発振装置、半導体装置、電子機器および時計
【課題】水晶発振回路を含む発振装置、半導体装置、電子機器等の消費電力を全体として抑制する。
【解決手段】発振装置は、第1の定電流を生成する第1の定電流源と、第1の定電流が通電され、定電圧を生成する定電圧制御トランジスターとを含む定電圧生成回路と、定電圧発生回路から供給される定電圧により発振駆動される水晶発振回路とを備える。定電圧は、動作保証温度範囲において第1の定電流に応じて変動する第1の傾きを有する。水晶発振回路において、動作保証温度範囲における発振停止電圧は第2の傾きを有する。第1の傾きは、第1の傾きと第2の傾きとの差と相関を有する水晶発振回路の消費電流と、第1の定電流の大きさと相関を有する定電圧生成回路の消費電流との和を極小とするように定められており、第1の定電流は、定電圧制御トランジスターをサブスレッショルド領域で動作させる値に設定されている。
【解決手段】発振装置は、第1の定電流を生成する第1の定電流源と、第1の定電流が通電され、定電圧を生成する定電圧制御トランジスターとを含む定電圧生成回路と、定電圧発生回路から供給される定電圧により発振駆動される水晶発振回路とを備える。定電圧は、動作保証温度範囲において第1の定電流に応じて変動する第1の傾きを有する。水晶発振回路において、動作保証温度範囲における発振停止電圧は第2の傾きを有する。第1の傾きは、第1の傾きと第2の傾きとの差と相関を有する水晶発振回路の消費電流と、第1の定電流の大きさと相関を有する定電圧生成回路の消費電流との和を極小とするように定められており、第1の定電流は、定電圧制御トランジスターをサブスレッショルド領域で動作させる値に設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振装置、半導体装置、電子機器および時計に関する。
【背景技術】
【0002】
定電圧を生成する定電圧生成回路と、生成された定電圧により水晶振動子を発振させる水晶発振回路とを含んで構成される発振装置が知られている。このような発振装置は、時計、携帯電話、コンピューター端末などに広く用いられている。このような発振装置は、特に携帯電話などのモバイル機器に搭載される場合など、消費電力を抑制することが求められている。
【0003】
水晶発振回路の消費電力は、水晶発振回路を駆動するための定電圧が大きい程大きくなるため、定電圧は極力小さくすることが消費電力の観点からは望ましい。一方で、水晶発振回路は、水晶発振回路に用いられるインバータ、発振させる水晶振動子の特性、負荷容量などにより定まる発振停止電圧を有している。発振停止電圧は、一般的な動作保証温度範囲(例えば、−40℃〜80℃)において、温度の上昇に伴い所定の傾きで直線的に低下することが知られている。供給される定電圧が発振停止電圧を下回ると水晶発振回路の発振動作が停止してしまうため、動作保証温度範囲において、常に定電圧は発振停止電圧以上に設定される必要がある。
【0004】
ここで、動作保証温度範囲において、定電圧の温度変化を、発振停止電圧の温度変化と同じにする、すなわち、定電圧の温度変化に対する傾きを、発振停止電圧の温度変化に対する傾きと同じにする技術が知られている(例えば、特許文献1)。こうすれば、動作保証温度範囲の全体に亘って、定電圧を、発振停止電圧以上で、極力小さくすることができ、水晶発振回路の消費電力を小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−538358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記技術では、定電圧生成回路における消費電流が考慮されていない。このため、水晶発振回路の消費電力を小さくすることができたとしても、定電圧生成回路における消費電力が大きくなり、結果として電子回路全体の消費電力は大きくなってしまうおそれがあった。例えば、上記技術では、定電圧生成回路において、定電圧制御トランジスターをしきい値Vthを大きく超える領域で動作させるべく、定電圧制御トランジスターに比較的高い電流を通電させている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、定電圧生成回路と水晶発振回路を含む発振装置、半導体装置、電子機器等の消費電力を全体として小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の第1の態様は、発振装置を提供する。第1の態様に係る発振装置は、定電圧生成回路と、水晶発振回路とを備える。前記定電圧生成回路は、第1の定電流を生成する第1の定電流源と、前記第1の定電流が通電され、定電圧を生成する定電圧制御トランジスターとを含み、前記定電圧は、温度変化に対して第1の傾きを有し、前記第1の傾きは前記第1の定電流に応じて変動する。前記水晶発振回路は、前記定電圧発生回路から供給される定電圧により発振駆動される水晶発振回路であって、発振可能な前記定電圧の下限値である発振停止電圧は温度変化に対して第2の傾きを有する。本発止回路において、第1の傾きは、前記第1の傾きと前記第2の傾きとの差と相関を有する前記水晶発振回路の消費電流と、前記第1の定電流の大きさと相関を有する前記定電圧生成回路の消費電流との和を極小とするように定められている。第1の態様に係る発振装置によれば、発振装置全体の消費電力を抑制することができる。
【0009】
第1の態様に係る発振装置において、第1の定電流は、前記定電圧制御トランジスターをサブスレッショルド領域で動作させる値に設定されていても良い。こうすれば、定電圧生成回路の消費電流を極めて小さくできるため、発振装置全体の消費電力を抑制することができる。
【0010】
第1の態様に係る発振装置は、さらに、前記第1の傾きを、間欠動作させる間欠制御部を備え、前記第1の定電流は、前記水晶発振回路の消費電流と、前記間欠動作時における前記定電圧生成回路の消費電流との和を極小とするように定められていても良い。こうすれば、間欠動作により定電圧生成回路の消費電流を抑制できるため、第1の傾きを水晶発振回路の消費電流をより小さくするように設定できる。この結果、発振装置全体の消費電力をより抑制することができる。
【0011】
第1の態様に係る発振装置において、前記定電圧生成回路は、複数のトランジスターを含み、前記複数のトランジスターの中から選択された少なくとも1つのトランジスターが前記定電圧制御トランジスターとして使用されていても良い。
【0012】
本発明の第2の態様は、発振装置を提供する。第1の態様に係る発振装置は、定電圧生成回路と、水晶発振回路と、定電流回路とを備える。前記定電圧生成回路は、基準電圧を参照して第1の定電流を生成する第1の定電流源と、前記第1の定電流が通電され、定電圧を生成する定電圧制御トランジスターとを含み、前記定電圧は、温度変化に対して第1の傾きを有し、前記第1の定電流に応じて変動する。前記水晶発振回路は、前記定電圧発生回路から供給される定電圧により発振駆動される水晶発振回路であって、発振可能な前記定電圧の下限値である発振停止電圧は温度変化に対して第2の傾きを有する。前記定電流回路は、定電流制御トランジスターを用いて第2の定電流を生成し、前記第2の定電流を用いて前記基準電圧を生成する。本発振装置において、前記第1の傾きは、前記第1の傾きと前記第2の傾きとの差と相関を有する前記水晶発振回路の消費電流と、前記第1の定電流の大きさと相関を有する前記定電圧生成回路の消費電流と、前記第2の定電流の大きさと相関を有する前記定電流回路の消費電流との和を極小とするように定められている。第2の態様に係る発振装置によれば、発振装置全体の消費電力を抑制することができる。
【0013】
第2の態様に係る発振装置において、前記第1の定電流は、前記定電圧制御トランジスターをサブスレッショルド領域で動作させる値に設定され、前記第1の傾きは、前記定電流制御トランジスターをサブスレッショルド領域で動作させる値に設定されていても良い。こうすれば、定電圧生成回路および定電流回路の消費電流を極めて小さくできるため、発振装置全体の消費電力を抑制することができる。
【0014】
第2の態様に係る発振装置は、さらに、前記第1の定電流源と、前記定電流回路を、間欠動作させる間欠制御部を備え、前記第1の傾きは、前記水晶発振回路の消費電流と、前記間欠動作時における前記定電圧生成回路の消費電流と、前記間欠動作時における前記定電流回路の消費電流の和を極小とするように定められていても良い。こうすれば、間欠動作により定電圧生成回路および定電流回路の消費電流を抑制できるため、第1の傾きを水晶発振回路の消費電流をより小さくするように設定できる。この結果、発振装置全体の消費電力をより抑制することができる。
【0015】
上記態様に係る発振装置において、動作保証温度範囲の上限温度における前記定電圧は、前記上限温度における前記水晶発振回路の発振開始電圧に設定されていても良く、動作保証温度範囲の上限温度における前記定電圧は、前記上限温度における前記水晶発振回路の発振開始電圧にノイズマージンを加えた値に設定されていても良い。また、前記定電圧は、動作保証温度範囲の全温度において、前記水晶発振回路の発振開始電圧にノイズマージンを加えた第1の値と、前記動作保証温度範囲の上限温度における前記定電圧と前記動作保証温度範囲の下限温度における前記定電圧の差に前記第1の値を加えた第2の値との間に設定されても良い。こうすれば、水晶発振回路の消費電流を、水晶発振回路が動作停止しない範囲で極小にすることができる。
【0016】
上記態様に係る発振装置において、動作保証温度範囲の下限温度における前記定電圧と前記下限温度における前記発振停止電圧との差は、0.4ボルト以下であっても良く、動作保証温度範囲の下限温度における前記定電圧と前記下限温度における前記発振停止電圧との差は、動作保証温度範囲の上限温度における前記定電圧と前記上限温度における前記発振停止電圧との差の2倍以下であっても良い。
【0017】
本発明は、上記態様のほか、種々の態様にて実現され得る。例えば、本発明は、上記態様に係る発振装置を含む半導体装置として実現される。また、本発明は、上記態様に係る発振装置または該半導体装置を含み、前記発振装置の発振出力を用いて、動作基準信号を生成する電子機器、あるいは、上記態様に係る発振装置または該半導体装置を含み、前記発振装置の発振出力を用いて、時刻基準信号を生成する時計として実現される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】発振装置の概略構成を示す説明図。
【図2】定電流回路の内部構成を示す説明図。
【図3】レギュレータの内部構成を示す説明図。
【図4】水晶発振回路の内部構成を示す説明図。
【図5】発振装置の温度特性を示す図。
【図6】定電圧制御トランジスターの特性を説明する図。
【図7】第1実施例における発振装置の温度特性の最適化について説明する第1の図。
【図8】第1実施例における発振装置の温度特性の最適化について説明する第2の図。
【図9】第1実施例における発振装置の温度特性の最適化について説明する第3の図。
【図10】第2実施例におけるレギュレータの構成を示す図。
【図11】第3実施例におけるレギュレータの構成を示す図。
【図12】間欠動作信号を示すタイミングチャート。
【図13】第3実施例における発振装置の温度特性の最適化について説明する図。
【図14】間欠動作可能な定電流回路の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施態様について、図面を参照しつつ、実施例に基づいて説明する。
【0020】
A.第1実施例:
・発振装置の構成:
図1〜図4を参照して、第1実施例における発振装置について説明する。図1は、発振装置の概略構成を示す説明図である。図2は、定電流回路の内部構成を示す説明図である。図3は、レギュレータの内部構成を示す説明図である。図4は、水晶発振回路の内部構成を示す説明図である。図1に示すように、発振装置100は、定電流回路230と、レギュレータ210と、水晶発振回路110と、制御回路220とを含んでいる。
【0021】
定電流回路230は、後述するように定電流Iref1およびIref2を生成し、生成した定電流を用いて基準電圧Vrefを生成する。図2に示すように、定電流回路230には、高電位側電源VDと、低電位側電源VSとが供給される。定電流回路230は、ソースおよびゲートが低電位側電源VSに接続されたディプレッション型のNチャンネル電界効果トランジスターM11を備えている。トランジスターM11は、定電流Iref1を生成する定電流源として機能する。定電流Iref1は、例えば、5nA〜12nA(ナノアンペア)程度に設定されている。トランジスターM11のドレインと高電位側電源VDとの間には、エンハンスメント型のPチャンネル電界効果トランジスターM12が配置されている。以下では、Nチャンネル電界効果トランジスターをnトランジスターと表記し、Pチャンネル電界効果トランジスターをpトランジスターと表記し、特に断らない限り、エンハンスメント型のトランジスターであるものとする。
【0022】
定電流回路230は、さらに、pトランジスターM13とnトランジスターM14とを備えている。pトランジスターM13のソースは高電位側電源VDと接続されている。nトランジスターM14は、pトランジスターM13のドレインと低電位側電源VSとの間に配置されている。pトランジスターM13は、上述したpトランジスターM12とカレントミラーを構成している。この結果、直列に接続されたpトランジスターM13と、nトランジスターM14には、定電流Iref2が通電する。定電流Iref2は、例えば、Iref1の約3倍の値とされる。nトランジスターM14は、ダイオード接続されており、nトランジスターM14のドレイン−ソース間の電圧は、一定に保持されている。この結果、低電位側電源VSの電位にnトランジスターM14のドレイン−ソース間の電圧を加えた電位が基準電圧Vrefとして出力される。Vrefの出力ノードと低電位側電源VSとの間には安定化容量としてキャパシタC1が配置されている。
【0023】
レギュレータ210は、定電流回路230から供給される基準電圧Vrefを参照して、定電圧VRを生成する定電圧生成回路である。レギュレータ210は、差動増幅回路2101と、出力回路2102とを備えている。
【0024】
差動増幅回路2101は、定電流源として機能するnトランジスターM21と、差動対を構成する2つのnトランジスターM22およびM23と、カレントミラーを構成する2つのpトランジスターM24およびM25とを含んでいる。nトランジスターM21のゲートには、上述した基準電圧Vrefが入力され、この結果、定電流I1が生成される。定電流I1は、本実施例では、上述した定電流Iref1と同一にされる。
【0025】
出力回路2102は、定電流源として機能するnトランジスターM31と、ダイオード接続されたpトランジスターM32と、出力用トランジスターとして機能するpトランジスターM33とを含んでいる。3つのトランジスターM31〜M33は、低電位側電源VSと高電位側電源VDとの間に、低電位側電源VS側から符号の順に直列に配置されている。nトランジスターM31のゲートには、上述した基準電圧Vrefが入力され、この結果、定電流I2が生成される。定電流I2は、本実施例では、50nAに設定されている。定電流I2の値は、発振装置100の消費電力の抑制のために重要な意味を有するので、後に詳述する。
【0026】
差動増幅回路2101は、第1の入力端に入力された電圧と、第2の入力端に入力された電圧との差分を増幅して出力する回路である。差動増幅回路2101の第1の入力端であるnトランジスターM22のゲートには、基準電圧Vrefが入力される。差動増幅回路2101の第2の入力端であるnトランジスターM23のゲートには、nトランジスターM31のドレイン電圧FBが入力される。差動増幅回路2101の出力であるpトランジスターM24のドレイン電圧は、出力回路2102のpトランジスターM33のゲートに入力される。この結果、基準電圧Vrefと、出力回路2102におけるnトランジスターM31のドレイン電圧FBが同じになるように、pトランジスターM33のドレイン電流が制御される(Vref=FB)。この結果、出力回路2102の出力ノード(pトランジスターM33のソース)から出力される定電圧VRは、基準電圧VrefにpトランジスターM32のソース−ドレイン電圧Vdsを加えた値に設定される(VR=Vref+Vds)。このように、定電圧VRの値は、pトランジスターM32の特性に左右されるので、本明細書において、pトランジスターM32を定電圧制御トランジスターとも呼ぶ。
【0027】
なお、レギュレータ210は、キャパシタC2、C3、C4を含んでいる。キャパシタC2は、基準電圧Vrefの安定化容量として、基準電圧の入力ノードと低電位側電源VSの間に配置されている。キャパシタC3は、位相補償容量として、差動増幅回路2101の出力ノード(pトランジスターM24のドレイン、pトランジスターM33のゲート)と、出力用トラインジスタの出力ノード(pトランジスターM33のソース)との間に配置されている。キャパシタC4は、定電圧VRの安定化容量として、定電圧VRの出力ノードと低電位側電源VSとの間に配置されている。
【0028】
水晶発振回路110は、水晶振動子500を発振させる回路である。水晶発振回路110は、定電圧VRと低電位側電源VSとが供給され、定電圧VRを用いて発振駆動される。水晶発振回路110は、インバータ1101と、フィードバック回路1102とを含んで構成される。フィードバック回路1102は、水晶振動子500の一端に接続されるゲート端子111、水晶振動子500の他端に接続されるドレイン端子112と、帰還抵抗Rfと、出力抵抗Rdと、位相補償用のキャパシタCacを含んでいる。フィードバック回路1102は、インバータ1101のドレイン出力の位相を、180度反転してインバータ1101のゲートへフィードバック入力する。インバータ1101は、ドレインが互いに接続された一対のpトランジスターM41、nトランジスターM42を含む。インバータ1101は、低電位側電源VSと定電圧VRとの間に配置され、両者の電位差により電力供給を受け駆動される。以上の構成の水晶発振回路110は、インバータ1101に定電圧VRが印加されると、インバータ1101を構成するトランジスター対が交互にオンオフ駆動され、最終的には水晶振動子500が安定した発振動作を行うようになる。これにより、この水晶発振回路110の出力ノード(インバータ1101のドレイン)からは、所定の周波数をもつ発振信号FSが出力されることになる。なお、水晶発振回路110において、ゲート端子111と低電位側電源VSの間、および、ドレイン端子112と低電位側電源VSの間には、発振安定化容量として、それぞれ、キャパシタCG、CDが配置されている。
【0029】
制御回路220は、発振信号FSが入力され、発振信号FSを分周あるいは逓倍して、所望の周波数を有するクロック信号を生成する。発振装置100が生成したクロック信号は、例えば、発振装置100が搭載されている電子機器の中央処理装置600に供給される。中央処理装置600は、例えば、供給されたクロック信号を、中央処理装置600自身あるいは中央処理装置600が制御する他の回路や半導体装置の動作基準信号として用いる。あるいは、中央処理装置600は、例えば、供給されたクロック信号を、時刻基準信号として用いて、時計機能、時間計測機能を実現する。発振装置100が搭載される電子機器としては、例えば、携帯電話、ノートパソコンなどのモバイル機器、ビデオ、DVD、ゲーム機器、パソコンなどの家電製品がある。本実施例では、発振装置100は、半導体製造技術を用いて半導体装置として形成される。発振装置100は、中央処理装置600と同一の半導体装置として形成されても良いし、中央処理装置600とは別体の半導体装置として形成され、中央処理装置600とインターフェースを介して接続されても良い。
【0030】
・発振装置の温度特性:
次に、図5〜図6を参照して、発振装置100の温度特性について説明する。図5は、発振装置100の温度特性を示す図である。図6は、定電圧制御トランジスターの特性を説明する図である。水晶発振回路110には、用いられる水晶振動子500の特性、インバータ1101の特性、キャパシタCG、CDなどにより定まる発振停止電圧VIが存在する。発振停止電圧VIは、水晶発振回路110が発振可能な定電圧VRの下限値であり、定電圧VRが、発振停止電圧VIを下回ると、水晶発振回路110の発振動作が停止してしまう。一方で、水晶発振回路110の消費電力は、定電圧VRに依存し、定電圧VRが大きいほど大きくなる。水晶発振回路110を、少ない消費電力で駆動するためには、供給される定電圧VRの値を、できるだけ小さく設定することが望ましい。従って、レギュレータ210から水晶発振回路110に供給される定電圧VRは、発振停止電圧VIより大きく、かつ、できるだけ小さな値に設定することが望ましい。
【0031】
水晶発振回路110の発振停止電圧VIは、図5に示すように、温度変化に対して、直線的に低下することが知られている。所定の動作保証温度の下限温度T0(本実施例では、−40℃)における発振停止電圧VIをVI(T0)、上限温度T1(本実施例では、85℃)における発振停止電圧VIをVI(T1)と表記する。発振停止電圧VIの温度変化に対する変動量をΔVI=VI(T1)−VI(T0)とする。ΔVIは、発振停止電圧VIの温度特性を表す直線の傾きの大きさに対応する。
【0032】
本実施例において、定電圧VRの温度特性は、図5において示すように調整されている。定電圧VRは、図5に示すように温度変化に対して、直線的に低下する。所定の動作保証温度の下限温度T0における定電圧VRをVR(T0)、上限温度T1における定電圧VRをVR(T1)と表記する。定電圧VRの温度変化に対する変動量をΔVR=VR(T1)−VR(T0)とする。ΔVRは、定電圧VRの温度特性を表す直線の傾きの大きさに対応する。
【0033】
ここで、定電圧VRの傾きに対応する変動量ΔVRを定める主要因について説明する。図6には、レギュレータ210の出力回路2102に含まれる上述した定電圧制御トランジスターM32におけるゲート−ソース間電圧の絶対値|Vgs|と、ドレイン−ソース間に通電される定電流I2との関係が示されている。図6には、下限温度T0における|Vgs|−I2曲線と、上限温度T1における|Vgs|−I2曲線が示されている。
【0034】
ここで、定電流I2がIbで一定である場合、下限温度T0と上限温度T1との間におけるゲート−ソース間電圧の変動量の絶対値|ΔVgs(Ib)|は、図6に図示されている巾で表される。一方、定電流I2がIbより低いIaである場合、限温度T0と上限温度T1との間におけるゲート−ソース間電圧の変動量の絶対値|ΔVgs(Ia)|は図6に図示されている巾で表される。これから解るように、温度変化に対するゲート−ソース間電圧の変動量の絶対値|ΔVgs|は、通電する定電流I2が小さい程大きくなり、大きいほど小さくなることが解る。
【0035】
ここで、図3に示すように定電圧制御トランジスターM32はダイオード接続されているため、ゲート−ソース間電圧とドレイン−ソース間電圧は等しい(Vgs=Vds)。そして、上述したようにVR=Vref+Vdsであるから、Vrefが一定であるとすると、ΔVR=ΔVds=ΔVgsである。従って、定電圧VRの温度変化に対する変動量の絶対値|ΔVR|、および、定電圧VRの温度変化を表す直線の傾きの絶対値は、通電する定電流I2が小さい程大きくなり、大きいほど小さくなることが解る。
【0036】
・発振装置の温度特性の最適化
以上のような発振装置100の温度特性を最適に設定する手法について図7〜図9を参照して説明する。ここで、発振装置100の温度特性の最適化の目的は、動作保証温度範囲内のすべての温度において発振装置が停止することなく動作し、かつ、発振装置100の消費電流を極力小さくすることである。そのための方針は以下のとおりである。
1.上限温度T1における定電圧VR(T1)を、上限温度T1における発振開始電圧Vs(T1)+ノイズマージン電圧Vnに設定する。
2.水晶発振回路110の消費電流を抑制するため、定電圧VRの温度変化に対する傾き(ΔVRに対応)を、発振停止電圧VIの温度変化に対する傾き(ΔVIに対応)になるべく近付ける(平行に近付ける)。
3.レギュレータ210の消費電流を抑制するため、定電流I2は、なるべく小さくする。
【0037】
ここで、発振停止電圧VIが発振している水晶発振回路110が発振停止してしまう電圧であるのに対して、発振開始電圧Vsは、停止している水晶発振回路110が発振を開始する電圧である。発振開始電圧Vsは、発振停止電圧VI+0.1V程度である。ノイズマージン電圧Vnは、定電圧VRがノイズにより変動することを考慮して設けるマージンであり、本実施例では0.1V程度としている。したがって、本実施例では、VR(T1)を、VI(T1)+0.4Vに設定する。この設定は、定電流I2の大きさに応じて、適切なしきい値電圧Vthを持つトランジスターを定電圧制御トランジスターM32として選択することにより実現できる。このように、VR(T1)を設定すると、定電圧VRは、動作保証温度範囲の全温度において、水晶発振回路110の発振開始電圧VsにノイズマージンVnを加えた値VRminと、上限温度T1における定電圧VR(T1)と下限温度T0における定電圧VR(T0)の差にVRminを加えた値VRmaxとの間に設定される(Vs+Vn≦VR≦Vs+Vn+(VR(T0)−VR(T1))。
【0038】
また、2番目の方針と3番目の方針は、上述した温度特性から解るように互いに相反する。すなわち、ΔVIに近づけるために、ΔVRを小さくしようとすると、レギュレータ210の消費電流が大きくなってしまう。このため、発振装置100の温度特性の最適化は、定電圧制御トランジスターM32の選択と、定電流I2の設定が重要となる。
【0039】
図7には、ある1つのpトランジスターを定電圧制御トランジスターM32として用いた場合における定電流I2と定電圧VRとの関係と、定電流I2と定電圧VRの温度変化に対する変動量の絶対値|ΔVR|との関係とが図示されている。図7には、定電流I2と定電圧VRとの関係として、下限温度T0における定電圧VR(T0)と、上限温度T1における定電圧VR(T1)をそれぞれ図示している。かかる定電圧制御トランジスターM32を用いる場合には、図に示す定電流設定範囲に定電流I2を設定できるが、VR(T1)を、Vs(T1)+ノイズマージン電圧とする定電流I2は、図に示すIxとなる。
【0040】
図8に、定電圧制御トランジスターM32に用いるトランジスターと定電流I2を適宜変更しながら、VR(T1)をVs(T1)+ノイズマージン電圧に設定した場合における、|ΔVR|と水晶発振回路110の消費電流Ioscとの関係と、|ΔVR|とレギュレータ210の消費電流Iregとの関係とを示す。なお、消費電流Ioscおよび消費電流Iregは、動作保証温度範囲の中央値t(本実施例では25℃=常温)における消費電流を用いた。
【0041】
図8において、右側の波線で示すように、定電流I2を小さくし過ぎると、|ΔVR|が|ΔVI|と比較して大きくなり、図9(a)に示すように、定電圧VRの傾きが、発振停止電圧VIの傾きと比較して大きくなってしまう。水晶発振回路110の温度tにおける消費電流Ioscは、|ΔVR|と|ΔVI|との差分に相関を有し、当該差分が大きいほど消費電流Ioscは大きくなる。すなわち、|ΔVR|と|ΔVI|との差分が大きいと、温度tにおいて定電圧VRが必要以上に大きくなる。従って、レギュレータ210の消費電流Iregは小さいものの、水晶発振回路110の消費電流Ioscが大きくなり、発振装置100全体の消費電流は、大きくなってしまう。
【0042】
一方で、図8において、左側の波線で示すように、定電流I2を大きく設定すれば、図9(b)に示すように、|ΔVR|と|ΔVI|を等しくすることができる。こうすれば、温度tにおいて、定電圧VRを最小にすることができる。しかしながら、レギュレータ210の消費電流Iregは、当然ながら定電流I2の大きさと相関を有し、定電流I2が大きいほど消費電流Iregは大きくなる。水晶発振回路110の消費電流Ioscは最小にできるものの、レギュレータ210の消費電流Iregが大きくなり、発振装置100全体の消費電流は、大きくなってしまう。
【0043】
本実施例では、図8において、中央の波線で示すように、定電圧制御トランジスターM32と定電流I2を最適化することにより、水晶発振回路110の消費電流Ioscとレギュレータ210の消費電流Iregの和が最小になるように|ΔVR|aimを設定している。
【0044】
以上説明した本実施例によれば、水晶発振回路110の消費電流Ioscと、レギュレータ210の消費電流Iregの和を極小にし、その結果として発振装置100全体の消費電流を抑制することができる。具体的には、本実施例では、レギュレータ210の定電流I2は、数十nAレベルに抑制される。このレベルの低い低電流は、定電圧制御トランジスターM32に通電されると、定電圧制御トランジスターM32をしきい値電圧Vth近傍またはしきい値電圧Vth以下の領域、いわゆるサブスレッショルド領域で動作させる。
【0045】
B.第2実施例:
図10を参照して、第2実施例について説明する。第2実施例における発振装置において、第1実施例と異なる点は、レギュレータの構成である。その他の構成は、第1実施例と同様であるので、その説明を省略する。図10は、第2実施例におけるレギュレータの構成を示す図である。第2実施例におけるレギュレータ210aが、第1実施例におけるレギュレータ210と異なる点は、出力回路2102aにおいて、1つの定電圧制御トランジスターM32に代えて、複数の定電圧制御トランジスターM32a〜M32dが選択可能に設けられた点である。
【0046】
具体的には、複数の定電圧制御トランジスターM32a〜M32dは、それぞれ、スイッチとして機能するpトランジスターSWa〜SWdと直列に接続されている。そして、定電圧制御トランジスターとスイッチ用トランジスターの各組は、それぞれ、並列に接続されている。各スイッチ用トランジスターSWa〜SWdのゲートには選択信号XTa〜XTdが、制御回路220から入力され、オンとオフが切り替えられる。複数の定電圧制御トランジスターM32a〜M32dは、電流増幅率βが異なる複数種類のトランジスターを含む。電流増幅率βは、トランジスターのゲート幅W、ゲート長Lのサイズを変更することによって、任意の値に設定することができる。複数の定電圧制御トランジスターM32a〜M32dのうち、オンにされたスイッチ用トランジスターと直列に接続されたトランジスターが、定電圧VRの値を制御するために使用される。レギュレータ210aのその他の構成は、第1実施例におけるレギュレータ210と同一であるので、同一の構成要素について、図10において、図3と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
第2実施例における発振装置によれば、複数の定電圧制御トランジスターM32a〜M32dの中から、1または複数のトランジスターを選択的に使用することにより、定電圧VRの値を微調整することができる。すなわち、電流増幅率βの小さなトランジスターを選択するほど、出力される定電圧VRは大きくなり、電流増幅率βの大きなトランジスターを選択するほど、出力される定電圧VRは小さくなる。
【0048】
この結果、例えば、水晶振動子500の種類により、水晶発振回路110の発振停止電圧VIが微妙に変動するのに合わせて、定電圧VRを微調整して、消費電力の極小化を図ることができる。
【0049】
C.第3実施例:
図11〜図13を参照して、第3実施例における発振装置について説明する。図11は、第3実施例におけるレギュレータの構成を示す図である。図12は、間欠動作信号を示すタイミングチャートである。図13は、第3実施例における発振装置の温度特性の最適化について説明する図である。
【0050】
第3実施例における発振装置において、第1実施例と異なる点は、レギュレータの構成である。その他の構成は、第1実施例と同様であるので、その説明を省略する。第3実施例におけるレギュレータ210bが、第1実施例におけるレギュレータ210と異なる点は、間欠動作用のスイッチとして機能する2つのトランジスターM01およびM02が設けられた点である。第1の間欠動作用トランジスターM01は、pトランジスターであり、差動増幅回路2101の差動対を構成する2つのpトランジスターM24、M25と高電位側電源VDとの間に直列に配置されている。第2の間欠動作用トランジスターM02は、2つの定電流源としてのnトランジスターM21、M35と低電位側電源VSとの間に直列に配置されている。
【0051】
第1の間欠動作用トランジスターM01のゲートには第1の間欠動作信号LPVが、制御回路220から入力され、オンとオフが切り替えられる。第2の間欠動作用トランジスターM02のゲートには第2の間欠動作信号XLPVが、制御回路220から入力され、オンとオフが切り替えられる。また、差動増幅回路2101の出力ノードと高電位側電源VDとの間には、間欠動作時における差動増幅回路2101の出力ノードの安定化容量として、キャパシタC5が配置されている。レギュレータ210bのその他の構成は、第1実施例におけるレギュレータ210と同一であるので、同一の構成要素について、図11において、図3と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
第1の間欠動作信号LPVがハイの時に第1の間欠動作用トランジスターM01はオフになり、差動増幅回路2101への電流の供給が遮断される。第1の間欠動作信号LPVがローの時に第1の間欠動作用トランジスターM01はオンになり、差動増幅回路2101に電流が供給される。第2の間欠動作信号XLPVは、第1の間欠動作信号LPVの反転信号である。第2の間欠動作信号XLPVがローの時に第2の間欠動作用トランジスターM02はオフになり、差動増幅回路2101および出力回路2102への電流の供給が遮断される。第2の間欠動作信号XLPVがハイの時に第2の間欠動作用トランジスターM02はオンになり、差動増幅回路2101および出力回路2102に電流が供給される。従って、第1の間欠動作信号LPVがハイで第2の間欠動作信号XLPVがローの時、レギュレータ210bは動作を停止し、第1の間欠動作信号LPVがローで第2の間欠動作信号XLPVがハイの時、レギュレータ210は動作する。図12に示すように、第1の間欠動作信号LPVおよび第2の間欠動作信号XLPVは、所定のタイミングでハイとローを繰り返す。この結果、レギュレータ210から出力される定電圧VRは、一定に保たれる。このような間欠動作により、レギュレータ210は実用に耐える定電圧VRを出力しつつ、その消費電流が低く抑えられる。
【0053】
第3実施例における振動回路では、第1実施例における振動回路より|ΔVR|aimを小さくして、定電圧VRの温度変化に対する傾きを、発振停止電圧VIの温度変化に対する傾きにより近付けることができる。すなわち、レギュレータ210bにおいて、第2の間欠動作信号XLPVがハイの時に流れる定電流I2を第1実施例より高くしても、第2の間欠動作信号XLPVがローの時に流れる定電流I2は0であるため、時間平均では、消費電流は低く抑えられるからである。
【0054】
図13を参照して、さらに説明する。間欠動作時における時間平均のレギュレータの消費電流Iregは、間欠動作がない場合における消費電流Iregより低くなる。したがって、第3実施例における|ΔVR|とレギュレータ210の消費電流Iregとの関係を示す線は、第1実施例における|ΔVR|とレギュレータ210の消費電流Iregとの関係を示す線より、低消費電流側にシフトする。この結果、レギュレータ210aの消費電流Iregと、水晶発振回路110の消費電流Ioscとの和が極小になる|ΔVR|aimは、間欠動作がない場合(第1実施例)と比較して、小さくなる。すなわち、このような|ΔVR|aimを実現するように定電流I2の設定および定電圧制御トランジスターM32の選択を行うことにより、定電圧VRの温度変化に対する傾きを発振停止電圧VIの温度変化に対する傾きにより近付けることができる。具体的には、出願人の実験によれば、下限温度T0における定電圧VR(T0)と下限温度T0における発振停止電圧VI(TO)との差は、0.4ボルト以下まで近づけることができる。また、下限温度T0における定電圧VR(T0)と下限温度T0における発振停止電圧VI(T0)との差は、上限温度T1における定電圧VR(T1)と上限温度T1における発振停止電圧VI(T1)との差の2倍以下にまで近付けることができる。
【0055】
この結果、水晶発振回路110の消費電流Iosc自体を抑制することができる。この結果、第3実施例における発振装置全体の消費電流は、第1実施例よりさらに大幅に低減することができる。
【0056】
D.変形例:
・第1変形例:
上記実施例では、定電流回路230における定電流Iref1、および、Iref2は、nAレベルの小さな値に固定し、定電圧VRの温度特性の調整は、レギュレータ210における定電流I2および定電圧制御トランジスターM32により行っている。定電流回路230の出力であるVrefの温度特性は、レギュレータ210における定電圧VRの温度特性が定電流I2および定電圧制御トランジスターM32の影響を受けるのと同様に、定電流Iref1、および、Iref2の大きさ、および、定電流回路230におけるトランジスターM11、M12、M14の特性の影響を受けて変動し得る。その結果、基準電圧Vrefの変動は、レギュレータ210における定電流I2に変動を与えるので、定電圧VRの温度特性にも若干の影響を与える。このため、すなわち、定電流Iref1、および、Iref2を大きくすれば、定電圧VRの温度変化に対する傾き|ΔVR|を小さくできる。このため、レギュレータ210における定電流I2および定電圧制御トランジスターM32の調整に加えて、定電流Iref1、Iref2や定電流回路230のトランジスターM11、M12、M14の調整も行っても良い。かかる場合には、レギュレータ210と定電流回路230と水晶発振回路110のそれぞれの消費電流の総和を極小にするように、温度変化に対する傾き|ΔVR|を設定すれば良い。このような調整を行った場合、定電流Iref1、Iref2、I2は、数nA〜数十nAレベルに抑制される。このレベルの低い低電流は、トランジスターM12、M14や定電圧制御トランジスターM32に通電されると、これらのトランジスターをしきい値電圧Vth近傍またはしきい値電圧Vth以下の領域、いわゆるサブスレッショルド領域で動作させる。
【0057】
・第2変形例:
上記第3実施例では、レギュレータ210bの間欠動作を行っているが、定電流回路230についても間欠動作を行っても良い。図14は、間欠動作可能な定電流回路の一例を示す図である。図14に示す定電流回路230bは、第3の間欠動作用トランジスターM03と、第4の間欠用トランジスターM04とを含んでいる。第3の間欠動作用トランジスターM03は、nトランジスターM14(定電流源)と、低電位側電源VSとの間に配置されている。第4の間欠用トランジスターM04は、pトランジスターM13と、高電位側電源VDとの間に配置されている。第3の間欠動作用トランジスターM03は、第2の間欠動作用トランジスターM02と同様に、制御回路220からの第2の間欠動作信号XLPVによりオンとオフが切り替えられるスイッチとして機能する。第4の間欠用トランジスターM04は、第1の間欠動作用トランジスターM01と同様に、制御回路220からの第1の間欠動作信号LPVによりオンとオフが切り替えられるスイッチとして機能する。定電流回路230bにおける他の構成は、図2に示す定電流回路230と同一であるので、同一の構成要素については、図14において図2と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
本変形例によれば、さらに、発振装置全体の消費電流を抑制することができる。また、第1変形例のように、レギュレータ210と定電流回路230と水晶発振回路110のそれぞれの消費電流の総和を極小にするように、温度変化に対する傾き|ΔVR|を設定する場合には、間欠動作時における定電流回路230の消費電流を考慮することとしても良い。
【0059】
・第3変形例:
上記実施例では、図1に示すように、発振装置100の出力であるクロック信号は、中央処理装置600に出力されるが、これに限られない。例えば、腕時計を始めとする時計に発振装置100を搭載する場合には、発振信号FSを分周して得られた1Hzのクロック信号を、時刻基準信号として、時計の秒針、分針、時針を回転駆動するステップモーターの駆動コイルに出力することとしても良い。
【0060】
以上、本発明の実施例および変形例について説明したが、本発明はこれらの実施例および変形例になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の態様での実施が可能である。
【符号の説明】
【0061】
100...発振装置
110...水晶発振回路
111...ゲート端子
112...ドレイン端子
210、210a、210b...レギュレータ
220...制御回路
230、230b...定電流回路
500...水晶振動子
600...中央処理装置
1101...インバータ
1102...フィードバック回路
2101...差動増幅回路
2102、2102a...出力回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振装置、半導体装置、電子機器および時計に関する。
【背景技術】
【0002】
定電圧を生成する定電圧生成回路と、生成された定電圧により水晶振動子を発振させる水晶発振回路とを含んで構成される発振装置が知られている。このような発振装置は、時計、携帯電話、コンピューター端末などに広く用いられている。このような発振装置は、特に携帯電話などのモバイル機器に搭載される場合など、消費電力を抑制することが求められている。
【0003】
水晶発振回路の消費電力は、水晶発振回路を駆動するための定電圧が大きい程大きくなるため、定電圧は極力小さくすることが消費電力の観点からは望ましい。一方で、水晶発振回路は、水晶発振回路に用いられるインバータ、発振させる水晶振動子の特性、負荷容量などにより定まる発振停止電圧を有している。発振停止電圧は、一般的な動作保証温度範囲(例えば、−40℃〜80℃)において、温度の上昇に伴い所定の傾きで直線的に低下することが知られている。供給される定電圧が発振停止電圧を下回ると水晶発振回路の発振動作が停止してしまうため、動作保証温度範囲において、常に定電圧は発振停止電圧以上に設定される必要がある。
【0004】
ここで、動作保証温度範囲において、定電圧の温度変化を、発振停止電圧の温度変化と同じにする、すなわち、定電圧の温度変化に対する傾きを、発振停止電圧の温度変化に対する傾きと同じにする技術が知られている(例えば、特許文献1)。こうすれば、動作保証温度範囲の全体に亘って、定電圧を、発振停止電圧以上で、極力小さくすることができ、水晶発振回路の消費電力を小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−538358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記技術では、定電圧生成回路における消費電流が考慮されていない。このため、水晶発振回路の消費電力を小さくすることができたとしても、定電圧生成回路における消費電力が大きくなり、結果として電子回路全体の消費電力は大きくなってしまうおそれがあった。例えば、上記技術では、定電圧生成回路において、定電圧制御トランジスターをしきい値Vthを大きく超える領域で動作させるべく、定電圧制御トランジスターに比較的高い電流を通電させている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、定電圧生成回路と水晶発振回路を含む発振装置、半導体装置、電子機器等の消費電力を全体として小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の第1の態様は、発振装置を提供する。第1の態様に係る発振装置は、定電圧生成回路と、水晶発振回路とを備える。前記定電圧生成回路は、第1の定電流を生成する第1の定電流源と、前記第1の定電流が通電され、定電圧を生成する定電圧制御トランジスターとを含み、前記定電圧は、温度変化に対して第1の傾きを有し、前記第1の傾きは前記第1の定電流に応じて変動する。前記水晶発振回路は、前記定電圧発生回路から供給される定電圧により発振駆動される水晶発振回路であって、発振可能な前記定電圧の下限値である発振停止電圧は温度変化に対して第2の傾きを有する。本発止回路において、第1の傾きは、前記第1の傾きと前記第2の傾きとの差と相関を有する前記水晶発振回路の消費電流と、前記第1の定電流の大きさと相関を有する前記定電圧生成回路の消費電流との和を極小とするように定められている。第1の態様に係る発振装置によれば、発振装置全体の消費電力を抑制することができる。
【0009】
第1の態様に係る発振装置において、第1の定電流は、前記定電圧制御トランジスターをサブスレッショルド領域で動作させる値に設定されていても良い。こうすれば、定電圧生成回路の消費電流を極めて小さくできるため、発振装置全体の消費電力を抑制することができる。
【0010】
第1の態様に係る発振装置は、さらに、前記第1の傾きを、間欠動作させる間欠制御部を備え、前記第1の定電流は、前記水晶発振回路の消費電流と、前記間欠動作時における前記定電圧生成回路の消費電流との和を極小とするように定められていても良い。こうすれば、間欠動作により定電圧生成回路の消費電流を抑制できるため、第1の傾きを水晶発振回路の消費電流をより小さくするように設定できる。この結果、発振装置全体の消費電力をより抑制することができる。
【0011】
第1の態様に係る発振装置において、前記定電圧生成回路は、複数のトランジスターを含み、前記複数のトランジスターの中から選択された少なくとも1つのトランジスターが前記定電圧制御トランジスターとして使用されていても良い。
【0012】
本発明の第2の態様は、発振装置を提供する。第1の態様に係る発振装置は、定電圧生成回路と、水晶発振回路と、定電流回路とを備える。前記定電圧生成回路は、基準電圧を参照して第1の定電流を生成する第1の定電流源と、前記第1の定電流が通電され、定電圧を生成する定電圧制御トランジスターとを含み、前記定電圧は、温度変化に対して第1の傾きを有し、前記第1の定電流に応じて変動する。前記水晶発振回路は、前記定電圧発生回路から供給される定電圧により発振駆動される水晶発振回路であって、発振可能な前記定電圧の下限値である発振停止電圧は温度変化に対して第2の傾きを有する。前記定電流回路は、定電流制御トランジスターを用いて第2の定電流を生成し、前記第2の定電流を用いて前記基準電圧を生成する。本発振装置において、前記第1の傾きは、前記第1の傾きと前記第2の傾きとの差と相関を有する前記水晶発振回路の消費電流と、前記第1の定電流の大きさと相関を有する前記定電圧生成回路の消費電流と、前記第2の定電流の大きさと相関を有する前記定電流回路の消費電流との和を極小とするように定められている。第2の態様に係る発振装置によれば、発振装置全体の消費電力を抑制することができる。
【0013】
第2の態様に係る発振装置において、前記第1の定電流は、前記定電圧制御トランジスターをサブスレッショルド領域で動作させる値に設定され、前記第1の傾きは、前記定電流制御トランジスターをサブスレッショルド領域で動作させる値に設定されていても良い。こうすれば、定電圧生成回路および定電流回路の消費電流を極めて小さくできるため、発振装置全体の消費電力を抑制することができる。
【0014】
第2の態様に係る発振装置は、さらに、前記第1の定電流源と、前記定電流回路を、間欠動作させる間欠制御部を備え、前記第1の傾きは、前記水晶発振回路の消費電流と、前記間欠動作時における前記定電圧生成回路の消費電流と、前記間欠動作時における前記定電流回路の消費電流の和を極小とするように定められていても良い。こうすれば、間欠動作により定電圧生成回路および定電流回路の消費電流を抑制できるため、第1の傾きを水晶発振回路の消費電流をより小さくするように設定できる。この結果、発振装置全体の消費電力をより抑制することができる。
【0015】
上記態様に係る発振装置において、動作保証温度範囲の上限温度における前記定電圧は、前記上限温度における前記水晶発振回路の発振開始電圧に設定されていても良く、動作保証温度範囲の上限温度における前記定電圧は、前記上限温度における前記水晶発振回路の発振開始電圧にノイズマージンを加えた値に設定されていても良い。また、前記定電圧は、動作保証温度範囲の全温度において、前記水晶発振回路の発振開始電圧にノイズマージンを加えた第1の値と、前記動作保証温度範囲の上限温度における前記定電圧と前記動作保証温度範囲の下限温度における前記定電圧の差に前記第1の値を加えた第2の値との間に設定されても良い。こうすれば、水晶発振回路の消費電流を、水晶発振回路が動作停止しない範囲で極小にすることができる。
【0016】
上記態様に係る発振装置において、動作保証温度範囲の下限温度における前記定電圧と前記下限温度における前記発振停止電圧との差は、0.4ボルト以下であっても良く、動作保証温度範囲の下限温度における前記定電圧と前記下限温度における前記発振停止電圧との差は、動作保証温度範囲の上限温度における前記定電圧と前記上限温度における前記発振停止電圧との差の2倍以下であっても良い。
【0017】
本発明は、上記態様のほか、種々の態様にて実現され得る。例えば、本発明は、上記態様に係る発振装置を含む半導体装置として実現される。また、本発明は、上記態様に係る発振装置または該半導体装置を含み、前記発振装置の発振出力を用いて、動作基準信号を生成する電子機器、あるいは、上記態様に係る発振装置または該半導体装置を含み、前記発振装置の発振出力を用いて、時刻基準信号を生成する時計として実現される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】発振装置の概略構成を示す説明図。
【図2】定電流回路の内部構成を示す説明図。
【図3】レギュレータの内部構成を示す説明図。
【図4】水晶発振回路の内部構成を示す説明図。
【図5】発振装置の温度特性を示す図。
【図6】定電圧制御トランジスターの特性を説明する図。
【図7】第1実施例における発振装置の温度特性の最適化について説明する第1の図。
【図8】第1実施例における発振装置の温度特性の最適化について説明する第2の図。
【図9】第1実施例における発振装置の温度特性の最適化について説明する第3の図。
【図10】第2実施例におけるレギュレータの構成を示す図。
【図11】第3実施例におけるレギュレータの構成を示す図。
【図12】間欠動作信号を示すタイミングチャート。
【図13】第3実施例における発振装置の温度特性の最適化について説明する図。
【図14】間欠動作可能な定電流回路の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施態様について、図面を参照しつつ、実施例に基づいて説明する。
【0020】
A.第1実施例:
・発振装置の構成:
図1〜図4を参照して、第1実施例における発振装置について説明する。図1は、発振装置の概略構成を示す説明図である。図2は、定電流回路の内部構成を示す説明図である。図3は、レギュレータの内部構成を示す説明図である。図4は、水晶発振回路の内部構成を示す説明図である。図1に示すように、発振装置100は、定電流回路230と、レギュレータ210と、水晶発振回路110と、制御回路220とを含んでいる。
【0021】
定電流回路230は、後述するように定電流Iref1およびIref2を生成し、生成した定電流を用いて基準電圧Vrefを生成する。図2に示すように、定電流回路230には、高電位側電源VDと、低電位側電源VSとが供給される。定電流回路230は、ソースおよびゲートが低電位側電源VSに接続されたディプレッション型のNチャンネル電界効果トランジスターM11を備えている。トランジスターM11は、定電流Iref1を生成する定電流源として機能する。定電流Iref1は、例えば、5nA〜12nA(ナノアンペア)程度に設定されている。トランジスターM11のドレインと高電位側電源VDとの間には、エンハンスメント型のPチャンネル電界効果トランジスターM12が配置されている。以下では、Nチャンネル電界効果トランジスターをnトランジスターと表記し、Pチャンネル電界効果トランジスターをpトランジスターと表記し、特に断らない限り、エンハンスメント型のトランジスターであるものとする。
【0022】
定電流回路230は、さらに、pトランジスターM13とnトランジスターM14とを備えている。pトランジスターM13のソースは高電位側電源VDと接続されている。nトランジスターM14は、pトランジスターM13のドレインと低電位側電源VSとの間に配置されている。pトランジスターM13は、上述したpトランジスターM12とカレントミラーを構成している。この結果、直列に接続されたpトランジスターM13と、nトランジスターM14には、定電流Iref2が通電する。定電流Iref2は、例えば、Iref1の約3倍の値とされる。nトランジスターM14は、ダイオード接続されており、nトランジスターM14のドレイン−ソース間の電圧は、一定に保持されている。この結果、低電位側電源VSの電位にnトランジスターM14のドレイン−ソース間の電圧を加えた電位が基準電圧Vrefとして出力される。Vrefの出力ノードと低電位側電源VSとの間には安定化容量としてキャパシタC1が配置されている。
【0023】
レギュレータ210は、定電流回路230から供給される基準電圧Vrefを参照して、定電圧VRを生成する定電圧生成回路である。レギュレータ210は、差動増幅回路2101と、出力回路2102とを備えている。
【0024】
差動増幅回路2101は、定電流源として機能するnトランジスターM21と、差動対を構成する2つのnトランジスターM22およびM23と、カレントミラーを構成する2つのpトランジスターM24およびM25とを含んでいる。nトランジスターM21のゲートには、上述した基準電圧Vrefが入力され、この結果、定電流I1が生成される。定電流I1は、本実施例では、上述した定電流Iref1と同一にされる。
【0025】
出力回路2102は、定電流源として機能するnトランジスターM31と、ダイオード接続されたpトランジスターM32と、出力用トランジスターとして機能するpトランジスターM33とを含んでいる。3つのトランジスターM31〜M33は、低電位側電源VSと高電位側電源VDとの間に、低電位側電源VS側から符号の順に直列に配置されている。nトランジスターM31のゲートには、上述した基準電圧Vrefが入力され、この結果、定電流I2が生成される。定電流I2は、本実施例では、50nAに設定されている。定電流I2の値は、発振装置100の消費電力の抑制のために重要な意味を有するので、後に詳述する。
【0026】
差動増幅回路2101は、第1の入力端に入力された電圧と、第2の入力端に入力された電圧との差分を増幅して出力する回路である。差動増幅回路2101の第1の入力端であるnトランジスターM22のゲートには、基準電圧Vrefが入力される。差動増幅回路2101の第2の入力端であるnトランジスターM23のゲートには、nトランジスターM31のドレイン電圧FBが入力される。差動増幅回路2101の出力であるpトランジスターM24のドレイン電圧は、出力回路2102のpトランジスターM33のゲートに入力される。この結果、基準電圧Vrefと、出力回路2102におけるnトランジスターM31のドレイン電圧FBが同じになるように、pトランジスターM33のドレイン電流が制御される(Vref=FB)。この結果、出力回路2102の出力ノード(pトランジスターM33のソース)から出力される定電圧VRは、基準電圧VrefにpトランジスターM32のソース−ドレイン電圧Vdsを加えた値に設定される(VR=Vref+Vds)。このように、定電圧VRの値は、pトランジスターM32の特性に左右されるので、本明細書において、pトランジスターM32を定電圧制御トランジスターとも呼ぶ。
【0027】
なお、レギュレータ210は、キャパシタC2、C3、C4を含んでいる。キャパシタC2は、基準電圧Vrefの安定化容量として、基準電圧の入力ノードと低電位側電源VSの間に配置されている。キャパシタC3は、位相補償容量として、差動増幅回路2101の出力ノード(pトランジスターM24のドレイン、pトランジスターM33のゲート)と、出力用トラインジスタの出力ノード(pトランジスターM33のソース)との間に配置されている。キャパシタC4は、定電圧VRの安定化容量として、定電圧VRの出力ノードと低電位側電源VSとの間に配置されている。
【0028】
水晶発振回路110は、水晶振動子500を発振させる回路である。水晶発振回路110は、定電圧VRと低電位側電源VSとが供給され、定電圧VRを用いて発振駆動される。水晶発振回路110は、インバータ1101と、フィードバック回路1102とを含んで構成される。フィードバック回路1102は、水晶振動子500の一端に接続されるゲート端子111、水晶振動子500の他端に接続されるドレイン端子112と、帰還抵抗Rfと、出力抵抗Rdと、位相補償用のキャパシタCacを含んでいる。フィードバック回路1102は、インバータ1101のドレイン出力の位相を、180度反転してインバータ1101のゲートへフィードバック入力する。インバータ1101は、ドレインが互いに接続された一対のpトランジスターM41、nトランジスターM42を含む。インバータ1101は、低電位側電源VSと定電圧VRとの間に配置され、両者の電位差により電力供給を受け駆動される。以上の構成の水晶発振回路110は、インバータ1101に定電圧VRが印加されると、インバータ1101を構成するトランジスター対が交互にオンオフ駆動され、最終的には水晶振動子500が安定した発振動作を行うようになる。これにより、この水晶発振回路110の出力ノード(インバータ1101のドレイン)からは、所定の周波数をもつ発振信号FSが出力されることになる。なお、水晶発振回路110において、ゲート端子111と低電位側電源VSの間、および、ドレイン端子112と低電位側電源VSの間には、発振安定化容量として、それぞれ、キャパシタCG、CDが配置されている。
【0029】
制御回路220は、発振信号FSが入力され、発振信号FSを分周あるいは逓倍して、所望の周波数を有するクロック信号を生成する。発振装置100が生成したクロック信号は、例えば、発振装置100が搭載されている電子機器の中央処理装置600に供給される。中央処理装置600は、例えば、供給されたクロック信号を、中央処理装置600自身あるいは中央処理装置600が制御する他の回路や半導体装置の動作基準信号として用いる。あるいは、中央処理装置600は、例えば、供給されたクロック信号を、時刻基準信号として用いて、時計機能、時間計測機能を実現する。発振装置100が搭載される電子機器としては、例えば、携帯電話、ノートパソコンなどのモバイル機器、ビデオ、DVD、ゲーム機器、パソコンなどの家電製品がある。本実施例では、発振装置100は、半導体製造技術を用いて半導体装置として形成される。発振装置100は、中央処理装置600と同一の半導体装置として形成されても良いし、中央処理装置600とは別体の半導体装置として形成され、中央処理装置600とインターフェースを介して接続されても良い。
【0030】
・発振装置の温度特性:
次に、図5〜図6を参照して、発振装置100の温度特性について説明する。図5は、発振装置100の温度特性を示す図である。図6は、定電圧制御トランジスターの特性を説明する図である。水晶発振回路110には、用いられる水晶振動子500の特性、インバータ1101の特性、キャパシタCG、CDなどにより定まる発振停止電圧VIが存在する。発振停止電圧VIは、水晶発振回路110が発振可能な定電圧VRの下限値であり、定電圧VRが、発振停止電圧VIを下回ると、水晶発振回路110の発振動作が停止してしまう。一方で、水晶発振回路110の消費電力は、定電圧VRに依存し、定電圧VRが大きいほど大きくなる。水晶発振回路110を、少ない消費電力で駆動するためには、供給される定電圧VRの値を、できるだけ小さく設定することが望ましい。従って、レギュレータ210から水晶発振回路110に供給される定電圧VRは、発振停止電圧VIより大きく、かつ、できるだけ小さな値に設定することが望ましい。
【0031】
水晶発振回路110の発振停止電圧VIは、図5に示すように、温度変化に対して、直線的に低下することが知られている。所定の動作保証温度の下限温度T0(本実施例では、−40℃)における発振停止電圧VIをVI(T0)、上限温度T1(本実施例では、85℃)における発振停止電圧VIをVI(T1)と表記する。発振停止電圧VIの温度変化に対する変動量をΔVI=VI(T1)−VI(T0)とする。ΔVIは、発振停止電圧VIの温度特性を表す直線の傾きの大きさに対応する。
【0032】
本実施例において、定電圧VRの温度特性は、図5において示すように調整されている。定電圧VRは、図5に示すように温度変化に対して、直線的に低下する。所定の動作保証温度の下限温度T0における定電圧VRをVR(T0)、上限温度T1における定電圧VRをVR(T1)と表記する。定電圧VRの温度変化に対する変動量をΔVR=VR(T1)−VR(T0)とする。ΔVRは、定電圧VRの温度特性を表す直線の傾きの大きさに対応する。
【0033】
ここで、定電圧VRの傾きに対応する変動量ΔVRを定める主要因について説明する。図6には、レギュレータ210の出力回路2102に含まれる上述した定電圧制御トランジスターM32におけるゲート−ソース間電圧の絶対値|Vgs|と、ドレイン−ソース間に通電される定電流I2との関係が示されている。図6には、下限温度T0における|Vgs|−I2曲線と、上限温度T1における|Vgs|−I2曲線が示されている。
【0034】
ここで、定電流I2がIbで一定である場合、下限温度T0と上限温度T1との間におけるゲート−ソース間電圧の変動量の絶対値|ΔVgs(Ib)|は、図6に図示されている巾で表される。一方、定電流I2がIbより低いIaである場合、限温度T0と上限温度T1との間におけるゲート−ソース間電圧の変動量の絶対値|ΔVgs(Ia)|は図6に図示されている巾で表される。これから解るように、温度変化に対するゲート−ソース間電圧の変動量の絶対値|ΔVgs|は、通電する定電流I2が小さい程大きくなり、大きいほど小さくなることが解る。
【0035】
ここで、図3に示すように定電圧制御トランジスターM32はダイオード接続されているため、ゲート−ソース間電圧とドレイン−ソース間電圧は等しい(Vgs=Vds)。そして、上述したようにVR=Vref+Vdsであるから、Vrefが一定であるとすると、ΔVR=ΔVds=ΔVgsである。従って、定電圧VRの温度変化に対する変動量の絶対値|ΔVR|、および、定電圧VRの温度変化を表す直線の傾きの絶対値は、通電する定電流I2が小さい程大きくなり、大きいほど小さくなることが解る。
【0036】
・発振装置の温度特性の最適化
以上のような発振装置100の温度特性を最適に設定する手法について図7〜図9を参照して説明する。ここで、発振装置100の温度特性の最適化の目的は、動作保証温度範囲内のすべての温度において発振装置が停止することなく動作し、かつ、発振装置100の消費電流を極力小さくすることである。そのための方針は以下のとおりである。
1.上限温度T1における定電圧VR(T1)を、上限温度T1における発振開始電圧Vs(T1)+ノイズマージン電圧Vnに設定する。
2.水晶発振回路110の消費電流を抑制するため、定電圧VRの温度変化に対する傾き(ΔVRに対応)を、発振停止電圧VIの温度変化に対する傾き(ΔVIに対応)になるべく近付ける(平行に近付ける)。
3.レギュレータ210の消費電流を抑制するため、定電流I2は、なるべく小さくする。
【0037】
ここで、発振停止電圧VIが発振している水晶発振回路110が発振停止してしまう電圧であるのに対して、発振開始電圧Vsは、停止している水晶発振回路110が発振を開始する電圧である。発振開始電圧Vsは、発振停止電圧VI+0.1V程度である。ノイズマージン電圧Vnは、定電圧VRがノイズにより変動することを考慮して設けるマージンであり、本実施例では0.1V程度としている。したがって、本実施例では、VR(T1)を、VI(T1)+0.4Vに設定する。この設定は、定電流I2の大きさに応じて、適切なしきい値電圧Vthを持つトランジスターを定電圧制御トランジスターM32として選択することにより実現できる。このように、VR(T1)を設定すると、定電圧VRは、動作保証温度範囲の全温度において、水晶発振回路110の発振開始電圧VsにノイズマージンVnを加えた値VRminと、上限温度T1における定電圧VR(T1)と下限温度T0における定電圧VR(T0)の差にVRminを加えた値VRmaxとの間に設定される(Vs+Vn≦VR≦Vs+Vn+(VR(T0)−VR(T1))。
【0038】
また、2番目の方針と3番目の方針は、上述した温度特性から解るように互いに相反する。すなわち、ΔVIに近づけるために、ΔVRを小さくしようとすると、レギュレータ210の消費電流が大きくなってしまう。このため、発振装置100の温度特性の最適化は、定電圧制御トランジスターM32の選択と、定電流I2の設定が重要となる。
【0039】
図7には、ある1つのpトランジスターを定電圧制御トランジスターM32として用いた場合における定電流I2と定電圧VRとの関係と、定電流I2と定電圧VRの温度変化に対する変動量の絶対値|ΔVR|との関係とが図示されている。図7には、定電流I2と定電圧VRとの関係として、下限温度T0における定電圧VR(T0)と、上限温度T1における定電圧VR(T1)をそれぞれ図示している。かかる定電圧制御トランジスターM32を用いる場合には、図に示す定電流設定範囲に定電流I2を設定できるが、VR(T1)を、Vs(T1)+ノイズマージン電圧とする定電流I2は、図に示すIxとなる。
【0040】
図8に、定電圧制御トランジスターM32に用いるトランジスターと定電流I2を適宜変更しながら、VR(T1)をVs(T1)+ノイズマージン電圧に設定した場合における、|ΔVR|と水晶発振回路110の消費電流Ioscとの関係と、|ΔVR|とレギュレータ210の消費電流Iregとの関係とを示す。なお、消費電流Ioscおよび消費電流Iregは、動作保証温度範囲の中央値t(本実施例では25℃=常温)における消費電流を用いた。
【0041】
図8において、右側の波線で示すように、定電流I2を小さくし過ぎると、|ΔVR|が|ΔVI|と比較して大きくなり、図9(a)に示すように、定電圧VRの傾きが、発振停止電圧VIの傾きと比較して大きくなってしまう。水晶発振回路110の温度tにおける消費電流Ioscは、|ΔVR|と|ΔVI|との差分に相関を有し、当該差分が大きいほど消費電流Ioscは大きくなる。すなわち、|ΔVR|と|ΔVI|との差分が大きいと、温度tにおいて定電圧VRが必要以上に大きくなる。従って、レギュレータ210の消費電流Iregは小さいものの、水晶発振回路110の消費電流Ioscが大きくなり、発振装置100全体の消費電流は、大きくなってしまう。
【0042】
一方で、図8において、左側の波線で示すように、定電流I2を大きく設定すれば、図9(b)に示すように、|ΔVR|と|ΔVI|を等しくすることができる。こうすれば、温度tにおいて、定電圧VRを最小にすることができる。しかしながら、レギュレータ210の消費電流Iregは、当然ながら定電流I2の大きさと相関を有し、定電流I2が大きいほど消費電流Iregは大きくなる。水晶発振回路110の消費電流Ioscは最小にできるものの、レギュレータ210の消費電流Iregが大きくなり、発振装置100全体の消費電流は、大きくなってしまう。
【0043】
本実施例では、図8において、中央の波線で示すように、定電圧制御トランジスターM32と定電流I2を最適化することにより、水晶発振回路110の消費電流Ioscとレギュレータ210の消費電流Iregの和が最小になるように|ΔVR|aimを設定している。
【0044】
以上説明した本実施例によれば、水晶発振回路110の消費電流Ioscと、レギュレータ210の消費電流Iregの和を極小にし、その結果として発振装置100全体の消費電流を抑制することができる。具体的には、本実施例では、レギュレータ210の定電流I2は、数十nAレベルに抑制される。このレベルの低い低電流は、定電圧制御トランジスターM32に通電されると、定電圧制御トランジスターM32をしきい値電圧Vth近傍またはしきい値電圧Vth以下の領域、いわゆるサブスレッショルド領域で動作させる。
【0045】
B.第2実施例:
図10を参照して、第2実施例について説明する。第2実施例における発振装置において、第1実施例と異なる点は、レギュレータの構成である。その他の構成は、第1実施例と同様であるので、その説明を省略する。図10は、第2実施例におけるレギュレータの構成を示す図である。第2実施例におけるレギュレータ210aが、第1実施例におけるレギュレータ210と異なる点は、出力回路2102aにおいて、1つの定電圧制御トランジスターM32に代えて、複数の定電圧制御トランジスターM32a〜M32dが選択可能に設けられた点である。
【0046】
具体的には、複数の定電圧制御トランジスターM32a〜M32dは、それぞれ、スイッチとして機能するpトランジスターSWa〜SWdと直列に接続されている。そして、定電圧制御トランジスターとスイッチ用トランジスターの各組は、それぞれ、並列に接続されている。各スイッチ用トランジスターSWa〜SWdのゲートには選択信号XTa〜XTdが、制御回路220から入力され、オンとオフが切り替えられる。複数の定電圧制御トランジスターM32a〜M32dは、電流増幅率βが異なる複数種類のトランジスターを含む。電流増幅率βは、トランジスターのゲート幅W、ゲート長Lのサイズを変更することによって、任意の値に設定することができる。複数の定電圧制御トランジスターM32a〜M32dのうち、オンにされたスイッチ用トランジスターと直列に接続されたトランジスターが、定電圧VRの値を制御するために使用される。レギュレータ210aのその他の構成は、第1実施例におけるレギュレータ210と同一であるので、同一の構成要素について、図10において、図3と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
第2実施例における発振装置によれば、複数の定電圧制御トランジスターM32a〜M32dの中から、1または複数のトランジスターを選択的に使用することにより、定電圧VRの値を微調整することができる。すなわち、電流増幅率βの小さなトランジスターを選択するほど、出力される定電圧VRは大きくなり、電流増幅率βの大きなトランジスターを選択するほど、出力される定電圧VRは小さくなる。
【0048】
この結果、例えば、水晶振動子500の種類により、水晶発振回路110の発振停止電圧VIが微妙に変動するのに合わせて、定電圧VRを微調整して、消費電力の極小化を図ることができる。
【0049】
C.第3実施例:
図11〜図13を参照して、第3実施例における発振装置について説明する。図11は、第3実施例におけるレギュレータの構成を示す図である。図12は、間欠動作信号を示すタイミングチャートである。図13は、第3実施例における発振装置の温度特性の最適化について説明する図である。
【0050】
第3実施例における発振装置において、第1実施例と異なる点は、レギュレータの構成である。その他の構成は、第1実施例と同様であるので、その説明を省略する。第3実施例におけるレギュレータ210bが、第1実施例におけるレギュレータ210と異なる点は、間欠動作用のスイッチとして機能する2つのトランジスターM01およびM02が設けられた点である。第1の間欠動作用トランジスターM01は、pトランジスターであり、差動増幅回路2101の差動対を構成する2つのpトランジスターM24、M25と高電位側電源VDとの間に直列に配置されている。第2の間欠動作用トランジスターM02は、2つの定電流源としてのnトランジスターM21、M35と低電位側電源VSとの間に直列に配置されている。
【0051】
第1の間欠動作用トランジスターM01のゲートには第1の間欠動作信号LPVが、制御回路220から入力され、オンとオフが切り替えられる。第2の間欠動作用トランジスターM02のゲートには第2の間欠動作信号XLPVが、制御回路220から入力され、オンとオフが切り替えられる。また、差動増幅回路2101の出力ノードと高電位側電源VDとの間には、間欠動作時における差動増幅回路2101の出力ノードの安定化容量として、キャパシタC5が配置されている。レギュレータ210bのその他の構成は、第1実施例におけるレギュレータ210と同一であるので、同一の構成要素について、図11において、図3と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
第1の間欠動作信号LPVがハイの時に第1の間欠動作用トランジスターM01はオフになり、差動増幅回路2101への電流の供給が遮断される。第1の間欠動作信号LPVがローの時に第1の間欠動作用トランジスターM01はオンになり、差動増幅回路2101に電流が供給される。第2の間欠動作信号XLPVは、第1の間欠動作信号LPVの反転信号である。第2の間欠動作信号XLPVがローの時に第2の間欠動作用トランジスターM02はオフになり、差動増幅回路2101および出力回路2102への電流の供給が遮断される。第2の間欠動作信号XLPVがハイの時に第2の間欠動作用トランジスターM02はオンになり、差動増幅回路2101および出力回路2102に電流が供給される。従って、第1の間欠動作信号LPVがハイで第2の間欠動作信号XLPVがローの時、レギュレータ210bは動作を停止し、第1の間欠動作信号LPVがローで第2の間欠動作信号XLPVがハイの時、レギュレータ210は動作する。図12に示すように、第1の間欠動作信号LPVおよび第2の間欠動作信号XLPVは、所定のタイミングでハイとローを繰り返す。この結果、レギュレータ210から出力される定電圧VRは、一定に保たれる。このような間欠動作により、レギュレータ210は実用に耐える定電圧VRを出力しつつ、その消費電流が低く抑えられる。
【0053】
第3実施例における振動回路では、第1実施例における振動回路より|ΔVR|aimを小さくして、定電圧VRの温度変化に対する傾きを、発振停止電圧VIの温度変化に対する傾きにより近付けることができる。すなわち、レギュレータ210bにおいて、第2の間欠動作信号XLPVがハイの時に流れる定電流I2を第1実施例より高くしても、第2の間欠動作信号XLPVがローの時に流れる定電流I2は0であるため、時間平均では、消費電流は低く抑えられるからである。
【0054】
図13を参照して、さらに説明する。間欠動作時における時間平均のレギュレータの消費電流Iregは、間欠動作がない場合における消費電流Iregより低くなる。したがって、第3実施例における|ΔVR|とレギュレータ210の消費電流Iregとの関係を示す線は、第1実施例における|ΔVR|とレギュレータ210の消費電流Iregとの関係を示す線より、低消費電流側にシフトする。この結果、レギュレータ210aの消費電流Iregと、水晶発振回路110の消費電流Ioscとの和が極小になる|ΔVR|aimは、間欠動作がない場合(第1実施例)と比較して、小さくなる。すなわち、このような|ΔVR|aimを実現するように定電流I2の設定および定電圧制御トランジスターM32の選択を行うことにより、定電圧VRの温度変化に対する傾きを発振停止電圧VIの温度変化に対する傾きにより近付けることができる。具体的には、出願人の実験によれば、下限温度T0における定電圧VR(T0)と下限温度T0における発振停止電圧VI(TO)との差は、0.4ボルト以下まで近づけることができる。また、下限温度T0における定電圧VR(T0)と下限温度T0における発振停止電圧VI(T0)との差は、上限温度T1における定電圧VR(T1)と上限温度T1における発振停止電圧VI(T1)との差の2倍以下にまで近付けることができる。
【0055】
この結果、水晶発振回路110の消費電流Iosc自体を抑制することができる。この結果、第3実施例における発振装置全体の消費電流は、第1実施例よりさらに大幅に低減することができる。
【0056】
D.変形例:
・第1変形例:
上記実施例では、定電流回路230における定電流Iref1、および、Iref2は、nAレベルの小さな値に固定し、定電圧VRの温度特性の調整は、レギュレータ210における定電流I2および定電圧制御トランジスターM32により行っている。定電流回路230の出力であるVrefの温度特性は、レギュレータ210における定電圧VRの温度特性が定電流I2および定電圧制御トランジスターM32の影響を受けるのと同様に、定電流Iref1、および、Iref2の大きさ、および、定電流回路230におけるトランジスターM11、M12、M14の特性の影響を受けて変動し得る。その結果、基準電圧Vrefの変動は、レギュレータ210における定電流I2に変動を与えるので、定電圧VRの温度特性にも若干の影響を与える。このため、すなわち、定電流Iref1、および、Iref2を大きくすれば、定電圧VRの温度変化に対する傾き|ΔVR|を小さくできる。このため、レギュレータ210における定電流I2および定電圧制御トランジスターM32の調整に加えて、定電流Iref1、Iref2や定電流回路230のトランジスターM11、M12、M14の調整も行っても良い。かかる場合には、レギュレータ210と定電流回路230と水晶発振回路110のそれぞれの消費電流の総和を極小にするように、温度変化に対する傾き|ΔVR|を設定すれば良い。このような調整を行った場合、定電流Iref1、Iref2、I2は、数nA〜数十nAレベルに抑制される。このレベルの低い低電流は、トランジスターM12、M14や定電圧制御トランジスターM32に通電されると、これらのトランジスターをしきい値電圧Vth近傍またはしきい値電圧Vth以下の領域、いわゆるサブスレッショルド領域で動作させる。
【0057】
・第2変形例:
上記第3実施例では、レギュレータ210bの間欠動作を行っているが、定電流回路230についても間欠動作を行っても良い。図14は、間欠動作可能な定電流回路の一例を示す図である。図14に示す定電流回路230bは、第3の間欠動作用トランジスターM03と、第4の間欠用トランジスターM04とを含んでいる。第3の間欠動作用トランジスターM03は、nトランジスターM14(定電流源)と、低電位側電源VSとの間に配置されている。第4の間欠用トランジスターM04は、pトランジスターM13と、高電位側電源VDとの間に配置されている。第3の間欠動作用トランジスターM03は、第2の間欠動作用トランジスターM02と同様に、制御回路220からの第2の間欠動作信号XLPVによりオンとオフが切り替えられるスイッチとして機能する。第4の間欠用トランジスターM04は、第1の間欠動作用トランジスターM01と同様に、制御回路220からの第1の間欠動作信号LPVによりオンとオフが切り替えられるスイッチとして機能する。定電流回路230bにおける他の構成は、図2に示す定電流回路230と同一であるので、同一の構成要素については、図14において図2と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
本変形例によれば、さらに、発振装置全体の消費電流を抑制することができる。また、第1変形例のように、レギュレータ210と定電流回路230と水晶発振回路110のそれぞれの消費電流の総和を極小にするように、温度変化に対する傾き|ΔVR|を設定する場合には、間欠動作時における定電流回路230の消費電流を考慮することとしても良い。
【0059】
・第3変形例:
上記実施例では、図1に示すように、発振装置100の出力であるクロック信号は、中央処理装置600に出力されるが、これに限られない。例えば、腕時計を始めとする時計に発振装置100を搭載する場合には、発振信号FSを分周して得られた1Hzのクロック信号を、時刻基準信号として、時計の秒針、分針、時針を回転駆動するステップモーターの駆動コイルに出力することとしても良い。
【0060】
以上、本発明の実施例および変形例について説明したが、本発明はこれらの実施例および変形例になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の態様での実施が可能である。
【符号の説明】
【0061】
100...発振装置
110...水晶発振回路
111...ゲート端子
112...ドレイン端子
210、210a、210b...レギュレータ
220...制御回路
230、230b...定電流回路
500...水晶振動子
600...中央処理装置
1101...インバータ
1102...フィードバック回路
2101...差動増幅回路
2102、2102a...出力回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振装置であって、
第1の定電流を生成する第1の定電流源と、前記第1の定電流が通電され、定電圧を生成する定電圧制御トランジスターとを含み、前記定電圧は、温度変化に対して第1の傾きを有し、前記第1の傾きは前記第1の定電流に応じて変動する、定電圧生成回路と、
前記定電圧発生回路から供給される定電圧により発振駆動される水晶発振回路であって、発振可能な前記定電圧の下限値である発振停止電圧は温度変化に対して第2の傾きを有する、水晶発振回路と、
を備え、
前記第1の傾きは、前記第1の傾きと前記第2の傾きとの差と相関を有する前記水晶発振回路の消費電流と、前記第1の定電流の大きさと相関を有する前記定電圧生成回路の消費電流との和を極小とするように定められており、
前記第1の定電流は、前記定電圧制御トランジスターをサブスレッショルド領域で動作させる値に設定されている、発振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発振装置は、さらに、
前記第1の定電流源を、間欠動作させる間欠制御部を備え、
前記第1の傾きは、前記水晶発振回路の消費電流と、前記間欠動作時における前記定電圧生成回路の消費電流との和を極小とするように定められている、発振装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の発振装置において、
前記定電圧生成回路は、複数のトランジスターを含み、
前記複数のトランジスターの中から選択された少なくとも1つのトランジスターが前記定電圧制御トランジスターとして使用されている、発振装置。
【請求項4】
発振装置であって、
基準電圧を参照して第1の定電流を生成する第1の定電流源と、前記第1の定電流が通電され、定電圧を生成する定電圧制御トランジスターとを含み、前記定電圧は、温度変化に対して第1の傾きを有し、前記第1の定電流に応じて変動する、定電圧生成回路と、
前記定電圧発生回路から供給される定電圧により発振駆動される水晶発振回路であって、発振可能な前記定電圧の下限値である発振停止電圧は温度変化に対して第2の傾きを有する、水晶発振回路と、
定電流制御トランジスターを用いて第2の定電流を生成し、前記第2の定電流を用いて前記基準電圧を生成する定電流回路と、
を備え、
前記第1の傾きは、前記第1の傾きと前記第2の傾きとの差と相関を有する前記水晶発振回路の消費電流と、前記第1の定電流の大きさと相関を有する前記定電圧生成回路の消費電流と、前記第2の定電流の大きさと相関を有する前記定電流回路の消費電流との和を極小とするように定められており、
前記第1の定電流は、前記定電圧制御トランジスターをサブスレッショルド領域で動作させる値に設定され、
前記第2の定電流は、前記定電流制御トランジスターをサブスレッショルド領域で動作させる値に設定されている、発振装置。
【請求項5】
請求項4に記載の発振装置は、さらに、
前記第1の定電流源と、前記定電流回路を、間欠動作させる間欠制御部を備え、
前記第1の傾きは、前記水晶発振回路の消費電流と、前記間欠動作時における前記定電圧生成回路の消費電流と、前記間欠動作時における前記定電流回路の消費電流の和を極小とするように定められている、発振装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の発振装置において、
動作保証温度範囲の上限温度における前記定電圧は、前記上限温度における前記水晶発振回路の発振開始電圧に設定されている、発振装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5いずれかに記載の発振装置において、
動作保証温度範囲の上限温度における前記定電圧は、前記上限温度における前記水晶発振回路の発振開始電圧にノイズマージンを加えた値に設定されている、発振装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の発振装置において、
前記定電圧は、動作保証温度範囲の全温度において、前記水晶発振回路の発振開始電圧にノイズマージンを加えた第1の値と、前記動作保証温度範囲の上限温度における前記定電圧と前記動作保証温度範囲の下限温度における前記定電圧の差に前記第1の値を加えた第2の値との間に設定されている、発振装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の発振装置において、
動作保証温度範囲の下限温度における前記定電圧と前記下限温度における前記発振停止電圧との差は、0.4ボルト以下である、発振装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の発振装置において、
動作保証温度範囲の下限温度における前記定電圧と前記下限温度における前記発振停止電圧との差は、動作保証温度範囲の上限温度における前記定電圧と前記上限温度における前記発振停止電圧との差の2倍以下である、発振装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の発振装置を含む半導体装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の発振装置、または、請求項11に記載の半導体装置を含み、前記発振装置の発振出力を用いて、動作基準信号を生成する電子機器。
【請求項13】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の発振装置、または、請求項11に記載の半導体装置を含み、前記発振装置の発振出力を用いて、時刻基準信号を生成する時計。
【請求項1】
発振装置であって、
第1の定電流を生成する第1の定電流源と、前記第1の定電流が通電され、定電圧を生成する定電圧制御トランジスターとを含み、前記定電圧は、温度変化に対して第1の傾きを有し、前記第1の傾きは前記第1の定電流に応じて変動する、定電圧生成回路と、
前記定電圧発生回路から供給される定電圧により発振駆動される水晶発振回路であって、発振可能な前記定電圧の下限値である発振停止電圧は温度変化に対して第2の傾きを有する、水晶発振回路と、
を備え、
前記第1の傾きは、前記第1の傾きと前記第2の傾きとの差と相関を有する前記水晶発振回路の消費電流と、前記第1の定電流の大きさと相関を有する前記定電圧生成回路の消費電流との和を極小とするように定められており、
前記第1の定電流は、前記定電圧制御トランジスターをサブスレッショルド領域で動作させる値に設定されている、発振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発振装置は、さらに、
前記第1の定電流源を、間欠動作させる間欠制御部を備え、
前記第1の傾きは、前記水晶発振回路の消費電流と、前記間欠動作時における前記定電圧生成回路の消費電流との和を極小とするように定められている、発振装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の発振装置において、
前記定電圧生成回路は、複数のトランジスターを含み、
前記複数のトランジスターの中から選択された少なくとも1つのトランジスターが前記定電圧制御トランジスターとして使用されている、発振装置。
【請求項4】
発振装置であって、
基準電圧を参照して第1の定電流を生成する第1の定電流源と、前記第1の定電流が通電され、定電圧を生成する定電圧制御トランジスターとを含み、前記定電圧は、温度変化に対して第1の傾きを有し、前記第1の定電流に応じて変動する、定電圧生成回路と、
前記定電圧発生回路から供給される定電圧により発振駆動される水晶発振回路であって、発振可能な前記定電圧の下限値である発振停止電圧は温度変化に対して第2の傾きを有する、水晶発振回路と、
定電流制御トランジスターを用いて第2の定電流を生成し、前記第2の定電流を用いて前記基準電圧を生成する定電流回路と、
を備え、
前記第1の傾きは、前記第1の傾きと前記第2の傾きとの差と相関を有する前記水晶発振回路の消費電流と、前記第1の定電流の大きさと相関を有する前記定電圧生成回路の消費電流と、前記第2の定電流の大きさと相関を有する前記定電流回路の消費電流との和を極小とするように定められており、
前記第1の定電流は、前記定電圧制御トランジスターをサブスレッショルド領域で動作させる値に設定され、
前記第2の定電流は、前記定電流制御トランジスターをサブスレッショルド領域で動作させる値に設定されている、発振装置。
【請求項5】
請求項4に記載の発振装置は、さらに、
前記第1の定電流源と、前記定電流回路を、間欠動作させる間欠制御部を備え、
前記第1の傾きは、前記水晶発振回路の消費電流と、前記間欠動作時における前記定電圧生成回路の消費電流と、前記間欠動作時における前記定電流回路の消費電流の和を極小とするように定められている、発振装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の発振装置において、
動作保証温度範囲の上限温度における前記定電圧は、前記上限温度における前記水晶発振回路の発振開始電圧に設定されている、発振装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5いずれかに記載の発振装置において、
動作保証温度範囲の上限温度における前記定電圧は、前記上限温度における前記水晶発振回路の発振開始電圧にノイズマージンを加えた値に設定されている、発振装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の発振装置において、
前記定電圧は、動作保証温度範囲の全温度において、前記水晶発振回路の発振開始電圧にノイズマージンを加えた第1の値と、前記動作保証温度範囲の上限温度における前記定電圧と前記動作保証温度範囲の下限温度における前記定電圧の差に前記第1の値を加えた第2の値との間に設定されている、発振装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の発振装置において、
動作保証温度範囲の下限温度における前記定電圧と前記下限温度における前記発振停止電圧との差は、0.4ボルト以下である、発振装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の発振装置において、
動作保証温度範囲の下限温度における前記定電圧と前記下限温度における前記発振停止電圧との差は、動作保証温度範囲の上限温度における前記定電圧と前記上限温度における前記発振停止電圧との差の2倍以下である、発振装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の発振装置を含む半導体装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の発振装置、または、請求項11に記載の半導体装置を含み、前記発振装置の発振出力を用いて、動作基準信号を生成する電子機器。
【請求項13】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の発振装置、または、請求項11に記載の半導体装置を含み、前記発振装置の発振出力を用いて、時刻基準信号を生成する時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−231489(P2012−231489A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−134652(P2012−134652)
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【分割の表示】特願2007−76648(P2007−76648)の分割
【原出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【分割の表示】特願2007−76648(P2007−76648)の分割
【原出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]