説明

発光素子用基板および発光装置

【課題】基板の発光素子搭載面に平行するかたちで配設される放熱層を有する発光素子用基板において、十分な放熱性を有するとともに、全ての積層部材が十分な密着性をもって積層された発光素子用基板を提供する。
【解決手段】ガラス粉末とセラミックスフィラーとを含むガラスセラミックス組成物の焼結体からなり、発光素子が搭載される側の面を主面とし、該主面上に配線導体の一部を有する基板本体と、基板本体の主面上に、配線導体の一部とその周囲近傍および該主面の周縁部を除くかたちに形成された放熱層と、放熱層の端縁を含む全体を覆うように形成された絶縁性保護層と、を有する発光素子用基板であって、基板本体の主面上における放熱層の形成面積の占める割合が、基板本体主面上の前記配線導体の一部とその周囲近傍を除く面積に対して、60〜80%であることを特徴とする発光素子用基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子用基板およびこれを用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード素子の高輝度、白色化に伴い、携帯電話や大型液晶TVのバックライト等に発光ダイオード素子を用いた発光装置が使用されている。しかしながら、発光ダイオード素子の高輝度化に伴って発熱量が増加し、その温度が過度に上昇するために、必ずしも十分な発光輝度を得られなくなっている。このため発光ダイオード素子等の発光素子を搭載するための発光素子用基板として、発光素子から発生する熱を速やかに放散することができ、十分な発光輝度を得られるものが求められている。
【0003】
従来、発光素子用基板として、例えばアルミナ基板が用いられている。また、アルミナ基板の熱伝導率が約15〜20W/m・Kと必ずしも高くないことから、より高い熱伝導率を有する窒化アルミニウム基板を用いることも検討されている。
【0004】
しかしながら、窒化アルミニウム基板は、原料コストが高く、また難焼結性であることから高温焼成が必要となり、プロセスコストが高くなりやすい。さらに、窒化アルミニウム基板の熱膨張係数は4×10−6〜5×10−6/℃と小さく、汎用品である9×10−6/℃以上の熱膨張係数を持つプリント基板に実装した場合、熱膨張差により必ずしも十分な接続信頼性を得ることができない。
【0005】
このような問題を解決するために、発光素子用基板として低温同時焼成セラミックス基板(以下、LTCC基板という)を用いることが検討されている。LTCC基板は、例えばガラスとアルミナフィラーとからなるものであり、これらの屈折率差が大きく、またこれらの界面が多く、その厚みが利用する波長よりも大きいことから、高い反射率を得ることができる。これにより、発光素子からの光を効率よく利用し、結果として発熱量を低減することができる。また、光源による劣化の少ない無機酸化物からなるために、長期間に亘って安定した色調を保つことができる。
【0006】
このようなLTCC基板は必ずしも熱伝導率が高くないことから、例えば金属のような高熱伝導材料からなるサーマルビアを設け、熱抵抗を低減させることが知られている。サーマルビアとしては、例えば発光素子より小さいものを複数配置するものや、発光素子と略同等の大きさのものを1つのみ配置するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、特許文献2には、基板上に銀、銀合金等の反射層を備えた構成の発光装置において、この反射層が基板平面方向への放熱に寄与すること、反射層による放熱に加えて基板垂直方向への放熱性を高めるために放熱ビアを設けることが好ましい旨の記載がある。
【0008】
一方、LTCC基板ではないが、発光ダイオード素子からの放熱性を考慮したフレキシブルプリント配線基板において、配線パターンが形成された絶縁基板面の反対側の面に銅箔、アルミ箔などの金属材料からなる放熱層を設ける技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
また、発光素子からの発熱を放散する手段として、発光素子搭載面に平行する放熱層は、サーマルビアに比べて経済的に優位であるが、搭載面に平行する放熱層を有する発光素子用LTCC基板においては、放熱性を高めるために該放熱層の面積を大きく取ろうとすると、この放熱層を保護するために通常設けられる絶縁保護層等の発光素子用基板における接着性が十分保てないという問題があった。さらに、サーマルビアは原価面で不利なだけでなく、平坦性を悪くし発光素子と基板との接着性に悪影響をおよぼす問題点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−41230号公報
【特許文献2】特開2010−34487号公報
【特許文献3】特開2010−10298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、基板の発光素子搭載面に平行する放熱層を有する発光素子用基板において、十分な放熱性を有するとともに、放熱層を保護するために通常設けられる絶縁保護層等を含む全ての積層部材が十分な密着性をもって積層された発光素子用基板の提供を目的とする。また、本発明は、上記発光素子用基板を用いた発光装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発光素子用基板は、ガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第1のガラスセラミックス組成物の焼結体からなり、発光素子が搭載される側の面を主面とし、該主面上に発光素子の電極と外部回路を電気的に接続するための配線導体の一部を有する基板本体と、前記基板本体の主面上に、前記配線導体の一部とその周囲近傍および該主面の周縁部を除くかたちに形成された放熱層と、前記放熱層の端縁を含む全体を覆うように形成された絶縁性保護層と、を有する発光素子用基板であって、前記放熱層の形成面積が、前記基板本体主面の前記配線導体の一部とその周囲近傍を除く面積に対する割合として、60〜80%であることを特徴とする。
【0013】
本発明の発光素子用基板においては、前記放熱層の端縁と、該端縁から最短の位置にある前記基板本体主面の端縁との間の距離が少なくとも50μmであることが好ましい。
また、本発明の発光素子用基板においては、前記放熱層が銀を含む金属材料からなることが好ましく、前記絶縁性保護層がガラスまたはガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第2のガラスセラミックス組成物の焼結体からなることが好ましい。
本発明の発光装置は、上記本発明の発光素子用基板と、前記発光素子用基板に搭載される発光素子とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板の発光素子搭載面に平行する放熱層を有する発光素子用基板において、十分な放熱性を有するとともに、放熱層を保護するために通常設けられる絶縁保護層等を含む全ての積層部材が十分な密着性をもって積層された発光素子用基板を提供することができる。また、本発明によれば、このような発光素子用基板に発光素子を搭載することで、十分な発光輝度を得ることができ、かつ長期使用においても信頼性のある発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の発光素子用基板および発光装置の第1の実施形態の一例を示す平面図および断面図である。
【図2】図1に示す発光素子用基板の製造工程の一部((A)工程)を模式的に示す図である。
【図3】図1に示す発光素子用基板の製造工程の一部((B)工程、(C)工程)を模式的に示す図である。
【図4】本発明の発光素子用基板および発光装置の第2の実施形態の一例を示す平面図および断面図である。
【図5】図4に示す発光素子用基板の製造工程の一部((A)’、(B)’工程)を模式的に示す図である。
【図6】図4に示す発光素子用基板の製造工程の一部((C)’工程、(D)’工程)を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、下記説明に限定して解釈されるものではない。
【0017】
本発明の発光素子用基板は、ガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第1のガラスセラミックス組成物の焼結体からなり、発光素子が搭載される側の面を主面とし、該主面上に発光素子の電極と外部回路を電気的に接続するための配線導体の一部を有する基板本体と、前記基板本体の主面上に、前記配線導体の一部とその周囲近傍および該主面の周縁部を除くかたちに形成された放熱層と、前記放熱層の端縁を含む全体を覆うように形成された絶縁性保護層と、を有する発光素子用基板であって、前記放熱層の形成面積が、前記基板本体主面の前記配線導体の一部とその周囲近傍を除く面積に対する割合として、60〜80%であることを特徴とする。
【0018】
ここで、本明細書において、発光素子用基板が有する上記「配線導体」とは、搭載される発光素子の有する電極からこれを介して外部回路へと電気的に接続されるように設けられた電気配線に係る全ての導体、例えば、発光素子の電極と接続される素子接続端子、基板内に設けられる内層配線(基板内を貫通する貫通導体を含む)、外部回路に接続される外部接続端子等を総称する用語として用いるものである。
【0019】
なお、本発明の発光素子用基板においては、前記基板本体がサーマルビアを有しない構成であることが好ましい。
【0020】
本発明によれば、LTCC基板の発光素子が搭載される側の主面に、前記配線導体の一部とその周囲近傍および該主面の周縁部を除くかたちに形成された放熱層の面積について、そのLTCC基板主面上で占める割合を、前記基板本体主面の前記配線導体の一部とその周囲近傍、すなわちLTCC基板主面の周縁部以外で放熱層が形成されない部分、を除く面積に対して、60〜80%とすることで、これを覆うように形成される絶縁性保護層等とLTCC基板主面の接着面積を十分に確保することが可能となる。これにより、発光素子用基板とした際の各層の密着性が向上され、長期使用における信頼性が高いものとなっている。
【0021】
また、本発明によれば、上記面積割合により広範囲に設けられた放熱層の存在により、製造工程の増加やこれに充填する多量の銀等を必要とするサーマルビアを設けなくとも、発光素子から発熱される熱の十分な放散を可能としたものである。
【0022】
さらに、本発明によれば、この放熱層を絶縁保護する絶縁性保護層の膜厚や材料を適宜選択することで、上記放熱層を発光素子が発光する光を光取り出し側へ反射する反射層として機能することも可能である。これにより、この発光素子用基板に発光素子を搭載し発光装置とした際に、高い光取り出し効率を得ることが可能となる。
【0023】
以下に、絶縁性保護層としてガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第2のガラスセラミックス組成物の焼結体層を用いた場合の本発明の第1の実施形態と、絶縁性保護層として主としてガラス層を用いた場合の本発明の第2の実施形態について説明する。
【0024】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態の発光素子用基板1、およびこれを用いた発光装置10の一例を示す平面図(a)、およびそのX−X線断面図(b)である。
【0025】
本発明の発光素子用基板1は、例えば、図1に示すように2個の発光素子11が電気的に直列に接続されるように搭載されるものである。この発光素子用基板1は、発光素子11がボンディングワイヤ12によって電気的に直列に接続されるとともに、これら発光素子11とボンディングワイヤ12を覆うように封止層13が設けられて発光装置10として用いられる。つまり、図1に示す発光装置10において、発光素子11、ボンディングワイヤ12および封止層13を除く部分が本発明の発光素子用基板1である。
【0026】
なお、ここでは2個の発光素子11が電気的に直列に接続されるように搭載される発光装置および発光装置用基板を例として本発明の第2の実施形態について説明するが、搭載される発光素子の個数や、複数個搭載する場合の直列、並列等の電気的な接続方法等は特に制限されるものではない。以下に説明する個々の部材の構成は、本発明の範囲内において、用いられる発光装置の設計に応じて適宜調整され得るものである。
【0027】
発光素子用基板1は、これを主として構成する略平板状の基板本体2を有している。この基板本体2は、ガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第1のガラスセラミックス組成物の焼結体からなるものである。基板本体2は発光素子用基板とした際に発光素子を搭載する側の面を主面21として有し、本例においてはその反対側の面を裏面22とする。
本明細書において、「略」を付けた表記は、特に断らない限り目視レベルでそう感じるレベルのことをいう。
【0028】
基板本体2は、発光素子の搭載時、その後の使用時における損傷等を抑制する観点から、例えば抗折強度が250MPa以上となることが好ましい。基板本体2の形状、厚さ、大きさ等は特に制限されず、通常、発光素子用基板として用いられるものと同様とできる。
上記基板本体2を構成するガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第1のガラスセラミックス組成物の焼結体としては、例えば、ガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第1のガラスセラミックス組成物にバインダー、必要に応じて可塑剤、分散剤、溶剤等を添加してスラリーを調製し、これをドクターブレード法等により所定の形状のシート状に成形し、乾燥させ、必要に応じて脱脂を行い、800℃以上930℃以下で焼成して得られる焼結体が用いられる。
【0029】
基板本体用ガラス粉末は、必ずしも限定されるものではないものの、ガラス転移点(Tg)が550℃以上700℃以下のものが好ましい。ガラス転移点(Tg)が550℃未満の場合、脱脂が困難となるおそれがあり、700℃を超える場合、収縮開始温度が高くなり、寸法精度が低下するおそれがある。
【0030】
また、800℃以上930℃以下で焼成したときに結晶が析出することが好ましい。結晶が析出しないものの場合、十分な機械的強度を得ることができないおそれがある。さらに、DTA(示差熱分析)により測定される結晶化ピーク温度(Tc)が880℃以下のものが好ましい。結晶化ピーク温度(Tc)が880℃を超える場合、寸法精度が低下するおそれがある。
【0031】
このような基板本体用ガラス粉末としては、例えばSiOを57mol%以上65mol%以下、Bを13mol%以上18mol%以下、CaOを9mol%以上23mol%以下、Alを3mol%以上8mol%以下、KOおよびNaOから選ばれる少なくとも一方を合計で0.5mol%以上6mol%以下含有するものが好ましい。このようなものを用いることで、本体基板表面の平坦度を向上させることが容易となる。
【0032】
ここで、SiOは、ガラスのネットワークフォーマとなる。SiOの含有量が57mol%未満の場合、安定なガラスを得ることが難しく、また化学的耐久性も低下するおそれがある。一方、SiOの含有量が65mol%を超える場合、ガラス溶融温度やガラス転移点(Tg)が過度に高くなるおそれある。SiOの含有量は、好ましくは58mol%以上、より好ましくは59mol%以上、特に好ましくは60mol%以上である。また、SiOの含有量は、好ましくは64mol%以下、より好ましくは63mol%以下である。
【0033】
は、ガラスのネットワークフォーマとなる。Bの含有量が13mol%未満の場合、ガラス溶融温度やガラス転移点(Tg)が過度に高くなるおそれがある。一方、Bの含有量が18mol%を超える場合、安定なガラスを得ることが難しく、また化学的耐久性も低下するおそれがある。Bの含有量は、好ましくは14mol%以上、より好ましくは15mol%以上である。また、Bの含有量は、好ましくは17mol%以下、より好ましくは16mol%以下である。
【0034】
Alは、ガラスの安定性、化学的耐久性、および強度を高めるために添加される。Alの含有量が3mol%未満の場合、ガラスが不安定となるおそれがある。一方、Alの含有量が8mol%を超える場合、ガラス溶融温度やガラス転移点(Tg)が過度に高くなるおそれがある。Alの含有量は、好ましくは4mol%以上、より好ましくは5mol%以上である。また、Alの含有量は、好ましくは7mol%以下、より好ましくは6mol%以下である。
【0035】
CaOは、ガラスの安定性や結晶の析出性を高めると共に、ガラス溶融温度やガラス転移点(Tg)を低下させるために添加される。CaOの含有量が9mol%未満の場合、ガラス溶融温度が過度に高くなるおそれがある。一方、CaOの含有量が23mol%を超える場合、ガラスが不安定となるおそれがある。CaOの含有量は、好ましくは12mol%以上、より好ましくは13mol%以上、特に好ましくは14mol%以上である。また、CaOの含有量は、好ましくは22mol%以下、より好ましくは21mol%以下、特に好ましくは20mol%以下である。
【0036】
O、NaOは、ガラス転移点(Tg)を低下させるために添加される。KOおよびNaOの合計した含有量が0.5mol%未満の場合、ガラス溶融温度やガラス転移点(Tg)が過度に高くなるおそれがある。一方、KOおよびNaOの合計した含有量が6mol%を超える場合、化学的耐久性、特に耐酸性が低下するおそれがあり、電気的絶縁性も低下するおそれがある。KOおよびNaOの合計した含有量は、0.8mol%以上5mol%以下であることが好ましい。
【0037】
なお、基板本体用ガラス粉末は、必ずしも上記成分のみからなるものに限定されず、ガラス転移点(Tg)等の諸特性を満たす範囲で他の成分を含有できる。他の成分を含有する場合、その合計した含有量は10mol%以下であることが好ましい。
【0038】
基板本体用ガラス粉末は、上記したようなガラス組成を有するガラスを溶融法によって製造し、乾式粉砕法や湿式粉砕法によって粉砕することにより得ることができる。湿式粉砕法の場合、溶媒として水を用いることが好ましい。粉砕は、例えばロールミル、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて行うことができる。
【0039】
基板本体用ガラス粉末の50%粒径(D50)は0.5μm以上2μm以下であることが好ましい。基板本体用ガラス粉末の50%粒径が0.5μm未満の場合、ガラス粉末が凝集しやすく、取り扱いが困難となると共に、均一に分散させることが困難となる。一方、基板本体用ガラス粉末の50%粒径が2μmを超える場合、ガラス軟化温度の上昇や焼結不足が発生するおそれがある。粒径の調整は、例えば粉砕後に必要に応じて分級することにより行うことができる。なお、本明細書において、粒径はレーザ回折・散乱法による粒子径測定装置により得られる値をいう。レーザ回折・散乱法による粒子径測定装置としては、島津製作所社製、レーザ回折式粒度分布測定装置(商品名:SALD2100)を使用した。
【0040】
一方、セラミックスフィラーとしては、従来からLTCC基板の製造に用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えばアルミナ粉末、ジルコニア粉末、またはアルミナ粉末とジルコニア粉末との混合物を好適に用いることができる。セラミックスフィラーの50%粒径(D50)は、例えば0.5μm以上4μm以下であることが好ましい。
【0041】
このような基板本体用ガラス粉末とセラミックスフィラーとを、例えば基板本体用ガラス粉末が30質量%以上50質量%以下、セラミックスフィラーが50質量%以上70質量%以下となるように配合、混合することによりガラスセラミックス組成物を得ることができる。また、このガラスセラミックス組成物に、バインダー、必要に応じて可塑剤、分散剤、溶剤等を添加することによりスラリーを得ることができる。
【0042】
バインダーとしては、例えばポリビニルブチラール、アクリル樹脂等を好適に用いることができる。可塑剤としては、例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル等を用いることができる。また、溶剤としては、トルエン、キシレン、2−プロパノール、2−ブタノール等の有機溶剤を好適に用いることができる。
【0043】
基板本体2の裏面22には、外部回路と電気的に接続される一対の外部接続端子6が設けられ、基板本体2の内部に、後述の素子接続端子5と上記外部接続端子6とを電気的に接続する貫通導体7が一対設けられている。貫通導体7は以下に説明する基板本体2の主面上に形成された絶縁性保護層4をさらに貫通するように設けられている。
【0044】
基板本体2の主面21上には、基板本体主面21の周縁部および、上記一対の貫通導体7が配設された部分とその周囲近傍を除くかたちに放熱層3が形成されている。基板本体主面21上には、さらに上記放熱層3の端縁を含む全体を覆うようにガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第2のガラスセラミックス組成物の焼結体からなる絶縁性保護層4が形成されている。
【0045】
ここで、上記基板本体2の内部に設けられた貫通導体7は、さらに絶縁性保護層4の基板本体主面21側の面(以下、「積層面」という)からその反対側の面まで絶縁性保護層4の内部を貫通するかたちに設けられている。絶縁性保護層4は、この貫通導体7の配設部を除く上記基板本体主面21上の全面に上記放熱層3を被覆するように形成されており、上記積層面の反対側の表面(以下、「搭載面」という)に発光素子が搭載される。
【0046】
放熱層3は、サーマルビアを要しない程度の十分な放熱性を有しながら、基板本体2と絶縁性保護層4との密着性を十分に確保するために、基板本体2の主面21上における放熱層3の形成面積の占める割合が、基板本体主面21において周縁部以外で放熱層3が形成されていない領域、すなわち貫通導体7とその周囲近傍、を除く領域の面積に対して、60〜80%となるように設けられる。なお、この放熱層3の形成面積の占める上記割合は、65〜75%であることが好ましく、68〜72%がより好ましい。
【0047】
ここで、上記放熱層3の端縁と貫通導体7との間の距離については、これらが電気的に絶縁される距離であれば特に制限されないが、さらに製造面での不具合の発生等を考慮すると、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましい。
【0048】
また、基板本体2と絶縁性保護層4との密着性を十分に確保する観点から、放熱層3の端縁と、該端縁から最短の位置にある基板本体主面21の端縁との間の距離、例えば、図1(b)においてL1で示される距離は、少なくとも50μmであることが好ましく、
75μm以上であることがより好ましい。この放熱層3の端縁と基板本体主面21の端縁との間の距離の上限については、上記面積の割合が確保されていれば特に制限されず、また、基板本体主面21および放熱層の形状等にもよるが、概ね100μm程度が好ましい。
【0049】
放熱層3を構成する材料としては、熱伝導性を有する材料であれば特に制限されないが、LTCC基板と同時焼成が可能であり光反射性にも優れる銀を含む金属材料を好ましい材料として挙げることができる。銀を含む金属材料として、具体的には、銀、銀と白金、または銀とパラジウムからなる金属材料が挙げられる。銀と白金またはパラジウムからなる金属材料として、具体的には、金属材料全量に対する白金またはパラジウムの割合が5質量%以下の金属材料が挙げられる。本発明においては、これらのうちでも銀のみで構成される放熱層が高い反射率を得られる点から好ましい。
【0050】
また、放熱層3の膜厚については、8〜50μmが好ましく、10〜20μmがより好ましく、13〜16μmが特に好ましい。放熱層3の膜厚が8μm未満では十分な放熱性が得られないおそれがあり、また、50μmを超えると経済的に不利であるとともに製造過程で基板本体との熱膨張差による変形が起こるおそれがある。
【0051】
十分な放熱性を得るために放熱層3の表面、すなわち発光素子を搭載する側の面は平坦性を有することが好ましい。この表面平坦性として具体的には、十分な放熱性を確保しつつ、かつ製造上の容易性の観点から、少なくとも発光素子11が搭載される部分において、表面粗さRaとして、0.15μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。なお、表面粗さRaは算術平均粗さRaのことであり、算術平均粗さRaの値は、JIS:B0601(1994年)の3「定義された算術平均粗さの定義及び表示」によって表されるものである。
【0052】
また、放熱層3は必要に応じて例えば構成材料の異なる層を積層した多層構造とすることも可能である。
【0053】
本発明の第1の実施形態において絶縁性保護層4はガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第2のガラスセラミックス組成物の焼結体からなる。絶縁性保護層4の膜厚は、発光装置の設計にもよるが、十分な絶縁保護の機能を確保しかつ経済性、基板本体との熱膨張差による変形等を考慮すると、5〜150μmであることが好ましく、50〜100μmであることがより好ましい。なお、ここでいう絶縁性保護層4の膜厚とは、上記放熱層3を被覆する絶縁性保護層4の膜厚をいい、図1(b)においてはL2で示される膜厚である。
【0054】
絶縁性保護層4を構成する第2のガラスセラミックス組成物の焼結体は、上記基板本体2と密着性を考慮すると、この基板本体2の構成材料である第1のガラスセラミックス組成物の焼結体と同じであることが好ましいが、発光素子からの光を光取り出し方向に反射する反射性を考慮して、第1のガラスセラミックス組成物とは異なる組成のガラスセラミックス組成物を用いることも可能である。
【0055】
反射性を高めるためのガラスセラミックス組成物としては、例えば、上記基板本体用のガラスセラミックス組成物において、ガラス粉末は同様のものを用い、セラミックスフィラーとして、アルミナ粉末とジルコニア粉末の混合物を用いたガラスセラミックス組成物が好ましい。アルミナ粉末とジルコニア粉末の混合物としては、アルミナ粉末:ジルコニア粉末の混合割合が質量比で90:10〜60:40の混合物が好ましい。また、ガラス粉末とこのセラミックスフィラーの混合割合としては、質量比で30:70〜50:50が好ましい。
なお、このガラスセラミックス組成物を基材本体2を製造する材料として用いてもよい。
【0056】
また、絶縁性保護層4は放熱性を向上させる観点から、発光素子搭載面が平坦であることが好ましい。なお、この表面平坦性として具体的には、十分な放熱性を確保しつつ、かつ製造上の容易性の観点から、少なくとも発光素子11が搭載される部分において、表面粗さRaとして、0.15μm以下であることが好ましく、0.10μm以下であることがより好ましい。
【0057】
絶縁性保護層4を構成する材料であるガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第2のガラスセラミックス組成物の焼結体は、上記表面粗さRaを確保できるものであれば特に制限なく用いられる。具体的には、上記基板本体用のガラスセラミックス組成物において、ペースト作製工程における混練時間を長くすることによりセラミックスフィラーが粉砕され、表面粗さRaを上記範囲とできる。
【0058】
ここで、通常、発光素子用基板において、十分な放熱性を得るためには、発光素子の搭載部の直下に、サーマルビアを配置することが行われている。その際、サーマルビアを配設することにより発生する搭載部の凹凸を抑えるために特別な方法が用いられているが、そのような方法を用いても、凹凸の最高部と最低部との高低差が1μm以下程度にしか抑えられていないのが現状である。
【0059】
本発明においては、上記構成により発光素子搭載部に凹凸を発生させる要因となるサーマルビアを配設しなくとも、十分な放熱性が確保されることから、発光素子搭載部における凹凸の最高部と最低部との高低差は、搭載部以外の表面、本発明においては絶縁性保護層の表面と同等であり、概ね0.5μm以下である。つまり、本発明の構成では、上記サーマルビアを配設する場合に比べて、放熱性は同等でありながら、搭載部の平坦性についてはサーマルビアを配するよりも容易に高い平坦性が得られるものである。
【0060】
発光素子用基板1は、絶縁性保護層4の搭載面中央の円形状部分を底面(以下、「キャビティ底面」という)とするキャビティを構成するように絶縁性保護層4搭載面の周縁部に枠体8を有する。枠体8を構成する材料は、特に限定されないが、基板本体2または絶縁性保護層4を構成する材料と同じものを使用することが好ましい。
【0061】
発光素子用基板1を用いて発光装置10を作製する際には、絶縁性保護層4の搭載面に、図1に示すように上記2個の発光素子11が、キャビティ底面の略中央部に、キャビティ底面中心を通る一直線上にこの2個の発光素子11の中心が並ぶように搭載される。
【0062】
発光素子用基板1においては、絶縁性保護層4の搭載面に、上記2個の発光素子11が有する一対の電極の一方とそれぞれ電気的に接続される素子接続端子5が上記貫通導体7と電気的に接続するように、上記2個の発光素子11の外側となる周辺部、具体的には両側に対向するようにして略長方形状に一対設けられている。
【0063】
ここで、素子接続端子5、外部接続端子6および貫通導体7については、これらが発光素子→素子接続端子5→貫通導体7→外部接続端子6→外部回路と電気的に接続される限りは、その配設される位置や形状は図1に示されるものに限定されず、適宜調整可能である。
【0064】
これら素子接続端子5、外部接続端子6および貫通導体7、すなわち配線導体の構成材料は、通常、発光素子用基板に用いられる配線導体と同様の構成材料であれば特に制限なく使用することが可能である。これら配線導体の構成材料として、具体的には、銅、銀、金等を主成分とする金属材料を挙げることができる。このような金属材料のなかでも、銀、銀と白金、または銀とパラジウムからなる金属材料が好ましく用いられる。
【0065】
なお、素子接続端子5や外部接続端子6においては、これらの金属材料からなる、好ましくは厚さ5〜15μmの金属導体層上にこの層を酸化や硫化から保護しかつ導電性を有する導電性保護層が形成された構成であることが好ましい。導電性保護層としては上記金属導体層を保護する機能を有する導電性材料で構成されていれば、特に制限されないが、金メッキ層が好ましく、ニッケルメッキの上に金メッキを施したニッケル/金メッキ層の構成がより好ましい。導電性保護層の膜厚としては、ニッケルメッキ層が3〜20μm、金メッキ層が0.1〜1.0μmであることが好ましい。
【0066】
以上、本発明の第1の実施形態による発光素子用基板1について説明したが、本発明の第1の実施形態による発光装置10は、このような発光素子用基板1の上記所定の搭載部にシリコーンダイボンド剤等のダイボンド剤により発光ダイオード素子等の発光素子11が2個、電気的に直列に接続されるように搭載されたものである。
【0067】
具体的には、2個の発光素子11が有する一対の電極のうちの外側の一方と、各発光素子11の外側に位置する素子接続端子5とがそれぞれボンディングワイヤ12を介して電気的に接続されている。さらに、2個の発光素子11が有する一対の電極のうちの内側の一方どうしがボンディングワイヤ12を介して電気的に接続されている。また、発光装置10は、発光素子11やボンディングワイヤ12を覆い、キャビティを充填するように封止層13が設けられることにより構成されている。
【0068】
このような本発明の第1の実施形態による発光装置10は、放熱性が良好で構成部材同士が十分に密着された本発明の発光素子用基板を用いることで、十分な発光輝度を得ることができ、かつ長期使用においても信頼性のある発光装置となっている。
【0069】
本発明の第1の実施形態の発光素子用基板は、例えば、以下の(A)工程〜(D)工程を含む製造方法により製造できる。以下に、図1に示す発光装置10の発光素子用基板1を例にして、図2、図3を参照しながら製造方法を説明するが、製造に用いる部材については、完成品の部材と同一の符号を付して説明するものである。
【0070】
(A)グリーンシート作製工程
まず、ガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第1のガラスセラミックス組成物を用いて発光素子用基板の本体基板2を構成する、発光素子を搭載する側の面を主面21とする略平板状の本体用グリーンシート2(図2(3)に平面図(3a)およびそのX−X線断面図(3b)を示す)、ガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第2のガラスセラミックス組成物を用いて発光素子用基板の絶縁性保護層4を構成する、絶縁性保護層用グリーンシート4(図2(2)に平面図(2a)およびそのX−X線断面図(2b)を示す)、および枠体8を構成する枠体用グリーンシート8(図2(1)に平面図(1a)およびそのX−X線断面図(1b)を示す)を作製する。
【0071】
枠体用グリーンシート8は、上記第1のガラスセラミックス組成物からなってもよく、第2のガラスセラミックス組成物からなってもよい。また、上記第1のガラスセラミックス組成物と第2のガラスセラミックス組成物は異なる組成であってもよく、同一の組成であってもよい。ガラスセラミックス組成物の詳細については上述の通りである。
【0072】
これら各グリーンシートは、ガラス粉末とセラミックスフィラーとを含むガラスセラミックス組成物にバインダー、必要に応じて可塑剤、分散剤、溶剤等を添加してスラリーを調製し、これをドクターブレード法等により、焼成後の形状・膜厚が上記本発明の範囲内となるような所定の形状、膜厚のシート状に成形し、乾燥させることで製造できる。
【0073】
(B)導体ペースト層形成工程
上記(A)工程で得られた本体用グリーンシート2および絶縁性保護層グリーンシート4の所定の位置に所定の導体ペースト層を形成する。
【0074】
図3(4)は、導体ペースト層形成後の絶縁性保護層グリーンシート4を示す図((4a)は平面図、(4b)はそのX−X線断面図である)である。絶縁性保護層グリーンシート4には、所定の2箇所に貫通導体7の一部を構成する貫通導体用ペースト層72が形成され、発光素子が搭載される面に貫通導体用ペースト層72を覆うように略長方形状に素子接続端子ペースト層5が形成される。
【0075】
図3(5)は、導体ペースト層形成後の本体用グリーンシート2を示す図((5a)は平面図、(5b)はそのX−X線断面図である)である。
導体ペースト層形成工程においては、本体用グリーンシート2の所定の2箇所に主面21から裏面22に貫通する貫通導体7の一部を構成する貫通導体用ペースト層71、および裏面22に貫通導体用ペースト層71と電気的に接続する外部接続端子用導体ペースト層6を形成する。また、本体用グリーンシート2の主面21上に、本体用グリーンシート2主面21の周縁部および、上記一対の貫通導体71が配設された部分とその周囲近傍を除く領域にスクリーン印刷により、熱伝導性を有する材料、好ましくは銀を含む金属材料を含有する放熱層用ペースト層3を形成する。
【0076】
素子接続端子ペースト層5、外部接続端子用導体ペースト層6、および貫通導体用ペースト層7(具体的には、本体用グリーンシート2に形成される貫通導体用ペースト層71、および絶縁性保護層グリーンシート4に形成される貫通導体用ペースト層72)の形成方法としては、スクリーン印刷法により導体ペーストを塗布、充填する方法が挙げられる。形成される素子接続端子ペースト層5および外部接続端子用導体ペースト層6の膜厚は、最終的に得られる素子接続端子および外部接続端子の膜厚が所定の膜厚となるように調整される。
【0077】
導体ペーストとしては、例えば銅、銀、金等を主成分とする金属粉末に、エチルセルロース等のビヒクル、必要に応じて溶剤等を添加してペースト状としたものを用いることができる。なお、上記金属粉末としては、銀からなる金属粉末、銀と白金またはパラジウムからなる金属粉末が好ましく用いられる。
【0078】
放熱層3形成のためのスクリーン印刷に用いる放熱層用ペーストは、放熱層3を構成する熱伝導性を有する材料、好ましくは銀を含む金属材料を含有するペーストである。このような材料としては、上記の通り、銀、銀パラジウム混合物、銀白金混合物等が挙げられるが、上記の理由により銀が好ましく用いられる。放熱層用ペーストは、このような材料を主成分とする熱伝導性材料粉末に、エチルセルロース等のビヒクル、必要に応じて溶剤等を添加してペースト状としたものを用いることができる。形成される放熱層用ペースト層3の膜厚、面積および形状は、最終的に得られる放熱層3の膜厚が上記所望の膜厚、面積および形状となるように調整される。
【0079】
また、最終的に得られる放熱層3の表面粗さRaを上記好ましい範囲とするために、金属ペーストに含有する金属粉末として粒度分布の少ない粉末を使うことが好ましい。
【0080】
(C)積層工程
上記(B)工程で得られた、導体ペースト層付き本体用グリーンシート2の主面21上に、導体ペースト層付き絶縁性保護層グリーンシート4を素子接続端子ペースト層5が形成された面(発光素子搭載面)を上にして積層する。さらに、その上に上記(A)工程で得られた枠体用グリーンシート8を積層して未焼結発光素子用基板1を得る。
【0081】
(D)焼成工程
上記(C)工程後、得られた未焼結発光素子用基板1について、必要に応じてバインダー等を除去するための脱脂を行い、ガラスセラミックス組成物等を焼結させるための焼成(焼成温度:800〜930℃)を行う。
【0082】
脱脂は、例えば500℃以上600℃以下の温度で1時間以上10時間以下保持することにより行える。脱脂温度が500℃未満もしくは脱脂時間が1時間未満の場合、バインダー等を十分に除去できないおそれがある。一方、脱脂温度は600℃程度、脱脂時間は10時間程度とすれば、十分にバインダー等を除去でき、これを超えるとかえって生産性等が低下するおそれがある。
【0083】
また、焼成は、基体本体の緻密な構造の獲得と生産性を考慮して、800℃〜930℃の温度範囲で適宜時間を調整することで行える。具体的には、850℃以上900℃以下の温度で20分以上60分以下保持することが好ましく、特に860℃以上880℃以下の温度で行うことが好ましい。焼成温度が800℃未満では、基体本体が緻密な構造のものとして得られないおそれがある。一方、焼成温度は930℃を超えると基体本体が変形するなど生産性等が低下するおそれがある。また、上記導体ペーストや反射膜用ペーストとして、銀を主成分とする金属粉末を含有する金属ペーストを用いた場合、焼成温度が880℃を超えると、過度に軟化するために所定の形状を維持できなくなるおそれがある。
【0084】
このようにして、未焼結発光素子用基板1が焼成され発光素子用基板1が得られるが、焼成後、必要に応じて素子接続端子5および外部接続端子6の全体を被覆するように、金メッキ等の通常、発光素子用基板において導体保護用に用いられる導電性保護膜を配設することも可能である。
【0085】
以上、本発明の第1の実施形態の発光素子用基板の製造方法について説明したが、本体用グリーンシート2は必ずしも単一のグリーンシートからなる必要はなく、複数枚のグリーンシートを積層したものであってもよい。また、各部の形成順序等についても、発光素子用基板の製造が可能な限度において適宜変更できる。
【0086】
<第2の実施形態>
以下に本発明の第2の実施形態として絶縁性保護層として主としてガラス層を用いた場合の本発明の第2の実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態の発光素子用基板1、およびこれを用いた発光装置10の一例を示す平面図(a)、およびそのX−X線断面図(b)である。
【0087】
本発明の発光素子用基板1は、例えば、図4に示すように2個の発光素子11が電気的に直列に接続されるように搭載されるものである。この発光素子用基板1は、発光素子11がボンディングワイヤ12によって電気的に直列に接続されるとともに、これら発光素子11とボンディングワイヤ12を覆うように封止層13が設けられて発光装置10として用いられる。つまり、図4に示す発光装置10において、発光素子11、ボンディングワイヤ12および封止層13を除く部分が本発明の発光素子用基板1である。
【0088】
なお、ここでは2個の発光素子11が電気的に直列に接続されるように搭載される発光装置および発光装置用基板を例として本発明の第1の実施形態について説明するが、搭載される発光素子の個数や、複数個搭載する場合の直列、並列等の電気的な接続方法等は特に制限されるものではない。以下に説明する個々の部材の構成は、本発明の範囲内において、用いられる発光装置の設計に応じて適宜調整され得るものである。
【0089】
発光素子用基板1は、これを主として構成する略平板状の基板本体2を有している。この基板本体2は、ガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第1のガラスセラミックス組成物の焼結体からなるものである。基板本体2は発光素子用基板とした際に発光素子を搭載する側の面を主面21として有し、本例においてはその反対側の面を裏面22とする。発光素子用基板1は、基板本体2の主面21中央の円形状部分を底面(以下、「キャビティ底面」という)とするキャビティを構成するように基板本体主面21の周縁部に枠体8を有する。枠体8を構成する材料は、特に限定されないが、基板本体2を構成する材料と同じものを使用することが好ましい。
【0090】
基板本体2は、発光素子の搭載時、その後の使用時における損傷等を抑制する観点から、例えば抗折強度が250MPa以上となることが好ましい。基板本体2、枠体8の形状、厚さ、大きさ等は特に制限されず、通常、発光素子用基板として用いられるものと同様とできる。また、基板本体2を構成するガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第1のガラスセラミックス組成物の焼結体については、上記第1の実施形態の第1のガラスセラミックス組成物の焼結体と同様なものが使用可能である。
【0091】
発光素子用基板1を用いて発光装置10を作製する際には、基板本体2の主面21側には、図4に示すように上記2個の発光素子11が、キャビティ底面の略中央部に、キャビティ底面中心を通る一直線上にこの2個の発光素子11の中心が並ぶように搭載される。
発光素子用基板1においては、基板本体2の主面21上に、上記2個の発光素子11が有する一対の電極の一方とそれぞれ電気的に接続される素子接続端子5が、この2個の発光素子11の外側となる周辺部、具体的には両側に対向するようにして略長方形状に一対設けられている。
【0092】
発光装置10においては、この2個の発光素子11は電気的に直列に接続されている。
具体的には、2個の発光素子11が有する一対の電極のうちの外側の一方と、各発光素子11の外側に位置する素子接続端子5とがそれぞれボンディングワイヤ12を介して電気的に接続されている。さらに、2個の発光素子11が有する一対の電極のうちの内側の一方どうしがボンディングワイヤ12を介して電気的に接続されている。
【0093】
基板本体2の裏面22には、外部回路と電気的に接続される一対の外部接続端子6が設けられ、基板本体2の内部に、上記素子接続端子5と外部接続端子6とを電気的に接続する貫通導体7が一対設けられている。素子接続端子5、外部接続端子6および貫通導体7については、これらが発光素子→素子接続端子5→貫通導体7→外部接続端子6→外部回路と電気的に接続される限りは、その配設される位置や形状は図4に示されるものに限定されず、適宜調整可能である。
【0094】
これら素子接続端子5、外部接続端子6および貫通導体7、すなわち配線導体の構成材料は、通常、発光素子用基板に用いられる配線導体と同様の構成材料であれば特に制限なく使用することが可能であり、上記第1の実施形態において配線導体に用いる構成材料として説明したものと同様のものが使用可能である。また、素子接続端子5、外部接続端子6は上記第1の実施形態と同様、必要に応じて金メッキ等の導電性保護層を有する構成であってもよい。
【0095】
発光素子用基板1の基板本体主面21上には、基板本体主面21上の周縁部および、上記一対の素子接続端子5が配設された部分とその周囲近傍を除くかたちに、熱伝導性の材料、好ましくは銀を含む金属材料からなる放熱層3が形成されている。
【0096】
基板本体主面21上に放熱層3が形成される面積や位置、放熱層3の構成材料、膜厚、表面特性等については上記第1の実施形態の放熱層3と同様とできる。また、放熱層3は必要に応じて例えば構成材料の異なる層を積層した多層構造とすることも可能である。
【0097】
発光素子用基板1の基板本体主面21上には、さらに上記放熱層3の端縁を含む全体を覆うように平坦表面を有する絶縁性保護層としてオーバーコートガラス層4が形成されている。図4に示す例では、放熱層3は、形成面積を大きく取るために、その一部が基板本体2と枠体8の間に及ぶ形で設けられている。この場合、基板本体2と枠体8の間の基板本体主面21上に形成された放熱層3を覆う絶縁性保護層については、枠体8がその機能を有するものである。ただし、枠体8が絶縁性保護層として機能する部分についての平坦表面や膜厚の特性については以下に適合するものでなくてもよい。
【0098】
ここで、基板本体主面21上に設けられた素子接続端子5と放熱層3の絶縁性が確保されている限りにおいてオーバーコートガラス層4の端縁は、素子接続端子5に接していてもよいが、製造面での不具合の発生を考慮して、両者間の距離は75μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。
【0099】
また、放熱層3の端縁とこれを覆うオーバーコートガラス層4の端縁の間の距離については、放熱層3が外部の劣化要因から十分に保護される範囲でできる限り短い距離とすることが好ましい。具体的には、10〜50μmであることが好ましく、20〜30μmであることがより好ましい。この距離が10μm未満では、放熱層3の露出により、放熱層3を構成する銀を含む金属材料の酸化や硫化等が発生して熱伝導性・放熱性が低下するおそれがあり、50μmを超えると結果として放熱層3の配設される領域の面積が減少することで熱伝導性・放熱性が低下することがある。
【0100】
本発明における絶縁性保護層については、その膜厚は、発光装置の設計にもよるが、十分な絶縁保護の機能を確保しかつ経済性、基板本体との熱膨張差による変形等を考慮すると、5〜150μmであることが好ましい。ただし、本例のように絶縁性保護層としてオーバーコートガラス層4を用いる場合のオーバーコートガラス層4の膜厚については、基板本体との熱膨張差による変形等を考慮すると上限は50μm程度が好ましい。
【0101】
絶縁性保護層としてのオーバーコートガラス層4は、その表面が平坦であることが好ましい。オーバーコートガラス層4の表面平坦性として具体的には、十分な放熱性を確保しつつ、かつ製造上の容易性の観点から、少なくとも発光素子11が搭載される部分において、表面粗さRaとして、0.03μm以下であることが好ましく、0.01μm以下であることがより好ましい。なお、オーバーコートガラス膜に関する原料組成は、後述の製造方法において説明する。
【0102】
ここで、通常、発光素子用基板において、十分な放熱性を得るためには、発光素子の搭載部の直下に、サーマルビアを配置することが行われている。その際、サーマルビアを配設することにより発生する搭載部の凹凸を抑えるために特別な方法が用いられているが、そのような方法を用いても、凹凸の最高部と最低部との高低差が1μm以下程度にしか抑えられていないのが現状である。
【0103】
本発明においては、上記構成により発光素子搭載部に凹凸を発生させる要因となるサーマルビアを配設しなくとも、十分な放熱性が確保されることから、発光素子搭載部における凹凸の最高部と最低部との高低差は、搭載部以外の表面、本発明においては絶縁性保護層の表面と同等であり、概ね0.5μm以下である。つまり、本発明の構成では、上記サーマルビアを配設する場合に比べて、放熱性は同等でありながら、搭載部の平坦性についてはサーマルビアを配するよりも容易に高い平坦性が得られるものである。
【0104】
以上、本発明の第2の実施形態による発光素子用基板1について説明したが、本発明の第2の実施形態による発光装置10は、このような発光素子用基板1の搭載部にシリコーンダイボンド剤等のダイボンド剤により発光ダイオード素子等の発光素子11が搭載され、その図示しない電極がボンディングワイヤ12によって素子接続端子5に接続されるとともに、発光素子11やボンディングワイヤ12を覆うように封止層13が設けられることにより構成されている。
【0105】
このような本発明の第2の実施形態による発光装置10は、放熱性が良好で構成部材どうしが十分に密着された本発明の発光素子用基板を用いることで、十分な発光輝度を得ることができ、かつ長期使用においても信頼性のある発光装置となっている。
【0106】
本発明の第2の実施形態の発光素子用基板は、例えば、以下の(A)’工程〜(D)’工程を含む製造方法により製造できる。以下に、図4に示す発光装置10の発光素子用基板1を例にして、図5、図6を参照しながら製造方法を説明するが、製造に用いる部材については、完成品の部材と同一の符号を付して説明するものである。
【0107】
(A)’グリーンシート作製工程
まず、ガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第1のガラスセラミックス組成物を用いて発光素子用基板の本体基板2を構成する、発光素子を搭載する側の面を主面21とする略平板状の本体用グリーンシート2(図5(1)に平面図(1a)およびそのX−X線断面図(1b)を示す)および枠体8(図5(2)に平面図(2a)およびそのX−X線断面図(2b)を示す)を構成する枠体用グリーンシート8を作製する。
本体用グリーンシート2に用いる第1のガラスセラミックス組成物の詳細については、上述の通りである。枠体用グリーンシート8は、上記第1のガラスセラミックス組成物からなってもよく、別の、例えば上記第2のガラスセラミックス組成物からなってもよいが、好ましくは第1のガラスセラミックス組成物を用いて作製される。
【0108】
これら各グリーンシートは、ガラス粉末とセラミックスフィラーとを含むガラスセラミックス組成物にバインダー、必要に応じて可塑剤、分散剤、溶剤等を添加してスラリーを調製し、これをドクターブレード法等により所定の形状のシート状に成形し、乾燥させることで製造できる。
【0109】
(B)’配線導体ペースト層および放熱層用ペースト層形成工程
次いで、このようにして得られたグリーンシート積層体の本体用グリーンシート主面21上の2箇所に素子接続端子ペースト層5、素子接続端子ペースト層5と本体用グリーンシート2の裏面22に形成される外部接続端子用導体ペースト層6を電気的に接続するための貫通導体用ペースト層7、および裏面22に素子接続端子ペースト層5を貫通導体用ペースト層7とこれを介して外部回路と電気的に接続する外部接続端子用導体ペースト層6を所定の大きさ、形状、膜厚で形成する。
【0110】
さらに、本体用グリーンシート2の主面21上の該主面周縁部および素子接続端子ペースト層5とその周囲近傍を除く領域にスクリーン印刷により放熱層用ペースト層3を所定の大きさ、形状、膜厚で形成する。なお、図5(3)は、配線導体ペースト層および放熱層用ペースト層形成後の本体用グリーンシート2を示す図((3a)は平面図、(3b)はそのX−X線断面図である)である。
【0111】
これらの配線導体ペースト層形成に用いられる、素子接続端子ペースト、貫通導体用ペースト、外部接続端子用導体ペースト等の配線導体用ペーストおよび、放熱層用ペースト層形成に用いられる放熱層用ペーストについては、上記第1の実施の形態で説明したのと同様のものを用いることが可能であり、形成方法も同様の方法とすることができる。
【0112】
(C)’グリーンシート積層工程
上記(B)’工程で得られた配線導体ペースト層および放熱層用ペースト層付きの本体用グリーンシート2の主面21上に、放熱層用ペースト層の一部を挟み込む形で上記(A)’工程で得られた枠体用グリーンシート8を積層して、キャビティを有するかたちのグリーンシート積層体を作製する。図6(4)は、このグリーンシート積層体を示す図((4a)は平面図、(4b)はそのX−X線断面図である)である。
(D)’オーバーコートガラスペースト層形成工程
(D)’オーバーコートガラスペースト層形成工程においては、上記(C)’工程で得られたグリーンシート積層体のキャビティ底面、すなわち本体用グリーンシート主面21上に存在する放熱層用ペースト層3の端縁を含む全体を覆いかつ本体用グリーンシート2の主面21上の枠体8積層部および素子接続端子ペースト層5とその周囲近傍を除く、本体用グリーンシート主面21上にスクリーン印刷によりオーバーコートガラスペースト層4が形成される。これにより、未焼結発光素子用基板1が得られる。図6(5)は、このようにして得られた未焼結発光素子用基板1の平面図(5a)とそのX−X線断面図(5b)を示す。
【0113】
オーバーコートガラスペーストは、ガラス粉末(ガラス膜用ガラス粉末)に、エチルセルロース等のビヒクル、必要に応じて溶剤等を添加してペースト状としたものを用いることができる。形成されるオーバーコートガラスペースト層4の膜厚は、最終的に得られるオーバーコートガラス層4の膜厚が上記所望の膜厚となるように調整される。
【0114】
オーバーコートガラス層用ガラス粉末としては、(D)’工程後に次いで行われる(E)’焼成工程における焼成により、膜状のガラスを得られるものであればよく、その50%粒径(D50)は0.5μm以上2μm以下であることが好ましい。また、オーバーコートガラス層4の表面粗さRaの調整は、例えばこのオーバーコートガラス層用ガラス粉末の粒度により行うことができる。すなわち、オーバーコートガラス層用ガラス粉末として、焼成時に十分に溶融し、流動性に優れる、上記50%粒径(D50)の範囲のものを用いることで、表面粗さRaを上記好ましい範囲に調整することが可能である。
【0115】
(E)’焼成工程
上記(D)’工程後、得られた未焼結発光素子用基板1について、必要に応じてバインダー等を除去するための脱脂を行い、ガラスセラミックス組成物等を焼結させるための焼成を行う。この焼成工程は、上記第1の実施形態の発光素子用基板の製造方法における(D)焼成工程と全く同様とできる。
【0116】
このようにして、未焼結発光素子用基板1が焼成され発光素子用基板1が得られるが、焼成後、必要に応じて素子接続端子5および外部接続端子6の全体を被覆するように、金メッキ等の通常、発光素子用基板において導体保護用に用いられる導電性保護膜を配設することも可能である。
【0117】
以上、本発明の第2の実施形態の発光素子用基板の製造方法について説明したが、本体用グリーンシート2は必ずしも単一のグリーンシートからなる必要はなく、複数枚のグリーンシートを積層したものであってもよい。また、各部の形成順序等についても、発光素子用基板の製造が可能な限度において適宜変更できる。
【0118】
以上、絶縁性保護層としてガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第2のガラスセラミックス組成物の焼結体層を用いた場合の本発明の第1の実施形態と、絶縁性保護層として主としてガラス層を用いた場合の本発明の第2の実施形態について、それぞれ発光素子用基板およびこれを用いた発光装置における一例を挙げて説明したが、本発明の発光素子用基板および発光装置はこれらに限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない限度において、また必要に応じて、その構成を適宜変更できる。
【0119】
本発明の発光素子用基板によれば、サーマルビアのような製造工程の増加やこれに充填する多量の銀等を必要とする放熱部材を有しなくとも、発光素子から発熱される熱の放散が十分に可能であるとともに、全ての積層部材が十分な密着性をもって積層されたものである。
【0120】
また、本発明の発光装置によれば、放熱性が良好で構成部材どうしが十分に密着された本発明の発光素子用基板を用いることで、長期使用においても信頼性をもって、発光素子の過度な温度上昇を抑制し、高輝度に発光させることができる。このような本発明の発光装置は、例えば携帯電話や大型液晶ディスプレイ等のバックライト、自動車用あるいは装飾用の照明、その他の光源として好適に用いることができる。
【実施例】
【0121】
以下に、本発明の実施例を説明する。なお本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
以下に説明する方法で、図1に示すのと同様の構造の試験用発光装置を作製した。なお、上記同様、焼成の前後で部材に用いる符号は同じものを用いた。
【0122】
まず、発光素子搭載用基板1の本体基板2、絶縁性保護層4および枠体8を作製するための本体用グリーンシート2、絶縁性保護層グリーンシート4、枠体用グリーンシート8を作製した。各グリーンシートは、SiOが60.4mol%、Bが15.6mol%、Alが6mol%、CaOが15mol%、KOが1mol%、NaOが2mol%となるように原料を配合、混合し、この原料混合物を白金ルツボに入れて1600℃で60分間溶融させた後、この溶融状態のガラスを流し出し冷却した。このガラスをアルミナ製ボールミルにより40時間粉砕して基板本体用ガラス粉末を製造した。
なお、粉砕時の溶媒にはエチルアルコールを用いた。
【0123】
この基板本体用ガラス粉末が35質量%、アルミナフィラー(昭和電工社製、商品名:AL−45H)40質量%、ジルコニアフィラー(第一稀元素化学工業社製、商品名:HSY−3F−J)25質量%となるように配合し、混合することによりガラスセラミックス組成物を製造した。このガラスセラミックス組成物50gに、有機溶剤(トルエン、キシレン、2−プロパノール、2−ブタノールを質量比4:2:2:1で混合したもの)15g、可塑剤(フタル酸ジ−2−エチルヘキシル)2.5g、バインダーとしてのポリビニルブチラール(デンカ社製、商品名:PVK#3000K)5g、さらに分散剤(ビックケミー社製、商品名:BYK180)0.5gを配合し、混合してスラリーを調製した。
【0124】
このスラリーをPETフィルム上にドクターブレード法により塗布し、乾燥させたグリーンシートを積層して、略平板状であって焼成後の厚さが0.2mmとなる本体用グリーンシート2、略平板状であって焼成後の膜厚(放熱層被覆部の膜厚:図1(b)においてL1で示される)が0.1mmとなる絶縁性保護層グリーンシート4、枠外の形状が本体用グリーンシート2と同様であり、枠内の形状が直径4.3mmの円形状あって、焼成後の枠高さが0.5mmである枠体用グリーンシート8を製造した。
【0125】
一方、導電性粉末(大研化学工業社製、商品名:S550)、ビヒクルとしてのエチルセルロースを質量比85:15の割合で配合し、固形分が85質量%となるように溶剤としてのαテレピネオールに分散した後、磁器乳鉢中で1時間混練を行い、さらに三本ロールにて3回分散を行って配線導体用ペーストを製造した。
【0126】
また、放熱層用ペーストは、銀粉末(大研化学工業社製、商品名:S400−2)と、ビヒクルとしてのエチルセルロースとを質量比90:10の割合で配合し、固形分が87質量%となるように溶剤としてのαテレピネオールに分散した後、磁器乳鉢中で1時間混練を行い、さらに三本ロールにて3回分散を行って製造した。
【0127】
本体用グリーンシート2の貫通導体7に相当する部分に孔空け機を用いて直径0.3mmの貫通孔を形成し、スクリーン印刷法により配線導体用ペーストを充填して貫通導体ペースト層71を形成するとともに、裏面22に外部接続端子導体ペースト層6を形成した。さらに、本体用グリーンシート2の主面21上には、本体用グリーンシート2主面21の周縁部および、上記一対の貫通導体7が配設された部分とその周囲近傍を除く領域にスクリーン印刷により、放熱層用ペースト層3を焼成後の膜厚が15μmとなるように形成して導体ペースト層付き本体用グリーンシート2を得た。また、焼成後の放熱層3の表面粗さRaは、東京精密社製サーフコム1400Dによる測定から0.08μmであることが確認された。
【0128】
なお、本体用グリーンシート2の主面21上における、放熱層用ペースト層3の形成面積は、焼成後に、放熱層3の形成面積が、基板本体主面の配線導体の一部とその周囲近傍を除く面積に対する割合として70%となる面積であった。また、上記放熱層用ペースト層3は、焼成後に、放熱層3の端縁と該端縁から最短の位置にある基板本体主面21の端縁との間の距離が最も短い部分で75μmとなるように形成された。
【0129】
絶縁性保護層グリーンシート4には、貫通導体7に相当する部分に孔空け機を用いて直径0.3mmの貫通孔を形成し、スクリーン印刷法により配線導体用ペーストを充填して貫通導体ペースト層72を形成するとともに、発光素子が搭載される面に貫通導体用ペースト層72を覆うように略長方形状に素子接続端子ペースト層5をスクリーン印刷法により形成して導体ペースト層付き絶縁性保護層グリーンシート4を得た。
【0130】
上記で得られた、導体ペースト層付き本体用グリーンシート2の主面21上に、導体ペースト層付き絶縁性保護層グリーンシート4を素子接続端子ペースト層5が形成された面(発光素子搭載面)を上にして積層した。さらに、その上に上記で得られた枠体用グリーンシート8を積層して未焼結発光素子用基板1を得た。
【0131】
上記で得られた未焼成発光素子搭載用基板1を、550℃で5時間保持して脱脂を行い、さらに870℃で30分間保持して焼成を行って試験用の発光素子搭載用基板1を製造した。得られた発光素子搭載用基板1における絶縁保護層4表面の表面粗さRaは、東京精密社製サーフコム1400Dによる測定から0.01μmであることが確認された。
【0132】
上記で作製した試験用の発光素子搭載用基板1に2個の2ワイヤタイプの発光ダイオード素子を、絶縁性保護層4の搭載面上の一対の素子接続端子5の間に搭載して発光装置10を作製した。具体的には、発光ダイオード素子11(昭和電工社製、商品名:GQ2CR460Z)をダイボンド材(信越化学工業社製、商品名:KER−3000−M2)により上記の位置に固定し、2個の発光素子11が有する一対の電極のうちの外側の一方と、各発光素子11の外側に位置する素子接続端子5とをそれぞれボンディングワイヤ12を介して電気的に接続した。さらに、2個の発光素子11が有する一対の電極のうちの内側の一方どうしをボンディングワイヤ12を介して電気的に接続した。
【0133】
さらに封止剤(信越化学工業社製、商品名:SCR−1016A)を用いて図1に示す封止層13を構成するように封止した。封止剤には蛍光体(化成オプトニクス社製、商品名P46−Y3)を封止剤に対して20質量%含有したものを用いた。
【0134】
[比較例]
上記実施例1において、放熱層3の形成面積を、基板本体主面の配線導体の一部とその周囲近傍を除く面積に対する割合として90%となる面積とした以外は、全て実施例1と同様にして、従来の構成の発光装置を比較例として作製した。なお、上記面積割合で形成された放熱層3の端縁と該端縁から最短の位置にある基板本体主面21の端縁との間の距離は、最も短い部分で20μmとなっていた。
【0135】
<評価>
上記実施例1および比較例で得られた発光装置について、以下の方法で全光束量、発光素子搭載用基板の熱抵抗および密着度を測定した。
【0136】
[全光束量]
発光装置の全光束量測定は、LED全光束測定装置(スペクトラコープ社製、商品名:SOLIDLAMBDA・CCD・LED・MONITOR・PLUS)を用いて行った。積分球は6インチ、電圧/電流発生器としてはアドバンテスト社製R6243を用いた。また、LED素子には35mAを印加して測定した。
【0137】
[熱抵抗]
発光装置における発光素子搭載用基板の熱抵抗を、熱抵抗測定器(嶺光音電機社製、商品名:TH−2167)を用いて測定した。なお、印加電流は35mAとし、電圧降下が飽和する時間まで通電し、降下した電圧と発光ダイオード素子の温度−電圧降下特性から導かれる温度係数によって飽和温度を算出し、熱抵抗を求めた。
【0138】
[密着度]
発光素子搭載用基板の本体基板と絶縁性保護層との層間における密着性を評価するために、高精度強度試験機(西進商事製ボンドテスター:型式SS−30WD)により図1に示す本体基板主面21と絶縁性保護層4の積層面との界面部分の引き剥がし試験を行い、密着している部分の面積を20倍の実体顕微鏡により測定し「密着度」とした。
【0139】
結果を表1に示す。なお、結果は比較例の従来の発光装置における全光束量、熱抵抗および密着度を100%とした時の百分率で示した。
【0140】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の発光素子用基板によれば、サーマルビアのような製造工程の増加やこれに充填する多量の銀等を必要とする放熱部材を有しなくとも、発光素子から発熱される熱の放散が十分に可能であるとともに、全ての積層部材が十分な密着性をもって積層されており、発光装置とした際に、長期使用においても信頼性をもって、発光素子の過度な温度上昇を抑制し、高輝度に発光させることができる。このような発光素子用基板を用いた本発明の発光装置は、例えば携帯電話や大型液晶ディスプレイ等のバックライト、自動車用あるいは装飾用の照明、その他の光源として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0142】
1…発光素子用基板、2…基板本体、3…放熱層、4…絶縁性保護層、5…素子接続端子、6…外部接続端子、7…貫通導体、8…枠体
10…発光装置、11…発光素子、12…ボンディングワイヤ、13…封止層
21…基板本体主面、22…基板本体裏面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第1のガラスセラミックス組成物の焼結体からなり、発光素子が搭載される側の面を主面とし、該主面上に発光素子の電極と外部回路を電気的に接続するための配線導体の一部を有する基板本体と、前記基板本体の主面上に、前記配線導体の一部とその周囲近傍および該主面の周縁部を除くかたちに形成された放熱層と、前記放熱層の端縁を含む全体を覆うように形成された絶縁性保護層と、を有する発光素子用基板であって、
前記放熱層の形成面積が、前記基板本体主面の前記配線導体の一部とその周囲近傍を除く面積に対する割合として、60〜80%であることを特徴とする発光素子用基板。
【請求項2】
前記放熱層の端縁と、該端縁から最短の位置にある前記基板本体主面の端縁との間の距離が少なくとも50μmである請求項1に記載の発光素子用基板。
【請求項3】
前記放熱層が銀を含む金属材料からなる請求項1または2に記載の発光素子用基板。
【請求項4】
前記絶縁性保護層がガラスまたはガラス粉末とセラミックスフィラーとを含む第2のガラスセラミックス組成物の焼結体からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光素子用基板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光素子用基板と、
前記発光素子用基板に搭載される発光素子と
を有することを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−228652(P2011−228652A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65799(P2011−65799)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】