説明

盗難車両検索システムおよび盗難車両検索システムにおける検索方法

【課題】航空機や人工衛星から撮像した画像を用いて盗難車両の検索を可能にする。
【解決手段】車両5に固有な識別コードを図形パターンで表現した識別情報担持手段11を車両5の上方から光学的に読取可能となるように車両5に設ける。航空機または人工衛星のような飛行物体3に搭載された撮像手段4で地上の画像が撮像され、航空機や人工衛星から撮像された画像が画像記憶手段1に蓄積される。端末装置6が識別コードを検索キーに用いて車両5を検索すると、端末装置6とは広域網7を介して通信可能な検索手段2が、検索キーとして与えられた識別コードに対応する図形パターンを含む画像を抽出する。また、検索手段2は、当該画像と画像内での車両5の位置情報とを端末装置6に画面表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行機や人工衛星のような飛行物体により撮像された画像を用いて盗難被害にあった乗用車や重機のような車両の所在を検索する盗難車両検索システムおよび盗難車両検索システムにおける検索方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用車や重機のような車両の盗難被害が増加し、この種の盗難車両が国内の僻地などに運搬されて使用されているという報告がなされている。盗難車両を探し出す技術としては、車両の上空から認識できる部位に車両番号に対応付けたバーコードを設けておき、路上を走行する車両に付けたバーコードをスキャナにより読み取り、バーコードから車両番号を検索することが考えられている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、スキャナを備える道路設置端末に盗難車両のような検索する車両番号を送信してバーコード・車両番号比較テーブルに記憶させておき、スキャナでバーコードを読み取るたびにバーコード・車両番号比較テーブルを検索して一致の有無を判断している。つまり、車両がスキャナの読み取り範囲を通過したときに車両を検出するようにしている。
【特許文献1】特開平5−201311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の技術は、スキャナの読み取り範囲を比較的狭い範囲に限定することを想定した技術であって、スキャナを設置している位置が着目する車両を検出した位置になっている。したがって、車両からバーコードを読み取るたびにバーコード・車両番号比較テーブルを検索しなければならず、交通量の多い場所では道路設置端末の処理負荷が大きくなるという問題が生じる。この問題は、道路設置端末にあらかじめ登録された情報を用いて車両を検索するために生じると考えられる。
【0004】
また、スキャナの読み取り範囲は比較的狭いから、広い範囲を網羅するには多数台の道路設置端末を設けることが必要になり、実用になるシステムを構築するには膨大な費用を要するという問題もある。この問題は、車両の位置を追跡するためにスキャナの読み取り範囲を狭く設定し、着目する車両を検出した道路設置端末の位置を車両の位置としなければならないために生じると考えられる。
【0005】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、着目する車両の識別コードを検索キーに用いて検索時点までに存在している情報から車両を検索することにより多数台の車両が通過するたびに検索する処理よりも処理負荷を軽減し、しかも既存の情報を用いながらも僻地を含む広域で車両を検索することを可能にして従来構成よりも構築費用を低減することができる盗難車両検索システムおよび盗難車両検索システムにおける検索方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、航空機または人工衛星のような飛行物体に搭載された撮像手段を用いて撮像された所定期間分の画像を撮像位置の位置情報とともに蓄積することにより地上の画像を網羅して蓄積する画像記憶手段と、車両に付設され車両の上方から光学的に読取可能であって車両に固有な識別コードを図形パターンとして表現した識別情報担持手段と、識別コードと図形パターンとを対応付けて登録したコード記憶手段と、画像記憶手段に蓄積された画像内に識別情報担持手段が存在するときに図形パターンを抽出するとともにコード記憶手段に照会して識別コードを抽出する識別コード抽出手段と、広域網を通して端末装置と通信可能であって端末装置から要求された車両を含む画像を画像記憶手段から抽出して端末装置に車両の位置情報とともに画面表示させる検索手段とを有し、検索手段は、端末装置から識別コードが検索キーとして入力されると識別コード抽出手段により抽出された識別コードを持つ図形パターンが含まれる画像を位置情報とともに画像記憶手段から抽出して端末装置に提示することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記識別情報担持手段に表現された前記図形パターンは、不可視であることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明では、請求項1または請求項2の発明において、前記識別情報担持手段は、車両の上面に貼着されるシート状に形成され前記図形パターンは特定色で印刷されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明では、請求項1または請求項2の発明において、前記識別情報担持手段は、車両の上面であって前記図形パターンは特定色で塗装されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明では、請求項1または請求項2の発明において、前記識別情報担持手段は、車両の上面に貼着されるシート状に透明材料で形成され前記図形パターンは偏光性を図形パターン以外の部位とは異ならせてあり、前記撮像手段は、図形パターンを他の部位から分離して抽出する検光手段を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明では、請求項1または請求項2の発明において、前記識別情報担持手段は、発光色が特定色である複数個の発光ダイオードが配列され車両におけるウインドシールドの周部に配置された発光装置であり、前記図形パターンは各発光ダイオードの点灯と消灯とのパターンにより表現されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明では、請求項3または請求項4または請求項6のいずれかの発明において、前記撮像手段が受光する光のうち特定色の成分を通過させる光学フィルタが付加されていることを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明では、請求項3または請求項4または請求項6のいずれかの発明において、前記撮像手段はカラー画像を出力し、前記撮像手段から出力されるカラー画像から特定色を電気的に分離する色抽出処理手段が付加されていることを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明では、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の盗難車両検索システムにおける検索方法であって、前記撮像手段により撮像された画像を前記画像記憶手段に格納する前に、前記識別コード抽出手段により画像内から車両に付設された前記識別情報担持手段に表現されている図形パターンを抽出し、次に前記コード記憶手段に照会して識別コードを抽出し、抽出した識別コードのインデックスファイルを各画像に対応付けて画像記憶手段に格納しておき、前記検索手段は、前記端末装置から識別コードが検索キーとして与えられると、インデックスファイルから当該識別コードを含む画像のうち最新の画像を選択し、選択された画像を前記端末装置に位置情報とともに提示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明の構成によれば、広域網を介して検索手段と通信可能な端末装置から検索キーとして識別コードを入力すると、識別コードに対応する図形パターンを含む画像が画像記憶手段から抽出され、抽出された画像が位置情報とともに端末装置に画面表示されるから、画像記憶手段に格納された既存の画像を用いて識別コードを備える車両の位置を検出することが可能になる。つまり、車両が通過するたびに個々の道路設置端末で照合処理を行う場合に比較すると、同程度の領域内に存在する車両から着目する車両の有無を検索する際の照合処理の処理負荷が小さくなる。
【0016】
また、端末装置は広域網を介して検索手段と通信し、識別コードを検索キーとして端末装置から検索手段に与え、検索手段では検索キーを受け取ると画像記憶手段から画像を抽出して端末装置に提示し、端末装置に画面表示させるから、広域網としてインターネットを用い、検索手段を備えるコンピュータサーバを設けておけば、利用者はインターネットのサービスを享受することができる端末装置を用いてコンピュータサーバにアクセスするだけで、盗難車両を含む画像を画面表示させることができる。言い換えれば、インターネットのサービスの一つとして盗難車両を検索するサービスを享受することができる。
【0017】
さらに、国内全土や全世界規模の画像は、インターネットのサービスとしてすでに提供されているから、既存のサービスで提供されている画像を利用して盗難車両を検索するシステムを構築することができ、道路設置端末を新規に設置する場合に比較すれば、システム構築に要する費用が大幅に少なく、しかも広域での盗難車両の検索が可能になる。
【0018】
請求項2の発明の構成によれば、図形パターンを不可視としているから、識別情報担持手段が車両のデザインを妨げることがなく、また、識別情報担持手段が設けられていることが車両の窃盗犯に気付かれにくく、識別情報担持手段が読取不能に改竄される可能性を低減することができる。
【0019】
請求項3の発明の構成によれば、識別情報担持手段が車両の上面に貼着されるシート状であるから車両の製造後に識別情報担持手段を簡単に取り付けることができる。
【0020】
請求項4の発明の構成によれば、識別情報担持手段が車両の上面であり図形パターンが塗装されるから、車両の製造時に車両に図形パターンを一体不可分に記述することができるから、図形パターンが改竄される可能性を大幅に低減される。
【0021】
請求項5の発明の構成によれば、識別情報担持手段が透明材料によりシート状に形成され、偏光性を用いて図形パターンを形成しているから、識別情報担持手段に図形パターンが記載されていることを窃盗犯に気付かれにくく、図形パターンを改竄される可能性が低減される。
【0022】
請求項6の発明の構成によれば、図形パターンをウインドシールドの周部に配置した複数個の発光ダイオードの点灯と消灯とにより表しているから、識別情報担持手段を設けている場所が気付かれにくく、窃盗犯による識別情報担持手段の破壊の可能性を低減することができる。しかも、識別情報担持手段が自発光するから遠方からでも情報の読取が容易であり、飛行機や人工衛星のような飛行物体に搭載した撮像手段で遠方から撮像するにもかかわらず容易に識別することのできる画像が得られる。しかも、夜間であっても識別情報担持手段の図形パターンを読み取ることが可能である。
【0023】
請求項7の発明の構成によれば、図形パターンを表現した特定色を光学フィルタで分離するから、撮像手段には図形パターンを表現している特定色以外はほとんど入射せず、撮像手段により撮像された画像から図形パターンを抽出する処理における処理負荷が軽減される。
【0024】
請求項8の発明の構成によれば、撮像手段から出力されるカラー画像から特定色を電気的に分離するから、光学フィルタを用いる場合よりも高い自由度で分離する色の指定が可能になる。
【0025】
請求項9の発明の方法によれば、画像記憶手段に画像を格納する際に、画像内から図形パターンを抽出して識別コードのインデックスファイルを作成しているから、端末装置から識別コードが検索キーとして与えられたときに、インデックスファイルを用いることにより、当該識別コードに対応した図形パターンを含む画像を短時間で容易に抽出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本実施形態は、図1に示すように、航空機あるいは人工衛星のような飛行物体3に搭載された撮像手段4により撮像された地上の画像を用いて車両(自動車および重機)5を探し出すものであって、画像を蓄積する画像記憶手段1と、画像記憶手段1に蓄積された画像から着目する車両5を抽出する検索手段2とを主な構成要素としている。また、本実施形態の盗難車両検索システムは、検索手段2に対して着目する車両5を端末装置6から指定し、検索結果を端末装置6に画面表示する構成を採用している。
【0027】
画像記憶手段1および検索手段2は、コンピュータサーバ(以下、「サーバ」と略称する)として構成され、インターネットのような広域網7を通して端末装置6にサービスを提供する。画像記憶手段1と検索手段2とは1つのサーバに設けることが可能であるが、本実施形態では、2つのサーバに分けて設けているものとする。したがって、画像記憶手段1として機能する既存のサーバの画像データを用い、検索手段2として機能するサーバを付加することにより、盗難車両検索システムを構築することができる。
【0028】
画像記憶手段1は、上述したように、飛行物体3に搭載した撮像手段4により撮像した静止画像を蓄積しており、所定期間(たとえば、1ヶ月)で国内全土(場合によっては全世界規模)の地上の画像を網羅して蓄積している。撮像手段4で撮像される地上の範囲は、撮像手段4の視野角と撮像時の飛行物体3の高度とによるが、日夜運行されている多数の航空機や日夜飛行している多数の人工衛星にそれぞれ撮像手段4を搭載し、多数台の撮像手段4で撮像した画像を所定期間に亘って画像記憶手段1に蓄積することにより、国内全域はいうに及ばず地球上のほぼ全域の地上の画像を集積することが可能になる。また、画像記憶手段1に蓄積される画像は、撮像条件によって生じる歪みが補正された状態で格納されている。この補正処理は要旨ではないから説明しない。
【0029】
この種の画像記憶手段1は、インターネット上で画像データベースとしてのサービス提供に用いられており、端末装置6を用いて場所を指定することにより、当該場所を含む地上の画像を画面表示することが可能になっている。なお、撮像手段4は地上に存在する物体を10cm程度よりも小さい間隔で識別できる分解能を持つことが望ましい。また、後述するように、画像記憶手段1に蓄積された画像から車両5を抽出する際には、画像内の特定色の領域に着目するから、特定色の領域を分離するのが望ましい。特定色を分離する構成としては、図2に示すように、撮像手段4が受光する光のうち特定色の成分を通過させる光学フィルタ8aを用いるか、撮像手段4としてカラー画像を出力するものを用いるとともに撮像手段4で撮像された画像(画像信号)から特定色を電気的に分離する色抽出処理手段8bを用いる。
【0030】
特定色の分離に光学フィルタ8aを用いると、特定色以外は撮像手段4にほとんど入射せず、撮像手段4の出力を特定色に関する濃淡画像として扱うことができるから、カラー画像を用いる場合に比較して情報量を低減させることができ、処理負荷が軽減されることになる。ただし、地上の画像を提供するにはカラー画像あるいはモノクロ画像が必要であるから、画像記憶手段1の記憶容量の低減にはならない。
【0031】
また、特定色の分離に色抽出処理手段8bを設けると、撮像手段4としてカラー画像を出力するものが必要であり、また各色別の画像信号を処理することになるから、撮像手段4で撮像した画像に対する処理負荷は光学フィルタ8aを用いる場合よりも増加するが、1つの画像を多目的に用いることができ、画像の費用対効果を高めることができる。しかも、光学フィルタ8aを用いると抽出可能な色が固定的に決まるが、電気的に特定色を抽出する色抽出処理手段8bを用いると、色空間内で抽出する色範囲を自由に変更することができるから、同じ画像から目的に応じてさまざまな色範囲の画像を抽出することが可能になる。
【0032】
色抽出処理手段8bは、画素を構成するR(赤)、G(緑)、B(青)の各色の受光強度の比率により色範囲を指定するものであって、通常は着目する特定色を含む色相、彩度、明度について、それぞれ上限と下限とを指定することにより、色空間内での色範囲を指定できるように構成されている。この色抽出処理手段8bは、カラー画像の各画素を構成する各色の受光強度の比率を用いて演算により色範囲を指定するから、光学フィルタ8aに比較すると、抽出しようとする色範囲の境界が急峻であって、不要色を除去する性能が高く、画像内から不要領域を除去する性能は光学フィルタ8aを用いる場合よりも高くなる。なお、この種の画像処理技術は、周知であるから詳述しない。
【0033】
特定色の分離に光学フィルタ8aを用いる場合は撮像手段4に付設する必要があるが、特定色の分離に色抽出処理手段8bを用いる場合は撮像手段4とは別に設けることが可能であって、たとえば画像記憶手段1に蓄積された画像から特定色で表された情報を抽出する際に、色抽出処理手段8bで指定した特定色に関する濃淡画像を生成し、この濃淡画像から特定色で表された情報を抽出するようにしてもよい。
【0034】
ところで、検索手段2は、車両番号のような車両5に固有な識別コードを検索キーに用い、当該識別コードを持つ車両5が含まれている画像を画像記憶手段1から抽出するとともに、当該画像内で車両5の位置を提示し、さらに、車両5の位置を特定する位置情報(たとえば、緯度と経度)を提示する。画像に位置情報を対応付ける処理は、画像の撮像時の飛行物体3の位置と地図情報とを用いて画像記憶手段1に蓄積されるすべての画像に対して行われ、画像内の位置を指定すれば、指定された位置の位置情報が提示されるようになっている。画像に位置情報を対応付ける処理については周知であるから説明しない。
【0035】
上述したように、検索手段2では、指定された識別コードに対応する車両5が含まれた画像を、画像記憶手段1に蓄積された画像から抽出するから、どの画像にどの車両5が含まれているかを識別することが必要である。そこで、本実施形態では、検索が必要になる各車両5に固有の識別コードを上方から光学的に読取可能な図形パターンによって表現した識別情報担持手段11を付設している。識別情報担持手段11では、飛行物体3に搭載した撮像手段4で撮像した画像内で情報担持手段11の識別コードの内容を読み取ることができるように、図形パターンを設定している。
【0036】
図形パターンとしては、たとえば2次元バーコードを用いることが考えられるが、本実施形態では、飛行物体3から撮像した画像を用いており高い分解能が得られないから、複雑な図形は図形パターンに適さない。したがって、30〜40個程度の升目を有した2次元パターンを用いている。たとえば、図3に示すように、4×6個の升目を有する2次元パターンを用い、各升目で2値の情報を表すようにすれば、最大で224種類(約1600万種類)の識別が可能になる。また、1個の升目の大きさは、飛行物体3に搭載した撮像手段3で撮像した画像内において判別可能となるサイズ(たとえば、10cm四方よりも大きいサイズ)に形成する。
【0037】
識別情報担持手段11は、車両5とは別に形成したシート状の部材として提供し、このシート状の部材に上述した図形パターンを形成して車両5の上面(屋根が望ましいが、ボンネットでもよい)に貼着すればよい。また、車両5を識別情報担持手段11に用い、塗装によって上述した図形パターンを形成してもよい。あるいはまた、車両5のウインドシールド(フロントウインドウまたはリアウインドウ)の周囲下部などに複数個の発光ダイオードを配列した発光装置を埋込配置し、発光ダイオードの点灯と消灯とのパターンによって図形パターンを表現してもよい。あるいはまた、ダッシュボードに発光装置を取り付けてもよい。これらの構成では発光装置から上方に光を放射することになる。また、ウインドシールドの周部に発光ダイオードを埋込配置する場合には図形パターンは1次元パターンになる。また、発光ダイオードの配置間隔は撮像手段4で撮像した画像内で各発光ダイオードを区別できる程度(たとえば、10cm以上)に設定される。
【0038】
ところで、識別情報担持手段11に表現されている図形パターンは可視色で表現してもよいが、可視色で表現すると人が視認できるから、車両5の窃盗犯によって改竄される可能性が高くなる。また、図形パターンが可視色で表記されていると車両5のデザインに制約が生じることになる。したがって、図形パターンの存在が意識されないように、図形パターンを不可視に表現することが望ましい。図形パターンを不可視に表現するには、赤外光や紫外光によって読取可能となるように図形パターンを表す。
【0039】
たとえば、発光装置を用いる場合には赤外線発光ダイオードあるいは紫外線発光ダイオードを発光ダイオードに用いる。この場合、赤外線あるいは紫外線を透過させる材料で形成した黒色のフィルタを発光ダイオードの前面に配置すれば図形パターンの存在をより確実に隠蔽することができる。また、シート状の部材を用いる場合や塗装で図形パターンを表す場合には、赤外線に対する反射率の異なる同色の材料を用いて図形パターンを表すのが望ましい。赤外線や紫外線を用いる場合に、撮像手段4として赤外線あるいは紫外線に感度を有するものを用いるのはいうまでもない。
【0040】
なお、上述の構成例では、特定色(赤外線、紫外線も含む)で図形パターンを表現しているが、色以外の光学的性質を用いて図形パターンを表現してもよい。たとえば、透明材料からなるシート状の部材を識別情報担持手段11に用い、偏光性を利用して図形パターンを表現してもよい。すなわち、上述のように、複数の升目を形成するとともに各升目ごとに2値の情報を表すとすれば、各値を異なる偏光性で表現すればよい。たとえば、円偏光と直線偏光との偏光性の相違で2値を表すようにしておけば、偏光を検出する検光手段として機能する光学フィルタ8aを配置することによって、撮像手段4で撮像された画像から図形パターンを抽出することが可能になる。偏光性の相違は偏光性を検出するフィルタを用いなければ肉眼では視認できず、また識別情報担持部材11が透明材料であるから、図形パターンの存在が窃盗犯に知られにくく、図形パターンが改竄される可能性を低減することができる。
【0041】
上述したように、端末装置6では識別コードを検索キーとして検索手段2に与えるが、車両5に付設した識別情報担持手段11では図形パターンを用いているから、識別コードと図形パターンとを対応付けることが必要である。そこで、識別コードと図形パターンとを対応付けて登録したコード記憶手段12を設けてある。コード記憶手段12には、識別情報担持手段11を車両5に付設する際に、車両5に固有の識別コードと、車両5に設ける識別情報担持手段11に表現された図形パターンとが対応付けて登録される。
【0042】
複数の升目を用い各升目ごとに2値を表している場合には、升目の位置がビット位置に相当するから、図形パターンは単純にビット列として表すことができ、図形パターンをパターンマッチングによって読み取る場合に比較すると、図形パターンの情報を読み取る処理が簡単になる。すなわち、画像内において図形パターンが存在する部位を抽出し(輪郭線のパターンマッチングなどを用いる)、図形パターンのスケールおよび向きを調節し、各升目ごとの値を読み取れば、図形パターンにより表された情報を読み取ることができる。
【0043】
検索手段2では、端末装置6から入力された検索キーとしての識別コードを用いて当該識別コードに対応する図形パターンを含む画像を抽出するに際して、次の2種類の手順が考えられる。すなわち、第1の手順としては、識別コードをコード記憶手段12に照合することにより識別コードに対応する図形パターンを抽出し、この図形パターンを各画像に照合することが考えられ、第2の手順としては、各画像からあらかじめ図形パターンを抽出して、抽出した図形パターンをコード記憶手段12に照合して識別コードを抽出することで、各識別コードを含む画像のリストからなるインデックスファイル(インバーテッドファイル)13を作成しておき、識別コードが与えられると、インデックスファイル13に照合して画像のリストを抽出することが考えられる。本実施形態では、第2の手順を用いる。
【0044】
すなわち、撮像手段4により撮像した画像を画像記憶手段1に記憶させると、まず空き時間を利用して未処理の画像から図形パターンを抽出する。この処理は、識別コード抽出手段14が行う。識別コード抽出手段14は、図形パターン以外の情報をできるだけ除去するために、光学フィルタ8aを用いて得た画像あるいはカラー画像から特定の色範囲を抽出した画像を用いて図形パターンを抽出する。市街地では1枚の画像から多数個の図形パターンが抽出される。識別コード抽出手段14は、画像から抽出した各図形パターンをコード記憶手段12に照合して識別コードを抽出する。
【0045】
このようにして、各画像に含まれる図形パターンに対応した識別コードが抽出されると、識別コードについて整理することで、各識別コードに対応した画像のリストをインデックスファイル13として作成することができる。なお、インデックスファイル13を作成する際に、画像内で各図形パターンが存在する位置を特定することができるから、図形パターンの抽出時に位置情報を抽出しインデックスファイル13に位置情報を含めておくのが望ましい。
【0046】
このようなインデックスファイル13を作成しておけば、端末装置6から与えられる識別コードを検索キーとして、当該識別コードに対応する図形パターンを含む画像を容易に検索することができる。ここで、画像記憶手段1には、識別コードに対応する図形パターンを含む画像が複数枚含まれている可能性があるから、端末装置6の画面に表示するにあたっては、いずれか1枚を選択するのが望ましい。具体的には、検索された画像をサムネイルの形で画面上に表示し、選択したものを拡大して表示する動作と、検索された画像が複数枚存在するときに最新の画像のみを表示する動作とを選択することが可能になっている。後者の表示を行えば、車両5の現在位置にもっとも近いと考えられる画像が得られ、前者の表示を行えば、車両5の移動の履歴を追跡することが可能になる。
【0047】
インデックスファイル13には、画像ごとに識別コードの存在位置の位置情報が含まれているから、端末装置6に画像を画面表示する際に、位置情報を用いて画像内での位置を示す。画像内での位置は画像内に矢印などのマークを表示することによって示す。また、画像内においてマークの近傍には、位置情報(緯度および軽度、あるいは国名や地域名)を付加情報として表示する。
【0048】
画像記憶手段1と検索手段2とを中心とするコンピュータサーバの動作を簡単にまとめる。図4に示すように、撮像手段4で撮像された画像が画像記憶手段1に格納されると(S1)、識別コード抽出手段14が当該画像から図形パターンを抽出し(S2)、さらにコード記憶手段12に照合して識別コードを抽出する(S3)。識別コードを抽出した後には識別コードに画像を対応付けたインデックスファイル13を生成し(S4)、端末装置6からの検索の指示を待つ。
【0049】
端末装置6から広域網7を通して識別コード(たとえば、車両番号を用いる)が検索キーとして入力されると(S5)、インデックスファイル13に照合して画像を抽出する(S6)。画像が抽出されると、画像内において識別コードに対応する車両5の存在位置を示すマークと位置情報とを付加情報として画像に追加し(S7)、付加情報を追加した画像を広域網7を通して端末装置6に送信し、端末装置6に画面表示させる(S8)。
【0050】
ところで、インデックスファイル13を生成する代わりに、端末装置6から検索が要求されるたびに識別コードに対応する図形パターンを各画像から検索するようにしてもよい。この場合、画像記憶手段1に蓄積されている膨大な画像から着目する図形パターンを探し出すとすれば、処理負荷がきわめて大きくなるから、場所の範囲や日時の範囲を指定するのが望ましい。この場合の手順を図5に示す。
【0051】
端末装置6から広域網7を通して識別コードが検索キーとして入力され、かつ検索する場所の範囲と日時の範囲とが指定されると(S1)、場所および日時の範囲に対応する画像を画像記憶手段1から抽出する(S2)。次に、抽出した画像内に含まれる図形パターンを抽出し(S3)、抽出された図形パターンをコード記憶手段12に照合することによって、画像内に含まれる車両5の識別コードを検索する(S4)。ここで、画像から抽出された識別コードの中に端末装置6から検索キーとして入力された識別コードと一致するものがあれば、当該画像に付加情報を追加し(S5)、付加情報を追加した画像を広域網7を通して端末装置6に送信して端末装置6に画像表示させる(S6)。
【0052】
なお、どちらの手順であっても、検索キーとして入力した識別コードを付与した車両5を含む画像が存在しないときには、端末装置6に対して該当なしの応答を行う。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック図である。
【図2】同上の要部ブロック図である。
【図3】同上に用いる識別情報担持手段の一例を示す図である。
【図4】同上の動作説明図である。
【図5】同上の他の動作例の動作説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1 画像記憶手段
2 検索手段
3 飛行物体
4 撮像手段
5 車両
6 端末装置
7 広域網
8a 光学フィルタ
8b 色抽出処理手段
11 識別情報担持手段
12 コート記憶手段
13 インデックスファイル
14 識別コード抽出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機または人工衛星のような飛行物体に搭載された撮像手段を用いて撮像された所定期間分の画像を撮像位置の位置情報とともに蓄積することにより地上の画像を網羅して蓄積する画像記憶手段と、車両に付設され車両の上方から光学的に読取可能であって車両に固有な識別コードを図形パターンとして表現した識別情報担持手段と、識別コードと図形パターンとを対応付けて登録したコード記憶手段と、画像記憶手段に蓄積された画像内に識別情報担持手段が存在するときに図形パターンを抽出するとともにコード記憶手段に照会して識別コードを抽出する識別コード抽出手段と、広域網を通して端末装置と通信可能であって端末装置から要求された車両を含む画像を画像記憶手段から抽出して端末装置に車両の位置情報とともに画面表示させる検索手段とを有し、検索手段は、端末装置から識別コードが検索キーとして入力されると識別コード抽出手段により抽出された識別コードを持つ図形パターンが含まれる画像を位置情報とともに画像記憶手段から抽出して端末装置に提示することを特徴とする盗難車両検索システム。
【請求項2】
前記識別情報担持手段に表現された前記図形パターンは、不可視であることを特徴とする請求項1記載の盗難車両検索システム。
【請求項3】
前記識別情報担持手段は、車両の上面に貼着されるシート状に形成され前記図形パターンは特定色で印刷されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の盗難車両検索システム。
【請求項4】
前記識別情報担持手段は、車両の上面であって前記図形パターンは特定色で塗装されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の盗難車両検索システム。
【請求項5】
前記識別情報担持手段は、車両の上面に貼着されるシート状に透明材料で形成され前記図形パターンは偏光性を図形パターン以外の部位とは異ならせてあり、前記撮像手段は、図形パターンを他の部位から分離して抽出する検光手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の盗難車両検索システム。
【請求項6】
前記識別情報担持手段は、発光色が特定色である複数個の発光ダイオードが配列され車両におけるウインドシールドの周部に配置された発光装置であり、前記図形パターンは各発光ダイオードの点灯と消灯とのパターンにより表現されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の盗難車両検索システム。
【請求項7】
前記撮像手段が受光する光のうち特定色の成分を通過させる光学フィルタが付加されていることを特徴とする請求項3または請求項4または請求項6のいずれか1項に記載の盗難車両検索システム。
【請求項8】
前記撮像手段はカラー画像を出力し、前記撮像手段から出力されるカラー画像から特定色を電気的に分離する色抽出処理手段が付加されていることを特徴とする請求項3または請求項4または請求項6のいずれか1項に記載の盗難車両検索システム。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の盗難車両検索システムにおける検索方法であって、前記撮像手段により撮像された画像を前記画像記憶手段に格納する前に、前記識別コード抽出手段により画像内から車両に付設された前記識別情報担持手段に表現されている図形パターンを抽出し、次に前記コード記憶手段に照会して識別コードを抽出し、抽出した識別コードのインデックスファイルを各画像に対応付けて画像記憶手段に格納しておき、前記検索手段は、前記端末装置から識別コードが検索キーとして与えられると、インデックスファイルから当該識別コードを含む画像のうち最新の画像を選択し、選択された画像を前記端末装置に位置情報とともに提示することを特徴とする盗難車両検索システムにおける検索方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−269101(P2008−269101A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108615(P2007−108615)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】