説明

発熱定着ベルト及びその製造方法並びに画像定着装置

【課題】極めて均一な発熱領域を有し発熱層と絶縁層とが強固に一体化された発熱定着ベルト及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る発熱定着ベルトは、電子写真画像形成装置の画像定着部に用いられるシームレスの発熱定着ベルトであって、発熱層、絶縁層及び離型層を備える。発熱層は、カーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粒子が分散されるポリイミド樹脂からなる。離型層は、絶縁層又は発熱層の外側に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンター等の画像形成装置の画像定着装置並びにその画像定着装置に組み込まれている定着ベルト及びその製造方法に関し、詳しくは内周側に形成される発熱層に給電されると発熱して未定着トナー像を定着させることができる発熱定着ベルト及びその製造方法並びにその発熱定着ベルトを利用した画像定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やレーザービームプリンター等の画像形成装置では、画像成形部において複写紙やOHP等のシート状転写材上に形成された未定着トナー像を熱定着する方法として熱ローラ方式が多く用いられてきた。しかし、省エネルギーなどの観点から近年は、図9に示されるフィルム定着方式が主流になってきている。
【0003】
このフィルム定着方式の画像形成装置40では、ポリイミド等の耐熱性フィルムの外面にフッ素樹脂等の離型性層が積層されたシームレスの定着ベルトが用いられている。その一例を図9に基づき説明する。
【0004】
フィルム定着方式の画像形成装置40では、定着ベルト31の内側にベルトガイド32及びセラミックヒーター33が配置されており、定着ベルト31を介してセラミックヒーター33に圧接される加圧ロール34との間に、未定着トナー像38が形成された複写紙37が順次送り込まれ、トナーが加熱溶融させられて複写紙上に熱定着される。このような画像形成装置40ではトナーが極めて薄いフィルム状の定着ベルト31を介してセラミックヒーターにより実質的に直接加熱されるため、定着ベルト31と加圧ロール34の接触面N(ニップ面)が瞬時に所定の定着温度に達する。したがって、このような画像形成装置40は、電源の投入から定着可能状態に達するまでの待ち時間が短く、消費電力も小さい。このため、このような画像形成装置40は、家庭用から産業用まで広く使用されている。なお、図9中、符号35はサーミスタであり、符号39は定着されたトナー像であり、符号36は加圧ロール34の芯金部である。
【0005】
ところで、このような従来のフィルム定着方式の画像形成装置40では、上述したように、セラミックヒーターを介して定着フィルム31が加熱され、その表面でトナー像が定着されるため、定着フィルムの熱伝導性が重要なポイントとなる。しかし、定着フィルムを薄膜化して熱伝導性を改善しようとすると機械的特性が低下し高速化が難しくなる問題と、セラミックヒーターが破損しやすいという問題があった。このような問題を解決するために、近年、定着ベルトそのものに発熱体を設け、この発熱体に給電することにより定着ベルトを直接発熱し、トナー像を定着させる方式が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。この方式の画像形成装置は、電源の投入から定着可能状態に達するまでの待ち時間がさらに短く、消費電力もさらに小さく、熱定着の高速化などの面からも優れている。
【特許文献1】特開2000−066539号公報
【特許文献2】特開2004−281123号公報
【特許文献3】特開平06−202513号公報
【特許文献4】特開平10−142972号公報
【特許文献5】特開2000−058228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような新方式の画像形成装置にはまだ多くの問題が山積されており、このような新方式の画像形成装置は実用化に至っていない。
【0007】
例えば、上記特許文献に記載されたベルトヒーター方式では、以下のような問題点を有する。なお、本願では電子写真画像形成プロセスの定着方式に関して記述するにあたり、図9に示す定着方式を「フィルム定着方式」、上記特許文献に記載される定着方式を「ベルトヒーター方式」、本願の方式を「発熱定着ベルト方式」と記して説明する。
【0008】
ベルトヒーター方式の定着ベルトヒーターでは、カーボン粉末や金属粉末等の導電性材料をポリイミド又はシリコーンゴム等の耐熱絶縁基材に混合して発熱層が形成される。このため、均一な発熱領域を有する発熱体を得ることが難しい。また、特許文献5には、発熱体材料として主にカーボンナノチューブとカーボンマイクコイルとから形成された薄膜抵抗発熱体と、この薄膜抵抗発熱体を用いたトナーの加熱定着用部材とが開示されている。しかしながら、発熱体材料がカーボンナノチューブやカーボンマイクロコイルのみから形成されている場合、体積抵抗率を下げるためにカーボンナノチューブ等の混合量を増加させると、発熱体の機械的特性が急激に低下するという問題があり、体積抵抗率の低い発熱抵抗体を作製することが非常に難しい。
【0009】
また、特許文献1及び3には遠心成形方法で定着ベルトヒーターを成形することが記載されている。しかし、このような成形方法では、内径の小さい(10〜20mm)定着ベルトを大量生産することが難しく、レーザービームプリンター等の低価格化に対応できないという問題がある。
【0010】
本発明は、以上の問題点を鑑みてなされたものであり、極めて均一な発熱領域を有し発熱層と絶縁層とが強固に一体化された発熱定着ベルト及びその製造方法、並びに電源投入からの待機時間が非常に短くクイックスタートができ、消費電力を低く抑えることができると共に高速な定着を行うことができる安全性の高い画像定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る発熱定着ベルトは、電子写真画像形成装置の画像定着部に用いられるシームレスの発熱定着ベルトであって、発熱層、絶縁層及び離型層を備える。発熱層は、カーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粒子が分散されるポリイミド樹脂からなる。離型層は、絶縁層又は発熱層の外側に設けられる。
【0012】
第2発明に係る発熱定着ベルトは、第1発明に係る発熱定着ベルトであって、絶縁層は、発熱層の外側に設けられる。また、離型層は、絶縁層の外側に設けられる。
【0013】
第3発明に係る発熱定着ベルトは、第1発明に係る発熱定着ベルトであって、発熱層は、絶縁層の外側に設けられる。また、離型層は、発熱層の外側に設けられる。
【0014】
第4発明に係る発熱定着ベルトは、第1発明に係る発熱定着ベルトであって、絶縁層は、第1絶縁層と第2絶縁層とを有する。発熱層は、第1絶縁層の外側に設けられる。第2絶縁層は、発熱層の外側に設けられる。離型層は、第2絶縁層の外側に設けられる。
【0015】
第5発明に係る発熱定着ベルトは、第1発明から第4発明のいずれかに係る発熱定着ベルトであって、弾性層をさらに備える。弾性層は、シリコーンゴム及びフッ素ゴムより成る群から選択される少なくとも一つのゴムから成る。そして、離型層は、弾性層の外面に接するように設けられる。
【0016】
第6発明に係る発熱定着ベルトは、第1発明から第5発明のいずれかに係る発熱定着ベルトであって、カーボンナノ材料は、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及びカーボンマイクロコイルより成る群から選択される少なくとも1つの導電性物質である。
【0017】
第7発明に係る発熱定着ベルトは、第1発明から第6発明のいずれかに係る発熱定着ベルトであって、フィラメント状金属微粒子は、ストランドが三次元的に連なった形状を有するニッケル微粒子である。なお、フィラメント状ニッケル微粒子は図5に示される形状を呈するのが好ましい。フィラメント状ニッケル微粒子がカーボンナノファイバー等と絡まり合い、発熱層の低抵抗化が実現されるからである。
【0018】
第8発明に係る発熱定着ベルトは、第1発明から第7発明のいずれかに係る発熱定着ベルトであって、カーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粒子は、略一方向に配向する。
【0019】
第9発明に係る発熱定着ベルトは、第8発明に係る発熱定着ベルトであって、カーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粒子は、発熱定着ベルトの長さ方向に配向する。そして、カーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粒子の配向方向の体積抵抗率は、その配向方向と直交する方向の体積抵抗率よりも小さい。
【0020】
第10発明に係る発熱定着ベルトは、第1発明から第9発明のいずれかに係る発熱定着ベルトであって、ポリイミド樹脂は、少なくとも1種の芳香族ジアミンと少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物とを有機極性溶媒中で重合してなるポリイミド前駆体がイミド転化されたポリイミド樹脂である。
【0021】
第11発明に係る発熱定着ベルトは、第1発明から第10発明のいずれかに係る発熱定着ベルトであって、絶縁層は、少なくとも1種の芳香族ジアミンと少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中で重合してなるポリイミド前駆体がイミド転化されたポリイミド樹脂からなる。
【0022】
第12発明に係る発熱定着ベルトは、第10発明又は第11発明に係る発熱定着ベルトであって、芳香族ジアミンはパラフェニレンジアミン(PPD)である。また、芳香族テトラカルボン酸二無水物は3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)である。
【0023】
第13発明に係る発熱定着ベルトは、第1発明から第12発明のいずれかに係る発熱定着ベルトであって、離型層は、フッ素樹脂、シリコーンゴム及びフッ素ゴムより成る群から選択される少なくとも1つの樹脂又はゴムからなる。
【0024】
第14発明に係る発熱定着ベルトの製造方法は、発熱層と、発熱層の外側に設けられる絶縁層と、絶縁層の外側に設けられる離型層とを備える発熱定着ベルトの製造方法であって、(a)ポリイミド前駆体溶液中にカーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粉子が混合された導電性組成物を円筒状金型の表面に塗布する工程と、(b)円筒状金型の表面に塗布した導電性組成物を加熱して発熱層を成形する工程と、(c)発熱層の外側に絶縁ポリイミド前駆体溶液を塗布する工程と、(d)絶縁ポリイミド前駆体溶液を加熱して絶縁層を成形する工程と、(e)絶縁層の外側に離型層形成樹脂又は離型層形成樹脂前駆体を塗布する工程と、(f)離型層形成樹脂又は離型層形成樹脂前駆体を加熱して焼成する工程とを備える。
【0025】
第15発明に係る発熱定着ベルトの製造方法は、絶縁層と、絶縁層の外側に設けられる発熱層と、発熱層の外側に設けられる離型層とを備える発熱定着ベルトの製造方法であって、(g)絶縁ポリイミド前駆体溶液を円筒状金型の表面に塗布する工程と、(h)円筒状金型の表面に塗布した絶縁ポリイミド前駆体溶液を加熱して絶縁層を成形する工程と、(i)絶縁層の外側に、ポリイミド前駆体溶液中にカーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粉子が混合された導電性組成物を塗布する工程と、(j)導電性組成物を加熱して発熱層を成形する工程と、(k)発熱層の外側に離型層形成樹脂又は離型層形成樹脂前駆体を塗布する工程と、(l)離型層形成樹脂又は離型層形成樹脂前駆体を加熱して焼成する工程とを備える。
【0026】
第16発明に係る発熱定着ベルトの製造方法は、第1絶縁層と、第1絶縁層の外側に設けられる発熱層と、発熱層の外側に設けられる第2絶縁層と、第2絶縁層の外側に設けられる離型層とを備える発熱定着ベルトの製造方法であって、(m)第1絶縁ポリイミド前駆体溶液を円筒状金型の表面に塗布する工程と、(n)円筒状金型の表面に塗布した第1絶縁ポリイミド前駆体溶液を加熱して第1絶縁層を成形する工程と、(o)第1絶縁層の外側に、ポリイミド前駆体溶液中にカーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粉子が混合された導電性組成物を塗布する工程と、(p)導電性組成物を加熱して発熱層を成形する工程と、(q)発熱層の外側に第2絶縁ポリイミド前駆体溶液を塗布する工程と、(r)第2絶縁ポリイミド前駆体溶液を加熱して第2絶縁層を成形する工程と、(s)第2絶縁層の外側に離型層形成樹脂又は離型層形成樹脂前駆体を塗布する工程と、(t)離型層形成樹脂又は離型層形成樹脂前駆体を加熱して焼成する工程と
を備える。なお、この製造方法において、第1絶縁ポリイミド前駆体溶液と第2絶縁ポリイミド前駆体溶液とは同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0027】
第17発明に係る画像定着装置は、発熱定着ベルト及び給電手段を備える。発熱定着ベルトは、第1発明から第13発明のいずれかに係る発熱定着ベルトである。給電手段は、発熱定着ベルトに給電するためのものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る発熱定着ベルトは、発熱層のマトリックス樹脂および絶縁層の少なくとも発熱層のマトリックス樹脂がポリイミド樹脂である。このため、この発熱定着ベルトは、定着温度範囲である180〜250度Cの高温領域でも連続使用が可能である。また、発熱層中に混合している導電性物質を一定の方向に配向させれば、体積抵抗率のばらつきを小さくすることができると共に、少ない導電性物質の混合量で所望の体積抵抗率を得ることができる。また、カーボンナノ材料とフィラメント状ニッケル微粒子との混合比を変えることによって幅広い領域で精度の高い体積抵抗率を有する発熱定着ベルトを設計することができる。また、本発明に係る発熱定着ベルトの製造方法では、発熱層の成形から最外層の離型層の成形まで、金型の外面に順次積層して加工される。このため、この製造方法では、低コストで発熱定着ベルトを連続生産することができる。また、本発明に係る画像定着装置では、従来のように特別なセラミックヒーター等を必要とすることなく、発熱定着ベルトの発熱層に直接給電することによって定着ベルト自体が発熱する。このため、この画像定着装置は、熱効率が高く、また、電源を投入してから待機時間がなく、クイックスタートができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0030】
図1は本発明の発熱定着ベルトの概略横断面図及び縦断面図である。本発明の発熱定着ベルト10は、図1に示されるように、発熱層1、絶縁層2及び離型層3からなるシームレスベルトである。なお、符号4はプライマー層であり、プライマー層4は絶縁層と離型層との接着性を安定させるための層である。発熱層のマトリックス樹脂及び絶縁層はすべてポリイミド樹脂である。このような構成を採用すると、発熱ベルトの内側の発熱層に給電端子を接触させることができ、ひいては発熱層に給電することできる。このため、発熱層を発熱させることができる。
【0031】
また、図2は本発明の別の発熱定着ベルト側面の概略側面図及び縦断面図である。この発熱定着ベルトには、最外層の両端部に給電用の電極54が設けられている。そして、この給電用の電極54に給電ローラや電極ブラシが接触しこの給電用の電極54に給電が行われると、この発熱定着ベルトは発熱する。なお、この発熱定着ベルトでは、最も内側にポリイミド樹脂絶縁層が形成されており、また、ポリイミド樹脂絶縁層の外側に発熱層が形成されており、さらに発熱層の外側に給電用電極部を除いて離型層が形成されている。このような構成を採用すると、ポリイミド樹脂絶縁層の熱伝導性は定着条件に関係がなくなり、発熱定着ベルトの十分な機械的特性を満たすためのみの目的で絶縁層の厚みを決定することができる。また、発熱層の外側には離型層のみが存在することになるため、クイックスタートあるいは省エネルギーの面からも好ましい。なお、熱伝導性、機械的特性あるいは離型性などの特性を複合的に得るために、必要に応じて発熱定着ベルトを多層化し発熱定着ベルトに機能を付加することができる。なお、図2中、電極54には導電性インクやペーストあるいは金属箔、金属網などを塗布あるいは接着してもかまわない。
【0032】
なお、本実施の形態において、発熱定着ベルトの発熱層中のマトリックス樹脂及び絶縁層はすべてポリイミド樹脂である。このため、発熱定着ベルトは、薄膜であっても、十分な機械的特性と剛性とを有する。また、ポリイミド樹脂は、プラスチック材料の中では最高の耐熱性、絶縁性及び安全性を有する。
【0033】
本発明の発熱定着ベルトは、レーザービームプリンターの用途では10mm〜30mmの内径のものが、また、複写機など高速定着の用途では40mm〜150mmのサイズの内径のものが好適に用いられる。
【0034】
本発明の実施の形態において、発熱定着ベルトの発熱層では、ポリイミドからなるマトリックス樹脂中にカーボンナノ材料とフィラメント状金属微粒子とが実質的に均一に分散されて存在している。カーボンナノ材料はカーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及びカーボンマイクロコイルより成る群から選択される少なくとも1つの導電性物質であることが好ましい。これらのカーボンナノ材料は、その繊維径が数nm〜数百nmであり、繊維長さが数μm〜数十μmであり、嵩密度が0.01〜0.3g/cm3であり、比表面積が10〜100m2/gである。この中でも、カーボンナノファイバーは特に好ましい導電性物質であり、特に、繊維径が20〜200nmであり、繊維長が0.1〜10μmであるものが好ましい。ポリイミド前駆体溶液に均一に分散させやすく、また、略一方向に配向させやすいからである。
【0035】
また、本発明の実施の形態では、上述したように、発熱層にはカーボンナノ材料と共にフィラメント状金属微粒子を含むことが必須条件である。レーザービームプリンターなどの画像定着装置では、A4サイズ用紙上の未定着トナー像を、1分間に30〜40枚の速度で熱定着させる能力が要求されるため、定着部では500〜1000Wの発熱量が必要であり、かつ、均一な発熱面が要求されるからである。なお、このような発熱特性をカーボンナノ材料のみでコントロールすることは困難である。なぜならば、カーボンナノ材料のみを混合して数オームレベルの低い電気抵抗を得るためには、ポリイミド前駆体の固形分に対して多量のカーボンナノ材料を混合させる必要があり、このような混合量では発熱層の機械的特性を著しく低下させることになるからである。したがって、このような特性に必要な発熱量と十分な機械的特性とを両立させるためには、カーボンナノ材料とともに、カーボンナノ材料よりも導電性の高いフィラメント状金属微粒子を含むことが必須条件である。
【0036】
フィラメント状金属微粒子としては、針状結晶状の銀、アルミニウム及びニッケルなどが挙げられる。より好ましくはストランドが三次元的に連なった形状を有するニッケル微粒子である。このニッケル微粒子は、平均粒子径が0.1〜5.0μmであり、比表面積が1.0〜100m2/gであり、図5の写真のようにストランドが三次元的に連なった形状を有し、カーボンナノ材料と線状に絡み合うことによって、低い発熱抵抗体を形成でき、均一な体積抵抗率を有する発熱層を成形できるからである。カーボンナノ材料と混合されて用いられている金属微粒子が粒状や粉末あるいは塊状の場合、その金属微粒子は、カーボンナノ材料と絡み合わず、点接触になり、均一な発熱層を作製することが難しい。なお、金属微粒子とカーボンナノ材料とが点状接触となると、通電中に極微細なスパークが発生しやすく、発熱体の寿命を著しく低下させることになる。
【0037】
また、本発明の実施の形態において、発熱層中の導電性物質は一定方向に配向して存在していることが好ましい。本発明で用いられるカーボンナノ材料は、繊維径が20〜200nmであり、繊維長さが0.1〜10μm形状である。これらのカーボンナノ材料は、単純にポリイミド前駆体溶液に混合されてガラス板上に流延されると、縦横の方向がまちまちになる。そして、この状態でポリイミド前駆体がイミド転化されると、形成されるフィルムの抵抗値のばらつきが大きくなるという問題がある。また、カーボンナノ材料を配向させる場合に比べてカーボンナノ材料をより多く混合する必要があり、必然的に発熱層の機械的特性の低下を招くことになる。
【0038】
したがって、これらのカーボンナノ材料は略一方向、すなわちカーボンナノ材料の個々の繊維がその長さ方向に束ねられたように配向していることが好ましい。このようにすれば、少ないカーボンナノ材料混合量で電気抵抗値を下げることができ、かつ、均一な発熱特性が得られるからである。
【0039】
導電特性等の改善を目的として、各種形状粒径の黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、ニッケル粉や銀粉などの金属粒子、ステンレス粉などの金属合金粒子、炭化タングステンや炭化タンタル、硼化タングステン等の金属間化合物、銀コートカーボンなどの金属被覆粉等の導電性粒子、熱伝導向上等を目的として、アルミナ、窒化硼素、窒化アルミニウム、炭化珪素、酸化チタン、シリカ等の非導電性粒子、機械的特性向上等を目的としてチタン酸カリウム繊維、針状酸化チタン、ホウ酸アルミニウムウィスカ、テトラポット状酸化亜鉛ウィスカ、セピオライト、ガラス繊維等の繊維状粒子、モンモリロナイト、タルク等の粘度鉱物を本来の目的を損なわない程度に加えても差し支えない。他に塗工性や分散性改善、機械的特性の向上等を目的として、界面活性剤、消泡剤、分散剤、シランカップリング剤等のカップリング剤、チオール化合物等の金属捕捉剤、イミダゾール類等のイミド化剤等を本来の目的を損なわない程度に加えても差し支えない。
【0040】
なお、導電性組成物を円筒形金型の外面に塗布し、図8のようにリング状ダイスを塗布物の外表面に走らせて組成物の塗布被膜を形成させると、カーボンナノ材料は、リング状ダイスが走行した方向に向かって略一方向に並び、配向された状態となる。その後、導電性組成物を乾燥し、イミド化を完結することによって、図6の写真のように、カーボンナノ材料が配向したままの状態で固形化した最も好ましい発熱層を成形することができる。なお、写真のカーボンナノ材料21は、カーボンナノファイバーである。また、図6の写真からも判るように、カーボンナノ材料とともに混合しているフィラメント状金属微粒子22は、カーボンナノ材料に絡み合い、カーボンナノ材料の配向方向に配列した状態で存在し、発熱層として最も好ましい状態になっている。なお、フィラメント状金属微粒子は、ストランドが三次元的に連なった形状を有するニッケル微粒子を用いたものである。
【0041】
また、本発明の実施の形態において、発熱層中の導電性物質は発熱定着ベルトの長さ方向に配向して存在し、この配向方向の体積抵抗率がこの配向方向と直交する方向の体積抵抗率よりも小さいことが好ましい。本発明者らは導電性物質の配向方向と体積抵抗率の関係について多くの実験を重ねた結果、導電性物質の配向方向の体積抵抗率と、この方向と交差する方向の体積抵抗率が異なることを見出した。すなわち、導電性物質の配向方向の体積抵抗率をLD及び配向方向と直交する方向の体積抵抗率をDDとした場合、その比(Ra=DD/LD)は2倍以上にもなることがわかった。
【0042】
上記のように導電性物質は、Raの値が大きいほど一定の方向に、かつ、均一に配向していることになる。したがって、所望の発熱層の成形において、配向をより均一にさせるほど、導電性物質の混合量は少ない量でよいことになる。このように、カーボンナノ材料を均一に配向させ、且つ、カーボンナノ材料とフィラメント状金属微粒子を混在させることによって体積抵抗率の微調整が可能になり、発熱層の機械的特性を低下させることなく、均一な体積抵抗率と、優れた耐久性を有する発熱定着ベルトを得ることができる。
【0043】
本発明の好ましい実施の形態においては、発熱層中のカーボンナノ材料とフィラメント状金属微粒子との存在量は、ポリイミド固形分に対して5〜50vol%であることが好ましい。より好ましくは10〜40vol%の範囲である。存在量が5vol%未満であると体積抵抗率のバラつきが大きく、均一な発熱領域を得ることが難しい。一方、存在量が50vol%以上になると、発熱層の機械的特性及び耐久性が低下し好ましくない。また、カーボンナノ材料とフィラメント状金属微粒子との混合比率は、発熱層の体積抵抗率及び所望する発熱量等によって任意に選定できる。発熱定着ベルトでの発熱量は500〜1000Wの範囲であるため、発熱定着ベルトの内径、厚み、長さ(複写紙サイズA4またはA3)などの仕様によって調節することができる。
【0044】
また、本発明の実施の形態において、発熱層のマトリックス樹脂及び絶縁層は、少なくとも一種の芳香族ジアミンと少なくとも一種の芳香族テトラカルボン酸二無水物が有機極性溶媒中で重合させられて得られるポリイミド前駆体を、イミド転化してなるポリイミド樹脂から成ることが好ましい。
【0045】
芳香族ジアミンの代表例としては、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4、4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、2,2−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2−ビス(3−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン及び9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等を挙げることができる。中でも好ましいジアミンは、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)である。
【0046】
また、芳香族テトラカルボン酸二無水物の代表例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス[3,4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、チオジフタル酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物及び9,9−ビス[4−(3,4’−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物等を挙げることができる。中でも好ましいテトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2−ビス[3,4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、オキシジフタル酸無水物(ODPA)である。なお、これらをメタノール、エタノール等のアルコール類と反応させてエステル化合物としてもよい。
【0047】
なお、これらの芳香族ジアミン及び芳香族テトラカルボン酸二無水物は単独で又は混合して用いることができる。また、複数種類のポリイミド前駆体溶液を調製し、それらのポリイミド前駆体溶液を混合して用いることもできる。
【0048】
芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させる有機極性溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム及びトリグライム等が挙げられる。中でも好ましい溶媒はN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)である。これらの溶媒を単独で又は混合物としてあるいはトルエン、キシレン、すなわち芳香族炭化水素などの他の溶媒と混合して用いることができる。
【0049】
また、本発明の実施の形態において、芳香族ジアミンはパラフェニレンジアミンであり、芳香族テトラカルボン酸二無水物は3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であることが特に好ましい。これらのモノマーから得られるポリイミド樹脂は機械的特性に優れ強靭であり、発熱層の温度が上昇しても熱可塑性樹脂のように軟化、あるいは溶融することが無く、優れた耐熱性を有するからである。
【0050】
これらのポリイミド前駆体溶液は、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを有機極性溶媒中で通常は、90℃以下で反応させることによって得られ、溶媒中の固形分濃度は、導電性物質の混合割合や、あるいは塗布の条件によって所望の濃度を得ることができる。その好ましい範囲は10〜30質量%である。
【0051】
また、有機極性溶媒中で芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させると、その重合状況によって溶液の粘度が上昇するが、使用に際しては溶媒で希釈して所望の粘度にしてから使用することができる。製造条件や作業条件によって通常1〜5000ポイズの粘度で使用される。
【0052】
なお、導電性組成物を略一方向に配向させて塗布するためには、あるいは金型の表面にキャスティング方法で塗布するためには、導電性組成物の粘度が10〜1500ポイズの範囲であることが好ましい。より好ましくは50〜1000ポイズの範囲である。また、本発明の発熱定着ベルトにおいて発熱層の外側に絶縁層が設けられる場合、その絶縁層には窒化硼素、チタン酸カリウム、酸化チタン、窒化アルミニウム、アルミナ、炭化珪素、窒化珪素等の電気絶縁性を有する熱伝導性物質を混合することが好ましい。熱伝導性を付与したり均一な発熱面を得たりすることができるからである。また、絶縁層を成形するための絶縁ポリイミド前駆体溶液の粘度も50〜1000ポイズであることが好ましい。
【0053】
また、本発明の実施の形態において、発熱定着ベルトの離型層は、フッ素樹脂、シリコーンゴム及びフッ素ゴムより成る群から選択される少なくとも1つの樹脂又はゴムから成ることが好ましい。モノクロプリンターに用いられる発熱定着ベルトにおいては、フッ素樹脂から成る離型層が好ましい。また、フッ素樹脂の中ではポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)を単体で又は混合して用いることがより好ましい。
【0054】
フッ素樹脂からなる離型層は、5〜30μmの厚みであることが好ましく、10〜20μmの厚みであることがより好ましい。また、絶縁層とフッ素樹脂との層間には接着性を安定させるためにプライマーを用いることが好ましい。また、そのプライマー層の厚みは2〜5μmであることが好ましい。
【0055】
所望する電気発熱量を得るために必要な発熱定着ベルトの発熱層の厚みは、導電性物質の混合量、発熱ベルトの内径あるいは給電端子の接触幅などの要素から設定することができる。また、絶縁層は定着ベルトの機械的特性を維持する層であり20μm〜80μmの厚みであることが好ましい。絶縁層の機械的特性と熱伝導特性とは一般的に相反する特性であるが、絶縁層に窒化硼素などの熱伝導性物質を混合し厚みを最適化すれば両特性を満たすことができる。
【0056】
また、発熱層の内側にさらにもう1層の絶縁層(最内面絶縁層と記す)を成形することが好ましい。最内面絶縁層を設けることによって、熱伝導性に関係なく発熱定着ベルトの機械的特性のみを考慮して最内面絶縁層の厚みを設計することが可能になるからである。
【0057】
発熱層の内側に最内面絶縁層を設けた場合、発熱層の外面に設ける絶縁層は電気絶縁性のみを確保すればよいことになり、その厚みを薄くできるため、高い熱伝導性を得ることができ、ひいては、クイックスタートの実現や省エネルギーに貢献する。
【0058】
また、フルカラー画像を熱定着する場合には、赤、青、黄、黒の4色のトナーを十分に熱溶融させ混色し、中間色や濃淡を鮮明に定着する必要がある。このため、定着ベルトの表面に近いところに弾性層が形成されるのが好ましい。具体的には、図1に示される発熱定着ベルトでは、絶縁層の外面にシリコーンゴム等の弾性層を設け、さらにその弾性層の外面にフッ素樹脂等の離型層を設けることが好ましい。また、図2に示される発熱定着ベルトでは、発熱層の外側に弾性層を設け、さらにその弾性層の外面にフッ素樹脂等の離型層を設けることが好ましい。
【0059】
また、本実施の形態において、絶縁層の外面に発熱層が設けられ、発熱層の外面に離型層が設けられてもよい。
【0060】
また、この弾性層は、ゴム硬度の低く柔らかいものが好ましい。具体的には、例えばJIS−A硬度で3〜40度のシリコーンゴムなどが好適である。弾性層の厚さは100〜300μmの範囲が好ましい。また、本発明においては、定着ベルトそのものが給電によって発熱するため、絶縁層、弾性層及び離型層が積層された構造であっても発熱効率が高く、定着ムラや光沢ムラのない、高い画像品質を得ることができる。
【0061】
また、本発明の発熱定着ベルトは、(a)ポリイミド前駆体溶液中にカーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粉子を混合した導電性組成物を円筒状金型の表面に塗布する工程、(b)塗布された導電性組成物を加熱して発熱層を成形する工程、(c)前記発熱層の外面に絶縁層となる絶縁ポリイミド前駆体溶液を塗布する工程、(d)前記絶縁ポリイミド前駆体溶液を加熱して絶縁層を成形する工程、(e)前記絶縁層の外面に離型層を塗布する工程及び(f)前記離型層を加熱して焼成する工程を経て製造される。
【0062】
本発明の製造方法によれば、発熱定着ベルトの内層の発熱層の成形から、外層の離型層の成形まで、一貫した連続ラインで製造でき好ましい。また、円筒状金型の表面を鏡面に仕上げておくことにより、発熱層の内面の表面粗度を、最も小さくすることができ好ましい。
【0063】
また、本発明において、発熱定着ベルトは、(g)絶縁ポリイミド前駆体溶液を円筒状金型の表面に塗布する工程と、(h)円筒状金型の表面に塗布した絶縁ポリイミド前駆体溶液を加熱して絶縁層を成形する工程と、(i)絶縁層の外面に、ポリイミド前駆体溶液中にカーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粉子が混合された導電性組成物を塗布する工程と、(j)導電性組成物を加熱して発熱層を成形する工程と、(k)発熱層の外面に離型層形成樹脂又は離型層形成樹脂前駆体を塗布する工程と、(l)離型層形成樹脂又は離型層形成樹脂前駆体を加熱して焼成する工程を経て製造されてもよい。
【0064】
さらに、本発明において、発熱定着ベルトは、(m)第1絶縁ポリイミド前駆体溶液を円筒状金型の表面に塗布する工程と、(n)円筒状金型の表面に塗布した第1絶縁ポリイミド前駆体溶液を加熱して第1絶縁層を成形する工程と、(o)第1絶縁層の外面に、ポリイミド前駆体溶液中にカーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粉子が混合された導電性組成物を塗布する工程と、(p)導電性組成物を加熱して発熱層を成形する工程と、(q)発熱層の外面に第2絶縁ポリイミド前駆体溶液を塗布する工程と、(r)第2絶縁ポリイミド前駆体溶液を加熱して第2絶縁層を成形する工程と、(s)第2絶縁層の外面に離型層形成樹脂又は離型層形成樹脂前駆体を塗布する工程と、(t)離型層形成樹脂又は離型層形成樹脂前駆体を加熱して焼成する工程を経て製造されてもよい。なお、この製造方法において、第1絶縁ポリイミド前駆体溶液と第2絶縁ポリイミド前駆体溶液とは同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0065】
なお、本発明の実施形態において、導電性組成物を円筒状金型の外面に塗布した後、導電性組成物中のカーボンナノ材料やフィラメント状金属微粒子を、略一方向、すなわちその長さ方向に束ねられたような状態に配向させるためには、導電性組成物を円筒状金型に塗布した後、塗布面を一定方向にしごき拭うような工程を設けることが好ましい。
【0066】
なお、導電性組成物を略一方向に配向させるためには、本発明の製造方法の(a)工程において、図8に示すように、円筒状金型61の外面に導電性組成物64を塗布し、リング状ダイス62を金型の上部から挿入して通過させるのが最も好ましい。導電性組成物の塗布厚みの制御と導電性物質の配向とを1つの工程で処理をできるからである。なお、図8中、符号63は一定厚みで塗布された導電性組成物塗膜である。
【0067】
また、本発明の製造方法では、工程(a)で円筒状金型表面に導電性組成物を塗布した後、工程(b)でその塗布された導電性組成物中のポリイミド樹脂が半硬化状態となるように加熱されるのが好ましく、さらに、工程(c)でその半硬化状態の発熱層の外面に、絶縁ポリイミド前駆体溶液を塗布し、さらに工程(d)でその絶縁ポリイミド前駆体溶液を加熱して発熱層と絶縁層とのイミド化を同時に完結するのが好ましい。発熱層と絶縁層とをイミド化によって強固に接着でき、かつ、製造ラインの熱効率を高めることができるからである。
【0068】
さらにまた、絶縁層の外面にフッ素樹脂離型層を成形する工程(e)、(f)においても、発熱層、絶縁層をそれぞれ半硬化の状態で積層させ、その外面にフッ素樹脂ディスパージョン等を塗布し、乾燥後、発熱層、絶縁層の2層のイミド化の完結とフッ素樹脂の焼成とを同時に行うことが好ましい。各層の接着力を高めるこができるからである。ポリイミドのイミド化温度及びフッ素樹脂の焼成温度は、いずれも350度C〜400度Cの高温下での処理になるため、これらを同時に処理することで各熱処理工程を短縮でき、製造時の熱効率を高めることができるからである。なお、絶縁層の外面にフッ素樹脂離型層を成形させる場合、その接着強度を安定させるために、プライマー層を介在させることが好ましい。
【0069】
なお、半硬化の状態とは、導電性組成物あるいは絶縁ポリイミド前駆体溶液が80〜120度Cの温度で乾燥された後、200〜250度Cまでの温度で加熱された状態をいう。なお、かかる場合、導電性組成物中のポリイミド前駆体は、イミド化が完結する前の状態にある。また、この状態になるまでにかかる処理時間は30分〜2時間の範囲である。
【0070】
次に、本発明の発熱定着ベルトを用いた画像定着装置の一実施形態を図3に基づき説明する。この定着装置は、発熱定着ベルト11と、発熱定着ベルト11の内側に配置される耐熱絶縁性樹脂からなるベルト支持ホルダー12と、加圧ロール14とから構成される。発熱定着ベルトに給電するための一対の給電端子13は、ベルト支持ホルダー12の両端に設けられており、加圧ロール14の加圧力によって、発熱定着ベルト内側の発熱層と摺接するようになっている。なお、図3中、符号16は加圧ロールのシャフトであり、その加圧ロールのシャフト16は駆動モーター(図示せず)に連結されている。また、符号17は電源であり、符号18はリード線である。また、符号15は耐熱絶縁性樹脂からなるベルトガイド板であり、そのベルトガイド板15は発熱定着ベルトが蛇行した場合のストッパーの役割を担う。ベルト支持ホルダー12及びベルトガイド板15の材料としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等の耐熱性樹脂が用いられることが好ましい。なお、(b)図は(a)図のI−I間の概略断面図である。
【0071】
本願の画像定着装置では、駆動源を持つ加圧ロールによって、加圧ロールと圧接された発熱定着ベルトが従動し、加圧ロールと定着ベルトとのニップ部Nに、未定着のトナー像20が形成された複写紙19が順次送り込まれ熱定着がなされる。
【0072】
以下に実施例により、さらに具体的に説明する。本発明の評価は下記に示される測定器を用い下記に示される条件下で行った。
【0073】
(1)体積抵抗率の測定
デジタルマルチメーターModel7562(横河電気製)を用い、4線式プローブにより発熱体の体積抵抗率を測定した。
【0074】
(2)温度分布の測定
サーモトレーサTH1101(日本電気三栄製)を用いて測定した。
【実施例1】
【0075】
本実施例では、以下に示すようにして図1に示される発熱定着ベルトを製作した後、その発熱定着ベルトの定着テストを行った。
【0076】
(1)発熱層用導電性組成物の作製
ポリイミド前駆体溶液(ポリイミドワニス「Pyre−ML RC5063」,I.S.T社製)を用意した。このポリイミド前駆体溶液はN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物「BPDA」とパラフェニレンジアミン「PPD」とを重合したものであり、固形分濃度は17.5wt%であった。そして、このポリイミド前駆体溶液の固形分に対してカーボンナノファイバー(VGCF−H、昭和電工製)を20vol%、フィラメント状ニッケル微粒子(TYPE210、インコ社製)を13vol%、容器に投入し1時間攪拌した後、その内容物を150番のSUSメッシュで濾過して粘度(23度C、B型粘度計による)800ポイズの発熱層用導電性組成物を調製した。なお、カーボンナノファイバー(VGCF−H)の真密度は2.0g/cm3であり、フィラメント状ニッケル微粒子(TYPE210)の真密度は8.9g/cm3である。
【0077】
(2)絶縁層用ポリイミド前駆体溶液の作製
絶縁層のためのポリイミド前駆体溶液としてポリイミドワニス「Pyre−ML RC5063」(I.S.T社製)を用意した。そして、そのポリイミド前駆体溶液に、窒化硼素粉末(三井化学「MBN−010T」)を、ポリイミド前駆体溶液の固形分濃度に対して18wt%混合して絶縁層用ポリイミド前駆体溶液を調製した。
【0078】
(3)発熱層の成形
外径が24mmであり長さが500mmであるアルミニウム製円筒状金型の表面に、酸化珪素コーティング剤をディッピング法によりコーティングして焼付けてアルミニウム製円筒状金型を酸化珪素膜で被覆した。なお、この円筒状金型の平均表面粗度はRz0.2μmであった。次いで、図8に示す浸漬キャスティング方法により、(1)項で調製した発熱層用導電組成物64に金型61を下部から400mm部分まで浸漬して金型61に発熱層用導電組成物64を塗布した後、内径24.95mmのリング状ダイス62を金型61の上部から挿入して走行させ、金型61の外側に導電性キャスト膜63を形成した。
【0079】
その後、導電性キャスト膜63が形成された金型を120度Cのオーブンに入れ60分間乾燥させた後、200度Cの温度まで30分間で昇温させ、同温度で15分間保持してオーブンから取り出し、室温(25度C)まで冷却し半硬化導電層ベルトを得た。
【0080】
(4)絶縁層の成形
次に、(3)項の半硬化導電性ベルトが成形された金型を(2)項で調製した絶縁層用ポリイミド前駆体溶液中に浸漬し、図8の浸漬キャスティング方法でイミド化後の厚みが35μmになるように半硬化絶縁層被膜を成形した。次いで、発熱層の熱処理と同じようにこの金型を120度Cのオーブンに入れ60分間乾燥させた後、200度Cの温度まで30分間で昇温させ、同温度で15分間保持し、発熱層の外面に半硬化状態のポリイミド絶縁層が積層された半硬化積層ベルトを得た。
【0081】
(5)プライマー層の成形
(4)項で作製した半硬化積層ベルトをフッ素樹脂プライマー液(デュポン社製:「テフロン(登録商標)」855−300)に浸漬し所定の速度で引上げることによりフッ素樹脂プライマー液を約4μmの厚みにコーティングした後、180度Cの温度で20分間乾燥して再び常温まで冷却した。
【0082】
(6)離型層の成形
次に、発熱定着ベルトの離型層材料としてのPTFEディスパーション(デュポン社製:「テフロン(登録商標)」855−510)に、(5)項においてフッ素樹脂プライマー液を塗布された半硬化積層ベルトを浸漬して引き上げることにより、PTFEディスパーションを15μmの厚みにコーティングした。なお、PTFEディスパージョンには、画像定着時のオフセットを防止するためにカーボンブラック(ケッチンブラック「W−310A」ライオン社製)を固形分比で0.6wt%加えた。その後、この半硬化積層ベルトを200度Cで10分間乾燥した後、400度Cまで30分間で昇温し、同温度で20分間加熱してPTFE樹脂の焼成と、半硬化状態の発熱層及び絶縁層のイミド化を同時に完結し、最後に金型61から定着ベルトを脱型し発熱定着ベルトを得た。
【0083】
発熱定着ベルトを図1に示す、この発熱定着ベルトの内径は24mmであり、ベルト内側の発熱層1の厚みは約35μmであり、絶縁層2は約35μmであり、最外層の離型層は約15μmであり、総厚みは88μmであった。
【0084】
(7)発熱定着ベルトの評価
(7−1)体積抵抗率及び電極間抵抗値の測定
発熱定着ベルトを240mmの長さに切断し、デジタルマルチメーターModel7562を用いて体積抵抗率を測定した。発熱定着ベルトの長さ方向の体積抵抗率(LD)は36×10-4Ωcmであり、長さ方向と直交する方向の体積抵抗率(DD)の測定値は63×10-4Ωcmであり、Ra値は1.75であった。
【0085】
(7−2)発熱温度分布の測定
発熱定着ベルトの内側にステンレス製の給電端子を取り付け図5に示される方法で発熱テストを行った。給電端子をベルトの両端部から12mmのベルト内面の直線上に設け、発熱定着ベルトをその給電端子54から加電した。なお、給電端子の寸法は、幅及び長さが10mmであった。また、給電端子は、発熱定着ベルト内側の発熱層に密着させてクリップ固定した。図5に示されるように、電源には可変電圧調整器を接続し、その電源から電圧を設定しながら発熱層51に給電した。まず、始めにサーモトレーサを標準モードにして、発熱定着ベルトの表面温度を観測しながらベルトの表面(離型層表面)が220度Cとなる様に可変電圧調整器の出力電圧を調整し、その表面が220度Cとなった以降はこの状態で給電を続け、そのときの温度分布を測定した。この時の出力電圧は45Vであった。その後、給電を停止し、発熱定着ベルトが室温になるまで自然冷却した。
【0086】
次に、サーモトレーサをタイムトレースモードに切り替えて通電開始から10秒間の発熱定着ベルトの温度上昇変化を観測し記録した。記録データから通電開始10秒後の長さ方向の発熱体表面温度を読み取ると最高温度210.8度Cであり、最低温度は208度Cであり、温度分布は3度C以内であった。すなわち、均一な発熱上昇特性を確認することができた。特に、発熱定着ベルトの給電端子間の温度差はほとんど無く、非常に均一な発熱特性が得られた。また、発熱定着ベルトは、発熱状態において、図4のように長さ方向の中央部に膨らみ57を有する楕円に近い形状を有していた。
【0087】
(7−3)カーボンナノファイバーの配向状態の確認
発熱層のカーボンナノファイバー及びフィラメント状ニッケル微粒子の配向状態を電子顕微鏡で撮影した結果を図6に示す。カーボンナノファイバーは写真の左右方向(発熱定着ベルトの長さ方向)に配向した状態で存在しており、フィラメント状ニッケル微粒子は一定方向に配向したカーボンナノファイバーに絡み合ったような状態で存在していることが確認できた。
【0088】
(7−4)画像定着装置に組み込み評価
発熱定着ベルトを図3に示す画像定着装置に組み込み、トナー像の定着テストを行った。定着温度はサーミスタで200度Cに設定し、毎分16枚の通紙をおこなったところ、電源投入から瞬時に定着ができ、オフセットなどの発生もなく鮮明な定着画像が得られた。
【実施例2】
【0089】
本実施例では、シリコーン弾性層が成形された発熱ベルトを説明する。
【0090】
(1)発熱ベルト中間体の作製
実施例1の(3)項で作製した半硬化導電層ベルトの外面に絶縁層を形成した半硬化積層ベルトをさらに400度Cまで加熱することによりイミド化を完結した発熱定着ベルト中間体を作製した。
【0091】
(2)シリコーンゴム弾性層の成形
発熱定着ベルト中間体の絶縁層の外面にプライマーを塗布した。具体的には、プライマーとしてGE東芝シリコーン社製商品名「XP−81−405」のA及びB2液を予め1:1の割合で混合したものを、発熱定着ベルト中間体の絶縁層の外面に刷毛で均一に塗布した後、その発熱定着ベルト中間体を室温で20分乾燥した後、150度Cのオーブンに入れ、20分間乾燥した。その後、リング状ダイスを用いその発熱定着ベルト中間体のプライマー処理面の外側に液状シリコーンゴム(GE東芝シリコーン社製商品名「XE15−B7354」A及びB2液を予め1:1の割合で混合した液状ゴム)を200μmの厚みで塗布した。その後、150度Cの温度で10分、その液状シリコーンゴムの一次加硫を行い、さらに200度Cの温度で4時間、その液状シリコーンゴムの二次加硫を行った。その結果、発熱定着ベルト中間体の外面に200μmの厚みでシリコーンゴムを成形した弾性層積層ベルトが作製された。同加硫条件で作製したテストピースのゴム硬度は30度であった。
【0092】
(3)弾性層積層ベルト外面の離型層成形
弾性層積層ベルトのシリコーンゴム表面を#500のサンドペーパーで軽く粗らし、表面をアルコールで洗浄した。次いで、そのシリコーンゴム表面に液状プライマー(三井デュポンフロロケミカル社製PR−990CL)を塗布し、室温で10分乾燥した。次いで、その弾性層積層ベルトを、粘度200センチポイズに調整したPFAディスパーション(デュポン社製商品名PFA920HPプラス「ENA−162−8」)の中に浸漬した後、その弾性層積層ベルトを所定の速度で引上げ、離型層の最終の厚さが15μmになるように弾性層積層ベルトにPFAディスパーションをコーティングし、その弾性層積層ベルトを常温で30分乾燥した後、330度Cのオーブンに入れ、15分間焼成することにより目的とする弾性層が積層された発熱体着ベルトを作製した。
【0093】
この発熱定着ベルトは内径が24mmであり総厚みが305μmであった。この発熱定着ベルトを本発明の画像定着装置に組み込み、さらにこの画像定着装置をタンデム型フルカラー画像形成装置に装着して毎分8枚のプリントを行ったところ良好な画像が得られた。すなわち、この発熱定着ベルトがフルカラー画像の定着ベルトとして好適に用いることができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係る発熱定着ベルトの横断面図及び縦断面図である。
【図2】本発明に係る別の発熱定着ベルトの側面図及び縦断面図である。
【図3】本発明に係る画像定着装置の概略図である。
【図4】本発明に係る発熱定着ベルトの発熱温度分布測定方法を説明するための図である。
【図5】ストランドが三次元的に連なったニッケル微粒子の顕微鏡写真である。
【図6】実施例1の記載に基づき作製した発熱層中におけるカーボンナノファイバーの配向状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明に係る給電端子取り付け板の概略図である。
【図8】本発明の実施例において用いられた浸漬キャスティング方法を説明するための概略図である。
【図9】本発明に係るフィルム定着装置の概略図である。
【符号の説明】
【0095】
1,51 発熱層
2,52 絶縁層
3,53 離型層
4 プライマー層
10,11 発熱定着ベルト
12 ベルト支持ホルダー
13,54、42給電端子
14 加圧ロール
15 ベルトガイド板
16 加圧ロール芯金
17,55 電源
18,56 配線
19 複写紙
20 未定着トナー像
N ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真画像形成装置の画像定着部に用いられるシームレスの発熱定着ベルトであって、
カーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粒子が分散されるポリイミド樹脂からなる発熱層と、
絶縁層と、
前記絶縁層又は前記発熱層の外側に設けられる離型層と
を備える発熱定着ベルト。
【請求項2】
前記絶縁層は、前記発熱層の外側に設けられ、
前記離型層は、前記絶縁層の外側に設けられる
請求項1に記載の発熱定着ベルト。
【請求項3】
前記発熱層は、前記絶縁層の外側に設けられ、
前記離型層は、前記発熱層の外側に設けられる
請求項1に記載の発熱定着ベルト。
【請求項4】
前記絶縁層は、第1絶縁層と第2絶縁層とを有し、
前記発熱層は、前記第1絶縁層の外側に設けられ、
前記第2絶縁層は、前記発熱層の外側に設けられ、
前記離型層は、前記第2絶縁層の外側に設けられる
請求項1に記載の発熱定着ベルト。
【請求項5】
シリコーンゴム及びフッ素ゴムより成る群から選択される少なくとも一つのゴムから成る弾性層をさらに備え、
前記離型層は、前記弾性層の外面に接するように設けられる
請求項1から4のいずれかに記載の発熱定着ベルト。
【請求項6】
前記カーボンナノ材料は、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及びカーボンマイクロコイルより成る群から選択される少なくとも1つの導電性物質である
請求項1から5のいずれかに記載の発熱定着ベルト。
【請求項7】
前記フィラメント状金属微粒子は、ストランドが三次元的に連なった形状を有するニッケル微粒子である
請求項1から6のいずれかに記載の発熱定着ベルト。
【請求項8】
前記カーボンナノ材料及び前記フィラメント状金属微粒子は、略一方向に配向する
請求項1から7のいずれかに記載の発熱定着ベルト。
【請求項9】
前記カーボンナノ材料及び前記フィラメント状金属微粒子は、発熱定着ベルトの長さ方向に配向し、
前記カーボンナノ材料及び前記フィラメント状金属微粒子の配向方向の体積抵抗率は、前記配向方向と直交する方向の体積抵抗率よりも小さい
請求項8に記載の発熱定着ベルト。
【請求項10】
前記ポリイミド樹脂は、少なくとも1種の芳香族ジアミンと少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物とを有機極性溶媒中で重合してなるポリイミド前駆体がイミド転化されたポリイミド樹脂である
請求項1から9のいずれかに記載の発熱定着ベルト。
【請求項11】
前記絶縁層は、少なくとも1種の芳香族ジアミンと少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中で重合してなるポリイミド前駆体がイミド転化されたポリイミド樹脂からなる
請求項1から10のいずれかに記載の発熱定着ベルト。
【請求項12】
前記芳香族ジアミンは、パラフェニレンジアミン(PPD)であり、
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物は、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)である
請求項10又は11に記載の発熱定着ベルト。
【請求項13】
前記離型層は、フッ素樹脂、シリコーンゴム及びフッ素ゴムより成る群から選択される少なくとも1つの樹脂又はゴムからなる
請求項1から12のいずれかに記載の発熱定着ベルト。
【請求項14】
発熱層と、前記発熱層の外側に設けられる絶縁層と、前記絶縁層の外側に設けられる離型層とを備える発熱定着ベルトの製造方法であって、
(a)ポリイミド前駆体溶液中にカーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粉子が混合された導電性組成物を円筒状金型の表面に塗布する工程と、
(b)前記円筒状金型の表面に塗布した導電性組成物を加熱して発熱層を成形する工程と、
(c)前記発熱層の外側に絶縁ポリイミド前駆体溶液を塗布する工程と、
(d)前記絶縁ポリイミド前駆体溶液を加熱して絶縁層を成形する工程と、
(e)前記絶縁層の外側に離型層形成樹脂又は離型層形成樹脂前駆体を塗布する工程と、
(f)前記離型層形成樹脂又は離型層形成樹脂前駆体を加熱して焼成する工程と
を備える発熱定着ベルトの製造方法。
【請求項15】
絶縁層と、前記絶縁層の外側に設けられる発熱層と、前記発熱層の外側に設けられる離型層とを備える発熱定着ベルトの製造方法であって、
(g)絶縁ポリイミド前駆体溶液を円筒状金型の表面に塗布する工程と、
(h)前記円筒状金型の表面に塗布した絶縁ポリイミド前駆体溶液を加熱して絶縁層を成形する工程と、
(i)前記絶縁層の外側に、ポリイミド前駆体溶液中にカーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粉子が混合された導電性組成物を塗布する工程と、
(j)前記導電性組成物を加熱して発熱層を成形する工程と、
(k)前記発熱層の外側に離型層形成樹脂又は離型層形成樹脂前駆体を塗布する工程と、
(l)前記離型層形成樹脂又は離型層形成樹脂前駆体を加熱して焼成する工程と
を備える発熱定着ベルトの製造方法。
【請求項16】
第1絶縁層と、前記第1絶縁層の外側に設けられる発熱層と、前記発熱層の外側に設けられる第2絶縁層と、前記第2絶縁層の外側に設けられる離型層とを備える発熱定着ベルトの製造方法であって、
(m)第1絶縁ポリイミド前駆体溶液を円筒状金型の表面に塗布する工程と、
(n)前記円筒状金型の表面に塗布した第1絶縁ポリイミド前駆体溶液を加熱して第1絶縁層を成形する工程と、
(o)前記第1絶縁層の外側に、ポリイミド前駆体溶液中にカーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粉子が混合された導電性組成物を塗布する工程と、
(p)前記導電性組成物を加熱して発熱層を成形する工程と、
(q)前記発熱層の外側に第2絶縁ポリイミド前駆体溶液を塗布する工程と、
(r)前記第2絶縁ポリイミド前駆体溶液を加熱して第2絶縁層を成形する工程と、
(s)前記第2絶縁層の外側に離型層形成樹脂又は離型層形成樹脂前駆体を塗布する工程と、
(t)前記離型層形成樹脂又は離型層形成樹脂前駆体を加熱して焼成する工程と
を備える発熱定着ベルトの製造方法。
【請求項17】
請求項1から13のいずれかに記載の発熱定着ベルトと、
前記発熱定着ベルトに給電するための給電手段と
を備える画像定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−272223(P2007−272223A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59110(P2007−59110)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(391059399)株式会社アイ.エス.テイ (102)
【Fターム(参考)】