力がされた場合に実行される。また、受信装置40と受信機50とを接続する信号線2は導通可能な状態であるものとする。なお、以下の説明では、発信機20のステップを「SD」、及び受信装置40のステップを「SE」と略記する。
【0060】
最初に、発信機20の中継処理について説明する。図9に示すように、まず、発信機20の制御部27は、押しボタン部21がユーザから火災信号の送信指示を受け付けたか否かを監視する(SD1)。
【0061】
ここで、ユーザによって押しボタン部21が押し下げられることで、押しボタン部21が火災信号の送信指示を受け付けた場合に(SD1、Yes)、発信機20の火災信号生成部27aは、発信機識別情報を記憶部28から取得し、当該取得した発信機識別情報を火災信号に付加する(SD2)。そして、発信機20の制御部27は、当該発信機識別情報が付加された火災信号を無線送信部23によって無線で送信させる(SB1)(SD3)。これにより、信号線を介して受信装置40に火災信号を送信する有線式の発信機に比べて信号線の敷設等を省くことができ、当該発信機20の設置コストや設置の手間を低減することができる。また、発信機20の無線送信部23は、当該無線送信部23が火災信号生成部27aにて発信機識別情報が付加された火災信号を無線にて送信するので、例えば受信装置40は発信機20の火災信号を容易に識別することができる。なお、無線送信部23による火災信号の送信方法は任意であり、中継装置30又は受信装置40の火災信号の受信の確実性を向上させるために、例えば、押しボタン部21が火災信号の送信指示を受け付けた場合に、発信機20の無線送信部23は、火災信号を所定時間ごとに無線にて繰り返し送信するようにしてもよい。
【0062】
次に、発信機20の制御部27は、ユーザによって押しボタン部21が火災信号の送信指示を受け付ける前の状態に復旧されたか否かを監視する(SD4)。ここで、ユーザによる押しボタン部21の操作がなされないことで、押しボタン部21が火災信号の送信指示を受け付けた状態を維持する場合(SD4、No)、発信機20の制御部27は、SD3の処理に移行して、火災信号を継続して送信する。
【0063】
一方、ユーザによって押しボタン部21が元の位置まで押し上げられることで、押しボタン部21が火災信号の送信指示を受け付ける前の状態に復旧された場合(SD4、Yes)、発信機20の火災信号生成部27aは、発信機識別情報を記憶部28から取得し、当該取得した発信機識別情報を火災復旧信号に付加する(SD5)。そして、発信機20の制御部27は、当該発信機識別情報が付加された火災復旧信号を無線送信部23によって無線で送信させる(SB2)(SD6)。これにより、信号線を介して受信装置40に火災復旧信号を送信する有線式の発信機に比べて信号線の敷設等を省くことができ、当該発信機20の設置コストや設置の手間を一層低減することができる。その後、発信機20の制御部27は、SD1の処理に移行する。
【0064】
次に、受信装置40の中継処理について説明する。図9に示すように、まず、受信装置40の制御部46は、無線受信部43が火災信号を受信したか否かを監視する(SE1)。
【0065】
ここで、無線受信部43が感知器10の火災信号を受信した場合(SC1)(SE1、Yes)、受信装置40の識別情報取得部46aは当該無線受信部43にて受信した感知器10の火災信号の感知器識別情報を取得する(SE2)。そして、受信装置40の制御部46は移報方法テーブル47aを参照し、当該識別情報取得部46aにて取得された感知器識別情報に応じて、信号出力部44によって信号線2を短絡させる(SC2)(SE3)。具体的には、受信装置40の制御部46はL−C出力部44bによってL−C線2eを短絡させる。なお、受信装置40の制御部46は、表示部42によってL−C線2eが短絡状態である旨を表示させてもよい。これにより、ユーザに対して信号線2が短絡状態であることを報知することができる。または、受信装置40の制御部46は、感知器10が火災発報状態にあることを識別できるように、表示部42によって個別の感知器10を表示させてもよい。これによって、火災の位置の特定が容易となる。
【0066】
続いて、受信装置40の制御部46は無線受信部43が火災復旧信号を受信したか否かを監視する(SE4)。ここで、無線受信部43が火災復旧信号を受信しなかった場合(SE4、No)、受信装置40の制御部46は、SE1の処理に移行する。
【0067】
次に、受信装置40の無線受信部43が発信機20の火災信号を受信した場合(SC3)(SE1、Yes)、受信装置40の識別情報取得部46aが当該受信した発信機20の火災信号から発信機識別情報を取得する(SE2)。そして、受信装置40の制御部46は移報方法テーブル47aを参照し、識別情報取得部46aにて取得された発信機識別情報に応じて、信号出力部44によって信号線2を短絡させる(SC4)(SE3)。具体的には、受信装置40の制御部46はL−C出力部44bによってL−C線2eを短絡させた状態を維持させながら、A−C出力部44aによってA−C線2dを短絡させる。
【0068】
続いて、受信装置40の制御部46は無線受信部43が火災復旧信号を受信したか否かを監視する(SE4)。ここで、無線受信部43が火災復旧信号を受信しなかった場合(SE4、No)、受信装置40の制御部46は、SE1の処理に移行する。
【0069】
次に、SE1〜SE3の処理後に、又は受信装置40の無線受信部43が火災信号を受信することなく(SE1、No)、受信装置40の無線受信部43が発信機20の火災復旧信号を受信した場合(SC5)(SE4、Yes)、受信装置40の識別情報取得部46aが当該受信した発信機20の火災復旧信号から発信機識別情報を取得する(SE5)。
【0070】
次いで、受信装置40の制御部46は、識別情報取得部46aにて取得された発信機識別情報に応じて、信号出力部44によって信号線2を短絡させた状態から短絡させる前の状態に復旧させる(SC6)(SE6)。ここで、SC1の処理以降、受信装置40の無線受信部43が感知器10の火災信号を継続して受信していることから、受信装置40の制御部46は、信号出力部44によって、感知器10の感知器識別情報に応じて信号線2を短絡させた場合と、発信機20の発信機識別情報に応じて信号線2を短絡させた場合とで重複する信号線2の一部の短絡状態を維持させながら、当該重複しない信号線2の他の一部を復旧させる(SC7)(SE6)。具体的には、受信装置40の制御部46はL−C出力部44bによってL−C線2eの短絡状態を維持させながら、A−C出力部44aによってA−C線2dを短絡状態から開放状態へ復旧させる。その後、受信装置40の制御部46は、SE1の処理に移行する。
【0071】
次に、SE1〜SE3の処理後に、又は受信装置40の無線受信部43が火災信号を受信することなく(SE1、No)、受信装置40の無線受信部43が感知器10の火災復旧信号を受信した場合(SC8)(SE4、Yes)、受信装置40の識別情報取得部46aが当該受信した感知器10の火災復旧信号から感知器識別情報を取得する(SE5)。
【0072】
続いて、受信装置40の制御部46は、識別情報取得部46aにて取得された感知器識別情報に応じて、信号出力部44によって信号線2を短絡させた状態から短絡させる前の状態に復旧させる(SC9)(SE6)。具体的には、受信装置40の制御部46はL−C出力部44bによってL−C線2eを短絡状態から導通可能な状態へ復旧させる。その後、受信装置40の制御部46は、SE1の処理に移行する。
【0073】
(処理−試験処理)
次に、発信機20及び受信装置40によって実行される試験処理について説明する。図10は、発信機20及び受信装置40によって実行される試験処理のフローチャートである。この試験処理の実行タイミングは任意で、例えば、発信機20の電源が投入され、当該受信装置40の操作部41を介して試験処理を実行する旨の操作入力がされた場合に実行される。なお、以下の説明では、発信機20のステップを「SF」、及び受信装置40のステップを「SG」と略記する。
【0074】
図10に示すように、まず、発信機20の制御部27は、テストスイッチ部22がユーザから試験信号の送信指示を受け付けたか否かを監視する(SF1)。ここで、ユーザによってテストスイッチ部22がON状態にされることで、当該テストスイッチ部22が火災信号の送信指示を受け付けた場合に(SF1、Yes)、発信機20の制御部27は、無線送信部23によって試験信号を無線で送信させる(SF2)。なお、SF2の処理と同じタイミングで、発信機20の制御部27は、テストスイッチ部22がユーザから試験信号の送信指示を受け付けた旨を表示部24によって表示させてもよい。具体的には、発信機20の制御部27は、ユーザによってテストスイッチ部22がON状態にされたタイミングで、表示部24によって5sec程度点灯又は点滅させる。これにより、ユーザに対して試験信号が送信されていることを提示することができる。
【0075】
次に、受信装置40の制御部46は、無線受信部43が試験信号を受信したか否かを監視する(SG1)。ここで、無線受信部43が試験信号を受信した場合(SG1、Yes)、受信装置40の受信強度測定部46bが当該受信した試験信号の受信強度を測定する(SG2)。次いで、受信装置40の制御部46は、受信強度測定部46bにて測定された試験信号の受信強度を表示部42によって表示させる(SG3)。これにより、試験信号の受信強度に基づいて、ユーザに対して発信機20から送信される信号の送信状況を提示できる。また、受信装置40は火災信号及び出力電圧低下信号以外の信号を受信機50に中継しない。したがって、受信装置40の制御部46が、信号出力部44によって受信機50に対して試験信号の移報を行わせないので、受信機50は試験信号を受信しないようにすることができ、試験処理時に受信機50において火災警報等が誤って発せられることを防止することができる。
【0076】
(処理−出力電圧判定処理)
次に、発信機20及び受信装置40によって実行される出力電圧判定処理について説明する。図11は、発信機20及び受信装置40によって実行される出力電圧判定処理のフローチャートである。この出力電圧判定処理の実行タイミングは任意で、例えば、発信機20及び受信装置40の電源が投入された場合に、所定周期で自動的に繰り返し実行される。また、受信装置40と受信機50とを接続する信号線2は導通可能な状態であるものとする。なお、以下の説明では、発信機20のステップを「SH」、及び受信装置40のステップを「SJ」と略記する。
【0077】
図11に示すように、まず、発信機20の制御部27は、所定の監視時間が到来したか否か監視する(SH1)。ここで、所定の監視時間が到来した場合(SH1、Yes)、発信機20の制御部27は、出力電圧検出部26によって電源部25の出力電圧を測定させる(SH2)。
【0078】
次いで、発信機20の出力電圧判定部27bは、出力電圧検出部26にて測定された出力電圧が所定電圧よりも低いか否かを判定する(SH3)。ここで、出力電圧検出部26にて測定された出力電圧が所定電圧よりも高い場合には(SH3、No)、発信機20の制御部27は、処理を終了する。
【0079】
一方、出力電圧検出部26にて測定された出力電圧が所定電圧よりも低い場合には(SH3、Yes)、発信機20の制御部27は、無線送信部23によって出力電圧低下信号を無線で送信する(SH4)。
【0080】
続いて、受信装置40の制御部46は、無線受信部43が出力電圧低下信号を受信したか否かを監視する(SJ1)。ここで、無線受信部43が出力電圧低下信号を受信した場合(SJ1、Yes)、受信装置40の制御部46は、信号出力部44によって信号線2を断線させる(SJ2)。具体的には、受信装置40の制御部46は、L−C出力部44bによってL−C線2eを断線させる。これにより、出力電圧低下信号の受信機50に対する移報を行うことができるので、ユーザに対して電池の出力電圧が低下したことを報知することができる。
【0081】
(効果)
このように実施の形態によれば、発信機20は、ユーザによる火災信号の送信指示を受け付ける押しボタン部21と、この押しボタン部21がユーザから火災信号の送信指示を受け付けた場合には、火災信号を無線にて送信する無線送信部23とを備えるので、信号線がなくても他の機器に火災信号を送信することができ、有線式の発信機と比べて設置コスト及び設置の手間を低減することができる。
【0082】
また、発信機20の無線送信部23は、発信機20の火災信号生成部27aにて発信機識別情報が付加された火災信号を無線にて送信するので、受信装置40側又は受信機50側に火災信号を送信した個別の感知器10を識別できるかたちで火災状態を表示する機能があれば、発信機20の火災信号を容易に識別でき、火災の位置を容易に特定することができる。
【0083】
また、発信機20の無線送信部23は、発信機20の押しボタン部21がユーザから火災信号の送信指示を受け付けた場合に、火災信号を所定時間ごと(例えば5secごと)に無線にて繰り返し送信するので、他の機器に火災信号の受信の確実性を向上させることができ、有線式の発信機と同等の通信の安定性を確保することができる。
【0084】
また、発信機20の押しボタン部21がユーザから火災信号の送信指示を受け付けた状態を維持しながら、発信機20の無線送信部23が火災信号を無線にて送信している場合において、発信機20の押しボタン部21がユーザによって火災信号の送信指示を受け付ける前の状態に復旧された場合には、発信機20の無線送信部23は当該火災信号の送信を停止すると共に、火災復旧信号を無線にて送信するので、信号線がなくても他の機器に火災復旧信号を送信することができ、有線式の発信機と比べて設置コスト及び設置の手間を一層低減することができる。
【0085】
また、発信機20の無線送信部23は、発信機20のテストスイッチ部22がユーザから試験信号の送信指示を受け付けた場合に、試験信号を無線にて送信するので、試験信号を用いて発信機20から送信される信号の送信状況を確認することができ、有線式の発信機と同等の通信の安定性を一層確保することができる。
【0086】
また、発信機20のテストスイッチ部22がユーザから試験信号の送信指示を受け付けた場合に、発信機20の表示部24がその旨を表示するので、ユーザに対して試験信号が送信されていることを提示することができ、発信機20が試験処理を行っていることを容易に識別することができる。
【0087】
また、発信機20の無線送信部23は、発信機20の出力電圧判定部27bにて発信機20の電源部25の出力電圧が所定電圧よりも低いと判定された場合に、出力電圧低下信号を送信するので、ユーザに対して発信機20の電源部25の出力電圧が低下したことを報知することができ、その報知があった後にユーザが電源部25のメンテナンスを行うようにすることで、有線式の発信機と同等の通信の安定性をさらに一層確保することができる。
【0088】
また、火災報知システム1は、発信機20と受信装置40とを備えて構成され、このうち発信機20は、ユーザによる火災信号の送信指示を受け付ける押しボタン部21と、押しボタン部21がユーザから火災信号の送信指示を受け付けた場合に、火災信号を無線にて送信する無線送信部23と、を備え、受信装置40は、発信機20から受信した信号を受信機50に移報するための信号出力部44と、発信機20から火災信号を受信した場合に、当該受信した火災信号の受信機50に対する移報を信号出力部44によって行わせる制御部46と、を備えるので、受信装置40が発信機20から火災信号を無線で受信して、当該受信した火災信号の受信機50に対する移報を行うことができ、有線式の発信機を備えて構成される火災報知システム1と比べて設置コスト及び設置の手間を低減することができる。
【0089】
また、発信機20から試験信号を受信した場合に、受信装置40の受信強度測定部46bが当該受信した試験信号の受信強度を測定し、制御部46が当該測定した受信強度を表示部42によって表示させるので、試験信号の受信強度に基づいて、発信機20から送信される信号の送信状況をユーザに提示することができ、この送信状況に基づいて十分な強度で電波が届く設置環境となる設置位置をユーザが選ぶことができるため、有線式の発信機と同等の通信の安定性を確保することができる。また、受信装置40の制御部46が、信号出力部44によって受信機50に対して試験信号の移報を行わせないので、受信機50が試験信号を受信しないようにすることができ、試験処理時に受信機50において火災警報等が誤って発せられることを防止することができる。
【0090】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0091】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0092】
(分散や統合について)
上述した火災報知システム1の各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散又は統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散又は統合して構成できる。
【0093】
(感知器について)
上述した実施の形態では、感知器10の無線送信部は、火災信号又は火災復旧信号を送信すると説明したが、これに限られない。例えば、この無線送信部は、感知器10の動作状況を監視するために、当該感知器10の感知器識別情報を定期的に送信してもよい。この場合には、受信装置40の無線受信部43が感知器識別情報を定期的に受信しなくなったと判定された場合に、受信装置40の制御部46は信号出力部44によって信号線2を断線させてもよい。具体的には、受信装置40の制御部46はL−C出力部44bによってL−C線2eを断線させる(なお、発信機20の無線送信部23についても同様)。
【0094】
(発信機識別情報について)
上述した実施の形態では、発信機識別情報は、発信機20を一意に識別する情報と説明したが、発信機20の各々を識別するものに限られず、例えば単に発信機20であることを識別する情報であってもよい。
【0095】
(受信装置40の処理について)
受信装置40が火災信号や火災復旧信号を受信した際に、当該受信装置40で行われる処理は、上述した実施の形態の処理に限定されない。すなわち、複数の端末装置(ここでは、感知器10、発信機20、中継装置30)から、それぞれ火災信号が送信された場合、受信装置40は、火災信号が送信された順に、信号線2を各火災信号に対応する形態で短絡させる。この短絡処理において、短絡対象となる信号線2のうち、既に短絡させている部分がある場合には、残りの部分のみを短絡させればよい。あるいは、短絡対象となる信号線2のうち、次に短絡させる部分が既に短絡させている部分と重複する部分を含む場合であって、かつ既に短絡させている部分よりも短絡させる部分が少ない場合には、既に短絡させている部分を維持させたり、又は既に短絡させている部分と次に短絡させる部分と重複する部分の短絡状態を維持させて、残りの部分を復旧させてもよい。また、複数の端末装置から、それぞれ火災復旧信号が送信された場合、受信装置40は、火災復旧信号が送信された順に、信号線2を各火災復旧信号に対応する形態で導通可能な状態に復旧させる。この復旧処理において、復旧対象となる信号線2のうち、既に復旧させている部分がある場合には、残りの部分のみを復旧させればよいが、火災信号を送信した後に未だ火災復旧信号を送信していない端末装置がある場合には、当該端末装置からの火災信号に対応する形態で短絡させている部分は短絡状態に維持したまま、他の部分のみを復旧させる。
【0096】
例えば、発信機20の押しボタン部21が押し下げられたことによって、当該発信機20の無線送信部23が火災信号を送信した後、感知器10の検知部が火災を検知したことによって、当該感知器10の有線送信部が火災信号を送信した場合の中継処理であっても、受信装置40の無線受信部43が感知器10又は発信機20から火災復旧信号を受信することにより、受信装置40の信号出力部44は受信機50に対する火災信号の移報を停止する。具体的には、まず、受信装置40の無線受信部43が発信機20の火災信号を受信した場合に、受信装置40の制御部46は、信号出力部44によって、発信器20の発信機識別情報に応じて信号線2を短絡させる。次いで、受信装置40の無線受信部43が感知器10の火災信号を受信した場合に、受信装置40の制御部46は、信号出力部44によって、感知機10の感知器識別情報に応じて信号線2を短絡させる。この場合に、感知器識別情報に応じて信号線2を短絡させる部分が発信機識別情報に応じて信号線2を短絡させる部分よりも少ないので、受信装置40の制御部46は、信号出力部44によって、発信機識別情報に応じて信号線2を短絡させた状態を維持させる(これについては、発信機20の火災信号の移報では、A−C線2d及びL−C線2eを短絡させ、感知器10の火災信号の移報では、L−C線2eを短絡させることが前提となる。以下同じ)。次に、受信装置40の無線受信部43が先に発信機20の火災復旧信号を受信した場合に、受信装置40の制御部46は、信号出力部44によって、感知器10の感知器識別情報に応じて信号線2を短絡させた場合と、発信機20の発信機識別情報に応じて信号線2を短絡させた場合とで重複する信号線2の一部の短絡状態を維持させながら、当該重複しない信号線2の他の一部を復旧させる。その後、受信装置40の無線受信部43が感知器10の火災復旧信号を受信した場合に、受信装置40の制御部46は、信号出力部44によって、当該感知器10の感知器識別情報に応じて信号線2を導通可能な状態に復旧させる。一方、受信装置40の無線受信部43が先に感知器10の火災復旧信号を受信した場合に、受信装置40の制御部46は、信号出力部44によって、感知器10の感知器識別情報に応じて信号線2を短絡させた場合と、発信機20の発信機識別情報に応じて信号線2を短絡させた場合とで重複する信号線2の一部の短絡状態を維持させながら、発信機の火災信号の移報のみで用いられる信号線2の一部の短絡状態も維持する。その後、受信装置40の無線受信部43が発信機20の火災復旧信号を受信した場合に、受信装置40の制御部46は、信号出力部44によって、当該発信機20の発信機識別情報に応じて信号線2を導通可能な状態に復旧させる。
【0097】
また、火災報知システム1に複数の発信機20が設けられている場合に(ここでは、発信機20が2機設けられているものとする)、一方の発信機20の押しボタン部21が押し下げられたことによって、当該発信機20の無線送信部23が火災信号を送信した後、もう一方の発信機20の押しボタン部21が押し下げられたことによって、当該発信機20の無線送信部23が火災信号を送信した場合の中継処理であっても、受信装置40の無線受信部43がこれら発信機20から火災復旧信号を受信することにより、受信装置40の信号出力部44は受信機50に対する火災信号の移報を停止する。具体的には、まず、受信装置40の無線受信部43が一方の発信機20の火災信号を受信した場合に、受信装置40の制御部46は、信号出力部44によって、発信器20の発信機識別情報に応じて信号線2を短絡させる。次いで、受信装置40の無線受信部43がもう一方の発信機20の火災信号を受信した場合に、受信装置40の制御部46は、信号出力部44によって、発信機20の発信機識別情報に応じて信号線2を短絡させる。この場合に、これら発信機識別情報に応じて信号線2を短絡させる部分が同一であるので、受信装置40の制御部46は、信号出力部44によって、発信機識別情報に応じて信号線2を短絡させた状態を維持させる。次に、受信装置40の無線受信部43が2機の発信機20のどちらか一方の火災復旧信号を受信した場合に、これら発信機20の発信機識別情報に応じた信号線2の短絡状態が同一であるので、受信装置40の制御部46は、信号出力部44によって、信号線2の短絡状態をそのまま維持させる。その後、受信装置40の無線受信部43が発信機20の残りの一方の火災復旧信号を受信した場合に、受信装置40の制御部46は、信号出力部44によって、当該発信機20の発信機識別情報に応じて信号線2を導通可能な状態に復旧させる。
【0098】
(試験処理について)
上述した実施の形態では、SF2において、発信機20の制御部27が、無線送信部23によって試験信号を無線で送信させると説明したが、これに限られない。例えば、複数の発信機20の試験処理が行われる場合には、発信機20の火災信号生成部27aは発信機識別情報を記憶部28から取得し、当該取得した発信機識別情報を試験信号に付加し、発信機20の制御部27は当該発信機識別情報が付加された試験信号を無線送信部23によって無線で送信させる。そして、受信装置40の識別情報取得部46aは無線受信部43から受信した試験信号に含まれる発信機識別情報を取得し、受信装置40の制御部46は受信強度測定部46bにて測定された各発信機20の試験信号の受信強度を当該取得した発信機識別情報と対応づけて表示部42によって一覧表示させる。これにより、複数の発信機20の試験処理であっても迅速かつ正確に行うことができる。
【0099】
(出力電圧低下判定処理について)
上述した実施の形態では、発信機20の無線送信部23が出力電圧低下判定信号を送信した場合の出力電圧低下判定処理について説明したが、これに限られず、例えば、感知器10の無線送信部が出力電圧低下判定信号を送信した場合の出力電圧低下判定処理であってもよい。この場合には、感知器10は、各々の構成要素に加えて出力電圧検出部と出力電圧判定部とを備えて構成される。
【0100】
また、複数の発信機20の出力電圧低下判定処理、又は感知器10と発信機20を含めた出力電圧低下判定処理が行われる場合には、発信機20の火災信号生成部27aは発信機識別情報を記憶部28から取得し、当該取得した発信機識別情報を出力電圧低下信号に付加し、発信機20の制御部27は当該発信機識別情報が付加された出力電圧低下信号を無線送信部23によって無線で送信させる。また、感知器10の無線送信部も出力電圧低下信号に感知器識別情報を含めて送信する。そして、受信装置40の識別情報取得部46aは無線受信部43から受信した出力電圧低下信号に含まれる発信機識別情報又は感知器識別情報を取得し、受信装置40の制御部46は信号出力部44によって信号線2を断線させると共に、当該取得した発信機識別情報又は感知器識別情報を表示部42によって表示させる。これにより、複数の発信機20の出力電圧低下判定処理、又は感知器10と発信機20を含めた出力電圧低下判定処理であっても、迅速かつ正確に行うことができる。
【符号の説明】
【0101】
1 火災報知システム
2、102 信号線
2a、102a A線
2a1 A線出力端子
2a2 A線入力端子
2b、102b C線
2b1 C線出力端子
2b2 C線入力端子
2c、102c L線
2c1 L線出力端子
2c2 L線入力端子
2d A−C線
2e L−C線
2f、2g、2h リレー
3 電源線
10 感知器
20、130 発信機
21 押しボタン部
22 テストスイッチ部
23 無線送信部
24、32、42 表示部
25、34 電源部
26 出力電圧検出部
27、35、46 制御部
27a 火災信号生成部
27b 出力電圧判定部
28、36、47 記憶部
30 中継装置
31、41 操作部
33 無線通信部
40、140 受信装置
43 無線受信部
44 信号出力部
44a A−C出力部
44b L−C出力部
45 電源回路部
46a 識別情報取得部
46b 受信強度測定部
47a 移報方法テーブル
50、150 受信機
101 防災システム
110 有線式感知器
120 無線式感知器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災を報知する火災信号を送信する発信機であって、
ユーザによる前記火災信号の送信指示を受け付ける操作手段と、
前記操作手段がユーザから前記火災信号の送信指示を受け付けた場合には、前記火災信号を無線にて送信する無線送信手段と、
を備える発信機。
【請求項2】
当該発信機を識別するための識別情報を格納する識別情報格納手段と、
前記操作手段がユーザから前記火災信号の送信指示を受け付けた場合に、前記識別情報を前記識別情報格納手段から取得し、当該取得した前記識別情報を前記火災信号に付加する火災信号生成手段と、を備え、
前記無線送信手段は、
前記火災信号生成手段にて前記識別情報が付加された火災信号を無線にて送信する、
請求項1に記載の発信機。
【請求項3】
前記無線送信手段は、
前記操作手段がユーザから前記火災信号の送信指示を受け付けた場合に、前記火災信号を所定時間ごとに無線にて繰り返し送信する、
請求項1又は2に記載の発信機。
【請求項4】
前記発信機は火災復旧を報知する火災復旧信号を送信するものであって、
前記操作手段がユーザから前記火災信号の送信指示を受け付けた状態を維持しながら、前記無線送信手段が前記火災信号を無線にて送信している場合において、前記操作手段がユーザによって前記火災信号の送信指示を受け付ける前の状態に復旧された場合には、前記無線送信手段は当該火災信号の送信を停止すると共に、前記火災復旧信号を無線にて送信する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の発信機。
【請求項5】
前記発信機は自己から送信される信号の送信状況を確認するための試験信号を送信するものであって、
ユーザによる前記試験信号の送信指示を受け付ける試験操作手段を備え、
前記無線送信手段は、
前記試験操作手段がユーザから前記試験信号の送信指示を受け付けた場合に、前記試験信号を無線にて送信する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の発信機。
【請求項6】
前記試験操作手段がユーザから前記試験信号の送信指示を受け付けた場合に、その旨を表示する表示手段、
を備える請求項5に記載の発信機。
【請求項7】
前記発信機は電力を供給するための電池を備えたものであり、かつ前記電池の出力電圧低下を報知するための出力電圧低下信号を送信するものであって、
前記電池の出力電圧を検出する出力電圧検出手段と、
前記出力電圧検出手段にて検出された出力電圧が所定電圧よりも低いか否かを判定する出力電圧判定手段と、を備え、
前記無線送信手段は、
前記出力電圧判定手段にて前記電池の出力電圧が所定電圧よりも低いと判定された場合に、前記出力電圧低下信号を送信する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の発信機。
【請求項8】
監視領域における火災を検知して警報を行う火災報知システムであって、
火災を報知する火災信号を送信する発信機と、
前記発信機から受信した火災信号を受信機に中継する受信装置と、を備え、
前記発信機は、
ユーザによる前記火災信号の送信指示を受け付ける操作手段と、
前記操作手段がユーザから前記火災信号の送信指示を受け付けた場合に、前記火災信号を無線にて送信する無線送信手段と、を備え、
前記受信装置は、
前記発信機から受信した信号を前記受信機に移報するための移報手段と、
前記発信機から前記火災信号を受信した場合に、当該受信した火災信号の前記受信機に対する移報を前記移報手段によって行わせる制御手段と、を備える、
火災報知システム。
【請求項9】
前記発信機は、自己から送信される信号の送信状況を確認するための試験信号を送信するものであって、
ユーザによる前記試験信号の送信指示を受け付ける試験操作手段を備え、
前記試験操作手段がユーザから前記試験信号の送信指示を受け付けた場合に、前記無線送信手段が前記試験信号を無線にて送信し、
前記受信装置は、
前記発信機から受信した試験信号の受信強度を測定する受信強度測定手段と、
前記受信強度測定手段にて測定された受信強度を表示する表示手段とを備え、
前記発信機から前記試験信号を受信した場合に、前記受信強度測定手段が当該受信した試験信号の受信強度を測定し、前記制御手段が当該測定した受信強度を前記表示手段によって表示させる、
請求項8に記載の火災報知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−108623(P2012−108623A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255394(P2010−255394)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】