説明

皮膚洗浄剤

本発明は、、100〜1,000μmの平均粒径を有し、少なくとも50%水素添加されたヒマシ油を含有する洗浄体を2〜25重量%と、界面活性剤を2〜30重量%と、増粘剤を0.1〜10重量%と、水及び所望により他の補助剤と、を含む、皮膚洗浄剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚洗浄剤、前記皮膚洗浄剤のための洗浄体、および前記洗浄体を調製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚洗浄剤は、界面活性剤様成分の洗浄作用を機械的に補助し、洗浄性能を向上させるために、研磨剤を含有することがある。
【0003】
多くの無機及び有機研磨剤が知られており、例えばハンドクリーナやピーリング剤に使用されている。
【0004】
当初使用された研磨剤は、ケイ砂又は軽石粉のような鉱物成分を原料としていた。しかしながら、ケイ砂や軽石粉は硬く、鋭利な粒子を含んでいるために皮膚への適合性に乏しいという欠点がある。これらは高密度であるため、沈殿して排水管の詰まりを引き起こす傾向を有する。
【0005】
他に使用される成分としては木粉が挙げられる。これらは、皮膚への適合性により優れており、排水管内で沈殿することもない。しかしながら、木粉を使用することにより、木のテルペン成分に対するアレルギーという重要なリスクを伴う。更に、木粉は発癌性が疑われており、そのため木粉の調製、加工時には厳しい安全対策がとられるという点も弱点である。
【0006】
研磨剤は他にも、ポリウレタン又はポリエチレン粉末を原料として得ることができる。皮膚への適合性、硬さ等に関しては、これらは研磨剤として非常に好適である。しかしながら、これらは実質的に生分解性ではないため、環境保護及び持続可能性の観点から最適であるとはいえない。
【0007】
研磨剤は他にも、天然材料の粉末を原料として得ることができる。
【0008】
例えば、独国特許第4038076(C2)号には、殻や種子の粉、特にクルミ殻粉が記載されている。
【0009】
欧州特許公開第1106173(A2)号には、トウモロコシの軸の粉(コブミール)を研磨剤として用いることが記載されている。
【0010】
製品の細菌汚染を避けるためには、使用される粉体の消毒が必須であると考えられる。上述の欧州特許公開第1106173(A2)号には、存在する可能性のあるあらゆる細菌を同時に死滅させる、天然粉の漂白方法が記載されている。このような天然粉の使用は、持続可能性の側面では原理上極めて好適である一方、これらの粉の特性はいまだ最適であるとはいえない。
【0011】
労働安全及び衛生に対する要求の高まりにより、業界では、種々の職場における汚染の程度は低下している。それ故、特に専門の皮膚科医からの、より皮膚に優しい製品に対する要求が存在する。中でも、本発明の焦点は研磨剤である。
【0012】
米国特許出願公開第2003/0180235号には、低比率でヒマシ油を含有してよい微粒子を調製するプロセスが記載されている。
【0013】
欧州特許公開第0711544(A2)号には、医学的に活性のある物質を充填した、寒天でコーティングされたカプセルを含有する歯磨剤組成物が記載されている。比較例には、ヒマシ油及び銅クロロフィリンナトリウムを含有するカプセルの使用が示されている。
【0014】
独国特許公開第10059668(A1)号には、5〜500nmの平均粒径を有するナノ粒子ワックスが記載されている。これらは小さいため、洗浄体として作用しない。
【0015】
改善された皮膚保護特性を有しながら、良好な洗浄性能を提供する、皮膚洗浄剤に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、先行技術の上記欠点を克服し、特に皮膚への高い適合性を示す、洗浄体及び前記洗浄体を含有する皮膚洗浄剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、
−2〜25重量%の、100〜1000μmの平均粒径を有し、水素添加ヒマシ油を含有する洗浄体と;
−2〜30重量%の界面活性剤と;
−0.1〜10重量%の増粘剤と;
−水および所望により更なる補助剤と;
を含有する皮膚洗浄剤によって達成される。
【0018】
本発明では、ヒマシ油、すなわち、トウゴマ(Ricinus communis)種子から得た油であって、後に少なくとも部分的に水素添加されるヒマシ油を含有する洗浄体を使用する。
【0019】
本発明による洗浄体は、少なくとも50重量%のヒマシ油、好ましくは少なくとも70重量%のヒマシ油、および最も好ましくは少なくとも90重量%のヒマシ油を含有する。
【0020】
好ましくは、洗浄体は、銅クロロフィリンナトリウムを全く含有しない。
【0021】
水素添加の程度は、ヨウ素価を決定することにより確定できる。100gあたり0〜20mgのI2のヨウ素価を有するヒマシ油が、特に好適であることが立証されている。皮膚洗浄剤中の洗浄体の含量は、好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、更により好ましくは少なくとも6重量%、または少なくとも7重量%である。
【0022】
驚くべきことに、本発明による洗浄体は、汚れを除去、及び汚れを吸収する挙動を示す。本発明による洗浄剤を使用すると、汚れ粒子が本発明による洗浄体の周りにある種の被膜を形成する。この方法により、良好な洗浄効果が達成される。
【0023】
本発明による洗浄体は、研磨効果を全く有しないか、またはごく僅かしか有していない。それ故、本発明による洗浄剤は、皮膚保護能力に特にすぐれる。
【0024】
原則として、洗浄体は、水素添加ヒマシ油に加えて、更なる物質、特にワックスを含有してよい。特に好適なのは、パラフィンワックス、カルナウバワックス、キャンディラワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、またはこれらの混合物である。40℃を超える、好ましくは80℃を超える融点範囲を有するワックスを選択することに留意すべきである。
【0025】
驚くべきことに、洗浄体は、二塩基性エステル(DBE)のような溶媒の存在下でも安定であることが見出されている。したがって、洗浄体は、塗料洗浄剤のような特殊な製品にも使用できる。
【0026】
驚くべきことに、使用される洗浄体は、界面活性剤が存在するにもかかわらず、皮膚洗浄剤に溶解しないことが見出されている。
【0027】
驚くべきことに、本発明に使用される洗浄体は、通常の輸送および保管条件下でも安定な状態を保つことも見出されている。
【0028】
皮膚洗浄剤で用いるための界面活性剤としては、特に、非イオン性、両性およびアニオン性界面活性剤、例えば硫酸エーテル類、ベタイン類、スルホン酸アルキル類、コハク酸塩類、アルキルポリグリコシド類、タンパク質/脂肪酸縮合体類、ポリグリコールエーテル類、石鹸類、およびこれらの混合物が好適であることが立証されている。適切な界面活性剤の選択は当業者に周知である。
【0029】
増粘剤としては、特に、ベントナイト類、キサンタンガム類、アクリレート類、アルギン酸塩類、セルロースエーテル類、カラギーナン、およびこれらの混合物が好適である。
【0030】
通常、本発明による皮膚洗浄剤は、以下の通常の添加剤のうち1種又はそれ以上を含有してよい。
−加脂剤(refatting agent)
−着色剤
−香料
−二酸化チタン
−緩衝物質
−防腐剤
−流動パラフィン
−グリセロール
−酸化防止剤
【0031】
皮膚洗浄剤の流動性は、増粘剤の含量および洗浄体の含量により調節することができる。増粘剤および洗浄体の含量が少ないと、流動性のペーストが得られる。含量が比較的多いと、例えば手の洗浄に使用されることが多い、固体の洗浄ペーストが得られる。
【0032】
驚くべきことに、本発明による製品は、使用されるヒマシ油が加脂剤および乳化剤としての更なる特性を有するため、非常に皮膚に優しい。
【0033】
好ましくは、製品は水性懸濁液の形態である。水中油型の乳剤はあまり好ましくない。
【0034】
洗浄体の洗浄効果は、粒径及び調製プロセスに影響を受けうる。原則として、洗浄体が大径になるにつれて、その効果も大きくなる。
【0035】
本発明による洗浄体は、好ましくは、所望により更なる材料、具体的には更にワックスを添加して水素添加ヒマシ油を融解させ、続いて融解物を液滴状に分散または噴霧するプロセスにより調製される。
【0036】
噴霧する際は、融解したワックス混合物をノズルを通して高圧下で噴霧する。粒径分布曲線は、比較的広い基部を有する。更に、液滴は、合体して形成されるためあまり均一な形状を有しない。
【0037】
液滴状に分散された製品は、実質的により狭い粒径分布曲線を有する。製品は、均一な球状であり、ドロップコーン(drop cone)が広いため凝集する傾向が低い。液滴発生装置には、噴霧ノズルの代わりに回転円盤を用いる。この回転円盤は、粒子の直径を決定する規定された穴を有する。
【0038】
不均一な洗浄体はより優れた機械的洗浄特性を有するが、このために皮膚への適合性は低い。
【0039】
原則として、水素添加ヒマシ油を原料とする本発明による洗浄体を、例えばポリウレタン研磨体のような研磨剤と混合し、得られた混合物を皮膚洗浄剤に使用することも可能である。
【0040】
本発明はまた、100〜1000μmの平均粒径を有し、水素添加ヒマシ油を含有する化粧品用の洗浄体、および、所望により更なる物質とともに水素添加ヒマシ油を融解させ、続いて得られた融解物を液滴状に分散または噴霧する工程を含む、前記洗浄体の調製プロセスに関する。
【0041】
本発明は更に、化粧品、具体的には皮膚洗浄剤の調製のための、100〜1000μmの平均粒径を有し、水素添加ヒマシ油を含有する洗浄体の使用に関する。
【0042】
原則として、ワックスも化粧用活性成分を含有してよい。異なるワックスを組み合わせることにより、洗浄体の特性を容易に調節することができる。
【0043】
【表1】

【0044】
本発明による洗浄体は、特に硬度および融点範囲の点で水素添加ヒマシ油と類似の特性を有するワックスを、前記水素添加または部分的水素添加ヒマシ油の代わりに使用することによっても得ることができる。
【0045】
好ましくは、本発明に使用できる水素添加ヒマシ油の滴点および浸透性と、他のワックスのそれとの偏差は20%以下である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、噴霧法により得られた洗浄体を示す。
【図2】図2は、液滴分散法により得られた洗浄体を示す。
【図3】図3は、実施例1による洗浄体の粒径分布を示す。
【図4】図4は、様々な洗浄剤の研磨効果の比較を示す。
【図5】図5aおよび図5bは、汚れに接触する前および接触した後の洗浄体の光学顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、以下の実施例によって更に説明される。
【実施例1】
【0048】
以下の組成を有する皮膚洗浄剤を調製した。
【0049】
【表2】

【0050】
使用する水素添加ヒマシ油は、図3に従う粒径分布を有する。
【0051】
煤煙、グリース、潤滑油のような重度の汚れを除去するのに好適な、比較的固体状の皮膚洗浄ペーストを得た。得られた洗浄体は、例えば夏期の輸送中または保管中に生じる高温条件下であっても、長期間安定した状態を保つことが見出されている。
【実施例2】
【0052】
【表3】

【0053】
実施例2は、ディスペンサとともに用いることができ、最も重度のグリースおよびすすのために考えられた流動性ペーストである。タンパク質/脂肪酸縮合物を用いることにより、界面活性剤の効果的な組み合わせは、全体として、実質的に、より皮膚適合性となる。洗浄作用は、グリースおよび潤滑油に対してのみ高い汚れ結合能を有する研磨剤により補助される。加脂物質(refatting substance)により、皮膚炎の危険性が低下する。
【実施例3】
【0054】
【表4】

【0055】
混合物は、78℃の滴点および0.1mmで214の透過性を有する。
【0056】
実施例3もまた、流動性のペーストであり、これは皮膚の中程度の汚れに用いられる。界面活性剤の組み合わせは、実施例2に比べて洗浄力の著しい低下を示す。PEG−7グリセリルココエートもまた、優れた乳化および発泡特性に加えて加脂活性(refatting activity)を有する。pHは、皮膚のpHに一致している。
【実施例4】
【0057】
【表5】

【0058】
実施例4は、固体からペースト様の手洗浄用クリームである。これは、煤煙、グリース、れき青等のような、最も重度のグリースおよびすすの除去のために設計されているる。高い洗浄力は、一方ではパラフィンオイル(DAB)の含量、他方では界面活性剤の効果的な組み合わせに起因する。パラフィンの割合が比較的高いにもかかわらず、洗浄剤は何ヶ月間も安定した状態を保つ。
【実施例5】
【0059】
【表6】

【0060】
実施例5の配合物は、れき青、塗料または接着剤のような、強く接着している汚れを除去するための、ペースト様の特殊な手洗浄剤を表す。この強力な洗浄効果は、二塩基性エステルの使用により達成される。コハク酸塩は、皮膚適合性界面活性剤として使用される。この成分にもかかわらず、洗浄剤は安定した状態を保つ。
【実施例6】
【0061】
本発明による洗浄体の研磨効果を分析した。試験法として、ASTM−G75−01として規格化されているミラー法(Miller method)を適用した。この方法により、粒子含有流体/固体混合物の摩損性の規格化された測定が可能になる。標準物質としては、金属標準試験試料の代わりにLDPEプラスチックのブロックを用いた。試験時間は10分に設定した。ペースト様の塊を得るために、洗浄体を1:1の比で水を用いてスラリー化した。
【0062】
図4は、漂白したクルミ殻粉、ポリエチレン粉末およびトウモロコシのコブミールと比較した研磨効果を示す。
【実施例7】
【0063】
汚れ結合活性を実証するために、本発明による研磨剤本体を標準的な汚れと混合し、その後ふるい中で水によりすすぎ洗いした。
【0064】
【表7】

【0065】
図5aは処理前の洗浄体を示し、図5bは処理後の洗浄体を示す。汚れの結合がはっきりと視認される。
【実施例8】
【0066】
皮膚適合性試験では、7日間適用した際の皮膚への効果を試験した。試験を行ったのは、
a) 水
b) 通常の食器洗い洗剤
c) b)による食器洗い洗剤中に懸濁させた本発明による洗浄体
d) b)による食器洗い洗剤中に懸濁させた漂白したクルミ殻粉
による処理の効果であった。
【0067】
対応する処理剤で毎日洗浄を行った。効果は、アトピー群および非アトピー群の両方で試験した。
【0068】
アトピー群ではTEWL(経皮水分喪失)が低下することが見出された。処理c)ではTEWLが6から3.2に低下し、一方処理d)を使用したときは6.4に上昇した。
【0069】
コルネオメトリー法で計測したところ、皮膚の水分含量がアトピー群で増加し、クルミ殻粉で処理したとき減少した。
【0070】
紅斑は全ての群で処理によりわずかに減少する。pH、皮脂および皮膚の弾力に明らかな差は見出されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100〜1000μmの平均粒径を有し、少なくとも50%水素添加されたヒマシ油を含有する洗浄体を2〜25重量%と、界面活性剤を2〜30重量%と、増粘剤を0.1〜10重量%と、水および必要に応じて更なる補助剤と、を含有する皮膚洗浄剤。
【請求項2】
前記ヒマシ油が完全にまたは部分的に水素添加されていることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚洗浄剤。
【請求項3】
前記洗浄体が、40℃を超える融点を有する、パラフィンワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックスまたはこれらの混合物を更に含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の皮膚洗浄剤。
【請求項4】
前記増粘剤が、ベントナイト類、キサンタンガム類、アクリレート類、アルギン酸塩類、セルロースエーテル類、カラギーナンおよびこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の皮膚洗浄剤。
【請求項5】
加脂剤、着色剤、香料、二酸化チタン、緩衝物質、防腐剤、流動パラフィン、グリセロール、酸化防止剤、および研磨剤のうち1種またはそれ以上の物質を更に含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の皮膚洗浄剤。
【請求項6】
100〜1000μmの平均粒径を有し、少なくとも50%水素添加されたヒマシ油を含有する、化粧品、特に皮膚洗浄剤の調製用の洗浄体。
【請求項7】
必要に応じ更なるワックスとともに、水素添加ヒマシ油を融解させる工程と、
融解物を液滴状に分散または噴霧する工程と、
を含む、請求項6に記載の洗浄体を調製するプロセス。
【請求項8】
化粧品、特に皮膚洗浄剤の調製用の、100〜1000μmの平均粒径を有し、少なくとも50%水素添加されたヒマシ油を含有する洗浄体の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate


【公表番号】特表2010−520258(P2010−520258A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552197(P2009−552197)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052659
【国際公開番号】WO2008/107453
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(509251305)ペーター グレーフェン ハウトシュッツ ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー (1)
【Fターム(参考)】