説明

相溶性が改善された難燃性−耐スクラッチ性熱可塑性樹脂組成物

【課題】本発明の難燃性−耐スクラッチ性熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂約20〜95重量部と、(B)(B1)ゴム変性ビニルグラフト共重合体樹脂約0〜100重量%と(B2)ビニル共重合体樹脂約0〜100重量%とからなる共重合体樹脂約1〜50重量部と、(C)約1.50〜1.59の屈折率を有する(メタ)アクリル共重合体樹脂約1〜50重量部と、からなるベース樹脂100重量部に対して、(D)難燃剤約0.1〜40重量部とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[技術分野]
本発明は、相溶性が改善された難燃性−耐スクラッチ性熱可塑性樹脂組成物に関する。より具体的には、本発明は、ポリカーボネート樹脂と、ゴム変性ビニルグラフト共重合体と、ビニル共重合体との混合物に、高屈折率を有する(メタ)アクリル共重合体樹脂を添加することによって、耐スクラッチ性および相溶性が同時に改善された、難燃性−耐スクラッチ性熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[背景技術]
熱可塑性樹脂は、ガラスや金属に比べて比重が低く、且つ、優れた成形性および耐衝撃性を有するなどの優れた物性を有する。近年、プラスチック製品は、電気電子製品の低原価、大型化および軽量化の傾向に沿って、既存のガラスや金属の領域を速やかに代替して、電気電子製品から自動車部品にまで使用領域を広げている。これにより、外装材としての機能および外観の性能が重要となり、外部の衝撃や傷からの耐スクラッチ性や火災に対する安定性のための難燃性への要求も高まっている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂、その中で特にポリカーボネート/ビニル共重合体の混合物(PC/ABS)は、高いノッチ衝撃強度を維持しながら加工性を向上させた樹脂混合物であるため、通常、自動車部品、コンピューターのハウジング(computer housings)またはその他の事務用機器等の熱を多く発散させる大型射出物に適用されている。さらに、難燃性に優れていて無ハロゲン(Non−Halogen)難燃が可能であって、最近の環境にやさしいことについてのイシューと共にその使用領域が増えているが、耐スクラッチ性が低いという問題点がある。
【0004】
これに反し、アクリル樹脂、特にポリメチルメタクリレート樹脂は、透明性および耐候性に優れ、且つ、機械的強度、表面光沢および接着力などに優れていて、特に耐スクラッチ性に非常に優れているが、耐衝撃性および難燃性に優れないという短所がある。
【0005】
一般に、プラスチックの耐スクラッチ性を向上させるために、最終成形された樹脂の表面上に有・無機ハイブリッド物質をドーピングした後、熱または紫外線を用いて表面上に硬化させることによって、樹脂の表面の耐スクラッチ性を向上させるハードコート法が広範囲に用いられている。しかしながら、このようなハードコーティングの場合、コーディング工程という追加の工程が必要となるので、工程上多くの時間が必要とされ、コストが嵩むのみでなく、環境問題をもたらすなどの短所を有している。したがって、近年、環境および原価問題がイシューとなるにつれて、ハードコーディングなしに耐スクラッチ性を発現することができる無塗装樹脂への要求が増えている。また、耐スクラッチ性に優れた樹脂の開発は、外装材産業において非常に重要に要求されている。
【0006】
上記の問題点を克服し、且つ耐スクラッチ性能および難燃性を達成するために接近できる方法は、ポリカーボネート/ビニル共重合体混合物(PC/ABS)とアクリル樹脂、より好ましくはポリメチルメタクリレート(PMMA)とを混用して、PC/ABS/PMMA樹脂を製造することである。しかしながら、ポリカーボネートおよびABSとアクリル樹脂間の屈折率の差および相溶性の低下によって高透明性および着色性を発現し難いという問題点がある。このような相溶性の低下によって、高温で溶融混練を行っても、それぞれの相(phase)に分離される短所がある。特に、PCの屈折率は1.59でありPMMAの屈折率は1.49であって差があるので、PCとPMMAとのアロイは光を散乱して高彩度を有する色相に着色し難いのみでなく、射出時に溶融接合線が非常にはっきり見えるという短所を有しているため、実質的に電気電子製品の外装材として適用することが非常に困難である。
【0007】
ポリカーボネートとメタクリレート樹脂との相溶性を改善するために、特許文献1では、金属ステアリン酸エステルを用いて混練工程中にポリカーボネートの分子量を低下させる方法を開示している。しかしながら、この方法は、機械的物性が急激に低下するという短所を有している。
【0008】
したがって、本発明者らは、上記の問題点を解決するために、ポリカーボネート樹脂と、ゴム変性ビニルグラフト共重合体とビニル共重合体との混合物に、高屈折率(メタ)アクリル共重合体とを添加することによって、樹脂間の屈折率の差を減少させ、ポリカーボネートと(メタ)アクリル樹脂との相溶性を改善させて、優れた外観および着色性を示す難燃性−耐スクラッチ性熱可塑性樹脂組成物を発明するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第2004−79118号公報
【発明の開示】
【0010】
[発明が解決しようとする課題]
本発明の目的は、相溶性が改善された難燃性−耐スクラッチ性熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【0011】
本発明に他の目的は、機械的物性、耐スクラッチ性および難燃性などの物性バランスに優れた難燃性−耐スクラッチ性熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、ポリカーボネート樹脂と(メタ)アクリル樹脂との混合物の着色性の低下を最小化することによって、高外観および高着色性を有する難燃性−耐スクラッチ性熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、高外観および高着色が要求される、各種の電気電子部品、自動車部品、レンズまたはガラス窓に至るまで好ましく適用できる難燃性−耐スクラッチ性熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【0014】
本発明の上記およびその他の目的は、以下に説明する本発明によって全て達成することができる。
【0015】
課題を解決するための手段
本発明の難燃性−耐スクラッチ性熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂約20〜95重量部と、(B)(B1)ゴム変性ビニルグラフト共重合体樹脂約0〜100重量%と、(B2)ビニル共重合体樹脂約0〜100重量%とを含む、共重合体樹脂約1〜50重量部と、(C)約1.50〜1.59の屈折率を有する、(メタ)アクリル共重合体樹脂約1〜50重量部と、を含む、ベース樹脂100重量部に対して、(D)難燃剤約0.1〜40重量部とを含む。
【0016】
本発明の実施形態では、前記樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂約50〜70重量部と、(B)(B1)ゴム変性ビニルグラフト共重合体樹脂約30〜70重量%と、(B2)ビニル共重合体樹脂約30〜70重量%と、を含む、共重合体樹脂約10〜40重量部と、(C)1.50〜1.59の屈折率を有する、(メタ)アクリル共重合体樹脂約5〜40重量部とを含む、ベース樹脂100重量部に対して、(D)難燃剤約10〜40重量部を含むことができる。
【0017】
前記ベース樹脂は、(メタ)アクリル樹脂(E)を約50重量部以下さらに含むことができる。本発明の実施形態では、前記(メタ)アクリル樹脂(E)を約1〜20重量部の範囲でさらに含むことができる。
【0018】
前記ゴム変性ビニルグラフト共重合体樹脂(B1)は、芳香族ビニル化合物、C1−8(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物またはこれらの混合物約50〜95重量%と、シアン化ビニル化合物、C1−8(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、無水マレイン酸、C1−4アルキルまたはフェニルN−置換マレイミドまたはこれらの混合物約5〜95重量%とが、ゴム状重合体約5〜95重量%にグラフト重合されてなる共重合体またはこれらの混合物であり得る。
【0019】
前記ビニル共重合体(B2)は、芳香族ビニル化合物、C1−8(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物またはこれらの混合物約50〜95重量%と、シアン化ビニル化合物、C1−8(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、無水マレイン酸、C1−4アルキルまたはフェニルN−置換マレイミドまたはこれらの混合物約5〜50重量%とを含む、共重合体またはこれらの混合物であり得る。
【0020】
前記(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)は、芳香族メタクリレートまたは脂肪族メタクリレートの単独重合体か、あるいは、これらの共重合体であり得る。本発明の他の実施形態では、前記(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)は、前記芳香族メタクリレートまたは脂肪族メタクリレートと、単官能性不飽和単量体との共重合体であり得る。
【0021】
好ましくは、芳香族メタクリレート、または、脂肪族メタクリレート約20〜100重量%と、単官能性不飽和単量体約0〜80重量%と、の共重合体である。
【0022】
前記単官能性不飽和単量体は、メタクリル酸エステル単量体、アクリル酸エステル単量体、不飽和カルボン酸単量体、酸無水物単量体、ヒドロキシ基含有エステル単量体、アミド単量体、不飽和ニトリル単量体、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、芳香族ビニル化合物からなる群から少なくとも1種選択されることができる。
【0023】
本発明の実施形態では、前記単官能性不飽和単量体は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレートおよびベンジルメタクリレートを含む、メタクリル酸エステル単量体と;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレートおよび2−エチルへキシルアクリレートを含む、アクリル酸エステル単量体と;アクリル酸およびメタクリル酸を含む、不飽和カルボン酸単量体と;無水マレイン酸を含む、酸無水物と;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートおよびモノグリセロールアクリレートを含む、ヒドロキシ基含有エステルと;アクリルアミドおよびメタクリルアミドを含む、アミドと;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルを含む、ニトリル単量体と;アリルグリシジルエーテルと;グリシジルメタクリレートと;スチレンおよびα−メチルスチレンを含むスチレン単量体と;からなる群から選択される少なくとも1種でありうる。
【0024】
前記(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)は、重量平均分子量が約5,000〜300,000でありうる。
【0025】
前記難燃剤(D)は、リン含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および無機難燃剤の中から少なくとも1種選択されることができる。
【0026】
前記(メタ)アクリル樹脂(E)は、C1−8アルキル(メタ)アクリル単量体の(共)重合体またはこれらの混合物であり得る。
【0027】
前記熱可塑性樹脂組成物は、界面活性剤、核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、衝撃補強剤、滑剤、抗菌剤、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、相溶化剤、無機充填剤、着色剤、安定剤、潤滑剤、静電気防止剤、顔料、染料、防炎剤等の添加剤をさらに含むことができる。これらは、単独でまたは2種以上の混合物で用いることができる。
【0028】
本発明は、前記難燃性−耐スクラッチ性熱可塑性樹脂組成物から製造されてなる、成形品を提供する。
【0029】
本発明の具体的な内容を下記に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1(a)は、実施例5で製造された試験片の透過電子顕微鏡(TEM)写真であり、図1(b)は、比較例3で製造された試験片の透過電子顕微鏡(TEM)写真を示すものである。
【図2A】図2Aは、実施例1で製造された試験片のスクラッチプロファイルを示すものである。
【図2B】図2Bは、比較例1で製造された試験片のスクラッチプロファイルを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(A)ポリカーボネート樹脂
前記ポリカーボネート樹脂は、通常の製造方法に従って製造することができ、すなわち、分子量調節剤と、触媒との存在下で、二価フェノール化合物と、ホスゲンとを反応させて製造することができる。さらに、前記ポリカーボネート樹脂は、二価フェノール化合物と、ジフェニルカーボネート等のカーボネート前駆体とのエステル相互交換反応を利用して製造することもできる。
【0032】
このようなポリカーボネート樹脂の製造方法で、前記二価フェノール化合物としては、ビスフェノール化合物を用いることができ、好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を用いることができる。この際、前記ビスフェノールAが、部分的にまたは全体的に、他の二価フェノール化合物に代替されてもよい。使用可能な他の二価フェノール化合物の例としては、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンまたはビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のハロゲン化ビスフェノールなどが挙げられる。
【0033】
ただし、前記ポリカーボネート樹脂の製造のために使用可能な二価フェノール化合物の種類がこれらに限定されるものではなく、任意の二価フェノール化合物を用いて前記ポリカーボネート樹脂を製造することができる。
【0034】
また、前記ポリカーボネート樹脂は、1種の二価フェノール化合物を用いた単独重合体か、2種以上の二価フェノール化合物を用いた共重合体またはこれらの混合物からなれる。
【0035】
さらに、前記ポリカーボネート樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂としては、特定の形態に制限されることなく、これらの線状ポリカーボネート樹脂、分岐型ポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート共重合体樹脂などをすべて用いることができる。
【0036】
前記線状ポリカーボネート樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノールAポリカーボネート樹脂を用いることができる。前記分岐型ポリカーボネート樹脂としては、例えば、トリメリット無水物またはトリメリット酸等の多官能性芳香族化合物を二価フェノール化合物およびカーボネート前駆体と反応させて製造されたものを用いることができる。また、前記ポリエステルカーボネート共重合体樹脂としては、例えば、二官能性カルボン酸を二価フェノールおよびカーボネート前駆体と反応させて製造されたものを用いることができる。他にも、通常の線状ポリカーボネート樹脂、分岐型ポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート共重合体樹脂を制限なく用いることができる。
【0037】
本発明の一実施形態では、前記ポリカーボネート樹脂としては、約10,000〜200,000g/mol、約15,000〜80,000g/molまたは約20,000〜50,000g/molのものを用いることができる。
【0038】
本発明では、前記ポリカーボネート樹脂は、約20〜95重量%で用いられる。上記の範囲で優れた機械的物性および耐スクラッチ性の物性バランスが得られる。他の実施形態では、好ましくは約40〜90重量%であり、より好ましくは約45〜80重量%である。本発明の実施形態では、前記ポリカーボネート樹脂は、約51〜85重量%で用いることができる。本発明の他の実施形態では、約85〜95重量%で用いることができる。本発明のさらに他の実施形態では、約30〜50重量%で用いることができる。
【0039】
(B)共重合体樹脂
本発明の共重合体樹脂(B)は、ベース樹脂を構成し、(B1)ゴム変性ビニルグラフト共重合体約0〜100重量%と、(B2)ビニル共重合体約0〜100重量%と、を含む。本発明の実施形態では、前記共重合体樹脂(B)は、(B1)ゴム変性ビニルグラフト共重合体約10〜60重量%と、(B2)ビニル共重合体約40〜90重量%とを含むことができる。本発明の他の実施形態では、前記共重合体樹脂(B)は、(B1)ゴム変性ビニルグラフト共重合体約51〜90重量%と、(B2)ビニル共重合体約10〜49重量%とを含むことができる。前記共重合体樹脂(B)は、ベース樹脂中、約1〜50重量部の範囲で用いられる。好ましくは約10〜40重量部であり、より好ましくは約15〜30重量部である。
【0040】
(B1)ゴム変性ビニルグラフト共重合体
本発明のゴム変性ビニルグラフト共重合体は、芳香族ビニル化合物、C1−8(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物またはこれらの混合物約50〜95重量%と、シアン化ビニル化合物、C1−8(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、無水マレイン酸、C1−4アルキルもしくはフェニルN−置換マレイミドまたはこれらの混合物約5〜95重量%とが、ゴム状重合体約5〜95重量%にグラフト重合されてなる、共重合体またはこれらの混合物であり得る。
【0041】
本発明の実施形態では、前記ゴム変性ビニルグラフト共重合体は、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲンまたはアルキル置換スチレン、C1−8メタクリル酸アルキルエステル類、C1−8アクリル酸アルキルエステル類またはこれらの混合物約50〜95重量%と;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、C1−8メタクリル酸アルキルエステル類、C1−8アクリル酸アルキルエステル類、無水マレイン酸、C1−4アルキルもしくはフェニルN−置換マレイミドまたはこれらの混合物約5〜50重量%と、を含む、単量体混合物約5〜95重量%を、ゴム状重合体約5〜95重量%にグラフト重合して製造されることができる。
【0042】
前記C1−8メタクリル酸アルキルエステル類またはC1−8アクリル酸アルキルエステル類は、それぞれ、メタクリル酸またはアクリル酸のアルキルエステル類であって、1〜8個の炭素原子を含むモノヒドリルアルコールから得られたエステル類である。これらの好適な具体例としては、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸プロピルエステル、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステルまたはアクリル酸プロピルエステルなどが挙げられる。
【0043】
前記ゴム状重合体としては、ブタジエンゴム、アクリルゴム、エチレン/プロピレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンの三元共重合体(EPDM)、ポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム複合体などを用いることができ、これらは単独でまたは2種以上混合して適用されることができる。
【0044】
前記ゴム変性ビニルグラフト共重合体(B1)の具体例としては、ブタジエンゴム、アクリルゴムまたはスチレン/ブタジエンゴムに、スチレンと、アクリロニトリルと、および、選択的に(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、を含む単量体混合物をグラフト共重合することによって得られる共重合体でありうる。
【0045】
前記ゴム変性ビニルグラフト共重合体(B1)の他の具体例としては、ブタジエンゴム、アクリルゴムまたはスチレン/ブタジエンゴムに、(メタ)アクリル酸メチルエステル単量体をグラフト共重合することによって得られる共重合体でありうる。
【0046】
本発明では、最も好ましいグラフト共重合体の例は、ABSグラフト共重合体である。
【0047】
前記グラフト共重合体の製造時にゴム粒子の粒径は、耐衝撃性および成形物の表面特性を向上させるために、約0.05〜4μmの範囲が好ましい。
【0048】
前記グラフト共重合体を製造する方法は、この分野における通常の知識を有する者に既によく知られているものであって、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法または塊状重合法のいずれも用いることができるが、ゴム質重合体に、前述した芳香族ビニル単量体を添加して、重合開始剤を用いて乳化重合または塊状重合させることが好ましい。
【0049】
(B2)ビニル共重合体
本発明の前記ビニル共重合体(B2)は、芳香族ビニル化合物、C1−8(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物またはこれらの混合物約50〜95重量%と、シアン化ビニル化合物、C1−8(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、無水マレイン酸、C1−4アルキルもしくはフェニルN−置換マレイミドまたはこれらの混合物約5〜50重量%と、の共重合体またはこれらの混合物である。
【0050】
本発明の実施形態では、前記ビニル共重合体(B2)は、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲンまたはアルキル置換スチレン、C1−8メタクリル酸アルキルエステル類、C1−8アクリル酸アルキルエステル類またはこれらの混合物約50〜95重量%と、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、C1−8メタクリル酸アルキルエステル類、C1−8アクリル酸アルキルエステル類、無水マレイン酸、C1−4アルキルまたはフェニルN置換マレイミドまたはこれらの混合物約5〜50重量%と、を共重合して得られたビニル共重合体またはこれらの共重合体の混合物であり得る。
【0051】
前記C1−8メタクリル酸アルキルエステル類またはC1−8アクリル酸アルキルエステル類は、それぞれ、メタクリル酸またはアクリル酸のアルキルエステル類であって、1〜8個の炭素原子を含むモノヒドリルアルコール(一価アルコール)から得られたエステル類でありうる。これらの好適な具体例としては、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸メチルエステルまたはメタクリル酸プロピルエステルなどが挙げられる。
【0052】
本発明のビニル共重合体(B2)は、グラフト共重合体の製造時に、副産物として生成されることができる。かかる副産物は、特に少ない量のゴム質重合体に、過量の単量体混合物をグラフトさせる場合や、あるいは、分子量調節剤として用いられる連鎖移動剤を過量で用いる場合にさらに多く発生する。本発明の樹脂組成物の製造に用いられるビニル共重合体の含量は、グラフト共重合体の副産物を含めて示すことではない。
【0053】
好ましいビニル共重合体としては、スチレンと、アクリロニトリルと、選択的にメタクリル酸メチルエステルとの単量体混合物;α−メチルスチレンと、アクリロニトリルと、選択的にメタクリル酸メチルエステルとの単量体混合物;α−メチルスチレンと、アクリロニトリルと、選択的にメタクリル酸メチルエステルとの単量体混合物;または;スチレンと、α−メチルスチレンアクリロニトリルと、選択的にメタクリル酸メチルエステルとの単量体混合物;から製造されたものが挙げられる。
【0054】
前記ビニル共重合体は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法または塊状重合法で製造されることができ、重量平均分子量が約15,000〜200,000のものを用いることが好ましい。
【0055】
前記ビニル共重合体の具体例としては、メタクリル酸メチルエステル単量体と、選択的にアクリル酸メチルエステルまたはアクリル酸エチルエステルの単量体と、の混合物から製造されたものが挙げられる。前記メタクリル酸メチルエステル重合体は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法または塊状重合法で製造されることができ、重量平均分子量が約20,000〜250,000のものを用いることが好ましい。
【0056】
本発明の他の実施形態では、前記ビニル共重合体は、スチレンと無水マレイン酸との共重合体であって、連続塊状重合法および溶液重合法を利用して製造することができる。両単量体成分の組成比は、広い範囲で変化されることができ、無水マレイン酸の含量が約5〜50重量%のものが好ましい。スチレン/無水マレイン酸共重合体の分子量もまた広い範囲のものを用いることができるが、重量平均分子量が約20,000〜200,000、固有粘度が約0.3〜0.9dl/gのものを用いることが好ましい。
【0057】
前記ビニル共重合体(B2)の製造に用いられる芳香族ビニル単量体は、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレンおよびα−メチルスチレン等の他の置換されたビニル単量体に代替して用いることができる。
【0058】
(C)(メタ)アクリル共重合体樹脂
本発明の(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)は、芳香族メタクリレートまたは脂肪族メタクリレートの単独重合体か、あるいは、これらの共重合体であり得る。本発明の他の実施形態では、前記(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)は、前記芳香族メタクリレートまたは脂肪族メタクリレートと単官能性不飽和単量体との共重合体であり得る。
【0059】
前記芳香族メタクリレートまたは脂肪族メタクリレートは、下記化学式1または化学式2の構造で表示されることができる。
【0060】
【化1】

【0061】
(式1中、mは0〜10の整数であり、Xはシクロへキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、メトキシフェニル基、シクロへキシルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フェニルフェニル基およびベンジルフェニル基からなる群から選択される。)
【0062】
【化2】

【0063】
(式2中で、mは0〜10の整数であり、Yは酸素(O)または硫黄(S)であり、Arはシクロへキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、メトキシフェニル基、シクロへキシルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フェニルフェニル基およびベンジルフェニル基からなる群から選択される。)
前記芳香族メタクリレートまたは脂肪族メタクリレートの例としては、シクロへキシルメタクリレート、フェノキシメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2−エチルフェノキシメタクリレート、2−エチルチオフェニルメタクリレート、2−エチルアミノフェニルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、4−フェニルブチルメタクリレート、2−2−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−3−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−4−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−シクロへキシルフェニル)エチルメタクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレートおよび2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレート等のメタクリル酸などがあり、必ずしもこれらに制限されるものではない。これらは、単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0064】
前記単官能性不飽和単量体としては、特別な制限はなく、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類;酸無水物;ヒドロキシ基含有エステル;アミド;不飽和ニトリル;アリルグリシジルエーテル;グリシジルメタクリレート;芳香族ビニル化合物;などを用いることができる。本発明の実施形態では、前記単官能性不飽和単量体は、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレートおよびベンジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート等のアクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸等の酸無水物;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、モノグリセロールアクリレート等のヒドロキシ基含有エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アリルグリシジルエーテル;グリシジルメタクリレート;スチレンおよびα−メチルスチレン等のスチレン単量体も可能である。これらは、単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0065】
本発明の実施形態では、前記(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)は、前記芳香族メタクリレートまたは脂肪族メタクリレート約20〜100重量%と、単官能性不飽和単量体約0〜80重量%とを共重合することによって製造されてもよい。ただし、芳香族メタクリレートまたは脂肪族メタクリレートが約20重量%未満の場合は、重合された(メタ)アクリル共重合体樹脂の平均屈折率が約1.50以下に下がる虞がある。本発明の他の実施形態では、前記(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)は、前記芳香族メタクリレートまたは脂肪族メタクリレート約50〜90重量%と、単官能性不飽和単量体約10〜50重量%とを共重合することによって製造される共重合体でありうる。本発明のさらに他の実施形態では、前記(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)は、前記芳香族メタクリレートまたは脂肪族メタクリレート約60〜80重量%と、単官能性不飽和単量体約20〜40重量%と、を共重合することによって製造されうる共重合体でありうる。
【0066】
前記(メタ)アクリル共重合体樹脂は、通常の塊状重合法、乳化重合法および懸濁重合法によって重合されることができる。
【0067】
本発明の(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)は、通常の(メタ)アクリル共重合体に比べて高い屈折率を有する。通常のポリカーボネートの屈折率は約1.59であり、ポリメチルメタクリレートの屈折率は約1.49であることに比べて、本発明の(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)は、約1.50〜1.59の屈折率を有するように製造されることができる。本発明の実施形態では、屈折率が約1.52〜1.58であり、約1.53〜1.575であり得る。
【0068】
前記(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)とポリカーボネート樹脂(A)とを混合する場合、(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)の高い屈折率によってポリカーボネートとの屈折率の差が殆どないので、優れた透明性を有するようになる。
【0069】
また、前記(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)と(メタ)アクリル樹脂(E)との混合物をポリカーボネート樹脂(A)と混合する際、(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)における増加された屈折率によって(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)と(メタ)アクリル樹脂(E)との混合体の全体屈折率を高めて、ポリカーボネートとの屈折率の差を減少させることができる。したがって、(メタ)アクリル樹脂(E)とポリカーボネート樹脂(A)との混合物において、屈折率の差によって生ずる透明性および着色性の低下現象を減少させるようになる。
【0070】
前記(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)は、重量平均分子量が約5,000〜300,000であり得る。本発明の他の実施形態では、重量平均分子量が約100,000〜250,000の値を有することができ、約110,000〜200,000であり得る。本発明のさらに他の実施形態では、重量平均分子量が約10,000〜70,000g/molの値を有することができる。本発明のさらに他の実施形態では、重量平均分子量が約5,000〜10,000g/molの値を有することができる。
【0071】
本発明では、前記(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)は、約1〜50重量部で用いられる。好ましくは約5〜40重量部、より好ましくは約10〜35重量部で用いることができる。
【0072】
(D)難燃剤
本発明の難燃剤としては、リン含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および無機難燃剤の中から少なくとも1種を用いることができる。
【0073】
適用できるリン含有難燃剤は、特に制限されず、通常のリンを含む難燃剤であれば、いずれも適用されることができる。本発明の実施形態では、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィンオキシド、ホスファゼンおよびこれらの金属塩などが適用されることができるが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0074】
前記ホスフェートは、下記化学式3の構造で表される芳香族リン酸エステル化合物が好ましく適用されることができる。
【0075】
【化3】

【0076】
(式3中、R、R、R、および、Rは、C〜C20のアリール基またはC〜C12のアルキル置換アリール基であって互いに独立して適用でき、Rは、レゾルシノール、ヒドロキノール、ビスフェノール−A、ビスフェノール−S等のジアルコール誘導体のうちの一つであり、nは、約0〜5の値を有する。
【0077】
好ましくは、前記R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、フェニル基、あるいは、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、イソブチル、イソアミル、t−アミル等のアルキル基が置換されたフェニル基である。これらの中で、フェニル基またはメチル、エチル、イソプロピルまたはt−ブチル基に置換されたフェニル基がより好ましい。
【0078】
本発明の実施形態では、上記化学式3で表示される芳香族リン酸エステル化合物は、nの平均値が0〜3の単量体型またはオリゴマー型のリン酸エステル化合物であり得る。本発明では、前記nの値が0、1、2および3のリン酸エステル化合物を単独または混合された形態で用いることができる。
【0079】
本発明の他の実施形態では、前記芳香族リン酸エステル化合物は、他のリン含有難燃剤との混合物として用いることができる。
【0080】
前記難燃剤(D)としてハロゲン含有難燃剤も適用が可能であり、通常のハロゲン含有難燃剤をすべて用いることができる。好ましいハロゲン難燃剤としては、デカブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエタン、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−エポキシオリゴマー、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、トリス(トリブロモフェノール)トリアジン、臭化ポリスチレンなどがある。特に好ましくは通常の加工温度で溶融が可能なハロゲン難燃剤、より具体的には、約250℃以下で融点または軟化点を有するハロゲン難燃剤が好ましい。
【0081】
本発明の実施形態では、前記ハロゲン難燃剤と共に、三酸化アンチモンおよび五酸化アンチモン等の無機化合物も一緒に適用することができる。
【0082】
前記難燃剤(D)は、ベース樹脂100重量部に対して約0.1〜40重量部で用いることができ、好ましくは約1〜30重量部、より好ましくは約10〜25重量部で用いることができる。
【0083】
(E)(メタ)アクリル樹脂
本発明の難燃性−耐スクラッチ性熱可塑性樹脂組成物は、選択的に、(メタ)アクリル樹脂(E)をさらに含むことができる。前記(メタ)アクリル樹脂(E)は、少なくとも1種のC1−8アルキル(メタ)アクリル単量体の重合体、共重合体またはこれらの混合物である。また、前記(メタ)アクリル樹脂は、線状構造を有してもよい。
【0084】
前記(メタ)アクリル単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、2−エチルへキシルメタクリレートなどであるが、必ずしもこれらに制限されるものではない。前記(メタ)アクリル単量体は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0085】
前記(メタ)アクリル樹脂(E)は、通常の塊状重合法、乳化重合法および懸濁重合法によって製造されることができる。
【0086】
さらに、前記(メタ)アクリル樹脂は、1種の(メタ)アクリル単量体を用いた単独重合体か、2種以上の(メタ)アクリル単量体を用いた共重合体またはこれらの混合物で製造されることができる。
【0087】
本発明に係る(メタ)アクリル樹脂(E)は、前記(A)ポリカーボネート樹脂、(B)共重合体樹脂および(C)(メタ)アクリル共重合体樹脂に、約50重量部以下で含まれて、ベース樹脂として用いることができる。本発明の実施形態では約1〜35重量部で用いることができ、他の実施形態では約5〜20重量部で用いることができる。
【0088】
本発明の樹脂組成物は、界面活性剤、核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、衝撃補強剤、滑剤、抗菌剤、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、相溶化剤、無機充填剤、着色剤、安定剤、潤滑剤、静電気防止剤、顔料、染料、防炎剤等の添加剤をさらに含むことができる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して適用することができる。
【0089】
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物を製造する公知の方法で製造することができる。例えば、本発明の構成成分と、その他の添加剤とを同時に混合した後、押出器内で溶融押出し、ペレット状に製造することができ、このようなペレットを利用して射出および圧縮成形品を製造することができる。
【0090】
本発明の樹脂組成物は、耐スクラッチ性、着色性および透明性に優れているので、様々な製品の成形に用いることができる。特に、各種の電気電子製品の外装材、部品または自動車部品、レンズ、ガラス窓などに広範囲に適用することができる。
【0091】
本発明の一実施形態では、前記耐スクラッチ性熱可塑性樹脂組成物を成形して、テレビ、オーディオ、洗濯機、カセットプレーヤー、MP3、電話機、ゲーム機、ビデオプレーヤー、コンピュータ、コピー機等の電気電子製品のハウジング(housing)として用いることができる。
【0092】
本発明の他の実施形態では、前記耐スクラッチ性熱可塑性樹脂組成物を成形して、自動車ダッシュボード、インストルメントパネル、ドアパネル、クォーターパネル、ホイールカーバ等の自動車の内外装材に適用されることができる。
【0093】
前記成形品を成形する方法では、押出、射出またはキャスティングなどが適用されることができ、必ずしもこれらに制限されるものではない。また、前記成形方法は、本発明の属する分野における通常の知識を有する者によって容易に実施されることができる。
【0094】
本発明は、下記実施例によってさらによく理解されることができ、下記実施例は本発明の例示目的のためのものであり、添付された特許請求の範囲によって限定される技術範囲を制限しようとするのではない。
【実施例】
【0095】
実施例
(A)ポリカーボネート樹脂
ポリカーボネート樹脂であって、重量平均分子量が25,000g/molであり、ビスフェノールA型の線状ポリカーボネート樹脂である、日本のTEIJIN社製のPANLITE L−1250WPを用いた。
【0096】
(B)共重合体樹脂
(B1)ABSグラフト共重合体
単量体全量に対して、ブタジエンの含量が45重量部(固形分)となるようにポリブタジエンゴムラテックスを投入し、スチレン39重量部と、アクリロニトリル16重量部と、脱イオン水150重量部とを混合し、混合物を作製した。かかる混合物に、添加剤であるオレイン酸カリウム1.0重量部、クメンヒドロペルオキシド0.4重量部、t−ドデシルメルカプタン連鎖移動剤0.3重量部を添加した。その後、5時間75℃に維持しながら反応させてABSグラフト共重合体(g−ABS)ラテックスを製造した。かかるg−ABSラテックスに、1%の硫酸溶液を添加し、凝固させた後、乾燥して、グラフト共重合体樹脂(g−ABS)を粉末状態で得た。
【0097】
(B2)SAN共重合体
スチレン76重量部と、アクリロニトリル24重量部と、脱イオン水120重量部とを混合し混合物を得た。かかる混合物に、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.17重量部、t−ドデシルメルカプタン連鎖移動剤0.4重量部およびトリカルシウムホスフェート0.5重量部を添加した。この混合物を75℃で5時間懸濁重合して、SAN共重合体樹脂を製造した。この共重合体を水洗、脱水および乾燥させて、重量平均分子量が150,000g/molのSAN共重合体樹脂を粉末状態で得た。
【0098】
(C)高屈折率(メタ)アクリル共重合体樹脂
(C1)高屈折率(メタ)アクリル共重合体−1
メチルメタクリレート単量体30重量部と、屈折率が1.570のフェニルメタクリレート70重量部とを懸濁重合することによって、高い屈折率を有する(メタ)アクリル共重合体を得た。かかる共重合体は、屈折率が1.546、重量平均分子量が120,000g/molであった。
【0099】
(C2)高屈折率(メタ)アクリル共重合体−2
メチルメタクリレート単量体50重量部と、屈折率が1.570のフェニルメタクリレート50重量部とを懸濁重合することによって、高い屈折率を有する(メタ)アクリル共重合体を得た。かかる共重合体は、屈折率が1.530、重量平均分子量が120,000g/molであった。
【0100】
(D)難燃剤
ビスフェノールAジホスフェートであって、日本の大八化学工業社製のCR−741を用いた。
【0101】
(E)(メタ)アクリル樹脂
重量平均分子量が92,000のポリメチルメタクリレート樹脂である、韓国のLG MMA社製のL84を用いた。
【0102】
実施例1〜5
下記表1に記載された各成分を一般的なミキサーに添加し、この混合物を、一般的な二軸押出器(L/D=29、直径45mm)で押し出し、ペレットを製造した。かかるペレットを80℃で6時間乾燥した後、6Ozの射出器で射出して試験片を製造した。
【0103】
比較例1〜3
比較例1は、本発明の高屈折率(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)を用いないことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて試験片を製造した。
【0104】
比較例2は、高屈折率(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)の代わりに、(メタ)アクリル樹脂(E)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて試験片を製造した。
【0105】
比較例3は、高屈折率(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)の代わりに、(メタ)アクリル樹脂(E)を用いたことを除いては、実施例5と同様の方法を用いて試験片を製造した。
【0106】
改善された相溶性は、TEM写真を通じた相分離の挙動で確認することができた。この際、外観評価のために、L90mm×W50mm×T2.5mmの試験片を用いた。一方で、実施例5で製造された試験片に対して透過電子顕微鏡(TEM)写真で相分離挙動を確認し、図1(A)に示した。比較例3で製造された試験片に対しても透過電子顕微鏡(TEM)写真で相分離の挙動を確認し、図1(B)を示した。比較例3の場合、低下した相溶性によって、ポリカーボネートベースにおいて、ポリメチルメタクリレートの相が連続的であり、ドメインも大きい相をなすが、実施例5の場合、ポリメチルメタクリレートの相分離現象が消え、ポリカーボネート樹脂と均一の相を示すことから、相溶性が改善されたことが分かる。
【0107】
(1)熱可塑性樹脂組成物の相溶性および透明度は、射出成形品の外観のフローマーク(flow mark)、透明度、色、透過度、および乳白色の有無を肉眼で確認することによって評価した。
【0108】
(2)曲げ弾性率は、ASTM D790に規定された方法により測定し、その結果を下記表1に示した。
【0109】
(3)難燃性は、UL 94V難燃規定に従って、2.5mmの厚さで難燃度を測定した。
【0110】
(4)耐スクラッチ性は、ボール型スクラッチプロファイル(Ball−type Scratch Profile:BSP)テストによって測定した。BSPテストは、L90mm×W50mm×T2.5mmの大きさの試験片の表面に直径0.7mmの球形の金属チップを用いて1000gの荷重および75mm/minのスクラッチ速度で長さ10〜20mmのスクラッチをかけた後、Ambios社製の接触式表面プロファイル分析器(XP−1)を用いて直径1〜2μmの金属スタイラスチップを利用した表面スキャンを通じてかけられたスクラッチのプロファイルを測定して耐スクラッチ性の尺度となるスクラッチ幅(scratch width)を測定して耐スクラッチ性を評価した。
【0111】
図2Aは、BSPテストによって測定された実施例1のスクラッチプロファイル写真を示し、図2Bは比較例1に対して測定されたスクラッチプロファイル写真を示したものである。
【0112】
【表1】

【0113】
上記表1に示すように、高屈折率(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)や(メタ)アクリル樹脂(E)を適用した実施例1〜5および比較例2〜3は、比較例1に比べて改善された耐スクラッチ性を示すことが分かる。これは、図2のスクラッチプロファイルで確認することができる。難燃性の場合、難燃剤の含有によっていずれもUL94規格でV0以上の難燃度を示した。
【0114】
比較例2および3のように、高屈折率(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)の代わりに(メタ)アクリル樹脂(E)を適用する場合、比較例1のポリカーボネート樹脂単独に比べて耐スクラッチ性は向上するが、両樹脂間の相溶性の低下によってフローマークおよび乳白色の不透明な外観を示すことを確認することができた。高屈折率(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)が含まれた実施例1〜5の場合、屈折率の改善による相溶性の改善で、表面からフローマークおよび乳白色の不透明な外観が消えたことが分かり、したがって、高外観および高着色が可能である。
【0115】
また、屈折率がさらに高い高屈折率(メタ)アクリル共重合体(C1)が含まれた場合には、実施例1が実施例2に比べてさらに優れた相溶性を示した。高屈折率アクリル共重合体を一般のアクリル樹脂と混用して用いた実施例3および4の場合、高屈折率アクリル共重合体を全量に用いた場合よりは下がるが、相溶性が改善される結果を示した。結果的に、(メタ)アクリル樹脂の平均屈折率が高くなるにつれて、相溶性が改善される結果を示した。
【0116】
本発明の単なる変形または変更は、この分野における通常の知識を有する者であれば容易に実施することができ、かかる変形や変更は全て本発明の保護範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカーボネート樹脂20〜95重量部と、
(B)(B1)ゴム変性ビニルグラフト共重合体樹脂0〜100重量%と、(B2)ビニル共重合体樹脂0〜100重量%とを含む、共重合体樹脂1〜50重量部と、
(C)1.50〜1.59の屈折率を有する、(メタ)アクリル共重合体樹脂1〜50重量部と、
を含むベース樹脂100重量部に対して、
(D)難燃剤0.1〜40重量部を含む、難燃性−耐スクラッチ性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ベース樹脂は、(メタ)アクリル樹脂(E)50重量部以下をさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ゴム変性ビニルグラフト共重合体樹脂(B1)は、
芳香族ビニル化合物、C1−8(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物またはこれらの混合物50〜95重量%と、
シアン化ビニル化合物、C1−8(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、無水マレイン酸、C1−4アルキルもしくはフェニルN−置換マレイミドまたはこれらの混合物 5〜95重量%と、
がゴム状重合体5〜95重量%にグラフト重合されてなる、共重合体またはこれらの混合物である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ビニル共重合体(B2)は、
芳香族ビニル化合物、C1−8(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物またはこれらの混合物50〜95重量%と、
シアン化ビニル化合物、C1−8(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、無水マレイン酸、C1−4アルキルもしくはフェニルN−置換マレイミドまたはこれらの混合物5〜50重量%と、
を含む、共重合体またはこれらの混合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)は、
下記化学式1または化学式2の構造を有する、芳香族メタクリレートまたは脂肪族メタクリレート20〜100重量%と、
単官能性不飽和単量体0〜80重量%と、
を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【化1】

(式1中、mは0〜10の整数であり、Xは、シクロへキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、メトキシフェニル基、シクロへキシルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フェニルフェニル基およびベンジルフェニル基からなる群から選択される。)
【化2】

(式2中、mは、0〜10の整数であり、Yは酸素(O)または硫黄(S)であり、Arはシクロへキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、メトキシフェニル基、シクロへキシルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フェニルフェニル基およびベンジルフェニル基からなる群から選択される。)
【請求項6】
前記単官能性不飽和単量体は、
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレートおよびベンジルメタクリレートを含む、メタクリル酸エステル単量体と;
メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレートおよび、2−エチルへキシルアクリレートを含む、アクリル酸エステル単量体と;
アクリル酸およびメタクリル酸を含む、不飽和カルボン酸単量体と;
無粋マレイン酸を含む、酸無水物単量体と;
2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートおよびモノグリセロールアクリレートを含む、ヒドロキシ基含有エステル単量体と;
アクリルアミドおよびメタクリルアミドを含む、アミド単量体と;
アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルを含む、ニトリル単量体と;
アリルグリシジルエーテルと;
グリシジルメタクリレートと;
スチレンおよびα−メチルスチレンを含む、スチレン単量体と;
からなる群から選択される少なくとも1種の単量体である、請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル共重合体樹脂(C)は、重量平均分子量5,000〜300,000である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記難燃剤(D)は、リン含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および無機系難燃剤の中から選択される少なくとも1種の難燃剤である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(メタ)アクリル樹脂(E)は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、2−エチルへキシルメタクリレートおよびこれらの混合物からなる群から選択される、(メタ)アクリル単量体の(共)重合体またはこれらの混合物である、請求項2〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
界面活性剤、核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、衝撃補強剤、滑剤、抗菌剤、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、相溶化剤、無機充填剤、着色剤、安定剤、潤滑剤、静電気防止剤、顔料、染料、防炎剤およびこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の難燃性−耐スクラッチ性熱可塑性樹脂組成物から製造されてなる、成形品。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2011−516682(P2011−516682A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503897(P2011−503897)
【出願日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007838
【国際公開番号】WO2009/128601
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】