説明

発泡成形体の製造方法および発泡成形体の製造装置

【課題】補強部材のうち、ガス抜き孔に対応する部分に発泡原料が含浸するのを確実に抑制すること。
【解決手段】製造装置10においてガス抜き孔12が開口するキャビティ面14に通気性を具備する補強部材3を配置する配置工程と、キャビティ11内で発泡原料を発泡させて発泡体2を形成するとともに該発泡体2に補強部材3を一体に固着させることで、発泡成形体を形成する成形工程と、を有し、成形工程は、発泡原料が発泡し始めた後、発泡体2が形成される前に、ガス抜き孔12を通したキャビティ11内と外部との連通を遮断し、補強部材3においてガス抜き孔12に対応する部分には、非通気性部材4が取り付けられ、成形工程は、発泡した発泡原料にキャビティ11内が満たされたキャビティ充満時に、発泡原料により補強部材3をキャビティ面14に押し付けた状態で、非通気性部材4によりガス抜き孔12を覆っている発泡成形体の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性を具備する補強部材が発泡体の表面に一体に固着されてなる発泡成形体の製造方法および発泡成形体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の発泡成形体の製造方法として、キャビティ内に連通するガス抜き孔が形成された発泡成形体の製造装置において、ガス抜き孔が開口するキャビティ面に補強部材を配置する配置工程と、キャビティ内で発泡原料を発泡させて発泡体を形成するとともに該発泡体に補強部材を一体に固着させることで、発泡成形体を形成する成形工程と、を有する方法が知られている。
この方法では成形工程時に、キャビティ内の発泡ガスや空気などを、通気性を具備する補強部材を通してガス抜き孔から排気しながら、発泡成形体を形成する。
【0003】
しかしながらこの方法では、成形工程時にキャビティ内が発泡原料で充満された後にも該キャビティ内がガス抜き孔を通して外部に連通しているため、補強部材のうち、ガス抜き孔に対応する部分に発泡原料が局所的に含浸することとなる。これにより、例えば、補強部材に含浸した発泡原料が補強部材を透過してガス抜き孔内へ流入したり、発泡原料が含浸することで補強部材が硬くなって発泡成形体の品質に影響が生じたりするおそれがあった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために、例えば下記特許文献1に示されるような発泡成形体の製造方法を適用することが考えられる。この方法では、まず発泡原料をキャビティ内に供給してガス抜き孔を連通した状態で発泡成形し、キャビティ内で発泡原料が充満する充満予定時間を予め計測する。その後、発泡原料をキャビティ内に供給し、ガス抜き孔を連通した状態で発泡させるとともに、充満予定時間に到達した時点でガス抜き孔を通したキャビティ内と外部との連通を遮断する。
この方法によれば、充満予定時間に到達した時点でガス抜き孔を通したキャビティ内と外部との連通を遮断するので、充満予定時間以降、補強部材のうち、ガス抜き孔に対応する部分に発泡原料が含浸するのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−127154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、キャビティ内で発泡原料が充満するのに要する時間は、発泡成形体を製造する都度ばらつきが生じ易く前記充満予定時間と異なることがあった。そのため、前記従来の発泡成形体の製造方法では、実際にキャビティ内で発泡原料が充満した後にもガス抜き孔を通したキャビティ内と外部との連通が遮断されず、補強部材のうち、ガス抜き孔に対応する部分に発泡原料が含浸するのを抑制することは困難であった。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、補強部材のうち、ガス抜き孔に対応する部分に発泡原料が含浸するのを確実に抑制することができる発泡成形体の製造方法および発泡成形体の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る発泡成形体の製造方法は、キャビティ内に連通するガス抜き孔が形成された発泡成形体の製造装置において、前記ガス抜き孔が開口するキャビティ面に通気性を具備する補強部材を配置する配置工程と、前記キャビティ内で発泡原料を発泡させて発泡体を形成するとともに該発泡体に前記補強部材を一体に固着させることで、発泡成形体を形成する成形工程と、を有する発泡成形体の製造方法であって、前記成形工程は、発泡原料が発泡し始めた後、前記発泡体が形成される前に、前記ガス抜き孔を通した前記キャビティ内と外部との連通を遮断し、前記補強部材において前記ガス抜き孔に対応する部分には、非通気性部材が取り付けられ、前記成形工程は、発泡した発泡原料に前記キャビティ内が満たされたキャビティ充満時に、前記発泡原料により前記補強部材を前記キャビティ面に押し付けた状態で、前記非通気性部材により前記ガス抜き孔を前記キャビティの内側から覆っていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、成形工程時に、発泡原料が発泡し始めた後、発泡体が形成される前にガス抜き孔を通したキャビティ内と外部との連通を遮断しており、前記キャビティ充満時以降に、ガス抜き孔を通したキャビティ内と外部との連通が遮断されているので、補強部材のうち、ガス抜き孔に対応する部分に発泡原料が含浸するのを効果的に抑制することができる。
また、前記キャビティ充満時に非通気性部材によりガス抜き孔を覆っているので、前記キャビティ充満時以降、補強部材のうち、ガス抜き孔に対応する部分に発泡原料が含浸するのを、非通気性部材により抑制することができる。したがって、前記キャビティ充満時から、ガス抜き孔を通したキャビティ内と外部との連通の遮断時までに時間があいたとしても、その間も、補強部材への発泡原料の含浸を抑制することができる。
以上より、補強部材のうち、ガス抜き孔に対応する部分に発泡原料が含浸するのを確実に抑制することができる。
【0010】
またこのように、補強部材のうち、ガス抜き孔に対応する部分に発泡原料が含浸するのを確実に抑制することができるので、発泡原料が、補強部材に含浸してガス抜き孔内へ流入するのを抑制することができる。さらに、この製造方法で製造された発泡成形体のうち、ガス抜き孔に対応する部分の表面が、発泡原料の含浸を起因として硬くなるのを抑えることが可能になり、発泡成形体の品質の向上を図ることができる。
【0011】
また前述のように、補強部材のうち、ガス抜き孔に対応する部分に発泡原料が含浸するのを確実に抑制することができるので、従来の製造方法では補強部材に含浸していた発泡原料を、発泡体の形成に充てることが可能になる。したがって、発泡成形体の製造に必要な発泡原料を低減し、発泡成形体の軽量化を図ることができる。
さらに、このように発泡成形体の製造に必要な発泡原料を低減できることから、発泡成形体の低コスト化を図ることができる。
さらにまた、前述のように発泡成形体を軽量化できることから、例えば、発泡成形体が車両に装着される場合、この車両の燃費の改善し、例えば環境負荷などの低減を図ることができる。
【0012】
また、前記発泡成形体の製造装置には、前記ガス抜き孔の少なくとも一部を画成するとともに、前記非通気性部材が前記補強部材を介して磁着する磁着部材が備えられ、前記配置工程は、前記補強部材を前記キャビティ面に配置しながら、該補強部材が前記非通気性部材と前記磁着部材との間に挟み込まれるように前記非通気性部材を前記磁着部材に磁着させ、該非通気性部材により前記ガス抜き孔を前記キャビティの内側から覆っても良い。
【0013】
この場合、配置工程時に、補強部材が非通気性部材と磁着部材との間に挟み込まれるように磁着部材に非通気性部材を磁着させているので、成形工程における前記キャビティ充満時に、キャビティ内で発泡する発泡原料と補強部材との間に非通気性部材が介在することとなる。したがって、補強部材のうち、ガス抜き孔に対応する部分への発泡原料の含浸を、非通気性部材により遮ることで抑制することができる。
また配置工程時に、非通気性部材を磁着部材に磁着させることで該非通気性部材によりガス抜き孔を覆うので、成形工程前に、予め非通気性部材をガス抜き孔に高精度に位置決めしておくことが可能になり、前述の作用効果を確実に奏功することができる。
【0014】
また、非通気性部材が、補強部材に取り付けられていることから、配置工程時に、補強部材をキャビティ面に配置しながら、非通気性部材を磁着部材に磁着させることが可能になる。したがって、発泡成形体の製造装置に設けられているガス抜き孔の数によらず、非通気性部材でガス抜き孔を容易に覆わせることが可能になるとともに、補強部材をキャビティ面に対して高精度かつ容易に配置することが可能になり、配置工程を容易に行うことができる。
さらにこのように、配置工程を容易に行うことができることから、キャビティ内のスペースが制約されている場合であっても、キャビティ内に補強部材を非通気性部材とともに位置決めしながら配置する作業の煩雑さを緩和することができる。
【0015】
また、前記磁着部材は、内部が前記ガス抜き孔とされた筒状の磁石であっても良い。
【0016】
この場合、磁着部材が、内部がガス抜き孔とされた筒状の磁石であるので、非通気性部材を磁着部材(磁石)に磁着させ、該非通気性部材によりガス抜き孔をキャビティの内側から覆うことで、ガス抜き孔だけでなくガス抜き孔の開口周縁部も非通気性部材によりキャビティの内側から確実に覆うことが可能になる。したがって、補強部材のうち、ガス抜き孔を覆う部分およびガス抜き孔の開口周縁部に配置された部分に、キャビティ内の発泡原料が含浸するのを確実に抑制することができる。
【0017】
また、前記磁着部材は、内部が前記ガス抜き孔とされたガス抜き筒部、および該ガス抜き孔を前記キャビティの外側から閉塞する閉塞壁部を有する孔画成体と、前記ガス抜き孔内に固定される磁石と、を備え、前記孔画成体には、前記ガス抜き孔と前記キャビティの外部とを連通する連通路が形成されていても良い。
【0018】
この場合、孔画成体に前記連通路が形成されているので、ガス抜き孔からキャビティの外部に排気されるキャビティ内の発泡ガスや空気の流量を、例えば連通路の流路径や流路長などを変更することで調整することができる。したがって、ガス抜き孔から排気される発泡ガスや空気の流量を、磁石ではなく孔画成体を加工することで調整することが可能になり、この調整を比較的安価に行うことができる。
なおこのように、ガス抜き孔から排気される発泡ガスや空気の流量を調整すると、発泡ガスや空気の排気に伴ってキャビティ内の発泡原料が補強部材に含浸するのを確実に抑制することができる。
【0019】
また、前記配置工程は、前記補強部材を、該補強部材に対して前記非通気性部材が前記キャビティ面側に位置するとともに前記非通気性部材と前記キャビティ面との間に隙間をあけた状態で、前記キャビティ面に配置しても良い。
【0020】
この場合、成形工程の際、前記キャビティ充満時までは、キャビティ内で発泡する発泡原料により、非通気性部材とキャビティ面との間の隙間が狭まるように補強部材をキャビティ面側に押し込みつつ、キャビティ内の発泡ガスや空気を、通気性を具備する補強部材および前記隙間を通してガス抜き孔から排気する。そして前記キャビティ充満時に、キャビティ内で発泡する発泡原料により補強部材をキャビティ面に押し付け、キャビティ面と補強部材との間に挟み込まれた非通気性部材によって、ガス抜き孔をキャビティの内側から覆って塞ぐ。これにより、前記キャビティ充満時以降、ガス抜き孔を通したキャビティ内と外部との連通の遮断までの時間があいたとしても、非通気性部材によってキャビティ内の発泡ガス等がガス抜き孔から排気されるのを抑制することが可能になり、補強部材のうち、ガス抜き孔に対応する部分に発泡原料が含浸するのを抑制することができる。
【0021】
また、前記補強部材および前記発泡体には、車両のシートフレームに接触した状態で固定される被固定部が一体に設けられ、前記ガス抜き孔は、前記キャビティ面のうち、前記被固定部を形成する被固定部の形成領域に開口していても良い。
【0022】
この場合、ガス抜き孔が、キャビティ面の前記被固定部の形成領域に開口しているので、前述のように補強部材のうち、ガス抜き孔に対応する部分への発泡原料の含浸が確実に抑制されることで、この製造方法で製造された発泡成形体の前記被固定部が硬くなるのを確実に抑えることが可能になる。これにより、例えば、車両の走行時やシートへの着座時に、シートフレームと前記被固定部との間で擦れ音が発生するのを抑制することができる。
【0023】
また、本発明に係る発泡成形体の製造装置は、前記発泡成形体の製造方法の実施に使用する発泡成形体の製造装置であって、互いの外周部同士が接触するとともに互いの中央部同士の間に前記キャビティが形成される上型および下型を備え、前記上型および前記下型の外周部同士の間には、該外周部同士の間を封止するシール部材が配設されていることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、上型および下型の外周部同士の間に前記シール部材が配設されているので、成形工程時に、キャビティ内で発泡する発泡原料が、上型および下型の外周部同士の間に進入することが抑制される。これにより、この発泡成形体の製造装置で製造された発泡成形体の外周面にバリなどが形成されるのを抑制することが可能になり、成形工程後のバリ取り作業などを無くす、もしくは軽減することができる。
一方、発泡成形体の製造装置にガス抜き孔が形成されているので、キャビティ内の発泡ガスや空気などは、キャビティ内からガス抜き孔を通して確実に排気することができる。
以上より、キャビティ内の発泡ガスや空気などを確実に排気しつつ、発泡成形体を効率良く製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、補強部材のうち、ガス抜き孔に対応する部分に発泡原料が含浸するのを確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係るシート用パッドの製造方法で製造されるシート用パッドの一部断面を含む斜視図である。
【図2】図1に示すシート用パッドを裏面から見た斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るシート用パッドの製造方法に用いる金型を示す断面図である。
【図4】図3に示すA−A矢視断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るシート用パッドの製造方法の一工程図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るシート用パッドの製造方法の一工程図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るシート用パッドの製造方法の一工程図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るシート用パッドの製造方法の一工程図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るシート用パッドの製造方法の一工程図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るシート用パッドの製造方法で製造されるシート用パッドを裏面から見た斜視図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係るシート用パッドの製造方法の一工程図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係るシート用パッドの製造方法の一工程図である。
【図13】本発明に係るシート用パッドの製造方法の変形例で製造されるシート用パッドを裏面から見た斜視図である。
【図14】本発明に係るシート用パッドの製造方法の変形例の一工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係るシート用パッドの製造方法(発泡成形体の製造方法)で製造されるシート用パッド(発泡成形体)について説明する。
図1に示すように、シート用パッド1は、通気性を具備する補強部材3が発泡体2に一体に固着されてなるとともに、これらの補強部材3および発泡体2に車両のシートフレームFに接触した状態で固定される被固定部5が一体に設けられている。なお図1に示すシート用パッド1は、前記車両におけるシートの着座部となるいわゆるクッションパッドである。
【0028】
発泡体2は、発泡原料(例えば、ウレタン原料)を発泡することで形成され、例えばポリウレタンフォーム等で形成されている。発泡体2の裏面には、シートフレームFが嵌め込まれる凹部6が形成されている。
補強部材3は、前記凹部6を画成する壁面(発泡体の表面)に一体に固着されている。この補強部材3は、通気性を具備する膜状体であり、例えば、寒冷紗、粗毛フェルト、不織布などで形成されている。
シートフレームFの平面視形状は矩形枠状とされ、シート用パッド1の前記被固定部5は、前記凹部6を画成する底壁面6aの外周縁部および側壁面に沿って設けられている。
【0029】
そして図2に示すように、被固定部5のうち、後述する金型(発泡成形体の製造装置)10のガス抜き孔12に対応する部分には、補強部材3に取り付けられた非通気性部材4が配設されている。本実施形態では、非通気性部材4は、被固定部5のうち、前記底壁面6aの外周縁部に沿う部分に配設されている。図示の例では、非通気性部材4は、補強部材3と発泡体2との間に挟み込まれて前記被固定部5(前記底壁面6aの外周縁部)に沿って延びる帯状とされており、例えば、前記被固定部5全体のうちの5%以上の範囲にわたって配設されている。
【0030】
この非通気性部材4は、補強部材3の柔軟性を阻害することがない程度の柔軟性を有しており、例えば樹脂製フィルム(例えば、ポリエチレンフィルムや、ナイロンシート、ポリウレタン等)や、紙テープ等で形成されている。これらのうち、例えば紙テープを採用した場合、非通気性部材4の確実な低VOC化および低コスト化を図ることができる。
【0031】
次に、このシート用パッド1を製造する金型10について説明する。
図3に示すように、金型10は、キャビティ11内に連通しキャビティ11の内部と外部とを連通するガス抜き孔12が形成され、該ガス抜き孔12が開口するキャビティ面14に補強部材3を配置した状態で、キャビティ11内で発泡原料を発泡させることにより、発泡体2を形成するとともに該発泡体2に補強部材3を一体に固着してシート用パッド1を形成する。
【0032】
本実施形態では、金型10は、互いの外周部15A、16A同士が接触するとともに互いの中央部15B、16B同士の間にキャビティ11が形成される上型16および下型15を備えている。
下型15の中央部15Bは、シート用パッド1の表面側を成形するように凹設されるとともに、上型16の中央部16Bは、シート用パッド1の裏面側を成形するように設けられている。上型16は、下型15にヒンジ部を介して回動可能に設けられるとともに下型15の上面開口を開閉可能とされている。そして、上型16が下型15の上面開口を閉じることにより、上型16の中央部16Bの表面であるキャビティ面14と下型15の中央部15Bの表面であるキャビティ面13との間に、シート用パッド1の形状に対応する発泡空間であるキャビティ11が形成される。
【0033】
また図示の例では、上型16および下型15の外周部15A、16A同士の間には、該外周部15A、16A同士の間を封止するシール部材20が配設されている。
なお上型16および下型15は、例えば、磁石に磁着されない非磁着性を具備する金属材料(例えば、アルミニウム材料など)等で形成されている。また図4に示すように、上型16のキャビティ面14には、このキャビティ面14に補強部材3を固定する固定手段18が設けられている。図示の例では、固定手段18は、補強部材3に取り付けられた被固定体19(図5参照)が磁着可能な磁石(例えば、永久磁石など)で形成されている。
【0034】
ガス抜き孔12は、上型16に複数設けられており、上型16のキャビティ面14に開口している。ガス抜き孔12は、キャビティ面14のうち、シート用パッド1の前記被固定部5を形成する被固定部の形成領域17に開口している。図示の例では、複数のガス抜き孔12の全てが、キャビティ面14の前記被固定部の形成領域17のうち、前記被固定部5において前記底壁面6aの外周縁部に沿って設けられた部分を形成する領域に、互いに間隔をあけて開口している。
【0035】
なお、キャビティ面14の前記被固定部の形成領域17には、キャビティ11内の発泡ガス等が残存し易いため、このようにガス抜き孔12を前記被固定部の形成領域17に開口させることにより、シート用パッド1をキャビティ11内に発泡ガス等が残存するのを効果的に抑制することができる。
【0036】
また本実施形態では、金型10は更に、ガス抜き孔12の内部に連通するガス抜き管21を備えている。図示の例では、ガス抜き管21は複数のガス抜き孔12に各別に設けられるとともにガス抜き孔12と金型10の外部とを連通しており、例えば上型16に対して着脱可能に取り付けられている。また図3に示すように、ガス抜き管21には、このガス抜き管21を開閉するバルブ22が設けられている。
この金型10では、バルブ22が開状態のとき、ガス抜き孔12およびガス抜き管21を通してキャビティ11内と外部とが連通されており、一方、バルブ22を閉状態とすると、ガス抜き孔12およびガス抜き管21を通したキャビティ11内と外部との連通が遮断されることとなる。
【0037】
次に、この金型10を用いてシート用パッド1を形成するシート用パッドの製造方法について説明する。
ここで図5に示すように、補強部材3には、非通気性部材4および被固定体19がそれぞれ予め取り付けられている。非通気性部材4は、補強部材3においてガス抜き孔12に対応する位置に予め取り付けられている。また被固定体19は、例えば、磁性体材料(鉄、コバルト、ニッケルなど)からなる板状体や、少なくとも一方の面が着磁されたマグネットシートで形成されている。図示の例では、被固定体19は、補強部材3のうち、非通気性部材4が取り付けられた面と異なる面に取り付けられるとともに、この面において、補強部材3を挟んで非通気性部材4の反対側に位置する部分を回避して取り付けられている。なお、非通気性部材4および被固定体19は、補強部材3の同一の面に取り付けられていても良い。
【0038】
シート用パッド1の製造に際し、まず上型16を開けた後、補強部材3を上型16のキャビティ面14に配置する配置工程を行う。この際、非通気性部材4が、補強部材3に対してキャビティ面14の反対側に位置した状態で、被固定体19を固定手段18に磁着させることで、補強部材3をキャビティ面14に配置する。
なお、この配置工程を行うとともに、下型15内に発泡原料を投入し、その後、上型16を閉じる。ここで本実施形態では、上型16および下型15の外周部15A、16A同士の間に前記シール部材20が配設されているので、上型16を閉じた状態で、外周部15A、16A同士の間を通してキャビティ11内と外部とが連通することがない。
【0039】
次に、キャビティ11内で発泡原料を発泡させる成形工程を行う。この際、キャビティ11内の発泡ガスや空気は、通気性を具備する補強部材3を通してガス抜き孔12およびガス抜き管21から排気される。
そしてこの工程では、図6に示すように、発泡原料が発泡しつづけ、発泡した発泡原料にキャビティ内が満たされたキャビティ充満時に達すると、補強部材3が、発泡原料により上型16のキャビティ面14に押し付けられる。すると、補強部材3が、キャビティ面14と非通気性部材4との間に挟み込まれた状態で、ガス抜き孔12が、非通気性部材4によりキャビティ11の内側から覆われる。これにより、キャビティ11内で発泡する発泡原料と補強部材3との間に非通気性部材4が介在することとなり、補強部材3のうち、ガス抜き孔12に対応する部分への発泡原料の含浸が、非通気性部材4によって遮られる。
なおこの際、非通気性部材4は、前記被固定部の形成領域17に沿って配置される。またこの際、補強部材3が、キャビティ面14と非通気性部材4との間に挟み込まれているので、ガス抜き孔12が非通気性部材4によって完全に閉塞されることがない。
【0040】
そして、本実施形態の成形工程では、発泡原料が発泡し始めた後、発泡体が形成される前に、バルブ22を閉じることで、ガス抜き孔12およびガス抜き管21を通したキャビティ11内と外部との連通を遮断し、前記キャビティ充満時以降に、ガス抜き孔12およびガス抜き管21を通したキャビティ11内と外部との連通を遮断する。これにより、キャビティ11は完全に密閉されることとなり、キャビティ11内の発泡ガス等がガス抜き孔12から排気されずにキャビティ11の内圧が上昇する。
【0041】
なお、ガス抜き孔12およびガス抜き管21を通したキャビティ11内と外部との連通を遮断するタイミングは、例えば、金型10に、キャビティ11内での発泡原料の充満を検出する図示しないセンサを設け、このセンサの検出信号に基づいて判断しても良い。また、キャビティ11内で発泡原料が発泡を開始してから充満するまでの充満予測時間を、シート用パッド1の製造前に予め算出しておき、この充満予測時間に基づいて判断しても良い。この場合、例えば、充満予測時間に余裕時間を加算した所定時間が、キャビティ11内での発泡原料の発泡開始から経過した後に、ガス抜き孔12およびガス抜き管21を通したキャビティ11内と外部との連通を遮断しても良い。なお充満予測時間は、例えば、シート用パッド1の試作評価を繰り返したり、キャビティ11内での発泡原料の発泡過程をシミュレーションしたりすることで算出することができる。
【0042】
そして、発泡原料の発泡がおさまって発泡原料の樹脂化(樹脂反応)が進行し、キャビティ11内で発泡体2が形成されるとともに該発泡体2に補強部材3が一体に固着されて、定形を保持可能なシート用パッド1が形成されることで成形工程が終了する。その後、上型16を開けて、シート用パッド1を金型10から脱型する脱型工程を行うことにより、シート用パッド1を得ることができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係るシート用パッドの製造方法および金型10によれば、成形工程における前記キャビティ充満時以降に、ガス抜き孔12を通したキャビティ11内と外部との連通が遮断されているので、補強部材3のうち、ガス抜き孔12に対応する部分に発泡原料が含浸するのを効果的に抑制することができる。
また、前記キャビティ充満時に、非通気性部材4によりガス抜き孔12を覆っているので、前記キャビティ充満時以降、補強部材3のうち、ガス抜き孔12に対応する部分に発泡原料が含浸するのを、非通気性部材4により抑制することができる。したがって、前記キャビティ充満時から、ガス抜き孔12を通したキャビティ11内と外部との連通の遮断時までに時間があいたとしても、その間も、補強部材3への発泡原料の含浸を抑制することができる。
以上より、補強部材3のうち、ガス抜き孔12に対応する部分に発泡原料が含浸するのを確実に抑制することができる。
【0044】
またこのように、補強部材3のうち、ガス抜き孔12に対応する部分に発泡原料が含浸するのを確実に抑制することができるので、発泡原料が、補強部材3に含浸してガス抜き孔12内へ流入するのを抑制することができる。
さらに本実施形態では、ガス抜き孔12が、キャビティ面14の前記被固定部の形成領域17に開口しているので、前述のように補強部材3のうち、ガス抜き孔12に対応する部分への発泡原料の含浸が確実に抑制されることで、この製造方法で製造されたシート用パッド1の前記被固定部5が硬くなるのを確実に抑えることができる。これにより、例えば、前記車両の走行時やシートへの着座時に、シートフレームFと前記被固定部5との間で擦れ音が発生するのを抑制することが可能になり、シート用パッド1の品質の向上を図ることができる。なお本実施形態では、シート用パッド1において非通気性部材4が被固定部5に沿って配設されているので、被固定部5が、発泡原料の含浸を起因として硬くなるのを広範囲にわたって抑えることが可能になり、擦れ音の発生を一層抑制することができる。
【0045】
また前述のように、補強部材3のうち、ガス抜き孔12に対応する部分に発泡原料が含浸するのを確実に抑制することができるので、従来の製造方法では補強部材3に含浸していた発泡原料を、発泡体2の形成に充てることが可能になる。したがって、シート用パッド1の製造に必要な発泡原料を低減し、シート用パッド1の軽量化を図ることができる。
さらに、このようにシート用パッド1の製造に必要な発泡原料を低減できることから、シート用パッド1の低コスト化を図ることができる。
さらにまた、前述のようにシート用パッド1を軽量化できることから、本実施形態のように、シート用パッド1が前記車両に装着される場合、この車両の燃費の改善し、例えば環境負荷などの低減を図ることができる。
【0046】
また、上型16および下型15の外周部15A、16A同士の間に前記シール部材20が配設されているので、成形工程時に、キャビティ11内で発泡する発泡原料が、上型16および下型15の外周部15A、16A同士の間に進入することが抑制される。これにより、この金型10で製造されたシート用パッド1の外周面にバリなどが形成されるのを抑制することが可能になり、成形工程後のバリ取り作業などを無くす、もしくは軽減することができる。
一方、金型10にガス抜き孔12が形成されているので、キャビティ11内の発泡ガスや空気などは、キャビティ11内からガス抜き孔12を通して確実に排気することができる。
以上より、キャビティ11内の発泡ガスや空気などを確実に排気しつつ、シート用パッド1を効率良く製造することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、固定手段18は、補強部材3に取り付けられた被固定体19が磁着可能な磁石で形成されているものとしたが、これに代えて、例えば補強部材3を貫通することで固定するピン状に形成されていても良い。この場合、被固定体19はなくても良い。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態のシート用パッドの製造方法で用いられる金型30を、図7を参照して説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。また、以下に示す図面では、見易さのためにガス抜き管21の図示を省略する。
図7に示すように、金型30は、ガス抜き孔12を画成する磁着部材31を備えている。この金型30の上型16には、キャビティ面14に開口する貫通孔32が複数形成されており、これらの貫通孔32内に前記磁着部材31が各別に装着されている。
【0049】
磁着部材31には、補強部材3に取り付けられた非通気性部材34が該補強部材3を介して磁着する。本実施形態では、磁着部材31は、内部がガス抜き孔12とされた筒状の磁石33とされている。磁石33は、永久磁石で形成されるとともに貫通孔32内に嵌合され、磁石33のキャビティ11の内側の端面は、上型16のキャビティ面14に滑らかに連なって面一となっている。また非通気性部材34は板状とされ、例えば磁性体材料(鉄、コバルト、ニッケルなど)からなる板状体や、少なくとも一方の面が着磁されたマグネットシート等で形成されている。
【0050】
次に、この金型30を用いてシート用パッド1を形成するシート用パッドの製造方法について説明する。ここで補強部材3には、非通気性部材34が、ガス抜き孔12に対応する位置に予め取り付けられている。
【0051】
まず図7に示すように、前記配置工程を行う。このとき本実施形態では、補強部材3を上型16のキャビティ面14に配置しながら、補強部材3が非通気性部材34と磁着部材31(磁石33)との間に挟み込まれるように非通気性部材34を磁着部材31に磁着させる。これにより、ガス抜き孔12が、非通気性部材34によりキャビティ11の内側から覆われることとなる。図示の例では、キャビティ面14のうちのガス抜き孔12の開口周縁部12aも、非通気性部材34によりキャビティ11の内側から覆われる。
【0052】
その後、図8に示すように、前記成形工程を行う。ここで本実施形態では、補強部材3が非通気性部材34と磁着部材31との間に挟み込まれるように非通気性部材34を磁着部材31に磁着させているので、成形工程における前記キャビティ充満時に、キャビティ11内で発泡する発泡原料と補強部材3との間に非通気性部材34が介在することとなる。したがって、補強部材3のうち、ガス抜き孔12に対応する部分への発泡原料の含浸を、非通気性部材34により遮ることで抑制することができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係るシート用パッドの製造方法によれば、配置工程時に、非通気性部材34を磁着部材31に磁着させることで該非通気性部材34によりガス抜き孔12を覆うので、成形工程前に、予め非通気性部材34をガス抜き孔12に高精度に位置決めしておくことが可能になり、前述の作用効果を一層確実に奏功することができる。
【0054】
また、磁着部材31が、内部がガス抜き孔12とされた筒状の磁石33であるので、非通気性部材34を磁着部材31(磁石33)に磁着させ、該非通気性部材34によりガス抜き孔12をキャビティ11の内側から覆うことで、ガス抜き孔12だけでなくガス抜き孔12の開口周縁部12aも、非通気性部材34によりキャビティ11の内側から確実に覆うことが可能になる。したがって、補強部材3のうち、ガス抜き孔12を覆う部分およびガス抜き孔12の開口周縁部12aに配置された部分に、キャビティ11内の発泡原料が含浸するのを確実に抑制することができる。
またこのように、補強部材3のうち、ガス抜き孔12を覆う部分およびガス抜き孔12の開口周縁部12aに配置された部分に、キャビティ11内の発泡原料が含浸するのを確実に抑制することができるので、発泡原料がガス抜き孔12内に流入するのを確実に抑制することができる。
【0055】
また、非通気性部材34が、補強部材3に取り付けられていることから、配置工程時に、補強部材3をキャビティ面14に配置しながら、非通気性部材34を磁着部材31に磁着させることが可能になる。したがって、金型10に設けられているガス抜き孔12の数によらず、非通気性部材34でガス抜き孔12を容易に覆わせることが可能になるとともに、補強部材3をキャビティ面14に対して高精度かつ容易に配置することが可能になり、配置工程を容易に行うことができる。
さらにこのように、配置工程を容易に行うことができることから、キャビティ11内のスペースが制約されている場合であっても、キャビティ11内に補強部材3を非通気性部材34とともに位置決めしながら配置する作業の煩雑さを緩和することができる。
【0056】
なお磁着部材31は、ガス抜き孔12の少なくとも一部を画成すれば良く、例えば、磁着部材は、貫通孔32の内周面に取り付けられた磁石とされ、貫通孔32の内周面のうち、該磁着部材が取り付けられていない部分とともにガス抜き孔12を画成しても良い。
【0057】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態のシート用パッドの製造方法で用いられる金型を、図9を参照して説明する。
なお、この第3実施形態においては、第2実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図9に示すように、この金型40の磁着部材41は、内部がガス抜き孔12とされたガス抜き筒部42、および該ガス抜き孔12をキャビティ11の外側から閉塞する閉塞壁部43を有する孔画成体44と、ガス抜き孔12内に固定された磁石46と、を備えている。
【0058】
図示の例では、ガス抜き筒部42は、貫通孔32内に嵌合され、ガス抜き筒部42のキャビティ11の内側の端面は、上型16のキャビティ面14に滑らかに連なって面一となっている。また閉塞壁部43は、ガス抜き筒部42のキャビティ11の外側の開口端部を閉塞しており、孔画成体44は、全体としてキャビティ11の内側に開口する有頂筒状をなしている。
【0059】
磁石46は、ガス抜き孔12内にその軸線方向に沿って延在する棒状に形成され、孔画成体44の閉塞壁部43に固定されるとともに該閉塞壁部43の中央部からキャビティ11の内側に向けて延在している。磁石46のキャビティ11の内側の端面は、上型16のキャビティ面14と面一となっている。この磁石46には、前記非通気性部材34が補強部材3を介して磁着する。
【0060】
そして、孔画成体44には、ガス抜き孔12とキャビティ11の外部とを連通する連通路45が形成されている。図示の例では、連通路45は、ガス抜き筒部42のキャビティ11の外側に位置する部分に、その周方向に間隔をあけて複数形成されている。
この金型40において、キャビティ11内の発泡ガスや空気などは、ガス抜き孔12および連通路45を通って排気される。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係るシート用パッドの製造方法によれば、孔画成体44に前記連通路45が形成されているので、ガス抜き孔12からキャビティ11の外部に排気されるキャビティ11内の発泡ガスや空気の流量を、例えば連通路45の流路径や流路長などを変更することで調整することができる。したがって、ガス抜き孔12から排気される発泡ガスや空気の流量を、磁石46ではなく孔画成体44を加工することで調整することが可能になり、この調整を比較的安価に行うことができる。
なおこのように、ガス抜き孔12から排気されるキャビティ11内の発泡ガスや空気の流量を調整すると、発泡ガスや空気の排気に伴ってキャビティ11内の発泡原料が補強部材3に含浸するのを抑制することができる。
【0062】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る第4実施形態のシート用パッドの製造方法で製造されるシート用パッド50を、図10を参照して説明する。
なお、この第4実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図10に示すように、このシート用パッド50では、非通気性部材4が、前記被固定部5の表面に配設され露出している。
【0063】
次に、このシート用パッド50を、前記金型10を用いて製造するシート用パッドの製造方法について説明する。
ここで図11に示すように、補強部材3には、非通気性部材4および被固定体19が、補強部材3の同一の面にそれぞれ予め取り付けられている。なお被固定体19は、非通気性部材4と異なる面に取り付けられていても良い。
【0064】
まず前記配置工程を行う。このとき本実施形態では、補強部材3を、該補強部材3に対して非通気性部材4がキャビティ面14側に位置するとともに非通気性部材4とキャビティ面14との間に隙間51をあけた状態で、キャビティ面14に配置する。このように、非通気性部材4とキャビティ面14との間に隙間51をあけた状態で補強部材3を配置するので、キャビティ11内の発泡ガスや空気は、通気性を具備する補強部材3および前記隙間51を通してガス抜き孔12から排気される。
【0065】
次に前記成形工程を行う。この工程では前記キャビティ充満時まで、キャビティ11内で発泡する発泡原料により、非通気性部材4とキャビティ面14との間の隙間51が狭まるように補強部材3がキャビティ面14側に押し込まれつつ、キャビティ11内の発泡ガスや空気が、補強部材3および前記隙間51を通してガス抜き孔12から排気される。そして図12に示すように、前記キャビティ充満時に、キャビティ11内で発泡する発泡原料により補強部材3がキャビティ面14に押し付けられ、キャビティ面14と補強部材3との間に挟み込まれた非通気性部材4によって、ガス抜き孔12がキャビティ11の内側から覆われて塞がれる。これにより、キャビティ11内の発泡ガス等がガス抜き孔12から排気されるのを抑制することができる。
なおこのように、成形工程時に、非通気性部材4が、キャビティ面14と補強部材3との間に挟み込まれることから、前記被固定部5のうち、ガス抜き孔12に対応する部分の表面には、発泡原料が含浸しにくい非通気性部材4が配設されることとなる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係るシート用パッドの製造方法によれば、前記キャビティ充満時以降、ガス抜き孔12を通したキャビティ11内と外部との連通の遮断までの時間があいたとしても、非通気性部材4によってキャビティ11内の発泡ガス等がガス抜き孔12から排気されるのを抑制することが可能になり、補強部材3のうち、ガス抜き孔12に対応する部分に発泡原料が含浸するのを抑制することができる。
【0067】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば前記各実施形態では、金型10は、上型16および下型15を備えるものとしたが、これらに加えて、キャビティ11内に配設される中子型を備える構成であっても良い。
また前記各実施形態では、上型16および下型15の外周部15A、16A同士の間にシール部材20が配設されているものとしたが、シール部材20はなくても良い。
【0068】
また前記各実施形態では、非通気性部材4、34は、シート用パッド1の前記被固定部5に沿って延びる帯状とされるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、図13に示すシート用パッド60のように、複数の非通気性部材61が、前記被固定部5に沿って互いに間隔をあけて配設されていても良い。
このシート用パッド60は、図14に示すように、例えば、配置工程前に、複数の非通気性部材61がそれぞれ、複数のガス抜き孔12に対応する位置に予め各別に取り付けられた補強部材3を用いることで形成することができる。
ただし、発泡原料の含浸や擦れ音の発生などの観点から、非通気性部材は、シート用パッド1の前記被固定部5に沿って延びていることが好ましい。
さらに前記各実施形態では、非通気性部材4、34、61は、シート用パッド1、50、60の前記被固定部5に沿って配設されるものとしたが、前記被固定部5に沿っていなくても良い。
【0069】
また前記各実施形態では、金型10、30、40には、ガス抜き孔12が複数形成されているものとしたが、1つであっても良い。
また前記各実施形態では、複数のガス抜き孔12が、キャビティ面14の前記被固定部の形成領域17に沿って互いに間隔をあけて開口しているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、1つのガス抜き孔12が、前記被固定部の形成領域17に沿って延びる長穴状に開口していても良い。
【0070】
また前記各実施形態では、ガス抜き孔12は、キャビティ面14の前記被固定部の形成領域17に開口しているものとしたが、前記被固定部の形成領域17に開口していなくても良い。この場合であっても、この製造方法で製造されたシート用パッドのうち、ガス抜き孔12に対応する部分の表面が、発泡原料の含浸を起因として硬くなるのを抑えることが可能になり、シート用パッドの品質の向上を図ることができる。
【0071】
また前記各実施形態では、シートフレームFの平面視形状は、矩形枠状とされるものとしたが、これに限られるものではない。
さらに前記各実施形態では、発泡体2に凹部6が形成されているものとしたが、凹部6はなくても良い。
【0072】
さらにまた、前記各実施形態では、前記被固定部5は、前記凹部6を画成する底壁面6aの外周縁部と側壁面に沿って設けられているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、前記被固定部5が、凹部6が形成されていない発泡体2および補強部材3に一体に設けられていても良い。
さらに前記各実施形態では、補強部材3および発泡体2には前記被固定部5が一体に設けられるものとしたが、前記被固定部5はなくても良い。
【0073】
また前記各実施形態では、シート用パッド1、50、60として、いわゆるクッションパッドを採用したが、これに限られるものではなく、例えば、前記車両におけるシートの背もたれ部となるいわゆるバックパッド等であっても良い。
【0074】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0075】
次に、以上説明した作用効果についての検証試験を実施した。
本検証試験では、実施例1、2および比較例1〜3の計5例のシート用パッドの製造方法を実施した。
ここで、実施例1、2および比較例1〜3ではいずれも、前記第1実施形態に示した金型を用いるとともに、発泡原料が発泡し始めた後、45秒経過したときに発泡原料にキャビティ内が満たされるように原料や金型温度等の条件を固定した。なお、キャビティ内での発泡原料の充満は、キャビティの隅部(端部)に設けた感圧センサで検知した。
【0076】
そして実施例1、2では、前記第1実施形態に示したシート用パッドの製造方法でシート用パッドを製造した。なお実施例1では、成形工程時にガス抜き孔を通したキャビティ内と外部との連通を遮断するタイミングを、発泡原料が発泡し始めた後、45秒経過した前記キャビティ充満時とし、実施例2では、前記タイミングを、発泡原料が発泡し始めた後、55秒経過したとき(すなわち、前記キャビティ充満時から10秒後)とした。
【0077】
また比較例1〜3では、非通気性部材が取り付けられていない補強部材を用いたシート用パッドの製造方法でシート用パッドを製造した。なお比較例1では、成形工程時にガス抜き孔を通したキャビティ内と外部との連通を遮断するタイミングを、発泡原料が発泡し始めた後、45秒経過した前記キャビティ充満時とし、比較例2では、前記タイミングを、発泡原料が発泡し始めた後、55秒経過したときとし、比較例3では、ガス抜き孔を通したキャビティ内と外部との連通を遮断しなかった。
【0078】
そして、実施例1、2および比較例1〜3のいずれも、発泡原料が発泡し始めた後、5分経過後に脱型工程を行うことでシート用パッドを得た。その後、シート用パッドの被固定部のうち、ガス抜き孔に対応する部分を指で触って補強部材への発泡原料の含浸の程度を判定した。
結果を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
表1に示すように、実施例1、2および比較例1はいずれも含浸が抑制され補強部材の硬化が抑えられている一方、比較例2、3は、過剰に含浸し補強部材が硬くなっていることが確認された。これらから、本願発明においては、前記キャビティ充満時から、ガス抜き孔を通したキャビティ内と外部との連通の遮断時までに10秒程度のばらつきがあっても、補強部材への発泡原料の含浸を抑制できることが確認された。
【符号の説明】
【0081】
1、50、60 シート用パッド(発泡成形体)
2 発泡体
3 補強部材
4、34、61 非通気性部材
5 被固定部
F シートフレーム
10、30、40 金型(発泡成形体の製造装置)
11 キャビティ
12 ガス抜き孔
14 キャビティ面
15 下型
16 上型
15A、16A 外周部
15B、16B 中央部
17 被固定部の形成領域
20 シール部材
31、41 磁着部材
33、46 磁石
42 ガス抜き筒部
43 閉塞壁部
44 孔画成体
45 連通路
51 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ内に連通するガス抜き孔が形成された発泡成形体の製造装置において、前記ガス抜き孔が開口するキャビティ面に通気性を具備する補強部材を配置する配置工程と、
前記キャビティ内で発泡原料を発泡させて発泡体を形成するとともに該発泡体に前記補強部材を一体に固着させることで、発泡成形体を形成する成形工程と、を有する発泡成形体の製造方法であって、
前記成形工程は、発泡原料が発泡し始めた後、前記発泡体が形成される前に、前記ガス抜き孔を通した前記キャビティ内と外部との連通を遮断し、
前記補強部材において前記ガス抜き孔に対応する部分には、非通気性部材が取り付けられ、
前記成形工程は、発泡した発泡原料に前記キャビティ内が満たされたキャビティ充満時に、前記発泡原料により前記補強部材を前記キャビティ面に押し付けた状態で、前記非通気性部材により前記ガス抜き孔を前記キャビティの内側から覆っていることを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の発泡成形体の製造方法であって、
前記発泡成形体の製造装置には、前記ガス抜き孔の少なくとも一部を画成するとともに、前記非通気性部材が前記補強部材を介して磁着する磁着部材が備えられ、
前記配置工程は、前記補強部材を前記キャビティ面に配置しながら、該補強部材が前記非通気性部材と前記磁着部材との間に挟み込まれるように前記非通気性部材を前記磁着部材に磁着させ、該非通気性部材により前記ガス抜き孔を前記キャビティの内側から覆うことを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の発泡成形体の製造方法であって、
前記磁着部材は、内部が前記ガス抜き孔とされた筒状の磁石であることを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項2記載の発泡成形体の製造方法であって、
前記磁着部材は、内部が前記ガス抜き孔とされたガス抜き筒部、および該ガス抜き孔を前記キャビティの外側から閉塞する閉塞壁部を有する孔画成体と、前記ガス抜き孔内に固定される磁石と、を備え、
前記孔画成体には、前記ガス抜き孔と前記キャビティの外部とを連通する連通路が形成されていることを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の発泡成形体の製造方法であって、
前記配置工程は、前記補強部材を、該補強部材に対して前記非通気性部材が前記キャビティ面側に位置するとともに前記非通気性部材と前記キャビティ面との間に隙間をあけた状態で、前記キャビティ面に配置することを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の発泡成形体の製造方法であって、
前記補強部材および前記発泡体には、車両のシートフレームに接触した状態で固定される被固定部が一体に設けられ、
前記ガス抜き孔は、前記キャビティ面のうち、前記被固定部を形成する被固定部の形成領域に開口していることを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の発泡成形体の製造方法の実施に使用する発泡成形体の製造装置であって、
互いの外周部同士が接触するとともに互いの中央部同士の間に前記キャビティが形成される上型および下型を備え、
前記上型および前記下型の外周部同士の間には、該外周部同士の間を封止するシール部材が配設されていることを特徴とする発泡成形体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−177958(P2011−177958A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42419(P2010−42419)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】