説明

直流モータ制御装置

【課題】 直流モータの回転角度および回転方向を確実に検出することを課題とする。
【解決手段】 直流モータのロータコアの各第1〜第3スロットに収納される各第1〜第3相コイル31〜33の巻き数を、各第1〜第3スロット毎に変更している。このように各第1〜第3相コイル31〜33の巻き数を、各第1〜第3スロット毎に変更することで、直流モータのロータの回転に伴い、インピーダンスの段階的な変化が生じ、このインピーダンスの段階的な変化に伴って交流電流成分が段階的に変化する。そして、交流電流成分抽出手段により抽出された交流電流成分の段階的な変化パターンに基づいて、直流モータのロータの回転方向を検出している。これにより、直流モータのロータの回転角度の検出と直流モータのロータの回転方向の検出とが両方とも可能な高性能な回転角度検出装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ付き直流モータの回転角度および回転方向を検出する回転角度検出装置を備えた直流モータ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来より、複数の界磁極を有するステータおよび複数のスロット内に電機子巻線を収納したロータと、電機子巻線が接続されるコンミテータと、外部電源から電機子巻線へ電力を供給する一対のブラシとを備えたブラシ付き直流モータの回転角度を検出する回転角度検出装置が公知である(例えば、特許文献1参照)。
この回転角度検出装置では、直流モータのシャフトの端部に回転角度の検出に用いられるコンミテータを取り付け、このコンミテータに接続される2つのブラシの間の電気的接続がシャフトの回転によってオン、オフすることで生じるパルス信号をカウントすることにより直流モータの回転角度を検出している。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の回転角度検出装置においては、直流モータのシャフトの端部にステータおよびロータとは別体でセンサ(エンコーダ)が設けられており、回転角度検出装置の体格が大型化することが懸念される。また、この回転角度検出装置は、モータの回転方向を検出することができないので、例えば直流モータが外力によって正逆方向のいずれかに回転された場合等、直流モータの回転角度を正確に検出することが困難になることが懸念される。
そこで、体格を小型化し、直流モータの回転角度を正確に検出するという目的で、図10ないし図12に示した回転角度検出装置が提案されている(例えば、特願2008−203112等)。
【0004】
回転角度検出装置(先行の技術1及び2)は、直流モータの回転角度を検出する装置で、直流電流を生成する直流電源101と、交流電流を生成する交流電源102と、直流電源101から直流モータへ供給される直流電流に交流電源102で生成された交流電流を重畳させて直流モータへ供給するためのカップリングコンデンサ103と、直流モータを流れる通電電流を検出する電流検出手段104と、この電流検出手段104により検出された通電電流に基づいて各種信号処理を行って回転パルスを生成する信号処理部105と、この信号処理部105から出力される回転パルスに基づいて直流モータの回転角度を検出する回転角度検出部106とを備えている。
【0005】
直流モータは、3個のティースを有する電機子コアと、各ティースの周囲にそれぞれ集中的に巻回された3個の各相コイルL1〜L3を有する電機子巻線と、この電機子巻線が接続される3個のセグメント111〜113を有するコンミテータと、互いに対向配置される一対のブラシ114、115とを備えている。
各相コイルL1〜L3のインダクタンスは、各相コイルL1〜L3の巻き数が全て同一であるため、同じ値(L1=L2=L3)である。
そして、3個のセグメント111〜113のうちのいずれか2つが、各ブラシ114、115にそれぞれ接触しており、直流モータの回転によるコンミテータの回転に伴って各ブラシ114、115と接触する2つのセグメントが切り替わっていく。
【0006】
ここで、図10(a)に示した回転角度検出装置(先行の技術1)では、直流モータにおいて、各相コイルL1と並列にコンデンサC1が接続されている。
また、直流モータのシャフトの一端側には、図12(a)に示したように、リングバリスタ120が設置されている。このリングバリスタ120には、3つの電極121〜123が形成されている。そして、コンデンサC1は、電極121と電極122との境界部に設置されている。また、リングバリスタ120の各電極121、122に対するコンデンサC1の接続および固定は、半田付けにより行われている。
【0007】
回転角度検出装置(先行の技術1)において、直流モータが60°または120°回転する毎に、インピーダンスの異なる2種の電気回路を形成する。各電気回路に電流が流れることで、電流検出手段104は、図10(b)の時刻T1〜T4の状態に示したように、振幅の大きさが異なる2つの状態の脈流を検出する。
そして、信号処理部105は、電流検出手段104が検出した電流の振幅変化を電圧の異なる2段階のパルス信号に変換する。
そして、回転角度検出部106は、所定時間内に各パルス信号の状態が遷移する回数をカウントすることで、直流モータの回転角度を検出する。したがって、回転角度検出装置(先行の技術1)においては、直流モータの回転角度を60°または120°毎に検出することが可能となる。
【0008】
一方、図11(a)に示した回転角度検出装置(先行の技術2)では、各相コイルL1、L2と並列にコンデンサC1、C2が接続されている。コンデンサC2は、コンデンサC1よりも静電容量が小さいものである。
また、コンデンサC1は、図12(b)に示したように、リングバリスタ120の電極121と電極122との境界部に設置されている。また、コンデンサC2は、リングバリスタ120の電極122と電極123との境界部に設置されている。また、リングバリスタ120の各電極121〜123に対するコンデンサC1、C2の接続および固定は、半田付けにより行われている。
【0009】
回転角度検出装置(先行の技術2)において、直流モータが60°回転する毎に、インピーダンスの異なる3種の電気回路を形成する。各電気回路に電流が流れることで、電流検出手段104は、図11(b)の時刻T1〜T4の状態に示したように、振幅の大きさが異なる3つの状態の脈流を検出する。
そして、信号処理部105は、電流検出手段104が検出した通電電流の振幅変化を電圧の異なる3段階のパルス信号に変換する。
そして、回転角度検出部106は、信号処理部105が出力するパルス信号が第1ステータス(高電圧のパルス信号)、第2ステータス(中間電圧のパルス信号)、第3ステータス(低電圧のパルス信号)の順、あるいは第2ステータス、第3ステータス、第1ステータス、あるいは第3ステータス、第1ステータス、第2ステータスの順に遷移するとき、直流モータが正転方向に回転していることを検出する。
【0010】
また、回転角度検出部106は、信号処理部105が出力するパルス信号が第1ステータス、第3ステータス、第2ステータスの順、あるいは第3ステータス、第2ステータス、第1ステータス、あるいは第2ステータス、第1ステータス、第3ステータスの順に遷移するとき、直流モータが逆転方向に回転していることを検出する。
また、回転角度検出部106は、信号処理部105が出力するパルス信号が各ステータスに遷移する回数をカウントする。そして、そのカウント値を正転方向に回転している時は加算し、逆転方向に回転している時は減算する等、回転方向に応じて増減することで、直流モータの回転角度を検出する。したがって、回転角度検出装置(先行の技術2)においては、直流モータの回転角度を60°毎に検出することが可能となる。また、直流モータの回転方向も検出することが可能となる。
【0011】
[従来の技術の不具合]
ところが、回転角度検出装置(先行の技術1)においては、通電電流の振幅状態の遷移によって直流モータの回転方向を検出することは困難であるという問題があった。
ここで、内燃機関の燃焼室に供給する吸入空気を制御する吸気制御システムの吸気制御弁の駆動源として直流モータを適用することが考えられる。直流モータの回転は、減速機構で40分の1に減速され、吸気制御弁に伝達される。
回転角度検出装置(先行の技術1)は、直流モータの回転角度を60°または120°回転する毎に検出することが可能であるため、減速比40で伝達される吸気制御弁の回転角度について、3°の分解能を有することになる。これにより、分解能が粗いという問題があった。
【0012】
回転角度検出装置(先行の技術1及び2)においては、リングバリスタ120等の回転部品にコンデンサC1、C2を半田付けにより実装する必要があるので、直流モータが高速回転すると、コンデンサC1、C2が脱落する可能性がある。これにより、回転角度検出装置により検出された値に対する信頼性に問題があった。
また、回転角度検出装置(先行の技術1及び2)は、リングバリスタ120等の回転部品にコンデンサC1、C2を半田付けにより実装する必要があるので、部品点数および組付工数が多く、コストアップとなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−6560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、直流モータの回転角度および回転方向を確実に検出することのできる直流モータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、直流モータに、円周方向に所定の間隔で3個以上のティースが設置されたコアと、3個以上のティースの各ティースの周囲にそれぞれ集中的に巻装された3相以上の相コイルを有する電機子巻線と、この電機子巻線が接続される3個以上のセグメントを有するコンミテータと、このコンミテータを介して電機子巻線へ電流を供給する少なくとも一対のブラシとを備えている。
また、コアは、その円周方向に隣り合う各ティース間に、各相コイルを収納する3個以上のスロットを設けている。そして、直流モータは、コアの各スロットに収納される各相コイルの巻き数が、各スロット毎に変更されている。
そして、直流モータに流れる通電電流(交直混在)を電流検出手段が検出し、その検出された通電電流に含まれる交流電流成分を交流電流成分抽出手段が抽出する。そして、回転角度検出手段が、その抽出された交流電流成分に基づいて、直流モータの回転角度を検出する。
【0016】
そして、直流モータのコアの各スロットに収納される各相コイルの巻き数を、各スロット毎に変更することで、直流モータの回転に伴い、インピーダンスの段階的な変化が生じ、このインピーダンスの段階的な変化に伴って交流電流成分が段階的に変化する。すなわち、巻き数が多い相コイルに通電電流が流れると、インピーダンスが大きくなる。これにより、交流電流成分抽出手段により抽出される交流電流成分の振幅が小さくなる。
また、巻き数が少ない相コイルに通電電流が流れると、インピーダンスが小さくなる。これにより、交流電流成分抽出手段により抽出される交流電流成分の振幅が大きくなる。したがって、交流電流成分の振幅の変化に基づいて、直流モータの回転角度を検出することが可能となる。
また、交流電流成分抽出手段により抽出された交流電流成分の段階的な変化パターンから直流モータの回転方向を検出することができるので、回転角度の検出と回転方向の検出とが両方とも可能な高性能な回転角度検出装置を提供することができる。
したがって、直流モータの回転角度および回転方向を確実に検出することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、直流モータは、回転軸方向に延びるシャフトを有するロータと、このロータの周囲を円周方向に取り囲む筒状のステータとを備えている。そして、直流モータのロータには、コア、電機子巻線、コンミテータおよびブラシが設けられている。また、直流モータのステータには、少なくとも2極の界磁極が設けられている。 請求項3に記載の発明によれば、各ティースには、コアの外周からロータの径方向外側に向けて放射状に突出するティース巻装部、およびこのティース巻装部の外周端から周方向の両側に延びるティース磁極部が設けられている。また、各相コイルは、各ティースのティース巻装部の周囲を取り囲むように所定の巻き数分だけ巻装されている。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、3個以上のティースは、各相コイルの重量(ウェイト)の違いを考慮して、ティース巻装部の幅が、各ティース毎に変更されている。
ここで、単純にスロット毎に各相コイルの巻き数を変更すると、各相コイルの重量(ウェイト)の違いで、重量アンバランスが生じる。そこで、各相コイルの重量(ウェイト)の違いを考慮して、ティース巻装部の幅を各ティース毎に変更している。
例えば各相コイルの巻き数が多い程、ティース巻装部の幅を狭くすることにより、各相コイルの重量(ウェイト)を調節し、ロータのアンバランスを解消することができる。これにより、ロータのアンバランスを小さくできるので、振動の原因となって軸受の寿命低下を招いたり、騒音が発生したりする等の不具合を解消することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、3個以上のティースは、ロータの円周方向に60°の間隔で設置された6個の第1〜第6ティースからなる。また、電機子巻線は、6個の第1〜第6ティース毎に巻回される6相の第1〜第6相コイルからなる。
そして、第1ティースに巻回される第1相コイルの巻き数をL1とし、第2ティースに巻回される第2相コイルの巻き数をL2とし、第3ティースに巻回される第3相コイルの巻き数をL3とし、第4ティースに巻回される第4相コイルの巻き数をL4とし、第5ティースに巻回される第5相コイルの巻き数をL5とし、第6ティースに巻回される第6相コイルの巻き数をL6としたとき、第1〜第6相コイルの巻き数は、L1+L4=L2+L5=L3+L6、L1≠L2≠L3≠L4≠L5≠L6の関係を満足するように設定されている。
【0020】
そして、各相コイルの巻き数が異なることにより、直流モータのトルク変動が生じてしまうが、スロットの個数を偶数にして、対向する各相コイルの巻き数の和を全て同一にすることで、直流モータのトルク変動を減少することができる。
そこで、各第1〜第6相コイルの巻き数を、L1+L4=L2+L5=L3+L6、L1≠L2≠L3≠L4≠L5≠L6の関係を満足するように設定する。
これによって、各相コイルの巻き数の比率は、トルク変動、回転モーメントのアンバランスを問題ないレベルに低減することができる。また、交流電流成分の振幅の変化が検出できるレベルには、インピーダンスが変化するような範囲に設定することが望ましい。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、直流モータのコアは、シャフトの外周に嵌合し、回転軸方向に複数積層された磁性鋼板により構成されている。
請求項7に記載の発明によれば、流体流路を流れる流体を制御する流体制御弁と、直流モータの回転動力を流体制御弁に伝達すると共に、直流モータの回転速度を所定の減速比に減速する減速機構とを備えている。この場合には、回転角度検出装置により流体制御弁の回転角度の検出と流体制御弁の回転方向の検出とを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は直流モータ制御装置を示したブロック図で、(b)は回転角度検出装置の通電電流波形を示したタイミングチャートである(実施例1)。
【図2】内燃機関の吸気制御装置を示した構成図である(実施例1)。
【図3】2極3スロット(3ティース)の直流モータのロータを示した斜視図である(実施例1)。
【図4】直流モータのリングバリスタを示した模式図である(実施例1)。
【図5】(a)はブラシとセグメントとの関係を示した説明図で、(b)は(a)の状態を示した回路図である(実施例1)。
【図6】(a)はブラシとセグメントとの関係を示した説明図で、(b)は(a)の状態を示した回路図である(実施例1)。
【図7】(a)はブラシとセグメントとの関係を示した説明図で、(b)は(a)の状態を示した回路図である(実施例1)。
【図8】磁性鋼板を示した平面図である(実施例2)。
【図9】(a)、(b)は2極6スロット(6ティース)の直流モータを示した説明図である(実施例3)。
【図10】(a)は回転角度検出装置を示したブロック図で、(b)は回転角度検出装置の通電電流波形を示したタイミングチャートである(先行の技術1)。
【図11】(a)は回転角度検出装置を示したブロック図で、(b)は回転角度検出装置の通電電流波形を示したタイミングチャートである(先行の技術2)。
【図12】(a)、(b)は直流モータにおけるリングバリスタに対するコンデンサの設置状態を示した模式図である(先行の技術1及び2)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明は、部品点数や組付工数を減少することでコストの削減を図りながらも、直流モータの回転角度および回転方向を確実に検出するという目的を、直流モータのコアの各スロットに収納される各相コイルの巻き数を、各スロット毎に変更することで実現した。
【実施例1】
【0024】
[実施例1の構成]
図1ないし図7は本発明の実施例1を示したもので、図1は直流モータ制御装置を示した図で、図2は内燃機関の吸気制御装置を示した図で、図3は2極3スロット(3ティース)の直流モータのロータを示した図で、図4は直流モータのリングバリスタを示した図である。
【0025】
本実施例の直流モータ制御装置は、2極3ティース(3スロット)構造のブラシ付き直流モータ1と、この直流モータ1の回転角度および回転方向を検出する回転角度検出装置2と、この回転角度検出装置2で検出した直流モータ1の回転角度および回転方向に基づいて直流モータ1への直流電力(直流電流)を制御する直流モータ制御装置(エンジン制御装置、エンジン制御ユニット:以下ECUと呼ぶ)3とを備えている。
この回転角度検出装置2は、直流モータ1へ直流電流を供給する直流電源4と、直流モータ1へ交流電流を供給する交流電源5と、直流モータ1を流れる通電電流を検出する電流検出手段7と、後述する交流電流成分抽出手段を有し、この交流電流成分抽出手段により抽出された交流電流成分の振幅に対応したパルス信号を生成する信号処理部8と、この信号処理部8から出力されるパルス信号に基づいて直流モータ1の回転角度および回転方向を検出する回転角度検出部9とを備えている。
【0026】
そして、直流モータ制御装置は、内燃機関(エンジンE)の各気筒毎の燃焼室内において混合気の燃焼を促進させるための吸気渦流を生成することが可能な吸気制御装置(内燃機関の吸気制御装置)に適用されている。
吸気制御装置は、エンジンEの各気筒毎の燃焼室内において縦方向の吸気渦流(タンブル流)を発生させるシステムである。
吸気制御装置は、エンジンEの運転状態(エンジン情報)に基づいて直流モータ1を制御するECU3と、エンジンEの各吸気ポート10に接続する吸気ダクト11と、この吸気ダクト11の内部(吸気通路12)を流れる吸入空気にタンブル流を発生させる吸気制御弁(タンブル流制御弁:以下TCVと呼ぶ)とによって構成されている。
【0027】
TCVは、エンジンEの運転状態に応じて各吸気通路12の通路断面積を絞ることで、エンジンEの各気筒毎の燃焼室に向かう吸気流を制御する吸気流制御弁である。また、TCVは、エンジンEの運転状態に応じて各吸気通路12における吸気絞り部(各吸気通路壁面とバルブ14の上端面との間に形成される流路)13の開口面積を変化させることで、エンジンEの各気筒毎の燃焼室内においてガス流動または吸気渦流を発生させる吸気流制御弁である。
また、TCVは、吸気ダクト11に対して相対回転するバルブ(吸気制御弁の弁体)14、このバルブ14を支持固定する弁軸(回転軸、シャフト)15、およびこのシャフト15を介してバルブ14を駆動するアクチュエータを有している。
【0028】
バルブ14は、各吸気通路12に開閉自在(回転自在)に設置されており、シャフト15の回転に伴って吸気ダクト11に対して相対回転する回転型バルブである。
アクチュエータは、バルブ14のシャフト15を駆動する直流モータ1、およびこの直流モータ1のモータ軸(回転軸、シャフト)16の回転速度を所定の減速比(例えば減速比40)となるように減速し、直流モータ1の駆動力(モータトルク)を増大させてバルブ14のシャフト15に伝達する動力伝達機構(歯車減速機構)17を有している。
ここで、歯車減速機構17は、直流モータ1のシャフト16に回転駆動されるウォームギヤ、およびこのウォームギヤに噛み合うウォームホイール等によって構成されている。なお、直流モータ1のシャフト16に回転駆動される第1ギヤ、この第1ギヤに噛み合う第2ギヤ、およびこの第2ギヤに噛み合う第3ギヤ等によって歯車減速機構を構成して良い。
【0029】
次に、本実施例の直流モータ1の詳細を図1ないし図7に基づいて簡単に説明する。
直流モータ1は、3相の電機子巻線を集中巻き方式で形成した2極3スロット構造のブラシ付きDCモータであり、回転軸方向に真っ直ぐに延びるシャフト16を有するロータ(電機子)と、このロータの周囲を円周方向(モータ周方向)に取り囲む筒状のステータと、このステータに対して固定されたブラシホルダ(図示せず)に収容保持された一対の給電ブラシ(第1、第2ブラシ)18、19とを備えている。
ステータは、円筒状のモータケース(ヨーク)、およびこのモータケースの内周面において互いに対向する位置に接着剤等により固着された2個の永久磁石(マグネットM1、M2:図9参照)を有している。2個のマグネットM1、M2は、2極の界磁極を形成する。
一対の第1、第2ブラシ18、19は、モータ周方向に180°間隔で、しかも互いに対向して配置されている。また、第1ブラシ18は、外部電源(直流電源)の正極側(Vcc側)に電力供給ラインを介して接続されている。また、第2ブラシ19は、直流電源の負極側(グランド側、GND側)に電力供給ラインを介して接続されている。
【0030】
ロータは、ステータの径方向内側に所定のギャップを介して設置されている。このロータは、モータケースに軸受を介して回転自在に支持されたシャフト16、モータ軸方向(回転軸方向とも言う)に磁性鋼板を複数積層して形成された電機子コア(ロータコア)、このロータコアに巻回される電機子巻線(電機子コイル)、および一対の第1、第2ブラシ18、19に押圧接触されるコンミテータ(整流子)を有している。
ロータコアは、積層型鉄心により形成され、シャフト16の外周に圧入嵌合される円筒状(または角筒状)の嵌合部20(図8参照)、およびこの嵌合部20の外周面から突出する3個の突極(第1〜第3ティース21〜23:図8参照)を有している。
【0031】
3個の第1〜第3ティース21〜23は、嵌合部20の外周面にその円周方向に等間隔(120°間隔)で設置されている。また、3個の第1〜第3ティース21〜23は、ロータコアの嵌合部20の外周面からロータの半径方向外側に向けて放射状に突出するティース巻装部24(図8参照)、およびこのティース巻装部24の外周端からモータ周方向の両側に延びるティース磁極部25(図8参照)を有している。このティース磁極部25の外周面は、ステータの内周面に対向している。
【0032】
嵌合部20の中心部を貫通する貫通孔20aには、シャフト16が固定されている。シャフト16は、回転軸方向の両端部がそれぞれモータケースに軸受を介して回転可能に支持されている。これにより、ロータは、モータケースおよびステータに対して相対回転可能となっている。
また、ロータコアの円周方向に隣合う各第1〜第3ティース21〜23間には、電機子巻線の各第1〜第3相コイル31〜33を収納する3個の第1〜第3スロット41〜43が形成されている。
【0033】
電機子巻線は、3個の第1〜第3ティース21〜23の各ティース巻装部24の周囲に集中巻方式で巻装されて、各第1〜第3スロット41〜43に収納される3相の各第1〜第3相コイル31〜33により構成されている。各第1〜第3相コイル31〜33は、各ティース巻装部24の外側にインシュレータを介して巻回されている。
そして、電機子巻線を構成する3個(3相)の第1〜第3ティース21〜23は、図1(a)および図4に示したように、Δ結線されている。
【0034】
ここで、本実施例の直流モータ1は、ロータコアの各第1〜第3スロット41〜43に収納される各第1〜第3相コイル31〜33の巻き数が、各第1〜第3スロット41〜43毎に変更されている。
つまり第1ティース21の周囲に巻回される第1相コイル31の巻き数をL1とし、第2ティース22の周囲に巻回される第2相コイル32の巻き数をL2とし、第3ティース23の周囲に巻回される第3相コイル33の巻き数をL3としたとき、各第1〜第3相コイル31〜33の巻き数が以下の数1の式の関係を満足するように設定されている。
【0035】
[数1]
L1≠L2≠L3
具体的には、第1相コイル31の巻き数(L1)は、60ターンである。また、第2相コイル32の巻き数(L2)は、80ターンである。また、第3相コイル33の巻き数(L3)は、100ターンである。
これにより、各第1〜第3相コイル31〜33のインダクタンスは、第1相コイル31、第2相コイル32、第3相コイル33の順に小さくなる。言い換えると、インダクタンスは、巻き数の多い順(第3相コイル33、第2相コイル32、第1相コイル31の順)に大きくなる。また、各第1〜第3相コイル31〜33は、互いに電気角で2/3πずつ離れるように配置されている。
【0036】
直流モータ1は、電機子巻線の各第1〜第3相コイル31〜33がデルタ結線され、各第1〜第3相コイル31〜33のコイル端末部がコンミテータの各第1〜第3セグメント(整流子片)51〜53に接続されている。
すなわち、第3セグメント53と第1セグメント51との間に第1相コイル31が接続され、また、第1セグメント51と第2セグメント52との間に第2相コイル32が接続され、また、第2セグメント52と第3セグメント53との間に第3相コイル33が接続されている。
そして、3個の第1〜第3セグメント51〜53のうちのいずれか2つのセグメントが、第1、第2ブラシ18、19にそれぞれ接触しており、直流モータ1のシャフト16の回転によるコンミテータの回転に伴って、各第1、第2ブラシ18、19と接触する2つのセグメントが切り替わっていく。
【0037】
コンミテータは、シャフト16の半径方向の外周部に円筒状の合成樹脂製支持筒30を介して固定されている。このコンミテータは、一対の第1、第2ブラシ18、19が押圧接触する3個の第1〜第3セグメント51〜53により構成されている。なお、図3では、各第1〜第3相コイル31〜33とコンミテータの各第1〜第3セグメント51〜53とを接続する電気配線は省略されている。各第1〜第3セグメント51〜53には、リングバリスタ60の各第1〜第3電極61〜63に当接する各当接片54〜56が設けられている。
【0038】
また、コンミテータの半径方向外側には、サージ電圧が加わるとき、電流をグランド側に流すことで、ノイズを抑制する円板状のリングバリスタ60が設置されている。このリングバリスタ60は、図4に示したように、コンミテータの第1〜第3セグメント51〜53に電気的に接続する3つの第1〜第3電極61〜63と、隣り合う各第1〜第3電極61〜63間を接続する抵抗体64〜66を有している。
以上により、コンミテータの各第1〜第3セグメント51〜53に電気的に接続する各第1、第2ブラシ18、19に、正極側、負極側外部接続端子である一対の異極ターミナルを経由して直流電源4および交流電源5から電流が供給されると、各第1〜第3相コイル31〜33に電流が流れ、ロータが回転する。
【0039】
ここで、アクチュエータ、特に直流電力の供給を受けるとバルブ14のシャフト15を駆動する駆動力を発生する直流モータ1は、ECU3によって通電制御されるように構成されている。このECU3には、制御処理や演算処理を行うCPU、制御プログラムまたは制御ロジックや各種データを保存する記憶装置(RAM、ROM等のメモリ)、入力回路(入力部)、出力回路(出力部)、電源回路、タイマー等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが設けられている。
【0040】
ECU3は、エンジンEの運転状態を検出する運転状態検出手段を有している。エンジンEの運転状態は、エンジン回転速度、エンジン負荷(アクセル開度)、エンジン冷却水温度、吸気温度等によって検出することができる。
また、ECU3は、回転角度検出装置2より出力される電気信号(センサ出力信号)が、A/D変換器によってA/D変換された後に、ECU3に内蔵されたマイクロコンピュータに入力されるように構成されている。
【0041】
次に、本実施例の回転角度検出装置2の詳細を図1ないし図7に基づいて簡単に説明する。
回転角度検出装置2は、図1(a)に示したように、直流モータ1のシャフト16を回転させる(モータトルクを発生させる)ための直流電源4と、直流モータ1のシャフト16の回転角度を検出するための所定の周波数の交流電流を生成する交流電源5と、直流電源4から直流モータ1へ供給される直流電流に交流電源5で生成された交流電流を重畳させて直流モータ1へ供給するためのカップリングコンデンサ6と、直流モータ1を流れる通電電流を検出する電流検出手段7と、この電流検出手段7により検出された通電電流の振幅を電圧の異なるパルス信号に変換する信号処理部8と、この信号処理部8から出力されるパルス信号に基づいて直流モータ1の回転角度および回転方向を検出する回転角度検出部9とを備えている。
【0042】
ここで、直流モータ1の回転角度および回転方向を検出する際に、直流モータ1を流れる通電電流は、直流電源4からの直流電流と交流電源5からの交流電流が重畳された、交直混在(脈流の一種)の電流である。
信号処理部8は、直流モータ1を流れる通電電流に含まれる交流電流成分を抽出する交流電流成分抽出手段を含んでいる。
回転角度検出部9は、交流電流成分抽出手段により抽出された交流電流成分に基づいて、直流モータ1の回転角度を検出する回転角度検出手段、および交流電流成分抽出手段により抽出された交流電流成分の変化パターンに基づいて、直流モータ1の回転方向を検出する回転方向検出手段を含んでいる。
【0043】
[実施例1の検出方法]
次に、本実施例の回転角度検出装置2の検出方法を図1ないし図7に基づいて簡単に説明する。
【0044】
ここで、直流モータ1のロータが180°回転する間における、直流モータ1内部の結線状態の変化、つまり各第1、第2ブラシ18、19間に形成されるモータ回路の変化を、図5ないし図7に示す。本実施例の直流モータ1のモータ回路は、直流モータ1のロータが180°回転する間に、状態A、状態B、状態Cの3種類に変化する。つまりロータが60°回転する毎に、インピーダンスの異なる3種類のモータ回路を形成する。各モータ回路に電流が流れることで、電流検出手段7は、図1(b)に示したように、振幅の異なる3つの状態の脈流を検出する。
【0045】
状態Aは、図5(a)に示したように、Vcc側(直流電源4の正極側)の第1ブラシ18に、第3セグメント53が接触し、GND側(直流電源4の負極側)の第2ブラシ19に第1セグメント51が接触した状態である。この状態Aでの直流モータ1の等価回路、つまり各第1、第2ブラシ18、19間に形成されるモータ回路は、図5(b)に示した回路となる。なお、Vccとは、直流電源4の電源電圧を示すものである。
この状態Aでは、第1ブラシ18から第2ブラシ19に至るまでの一方の電流経路上には、100ターンの第3相コイル33および80ターンの第2相コイル32が存在し、第1ブラシ18から第2ブラシ19に至るまでの他方の電流経路上には、60ターンの第1相コイル31が存在する。
すなわち、この状態Aでは、第3相コイル33および第2相コイル32の直列回路と、第1相コイル31のみの回路とが存在する。これにより、回路全体のインピーダンスが低くなるので、直流モータ1のモータ回路を流れる通電電流に含まれる交流電流成分の振幅が大きくなる。
このとき、直流モータ1のモータ回路を流れる通電電流を検出する電流検出手段7は、図1(b)の時刻T1〜T2(時刻T4〜T5)の状態に示したように、交流電流成分の振幅の大きい第1状態の脈流を検出する。
【0046】
次に、直流モータ1のロータが図示矢印方向(右回転方向)に60°分だけ回転すると、図6(a)に示したような状態Bとなる。
この状態Bは、Vcc側の第1ブラシ18に、第2セグメント52が接触し、GND側の第2ブラシ19に第1セグメント51が接触した状態である。この状態Bでの直流モータ1の等価回路、つまり各第1、第2ブラシ18、19間に形成されるモータ回路は、図6(b)に示した回路となる。
この状態Bでは、第1ブラシ18から第2ブラシ19に至るまでの一方の電流経路上には、80ターンの第2相コイル32が存在し、第1ブラシ18から第2ブラシ19に至るまでの他方の電流経路上には、100ターンの第3相コイル33および60ターンの第1相コイル31が存在する。
すなわち、この状態Bでは、第2相コイル32のみの回路と、第3相コイル33および第1相コイル31の直列回路とが存在する。これにより、回路全体のインピーダンスが状態Aよりも高くなるので、直流モータ1のモータ回路を流れる通電電流に含まれる交流電流成分の振幅が状態Aよりも小さくなる。
このとき、直流モータ1のモータ回路を流れる通電電流を検出する電流検出手段7は、図1(b)の時刻T2〜T3の状態に示したように、時刻T1〜T2の状態よりも振幅の小さい第2状態の脈流を検出する。
【0047】
次に、直流モータ1のロータが図示矢印方向(右回転方向)に60°分だけ回転すると、図7(a)に示したような状態Cとなる。
この状態Cは、Vcc側の第1ブラシ18に、第2セグメント52が接触し、GND側の第2ブラシ19に第3セグメント53が接触した状態である。この状態Cでの直流モータ1の等価回路、つまり各第1、第2ブラシ18、19間に形成されるモータ回路は、図7(b)に示した回路となる。
この状態Cでは、第1ブラシ18から第2ブラシ19に至るまでの一方の電流経路上には、80ターンの第2相コイル32および60ターンの第1相コイル31が存在し、第1ブラシ18から第2ブラシ19に至るまでの他方の電流経路上には、100ターンの第3相コイル33が存在する。
すなわち、この状態Cでは、第2相コイル32および第1相コイル31の直列回路と、第3相コイル33のみの回路とが存在する。これにより、回路全体のインピーダンスが状態Bよりも高くなるので、直流モータ1のモータ回路を流れる通電電流に含まれる交流電流成分の振幅が状態Bよりも小さくなる。
このとき、直流モータ1のモータ回路を流れる通電電流を検出する電流検出手段7は、図1(b)の時刻T3〜T4の状態に示したように、時刻T2〜T3の状態よりも振幅の小さい第3状態の脈流を検出する。
【0048】
以上のように、電流検出手段7は、図1(b)に示したように、ロータが60°回転する毎に、振幅の異なる3つの第1〜第3状態の脈流を検出する。
次に、信号処理部8は、電流検出手段7の検出した電流の振幅変化をA/D変換、整流、平滑等により電圧の異なる3種類のパルス信号に変換する。具体的には、交流電流成分の振幅の大きい第1状態の脈流を検出した場合には、信号処理部8から最も高電圧のパルス信号(X)が出力される。また、第1状態よりも振幅の小さい第2状態の脈流を検出した場合には、信号処理部8から中間電圧のパルス信号(X)が出力される。また、第2状態よりも振幅の小さい第3状態の脈流を検出した場合には、信号処理部8から最も低電圧のパルス信号(X)が出力される。
【0049】
回転角度検出部9は、図1(a)に示したように、信号処理部8より出力されるパルス信号を2つの第1、第2比較回路(図示せず)に入力する。
信号処理部8が出力するパルス信号(X)は、第1比較回路によって、第1の閾値と比較される。信号処理部8が出力するパルス信号(X)が第1の閾値以上のとき、第1比較回路は「1」を出力する。また、信号処理部8が出力するパルス信号(X)が第1の閾値未満のとき、第1比較回路は「0」を出力する。
これと同時に、信号処理部8が出力するパルス信号(X)は、第2比較回路によって、第2の閾値と比較される。信号処理部8が出力するパルス信号(X)が第2の閾値以上のとき、第2比較回路は「1」を出力する。また、信号処理部8が出力するパルス信号(X)が第2の閾値未満のとき、第2比較回路は「0」を出力する。
【0050】
そして、回転角度検出部9は、第1比較回路の出力が「1」、第2比較回路の出力が「1」の時、信号処理部8が出力するパルス信号(X)を第1ステータスと判定する。また、第1比較回路の出力が「0」、第2比較回路の出力が「1」の時には、信号処理部8が出力するパルス信号(X)を第2ステータスと判定する。また、第1比較回路の出力が「0」、第2比較回路の出力が「0」の時には、信号処理部8が出力するパルス信号(X)を第3ステータスと判定する。
【0051】
また、回転角度検出部9は、信号処理部8が出力するパルス信号(X)が、第1ステータス、第2ステータス、第3ステータスの順、あるいは第2ステータス、第3ステータス、第1ステータスの順、あるいは第3ステータス、第1ステータス、第2ステータスの順に遷移する時、直流モータ1のロータが正転方向(例えばバルブ14の閉弁作動方向)に回転していることを検出する。
一方、回転角度検出部9は、信号処理部8が出力するパルス信号(X)が、第1ステータス、第3ステータス、第2ステータスの順、あるいは第3ステータス、第2ステータス、第1ステータスの順、あるいは第2ステータス、第1ステータス、第3ステータスの順に遷移する時、直流モータ1のロータが逆転方向(例えばバルブ14の開弁作動方向)に回転していることを検出する。
【0052】
回転角度検出部9は、信号処理部8が出力するパルス信号(X)が、各ステータスに遷移する回数をカウントする。そして、そのカウント値を例えば正転方向に回転している時は加算し、逆転方向に回転している時は減算する等、回転方向に応じて増減することにより、直流モータ1のロータの回転角度または被駆動体となるTCVのバルブ14等の回転角度を算出する。
【0053】
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例の直流モータ1のロータの回転角度および回転方向を検出する回転角度検出装置2においては、直流モータ1のロータコアの各第1〜第3スロット41〜43に収納される各第1〜第3相コイル31〜33の巻き数を、各第1〜第3スロット41〜43毎に変更している。具体的には、第1ティース21の周囲に巻回される第1相コイル31の巻き数(L1)を60ターンとし、第2ティース22の周囲に巻回される第2相コイル32の巻き数(L2)を80ターンとし、第3ティース23の周囲に巻回される第3相コイル33の巻き数(L3)を100ターンとしている。
【0054】
このように各第1〜第3相コイル31〜33の巻き数を、各第1〜第3スロット41〜43毎に変更することで、直流モータ1のロータの回転に伴い、インピーダンスの段階的な変化が生じ、このインピーダンスの段階的な変化に伴って交流電流成分が段階的に変化する。
そして、直流モータ1に流れる通電電流(交直混在)を電流検出手段7が検出し、その検出された通電電流に含まれる交流電流成分を信号処理部8の交流電流成分抽出手段が抽出する。そして、その抽出された交流電流成分に基づき、回転角度検出部9が直流モータ1の回転角度を検出する。
【0055】
そして、交流電流成分抽出手段により抽出された交流電流成分の段階的な変化パターンに基づいて、直流モータ1のロータの回転方向を検出することができるので、直流モータ1のロータの回転角度の検出と直流モータ1のロータの回転方向の検出とが両方とも可能な高性能な回転角度検出装置2を提供することができる。
また、直流モータ1の回転方向の検出結果に基づいて、直流モータ1の回転角度の検出結果を補正することもできるので、直流モータ1の回転方向が変わってもそれに応じて精度良く回転角度を検出することができる。
したがって、直流モータのロータの回転角度および回転方向を確実に検出することができる。
【0056】
また、コンデンサをリングバリスタ60等の回転部材に実装していない。つまり、直流モータ1のロータの回転に伴うインピーダンスの段階的な変化をもたらすコンデンサが脱落する可能性がないので、回転角度検出装置2が検出した回転角度および回転方向への信頼性を向上することができる。
また、部品点数および組付工数を増加することなく、直流モータ1の回転角度および回転方向の検出精度を向上できるので、コスト削減を図ることができる。
【0057】
また、本実施例の回転角度検出装置2は、直流モータ1の回転角度を60°回転する毎に検出することができるので、減速比40で伝達されるTCVのバルブ14の回転角度について、1.5°の分解能を有する。これにより、回転角度検出装置(先行の技術1)と比べて、分解能を倍増することができる。また、ECU3は、回転角度検出装置2の検出結果に基づき、TCVのバルブ14が目標とする回転角度および回転方向に回転するように直流モータ1に駆動電流を印加することができる。
【実施例2】
【0058】
図8は本発明の実施例2を示したもので、2極3スロット(3ティース)の直流モータのロータコアを示した図である。
【0059】
ここで、各第1〜第3スロット41〜43毎に各第1〜第3相コイル31〜33の巻き数を変更すると、各第1〜第3相コイル31〜33の重量(ウェイト)の違いにより、重量アンバランスが生じる。
そこで、解決方法として、各第1〜第3相コイル31〜33の重量(ウェイト)の違いを考慮して、直流モータ1のロータコアの各磁性鋼板の形状を変えることが考えられる。具体的には、各第1〜第3相コイル31〜33の重量(ウェイト)の違いを考慮して、各第1〜第3ティース21〜23毎にティース巻装部24の幅(ティース幅)を変更することが望ましい。
【0060】
例えば各第1〜第3相コイル31〜33の巻き数が多い程、3個の第1〜第3ティース21〜23の各ティース巻装部24のティース幅を狭くすることにより、各第1〜第3相コイル31〜33の重量(ウェイト)を調節し、直流モータ1のロータのアンバランスを解消することができる。これにより、直流モータ1のロータのアンバランスを小さくできるので、振動の原因となって軸受の寿命低下を招いたり、騒音が発生したりする等の不具合を解消することができる。
【実施例3】
【0061】
図9は本発明の実施例3を示したもので、図9(a)、(b)は2極6スロット(6ティース)の直流モータを示した図である。
【0062】
本実施例の直流モータ制御装置は、2極6ティース(6スロット)構造のブラシ付き直流モータ1と、この直流モータ1の回転角度および回転方向を検出する回転角度検出装置2と、この回転角度検出装置2で検出した直流モータ1の回転角度および回転方向に基づいて直流モータ1への直流電力(直流電流)を制御するECU3とを備えている。
ロータコアは、磁性鋼板を複数積層してなる積層型鉄心により形成され、シャフト16の外周に嵌合する嵌合部20の外周面から半径方向の外側に向けて突出する6個の突極(第1〜第6ティース)を有している。
【0063】
6個の第1〜第6ティースは、嵌合部20の外周面にその円周方向に等間隔(60°間隔)で設置されている。また、6個の第1〜第6ティースは、ティース巻装部24(図8参照)およびティース磁極部25(図8参照)を有している。
また、ロータコアの円周方向に隣合う各第1〜第6ティース間には、電機子巻線の各第1〜第6相コイル31〜36を収納する6個の第1〜第6スロットが形成されている。
また、電機子巻線は、6個の第1〜第6ティースの各ティース巻装部24毎に巻回される6相の第1〜第6相コイル31〜36からなる。
【0064】
そして、第1ティースに巻回される第1相コイル31の巻き数をL1とし、第2ティースに巻回される第2相コイル32の巻き数をL2とし、第3ティースに巻回される第3相コイル33の巻き数をL3とし、第4ティースに巻回される第4相コイル34の巻き数をL4とし、第5ティースに巻回される第5相コイル35の巻き数をL5とし、第6ティースに巻回される第6相コイル36の巻き数をL6としたとき、各第1〜第6相コイル31〜36の巻き数は、以下の数2、数3の式の関係を満足するように設定されている。
【0065】
[数2]
L1+L4=L2+L5=L3+L6
[数3]
L1≠L2≠L3≠L4≠L5≠L6
具体的には、第1相コイル31の巻き数(L1)を60ターンとし、対向する第4相コイル34の巻き数(L4)を170ターンとする。また、第2相コイル32の巻き数(L2)を80ターンとし、対向する第5相コイル35の巻き数(L5)を150ターンとする。また、第3相コイル33の巻き数(L3)を100ターンとし、対向する第6相コイル36の巻き数(L6)を130ターンとする。
【0066】
ここで、各第1〜第6相コイル31〜36の巻き数が異なることにより、直流モータ1のトルク変動が生じてしまうが、図9に示したように、スロットの個数を偶数(例えば6個の第1〜第6スロット)にして、対向する第1、第4相コイル31、34の巻き数の和、対向する第2、第5相コイル32、35の巻き数の和、対向する第3、第6相コイル33、36の巻き数の和を全て同一にすることで、直流モータ1のトルク変動を減少することができる。
これによって、各第1〜第6相コイル31〜36の巻き数の比率は、トルク変動、回転モーメントのアンバランスを問題ないレベルに低減することができる。また、交流電流成分の振幅の変化が検出できるレベルには、インピーダンスが変化するような範囲に設定することが望ましい。
【0067】
[変形例]
本実施例では、直流モータ1のロータの磁極数を3極または6極とし、ステータの磁極数を2極として、ロータの磁極数をステータの磁極数よりも多くしているが、直流モータ1のロータの磁極数を4極とし、ステータの磁極数を8極として、ロータの磁極数をステータの磁極数よりも少なくしても良い。
本実施例では、直流モータ1をタンブル流制御用のバルブ14の動力源としているが、直流モータ1をその他のバルブ(流量制御用のバルブ、流路切替用のバルブ、流路開閉用のバルブ等)の動力源としても良い。また、直流モータ1とバルブ14のシャフト15とを直結しても良い。
【符号の説明】
【0068】
1 直流モータ
2 回転角度検出装置
3 ECU(エンジン制御装置)
4 直流電源
5 交流電源
7 電流検出手段
8 信号処理部(交流電流成分抽出手段)
9 回転角度検出部(回転角度検出手段、回転方向検出手段)
16 直流モータのシャフト
17 歯車減速機構
18 第1ブラシ
19 第2ブラシ
21 第1ティース
22 第2ティース
23 第3ティース
24 ティース巻装部
25 ティース磁極部
31 第1相コイル(電機子巻線)
32 第2相コイル(電機子巻線)
33 第3相コイル(電機子巻線)
34 第4相コイル(電機子巻線)
35 第5相コイル(電機子巻線)
36 第6相コイル(電機子巻線)
41 第1スロット
42 第2スロット
43 第3スロット
51 第1セグメント(コンミテータ)
52 第2セグメント(コンミテータ)
53 第3セグメント(コンミテータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)円周方向に所定の間隔で3個以上のティースが設置されたコアと、
前記3個以上のティースの各ティースの周囲にそれぞれ集中的に巻装された3相以上の相コイルを有する電機子巻線と、
この電機子巻線が接続される3個以上のセグメントを有するコンミテータと、
このコンミテータを介して前記電機子巻線へ電流を供給する少なくとも一対のブラシとを具備した直流モータと、
(b)前記ブラシから前記コンミテータを介して前記電機子巻線側へ直流電流を供給する直流電源と、
前記ブラシから前記整流子を介して前記電機子巻線側へ交流電流を供給する交流電源と、
前記ブラシを介して前記直流モータを流れる、前記直流電源からの直流電流に前記交流電源からの交流電源が重畳された通電電流を検出する電流検出手段と、
この電流検出手段により検出された通電電流に含まれる交流電流成分を抽出する交流電流成分抽出手段と、
この交流電流成分抽出手段により抽出された交流電流成分に基づいて、前記直流モータの回転角度を検出する回転角度検出手段と、
前記交流電流成分抽出手段により抽出された交流電流成分の変化パターンに基づいて、前記直流モータの回転方向を検出する回転方向検出手段と
を具備した回転角度検出装置と
を備え、
前記コアは、その円周方向に隣り合う前記各ティース間に、前記3相以上の相コイルの各相コイルを収納する3個以上のスロットを有し、
前記直流モータは、前記コアの各スロットに収納される前記各相コイルの巻き数が、前記各スロット毎に変更されていることを特徴とする直流モータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の直流モータ制御装置において、
前記直流モータは、回転軸方向に延びるシャフトを有するロータと、このロータの周囲を円周方向に取り囲む筒状のステータとを備え、
前記ロータは、前記コア、前記電機子巻線、前記コンミテータおよび前記ブラシを有し、
前記ステータは、少なくとも2極の界磁極を有していることを特徴とする直流モータ制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の直流モータ制御装置において、
前記各ティースは、前記コアの外周から前記ロータの径方向外側に向けて放射状に突出するティース巻装部、およびこのティース巻装部の外周端から周方向の両側に延びるティース磁極部を有し、
前記各相コイルは、前記ティース巻装部の周囲を取り囲むように所定の巻き数分だけ巻装されていることを特徴とする直流モータ制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の直流モータ制御装置において、
前記3個以上のティースは、前記各相コイルの重量の違いを考慮して、前記ティース巻装部の幅が、前記各ティース毎に変更されていることを特徴とする直流モータ制御装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載の直流モータ制御装置において、 前記3個以上のティースは、前記ロータの円周方向に60°の間隔で設置された6個の第1〜第6ティースからなり、
前記電機子巻線は、前記6個の第1〜第6ティース毎に巻回される6相の第1〜第6相コイルからなり、
前記第1ティースに巻回される前記第1相コイルの巻き数をL1とし、
前記第2ティースに巻回される前記第2相コイルの巻き数をL2とし、
前記第3ティースに巻回される前記第3相コイルの巻き数をL3とし、
前記第4ティースに巻回される前記第4相コイルの巻き数をL4とし、
前記第5ティースに巻回される前記第5相コイルの巻き数をL5とし、
前記第6ティースに巻回される前記第6相コイルの巻き数をL6としたとき、
前記第1〜第6相コイルの巻き数は、
L1+L4=L2+L5=L3+L6、
L1≠L2≠L3≠L4≠L5≠L6
の関係を満足するように設定されていることを特徴とする直流モータ制御装置。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載の直流モータ制御装置において、 前記コアは、前記シャフトの外周に嵌合し、回転軸方向に複数積層された磁性鋼板により構成されていることを特徴とする直流モータ制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載の直流モータ制御装置において、 流体流路を流れる流体を制御する流体制御弁と、
前記直流モータの回転動力を前記流体制御弁に伝達すると共に、前記直流モータの回転速度を所定の減速比に減速する減速機構と
を備えたことを特徴とする直流モータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−172381(P2011−172381A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33690(P2010−33690)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】