発光素子の製造方法及び発光素子製造用半導体ウェーハ
【課題】 成長用基板上に発光層部を含む化合物半導体層をMOVPE法により成長した後、成長用基板をエッチング除去し、該成長用基板が除去された化合物半導体層に透明基板を貼り合わせる発光素子の製造方法において、透明基板の貼り合わせ不良や化合物半導体層への割れ等を生じにくくする。
【解決手段】 基板除去工程後において素子化対象層50の第二主表面に、選択化学エッチングにより溶解されずに残留した柱状半導体欠陥部の突起状露出部分11を除去する突起除去工程を、貼り合わせ工程に先立って実施する。
【解決手段】 基板除去工程後において素子化対象層50の第二主表面に、選択化学エッチングにより溶解されずに残留した柱状半導体欠陥部の突起状露出部分11を除去する突起除去工程を、貼り合わせ工程に先立って実施する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は発光素子の製造方法及び発光素子製造用半導体ウェーハに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2001−68731号公報
【特許文献2】特開2002−203987号公報
【0003】
(AlxGa1−x)yIn1−yP混晶(ただし、0≦x≦1,0≦y≦1;以下、AlGaInP混晶、あるいは単にAlGaInPとも記載する)により発光層部が形成された発光素子は、薄いAlGaInP活性層を、それよりもバンドギャップの大きいn型AlGaInPクラッド層とp型AlGaInPクラッド層とによりサンドイッチ状に挟んだダブルへテロ構造を採用することにより、高輝度の素子を実現できる。発光層部は有機金属気相成長法(Metal-Oxide Vapor Phase Epitaxy:MOVPE)にて成長する方法が一般的である。
【0004】
AlGaInP発光素子の場合、発光層部の成長基板としてGaAs基板が使用されるが、GaAsはAlGaInP発光層部の発光波長域において光吸収が大きい。そこで、特許文献1及び特許文献2には、一旦GaAs基板を除去し、GaP基板を新たに貼り合わせる方法が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が検討したところ、GaAs基板上にAlGaInP発光層部をMOVPE法により成長した後、GaAs基板を化学エッチングにより除去すると、基板除去した発光層部の裏面(第二主表面)に突起状の介在物が形成されていることがあり、そのままGaP基板を貼り合わせた場合、突起の周囲に貼り合わせ不良となる領域が形成されやすくなる。また、貼り合わせの対象となる発光層部を含む薄い化合物半導体層が突起周囲でGaP基板から浮き上がり、貼り合わせのために加圧すると応力集中してクラックが入りやすい問題がある。
【0006】
本発明の課題は、成長用基板上に発光層部を含む化合物半導体層をMOVPE法により成長した後、成長用基板をエッチング除去し、該成長用基板が除去された化合物半導体層に透明基板を貼り合わせる発光素子の製造方法において、透明基板の貼り合わせ不良や化合物半導体層への割れ等を生じにくくし、さらには該製造方法によって実現可能な割れや貼り合わせ不良が低減された発光素子製造用半導体ウェーハを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の発光素子の製造方法は、
不透明の化合物半導体からなる成長用単結晶基板の第一主表面上に、発光層部を有する素子化対象層を含んだ化合物半導体成長層の少なくとも発光層部をMOVPE法によりエピタキシャル成長して中間積層体を得るMOVPE成長工程と、
中間積層体の、素子化対象層の第二主表面側に位置する成長用単結晶基板を含む非素子化部分を、少なくとも素子化対象層と接する部分を選択化学エッチングにより溶解する形で除去する基板除去工程と、
非素子化部分を除去後の素子化対象層の第二主表面に透明素子基板を貼り合わせ結合する貼り合わせ工程とがこの順序で実施されるとともに、
MOVPE成長工程において、素子化対象層と非素子化部分とに層厚方向にまたがる形で、素子化対象層の第二主表面を形成する化合物半導体とは異質の化合物半導体からなる柱状半導体欠陥部が形成されるとともに、基板除去工程後において素子化対象層の第二主表面に、選択化学エッチングにより溶解されずに残留した柱状半導体欠陥部の突起状露出部分を除去する突起除去工程を、貼り合わせ工程に先立って実施することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の発光素子製造用半導体ウェーハは、発光層部を有する化合物半導体からなる素子化対象層の第一主表面を部分的に覆う形で光取出側電極が形成される一方、該素子化対象層の第二主表面に透明素子基板が貼り合された構造を有するとともに、該素子化対象層の層厚方向途中位置から第二主表面に向けて、該素子化対象層の第二主表面を形成する化合物半導体とは異質の化合物半導体からなる柱状半導体欠陥部が、先端面が第二主表面と一致する形態にて形成され、透明素子基板の第一主表面が、柱状半導体欠陥部の先端面と第二主表面の当該先端面に連なる周縁領域との双方に接する形で密着結合されてなることを特徴とする。
【0009】
上記本発明によると、MOVPE成長工程において素子化対象層と非素子化部分とに層厚方向にまたがる形で柱状半導体欠陥部が形成された場合に、選択化学エッチングにより溶解されずに素子化対象層の第二主表面に残留する上記柱状半導体欠陥部の突起状露出部分を除去してから貼り合わせ工程を実施するので、該突起状露出部分に起因した貼り合わせ不良領域が形成されにくくなり、また貼り合せの加圧時に、突起位置への応力集中により薄く脆い素子化対象層にクラックが入ったりする不具合も起こりにくくなる。その結果、得られる発光素子製造用半導体ウェーハは、化合物半導体成長層(素子化対象層)に深く埋没した柱状半導体欠陥部が形成されているにも拘わらず、その柱状半導体欠陥部の先端面が(上記の突起除去工程によって)、透明素子基板が貼り合わされる化合物半導体成長層の第二主表面に対して面一となり、透明素子基板は柱状半導体欠陥部の先端面と上記第二主表面の当該先端面に連なるの周縁領域との双方に接する形で密着結合される。その結果、柱状半導体欠陥部周辺にもクラックや貼り合わせ不良領域を生じにくく、該発光素子製造用半導体ウェーハをダイシングして得られる発光素子チップの歩留まりを大幅に向上することができる。
【0010】
MOVPE成長工程において化合物半導体成長層に柱状半導体欠陥部が形成される主たる要因は、例えば以下のようなものである。すなわち、化合物半導体成長層の原料有機金属ガスの分解により生じたIII族金属粒子が、成長中又は成長後の化合物半導体成長層上に落下して、当該化合物半導体成長層を合金化により溶解しつつ侵食し、その侵食孔内に生じた液相中に異質の化合物半導体を析出する形で柱状半導体欠陥部が形成される。
【0011】
高輝度の発光素子を得るには、成長用単結晶基板としてGaAs単結晶基板を使用し、発光層部を、組成式(AlxGa1−x)yIn1−yP(ただし、0≦x≦1,0≦y≦1)にて表される化合物半導体のうち、GaAsと格子整合する組成を有する化合物半導体(第一のIII−V族化合物半導体)にて各々構成された第一導電型クラッド層、活性層及び第二導電型クラッド層がこの順序で積層されたダブルへテロ構造を有するものとして成長するとよい。なお、「GaAsと格子整合する化合物半導体」とは、応力による格子変位を生じていないバルク結晶状態にて見込まれる、当該の化合物半導体の格子定数をa1、同じくGaAsの格子定数をa0として、{|a1−a0|/a0}×100(%)にて表される格子不整合率が、1%以内に収まっている化合物半導体のことをいう。また、「組成式(Alx’Ga1−x’)y’In1−y’P(ただし、0≦x’≦1,0≦y’≦1)にて表される化合物のうち、GaAsと格子整合する化合物」のことを、「GaAsと格子整合するAlGaInP」などと記載する。また、活性層は、AlGaInPの単一層として構成してもよいし、互いに組成の異なるAlGaInPからなる障壁層と井戸層とを交互に積層した量子井戸層として構成してもよい(量子井戸層全体を、一層の活性層とみなす)。
【0012】
上記のような発光層部をMOVPEで成長した場合、柱状半導体欠陥部をなす異質の化合物半導体は、発光層部よりもGa又はInの含有比率が高く、かつ、V族元素の主体がPからなる多結晶化合物半導体からなるものが非常に形成されやすく、これに起因した突起状露出部を予め除去してから透明素子基板を貼り合せるようにすることは、上記発光層部を有した発光素子チップの製造歩留まり向上に大きく寄与する。特に、透明素子基板を、脆いGaP単結晶にて構成する場合は、本発明の採用により透明素子基板側のクラック発生防止も達成でき、より効果的である。
【0013】
突起状露出部分の除去には、洗浄やエッチング以外の次のような強制的な除去工程を採用するとよい。
・突起除去工程において突起状露出部分を機械研削処理により切除する。
・突起除去工程において突起状露出部分を、挟持治具により挟みつけた状態で折り取ることにより切除する。
・突起除去工程において突起状露出部分を、レーザー照射により焼き飛ばすことにより除去する。
・突起除去工程において突起状露出部分を、ウォータージェットにより除去する。
いずれの方法においても、例えば素子化対象層の第二主表面側を実体顕微鏡等の拡大鏡で観察しながら、手動により突起状露出部分を除去することもできるし、ロボットを用いてその作業を自動化することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態である発光素子100を示す概念図である。発光素子100は、発光層部24を有する化合物半導体からなる素子化対象層50の第一主表面を部分的に覆う形で光取出側電極9が形成される一方、該素子化対象層50の第二主表面に透明素子基板90が貼り合された構造を有する。素子化対象層50において、発光層部24の上に電流拡散層7が形成され、その電流拡散層7の上に光取出側電極9が形成されている。また、透明素子基板90はn型GaP単結晶基板(以下、n型GaP単結晶基板90という:発光層部24からの発光光束に対して透明である(活性層5よりもバンドギャップエネルギーが大きい))であり、その第二主表面の全面が裏面電極20により覆われている。光取出側電極9は、電流拡散層7の第一主表面の略中央に形成され、該光取出側電極9の周囲の領域が発光層部24からの光取出領域とされている。また、光取出側電極9の中央部に電極ワイヤ17を接合するためのAu等にて構成されたボンディングパッド16が配置されている。
【0015】
発光層部24はMOVPE法で成長されたものであり、組成式(AlxGa1−x)yIn1−yP(ただし、0≦x≦1,0≦y≦1)にて表される化合物半導体のうち、GaAsと格子整合する組成を有する化合物半導体にて構成されている。具体的には、発光層部24は、ノンドープ(AlxGa1−x)yIn1−yP(ただし、0≦x≦0.55,0.45≦y≦0.55)混晶からなる活性層5を、p型(AlzGa1−z)yIn1−yP(ただしx<z≦1)からなるp型クラッド層6とn型(AlzGa1−z)yIn1−yP(ただしx<z≦1)からなるn型クラッド層4とにより挟んだ構造を有する。図1の発光素子100では、光取出側電極9側にp型AlGaInPクラッド層6が配置されており、裏面電極20側にn型AlGaInPクラッド層4が配置されている。従って、通電極性は光取出側電極9側が正である。なお、ここでいう「ノンドープ」とは、「ドーパントの積極添加を行なわない」との意味であり、通常の製造工程上、不可避的に混入するドーパント成分の含有(例えば1013〜1016atoms/cm3程度を上限とする)をも排除するものではない。
【0016】
一方、電流拡散層7は、ドーパントをZn(Mgでもよく、ZnとMgとを併用してもよい)としたp型GaP層として形成されている。電流拡散層7はハイドライド気相成長(Hydride Vapor Phase Epitaxial Growth Method:HVPE)法により形成されたものであり、その形成厚さは例えば5μm以上200μm以下(一例として、150μm)である。また、電流拡散層7と発光層部24との間には、発光層部24に続く形でMOVPE法により成長されたn型GaP接続層7pが形成されている。つまり、素子化対象層50のうち、発光層部24とn型GaP接続層7pとがMOVPE法により成長され、電流拡散層7がHVPE法により成長されたものである。
【0017】
素子化対象層50には、図11に示すように、その層厚方向途中位置から第二主表面MP2に向けて、該素子化対象層50の第二主表面MP2を形成する化合物半導体(本実施形態では、n型AlGaInPクラッド4)とは異質の化合物半導体からなる柱状半導体欠陥部55が、その先端面が素子化対象層50の上記第二主表面MP2と一致する形態にて形成されている。また、透明素子基板であるn型GaP単結晶基板90は、その第一主表面MP1が、柱状半導体欠陥部の先端面と第二主表面の当該先端面に連なる周縁領域との双方に接する形で貼り合せにより密着結合されている。
【0018】
以下、図1の発光素子100の製造方法について説明する。
まず、図2に示すように、成長用単結晶基板としてのn型GaAs単結晶基板1(発光層部24からの発光光束に対して不透明である(活性層5よりもバンドギャップエネルギーが小さい))を用意する。そして、工程1において、その基板1の第一主表面に、n型GaAsバッファ層1bを例えば0.5μm、次いで、AlInPからなるエッチストップ層2を0.5μm、そして、発光層部24として、各々(AlxGa1−x)yIn1−yPよりなる、1μmのn型クラッド層4(n型ドーパントはSi)、0.6μmの活性層(ノンドープ)5、及び1μmのp型クラッド層6(p型ドーパントはMg:有機金属分子からのCもp型ドーパントとして寄与しうる)を、この順序にてエピタキシャル成長させる。次に、工程2では、発光層部24の上にp型GaPからなる接続層7pをMOVPE法によりヘテロエピタキシャル成長する。
【0019】
これら各層のエピタキシャル成長は、公知のMOVPE法により行なわれる。Al、Ga、In(インジウム)、P(リン)の各成分源となる原料ガスとしては以下のようなものを使用できる;
・Al源ガス;トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)など;
・Ga源ガス;トリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)など;
・In源ガス;トリメチルインジウム(TMIn)、トリエチルインジウム(TEIn)など。
・P源ガス:トリメチルリン(TMP)、トリエチルリン(TEP)、ホスフィン(PH3)など。
【0020】
次に、図3の工程3に進み、p型GaPよりなる電流拡散層7を、HVPE法により接続層7p上にホモエピタキシャル成長させる。HVPE法は、具体的には、容器内にてIII族元素であるGaを所定の温度に加熱保持しながら、そのGa上に塩化水素を導入することにより、下記(1)式の反応によりGaClを生成させ、キャリアガスであるH2ガスとともに基板上に供給する。
Ga(液体)+HCl(気体) → GaCl(気体)+1/2H2‥‥(1)
成長温度は例えば640℃以上860℃以下に設定する。また、V族元素であるPは、PH3をキャリアガスであるH2とともに基板上に供給する。さらに、p型ドーパントであるZnは、DMZn(ジメチルZn)の形で供給する。GaClはPH3との反応性に優れ、下記(2)式の反応により、効率よく電流拡散層7を成長させることができる:
GaCl(気体)+PH3(気体)
→GaP(固体)+HCl(気体)+H2(気体)‥‥(2)
【0021】
ここまでの工程で、GaAs単結晶基板1上には化合物半導体成長層60が2種の気相成長法によりエピタキシャル成長され、中間積層体200が形成されている。中間積層体200のうち、発光層部24、接続層7p及び電流拡散層7が素子化対象層50であり、それ以外の部分(エッチストップ層2、バッファ層1b及びGaAs単結晶基板1)が非素子化部分70である。他方、MOVPE成長工程においては、上記素子化対象層50の発光層部24及び接続層7pと、これに先立つエッチストップ層2及びバッファ層1bとが成長される。このMOVPE成長工程において素子化対象層50には、前述の柱状半導体欠陥部55が、例えば以下のよう原因により形成される。すなわち、図6に示すように、化合物半導体成長層(図6の例では、バッファ層1b及びエッチストップ層2)の原料有機金属ガスの分解により生じたIII族金属粒子52が、成長中又は成長後の化合物半導体成長層に落下して(状態A)、当該化合物半導体成長層を合金化により溶解しつつ侵食し(状態B)、その侵食孔55h内に生じた液相中53に異質の化合物半導体54を析出する形で柱状半導体欠陥部55が形成される(状態C)。合金化はGaAs単結晶基板1の側にまで進展し、柱状半導体欠陥部55の先端側はバッファ層1b及びエッチストップ層2とを突き抜けてGaAs単結晶基板1内部に入り込んでいる。他方、柱状半導体欠陥部55の基端側は発光層部24(つまり、素子化対象層)内にあり、結果として柱状半導体欠陥部55は、素子化対象層50と非素子化部分70とにまたがって位置している。
【0022】
より詳しく説明すると、MOVPEの反応容器内には、基板支持用のサセプタやプラネタリーあるいはプルプレートといった周辺構造物が配置され、高周波コイル等で高温(例えば650℃〜900℃)に加熱される。この状態で容器内部の上方に配置されたインジェクターから原料有機金属ガスを容器内部空間に噴射するとともに、別の供給ノズルからV族源となるガス(例えばホスフィンなどのP源ガス)を供給し、両者を反応させてIII−V族化合物半導体を基板上に成長する形となる。
【0023】
発光層部24が上記のごとくAlGaInPにて構成される場合、インジェクターには低融点のGaやInがIII族金属として付着し、これが成長層側に落下すると、柱状半導体欠陥部55は、発光層部24よりもGa又はInの含有比率が高く、かつ、V族元素の主体がPである多結晶化合物半導体(例えばGaP)からなるものとして形成される。
【0024】
このとき、上記の周辺構造物が高温に加熱されているので、原料有機金属ガス供給用のインジェクターもその輻射熱で加熱されてしまい、インジェクター内部で原料である有機金属の分解が生じ(例えば、トリメチルアルミニウム(TMAl):240℃、トリメチルガリウム(TMGa):222℃、トリメチルインジウム(TMIn):205℃)、インジェクター内にIII族金属が析出する。析出したIII族金属粒子は原料有機金属ガスとともにインジェクターを通して高速で反応容器内に噴射され、化合物半導体基板やエピタキシャル成長中の化合物半導体層に降り注ぐことになる。
【0025】
上記のようにして降り注いだIII族金属粒子52は、エピタキシャル成長された化合物半導体成長層60やGaAs単結晶基板(成長用単結晶基板)1を構成する化合物半導体と合金化する。反応容器内は上記のごとく昇温されているので、化合物半導体層の合金化された部分は溶融して侵食孔55hを生じ、該侵食孔55h内はIII金属リッチな液相53で満たされる。他方、V族元素源ガスは通常、III族元素源となる有機金属ガスに対し、得られる化合物半導体のIII−V族化学量論比よりもV族リッチとなるとなるように反応容器内に供給されるので、侵食孔内に生じた液相中には素子化対象層(特に発光層部)とは組成の異なるIII−V族化合物半導体が析出し、柱状半導体欠陥部55となるのである。
【0026】
図7に示すように、柱状半導体欠陥部55の発生要因となるIII族金属粒子52の付着は、化合物半導体成長層60を成長中の種々のタイミングで生じうる。例えばバッファ層1bやエッチストップ層2を成長直後にIII族金属粒子52aが付着すると、GaAs単結晶基板1に比較的深く食い込んだ柱状半導体欠陥部55aとなる。また、発光層部24の成長途上でIII族金属粒子52bが付着すると、発光層部24の厚さ方向中間位置から柱状半導体欠陥部55bが成長することとなる。また、発光層部24を成長後、接続層7pの成長途中にIII族金属粒子52cが付着することもありえ、この場合は発光層部24を貫通する柱状半導体欠陥部55cが発生する。
【0027】
さらに、MOVPEによる接続層7pまでの成長が終了してからIII族金属粒子52dが付着した場合、これを除去せずにHVPE成長容器に移し替えて電流拡散層7を成長すると、HVPEの昇温過程でIII族金属粒子52dが溶融・合金化し、同様の柱状半導体欠陥部55dが発生する。また、HVPE成長容器内でIII族金属粒子52eが付着することもありえ、この場合は素子化対象層50の全体を貫通する形で柱状半導体欠陥部55eが発生する。
【0028】
次に、図4の工程4に進み、GaAs単結晶基板1を除去する。該除去は、GaAs単結晶基板1の第二主表面側から研削を行って基板厚さをある程度減じてから、GaAsに対して選択エッチング性を有する第一エッチング液(例えばアンモニア/過酸化水素混合液)を用いてGaAs単結晶基板1をバッファ層1bとともにエッチング除去し、次いで工程5に示すように、エッチストップ層2をなすAlInPに対して選択エッチング性を有する第二エッチング液(例えば塩酸:Al酸化層除去用にフッ酸を添加してもよい)を用いて該エッチストップ層2をエッチング除去することにより実施できる。なお、エッチストップ層2に代えてAlAs剥離層を形成し、これを選択エッチングすることにより、該GaAs単結晶基板1を素子化対象層50から剥離する形でGaAs単結晶基板1を除去するようにしてもよい。
【0029】
図6の状態Dに示すように、柱状半導体欠陥部5がGaAs単結晶基板(成長用単結晶基板)1側まで侵食する形で成長していると、上記のごとくGaAs単結晶基板1(及びエッチストップ層2)をエッチングにより除去した場合、柱状半導体欠陥部55の先端部が突起状露出部51となって、エピタキシャル成長された素子化対象層の第二主表面に突出する。
【0030】
半導体ウェーハの製造工程にあっては、デバイス形成面へのパーティクル付着等を洗浄やエッチングにより除去することが一般的に行われている。しかし、こうしたパーティクルは異物(ゴミ等)がウェーハ主表面に付着して生ずるもなど、その発生原因は外的なものであって、多少強く付着したパーティクルも洗浄やエッチング条件の適正化により問題なく除去できるものであった。しかし、ここで除去の対象となる突起状露出部分51は、化合物半導体成長層中に基端部が埋没した柱状半導体欠陥部55の一部であり、単純な洗浄やエッチングにより脱落させる形での除去は期待できない。従って、該突起状露出部分51の除去には、洗浄やエッチング以外の次のような強制的な除去工程を考慮する必要がある。
【0031】
図8は、突起状露出部分51を、グラインダーG等による機械研削処理により切除する例である。図9は、突起状露出部分51を、ピンセットPなどの挟持治具により挟みつけた状態で折り取ることにより切除する例である。また、図10は、突起状露出部分51にレーザー光源Sからレーザ−ビームLBを照射して、これを焼き飛ばす形で(あるいは深さ方向にくりぬく形で)除去する例である。さらに、図13に示すように、水流噴射ノズルNZから高圧の水流WJを突起状露出部分51に噴射することにより、該突起状露出部分51を機械的に削るウォータージェット方式を採用することも可能である。いずれの方法においても、例えば素子化対象層50の第二主表面側を実体顕微鏡等の拡大鏡で観察しながら、手動により突起状露出部分を除去することもできるし、ロボットを用いてその作業を自動化することも可能である。特にGaP多結晶にて突起状露出部分51が形成される場合は、該突起状露出部分51が比較的柔らかいので、上記研削や折り取りによる除去が一層容易である。
【0032】
なお、レーザーによって突起を除去する場合は、突起状露出部分51を除去した後のレーザー照射位置の周辺に、残渣が溶けて盛り上がることがある。レーザーパワーの調整及び照射範囲の絞り込み等の工夫が必要である。しかし、研削や折り取りあるいはウォータージェットなどの機械的な除去法によれば材料残渣が残留する心配はない。特にウォータージェットを用いた場合、破壊された突起状露出部分51の破片等を水流吹き飛ばすことができるので好都合である。
【0033】
なお、突起状露出部分51の除去は、エッチストップ層2をエッチング除去する前に行ってもよいし、エッチング除去後に行ってもよい。エッチストップ層2の除去前に突起状露出部分51を除去すると、飛び散った材料残渣がエッチストップ層除去と同時に取り除ける利点がある。この場合、エッチストップ層2は、エッチストップ層2がAlInPである場合は、例えば塩酸からなるエッチング液により除去するとよい。
【0034】
図5の工程6に示すように、上記の突起状露出部分51を除去すると、柱状半導体欠陥部55の先端面は素子化対象層50の第二主表面とほぼ面一となる。この状態で、工程7に示すようにn型GaP単結晶基板90(透明素子基板)を素子化対象層50の第二主表面に貼り合せる。具体的には、素子化対象層50の第二主表面に別途用意したn型GaP基板90の第一主表面を重ね合わせて圧迫し、さらに400℃以上700℃以下に昇温して貼り合わせ熱処理を行なう。図12に示すごとく、突起状露出部分51が残留していると、突起状露出部分51の周囲に空隙VOが生じるとともに貼り合せ加圧力も不足するから、その周囲の広い範囲に貼り合せ不良領域を生じやすい。また、突起状露出部分51の先端には、貼り合せ時の加圧により応力集中し、薄く脆い素子化対象層50にクラックが入りやすい。しかし、図11に示すように、突起状露出部分を予め除去してから貼り合せを行なうと、こうした不具合はことごとく解消できる。
【0035】
以上の工程により、発光素子製造用半導体ウェーハが完成する。そして、この発光素子製造用半導体ウェーハの各チップ領域に真空蒸着法により光取出側電極9及び裏面電極20を形成し、さらに光取出側電極9上にボンディングパッド16を配置して、適当な温度で電極定着用のベーキングを施す。そして、このウェーハを各チップにダイシングし、裏面電極20をAgペースト等の導電性ペーストを用いて支持体を兼ねた図示しない端子電極に固着する一方、ボンディングパッド16と別の端子電極とにまたがる形態でAu製のワイヤ17をボンディングし、さらに樹脂モールドを形成することにより、発光素子100が得られる。なお、突起状露出部分を除去した後にもウェーハには柱状半導体欠陥部55が埋没残留する。この柱状半導体欠陥部55が存在しているチップは不良として除外することが可能である。しかし、不良はあくまで柱状半導体欠陥部55が残留しているチップに留まり、その周囲にクラックや貼り合せ不良領域が広がる事が無いので、チップ不良発生率を最小限に留めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の適用対象となる発光素子の一例を積層構造にて示す模式図。
【図2】図1の発光素子の製造工程を示す説明図。
【図3】図2に続く説明図。
【図4】図3に続く説明図。
【図5】図4に続く説明図。
【図6】柱状半導体欠陥部の形成機構を模式的に示す説明図。
【図7】柱状半導体欠陥部の種々の形成形態を示す模式図。
【図8】突起状突起状露出部分の除去方法の第一例を示す説明図。
【図9】同じく第二例を示す説明図。
【図10】同じく第三例を示す説明図。
【図11】本発明の発光素子製造用ウェーハの特徴部を拡大して示す模式図。
【図12】従来の貼り合せ法の問題点を示す模式図。
【図13】突起状突起状露出部分の除去方法の第四例を示す説明図。
【符号の説明】
【0037】
1 n型GaAs単結晶基板 (成長用単結晶基板)
2 エッチストップ層
24 発光層部
7 電流拡散層
50 素子化対象層
51 突起状露出部分
55 柱状半導体欠陥部
60 化合物半導体成長層
70 非素子化部分
90 n型GaP単結晶基板(透明素子基板)
【技術分野】
【0001】
この発明は発光素子の製造方法及び発光素子製造用半導体ウェーハに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2001−68731号公報
【特許文献2】特開2002−203987号公報
【0003】
(AlxGa1−x)yIn1−yP混晶(ただし、0≦x≦1,0≦y≦1;以下、AlGaInP混晶、あるいは単にAlGaInPとも記載する)により発光層部が形成された発光素子は、薄いAlGaInP活性層を、それよりもバンドギャップの大きいn型AlGaInPクラッド層とp型AlGaInPクラッド層とによりサンドイッチ状に挟んだダブルへテロ構造を採用することにより、高輝度の素子を実現できる。発光層部は有機金属気相成長法(Metal-Oxide Vapor Phase Epitaxy:MOVPE)にて成長する方法が一般的である。
【0004】
AlGaInP発光素子の場合、発光層部の成長基板としてGaAs基板が使用されるが、GaAsはAlGaInP発光層部の発光波長域において光吸収が大きい。そこで、特許文献1及び特許文献2には、一旦GaAs基板を除去し、GaP基板を新たに貼り合わせる方法が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が検討したところ、GaAs基板上にAlGaInP発光層部をMOVPE法により成長した後、GaAs基板を化学エッチングにより除去すると、基板除去した発光層部の裏面(第二主表面)に突起状の介在物が形成されていることがあり、そのままGaP基板を貼り合わせた場合、突起の周囲に貼り合わせ不良となる領域が形成されやすくなる。また、貼り合わせの対象となる発光層部を含む薄い化合物半導体層が突起周囲でGaP基板から浮き上がり、貼り合わせのために加圧すると応力集中してクラックが入りやすい問題がある。
【0006】
本発明の課題は、成長用基板上に発光層部を含む化合物半導体層をMOVPE法により成長した後、成長用基板をエッチング除去し、該成長用基板が除去された化合物半導体層に透明基板を貼り合わせる発光素子の製造方法において、透明基板の貼り合わせ不良や化合物半導体層への割れ等を生じにくくし、さらには該製造方法によって実現可能な割れや貼り合わせ不良が低減された発光素子製造用半導体ウェーハを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の発光素子の製造方法は、
不透明の化合物半導体からなる成長用単結晶基板の第一主表面上に、発光層部を有する素子化対象層を含んだ化合物半導体成長層の少なくとも発光層部をMOVPE法によりエピタキシャル成長して中間積層体を得るMOVPE成長工程と、
中間積層体の、素子化対象層の第二主表面側に位置する成長用単結晶基板を含む非素子化部分を、少なくとも素子化対象層と接する部分を選択化学エッチングにより溶解する形で除去する基板除去工程と、
非素子化部分を除去後の素子化対象層の第二主表面に透明素子基板を貼り合わせ結合する貼り合わせ工程とがこの順序で実施されるとともに、
MOVPE成長工程において、素子化対象層と非素子化部分とに層厚方向にまたがる形で、素子化対象層の第二主表面を形成する化合物半導体とは異質の化合物半導体からなる柱状半導体欠陥部が形成されるとともに、基板除去工程後において素子化対象層の第二主表面に、選択化学エッチングにより溶解されずに残留した柱状半導体欠陥部の突起状露出部分を除去する突起除去工程を、貼り合わせ工程に先立って実施することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の発光素子製造用半導体ウェーハは、発光層部を有する化合物半導体からなる素子化対象層の第一主表面を部分的に覆う形で光取出側電極が形成される一方、該素子化対象層の第二主表面に透明素子基板が貼り合された構造を有するとともに、該素子化対象層の層厚方向途中位置から第二主表面に向けて、該素子化対象層の第二主表面を形成する化合物半導体とは異質の化合物半導体からなる柱状半導体欠陥部が、先端面が第二主表面と一致する形態にて形成され、透明素子基板の第一主表面が、柱状半導体欠陥部の先端面と第二主表面の当該先端面に連なる周縁領域との双方に接する形で密着結合されてなることを特徴とする。
【0009】
上記本発明によると、MOVPE成長工程において素子化対象層と非素子化部分とに層厚方向にまたがる形で柱状半導体欠陥部が形成された場合に、選択化学エッチングにより溶解されずに素子化対象層の第二主表面に残留する上記柱状半導体欠陥部の突起状露出部分を除去してから貼り合わせ工程を実施するので、該突起状露出部分に起因した貼り合わせ不良領域が形成されにくくなり、また貼り合せの加圧時に、突起位置への応力集中により薄く脆い素子化対象層にクラックが入ったりする不具合も起こりにくくなる。その結果、得られる発光素子製造用半導体ウェーハは、化合物半導体成長層(素子化対象層)に深く埋没した柱状半導体欠陥部が形成されているにも拘わらず、その柱状半導体欠陥部の先端面が(上記の突起除去工程によって)、透明素子基板が貼り合わされる化合物半導体成長層の第二主表面に対して面一となり、透明素子基板は柱状半導体欠陥部の先端面と上記第二主表面の当該先端面に連なるの周縁領域との双方に接する形で密着結合される。その結果、柱状半導体欠陥部周辺にもクラックや貼り合わせ不良領域を生じにくく、該発光素子製造用半導体ウェーハをダイシングして得られる発光素子チップの歩留まりを大幅に向上することができる。
【0010】
MOVPE成長工程において化合物半導体成長層に柱状半導体欠陥部が形成される主たる要因は、例えば以下のようなものである。すなわち、化合物半導体成長層の原料有機金属ガスの分解により生じたIII族金属粒子が、成長中又は成長後の化合物半導体成長層上に落下して、当該化合物半導体成長層を合金化により溶解しつつ侵食し、その侵食孔内に生じた液相中に異質の化合物半導体を析出する形で柱状半導体欠陥部が形成される。
【0011】
高輝度の発光素子を得るには、成長用単結晶基板としてGaAs単結晶基板を使用し、発光層部を、組成式(AlxGa1−x)yIn1−yP(ただし、0≦x≦1,0≦y≦1)にて表される化合物半導体のうち、GaAsと格子整合する組成を有する化合物半導体(第一のIII−V族化合物半導体)にて各々構成された第一導電型クラッド層、活性層及び第二導電型クラッド層がこの順序で積層されたダブルへテロ構造を有するものとして成長するとよい。なお、「GaAsと格子整合する化合物半導体」とは、応力による格子変位を生じていないバルク結晶状態にて見込まれる、当該の化合物半導体の格子定数をa1、同じくGaAsの格子定数をa0として、{|a1−a0|/a0}×100(%)にて表される格子不整合率が、1%以内に収まっている化合物半導体のことをいう。また、「組成式(Alx’Ga1−x’)y’In1−y’P(ただし、0≦x’≦1,0≦y’≦1)にて表される化合物のうち、GaAsと格子整合する化合物」のことを、「GaAsと格子整合するAlGaInP」などと記載する。また、活性層は、AlGaInPの単一層として構成してもよいし、互いに組成の異なるAlGaInPからなる障壁層と井戸層とを交互に積層した量子井戸層として構成してもよい(量子井戸層全体を、一層の活性層とみなす)。
【0012】
上記のような発光層部をMOVPEで成長した場合、柱状半導体欠陥部をなす異質の化合物半導体は、発光層部よりもGa又はInの含有比率が高く、かつ、V族元素の主体がPからなる多結晶化合物半導体からなるものが非常に形成されやすく、これに起因した突起状露出部を予め除去してから透明素子基板を貼り合せるようにすることは、上記発光層部を有した発光素子チップの製造歩留まり向上に大きく寄与する。特に、透明素子基板を、脆いGaP単結晶にて構成する場合は、本発明の採用により透明素子基板側のクラック発生防止も達成でき、より効果的である。
【0013】
突起状露出部分の除去には、洗浄やエッチング以外の次のような強制的な除去工程を採用するとよい。
・突起除去工程において突起状露出部分を機械研削処理により切除する。
・突起除去工程において突起状露出部分を、挟持治具により挟みつけた状態で折り取ることにより切除する。
・突起除去工程において突起状露出部分を、レーザー照射により焼き飛ばすことにより除去する。
・突起除去工程において突起状露出部分を、ウォータージェットにより除去する。
いずれの方法においても、例えば素子化対象層の第二主表面側を実体顕微鏡等の拡大鏡で観察しながら、手動により突起状露出部分を除去することもできるし、ロボットを用いてその作業を自動化することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態である発光素子100を示す概念図である。発光素子100は、発光層部24を有する化合物半導体からなる素子化対象層50の第一主表面を部分的に覆う形で光取出側電極9が形成される一方、該素子化対象層50の第二主表面に透明素子基板90が貼り合された構造を有する。素子化対象層50において、発光層部24の上に電流拡散層7が形成され、その電流拡散層7の上に光取出側電極9が形成されている。また、透明素子基板90はn型GaP単結晶基板(以下、n型GaP単結晶基板90という:発光層部24からの発光光束に対して透明である(活性層5よりもバンドギャップエネルギーが大きい))であり、その第二主表面の全面が裏面電極20により覆われている。光取出側電極9は、電流拡散層7の第一主表面の略中央に形成され、該光取出側電極9の周囲の領域が発光層部24からの光取出領域とされている。また、光取出側電極9の中央部に電極ワイヤ17を接合するためのAu等にて構成されたボンディングパッド16が配置されている。
【0015】
発光層部24はMOVPE法で成長されたものであり、組成式(AlxGa1−x)yIn1−yP(ただし、0≦x≦1,0≦y≦1)にて表される化合物半導体のうち、GaAsと格子整合する組成を有する化合物半導体にて構成されている。具体的には、発光層部24は、ノンドープ(AlxGa1−x)yIn1−yP(ただし、0≦x≦0.55,0.45≦y≦0.55)混晶からなる活性層5を、p型(AlzGa1−z)yIn1−yP(ただしx<z≦1)からなるp型クラッド層6とn型(AlzGa1−z)yIn1−yP(ただしx<z≦1)からなるn型クラッド層4とにより挟んだ構造を有する。図1の発光素子100では、光取出側電極9側にp型AlGaInPクラッド層6が配置されており、裏面電極20側にn型AlGaInPクラッド層4が配置されている。従って、通電極性は光取出側電極9側が正である。なお、ここでいう「ノンドープ」とは、「ドーパントの積極添加を行なわない」との意味であり、通常の製造工程上、不可避的に混入するドーパント成分の含有(例えば1013〜1016atoms/cm3程度を上限とする)をも排除するものではない。
【0016】
一方、電流拡散層7は、ドーパントをZn(Mgでもよく、ZnとMgとを併用してもよい)としたp型GaP層として形成されている。電流拡散層7はハイドライド気相成長(Hydride Vapor Phase Epitaxial Growth Method:HVPE)法により形成されたものであり、その形成厚さは例えば5μm以上200μm以下(一例として、150μm)である。また、電流拡散層7と発光層部24との間には、発光層部24に続く形でMOVPE法により成長されたn型GaP接続層7pが形成されている。つまり、素子化対象層50のうち、発光層部24とn型GaP接続層7pとがMOVPE法により成長され、電流拡散層7がHVPE法により成長されたものである。
【0017】
素子化対象層50には、図11に示すように、その層厚方向途中位置から第二主表面MP2に向けて、該素子化対象層50の第二主表面MP2を形成する化合物半導体(本実施形態では、n型AlGaInPクラッド4)とは異質の化合物半導体からなる柱状半導体欠陥部55が、その先端面が素子化対象層50の上記第二主表面MP2と一致する形態にて形成されている。また、透明素子基板であるn型GaP単結晶基板90は、その第一主表面MP1が、柱状半導体欠陥部の先端面と第二主表面の当該先端面に連なる周縁領域との双方に接する形で貼り合せにより密着結合されている。
【0018】
以下、図1の発光素子100の製造方法について説明する。
まず、図2に示すように、成長用単結晶基板としてのn型GaAs単結晶基板1(発光層部24からの発光光束に対して不透明である(活性層5よりもバンドギャップエネルギーが小さい))を用意する。そして、工程1において、その基板1の第一主表面に、n型GaAsバッファ層1bを例えば0.5μm、次いで、AlInPからなるエッチストップ層2を0.5μm、そして、発光層部24として、各々(AlxGa1−x)yIn1−yPよりなる、1μmのn型クラッド層4(n型ドーパントはSi)、0.6μmの活性層(ノンドープ)5、及び1μmのp型クラッド層6(p型ドーパントはMg:有機金属分子からのCもp型ドーパントとして寄与しうる)を、この順序にてエピタキシャル成長させる。次に、工程2では、発光層部24の上にp型GaPからなる接続層7pをMOVPE法によりヘテロエピタキシャル成長する。
【0019】
これら各層のエピタキシャル成長は、公知のMOVPE法により行なわれる。Al、Ga、In(インジウム)、P(リン)の各成分源となる原料ガスとしては以下のようなものを使用できる;
・Al源ガス;トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)など;
・Ga源ガス;トリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)など;
・In源ガス;トリメチルインジウム(TMIn)、トリエチルインジウム(TEIn)など。
・P源ガス:トリメチルリン(TMP)、トリエチルリン(TEP)、ホスフィン(PH3)など。
【0020】
次に、図3の工程3に進み、p型GaPよりなる電流拡散層7を、HVPE法により接続層7p上にホモエピタキシャル成長させる。HVPE法は、具体的には、容器内にてIII族元素であるGaを所定の温度に加熱保持しながら、そのGa上に塩化水素を導入することにより、下記(1)式の反応によりGaClを生成させ、キャリアガスであるH2ガスとともに基板上に供給する。
Ga(液体)+HCl(気体) → GaCl(気体)+1/2H2‥‥(1)
成長温度は例えば640℃以上860℃以下に設定する。また、V族元素であるPは、PH3をキャリアガスであるH2とともに基板上に供給する。さらに、p型ドーパントであるZnは、DMZn(ジメチルZn)の形で供給する。GaClはPH3との反応性に優れ、下記(2)式の反応により、効率よく電流拡散層7を成長させることができる:
GaCl(気体)+PH3(気体)
→GaP(固体)+HCl(気体)+H2(気体)‥‥(2)
【0021】
ここまでの工程で、GaAs単結晶基板1上には化合物半導体成長層60が2種の気相成長法によりエピタキシャル成長され、中間積層体200が形成されている。中間積層体200のうち、発光層部24、接続層7p及び電流拡散層7が素子化対象層50であり、それ以外の部分(エッチストップ層2、バッファ層1b及びGaAs単結晶基板1)が非素子化部分70である。他方、MOVPE成長工程においては、上記素子化対象層50の発光層部24及び接続層7pと、これに先立つエッチストップ層2及びバッファ層1bとが成長される。このMOVPE成長工程において素子化対象層50には、前述の柱状半導体欠陥部55が、例えば以下のよう原因により形成される。すなわち、図6に示すように、化合物半導体成長層(図6の例では、バッファ層1b及びエッチストップ層2)の原料有機金属ガスの分解により生じたIII族金属粒子52が、成長中又は成長後の化合物半導体成長層に落下して(状態A)、当該化合物半導体成長層を合金化により溶解しつつ侵食し(状態B)、その侵食孔55h内に生じた液相中53に異質の化合物半導体54を析出する形で柱状半導体欠陥部55が形成される(状態C)。合金化はGaAs単結晶基板1の側にまで進展し、柱状半導体欠陥部55の先端側はバッファ層1b及びエッチストップ層2とを突き抜けてGaAs単結晶基板1内部に入り込んでいる。他方、柱状半導体欠陥部55の基端側は発光層部24(つまり、素子化対象層)内にあり、結果として柱状半導体欠陥部55は、素子化対象層50と非素子化部分70とにまたがって位置している。
【0022】
より詳しく説明すると、MOVPEの反応容器内には、基板支持用のサセプタやプラネタリーあるいはプルプレートといった周辺構造物が配置され、高周波コイル等で高温(例えば650℃〜900℃)に加熱される。この状態で容器内部の上方に配置されたインジェクターから原料有機金属ガスを容器内部空間に噴射するとともに、別の供給ノズルからV族源となるガス(例えばホスフィンなどのP源ガス)を供給し、両者を反応させてIII−V族化合物半導体を基板上に成長する形となる。
【0023】
発光層部24が上記のごとくAlGaInPにて構成される場合、インジェクターには低融点のGaやInがIII族金属として付着し、これが成長層側に落下すると、柱状半導体欠陥部55は、発光層部24よりもGa又はInの含有比率が高く、かつ、V族元素の主体がPである多結晶化合物半導体(例えばGaP)からなるものとして形成される。
【0024】
このとき、上記の周辺構造物が高温に加熱されているので、原料有機金属ガス供給用のインジェクターもその輻射熱で加熱されてしまい、インジェクター内部で原料である有機金属の分解が生じ(例えば、トリメチルアルミニウム(TMAl):240℃、トリメチルガリウム(TMGa):222℃、トリメチルインジウム(TMIn):205℃)、インジェクター内にIII族金属が析出する。析出したIII族金属粒子は原料有機金属ガスとともにインジェクターを通して高速で反応容器内に噴射され、化合物半導体基板やエピタキシャル成長中の化合物半導体層に降り注ぐことになる。
【0025】
上記のようにして降り注いだIII族金属粒子52は、エピタキシャル成長された化合物半導体成長層60やGaAs単結晶基板(成長用単結晶基板)1を構成する化合物半導体と合金化する。反応容器内は上記のごとく昇温されているので、化合物半導体層の合金化された部分は溶融して侵食孔55hを生じ、該侵食孔55h内はIII金属リッチな液相53で満たされる。他方、V族元素源ガスは通常、III族元素源となる有機金属ガスに対し、得られる化合物半導体のIII−V族化学量論比よりもV族リッチとなるとなるように反応容器内に供給されるので、侵食孔内に生じた液相中には素子化対象層(特に発光層部)とは組成の異なるIII−V族化合物半導体が析出し、柱状半導体欠陥部55となるのである。
【0026】
図7に示すように、柱状半導体欠陥部55の発生要因となるIII族金属粒子52の付着は、化合物半導体成長層60を成長中の種々のタイミングで生じうる。例えばバッファ層1bやエッチストップ層2を成長直後にIII族金属粒子52aが付着すると、GaAs単結晶基板1に比較的深く食い込んだ柱状半導体欠陥部55aとなる。また、発光層部24の成長途上でIII族金属粒子52bが付着すると、発光層部24の厚さ方向中間位置から柱状半導体欠陥部55bが成長することとなる。また、発光層部24を成長後、接続層7pの成長途中にIII族金属粒子52cが付着することもありえ、この場合は発光層部24を貫通する柱状半導体欠陥部55cが発生する。
【0027】
さらに、MOVPEによる接続層7pまでの成長が終了してからIII族金属粒子52dが付着した場合、これを除去せずにHVPE成長容器に移し替えて電流拡散層7を成長すると、HVPEの昇温過程でIII族金属粒子52dが溶融・合金化し、同様の柱状半導体欠陥部55dが発生する。また、HVPE成長容器内でIII族金属粒子52eが付着することもありえ、この場合は素子化対象層50の全体を貫通する形で柱状半導体欠陥部55eが発生する。
【0028】
次に、図4の工程4に進み、GaAs単結晶基板1を除去する。該除去は、GaAs単結晶基板1の第二主表面側から研削を行って基板厚さをある程度減じてから、GaAsに対して選択エッチング性を有する第一エッチング液(例えばアンモニア/過酸化水素混合液)を用いてGaAs単結晶基板1をバッファ層1bとともにエッチング除去し、次いで工程5に示すように、エッチストップ層2をなすAlInPに対して選択エッチング性を有する第二エッチング液(例えば塩酸:Al酸化層除去用にフッ酸を添加してもよい)を用いて該エッチストップ層2をエッチング除去することにより実施できる。なお、エッチストップ層2に代えてAlAs剥離層を形成し、これを選択エッチングすることにより、該GaAs単結晶基板1を素子化対象層50から剥離する形でGaAs単結晶基板1を除去するようにしてもよい。
【0029】
図6の状態Dに示すように、柱状半導体欠陥部5がGaAs単結晶基板(成長用単結晶基板)1側まで侵食する形で成長していると、上記のごとくGaAs単結晶基板1(及びエッチストップ層2)をエッチングにより除去した場合、柱状半導体欠陥部55の先端部が突起状露出部51となって、エピタキシャル成長された素子化対象層の第二主表面に突出する。
【0030】
半導体ウェーハの製造工程にあっては、デバイス形成面へのパーティクル付着等を洗浄やエッチングにより除去することが一般的に行われている。しかし、こうしたパーティクルは異物(ゴミ等)がウェーハ主表面に付着して生ずるもなど、その発生原因は外的なものであって、多少強く付着したパーティクルも洗浄やエッチング条件の適正化により問題なく除去できるものであった。しかし、ここで除去の対象となる突起状露出部分51は、化合物半導体成長層中に基端部が埋没した柱状半導体欠陥部55の一部であり、単純な洗浄やエッチングにより脱落させる形での除去は期待できない。従って、該突起状露出部分51の除去には、洗浄やエッチング以外の次のような強制的な除去工程を考慮する必要がある。
【0031】
図8は、突起状露出部分51を、グラインダーG等による機械研削処理により切除する例である。図9は、突起状露出部分51を、ピンセットPなどの挟持治具により挟みつけた状態で折り取ることにより切除する例である。また、図10は、突起状露出部分51にレーザー光源Sからレーザ−ビームLBを照射して、これを焼き飛ばす形で(あるいは深さ方向にくりぬく形で)除去する例である。さらに、図13に示すように、水流噴射ノズルNZから高圧の水流WJを突起状露出部分51に噴射することにより、該突起状露出部分51を機械的に削るウォータージェット方式を採用することも可能である。いずれの方法においても、例えば素子化対象層50の第二主表面側を実体顕微鏡等の拡大鏡で観察しながら、手動により突起状露出部分を除去することもできるし、ロボットを用いてその作業を自動化することも可能である。特にGaP多結晶にて突起状露出部分51が形成される場合は、該突起状露出部分51が比較的柔らかいので、上記研削や折り取りによる除去が一層容易である。
【0032】
なお、レーザーによって突起を除去する場合は、突起状露出部分51を除去した後のレーザー照射位置の周辺に、残渣が溶けて盛り上がることがある。レーザーパワーの調整及び照射範囲の絞り込み等の工夫が必要である。しかし、研削や折り取りあるいはウォータージェットなどの機械的な除去法によれば材料残渣が残留する心配はない。特にウォータージェットを用いた場合、破壊された突起状露出部分51の破片等を水流吹き飛ばすことができるので好都合である。
【0033】
なお、突起状露出部分51の除去は、エッチストップ層2をエッチング除去する前に行ってもよいし、エッチング除去後に行ってもよい。エッチストップ層2の除去前に突起状露出部分51を除去すると、飛び散った材料残渣がエッチストップ層除去と同時に取り除ける利点がある。この場合、エッチストップ層2は、エッチストップ層2がAlInPである場合は、例えば塩酸からなるエッチング液により除去するとよい。
【0034】
図5の工程6に示すように、上記の突起状露出部分51を除去すると、柱状半導体欠陥部55の先端面は素子化対象層50の第二主表面とほぼ面一となる。この状態で、工程7に示すようにn型GaP単結晶基板90(透明素子基板)を素子化対象層50の第二主表面に貼り合せる。具体的には、素子化対象層50の第二主表面に別途用意したn型GaP基板90の第一主表面を重ね合わせて圧迫し、さらに400℃以上700℃以下に昇温して貼り合わせ熱処理を行なう。図12に示すごとく、突起状露出部分51が残留していると、突起状露出部分51の周囲に空隙VOが生じるとともに貼り合せ加圧力も不足するから、その周囲の広い範囲に貼り合せ不良領域を生じやすい。また、突起状露出部分51の先端には、貼り合せ時の加圧により応力集中し、薄く脆い素子化対象層50にクラックが入りやすい。しかし、図11に示すように、突起状露出部分を予め除去してから貼り合せを行なうと、こうした不具合はことごとく解消できる。
【0035】
以上の工程により、発光素子製造用半導体ウェーハが完成する。そして、この発光素子製造用半導体ウェーハの各チップ領域に真空蒸着法により光取出側電極9及び裏面電極20を形成し、さらに光取出側電極9上にボンディングパッド16を配置して、適当な温度で電極定着用のベーキングを施す。そして、このウェーハを各チップにダイシングし、裏面電極20をAgペースト等の導電性ペーストを用いて支持体を兼ねた図示しない端子電極に固着する一方、ボンディングパッド16と別の端子電極とにまたがる形態でAu製のワイヤ17をボンディングし、さらに樹脂モールドを形成することにより、発光素子100が得られる。なお、突起状露出部分を除去した後にもウェーハには柱状半導体欠陥部55が埋没残留する。この柱状半導体欠陥部55が存在しているチップは不良として除外することが可能である。しかし、不良はあくまで柱状半導体欠陥部55が残留しているチップに留まり、その周囲にクラックや貼り合せ不良領域が広がる事が無いので、チップ不良発生率を最小限に留めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の適用対象となる発光素子の一例を積層構造にて示す模式図。
【図2】図1の発光素子の製造工程を示す説明図。
【図3】図2に続く説明図。
【図4】図3に続く説明図。
【図5】図4に続く説明図。
【図6】柱状半導体欠陥部の形成機構を模式的に示す説明図。
【図7】柱状半導体欠陥部の種々の形成形態を示す模式図。
【図8】突起状突起状露出部分の除去方法の第一例を示す説明図。
【図9】同じく第二例を示す説明図。
【図10】同じく第三例を示す説明図。
【図11】本発明の発光素子製造用ウェーハの特徴部を拡大して示す模式図。
【図12】従来の貼り合せ法の問題点を示す模式図。
【図13】突起状突起状露出部分の除去方法の第四例を示す説明図。
【符号の説明】
【0037】
1 n型GaAs単結晶基板 (成長用単結晶基板)
2 エッチストップ層
24 発光層部
7 電流拡散層
50 素子化対象層
51 突起状露出部分
55 柱状半導体欠陥部
60 化合物半導体成長層
70 非素子化部分
90 n型GaP単結晶基板(透明素子基板)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明の化合物半導体からなる成長用単結晶基板の第一主表面上に、発光層部を有する素子化対象層を含んだ化合物半導体成長層の少なくとも前記発光層部をMOVPE法によりエピタキシャル成長して中間積層体を得るMOVPE成長工程と、
前記中間積層体の、前記素子化対象層の第二主表面側に位置する前記成長用単結晶基板を含む非素子化部分を、少なくとも前記素子化対象層と接する部分を選択化学エッチングにより溶解する形で除去する基板除去工程と、
前記非素子化部分を除去後の前記素子化対象層の第二主表面に透明素子基板を貼り合わせ結合する貼り合わせ工程とがこの順序で実施されるとともに、
前記MOVPE成長工程において、前記素子化対象層と前記非素子化部分とに層厚方向にまたがる形で、前記素子化対象層の第二主表面を形成する化合物半導体とは異質の化合物半導体からなる柱状半導体欠陥部が形成されるとともに、前記基板除去工程後において前記素子化対象層の第二主表面に、前記選択化学エッチングにより溶解されずに残留した前記柱状半導体欠陥部の突起状露出部分を除去する突起除去工程を、前記貼り合わせ工程に先立って実施することを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記柱状半導体欠陥部は、前記化合物半導体成長層の原料有機金属ガスの分解により生じたIII族金属粒子が、成長中又は成長後の化合物半導体成長層上に落下して、当該化合物半導体成長層を合金化により溶解しつつ侵食し、その侵食孔内に生じた液相中に前記異質の化合物半導体を析出する形で形成されたものである請求項1記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記成長用単結晶基板としてGaAs単結晶基板が使用され、前記発光層部を、組成式(AlxGa1−x)yIn1−yP(ただし、0≦x≦1,0≦y≦1)にて表される化合物半導体のうち、GaAsと格子整合する組成を有する化合物半導体にて各々構成された第一導電型クラッド層、活性層及び第二導電型クラッド層がこの順序で積層されたダブルへテロ構造を有するものとして成長される請求項1又は請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記柱状半導体欠陥部をなす前記異質の化合物半導体は、前記発光層部よりもGa又はInの含有比率が高く、かつ、V族元素の主体がPからなる多結晶化合物半導体からなる請求項3記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記透明素子基板としてGaP単結晶が使用される請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記突起除去工程において前記突起状露出部分を機械研削処理により切除する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記突起除去工程において前記突起状露出部分を、挟持治具により挟みつけた状態で折り取ることにより切除する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記突起除去工程において前記突起状露出部分を、レーザー照射により焼き飛ばすことにより除去する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記突起除去工程において前記突起状露出部分を、ウォータージェットにより除去する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項10】
発光層部を有する化合物半導体からなる素子化対象層の第一主表面を部分的に覆う形で光取出側電極が形成される一方、該素子化対象層の第二主表面に透明素子基板が貼り合された構造を有するとともに、該素子化対象層の層厚方向途中位置から前記第二主表面に向けて、該素子化対象層の第二主表面を形成する化合物半導体とは異質の化合物半導体からなる柱状半導体欠陥部が、先端面が前記第二主表面と一致する形態にて形成され、前記透明素子基板の第一主表面が、前記柱状半導体欠陥部の先端面と前記第二主表面の当該先端面に連なる周縁領域との双方に接する形で密着結合されてなることを特徴とする発光素子製造用半導体ウェーハ。
【請求項11】
前記発光層部が、組成式(AlxGa1−x)yIn1−yP(ただし、0≦x≦1,0≦y≦1)にて表される化合物半導体のうち、GaAsと格子整合する組成を有する化合物半導体にて各々構成された第一導電型クラッド層、活性層及び第二導電型クラッド層がこの順序で積層されたダブルへテロ構造を有するものとして形成される請求項10記載の発光素子製造用半導体ウェーハ。
【請求項12】
前記柱状半導体欠陥部をなす前記異質の化合物半導体は、前記発光層部よりもGa及びInの含有比率が高く、かつ、V族元素の主体がPからなる多結晶化合物半導体からなる請求項11記載の発光素子製造用半導体ウェーハ。
【請求項13】
前記透明素子基板がGaP単結晶からなる請求項10ないし請求項12のいずれか1項に記載の発光素子製造用半導体ウェーハ。
【請求項1】
不透明の化合物半導体からなる成長用単結晶基板の第一主表面上に、発光層部を有する素子化対象層を含んだ化合物半導体成長層の少なくとも前記発光層部をMOVPE法によりエピタキシャル成長して中間積層体を得るMOVPE成長工程と、
前記中間積層体の、前記素子化対象層の第二主表面側に位置する前記成長用単結晶基板を含む非素子化部分を、少なくとも前記素子化対象層と接する部分を選択化学エッチングにより溶解する形で除去する基板除去工程と、
前記非素子化部分を除去後の前記素子化対象層の第二主表面に透明素子基板を貼り合わせ結合する貼り合わせ工程とがこの順序で実施されるとともに、
前記MOVPE成長工程において、前記素子化対象層と前記非素子化部分とに層厚方向にまたがる形で、前記素子化対象層の第二主表面を形成する化合物半導体とは異質の化合物半導体からなる柱状半導体欠陥部が形成されるとともに、前記基板除去工程後において前記素子化対象層の第二主表面に、前記選択化学エッチングにより溶解されずに残留した前記柱状半導体欠陥部の突起状露出部分を除去する突起除去工程を、前記貼り合わせ工程に先立って実施することを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記柱状半導体欠陥部は、前記化合物半導体成長層の原料有機金属ガスの分解により生じたIII族金属粒子が、成長中又は成長後の化合物半導体成長層上に落下して、当該化合物半導体成長層を合金化により溶解しつつ侵食し、その侵食孔内に生じた液相中に前記異質の化合物半導体を析出する形で形成されたものである請求項1記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記成長用単結晶基板としてGaAs単結晶基板が使用され、前記発光層部を、組成式(AlxGa1−x)yIn1−yP(ただし、0≦x≦1,0≦y≦1)にて表される化合物半導体のうち、GaAsと格子整合する組成を有する化合物半導体にて各々構成された第一導電型クラッド層、活性層及び第二導電型クラッド層がこの順序で積層されたダブルへテロ構造を有するものとして成長される請求項1又は請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記柱状半導体欠陥部をなす前記異質の化合物半導体は、前記発光層部よりもGa又はInの含有比率が高く、かつ、V族元素の主体がPからなる多結晶化合物半導体からなる請求項3記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記透明素子基板としてGaP単結晶が使用される請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記突起除去工程において前記突起状露出部分を機械研削処理により切除する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記突起除去工程において前記突起状露出部分を、挟持治具により挟みつけた状態で折り取ることにより切除する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記突起除去工程において前記突起状露出部分を、レーザー照射により焼き飛ばすことにより除去する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記突起除去工程において前記突起状露出部分を、ウォータージェットにより除去する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項10】
発光層部を有する化合物半導体からなる素子化対象層の第一主表面を部分的に覆う形で光取出側電極が形成される一方、該素子化対象層の第二主表面に透明素子基板が貼り合された構造を有するとともに、該素子化対象層の層厚方向途中位置から前記第二主表面に向けて、該素子化対象層の第二主表面を形成する化合物半導体とは異質の化合物半導体からなる柱状半導体欠陥部が、先端面が前記第二主表面と一致する形態にて形成され、前記透明素子基板の第一主表面が、前記柱状半導体欠陥部の先端面と前記第二主表面の当該先端面に連なる周縁領域との双方に接する形で密着結合されてなることを特徴とする発光素子製造用半導体ウェーハ。
【請求項11】
前記発光層部が、組成式(AlxGa1−x)yIn1−yP(ただし、0≦x≦1,0≦y≦1)にて表される化合物半導体のうち、GaAsと格子整合する組成を有する化合物半導体にて各々構成された第一導電型クラッド層、活性層及び第二導電型クラッド層がこの順序で積層されたダブルへテロ構造を有するものとして形成される請求項10記載の発光素子製造用半導体ウェーハ。
【請求項12】
前記柱状半導体欠陥部をなす前記異質の化合物半導体は、前記発光層部よりもGa及びInの含有比率が高く、かつ、V族元素の主体がPからなる多結晶化合物半導体からなる請求項11記載の発光素子製造用半導体ウェーハ。
【請求項13】
前記透明素子基板がGaP単結晶からなる請求項10ないし請求項12のいずれか1項に記載の発光素子製造用半導体ウェーハ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−299912(P2007−299912A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126253(P2006−126253)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】
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