説明

発泡樹脂成形品の接合構造

【課題】樹脂成形品と発泡樹脂成形品をボスの締結加工により接合一体化する際、発泡樹脂成形品の締結位置を安定化させることで組み付け精度を向上させる。
【解決手段】トリムアッパー(樹脂成形品)20とトリムロア(発泡樹脂成形品)30とを接合一体化してラゲージサイドトリム10を組み付ける。上記トリムロア30の取付孔33の周縁に複数の環状リブ34,35を突設し、トリムアッパー20における溶着用ボス21周囲の補強リブ22面に複数の環状リブ34,35を突当てる支持構造を採用することにより、トリムアッパー20とトリムロア30の締結位置を安定化させ、トリムアッパー20とトリムロア30との組み付け精度を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発泡樹脂材料の射出充填工程と発泡成形工程とで金型の型クリアランスを可変させる成形工法を採用して成形した発泡樹脂成形品と相手側の樹脂成形品とを接合させる発泡樹脂成形品の接合構造に係り、特に、樹脂成形品の締結用ボスを発泡樹脂成形品の取付孔に挿入して締結加工する際の発泡樹脂成形品の締結位置を安定化させることで、樹脂成形品と発泡樹脂成形品の組み付け精度を著しく高めた発泡樹脂成形品の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図14は車両のラゲージルームの側壁パネルの室内面に装着されるラゲージサイドトリム1の正面図であり、ラゲージサイドトリム1は、トリムアッパー2とトリムロア3との上下二分割体を接合固定して構成されている。この従来例においては、トリムアッパー2は樹脂成形品を採用し、トリムロア3は発泡樹脂成形品が採用されている。そして、トリムアッパー2とトリムロア3は、図15に示すように、トリムアッパー2の下縁側がトリムロア3の上縁の表面側にオーバーラップするように両者を位置決めし、オーバーラップ部分においてトリムアッパー2の裏面にボス4を立設し、このボス4をトリムロア3の取付孔5内に挿入して、ボス4の先端を熱溶着、超音波溶着等の溶着加工による締結加工を施し、トリムアッパー2とトリムロア3とを強固に接合固定しているのが実情である。
【0003】
次に、トリムアッパー2、トリムロア3の成形方法について簡単に説明する。トリムアッパー2は、通常の射出成形金型内に熱可塑性樹脂材料を射出充填することで所要形状に成形されるが、トリムロア3の成形については、図16に示す成形金型6が使用されている。この成形金型6は、可動側金型7と固定側金型8とから大略構成され、可動側金型7は、駆動シリンダ7aの駆動により、固定側金型8に対して型開き、型締めが行なわれる。また、可動側金型7と固定側金型8との間に画成されるキャビティC内に発泡樹脂材料Mを供給する供給系としては、射出機8aが固定側金型8に連結され、この射出機8aから供給される発泡樹脂材料Mの供給経路として、固定側金型8にはホットランナ8b、ゲート8cが設けられている。そして、発泡樹脂材料Mの射出充填工程が完了すれば、可動側金型7を微小ストローク後退操作させて、型クリアランスを拡げた後、発泡樹脂材料Mの発泡成形を行なわせることで製品表面はスキン層3a、内部は発泡層3bの二層構造からなるトリムロア3の成形が完了する。
【0004】
更に詳しくは、トリムロア3に開設される取付孔5については、図17に示すように、可動側金型7に円筒状の突部7bが立設され、固定側金型8の型面には、円筒状の突部7bの先端を収容する凹部8dが設けられている。そして、図17(a)は発泡樹脂材料Mの射出充填工程を示し、図17(b)は型クリアランスを大きく保つ発泡成形工程を示しており、突部7bは、発泡樹脂材料Mの射出充填工程では、固定側金型8の凹部8d内に充分嵌まり込んでおり、可動側金型7を後退操作させた時には、凹部8d内を上方に移行する。尚、発泡樹脂材料Mの射出充填工程と、型クリアランスを大きく確保した発泡成形工程の二つの工程を採用した発泡樹脂成形品の製造方法の従来例としては、特許文献1に詳細に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−120252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来のラゲージサイドトリム1におけるトリムロア(発泡樹脂成形品)3の成形方法においては、可動側金型7と固定側金型8との間の型クリアランスを調整することで、精度の良い成形を行なっている。すなわち、型クリアランスを小さくして、発泡を抑えた状態で発泡樹脂材料MをキャビティC内に供給できるとともに、発泡反応時には、型クリアランスを大きく設定することで、最終製品形状にトリムロア3を精度良く成形することができる。
【0007】
しかしながら、トリムロア3に取付孔5を開設する際、図17(b)に示すように、取付孔5縁部の形状は、コーナー部に形状垂れが生じる傾向にあり、そうした場合、図18に示すように、取付孔5の周囲には、図中符号aで示す範囲において、形状垂れが生じ易く、トリムアッパー2とトリムロア3とを位置決めした後、ボス4を締結加工する際、図中符号bで示すバラツキが生じ、締結位置が安定せず、トリムアッパー2とトリムロア3との組み付け精度にバラツキが生じるという不具合が指摘されている。
【0008】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、相互に型開き、型締め可能な可動側金型、固定側金型とからなる成形金型を使用し、発泡樹脂材料の射出充填工程と発泡成形工程とで金型の型クリアランスを可変させた発泡樹脂成形品の成形方法を採用して成形した発泡樹脂成形品を相手側の樹脂成形品と接合させる発泡樹脂成形品の接合構造において、取付孔近傍の形状出しが精度良く行なえ、相手側の樹脂成形品に対する締結位置を安定化させることができ、精度の良い組み付けを可能とした発泡樹脂成形品の接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、可動側金型と固定側金型との間で画成されるキャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填した後、可動側金型を後退操作することにより、発泡スペースを確保し、所要形状に発泡成形してなる発泡樹脂成形品と、所要形状に成形された樹脂成形品との接合構造であって、樹脂成形品の裏面に立設した溶着用ボスを発泡樹脂成形品の取付孔内に挿入した後、溶着用ボスの締結操作を行なう発泡樹脂成形品の接合構造において、前記発泡樹脂成形品における取付孔周囲における樹脂成形品対向側には、取付孔を基点として同心上の環状リブが複数個突設形成されていることにより、発泡樹脂成形品の発泡成形時において、取付孔近傍の形状出しを精度良く行なうことができる一方、樹脂成形品と発泡樹脂成形品とを接合固定する位置決め時には、樹脂成形品の溶着用ボスを発泡樹脂成形品の取付孔内に挿入し、取付孔周縁の環状リブを樹脂成形品の裏面に当接させることにより、樹脂成形品に対する発泡樹脂成形品の締結位置を一定に制御しつつ、溶着用ボスの締結固定作業が行なわれることを特徴とする。
【0010】
ここで、成形金型における可動側金型は、固定側金型に対して型開き、型締めできるように、シリンダ、あるいはプレスラム等により所定ストローク可動できるとともに、特に、発泡樹脂材料の射出充填工程における可動側金型と固定側金型との狭い型クリアランスを確保する第1の金型位置と、第1の金型位置から所定ストローク可動側金型を後退させて発泡スペースを確保する第2の金型位置とを備えるように、可動側金型のストロークが設定される。
【0011】
一方、固定側金型には、発泡樹脂材料をキャビティ内に供給するために、ホットランナ、ゲート等の樹脂通路が設けられている。そして、発泡樹脂成形品に取付孔を開設するために、可動側金型には固定側金型側に向く円筒状の突部が突設形成されており、この突部の形状並びに寸法は、発泡樹脂成形品に開設する取付孔の形状、寸法に対応して設定されている。そして、この突部の周縁には、環状の周溝が同心上に複数個形成されており、その結果、発泡樹脂成形品における取付孔の周縁には、複数の環状リブが同心上に形成されることになる。
【0012】
従って、可動側金型が後退して発泡スペースを確保する発泡成形工程においては、発泡樹脂材料の半成形品の取付孔近傍部分は、金型側の複数の周溝内に半成形品の環状リブが嵌着することで、可動側金型の後退動作に追随して、半成形品の取付孔縁部が可動側金型側に引き寄せられることになり、取付孔コーナー部における形状垂れを回避することができ、精度の良い形状出しが可能となる。
【0013】
ここで、樹脂成形品と発泡樹脂成形品との組み合わせとしては、例えば、ドアトリム、リヤサイドトリム、ラゲージサイドトリム等の車両の側壁パネルの室内面に装着される比較的大型の内装部品であって、トリムアッパーとトリムロアの上下二分割体、あるいはトリムアッパー、トリムセンター、トリムロア等、上下三分割体等の各パーツを接合固定する構造に適用される。トリムアッパーとトリムロアの上下二分割体を例にとると、トリムアッパーを樹脂成形品、トリムロアを発泡樹脂成形品で構成し、トリムアッパーの裏面に突設した溶着用ボスをトリムロアの取付孔に挿入して、溶着用ボスの先端をカシメ加工等で締結加工することで両者が一体化される。また、ドアトリム本体にポケットバックカバーを取り付ける際、ドアトリム本体を発泡樹脂成形品、ポケットバックカバーを樹脂成形品で構成し、ポケットバックカバーのボスをドアトリム本体の取付孔に挿入して、ボスを締結加工することで、組み付ける形態に適用することもできる。
【0014】
更に、本発明に係る発泡樹脂成形品の接合構造は、樹脂成形品の裏面にボスを立設するが、このボスは、溶着用ボス、あるいはビス止め用ボスのいずれでも良い。そして、このボスを発泡樹脂成形品の取付孔内に挿入して、ボスの先端を超音波溶着、熱溶着等の溶着カシメ加工、あるいはビスにより締結固定する。その際、発泡樹脂成形品の取付孔の縁部は、複数の環状リブが同心上に突設形成され、複数の環状リブの先端を樹脂成形品の裏面に当接させることで、常に樹脂成形品に対する発泡樹脂成形品の締結位置を安定化させることができ、両者の組み付け精度を良好に維持することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明した通り、本発明に係る発泡樹脂成形品の接合構造によれば、射出充填時の型クリアランスと発泡反応時の型クリアランスを可変させて、発泡樹脂成形品を成形する成形方法を採用し、特に、発泡樹脂成形品に取付孔を開設するために設けた円筒状の突部の根元周縁には、環状の周溝を複数個設けることで、可動側金型の後退時、未発泡状態の半成形品の取付孔縁部を可動側金型の動作と追随させるようにしたから、取付孔縁部の形状出しを精度良く行なえるとともに、特に、樹脂成形品と発泡樹脂成形品とを締結用ボスの締結加工により接合一体化する際、発泡樹脂成形品の取付孔周りに設けた複数の環状リブの先端を樹脂成形品の裏面に当接させて両者の締結位置を安定化させることができるため、常に一定の組み付け精度が得られるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る発泡樹脂成形品の接合構造を適用した上下二分割構造のラゲージサイドトリムを示す正面図である。
【図2】図1中II−II線断面図である。
【図3】図2に示すトリムアッパーとトリムロアとの接合構造を示す拡大断面図である。
【図4】図2に示すトリムアッパーとトリムロアとの接合構造における溶着用ボス挿入時の状態を示す説明図である。
【図5】図2に示すトリムアッパーとトリムロアとの接合構造における溶着用ボス締結時の状態を示す説明図である。
【図6】図2に示すトリムアッパーとトリムロアとの接合構造における溶着用ボス締結時の別の態様を示す説明図である。
【図7】図1に示すラゲージサイドトリムにおけるトリムロアを成形する際に使用する成形金型の構成を示す概要図である。
【図8】図7に示す成形金型におけるトリムロアの取付孔近傍部分に対応する箇所の構成を示す説明図である。
【図9】図1に示すラゲージサイドトリムにおけるトリムロアの成形方法における発泡樹脂材料の射出充填工程を示す説明図である。
【図10】図1に示すラゲージサイドトリムにおけるトリムロアの成形方法における可動側金型の後退操作状態を示す説明図である。
【図11】図10に示す可動側金型の後退動作時における取付孔近傍部分の金型追随状態を示す説明図である。
【図12】図1に示すラゲージサイドトリムにおけるトリムロアの成形方法における発泡成形工程を示す説明図である。
【図13】図12に示す発泡成形工程における取付孔近傍部分の状態を示す説明図である。
【図14】従来のラゲージサイドトリムを示す正面図である。
【図15】図14中XV−XV線断面図である。
【図16】従来のラゲージサイドトリムにおけるトリムロアの成形に使用する成形金型の概要を示す説明図である。
【図17】従来の成形金型における取付孔近傍部分を示す説明図である。
【図18】従来のトリムアッパーとトリムロアとの締結状態時の不具合を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る発泡樹脂成形品の接合構造の実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例】
【0018】
図1乃至図13は本発明の一実施例を示すもので、図1は本発明に係る発泡樹脂成形品の接合構造を適用して製作した上下二分割構造のラゲージサイドトリムを示す正面図、図2,図3は同ラゲージサイドトリムにおけるトリムアッパーとトリムロアとの接合部分の構成を示す各断面図、図4乃至図6は同ラゲージサイドトリムにおけるトリムアッパーとトリムロアとの接合構造を示す各説明図、図7はラゲージサイドトリムにおけるトリムロアを成形する際に使用する成形金型の概略構成を示す説明図、図8は同成形金型におけるトリムロアの取付孔近傍部分の構成を示す説明図、図9乃至図13はラゲージサイドトリムにおけるトリムロアの成形方法の各工程を示す説明図である。
【0019】
図1乃至図3において、ラゲージサイドトリム10は、車両のラゲージルームの側壁パネルの室内面側に取り付けられる内装部品であり、トリムアッパー20とトリムロア30との上下二分割体から構成されている。トリムアッパー20及びトリムロア30には、それぞれ各種機能部品、例えば、備品を吊り下げるための多機能型フックや、空調用のエアグリル、あるいはスピーカグリル等がトリムアッパー20、トリムロア30と別体、あるいは一体に設けられているが、本発明の要旨ではないため、ここではこれら機能部品やその取付構造については省略する。
【0020】
ところで、ラゲージサイドトリム10を構成するトリムアッパー20及びトリムロア30の素材としては、トリムアッパー20は、射出成形工法を採用した通常の樹脂成形品が使用されている。その材質として使用できる合成樹脂材料は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等から適宜選択される。
【0021】
一方、トリムロア30は、発泡樹脂成形品が使用されており、この発泡樹脂成形品は、合成樹脂材料中に発泡剤を混入した発泡樹脂材料が使用されている。例えば、使用できる合成樹脂材料としては、トリムアッパー20に使用した樹脂材料が使用できるため、ここでは省略する。また、合成樹脂材料に対して添加される発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤、重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤を使用することができる。
【0022】
次に、図2乃至図6に基づいて、トリムアッパー20とトリムロア30との接合構造について説明する。すなわち、本発明においては、トリムアッパー20とトリムロア30を接合する際、双方の締結位置を安定化させて合わせ精度の優れたラゲージサイドトリム10を提供できることが特徴である。まず、トリムアッパー20の裏面には、溶着用ボス21が立設されており、この溶着用ボス21の基部には、十字状の補強リブ22が一体化されている。そして、上記溶着用ボス21と対応する位置におけるトリムロア30には、取付孔33が開設されているとともに、トリムアッパー20の補強リブ22面に対向する側には、同心上の環状リブ34,35が二重リブ構造として設けられている。図3に示すように、この環状リブ34,35のリブ幅d1は1〜1.5mm、双方の環状リブ34,35の間隔d2は1〜1.5mm、リブ高さd3は1mmで、環状リブ34,35のコーナーRは0.5mmにそれぞれ設定されている。
【0023】
そして、図4に示すように、トリムアッパー20とトリムロア30とを位置決めして、溶着用ボス21を締結した状態においては、トリムロア30の取付孔33の周縁に立設した環状リブ34,35の先端がトリムアッパー20の補強リブ22面に当接することで、図5に示すように、トリムアッパー20とトリムロア30との締結位置を常に安定化させることができ、溶着用ボス21の先端に図示しない超音波加工ホーンでカシメ加工を施すことで、図2に示すように、トリムアッパー20とトリムロア30とを強固に一体化することができる。尚、超音波溶着に替えて、熱溶着加工を施しても良く、また、溶着用ボス21に替えて、ビス止め用ボスを採用し、裏面側からビスを締結することでトリムアッパー20とトリムロア30とを接合一体化することができる。
【0024】
更に、図6に示すように、本発明においては、トリムロア30における取付孔33の周縁には、取付孔33周縁に相当する内側の環状リブ34と、その外側に一回り大きく外側の環状リブ35を設けたため、例えば、トリムロア30成形時において、内側の環状リブ34に形状垂れが発生しても、外側の環状リブ35の先端がトリムアッパー20の補強リブ22と当接することで、所定位置にトリムロア30を精度良く位置決めでき、合わせ精度を常に良好に維持することができる。尚、この実施例においては、トリムロア30における取付孔33の周縁に二重の環状リブ34,35を設けたが、所望によりリブの設定数を2乃至5本の範囲内で増減させることができる。
【0025】
尚、本発明においては、トリムロア30における取付孔33周縁に複数の環状リブ34,35を設けて、トリムアッパー20とトリムロア30とを組み付ける際の合わせ精度を高める効果が期待できるが、この環状リブ34,35は、トリムロア30を成形する際の成形性能を高める付随的な効果を備えている。
【0026】
次いで、図7,図8は、ラゲージサイドトリム10におけるトリムロア30を成形する際に使用する成形金型40の概略構成を示すもので、この成形金型40は、可動側金型50と固定側金型60と射出機70とから大略構成されている。更に詳しくは、上記可動側金型50はプレスラム51の動作により、型開き位置、型締め位置に加えて発泡成形位置の3つのポジションをとるように駆動される。一方、固定側金型60は、射出機70から供給される発泡樹脂材料Mの樹脂通路となるホットランナ61、ゲート62を通じてキャビティC内に発泡樹脂材料Mが供給されるとともに、成形後の発泡樹脂成形品であるトリムアッパー20を突出すためのエジェクタピン63が内装されている。
【0027】
更に、可動側金型50と固定側金型60との間で画成されるキャビティC形状に沿ってトリムロア30が成形されるが、トリムロア30に開設される取付孔33を形成するために、図8に示すように、可動側金型50の型面所定位置に取付孔33の形状や寸法に合致する円筒状の突部52が突設形成されており、円筒状の突部52の根元周縁には、トリムロア30の取付孔33に環状リブ34,35を形成するための環状の周溝53,54が凹設されている。更に、突部52を受けるために、固定側金型60については、凹部64が設けられている。
【0028】
次いで、図9乃至図13に基づいて、発泡樹脂成形品であるトリムロア30を精度良く成形できる成形方法について逐次説明する。まず、図9に示すように、プレスラム51により可動側金型50は固定側金型60に対して型締めされ、型締め位置にある時、射出機70からホットランナ61、ゲート62を通じてキャビティC内に発泡樹脂材料Mが射出充填される。この時、図示はしないが、外部からキャビティC内にエアを強制導入し、発泡樹脂材料Mが発泡反応を行なわないようにキャビティC内に樹脂を充填するカウンタープレッシャー工法を採用することもできる。
【0029】
次いで、発泡樹脂材料Mの射出充填工程が完了すれば、図10に示すように、可動側金型50が型開き方向に微小ストローク後退する。この可動側金型50の後退動作では、キャビティC内には未発泡状態の半成形品Pが収容されており、可動側金型50の後退ストロークに対応する発泡スペースSが確保されることになる。そして、トリムロア30の取付孔33に対応する部分は、図11に示すように、円筒状の突部52の根元周縁に設けた環状の周溝53,54に半成形品Pの一部が入り込んでいるため、半成形品Pは、可動側金型50の後退動作に追随することで、取付孔33近傍のコーナー部分において形状垂れが生じない。そして、図12に示すように、未発泡状態の半成形品Pは、発泡反応が誘起され、型クリアランスを大きく設定したスペース内でスキン層31と発泡層32とからなるトリムロア30が所望の厚みを備えるように成形される。この時、図13に示すように、取付孔33の縁部については、可動型金型50の環状の周溝53,54に発泡樹脂材料Mが入り込んで環状リブ34,35が成形されるため、キャビティ形状に沿った精度の良い成形が可能となる。
【0030】
このように、本発明によれば、トリムロア30で例示する発泡樹脂成形品を所要形状に成形する際、取付孔33の縁部に形状垂れが生じることがなく、精度の良い形状出しが可能になるとともに、トリムアッパー20とトリムロア30との接合一体化についても、両者の安定した締結位置を確保でき、合わせ精度を高めたラゲージサイドトリム10を成形することができるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明した実施例は、上下二分割タイプのラゲージサイドトリム10において、樹脂成形品であるトリムアッパー20と発泡樹脂成形品であるトリムロア30との接合構造に本発明を適用したが、本発明を適用する用途は、これに限定されることなく、樹脂成形品と発泡樹脂成形品との接合構造全般に適用できる。例えば、トリムアッパー20とトリムロア30とからなるラゲージサイドトリム10以外にも、ドアトリム、リヤサイドトリム等の分割構造は勿論、発泡樹脂成形品からなるドアトリム本体に対して樹脂成形品からなるポケットバックカバーをボスの締結固定により接合一体化する構造に適用することもできる。更に、発泡樹脂材料の射出充填時、キャビティC内に圧空エアを供給するカウンタープレッシャー工法を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 ラゲージサイドトリム
20 トリムアッパー(樹脂成形品)
21 溶着用ボス
22 補強リブ
30 トリムロア(発泡樹脂成形品)
31 スキン層
32 発泡層
33 取付孔
34,35 環状リブ
40 成形金型
50 可動側金型
51 プレスラム
52 円筒状の突部
53,54 環状の周溝
60 固定側金型
61 ホットランナ
62 ゲート
63 エジェクタピン
64 凹部
70 射出機
C キャビティ
M 発泡樹脂材料
P 半成形品
S 発泡スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動側金型(50)と固定側金型(60)との間で画成されるキャビティ(C)内に発泡樹脂材料(M)を射出充填した後、可動側金型(50)を後退操作することにより、発泡スペース(S)を確保し、所要形状に発泡成形してなる発泡樹脂成形品(30)と、所要形状に成形された樹脂成形品(20)との接合構造であって、樹脂成形品(20)の裏面に立設した溶着用ボス(21)を発泡樹脂成形品(30)の取付孔(33)内に挿入した後、溶着用ボス(21)の締結操作を行なう発泡樹脂成形品(30)の接合構造において、
前記発泡樹脂成形品(30)における取付孔(33)周囲における樹脂成形品(20)対向側には、取付孔(33)を基点として同心上の環状リブ(34,35)が複数個突設形成されていることにより、発泡樹脂成形品(30)の発泡成形時において、取付孔(33)近傍の形状出しを精度良く行なうことができる一方、樹脂成形品(20)と発泡樹脂成形品(30)とを接合固定する位置決め時には、樹脂成形品(20)の溶着用ボス(21)を発泡樹脂成形品(30)の取付孔(33)内に挿入し、取付孔(33)周縁の環状リブ(34,35)を樹脂成形品(20)の裏面に当接させることにより、樹脂成形品(20)に対する発泡樹脂成形品(30)の締結位置を一定に制御しつつ、溶着用ボス(21)の締結固定作業が行なわれることを特徴とする発泡樹脂成形品の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−234688(P2010−234688A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86090(P2009−86090)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】