説明

直交復調器

【課題】直交復調器において、受信した変調信号を同期検波する前に、変調信号に含まれ
るローカル信号の漏洩を低減する。
【解決手段】直交復調器1は、受信した変調信号を二つに分配すると共に、二つの変調信
号が90°の位相差となるよう機能する分配位相器2と、分配位相器2から出力されるF
SK変調信号成分を通過させると共に、漏洩しているローカル信号成分を除去する第一及
び第二の帯域フィルタ3、4と、直交復調するためのローカル信号を出力する局部発振器
5と、第一及び第二の帯域フィルタ3、4から出力される変調信号とローカル信号とを夫
々乗算して同期検波する第一及び第二の乗算器6、7と、同期検波したベースバンド信号
成分の高周波成分を除去し、FSK変調信号からなるベースバンド信号を出力する第一の
低域フィルタ8及び第二の低域フィルタ9とを備えて構成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直交復調器に関し、特に変調信号に漏洩している局部発振信号を、同期検波す
る前に除去する機能を有した直交復調器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、無線通信機器のデジタル変調方式を構成する手段として、直交変復調器
が使用されている。直交変調器は、二つの系列のベースバンド信号を、互いに90°位相
の異なる二つの局部発振(ローカル)信号と夫々乗算した後、振幅変調された二つの変調
信号を加算して変調送信信号としたものである。一方、直交復調器は、受信した変調信号
を、互いに90°位相の異なる二つのローカル信号と夫々乗算し、二つの系列のベースバ
ンド信号に復調分離するものである。
【0003】
図11は、直交変復調器の構成を示す図であり、図11(a)は、直交変調器の構成を
示し、図11(b)は、直交復調器の構成を示す。
直交変調器101は、2系列からなるベースバンド信号I、及びQを入力し、夫々高周
波成分を除去する第一の低域フィルタ102、及び、第二の低域フィルタ103と、搬送
波となる第一のローカル信号を出力する局部発振器104と、局部発振器104が出力す
る第一のローカル信号とベースバンド信号Iとを乗算し、振幅変調を行う第一の乗算器1
05と、局部発振器104が出力する第一のローカル信号と90°の位相差を有する第二
のローカル信号を生成する90°位相器106と、90°位相器106が出力する第二の
ローカル信号とベースバンド信号Qとを乗算し、振幅変調を行う第二の乗算器107と、
により構成される。
【0004】
直交復調器108は、同期検波を行うための第一のローカル信号を出力する局部発振器
109と、受信した変調信号を前記第一のローカル信号で同期検波し、ベースバンド信号
Iを生成する第一の乗算器110と、局部発振器109が出力する第一のローカル信号と
90°の位相差を有する第二のローカル信号を生成する90°位相器111と、受信した
変調信号を前記第二のローカル信号で同期検波し、ベースバンド信号Qを生成する第二の
乗算器112と、第一の乗算器110、及び、第二の乗算器112が出力するベースバン
ド信号I、及びQを入力し、夫々高周波成分を除去する第一の低域フィルタ113、及び
、第二の低域フィルタ114と、により構成される。
【0005】
ここで、直交変復調器の構成要素である90°位相器について説明する。
ベースバンド信号を直交変復調する際には、第一のローカル信号と第二のローカル信号
が、精度よく90°位相差を保つことが必要である。従って、直交変復調器の構成要素に
おいて、90°位相器の精度を如何に保つかは重要な要点である。
従来、90°位相器の回路構成としては、特許文献1に示した特開2002−2325
02公報により開示されている手法がある。それによれば、位相器を抵抗とコンデンサに
よるRC回路により構成するもので、45°の位相器を二つ組み合わせたものである。こ
の手法においては、抵抗やコンデンサの素子値のばらつきや寄生容量により、位相差、及
び、通過損失レベルが変動し易いことが難点である。
【0006】
一方、精度の高い90°位相器を実現するものとして、特許文献2に示した特開平5−
37243号公報により開示された手法がある。これによれば、90°位相器をSAW(
Surface Acoustic Wave)デバイスを用いて実現したものである。SAWデバイスにおい
ては、位相精度は、電極パターンの寸法精度で決定されるが、近年では、電極パターンを
かなり微細に精度よく形成することができ、従って、経年変化の少ない、高精度の90°
位相器を実現することが可能である。
【特許文献1】特開2002−232502公報
【特許文献2】特開平5−37243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の直交復調器においては、変調受信信号に局部発振器が出力するロ
ーカル信号が漏洩すると、不要輻射やDCオフセットなどによる性能の劣化が問題となる
が、従来の直交復調器では、ローカル信号の漏洩を所望値まで抑圧することは困難であっ
た。
本発明は上述したような問題を解決するためになされたものであって、直交復調器にお
いて、受信した変調信号を同期検波する前に、変調信号に含まれるローカル信号の漏洩を
低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係る直交復調器は、受信した変調信号を第一の変調
信号と第二の変調信号とに分配すると共に、第一の変調信号と第二の変調信号とが90°
の位相差となるよう機能する分配位相器と、第一及び第二の変調信号を直交復調するため
の局部発振信号を出力する局部発振器と、分配位相器で分配された第一の変調信号の変調
成分を通過させると共に、漏洩している局部発振信号の成分を除去する第一の帯域フィル
タと、分配位相器で分配された第二の変調信号の変調成分を通過させると共に、漏洩して
いる局部発振信号の成分を除去する第二の帯域フィルタと、第一の帯域フィルタから出力
される第一の変調信号と局部発振信号とを乗算して同期検波する第一の乗算器と、第二の
帯域フィルタから出力される第二の変調信号と局部発振信号とを乗算して同期検波する第
二の乗算器と、第一の乗算器から出力される出力信号の高周波成分を除去する第一の低域
フィルタと、第二の乗算器から出力される出力信号の高周波成分を除去する第二の低域フ
ィルタと、を備えたことを特徴としている。
このような本発明によれば、直交復調器は、変調信号に含まれる変調信号成分は通過さ
せると共に、変調信号に漏洩しているローカル信号を除去することができ、不要輻射やD
Cオフセットなどによる性能の劣化を防止することができる。
【0009】
本発明に係る直交復調器は、分配位相器が入力用IDTと二つの出力用IDTとを備え
、出力用IDTが一方向性IDTであるSAWデバイスにより構成されていることを特徴
としている。
このような本発明によれば、分配位相器をSAWデバイスにより構成したので、精度の
高い位相特性が得られ、経時変化の少ないレベル安定度の優れた分配位相器が実現できる
ことから、直交復調を行う上で大きな効果を発揮する。また、出力IDTとして一方向性
IDTを用いたので、トリプルトランジットエコーにより発生するリップルによって生ず
るレベル変動や、位相誤差を低減できる。
【0010】
本発明に係る直交復調器は、第一の帯域フィルタ及び第二の帯域フィルタがSAWデバ
イスにより構成される縦結合二重モードフィルタであることを特徴としている。
このような本発明によれば、第一の帯域フィルタ及び第二の帯域フィルタを、SAWデ
バイスを用いた縦結合二重モードフィルタにより構成したので、広い通過帯域を有し、ま
た変調信号に漏洩する局部発振信号の低減を実現していることから、変調信号としてはF
SK変調信号の使用が好適であり、特に周波数偏移幅の広い場合に有効である。
【0011】
本発明に係る直交復調器は、第一の帯域フィルタ及び第二の帯域フィルタが、SAWデ
バイスにより構成される横結合二重モードフィルタであることを特徴としている。
このような本発明によれば、第一の帯域フィルタ及び第二の帯域フィルタを、SAWデ
バイスを用いた横結合二重モードフィルタにより構成したので、比較的通過帯域が狭い場
合に優れた特性を有し、また変調信号に漏洩する局部発振信号の低減を実現していること
から、受信信号としてはFSK変調信号の使用が好適であり、特に、周波数偏移幅の狭い
場合に有効である。
【0012】
本発明に係る直交復調器は、受信した変調信号を第一の変調信号と第二の変調信号とに
分配すると共に、第一の変調信号と第二の変調信号とが90°の位相差となるよう機能す
る分配位相器と、第一及び第二の変調信号を直交復調するための局部発振信号を出力する
局部発振器と、第一の変調信号に漏洩している局部発振信号の成分を除去する第一の共振
子と、第二の変調信号に漏洩している局部発振信号の成分を除去する第二の共振子と、分
配位相器から出力される第一の変調信号と局部発振信号とを乗算して同期検波する第一の
乗算器と、分配位相器から出力される第二の変調信号と局部発振信号とを乗算して同期検
波する第二の乗算器と、第一の乗算器から出力される出力信号の高周波成分を除去する第
一の低域フィルタと、第二の乗算器から出力される出力信号の高周波成分を除去する第二
の低域フィルタと、を備えたことを特徴としている。
このような本発明によれば、直交復調器は、変調信号に漏洩しているローカル信号を除
去することができ、不要輻射やDCオフセットなどによる性能の劣化を防止することがで
きる。
【0013】
本発明に係る直交復調器は、分配位相器が入力用IDTと二つの出力用IDTとを備え
、出力用IDTが一方向性IDTであるSAWデバイスにより構成されていることを特徴
としている。
このような本発明によれば、分配位相器をSAWデバイスにより構成したので、精度の
高い位相特性が得られ、経時変化の少ないレベル安定度の優れた分配位相器が実現できる
ことから、直交復調を行う上で大きな効果を発揮する。また、出力IDTとして一方向性
IDTを用いたので、トリプルトランジットエコーにより発生するリップルによって生ず
るレベル変動や、位相誤差を低減できる。
本発明に係る直交復調器は、第一及び第二共振子がSAWデバイスにより構成される一
端子対共振子であることを特徴としている。
このような本発明によれば、共振子をSAWデバイスにより構成したので、経時変化の
少ない共振周波数精度の高い、極めて安定した共振子を実現でき、変調信号に漏洩してい
るローカル信号を除去する上で大きな効果を発揮する。また、局部発振信号を除去する手
段として共振子を用いると、帯域フィルタを用いた場合と異なり、周波数の設定が一ポイ
ントであることから、共振子の設計は、容易となる。
【0014】
本発明に係る直交復調器は、局部発振信号を出力する局部発振器と、受信した変調信号
を第一の変調信号と第二の変調信号とに分配すると共に、第一の変調信号と第二の変調信
号とを90°の位相差とする機能と、第一及び第2の変調信号の変調成分を夫々通過させ
ると共に、漏洩している局部発振信号の成分を除去するフィルタ機能とを備えた分配位相
器フィルタと、分配位相器フィルタから出力される第一の変調信号と局部発振信号とを乗
算して同期検波する第一の乗算器と、分配位相器フィルタから出力される第二の変調信号
と局部発振信号とを乗算して同期検波する第二の乗算器と、第一の乗算器から出力される
出力信号の高周波成分を除去する第一の低域フィルタと、第二の乗算器から出力される出
力信号の高周波成分を除去する第二の低域フィルタと、を備えたことを特徴としている。
このような本発明によれば、直交復調器は、変調信号に含まれる変調信号成分は通過さ
せると共に、変調信号に漏洩している局部発振信号を除去することができ、不要輻射やD
Cオフセットなどによる性能の劣化を防止することができる。また、フィルタの機能を分
配位相器に持たせたので、直交復調器の小型化とコストの低減を図ることが出来る。
【0015】
本発明に係る直交復調器は、分配位相器フィルタが、入力用IDTと、二つの出力用I
DTと、二つの出力用IDTの間に夫々配置されたグレーティングと、を備えたSAWデ
バイスにより構成されていることを特徴としている。
このような本発明によれば、分配位相器フィルタをSAWデバイスにより構成したので
、精度の高い位相特性と、経時変化の少ないレベル安定度の優れた分配位相が得られると
共に、安定した所望のフィルタ特性が得られ、直交復調を行う上で大きな効果を発揮する

【0016】
本発明に係る直交復調器は、受信変調信号が、FSK変調信号であることを特徴として
いる。
このような本発明によれば、変調信号としてFSK変調信号を用いた場合に好適であり
、優れた性能の直交復調が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
本発明においては、直交復調器を構成する乗算器の前段に変調信号に漏洩したローカル
信号を除去するためのフィルタを挿入することとした。また、フィルタは、分配位相器と
共にSAWデバイスにより構成した。なお、以降に示す実施形態においては、変調信号を
直交復調する際に、位相差が90°の二つのローカル信号を用いて同期検波せずに、受信
して分配した二つの変調信号に90°の位相差を設け、一つのローカル信号を用いて同期
検波している。
【0018】
図1は、本発明に係る直交復調器の第一の実施形態を示す構成図である。
第一の実施形態は、変調信号がFSK変調信号である場合の直交復調器の構成を示し、
フィルタの特性としては、FSK変調信号成分は通過させ、ローカル信号成分を除去する
ものである。
直交復調器1は、受信した変調信号を第一の変調信号と第二の変調信号とに分配すると
共に、第一の変調信号と第二の変調信号とが90°の位相差となるよう機能する分配位相
器2と、分配位相器2で分配された第一の変調信号であるFSK変調信号成分を通過させ
ると共に、漏洩しているローカル信号成分を除去する第一の帯域フィルタ3と、分配位相
器2で分配された第二の変調信号であるFSK変調信号成分を通過させると共に、漏洩し
ているローカル信号成分を除去する第二の帯域フィルタ4とを備える。さらに、第一の変
調信号及び第二の変調信号を直交復調するためのローカル信号を出力する局部発振器5と
、第一の帯域フィルタ3から出力されるFSK変調信号と、局部発振器5から出力される
ローカル信号とを乗算して同期検波する第一の乗算器6と、上記第一の帯域フィルタ3か
ら出力されるFSK変調信号とは90°の位相差を有する第二の帯域フィルタ4から出力
されるFSK変調信号と、局部発振器5から出力されるローカル信号と、を乗算して同期
検波する第二の乗算器7とを備える。さらに、第一の乗算器6から出力されるベースバン
ド信号成分の高周波成分を除去し、FSK変調信号からなるベースバンド信号Iを出力す
る第一の低域フィルタ8と、第二の乗算器7から出力されるベースバンド信号成分の高周
波成分を除去し、FSK変調信号からなるベースバンド信号Qを出力する第二の低域フィ
ルタ9と、を備えて構成される。
【0019】
このような直交復調器1の動作について説明する。
受信したFSK変調信号からなる変調信号は、分配位相器2の入力IDTに入力され、
二つの変調信号に分配されて、弾性表面波となって二つの出力IDTに伝搬する。入力I
DTから二つの出力IDTへの距離は、詳細を後述するが、二つ出力IDTが出力する夫
々の変調信号の位相差が90°となるよう異なっている。
そこで、分配位相器2で分配された二つの変調信号は、90°の位相差を有して分配位
相器2より第一の変調信号と第二の変調信号となって出力される。次に、第一の変調信号
及び第二の変調信号は、夫々第一の帯域フィルタ3、及び第二の帯域フィルタ4に夫々入
力され、FSK変調信号成分のみを通過させ、変調信号に漏洩しているローカル信号を除
去する。ローカル信号が除去された第一の変調信号と第二の変調信号は、第一の乗算器6
と第二の乗算器7とに夫々入力され、局部発振器5が出力するローカル信号と乗算するこ
とにより同期検波され、二系列のベースバンド信号に復調される。さらに、復調された二
つのベースバンド信号は、第一の低域フィルタ8と第二の低域フィルタ9に入力され、高
周波成分を除去して、所望のベースバンド信号I、及び、Qを得る。
【0020】
次に、第一の帯域フィルタ3と第二の帯域フィルタ4について説明する。
第一の帯域フィルタ3と第二の帯域フィルタ4は、同一な特性を有しており、SAWデ
バイスにより構成される。SAWフィルタの代表的なものとして二重モードフィルタが知
られている。二重モードフィルタは、近接配置された二つのIDTと、二つのIDTの外
側に一対の反射器を備え、同一基板上に近接配置した二つのIDT間の音響結合により励
起される周波数の異なる共振モードを利用したフィルタである。また、二重モードフィル
タは、二つのIDTの配置の方法により、縦結合二重モードフィルタと、横結合二重モー
ドフィルタに分かれている。第一の実施形態の直交復調器においては、縦結合二重モード
フィルタを採用している。縦結合二重モードフィルタは、二つのIDTを伝搬方向に沿っ
て配置したことが特徴である。
【0021】
図2は、本発明に係る直交復調器に用いられている帯域フィルタの通過特性を示す図で
ある。図2の縦軸は、損失を示し矢印の方向に向かって損失が増加し、また、横軸は周波
数を示す。図2に示すごとく、縦結合二重モードフィルタは、FSK変調信号成分を通過
させると共に、変調信号に漏洩したローカル信号成分を除去する特性を有している。この
ような複通過特性を持たせるようにするのは、縦結合二重モードフィルタの終端条件を所
定の値にずらすことで可能となる。また、縦結合二重モードフィルタは、広い通過帯域を
実現しており、従って、FSK変調信号が、周波数偏移幅の広い場合に、特に有効である

【0022】
次に、分配位相器2について説明する。
分配位相器2は、SAWデバイスにより構成し、受信した変調信号を二つの変調信号に
分配すると共に、分配した二つの変調信号が90°の位相差となるよう変換する90°位
相器の機能を有する。分配位相器2は、三つのIDTを並べて構成し、中央に入力用のI
DTを配置し、その両側に第一の出力用IDTと第二の出力用IDTを配置する。そこで
、分配した二つの変調信号が90°の位相差を保つためには、中央に配置した入力用ID
Tから二つの出力用IDTへの伝搬距離に、(n/2+1/4)λの差を持たせることが
必要である。ここで、λは、SAWの波長であり、n=0、1、2、3・・・・とする。
【0023】
図3はSAWデバイスにより構成した分配位相器の構成を示した図である。
図3において、分配位相器は、入力用IDT10と、第一の出力用IDT11と、第二
の出力用IDT12とにより構成する。そこで、分配した二つの変調信号に90°の位相
差を持たせるため、入力IDT10と第一の出力用IDT11との距離をlとすると、入
力IDT10と第二の出力用IDT12との距離をl+(n/2+1/4)λとしている
。また、図3に示した分配位相器は、第一の出力用IDT11と第二の出力用IDT12
を、一方向性IDTとしている。そこで、IDTの電極幅は、「λ/8」と「3λ/8」
のものを配置し、電極スペースは、「λ/8」としている。
このように一方向性IDTを用いることにより、SAWデバイスにおいて発生するトリ
プルトランジットエコー(以降、TTEと称す)による通過特性のリップルにより生ずる
レベル変動や位相誤差を低減する。
【0024】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。
第二の実施形態は、第一の帯域フィルタと第二の帯域フィルタを横結合二重モードフィ
ルタにより構成したものである。
図4は、本発明に係る直交復調器の第二の実施形態を示す構成図である。
第二の実施形態においても、変調信号がFSK変調信号である場合の直交復調器の構成
を示し、フィルタの特性としては、FSK変調信号成分は通過させ、ローカル信号成分を
除去するものである。なお、図1に示した第一の実施形態と同一部分には同一符号を付し
て説明は省略する。
【0025】
直交復調器13は、分配位相器2で分配された第一の変調信号であるFSK変調信号成
分を通過させると共に、漏洩しているローカル信号成分を除去する第一の帯域フィルタ1
4と、分配位相器2で分配された第二の変調信号であるFSK変調信号成分を通過させる
と共に、漏洩しているローカル信号成分を除去する第二の帯域フィルタ15とを備え、こ
れら第一の帯域フィルタ14、及び第二の帯域フィルタ15を、SAWデバイスからなる
横結合二重モードフィルタにより構成した点に特徴がある。
横結合二重モードフィルタは、縦結合二重モードフィルタと同様に、近接配置された二
つのIDTと、二つのIDTの外側に一対の反射器を備えており、IDTをSAWの伝搬
方向に対して平行に配置している。
【0026】
図5は、本発明に係る直交復調器に用いられている帯域フィルタの通過特性を示す図で
ある。図5の縦軸は、損失を示し矢印の方向に向かって損失が増加し、また、横軸は周波
数を示す。図5に示すごとく、横結合二重モードフィルタは、FSK変調信号成分を通過
させると共に、変調信号に漏洩したローカル信号成分を除去する特性を有している。この
ような複通過特性を持たせるようにするには、横結合二重モードフィルタの終端条件を所
定の値にずらすことで可能となる。また、横結合二重モードフィルタは、比較的狭い通過
帯域を必要とする場合に適応され、従って、FSK変調信号が、周波数偏移幅の狭い場合
に、特に有効である。
なお、直交復調器13の動作については、第一の帯域フィルタ14と第二の帯域フィル
タ15の構成とその通過特性が、第一の実施形態と異なることのみであるので説明を省略
する。
【0027】
次に、本発明の第三の実施形態について説明する。
第三の実施形態は、分配位相器の後段に共振子を並列に配置し、変調信号に漏洩してい
るローカル信号を除去したものである。
図6は、本発明に係る直交復調器の第三の実施形態を示す構成図である。
第三の実施形態は、変調信号がFSK変調信号である場合の直交復調器の構成を示し、
共振子を用い、変調信号に漏洩しているローカル信号成分を除去するものである。なお、
図1に示した第一の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0028】
直交復調器16は、分配位相器2から出力される第一の変調信号に漏洩しているローカ
ル信号成分を除去する第一の共振子17と、分配位相器2から出力される第二の変調信号
に漏洩しているローカル信号成分を除去する第二の共振子18と、を備えている。即ち、
第三の実施形態においては、分配位相器2の後段に配置していた帯域フィルタを、SAW
デバイスからなる共振子に置き換えて構成した点に特徴がある。
このような第三の実施形態においては共振子として一端子対共振子を用いている。一端
子対共振子は、中央にIDTを置き、その両側に反射器を配置して構成したもので、ID
Tにより励振されたSAWを両反射器間に閉じこめることにより高いQを持つ共振子を実
現することができる。
【0029】
図7は、本発明に係る直交復調器に用いられている一端子対共振子の通過特性を示す図
である。図7の縦軸は、損失を示し矢印の方向に向かって損失が増加し、また、横軸は周
波数を示す。図7に示すごとく、一端子対共振子は、変調信号に漏洩したローカル信号成
分を除去する特性を有している。
なお、直交復調器16の動作については、分配位相器の後段に挿入していた帯域フィル
タを、SAWデバイスからなる一端子対共振子に置き換えたことのみ第一の実施形態と異
なるので、説明を省略する。
【0030】
次に、本発明の第四の実施形態について説明する。
第四の実施形態は、第一の実施形態において、分配位相器の後段に配置していた二つの
帯域フィルタの機能を、分配位相器に持たせたものである。
図8は、本発明に係る直交復調器の第四の実施形態を示す構成図である。
本第四の実施形態においても、ベースバンド信号がFSK変調信号である場合の直交復
調器の構成を示し、分配位相器に持たせた帯域フィルタの特性としては、FSK変調信号
成分は通過させ、ローカル信号成分を除去するものである。なお、図1に示した第一の実
施形態と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0031】
直交復調器19は、受信した変調信号を第一の変調信号と第二の変調信号とに分配する
と共に、第一の変調信号と第二の変調信号とが90°の位相差となるよう機能する分配位
相器の機能と、第一の変調信号に含まれるFSK変調信号成分を通過させると共に、漏洩
しているローカル信号成分を除去する帯域フィルタの機能と、第二の変調信号に含まれる
FSK変調信号成分を通過させると共に、漏洩しているローカル信号成分を除去する帯域
フィルタの機能とを備えた分配位相器フィルタ20とを備える。つまり、第四の実施形態
においては、分配位相器の後段に配置していた帯域フィルタの機能を、SAWデバイスか
らなる分配位相器に持たせるようにした点に特徴がある。
【0032】
図9は、本発明に係る直交復調器に用いられている分配位相器フィルタの構成を示す図
である。図9に示すごとく、分配位相器フィルタは、分配位相器を構成する入力用IDT
と、入力用IDTの両側に配置された二つの出力用IDTの間に、夫々グレーティングを
配置している。分配位相器フィルタ20は、入力用IDT21と、その両側に配置された
第一の出力用IDT22、及び、第二の出力用IDT23と、入力用IDT21と第一の
出力用IDT22との間、及び、入力用IDT21と第二の出力用IDT23との間に配
置された第一のグレーティング24と、第二のグレーティング25と、により構成する。
第一のグレーティング24と、第二のグレーティング25の夫々は、ほぼλ/2ピッチで
構成され、IDT部とグレーティング部の速度差を補正したピッチとする、グレーティン
グの電極幅は、おおよそ、0.1μm<グレーティングの電極幅<(λ/2)−0.1μ
mとする。また、ローカル信号を除去する特性の周波数帯域幅は、グレーティングの電極
幅により決定される。なお、入力用IDT21と、第一の出力用IDT22と、第二の出
力用IDT23の電極子構造は、第一の実施形態において説明した分配位相器の構造と同
様である。
【0033】
図10は、本発明に係る直交復調器に用いられている分配位相器フィルタの通過特性を
示す図である。図10の縦軸は、損失を示し矢印の方向に向かって損失が増加し、また、
横軸は周波数を示す。図10に示すごとく、分配位相器フィルタは、FSK変調信号成分
を通過させると共に、変調信号に漏洩したローカル信号成分を除去する特性を有している

なお、直交復調器19の動作については、分配位相器の後段に配置していた帯域フィル
タの機能を、SAWデバイスからなる分配位相器に持たせたことのみが第一の実施形態と
異なるので説明を省略する。
【0034】
以上、上述した本発明に係る直交復調器においては、直交復調器の構成要素である分配
位相器について、出力用IDTを一方向性IDTとしたが、両方向性IDTを使用しても
同様の機能を満たすことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る直交復調器の第一の実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明に係る直交復調器に用いられている帯域フィルタの通過特性を示す図である。
【図3】SAWデバイスにより構成した分配位相器の構成図である。
【図4】本発明に係る直交復調器の第二の実施形態を示す構成図である。
【図5】本発明に係る直交復調器に用いられている帯域フィルタの通過特性を示す図である。
【図6】本発明に係る直交復調器の第三の実施形態を示す構成図である。
【図7】本発明に係る直交復調器に用いられている一端子対共振子の通過特性を示す図である。
【図8】本発明に係る直交復調器の第四の実施形態を示す構成図である。
【図9】本発明に係る直交復調器に用いられている分配位相器フィルタの構成を示す図である。
【図10】本発明に係る直交復調器に用いられている分配位相器フィルタの通過特性を示す図である。
【図11】直交変復調器の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1、13、16、19…直交復調器、2…分配位相器、3、14…第一の帯域フィルタ
、4、15…第二の帯域フィルタ、5…局部発振器、6…第一の乗算器、7…第二の乗算
器、8…第一の低域フィルタ、9…第二の帯域フィルタ、10、21…入力用IDT、1
1、22…第一の出力用IDT、12、23…第二の出力用IDT、17…第一の共振子
、18…第二の共振子、20…分配位相器フィルタ、24、25…グレーティング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した変調信号を第一の変調信号と第二の変調信号とに分配すると共に、該第一の変
調信号と第二の変調信号とが90°の位相差となるよう機能する分配位相器と、
前記第一及び第二の変調信号を直交復調するための局部発振信号を出力する局部発振器
と、
前記分配位相器で分配された前記第一の変調信号の変調成分を通過させると共に、漏洩
している前記局部発振信号の成分を除去する第一の帯域フィルタと、
前記分配位相器で分配された前記第二の変調信号の変調成分を通過させると共に、漏洩
している前記局部発振信号の成分を除去する第二の帯域フィルタと、
前記第一の帯域フィルタから出力される前記第一の変調信号と前記局部発振信号とを乗
算して同期検波する第一の乗算器と、
前記第二の帯域フィルタから出力される前記第二の変調信号と前記局部発振信号とを乗
算して同期検波する第二の乗算器と、
前記第一の乗算器から出力される出力信号の高周波成分を除去する第一の低域フィルタ
と、
前記第二の乗算器から出力される出力信号の高周波成分を除去する第二の低域フィルタ
と、
を備えたことを特徴とする直交復調器。
【請求項2】
前記分配位相器は、入力用IDTと二つの出力用IDTとを備え、前記出力用IDTが
一方向性IDTであるSAWデバイスにより構成されていることを特徴とする請求項1に
記載の直交復調器。
【請求項3】
前記第一の帯域フィルタ及び第二の帯域フィルタは、SAWデバイスにより構成される
縦結合二重モードフィルタであることを特徴とする請求項1又は2に記載の直交復調器。
【請求項4】
前記第一の帯域フィルタ及び第二の帯域フィルタは、SAWデバイスにより構成される
横結合二重モードフィルタであることを特徴とする請求項1又は2に記載の直交復調器。
【請求項5】
受信した変調信号を第一の変調信号と第二の変調信号とに分配すると共に、該第一の変
調信号と第二の変調信号とが90°の位相差となるよう機能する分配位相器と、
前記第一及び第二の変調信号を直交復調するための局部発振信号を出力する局部発振器
と、
前記第一の変調信号に漏洩している前記局部発振信号の成分を除去する第一の共振子と

前記第二の変調信号に漏洩している前記局部発振信号の成分を除去する第二の共振子と

前記分配位相器から出力される前記第一の変調信号と前記局部発振信号とを乗算して同
期検波する第一の乗算器と、
前記分配位相器から出力される前記第二の変調信号と前記局部発振信号とを乗算して同
期検波する第二の乗算器と、
前記第一の乗算器から出力される出力信号の高周波成分を除去する第一の低域フィルタ
と、
前記第二の乗算器から出力される出力信号の高周波成分を除去する第二の低域フィルタ
と、
を備えたことを特徴とする直交復調器。
【請求項6】
前記分配位相器は、入力用IDTと二つの出力用IDTとを備え、前記出力用IDTが
一方向性IDTであるSAWデバイスにより構成されていることを特徴とする請求項5に
記載の直交復調器。
【請求項7】
前記第一及び第二共振子は、SAWデバイスにより構成される一端子対共振子であるこ
とを特徴とする請求項5又は6に記載の直交復調器。
【請求項8】
局部発振信号を出力する局部発振器と、
受信した変調信号を第一の変調信号と第二の変調信号とに分配すると共に、該第一の変
調信号と第二の変調信号とを90°の位相差とする機能と、前記第一及び第2の変調信号
の変調成分を夫々通過させると共に、漏洩している前記局部発振信号の成分を除去するフ
ィルタ機能とを備えた分配位相器フィルタと、
前記分配位相器フィルタから出力される第一の変調信号と前記局部発振信号とを乗算し
て同期検波する第一の乗算器と、
前記分配位相器フィルタから出力される第二の変調信号と前記局部発振信号とを乗算し
て同期検波する第二の乗算器と、
前記第一の乗算器から出力される出力信号の高周波成分を除去する第一の低域フィルタ
と、
前記第二の乗算器から出力される出力信号の高周波成分を除去する第二の低域フィルタ
と、
を備えたことを特徴とする直交復調器。
【請求項9】
前記分配位相器フィルタは、入力用IDTと、二つの出力用IDTと、該二つの出力用
IDTの間に夫々配置されたグレーティングと、を備えたSAWデバイスにより構成され
ていることを特徴とする請求項8に記載の直交復調器。
【請求項10】
前記受信変調信号は、FSK変調信号であることを特徴とする請求項1乃至請求項9の
何れか一項に記載の直交復調器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−60889(P2008−60889A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235129(P2006−235129)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】