説明

監視装置及び監視プログラム

【課題】 2つのカメラを用いて動物体の位置や大きさを簡易な構成により正確に求める監視装置を提供する。
【解決手段】 監視する視野に動く物体が存在しない状態で取得した画像を背景画像として予め記憶する背景画像用メモリ14と、複数のカメラ11a〜11cで取得した画像を取得画像として取得画像用メモリ13に記憶する画像取得制御部12aと、取得画像と背景画像との差分により、求められた差分が予め定められた閾値よりも大きい領域を動物体領域として抽出し、動物体領域が重複する領域内にあるか否かを判定する動物体領域抽出部15と、抽出された動物体領域が重複する領域内にある場合、動く物体の位置検出を3次元で行なう2眼動物体位置検出部19と、抽出された動物体領域が前記重複する領域内にない場合、動く物体の位置検出を2次元で行なう単眼動物体位置検出部18とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカメラを用いて動物体を検出し、検出した動物体の位置や大きさを特定できる監視装置及び監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不審者の侵入等を監視するため、公園、店舗内又は金融機関等において、監視装置を備えていることがある。このような監視装置には、単に画像を取得して記憶するのみでなく、取得された画像から動物体を抽出しその動物体の位置又は動向を決定し、動物体の大きさを特定して不審者の特定をするものもある。
【0003】
単一のカメラにより取得された画像から動物体を抽出してその位置を求める場合、たとえば、差分画像から動物体の位置や大きさを特定する下記の方法がある。まず、取得画像について、適当なワールド座標系XYZが設定される。このとき、地面を平面に近似できるとして地面上の適当な点を原点とし、地面上にX軸及びY軸が、地面と垂直にZ軸が設定される。次に、取得画像についてカメラの視点を原点とするカメラ座標系xyzが設定される。ここでは、x軸は撮像面の水平方向、y軸は垂直方向、z軸は光軸に設定される。また、ワールド座標とカメラ座標との関係として、回転行列及び並進行列が求められる。さらに、取得画像に対して、適当な座標系uvが設定される。この座標系uvは、光軸と画像との交点を原点とし、水平方向をu軸、垂直方向をv軸とされる。
【0004】
その後、取得画像から、背景差分又はフレーム間差分等の差分により、画像中の動物体領域が抽出される。動物体領域が求められると、画像中に存在する動物体が地面に接している点の画像座標を接地点座標と設定される。具体的には、抽出した動物体領域の最下部の座標を接地点座標とする。続いて、接地点座標とワールド座標系とカメラ座標系との関係として、回転行列及び並進行列から動物体のワールド座標を計算し、動物体の位置や大きさが求められる。
【0005】
また、2つのカメラを1組としてこの2つのカメラから取得された画像から動物体の位置を求める場合にも、たとえば、差分画像から動物体の位置や大きさを特定する方法がある。この方法では、1組のカメラは完全に重複する画像を撮影したステレオカメラの原理を利用している。
【0006】
具体的には、まず、取得画像について、上述した単一のカメラを用いる場合と同様に、適当なワールド座標系XYZが設定される。次に、1組の各カメラに対して、カメラの視点を原点とするカメラ座標系xiii(i=0,1)が設定される。ここで、xi軸は撮像面の水平方向、yi軸は垂直方向、zi軸は光軸に設定される。また、ワールド座標系とカメラ座標系との関係である、回転行列及び並進行列が求められる。さらに、カメラ画像に対して、適当な座標系uiiが設定される。この座標系uiiは、光軸と画像との交点を原点とし、水平方向をui軸、垂直方向をvi軸とする。
【0007】
続いて、1組のカメラのうち、どちらか一方のカメラで取得された画像について、背景差分又はフレーム間差分を用いて画像中の動物体領域が抽出される。後に、抽出された動物体領域に含まれる画素に対して対応する画素を、もう一方のカメラで取得された画像から求められる。さらに、動物体領域の対応する画素の座標とワールド座標とカメラ座標との関係である回転行列及び並進行列から、動物体のワールド座標を計算し、動物体の位置や大きさが求められている。
【0008】
従来の物体監視装置は、予め取得された背景画像と新たに取得した画像との差分から動物体領域を抽出して動物体と地面との接点を設定し、その画像座標から計算により動物体のワールド座標を求めていた。たとえば、特許文献1には、予め登録されている背景画像と入力画像との差分で侵入物体を検出する背景差分を利用し、所定フレームごとに同様に求められた差分から移動物体を抽出する物体監視装置が記載されている。また、特許文献1に記載の物体監視装置では、抽出した移動物体を追尾して威嚇することが記載されている。
【特許文献1】特開平9−265585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の物体監視装置では、地面との接点が遮蔽物によって足元が遮られている場合にはワールド座標を正確に求めることができない。そのため、このようにして求められたワールド座標値の信頼性が低くなってしまう問題がある。
【0010】
また、従来の物体監視装置によって求められる動物体の大きさは、動物体領域の縦、横の画素数と、上述した従来の方法により求めたワールド座標から、決定されている。しかしながら、たとえば、従来の物体監視装置では、影の影響などにより動物体領域が動物体のシルエットを忠実に表現することができない場合もある。そのため、求めたワールド座標値の信頼性が低くなってしまう問題がある。
【0011】
2つのカメラを用いて三角測量の原理を用いたワールド座標の算出方法は、座標の信頼性は高い。しかしながら、1台のカメラから取得した画像を用いて実施する場合と比較して、カメラの台数は2倍必要になる。そのため、距離計算をする回数が増えることにより計算量も増えるので、計算能力の高いコンピュータが必要となる。このように、カメラの台数も増え、計算能力の高いコンピュータを利用するため、システムの規模が大きくなり設計コストがかかる問題がある。また、2つのカメラで取得した画像が完全に重複した画像でない場合、正確な距離情報を得ることができない。
【0012】
上記課題に鑑み本発明は、コストも抑え、かつ、信頼性の高い動物体の追尾を可能とする監視装置を容易な構成で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するため請求項1に記載の本発明によれば、各カメラでそれぞれ撮像する画像の一部が互いに重複するように配置される複数のカメラを用いて監視を行なう監視装置において、監視する視野に動く物体が存在しない状態で取得した画像を背景画像として予め記憶する背景画像用メモリと、複数のカメラで取得した画像を取得画像として取得画像用メモリに記憶する画像取得制御部と、取得画像と背景画像との差分により、求められた差分が予め定められた閾値よりも大きい領域を動物体領域として抽出し、動物体領域が重複する領域内にあるか否かを判定する動物体領域抽出部と、抽出された動物体領域が前記重複する領域内にある場合、動く物体の位置検出を3次元で行なう2眼動物体位置検出部と、抽出された動物体領域が前記重複する領域内にない場合、動く物体の位置検出を2次元で行なう単眼動物体位置検出部とを有することを特徴としている。
【0014】
また、請求項2に記載の本発明によれば、カメラで取得した画像を用いて監視を行なう監視プログラムにおいて、各カメラでそれぞれ撮像する画像の一部が互いに重複するように配置される複数のカメラで、監視する視野に動く物体が存在しない状態で取得した画像を背景画像として予め記憶する背景画像用メモリに記憶させるステップと、複数のカメラで取得した画像を取得画像として取得画像用メモリに記憶させるステップと、取得画像と前記背景画像との差分により、求められた差分が予め定められた閾値よりも大きい領域を動物体領域として抽出し、動物体領域が重複する領域内にあるか否かを判定するステップと、抽出された動物体領域が重複する領域内にある場合、動く物体の位置検出を3次元で行なうステップと、抽出された動物体領域が重複する領域内にない場合、動く物体の位置検出を2次元で行なうステップとを有することを特徴としている。
【0015】
上述した本発明によれば、設計コストも抑え、かつ、信頼性の高い動物体の位置検出や追尾を可能とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の監視装置では、2つのカメラを用いて動物体の位置や大きさを簡易な構成により正確に求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る監視装置の最良の形態について図面を用いて説明する。
【0018】
[物体監視装置]
図1に示すように、本発明に係る物体監視装置1は、画像取得部11と、画像取得制御部12aと、背景画像取得制御部12bと、取得画像用メモリ13と、背景画像用メモリ14と、動物体領域抽出部15と、重複ワールド座標算出部16と、重複ワールド座標メモリ17と、単眼動物体位置検出部18と、2眼動物体位置検出部19及び出力部20を有している。
【0019】
本発明に係る物体監視装置1は、例えば図2に示すように複数のカメラが配置されている。たとえば、画像取得部11で3台のカメラを有している場合、各カメラ11a〜11cは図2に示すように、複数のカメラの撮像領域の周辺部が互いに重なり合うように配置されている。ここで、動物体が時刻t0からt1に移動したと仮定する。動物体は時刻t0ではカメラ11bで取得した画像にのみ写されており、時刻t1ではカメラ11bとカメラ11cで取得された画像の両方に写っているとする。この時刻t1においては、動物体はカメラ11b及びカメラ11cで取得された画像の重複部分Bに存在する。図2では、カメラは3台備えているが、3台でなく、2台であっても4台であっても、各カメラの取得領域の周辺部が互いに重なり合うように配置されていれば良い。
【0020】
画像取得部11は、取得する画像の一部が重複する重複部分Bができるように配置される複数のカメラを備えている。図1に示す物体監視装置1の画像取得部11は、3台のカメラ11a〜11cを有している。図2に示すように、本実施例においては、カメラ11aとカメラ11b、また、カメラ11bとカメラ11cは取得される画像の一部がそれぞれ重複される構成となっている。なお、図1では画像取得部11は物体監視装置1において備えられているが、物体監視装置1に備えられていない構成であっても良い。すなわち、画像取得部11は、物体監視装置1の外部に備えられ、画像取得部12aと接続されて画像を取得する構成であっても良い。
【0021】
画像取得制御部12aは、画像取得部11で周期的に取得した画像を取得画像として取得画像用メモリ13に記憶させる。ここで、対応する各取得画像は周期的に画像取得部11の各カメラ11a〜11cから同時刻に一斉に取得される。この取得画像には、必ずしも動物体が存在するものではなく、背景画像と比較して動物体の存在を確認するために用いられる。
【0022】
背景画像取得制御部12bは、画像取得部11で予め画像視野に動物体の存在しない状態で取得した画像を背景画像として背景画像用メモリ14に記憶させる。ここで、対応する各背景画像は、予め、画像取得部11の各カメラ11a〜11cから同時刻に一斉に画像を取得される。
【0023】
取得画像用メモリ13は、画像取得制御部12aのカメラ11a〜11cにより周期的に取得された画像が取得画像として順次記憶される。
【0024】
背景画像用メモリ14は、予め各カメラ11a〜11cに動物体が写っていないときに取得された画像が背景画像として記憶されている。
【0025】
動物体領域抽出部15は、新たに取得されて取得画像用メモリ13に記憶される取得画像と背景画像用メモリ14に記憶される背景画像との差分により、求められた差分が予め定められた閾値よりも大きい領域を動物体領域として抽出する。対応する取得画像と背景画像とは、同一のカメラ11a〜11cで取得されたものであるため、取得されたそれぞれの画像の視野も同一である。そのため、動物体領域抽出部15は、差分を求め、その差分が予め定められている閾値以上の領域を抽出することで、動物体の存在する部分である動物体領域Fを決定できる。
【0026】
重複ワールド座標算出部16は、背景画像用メモリ14に記憶される各カメラ11a〜11cで取得された対応する背景画像を読出し、重複部分Bのワールド座標を算出する。
【0027】
重複ワールド座標メモリ17は、重複ワールド座標算出部16で算出された重複部分Bのワールド座標を記憶する。
【0028】
単眼動物体位置検出部18は、抽出された動物体領域Fが重複部分Bにない場合、この動物体の位置検出を行なう。すなわち、動物体が1つのカメラにしか写っていない場合、求められた動物体領域Fの座標から動物体の位置を求める。
【0029】
2眼動物体位置検出部19は、抽出された動物体領域Fが前記重複部分Bにある場合、この動物体の位置検出を行なう。すなわち、動物体が2つのカメラの撮像範囲が重なっている領域にいる場合、ステレオカメラの原理を用いてその位置を求める。2眼動物体位置検出部19は、重複ワールド座標メモリ17に記憶している重複部分Bのワールド座標を利用して、動物体の位置検出を行なう。
【0030】
出力部20は、単眼動物体位置検出部18または2眼動物体位置検出部19で求めた動物体の位置を示す座標や動物体の高さを出力する。
【0031】
図3に示すフローチャートを用いて、本発明に係る物体監視装置1における処理の流れを説明する。
【0032】
本発明に係る物体監視装置1では、画像取得部11のカメラ11a〜11cで、画像取得制御部12aの制御により周期的に同時に画像が取得される(S01)。なお、必ずしも周期的に画像を取得するのではなく、不定期に発せられる何らかの画像取得指示信号に基づいて取得される構成であっても良い。
【0033】
続いて、各カメラ11a〜11cで取得された画像が取得画像として、取得画像用メモリ13に記憶される(S02)。
【0034】
その後、取得画像用メモリ13に記憶されている取得画像と、予め背景画像用メモリ14で記憶されている背景画像とが動物体領域抽出部15に入力され、動物体領域抽出部15で動物体領域Fが抽出される(S03)。動物体抽出の具体的な処理については後述するが、取得画像と背景画像との差分を求め、その差分が予め定められている閾値よりも大きい値となった領域を動物体領域Fとする。
【0035】
動物体領域抽出部15で動物体が存在することが確認されると(S04でYES)、抽出された動物体領域Fが重複部分Bに存在するか否かが判断される(S05)。動物体が重複部分Bでない部分に存在する場合、背景画像及び取得画像が単眼動物体位置検出部18に入力され、単眼動物体位置の検出処理がされる(S06)。単眼動物体の位置検出については、後に詳述する。
【0036】
一方、動物体が重複部分Bに存在する場合、背景画像及び取得画像が2眼動物体位置検出部19に入力され、2眼動物体位置検出の処理がされる(S07)。2眼動物体位置の検出については、後に詳述する。
【0037】
その後、出力部20において、ステップS05又はS06で処理された結果が出力される(S08)。
【0038】
[動物体領域抽出]
続いて、図4及び図5を用いて、上述したステップS03における動物体領域抽出部15における動物体領域Fの抽出処理について説明する。図4に示すのは、動物体領域抽出の一連の処理を説明する画像の一例である。また、図5に示すのは動物体抽出処理を説明するフローチャートである。
【0039】
まず、動物体領域抽出部15から入力した背景画像について、背景ワールド座標を設定する(S11)。図4(a)に示すのは、カメラ11aにより取得された背景画像に対し、背景ワールド座標が設定された背景画像の一例である。ここで、背景画像のワールド座標は画像と光軸が交わる点を原点0iとし、水平方向にu軸、垂直方向にv軸をとる。図4(a)に示す背景画像の座標(u,v)における画素の輝度値を、IN(u,v)とする。
【0040】
図4(b)に示すのは、カメラ11aにより時刻t0に取り込まれた取得画像の一例であり、動物体が存在している。図4(b)に示す時刻t0に取り込まれた取得画像の座標(u,v)における画素の輝度値をJN(u,v)とする。
【0041】
ステップS11において背景ワールド座標が設定されると、取得画像のカメラ座標を設定する(S12)。続いて、取得画像と背景画像との差分を求める(S13)。対応する画素において、輝度の差分を求め、差分の大きな画素を動物体領域Fとする(S14)。すなわち、下記の(1)式を満足する画素を1、それ以外を0として2値画像を求める。この2値画像は、画像取得部11で取得された画像の全ての画素について1又は0が決定されることで求められる。
【数1】

【0042】
(a:適当な閾値)
たとえば、背景画像が図4(a)に示す画像であり、取得画像が図4(b)に示す画像である場合、上記の(1)式を用いて求められた2値画像は図4(c)に示す画像となる。図4(c)の例では、値が1(図4(c)で黒色)の画素で構成される領域が動物体領域Fである。また、(1)式における適当な閾値aは、予め定められる値である。
【0043】
なお、ステップS14において、動物体領域Fが抽出されない場合には、取得された取得画像中に動物体は存在しないとする。
【0044】
[単眼動物体位置検出]
次に、図6を用いて、上述した図5のステップS06の単眼動物体位置検出部18における動物体の位置検出について説明する。図6に示すのは、画像の座標の一例である。
【0045】
まず、背景画像について、ワールド座標系XYZを設定される。ワールド座標系XYZは、図6(a)に示すように、原点0は地面上の適当な位置に設定する。また、X軸とY軸は地面上に含まれる互いに直行する適当な直線に設定し、Z軸は地面と垂直で上方をプラスとなるように設定する。
【0046】
次に、図6(b)にカメラ11aで取得した画像を例として説明する。図6(b)に示すように、カメラ11aにより取得される画像のカメラ座標系をxNNNと設定する。原点0Nはカメラの視点とする。また、xN軸は撮像面の水平方向に、yN軸は撮像面の垂直方向に一致するように設定し、zN軸は光軸方向に設定する。続いて、画像の座標系uNNが設定される。uN軸は撮像面の水平方向に、uN軸は撮像面の垂直方向に一致するように設定する。
【0047】
カメラ座標が設定されると、検出された動物体が地面と接する点(接地点)及び動物体の最も高い点(最高点)を求める。具体的には、検出された動物体領域Fを含む最小の長方形Eを求めて、その下辺と上辺の中点をそれぞれ接地点P0(u0,v0)、最高点P1(u1,v1)とすることで、接地点及び最高点を求めることができる。
【0048】
ここで、カメラ座標系uvとワールド座標系XYZとの関係は一般的に、下記の(2)式の定義式で表される。
【数2】

【0049】
A:カメラ内部のパラメータに関する行列(3×3行列)
R:回転行列(3×3行列)
T:並進ベクトル(3次元)
また、上記の(2)式でwはカメラ毎に定められる定数である。
【0050】
(2)式から、接地点のワールド座標を(X0,Y0,0)と仮定すると、画像座標との関係は、下記の(3)式で表される。
【数3】

【0051】
ここで、
【数4】

【0052】
とおくと、(3)式は、下記の(4)式で表すことができる。
【数5】

【0053】
また、P’の逆行列P’-1を(5)式とする。
【数6】

【0054】
また、このときX0及びY0は、(6)式で表される。
【数7】

【0055】
上述した手順により、接地点のワールド座標を求めることができる。
【0056】
接地点のワールド座標が求められると次に、動物体の高さZ1を求める。最高点のワールド座標を(X0,Y0,Z1)とすると、下記の(7)式の関係が成り立つ。
【数8】

【0057】
(7)式を展開すると、(8)式となる。
【数9】

【0058】
この(8)式からZ1を(9)式のように求める。
【数10】

【0059】
上記のように、最高点のワールド座標(X0,Y0,Z1)を求めることができる。上述した処理により、動物体の位置及び動物体の高さZ1を求めることができる。また、このようにして求められた動物体の位置及び動物体の高さが動物体の監視結果として出力部20により出力される。
【0060】
[2眼動物体位置検出]
次に、図7を用いて、図5のステップS07の2眼動物体位置検出部19における動物体の位置検出について説明する。図7(a)に示すのは、カメラ11aにより取得された画像であり、図7(b)に示すのはカメラ11bにより取得された画像である。図7(a)及び図7(b)では、重なり合う重複部分Bについて斜線を用いて表している。
【0061】
2眼動物体位置検出を行なうために、重複ワールド座標算出部16は、カメラ11aにより取得された背景画像IN+1とカメラ11bにより取得された背景画像INを用いて、背景画像IN+1と背景画像INが重なり合う領域の各画素におけるワールド座標を重複ワールド座標WNとして求める。また、重複ワールド座標メモリ17は、重複ワールド座標算出部16により求められた重複ワールド座標WNを記憶している。
【0062】
まず、カメラ11aにより取得される画像のカメラ座標系をxN+1N+1N+1とする。また、カメラ11a内部のパラメータ行列をAN+1、カメラ座標系とワールド座標系の回転行列をRN+1、並進ベクトルをTN+1とする。さらに、カメラ11bにより取得される画像についても同様に、カメラ11bのカメラ座標系をxNNN、カメラ内部のパラメータ行列をAN、カメラ座標系とワールド座標系の回転行列をRN、並進ベクトルをTNとする。
【0063】
背景画像INにおける座標(u,v)の画素PN(u,v)に対応する被写体のワールド座標を求めるには、まず、画素PN(u,v)に対応する背景画像IN+1上の画素PN+1(u’,v’)を求める必要がある。そのために、2眼動物体位置検出部19では、画素PN(u,v)を中心に水平、垂直方向に±K画素の矩形領域DNを設定するとともに、画素PN(u,v)に対応するIN+1上のエピ極線を求める。一般的に、背景画像INにおける画素PN(u,v)の背景画像IN+1上の対応点である画素PN+1(u’,v’)は、エピ極線上にあることが理論から分かっている。そのため、画素PN+1(u’,v’)は、エピ極線をa1u’+b1v’+c1=0とすると(10)式から求めることができる。
【数11】

【0064】
F:基礎行列
エピ極線上の各画素上の各画素を中心にして矩形領域DNを設定してDN+1との相関を求める。相関Rは(11)式で求めることができる。
【数12】

【0065】

N(u,v):背景画像INの座標における輝度値
N+1(u,v):背景画像IN+1の座標における輝度値

最も相関の高い矩形領域の中心画素が対応する画素となる。
【0066】
次に、画素PN+1(u,v)と対応する画素PN(u,v)とからワールド座標(X,Y,Z)を求める。カメラ座標(u,v)、(u’,v’)とワールド座標(X,Y,Z)との関係は(12)式で表される。
【数13】

【数14】

【数15】

【0067】
上記の(14)式から、たとえば最小二乗法を用いてワールド座標(X,Y,Z)を求める。
【0068】
図7(c)及び図7(d)に示すのは、カメラ11a及びカメラ11bの重なり合う重複部分Bに動物体が存在する場合の取得画像の一例である。図7(c)に示す画像は、時刻t1にカメラ11aで撮影された取得画像JN+1であり、図7(d)に示す画像は、時刻t1にカメラ11bで撮影された取得画像JNである。動物体が重複部分Bに存在する場合、動物体の位置と大きさを求める手順を以下に説明する。
【0069】
取得画像JNにおいて、単眼動物体位置検出部18と同様に、取得画像JNと背景画像INの差分を抽出して得られた動物体領域Fから、その領域を含む最小の長方形ENを設定する。
【0070】
長方形内ENのすべての画素PN(u,v)に対して、背景画像のワールド座標WNを求めたときと同様の方法で、各画素に対応するワールド座標(X,Y,Z)を求める。これを、動物体ワールド座標WFとする。長方形内の画素において、背景画像のワールド座標WBと動物体のワールド座標WFとの差分を求め、差分が予め設定されていた閾値よりも大きい値となる画素で形成される領域を、新たに動物体領域F’とする。また、この領域のワールド座標をWF’とする。
【数16】

【0071】
F’内のワールド座標のX及びYの平均値を動物体の位置を表すワールド座標を(X0,Y0,Z0)とすると、X0,Y0,Z0は(16)式で求まる。
【数17】

【0072】

n:W F’に含まれる画素の総数

また、WF’内のワールド座標(X,Y,Z)のZの最小値Zmin と最大値Zmaxとの差を高さHとする。
【数18】

【0073】
上記のように、最高点のワールド座標を求めることができ、これにより、動物体の位置及び動物体の高さを検出することができる。このようにして検出された動物体位置及び動物体の高さが動物体の監視結果として出力部20により出力される。
【0074】
本発明は、中央処理制御装置、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び入出力インタフェースなどを有する通常のコンピュータに、上述した監視装置を実現する為にインストールされる監視プログラムを含むものとする。
【0075】
上述したように、本発明に係る監視装置では、複数のカメラを用いて動物体の検出をする場合、撮影範囲が一部において互いに重なり合うように設置される2つのカメラを利用することにより、カメラの個数の増加やコンピュータの計算能力の向上を必要とせずに、動物体の位置と大きさを正確に求めて動物体を追尾することができる。
【0076】
本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る物体監視装置を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る物体監視装置のカメラの配置を説明する図である。
【図3】本発明に係る物体監視装置における処理を説明する図である。
【図4】本発明に係る物体監視装置で動物体領域を抽出する場合の画像の一例である。
【図5】本発明に係る物体監視装置で動物体領域を抽出する処理を説明する図である。
【図6】本発明に係る物体監視装置の単眼動物体位置検出部における動物体位置検出を説明する図である。
【図7】本発明に係る物体監視装置の2眼動物体位置検出部における動物体位置検出を説明する図である。
【符号の説明】
【0078】
1…物体監視装置
11…画像取得部
11a〜11c…カメラ
12a…画像取得制御部
12b…背景画像取得制御部
13…取得画像用メモリ
14…背景画像用メモリ
15…動物体領域抽出部
16…重複ワールド座標算出部
17…重複ワールド座標メモリ
18…単眼動物体位置検出部
19…2眼動物体位置検出部
20…出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各カメラでそれぞれ撮像する画像の一部が互いに重複するように配置される複数のカメラを用いて監視を行なう監視装置において、
監視する視野に動く物体が存在しない状態で取得した画像を背景画像として予め記憶する背景画像用メモリと、
前記複数のカメラで取得した画像を取得画像として取得画像用メモリに記憶する画像取得制御部と、
前記取得画像と前記背景画像との差分により、求められた差分が予め定められた閾値よりも大きい領域を動物体領域として抽出し、前記動物体領域が重複する領域内にあるか否かを判定する動物体領域抽出部と、
抽出された前記動物体領域が前記重複する領域内にある場合、動く物体の位置検出を3次元で行なう2眼動物体位置検出部と、
抽出された動物体領域が前記重複する領域内にない場合、動く物体の位置検出を2次元で行なう単眼動物体位置検出部と、
を有することを特徴とする監視装置。
【請求項2】
カメラで取得した画像を用いて監視を行なう監視プログラムにおいて、
各カメラでそれぞれ撮像する画像の一部が互いに重複するように配置される複数のカメラで、監視する視野に動く物体が存在しない状態で取得した画像を背景画像として予め記憶する背景画像用メモリに記憶させるステップと、
前記複数のカメラで取得した画像を取得画像として取得画像用メモリに記憶させるステップと、
前記取得画像と前記背景画像との差分により、求められた差分が予め定められた閾値よりも大きい領域を動物体領域として抽出し、前記動物体領域が重複する領域内にあるか否かを判定するステップと、
抽出された前記動物体領域が前記重複する領域内にある場合、動く物体の位置検出を3次元で行なうステップと、
抽出された動物体領域が前記重複する領域内にない場合、動く物体の位置検出を2次元で行なうステップと、
を有することを特徴とする監視プログラム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−41939(P2006−41939A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219043(P2004−219043)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】