説明

目標物の位置の非接触式干渉計型検出のための位置検出システム及びこれを備えた走査システム

本発明は、目標物位置の非接触式干渉計型検出のための位置検出システムに関する。目標物ユニット(11)は、湾曲した光波面(30)を備えた参照光線(25)を送信するよう構成された参照光送信器(23)を有する。目標物ユニットは、複数の検出器画素(31)を備えた少なくとも1つの検出器アレイ(14)を有しており、参照光送信器(23)の参照光線(25)が検出器アレイに当たるように、検出器アレイは目標物ユニット(11)に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標物の空間における位置の非接触式干渉計型検出のための位置検出システムと、これを備えた走査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの使用分野において、目標物の位置を決定する課題が生じる。目標物は、特に、一部がなんらかの形で動いたり、それ自体で勝手に動いたりすることがある。その例は、製造機械または測定機械の構成要素である。
【0003】
本発明は特に、1μmまたはそれよりもさらに良い範囲(サブμの範囲)の精度での位置検出が必要とされる場合を対象としている。この分野においては、主に、いわゆるレーザ追跡システムが用いられており、これにより、所望の距離情報が干渉計式に決定される。このようなシステムは、目標物に対して固定された位置にある目標物ユニットを備えており、これに、再帰反射器が固定されている。レーザ追跡システムはまた、測定光送信器を備えた測定光送信器ユニットを有しており、これによって、レーザ光が目標物ユニットの再帰反射器に照射される。再帰反射器は、測定光線をその光源に反射させるように構成されている。
【0004】
測定光送信器ユニットは、干渉計装置と検出器を有し、検出器は、測定光線と参照光線との干渉により干渉計型測定信号を生成し、そこから干渉計型測定データが得られる。これらの干渉計型測定データにより、再帰反射器と測定光送信器ユニットとの間の距離に関する(より正確には、距離の変化に関する)距離情報を非常に正確に得ることが可能である。この距離情報は、目標物の所望の位置の判定に用いられる。ほとんどの場合、この情報は、再帰反射器が測定光送信器ユニットに対して位置する立体角に関する角度情報と組み合わされる。
【0005】
このようなレーザ追跡システムは、例えば、下記の特許文献1から4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際出願公開番号WO2005/026772号
【特許文献2】アメリカ特許番号第6,667,798号
【特許文献3】国際出願公開番号WO01/09643号
【特許文献4】アメリカ特許番号第6,675,122号
【特許文献5】アメリカ特許番号第6,134,507号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
公知のレーザ追跡システムの不利な点は、その複雑な構造である。特に、目標物の動きに対応する測定光線の非常に正確な追跡を行うには、複雑な機械設計が必要となる。
【0008】
これを基礎として、本出願は、特に非常に正確な可動部に関して、より安価でありながら、レーザ追跡システムに勝るとも劣らない精度を実現する位置検出システムを提供するという技術的課題に基づいたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明による、目標物の位置の非接触式干渉計型検出のための位置検出システムによって解消され、これは、目標物ユニットと、可干渉性の光の測定光線を前記目標物ユニットに照射する少なくとも1つの測定光送信器を備えた測定光送信器ユニットとを有し、前記目標物ユニットの位置が、前記測定光線と、前記測定光線と可干渉性である参照光線との干渉により検出器によって生成される干渉信号から得られる干渉計型測定データを用いて決定される位置検出システムにおいて、
前記目標物ユニット(11)は、湾曲した光波面(30)を備えた前記参照光線(25)を送信するよう構成された参照光送信器(23)を有するとともに、
前記目標物ユニットは、複数の検出器画素(31)を備えた少なくとも1つの検出器アレイ(14)を有しており、前記参照光送信器(23)の参照光線(25)が当該検出器アレイ(14)に当たるように、当該検出器アレイ(14)は前記目標物ユニット(11)に固定されており、
前記測定光線(16)の波面(29)は、前記参照光線(25)の波面(30)の曲率よりも小さい曲率で、前記目標物ユニット(11)の前記検出器アレイ(14)に当たり、
前記測定光線(16)及び前記参照光線(25)の波面(29、30)は、十分に平行な向きで、前記検出器アレイ(14)の検出器画素の一部(31−8)のみに当たって、当該検出器画素(31−8)における干渉信号の生成を可能にし、
前記検出器アレイ(14)の干渉信号を生成している少なくとも1つの検出器画素(31−8)の干渉信号は、当該各検出器画素(31−8)と前記測定光送信器との間の距離の変化に関する距離情報を決定するために評価され、
前記測定光送信器ユニット(10)に対する前記目標物の位置は、前記距離情報を用いて判定されることを特徴とする。
【0010】
目標物ユニットは目標物の一部であってもよいし、目標物に固定されたユニット(いずれの場合も、目標物に対して所定の位置にある)であってもよい。公知の追跡システムとは異なり、このユニットは、単なる受動反射器ではなく、参照光送信器と少なくとも2つの検出器アレイからなるアクティブシステム構成要素であり、その検出器画素は、適切な幾何学的条件(後に詳述)が満たされた場合に干渉計型測定信号を生成することができるものである。干渉に必要となる、測定光線と参照光線との可干渉性を確実にするために、両光線は、同じレーザ光源から分かれた光線によって得られるとともに、好ましくは、可撓性光送信ケーブルによって、一方では光送信器ユニットへ、他方では目標物ユニットへ伝播される。
【0011】
本発明により、特に以下の利点が得られる。
【0012】
測定光線の正確な追跡は必要とされない。実際には、測定光線が十分な強度でその検出器アレイに当たるよう目標物ユニットに向かっておおよそ方向付けられれば十分である。従って、位置の検出は通常、機械的な移動を必要としない。例え、目標物の移動範囲が大きく、測定光線の方向を変更しなければならない場合でも、この移動は、精度要件が低いため、簡単かつ経済的な方法で実現可能である。
【0013】
公知のレーザ追跡システムでは、再帰反射器の汚染によって測定精度が制限されるが、このような問題点は本発明には存在しない。
【0014】
公知のレーザ追跡システムでは、その測定精度が再帰反射器への入射角の変化の影響を受けるため、さらなる問題が生じる。この測定精度の制限も、本発明で解消されるものである。
【0015】
公知のレーザ追跡システムでは、距離情報の正確性もまた、測定光が送信器と受光器の間の光路に沿って2回伝播するという事実に左右される。従って、例えばシステム構成要素の変化によって起こったある測定誤差が、全誤差に2回影響を与えるということになる。しかし、本発明では、測定光は、測定光送信器ユニットと目標物ユニットとの間の光路を1回伝播するだけである。
【0016】
本発明では、目標物ユニット(従って目標物)の位置を極めて高速で判定できるだけでなく、空間におけるその姿勢も判定することができる。
【0017】
要約すると、技術的性能の改善が、安価に達成できるのである。
【0018】
上述したように、位置検出システムは、特に、製造及び測定技術など、種々の分野で用いることができる。このような利用分野は上述の特許文献1から4に記載されている。さらなる例が特許文献5に記載されている。
【0019】
この文献によると、いわゆる非接触式センサの位置を測定するために、レーザ追跡装置が用いられている。ここで意図されるものは、自動製造ライン(例えば自動車製造)における製造物の特徴的な構造を検出して、さらに別の部品を半完成品に正確に取り付けることができる光学システムである。また、このような場合においては、従来のレーザ追跡装置の代わりに、位置検出システムを好適に用いることができる。他の興味を引く利用分野は、研究過程または製造過程における部材の極めて正確な移動に用いられる小型アクチュエータを用いたグリッパシステムである。
【0020】
本発明の特に重要な利用分野は、物体の表面の走査である。
【0021】
「走査」という用語は、ここでは、空間における表面の位置及び形状を検出するために、表面上の複数の測定ポイントに関する位置情報(以下「表面走査情報」と称す)を得るあらゆる方法に言及するものであると、ほぼ理解してよい。これは、特に、物体の正確な寸法の判定(「寸法検査」)だけでなく、表面の構造的特徴、例えば、その粗さに関するものである。
【0022】
表面走査には、主に座標測定機械が用いられる。これらは位置決め装置を有しており、多次元で高精度なドライブと、位置決め装置によって検査される物体に対して移動する走査センサとを備えており、走査センサによって物体の表面が走査される。走査センサとしては、測定される物体と薄い先端部または小さいボールとを接触させる、主に機械的スキャナが用いられ、この接触は、電子手段によって検出される。これにより、サブμmまでの範囲の超高精度を実現することができる。所望の表面走査情報を得るためには、これに対応するセンサの位置に関する正確な位置情報が必要となる。これを確実にするため、座標測定機械は、極めて正確に構成しなければならない。これには高額なコストが必要である。さらに、機械的走査は、ひとつには、走査速度が制限されるということ、もうひとつには、繊細で弾性的な表面の場合には、破損や測定誤差が避けられないため、かなりの欠点を有している。
【0023】
これに基づき、本発明はまた、物体の表面を走査する走査システムの改善にも関するものである。このシステムは、走査センサと、位置決め装置とを有し、これによって、位置決め装置に固定された走査センサが、物体に対して、異なる所望の位置に移動可能であり、その表面が走査されることとなる。ここで、本発明による位置検出システムを用いることによって、極めて高い精度が、安価な製造コストで得られ、目標物ユニットの位置の検出により、走査センサの位置情報が得られるように、位置検出システムの目標物ユニットが走査センサ(好ましくは目標物ユニットにしっかり固定されている)に対して所定の位置に配置される。所望の表面走査情報を判定するために、位置検出システムによって得られたセンサ位置情報はセンサ走査情報と組み合わされる。
【0024】
好ましくは、表面走査の位置決め装置として、位置決めロボットが用いられる。これは、多次元の可動ロボットアームを備えている。走査センサと目標物ユニットはロボットアームに固定される。位置決めロボットが用いられた走査システムは、ドイツ特許出願番号第102004039760A1に記載されている。ここでは、球状のハウジングが、ロボットアームの先端部に取り付けられている。これは、一方では、走査先端を形成し、これによって表面が機械的に走査される。他方、これは再帰反射器を備え、その位置が、レーザ追跡システムによって判定される。この構造の目的は、サブmmの範囲での精度を得ることにある。本発明においては、位置決めロボットを用いたことによる利点(極めて複雑な表面の追跡を可能にする広い操作範囲、高い運動自由度;座標測定機械と較べて低いコスト)が利用される。同時に、ドイツ特許出願番号第102004039760A1と較べて、サブμmの範囲まで下がる非常に高い精度が得られる。
【0025】
好ましくは、本発明による表面走査システムでは、非接触で作動する走査センサが用いられる。適切な操作センサの好ましい構造の特徴は、アメリカ出願公開番号2005/0190371A1、国際出願公開番号WO2005/088241A1、及び国際出願番号PCT/EP2006/011586に記載されている。これらの文献は、本発明に引用することによって組み込まれている。それらに記載されている走査センサの設計特徴と、ここに記載された走査システムとを組み合わせることによって、非常に複雑な表面の走査でも、迅速かつ比較的低いコストで、最高の精度で行うことができる。
【0026】
本発明は、図面に示した実施例によって、以下に詳細に記載される。記載された特徴は、好適な実施例を提供するために、単独で、または組み合わせて用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】位置決めロボットと、その位置が本発明による位置検出システムによって検出される走査センサを備えた本発明による走査システムの一部がブロック図である概略側面図である。
【図2】測定光及び参照光に関し、本発明において特徴となる幾何学的な状態を示した詳細図である。
【図3】本発明に適した検出器アレイの別実施例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、物体3の表面2を走査する走査システム1を示している。走査システム1は、非接触操作式走査センサ5と、多次元可動式ロボットアーム8を備えた位置決めロボット7とからなり、位置決めロボット7は、走査センサのための位置決め装置6として機能する。
【0029】
位置決めロボット7により、走査センサ5は、物体3の表面2にわたって案内され、表面2を(好ましくは光学的に)走査するようになっている。これにより、走査センサ5と表面との距離の変化が高い精度で検出できる。ここに記載した詳細以外の、適切な走査センサ及び位置決めロボットが公知である。この点においては、特に上述の文献が参照される。
【0030】
表面2に関する所望の表面走査情報を得るためには、走査センサが付与する走査情報に加えて、その位置を正確に検出する必要がある。この目的のため、位置検出システムが用いられ、これは、2つの別体の構成要素として、測定光送信器ユニット10と、測定センサ5に固定連結された目標物ユニット11からなる。この位置検出システムに関しては、センサ5が目標物を形成し、その位置が位置検出システムによって検出される。
【0031】
図示された例では、測定光送信器ユニット10は2つの光送信器13a、13bを備えており、目標物ユニット11は2つの検出器アレイ14a、14bを備えており、これらはそれぞれ、後述するように、複数の感光検出器画素からなっている。光送信器13及び検出器アレイ14の数は、位置検出課題の次元に対応していることが好ましい。位置の検出が一次元の課題である場合(例えば、目標物が正確に規定された経路に沿ってのみ移動可能であるため、目標物についての完全な位置情報が、測定光送信器ユニット及び目標物ユニットの間の距離を判定することにより得られる)、1つの光送信器及び1つの検出器アレイで十分である。しかしながら、多次元の位置検出または走査のためには、光送信器ユニットが少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの光送信器を備えるとともに、目標物ユニットが少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの検出器アレイを備えている本発明が、特に適切である。
【0032】
光送信器の最小数及び検出器アレイの最小数は、課題の次元と対応していることが好ましい。よって、2次元の課題には、その数はそれぞれ少なくとも2つであり、3次元の課題には少なくとも3つである。対応する課題の次元より多い数の光送信器及び/または検出器アレイは必要ないが、余分に備えることによって、かく乱要因に対して特に高い安定性を実現することが利点となり得ることもある。
【0033】
複数の検出器アレイは、例えば、CCDチップのような、対応する数の別体になった電子要素によって設けられていてもよい。しかし、原則的には、適切に大きい面積を持った単一の要素の上に複数の検出器アレイを設けることも可能である。この場合、画素のそれぞれの部分的数量が各有効検出器アレイを形成する。各検出器アレイは、1本の線に沿って延びる少なくとも1列の検出器画素を備えていることが好ましく、この線は直線であることが好ましい。
【0034】
各測定光送信器13a、13bは、それらの測定光線16a、16bのそれぞれが検出器アレイ14のそれぞれに当たるように、目標物ユニット11に向かって可干渉性の光を放射する。レーザ光源17a、17bが、可干渉性の測定光のための光源として用いられる。これらから、測定光が、光ファイバー18a、18b、光カプラ19a、19b、別の光ファイバー20a、20bを介して、位相変調器ユニット21に伝播され、そこから、光ファイバーの端部の伝達点まで達する。この伝達点が光送信器13a、13bを形成している。
【0035】
目標物ユニット11は、測定光送信器13a、13bと同様に、ファイバー光ケーブル24の端部において光送信点によって形成されている参照光送信器23を備えている。参照光ファイバー光ケーブル24の中を通って、レーザ光源17a、17bの光から光カプラ19a、19bで分岐した参照光は、参照光送信器23に伝播する。参照光送信器23から、参照光線25が、目標物ユニット11の各検出器アレイ14a、14bに当たるように放射される。
【0036】
測定光線16a、16b及び参照光線25の重畳された波面に関して、後に詳述する条件が満たされた場合は、検出器アレイ14a、14bを形成する画素の1つ、あるいは画素の複数が、アレイのそれぞれにおいて干渉信号を発する。干渉信号を生成する各検出器画素と測定光送信器13a、13b(つまり測定光送信器ユニット10)との間の距離の変化に関する距離情報は、これらの干渉信号からそれぞれ決定することができる。距離情報を決定するための干渉信号の処理は、レーザ追跡システムにおいても用いられている技術によって、公知の方法で行われる。好ましくは、測定光線16a、16bの光は、位相変調器ユニット21によって周波数変調される。測定光線16a、16bの光は、生成された干渉信号が分離できるように、異なるように変調されることが好ましい。この分化変調は、位相変調であっても振幅変調であってもよい。信号処理は、測定データが不図示のデータラインを介して移送される、あるいはワイヤレスで移送される、図1に記号のみで示す、セントラルユニット26で行われる。セントラルユニット26はまた、システムの動作している要素(レーザ光源17、位相変調ユニット21、位置決めロボット7、走査センサ5)のための制御信号を発する。
【0037】
図1は、2つの光送信器と2つの検出器アレイを備えた二次元の課題のための二次元図である。各アレイのそれぞれにおいて干渉信号を生成している(少なくとも)1つの検出器画素と各光送信器の間の距離の判定によって、目標物ユニット、つまり目標物の位置を、その空間方向(例えば、4つの空間座標、x、y、ヨーイング、傾斜)とともに完全に決定することができる。三次元の課題の場合は、上述したように、少なくとも3つの光送信器と3つの検出器アレイが設けられていることが好ましい。これにより、空間上の目標物の位置及び姿勢を完全に表す、すべての6つの空間座標(x、y、z、ヨーイング、傾斜、回転)を決定することができる。
【0038】
図示した位置検出システム9において、光線分割器として機能する光カプラ19a、19bから参照光送信器23までの光路が非常に長いという事実から、技術的な問題が発生する。位置決めロボット7の動きにより、参照ファイバー光ケーブル24の(わずかな)動的伸張が生じる可能性がある。決定された距離情報の正確性の要件が非常に高い場合は、このような動的伸張から生じる参照光路の長さ変化の補償が必要となる。これは、参照光の部分的なフィードバックによって行われる。
【0039】
このために、参照ファイバー光ケーブル24は、参照光の一部がファイバー光ケーブル24に後方反射するよう(光源側にもどるよう)、参照光送信器23の領域において形成されている。同様に、ファイバー光ケーブル20a、20bもまた、参照光の一部がファイバー光ケーブルに後方反射するよう、光送信器13a、13bの領域において形成されている。両方の後方反射光成分は、光カプラ19a、19bを介して、補償ユニット27a、27bに到達し、そこで、2つの光成分の干渉が起こる。その結果として生じる干渉信号から、測定光路(ファイバー光ケーブル20a、20b)と比較して、参照光路(ファイバー光ケーブル24)の動的長さ変化に関する情報を決定することができ、その情報が補償に必要となる。この情報に基づき、ファイバー光ケーブル(特に、参照光送信器への長いケーブル)の動的伸張によって生じたエラーが補償される。
【0040】
以下、図2に関し、測定光線の入射角が、目標物ユニット及びその検出器アレイに対して広い角度範囲で変化したとしても、可動部分なしに、干渉信号の生成を可能にするために満たすべき幾何学的条件を説明する。
【0041】
図2は、検出器アレイ14の表面に対する垂線Nに対して角度αで入射する測定光線16を示している。光送信器13からの距離が検出器アレイ14の広がりよりはるかに長いという事実のため、測定光線16の波面29は、ほぼ直線状に延びている。いずれにしても、その曲率度は、参照光送信器23からかなり短い光路上で、半透明ミラー32を介して検出器アレイ14に照射される参照光線25の波面30の曲率よりも大幅に小さい。
【0042】
干渉信号の測定を可能にする条件は、測定光線16と参照光線25の特定の場所の波面が、アレイ14のひとつの検出器画素31上に十分平行に当たるということである。この平行要件からの許容偏差に関する正確な情報は、干渉信号の評価可能性が、特に、用いられる測定電子機器によって異なるため、規定することができない。式α=λ/(2d)によって、おおよその評価が可能になる。この等式に基づき、波長がλ=630mmで、検出器画素径がd=10μmとすると、α=0.03radまたは1.7°の許容偏角が算出される。
【0043】
図2の説明図が示しているように、波面29、30の異なる曲率のため、この条件は、検出器アレイ14のうち1つ、または極少数の隣接する検出器画素31のみに対して満たされる。図3では、このことは、31−8として示されるアレイ14の8番目の検出器画素に当てはまる。
【0044】
これにより、測定光線16の入射角のより大きい範囲が、測定光線及び参照光線が始まるポイント(光送信器)の位置決めに関して、また、適切な検出器アレイに接した両光線の波面の関連曲率に関して、上述した幾何学的条件を満たすことによって、可動部なしに、捕らえられることができることが明らかである。測定光線16の波面に対して、参照光線25の波面の曲率の度合いが高ければ高いほど、測定光線16と検出器アレイ14の垂線Nとの間の評価可能角度αも大きくなる。同時に、干渉する隣接画素の数も減る。本発明の実験的評価は、平面的な検出器アレイ(共通の平面に配置された検出器画素を備えたもの)に対する角度αが、ほぼ±45°、最大±60°であることを示した。これは、ほとんどの使用の場合において十分なものである。より大きな範囲が必要な場合は、図3に示す検出器アレイの構成が選択可能であり、ここでは、アレイの異なる部分14−1、14−2が、角度βをなして互いに方向付けられており、角度βは、好ましくは、少なくとも30°である。
【0045】
記載した発明は、多数の改変が可能であり、とりわけ、下記が想定される。
【0046】
検出器アレイを構成するには、光の位置分解検出を可能にする複数の感光素子を備えたものであるならば、別の電子要素であってもよい。検出器アレイの感光素子(画素)は、好ましくは(しかし必ずしも必要でない)直線上のラインに沿って延びていることが好ましい。コスト及び機能を考慮すると、CCD検出器アレイが特に適切である。
【0047】
本発明において用いられる光の波長は、可視範囲内のものでなくてもよい。よって、本発明において意味する「光」とは、可視範囲に近接する電磁波も指すものである(紫外線とともに赤外線も含む)。
【0048】
各光送信器における測定光線及び参照光線の波面の曲率は、そこに存在する光学条件によって決定される。点光源を持って、球状の波面が発生する。しかし、検出器アレイに当たる際の、異なる曲率に関する上述した条件が満たされる限りにおいて、適切な出力光学機器によって、本発明に適切な、異なる(球状ではない)曲面の波面を発生させることもできる。
【0049】
図1に示す構成は、複数の光送信器13a、13bに対応する(可干渉性の、つまり干渉に適した)参照光が同じ(共通の)ポイント(参照光送信器23)に存在しているものであり、実際的な理由により利点があるが、必ずしも必要なものではない。目標物ユニットにおける参照光(参照光送信器)のための複数の出口箇所を設けることも可能である。
【0050】
上述したように、この位置検出システムは、原則的に、可動部品なしで作動することが可能である。しかし、測定光が十分な強度で目標物ユニットの検出器アレイに当たることが要件である。従って、それは十分に幅広く照射されなければならない。もし、強度上の理由により、より集中した測定光が必要となる場合、あるいは、目標物の移動範囲が非常に大きい場合は、測定光を目標物ユニットに向けるための旋回装置を設けてもよい。ただし、レーザ追跡システムとは異なり、測定光の方向付けは、費用効果が良い方法で達成できる大まかなもので十分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標物(11)の位置の非接触式干渉計型検出のための位置検出システムであって、
目標物ユニット(11)と、
可干渉性の光の測定光線(16)を前記目標物ユニット(11)に照射する少なくとも1つの測定光送信器(13)を備えた測定光送信器ユニット(10)とを有し、
前記目標物ユニット(11)の位置が、前記測定光線(16)と、当該測定光線(16)と可干渉性である参照光線(25)との干渉により検出器によって生成される干渉信号から得られる干渉計型測定データを用いて決定される位置検出システムにおいて、
前記目標物ユニット(11)は、湾曲した光波面(30)を備えた前記参照光線(25)を送信するよう構成された参照光送信器(23)を有するとともに、
前記目標物ユニットは、複数の検出器画素(31)を備えた少なくとも1つの検出器アレイ(14)を有しており、前記参照光送信器(23)の参照光線(25)が当該検出器アレイ(14)に当たるように、当該検出器アレイ(14)は前記目標物ユニット(11)に固定されており、
前記測定光線(16)の波面(29)は、前記参照光線(25)の波面(30)の曲率よりも小さい曲率で、前記目標物ユニット(11)の前記検出器アレイ(14)に当たり、
前記測定光線(16)及び前記参照光線(25)の波面(29、30)は、十分に平行な向きで、前記検出器アレイ(14)の検出器画素の一部(31−8)のみに当たって、当該検出器画素(31−8)における干渉信号の生成を可能にし、
前記検出器アレイ(14)の干渉信号を生成している少なくとも1つの検出器画素(31−8)の干渉信号は、当該各検出器画素(31−8)と前記測定光送信器との間の距離の変化に関する距離情報を決定するために評価され、
前記測定光送信器ユニット(10)に対する前記目標物の位置は、前記距離情報を用いて判定されることを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
前記検出器アレイ(14)は、好ましくは直線状であるラインに沿って延びる検出器画素(31)列からなることを特徴とする請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記測定光線(16)を変調する位相変調器(21)を有することを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記目標物ユニット(11)は、それぞれ複数の検出器画素(31)を備えた少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの複数の検出器アレイ(14a、14b)を有しており、前記参照光送信器(23)の前記参照光線(25)が当該検出器アレイに当たるように当該複数の検出器アレイ(14a、14b)は前記目標物ユニット(11)に固定されており、少なくとも1つの前記測定光線(16)の波面(29)及び前記参照光線(25)の波面は、各検出器アレイ(14a、14b)の検出器画素(31)の一部分のみに十分に平行な向きをもって当たって、当該検出器画素(31−8)における干渉信号の生成を可能にするとともに、
前記測定光送信器ユニット(10)に対する前記目標物の位置は、前記複数の検出器アレイ(14a、14b)のそれぞれにおいて前記干渉信号を生成している少なくとも1つの検出器画素(31−8)の干渉信号を評価することによって得られる距離情報を用いて決定されることを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記測定光送信器ユニット(10)は、少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの複数の測定光送信器(13a、13b)を有しており、当該測定光送信器のそれぞれは、前記目標物ユニットに測定光線(16a、16b)を放射するよう構成されていることを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項6】
前記複数の測定光送信器(13a、13b)の前記複数の測定光線(16a、16b)が、異なるように変調する変調器を有することを特徴とする請求項5に記載の位置検出システム。
【請求項7】
走査対象物(3)の表面(2)を走査する走査システムであって、走査センサ(5)と、位置決め装置(6)とを有し、これによって、位置決め装置に固定された走査センサ(5)が、前記走査対象物に対して、異なる所望の位置に移動可能であるものにおいて、先行する請求項のいずれか一項に記載の位置検出のための位置検出システム(9)を備え、前記目標物ユニット(11)の位置の検出により、前記走査センサ(5)の位置が判定されるように、前記目標物ユニットが前記走査センサに関して所定の位置に位置するとともに、位置決めシステムによって決定された前記走査センサ(5)の位置情報がセンサ走査情報とともに処理されて、所望の表面走査情報を生成することを特徴とする走査システム。
【請求項8】
前記位置決め装置は、多次元可動式ロボットアーム(8)を備えた位置決めロボット(7)を備えており、前記走査センサ(5)と前記目標物ユニット(11)が前記ロボットアーム(8)に固定されていることを特徴とする請求項7に記載の走査システム。
【請求項9】
前記走査センサ(5)が非接触式で作動することを特徴とする請求項7または8に記載の走査システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−515070(P2010−515070A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544364(P2009−544364)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010541
【国際公開番号】WO2008/080490
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(508187056)アイシス・ゼントロニクス・ゲー・エム・ベー・ハー (3)
【住所又は居所原語表記】INNSTR. 28, 68199 MANNHEIM, BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
【Fターム(参考)】