説明

直流電動機

【課題】効率の良い直流電動機を提供できる。
【解決手段】コア81a、コア81bに巻回される磁気コイル8a、8bに電流を流すことによって、磁極面が形成される固定部と、固定部の磁極面と平行して配置される回転板6と、回転板6の回転中心から垂直方向に伸びるシャフト4と、シャフト4に固着されたカム9aと、軸受5aおよび軸受5bと、固定部の磁極面の側に磁極面が配置されるように、回転板6に固着された永久磁石7a、永久磁石7bと、固定部の磁極面と回転板に固着された永久磁石7a、永久磁石7bの磁極面とが対面する所定時間だけ、磁気コイル8a、磁気コイル8bに電流を流すようにカム)aの回転に応じて導通または切断するスイッチ10と、を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
整流子とブラシを有する直流電動機が従来から広く用いられている。回転力を得る直流電動機では、回転部(回転子)が固定部に対して回転するようになされ、両者の間に働く電磁力によって、回転エネルギーは得られる。ここで、従来の直流電動機では、回転周期の全周期に渡り回転エネルギーを得て回転部を回転させるようにしている。
【特許文献1】特開2006−034089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した、従来の直流電動機では、回転駆動力(トルク)の大きさは、回転部の回転角度に応じて変化する。すなわち、回転部の磁極と固定部の磁極とが接近しているほど、大きな回転駆動力が得られ、電磁気力の利用効率が高いものである。しかしながら、回転の全周期に渡り回転エネルギーを得るようにしているので、回転部の磁極と固定部の磁極とが離れている場合には、大きな回転エネルギーを得ることができない。このために、1回転に渡り入力された電気エネルギーの平均値と得られる機械エネルギーとの平均値との比として得られる電磁気力の利用効率(以下、単に効率と省略する)は必ずしも高いものとは言えなかった。利用効率を向上するために、回転部と固定部との各々の磁極の数を非常に大きくし、大きな数に分割した整流子とブラシとを用いる方式も採用されているが、構造が複雑となり、装置の価格は効果なものとなった。
【0004】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、直流電動機の効率を簡単な構造によって向上する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の直流電動機は、コアに巻回される磁気コイルに電流を流すことによって、磁極面が形成される固定部と、前記固定部の前記磁極面と平行して配置される回転板と、前記回転板の回転中心から前記回転板の表面に対して垂直方向に伸びるシャフトと、前記シャフトに固着され、前記シャフトの回転角度に対応して回転中心から外周までの距離が異なるように形成されたカムと、前記シャフトを前記固定部に保持し、前記回転板を前記固定部に対して回転可能とする軸受と、前記回転板の一方の表面側に一方の磁極面が配置され、前記回転板の他方の表面側に他方の磁極面が配置される永久磁石と、前記固定部の磁極面と前記回転板に固着された前記永久磁石の磁極面とが対面する所定時間だけ、前記磁気コイルに電流を流すように前記カムの回転に応じて導通または切断するスイッチと、を備える。
【0006】
本発明の直流電動機では、コアに巻回される磁気コイルに電流を流すことによって、磁極面が形成される固定部を備える、また、回転板に固着された永久磁石を備える。そして、固定部の磁極面と回転板に固着された永久磁石の磁極面とが対面する所定時間だけ、磁気コイルに電流を流すようにカムの回転に応じて導通または切断するスイッチを備える。これによって、効率良く回転板を回転させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の直流電動機によれば、固定部の磁極面と回転板に固着された永久磁石の磁極面とが対面する所定時間だけ、磁気コイルに電流を流すようにして、効率の良い直流電動機を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を引用して実施形態の直流電動機の説明をおこなう。
【0009】
図1は第1実施形態の直流電動機である2極直流電動機を模式的に示す図である。図1(A)は2極直流電動機の側面図を模式的に示し、図1(B)は2極直流電動機の平面図を模式的に示すものである。
【0010】
2極直流電動機は、固定部と可動部とから構成されている。固定部は固定板1(第1固定板)と固定板3(第2固定板)とを有している。固定板1と固定板3との離間距離は、4本の支柱である支柱2a、支柱2b、支柱2c、支柱2dによって、均一に保たれ、固定板1と固定板3とは平行に配置されている。
【0011】
固定板3には、磁性体のコア81aとコア81bの周りに巻線が巻回されて形成される電磁コイル8a(第1電磁コイル)と電磁コイル8b(第2電磁コイル)とが固着されている。電磁コイル8aと電磁コイル8bとは、シャフト4を回転中心として1/2回転(180°)回転して元の図形に重なる回転対称性を有する、2回対称の位置に配置されている。また、固定板1にはスイッチ10が固着されている。電磁コイル8aと電磁コイル8bとは、並列に接続されている。この並列接続された電磁コイル8aと電磁コイル8bとに対して、直流電源12(例えば電源バッテリー)とスイッチ10とが直列に接続されている。
【0012】
回転部は、永久磁石7aと永久磁石7bとを固着した円板状の回転板6とシャフト4によって形成されている。シャフト4は回転板6の表面に対して垂直に伸びるように、溶接、ボルト締め、接着剤等によって固着されている。永久磁石7aと永久磁石7bとは、回転板6に設けた孔部に埋め込むようにして固着されている。永久磁石7aと永久磁石7bとのN極が回転板6の一方の表面側に配置されている。また、永久磁石7aと永久磁石7bとのS極が回転板6の他方の表面側に配置されている。ここで、永久磁石7aおよび永久磁石7bは、回転板6に埋め込むように配置され、永久磁石7aおよび永久磁石7bの磁極面の位置は、回転板6の表面から出ないように配されている。また、永久磁石7aと永久磁石7bとは、シャフト4を回転中心として1/2回転(180°)回転して元の図形に重なる回転対称性を有する2回対称の位置に配置されている。回転板6は、例えば、ステンレスを材料としている。
【0013】
シャフト4の回転板6の一方の表面側は、ベアリング軸受5aによって保持され、シャフト4の回転板6の他方の表面側は、ベアリング軸受5bによって保持されている。また、ベアリング軸受5aは固定板1に固着され、ベアリング軸受5bは固定板3に固着され、回転部は固定部に対して回転自在とされている。
【0014】
シャフト4にはカム9aが固着されている。カム9aは、シャフト4の回転角度に対応して、カム9aの回転中心から外周までの距離が異なるようにされた平板である。つまり、シャフト4が回転するにつれて、カム9aの外周に接する押釦10aに周期的な運動を与える。カム9aも同様に2回対称を有する図形として形成されている。例えば、カム9aは楕円状とされている。
【0015】
カム9aはこのような形状を有するので、1回転で2回、スイッチ10を導通させる。すなわち、永久磁石7aまたは永久磁石7bが、電磁コイル8aまたは電磁コイル8bと対抗する位置で、スイッチ10に配された押釦10aを押してスイッチ10を導通とする。このような機能を発揮する形状であれば、カム9aの形状は、楕円形状に限るものではなく、例えば、2回対称を有する他の図形である平行四辺形であっても良い。
【0016】
図2は、2極直流電動機の動作を示すための模式図である。図2では、2極直流電動機の動作の説明に必要な範囲で図1に示す各部の一部のみが示されている。図2(A)、図2(B)、図2(C)、図2(D)は時間経過に応じた、固定部と回転部との相対位置関係を示すものである。紙面左側の縦一列の図は側面図であり、紙面の右側の縦一列の図は平面図である。また、紙面左側の側面図と紙面の右側の平面図とは、同一時間に対応している。図2(A)〜図2(D)においては、回転中心(+で示す)に対して対称な形状を有するカム9aの回転角度を分かり易くするために、白丸が付されている。
【0017】
最上段に示す図2(A)は、カム9aがスイッチ10の押釦10aを押している導通状態を示す図である。カム9aの回転中心と、細い棒状の押釦10aの先端のカム9aと接する点と、を結ぶ直線を基準線として以下説明をする。楕円形とされるカム9aの長軸が、基準線に対してなす角度が、微小角度範囲(例えば、±1°〜±10°)では、カム9aの形状に起因して、カム9aがスイッチ10の押釦10aを押している導通状態とされる。ここで、微小角度範囲は、カム9aの形状をどのようなものにするかによって管理することができる。なお、カム9aが一回転する角度は言うまでもなく360°である。
【0018】
スイッチ10の押釦10aが押されることによって、電磁コイル8aと電磁コイル8bとには直流電源12から電流が流れる。これによって、図2(A)に示すように、回転板6の永久磁石7aのS極に対面するコア81aにS極が発生し、回転板6の永久磁石7bのS極に対面するコア81bにS極が発生する。また、固定板3に接するコア81aおよびコア81bの面にN極が発生する。そして、固定部のS極と回転部のS極の反発力によって、回転部は固定部に対してシャフト4を中心とする回転力が生じる。ここで、回転力の生じる方向は、固定部のS極と回転部のS極がどちらかにずれるとずれた方向に力が働くので、最初に回転力が付与された方向へ以後は、回転板6は回転することとなる。図2(A)〜図2(D)では、最初の回転力が矢印で示す方向に加わるものとして、その後の回転力の方向を図示している。
【0019】
最上段から紙面の下方へ下がって1番目の図2(B)は、カム9aがスイッチ10の押釦10aを押している導通状態が解除された直後を示す図である。電磁コイル8aと電磁コイル8bとには直流電源12から電流が流れることはなく、コア81aとコア81bに磁極が発生することはなく、固定部と回転部との間で回転駆動力が生じることはない。しかしながら、回転板6の有する回転モーメントによって回転板6は回転を続ける。つまり、回転板6はフライホイールとして機能することとなる。
【0020】
最上段から紙面の下方へ下がって2番目の図2(C)では、回転板6の回転に伴いカム9aは基準線に対して180°近く回転している。より正確には、カム9aの基準線に対する角度は、180°から微小角度減算した角度となっている。これ以上(例えば、180°-1°〜180°-10°以上)、回転板6が回転するとカム9aの形状に起因して、カム9aがスイッチ10の押釦10aを押している導通状態となるが、図2(C)は、カム9aがスイッチ10の押釦10aを押す直前の状態を示す図である。図2(B)から図2(C)に示す範囲では、スイッチ10は切断状態である。
【0021】
最下段の図2(D)は、カム9aがスイッチ10の押釦10aを押している導通状態を示す図である。基準線に対して、楕円形とされるカム9aの長軸が、基準線に対してなす角度が、微小角度範囲(例えば、180°±1°〜180°±10°)では、カム9aの形状に起因して、カム9aがスイッチ10の押釦10aを押している導通状態とされる。スイッチ10の押釦10aが押されることによって、電磁コイル8aと電磁コイル8bとには直流電源12から電流が流れる。
【0022】
これによって、図2(D)に示すように、回転板6の永久磁石7bのS極に対面するコア81a(電磁コイル8aの中心に位置している)にS極が発生し、回転板6の永久磁石7aのS極に対面するコア81b(電磁コイル8bの中心に位置している)にS極が発生する。また、固定板3に接するコア81aおよびコア81bの面にN極が発生する。これによって、再び矢印で示す方向に回転力が生じる。
【0023】
図2(A)〜図2(D)に示す過程が繰り返されて2極直流電動機の回転部は回転を維持する。そして、シャフト4から得られる回転力を回転動力源として用いることができる。ここで、2極直流電動機においては、1回転(360°)の中で、2回、所定角度の間、例えば、±1°〜±10°の範囲と、180°±1°〜180°±10°の範囲とにおいて、電磁コイル8aと電磁コイル8bとには直流電源12から電流が供給される。つまり、2極直流電動機においては、1回転(360°)の中で、2回、所定角度の間において、電磁コイル8aと電磁コイル8bとには直流電源12から電流が供給される。これによって、1回転の間で、2回、微小角度、すなわち、回転板6が1回転するに必要な時間に対して短時間の所定時間だけ回転駆動力が作用する。
【0024】
ここで、回転駆動力が作用する範囲は、電磁コイル8aと電磁コイル8bとから発生する磁束と、永久磁石7aと永久磁石7bから発生する磁束とが、拡散することなく、最も磁束密度が高い状態で作用することとなる。よって、直流電動機はもっとも効率良く動作することとなる。
【0025】
上述したように、所定角度の範囲でスイッチ10は導通することとなるが、時間に変換する場合には、1回転の時間をT(秒)とすると、スイッチ10が導通する所定時間は、例えば、(2°/360°)×2(回)×T(秒)〜(20°/360°)×2(回)×T(秒)の範囲となる。
【0026】
図3(A)〜図3(D)は、第2実施形態の直流電動機である4極直流電動機の動作を模式的に示す図である。4極直流電動機では、電磁コイル8aと電磁コイル8bとに加えて電磁コイル8cと電磁コイル8dとが固定部に配置されている。また、電磁コイル8aと電磁コイル8bと電磁コイル8cと電磁コイル8dとは、シャフト4を回転中心として1/4回転(90°)回転して元の図形に重なる回転対称性を有する4回対称の位置に配置されている。電磁コイル8a〜電磁コイル8dは並列に接続され、直流電源12から電流が供給されるようになされている。
【0027】
また、回転板6には、永久磁石7aと永久磁石7bとに加えて永久磁石7cと永久磁石7dとが配置されている。また、永久磁石7aと永久磁石7bと永久磁石7cと永久磁石7dとは、シャフト4を回転中心として1/4回転(90°)回転して元の図形に重なる回転対称性を有する4回対称の位置に配置されている。
【0028】
また、カム9bは、4回対称の図形である正四角形とされている。カム9bはこのような形状を有するので、1回転で4回、スイッチ10を導通させる。図3(A)、図3(B)、図3(C)、図3(D)は時間経過に応じた、固定部と回転部との相対位置関係を示すものである。紙面左側の縦一列の図は側面図であり、紙面の右側の縦一列の図は平面図である。また、紙面左側の側面図と紙面の右側の平面図とは、同一時間に対応している。図3(A)〜図3(D)においては、回転中心(+で示す)に対して対称な形状を有するカム9bの回転角度を分かり易くするために、白丸が付されている。
【0029】
最上段に示す図3(A)は、カム9bがスイッチ10の押釦10aを押している導通状態を示す図である。カム9bの回転中心と、細い棒状の押釦10aの先端のカム9bと接する点と、を結ぶ直線を基準線として以下説明をする。正四方形とされるカム9bの対角線が基準線に対してなす角度が、微小角度範囲(例えば、±1°〜±10°)では、カム9bの形状に起因して、カム9bがスイッチ10の押釦10aを押している導通状態とされる。
【0030】
スイッチ10の押釦10aが押されることによって、電磁コイル8aと電磁コイル8bと電磁コイル8cと電磁コイル8dとには直流電源12から電流が流れる。これによって、図3(A)に示すように、永久磁石7aのS極に対面するコア81aにS極が発生し、永久磁石7bのS極に対面するコア81bにS極が発生し、永久磁石7cのS極に対面するコア81cにS極が発生し、永久磁石7dのS極に対面するコア81dにS極が発生する。また、固定板3に接するコア81a、コア81b、コア81cおよびコア81dの各面にN極が発生する。そして、固定部のS極と回転部のS極の反発力によって、回転部は固定部に対してシャフト4を中心とする回転力が生じる。ここで、回転力の生じる方向は、固定部のS極と回転部のS極がどちらかにずれるとずれた方向に力が働くので、最初に回転力が付与された方向へ以後は、回転板6は回転することとなる。図3(A)〜図3(D)では、最初の回転力が矢印で示す方向に加わるものとして、その後の回転力の方向を図示している。
【0031】
最上段から紙面の下方へ下がって1番目の図3(B)は、カム9bがスイッチ10の押釦10aを押している導通状態が解除された直後を示す図である。電磁コイル8aと電磁コイル8bと電磁コイル8cと電磁コイル8dとには直流電源12から電流が流れることはなく、コア81a〜コア81bに磁極が発生することはなく、固定部と回転部との間で回転駆動力が生じることはない。しかしながら、回転板6の有する回転モーメントによって回転板6は回転を続ける。つまり、回転板6はフライホイールとして機能することとなる。
【0032】
最上段から紙面の下方へ下がって3番目の図3(C)では、回転板6の回転に伴いカム9bは基準線に対して90°近く回転している。より正確には、カム9bの基準線に対する角度は、90°から微小角度減算した角度となっている。これ以上(例えば、90°-1°〜90°-10°以上)、回転板6が回転するとカム9bの形状に起因して、カム9bがスイッチ10の押釦10aを押している導通状態となる。図3(C)は、カム9bがスイッチ10の押釦10aを押す直前の状態を示す図である。図3(B)から図3(C)に示す範囲では、スイッチ10は切断状態である。
【0033】
最下段の図3(D)は、カム9bがスイッチ10の押釦10aを押している導通状態を示す図である。正四方形とされるカム9bの対角軸が、基準線に対してなす角度が、微小角度範囲(例えば、90°±1°〜90°±10°)では、カム9bの形状に起因して、カム9bがスイッチ10の押釦10aを押している導通状態とされる。スイッチ10の押釦10aが押されることによって、電磁コイル8a〜電磁コイル8dには直流電源12から電流が流れる。
【0034】
これによって、図3(D)に示すように、回転板6の永久磁石7aのS極に対面するコア81c(電磁コイル8cの中心に位置している)にS極が発生し、回転板6の永久磁石7bのS極に対面するコア81d(電磁コイル8dの中心に位置している)にS極が発生し、回転板6の永久磁石7cのS極に対面するコア81b(電磁コイル8bの中心に位置している)にS極が発生し、回転板6の永久磁石7dのS極に対面するコア81a(電磁コイル8aの中心に位置している)にS極が発生する。また、固定板3に接するコア81a〜コア81dの各面にN極が発生する。これによって、再び矢印で示す方向に回転駆動力が生じる。
【0035】
図3(A)〜図3(D)に示す過程が繰り返されて4極直流電動機の回転部は回転を維持する。そして、シャフト4から得られる回転力を回転動力源として用いることができる。つまり、4極直流電動機においては、1回転(360°)の中で、4回、所定角度の間、例えば、±1°〜±10°の範囲と、90°±1°〜90°±10°の範囲と、180°±1°〜180°±10°の範囲と、270°±1°〜270°±10°の範囲と、において、電磁コイル8a〜電磁コイル8bとには直流電源12から電流が供給される。これによって、1回転の間で、4回、微小角度、すなわち、回転板6が1回転するに必要な時間に対して短時間の間だけ回転駆動力が作用する。
【0036】
ここで、回転駆動力が作用する範囲は、電磁コイル8aと電磁コイル8bと電磁コイル8cと電磁コイル8dから発生する磁束と、永久磁石7aと永久磁石7bと永久磁石7cと永久磁石7dとから発生する磁束とが、拡散することなく、最も磁束密度が高い状態で作用することとなる。よって、直流電動機はもっとも効率良く動作することとなる。
【0037】
上述したように、所定角度の範囲でスイッチ10は導通することとなるが、時間に変換する場合には、1回転の時間をT(秒)とすると、スイッチ10が導通する所定時間は、例えば、(2°/360°)×4(回)×T(秒)〜(20°/360°)×4(回)×T(秒)の範囲となる。
【0038】
図4(A)〜図4(C)は、第3実施形態の直流電動機である単極(1極)直流電動機の動作を模式的に示す図である。単極(1極)直流電動機では、電磁コイル8aのみが固定部に配置されている。電磁コイル8aに直流電源12から電流が供給されるようになされている。
【0039】
また、回転板6には、永久磁石7aが配置されている。また、カム9cは正四角形とされている。図4(A)、図4(B)、図4(C)は時間経過に応じた、固定部と回転部との相対位置関係を示すものである。紙面左側の縦一列の図は側面図であり、紙面の右側の縦一列の図は平面図である。また、紙面左側の側面図と紙面の右側の平面図とは、同一時間に対応している。図4(A)〜図4(C)においては、回転中心(+で示す)が三角形の中心からずらして配されたカム9cの回転角度を分かり易くするために、白丸が付されている。
【0040】
最上段に示す図4(A)は、カム9cがスイッチ10の押釦10aを押している導通状態を示す図である。カム9cの回転中心と、細い棒状の押釦10aの先端のカム9cと接する点と、を結ぶ直線を基準線として以下説明をする。三角形とされるカム9cの対角線が基準線に対してなす角度が、微小角度範囲(例えば、±1°〜±10°)では、カム9cの形状に起因して、カム9cがスイッチ10の押釦10aを押している導通状態とされる。
【0041】
スイッチ10の押釦10aが押されることによって、電磁コイル8aには直流電源12から電流が流れる。これによって、図4(A)に示すように、永久磁石7aのS極に対面するコア81a(磁気コイル8aの中心に位置している)にS極が発生する。また、固定板3に接するコア81aにN極が発生する。そして、固定部のS極と回転部のS極の反発力によって、回転部は固定部に対してシャフト4を中心とする回転力が生じる。ここで、回転力の生じる方向は、固定部のS極と回転部のS極がどちらかにずれるとずれた方向に力が働くので、最初に回転力が付与された方向へ以後は、回転板6は回転することとなる。図3(A)〜図3(C)では、最初の回転力が矢印で示す方向に加わるものとして、その後の回転力の方向を図示している。
【0042】
最上段から紙面の下方へ下がって1番目の図4(B)は、カム9cがスイッチ10の押釦10aを押している導通状態が解除された直後を示す図である。電磁コイル8aには直流電源12から電流が流れることはなく、コア81aに磁極が発生することはなく、固定部と回転部との間で回転駆動力が生じることはない。しかしながら、回転板6の有する回転モーメントによって回転板6は回転を続ける。つまり、回転板6はフライホイールとして機能することとなる。
【0043】
最下段の図4(C)では、回転板6の回転に伴いカム9cは基準線に対して360°近く回転している。より正確には、カム9cの基準線に対する角度は、360°から微小角度減算した角度となっている。これ以上(例えば、360°-1°〜360°-10°以上)、回転板6が回転するとカム9cの形状に起因して、カム9cがスイッチ10の押釦10aを押している導通状態となる。図4(C)は、カム9cがスイッチ10の押釦10aを押す直前の状態を示す図である。図4(B)から図4(C)に示す範囲では、スイッチ10は切断状態である。
【0044】
図4(A)〜図4(C)に示す過程が繰り返されて単極直流電動機の回転部は回転を維持する。そして、シャフト4から得られる回転力を回転動力源として用いることができる。つまり、単極直流電動機においては、1回転(360°)の中で、1回、所定角度の間、例えば、±1°〜±10°の範囲において、電磁コイル8aには直流電源12から電流が供給される。これによって、1回転の間で、1回、微小角度、すなわち、回転板6が1回転するに必要な時間に対して短時間の間だけ回転駆動力が作用する。
【0045】
ここで、回転駆動力が作用する範囲は、電磁コイル8aから発生する磁束と、永久磁石7aから発生する磁束とが、拡散することなく、最も磁束密度が高い状態で作用することとなる。よって、直流電動機はもっとも効率良く動作することとなる。
【0046】
上述したように、所定角度の範囲でスイッチ10は導通することとなるが、時間に変換する場合には、1回転の時間をT(秒)とすると、スイッチ10は導通する所定時間は、例えば、(2°/360°)×1(回)×T(秒)〜(20°/360°)×1(回)×T(秒)の範囲となる。
【0047】
上述した、第1実施形態〜第3実施形態の種々の変形例が可能である。例えば、永久磁石は回転板に埋め込むのではなく、回転板の表面に固着して、永久磁石のS極が磁気コイルの中心に配置されたコアに生じるS極と対面するようにもできる。また、永久磁石のS極と磁気コイルのコアのS極とを対面させるのではなく、永久磁石のN極と磁気コイルのコアのN極とを対面させるようにもできる。さらに、直流電動機の極数も任意選択事項であり、上述した、単極、2極、4極に限られず自由に極数を選択することが可能である。
【0048】
一般論として述べれば、nを任意整数とした場合、最も効率が良いn極直流電動機を形成するには以下の構成を採用すれば良いこととなる。コアに巻回されるn個の各磁気コイルは、シャフトの回転中心に対してn回対称となる位置にn個配置する。回転板に配されるn個の永久磁石は、シャフトの回転中心に対してn回対称となる位置にn個配置する。カムは、n回対称となる平板で形成する。そして、カムによって、スイッチが導通とされる基準線に対するカムの回転角度は、例えば、(360°/n)×m±1°から(360°/n)×m±10°の範囲とする。ここで、mは1〜nまでの値である。
【0049】
また、このとき、スイッチが導通する所定時間は1回の回転時間をT(秒)とすると、(2°/360°)×n(回)×T(秒)〜(20°/360°)×n(回)×T(秒)の範囲となる。
【0050】
上述した第1実施形態〜第3実施形態では、対面するようにされた、固定部の磁極面の極性と回転板に固着された永久磁石の磁極面の極性とが同一極性となるようにされた。この場合には、回転部と固定部との間で働く反発力によって回転駆動力が発生する。しかしながら、対面するようにされた、固定部の磁極面の極性と回転板に固着された永久磁石の磁極面の極性とが異なる極性となるようにしても回転力を供給できる。この場合には、回転部と固定部との間で働く吸引力によって回転駆動力が発生する。
【0051】
上述した第1実施形態において、直流電源12の極性を入れ替えて、直流電源12から磁気コイルに流れる電流の向きを入れ替えることによって、回転部と固定部との間で働く吸引力によって回転駆動力を発生させるようにすることができる。また、上述した第2実施形態、第3実施形態においても、直流電源12(図3、図4では図示せず)から磁気コイルに流れる電流の向きを入れ替えることによって、回転部と固定部との間で働く吸引力によって回転駆動力を発生させるようにすることができる。
【0052】
第4実施形態について図5を参照して説明する。図5は、吸引力によって回転駆動力を発生させるようにする2極直流電動機の動作を示すための模式図である。図5と、図2とでは、固定部の磁極の極性が異なるのみであるので、上述した図2を参照した説明において、固定部のS極を固定部のN極に読み替えるだけであるので、その詳しい説明は省略する。
【0053】
要するに固定部の磁極の極性を入れ替えた場合でも、図2(A)〜図2(5)で示すと同様に、図5(A)〜図5(D)に示す過程が繰り返されて2極直流電動機の回転部は回転を維持する。そして、シャフト4から得られる回転力を回転動力源として用いることができる。ここで、2極直流電動機においては、1回転(360°)の中で、2回、所定角度の間、例えば、±1°〜±10°の範囲と、180°±1°〜180°±10°の範囲とにおいて、電磁コイル8aと電磁コイル8bとには直流電源12から電流が供給される。つまり、2極直流電動機においては、1回転(360°)の中で、2回、所定角度の間において、電磁コイル8aと電磁コイル8bとには直流電源12から電流が供給される。これによって、1回転の間で、2回、微小角度、すなわち、回転板6が1回転するに必要な時間に対して短時間の所定時間だけ回転駆動力が作用する。
【0054】
ここで、回転駆動力が作用する範囲は、電磁コイル8aと電磁コイル8bとから発生する磁束と、永久磁石7aと永久磁石7bから発生する磁束とが、拡散することなく、最も磁束密度が高い状態で作用することとなる。よって、直流電動機はもっとも効率良く動作することとなる。
【0055】
上述したように、所定角度の範囲でスイッチ10は導通することとなるが、時間に変換する場合には、1回転の時間をT(秒)とすると、スイッチ10が導通する所定時間は、例えば、(2°/360°)×2(回)×T(秒)〜(20°/360°)×2(回)×T(秒)の範囲となる。
【0056】
第4実施形態において、回転板6に配置された永久磁石の磁極のS極とN極との極性を反転して、固定部のS極とN極との極性も同時に反転して、固定部のS極と回転板のN極とが対面するようにしても、吸引力によって駆動力を与えることができる。さらに、第2実施形態、第3実施形態と同様な構成を有して、吸引力を用いた、4極直流電動機、単極直流電動機を実現できるのみならず、n極直流電動機を実現することもできる。
【0057】
ここで、本願の願書に記載の発明者(以下、発明者と省略する)の実験結果を以下、簡単にまとめる。
【0058】
発明者は、反発力によって回転力を得る直流電動機と、吸引力によって回転力を得る直流電動機との差異について検討した。発明者の実験結果によれば、吸引力によって得られる回転力の大きさの方が、反発力によって得られる回転力の大きさよりも大きかった。
【0059】
また、吸引力によって回転力を得る場合には、回転板に配置された永久磁石の磁極が固定部の磁極に接近する時点で、スイッチを導通とすることが望ましく、反発力によって回転力を得る場合には、回転板に配置された永久磁石の磁極が固定部の磁極から遠ざかる時点で、スイッチを導通とすることが望ましいことが分かった。しかしながら、磁気コイルがインダクタンスと抵抗成分とを有するために、磁気コイルに流れる電流は直流電源から供給される電圧に対して遅れが生じる。このため、スイッチが導通となり、スイッチが切断となるタイミングは、回転数、磁気コイルのインダクタンスおよび抵抗成分、に依存して最適点を設定すべきものである。しかしながら、上述した、1回転の回転時間をTとして、(2°/360°)×n(回)×T(秒)〜(20°/360°)×n(回)×T(秒)の範囲において、良好な効率が得られた。
【0060】
具体的な実施例(実験例)を説明をする。発明者は、例えば、以下のような実験をおこなった。回転板の直径は、30cm(センチメートル)、厚みは1cmとして、回転板の材質はステンレスとした。永久磁石は直径3cm、厚さ1cmの円柱状のネオジム磁石とした。ネオジム磁石は回転板の表面に固着した。ネオジム磁石の個数は4個として、回転板の中心から延びる放射線のなす角度として90°毎に、回転板の回転中心を中心とする円周上に配置した。すなわち、対称十文字に配置した。磁気コイルも同様に4個設け各磁気コイルの中心に各コアを配した。磁気コイルは、永久磁石と同様に対称十文字に固定部に固着し、磁気コイルの中心に配置されるコアと、永磁石の磁極とが近接して対面できるようにした。対面する磁極の極性は、固定部側の磁極をN極とし、回転部側の磁極をS極とした。また、磁気コイルの巻線は、直径0.8mmの銅線を用いた。直流電源12の電圧は、12Vと24Vと切り替えができるようにした。
【0061】
直流電源の電圧として12Vを用い、無負荷の場合には、回転部は段々と上昇して回転数は、240回転/分の定常状態に達した。このときの4個の磁気コイルに流れる電流の総和は、0.1Aであった。直流電源の電圧として24Vを用いた場合には、496回転/分の定常状態に達した。このときの4個の磁気コイルに流れる電流の総和は、0.15Aであった。直径70cmの回転板に5cm×5cmの立方体形状の12個のネオジム磁石を固着し、磁気コイルも同数設けた場合についても実験をおこなったが、回転板の回転モーメントが大きくなった分、シャフトから、より大きな回転力が得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】2極直流電動機を模式的に示す図である。
【図2】2極直流電動機の動作を示すための模式図である。
【図3】4極直流電動機の動作を模式的に示す図である。
【図4】単極(1極)直流電動機の動作を模式的に示す図である。
【図5】別の2極直流電動機の動作を示すための模式図である。
【符号の説明】
【0063】
1 固定板、 2a、2b、2c、2d 支柱、 3 固定板、 4 シャフト、 5a、5b ベアリング軸受、 6 回転板、 7a、7b、7c、7d 永久磁石、 8a、8b、8c、8d 電磁コイル、 9a、9b、9c カム、 10 スイッチ、 10a 押釦、 12 直流電源、 81a、81b、81c、81d コア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアに巻回される磁気コイルに電流を流すことによって、磁極面が形成される固定部と、
前記固定部の前記磁極面と平行して配置される回転板と、
前記回転板の回転中心から前記回転板の表面に対して垂直方向に伸びるシャフトと、
前記シャフトに固着され、前記シャフトの回転角度に対応して回転中心から外周までの距離が異なるように形成されたカムと、
前記シャフトを前記固定部に保持し、前記回転板を前記固定部に対して回転可能とする軸受と、
前記回転板の一方の表面側に一方の磁極面が配置され、前記回転板の他方の表面側に他方の磁極面が配置される永久磁石と、
前記固定部の磁極面と前記回転板に固着された前記永久磁石の磁極面とが対面する所定時間だけ、前記磁気コイルに電流を流すように前記カムの回転に応じて導通または切断するスイッチと、を備える直流電動機。
【請求項2】
前記固定部の磁極面に生じる磁極の極性と、前記固定部の磁極面に対面する前記永久磁石の磁極面とが異なる極性となるように前記磁気コイル電流を流すことを特徴とする請求項1に記載の直流電動機。
【請求項3】
前記コアに巻回される磁気コイルは、前記シャフトの回転中心に対してn回対称となる位置にn個配置され、
前記永久磁石は、前記シャフトの回転中心に対してn回対称となる位置にn個配置され、
前記カムは、n回対称となる平板で形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の直流電動機。
【請求項4】
前記所定時間は、
1回転の回転時間をTとして、(2°/360°)×n(回)×T(秒)〜(20°/360°)×n(回)×T(秒)の範囲とする請求項2に記載の直流電動機。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−63214(P2010−63214A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224177(P2008−224177)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(501456593)
【Fターム(参考)】