説明

真空チャンバ装置、静電潜像形成装置、静電潜像測定装置、及び画像形成装置

【課題】真空チャンバの外部からの外光を遮断しつつ、走査光学系の光ビームを真空チャンバ内部に導いて試料上を走査することが可能となる真空チャンバ装置を提供する。
【解決手段】真空チャンバの内部に設けられ、試料を載置し、任意の方向に移動可能とする真空試料ステージ部と、真空チャンバの外部に配置され、試料を走査するための走査ビームを出射、偏向する走査光学系と、真空チャンバと走査光学系とを連結するとともに、真空チャンバ内部へ入射する外光を遮光する外光遮光手段と、真空チャンバと外光遮光手段との連結部分に設けられ、走査ビームが透過可能な内部観察用手段と、走査光学系から出射された走査ビームを、外光遮光手段及び内部観察用手段を介して真空チャンバの内部に導く走査ビーム折り返し手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバ装置、静電潜像形成装置、静電潜像測定装置、画像形成装置に関するものであり、試料の表面電位分布、表面電荷分布の測定などに適用可能な真空チャンバ装置、静電潜像形成装置、静電潜像測定装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やレーザープリンタといった電子写真方式画像形成装置において出力画像を得るためには、通常、以下のプロセスを経ている(図7参照)。
1.帯電:電子写真感光体を均一に帯電させる。
2.露光:上記感光体に光を照射し、画像に対応して部分的に電荷を逃がし、静電潜像を形成する。
3.現像:帯電した微粒子(以下、トナーという)で、上記静電潜像上に可視画像を形成する。
4.転写:現像され可視化されたトナー画像を紙または他の転写材に移動させる。
5.定着:転写画像を形成しているトナーを融着して、転写材上に画像を固定する。
6.クリーニング:感光体上の残留トナーを清掃する。
7.除電:感光体上の残留電荷を除去する。
上記各工程のプロセスファクタやプロセスクオリティは、最終的な出力画像品質に大きく影響を与える。このため、より高い画質の画像を得るためには、各工程のプロセスクオリティを向上させる必要があり、中でも露光後の静電潜像の品質を評価する事は、質の高い画像を得る上で極めて重要である。
【0003】
特に、露光工程で用いる書き込み光学系の設計は、感光体面上におけるビームスポット径として最適化設計されている。しかし、本来、トナー粒子の挙動に直接影響を与える感光体上の静電潜像として最適なものが形成されるように設計されるべきであるにもかかわらず、そのような設計が行われているわけではない。また、露光エネルギーが静電潜像へ変換されるときの明確なメカニズムも確立されていない。従って、静電潜像から得られる情報を光学系設計に取り込むことができれば、さらに高画質が得られ、画像形成装置の低コスト設計をすることが期待できる。
【特許文献1】特許第3009179号公報
【特許文献2】特開平11−184188号公報
【特許文献3】特開平3−49143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、静電潜像は、測定することが極めて困難であり、実際の使用上全く測定できていないのが現状である。
【0005】
良く知られている静電潜像の測定方法は、カンチレバーなどのセンサヘッドを、電位分布を有する試料に近づけ、そのとき静電潜像とカンチレバーなどとの間に相互作用として起こる、静電引力や誘導電流を計測し、これを電位分布に換算する方式である。静電引力タイプはSPM(Scanning Probe Microscope)として市販されており、また誘導電流タイプは、例えば、特許文献1や特許文献2などに記載されている。
【0006】
しかしながら、これらの方式を用いるためには、センサヘッドを試料に近接させる必要がある。例えば、10μmの空間分解能を得るためには、センサと試料との距離は10μm以下にする必要がある。このような条件では、
〈1〉絶対距離計測が必要となる。
〈2〉測定に時間がかかり、その間に潜像の状態が変化する。
〈3〉放電、吸着が起こる。
〈4〉センサ自身が電場を乱す。
といった大きな問題点を有しており、他の用途には使うことができても、実使用上静電潜像を測定することはできない。
【0007】
このため、現実的な測定方法として、静電潜像の可視化には、着色微粉末であるトナーに電荷を与え、この電荷を持ったトナーと静電潜像との間に働くクーロン力によって現像を行い、さらにこのトナー像を紙やテープに転写させる方法が一般にとられている。しかしながら、この方法では、現像と転写のプロセスを経ているので、静電潜像そのものを計測したことにはならない。
【0008】
一方、電子ビームを用いた電位パターンの測定方法が知られている。これは、LSIの故障解析のために、既に実用化されている。この測定方法は試料が導体の場合であり、本発明が対象としている感光体のような誘電体とは全く異質のものが測定対象であり、感光体のような誘電体の測定には適応できない。測定対象が導体であれば、これに定電流を流すことにより電位分布を長時間保持することができ、また、電位量は高々0〜5Vの狭い範囲であり、チャージアップの現象も起きない。電子ビームの照射によって、電位状態が変わることもない。
【0009】
電子ビームによる静電潜像の観察方法としては、例えば特許文献3記載のものなどがあるが、試料としては、LSIチップや静電潜像を記憶・保持できる試料に限定されている。すなわち、暗減衰を生じる通常の感光体は、測定することができない。
【0010】
通常の誘電体は電荷を半永久的に保持することができるので、電荷分布を形成後、時間をかけて測定を行っても、測定結果に影響を与えることはない。しかしながら、感光体の場合は、抵抗値が無限大ではないので、電荷を長時間保持できず、暗減衰が生じ、時間とともに表面電位が低下してしまう。感光体が電荷を保持できる時間は、暗室であってもせいぜい数十秒である。従って、帯電・露光後に電子顕微鏡(SEM)内で観察しようとしても、その準備段階で静電潜像は消失してしまう。
【0011】
ところで、電子写真プロセスで用いられる感光体試料は、一般的に円筒形状をしており、円筒形状の感光体に生じる静電潜像分布を非破壊で、高分解能に測定することが望まれる。また、電荷分布形成手段が同じであっても、感光体の経時的な劣化により、静電潜像は変化する。このため、経時的な静電潜像の変動を評価することが望まれている。
【0012】
本発明は、以上のような従来技術の問題点を解消するためになされたものであり、荷電粒ビームを照射して、測定を行う装置内に静電潜像を形成し、潜像形成後の短い時間内に測定を行うことができる真空チャンバ装置、静電潜像形成装置、静電潜像測定装置、及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、静電潜像のビームプロファイルを精度良く定量評価し、さらに静止ビームプロファイルだけでなく、実使用に近い状態でダイナミックにビームを走査して得られる静電潜像評価、ドットの多重露光による潜像形成への影響等を測定評価できる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明は、真空チャンバの内部に設けられ、試料を載置し、任意の方向に移動可能とする真空試料ステージ部と、真空チャンバの外部に配置され、試料を走査するための走査ビームを出射、偏向する走査光学系と、真空チャンバと走査光学系とを連結するとともに、真空チャンバ内部へ入射する外光を遮光する外光遮光手段と、真空チャンバと外光遮光手段との連結部分に設けられ、走査ビームが透過可能な内部観察用手段と、走査光学系から出射された走査ビームを、外光遮光手段及び内部観察用手段を介して真空チャンバの内部に導く走査ビーム折り返し手段と、を有することを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、走査光学系は、平行移動が可能な平行移動装置上に載置され、走査光学系から走査ビームを出射して試料を走査しつつ、平行移動装置及び真空試料ステージ部を移動させることにより、2次元走査を可能とすることを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、内部観察用手段は、真空チャンバ鉛直軸に対して略45度となる位置に配置され、走査ビーム折り返し手段は、走査ビームの出射角が真空チャンバ鉛直軸に対し略45度になるように走査光学系と一体化されて配置され、走査光学系全体を水平方向に移動させて2次元走査を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明において、走査光学系は、光学ハウジングとカバーとで略密閉された光学ユニットであり、内部観察用手段と光学ユニットとの間は外光遮光手段で覆われていることを特徴とする。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、外光遮光手段は、外筒、内筒、及び柔軟性のある遮光部材で構成され、外筒と内筒は、非接触な合わせ部を有することを特徴とする。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、合わせ部はラビリンス構造であることを特徴とする。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項5又は6記載の発明において、遮光部材は、弾性部材、又は、弾性部材引きの不織布であることを特徴とする。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載の発明において、走査光学系は、少なくとも3軸方向に移動可能であり、そのうち少なくとも2軸方向は微調整可能な調整機構を設けることを特徴とする。
【0022】
請求項9記載の発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載の発明において、真空チャンバと走査光学系とを配置した構造体を共通の除振台に載置し、構造体は、真空チャンバに設けた試料交換室の動作、及び、試料交換性を容易とする片持ち構造であることを特徴とする。
【0023】
請求項10記載の発明は、請求項1から9のいずれか1項に記載の発明において、走査光学系を平板の上に配置し、真空チャンバの鉛直軸に対して略45°の方向に移動可能かつ位置調整可能な平行移動機構を有し、平行移動機構は、X軸ステージとスライドガイドとから成ることを特徴とする。
【0024】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明において、平行移動機構は、真空チャンバの鉛直軸と直交する方向で、試料交換室の動作方向と平行な方向に、あるいは、真空チャンバの鉛直軸と直交する方向で、試料交換室の動作方向と直交する方向に、走査光学系を移動させることを特徴とする。
【0025】
請求項12記載の発明は、請求項1から11のいずれか1項に記載の発明において、走査光学系を載置した構造体は、複数の基板と複数のステーとから成り、複数の基板と複数のステーとは締結部材により一体化された状態で除振台に取り付け取り外し可能とすることを特徴とする。
【0026】
請求項13記載の発明は、請求項1から12のいずれか1項に記載の真空チャンバ装置を有し、試料面を荷電粒子ビームで走査し、試料面上に電荷分布を生成させ、静電潜像を形成することを特徴とする。
【0027】
請求項14記載の発明は、請求項1から12のいずれか1項に記載の真空チャンバ装置を有し、試料面を荷電粒子ビームで走査することで得られる検出信号により、試料面の測定を行うことを特徴とする。
【0028】
請求項15記載の発明は、請求項1から14のいずれか1項に記載された装置で評価した感光体を有する画像形成装置であって、書き込み光源波長が680nm以下であり、かつ、感光体面でのビームスポット径が60μm以下であり、感光体面でのビームスポット径をAとし、形成される潜像径をBとした時に、1.0<B/A<2.0を満足することを特徴とする。
【0029】
請求項16記載の発明は、請求項15記載の発明において、感光体の帯電電位の絶対値をC[V]とし、1ビームスポットの潜像深さをD[V]とした時に、0.7<D/C<0.9を満足するように書き込み光量を設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、真空チャンバの外部からの外光を遮断しつつ、走査光学系の光ビームを真空チャンバ内部に導いて試料上を走査することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
まず、本発明の静電潜像測定装置(静電潜像形成装置)の実施形態について説明する。
図5は、本発明の一実施形態である静電潜像測定装置の構成を示す図である(ここでは、真空チャンバ内部に静止ビームで書き込む光学系を備える場合で説明する)。本静電潜像測定装置は、荷電粒子ビームを照射する荷電粒子照射部10と、露光を行う露光部20と、試料を設置する試料設置部16と、2次電子を検出する2次電子検出器18と、を有する。これらはすべて、同一のチャンバ内に配置され、チャンバ内は真空になっている。この真空チャンバについては後述する(図1、2参照)。なお、本明細書でいう「荷電粒子」とは、電子ビームあるいはイオンビームなど、電界や磁界の影響を受ける粒子を指す。
【0033】
以下、荷電粒子照射部10は、電子ビーム照射部10として説明する。
電子ビーム照射部10は、図5に示すように、電子ビームを発生させるための電子銃11と、電子銃11から発射された電子ビームを集束させるためのコンデンサレンズ12と、電子ビームをON/OFFさせるためのビームブランカ13と、ビームブランカ13を通過した電子ビームを走査させるための走査レンズ14と、走査レンズ14を通過した電子ビームを再び集光させるための対物レンズ15とを有してなる。上記走査レンズ14はいわゆる偏向コイルである。他のそれぞれのレンズ等には、図示しない駆動用電源が接続されている。なお、イオンビームの場合には、電子銃の代わりに液体金属イオン銃などを用いる。
【0034】
図5において、2次電子検出器18には、シンチレータや光電子増倍管などを用いる。
【0035】
図5において、露光部20は、後述のように構成される感光体に関して感度を持つ波長の光源21、コリメートレンズ22、アパーチャ23、結像レンズ25などを有してなり、試料設置部16に載置された試料30上に、所望のビーム径、ビームプロファイルを生成することが可能となっている。上記光源21としては、LD(レ―ザ・ダイオード)などを用いることができる。また、LD制御手段(図10参照)などにより光源21を制御し、適切な露光時間、露光エネルギーを照射できるようになっている。試料30上に静電潜像からなるラインのパターンを形成するために、露光部20の光学系にガルバノミラーやポリゴンミラーを用いたスキャニング機構を付けても良い。
【0036】
試料30の実態をなす感光体の主な構成は、図8に示すように、導電性支持体(導電層)の上に電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)が形成されてなる。電荷輸送層CTL表面に電荷が帯電している状態で露光されると、電荷発生層CGLの電荷発生材料(CGM)によって、光が吸収され、正負両極性のチャージキャリアが発生する。このキャリアは、電界によって、一方は、電荷輸送層CTLに、他方は導電性支持体(導電層)に注入される。電荷輸送層CTLに注入されたキャリアは、電荷輸送層CTL中を、電界によって電荷輸送層CTLの表面にまで移動し、感光体表面の電荷と結合して消滅する。これにより、感光体表面に電荷分布を形成する。すなわち、静電潜像を形成する。
【0037】
次に、図10を参照して、静電潜像測定装置(静電潜像形成装置)の動作について説明する。
まず、感光体試料30に荷電粒子ビーム照射部10によって電子ビームを照射させる。このときの加速電圧と2次電子放出比δとの関係を図6に示す。図6に示すように、加速電圧E1を、2次電子放出比δが1となる加速電圧E0よりも高い加速電圧に設定することにより、入射電子量が、放出電子量より上回るため、電子が試料30に蓄積され、チャージアップを起こす。この結果、試料30はマイナスの一様帯電を生じることができる。加速電圧と照射時間を適切に設定することにより、所望の帯電電位を形成することができる。帯電電位が形成されたら、一旦、電子ビームをOFFにする。
【0038】
次に、露光部20の光学系を介して感光体試料30に露光を行う。光学系は、所望のビーム径及びビームプロファイルを形成するように調整されている。露光を行うことにより、感光体試料30に静電潜像を形成することができる。
【0039】
静電潜像を形成した後、観察モードに変更する。観察モードでは、感光体試料30を電子ビームで走査し、放出される2次電子を、シンチレータ、光電子増倍管などからなる2次電子検出器18で検出し、これを電気信号に変換して電位コントラスト像を観察する。
【0040】
電位コントラスト像から電位に変換するためには、予め電位と信号強度の相関関係を表す変換テーブルを用意しておき、その変換テーブルに基づいて、信号強度から電位を算出してもよい。
【0041】
また、電子ビームスキャン領域内に既知となる参照電位を配置し、2次電子信号強度を参照電位と比較することにより、電位分布を算出する方法を用いても良い。
【0042】
この参照電位を配置する方法としては、図9に示すように、絶縁体33上に複数の導電性基板34を配置し、それぞれの導電性基板34に基準となる電位を設定する方法がある。具体的には、基準電圧源の電圧を抵抗で分圧し、導電性基板34ごとに基準となる電位をそれぞれ印加するようになっている。一般的に電位が高い部分よりも低い部分の方が、2次電子の放出量が多くなるので明るくなる。図9では、相対的に電位の低い部分を白、電位の高い部分を黒で表示している。図9において、符号30は試料を、31は静電潜像を、32は電子ビームスキャン領域を、それぞれ示している。試料30の表面を電子ビームでスキャンしながら上記2次電子検出器18で2次電子を検出する。そのときの、検出信号強度の変化の様子を図9の下部に示す。2次電子検出器18上での信号強度は、設定条件により変化する場合には補正しても良い。また、事前にキャリブレーションしてもよい。
【0043】
静電潜像の測定終了後は、図10に示す光源17、例えばLEDなど用いて、試料30の面全体に光を照射することにより、試料30の残留電荷を除去することができる。
【0044】
図10は、図5に示す本実施形態の静電潜像測定装置における各制御部の例を示す図である。図10に示すように、本実施形態の静電潜像測定装置は、光源21を制御するLD制御部36、走査レンズ14を制御する荷電粒子制御部37、残留電荷除去用の光源17を制御するLED制御部38、試料設置部(試料台)16の移動を制御する試料台制御部39を有しており、これらLD制御部36、荷電粒子制御部37、LED制御部38、試料台制御部39は、ホストコンピュータ35によって制御される。また、2次電子検出器18の出力は、2次電子検出部41で検出され、この検出信号は信号処理部42で処理されて測定結果出力部43から2次電子測定結果が出力されるように構成されている。
【0045】
2次電子放出比δは、2次電子放出比δ=放出電子/入射電子と表されるが、より厳密にいうと、透過電子と反射電子を考慮する必要があるので、放出電子=透過電子+反射電子+2次電子とすると良い。
【0046】
正帯電にしたい場合には、図6に示すような、2次電子放出比が1以上となる加速電圧で照射させると良い。通常の電子顕微鏡(SEM)による試料観察では、チャージアップの影響を避けるためδ=1の条件下で観察することが一般的であり、それ以外の加速電圧を用いないことが知られているが、本実施形態では、意図的にチャージアップさせて帯電電位を形成するようになっていることを1つの特徴としている。
【0047】
なお、上記説明において、帯電電位形成後に、一旦電子ビームをOFFにすると述べたが、OFFにすることなく、δ=1となる加速電圧に変換して、チャージアップの起きない観察条件とし、その状態で露光させる方法でも良い。
また、帯電方法としては、接触帯電など別手段を用いても良い。
【実施例1】
【0048】
図1、2は、本発明の真空チャンバ装置の実施例を示した図である。本実施例の真空チャンバ装置は、上記静電潜像測定装置に備えられる。
【0049】
本実施例の真空チャンバ装置で用いられる真空チャンバは、円筒上の材料の内径加工を行いDカットすることで、開口部(電子銃や検出器等を挿入するためのもの)とフランジ取り付け部とを形成する。なお、図1、2に示す電子銃及び検出器は、図5、10に示す電子銃11及び2次電子検出器18をそれぞれ示す。
【0050】
真空チャンバ内部には、図2に示すように、試料を3方向に移動させるための真空試料ステージ部がフランジに取り付けられている。フランジの背面には、図1に示すように、箱型の構造体であり、真空試料ステージ部を駆動させるための試料ステージ駆動部(本実施形態ではステッピングモータやマイクロヘッド等)をOリングなどでリークを防止して取り付ける構造となっている。真空チャンバ内部への電源供給、信号取り出しのためのハーネスは、図1に示すように、フィードスルーを用いることにより、真空を保ったまま中継できるようになっている。
【0051】
図2に示すように、真空試料ステージ部、試料ステージ駆動部、フィードスルー等は、フランジと一体的にユニット化される。以下、これを真空試料台ユニットという。
【0052】
この真空試料台ユニットは、図1に示すガイドレール上に配置された載置台(真空試料台ユニットを載置するためのもの)の上に載置してスライドさせることで、真空チャンバに対する着脱を可能とする。
【0053】
真空チャンバのフランジ取り付け面と真空試料台ユニットのフランジ面との間にOリングを挟み込んでねじ締結することで、高い真空度を維持した状態で真空試料ステージ部を駆動することができる。
【0054】
図3は、上記真空チャンバ外部に走査光学系(光学ユニット)を配置した状態を上方から示す平面図である。図3に示すように、真空試料台ユニットを着脱する方向と直交する方向の右側に走査光学系を配置する。これは、真空チャンバ内部観察用のガラス窓(内部観察用手段)の位置によって決まるものであり、構造上干渉する位置でなければ任意に設定できる。
【0055】
図4は、本実施例の真空チャンバ装置の断面図である。図4に示すように、真空チャンバの鉛直軸に対して45°の右肩の位置に、真空チャンバ内部観察用のガラス窓を配置し、それを囲んで円筒状の内部遮光筒(外光遮光手段)が真空チャンバと一体化され取り付けられる。外部遮光筒(外光遮光手段)は、走査光学系(光学ユニット)と一体化され、その先端部は凹型のへこみをもち、上記内部遮光筒の先端と軸方向、半径方向とも所定の隙間を有して噛み合っている。この構造を一般的にラビリンス構造と称する。この噛み合い部の外周を、弾性部材のゴムあるいはゴム引きの不織布など、柔軟性のある遮光部材(外光遮光手段)で覆うことにより、真空チャンバ内部へ入射する外光(有害光)を防止することができる。
【0056】
図4において、走査光学系(光学ユニット)は、図示していないが、光源部、走査レンズ、同期検知手段、光偏向器(図中のポリゴンスキャナ)等を有している。すなわち、走査光学系(光学ユニット)は、従来の光走査装置と同様の構成であり、画像信号に応じて光ビームを変調し走査することができる。
【0057】
図4において、走査レンズの後に折り返しミラー(走査ビーム折り返し手段)を配置し、真空チャンバ鉛直軸と略45°となるように光学ハウジングに保持する。走査光学系全体はカバーで覆い、上記外部遮光筒と一体化することによって遮光する。
【0058】
図4において、走査光学系(光学ユニット)は、構造体の上に設置した平行移動台(平行移動が可能な平行移動装置)の上に固定され、図示しないステッピングモータ等の駆動制御手段により、図の水平方向に移動し、また、移動と同時に光ビーム(走査ビーム)で走査することにより、2次元走査が可能となる。ステッピングモータの加減速時間を見込んでも、遮光部での隙間が(必要移動量+加減速移動量)以上であれば、等速度での書き込みが可能となる。本真空チャンバ装置における必要移動量は数ミリレベルであり、等速度での書き込みは十分達成可能である。
【0059】
また、像面までの距離も一定となるのでビームスポット径も一定な高精度な書き込みも可能となる。
【0060】
図4において、走査光学系(光学ユニット)は、真空チャンバに対して非接触で配置するので、ポリゴンスキャナ等の光偏向器を駆動する際に発生する振動は、直接真空チャンバに伝播されることは無い。さらに、図4では図示していないが、構造体と除振台との間にダンパを挿入すれば更に効果の高い防振効果を得ることができる。
【0061】
また、図4において、真空チャンバ内に設置された真空試料ステージ部を走査ビームと直交する方向に駆動しながら走査することで、平行移動台が停止している状態でも2次元走査が可能となる。
【0062】
また、本真空チャンバ装置を使って実験測定を行う場合、必要な書込密度から、走査周波数と線速を決定し、ビームスポット径、露光エネルギー等をパラメータとすることで、各種の実験、測定を行うことができる。
【実施例2】
【0063】
図12、13は、本発明の真空チャンバ装置の実施例を示した図である。本実施例の真空チャンバ装置は、上記静電潜像測定装置に備えられる。
【0064】
図12は、本実施例の真空チャンバ装置の概略構成を説明するための断面図である。
真空チャンバ内部に試料台を設け、その上に感光体等の試料をセットする。試料台は真空チャンバ外部の駆動要素(ステッピングモータ、マイクロヘッド)を操作する事で移動可能となっている。真空チャンバの右肩部には、内部観察用のビューポートとして、シリンダ状の金属部材の中心に例えばコバールガラスを封止し、更に金属部にガスケットを挟んで締結することで、真空状態を維持しつつ内部観察用の窓を設けている。
【0065】
走査光学系は、構造体の上に載置し、真空チャンバと共通の除振台の上に配置する。図14に示すように、真空チャンバ(電子銃)の鉛直軸に対して45°の右肩の位置に配置する。この走査光学系は、後述する移動機構によって少なくとも3軸方向に移動可能となっていて、走査ビームを上記ビューポートから真空チャンバ内部に向けて走査することにより、所定のビームスポット径で感光体上を走査することができる。
【0066】
図13は、本実施例の真空チャンバ装置を正面右斜め上方から見た外観図である。
図13に示すように、除振台の上にベースを配置して、そのベース上に3個のステーを載せ、ねじで締結する。ステーの締結部は長穴になっていて、図中の矢印方向に示す試料交換室の動作と直交する方向に移動可能となっている。3個のステー上部には[ベース:固定1]を配置し、ねじで締結する。
【0067】
[ベース:固定1]の手前側にX軸ステージ1を固定し、奥側にはガイドレールを固定し、その上に2個の移動台を配置する。[ベース:移動1]は、上記X軸ステージ1の移動側上面と上記2個の移動台にブリッジして、ねじで固定する。このX軸ステージは、試料交換室の移動方向と平行になるように組みつけられていて、マイクロヘッドを回転させることにより、目盛りの分解能に応じた位置調整が可能となる。本実施例では、真空チャンバ側に移動させる時はマイクロヘッドの押し込み方向で、反対側に戻す場合はX軸ステージの戻しばねの引張り力により移動する。戻し方向の引っ張り力が自重やレールの摩擦力によって不足する場合は、[ベース:固定1]と[ベース:移動1]の間に引っ張りばねをばね掛等で配置することで戻し力をアップすることができる。
【0068】
[ベース:移動1]の上には2本の[ステー:45°]を立てて、その上に[ベース:固定2]をねじ締結する。
【0069】
[ベース:固定2]の手前側にはX軸ステージ2を固定し、奥側にはガイドレールを固定し、この場合は1個の移動台を設ける。[ベース:移動2]は、上記X軸ステージ2の可動面と移動台をブリッジして固定し、マイクロヘッドを回転させることで、試料交換室の移動方向に平行かつ45°方向に移動可能となる。走査光学系は、上記[ベース:移動2]の上に4本の[ステー:軸]を立てて、その上にねじで締結する。本発明では各ステーと各ベースの積層構造となし、その間に各X軸ステージを挟持することで、所定の方向に高精度に平行移動が可能となる。
【0070】
ここで試料交換方法について説明する。
試料を真空チャンバ内の試料載置台にセットする場合は、端面にガラスを嵌め込んだ試料交換室を図12の右方向にスライドさせ、図示していない先端にねじを切った連結棒に試料を載せた試料台をねじ込み、試料交換室を左側にスライドさせて真空チャンバと密着させた後、試料交換室内を排気し、略真空にした後シャッターを開いて連結棒を真空チャンバ側にスライドさせて試料載置台に試料台もろとも試料をセットし(ばねの押圧で固定)、連結棒のねじ部を反時計方向に回転させてねじ部を外して連結棒を引き抜く。この操作を試料交換室のガラス窓を通して目視で確認しながら行う。その後シャッターを閉じれば試料のセットは終了である。試料の取り外しはこの逆と考えればよい。
【0071】
この作業で困難となるのは真空チャンバ内の試料載置台に試料をセットする場合であり、連結棒は回転自在であるため所定位置で嵌合部を合わせながら、目視でセットする。この時、構造体が真空チャンバ画像形成装置の手前側にあると、作業者の頭や腕が構造体で遮られて、上記作業が非常に困難となるばかりでなく、試料交換も容易にできないという状態になる。
【0072】
本実施例では、図13及び図16に示すように、ステー等の構造体は装置の奥側に配置し、走査光学系は試料交換室の上側に配置し、複数のベースを積層させた片持ち構造とすることによって、装置手前側の障害物を排除して上記課題の解決を図っている。
【0073】
また、平行移動機構として手前側にX軸ステージを配置し、奥側にスライドガイドを配置して駆動源であるマイクロヘッドを手前側に配置することで、操作性の向上及び目盛りの視認性の向上を図っている。
【0074】
図15は、本実施例の真空チャンバ装置を真上から見た平面図であり、3個のステーの底部は長穴になっているため、主走査方向の走査位置を必要に応じてシフト調整が行えるようになっている。
【0075】
図17は、上カバーを外した状態の平板上に配置した走査光学系を示した図である。
単一あるいは複数のビームを射出する光源部からカップリングレンズとアパーチャを通して所定のビーム径にした後、シリンダーレンズを通してポリゴン面上に所定の線像を形成し、ポリゴンスキャナによって偏向走査し、fθレンズを通って所定のスポット径に絞り込まれて等速走査する。fθレンズを通過したビームの一部を同期用の折り返しミラーで分岐し(図では隠れている)、同期用の光学系で絞り込まれた後、同期検知板のセンサからパルス信号として出力する。
【0076】
平板の側面に設けたブラケットに遮光筒を設け、上記走査ビームはこの穴から出射する。遮光筒は、真空チャンバに設けられたビューポートのシリンダ上の金属部とラジアル方向に所定の隙間(嵌合部)を設けて勘合する(図15参照)。この嵌合部を設けることで、外光は2回以上反射しなければ真空チャンバ内に到達しないため、測定上問題ないレベルまで減衰する。必要であれば隙間を塞ぐように不織布などを遮光筒の先端に張り付けても良い。
【0077】
本実施例では、遮光筒とビューポートの間を所定の隙間を持たせて嵌合させることによって、3軸方向の移動も可能で外光も遮断することができる。
【0078】
図16は、走査光学系と構造体を除振台から取り外した状態を示した図である。ベースの上に全構造体が載るので、組付け及びメンテナンス作業も除振台から外して行える。真空ポンプ等に振動、衝撃を与えることがなく、真空ポンプなどの耐久性を損なうこともない。
【0079】
また、図17に示すように、走査光学系を一枚の平板上に配置して、その平板のみを取り外しできるようになっているので、光学系の特性を外部の測定機に載せて測定する場合も簡単にセットすることができ、測定の効率を上げることができる。
【0080】
また、本実施例の真空チャンバ装置を使って実験測定を行う場合、必要な書込密度から、走査周波数と線速を決定し、ビームスポット径、露光エネルギー、点灯時間デューティーなどをパラメータとすることで、各種の実験、測定を行うことができる。また、マルチビーム化も容易にできるので、ビームスポット径の重なり、あるいは、相反則不軌等の影響などを定量測定できる。
【0081】
以上、本発明の真空チャンバ装置の実施例1及び2をそれぞれ説明したが、実施例1の構成と実施例2の構成とを任意に組み合わせるようにしてもよい。
【0082】
図7は、本発明の画像形成装置の一実施形態を示す図である。本画像形成装置は光プリンタ等であり、感光媒体として円筒状に形成された光導電性の感光体8を有している。
【0083】
この感光体8は、本実施形態の静電潜像測定装置で行われる静電潜像測定方法(表面電位分布の測定方法)で評価された試料と同じ組成を持つ感光体である。なお、電子写真プロセスについては、従来一般的に行われている方法であるので、ここでの説明は省略する。
【0084】
本実施形態の静電潜像測定装置で行われる静電潜像測定方法(表面電位分布の測定方法)で感光体8を評価することにより、潜像形成の過程が定量的に詳細に解析できるので、露光量を最適化することができ、感光体に負担のかからない帯電及び露光条件が分かり、省エネルギー、高耐久が実現できる。
【0085】
さらに、出力画像の高画質化の為に、光学系の最適化及び光源波長を680nm以下に短波長化することにより、ビームスポット径を60μm以下に小径化する試みが行われているが、現在の感光体が短波長の光に対して感度が低いことや、小径化ビームでは感光体内での光の散乱及び電荷の拡散の影響を強く受け、潜像径が広がり、潜像の深さも浅くなり、最終出力画像では階調性、鮮鋭性の安定性が得られないという不具合が発生している。
【0086】
ここでのビームスポット径は、ビームスポット光量分布が最大光量のe-2以上である範囲の径で定義している。潜像径は潜像電荷密度分布が光の当たっていない部分の電荷密度を基準として最も電荷密度差が大きい部分の電荷密度差のe-2以上である範囲の径で定義している。
【0087】
電荷輸送層の組成及び膜厚が光の散乱及び電荷の拡散度合いに、電荷発生層の組成が感度に影響を与えることは知られているが、明確な相関関係が分かっていない。そこで、電荷輸送層の組成及び膜厚、電荷発生層の組成を変えて感光体を作り、本実施形態の静電潜像測定装置で行われる静電潜像測定方法(表面電位分布の測定方法)において、画像形成装置で使用する条件と同じ、例えば帯電電位800V、露光エネルギー4mJ/m2として、光源波長が680nm以下、ビームスポット径が60μm以下の条件で露光し潜像測定を行い、図11(a)及び(b)に示すように、感光体面でのビームスポット径をAとし、形成される潜像径をBとしたときに、
1.0<B/A<2.0
を満足する感光体を選定すれば、最終出力画像で階調性、鮮鋭性の安定性が実現できる。
【0088】
ここで、下限の1.0は、光の散乱及び電荷の拡散はどんな感光体でも必ず起こるのでこれ以下にはならないという原理的な限界であり、上限の2.0は、最終出力画像で階調性、鮮鋭性の安定性を確保する為に必要な限界である。
【0089】
さらに、図11(c)に示すように、感光体の帯電電位の絶対値をC[V]、1ビームスポットの潜像深さをD[V]としたときに、
0.7<D/C<0.9
を満足するように書込光量を設定すれば、1ビームスポットの再現性が向上し、かつ、感光体の耐久性を損なわないため、望ましい。
【0090】
ここで、下限の0.7は、1ビームスポットが確実に現像される為に必要な潜像深さであり、上限の0.9は、これ以上に潜像深さが深くなるほどの光を当てた場合には感光体の早期劣化が懸念される限界である。
【0091】
そこで、上記本実施形態の静電潜像測定装置で潜像径を実際に測定し、感光体を本静電潜像測定装置で評価することにより、露光量を最適化することができ、過剰露光による無駄なエネルギー消費が抑えられる。さらに、感光体に負担のかからない帯電及び露光条件がわかり、感光体の長寿命化が可能になる。
【0092】
本画像形成装置は、光走査装置に複数の光源を設けてマルチビームとしても良い。
また、複数の光走査装置と感光体を用いて複数の色の異なるトナー画像を作り、それを重ね合わせてカラー画像を作っても良い。
【0093】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の真空チャンバ装置によれば、真空チャンバの外部から外光を遮断しつつ走査光学系の光ビームを真空チャンバ内部に導き試料上を走査できるので、走査光学系を真空チャンバ内部に配置する方式に比較して大きさの制限が小さく、配置の自由度が大きいという効果がある。また、真空チャンバ内部に走査光学系の駆動部品や電装部品等を入れることによる、ガスの発生や真空度の低下等の測定環境条件劣化を防止することができる。
さらに、画像形成装置等に使用される光走査装置と共通化が図れるのでコスト的にも低く抑えることができる。
【0094】
また、本発明の真空チャンバ装置によれば、2次元走査に必要な平行移動装置を真空チャンバ外部に配置しているので、その駆動源の潤滑剤等で真空度の劣化や内部の汚染を引き起こすことはない。また、その等速性の精度に応じて選択的に真空試料ステージも利用した2次元走査行うことができる。
【0095】
また、本発明の真空チャンバ装置によれば、像面までの光路長を一定化できるのでビームスポット径の安定した高精度書き込みができる。
【0096】
また、本発明の真空チャンバ装置によれば、遮光装置による外光の遮断によって、外光による画像むらやコントラスト低下など画像劣化を防止し、さらに真空チャンバと走査光学系は非接触で駆動するので振動によるスポット位置ズレなどの画像劣化が発生しない。
【0097】
また、本発明の真空チャンバ装置によれば、走査光学系を3軸方向に移動可能としているので、真空チャンバ内の試料面上のビームスポット径を任意に変化させることができ、潜像形成もそれに対応して任意に変化させることができる。そのため静電潜像径と潜像深さの関係等パラメータをふった有意義な実験を行うことができる。
また、試料面に対する、主走査方向、副走査方向の走査位置も任意に設定できるので、試料面を広い範囲で走査し感光体の欠陥、ムラ等マクロ的な評価も可能となる。
【0098】
また、本発明の真空チャンバ装置によれば、走査光学系を載置する構造体は、試料交換室の上側に、真空チャンバ画像形成装置の除振台の奥から手前側に片持ち構造とすることによって、試料の交換及び走査光学系の位置調整を真空チャンバ画像形成装置の前面から容易かつ確実に行うことができる。
【0099】
また、本発明の真空チャンバ装置によれば、走査光学系を平板上に配置し、走査ビームは平板と平行に出射し、真空チャンバ装置の鉛直軸に対して略45°の方向から走査する構造であるため、fθレンズ以降に折り返しミラーを配置する必要がないので光学特性の劣化、光利用効率の低下を生じることがない。また走査光学系を45°方向に移動かつ高精度な位置決めができるのでスポット径を任意に変化させることができる。
【0100】
また、本発明の真空チャンバ装置によれば、真空チャンバ装置の鉛直軸と直交方向で、試料交換室の動作方向と平行あるいは試料交換室の動作方向と直交方向に走査光学系を移動可能としたことで試料交換の操作性を損なうことなしに、走査ビームの試料に対する位置調整を行うことができる。
【0101】
また、本発明の真空チャンバ装置によれば、走査光学系と構造体を一体化した状態で除振台から容易に取り外しや組付けが可能となるため、メンテナンス等の作業を除振台から取り外した状態で行える。真空ポンプ等に振動衝撃などの外乱を与えることがないので真空ポンプ等の耐久性を損なうことがない。
【0102】
本発明の静電潜像形成装置によれば、荷電粒子ビームを走査する真空装置内で、試料上に電荷分布を形成させることにより、静電潜像を形成することが可能となる。
【0103】
本発明の静電潜像測定装置によれば、荷電粒子ビームを走査する真空装置内で、試料上に電荷分布を形成させる手段を有することにより、従来は極めて困難であった、試料の表面電荷分布を測定することが可能となる。
【0104】
本発明の画像形成装置によれば、書込光源波長が680nm以下であり、かつ感光体面でのビームスポット径が60μm以下であり、感光体面でのビームスポット径をAとし、形成される潜像径をBとしたときに、1.0<B/A<2.0を満足する潜像担持体を使用するので、静電潜像が拡散し、潜像の深さが浅くなることを抑制でき、露光過剰による感光体の早期劣化も抑制できる。そのため感光体寿命をのばすことができて環境負荷を低減できる。最終出力画像として高密度でかつ、階調性、鮮鋭性の安定性が実現できる。
【0105】
また、本発明の画像形成装置によれば、感光体の帯電電位の絶対値をC[V]、1ビームスポットの潜像深さをD[V]としたときに、0.7<D/C<0.9を満足するように書込光量を設定したので、1ビームスポットの再現性が向上し、かつ感光体の耐久性を損なわないので、最終出力画像として高密度でかつ、階調性、鮮鋭性の安定性が実現できる。
【0106】
以上、本発明の実施形態及び実施例について説明したが、上記実施形態及び実施例の記載に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の一実施例である真空チャンバ装置の外観を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施例である真空チャンバ装置の真空チャンバ内の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施例である真空チャンバ装置外部に走査光学系を配置した状態を示す上面図である。
【図4】本発明の一実施例である真空チャンバ装置の構成を示す側断面図である。
【図5】本発明の一実施形態である静電潜像測定装置の構成を示す図である。
【図6】加速電圧を説明するグラフである。
【図7】本発明の一実施形態である画像形成装置の構成を示す図である。
【図8】試料の実態をなす感光体の主な構成を示す断面図である。
【図9】参照電位を配置する方法を説明する図である。
【図10】本発明の一実施形態である静電潜像測定装置における各制御部の構成を示す図である
【図11】(a)は、感光体面でのビームスポット径Aを示すグラフであり、(b)は、感光体面に形成される潜像径Bを示すグラフであり、(c)は、感光体の帯電電位の絶対値C及び1ビームスポットの潜像深さDを示すグラフである。
【図12】本発明の一実施例である真空チャンバ装置の概略構成を示す側断面図である。
【図13】本発明の一実施例である真空チャンバ装置の外観を示す斜視図である。
【図14】本発明の一実施例である真空チャンバ装置の外観を示す側面図である。
【図15】本発明の一実施例である真空チャンバ装置の外観を示す上面図である。
【図16】走査光学系と構造体を除振台から取り外した状態を示す斜視図である。
【図17】上カバーを外した状態の平板上に配置した走査光学系を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0108】
10 荷電粒子照射部(電子ビーム照射部)
11 電子銃
12 コンデンサレンズ
13 ビームブランカ
14 操作レンズ
15 対物レンズ
16 試料設置部(試料台)
17 残留電荷除去用の光源
18 2次電子検出器
20 露光部
21 光源
22 コリメートレンズ
23 アパーチャ
25 結像レンズ
30 試料
31 静電潜像
32 電子ビームスキャン領域
33 絶縁体
34 導電性基板
35 ホストコンピュータ
36 LD制御部
37 荷電粒子制御部
38 LED制御部
39 試料台制御部
41 2次電子検出部
42 信号処理部
43 測定結果出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバの内部に設けられ、試料を載置し、任意の方向に移動可能とする真空試料ステージ部と、
前記真空チャンバの外部に配置され、前記試料を走査するための走査ビームを出射、偏向する走査光学系と、
前記真空チャンバと前記走査光学系とを連結するとともに、前記真空チャンバ内部へ入射する外光を遮光する外光遮光手段と、
前記真空チャンバと前記外光遮光手段との連結部分に設けられ、前記走査ビームが透過可能な内部観察用手段と、
前記走査光学系から出射された走査ビームを、前記外光遮光手段及び前記内部観察用手段を介して前記真空チャンバの内部に導く走査ビーム折り返し手段と、
を有することを特徴とする真空チャンバ装置。
【請求項2】
前記走査光学系は、平行移動が可能な平行移動装置上に載置され、
前記走査光学系から走査ビームを出射して前記試料を走査しつつ、前記平行移動装置及び前記真空試料ステージ部を移動させることにより、2次元走査を可能とすることを特徴とする請求項1記載の真空チャンバ装置。
【請求項3】
前記内部観察用手段は、前記真空チャンバ鉛直軸に対して略45度となる位置に配置され、
前記走査ビーム折り返し手段は、前記走査ビームの出射角が前記真空チャンバ鉛直軸に対し略45度になるように前記走査光学系と一体化されて配置され、
前記走査光学系全体を水平方向に移動させて2次元走査を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の真空チャンバ装置。
【請求項4】
前記走査光学系は、光学ハウジングとカバーとで略密閉された光学ユニットであり、
前記内部観察用手段と前記光学ユニットとの間は前記外光遮光手段で覆われていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の真空チャンバ装置。
【請求項5】
前記外光遮光手段は、外筒、内筒、及び柔軟性のある遮光部材で構成され、
前記外筒と前記内筒は、非接触な合わせ部を有することを特徴とする請求項4記載の真空チャンバ装置。
【請求項6】
前記合わせ部はラビリンス構造であることを特徴とする請求項5記載の真空チャンバ装置。
【請求項7】
前記遮光部材は、弾性部材、又は、弾性部材引きの不織布であることを特徴とする請求項5又は6記載の真空チャンバ装置。
【請求項8】
前記走査光学系は、少なくとも3軸方向に移動可能であり、そのうち少なくとも2軸方向は微調整可能な調整機構を設けることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の真空チャンバ装置。
【請求項9】
前記真空チャンバと前記走査光学系とを配置した構造体を共通の除振台に載置し、
前記構造体は、前記真空チャンバに設けた試料交換室の動作、及び、試料交換性を容易とする片持ち構造であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の真空チャンバ装置。
【請求項10】
前記走査光学系を平板の上に配置し、前記真空チャンバの鉛直軸に対して略45°の方向に移動可能かつ位置調整可能な平行移動機構を有し、
該平行移動機構は、X軸ステージとスライドガイドとから成ることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の真空チャンバ装置。
【請求項11】
前記平行移動機構は、前記真空チャンバの鉛直軸と直交する方向で、前記試料交換室の動作方向と平行な方向に、あるいは、前記真空チャンバの鉛直軸と直交する方向で、前記試料交換室の動作方向と直交する方向に、前記走査光学系を移動させることを特徴とする請求項10記載の真空チャンバ装置。
【請求項12】
前記走査光学系を載置した構造体は、複数の基板と複数のステーとから成り、該複数の基板と該複数のステーとは締結部材により一体化された状態で前記除振台に取り付け取り外し可能とすることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の真空チャンバ装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の真空チャンバ装置を有し、
試料面を荷電粒子ビームで走査し、該試料面上に電荷分布を生成させ、静電潜像を形成することを特徴とする静電潜像形成装置。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか1項に記載の真空チャンバ装置を有し、
試料面を荷電粒子ビームで走査することで得られる検出信号により、該試料面の測定を行うことを特徴とする静電潜像測定装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載された装置で評価した感光体を有する画像形成装置であって、
書き込み光源波長が680nm以下であり、かつ、前記感光体面でのビームスポット径が60μm以下であり、感光体面でのビームスポット径をAとし、形成される潜像径をBとした時に、1.0<B/A<2.0を満足することを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
前記感光体の帯電電位の絶対値をC[V]とし、1ビームスポットの潜像深さをD[V]とした時に、0.7<D/C<0.9を満足するように書き込み光量を設定したことを特徴とする請求項15記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−96971(P2008−96971A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209273(P2007−209273)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】