説明

発泡ポリウレタンの製造方法および断熱箱体

【課題】高品質な発泡ポリウレタンを提供する。
【解決手段】ミキシングヘッド103の上流側で略大気圧で沸点が零度以下の発泡剤106を含有した第3の原料105と第1の原料101を混合するものであり、第1の原料101と第3の原料105は混合されたあと、ミキシングヘッド103にて第2の原料102と混合されて系外に吐出される。つまり、第3の原料105は、第1の原料101と第2の原料102の主たる原料の経路とは別経路で発泡剤106を含有させるので、十分な混合時間を確保でき、均一に混合することができる。このため、発泡ポリウレタン原料中へ適正な量の発泡剤106を含有させることができるので、高品質な発泡ポリウレタンを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガスを発泡剤として用いた発泡ポリウレタンと、それを用いた断熱箱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、熱エネルギーを効率的に利用する技術開発に対する社会的要望が高まっている。冷凍冷蔵機器や温熱機器を製造するメーカーでは、各種部品や機器全体の省エネ設計に加えて、断熱技術の開発に注力している。
【0003】
代表的な冷凍冷蔵機器として、家庭用の電気冷凍冷蔵庫がある。この分野における技術革新は著しく、過去の商品と同容量の電気冷凍冷蔵庫の消費電力量は、数分の一程度まで低減されている。
【0004】
また、消費者の生活様式の変化に伴い、設置面積を拡大することなく、内容量を大型化する要望が強くなっている。このため、近年の電気冷凍冷蔵庫は、断熱性能の向上による壁面薄肉化や、各機能部品の高性能化あるいは配置設計の最適化などで要求に応えている。壁面薄肉化の一例としては、従来から断熱材として広く利用されている発泡ポリウレタンに加えて、断熱性能が勝る真空断熱材の利用が進んでいる。
【0005】
発泡ポリウレタンは、液状原料であるポリオールとイソシアネートを、ミキシングヘッドを備えた注入機を用いて壁面に注入する。注入直後、混合原料は流動性を有しているため壁面内を流れるが、時間経過とともに反応が進行して硬化する。この混合から硬化までの混合原料の流動性変化が、断熱性能や冷蔵庫筐体への充填性に影響する。
【0006】
例えば、反応が速過ぎると、原料が冷蔵庫筐体の隅々まで行き渡らず、充填不良となる。これによって、その部分での断熱性能が失われることに加えて、筐体強度も低下する。一方、反応が遅過ぎると、硬化時間つまりキュアに時間を要するため、生産性が悪く高コストの原因となる。
【0007】
また、冷蔵庫用発泡ポリウレタンの発泡剤は、オゾンを破壊しないシクロペンタンが広く用いられている。シクロペンタンは、略大気圧での沸点が49℃であり、ポリウレタンの発泡過程では、原料の反応熱や外部から発泡治具からの熱によって気化する。
【0008】
このため、発泡治具は略40℃に温度調整されている。この温度調整の手段としては、温風により所定温度に調整されたキュア炉内部に発泡治具を通過させる方法があるが、温度分布が大きくなることが懸念される。
【0009】
一方、発泡ポリウレタン断熱材の断熱性能は、ポリウレタン樹脂の熱伝導率、気泡内ガスの熱伝導率、気泡径などで決定される。なかでも、気泡内ガス熱伝導率は、気泡内に存在するガス組成に大きく影響され、過去に発泡剤として使用されていたフロンガスなどと比較してシクロペンタンは熱伝導率が高く好ましくない。
【0010】
しかし、環境保護が地球規模で問題となっている現在においては、環境負荷が大きいフロンガスは使用できないのが現状である。
【0011】
そこで、発泡ポリウレタン断熱材を高性能化するべく、気泡径を微細化する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
図3は、従来の硬質ポリウレタンフォームの製造装置の概略構成図である。ポリオール成分のタンク1から計量ポンプ2を介して配管中に設けたガスローディング装置3にポリオール成分を送出するとともに、このガスローディング装置3を介してガスを導入した後、スタティックミキサー4で撹拌することで直接気液分散系としてミキシングヘッド5に送るようになっている。
【0013】
一方、ミキシングヘッド5には、イソシアネート成分がタンク6から計量ポンプ7を介して送られるようになっている。
【0014】
そして、気液分散系のポリオール成分とイソシアネート成分とをミキシングヘッド5で反応させて吐出することで、硬質ポリウレタンフォームを作製する。
【0015】
このような硬質ポリウレタンフォームの製造装置によれば、ガスを用いることで、液体同士をエマルジョン分散系とするのに比べ、短時間に気液分散系として発泡させることができる。このことから、各成分中の気泡を短時間に微細化でき、得られるフォームも微細化、均一化でき、熱伝導率を小さくすることができる。
【特許文献1】特開2007−269820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記従来の構成では、タンク1から計量ポンプ2を介してミキシングヘッド5に送られた原料は、再びタンクに戻される循環回路となっており、ポリウレタンフォーム作製時だけ回路外に吐出される。仮に、循環中の原料にガスを混合すれば、原料中ガス濃度が過剰になってしまう。また、原料中ガス濃度を適正に制御するためには、吐出時のみガスを混合することが好ましいが、スタティックミキサー4からミキシングヘッド5間でガスを均一に混合するためには、ある程度の混合時間を稼ぐために配管長を長くする必要があるが、配管内に滞留する原料が増大するという課題がある。
【0017】
本発明は、上記課題に鑑み、品質に優れた発泡ポリウレタンの製造方法と、それを用いた断熱箱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の発泡ポリウレタンの製造方法は、第1の原料と第2の原料をミキシングヘッドで混合するものであって、前記ミキシングヘッドの上流側で略大気圧で沸点が零度以下の発泡剤を含有した第3の原料と前記第1の原料を混合するのである。
【0019】
混合器で第1の原料と第3の原料は混合され、そのあとミキシングヘッドにて第2の原料と混合されて系外に吐出される。第3の原料には、略大気圧で容易に気化する発泡剤を含有しているので、吐出後直ちに発泡が開始される。
【0020】
つまり、第3の原料は、第1の回路とは別経路で発泡剤を含有させるので、十分な混合時間を確保でき、均一に混合することができる。このため、発泡ポリウレタン原料中へ適正な量の発泡剤を含有させることができるので、高品質な発泡ポリウレタンを得ることができる。また、それを用いた断熱箱体を製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、低沸点である二酸化炭素を発泡剤として使用するにあたり、原料中に適正量含有させることができ、発泡ポリウレタンのセル微細化や低密度化ができえることから、断熱材とそれを用いた断熱箱体の品質を著しく向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の請求項1に記載の発泡ポリウレタンの製造方法の発明は、第1の原料と第2の原料をミキシングヘッドで混合するものであって、前記ミキシングヘッドの上流側で略大気圧で沸点が零度以下の発泡剤を含有した第3の原料と前記第1の原料を混合することを特徴とするものであり、第1の原料と第3の原料は混合されたあと、ミキシングヘッドにて第2の原料と混合されて系外に吐出される。第3の原料には、略大気圧で容易に気化する発泡剤を含有しているので、吐出後直ちに発泡が開始される。
【0023】
つまり、第3の原料は、第1の原料と第2の原料の主たる原料の経路とは別経路で発泡剤を含有させるので、十分な混合時間を確保でき、均一に混合することができる。このため、発泡ポリウレタン原料中へ適正な量の発泡剤を含有させることができるので、高品質な発泡ポリウレタン断熱材を製造することができる。
【0024】
また、請求項2に記載の発泡ポリウレタンの製造方法の発明は、請求項1に記載の発明において、第3の原料が、第1の原料に発泡剤を混合したものであることを特徴とするものであり、第1の原料と第3の原料は密度、粘度など基本物性は、ほぼ同じである。
【0025】
つまり、第1の原料と発泡剤を混合するためには、圧力、温度、混合時間などの精密な管理が必要であるが、第1の原料と第3の原料の混合は比較的容易であり、均一に混合することができる。このため、発泡ポリウレタン原料中へ適正な量の発泡剤を含有させることができるので、さらに高品質な発泡ポリウレタン断熱材を製造することができる。
【0026】
また、請求項3に記載の発泡ポリウレタンの製造方法の発明は、請求項1または2に記載の発明において、第3の原料が、第1の原料より温度が低いことを特徴とするものであり、略大気圧で気化しやすい発泡剤をポリウレタン原料のような液体に溶解させるためには、ヘンリーの法則から低温であることが好ましい。
【0027】
しかしながら、第1の原料温度を低温化すると、ミキシングヘッドで第2の原料と混合した場合、原料全体の平均温度が低くなり、反応速度が減速するため硬化する時間が長くなる。このため、原料中に溶存していた発泡剤が大気中に放出されやすくなり、最悪の場合には大きなボイド発生の原因となる。
【0028】
このことから、別経路で低温化した第1の原料に予め発泡剤を混合して第3の原料を調合し、これを第1の回路を流れる第1の原料と混合することによって、発泡剤を原料内に均一に混合することができ、発泡ポリウレタン原料中へ適正な量の発泡剤を含有させることができるので、さらに高品質な発泡ポリウレタン断熱材を製造することができる。
【0029】
また、請求項4に記載の発泡ポリウレタンの製造方法の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、発泡剤が、二酸化炭素であることを特徴とするものであり、二酸化炭素は略大気圧での沸点が氷点下79℃であり、発泡力が非常に高く、化学的に安定し、耐環境性にも優れた物質である。これを発泡剤として用い、原料中に均一に混合するため、さらに高品質な発泡ポリウレタン断熱材を製造することができる。
【0030】
また、請求項5に記載の断熱箱体の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法で製造された発泡ポリウレタンを備えた断熱箱体であり、高品質な断熱箱体を製造することができる。
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0032】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における原料分離型の発泡ポリウレタンの製造方法を示す説明図である。図2は、本発明の実施の形態1における原料分岐型の発泡ポリウレタンの製造方法を示す説明図である。
【0033】
図1に示すように、ポリウレタン原料は、第1の原料101と第2の原料102がある。具体的には、ポリオール成分とイソシアネート成分があり、本実施の形態では、第1の原料101がポリオール成分、第2の原料102がイソシアネート成分としているが、これと逆になっても構わない。なお、ポリオール成分である第1の原料101には、予めシクロペンタン、水、整泡剤、触媒などが混合されている。
【0034】
第1の原料101および第2の原料102は、ミキシングヘッド103に供給され、ここで混合されたあと、電気冷凍冷蔵庫、自動販売機などに代表される断熱筐体104に注入される。なお、ミキシングヘッド103を1台で説明しているが、断熱筐体104の形状、構造などを鑑み、複数のミキシングヘッド103を用いることもある。
【0035】
第1の原料101がミキシングヘッド103に搬送される間に、第3の原料105と混合される。第3の原料105は、第1の原料101に発泡剤106を含有させたものであり、第1の原料101より低い温度に設定されている。発泡剤106は、略大気圧における沸点が零度以下の物質を用い、取り扱いやすさや耐環境性、気体状態での熱伝導率を鑑み、二酸化炭素を用いることが好ましい。
【0036】
このことから、第3の原料105が略大気圧雰囲気に置かれると、発泡剤106が気化して気泡が発生する。故に、第1の原料101と第3の原料105を混合するためには、8〜13MPa程度の高圧雰囲気下で、スタティックミキサーに代表される液−液混合器107などを用いることが好ましい。このような条件下においては、混合性に影響を及ぼす第1の原料101と第3の原料105の粘度や密度などの物性は、ほぼ同一であり、良好に混合される。
【0037】
なお、第3の原料105を調合するためには、図1に示すように第1の原料101を分離し、発泡剤106を発泡剤混合器108で混合する方法と、図2に示すように、第1の原料101を分岐した副経路で混合する方法がある。この場合においては、熱交換手段109を備えて第1の原料101を冷却することで、発泡剤106の溶解性は向上し、第3の原料105は均質な状態になる。
【0038】
以上のように、第1の原料101と第2の原料102をミキシングヘッド103で混合するものであって、ミキシングヘッド103の上流側で略大気圧で沸点が零度以下の発泡剤106を含有した第3の原料105と第1の原料101を混合するものであり、第1の原料101と第3の原料105は混合されたあと、ミキシングヘッド103にて第2の原料102と混合されて系外に吐出される。第3の原料105には、略大気圧で容易に気化する発泡剤106を含有しているので、吐出後直ちに発泡が開始される。
【0039】
つまり、第3の原料105は、第1の原料101と第2の原料102の主たる原料の経路とは別経路で発泡剤106を含有させるので、十分な混合時間を確保でき、均一に混合することができる。このため、発泡ポリウレタン原料中へ適正な量の発泡剤106を含有させることができるので、高品質な発泡ポリウレタンを製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明にかかる発泡ポリウレタンの製造方法および断熱箱体は、低沸点発泡剤である二酸化炭素を均一に原料に混合することができるため、発泡ポリウレタン断熱材およびそれを用いた断熱箱体の品質を向上することができる。このため、冷蔵庫などの温熱機器の省エネ化を促進し、環境に優しい商品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態1における原料分離型の発泡ポリウレタンの製造方法を示す説明図
【図2】本発明の実施の形態1における原料分岐型の発泡ポリウレタンの製造方法を示す説明図
【図3】従来の硬質ポリウレタンフォームの製造装置の概略構成図
【符号の説明】
【0042】
101 第1の原料(ポリオール成分)
102 第2の原料(イソシアネート成分)
103 ミキシングヘッド
104 断熱箱体(冷蔵庫)
105 第3の原料
106 発泡剤(二酸化炭素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の原料と第2の原料をミキシングヘッドで混合するものであって、前記ミキシングヘッドの上流側で略大気圧で沸点が零度以下の発泡剤を含有した第3の原料と前記第1の原料を混合することを特徴とする発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項2】
第3の原料は、第1の原料に発泡剤を混合したものであることを特徴とする請求項1に記載の発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項3】
第3の原料は、第1の原料より温度が低いことを特徴とする請求項1または2に記載の発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項4】
発泡剤は、二酸化炭素であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の発泡ポリウレタンの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法で製造された発泡ポリウレタンを備えた断熱箱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−138239(P2010−138239A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314047(P2008−314047)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】