発光素子
【課題】 光取出し効率を向上させることが可能な発光素子を提供する。
【解決手段】 本発明の発光素子1は、上面2a’を持つ複数の突起2aを主面2Aに有する単結晶基板2と、単結晶基板2上に形成された、複数の半導体層3a〜3cから成る光半導体層3とを備え、突起2aは、上面2a’の一部に凹部4を有しており、光半導体層3は、最下層に位置する半導体層3aが突起2aの上面2a’に接しているとともに凹部4を埋めている。これにより、光半導体層3で発生した光が、凹部4内に入射した場合に、光半導体層3と単結晶基板2との界面で光半導体層3側に反射されにくくすることができ、光取出し効率を向上させることができる。
【解決手段】 本発明の発光素子1は、上面2a’を持つ複数の突起2aを主面2Aに有する単結晶基板2と、単結晶基板2上に形成された、複数の半導体層3a〜3cから成る光半導体層3とを備え、突起2aは、上面2a’の一部に凹部4を有しており、光半導体層3は、最下層に位置する半導体層3aが突起2aの上面2a’に接しているとともに凹部4を埋めている。これにより、光半導体層3で発生した光が、凹部4内に入射した場合に、光半導体層3と単結晶基板2との界面で光半導体層3側に反射されにくくすることができ、光取出し効率を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、発光素子または受光素子として、基板上に半導体層を積層した半導体基板が用いられている。特に、発光素子や受光素子に用いられる半導体層を基板上に結晶成長させる場合には、半導体層の結晶品質を向上させる必要があった。
【0003】
そこで、基板上に半導体層を結晶成長させる技術として、例えば、基板上に複数の突起を設けることによって、基板上に成長させる半導体層の結晶性を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−164296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の突起上に半導体層を結晶成長させた場合は、該半導体層で発生した光が複数の突起の上面と半導体層との界面で半導体層側に反射され、光取出し効率の低下を引き起こすおそれがあった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光取出し効率を向上させることが可能な発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態にかかる発光素子は、上面を持つ複数の突起を主面に有する単結晶基板と、該単結晶基板上に形成された、複数の半導体層から成る光半導体層とを備え、前記突起は、前記上面の一部に凹部を有しており、前記光半導体層は、最下層に位置する前記半導体層が前記突起の前記上面に接しているとともに前記凹部を埋めている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態にかかる発光素子によれば、凹部が形成された突起を複数有する単結晶基板上に光半導体層を備えていることから、光半導体層で発生した光が光半導体層から単結晶基板に入射する際に、光半導体層側に反射されにくくすることができるので、発光素子の光取出し効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態にかかる発光素子を示す斜視図である。
【図2】図1の発光素子の断面を示す断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【図3】図1の発光素子の断面を示す断面図であり、突起、光半導体層およびその周辺を拡大した拡大図である。
【図4】図1に示す発光素子の変形例であり、突起、光半導体層およびその周辺の断面を拡大した拡大断面図である。
【図5】図1に示す発光素子の変形例の断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【図6】図1に示す発光素子の変形例の断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【図7】図1に示す発光素子の変形例の断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【図8】(a)〜(d)はそれぞれ本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造方法の一例の一工程を示す断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面にする。
【図9】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造方法の一例の一工程を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造方法の変形例の一例の一工程を示す断面図である。
【図11】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造方法の変形例の一例の一工程を示す断面図である。
【図12】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造方法の変形例の一例の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態の例について図を参照しながら説明する。
【0011】
なお、本発明は以下の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を施すことができる。
【0012】
<発光素子>
図1は本発明の実施の形態の一例の発光素子1の斜視図であり、図2は図1に示す発光素子1の断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【0013】
発光素子1は、図1および図2に示すように、単結晶基板2および光半導体層3を有する。本例において、発光素子1の外部は、屈折率が例えば1の空気に設定されている。
【0014】
単結晶基板2は、光半導体層3を結晶成長させることが可能な材料から構成されている。単結晶基板2としては、例えばサファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、シリコンカーバイドまたはシリコンなどを用いることができる。単結晶基板2の厚みとしては、例えば1μm以上1500μm以下程度である。なお、単結晶基板2の厚みは、単結晶基板2の下面である第2主面2Bから突起2aの上面(以下、突起上面という)2a’までの厚みを指す。
【0015】
本例のように、光半導体層3で発光した光を、単結晶基板2側から取り出す場合には、単結晶基板2として光半導体層3で発光した光を透過しやすい透光性の基材が用いられる。透光性の基材としては、光半導体層3で発光した光の波長に対して、例えば60%以上の透過率を有するものを用いればよい。
【0016】
単結晶基板2として用いられる透光性の基材としては、後述する発光層3bの構成を用いた場合であれば、例えばサファイア、窒化ガリウム、酸化亜鉛または二ホウ化ジルコニウムなどを単結晶基板2として用いることができる。
【0017】
本例において、単結晶基板2は、光半導体層3で発光した光を透過しやすい透光性の材料であるサファイアにより形成されている。単結晶基板2としてサファイアを用いた場合には、結晶を成長させる結晶成長面として、例えばA面、C面またはR面などを用いることができる。
【0018】
単結晶基板2は、主面のうち上面である第1主面2A上に突起2aを複数有している。
突起2aは、第1主面2Aから遠ざかる位置に突起上面2a’を有している。
【0019】
突起2aは、例えば単結晶基板2を加工することにより、単結晶基板2と一体的に設けられている。突起2aの突起上面2a’は、単結晶基板2の第1主面2Aからの距離が最も遠い位置にある面を指す。突起2aは、単結晶基板2の第1主面2Aから突起上面2a’までの高さが、例えば0.2μm以上5μm以下に設定されている。突起2aの幅は、例えば0.5μm以上10μm以下に設定されている。突起2aは、突起上面2a’の面積が、単結晶基板2の第1主面2Aの面積に対して、例えば30%以上90%以下となるように設定されている。
【0020】
突起2aの突起上面2a’は、単結晶基板2の結晶成長面となるように設定されている。突起2aの突起上面2a’の平坦性は、表面粗さが、例えば10nm以下に設定されている。突起2aの突起上面2a’の表面粗さとしては、JIS B0601−2001に準拠した最大高さ粗さRzを用いればよい。表面粗さを測定する方法としては、例えばJIS B0601−2001およびJIS B0633−2001に準拠した方法に則って、触針式表面粗さ測定機を用いることができる。また、JIS R1683−2007に準拠した方法に則って、原子間力顕微鏡を用いて突起2aの突起上面2a’の表面粗さを測定してもよい。
【0021】
また、突起2aの突起上面2a’は、単結晶基板2の第1主面2Aに対して傾斜していてもよい。この場合は、突起2aの突起上面2a’の傾斜角は単結晶基板2の第1主面2Aに対して、単結晶基板2のオフ角である例えば0°以上2°以下の角度に設定される。
【0022】
突起2aとしては、突起上面2a’を有する形状であればよく、例えば、四角柱状または六角柱状などの多角柱状または円柱状などのものを用いることができる。本例においては、突起2aは円柱状となるように設けられている。
【0023】
突起2aとしては、側面が単結晶基板2の第1主面2Aに対して傾斜した形状であってもよい。傾斜した側面を持つ突起2aとしては、例えば四角錐台状または六角錐台状などの多角錐台状または円錐台状などのものを用いることができる。この場合には、光半導体層3で発光した光を、光半導体層3と突起2aの側面との界面で光半導体層3側に反射されにくくすることができるため、単結晶基板2に入射しやすくすることができる。その結果、発光素子1の光取出し効率を向上させることができる。
【0024】
突起2aは、突起上面2a’の一部に凹部4を有している。凹部4は、突起2aの突起上面2a’の一部に設けられていればよい。凹部4は、平面視したときの平面視形状が、例えば四角形状などの多角形状または円形状などに形成されている。突起2aを平面視した際に、突起2aの突起上面2a’に対して、凹部4が占める割合は、例えば20%以上80%以下に設定されている。
【0025】
凹部4は、底面4Aを有している。突起2aの突起上面2a’から凹部4の底面4Aまでの深さは、例えば0.1μm以上3μm以下に設定されている。凹部4の底面4Aの面積は、凹部4の開口部4Bが占める面積と同じか、または凹部4の開口部4Bが占める面積よりも小さくなるように設けられている。
【0026】
凹部4は、断面視したときに、凹部4と開口部4Bとで囲まれる領域が、例えば、三角形状または四角形状などの多角形状に形成されている。なお、凹部4は、その内壁面から第1半導体層3aが結晶成長するように設定されていればよい。そのため、凹部4の断面視形状は、下方に湾曲した曲面形状であってもよい。
【0027】
単結晶基板2上には、図2に示すように、光半導体層3が設けられている。光半導体層
3は、複数の突起2aの突起上面2aに結晶成長させた半導体層(図2に示す例では第1半導体層3a)を含んでいる。また、光半導体層3は、第1半導体層3a、発光層3bおよび第2半導体層3cを順次積層することによって構成されている。光半導体層3は、全体の厚みを例えば0.8μm以上10μm以下に設定されている。
【0028】
光半導体層3は、例えば、複数の突起2aを持つ単結晶基板2に、複数の半導体層を結晶成長させることによって設けられている。本例では、複数の半導体層として、第1半導体層3a、発光層3bおよび第2半導体層3cを用いた場合について説明する。
【0029】
光半導体層3としては、例えばIII−V族半導体を用いることができる。III−V族半導体としては、III族窒化物半導体であるガリウム燐またはガリウムヒ素などを例示することができる。III族窒化物半導体としては、ボロン、アルミニウム、ガリウムまたはインジウムのうち少なくとも1つの窒化物からなる混晶を用いることができ、例えば窒化ガリウムを用いることができる。本例においては、光半導体層3として窒化ガリウムを用いており、光半導体層3の各層は、屈折率が、例えば1.8以上2.7以下に設定される。
【0030】
第1半導体層3aは、厚みが0.3μm以上8μm以下に設定されている。光半導体層3のうち最下層に位置する第1半導体層3aは、突起2aの突起上面2a’に接し、凹部4を埋めるように設けられている。
【0031】
凹部4内に位置する第1半導体層3aは、凹部4の底面4Aまたは凹部4の側面4Bと接していればよい。そのため、凹部4内に位置する第1半導体層3aは、凹部4を隙間なく埋めていてもよいし、凹部4と第1半導体層3aとの間の一部に空隙を有していてもよい。凹部4と第1半導体層3aとの間の一部に空隙を有する場合は、空隙によって凹部4と第1半導体層3aとが接しない領域が、凹部4の底面4Aおよび側面4Cの面積に対して、例えば0.1%以上20%以下となるように設定されている。
【0032】
発光層3bは、第1半導体層3aに設けられている。発光層3bは、禁制帯幅の広い障壁層と禁制帯幅の狭い井戸層とからなる量子井戸構造が複数回繰り返し規則的に積層された、多層量子井戸構造(MQW:Multiple Quantum Well)を用いることができる。障壁層および井戸層としては、アルミニウム、インジウムおよびガリウムのうち少なくとも一方を含む窒化物からなる混晶においてインジウムとガリウムとの組成比を調整したものを用いることができる。このように構成された発光層3bは、例えば350nm以上600nm以下の波長の光を発光することができる。
【0033】
第2半導体層3cは、発光層3b上に設けられている。第2半導体層3cは、電子または正孔のどちらかを多数キャリアとすることによって、第1半導体層3aとは逆導電型を示すように設定されている。第2半導体層3cに第1半導体層3aとは逆導電型を付与する方法としては、例えばマグネシウム、亜鉛またはシリコンを不純物として添加する方法を用いることができる。
【0034】
第1電極層5は第1半導体層3aに、第2電極層6は第2半導体層3cに、それぞれ設けられている。第1電極層5および第2電極層6によって、光半導体層3に電圧が印加される。
【0035】
第1電極層5および第2電極層6の材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、インジウム、錫、モリブデン、銀、金、タンタルまたは白金などの金属、あるいは酸化錫、酸化インジウムまたは酸化インジウム錫などの酸化物、あるいは銀−アルミニウム合金、金−亜鉛合金または金−ベリリウム合金などの合金膜を用いることができる。第1電極層5および第2電極層6として、それぞれ前述した材質の中から選択し
た層を複数回積層して設けてもよい。
【0036】
本例においては、光半導体層3の発光層3bで発生した光を第1半導体層3a側から取り出すことから、第2電極層6として反射性電極材料を用いてもよい。第2電極層6として反射性電極材料を用いた場合には、発光層3bで発生した光が第2半導体層3cに入射した場合に第1半導体層3a側に反射しやすくすることができ、光取出し効率を向上させることができる。
【0037】
本例において、第1半導体層3aは、図3に示すように、凹部4を有する突起2aの突起上面2a’に形成されている。さらに、第1半導体層3aは、かかる凹部4内が埋まるように配置されている。そのため、光半導体層3で発生した光の一部は、凹部4内に位置する第1半導体層3aに進むようになる。
【0038】
そして、凹部4内に位置する第1半導体層3aに入射した光は、凹部4の側面4Cまたは凹部4の底面4Aから単結晶基板2に入射するようになる。このように凹部4が側面4Cを有することにより、光半導体層3で発生した光が単結晶基板2に入射されやすくなる。また、光半導体層3で発生した光が、凹部4の側面4Cで全反射された場合でも、凹部4の底面4Aの方向に進みやすくすることができることから、凹部4の底面4Aから単結晶基板2に入射されやすくすることができる。
【0039】
このように光半導体層3で発生した光を、突起2aの凹部4から単結晶基板2に入射させやすくすることができるため、光半導体層3と単結晶基板2との間で光半導体層3側に反射されにくくすることができ、発光素子1の光取出し効率を向上させることができる。
【0040】
(変形例1)
凹部4は、図4に示すように、上方に向かうにつれて、突起上面2a’に対して平行な断面積が底面4Aの面積よりも大きくなっていてもよい。凹部4は、底面4Aから上方に向かうにつれて、次第に大きくなっている。この場合、凹部4は、底面4Aの面積に対して、開口部4Bの面積が例えば0.5%以上10%以下の範囲で大きくなっている。このように凹部4が形成された場合には、凹部4の断面視形状が台形状となっており、凹部4の側面4Cが、底面4Aに対して上方に向かって広がるように傾斜するようになる。なお、凹部4は、底面4Aの面積から上方に向かう断面積が段階的に大きくなっていてもよい。
【0041】
凹部4の側面4Cを底面4Aに対して傾斜させることにより、光半導体層3で発生した光が、凹部4の側面4Cに入射する際に臨界角よりも大きい角度で入射しやすくすることができるため、凹部4の側面4Cで光半導体層3側に反射されにくくすることができる。また、凹部4の側面4Cが底面4Aに対して傾斜していることから、単結晶基板2上に第1半導体層3aを結晶成長させる際に、被覆性が良好となるように第1半導体層3aで凹部4を埋めることができる。
【0042】
(変形例2)
凹部4は、図3に示すように、底面4Aが単結晶基板2の第1主面2Aに対して、第1主面2Aよりも上方に位置している。すなわち、突起2aの高さよりも凹部4の深さが小さくなるように設定されている。このように凹部4の底面4Aが、単結晶基板2の第1主面2Aよりも上方に位置するように配置されているときには、凹部4の底面4Aまで第1半導体層3aを埋めやすくすることができる。
【0043】
(変形例3)
光半導体層3は、図5に示すように、第1半導体層3aが単結晶基板2の第1主面2Aに接していてもよい。このように、第1半導体層3aが単結晶基板2の第1主面2Aと接
するように設けられているときには、光半導体層3で発生した光が、単結晶基板2の第1主面2Aと第1半導体層3aとの界面で光半導体層3側に反射されにくくすることができる。
【0044】
(変形例4)
単結晶基板2は、図6に示すように、複数の突起2aの間の第1主面2Aに第2凹部7を有していてもよい。第2凹部7は、断面視形状は、凹部4と同じ形状とすることができる。第2凹部7は、平面視したときの寸法が、例えば0.2μm以上10μm以下となるように設定することができる。このような第2凹部7は、単結晶基板2の第1主面2Aの面積(突起2aを除いた面積)に対して、開口部の合計の面積が例えば1%以上30%以下となるように配置されている。
【0045】
このように単結晶基板2の第1主面2Aが第2凹部7を有している場合には、第1半導体層3aが第2凹部7を埋めるように配置されているとよい。このように単結晶基板2の第1主面2Aに第2凹部7が設けられ、かかる第2凹部7を第1半導体層3aが埋めていることにより、光半導体層3で発生した光が、第1半導体層3aと単結晶基板2の第1主面2Aとの界面で光半導体層3側にさらに反射されにくくすることができる。
【0046】
(変形例5)
光半導体層3は、図7に示すように、第1半導体層3a内に転位8を有していてもよい。転位8は、下端が突起2aの突起上面2a’に位置するとともに上端が平面透視して突起2aと重ならない領域に位置している。転位8は、第1半導体層3aを単結晶基板2上に結晶成長させた場合に発生しやすくなる。このような転位8は、光半導体層3を横方向に結晶成長させることにより、発生する位置を制御することができる。
【0047】
このような転位8は、結晶成長させる第1半導体層3aを始めとする半導体層の結晶面に、意図しない結晶面または原子ステップが発生することによって生じやすくなり、例えば刃状転位またはらせん状転位などの種類がある。転位8は、第1半導体層3aと単結晶基板2との間で格子定数が異なることに起因して、第1半導体層3aと単結晶基板2との界面で起こりやすくなる。
【0048】
転位8が光半導体層3内に配置されている場合には、平面透視して、突起2aと重なる領域の光半導体層3から強い発光強度で発光しやすくなる。そのため、突起2aと重なる領域の光半導体層3で発生した光は、突起2aの凹部4内に入射しやすくなり、さらに光取出し効率を向上させることができる。
【0049】
このように転位8の発生する位置を制御することにより、光半導体層3で発生する光の強度が強くなりやすい位置を制御することができ、突起2aに凹部4を設けていない場合と比較して、発光素子1の光取出し効率をさらに向上させることができる。
【0050】
<発光素子の製造方法>
図8−図12は、それぞれ発光素子1の製造工程を示す断面図であり、いずれも図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。上述した発光素子1と重複する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0051】
続いて、本発明の実施の形態の発光素子1の製造方法を説明する。本発明の実施の形態の発光素子1に係る製造方法は、単結晶基板を準備する工程、光半導体層を成長させる工程を有している。
【0052】
(単結晶基板を準備する工程)
単結晶基板2の第1主面2Aに、突起2aを複数形成する方法を、図8(a)〜(d)を参考にしつつ説明する。
【0053】
単結晶基板2は、光半導体層3を結晶成長させることが可能な材料から構成されている。単結晶基板2としては、例えばサファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、シリコンカーバイド、シリコンまたは二ホウ化ジルコニウムなどを用いることができる。本例においては、単結晶基板2としてサファイアを用いている。
【0054】
単結晶基板2は、平面視形状が例えば四角形状などの多角形状または円形状などに設定されている。単結晶基板2は、厚みが例えば1μm以上2000μm以下に設定されている。単結晶基板2として、単結晶基板2の上面2A’が平坦なものを用いることができる。
【0055】
単結晶基板2の上面2A’の平坦性は、表面粗さが例えば10nm以下に設定されている。なお、単結晶基板2としては、単結晶基板2の上面2A’を研磨したものを用いてもよく、単結晶基板2の上面2A’の表面粗さとしては、JIS B0601−2001に準拠した最大高さ粗さRzを用いればよい。
【0056】
単結晶基板2の上面2A’としては、例えば単結晶基板2の結晶面が揃っているものを用いることができる。単結晶基板2がサファイアの場合であれば、単結晶基板2の結晶面としては、例えばサファイアのA面、C面またはR面などを用いることができる。
【0057】
単結晶基板2の上面2A’上に、図8(a)に示すように、単結晶基板2の上面2A’の一部が露出する第1露出領域9を有する第1マスクパターン10を形成する。マスクパターン10の第1露出領域9は、平面視形状が例えば単結晶基板2の第1主面2A上に形成する突起2aの間の形状となるように設定される。そのため、第1露出領域9の幅は、突起2aの間の第1主面2Aの形状および寸法に設定すればよく、隣接する突起2a同士の間で例えば0.5μm以上10μm以下に設定される。
【0058】
そして、第1露出領域9から露出した単結晶基板2の上面2A’から深さ方向に第1エッチングを行なうことにより、第1マスクパターン10の形状、大きさおよび配置に応じた突起2aを単結晶基板2の第1主面2Aに形成する。
【0059】
第1マスクパターン10としては、後に容易に除去することができる材料を選択することが好ましく、例えばフォトレジスト、酸化シリコンなどの酸化物、またはニッケルなどの金属を用いることができる。第1マスクパターン10の膜厚は、エッチングによって単結晶基板2の一部を除去する場合であれば、単結晶基板2のエッチングレートと第1マスクパターン10のエッチングレートとの選択比によって適宜選択することができ、例えば0.2μm以上10μm以下に設定することができる。
【0060】
第1マスクパターン10は、マスク材料をスパッタリング法または蒸着法などの真空積層法を用いることによって単結晶基板2上に積層膜として積層し、露出領域9を有するようにパターニングすることによって形成することができる。この際、単結晶基板2としてサファイアを用いてドライエッチングを行なう場合は、サファイアと反応しやすい塩素系ガスを反応ガスとして用いることができるが、この場合には、マスク材料としては、チタン、ニッケルまたはクロムなどの金属や酸化シリコンなどの耐塩素性の無機材料を用いることが望ましい。
【0061】
単結晶基板2としてサファイアを用いた場合に、ドライエッチングによって単結晶基板2の一部を除去する際には、サファイアと反応しやすい塩素系ガス雰囲気中でドライエッチングを行なってもよい。このようにドライエッチングを行なうことによって、生産性を
向上させることができる。
【0062】
そして、図8(b)に示すように、第1マスクパターン10を単結晶基板2から除去することによって、単結晶基板2の第1主面2Aに複数の突起2aを単結晶基板2と一体的に設けることができる。ここで、単結晶基板2の上面2A’に、結晶が揃った平坦な結晶面を用いた場合は、突起2aの突起上面2a’が第1マスクパターン10で覆われていることから、単結晶基板2の一部を除去する工程の際に、突起上面2a’および第1主面2Aの平坦性を維持することができる。
【0063】
次に、図8(c)に示すように、突起2aの突起上面2a’の一部が露出する第2露出領域11を有する第2マスクパターン12を単結晶基板2上に形成する。第2マスクパターン12の材料および膜厚などは、第1マスクパターン10と同じように設定すればよい。第2露出領域11の寸法は、例えば凹部4の開口あるいは底面4Aの寸法と同じに設定すればよい。第2露出領域11の寸法は、円形状の凹部4であれば、直径を例えば0.1μm以上5μm以下に設定することができる。
【0064】
そして、第2露出領域11から露出した突起2aの突起上面2a’から深さ方向に第2エッチングして、凹部4を突起2aの突起上面2a’に形成する。突起2aを形成した際と同じ条件でエッチングを行なう場合には、第2エッチングの時間は、例えば第1エッチングの時間よりも少なくなるように設定することができる。このように第2エッチングの時間を設定することにより、凹部4の底面4Aを、単結晶基板2の第1主面2Aに対して第1主面2Aよりも上方に配置することができる。
【0065】
その後、図8(d)に示すように、第2マスクパターン12を単結晶基板2から除去することにより、突起上面2a’の一部に凹部4を持つ複数の突起2aを第1主面2Aに有する単結晶基板2を準備することができる。
【0066】
(光半導体層を成長させる工程)
次に、単結晶基板2上に光半導体層3を成長させる。この工程について以下に説明する。
【0067】
光半導体層3としては、例えばIII−V族半導体を用いることができる。本例においては、光半導体層3には窒化ガリウムが用いられている。単結晶基板2の上面である突起2aの突起上面2a’および第1主面2Aに光半導体層3を成長させる方法としては、分子線エピタキシャル法、有機金属エピタキシャル法、ハイドライド気相成長法またはパルスレーザデポジション法などを用いることができる。
【0068】
光半導体層3を成長させる方法としては、例えば、単結晶基板2の第1主面2Aに対して垂直である垂直方向よりも第1主面2Aと平行な平面方向に結晶成長しやすくした横方向成長を用いることができる。
【0069】
具体的には、光半導体層3のそれぞれの層において組成比、成長温度および成長圧力などの成長条件を調整することにより、光半導体層3を横方向に結晶成長させることができる。具体的には、原料ガスを突起2aの突起上面2a’に対して傾斜した方向から流入させて突起2aの突起上面2a’に光半導体層3を結晶成長させる。
【0070】
単結晶基板2上に光半導体層3として窒化ガリウムを結晶成長させるには、窒化ガリウムの組成比、成長温度および成長圧力などの成長条件を調整すればよい。成長温度としては、例えば350℃以上1500℃以下に設定することができる。単結晶基板2上に窒化ガリウムからなる第1半導体層3aとしての低温バッファ層を設ける場合には、成長温度として
例えば350℃以上800℃以下に設定すればよい。
【0071】
以下、突起2aの突起上面2a’に光半導体層3を横方向に結晶成長させる方法について図9〜図11を参照しつつ、具体的に説明する。
【0072】
まず、図9に示すように、単結晶基板2上に複数形成された突起2aの突起上面2a’に第1半導体層3aの結晶体13を結晶成長させる。ここで、図9は、単結晶基板2の一部とその周辺を拡大した断面図である。
【0073】
結晶体13は、側面が特定の結晶面となっている結晶からなる構造体である。このような結晶体13の形状は、例えば三角錐形状または六角錐形状などの多角錐形状、三角錐台形状または六角錐台形状などの多角錐台形状、円錐形状、または円錐台形状などを用いることができる。本例において、結晶体13は、六角錐形状で形成されている。
【0074】
このように、突起2aの突起上面2a’に対して傾斜した結晶面を有する結晶体13を形成する方法としては、成長時の成長圧力および成長温度を調整する方法などを用いることができる。光半導体層3として窒化ガリウムを用いた場合であれば、結晶体13は、例えば5kPa以上90kPa以下の圧力および700℃以上1150℃以下の温度で結晶成長させることができる。このような結晶体13の結晶面は、サファイアからなる単結晶基板2の突起2aの突起上面2a’がc面である場合に、例えば{1−101}面とすることができる。
【0075】
その後、図10に示すように、1つの突起2aにおいて、凹部4を隔てて結晶成長させた2つの結晶体13を横方向に結晶成長させることにより、それぞれの突起上面2a’から延びる転位8同士を結合させやすくすることができる。このように1つの突起2a上で2つの結晶体13同士を合わせることによって1つの第2結晶体13’を形成し、それぞれの結晶体13から延びる転位8同士を結合させやすくすることができることから、突起2aの突起上面2aから延びる転位8の数を減らすことができる。
【0076】
次に、図11に示すように、隣接する2つの突起2a上に形成された第2結晶体13’同士を合わせることによって第3結晶体13”を形成する。このように第3結晶体13”を形成することにより、突起2a上に形成された第2結晶体13’から延びる転位8同士を結合させて、第3結晶体13”から延びる転位8の数を減らすことができる。
【0077】
このように、結晶体13を2段階で横方向に結晶成長させることから、突起2a上で突起上面2a’から延びる転位8の数を減らした後で、隣接する2つの突起2a間で転位8を減らすことができる。このように第1半導体層3a内で、2回に渡り転位8を結合させることができることから、上方に延びる転位8の数を減らすことができ、第1半導体層3aの結晶品質を向上させることができる。
【0078】
このように第1半導体層3aにおける転位8の数を減らすことによって、発光層3bおよび第2半導体層3cの結晶性を向上させることができる。その結果、光半導体層3の発光効率を向上させることができる。
【0079】
また、第1半導体層3aを横方向に結晶成長させて、光半導体層3の第1半導体層3a内で転位8を結合させることから、発光層3bに延在する転位8を少なくすることができるため、発光層3bで発光する領域を広げることができる。
【0080】
その後、図12に示すように、第1半導体層3aをさらに結晶成長させた後、発光層3bおよび第2半導体層3cを結晶成長させることにより、単結晶基板2上に光半導体層3を形成する。
【0081】
そして、第1半導体層3aに電気的に接続される第1電極層5と、第2半導体層3bに電気的に接続される第2電極層6とを光半導体層3に形成して、図1に示すような発光素子1を形成する。このように形成された、第1電極層5および第2電極層6の間に電圧を印加することにより、光半導体層3を発光させることができる。
【0082】
(発光素子の製造方法の変形例)
凹部4は、突起2aの突起上面2a’の中心付近に配置していてもよい。凹部4が中心付近に配置されていることにより、突起上面2a’に形成した結晶体13を横方向に結晶成長させる際に、結晶体13が同じ速度で結晶成長することから、平面透視して、凹部4の領域内で結晶体13が合わさることにより第2結晶体13’が形成される。
【0083】
そのため、結晶体13から延びる転位8を凹部4と重なる領域に集中させることができ、それぞれの転位8が結合されやすくすることができる。このように凹部4と重なる領域で結合させることにより、転位8が結合しやすくなり、さらに結晶性を向上させることができる。
【0084】
また、結晶体13を突起2aに形成する際に、凹部4の底面4Aにも結晶を成長させて、凹部4を第1半導体層3aで埋めてもよい。このように凹部4を第1半導体層3aで埋めた場合には、光半導体層3で発生した光を単結晶基板2側から取り出す際に、発光素子1の光取出し効率を向上させることができる。
【0085】
さらに、単結晶基板2の第1主面2Aに接するように第1半導体層3aを結晶成長させた場合には、光半導体層3で発生した光を単結晶基板2側から取り出す際に、発光素子1の光取出し効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 発光素子
2 単結晶基板
2A 第1主面(主面)
2B 第2主面
2a 突起
2a’ 突起上面(上面)
3 光半導体層
3a 第1半導体層(半導体層)
3b 発光層(半導体層)
3c 第2半導体層(半導体層)
4 凹部
4A 底面
4B 開口部
4C 側面
5 第1電極層
6 第2電極層
7 第2凹部
8 転位
9 第1露出領域
10 第1マスクパターン
11 第2露出領域
12 第2マスクパターン
13 結晶体
13’ 第2結晶体
13” 第3結晶体
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、発光素子または受光素子として、基板上に半導体層を積層した半導体基板が用いられている。特に、発光素子や受光素子に用いられる半導体層を基板上に結晶成長させる場合には、半導体層の結晶品質を向上させる必要があった。
【0003】
そこで、基板上に半導体層を結晶成長させる技術として、例えば、基板上に複数の突起を設けることによって、基板上に成長させる半導体層の結晶性を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−164296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の突起上に半導体層を結晶成長させた場合は、該半導体層で発生した光が複数の突起の上面と半導体層との界面で半導体層側に反射され、光取出し効率の低下を引き起こすおそれがあった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光取出し効率を向上させることが可能な発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態にかかる発光素子は、上面を持つ複数の突起を主面に有する単結晶基板と、該単結晶基板上に形成された、複数の半導体層から成る光半導体層とを備え、前記突起は、前記上面の一部に凹部を有しており、前記光半導体層は、最下層に位置する前記半導体層が前記突起の前記上面に接しているとともに前記凹部を埋めている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態にかかる発光素子によれば、凹部が形成された突起を複数有する単結晶基板上に光半導体層を備えていることから、光半導体層で発生した光が光半導体層から単結晶基板に入射する際に、光半導体層側に反射されにくくすることができるので、発光素子の光取出し効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態にかかる発光素子を示す斜視図である。
【図2】図1の発光素子の断面を示す断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【図3】図1の発光素子の断面を示す断面図であり、突起、光半導体層およびその周辺を拡大した拡大図である。
【図4】図1に示す発光素子の変形例であり、突起、光半導体層およびその周辺の断面を拡大した拡大断面図である。
【図5】図1に示す発光素子の変形例の断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【図6】図1に示す発光素子の変形例の断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【図7】図1に示す発光素子の変形例の断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【図8】(a)〜(d)はそれぞれ本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造方法の一例の一工程を示す断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面にする。
【図9】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造方法の一例の一工程を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造方法の変形例の一例の一工程を示す断面図である。
【図11】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造方法の変形例の一例の一工程を示す断面図である。
【図12】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造方法の変形例の一例の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態の例について図を参照しながら説明する。
【0011】
なお、本発明は以下の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を施すことができる。
【0012】
<発光素子>
図1は本発明の実施の形態の一例の発光素子1の斜視図であり、図2は図1に示す発光素子1の断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【0013】
発光素子1は、図1および図2に示すように、単結晶基板2および光半導体層3を有する。本例において、発光素子1の外部は、屈折率が例えば1の空気に設定されている。
【0014】
単結晶基板2は、光半導体層3を結晶成長させることが可能な材料から構成されている。単結晶基板2としては、例えばサファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、シリコンカーバイドまたはシリコンなどを用いることができる。単結晶基板2の厚みとしては、例えば1μm以上1500μm以下程度である。なお、単結晶基板2の厚みは、単結晶基板2の下面である第2主面2Bから突起2aの上面(以下、突起上面という)2a’までの厚みを指す。
【0015】
本例のように、光半導体層3で発光した光を、単結晶基板2側から取り出す場合には、単結晶基板2として光半導体層3で発光した光を透過しやすい透光性の基材が用いられる。透光性の基材としては、光半導体層3で発光した光の波長に対して、例えば60%以上の透過率を有するものを用いればよい。
【0016】
単結晶基板2として用いられる透光性の基材としては、後述する発光層3bの構成を用いた場合であれば、例えばサファイア、窒化ガリウム、酸化亜鉛または二ホウ化ジルコニウムなどを単結晶基板2として用いることができる。
【0017】
本例において、単結晶基板2は、光半導体層3で発光した光を透過しやすい透光性の材料であるサファイアにより形成されている。単結晶基板2としてサファイアを用いた場合には、結晶を成長させる結晶成長面として、例えばA面、C面またはR面などを用いることができる。
【0018】
単結晶基板2は、主面のうち上面である第1主面2A上に突起2aを複数有している。
突起2aは、第1主面2Aから遠ざかる位置に突起上面2a’を有している。
【0019】
突起2aは、例えば単結晶基板2を加工することにより、単結晶基板2と一体的に設けられている。突起2aの突起上面2a’は、単結晶基板2の第1主面2Aからの距離が最も遠い位置にある面を指す。突起2aは、単結晶基板2の第1主面2Aから突起上面2a’までの高さが、例えば0.2μm以上5μm以下に設定されている。突起2aの幅は、例えば0.5μm以上10μm以下に設定されている。突起2aは、突起上面2a’の面積が、単結晶基板2の第1主面2Aの面積に対して、例えば30%以上90%以下となるように設定されている。
【0020】
突起2aの突起上面2a’は、単結晶基板2の結晶成長面となるように設定されている。突起2aの突起上面2a’の平坦性は、表面粗さが、例えば10nm以下に設定されている。突起2aの突起上面2a’の表面粗さとしては、JIS B0601−2001に準拠した最大高さ粗さRzを用いればよい。表面粗さを測定する方法としては、例えばJIS B0601−2001およびJIS B0633−2001に準拠した方法に則って、触針式表面粗さ測定機を用いることができる。また、JIS R1683−2007に準拠した方法に則って、原子間力顕微鏡を用いて突起2aの突起上面2a’の表面粗さを測定してもよい。
【0021】
また、突起2aの突起上面2a’は、単結晶基板2の第1主面2Aに対して傾斜していてもよい。この場合は、突起2aの突起上面2a’の傾斜角は単結晶基板2の第1主面2Aに対して、単結晶基板2のオフ角である例えば0°以上2°以下の角度に設定される。
【0022】
突起2aとしては、突起上面2a’を有する形状であればよく、例えば、四角柱状または六角柱状などの多角柱状または円柱状などのものを用いることができる。本例においては、突起2aは円柱状となるように設けられている。
【0023】
突起2aとしては、側面が単結晶基板2の第1主面2Aに対して傾斜した形状であってもよい。傾斜した側面を持つ突起2aとしては、例えば四角錐台状または六角錐台状などの多角錐台状または円錐台状などのものを用いることができる。この場合には、光半導体層3で発光した光を、光半導体層3と突起2aの側面との界面で光半導体層3側に反射されにくくすることができるため、単結晶基板2に入射しやすくすることができる。その結果、発光素子1の光取出し効率を向上させることができる。
【0024】
突起2aは、突起上面2a’の一部に凹部4を有している。凹部4は、突起2aの突起上面2a’の一部に設けられていればよい。凹部4は、平面視したときの平面視形状が、例えば四角形状などの多角形状または円形状などに形成されている。突起2aを平面視した際に、突起2aの突起上面2a’に対して、凹部4が占める割合は、例えば20%以上80%以下に設定されている。
【0025】
凹部4は、底面4Aを有している。突起2aの突起上面2a’から凹部4の底面4Aまでの深さは、例えば0.1μm以上3μm以下に設定されている。凹部4の底面4Aの面積は、凹部4の開口部4Bが占める面積と同じか、または凹部4の開口部4Bが占める面積よりも小さくなるように設けられている。
【0026】
凹部4は、断面視したときに、凹部4と開口部4Bとで囲まれる領域が、例えば、三角形状または四角形状などの多角形状に形成されている。なお、凹部4は、その内壁面から第1半導体層3aが結晶成長するように設定されていればよい。そのため、凹部4の断面視形状は、下方に湾曲した曲面形状であってもよい。
【0027】
単結晶基板2上には、図2に示すように、光半導体層3が設けられている。光半導体層
3は、複数の突起2aの突起上面2aに結晶成長させた半導体層(図2に示す例では第1半導体層3a)を含んでいる。また、光半導体層3は、第1半導体層3a、発光層3bおよび第2半導体層3cを順次積層することによって構成されている。光半導体層3は、全体の厚みを例えば0.8μm以上10μm以下に設定されている。
【0028】
光半導体層3は、例えば、複数の突起2aを持つ単結晶基板2に、複数の半導体層を結晶成長させることによって設けられている。本例では、複数の半導体層として、第1半導体層3a、発光層3bおよび第2半導体層3cを用いた場合について説明する。
【0029】
光半導体層3としては、例えばIII−V族半導体を用いることができる。III−V族半導体としては、III族窒化物半導体であるガリウム燐またはガリウムヒ素などを例示することができる。III族窒化物半導体としては、ボロン、アルミニウム、ガリウムまたはインジウムのうち少なくとも1つの窒化物からなる混晶を用いることができ、例えば窒化ガリウムを用いることができる。本例においては、光半導体層3として窒化ガリウムを用いており、光半導体層3の各層は、屈折率が、例えば1.8以上2.7以下に設定される。
【0030】
第1半導体層3aは、厚みが0.3μm以上8μm以下に設定されている。光半導体層3のうち最下層に位置する第1半導体層3aは、突起2aの突起上面2a’に接し、凹部4を埋めるように設けられている。
【0031】
凹部4内に位置する第1半導体層3aは、凹部4の底面4Aまたは凹部4の側面4Bと接していればよい。そのため、凹部4内に位置する第1半導体層3aは、凹部4を隙間なく埋めていてもよいし、凹部4と第1半導体層3aとの間の一部に空隙を有していてもよい。凹部4と第1半導体層3aとの間の一部に空隙を有する場合は、空隙によって凹部4と第1半導体層3aとが接しない領域が、凹部4の底面4Aおよび側面4Cの面積に対して、例えば0.1%以上20%以下となるように設定されている。
【0032】
発光層3bは、第1半導体層3aに設けられている。発光層3bは、禁制帯幅の広い障壁層と禁制帯幅の狭い井戸層とからなる量子井戸構造が複数回繰り返し規則的に積層された、多層量子井戸構造(MQW:Multiple Quantum Well)を用いることができる。障壁層および井戸層としては、アルミニウム、インジウムおよびガリウムのうち少なくとも一方を含む窒化物からなる混晶においてインジウムとガリウムとの組成比を調整したものを用いることができる。このように構成された発光層3bは、例えば350nm以上600nm以下の波長の光を発光することができる。
【0033】
第2半導体層3cは、発光層3b上に設けられている。第2半導体層3cは、電子または正孔のどちらかを多数キャリアとすることによって、第1半導体層3aとは逆導電型を示すように設定されている。第2半導体層3cに第1半導体層3aとは逆導電型を付与する方法としては、例えばマグネシウム、亜鉛またはシリコンを不純物として添加する方法を用いることができる。
【0034】
第1電極層5は第1半導体層3aに、第2電極層6は第2半導体層3cに、それぞれ設けられている。第1電極層5および第2電極層6によって、光半導体層3に電圧が印加される。
【0035】
第1電極層5および第2電極層6の材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、インジウム、錫、モリブデン、銀、金、タンタルまたは白金などの金属、あるいは酸化錫、酸化インジウムまたは酸化インジウム錫などの酸化物、あるいは銀−アルミニウム合金、金−亜鉛合金または金−ベリリウム合金などの合金膜を用いることができる。第1電極層5および第2電極層6として、それぞれ前述した材質の中から選択し
た層を複数回積層して設けてもよい。
【0036】
本例においては、光半導体層3の発光層3bで発生した光を第1半導体層3a側から取り出すことから、第2電極層6として反射性電極材料を用いてもよい。第2電極層6として反射性電極材料を用いた場合には、発光層3bで発生した光が第2半導体層3cに入射した場合に第1半導体層3a側に反射しやすくすることができ、光取出し効率を向上させることができる。
【0037】
本例において、第1半導体層3aは、図3に示すように、凹部4を有する突起2aの突起上面2a’に形成されている。さらに、第1半導体層3aは、かかる凹部4内が埋まるように配置されている。そのため、光半導体層3で発生した光の一部は、凹部4内に位置する第1半導体層3aに進むようになる。
【0038】
そして、凹部4内に位置する第1半導体層3aに入射した光は、凹部4の側面4Cまたは凹部4の底面4Aから単結晶基板2に入射するようになる。このように凹部4が側面4Cを有することにより、光半導体層3で発生した光が単結晶基板2に入射されやすくなる。また、光半導体層3で発生した光が、凹部4の側面4Cで全反射された場合でも、凹部4の底面4Aの方向に進みやすくすることができることから、凹部4の底面4Aから単結晶基板2に入射されやすくすることができる。
【0039】
このように光半導体層3で発生した光を、突起2aの凹部4から単結晶基板2に入射させやすくすることができるため、光半導体層3と単結晶基板2との間で光半導体層3側に反射されにくくすることができ、発光素子1の光取出し効率を向上させることができる。
【0040】
(変形例1)
凹部4は、図4に示すように、上方に向かうにつれて、突起上面2a’に対して平行な断面積が底面4Aの面積よりも大きくなっていてもよい。凹部4は、底面4Aから上方に向かうにつれて、次第に大きくなっている。この場合、凹部4は、底面4Aの面積に対して、開口部4Bの面積が例えば0.5%以上10%以下の範囲で大きくなっている。このように凹部4が形成された場合には、凹部4の断面視形状が台形状となっており、凹部4の側面4Cが、底面4Aに対して上方に向かって広がるように傾斜するようになる。なお、凹部4は、底面4Aの面積から上方に向かう断面積が段階的に大きくなっていてもよい。
【0041】
凹部4の側面4Cを底面4Aに対して傾斜させることにより、光半導体層3で発生した光が、凹部4の側面4Cに入射する際に臨界角よりも大きい角度で入射しやすくすることができるため、凹部4の側面4Cで光半導体層3側に反射されにくくすることができる。また、凹部4の側面4Cが底面4Aに対して傾斜していることから、単結晶基板2上に第1半導体層3aを結晶成長させる際に、被覆性が良好となるように第1半導体層3aで凹部4を埋めることができる。
【0042】
(変形例2)
凹部4は、図3に示すように、底面4Aが単結晶基板2の第1主面2Aに対して、第1主面2Aよりも上方に位置している。すなわち、突起2aの高さよりも凹部4の深さが小さくなるように設定されている。このように凹部4の底面4Aが、単結晶基板2の第1主面2Aよりも上方に位置するように配置されているときには、凹部4の底面4Aまで第1半導体層3aを埋めやすくすることができる。
【0043】
(変形例3)
光半導体層3は、図5に示すように、第1半導体層3aが単結晶基板2の第1主面2Aに接していてもよい。このように、第1半導体層3aが単結晶基板2の第1主面2Aと接
するように設けられているときには、光半導体層3で発生した光が、単結晶基板2の第1主面2Aと第1半導体層3aとの界面で光半導体層3側に反射されにくくすることができる。
【0044】
(変形例4)
単結晶基板2は、図6に示すように、複数の突起2aの間の第1主面2Aに第2凹部7を有していてもよい。第2凹部7は、断面視形状は、凹部4と同じ形状とすることができる。第2凹部7は、平面視したときの寸法が、例えば0.2μm以上10μm以下となるように設定することができる。このような第2凹部7は、単結晶基板2の第1主面2Aの面積(突起2aを除いた面積)に対して、開口部の合計の面積が例えば1%以上30%以下となるように配置されている。
【0045】
このように単結晶基板2の第1主面2Aが第2凹部7を有している場合には、第1半導体層3aが第2凹部7を埋めるように配置されているとよい。このように単結晶基板2の第1主面2Aに第2凹部7が設けられ、かかる第2凹部7を第1半導体層3aが埋めていることにより、光半導体層3で発生した光が、第1半導体層3aと単結晶基板2の第1主面2Aとの界面で光半導体層3側にさらに反射されにくくすることができる。
【0046】
(変形例5)
光半導体層3は、図7に示すように、第1半導体層3a内に転位8を有していてもよい。転位8は、下端が突起2aの突起上面2a’に位置するとともに上端が平面透視して突起2aと重ならない領域に位置している。転位8は、第1半導体層3aを単結晶基板2上に結晶成長させた場合に発生しやすくなる。このような転位8は、光半導体層3を横方向に結晶成長させることにより、発生する位置を制御することができる。
【0047】
このような転位8は、結晶成長させる第1半導体層3aを始めとする半導体層の結晶面に、意図しない結晶面または原子ステップが発生することによって生じやすくなり、例えば刃状転位またはらせん状転位などの種類がある。転位8は、第1半導体層3aと単結晶基板2との間で格子定数が異なることに起因して、第1半導体層3aと単結晶基板2との界面で起こりやすくなる。
【0048】
転位8が光半導体層3内に配置されている場合には、平面透視して、突起2aと重なる領域の光半導体層3から強い発光強度で発光しやすくなる。そのため、突起2aと重なる領域の光半導体層3で発生した光は、突起2aの凹部4内に入射しやすくなり、さらに光取出し効率を向上させることができる。
【0049】
このように転位8の発生する位置を制御することにより、光半導体層3で発生する光の強度が強くなりやすい位置を制御することができ、突起2aに凹部4を設けていない場合と比較して、発光素子1の光取出し効率をさらに向上させることができる。
【0050】
<発光素子の製造方法>
図8−図12は、それぞれ発光素子1の製造工程を示す断面図であり、いずれも図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。上述した発光素子1と重複する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0051】
続いて、本発明の実施の形態の発光素子1の製造方法を説明する。本発明の実施の形態の発光素子1に係る製造方法は、単結晶基板を準備する工程、光半導体層を成長させる工程を有している。
【0052】
(単結晶基板を準備する工程)
単結晶基板2の第1主面2Aに、突起2aを複数形成する方法を、図8(a)〜(d)を参考にしつつ説明する。
【0053】
単結晶基板2は、光半導体層3を結晶成長させることが可能な材料から構成されている。単結晶基板2としては、例えばサファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、シリコンカーバイド、シリコンまたは二ホウ化ジルコニウムなどを用いることができる。本例においては、単結晶基板2としてサファイアを用いている。
【0054】
単結晶基板2は、平面視形状が例えば四角形状などの多角形状または円形状などに設定されている。単結晶基板2は、厚みが例えば1μm以上2000μm以下に設定されている。単結晶基板2として、単結晶基板2の上面2A’が平坦なものを用いることができる。
【0055】
単結晶基板2の上面2A’の平坦性は、表面粗さが例えば10nm以下に設定されている。なお、単結晶基板2としては、単結晶基板2の上面2A’を研磨したものを用いてもよく、単結晶基板2の上面2A’の表面粗さとしては、JIS B0601−2001に準拠した最大高さ粗さRzを用いればよい。
【0056】
単結晶基板2の上面2A’としては、例えば単結晶基板2の結晶面が揃っているものを用いることができる。単結晶基板2がサファイアの場合であれば、単結晶基板2の結晶面としては、例えばサファイアのA面、C面またはR面などを用いることができる。
【0057】
単結晶基板2の上面2A’上に、図8(a)に示すように、単結晶基板2の上面2A’の一部が露出する第1露出領域9を有する第1マスクパターン10を形成する。マスクパターン10の第1露出領域9は、平面視形状が例えば単結晶基板2の第1主面2A上に形成する突起2aの間の形状となるように設定される。そのため、第1露出領域9の幅は、突起2aの間の第1主面2Aの形状および寸法に設定すればよく、隣接する突起2a同士の間で例えば0.5μm以上10μm以下に設定される。
【0058】
そして、第1露出領域9から露出した単結晶基板2の上面2A’から深さ方向に第1エッチングを行なうことにより、第1マスクパターン10の形状、大きさおよび配置に応じた突起2aを単結晶基板2の第1主面2Aに形成する。
【0059】
第1マスクパターン10としては、後に容易に除去することができる材料を選択することが好ましく、例えばフォトレジスト、酸化シリコンなどの酸化物、またはニッケルなどの金属を用いることができる。第1マスクパターン10の膜厚は、エッチングによって単結晶基板2の一部を除去する場合であれば、単結晶基板2のエッチングレートと第1マスクパターン10のエッチングレートとの選択比によって適宜選択することができ、例えば0.2μm以上10μm以下に設定することができる。
【0060】
第1マスクパターン10は、マスク材料をスパッタリング法または蒸着法などの真空積層法を用いることによって単結晶基板2上に積層膜として積層し、露出領域9を有するようにパターニングすることによって形成することができる。この際、単結晶基板2としてサファイアを用いてドライエッチングを行なう場合は、サファイアと反応しやすい塩素系ガスを反応ガスとして用いることができるが、この場合には、マスク材料としては、チタン、ニッケルまたはクロムなどの金属や酸化シリコンなどの耐塩素性の無機材料を用いることが望ましい。
【0061】
単結晶基板2としてサファイアを用いた場合に、ドライエッチングによって単結晶基板2の一部を除去する際には、サファイアと反応しやすい塩素系ガス雰囲気中でドライエッチングを行なってもよい。このようにドライエッチングを行なうことによって、生産性を
向上させることができる。
【0062】
そして、図8(b)に示すように、第1マスクパターン10を単結晶基板2から除去することによって、単結晶基板2の第1主面2Aに複数の突起2aを単結晶基板2と一体的に設けることができる。ここで、単結晶基板2の上面2A’に、結晶が揃った平坦な結晶面を用いた場合は、突起2aの突起上面2a’が第1マスクパターン10で覆われていることから、単結晶基板2の一部を除去する工程の際に、突起上面2a’および第1主面2Aの平坦性を維持することができる。
【0063】
次に、図8(c)に示すように、突起2aの突起上面2a’の一部が露出する第2露出領域11を有する第2マスクパターン12を単結晶基板2上に形成する。第2マスクパターン12の材料および膜厚などは、第1マスクパターン10と同じように設定すればよい。第2露出領域11の寸法は、例えば凹部4の開口あるいは底面4Aの寸法と同じに設定すればよい。第2露出領域11の寸法は、円形状の凹部4であれば、直径を例えば0.1μm以上5μm以下に設定することができる。
【0064】
そして、第2露出領域11から露出した突起2aの突起上面2a’から深さ方向に第2エッチングして、凹部4を突起2aの突起上面2a’に形成する。突起2aを形成した際と同じ条件でエッチングを行なう場合には、第2エッチングの時間は、例えば第1エッチングの時間よりも少なくなるように設定することができる。このように第2エッチングの時間を設定することにより、凹部4の底面4Aを、単結晶基板2の第1主面2Aに対して第1主面2Aよりも上方に配置することができる。
【0065】
その後、図8(d)に示すように、第2マスクパターン12を単結晶基板2から除去することにより、突起上面2a’の一部に凹部4を持つ複数の突起2aを第1主面2Aに有する単結晶基板2を準備することができる。
【0066】
(光半導体層を成長させる工程)
次に、単結晶基板2上に光半導体層3を成長させる。この工程について以下に説明する。
【0067】
光半導体層3としては、例えばIII−V族半導体を用いることができる。本例においては、光半導体層3には窒化ガリウムが用いられている。単結晶基板2の上面である突起2aの突起上面2a’および第1主面2Aに光半導体層3を成長させる方法としては、分子線エピタキシャル法、有機金属エピタキシャル法、ハイドライド気相成長法またはパルスレーザデポジション法などを用いることができる。
【0068】
光半導体層3を成長させる方法としては、例えば、単結晶基板2の第1主面2Aに対して垂直である垂直方向よりも第1主面2Aと平行な平面方向に結晶成長しやすくした横方向成長を用いることができる。
【0069】
具体的には、光半導体層3のそれぞれの層において組成比、成長温度および成長圧力などの成長条件を調整することにより、光半導体層3を横方向に結晶成長させることができる。具体的には、原料ガスを突起2aの突起上面2a’に対して傾斜した方向から流入させて突起2aの突起上面2a’に光半導体層3を結晶成長させる。
【0070】
単結晶基板2上に光半導体層3として窒化ガリウムを結晶成長させるには、窒化ガリウムの組成比、成長温度および成長圧力などの成長条件を調整すればよい。成長温度としては、例えば350℃以上1500℃以下に設定することができる。単結晶基板2上に窒化ガリウムからなる第1半導体層3aとしての低温バッファ層を設ける場合には、成長温度として
例えば350℃以上800℃以下に設定すればよい。
【0071】
以下、突起2aの突起上面2a’に光半導体層3を横方向に結晶成長させる方法について図9〜図11を参照しつつ、具体的に説明する。
【0072】
まず、図9に示すように、単結晶基板2上に複数形成された突起2aの突起上面2a’に第1半導体層3aの結晶体13を結晶成長させる。ここで、図9は、単結晶基板2の一部とその周辺を拡大した断面図である。
【0073】
結晶体13は、側面が特定の結晶面となっている結晶からなる構造体である。このような結晶体13の形状は、例えば三角錐形状または六角錐形状などの多角錐形状、三角錐台形状または六角錐台形状などの多角錐台形状、円錐形状、または円錐台形状などを用いることができる。本例において、結晶体13は、六角錐形状で形成されている。
【0074】
このように、突起2aの突起上面2a’に対して傾斜した結晶面を有する結晶体13を形成する方法としては、成長時の成長圧力および成長温度を調整する方法などを用いることができる。光半導体層3として窒化ガリウムを用いた場合であれば、結晶体13は、例えば5kPa以上90kPa以下の圧力および700℃以上1150℃以下の温度で結晶成長させることができる。このような結晶体13の結晶面は、サファイアからなる単結晶基板2の突起2aの突起上面2a’がc面である場合に、例えば{1−101}面とすることができる。
【0075】
その後、図10に示すように、1つの突起2aにおいて、凹部4を隔てて結晶成長させた2つの結晶体13を横方向に結晶成長させることにより、それぞれの突起上面2a’から延びる転位8同士を結合させやすくすることができる。このように1つの突起2a上で2つの結晶体13同士を合わせることによって1つの第2結晶体13’を形成し、それぞれの結晶体13から延びる転位8同士を結合させやすくすることができることから、突起2aの突起上面2aから延びる転位8の数を減らすことができる。
【0076】
次に、図11に示すように、隣接する2つの突起2a上に形成された第2結晶体13’同士を合わせることによって第3結晶体13”を形成する。このように第3結晶体13”を形成することにより、突起2a上に形成された第2結晶体13’から延びる転位8同士を結合させて、第3結晶体13”から延びる転位8の数を減らすことができる。
【0077】
このように、結晶体13を2段階で横方向に結晶成長させることから、突起2a上で突起上面2a’から延びる転位8の数を減らした後で、隣接する2つの突起2a間で転位8を減らすことができる。このように第1半導体層3a内で、2回に渡り転位8を結合させることができることから、上方に延びる転位8の数を減らすことができ、第1半導体層3aの結晶品質を向上させることができる。
【0078】
このように第1半導体層3aにおける転位8の数を減らすことによって、発光層3bおよび第2半導体層3cの結晶性を向上させることができる。その結果、光半導体層3の発光効率を向上させることができる。
【0079】
また、第1半導体層3aを横方向に結晶成長させて、光半導体層3の第1半導体層3a内で転位8を結合させることから、発光層3bに延在する転位8を少なくすることができるため、発光層3bで発光する領域を広げることができる。
【0080】
その後、図12に示すように、第1半導体層3aをさらに結晶成長させた後、発光層3bおよび第2半導体層3cを結晶成長させることにより、単結晶基板2上に光半導体層3を形成する。
【0081】
そして、第1半導体層3aに電気的に接続される第1電極層5と、第2半導体層3bに電気的に接続される第2電極層6とを光半導体層3に形成して、図1に示すような発光素子1を形成する。このように形成された、第1電極層5および第2電極層6の間に電圧を印加することにより、光半導体層3を発光させることができる。
【0082】
(発光素子の製造方法の変形例)
凹部4は、突起2aの突起上面2a’の中心付近に配置していてもよい。凹部4が中心付近に配置されていることにより、突起上面2a’に形成した結晶体13を横方向に結晶成長させる際に、結晶体13が同じ速度で結晶成長することから、平面透視して、凹部4の領域内で結晶体13が合わさることにより第2結晶体13’が形成される。
【0083】
そのため、結晶体13から延びる転位8を凹部4と重なる領域に集中させることができ、それぞれの転位8が結合されやすくすることができる。このように凹部4と重なる領域で結合させることにより、転位8が結合しやすくなり、さらに結晶性を向上させることができる。
【0084】
また、結晶体13を突起2aに形成する際に、凹部4の底面4Aにも結晶を成長させて、凹部4を第1半導体層3aで埋めてもよい。このように凹部4を第1半導体層3aで埋めた場合には、光半導体層3で発生した光を単結晶基板2側から取り出す際に、発光素子1の光取出し効率を向上させることができる。
【0085】
さらに、単結晶基板2の第1主面2Aに接するように第1半導体層3aを結晶成長させた場合には、光半導体層3で発生した光を単結晶基板2側から取り出す際に、発光素子1の光取出し効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 発光素子
2 単結晶基板
2A 第1主面(主面)
2B 第2主面
2a 突起
2a’ 突起上面(上面)
3 光半導体層
3a 第1半導体層(半導体層)
3b 発光層(半導体層)
3c 第2半導体層(半導体層)
4 凹部
4A 底面
4B 開口部
4C 側面
5 第1電極層
6 第2電極層
7 第2凹部
8 転位
9 第1露出領域
10 第1マスクパターン
11 第2露出領域
12 第2マスクパターン
13 結晶体
13’ 第2結晶体
13” 第3結晶体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を持つ複数の突起を主面に有する単結晶基板と、
該単結晶基板上に形成された、複数の半導体層から成る光半導体層とを備え、
前記突起は、前記上面の一部に凹部を有しており、前記光半導体層は、最下層に位置する前記半導体層が前記突起の前記上面に接しているとともに前記凹部を埋めている
発光素子。
【請求項2】
前記凹部は、上方に向かうにつれて、前記上面に対して平行な断面積が底面の面積よりも大きくなっている請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記凹部は、底面が前記単結晶基板の前記主面に対して前記主面よりも上方に位置している請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記光半導体層は、最下層に位置する前記半導体層が前記単結晶基板の前記主面に接している請求項1〜3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
前記単結晶基板は、前記主面に第2凹部を有しており、
前記光半導体層は、最下層に位置する前記半導体層が前記第2凹部を埋めている請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
前記光半導体層は、最下層に位置する前記半導体層が、下端が前記突起の前記上面に位置するとともに上端が平面透視して前記突起と重ならない領域に位置する転位を有している請求項1〜5のいずれかに記載の発光素子。
【請求項1】
上面を持つ複数の突起を主面に有する単結晶基板と、
該単結晶基板上に形成された、複数の半導体層から成る光半導体層とを備え、
前記突起は、前記上面の一部に凹部を有しており、前記光半導体層は、最下層に位置する前記半導体層が前記突起の前記上面に接しているとともに前記凹部を埋めている
発光素子。
【請求項2】
前記凹部は、上方に向かうにつれて、前記上面に対して平行な断面積が底面の面積よりも大きくなっている請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記凹部は、底面が前記単結晶基板の前記主面に対して前記主面よりも上方に位置している請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記光半導体層は、最下層に位置する前記半導体層が前記単結晶基板の前記主面に接している請求項1〜3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
前記単結晶基板は、前記主面に第2凹部を有しており、
前記光半導体層は、最下層に位置する前記半導体層が前記第2凹部を埋めている請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
前記光半導体層は、最下層に位置する前記半導体層が、下端が前記突起の前記上面に位置するとともに上端が平面透視して前記突起と重ならない領域に位置する転位を有している請求項1〜5のいずれかに記載の発光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−109491(P2012−109491A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258792(P2010−258792)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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