説明

皮膚外用剤

【課題】 本発明は、化粧料(但し、医薬部外品を含む)に好適な皮膚外用剤、詳しくは、色素沈着予防又は改善用に好適な皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明は、1)下記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と、2)美白成分を含有する皮膚外用剤を提供することにより、前記課題を解決する。
【化1】




(1)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R3は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料(但し、医薬部外品を含む)に好適な皮膚外用剤に関し、詳しくは、1)下記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と、2)美白成分とを含有することを特徴とする皮膚外用剤に関する。
【0002】
【化1】


(1)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R3は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【背景技術】
【0003】
紫外線暴露をはじめとする多様な皮膚への刺激により生じる色素沈着症状としては、日焼け等の一時的な色素沈着症状のほか、シミ、くすみ、肝斑、老人性色素斑等の慢性的な色素沈着症状が存在する。特に、慢性的な色素沈着症状は、他人の見た目の印象に大きな影響を与えるため、肌に関する調査を実施した場合には、肌トラブルとして必ず上位に位置付けられる皮膚症状である。
【0004】
色素沈着症状は、色素細胞(メラノサイト)における様々な情報伝達物質、サイトカイン等の生理活性物質により複雑に調節され、最終的にメラニン産生が亢進されることにより生じることが知られている。また、メラニン産生が亢進する作用機序に関する研究も盛んに行われ、この様な情報を基に多様な美白剤が開発され、化粧料等に配合されている。かかる美白剤としては、アスコルビン酸類、過酸化水素、コロイド硫黄、グルタチオン、ハイドロキノン、カテコ−ル等がよく知られている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2を参照)。また、メラニン産生亢進に関する作用機序研究が進展するに伴い、前記の美白剤とは異なる作用機序を有する美白剤、具体的には、チロシナ−ゼ活性発現に必須な銅イオンをキレ−トするエラグ酸及びコウジ酸、α−MSH(MSH:Melanocyte stimulating hormone)阻害作用を有するマメ科クララ(苦参)より得られる植物抽出物(例えば、特許文献1を参照)、メラノサイトのデンドライド伸長抑制作用を有するスイカズラ科スイカズラより得られる植物抽出物(例えば、特許文献2を参照)、エンドセリン−1産生抑制作用を有するハヤトウリ果実抽出物(例えば、特許文献3を参照)等が見出された。しかしながら、前述の美白剤及び前記美白剤を含有した化粧料等には、一定の色素沈着予防又は改善効果は認められるものの、使用者が望む高い色素沈着予防又は改善効果、持続性が十分に得られているとは言い難い。一方、美白作用を有する素材スクリ−ニングが盛んに行われた結果、新規な美白素材を創出することが難しい状況となっている。このため、従来の美白剤を有効に活用するための製剤化技術、美白素材の併用等に関する技術開発に注目が注がれ、盛んに研究がなされている。しかしながら、従来の美白成分の有効活用技術に関しても、その効果も十分に満足のいくものとは言い難い。
【0005】
一方、前記の美白素材研究とは別に、必須アミノ酸のグリシン及びその誘導体に付いても、様々な研究がなされている。化粧品分野におけるグリシン誘導体には、N−アシル及びN−長鎖アルキルグリシン誘導体に、ベタイン型両性界面活性作用、又は、半極性界面活性作用(例えば、特許文献4、特許文献5を参照)などの界面活性化作用が知られ、化粧料、洗浄剤、整髪剤、歯磨きなどに界面活性剤として配合されている。また、N−(メチル)グリシンには、シワ改善作用(例えば、特許文献6を参照)、保湿作用(例えば、特許文献7を参照)が報告されているが、当該化合物に美白作用(色素沈着予防又は改善作用)が存することは、発明者の知る限り報告されていない。本発明者は、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を、美白成分と共に皮膚外用剤に含有させることにより、美白成分が有する色素沈着予防又は改善作用を効果的に増強し、優れた色素沈着予防又は改善効果を発揮することを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−067804号公報
【特許文献2】特開2003−081747号公報
【特許文献3】特開2008−094737号公報
【特許文献4】特開2002−322491号公報
【特許文献5】特開2001−261531号公報
【特許文献6】再表2007−013662号公報
【特許文献7】特開2000−178118号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】武田克之ら監修、「化粧品の有用性、評価技術と将来展望」、薬事日報社刊(2001年)
【非特許文献2】大森敬之、FRAGRANCE JOURNAL 臨時増刊、No.14、1995、 118−126
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、この様な状況下において為されたものであり、色素沈着予防又は改善用に好適な皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この様な状況に鑑みて、本発明者は、色素沈着予防又は改善用に好適な皮膚外用剤を求め、鋭意努力を重ねた結果、1)下記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と、2)美白成分とを含有することを特徴とする皮膚外用剤が、優れた色素沈着予防又は改善効果を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下の通りである。
<1> 1)下記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と、2)美白成分を含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【0010】
【化1】


(1)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R3は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【0011】
<2> 前記一般式(1)に表される化合物が、下記一般式(2)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、<1>に記載の皮膚外用剤。
【0012】
【化2】


(2)
[式中、R4は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【0013】
<3> 前記一般式(1)に表される化合物が、N−(メチル)グリシン(化合物1)及び/又はその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、<1>〜<2>の何れかに記載の皮膚外用剤。
【0014】
【化3】


N−(メチル)グリシン(化合物1)
【0015】
<4> 前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が、皮膚外用剤全量に対し、0.0001質量%〜20質量%含有することを特徴とする、<1>〜<3>の何れかに記載の皮膚外用剤。
<5> 前記美白成分が、メラニン産生抑制剤、α−MSH(MSH:Melanocyte stiumulating hormone)抑制剤、メラノサイトのデンドライト伸長抑制剤、プロトンポンプ阻害剤よりなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、<1>〜<4>の何れかに記載の皮膚外用剤。
<6> 前記メラニン産生抑制剤、α−MSH抑制剤、メラノサイトのデンドライト伸長抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤よりなる群から選択されるものが、次の何れかであることを特徴とする、<1>〜<5>の何れかに記載の皮膚外用剤。
(メラニン産生抑制剤):4−アルキルレゾルシノ−ル及び/又はそれらの塩、アスコルビン酸誘導体及び/又はそれらの塩、ハイドロキノン及び/又はそれらの塩、トラネキサム酸誘導体及び/又はそれらの塩、ビタミンE及び/又はその誘導体、パンテテイン−S−スルホン酸及び/又はその塩、ウルソ−ル酸誘導体及び/又はそれらの塩
(α−MSH抑制剤):マメ科クララ属クララより得られる植物抽出物
(メラノサイトのデンドライド伸長抑制剤):メチルオフィオポゴナノンB、ソフォラフラバノンA、キク科セイヨウノコギリソウより得られる植物抽出物、ユリ科バクモンドウより得られる植物抽出物
(プロトンポンプ阻害剤):シソ科タチジャコウソウ属タイムより得られる植物抽物、マメ科クララ属クララより得られる植物抽出物、ショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物、サトイモ科ショウブ属ショウブより得られる植物抽出物、ウリ科ヘチマ属ヘチマより得られる植物抽出物、ユキノシタ科アジサイ属アマチャより得られる植物抽出物、サルノコシカケ科マツホド菌核ブクリョウより得られる植物抽出物、マメ科ハギ属キハギより得られる植物抽出物、マメ科ハギ属トウクサハギより得られる植物抽出物
<7> 前記美白成分が、皮膚外用剤全量に対し、0.000001質量%〜15質量%含有することを特徴とする、<1>〜<6>の何れかに記載の皮膚外用剤。
<8> 化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、<1>〜<7>の何れかに記載の皮膚外用剤。
<9> 色素沈着予防又は改善用であることを特徴とする、<1>〜<8>の何れかに記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明の皮膚外用剤は、色素沈着予防又は改善用に好適な皮膚外用剤を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の皮膚外用剤は、1)前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と、2)美白成分とを含有することを特徴とする。本発明の皮膚外用剤は、1)前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と、2)美白成分とを含有することにより優れた色素沈着予防又は改善効果を発揮する。本発明の皮膚外用剤が有する色素沈着予防又は改善作用とは、既に形成された色素沈着を薄くする又は消去する色素沈着改善作用に加え、色素沈着を予防する作用も包含される。本発明における色素沈着予防又は改善作用は、色素沈着予防又は改善作用であれば特段の限定なく適用することが出来、かかる作用の内、好ましいものを具体的に挙げれば、後述する実施例2の「ヒトにおける皮膚外用剤の色素沈着抑制効果評価」において、色素沈着抑制作用が好適に例示出来る。実施例2の「ヒトにおける皮膚外用剤の色素沈着抑制効果評価」において、色素沈着抑制作用を有するとは、コントロ−ル群(評価物質無配合製剤群)と比較して、評価物質配合製剤群に色素沈着予防又は改善効果が認められる成分(コントロ−ル群に比較し、評価物質配合製剤群の△L*値が小さい成分)が好適に例示出来、さらに好ましくは、色素沈着予防又は改善効果に統計的な有意差が認められる成分が好適に例示出来る。
【0018】
<本発明の前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩>
本発明の皮膚外用剤は、1)前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と、2)美白成分とを含有することを特徴とする。本発明の皮膚外用剤は、1)前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と、2)美白成分とを共に皮膚外用剤に含有させることにより優れた色素沈着予防又は改善効果を発揮する。かかる作用は、美白成分が有する色素沈着予防又は改善作用を、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が効果的に増強することにより発現すると考えられる。尚、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に関し、色素沈着予防又は改善作用、更には、色素沈着予防又は改善効果を増強する作用は、発明者の知る限り知られていない。本発明の前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩の内、好ましいものとしては、前記一般式(2)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来、さらに好ましいものを具体的に挙げれば、N−(メチル)グリシン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。本発明の前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩、取り分け、N−(メチル)グリシン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に付いては、既に化粧料等の皮膚外用剤への配合実績があり、界面活性化作用、保湿作用、シワ改善作用等の作用を有することが報告されている。
【0019】
ここで前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に付いて述べれば、式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R3は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。前記R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6、より好ましくは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、好ましいものを具体的に例示すれば、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が好適に例示出来、水素原子、メチル基、エチル基が好ましい。また、前記R4及びR5は、何れか一方が水素原子であることが好ましく、その場合、残りの置換基としては、メチル基、エチル基が、特に好ましい。前記R3は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、好ましいものを具体的に例示すれば、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が好適に例示出来、水素原子、メチル基、エチル基が特に好ましい。前記一般式(1)に表される化合物の内、前記一般式(2)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に含まれない化合物を具体的に例示すれば、N,N−(ジメチル)グリシン、N−(エチル)−N−(メチル)グリシン、N−(メチル)−N−(n−プロピル)グリシン、N−(メチル)−N−(イソプロピル)グリシン、N−(n−ブチル)−N−(メチル)グリシン、N−(イソブチル)−N−(メチル)グリシン、N−(sec−ブチル)−N−(メチル)グリシン、N−(tert−ブチル)−N−(メチル)グリシン、N−(メチル)−N−(ペンチル)グリシン、N−(ヘキシル)−N−(メチル)グリシン、N,N−(ジエチル)グリシン、N−(エチル)−N−(n−プロピル)グリシン、N−(エチル)−N−(イソブチル)グリシン、N−(エチル)−N−(n−ブチル)グリシン、N−(エチル)−N−(イソブチル)グリシン、N−(エチル)−N−(sec−ブチル)グリシン、N−(エチル)−N−(tert−ブチル)グリシン、N−(エチル)−N−(ペンチル)グリシン、N−(エチル)−N−(ヘキシル)グリシン、N,N−(ジ−n−プロピル)グ リシン、N,N−(ジイソプロピル)グリシン、N,N−(ジ−n−ブチル)グリシン、N,N−(ジ−イソブチル)グリシン、N,N−(ジ−sec-ブチル)グリシン、N,N−(ジ−tert−ブチル)グリシン、N,N−(ジ−ペンチル)グリシン、N,N−(ジヘキシル)グリシン、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。前記一般式(1)に表される化合物の内、特に好ましい化合物を具体的に挙げれば、N−(メチル)グリシン(化合物1)、N−(エチル)グリシン(化合物2)、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。本発明の前記一般式(1)、(2)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、後述する美白成分と共に皮膚外用剤に含有させることにより、優れた色素沈着予防又は改善効果を発揮する。また、前記一般式(1)、(2)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、美白成分が有する色素沈着予防又は改善効果を効果的に増強し薬理学的な相加又は相乗効果を発揮する。かかる作用は、美白成分が有する色素沈着予防又は改善作用を、前記一般式(1)、(2)に表される化合物が効果的に増強する作用に加え、美白成分の標的部位への集積性又は貯留性が高まることにより優れた効果が発揮されると考えられる。さらに、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、化合物自身が高い安全性を有する。加えて、皮膚外用剤に含有させた場合にも、皮膚感作性及び刺激性等において高い安全性を有する。また、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、皮膚外用剤の製造に使用される汎用的な極性又は非極性媒体への溶解性が高いため、多様な形態の皮膚外用剤の製造が可能であり、その製造も容易である。
【0020】
ここで前記一般式(2)に表される化合物に付いて述べれば、式中、R4は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。前記R4は、炭素数1〜6、より好ましくは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、好ましいものを具体的に挙げれば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が好適に例示出来、メチル基、エチル基が特に好ましい。前記一般式(2)に表される化合物の内、好ましいものを具体的に挙げれば、N−(メチル)グリシン(化合物1)、N−(エチル)グリシン(化合物2)、N−(n−プロピル)グリシン、N−(イソプロピルグリシン)、N−(n−ブチル)グリシン、N−(イソブチル)グリシン、N−(sec−ブチル)グリシン、N−(tert−ブチル)グリシン、N−(ペンチル)グリシン、N−(ヘキシル)グリシン、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来、かかる化合物の内、N−(メチル)グリシン(化合物1)、N−(エチル)グリシン(化合物2)、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が特に好ましい。
【0021】
本発明の前記一般式(1)に表される化合物、前記一般式(2)に表される化合物、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、市販されている無置換又はtert−ブトキシカルボニル(Boc基)等の保護基を有するグリシン誘導体を出発原料とし、例えば、無水N,N−ジメチルホルムアミド溶媒中にて、水素化ナトリウム及び対応するハロゲン化アルキルを用いたアルキル化反応を行い、その後、脱保護反応により保護基を除去することにより製造することが出来る。また、前記一般式(1)に表される化合物、又は、前記一般式(2)に表される化合物には、市販されている化合物も存在し、かかる化合物に関しては、東京化成工業株式会社等の試薬メ−カ−より購入し使用することも出来る。かかる化合物は、そのまま皮膚外用剤に含有させることも出来るが、薬理学的に許容される塩と共に処理し塩の形に変換し、塩として使用することも出来る。例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩などの無機酸塩;マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩などの有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;トリエチルアミン塩、トリエタノ−ルアミン塩、アンモニウム塩、モノエタノ−ルアミン塩、ピペリジン塩等の有機アミン塩;リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩;などが上げられる。
【0022】
斯くして得られた前記一般式(1)、(2)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、後述する美白成分と共に皮膚外用剤に含有させることにより、優れた色素沈着予防又は改善効果を発揮する。また、本発明の皮膚外用剤は、前記一般式(1)、(2)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩から選択される1種又は2種以上を皮膚外用剤に含有させることが出来る。本発明の皮膚外用剤が、前記の作用を奏するには、前記一般式(1)、(2)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩から選択される1種または2種以上を、皮膚外用剤全量に対して、総量で0.0001質量%〜20質量%、より好ましくは、0.001質量%〜10質量%、さらに好ましくは、0.005〜5質量%含有することが好ましい。これは、皮膚外用剤全量に対する前記一般式(1)、(2)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩の含有量が0.0001質量%より少ないと色素沈着予防又は改善作用が低下する傾向にあり、また20質量%を超える量を配合しても、効果が頭打ちになる傾向がるため、処方の自由度が低下する恐れがあり、前記の皮膚外用剤全量に対する前記の含有量が好ましい。
【0023】
【化4】


N−(メチル)グリシン(化合物1)
【0024】
【化5】


N−(エチル)グリシン(化合物2)
【0025】
<製造例1: 化合物1及び化合物2の製造方法>
化合物1及び化合物2は、例えば、「ペプチド合成の基礎と実験」(丸善株式会社)等に記載の方法に従い合成することが出来る。出発原料としてBoc−Gly(株式会社ペプチド研究所)を用い、無水N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社)に溶解し、水素化ナトリウム及び相当するアルキルハライド(ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、和光純薬工業株式会社)を用いアルキル化反応を行った後、塩酸等の酸により脱保護反応、更には、イオン交換により遊離塩基体とすることにより目的とする化合物1又は化合物2を得ることが出来る。また、かかる化合物は、東京化成工業株式会社等の試薬メーカーより市販の試薬として購入することも出来る。本発明の実施例においては、東京化成工業株式会社より購入した化合物を使用した。
【0026】
<化合物1の物理恒数>
H−NMR(d−DMSO):δ 2.44(2H、s)、3.09(3H、s).
【0027】
<化合物2の物理恒数>
H−NMR(DO):δ 1.30(3H、t、J=7.8Hz)、3.12(2H、q、J=7.8Hz)、3.61(2H、s).
【0028】
<本発明の美白成分>
本発明の皮膚外用剤は、1)前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と、2)美白成分を含有することを特徴とする。本発明の美白成分は、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と共に皮膚外用剤に含有させることにより、優れた色素沈着予防又は改善効果を発揮する。かかる作用は、美白剤が有する色素沈着予防又は改善作用を、前記一般式(1)に表される化合物が効果的に増強することにより発揮されると考えられる。本発明の美白成分に関しては、美白作用(色素沈着予防又は改善作用)を有する成分であれば特段の限定なく適用することが出来、好ましいものを具体例に挙げれば、メラニン産生抑制剤、α−MSH抑制剤、メラノサイトデンドライト伸長抑制剤、プロトンポンプ阻害剤等が好適に例示出来る。また、本発明の美白成分としては、純粋な化学物質、動植物由来の抽出物等の形態の美白成分が好適に例示出来る。ここで、動植物由来の抽出物とは、動物又は植物より抽出される抽出物自体、動物又は植物抽出物を分画、精製した分画、動物又は植物抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。かかる美白成分を本発明の皮膚外用剤に含有させる場合には、下記美白成分のうち唯1種のみを含有させることも出来るし、2種以上を組み合わせて含有させることも出来る。
【0029】
本発明の美白成分の内、メラニン産生抑制剤に付いて述べる。本発明のメラニン産生抑制剤は、メラニン産生抑制作用を有する成分であれば特段の限定なく適用することが出来る。本発明のメラニン産生抑制剤として好ましいものを挙げれば、例えば、特開2009−155236号公報に記載のメラニン産生抑制作用試験において、細胞毒性を示さない被験物質添加濃度において、50%以上のメラニン産生抑制作用を示す成分が好適に例示出来る。本発明のメラニン産生抑制剤の内、好ましいものを具体的に挙げれば、4−アルキルレゾルシノ−ル誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩、アスコルビン酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩、ハイドロキノン誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩、トラネキサム酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩、ビタミンE誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩、パンテテイン−S−スルホン酸及び/又はその薬理学的に許容される塩、ウルソ−ル酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩等が好適に例示出来る。また、前記メラニン産生抑制剤のほか、4−メトキシサリチル酸等の4−アルコキシサリチル酸及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩、5,5’−ジプロピル−ビフェニル−2,2’−ジオ−ル等のビフェニル誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩、ニコチン酸アミド等のニコチン酸アミド誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩、リノ−ル酸などの不飽和脂肪酸及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩なども、本発明のメラニン産生抑制剤として好適に例示出来る。
【0030】
本発明のメラニン産生抑制剤の内、4−アルキルレゾルシノ−ル誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に付いて述べる。本発明のメラニン産生抑制剤である4−アルキルレゾルシノ−ル誘導体は、メラニン産生抑制作用を示す4−アルキルレゾルシノ−ル誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であれば、特段の限定なく適用することが出来る。4−アルキルレゾルシノ−ル誘導体の4位置換基としては、炭素数3〜10、より好ましくは、炭素数5〜8の環状アルキル基、炭素数1〜8、より好ましくは、炭素数2〜6の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましい。本発明の4−アルキルレゾルシノ−ル誘導体に関し、好ましい化合物を具体的に挙げれば、4−シクロペンチルレゾルシノ−ル、4−シクロヘキシルレゾルシノ−ル、4−シクロヘプチルレゾルシノ−ル、4−シクロオクチルレゾルシノ−ル、4−メチルレゾルシノ−ル、4−エチルレゾルシノ−ル、4−n−プロピルレゾルシノ−ル、4−イソプロピルレゾルシノ−ル、4−n−ブチルレゾルシノ−ル、4−イソブチルレゾルシノ−ル、4−sec−ブチルレゾルシノ−ル、4−tert−ブチルレゾルシノ−ル、4−n−ペンチルレゾルシノ−ル、4−n−ヘキシルレゾルシノ−ル、4−n−ヘプチルレゾルシノ−ル、4−n−オクチルレゾルシノ−ル、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。かかる化合物の内、特に好ましいものとしては、4−n−ブチルレゾルシノ−ル及び/又はその薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。
【0031】
本発明のメラニン産生抑制剤の4−アルキルレゾルシノ−ル誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と共に皮膚外用剤に含有させることにより、優れた色素沈着予防又は改善効果を発揮する。かかる薬理効果を奏するためには、4−アルキルレゾルシノ−ル誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.0001質量%〜5質量%、より好ましくは、0.001質量%〜3質量%、さらに好ましくは、0.01質量%〜2質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記効果が低下する傾向にあり、多すぎても、効果が頭打ちになる傾向があるため、処方の自由度が低下する恐れがあるためである。
【0032】
本発明のメラニン産生抑制剤の4−アルキルレゾルシノ−ル誘導体は、相当するアルキル基を有するカルボン酸とレゾルシンを塩化亜鉛の存在下、縮合し、亜鉛アマルガム/塩酸により還元する方法、又は、相当するアルキル基を有するアルコ−ル及びレゾルシンを200〜400℃の高温下にて縮合させる方法等の公知の合成方法(例えば、Lille ,J. ; Bitter, L. A.; Peiner, V. Trudy-Nauchono- Issledovatel' skii Institut Slantsev (1969)、No.18、 127−134、特開2006−124358号公報、特開2006−124357号公報を参照)に従い製造することも出来るし、市販の試薬として購入することも出来る。
【0033】
本発明のメラニン産生抑制剤の内、アスコルビン酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に付いて述べる。本発明のメラニン産生抑制剤のアスコルビン酸誘導体及びそれらの薬理学的に許容される塩は、メラニン産生抑制作用を有するアスコルビン酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であれば特段の限定なく適用することが出来る。また、かかるアスコルビン酸誘導体の内、水溶性のアスコルビン酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることがより好ましい。本発明のアスコルビン酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に関し、好ましいものを具体的に挙げれば、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸−2−グリコシド(単に、アスコルビン酸グルコシドと表記する場合も存する)、アスコルビン酸エチル、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来、さらに好ましいものとしては、アスコルビン酸、アスコルビン酸−2−グルコシド、アスコルビン酸エチル、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が挙げられる。アルコルビン酸、アスコルビン酸−2−グルコシド、アスコルビン酸エチル、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、優れたメラニン産生抑制作用を有することに加え、高い水溶性を有するため、製剤化における汎用性に富む。
【0034】
本発明のメラニン産生抑制剤のアスコルビン酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と共に皮膚外用剤に含有させることにより、優れた色素沈着予防又は改善効果を発揮する。かかる薬理効果を奏するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.01質量%〜10質量%、より好ましくは、0.05質量%〜5質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記効果が低下する傾向があり、多すぎても、効果が頭打ちになる傾向があるため、処方の自由度が低下する恐れがあるためである。
【0035】
本発明のメラニン産生抑制剤のハイドロキノン誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に付いて述べる。本発明のメラニン産生抑制剤のハイドロキノン誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、メラニン産生抑制作用を示すハイドロキノン誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であれば特段の限定なく適用することが出来る。本発明のハイドロキノン誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩の内、好ましいものとしては、ハイドロキノン配糖体が好適に例示出来る。前記ハイドロキノン配糖体の糖鎖部分としては、L−アラビノ−ス、D−キシロ−ス、D−リボ−ス、D−キシルロ−ス、D−リキソ−ス、D−リブロ−ス等の五炭糖、D−グルコ−ス、D−ガラクト−ス、D−マンノ−ス、D−タガロ−ス、D−フルクト−ス、L−ソルボ−ス等の六炭糖、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、シアル酸、ムラミン酸等のアミノ酸糖が好適に例示出来る。また、その他のハイドロキノン誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩としては、ウロン酸又はそのメチル化合物、アセチル化合物としては、D−グルクロン酸、D−ガラクツロン酸、D−マンヌロン酸、L−イズロン酸等のウロン酸又はそれらのメチル化合物、アセチル化合物が好適に例示出来る。かかるハイドロキノン誘導体の内、特に好ましいものとしては、ハイドロキノンとグルコ−スが結合した化学構造を有するアルブチン及び/又はその薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。
【0036】
本発明のメラニン産生抑制剤のハイドロキノン誘導体は、ハイドロキノンと対応する糖より常法により得ることが出来る。例えば、アルブチンは、特開平05−176785号公報に記載されたハイドロキノンとグルコ−スよりなる溶液に、β−グルコシダ−ゼを用いた酵素反応により合成することが出来る。
【0037】
また、本発明のメラニン産生抑制剤のハイドロキノン誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と共に皮膚外用剤に含有させることにより、優れた色素沈着予防又は改善効果を発揮する。前記の薬理効果を奏するためには、ハイドロキノン誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を皮膚外用剤全量に対し、総量で0.001質量%〜5質量%、より好ましくは、0.1質量%〜3質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記効果が低下する傾向にあり、多すぎても、効果が頭打ちになる傾向があるため、処方の自由度が低下する恐れがあるためである。
【0038】
本発明のメラニン産生抑制剤のトラネキサム酸、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に付いて述べる。本発明のトラネキサム酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、メラニン産生抑制作用を示すトラネキサム酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であれば特段の限定なく適用することが出来る。本発明のトラネキサム酸誘導体及びそれらの薬理学的に許容される塩に関し、好ましいものを具体例に例示すれば、トラネキサム酸、トラネキサム酸メチルアミド、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩等が好適に例示出来、より好ましくは、トラネキサム酸及び/又はその薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。
【0039】
本発明のトラネキサム酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と共に皮膚外用剤に含有することにより、優れた色素沈着予防又は改善効果を発揮する。本発明のトラネキサム酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が、前記の薬理効果を奏するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.01質量%〜10質量%、より好ましくは、0.05質量%〜5質量%、より好ましくは、0.1質量%〜3質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記薬理効果が低下する傾向があり、多すぎても、効果が頭打ちになる傾向がるあるため、処方の自由度が低下する恐れがあるためである。
【0040】
本発明のメラニン産生抑制剤であるビタミンE誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に付いて述べる。本発明のビタミンE誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、メラニン産生抑制作用を示すビタミンE誘導体、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であれば特段の限定なく適用することが出来る。本発明のビタミンE誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に関し好ましいものを具体的に例示すれば、ビタミンE、ビタミンEアセテ−ト、ビタミンEニコチネ−ト、ビタミンEオロテ−ト、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来、より好ましくは、ビタミンE及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。
【0041】
本発明のビタミンE誘導体、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と共に皮膚外用剤に含有することにより、優れた色素沈着予防又は改善効果を発揮する。また、本発明のビタミンE誘導体、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が、前記効果を奏するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.05質量%〜10質量%、より好ましくは、0.2質量%〜5質量%、より好ましくは、0.5質量%〜3質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記薬理効果が低下する傾向があり、多すぎても、効果が頭打ちになる傾向があるため、処方の自由度が低下する恐れがあるためである。
【0042】
本発明のメラニン産生抑制剤のパンテテイン−S−スルホン酸及び/又はその薬理学的に許容される塩に付いて述べる。本発明のパンテテイン−S−スルホン酸は、遊離酸の形態のみならず、塩の形態で使用することも出来る。本発明のパンテテイン−S−スルホン酸の塩としては、薬理学的に許容される塩であれば、特段の限定なく適用出来る。例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、トリエタノ−ルアミン塩、モノエタノ−ルアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩等が好適に例示できる。中でもアルカリ土類金属塩が好ましく、特に、カルシウム塩が好ましい。これは、皮膚外用剤の形態で使用した場合に、生体利用性が高いためである。また、パンテテイン−S−スルホン酸には、光学異性体が存在し、D−体、L体、DL−体のいずれも本発明に使用出来るが、D体を使用することが好ましい。パンテティン−S−スルホン酸及びその塩は既知化合物であり、既に化粧料原料として市販されているものが存し、かかる市販品を購入して使用することが出来る。この様な市販品としては、パンテティン−S−スルホン酸のカルシウム塩である「パンテティンSスルホン酸CA−70」(相互薬工株式会社)が好適に例示できる。
【0043】
本発明のパンテテイン−S−スルホン酸及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と共に皮膚外用剤に含有させることにより、優れた色素沈着予防又は改善効果を発揮する。また、本発明のパンテテイン−S−スルホン酸及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が、前記薬理効果を奏するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.001質量%〜1.0質量%、より好ましくは、0.005質量%〜0.8質量%、より好ましくは、0.01質量%〜0.3質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記薬理効果が低下する傾向があり、多すぎても、効果が頭打ちになる傾向があるため、処方の自由度が低下する恐れがあるためである。
【0044】
本発明のメラニン産生抑制剤のウルソ−ル酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に付いて述べる。本発明のウルソ−ル酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、メラニン産生抑制作用を示すウルソ−ル酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であれば特段の限定なく適用することが出来る。本発明のウルソ−ル酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に関し好ましいものを具体的に例示すれば、ウルソ−ル酸、ウルソ−ル酸の炭素数1〜20の脂肪族炭化水素エステル、ウルソ−ル酸の芳香族基により置換されている炭素数1〜4の炭化水素エステル、ウルソ−ル酸のリン酸エステル、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。前記のウルソ−ル酸の炭素数1〜20の脂肪族炭化水素エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、ヘキシルエステル、シクロヘキシルエステル、オクチルエステル、イソオクチルエステル、ラウリルエステル、セチルエステル、ステアリルエステル、イソステアリルエステル、オレイルエステル等の脂肪族エステルが好適に例示出来る。また、前記のウルソ−ル酸の芳香族基により置換されている炭素数1〜4の炭化水素エステルとしては、ベンジルエステル、フェニルエチルエステル、フェニルプロピルエステル、フェニルブチルエステル等が好適に例示出来、ベンジルエステルが特に好ましい。本発明のウルソ−ル酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩の内、好ましい化合物を具体的に例示すれば、ウルソ−ル酸、ウルソ−ル酸ベンジル(例えば、特開2000−302659号公報を参照)、ウルソ−ル酸リン酸エステル(例えば、WO2006132033号公報を参照)、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。
【0045】
本発明のウルソ−ル酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と共に皮膚外用剤に含有させることにより、優れた色素沈着予防又は改善効果を発揮する。また、本発明のウルソ−ル酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が、前記薬理効果を奏するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.0001質量%〜15質量%、より好ましくは、0.001質量%〜10質量%、より好ましくは、0.01質量%〜5質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記薬理効果が低下する傾向があり、多すぎても、効果が頭打ちになる傾向があるため、処方の自由度を低下させる恐れがあるためである。
【0046】
本発明の美白成分の内、α−MSH産生抑制剤に付いて述べる。本発明のα−MSH産生抑制剤は、α−MSH産生抑制作用を示す成分であれば特段の限定なく適用することが出来る。本発明のα−MSH産生抑制剤としては、例えば、特開2009−067804号公報に記載のα−MSH産生抑制作用評価系において培養細胞内c−AMP産生量を減少させる作用を有する成分が好適に例示出来る。本発明のα-MSH産生抑制剤としては、マメ科クララ属に属する植物より得られる植物抽出物が好適に例示出来、より好ましくは、マメ科クララ属クララより得られる植物抽出物が好適に例示出来る。本発明のα−MSH産生抑制剤は、生体内のメラニン産生、取り分け、皮膚のメラノサイトのメラニン産生に関与する情報伝達物質であるα−MSHの産生及び情報伝達を抑制することにより、色素沈着予防又は改善効果を発揮する。
【0047】
本発明のα−MSH産生抑制剤は、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と共に皮膚外用剤に含有させることにより、優れた色素沈着の予防又は改善効果を発揮する。本発明のα−MSH産生抑制剤が、前記効果を奏するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.00001質量%〜15質量%、より好ましくは、0.0001質量%〜10質量%、より好ましくは、0.01質量%〜5質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記薬理効果が低下する傾向にあり、多すぎても、効果が頭打ちになる傾向があるため、処方の自由度が低下する恐れがある。
【0048】
本発明の美白成分の内、メラノサイトのデンドライト伸長抑制剤に付いて述べる。本発明のメラノサイトのデンドライト伸長抑制剤は、メラノサイトの伸長抑制作用を示す成分であれば特段の限定なく適用することが出来る。本発明のメラノサイトのデンドライト伸長抑制作用を有する成分としては、例えば、特開2009−046503号に記載のメラノサイトのデンドライト伸長抑制作用評価においてデンドライト伸長抑制作用を有する成分が好適に例示出来る。本発明のデンドライト伸長抑制剤に関し、好ましいものを具体的に例示すれば、メチルオフィオポゴナノンB、ソフォラフラバノンA、キク科セイヨウノコギリソウより得られる植物抽出物、ユリ科バクモンドウより得られる植物抽出物が好適に例示出来る。本発明のメラノサイトのデンドライト伸長抑制剤は、メラニン産生亢進に起因する色素沈着に加え、メラニン産生量があまり寄与しないメラノサイトのデンドライトからメラニン顆粒の移動亢進により生じる色素沈着に対しても有効であることが知られている。
【0049】
本発明のメラノサイトのデンドライト伸長抑制剤は、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と共に皮膚外用剤に含有させることにより、優れた色素沈着予防又は改善効果を発揮する。本発明のメラノサイトのデンドライト伸長抑制剤が前記薬理効果を奏するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.01質量%〜10質量%、より好ましくは、0.05質量%〜5質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記薬理効果が低下する傾向にあり、多すぎても、効果が頭打ちになる傾向がるため、処方の自由度が低下する恐れがあるためである。
【0050】
本発明の美白成分の内、プロトンポンプ阻害剤に付いて述べる。本発明のプロトンポンプ阻害剤は、プロトンポンプ阻害作用による色素沈着予防又は改善作用を示す成分であれば、特段の限定なく適用することが出来る。プロトンポンプ阻害剤は、生体膜に存在しプロトンを能動輸送する膜H−ATPase、及び/又は、イオンポンプのNa/K−ATPaseと共役的に働きプロトンを受動輸送するNa/H交換輸送系等に作用し、プロトン輸送を阻害することにより細胞又は細胞小器官内における酸性化を誘引する作用に優れる。細胞又は細胞小器官内における酸性化作用は、pH依存的に働くイオンチャネル、酵素(例えば、チロシナ−ゼ等)などの生体機能分子の生物活性又は機能に大きな影響を与える。チロシナ−ゼ酵素は、pH変動により大きな影響を受け、プロトンポンプ阻害剤により細胞内が酸性化され、チロシナ−ゼ活性が低下した場合には、メラニン産生は抑制される。本発明のプロトンポンプ阻害作用を示す成分としては、例えば、特願2009−219292号公報に記載のプロトンポンプ阻害作用評価においてプロトンポンプ阻害作用を示す成分が好適に例示出来る。本発明のプロトンポンプ阻害作用を有する成分の内、好ましいものを具体的に例示すれば、シソ科タチジャコウソウ属に属する植物、マメ科クララ属に属する植物、サトイモ科ショウブ属に属する植物、ウリ科ヘチマ属に属する植物、ユキノシタ科アジサイ属に属する植物、サルノコシカケ科マツホド菌核、マメ科ハギ属に属する植物より得られる植物抽出物が好適に例示出来、より好ましくは、シソ科タチジャコウソウ属タイムより得られる植物抽物、マメ科クララ属クララより得られる植物抽出物、ショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物、サトイモ科ショウブ属ショウブより得られる植物抽出物、ウリ科ヘチマ属ヘチマより得られる植物抽出物、ユキノシタ科アジサイ属アマチャより得られる植物抽出物、サルノコシカケ科マツホド菌核ブクリョウより得られる植物抽出物、マメ科ハギ属キハギより得られる植物抽出物、マメ科ハギ属トウクサハギより得られる植物抽出物が好適に例示出来る。
【0051】
本発明のプロトンポンプ阻害剤は、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と共に皮膚外用剤に含有することにより、優れた色素沈着予防又は改善効果を発揮する。本発明のプロトンポンプ阻害剤が、前記薬理効果を奏するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.000001質量%〜10質量%、より好ましくは、0.00001質量%〜5質量%、さらに好ましくは、0.0001質量%〜3質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記薬理効果が低下する傾向があり、多すぎても、効果が頭打ちになる傾向があるため、処方の自由度が低下する恐れがあるためである。
【0052】
本発明の美白成分を皮膚外用剤に含有させる場合には、前述した美白成分のメラニン産生抑制剤、α−MSH抑制剤、メラノサイトのデンドライド伸長抑制剤、プロトンポンプ阻害剤よりなる群から1種又は2種以上を選択し皮膚外用剤に含有させることが出来る。また、前記の美白成分には、純粋な化学物質のほか、動物又は植物からの抽出物等がある。ここで、本発明の抽出物とは、抽出物自体、抽出物の分画、精製した分画、抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。
【0053】
本発明の美白成分の内、純粋な化学物質に関しては、化合物をそのまま使用することも出来るし、薬理学的に許容される塩の形態として利用することも出来る。これらの塩としては、化粧料(皮膚外用剤)、医薬品等で使用されるものであれば、特段の限定無く使用でき、例えば、アルカリ塩であれば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、トリエタノ−ルアミン塩、モノエタノ−ルアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩等が好適に例示できる。又、酸との塩であれば、塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩等が好適に例示できる。
【0054】
本発明の美白成分は、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と共に皮膚外用剤に含有させることにより、優れた色素沈着予防又は改善効果を発揮する。前記薬理効果は、本発明の美白成分、並びに、前記一般式(1)に表される化合物及び/又は薬理学的に許容される塩を共に皮膚外用剤に含有させることにより、美白成分が有する色素沈着予防又は改善効果が相加又は相乗的に増強されること、更には、標的部位への美白成分の送達効率を向上させる効果などにより発揮されると考えられる。
【0055】
<本発明の皮膚外用剤>
本発明の皮膚外用剤は、1)前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と、2)美白成分とを含有することを特徴とし、両成分を共に皮膚外用剤に含有することにより、優れた色素沈着予防又は改善作用を有する。本発明の前記一般式(1)に表される化合物には、色素沈着予防又は改善作用、並びに、美白成分が有する色素沈着予防又は改善効果を増強する作用は、発明者の知る限り報告されていない。このため、本発明の皮膚外用剤が有する優れた色素沈着予防又は改善効果は、美白成分が有する色素沈着予防又は改善効果を、前記一般式(1)に表される化合物が効率的に増強することにより発揮されると考えられる。また、本発明の皮膚外用剤が有する色素沈着予防又は改善効果とは、既に形成された色素沈着を薄くする又は元の状態に戻す作用に加え、色素沈着を予防する作用も包含される。本発明における色素沈着予防又は改善作用は、色素沈着予防又は改善作用であれば特段の限定なく適用することが出来る。かかる作用の内、特に好ましいものとしては、後述する実施例2の「ヒトにおける皮膚外用剤の色素沈着抑制効果評価」における色素沈着予防又は改善作用が好適に例示出来る。実施例2の「ヒトにおける皮膚外用剤の色素沈着抑制効果評価」において、色素沈着抑制作用を有する成分としては、コントロ−ル群(評価物質無配合製剤群)と比較して、評価物質配合製剤群に色素沈着予防又は改善効果が認められる成分(コントロ−ル群に比較し、評価物質配合製剤群の△L*値が小さい成分)が好適に例示出来、さらに好ましくは、色素沈着予防又は改善効果に統計的な有意差が認められる成分が好適に例示出来る。
【0056】
また、本発明の皮膚外用剤としては、医薬品、医薬部外品、化粧品などが好適に例示出来、日常的に摂取出来ることから、化粧品、医薬部外品などに適応することが好ましい。その投与経路としては、かかる成分が連続投与される場合、さらには安全性を考慮した場合、経皮的に投与されることが好ましい。本発明の皮膚外用剤としては、皮膚に外用で適用されるものであれば、特段の限定無く使用することができ、例えば、化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨などが好適に例示でき、化粧料に適用することが特に好ましい。これは本発明の皮膚外用剤が、比類無き使用感の良さを有しているため、使用感が重要な化粧料に特に好適であるためである。本発明の皮膚外用剤(化粧料)としては、皮膚外用剤の形態で使用出来るものであれば特段の限定なく適用することが出来、かかる形態としては、ロ−ション製剤、水中油乳化製剤、油中水乳化製剤、複合エマルション乳化製剤等が好適に例示できる。また、本発明の皮膚外用剤としては、例えば、化粧料などのロ−ション、乳液、エッセンス、クリ−ム、パック化粧料、洗顔化粧料、クレンジング化粧料等が好ましく例示できる。さらに、前記の油中水乳化剤形の製剤としては、例えば、エッセンス、乳液、クリ−ム等の基礎化粧料、アンダ−メ−クアップ、ファンデ−ション、チ−クカラ−、マスカラ、アイライナ−などのメ−クアップ化粧料、ヘアクリ−ムなどの毛髪化粧料などが好適に例示できる。
【0057】
本発明の皮膚外用剤においては、前記の必須成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリ−ブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワ−油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パ−ム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、イソステアリルアルコ−ル、ベヘニルアルコ−ル、オクチルドデカノ−ル、ミリスチルアルコ−ル、セトステアリルアルコ−ル等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコ−ル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロ−ルプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロ−ルプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエ−テル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコ−ン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノ−ルアミンエ−テル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレ−ト、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコ−ル等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエ−テル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエ−ト、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレ−ト等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレ−ト等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコ−ルモノオレ−ト、POEジステアレ−ト等)、POEアルキルエ−テル類(POE2−オクチルドデシルエ−テル等)、POEアルキルフェニルエ−テル類(POEノニルフェニルエ−テル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエ−テル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエ−テル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパ−ル剤類;レ−キ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマ−等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤;桂皮酸系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類、エタノ−ル、イソプロパノ−ル等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテ−ト、ビタミンB6ジオクタノエ−ト、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロ−ル、β−トコフェロ−ル、γ−トコフェロ−ル、ビタミンEアセテ−ト等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノ−ル等の抗菌剤;ヘクトライト、ジメチルジステアリルアンモニウム変性ヘクトライトなどの有機変性粘土鉱物などが好ましく例示できる。
【0058】
本発明の1)前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と、2)美白成分とを含有する皮膚外用剤には、色素沈着予防又は改善作用以外の作用を奏するものも存在する。その様な作用の発現を目的として本発明の皮膚外用剤を使用する場合であっても、前記効果が発揮されている場合には、本発明の効果を利用するものであるので、本発明の技術範囲に属する。本発明の色素沈着予防又は改善作用以外の作用としては、肌荒れ予防又は改善作用、抗老化作用、シワ形成予防又は改善作用、抗炎症作用、保湿作用等の作用が好適に例示出来る。
【0059】
本発明の皮膚外用剤は、前記の任意成分や必須成分を常法に従って処理することにより製造することが出来る。
【0060】
以下に、実施例をあげて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ、限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0061】
<製造例2: 本発明の皮膚外用剤の製造方法1>
以下の表1及び2に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤(ロ−ション剤型、化粧料1〜10)を作製した。即ち、処方成分を80℃に加熱し、攪拌し、溶解させ、攪拌冷却した後、10%(質量%)の水酸化カリウム水溶液を適量加え、pHを6.5に調整した。最後に水を追加して総重量を1000gとし、皮膚外用剤(ロ−ション剤型、化粧料1〜10)を得た。同様に、化粧料1に含まれる「本発明の美白成分」を「本発明の前記一般式(1)に表される化合物」に置換した比較例1、化粧料1に含まれる「本発明の前記一般式(1)に表される化合物」を「本発明の美白成分」に置換した比較例2、「本発明の前記一般式(1)に表される化合物」及び「本発明の美白成分」を共に「水」に置換した比較例3を作製した。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【実施例2】
【0064】
<試験例1: 本発明の皮膚外用剤のヒトにおける色素沈着抑制効果評価1>
実施例1に記載の方法に従い製造した皮膚外用剤(ロ−ション剤型、化粧料1〜10)、比較例1〜3の皮膚外用剤(ロ−ション剤型)を用い、色素沈着抑制効果を調べた。自由意思で参加したパネラ−の背部に、試験初日(1日目)に1.5cm×1.5cmの試験部位を設け、試験部位の皮膚明度(L*値)を色彩色差計(CR-300、コニカミノルタ株式会社)にて測定した。試験初日に皮膚明度を測定した後、試験部位に最少紅斑量の2倍量(2MED)の紫外線を1回照射した。紫外線照射終了直後より1日3回、14日連続して、各試験部位に各検体(化粧料1〜10又は比較例1〜3の化粧料)を50μL塗布した。塗布終了24時間後(15日目)に色彩色差計(CR-300、コニカミノルタ株式会社)にて各試験部位の皮膚明度(L*値)を測定し、試験初日のL*値から15日目のL*値を引いたΔL*値を算出した。L*値は大きいほど皮膚明度が高いことを示す。そのため、ΔL*値が小さいほど、試験初日のL*値と15日目のL*値との差が小さく、色素沈着が抑制されたと判断することができる。結果を表3に示す。本発明の皮膚外用剤である化粧料1〜10は、比較例3と比べてΔL*値が小さく、優れた色素沈着抑制効果を有することが分かる。また、比較例1及び比較例2も、比較例3と比べてΔL*値が小さく、色素沈着抑制作用が認められたが、その効果は化粧料1〜10に比較し弱かった。これにより、本発明の皮膚外用剤である化粧料1〜10は、優れた色素沈着に対する予防又は改善効果を示すことが分かる。
【0065】
【表3】

【実施例3】
【0066】
<製造例3: 本発明の皮膚外用剤の製造方法2>
実施例1に記載の化粧料1の処方成分中、「本発明の前記一般式(1)に表される化合物」及び「本発明の美白成分」を表4に記載の含有量に変更した皮膚外用剤(ロ−ション剤型、化粧料11〜12)を、化粧料1と同様の方法にて作製した。
【0067】
【表4】

【実施例4】
【0068】
<試験例2: 本発明の皮膚外用剤のヒトにおける色素沈着抑制効果評価2>
実施例3に記載の方法により作製した本発明の皮膚外用剤(ロ−ション剤型、化粧料11〜12)及び比較例3を用いて、実施例2に記載の方法に従い色素沈着抑制効果を評価した。結果を表5に示す。本発明の皮膚外用剤である化粧料11〜12は、比較例3と比べてΔL*値が小さく、優れた色素沈着に対する予防又は改善効果を有することが分かる。
【0069】
【表5】

【実施例5】
【0070】
<製造例4: 本発明の皮膚外用剤の製造方法3>
以下の表6に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤(クリ−ム剤型、化粧料13)を作製した。即ち、ロの成分を80℃に加熱し、攪拌し、溶解させた後、10%(質量%)の水酸化カリウム水溶液を適量加え、pHを6.5に調整した。最後に水を追加し、総重量が524.5gとなるようにした(混合物Aとする)。また、イの成分を80℃に加熱し、攪拌し、溶解させた(混合物Bとする)。80℃に加熱した混合物Aを混合物Bに徐々に攪拌しながら加え、乳化し、ホモジナイザ−で粒子を均一化した後、撹拌冷却し皮膚外用剤(クリ−ム剤型、化粧料13)を作製した。同様の操作により表6の、「本発明の前記一般式(1)に表される化合物」及び「本発明の美白成分」を共に「水」に置換した比較例4を作製した。
【0071】
【表6】

【実施例6】
【0072】
<試験例3: 本発明の皮膚外用剤のヒトにおける紫外線照射による色素沈着抑制効果評価3>
実施例5の製造方法に従い製造された皮膚外用剤(クリ−ム剤型、化粧料13)及び比較例4に関し、実施例2に記載の方法に従いヒトにおける色素沈着抑制作用を評価した。結果を表7に示す。表7の結果より、本発明の皮膚外用剤(クリ−ム剤型、化粧料13)には、優れた色素沈着に対する予防又は改善作用が認められた。
【0073】
【表7】


【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、化粧料(但し、医薬部外品を含む)などに応用出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)下記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩と、2)美白成分を含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【化1】


(1)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R3は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)に表される化合物が、下記一般式(2)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【化2】


(2)
[式中、R4は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【請求項3】
前記一般式(1)に表される化合物が、N−(メチル)グリシン(化合物1)及び/又はその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【化3】


N−(メチル)グリシン(化合物1)
【請求項4】
前記一般式(1)に表される化合物及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が、皮膚外用剤全量に対し、0.0001質量%〜20質量%含有することを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
前記美白成分が、メラニン産生抑制剤、α−MSH(MSH:Melanocyte stiumulating hormone)抑制剤、メラノサイトのデンドライト伸長抑制剤、プロトンポンプ阻害剤よりなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
前記メラニン産生抑制剤、α−MSH抑制剤、メラノサイトのデンドライト伸長抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤よりなる群から選択されるものが、次の何れかであることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(メラニン産生抑制剤):4−アルキルレゾルシノ−ル及び/又はそれらの塩、アスコルビン酸誘導体及び/又はそれらの塩、ハイドロキノン及び/又はそれらの塩、トラネキサム酸誘導体及び/又はそれらの塩、ビタミンE及び/又はその誘導体、パンテテイン−S−スルホン酸及び/又はその塩、ウルソ−ル酸誘導体及び/又はそれらの塩
(α−MSH抑制剤):マメ科クララ属クララより得られる植物抽出物
(メラノサイトのデンドライド伸長抑制剤):メチルオフィオポゴナノンB、ソフォラフラバノンA、キク科セイヨウノコギリソウより得られる植物抽出物、ユリ科バクモンドウより得られる植物抽出物
(プロトンポンプ阻害剤):シソ科タチジャコウソウ属タイムより得られる植物抽物、マメ科クララ属クララより得られる植物抽出物、ショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物、サトイモ科ショウブ属ショウブより得られる植物抽出物、ウリ科ヘチマ属ヘチマより得られる植物抽出物、ユキノシタ科アジサイ属アマチャより得られる植物抽出物、サルノコシカケ科マツホド菌核ブクリョウより得られる植物抽出物、マメ科ハギ属キハギより得られる植物抽出物、マメ科ハギ属トウクサハギより得られる植物抽出物
【請求項7】
前記美白成分が、皮膚外用剤全量に対し、0.000001質量%〜15質量%含有することを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
色素沈着予防又は改善用であることを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2013−32300(P2013−32300A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168378(P2011−168378)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】