説明

監視システム、およびコントローラ

【課題】異常発生時に、速やかに安全を確認して運転を再開可能な監視技術を提供する
【解決手段】光軸を形成する複数組の投光器および受光器をコントローラに接続し、コントローラから制御信号を出力して、光を投光させ、光軸での遮蔽物の有無を検出する。このとき、受光器は制御信号を受け取ると、光の検出結果を返すだけでなく、制御信号を受信した旨の信号(受光器応答信号)を出力する。こうすれば、受光器が故障した場合には、受光器応答信号が帰ってこなくなるので、コントローラは直ちに故障を検出することができる。その結果、異常の発生時には、その原因を速やかに取り除いて、運転を再開することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投光器および受光器の組を複数箇所に設けて、それぞれに光軸を形成するとともに、投光器および受光器をコントローラに接続することによって、各光軸上での遮蔽物の有無を監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
投光器と受光器とを向かい合わせて光軸を形成し、投光器からの光を受光器で受光できるか否かを監視しておけば、光軸上を何らかの物体が遮ったことを、直ちに検出することができる。こうした原理を利用して、投光器および受光器の組を複数箇所に設置するとともに、投光器および受光器の動作をコントローラで監視することにより、複数の設置箇所を同時に監視可能とする監視システムが提案されている(特許文献1、特許文献2など)。
【0003】
これら監視システムでは、コントローラから制御することによって、それぞれの投光器で投光動作を行わせるとともに、対応する受光器では投光器からの光を受け取ったか否かを検出する。そして、全ての受光器で光が検出できた場合には、コントローラからは、正常状態である旨の監視結果が出力されるが、光を検出できない受光器が存在していた場合には、異常が発生した旨の監視結果が出力されるようになっている。また、コントローラから出力される監視結果は、例えば製造ラインの制御装置や、工作機械の制御装置などに入力されており、これら制御装置は異常が発生した旨の監視結果を受け取ると、直ちに、製造ラインや工作機械などの運転を停止できるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開平2−138822号公報
【特許文献2】特開平2−143115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した提案の監視システムでは、異常の発生を検出すると、製造ラインや工作機械などの運転を直ちに停止させることは可能であるものの、その後、速やかに安全を確認して運転を再開することは、必ずしも容易ではないという問題があった。すなわち、運転が停止されたときに、投光器と受光器との間に何らかの物体が残っていれば、その物体が原因であることは明らかなので、その物体を取り除いてやることで直ちに運転を再開することが可能である。ところが、いずれの投光器と受光器との間にも、それらしい物体が残っていなかった場合には、何かが光軸を過ぎった後に、何処かに紛れ込んでいる可能性が考えられる。あるいは、いずれかの受光器が故障している可能性も考えられる。前者の場合であれば、光軸を過ぎった物体が何処か危険な箇所に紛れ込んでいないことを確認する必要があり、後者の場合であれば、故障した受光器の有無を確認しなければならない。もちろん、両方の可能性が考えられるから、運転を再開するためには、どちらも確認する必要がある。加えて、受光器の故障は外見からでは分からないことが多いので、受光器が故障しているか否かを確認するためには、それなりの時間がかかってしまう。このため、異常の発生を検出して運転が停止された場合に、直ぐには安全を確認して運転を再開することが困難な場合があった。
【0006】
この発明は上記のような事情に鑑みて完成されたものであり、その目的は、異常の発生を検出して運転が停止された場合に、速やかに安全を確認して運転を再開することが可能な監視技術を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の監視システムは次の構成を採用した。すなわち、
複数の投光器と、該各々の投光器に対して向かい合わせに設けられて各々に光軸を形成する複数の受光器と、該投光器および該受光器に向かって制御信号を出力することにより、該投光器における投光動作および該受光器における受光動作を制御するコントローラとを備え、該光軸上での遮蔽物の有無を監視する監視システムにおいて、
前記受光器は、前記コントローラからの前記制御信号を受け取ると、該制御信号を受信した旨の受光器応答信号と、前記投光器からの光の検出結果を表す検出結果信号とを、該コントローラに返信する返信手段を備えており、
前記コントローラは、
前記各々の受光器から受け取った前記検出結果信号に基づいて、前記光軸での遮蔽物の有無を表す監視信号を出力する監視信号出力手段と、
前記受光器応答信号の有無に基づいて、前記各々の受光器を識別した状態で該受光器の動作不良を検出し、動作不良の受光器が検出された場合には、該受光器を特定した状態で、動作不良の受光器が発生した旨の受光器動作不良信号を出力する受光器動作不良信号出力手段と
を有することを特徴とする。
【0008】
また、上記の本発明の監視システムに対応する監視方法は、
複数の投光器と、該各々の投光器に対して向かい合わせに設けられて各々に光軸を形成する複数の受光器と、該投光器および該受光器に向かって制御信号を出力することにより、該投光器における投光動作および該受光器における受光動作を制御するコントローラとを用いて、該光軸上での遮蔽物の有無を監視する監視方法において、
前記コントローラから前記複数の投光器および前記複数の受光器に対して前記制御信号を出力する工程と、
前記受光器で前記制御信号を受け取ると、該制御信号を受信した旨の受光器応答信号と、前記投光器からの光の検出結果を表す検出結果信号とを、前記コントローラに向かって出力する工程と、
前記受光器での動作不良を、該各々の受光器を識別した状態で、前記受光器応答信号の有無に基づき前記コントローラによって検出し、動作不良の受光器が検出された場合には、該受光器を特定した状態で、動作不良の受光器が発生した旨の受光器動作不良信号を、該コントローラから出力する工程と、
前記各々の受光器からの前記検出結果信号を前記コントローラで受け取ることによって、前記光軸での遮蔽物の有無を表す監視信号を、該コントローラから出力する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
かかる本発明の監視システムおよび監視方法においては、複数の投光器および受光器を互いに向かい合わせに設けることで、それぞれに光軸を形成しておくとともに、投光器および受光器は何れもコントローラに接続しておく。そして、コントローラから制御信号を出力することによって、投光器に投光動作を行わせる。また受光器では、コントローラからの制御信号を受け取ると、制御信号を受信した旨の信号(受光器応答信号)をコントローラに向かって出力するとともに、投光器からの光が受光されたか否かの検出結果を表す信号(検出結果信号)を、コントローラに向かって出力する。コントローラでは、それぞれの受光器からの受光器応答信号に基づいて、各受光器での動作不良の有無を検出し、動作不良の受光器が検出された場合には、その受光器を特定した状態で、動作不良の受光器が発生した旨の信号(受光器動作不良信号)を出力する。また、各々の受光器からの検出結果信号を受け取って、各光軸を遮る遮蔽物の有無を表す監視信号を出力する。
【0010】
こうすれば、何れかの光軸が遮蔽物によって遮られるなどの異常が発生した場合には、直ちにこれを検出することが可能となる。また、異常が発生した際には、受光器応答信号を確認することで、異常の原因が受光器の動作不良によるものか否かを容易に判断することができる。そして、受光器の動作不良であった場合には、受光器を交換すればよく、受光器の動作不良でなかった場合には、何らかの遮蔽物が紛れ込んでいないことを確認すればよい。このように、異常が発生した場合には、直ちに的確な措置を執ることができるので、速やかに監視動作を再開することが可能となる。加えて、コントローラは制御信号を出力するだけで、特別な信号を出力することなく、受光器が正常に動作しているか否かを、常に確認しておくことができる。このため、受光器の故障が発生した場合でも、簡単にしかも速やかに検出することができ、その結果、速やかに監視動作を開始することが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明の監視システムにおいては、次のようにして、投光器での動作不良の有無を検出するようにしても良い。先ず、投光器では、コントローラからの制御信号を受け取ると、光の投光を開始するとともに、制御信号を受信した旨の信号(投光器応答信号)を出力する。また、コントローラでは、投光器から受け取った投光器応答信号に基づいて、動作不良の有無を検出する。そして、動作不良の投光器が検出された場合には、その投光器を特定して、動作不良の投光器が発生した旨の信号(投光器動作不良信号)を出力することとしてもよい。
【0012】
こうすれば、異常が発生した原因が投光器の故障によるものであった場合でも、そのことを直ちに検出することができる。その結果、投光器を交換して、速やかに監視動作を再開することが可能となる。加えて、コントローラは制御信号を出力するだけで、特別な信号を出力することなく、投光器が正常に動作しているか否かを、常に確認しておくことができる。その結果、投光器の故障に対しても、簡単にしかも速やかに対応することが可能となる。
【0013】
また、本発明の監視技術は、次のようなコントローラとしての態様で把握することも可能である。すなわち、本発明のコントローラは、
複数の投光器と、該各々の投光器に向かい合わされて光軸を形成する複数の受光器とに接続されて、該投光器における投光動作および該受光器における受光動作を制御することにより、該光軸上での遮蔽物の有無を監視するコントローラにおいて、
前記複数の投光器および前記複数の受光器に対して制御信号を出力する制御信号出力手段と、
前記制御信号を受けて前記受光器によって検出された光の有無を表す検出結果信号を、各々の該受光器から受け取ることによって、前記複数の光軸での遮蔽物の有無を表す監視信号を出力する監視信号出力手段と、
前記受光器が前記制御信号を受け取った旨の受光器応答信号を、各々の該受光器が識別された状態で受け取るとともに、該受光器応答信号の有無に基づいて該受光器での動作不良を検出し、動作不良の受光器が検出された場合には、該受光器を特定可能な状態で、動作不良の受光器が発生した旨の受光器動作不良信号を出力する受光器動作不良信号出力手段と
を備えることを特徴とする。
【0014】
また、上記の本発明のコントローラに対応する監視方法は、
複数の投光器と複数の受光器とを向かい合わせに設けて複数の光軸を形成し、該投光器および該受光器に制御信号を出力して該投光器における投光動作および該受光器における受光動作を行わせることにより、該光軸上での遮蔽物の有無を監視する監視方法において、
前記複数の投光器および前記複数の受光器に対して前記制御信号を出力する工程と、
前記受光器が前記制御信号を受け取った旨の受光器応答信号を、各々の該受光器が識別された状態で受け取るとともに、該受光器応答信号に基づいて該受光器での動作不良の有無を検出し、動作不良の受光器が検出された場合には、該受光器を特定可能な状態で、動作不良の受光器が発生した旨の受光器動作不良信号を出力する工程と、
前記制御信号を受けて前記受光器によって検出された光の有無を表す検出結果信号を、各々の該受光器から受け取ることによって、前記複数の光軸での遮蔽物の有無を表す監視信号を出力する工程と
を備えることを特徴とする。
【0015】
かかる本発明のコントローラおよび監視方法においても、複数の投光器および受光器を用いて複数組の光軸を形成し、それら投光器および受光器に向かって制御信号を出力する。すると、制御信号に対して受光器からは、受光器応答信号と、受光器が投光器からの光を受光した結果を表す検出結果信号とが出力されるので、これらの信号を検出する。そして、検出された受光器応答信号に基づいて、各受光器での動作不良の有無を検出するとともに、各々の受光器からの検出結果信号に基づいて、各光軸を遮る遮蔽物の有無を判断し、その判断結果を表す監視信号を出力する。また、動作不良の受光器が検出された場合には、その受光器を特定した状態で、動作不良の受光器が発生したことを表す受光器動作不良信号を出力する。
【0016】
こうすれば、何れかの光軸が遮蔽物によって遮られるなどの異常が発生した場合には、直ちにこれを検出するとともに、受光器応答信号を確認することで、異常の原因が受光器の動作不良によるものであるか否かを、直ちに判断することができる。そして、受光器の動作不良であれば受光器を交換し、受光器の動作不良でなければ、何らかの遮蔽物が紛れ込んでいないことを確認することで、速やかに安全を確認して、監視動作を再開することが可能となる。また、受光器が正常に動作しているか否かを、制御信号を出力するだけで、常に確認しておくことができるので、受光器の故障が発生したことを速やかに検出することができ、その結果、速やかに監視動作を開始することが可能となる。
【0017】
また、上述した本発明のコントローラにおいても、投光器での動作不良の有無を検出するようにしても良い。すなわち、投光器は、コントローラからの制御信号を受け取ると、光の投光を開始するとともに、制御信号を受信した旨の信号(投光器応答信号)を出力するようにしておく。そして、コントローラでは、投光器からの投光器応答信号を受け取ると、動作不良の有無を検出し、動作不良の投光器が検出された場合には、その投光器を特定して、動作不良の投光器が発生したことを表す投光器動作不良信号を出力することとしてもよい。
【0018】
こうすれば、投光器の故障が原因で異常が発生した場合でも、投光器の故障を直ちに検出することができ、その結果、投光器を交換して速やかに監視動作を再開することが可能となる。加えて、コントローラは制御信号を出力するだけで、投光器の動作が正常か否かを、常に確認しておくことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.装置構成:
B.本実施例の監視処理:
C.変形例:
【0020】
A.装置構成 :
図1は、本実施例の監視システム10の全体構成を示した説明図である。図示されているように、本実施例の監視システム10は、複数の投光器20と、複数の受光器30とが、コントローラ40に接続されて構成されている。それぞれの投光器20と受光器30とは、互いに位置に設けられて、光軸を形成するようになっている。図1に示した例では、P1ないしP4の4つの投光器20と、R1ないしR4の4つの受光器30とがコントローラ40に接続されており、P1の投光器20とR1の受光器30とは互いに向かい合わされて光軸L1を形成しており、P2の投光器20とR2の受光器30とは光軸L2を形成し、P3の投光器20とR3の受光器30とは光軸L3を、そして、P4の投光器20とR4の受光器30とは光軸L4を形成している。
【0021】
また、投光器20は、コントローラ40からの制御信号を受けて光を投光する機能を有しており、受光器30は、コントローラ40からの制御信号を受け取ると、光を受光しているか否かを検出して、検出結果を出力する機能を有している。従って、図示した監視システム10では、コントローラ40から投光器20および受光器30に制御信号を出力するとともに、受光器30から検出結果信号を受け取ることによって、光軸L1ないし光軸L4を遮る物体の有無を監視して、その結果を、監視信号として外部に出力することが可能となっている。加えて、詳細には後述するが、本実施例のコントローラ40は、接続されている受光器30が故障すると、そのことを直ちに検出して、故障した受光器30を示す信号(受光器動作不良信号)を外部に出力したり、あるいは表示灯42を点灯させるなどによって、何れの受光器30が故障したかを表示することが可能となっている。
【0022】
図2は、本実施例の投光器20の大まかな構造を示す説明図である。図示されているように、投光器20は、電力の供給を受けて光を放射する投光素子24と、投光素子24を駆動する投光回路22と、投光素子24から放出された光を略平行光に変換して外部に投光するための光学系26などから構成されている。
【0023】
投光回路22は、コントローラ40から制御信号を受け取ると、所定時間だけ投光素子24を駆動して光を放射させる。すると、投光素子24から放射された光は、光学系26によって略平行光に変換され、その結果、対向する位置に設けられた受光器30に向かって、光が投光されるようになっている。
【0024】
図3は、本実施例の受光器30の大まかな構成を示す説明図である。図示されているように、受光器30は、受光量を検出する受光素子34と、受光素子34を駆動する受光回路32と、光を受け取って受光素子34に集光するための光学系36などから構成されている。
【0025】
受光回路32は、コントローラ40から制御信号を受け取ると、制御信号を受け取った旨の受光器応答信号を出力するとともに、受光素子34を駆動して受光量を検出し、検出結果を表す検出結果信号を出力するようになっている。
【0026】
図4は、本実施例のコントローラ40の大まかな構成を示す説明図である。図示されているように、コントローラ40は、CPUを中心として、ROMや、RAM、水晶発振器CLKなどが、バスで相互にデータをやり取り可能に接続されて構成されている。また、バスには、外部機器とのデータのやり取りを行う入出力ポート(IOポート)や、外部に対してデータを出力する出力ポートなどが設けられており、1つの光軸を形成する投光器20および受光器30は、1つのIOポートに接続されている。図1に示したように、本実施例の監視システム10では、4組の投光器20および受光器30を用いて4つの光軸が形成されていることから、コントローラ40のIOポート1にはP1の投光器20およびR1の受光器30が接続され、IOポート2にはP2の投光器20およびR2の受光器30が、IOポート3にはP3の投光器20およびR3の受光器30が、そして、IOポート4にはP4の投光器20およびR4の受光器30が接続されるようになっている。
【0027】
また、コントローラ40は、後述する監視処理を行うことによって、光軸L1ないし光軸L4の各光軸における遮蔽物の有無を監視しており、監視結果は出力ポートから、外部機器に対して出力するようになっている。更に、監視処理では、受光器30の故障も検出可能となっている。そして、故障している受光器30が検出された場合には、故障した受光器30を特定した後、受光器30が故障したことを示す信号(受光器動作不良信号)を出力ポートから出力するとともに、バスに接続されたアンプ回路AMPを介して表示灯42を点灯させることにより、何れの受光器30が故障したかを表示することが可能となっている。
【0028】
こうした構成を有する本実施例のコントローラ40は、以下のような処理を行うことによって、光軸L1ないし光軸L4の各光軸での遮蔽物の有無を監視している。以下、本実施例のコントローラ40で行われる監視処理について説明する。
【0029】
B.本実施例の監視処理 :
図5は、本実施例のコントローラ40が、各光軸での遮蔽物の有無を監視するために行う監視処理の流れを示すフローチャートである。かかる処理は、コントローラ40に搭載されたCPUが、ROMに記憶されている監視プログラムを実行することによって行われる処理である。また、図6は、本実施例のコントローラ40が監視処理を行うことにより、投光器20および受光器30とデータをやり取りする様子を示したタイムチャートである。
【0030】
図5に示されるように、監視処理を開始すると、先ず初めに、先頭の光軸を1つ選択する(ステップS100)。図1に示したように、本実施例の監視システム10では、光軸L1ないし光軸L4の4つの光軸が形成されているから、先頭の光軸として光軸L1を選択する。
【0031】
次いで、選択した光軸を構成する投光器20および受光器30に向かって、制御信号を出力する(ステップS102)。ここでは、光軸L1が選択されているから、P1の投光器20およびR1の受光器30に向かって制御信号を出力する。また、図6の最上段には、光軸L1を構成するP1の投光器20およびR1の受光器30に対して、コントローラ40から制御信号を出力している様子が概念的に示されている。図示されるように、制御信号は、電圧が所定時間だけHi状態となるパルス信号の形態で出力される。
【0032】
本実施例のコントローラ40は、こうして、選択した光軸を構成する投光器20および受光器30に制御信号を出力すると、今度は、受光器30からの受光器応答信号を検出する(ステップS104)。ここで受光器応答信号とは、受光器30が制御信号を受け取った旨を示す信号である。本実施例の受光器30は、制御信号を受け取ると、所定の時間幅(少なくとも30μsec間)だけ、Hi状態を維持するようなパルス信号の形態で、受光器応答信号を出力するようになっている。このことと対応して、コントローラ40は制御信号を出力すると(ステップS104)、30μsecが経過した時点で、受光器30からの受光器応答信号の電圧状態を検出するのである。図6の最上段には、コントローラ40が制御信号を出力してから30μsecが経過した時点で、受光器応答信号を検出している様子が示されている。
【0033】
次いで、コントローラ40は、検出した受光器応答信号が正常値であるか否かを判断する(ステップS106)。受光器30が正常に動作していれば、受光器30からは、Hi状態の受光器応答信号が出力されるから、ステップS106では、検出した受光器応答信号がHi状態か否かを判断するのである。受光器応答信号が正常値でない(ステップS106:no)と判断されるのは、受光器30が故障している場合だけであり、大部分の場合は、正常値であると判断される。そこで、ここでは、受光器応答信号が正常値であると判断されたものとして(ステップS106:yes)、説明を続ける。尚、図6の最上段にも、受光器応答信号の電圧状態がHi状態(すなわち正常値)となっている様子が示されている。
【0034】
本実施例のコントローラ40は、以上のようにして受光器30からの受光器応答信号を検出すると(ステップS106)、続いて、受光器30からの検出結果信号を検出し(ステップS108)、受光しているか否かを判断する(ステップS112)。ここで検出結果信号とは、受光器30が光を受光したか否かについての検出結果を表す信号である。すなわち、受光器30は、制御信号を受け取ると上述した受光器応答信号を出力した後、受光素子34を用いて光の受光量を検出し、光を受光していた場合はHi状態の信号を出力し、逆に光を受光していなければLow状態の信号を出力するようになっている。そこで、コントローラ40は、受光器30から正常値(電圧状態がHi状態)の受光器応答信号を受け取ると(ステップS106:yes)、電圧状態がLow状態に下がるのを待って、その後、電圧状態がHi状態になるか否かを検出し(ステップS108)、そして、電圧状態がHi状態になれば、光を受光していると判断し(ステップS112:yes)、逆に、Hi状態にならなければ、光を受光していない(ステップS112:no)と判断するのである。
【0035】
尚、前述したように、制御信号は受光器30と同時に投光器20にも出力されており、投光器20は制御信号を受け取ると、受光器30に向かって光を投光する。従って、通常であれば(すなわち、投光器20と受光器30との間の光軸が、遮蔽物で遮られていなければ)、受光器30で光が検出され、受光器応答信号に続いて、光を受光した旨の検出結果信号が出力される。その結果、コントローラ40では、受光器30から正常値(Hi状態)の受光器応答信号を受け取った後は、ほとんどの場合、光を受光した旨(Hi状態)の検出結果信号を受け取ることになる。そこで、ここでは、光を受光していると判断されたものとして、以下に説明を継続する。図6の最上段にも、Hi状態の受光器応答信号を受け取った後、再び、Hi状態の検出結果信号を受け取っている様子が示されている。
【0036】
図5に示した本実施例の監視処理では、選択した1つの光軸について、以上のようにして、制御信号を出力した後、受光器応答信号と検出結果信号とを検出する。そして、この時、受光器応答信号が正常値であり(ステップS106:yes)、検出結果信号が、光を受光している旨の信号であった場合には(ステップS112:yes)、選択していた光軸が、コントローラ40に接続されている最後の光軸であるか否かを判断する(ステップS114)。
【0037】
ここでは、コントローラ40に接続された光軸L1ないし光軸L4の4つの光軸のうちの、先頭の光軸L1を選択した場合について説明しているから、当然、最後の光軸ではないと判断される(ステップS114:no)。そこで、この場合は、次の光軸を選択した後(ステップS116)、ステップS102に戻って、上述した一連の処理を行う。すなわち、新たな光軸として光軸L2を選択し(ステップS116)、光軸L2を構成する投光器20および受光器30に制御信号を出力した後(ステップS102)、受光器30からの受光器応答信号および検出結果信号を検出する(ステップS104、S108)。図6の上から2段目には、光軸L1の次に光軸L2が選択されて、光軸L2に対して制御信号を出力するとともに、受光器応答信号および検出結果信号を検出している様子が概念的に示されている。
【0038】
上述したように、受光器30が故障していない限り、受光器応答信号は正常値と判断され(ステップS106:yes)、また、光軸L2を遮蔽物が遮っていない限り、検出結果信号はHi状態となって、光を受光したものと判断されるので(ステップS112:yes)、再び、現在の光軸が最後の光軸か否かを判断する(ステップS114)。そして、最後の光軸でなければ(ステップS114:no)、次の光軸を選択した後(ステップS116)、ステップS102に戻って、続く一連の処理を行う。こうした処理を繰り返すことによって、光軸L1ないし光軸L4の全ての光軸について順番に、制御信号を出力し、受光器応答信号を検出し、続いて検出結果信号を検出する処理を行う。そして、光軸L4について、上述した処理を行ったら、ステップS114において、最後の光軸であると判断される。そこで、この場合は、接続された全ての光軸での監視結果を表す監視信号として、正常値(Hi状態)の監視信号を出力する(ステップS118)。その後、ステップS100に戻って、上述した一連の処理を行う。
【0039】
このように、本実施例のコントローラ40では、先頭の光軸L1から最後の光軸L4までを順番に選択しながら、制御信号を出力し、受光器応答信号および検出結果信号を検出する処理を繰り返す。そして、先頭から最後までの全ての光軸について、受光器応答信号が正常値であり、且つ、光を受光している旨の検出結果信号を確認すると、その度に、正常値(Hi状態)の監視信号を出力する処理を行う。図6には、光軸L1から光軸L4を順番に選択しながら、正常値(Hi状態)の監視信号を出力する処理を繰り返す様子が、太い実線で示されている。
【0040】
こうした処理を繰り返しているうちに、何れかの光軸を遮蔽物が遮ったものとする。すると、その光軸を構成する受光器30の受光素子34では、投光器20からの光を受光できなくなるから、受光器30からは、Low状態の検出結果信号が出力される。その結果、図5の監視処理では、ステップS112において、「光を受光していない」と判断される(ステップS112:no)。すると、コントローラ40は、遮光された光軸を特定した状態で、異常値(Low状態)の監視信号を出力した後、図5の監視処理を終了する。図6に示した光軸L2の部分には、検出結果信号がLow状態となったため、異常値の監視信号が出力される様子が、太い破線によって示されている。
【0041】
また、上述したようにして光軸L1から光軸L4を順番に監視しているうちに、何れかの受光器30で故障が発生したものとする。すると、その受光器30では、制御信号を受け取っても受光器応答信号を出力できなくなるので、図5のステップS104では、Hi状態の受光器応答信号を検出できず、ステップS106では、受光器応答信号が正常値ではないと判断される(ステップS106:no)。そして、この場合、コントローラ40は、該当する受光器30を特定するとともに、受光器30の動作不良が発生したことを示す受光器動作不良信号を出力する(ステップS110)。また、この時、コントローラ40の表示灯42は、該当する受光器30の表示灯42が点灯されて、何れの受光器30が故障したかが表示される。
【0042】
こうして、受光器動作不良信号を出力した後は、何れかの光軸が遮光された場合と同様に、該当する光軸を特定するとともに、異常値の監視信号を出力した後(ステップS120)、図5の監視処理を終了する。図6に示した光軸L3の部分には、受光器応答信号がLow状態となったため、該当する受光器30が特定されるとともに、異常値の監視信号が出力される様子が、太い一点鎖線によって示されている。
【0043】
以上に説明したように、図5に示した本実施例の監視処理では、コントローラ40に接続された複数の光軸を常に監視しており、何れかの光軸が遮蔽物によって遮られるか、若しくは受光器30の動作不良が発生すると、異常値の監視信号が出力されるようになっている。このため、監視信号を、製造ラインの制御装置や、工作機械の制御装置などに入力しておくことで、何らかの異常が発生した場合には、直ちに、製造ラインや工作機械などの運転を停止することが可能である。
【0044】
また、運転が停止された場合には、受光器動作不良信号が出力されているか否かを確認することで、運転が停止された原因が、何らかの遮蔽物に因って光軸が遮られたためか、受光器30の故障によるものかを直ちに判断することができる。このため、受光器30が故障していた場合には、故障した受光器30を交換することで、速やかに運転を再開することが可能となる。また、受光器30の故障によるものでなかった場合は、何らかの遮蔽物によって光軸が遮られたためと考えられる。そこで、該当する光軸に遮蔽物が残っていないかを確認し、遮蔽物が残っていた場合には、その遮蔽物を取り除くことで、直ちに運転を再開することができる。また、たとえ、遮蔽物が残っていなかった場合でも、受光器30が故障していない以上、何らかの物体が光軸を遮ったために運転が停止されたことは明らかなので、光軸を遮った物体が危険な部分に紛れ込んでいないことを確認するだけで、直ちに運転を再開することが可能となる。
【0045】
更に加えて、上述した本実施例の受光器30は、コントローラ40からの制御信号を受け取ると、光を受光しているか否かの検出結果を表す検出結果信号を出力するだけでなく、制御信号を受け取ったことを表す受光器応答信号も出力するようになっている。このため、コントローラ40は、制御信号を出力するだけで、受光器30での光の受光有無だけでなく、受光器30が正常に動作しているか否かについても、同時に確認することが可能である。その結果、何れかの光軸が何らかの遮蔽物によって遮られたり、あるいは何れかの受光器30が故障するなど、何らかの異常が発生した場合には、直ちにこれを検出することが可能となっている。しかも、上述したように、異常の原因を容易に特定することができるので、速やかに異常の原因を取り除いて、再び監視動作を開始することが可能となる。
【0046】
C.変形例 :
上述した本実施例の監視システム10には、次のような変形例を考えることができる。すなわち、上述した実施例では、制御信号を受け取ると、その旨の信号を出力する機能は、受光器30にのみ搭載されており、従って、コントローラ40は制御信号を出力すると、受光器30からのみ、受光器応答信号を受け取るものとして説明した。しかし、投光器20にも、制御信号を受け取ると、制御信号を受け取った旨の信号を出力する機能を搭載しても良い。かかる変形例の監視システム10では、コントローラ40は、投光器20および受光器30に向かって制御信号を出力すると、受光器30から受光器応答信号を検出するだけでなく、投光器20からも投光器応答信号を検出する。そして、投光器応答信号が正常値でなかった場合には、その投光器20は正常に動作していないと考えられるので、その投光器20を特定するとともに、動作不良が発生している旨の投光器動作不良信号を出力した後、監視結果が異常である旨の監視信号を外部に出力して、監視処理を終了する。
【0047】
こうすれば、投光器20が故障した場合でも、直ちに、製造ラインや工作機械などの運転を停止することが可能である。また、投光器動作不良信号が出力されているか否かを確認することで、運転が停止された原因が、投光器20の故障によるものかを直ちに判断することができるので、投光器20が故障していた場合には、故障した投光器20を交換して、速やかに運転を再開することが可能となる。加えて、変形例においても、コントローラ40は、投光器20および受光器30に制御信号を出力するだけで、特別な動作を行うことなく、常に、投光器20および受光器30が正常に動作しているか否かを監視することが可能である。その結果、何れかの光軸が何らかの遮蔽物によって遮られたり、あるいは何れかの投光器20あるいは受光器30が故障した場合には、直ちにこれを検出するとともに、速やかに異常の原因を取り除いて、再び監視動作を開始することが可能となる。
【0048】
以上、本発明について各種の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施例の監視システム10の全体構成を示した説明図である。
【図2】本実施例の投光器20の大まかな構造を示す説明図である。
【図3】本実施例の受光器30の大まかな構成を示す説明図である。
【図4】本実施例のコントローラ40の大まかな構成を示す説明図である。
【図5】本実施例のコントローラ40が各光軸での遮蔽物の有無を監視するために行う監視処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本実施例のコントローラ40が監視処理を行うことにより投光器20および受光器30とデータをやり取りする様子を示したタイムチャートである。
【符号の説明】
【0050】
10…監視システム、 20…投光器、 22…投光回路、
24…投光素子、 26…光学系、 30…受光器、 32…受光回路、
34…受光素子、 36…光学系、 40…コントローラ、 42…表示灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の投光器と、該各々の投光器に対して向かい合わせに設けられて各々に光軸を形成する複数の受光器と、該投光器および該受光器に向かって制御信号を出力することにより、該投光器における投光動作および該受光器における受光動作を制御するコントローラとを備え、該光軸上での遮蔽物の有無を監視する監視システムにおいて、
前記受光器は、前記コントローラからの前記制御信号を受け取ると、該制御信号を受信した旨の受光器応答信号と、前記投光器からの光の検出結果を表す検出結果信号とを、該コントローラに返信する返信手段を備えており、
前記コントローラは、
前記各々の受光器から受け取った前記検出結果信号に基づいて、前記光軸での遮蔽物の有無を表す監視信号を出力する監視信号出力手段と、
前記受光器応答信号の有無に基づいて、前記各々の受光器を識別した状態で該受光器の動作不良を検出し、動作不良の受光器が検出された場合には、該受光器を特定した状態で、動作不良の受光器が発生した旨の受光器動作不良信号を出力する受光器動作不良信号出力手段と
を有することを特徴とする監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の監視システムであって、
前記投光器は、前記コントローラからの前記制御信号を受け取ると、前記投光動作を開始するとともに、該制御信号を受信した旨の投光器応答信号を該コントローラに返信する返信手段を備えており、
前記コントローラは、
前記投光器応答信号の有無に基づいて、前記各々の投光器を識別した状態で該投光器の動作不良を検出し、動作不良の投光器が検出された場合には、該投光器を特定可能な状態で、動作不良の投光器が発生した旨の投光器動作不良信号を出力する投光器動作不良信号出力手段を有することを特徴とする監視システム。
【請求項3】
複数の投光器と、該各々の投光器に向かい合わされて光軸を形成する複数の受光器とに接続されて、該投光器における投光動作および該受光器における受光動作を制御することにより、該光軸上での遮蔽物の有無を監視するコントローラにおいて、
前記複数の投光器および前記複数の受光器に対して制御信号を出力する制御信号出力手段と、
前記制御信号を受けて前記受光器によって検出された光の有無を表す検出結果信号を、各々の該受光器から受け取ることによって、前記複数の光軸での遮蔽物の有無を表す監視信号を出力する監視信号出力手段と、
前記受光器が前記制御信号を受け取った旨の受光器応答信号を、各々の該受光器が識別された状態で受け取るとともに、該受光器応答信号の有無に基づいて該受光器での動作不良を検出し、動作不良の受光器が検出された場合には、該受光器を特定可能な状態で、動作不良の受光器が発生した旨の受光器動作不良信号を出力する受光器動作不良信号出力手段と
を備えることを特徴とするコントローラ。
【請求項4】
請求項3に記載のコントローラにおいて、
前記投光器が前記制御信号を受け取った旨の投光器応答信号を、各々の該投光器が識別された状態で受け取るとともに、該投光器応答信号の有無に基づいて該投光器での動作不良を検出し、動作不良の投光器が検出された場合には、該投光器を特定可能な状態で、動作不良の投光器が発生した旨の投光器動作不良信号を出力する投光器動作不良信号出力手段と
を備えることを特徴とするコントローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−135751(P2009−135751A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310299(P2007−310299)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【Fターム(参考)】