説明

発光ダイオード及び発光ダイオードランプ

【課題】655nm以上の発光波長を有し、単色性に優れると共に、高出力・高輝度・高効率であって応答速度が速く、光取り出し面放射される光のうち、光取り出し面に対して直交する方向における光の強度が強い指向性を持ち、かつ外部に効率良く熱を放出可能な発光ダイオード及び発光ダイオードランプを提供する。
【解決手段】pn接合型の発光部3と、発光部3に積層された歪調整層13と、を少なくとも含む化合物半導体層11を備え、発光部3は、組成式(AlGa1−XIn1−YP(0≦X≦0.1、0.37≦Y≦0.46)よりなる歪発光層とバリア層との積層構造を有しており、歪調整層13は、発光部3の光を透過可能であると共に、歪発光層及びバリア層の格子定数よりも小さい格子定数を有し、光取り出し面11aの反対側に位置する化合物半導体層11の面11bに、反射構造体4を介して接合された機能性基板5を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード及び発光ダイオードランプに関するものであり、特に高出力の赤色発光ダイオード及びこれを用いた発光ダイオードランプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人工光源による植物育成が研究なされている。特に、単色性に優れており、省エネルギー、長寿命、小型化が可能な発光ダイオード(英略称:LED)による照明を用いた栽培方法が注目されている。また、これまでの研究結果から、植物育成(光合成)用の光源に適した発光波長の1つとして、波長600〜700nmの領域の、赤色光の効果が確認されている。
特に、光合成に対して波長660〜670nm付近の光は、反応効率が高く望ましい光源である。この波長に対して、従来の赤色発光ダイオードに於いては、AlGaAs及びInGaNP等よりなる発光層が検討されていた、未だ高出力化を達成できていなかった(例えば、特許文献1〜3)。
【0003】
一方、燐化アルミニウム・ガリウム・インジウム(組成式(AlGa1−XIn1−YP;0≦X≦1,0<Y≦1)よりなる発光層を備えた化合物半導体LEDが知られている。このLEDに於いて、Ga0.5In0.5Pの組成を有する発光層の波長が最も長く、この発光層で得られるピーク波長は、650nm付近である。このため、655nmよりも長波長の領域では、実用化、高輝度化が困難であった。
【0004】
また、(AlGa1−XIn1−YP(0≦X≦1,0<Y≦1)よりなる発光層を備えた発光部は、一般に、発光層から出射される発光に対し光学的に不透明であり、機械的にも強度がそれ程ない砒化ガリウム(GaAs)単結晶基板上に形成されている。
そこで、より高輝度の可視LEDを得るために、また、更なる素子の機械的強度の向上を目的とした研究が進められている。
すなわち、GaAsのような不透明な基板材料を除去した後、発光を透過できると共に従来に増してより機械強度に優れた透明な材料よりなる支持体層を改めて接合させた、いわゆる接合型LEDを構成する技術が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
一方、発光メカニズムの異なるレーザー素子に於いては、歪のある発光層について検討されているが、発光ダイオードに於いては、歪のある発光層について実用化されていないのが実状である(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
また、発光ダイオードの発光部に量子井戸構造を適用した検討がされている。しかしながら、量子井戸構造の適用によって得られる量子効果は、発光波長を短波長化させるため、長波長化の技術には適用できないという問題があった(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−37648号公報
【特許文献2】特開2002−27831号公報
【特許文献3】特開2004−221042号公報
【特許文献4】特許第3230638号公報
【特許文献5】特開2000−151024号公報
【特許文献6】特許第3373561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、植物育成用の照明の光源として実用化するためには、省エネ、コスト面から、発光効率の高いLEDを用いて使用電力及びLEDの使用数量を削減する必要がある。
特に、植物育成用LED照明の実用化の為には、使用電力の低減、コンパクト化、コストダウンが強く望まれており、従来の660nmの波長帯の発光ダイオードであるAlGaAs系のLEDに対して、高出力化・高効率化、波長のバラツキ低減、高速化等の特性向上が望まれていた。
【0008】
また、点灯方法については、高速パルス方式を利用して使用電力を削減することも検討されており、応答速度の速い発光ダイオードが必要である。近年の研究により、植物育成用の照明は、光を放射後、光合成の反応時間中に消灯することによって省エネルギー化が可能であることが確認された。しかし、高速のパルス通電に対応できる応答速度を有する発光ダイオードが必要である。具体的には、発光ダイオードの応答速度は、1000ns以下、望ましくは、100ns以下が好適である。
【0009】
ところで、発光効率の高い(AlGa1−XIn1−YP(0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層において、エピタキシャル成長に使用するGaAs基板の格子定数に整合する最も長波長(バンドギャップの小さい)の発光層の組成は、Ga0.5In0.5Pである。
この発光層の発光波長は、650nmであり、650nm以上の長波長化を達成することができない。このように、発光層の650nm以上の長波長化には技術的課題が存在するため、実用化・高効率化ができていない。特に655nm以上の長波長を有するLEDでは、高出力化の技術が確立されていないという問題があった。
【0010】
また、発光ダイオードは、発光ダイオードの発光効率を高めたり、発光した光の利用効率を高める為に、光取り出し面から発光ダイオードの外部に放射される光のうち、光取り出し面に対して直交する方向における光の強度が強いことが望ましい。
また、植物育成の照明として発光ダイオードを用いる場合、発光部が発光した際の熱を発光ダイオードの外部に効率良く放出できることが好ましい。
【0011】
さらに、植物育成用の照明においては、発光波長700nm以上の光は、植物育成を抑制する効果がある場合がある。このため、発光波長660nm付近の単色性に優れる赤色光が望まれている。従って、植物育成用の照明としては、700nmにおける発光強度が、ピーク発光波長の強度に対して10%未満の発光スペクトルを有することが望ましい。
【0012】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、655nm以上の発光波長を有し、単色性に優れると共に、高出力・高輝度・高効率であって応答速度が速く、光取り出し面放射される光のうち、光取り出し面に対して直交する方向における光の強度が強い指向性を持ち、かつ外部に熱を効率良く放出可能な発光ダイオードを提供することを目的とする。また、植物育成用の照明に適した発光ダイオードランプを提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は以下に関する。
(1) pn接合型の発光部と、前記発光部に積層された歪調整層とを少なくとも含む化合物半導体層を備え、前記発光部は、組成式(AlXGa1−X)YIn1−YP(0≦X≦0.1、0.37≦Y≦0.46)からなる歪発光層とバリア層との積層構造を有しており、前記歪調整層は、発光波長に対して透明であると共に、前記歪発光層及び前記バリア層の格子定数よりも小さい格子定数を有し、前記化合物半導体層の光取り出し面と反対側の面に、反射構造体を介して機能性基板が接合されていることを特徴とする発光ダイオード。
(2) 前記機能性基板が、金属基板であることを特徴とする前項(1)記載の発光ダイオード。
(3) 前記金属基板は、積層された複数の金属層により構成されることを特徴とする前項(2)記載の発光ダイオード。
(4) 前記機能性基板の材料が、GaP、Si、Geのいずれかであることを特徴とする前項(1)記載の発光ダイオード。
(5) 前記光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度が、前記光取り出し面に対して45°の角度を成す方向に放射される放射照度の1.0倍以上であることを特徴とする前項(1)ないし(4)のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
(6) 前記歪発光層の組成式が、GaIn1−XP(0.37≦X≦0.46)であることを特徴とする前項(1)ないし(5)のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
(7) 前記歪発光層の厚さが、8〜30nmの範囲であることを特徴とする前項(1)ないし(6)のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
(8) 前記歪発光層が8〜40層含まれていることを特徴とする前項(1)ないし(7)のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
(9) 前記バリア層の組成式が、(AlGa1−XIn1−YP(0.3≦X≦0.7、0.48≦Y≦0.52)であることを特徴とする前項(1)ないし(8)のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
(10) 前記発光部は、前記歪発光層の上面及び下面の一方又は両方にクラッド層を有し、前記クラッド層の組成式が(AlGa1−XIn1−YP(0.5≦X≦1、0.48≦Y≦0.52)であることを特徴とする前項(1)ないし(9)のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
(11) 前記歪調整層の組成式を、(AlGa1−XIn1−YP(0≦X≦1、0.6≦Y≦1)にしたことを特徴とする前項(1)ないし(10)のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
(12) 前記歪調整層の組成式を、AlGa1−XAs1−Y(0≦X≦1、0.6≦Y≦1)にしたことを特徴とする前項(1)ないし(10)のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
(13) 前記歪調整層が、GaP層であることを特徴とする前項(1)ないし(12)のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
(14) 前記歪調整層の厚さが、0.5〜20μmの範囲であることを特徴とする前項(1)ないし(13)のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
(15) 前記光取り出し面は、粗い面を含むことを特徴とする前項(1)ないし(14)のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
(16) 植物育成の光合成の促進に使用するための発光ダイオードであって、前記発光部の発光スペクトルのピーク発光波長が、655〜675nmの範囲であることを特徴とする前項(1)ないし(15)のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
(17) 前記発光スペクトルの半値幅が、10〜40nmの範囲であることを特徴とする前項(16)記載の発光ダイオード。
(18) 前記発光スペクトルの発光波長700nmにおける発光強度が、前記ピーク発光波長における発光強度の10%未満であることを特徴とする前項(16)または(17)記載の発光ダイオード。
(19) 前記発光部の応答速度(Tr)が、100ns以下であることを特徴とする前項(1)ないし(18)のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
(20) 表面に電極端子が形成されたマウント基板と、請求項1ないし19のうち、いずれか1項記載の発光ダイオードと、を備え、前記発光ダイオードは、前記マウント基板に実装されており、前記発光ダイオードは、前記電極端子と電気的に接続されていることを特徴とする発光ダイオードランプ。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一観点によれば、組成式(AlGa1−XIn1−YP(0≦X≦0.1、0.37≦Y≦0.46)よりなる歪発光層を設けることにより、発光部からの発光効率及び応答速度を向上できる。また、歪発光層の組成を上記範囲に規定することにより、655nm以上の発光波長を有した発光ダイオードを実現できる。
また、発光部上に、発光部の光を透過させる歪調整層を設けることにより、歪調整層により発光部からの光が吸収されることがないため、高出力・高効率の発光ダイオードを実現できる。
【0015】
さらに、この歪調整層は、歪発光層及びバリア層の格子定数よりも小さい格子定数を有しているため、半導体化合物層の反りの発生を抑制できる。これにより、歪発光層の歪量のばらつきが低減されるため、単色性に優れた発光ダイオードを実現できる。
また、化合物半導体層の光取り出し面とは反対側に位置する化合物半導体層の面に、反射構造体を設けることにより、化合物半導体層の光取り出し面から発光ダイオードの外部に放射される光のうち、光取り出し面に対して直交する方向における光の強度を強くすることが可能となるので、高輝度及び高効率の発光ダイオードを実現できる。
また、光取り出し面に対して直交する方向における光の強度を強くすることにより、光取り出し面に対して直交する方向において、反射構造体を備えていない発光ダイオードの光の強度と同じ強さの光強度を得る場合、反射構造体を備えていない発光ダイオードよりも消費電力を小さくすることができる。
【0016】
また、光取り出し面の反対側に位置する化合物半導体層の面に、反射構造体を介して接合される機能性基板として、例えば、熱伝導率の良い基板を用いることで、発光部が発光した際の熱を、機能性基板を介して、発光ダイオードの外部に効率良く放出することができる。このような機能性基板を備えた発光ダイオードは、特に、発熱が問題となる植物育成用の照明として用いる場合に有効である。
【0017】
上記説明したように、本発明の発光ダイオードによれば、655nm以上の赤色光の発光波長を有し、単色性に優れると共に、高出力・高輝度・高効率であって応答速度が速く、かつ放熱性に優れた発光ダイオードを提供できる。
また、機能性基板として放熱性に優れた基板を用いることで、発光部が発光した際の熱を発光ダイオードの外部に放出することができる。
また、本発明の発光ダイオードによれば、従来のAlGaAs系の発光ダイオードと比較して、約4倍以上の発光効率を有する高出力発光ダイオードを提供できる。
また、化合物半導体層の光取り出し面と反対側の面に、反射構造体を介して機能性基板が接合されているために、光取り出し面放射される光のうち、光取り出し面に対して直交する方向における光の強度が強い指向性を持つ発光ダイオードを提供できる。
【0018】
また、上記発光ダイオードを備えた本発明の発光ダイオードランプによれば、植物育成用の照明に適した発光ダイオードランプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る発光ダイオードの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る発光ダイオードの発光部の構成を説明するための拡大断面図である。
【図3】反射構造体を備えていない発光ダイオード及び反射構造体を備えた発光ダイオードの放射照度を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る発光ダイオードの製造工程を示す断面図(その1)であり、図4(a)は、第1及び第2の金属層を対向配置させた状態を示す図であり、図4(b)は、第1及び第2の金属層が圧着され、第1及び第2の金属層よりなる機能性基板が形成された状態を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る発光ダイオードの製造工程を示す断面図(その2)である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る発光ダイオードの製造工程を示す断面図(その3)である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る発光ダイオードの製造工程を示す断面図(その4)である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る発光ダイオードの製造工程を示す断面図(その5)である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る発光ダイオードの製造工程を示す断面図(その6)である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る発光ダイオードの製造工程を示す断面図(その7)である。
【図11】図1に示す発光ダイオードを備えた発光ダイオードランプの断面模式図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る発光ダイオードを説明するための図であり、図12(a)は、第2の実施形態の発光ダイオードの平面図であり、図12(b)は、図12(a)に示す発光ダイオードのA−A‘線方向の概略断面図である。
【図13】本発明の第1実施例の発光ダイオードランプの発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した実施形態である発光ダイオード、及びこれを備えた発光ダイオードランプについて、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際の発光ダイオード及び発光ダイオードランプと同じであるとは限らない。
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
(第1の実施形態)
<発光ダイオード>
図1は、本発明の第1の実施形態である発光ダイオードの一例を示す図である。
図1を参照するに、本発明の実施形態である発光ダイオード(LED)1は、発光層2を含む発光部3及び歪調整層13を少なくとも含む化合物半導体層11と、反射構造体4を介して発光部3に接合された機能性基板5である金属基板と、を有している。また、発光部3の反射構造体4と反対側の面3aには第1の電極6が備えられ、発光部3の反射構造体4側の面3bには、歪調整層13を介して、第2の電極8が備えられている。
【0022】
<発光部>
発光部3は、歪調整層13上に、少なくともp型の下部クラッド層10b、発光層2、n型の上部クラッド層10aが順次積層されて構成されている。すなわち、発光部3は、放射再結合をもたらすキャリア(担体;carrier)及び発光を発光層2に「閉じ込める」ために、発光層2の下側及び上側に対峙して配置した下部クラッド(clad)層10b及び上部クラッド層10aを含む、所謂、ダブルヘテロ(英略称:DH)構造とすることが高強度の発光を得る上で好ましい。
【0023】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る発光ダイオードの発光部の構成を説明するための拡大断面図である。
図2を参照するに、発光層2は、歪発光層31と、バリア層32との多層構造であることが好ましい。
【0024】
発光層2の層厚は、0.02〜2μmの範囲であることが好ましい。また、発光層2の伝導型は特に限定されるものではなく、アンドープ、p型及びn型のいずれも選択することができる。発光効率を高めるには、結晶性が良好なアンドープ又は3×1017cm−3未満のキャリア濃度とすることが望ましい。
【0025】
歪発光層31は、(AlGa1−XIn1−YP(0≦X≦1,0<Y≦1)の組成を有している。上記Xは、0.1以下であることが好ましく、0であることがより好ましい。また、上記Yは、0.37〜0.46の範囲が好ましく、0.39〜0.45の範囲がより好ましい。歪発光層31の材質を上記範囲に規定することにより、発光波長を655〜675nmの範囲とすることできる。
しかしながら、この場合に歪発光層31は、それ以外の構造部分と格子定数が異なる構成となり、化合物半導体層2に歪が発生する。このため、結晶欠陥の発生という弊害が生ずるおそれがある。
【0026】
歪発光層31の層厚は、8〜30nmの範囲が好適である。ここで、歪発光層31の層厚が約6nm未満の薄膜である場合では、井戸構造の量子効果により発光波長が短くなり、所望の655nm以上が得られなくなる。
したがって、歪発光層31の層厚は、層厚の変動を加味して量子効果の発現しない8nm以上であることが望ましい。また、層厚の制御の容易さを考慮すれば、10nm以上が好適である。一方、歪発光層31の層厚が30nmを超えると、歪量が大きくなりすぎるため、結晶欠陥や表面の異常が発生しやすくなるために好ましくない。
【0027】
バリア層32は、(AlGa1−XIn1−YP(0≦X≦1,0<Y≦1)の組成を有している。上記Xは、0.3〜0.7の範囲が好ましく、0.4〜0.6の範囲がより好ましい。また、上記Yは、0.48〜0.52の範囲が好ましく、0.49〜0.51の範囲がより好ましい。また、バリア層32の格子定数は、GaAs基板と同等または、小さくすることができる。
【0028】
バリア層32の層厚は、歪発光層31の層厚よりも厚いことが好ましい。これにより、歪発光層31の発光効率を高くすることができる。また、バリア層32によって発光効率を最適化すると共に歪発光層31に発生した歪を緩和する必要がある。
したがって、バリア層32は、少なくとも、15nm以上の層厚とすることが好ましく、20nm以上の層厚がより好ましい。一方、バリア層32の層厚が、50nmを超えると発光波長の波長に近くなり、光の干渉、ブラッグ反射等、光学的な影響がでる。
したがって、バリア層32は、50nm以下の層厚とすることが好ましく、40nm以下の層厚がより好ましい。
上述したように、歪発光層31の層厚が薄く、バリア層32の層厚が厚いほうが、歪発光層31の歪をバリア層32によって吸収する効果が得られると共に、歪発光層31に結晶欠陥が発生しにくいという効果が得られる。
【0029】
歪発光層31とバリア層32との多層構造において、歪発光層31とバリア層32とを交互に積層する対の数は特に限定されるものではないが、8対以上40対以下であることが好ましい。すなわち、発光層2には、歪発光層31が8〜40層含まれていることが好ましい。
ここで、発光層2の発光効率が好適な範囲としては、歪発光層31が8層以上であることが好ましい。一方、歪発光層31及びバリア層32は、キャリア濃度が低いため、多くの対にすると順方向電圧(VF)が、増大してしまう。
【0030】
このため、40対以下であることが好ましく、30対以下であることがより好ましい。また、歪発光層31が有する歪は、GaAs基板(図示せず)と発光層2との格子定数が異なるため、発光層2中に発生するストレスである。このため、歪発光層31とバリア層32とを交互に積層する対の数、すなわち、発光層2に含まれる歪発光層31の層の数が前記範囲を超えると、発光層2が歪に耐えきれずに結晶欠陥が発生し、表面状態の悪化や発光効率低下等の問題が発生する。
【0031】
発光層2(発光部3)は、歪発光層31の材質を上記範囲に規定することにより、その発光スペクトルのピーク発光波長が655〜675nmの範囲とすることが好ましく、該範囲内でもより光合成の効率が高い660〜670nmの範囲とすることがより好ましい。上記範囲の発光波長は、植物育成(光合成)用の光源に適した発光波長の1つであり、光合成に対して反応効率が高いために望ましい。
一方、700nm以上の長波長領域の光を利用すると、植物の育成を抑制する反応が起こる為、長波長域の光量は少ない方が望ましい。従って、効率的に植物育成する為には、光合成反応に対して最適な655〜675nmの波長領域の光が強く、700nm以上の超波長領域の光を含まない赤色光源が最も好ましい。
【0032】
また、前記の好ましい赤色光源にする為には、半値幅は、狭い必要がある。一方、波長バラツキの大きくなる可能性がある量子化条件に近いと半値幅が狭くなる為、結果的に発光スペクトルの半値幅が、10〜40nmの範囲であることが好ましい。
さらに、上記発光スペクトルの発光波長700nmにおける発光強度が、上記ピーク発光波長における発光強度の10%未満であることが好ましい。また、発光層2の応答速度(立ち上がり時間:Tr)を100ns以下であることが好ましい。
このような特性の発光層2を有する発光ダイオード1は、植物育成の光合成の促進に使用する照明(発光ダイオードランプ)として好適に用いることができる。また、発光層2の構成は、上記特性を充足するように組成、層厚、層数を適宜選択することができる。
【0033】
図1を参照するに、下部クラッド層10b及び上部クラッド層10aは、発光層2のいずれか一方の面に設けられている。具体的には、発光層2の下面に下部クラッド層10bが設けられ、発光層2の上面に上部クラッド層10aが設けられている。
【0034】
下部クラッド層10b及び上部クラッド層10aの材質としては、歪発光層31よりもバンドギャップの大きい材質が好ましく、バリア層32よりもバンドギャップが大きい材質がより好ましい。
上記材質としては、例えば、AlGa1−XAsの組成を有する化合物や、(AlGa1−XIn1−YP(0≦X≦1,0<Y≦1)の組成を有する化合物が挙げられる。上記Xの値は、下限値が0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。また、上記Yの値は、0.48〜0.52の範囲が好ましく、0.49〜0.51の範囲がより好ましい。
【0035】
下部クラッド層10bと上部クラッド層10aとは、極性が異なるように構成されている。また、下部クラッド層10b及び上部クラッド層10aのキャリア濃度及び厚さは、公知の好適な範囲を用いることができ、発光層2の発光効率が高まるように条件を最適化することが好ましい。また、下部クラッド層10b及び上部クラッド層10aの組成を制御することによって、化合物半導体層11の反りを低減させることができる。
【0036】
具体的に、下部クラッド層10bとしては、例えば、Mgをドープしたp型の(AlGa1−XIn1−YP(0.3≦X≦1,0<Y≦1)よりなる半導体材料を用いることが望ましい。また、キャリア濃度は2×1017〜2×1018cm−3の範囲が好ましく、層厚は0.5〜5μmの範囲が好ましい。
【0037】
一方、上部クラッド層10aとしては、例えば、Siをドープしたn型の(AlGa1−XIn1−YP(0.3≦X≦1,0<Y≦1)よりなる半導体材料を用いることが望ましい。
また、キャリア濃度は1×1017〜1×1018cm−3の範囲が好ましく、層厚は0.5〜2μmの範囲が好ましい。なお、下部クラッド層10b及び上部クラッド層10aの極性は、化合物半導体層11の素子構造を考慮して選択することができる。
【0038】
上部クラッド層10aのコンタクト層12bと接触する面は、光取り出し面11aとして機能する面であり、粗面化されている(言い換えれば、粗い面を含んでいる)。
このように、光取り出し面11aを粗面化することにより、光取り出し面11aでの全反射が抑制されるため、光取り出し効率を向上させることができる。
【0039】
また、下部クラッド層10bと発光層2との間、発光層2と上部クラッド層10aとの間及び上部クラッド層10aと歪調整層13との間に、両層間におけるバンド(band)不連続性を緩やかに変化させるための中間層を設けても良い。この場合、各中間層は、上記両層の中間の禁止帯幅を有する半導体材料からそれぞれ構成することが好ましい。
【0040】
また、発光部3の構成層の最上層には、オーミック(Ohmic)電極の接触抵抗を下げるためのコンタクト層12bが設けられている。
なお、コンタクト層12bの他に、素子駆動電流を発光部の全般に平面的に拡散させるための電流拡散層、逆に素子駆動電流の通流する領域を制限するための電流阻止層や電流狭窄層等、公知の層構造を設けてもよい。
【0041】
<歪調整層>
図1を参照するに、歪調整層13は、発光部3の下方に設けられている。この歪調整層13は、GaAs基板(図示せず)上に化合物半導体層11をエピタキシャル成長させる際に、歪発光層31によって生じた歪を緩和させるための層である。また、歪調整層13は、発光部3(発光層2)の発光波長に対して透明である。
さらに、歪調整層13は、歪発光層31及びバリア層32の格子定数よりも小さい格子定数を有している。また、歪調整層13は、化合物半導体層11の形成(エピタキシャル成長による形成)に用いたGaAs基板(図示せず)の格子定数よりも小さい格子定数を有する。
より具体的には、後述する組成から得られる歪調整層13の格子定数をA、バリア層32の格子定数をB、歪発光層31の格子定数をCとした場合に、A<B<Cとなる関係を有している。
【0042】
歪調整層13としては、(AlGa1−XIn1−YP(0≦X≦1、0.6≦Y≦1)の組成を有する材料を適用することが可能である。上記Xは、化合物半導体層11の素子構造にもよるが、Al濃度が低い材料が化学的に安定であることから、0.5以下であることが好ましく、0であることがより好ましい。
また、上記Yの下限値は、0.6以上であることが好ましい。ここで、発光層2(歪発光層31)の有する歪量が同じ場合を比較すると、上記Yの値が小さいほうが歪調整層13の歪調整効果が小さくなる。
このため、歪調整層13の層厚を厚くする必要が生じる。これにより、歪調整層13の成膜時の成長時間とコストが上昇してしまうため、上記Yの値は0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。
【0043】
また、歪調整層13としては、発光部3の発光波長に対して透明な層であり、AlGa1−XAs1−Y(0≦X≦1、0.6≦Y≦1)の組成を有するIII−V属半導体材料も好適に用いることができる。
上記組成を有する歪調整層13では、Yの値によって格子定数が変化する。上記Yの値が大きい方が、格子定数が小さくなる。また、発光部3の光を透過させるか否かは、上記X及びYの値の双方に関連する為、発光部3の発光波長に対して透明なようにX及びYの値を選択すれば良い。
【0044】
さらに、歪調整層13として、GaP層、好ましくは、例えばMgドープしたp型のGaP層を用いることが好ましい。GaP層は、組成の調整が不要であると共に歪調整効果が大きいため、生産性及び安定性の面からも歪調整層13として最も適している。
【0045】
歪調整層13は、発光部3をエピタキシャル成長させる際に用いる基板であるGaAs基板(図示せず)の格子定数よりも小さい格子定数を有しているため、歪発光層31が包含する歪量のばらつきを緩和する機能を備えている。
このため、歪調整層13を設けることにより、発光波長等の特性の均一化、クラック発生等の結晶欠陥の発生防止の効果がある。
ここで、歪調整層13の厚さは、0.5〜20μmの範囲であることが好ましく、3〜15μmの範囲であることがより好ましい。層厚が0.5μm未満であると、歪発光層31の歪量のばらつきを緩和するのに十分ではなく、層厚が20μmを超えると成長時間が長くなり、製造コストが増加するので好ましくない。
【0046】
このように、歪調整層13の組成を制御することにより、化合物半導体層11の反りを低減できるため、面内波長分布の小さい発光ダイオード1の作製が可能である。
さらに、本実施形態のように、反射構造体4を介して、機能性基板5と化合物半導体層11との接合を行なう構造を有する場合にも、化合物半導体層11の反りが大きい場合は割れ等の問題が生じるため、化合物半導体層11の反りを小さくすることが望ましい。
【0047】
<第1の電極、第2の電極>
第1の電極6及び第2の電極8は、それぞれオーミック電極であり、それらの形状及び配置は、発光部3に電流を均一に拡散させるものであればよく、特に限定されない。例えば、平面視したときに円状または矩形状の電極を用いることができ、一個の電極として配置することも、複数の電極を格子状に配置することもできる。
【0048】
第1の電極6の材料としては、コンタクト層12bとしてn型の化合物半導体を用いた場合には、例えば、AuGe層、AuSi層等を用いることができ、コンタクト層12bとしてp型の化合物半導体を用いた場合には、例えば、AuBe層、AuZn層等を用いることができる。
また、更にその上にAu層等を積層することで、酸化を防止させると共に、ワイヤボンディングの接続信頼性を向上できる。
【0049】
第2の電極8の材料としては、歪調整層13としてn型の化合物半導体を用いた場合には、例えば、AuGe層、AuSi層等を用いることができ、歪調整層13としてp型の化合物半導体を用いた場合には、例えば、AuBe層、AuZn層等を用いることができる。
【0050】
<反射構造体>
図1を参照するに、反射構造体4は、第2の電極8を覆うように、歪調整層13の面13aに形成されている。反射構造体4は、透明導電膜14と、反射層15とが順次積層された構成とされている。
【0051】
透明導電膜14は、第2の電極8を覆うように、歪調整層13の面13a(第2の電極8が形成された歪調整層13の面)に形成されている。透明導電膜14としては、例えば、ITO膜、IZO膜等を用いることができる。
また、透明導電膜14の代わりに、或いは、透明導電膜14と共に、透明な材料の屈折率差を利用したいわゆるコールドミラー、例えば、酸化チタン膜、酸化ケイ素膜の多層膜や白色のアルミナ、AlNを用いて、反射層15に組み合わせてもよい。
【0052】
図1を参照するに、反射層15は、透明導電膜14に積層されている。反射層15は、銅、銀、金、アルミニウム等の金属及びそれらの合金等の材料により構成されている。これらの材料は光反射率が高く、反射構造体4からの光反射率を90%以上とすることができる。
このような反射層15を設けることにより、発光層2からの光を反射層15で正面方向fへ反射させて、正面方向fでの光取り出し効率を向上させることができる。これにより、発光ダイオード1をより高輝度化できる。
なお、ここでの正面方向fとは、化合物半導体層11の光取り出し面11a(本実施形態の場合、発光部3の面3a)との成す角度が90°となる方向で、かつ発光ダイオード1のから離間する方向のことをいう。なお、反射構造体4は、透明導電膜14を設けることなく、反射層15だけで構成してもよい。
【0053】
また、反射構造体4は、光取り出し面11aに対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度が、光取り出し面11aに対して45°の角度を成す方向に放射される放射照度の1.0倍よりも大きくなるように構成するとよい。
このように、光取り出し面11aに対して90°の角度を成す方向(光取り出し面11aに対して直交する方向)に放射される放射照度を、光取り出し面11aに対して45°の角度を成す方向に放射される放射照度の1.0倍よりも大きくすることにより、高輝度及び高効率の発光ダイオード1を実現できる。
また、光取り出し面11aに対して直交する方向における光の強度を強くすることにより、光取り出し面11aに対して直交する方向において、反射構造体4を備えていない発光ダイオードの光の強度と同じ強さの光強度を得る場合、反射構造体4を備えていない発光ダイオードよりも消費電力を小さくすることができる。
【0054】
図3は、反射構造体を備えていない発光ダイオード及び反射構造体を備えた発光ダイオードの放射照度を示す図である。図3では、光取り出し面11aから照射された光の放射照度を示している。また、図3では、光取り出し面11aに対して直交する方向の照射角度を90°とし、光取り出し面11aに対して平行な方向の照射角度を0°とする。
【0055】
図3を参照するに、反射構造体4を備えていない発光ダイオードでは、斜め方向(具体的には、放射角度が15〜55°の方向)において放射照度が大きく、放射角度が60°から90°に近づくにつれて、放射照度が小さくなることが確認できる。
一方、反射構造体4を備えた発光ダイオード1では、放射角度が60°以下において、反射構造体4を備えていない発光ダイオードよりも放射照度が小さく、放射角度が60°〜90°の範囲内において、反射構造体4を備えていない発光ダイオードよりも照射照度が大きくなることが確認できた。
このことから、反射構造体4を設けることで、光取り出し面11aに対して90°の角度を成す方向に放射される光の放射照度を強くできることが確認できた。
【0056】
具体的には、反射層15としては、例えば、透明導電膜14側からAg合金層/W層/Pt層/Au層/接続用金属層よりなる積層膜を用いることができる。透明導電膜14と接触する面とは反対側に位置する反射層15の面15bに形成された前記接続用金属としては、電気抵抗が低く、低温で溶融する金属を用いるとよい。このような接続用金属を用いることにより、発光部3に熱ストレスを与えることなく、機能性基板5を接続できる。
上記接続用金属としては、化学的に安定で、融点の低いAu系の共晶金属等を用いるとよい。前記Au系の共晶金属としては、例えば、AuSn、AuGe、AuSi等の合金の共晶組成(Au系の共晶金属)を挙げることができる。
また、接続用金属には、チタン、クロム、タングステン等の金属を添加することが好ましい。接続用金属としてチタン、クロム、タングステン等の金属を添加することにより、該金属がバリヤ金属として機能するため、機能性基板5に含まれる不純物等が反射層15側に拡散して、反応することを抑制できる。
【0057】
<機能性基板(金属基板)>
図1を参照するに、機能性基板5は、反射構造体4を介して、化合物半導体層11の面11b(具体的には、歪調整層13の面13a)に貼り付けられている。具体的には、発光部3と対向する反射構造体4の面とは反対側に位置する反射構造体4の面15bに、機能性基板5の接合面5aが接合されている。
【0058】
第1の実施形態では、機能性基板5として金属基板を用いる。つまり、第1の実施形態では、反射構造体4を介して、化合物半導体層11の面11b(具体的には、歪調整層13の面13a)に、金属基板が貼り付けられている。以下、機能性基板5として金属基板を用いた場合を例に挙げて説明する。
【0059】
機能性基板5は、複数の金属層からなるものを用いることができる。さらに、機能性基板5は、2種類の金属層を交互に積層して構成することが好ましい。また、上記2種類の金属層の合計の層数は、奇数とすることが好ましい。
【0060】
この場合、機能性基板5の反りや割れの観点から、第2の金属層22として化合物半導体層11より熱膨張係数が小さい材料を用いる場合、第1の金属層21を化合物半導体層11より熱膨張係数が大きい材料で構成することが好ましい。
これにより、機能性基板5全体としての熱膨張係数が化合物半導体層11の熱膨張係数に近くなるため、化合物半導体層11と機能性基板5とを接合する際の機能性基板5の反りや割れを抑制することが可能となるので、発光ダイオード1の歩留まりを向上できる。
【0061】
また、第2の金属層22として化合物半導体層11より熱膨張係数が大きい材料を用いる場合、第1の金属層21を化合物半導体層11より熱膨張係数が小さい材料で構成することが好ましい。
これにより、機能性基板5全体としての熱膨張係数が、化合物半導体層11の熱膨張係数に近くなるため、化合物半導体層11と機能性基板5とを接合する際の機能性基板5の反りや割れを抑制することが可能となるので、発光ダイオード1の歩留まりを向上できる。
【0062】
以上説明したように、機能性基板5を構成する第1及び第2の金属層21,22の位置は、入れ替えることが可能である。つまり、図1では、2つの第1の金属層21が1つの第2の金属層を挟み込むことで機能性基板5を構成しているが、2つの第2の金属層22により1つの第1の金属層21を挟みこむことで機能性基板5(金属基板)を構成してもよい。
【0063】
第1及び第2の金属層21,22よりなる機能性基板5は、例えば、銀(熱膨張係数=18.9ppm/K)、銅(熱膨張係数=16.5ppm/K)、金(熱膨張係数=14.2ppm/K)、アルミニウム(熱膨張係数=23.1ppm/K)、ニッケル(熱膨張係数=13.4ppm/K)、及びこれらの合金のうち、いずれかの材料よりなる金属層と、モリブデン(熱膨張係数=5.1ppm/K)、タングステン(熱膨張係数=4.3ppm/K)、クロム(熱膨張係数=4.9ppm/K)、及びこれらの合金のうち、いずれかの材料よりなる金属層との組み合わせで構成できる。
【0064】
機能性基板5(金属基板)の好適な例としては、Cu層/Mo層/Cu層の3層よりなる金属基板が挙げられる。先に説明したように、Mo層/Cu層/Mo層の3層よりなる金属基板でも、Cu層/Mo層/Cu層の3層よりなる金属基板と同様な効果を得ることが可能である。
一方、Cu層/Mo層/Cu層の3層よりなる金属基板は、機械的強度の高いMoを加工しやすいCuで挟んだ構造であるため、Mo層/Cu層/Mo層の3層よりなる金属基板よりも金属基板の切断等の加工を容易に行なうことができるという利点がある。
【0065】
機能性基板5全体としての熱膨張係数は、例えば、機能性基板5としてCu層(30μm)/Mo層(25μm)/Cu層(30μm)よりなる金属基板を用いた場合、6.1ppm/Kとなる。また、機能性基板5としてMo層(25μm)/Cu層(70μm)/Mo層(25μm)よりなる金属基板を用いた場合、例えば、機能性基板5全体としての熱膨張係数は5.7ppm/Kとなる。
【0066】
また、放熱の観点からは、機能性基板5を構成する金属層は熱伝導率が高い材料よりなることが好ましい。このような材料を用いることにより、機能性基板5の放熱性を高くすることが可能となり、発光ダイオード1を高輝度で発光させることができると共に、発光ダイオード1の寿命を長寿命とすることができる。
【0067】
上記熱伝導率が高い材料としては、例えば、銀(熱伝導率=420W/m・K)、銅(熱伝導率=398W/m・K)、金(熱伝導率=320W/m・K)、アルミニウム(熱伝導率=236W/m・K)、モリブデン(熱伝導率=138W/m・K)、タングステン(熱伝導率=174W/m・K)、及びこれらの合金等を用いることが好ましい。
【0068】
さらに、機能性基板5を構成する金属層の熱膨張係数が、化合物半導体層11の熱膨張係数と略等しい材料よりなることが好ましい。
特に、機能性基板5を構成する金属層の材料の熱膨張係数が、化合物半導体層11の熱膨張係数の±1.5ppm/K以内であることが好ましい。これにより、機能性基板5と化合物半導体層11との接合時に発生する発光部3へのストレス(熱に起因するストレス)を小さくすることが可能となり、機能性基板5と化合物半導体層11と接続させた際の熱による機能性基板5の割れが抑制されるので、発光ダイオード1の歩留まりを向上できる。
【0069】
機能性基板5としてCu層(30μm)/Mo層(25μm)/Cu層(30μm)よりなる金属基板を用いた場合、機能性基板5の熱伝導率は250W/m・Kとなる。
また、機能性基板5としてMo層(25μm)/Cu層(70μm)/Mo層(25μm)よりなる金属基板を用いた場合、機能性基板5の熱伝導率は220W/m・Kとなる。
【0070】
金属基板よりなる機能性基板5の厚さは、50μm以上150μm以下とすることが好ましい。
機能性基板5の厚さが150μmより厚い場合には、発光ダイオードの製造コストが上昇して好ましくない。また、機能性基板5の厚さが50μmより薄い場合には、ハンドリング時に割れ、欠け、反り等が容易に生じて、発光ダイオードの歩留まりを低下させる虞がある。
【0071】
1枚の機能性基板5を構成する第1の金属層21及び第2の金属層22の層数は、合わせて3〜9層とすることが好ましく、3〜5層とすることがより好ましい。
第1の金属層21と第2の金属層22の層数を合わせて2層とした場合には、厚さ方向での熱膨張が不均衡となり、機能性基板5の割れが発生するおそれが発生する。逆に、第1の金属層21と第2の金属層22の層数を合わせて9層より多くした場合には、第1の金属層21と第2の金属層22の層の厚さをそれぞれ薄くする必要が生じる。
【0072】
しかしながら、第1及び第2の金属層21,22の厚さを薄く作製することは非常に困難であるため、第1の金属層21或いは第2の金属層22の厚さを薄くして、単層の金属基板を形成した場合、各層の厚さが不均一となり、発光ダイオードの特性をばらつかせる虞がある。
さらに、層の厚さを薄くした前記単層の金属基板は、容易に基板の割れを発生させる。また、薄膜化された単層の金属基板を用いる場合、金属基板の製造が困難であることから、発光ダイオードの製造コストを増加させる虞がある。
【0073】
なお、機能性基板5の接合面5aに、電気的接触を安定化させる接合補助膜、または、ダイボンド用の共晶金属を形成してもよい。これにより、接合工程を簡便に行うことができる。前記接合補助膜としては、Au膜、AuSn膜等を用いることができる。
【0074】
なお、発光部3に機能性基板5を接合する方法は、上記に記載した方法に限られるものではなく、例えば、拡散接合、接着剤、常温接合方法等公知の技術を適用できる。
【0075】
第1の実施形態の発光ダイオード1によれば、pn接合型の発光部3と、発光部3に積層された歪調整層8と、を少なくとも含む化合物半導体層11を備え、発光部3を、組成式(AlGa1−XIn1−YP(0≦X≦0.1、0.37≦Y≦0.46)よりなる歪発光層31とバリア層32との積層構造とすることにより、発光部3から放射される光の発光効率及び応答速度を向上できる。
また、歪発光層31の組成を上記範囲に規定することにより、655nm以上の発光波長を有した発光ダイオード1を実現できる。
また、発光部3上に、発光部3の光を透過させる歪調整層13を設けることにより、歪調整層13により発光部3からの光が吸収されることがないため、高出力・高効率の発光ダイオード1を実現できる。
【0076】
さらに、この歪調整層13は、歪発光層31及びバリア層32の格子定数よりも小さい格子定数を有しているため、半導体化合物層11の反りの発生を抑制できる。これにより、歪発光層31の歪量のばらつきが低減されるため、単色性に優れた発光ダイオード1を実現できる。
また、化合物半導体層11の光取り出し面11aとは反対側に位置する化合物半導体層11の面11bに、反射構造体4を設けることにより、化合物半導体層11の光取り出し面11aから発光ダイオード1の外部に放射される光のうち、光取り出し面11aに対して直交する方向(具体的には、正面方向f)における光の強度を強くすることが可能となるので、高輝度及び高効率の発光ダイオード1を実現できる。
また、光取り出し面11aに対して直交する方向における光の強度を強くすることにより、光取り出し面11aに対して直交する方向において、反射構造体4を備えていない発光ダイオードの光の強度と同じ強さの光強度を得る場合、反射構造体4を備えていない発光ダイオードよりも消費電力を小さくすることができる。
【0077】
また、例えば、化合物半導体層11の面11bに、反射構造体14を介して接合される機能性基板5として金属基板を用いることにより、発光部3が発光した際の熱を、機能性基板5を介して、発光ダイオード1の外部に効率良く放出することができる。
さらに、熱伝導率が130W/m・K以上である第1及び第2の金属層21,22により機能性基板5を構成することで、機能性基板5の放熱性が高くなるため、発光ダイオード1を高輝度で発光させることができると共に、発光ダイオード1の寿命を長寿命とすることができる。
また、機能性基板5として光を透過する基板を用いて、Arビームにより接合させた場合、接合面が高抵抗となり、基板側へ電流を流すことが難しいが、機能性基板5として金属基板を用いて、該金属基板を共晶接合させることにより、1ワイヤー構造の作成が可能となる。
【0078】
つまり、第1の実施形態の発光ダイオードによれば、655nm以上の赤色光の発光波長を有し、単色性に優れると共に、高出力・高効率であって応答速度が速く、かつ光取り出し面に対して直交する方向における光強度が強く、さらに放熱特性に優れた発光ダイオード1を実現できる。
【0079】
<発光ダイオードの製造方法>
次に、第1の実施形態である発光ダイオード1の製造方法について説明する。
第1の実施形態である発光ダイオード1の製造方法は、機能性基板5を形成する工程と、次いで、半導体基板33にコンタクト層12bを介して発光層2を含む発光部3を形成した後、発光部3の半導体基板33と反対側の面に第2の電極8を形成する工程と、発光部3の半導体基板と反対側の面に第2の電極8を介して反射構造体4を形成する工程と、発光部3に反射構造体4を介して機能性基板5を接合する工程と、半導体基板33、及びコンタクト層12bの一部を除去する工程と、発光部3の機能性基板5と反対側の面に第1の電極6を形成する工程と、を有する。
【0080】
図4〜図10は、本発明の第1の実施形態に係る発光ダイオードの製造工程を示す断面図である。図4〜図10において、図1に示す発光ダイオード1と同一構成部分には、同一符号を付す。
図4〜図10を参照して、第1の実施形態の発光ダイオード1の製造方法について説明する。まず、機能性基板5の製造工程について説明する。
【0081】
<機能性基板の製造工程>
図4に示すように、機能性基板5は、熱伝導率が130W/m・K以上である第1及び第2の金属層21,22をホットプレスすることで形成する。
【0082】
具体的には、まず、2枚の略平板状の第1の金属層21と、1枚の略平板状の第2の金属層22を用意する。例えば、第1の金属層21としては厚さ30μmのCu層を用い、第2の金属層22としては厚さ25μmのMo層を用いる。
次に、図4(a)に示すように、2枚の第1の金属層21の間に第2の金属層22を挿入してこれらを重ねて配置する。
【0083】
次に、所定の加圧装置内に、第1及び第2の金属層21,22が積み重ねられた積層板を配置して、高温下で、第1の金属層21と第2の金属層22に矢印の方向(図4(a)参照)に荷重をかけて圧着する。
これにより、図4(b)に示すように、第1の金属層21がCu層であり、第2の金属層22がMo層であり、Cu層(30μm)/Mo層(25μm)/Cu層(30μm)の3層よりなる機能性基板5を形成する。上記構成とされた機能性基板5の熱膨張係数は、6.1ppm/Kであり、熱伝導率は250W/m・Kであった。
【0084】
なお、この後、発光部3(ウェーハ)の接合面の大きさに合わせて切断した後、表面を鏡面加工してもよい。
また、機能性基板5の接合面5aに、電気的接触を安定化させるため接合補助膜を形成してもよい。該接合補助膜としては、金膜、白金膜、ニッケル膜等を用いることができる。例えば、まず、ニッケル膜を0.1μm成膜した後、ニッケル膜上に金膜を0.5μm成膜する。
さらにまた、上記接合補助膜の代わりに、ダイボンド用のAuSn膜等の共晶金属膜を形成してもよい。これにより、接合工程を簡便にすることができる。
【0085】
<発光部及び第2の電極形成工程>
まず、図5に示すように、半導体基板33の表面33a上に、複数のエピタキシャル層を成長させて化合物半導体層11を形成する。なお、この段階では、化合物半導体層11を構成するコンタクト層12bは、パターニングされていない。
半導体基板33は、化合物半導体層11を形成するための基板であり、例えば、表面33aが(100)面から15°傾けた面とされ、かつSiドープされたn型のGaAs単結晶基板である。このように、化合物半導体層11としてAlGaInP層またはAlGaAs層を用いる場合、化合物半導体層11を形成する基板としては、砒化ガリウム(GaAs)単結晶基板を用いるとよい。
【0086】
化合物半導体層11は、半導体基板33であるGaAs基板上に、GaAsよりなる緩衝層12a、選択エッチングに利用するために設けられたエッチングストップ層(図示せず)、Siをドープしたn型のAlGaInPよりなるコンタクト層12b、n型の上部クラッド層10a、発光層2、p型の下部クラッド層10b、及びMgドープしたp型GaPよりなる歪調整層13を順次積層して作製する。
【0087】
GaAs基板は、公知の製法で作製された市販品の単結晶基板を使用できる。GaAs基板のエピタキシャル成長させる表面は、平滑であることが望ましい。GaAs基板の表面の面方位は、エピ成長しやすく、量産されている(100)面及び(100)から、±20°以内にオフした基板が、品質の安定性の面からのぞましい。
さらに、GaAs基板の面方位の範囲が、(100)方向から(0−1−1)方向に15°オフ±5°であることがより好ましい。
【0088】
GaAs基板の転位密度は、化合物半導体層11の結晶性を良くするために低い方が望ましい。具体的には、例えば、10,000個cm−2以下、望ましくは、1,000個cm−2以下であることが好適である。
【0089】
GaAs基板は、n型であってもp型であっても良い。GaAs基板のキャリア濃度は、所望の電気伝導度と素子構造から、適宜選択することができる。
例えば、GaAs基板がシリコンドープのn型である場合には、キャリア濃度が1×1017〜5×1018cm−3の範囲であることが好ましい。これに対して、GaAs基板が亜鉛をドープしたp型の場合には、キャリア濃度2×1018〜5×1019cm−3の範囲であることが好ましい。
【0090】
GaAs基板の厚さは、基板のサイズに応じて適切な範囲がある。GaAs基板の厚さが適切な範囲よりも薄いと、化合物半導体層11の製造プロセス中に割れてしまう虞がある。
一方、GaAs基板の厚さが適切な範囲よりも厚いと材料コストが増加することになる。このため、GaAs基板の基板サイズが大きい場合、例えば、直径75mmの場合には、ハンドリング時の割れを防止するために250〜500μmの厚さが望ましい。
同様に、直径50mmの場合は、200〜400μmの厚さが望ましく、直径100mmの場合は、350〜600μmの厚さが望ましい。
【0091】
このように、GaAs基板の基板サイズに応じて基板の厚さを厚くすることにより化合物半導体層11の反りを低減することができる。これにより、エピタキシャル成長中の温度分布が均一となることため、発光層2の面内の波長分布を小さくすることができる。なお、GaAs基板の形状は、特に円形に限定されず、矩形等であっても問題ない。
【0092】
緩衝層12aは、半導体基板33と発光部3の構成層との格子ミスマッチの緩和するために設けられている。このため、基板の品質やエピタキシャル成長条件を選択すれば、緩衝層12aは、必ずしも必要ではない。
また、緩衝層12aの材質は、エピタキシャル成長させる基板と同じ材質とすることが好ましい。したがって、本実施形態では、緩衝層12aには、GaAs基板と同じ材料よりなるGaAs層を用いることが好ましい。
また、緩衝層12aには、欠陥の伝搬を低減するためにGaAs基板と異なる材質よりなる多層膜を用いることもできる。緩衝層12aの厚さは、0.1μm以上とすることが好ましく、0.2μm以上とすることがより好ましい。
【0093】
コンタクト層12bは、電極との接触抵抗を低下させるために設けられている。コンタクト層12bの材質は、歪発光層31よりバンドギャップの大きい材質であることが好ましく、AlGa1−XAs、(AlGa1−XIn1−YP(0≦X≦1,0<Y≦1)が好適である。
また、コンタクト層12bのキャリア濃度の下限値は、電極との接触抵抗を低下させるために5×1017cm−3以上であることが好ましく、1×1018cm−3以上がより好ましい。
キャリア濃度の上限値は、結晶性の低下が起こりやすくなる2×1019cm−3以下が望ましい。コンタクト層12bの厚さは、0.5μm以上が好ましく、1μm以上が最適である。コンタクト層12bの厚さの上限値は特に限定されてはいないが、エピタキシャル成長に係るコストを適正範囲にするため、5μm以下とすることが望ましい。
【0094】
本実施形態の化合物半導体層11は、分子線エピタキシャル法(MBE)や減圧有機金属化学気相堆積法(MOCVD法)等の公知の成長方法を用いて形成することができる。
なかでも、量産性に優れるMOCVD法を適用することが望ましい。具体的には、化合物半導体層11のエピタキシャル成長に使用するGaAs基板(半導体基板33)は、成長前に洗浄工程や熱処理等の前処理を実施して、表面の汚染や自然酸化膜を除去することが望ましい。
上記化合物半導体層11を構成する各層は、直径50〜150mmのGaAs基板14をMOCVD装置内に8枚以上セットし、同時にエピタキシャル成長させて積層することができる。また、MOCVD装置としては、自公転型、高速回転型等の市販の大型装置を適用することができる。
【0095】
上記化合物半導体層11の各層をエピタキシャル成長する際、III族構成元素の原料としては、例えば、トリメチルアルミニウム((CHAl)、トリメチルガリウム((CHGa)及びトリメチルインジウム((CHIn)を用いることができる。
また、Mgのドーピング原料としては、例えば、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(bis−(CMg)等を用いることができる。また、Siのドーピング原料としては、例えば、ジシラン(Si)等を用いることができる。
また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH)、アルシン(AsH)等を用いることができる。また、各層の成長温度としては、歪調整層13としてp型GaP層を用いる場合は、720〜770℃を適用することができ、その他の各層では600〜700℃を適用することができる。さらに、各層のキャリア濃度及び層厚、温度条件は、適宜選択することができる。
【0096】
このようにして製造した化合物半導体層11は、歪発光層31を有するにもかかわらず結晶欠陥が少ない良好な表面状態が得られる。
【0097】
次に、歪調整層13の半導体基板33と反対側の面13aを、表面から1μmの深さに至るまで鏡面研磨して、表面の粗さを、例えば、0.18nm以内とする。
次に、図6に示すように、歪調整層13の面13a上に第2の電極8(オーミック電極)を形成する。第2の電極8は、例えば、0.4μmの厚さのAuBe層上に0.2μmの厚さのAu層が積層されてなる。第2の電極8は、例えば、平面視したときに20μmφの円形状であり、60μmの間隔で形成される。
【0098】
<反射構造体形成工程>
次に、図7に示すように、歪調整層13の半導体基板33と反対側の面13a及び第2の電極8を覆うようにITO膜よりなる透明導電膜14を形成する。次に、450℃の熱処理を施して、第2の電極8と透明導電膜14との間にオーミックコンタクトを形成する。
【0099】
次に、図8に示すように、透明導電膜14の化合物半導体層11と反対側の面14aに、蒸着法を用いて、反射層15を形成する。
具体的には、銀(Ag)合金よりなる膜(厚さが0.5μm)と、タングステン(W)膜(厚さが0.1μm)と、白金(Pt)膜(厚さが0.1μm)と、金(Au)膜(厚さが0.5μm)、AuGe共晶金属(融点386℃)よりなる膜(厚さが1μm)とを順次成膜することで反射層15を形成する。これにより、反射層15及び透明導電膜14よりなる反射構造体4が形成される。
【0100】
<機能性基板接合工程>
次に、図9に示すように、反射構造体4と化合物半導体層11とを形成した半導体基板33(図8に示す構造体)と、図4(b)に示す機能性基板5とを減圧装置(図示せず)内に搬入して、反射構造体4の接合面4aと機能性基板5の接合面5aとが対向するように重ね合わせて配置する。
次に、減圧装置内を3×10−5Paまで排気した後、半導体基板33と機能性基板5とを400℃に加熱した状態で、100g/cmの加重を印加して反射構造体4の接合面4aと機能性基板5の接合面5aと接合して、接合構造体18を形成する。
【0101】
<半導体基板及び緩衝層除去工程>
次に、図10に示すように、接合構造体18から、半導体基板33及び緩衝層12aをアンモニア系エッチャントにより選択的に除去する。これにより、発光層2を有する発光部3が形成される。
【0102】
<第1の電極形成工程>
次に、真空蒸着法を用いて、発光部3の反射構造体4と反対側の面3aに、第1の電極6(n型オーミック電極)の母材となる電極用導電膜を成膜する。該電極用導電膜としては、例えば、AuGe層/Ni層/Au層よりなる金属層構造を用いることができる。
この場合、例えば、AuGe層(Ge質量比12%)を0.15μmの厚さで成膜した後、Ni層を0.05μmの厚さで成膜し、さらにAu層を1μmの厚さで成膜する。
次に、一般的なフォトリソグラフィー手段を利用して、電極用導電膜を平面視円形状にパターニングして、第1の電極6を形成する。
その後、第1の電極6の形状に対応するように、コンタクト層12bをパターニングすることで、図1に示す発光ダイオード1が製造される。
【0103】
なお、電極用導電膜をパターニング後に、例えば、420°Cで3分間熱処理を行って、第1の電極6を構成する各金属を合金化することが好ましい。これにより、n型オーミック電極である第1の電極6を低抵抗化することができる。
【0104】
その後、発光ダイオード1を所望の大きさに区画する切断部分の発光部3をエッチングで除去した後、0.8mmピッチでレーザを用いて、前記切断部分の基板と接続層を所望の大きさの発光ダイオードチップ(LEDチップ)に切断する。発光ダイオードの大きさは、例えば、平面視したときに略矩形状の発光部3の対角線の長さを1.1mmとする。その後、発光部3の露出面を粘着シートで保護して、切断面を洗浄する。
【0105】
<発光ダイオードランプ>
図11は、図1に示す発光ダイオードを備えた発光ダイオードランプの断面模式図である。図11において、図1に示す発光ダイオードランプ1と同一構成部分には同一符号を付す。
図11を参照するに、第1の実施形態である発光ダイオードランプ40は、パッケージ基板45と、パッケージ基板45上に形成された2つの電極端子43,44と、電極端子44上に搭載された発光ダイオード1と、発光ダイオード1を覆うように形成されたシリコン等よりなり、かつ光透過性を有した封止樹脂41と、を有する。
【0106】
発光ダイオード1は、先に説明したように、発光部3と、反射構造部4と、機能性基板5と、第1の電極6と、第2の電極8と、を有しており、機能性基板5が電極端子43と接続されるように配置されている。
また、第1の電極6は、電極端子44に対してワイヤボンディング接続されている。上記構成とされた発光ダイオード1は、電極端子43、44に印加された電圧が、第1の電極6と第2の電極8を介して発光部3に印加されることで、発光部3を構成する発光層2が発光する。発光された光は、発光ダイオード1の光取り出し面11aを介して、正面方向fに取り出される。
【0107】
パッケージ基板45は、その熱抵抗が10℃/W以下とされている。これにより、発光層2に1W以上の電力を加えて発光させたときでも、パッケージ基板45を放熱用の基板として利用することができ、発光ダイオード1の放熱性をより高めることができる。
なお、パッケージ基板45の形状は、図11に示す形状に限定されず、他の形状としてもよい。他の形状のパッケージ基板を用いたLEDランプ製品においても、放熱性を十分確保できるので、高出力、高輝度の発光ダイオードランプとすることができる。
【0108】
第1の実施形態の発光ダイオードランプによれば、化合物半導体層11の光取り出し面11aとは反対側に位置する化合物半導体層11の面11bに、光を反射する反射構造体4を有した発光ダイオード1を備えることにより、光取り出し面11aに対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度を、光取り出し面11aに対して45°の角度を成す方向に放射される放射照度の1.0倍よりも大きくすることが可能となるので、高輝度及び高効率の発光ダイオードランプ40を実現できる。
また、発光ダイオード1を構成する機能性基板5を、放熱用の基板として機能するパッケージ基板45に形成された電極端子43と接続させることにより、電極端子43及びパッケージ基板45を介して、発光ダイオード1の熱を効率良く放出することができる。
【0109】
また、発光ダイオードランプ40は、熱抵抗が10℃/W以下とされたパッケージ基板45を備えることにより、放熱性に優れ、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
また、発光ダイオードパッケージ40は、発光ダイオード1の発光層2に1W以上の電力を加えて発光させる構成なので、放熱性に優れ、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
【0110】
(第2の実施形態)
図12は、本発明の第2の実施形態に係る発光ダイオードを説明するための図であり、図12(a)は、第2の実施形態の発光ダイオードの平面図であり、図12(b)は、図12(a)に示す発光ダイオードのA−A‘線方向の概略断面図である。
図12を参照するに、第2の実施形態の発光ダイオード50は、第1の実施形態の発光ダイオード1に設けられた機能性基板5(金属基板)の替わりに、機能性基板5(金属基板)とは異なる材料により構成された機能性基板51を設けると共に、さらに金属層52,53を設け、上部クラッド層10aの上面を覆うようにコンタクト層12bを配置した以外は、第1の実施形態の発光ダイオード1と同様に構成される。
つまり、第2の実施形態の発光ダイオード50と第1の実施形態の発光ダイオード1との大きな相違点は、機能性基板の材料が異なる点である。
【0111】
機能性基板51は、金属層52を介して、化合物半導体層11が設けられた反射構造体4(具体的には、反射層15)に接合されている。機能性基板51の材料としては、GaP、Si、Geのいずれかの材料を用いることができる。
このように、GaP、Si、Geのいずれかの材料よりなる機能性基板51を設けることにより、機能性基板51を備えていない発光ダイオードと比較して、発光部3が発光した際の熱を、発光ダイオード50の外部に効率良く放熱することができる。
また、腐食しにくい材料であるSiやGe等を機能性基板51の材料として用いることで、機能性基板51の耐湿性を向上させることができる。
【0112】
金属層52は、反射構造体4を構成する反射層15と機能性基板51の上面51aとの間に設けられている。金属層52は、反射層15と機能性基板51の上面51aとを接合するための層である。金属層52としては、例えば、In層と、Au層と、Ti層とを順次積層した積層膜を用いることができる。
金属層53は、機能性基板51の下面51bに設けられている。金属層53としては、例えば、Au層と、Ti層とを順次積層した積層膜を用いることができる。
【0113】
第2の実施形態の発光ダイオードによれば、金属層52を介して、化合物半導体層11が設けられた反射構造体4に接合され、かつGaP、Si、Geのいずれかの材料により構成された機能性基板51を設けることにより、機能性基板51を備えていない発光ダイオードと比較して、発光部3が発光した際の熱を、発光ダイオード50の外部に効率良く放熱することができる。
また、腐食しにくい材料であるSiやGe等を機能性基板51の材料として用いることで、機能性基板51の耐湿性を向上させることができる。
【0114】
また、化合物半導体層11の光取り出し面11aとは反対側に位置する化合物半導体層11の面11bに、反射構造体4を設けることにより、化合物半導体層11の光取り出し面11aから発光ダイオード1の外部に放射される光のうち、光取り出し面11aに対して直交する方向(具体的には、正面方向f)における光の強度を強くすることが可能となるので、高輝度及び高効率の発光ダイオード50を実現できる。
【0115】
また、第2の実施形態の発光ダイオード50は、組成式(AlGa1−XIn1−YP(0≦X≦0.1、0.37≦Y≦0.46)よりなる歪発光層31とバリア層32との積層構造とされた発光部3を備えているため、発光部3から放射される光の発光効率及び応答速度を向上できる。
また、歪発光層31の組成を上記範囲に規定することにより、655nm以上の発光波長を有した発光ダイオード1を実現できる。
さらに、発光部3上に、発光部3の光を透過させる歪調整層13を備えることにより、歪調整層13により発光部3からの光が吸収されることがないため、高出力・高効率の発光ダイオード50を実現できる。
【0116】
また、上記歪調整層13は、歪発光層31及びバリア層32の格子定数よりも小さい格子定数を有しているため、半導体化合物層11の反りの発生を抑制できる。これにより、歪発光層31の歪量のばらつきが低減されるため、単色性に優れた発光ダイオード50を実現できる。
【0117】
以下、本発明の効果を、実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0118】
本実施例では、本発明に係る発光ダイオードを作製した例を具体的に説明する。発光ダイオードを作製した後、特性評価のために発光ダイオードチップを基板上に実装した発光ダイオードランプを作製した。
【0119】
(実施例1)
実施例1の発光ダイオード(第1の実施形態)は、先ず、Siをドープしたn型のGaAs単結晶からなるGaAs基板(厚さ約0.5μm)上に、化合物半導体層を順次積層してエピタキシャルウェーハを作製した。GaAs基板は、(100)面から(0−1−1)方向に15°傾けた面を成長面とし、キャリア濃度を2×1018cm−3とした。
また、化合物半導体層として、GaAs基板上に、SiをドープしたGaAsからなるn型の緩衝層と、Siをドープした(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pからなるn型のコンタクト層と、Siをドープした(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pからなるn型の上部クラッド層と、アンドープのGa0.44In0.56P/(Al0.53Ga0.470.5In0.5Pの対からなる歪発光層/バリア層と、Mgをドープした(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pよりなるp型の下部クラッド層と、(Al0.5Ga0.50.5In0.5Pよりなる薄膜の中間層と、Mgドープしたp型GaPよりなる歪調整層と、を順次形成した。
【0120】
実施例1では、減圧有機金属化学気相堆積装置法(MOCVD装置)を用い、直径76mm、厚さ350μmのGaAs基板に化合物半導体層をエピタキシャル成長させて、エピタキシャルウェーハを形成した。
エピタキシャル成長層を成長させる際、III族構成元素の原料としては、トリメチルアルミニウム((CHAl)、トリメチルガリウム((CHGa)及びトリメチルインジウム((CHIn)を使用した。また、Mgのドーピング原料としては、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(bis−(CMg)を使用した。また、Siのドーピング原料としては、ジシラン(Si)を使用した。
また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH)、アルシン(AsH)を使用した。また、各層の成長温度としては、p型GaPからなる歪調整層は、750℃で成長させた。その他の各層では700℃で成長させた。
【0121】
GaAsよりなる緩衝層は、キャリア濃度を約2×1018cm−3、層厚を約0.5μmとした。コンタクト層は、キャリア濃度を約2×1018cm−3、層厚を約3.5μmとした。上部クラッド層は、キャリア濃度を約1×1018cm−3、層厚を約0.5μmとした。
実施例1では、アンドープでGa0.44In0.56Pよりなる23層の歪発光層(単層の厚さが17nm)と、かつ組成が(Al0.53Ga0.470.5In0.5Pの22層のバリア層(単層の厚さが19nm)とを交互に積層することで、発光層を形成した。
下部クラッド層は、キャリア濃度を約8×1017cm−3、層厚を約0.5μmとした。中間層は、キャリア濃度を約8×1017cm−3、層厚を約0.05μmとした。GaPからなる歪調整層は、キャリア濃度を約3×1018cm−3、層厚を約9μmとした。
【0122】
次に、歪調整層を表面から約1μmの深さに至る領域まで研磨して鏡面加工した。この鏡面加工によって、歪調整層の表面の粗さを0.18nmとした。
次いで、歪調整層上に、AuBe層(厚さ100nm)と、Au層(厚さ150nm)とを順次成膜することで、AuBe/Au積層膜を形成し、その後、一般的なフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を利用して、AuBe/Au積層膜をパターニングすることで、第2の電極を形成した。
次いで、歪調整層上に、第2の電極を覆う透明導電膜としてITO膜(厚さ***nm)と、反射層としてAg合金(厚さ500nm)/W(厚さ100nm)/Pt(厚さ200nm)/Au(厚さ500nm)/AuGe(厚さ1000nm)積層膜とを順次成膜することで、反射構造体を形成する。
次に、第1の実施形態で説明した方法を用いて、Cu(30μm)/Mo(25μm)/Cu(30μm)の3層構造(厚さ85μm)からなる機能性基板(金属基板(熱伝導率250W/mK))を製造した。
実施例1の機能性基板の熱膨張係数は、6.1ppm/Kであり、熱伝導率は250W/m・Kであった。また、機能性基板の直径は76mmで、厚さは250μmであった。
【0123】
次に、減圧装置内を3×10−5Paまで排気した後、GaAs基板と機能性基板とを400℃に加熱した状態で、100g/cmの加重を印加して反射構造体と機能性基板と接合して、接合構造体を形成した。
【0124】
次に、上記接合構造体から、GaAs基板及びGaAs緩衝層をアンモニア系エッチャントにより選択的に除去した。次に、真空蒸着法により、コンタクト層の表面に、厚さが0.5μmのAu−Ge−Ni合金膜と、厚さが0.2μmのPt膜と、厚さが1μmのAu膜とを順次成膜した。
その後、一般的なフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を利用して、上記Au−Ge−Ni合金膜、Pt膜、及びAu膜をパターニングすることで、第1の電極であるn型オーミック電極を形成した。その後、第1の電極の形状に対応するように、周知の手法により、コンタクト層をパターニングした。
次に、GaAs基板を除去した面である光取り出し面の表面に粗面化処理を施した。
【0125】
次に、第2の電極としてp型オーミック電極を形成する領域のエピ層を選択的に除去し、歪調整層を露出させた。この露出した歪調整層の表面に、真空蒸着法により、厚さ0.2μmのAuBe膜と、厚さ1μmのAu膜とを順次成膜し、その後、AuBe膜及びAu膜をパターニングすることで、第2の電極(p形オーミック電極)を形成した。その後、450℃で10分間熱処理を行って合金化し、低抵抗の第1及び第2の電極(n型及びp型オーミック電極)を形成した。
【0126】
次に、ダイシングソーを用いて、第1及び第2の電極が形成された接合構造体を切断して、チップ化した。これにより、実施例1の発光ダイオードを作製した。
【0127】
上記方法により作製した実施例1の発光ダイオードチップを、マウント基板上に実装した発光ダイオードランプを100個組み立てた。この発光ダイオードランプは、マウントは、共晶ダイボンダーで、加熱接続され支持(マウント)し、発光ダイオードのn型オーミック電極とマウント基板の表面に設けたn電極端子とを金線でワイヤボンディングし、p型オーミック電極とp電極端子とを金線でワイヤボンディングした後、一般的なエポキシ樹脂で封止して作製した。
【0128】
実施例1の発光ダイオードの構成要素の一部を表1に示し、実施例1の発光ダイオードを実装した発光ダイオードランプの特性を評価した結果を表2に示す。
表2に示すように、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク発光波長661.2nm(655nm以上の値)とする赤色光が出射された。
また、順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(Vf)は、化合物半導体層を構成する歪調整層と機能性基板との接合界面での抵抗の低さ及び各オーミック電極の良好なオーミック特性を反映し、2.1ボルト(V)となった。
順方向電流を20mAとした際の発光出力は、4.1mW(3mW以上)であり、良好な結果が得られた。
【0129】
組み立てたすべての発光ダイオードにおけるピーク発光波長のバラツキ(最大−最小)は、2.1nmであり、良好な結果が得られた。なお、ピーク発光波長のバラツキ(最大−最小)は、3nm以下であればよい。
また、発光の立ち上がりの応答速度(Tr)は、72nsであり、100ns以下の良好な結果が得られた。また、表面欠陥の検査では、表面欠陥は見られなかった。
【0130】
また、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eを、光取り出し面に対して45°の角度を成す方向に放射される放射照度Fで割った放射照度の比(=E/F)は、1.43(1.0よりも大きい値)であり、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eが強くなっていることが確認できた。
また、実施例1の発光ダイオードが発光した際、機能性基板の放熱効果により、温度上昇に起因する発光効率の低下は見られなかった。
【0131】
図13は、本発明の第1実施例の発光ダイオードランプの発光スペクトルを示す図である。
図13に示すように、実施例1の発光ダイオードランプの発光スペクトルは、半値幅が18nmであり、波長700nmにおける発光強度がほぼ0であった。
【0132】
上記結果から、実施例1の発光ダイオード及び発光ダイオードランプによれば、655nm以上の発光波長を有した光を発光する発光層を形成でき、かつ100ns以下の応答速度(この場合、72ns)を実現できることが確認できた。
また、実施例1の発光ダイオード及び発光ダイオードランプによれば、放射照度の比(=E/F)が1.43(1.0よりも大きい値)であるので、高輝度及び高効率の発光ダイオードが実現できることが確認できた。
さらに、機能性基板の放熱効果により、放熱特性に優れた発光ダイオードを実現できることが確認できた。
【0133】
(実施例2)
実施例2の発光ダイオード(第2の実施形態)は、実施例1の発光ダイオードに設けられた発光層の替わりに、アンドープのGa0.42In0.58Pよりなる21層の歪発光層(単層の厚さ10nm)と、組成が(Al0.53Ga0.470.5In0.5Pの20層のバリア層(単層の厚さが30nm)とを交互に積層して発光層を形成すると共に、機能性基板として厚さが150μmのGaP層(熱伝導率110W/mK)を用いた以外は、実施例1の発光ダイオードと同様に製造した。
【0134】
実施例2の発光ダイオードの構成要素の一部を表1に示し、実施例2の発光ダイオードを実装した発光ダイオードランプの特性を評価した結果を表2に示す。
表2に示すように、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク発光波長660.7nm(655nm以上の値)とする赤色光が出射された。
また、順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(Vf)は、化合物半導体層を構成する歪調整層と機能性基板との接合界面での抵抗の低さ及び各オーミック電極の良好なオーミック特性を反映し、2.1ボルト(V)となった。
また、順方向電流を20mAとした際の発光出力は、3.6mW(3mW以上)であり、良好な結果が得られた。)。
【0135】
組み立てたすべての発光ダイオードにおけるピーク発光波長のバラツキ(最大−最小)は、2.3nmであり、良好な結果が得られた。また、発光の立ち上がりの応答速度(Tr)は、70nsであり、100ns以下の良好な結果が得られた。また、表面欠陥の検査では、表面欠陥は見られなかった。
【0136】
また、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eを、光取り出し面に対して45°の角度を成す方向に放射される放射照度Fで割った放射照度の比(=E/F)は、1.17(1.0よりも大きい値)であり、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eが強くなっていることが確認できた。
また、実施例2の発光ダイオードが発光した際、機能性基板の放熱効果により、温度上昇に起因する発光効率の低下は見られなかった。
【0137】
上記結果から、実施例2の発光ダイオード及び発光ダイオードランプによれば、655nm以上の発光波長を有した光を発光する発光層を構成でき、かつ100ns以下の応答速度(この場合、70ns)を実現できることが確認できた。
また、実施例2の発光ダイオード及び発光ダイオードランプによれば、放射照度の比(=E/F)が1.17(1.0よりも大きい値)であるので、高輝度及び高効率の発光ダイオードが実現できることが確認できた。
さらに、機能性基板の放熱効果により、放熱特性に優れた発光ダイオードを実現できることが確認できた。
【0138】
(実施例3)
実施例3の発光ダイオード(第2の実施形態)は、実施例2の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりに、アンドープのGa0.41In0.59Pよりなる21層の歪発光層(単層の厚さが15nm)を形成すると共に、機能性基板として厚さが100μmのGe層(熱伝導率60W/mK)を用いた以外は、実施例2の発光ダイオードと同様に製造した。
【0139】
実施例3の発光ダイオードの構成要素の一部を表1に示し、実施例3の発光ダイオードを実装した発光ダイオードランプの特性を評価した結果を表2に示す。
表2に示すように、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク発光波長668.5nm(655nm以上の値)とする赤色光が出射された。
また、順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(Vf)は、化合物半導体層を構成する歪調整層と機能性基板との接合界面での抵抗の低さ及び各オーミック電極の良好なオーミック特性を反映し、2.1ボルト(V)となった。
また、順方向電流を20mAとした際の発光出力は、3.7mW(3mW以上)であり、良好な結果が得られた。
【0140】
組み立てたすべての発光ダイオードにおけるピーク発光波長のバラツキ(最大−最小)は、2.5nmであり、良好な結果が得られた。また、発光の立ち上がりの応答速度(Tr)は、73nsであり、100ns以下の良好な結果が得られた。また、表面欠陥の検査では、表面欠陥は見られなかった。
【0141】
また、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eを、光取り出し面に対して45°の角度を成す方向に放射される放射照度Fで割った放射照度の比(=E/F)は、1.22(1.0よりも大きい値)であり、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eが強くなっていることが確認できた。
また、実施例3の発光ダイオードが発光した際、機能性基板の放熱効果により、温度上昇に起因する発光効率の低下は見られなかった。
【0142】
上記結果から、実施例3の発光ダイオード及び発光ダイオードランプによれば、655nm以上の発光波長を有した光を発光する発光層を構成でき、かつ100ns以下の応答速度(この場合、73ns)を実現できることが確認できた。
また、実施例3の発光ダイオード及び発光ダイオードランプによれば、放射照度の比(=E/F)が1.22(1.0よりも大きい値)であるので、高輝度及び高効率の発光ダイオードが実現できることが確認できた。
さらに、機能性基板の放熱効果により、放熱特性に優れた発光ダイオードを実現できることが確認できた。
【0143】
(実施例4)
実施例4の発光ダイオード(第2の実施形態)は、実施例2の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりに、アンドープのGa0.45In0.55Pよりなる21層の歪発光層(単層の厚さが25nm)を形成すると共に、機能性基板として厚さが100μmのSi層(熱伝導率126W/mK)を用いた以外は、実施例2の発光ダイオードと同様に製造した。
【0144】
実施例4の発光ダイオードの構成要素の一部を表1に示し、実施例4の発光ダイオードを実装した発光ダイオードランプの特性を評価した結果を表2に示す。
表2に示すように、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク発光波長657.0nm(655nm以上の値)とする赤色光が出射された。
また、順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(Vf)は、化合物半導体層を構成する歪調整層と機能性基板との接合界面での抵抗の低さ及び各オーミック電極の良好なオーミック特性を反映し、2.1ボルト(V)となった。
順方向電流を20mAとした際の発光出力は、4.0mW(3mW以上)であり、良好な結果が得られた。
【0145】
組み立てたすべての発光ダイオードにおけるピーク発光波長のバラツキ(最大−最小)は、2.1nmであり、良好な結果が得られた。また、発光の立ち上がりの応答速度(Tr)は、64nsであり、100ns以下の良好な結果が得られた。また、表面欠陥の検査では、表面欠陥は見られなかった。
【0146】
また、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eを、光取り出し面に対して45°の角度を成す方向に放射される放射照度Fで割った放射照度(=E/F)は、1.33(1.0よりも大きい値)であり、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eが強くなっていることが確認できた。
また、実施例4の発光ダイオードが発光した際、機能性基板の放熱効果により、温度上昇に起因する発光効率の低下は見られなかった。
【0147】
上記結果から、実施例4の発光ダイオード及び発光ダイオードランプによれば、655nm以上の発光波長を有した光を発光する発光層を構成でき、かつ100ns以下の応答速度(この場合、64ns)を実現できることが確認できた。
また、実施例4の発光ダイオード及び発光ダイオードランプによれば、放射照度の比(=E/F)が1.33(1.0よりも大きい値)であるので、高輝度及び高効率の発光ダイオードが実現できることが確認できた。
さらに、機能性基板の放熱効果により、放熱特性に優れた発光ダイオードを実現できることが確認できた。
【0148】
(実施例5)
実施例5の発光ダイオード(第1の実施形態)は、実施例2の発光ダイオードに設けられた歪発光層の組成をGa0.39In0.61Pに変更すると共に、Cu(30μm)/Mo(25μm)/Cu(30μm)の3層構造(厚さ85μm)からなる機能性基板(金属基板(熱伝導率250W/mK))を用いた以外は、実施例2の発光ダイオードと同様に製造した。
【0149】
実施例5の発光ダイオードの構成要素の一部を表1に示し、実施例5の発光ダイオードを実装した発光ダイオードランプの特性を評価した結果を表2に示す。
表2に示すように、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク発光波長669.8nm(655nm以上の値)とする赤色光が出射された。
また、順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(Vf)は、化合物半導体層を構成する歪調整層と機能性基板との接合界面での抵抗の低さ及び各オーミック電極の良好なオーミック特性を反映し、2.1ボルト(V)となった。
順方向電流を20mAとした際の発光出力は、3.9mW(3mW以上)であり、良好な結果が得られた。)。
【0150】
組み立てたすべての発光ダイオードにおけるピーク発光波長のバラツキ(最大−最小)は、2.9nmであり、良好な結果が得られた。また、発光の立ち上がりの応答速度(Tr)は、63nsであり、100ns以下の良好な結果が得られた。また、表面欠陥の検査では、表面欠陥は見られなかった。
【0151】
また、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eを、光取り出し面に対して45°の角度を成す方向に放射される放射照度Fで割った放射照度の比(=E/F)は、1.41(1.0よりも大きい値)であり、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eが強くなっていることが確認できた。
また、実施例5の発光ダイオードが発光した際、機能性基板の放熱効果により、温度上昇に起因する発光効率の低下は見られなかった。
【0152】
上記結果から、実施例5の発光ダイオード及び発光ダイオードランプによれば、655nm以上の発光波長を有した光を発光する発光層を構成でき、かつ100ns以下の応答速度(この場合、63ns)を実現できることが確認できた。
また、実施例5の発光ダイオード及び発光ダイオードランプによれば、放射照度の比(=E/F)が1.41(1.0よりも大きい値)であるので、高輝度及び高効率の発光ダイオードが実現できることが確認できた。
さらに、機能性基板の放熱効果により、放熱特性に優れた発光ダイオードを実現できることが確認できた。
【0153】
(実施例6)
実施例6の発光ダイオード(第1の実施形態)は、実施例5の発光ダイオードに設けられた歪発光層の組成をGa0.38In0.62Pに変更した以外は、実施例5の発光ダイオードと同様に製造した。
【0154】
実施例6の発光ダイオードの構成要素の一部を表1に示し、実施例6の発光ダイオードを実装した発光ダイオードランプの特性を評価した結果を表2に示す。
表2に示すように、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク発光波長675.1nm(655nm以上の値)とする赤色光が出射された。
また、順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(Vf)は、化合物半導体層を構成する歪調整層と機能性基板との接合界面での抵抗の低さ及び各オーミック電極の良好なオーミック特性を反映し、2.1ボルト(V)となった。
順方向電流を20mAとした際の発光出力は、3.6mW(3mW以上)であり、良好な結果が得られた。)。
【0155】
組み立てたすべての発光ダイオードにおけるピーク発光波長のバラツキ(最大−最小)は、2.9nmであり、良好な結果が得られた。また、発光の立ち上がりの応答速度(Tr)は、65nsであり、100ns以下の良好な結果が得られた。また、表面欠陥の検査では、表面欠陥は見られなかった。
【0156】
また、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eを、光取り出し面に対して45°の角度を成す方向に放射される放射照度Fで割った放射照度の比(=E/F)は、1.36(1.0よりも大きい値)であり、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eが強くなっていることが確認できた。
また、実施例6の発光ダイオードが発光した際、機能性基板の放熱効果により、温度上昇に起因する発光効率の低下は見られなかった。
【0157】
上記結果から、実施例6の発光ダイオード及び発光ダイオードランプによれば、655nm以上の発光波長を有した光を発光する発光層を構成でき、かつ100ns以下の応答速度(この場合、65ns)を実現できることが確認できた。
また、実施例6の発光ダイオード及び発光ダイオードランプによれば、放射照度の比(=E/F)が1.36(1.0よりも大きい値)であるので、高輝度及び高効率の発光ダイオードが実現できることが確認できた。
さらに、機能性基板の放熱効果により、放熱特性に優れた発光ダイオードを実現できることが確認できた。
【0158】
(参考例1)
参考例1の発光ダイオードは、実施例2の発光ダイオードの構成から反射構構造体を除去すると共に、実施例2の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりに、Ga0.38In0.62Pよりなる21層の歪発光層(単層の厚さ5nm)を形成した以外は、第2の実施例の発光ダイオードと同様に製造した。つまり、参考例1の発光ダイオードは、反射構造体を有していない。
【0159】
参考例1の発光ダイオードの構成要素の一部を表1に示し、参考例1の発光ダイオードを実装した発光ダイオードランプの特性を評価した結果を表2に示す。
表2に示すように、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク発光波長651.5nm(655nm以下)とする赤色光が出射された。つまり、目標とするピーク発光波長である655nm以上を満たすことができなかった。
また、順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(Vf)は、化合物半導体層を構成する歪調整層と機能性基板との接合界面での抵抗の低さ及び各オーミック電極の良好なオーミック特性を反映し、2.0ボルト(V)となった。
また、順方向電流を20mAとした際の発光出力は、3.1mW(3mW以上)であり、良好な結果が得られた。)。
【0160】
組み立てたすべての発光ダイオードにおけるピーク発光波長のバラツキ(最大−最小)は、5.1nm(3nm以上)であり、悪い結果となった。また、発光の立ち上がりの応答速度(Tr)は、42nsであり、100ns以下の良好な結果が得られた。また、表面欠陥の検査では、表面欠陥は見られなかった。
【0161】
また、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eを、光取り出し面に対して45°の角度を成す方向に放射される放射照度Fで割った放射照度の比(=E/F)は、0.83(1.0よりも小さい値)であり、実施例1〜5の発光ダイオードと比較して、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eが弱いことが確認できた(言い換えれば、反射構造体の効果を確認できた。)。
また、参考例1の発光ダイオードが発光した際、機能性基板の放熱効果により、温度上昇に起因する発光効率の低下は見られなかった。
【0162】
上記結果から、参考例1の発光ダイオード及び発光ダイオードランプでは、ピーク発光波長、ピーク発光波長のばらつき、及び放射照度の比(=E/F)において、目標とする数値を満たすことができなかった。
【0163】
(参考例2)
参考例2の発光ダイオードは、実施例2の発光ダイオードの構成から反射構構造体を除去すると共に、実施例2の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりに、Ga0.37In0.63Pよりなる21層の歪発光層(単層の厚さが10nm)を形成した以外は、第2の実施例の発光ダイオードと同様に製造した。つまり、参考例2の発光ダイオードは、反射構造体を有していない。
【0164】
参考例2の発光ダイオードの構成要素の一部を表1に示し、参考例2の発光ダイオードを実装した発光ダイオードランプの特性を評価した結果を表2に示す。
表2に示すように、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク発光波長677.7nm(655nm以上)とする赤色光が出射された。
また、順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(Vf)は、化合物半導体層を構成する歪調整層と機能性基板との接合界面での抵抗の低さ及び各オーミック電極の良好なオーミック特性を反映し、2.3ボルト(V)となった。
また、順方向電流を20mAとした際の発光出力は、1.3mW(3mW以下)であり、悪い結果となった。
【0165】
組み立てたすべての発光ダイオードにおけるピーク発光波長のバラツキ(最大−最小)は、3.8nm(3nm以上)であり、悪い結果となった。また、発光の立ち上がりの応答速度(Tr)は、45nsであり、100ns以下の良好な結果が得られた。また、表面欠陥の検査では、表面欠陥が確認できた。
【0166】
また、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eを、光取り出し面に対して45°の角度を成す方向に放射される放射照度Fで割った放射照度の比(=E/F)は、0.76(1.0よりも小さい値)であり、実施例1〜5の発光ダイオードと比較して、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eが弱いことが確認できた。
また、参考例2の発光ダイオードが発光した際、機能性基板の放熱効果により、温度上昇に起因する発光効率の低下は見られなかった。
【0167】
上記結果から、参考例2の発光ダイオード及び発光ダイオードランプでは、順方向電流を20mAとした際の発光出力、ピーク発光波長のばらつき、表面欠陥、及び放射照度の比(=E/F)において、良好な結果を得ることができなかった。
【0168】
(参考例3)
参考例3の発光ダイオードは、実施例2の発光ダイオードの構成から反射構構造体を除去すると共に、実施例2の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりに、Ga048In0.52Pよりなる23層の歪発光層(単層の厚さ17nm)を形成すると共に、バリア層の厚さを19nmに変更し、かつバリア層の数を22層に変更した以外は、第2の実施例の発光ダイオードと同様に製造した。つまり、参考例3の発光ダイオードは、反射構造体を有していない。
【0169】
参考例3の発光ダイオードの構成要素の一部を表1に示し、参考例3の発光ダイオードを実装した発光ダイオードランプの特性を評価した結果を表2に示す。
表2に示すように、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク発光波長647.7nm(655nm以下)とする赤色光が出射された。つまり、目標とするピーク発光波長である655nm以上を満たすことができなかった。
また、順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(Vf)は、化合物半導体層を構成する歪調整層と機能性基板との接合界面での抵抗の低さ及び各オーミック電極の良好なオーミック特性を反映し、2.0ボルト(V)となった。
また、順方向電流を20mAとした際の発光出力は、3.3mW(3mW以上)であり、良好な結果が得られた。
【0170】
組み立てたすべての発光ダイオードにおけるピーク発光波長のバラツキ(最大−最小)は、2.7nm(3nm以下)であり、良好な結果となった。また、発光の立ち上がりの応答速度(Tr)は、62nsであり、100ns以下の良好な結果が得られた。また、表面欠陥の検査では、表面欠陥は見られなかった。
【0171】
また、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eを、光取り出し面に対して45°の角度を成す方向に放射される放射照度Fで割った放射照度の比(=E/F)は、0.80(1.0よりも小さい値)であり、実施例1〜5の発光ダイオードと比較して、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eが弱いことが確認できた。
また、参考例3の発光ダイオードが発光した際、機能性基板の放熱効果により、温度上昇に起因する発光効率の低下は見られなかった。
【0172】
上記結果から、参考例3の発光ダイオード及び発光ダイオードランプでは、ピーク発光波長、及び放射照度の比(=E/F)において、良好な結果を得ることができなかった。
【0173】
(参考例4)
参考例4の発光ダイオードは、実施例2の発光ダイオードの構成から反射構構造体を除去すると共に、実施例2の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりに、Ga044In0.56Pよりなる13層の歪発光層(単層の厚さ30nm)を形成すると共に、バリア層の数を12層に変更した以外は、第2の実施例の発光ダイオードと同様に製造した。つまり、参考例4の発光ダイオードは、反射構造体を有していない。
【0174】
参考例4の発光ダイオードの構成要素の一部を表1に示し、参考例4の発光ダイオードを実装した発光ダイオードランプの特性を評価した結果を表2に示す。
表2に示すように、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク発光波長668.9nm(655nm以上)とする赤色光が出射された。
また、順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(Vf)は、化合物半導体層を構成する歪調整層と機能性基板との接合界面での抵抗の低さ及び各オーミック電極の良好なオーミック特性を反映し、2.3ボルト(V)となった。
また、順方向電流を20mAとした際の発光出力は、1.1mWであり、目標とする3mW以上の値を得ることができなかった。
【0175】
組み立てたすべての発光ダイオードにおけるピーク発光波長のバラツキ(最大−最小)は、4.1nmであり、目標とする3nm以下の値を得ることができなかった。
また、発光の立ち上がりの応答速度(Tr)は、43nsであり、100ns以下の良好な結果が得られた。また、表面欠陥の検査では、表面欠陥が確認できた。
【0176】
また、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eを、光取り出し面に対して45°の角度を成す方向に放射される放射照度Fで割った放射照度の比(=E/F)は、0.77(1.0よりも小さい値)であり、実施例1〜5の発光ダイオードと比較して、光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度Eが弱いことが確認できた。
また、参考例4の発光ダイオードが発光した際、機能性基板の放熱効果により、温度上昇に起因する発光効率の低下は見られなかった。
【0177】
上記結果から、参考例4の発光ダイオード及び発光ダイオードランプでは、順方向電流を20mAとした際の発光出力、ピーク発光波長のばらつき、表面欠陥、及び放射照度の比(=E/F)において、良好な結果を得ることができなかった。
【0178】
【表1】

【0179】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明の発光ダイオードは、植物育成用の発光ダイオード、高圧回路等において、電気信号伝達に用いられる高速カプラー用の発光ダイオード等に利用可能である。
【0181】
1,50…発光ダイオード、2…発光層、3…発光部、3a,3b,13a,14a,15b…面、4…反射構造体、4a,5a…接合面、5,51…機能性基板、5b…面、6…第1の電極、8…第2の電極、10a…上部クラッド層、10b…下部クラッド層、11…化合物半導体層、11a…光取り出し面、12a…緩衝層、12b…コンタクト層、13…歪調整層、14…透明電極膜、15…反射層、18…接合構造体、21…第1の金属層、22…第2の金属層、31…歪発光層、32…バリア層、33…半導体基板、33a…表面、40…発光ダイオードランプ、41…封止樹脂、43,44…電極端子、45…パッケージ基板、51a…上面、51b…下面、52,53…金属層、f…正面方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pn接合型の発光部と、前記発光部に積層された歪調整層とを少なくとも含む化合物半導体層を備え、
前記発光部は、組成式(AlXGa1−X)YIn1−YP(0≦X≦0.1、0.37≦Y≦0.46)からなる歪発光層とバリア層との積層構造を有しており、前記歪調整層は、発光波長に対して透明であると共に、前記歪発光層及び前記バリア層の格子定数よりも小さい格子定数を有し、
前記化合物半導体層の光取り出し面と反対側の面に、反射構造体を介して機能性基板が接合されていることを特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
前記機能性基板が、金属基板であることを特徴とする請求項1記載の発光ダイオード。
【請求項3】
前記金属基板は、積層された複数の金属層により構成されることを特徴とする請求項2記載の発光ダイオード。
【請求項4】
前記機能性基板の材料が、GaP、Si、Geのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の発光ダイオード。
【請求項5】
前記光取り出し面に対して90°の角度を成す方向に放射される放射照度が、前記光取り出し面に対して45°の角度を成す方向に放射される放射照度の1.0倍以上であることを特徴とする請求項1ないし4のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
【請求項6】
前記歪発光層の組成式が、GaIn1−XP(0.37≦X≦0.46)であることを特徴とする請求項1ないし5のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
【請求項7】
前記歪発光層の厚さが、8〜30nmの範囲であることを特徴とする請求項1ないし6のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
【請求項8】
前記歪発光層が8〜40層含まれていることを特徴とする請求項1ないし7のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
【請求項9】
前記バリア層の組成式が、(AlGa1−XIn1−YP(0.3≦X≦0.7、0.48≦Y≦0.52)であることを特徴とする請求項1ないし8のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
【請求項10】
前記発光部は、前記歪発光層の上面及び下面の一方又は両方にクラッド層を有し、
前記クラッド層の組成式が(AlGa1−XIn1−YP(0.5≦X≦1、0.48≦Y≦0.52)であることを特徴とする請求項1ないし9のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
【請求項11】
前記歪調整層の組成式を、(AlGa1−XIn1−YP(0≦X≦1、0.6≦Y≦1)にしたことを特徴とする請求項1ないし10のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
【請求項12】
前記歪調整層の組成式を、AlGa1−XAs1−Y(0≦X≦1、0.6≦Y≦1)にしたことを特徴とする請求項1ないし10のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
【請求項13】
前記歪調整層が、GaP層であることを特徴とする請求項1ないし12のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
【請求項14】
前記歪調整層の厚さが、0.5〜20μmの範囲であることを特徴とする請求項1ないし13のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
【請求項15】
前記光取り出し面は、粗い面を含むことを特徴とする請求項1ないし14のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
【請求項16】
植物育成の光合成の促進に使用するための発光ダイオードであって、
前記発光部の発光スペクトルのピーク発光波長が、655〜675nmの範囲であることを特徴とする請求項1ないし15のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
【請求項17】
前記発光スペクトルの半値幅が、10〜40nmの範囲であることを特徴とする請求項16記載の発光ダイオード。
【請求項18】
前記発光スペクトルの発光波長700nmにおける発光強度が、前記ピーク発光波長における発光強度の10%未満であることを特徴とする請求項16または17記載の発光ダイオード。
【請求項19】
前記発光部の応答速度(Tr)が、100ns以下であることを特徴とする請求項1ないし18のうち、いずれか1項記載の発光ダイオード。
【請求項20】
表面に電極端子が形成されたマウント基板と、
請求項1ないし19のうち、いずれか1項記載の発光ダイオードと、を備え、
前記発光ダイオードは、前記マウント基板に実装されており、
前記発光ダイオードは、前記電極端子と電気的に接続されていることを特徴とする発光ダイオードランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−43943(P2012−43943A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183212(P2010−183212)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】