説明

真空処理装置及び真空処理方法

【課題】高温ウエハを急速冷却し、ウエハズレ起因の異物発生を防止及び抑制できる真空処理装置及び処理方法を提供する。
【解決手段】本発明は被処理体を処理する処理室と、前記処理室で処理された高温の前記被処理体を冷却する冷却室と、真空搬送ロボットを内部に設置し前記処理室と前記冷却室とを接続した真空搬送室とを備える真空処理装置において、前記冷却室は、前記冷却室内を減圧にする排気手段と、前記冷却室にガスを供給するガス供給手段と、前記冷却室内の圧力を制御する圧力制御手段と、前記高温の被処理体を支持する支持手段と、前記支持手段に支持された被処理体を近接保持する載置台とを具備し、前記載置台は、前記載置台表面の温度を前記高温の被処理体を冷却できる温度に温調する温調手段を有し、前記支持手段は昇降速度可変手段を有することを特徴とする真空処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置及び真空処理方法に係り、特に高温の被処理体を冷却する真空処理装置及び真空処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体材料等を加工するマルチチャンバー方式の真空処理装置において、プラズマ方式が異なる様々な放電を経たウエハや熱処理を経たウエハの冷却方法において、マルチチャンバー方式の本来の高スループットを考慮した冷却方法や、処理チャンバーの異なるウエハ間の脱ガスによる反応性異物や金属汚染やクロスコンタミネーション(相互汚染)が発生しない冷却構造や冷却方法が必要とされている。一方で、本来の目的であるプラズマ処理室や熱処理室に追設される冷却装置に対しては、冷却が主な目的であるために複雑な構造や機構を設けることは装置コストを上昇させる要因となるので、避けねばならない。
【0003】
従来のウエハ冷却方法としては、大別すると静電吸着を使用しないウエハ冷却方法と静電吸着を利用したウエハ冷却方法の2種類がある。まず、静電吸着を使用しないウエハ冷却方法としては、冷却ガスを高温ウエハに噴きつけた後に、冷却されたステージに載置して冷却する方法が特許文献1に開示されている。また、特許文献2では、プッシャーピン上にウエハを搭載したまま、不活性ガスを噴きつけてウエハを冷却する方法が開示されている。一方、静電吸着を利用したウエハ冷却方法としては、ウエハと接触する電極表面を鏡面化し、不活性ガスを使用せずに冷却する方法が特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−73564号公報
【特許文献2】特開2001−319885号公報
【特許文献3】特開平6−326181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウエハが高温の間は、プッシャーを上昇させた位置での冷却だけでもある程度の冷却効果は得られるが、ウエハの温度が低下するにつれて冷却効果も低下するため、ステージへの載置あるいは近接保持による冷却も必要になる。しかし、最近の半導体デバイスの製造過程では、ウエハ表面の異物及び汚染だけでなく、ウエハ裏面の異物及び汚染管理が厳しくなっているため、ウエハ裏面の異物及び汚染管理を考慮すると、ウエハのステージへの載置による冷却あるいは近接保持による冷却の方法としては、静電吸着を使用しないウエハ冷却方法が望ましい。しかし、静電吸着を使用しないウエハ冷却方法では、ウエハのステージへの載置の際に、プッシャ上にウエハを保持し、冷却用のガスを供給して高圧下の状態で、ウエハをステージ表面に接触させた場合、ウエハの回りは既に昇圧されているため、ウエハが下降することで、下側のガスが圧縮されるホバリング現象が発生し、横方向のウエハズレが発生する。このことにより、ステージの周囲へウエハが接触し、異物を発生させたり、ウエハ欠け(チッピング)等を発生させる。しかし、従来技術では異物発生の原因となるウエハズレの防止及び抑制が考慮されていなかった。このため、本発明では、高温ウエハを急速冷却し、ウエハズレ起因の異物発生を防止及び抑制できる真空処理装置及び処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は被処理体を処理する処理室と、前記処理室で処理された高温の前記被処理体を冷却する冷却室と、真空搬送ロボットを内部に設置し前記処理室と前記冷却室とを接続した真空搬送室とを備える真空処理装置において、前記冷却室は、前記冷却室内を減圧にする排気手段と、前記冷却室にガスを供給するガス供給手段と、前記冷却室内の圧力を制御する圧力制御手段と、前記高温の被処理体を支持する支持手段と、前記支持手段に支持された被処理体を近接保持する載置台とを具備し、前記載置台は、前記載置台表面の温度を前記高温の被処理体を冷却できる温度に温調する温調手段を有し、前記支持手段は昇降速度可変手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高温ウエハを急速冷却し、ウエハズレ起因の異物発生を防止及び抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の真空処理装置の概略図である。
【図2】ステージ構造を示した図である。
【図3】ウエハズレ量に対する冷却室内の圧力とプッシャー下降速度の関係を示した図である。
【図4】Oリングを用いた近接距離の調整を説明する図である。
【図5】冷却方法(1)の冷却フロー各ステップに対する冷却室1の圧力を示した図である。
【図6】冷却方法(1)の冷却フローの概略図である。
【図7】降下温度の測定方法を説明する図である。
【図8】冷却方法(2)の冷却フロー各ステップに対する冷却室1の圧力を示した図である。
【図9】冷却方法(2)の冷却フローの概略図である。
【図10】冷却方法(3)の冷却フロー各ステップに対する冷却室1の圧力を示した図である。
【図11】冷却方法(3)の冷却フローの概略図である。
【図12】実施例2の真空処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施例1]
本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1−(1)は本発明の真空処理装置の概略図であり、図1−(2)は、本発明の冷却室1の縦断面図であり、図2は、冷却室1内部に設置され、載置台であるステージ12の概略図である。
【0011】
冷却室1は、アルミニウム製の真空容器2を備え、真空容器2の内側には、石英製のスリーブ3が設置されている。スリーブ3は脱着可能な構造であるため、被処理体であるウエハ7の冷却処理の際のウエハ7からの脱ガスにより、汚れた場合は取り外して清掃できる。冷却ガスは、冷却室1上部のガス供給口4から導入され、アルミニウム製シャワープレート5で1次分散され、更に、石英製シャワープレート6により、2次分散されて冷却室1内へ供給される。この一次分散用のアルミニウム製シャワープレート5は、2次分散用の石英製シャワープレート6よりもガス供給穴(図示せず)の穴径が小さく且つ穴の数が多いため、冷却室1に供給されるガスは、ウエハ7全面に対し、垂直に供給することができる。このため、ウエハ7は、ウエハ面内均一に冷却される。
【0012】
ガスの供給は、ガス供給口4から少なくとも1種類以上の冷却ガスを単体または混合で冷却室1に供給することができる。本実施例では冷却ガスとして冷却効果の高いヘリウムガスを使用したが、アルゴン,窒素,キセノン等の不活性ガスを使用しても良い。ガスの排気は、冷却室1の下方より圧力調整用バルブ8を介し、排気量が大きいドライポンプ9により排気され、冷却室1の上部から供給されたガスが、冷却室1内で一様に滞留し、排気される構造となっている。
【0013】
ウエハ7は3本のプッシャー10で支持され、プッシャー10上のウエハ7が精度良く水平に保つように、プッシャー10の先端は、平坦となっている。また、3本のプッシャー10を支える支持体11は、昇降速度を任意に変更可能なモータ15に接続されている。更に、このプッシャー10は、ウエハ7下降時にステージ12表面から0.1〜2.0mmまでの高さ範囲で、0.5mmピッチでウエハをステージ12へ下降できる機構となっている。
【0014】
ウエハ7を冷却するステージ12には、冷媒を循環させる冷媒導入管13が内蔵され、サーキュレータ14により10〜50℃の温度範囲でステージ12の温度を制御することが可能である。また、ステージ12の表面には、高さ500μmの凸パターン17の加工が施され、凸パターン17の総面積は、ウエハ7の面積に対するステージ表面の接触割合が50%以下となるような面積である。上述の凸パターン17のステージ17の表面加工により、冷却室1内の圧力が2000Pa以上でも、ウエハ7をステージ17に載置した時にウエハズレが発生しない。図3は、ウエハズレ量に対する冷却室1内の圧力とプッシャー下降速度の関係を示したものである。尚、この実験は、プッシャー10上に載置されたウエハ7にアルゴンガスを導入し、ステージ12へウエハ7を載置した時のウエハズレをCCDカメラを用いて測定したものである。この実験において、高さ500μmの凸パターン17を表面に施したステージ12では、冷却室1内の圧力が2000Pa以上でも、ウエハズレが発生しないことを確認できた。
【0015】
また、ステージ12には、図2に示すように3ヶ所のプッシャー10の穴の周囲にOリング設置用の溝16を設け、ステージ12外周部に3ヶ所、Oリング設置用の溝18を設けている。また、ステージ12の周辺部に設置されたOリングの溝18には、ウエハ7をステージ12に載置した際に、Oリング19から発生したガスにより、ウエハ7とOリング19内側の空間内の圧力が上昇し、ウエハズレが発生するため、Oリング19内側の圧力を低下させる開放管20を設けた。この開放管20により、ステージ12の外周部に設置されたOリング19の内側が非密閉状態となるため、Oリング19によるガス圧力上昇起因のウエハズレは発生しない。尚、プッシャー10の周辺に設置されたOリング設置用の溝16については、プッシャー10の昇降のための空間があるため、Oリング19内側の空間でガス圧力が上昇することはない。また、図4に示すように、Oリング設置用の溝16に設置されたOリング19の突き出しh1を利用して、ウエハ7とステージ12との間で近接保持のための距離を調整できる。尚、近接保持とは、ステージ12表面から0.1〜2.0mmの高さでウエハ7をステージ12上に保持させることである。また、Oリングの突き出し量h1は、Oリング用の溝16の深さh2を深くすることにより調整できる。上述の近接保持に関してはOリング設置用の溝18でも同様である。
【0016】
本実施例では、凸パターン17とOリング設置用の溝16,18の両方をステージ12に備えている例であるが、凸パターン17またはOリング設置用の溝16,18のどちらか一方でも構わない。次に本発明による冷却方法について説明する。
【0017】
本発明による冷却方法は、大別すると近接保持による冷却方法とステージ12への載置による冷却方法の2つがあり、更に、上記の近接保持による冷却方法は2種類に分けられる。このため、本発明による冷却方法は細かく分けると全部で3種類となる。尚、上述の近接保持とは、ウエハ7をステージ表面上から0.1〜2.0mm上の高さに保持することである。0.1mm未満ではホバリング現象により圧力が上昇された気体が容易に逃げられる空間を得ることができない。また、2.0mmより高い場合は極端にウエハ7の冷却効果が落ちる。また、近接保持の手段は、上述したA凸パターン17、BOリングを利用する方法とCプッシャー10を利用する方法の3つがある。Cのプッシャー10を利用する方法は、プッシャー10の先端の高さを0.1〜2.0mmにしてウエハ7を保持する方法である。また、近接保持手段としては、これら3つの方法の単独に限らず、組合せても良い。
【0018】
最初に一つ目の近接保持による冷却方法である「冷却方法(1)」について説明する。図5は、冷却方法(1)の冷却フロー各ステップに対する冷却室1の圧力を示す。また、図6は、冷却方法(1)の冷却フローの概略図である。本冷却方法は、冷却室1と真空搬送室103の間をそれぞれ気密に閉塞、開閉可能なゲートバルブ(図示せず)を開けて処理室101で処理された高温のウエハ7が、真空搬送ロボット102により冷却室1に搬入され、プッシャー10上に載置される。ウエハ7がプッシャー10上に載置された後、真空搬送ロボットが冷却室1より搬出し、上述のゲートバルブ(図示せず)を閉める(A)。この時のウエハ7とステージ12表面の相対距離は、数mm〜30mmである。この程度の相対距離が確保されていれば、気体のウエハ7とステージ12との間の空間への侵入がスムーズとなるため、ガスを伝熱体とするウエハ7の冷却に対してウエハ7の面内を均一に冷却することができる。次にプッシャー10上にウエハ7を保持したまま、ヘリウムガスを10l/min供給し、冷却室1内の圧力を100Paから1000Paまで高圧化する。またこの時、冷却室1内の圧力が100Paから1000Paに到達するまでプッシャー10上でウエハ7の第一の冷却が行われる(B)。尚、冷却室1内の圧力は、設定した圧力に達するまでの時間を短縮するため、圧力調整用バルブ8を閉じてガスを冷却室1内に充填させる。しかし、設定した圧力に到達した後は、ヘリウムガスを10l/min供給し続け、圧力調整用バルブ8により設定圧力を維持するように制御する。また、冷却室1内の圧力を高めるのは、冷却効果が高いためである。また、ウエハ7をステージ12上に載置させた際に、ステージ12の熱伝達を行う媒体であるヘリウムガスを高速でウエハ裏面に回り込ませる目的もある。また、本実施例では1000Paまで高圧化したが、400〜5000Paの範囲の圧力でも良い。400Pa以上の圧力であれば、処理室101での処理効率に影響を与えない程度の冷却時間を得るために必要な冷却効果を得ることができる。また、5000Paより高い圧力では冷却室1内の圧力を上昇させるのに時間がかかり過ぎて冷却処理効率が低下する。次に冷却室1の圧力が1000Paに到達した後、プッシャー10が下降し、15℃に温調された冷却ステージ12へウエハ7を近接保持させる(C)。ウエハ7が冷却ステージ12に近接保持された後、第二の冷却が開始され、所定の温度または、所定の時間に達するまで冷却される(D)。第二の冷却が完了した後、ヘリウムガスの冷却室1への供給を止めて冷却室1内の圧力を100Paまで減圧しながら、真空搬送ロボット102への受け渡し位置までプッシャー10を上昇させ、冷却室1内の圧力が100Paに到達したことを確認した後、上述のゲートバルブ(図示せず)を開けて冷却されたウエハ7を真空搬送ロボット102により冷却室1から搬出し、上述のゲートバルブを閉める(E)。尚、本方法のステージ12の設定温度は、15℃設定としたが、5℃〜50℃でも良い。5℃未満の場合は、ウエハ7が結露する可能性があるため、使用できない。
【0019】
一方、50℃より高くすると所望の冷却効果を得ることが困難となる。また、図5において、ウエハ7が真空搬送室103から冷却室1へ搬送される際の圧力は100Paとなっているが、これは冷却室1,真空搬送室103および処理室101には、異物低減のために常時アルゴンや窒素等の不活性ガスが冷却室1,真空搬送室103および処理室101に供給されており、ウエハ7の搬入出時の各処理室間をそれぞれ気密に閉塞、開閉可能なゲートバルブ(図示せず)が開いても真空搬送室103や冷却室1は圧力の変動が無いように、常時100Paに保持されている。
【0020】
次に冷却方法(1)による冷却効果を以下説明する。尚、冷却効果の指標として、降下温度を算出し、検証した。先ず、図7に本実施例における降下温度の測定方法を示す。熱処理室で250℃に加熱されたウエハ7を冷却室1に搬送し、本発明の冷却方法によって、ウエハ7が冷却されて表面温度が飽和するまでの温度変化を放射温度計を用いて測定した。この測定方法により、冷却ガスが冷却室1に供給開始されてから、ウエハ7の温度が100℃になるまでの時間を基に算出した値を降下温度とし、冷却効果の指標とした。
【0021】
本方法の降下温度は10℃/secの結果を得ることができた。また、冷却効果に対するヘリウムガス,窒素ガスおよびヘリウムガスと窒素ガスの混合ガスのガス種依存性を評価した結果、最も冷却効果が得られたガスは、ヘリウムガスであった。
【0022】
次に2つ目の近接保持による冷却方法である「冷却方法(2)」について説明する。図8に冷却方法(2)の冷却フロー各ステップに対する冷却室1の圧力を示し、図9は冷却方法(2)の冷却フローの概略図を示す。本冷却方法は、冷却室1と真空搬送室103の間をそれぞれ気密に閉塞、開閉可能なゲートバルブ(図示せず)を開けて処理室101で処理された高温のウエハ7が、真空搬送ロボット102により冷却室1に搬入され、プッシャー10上に載置される。ウエハ7がプッシャー10上に載置された後、真空搬送ロボットが冷却室1より搬出し、上述のゲートバルブ(図示せず)を閉める(A)。次に冷却室の圧力が100Paの状態で、プッシャー10が下降し、ウエハ7が15℃に温調されたステージ12へ近接保持され、プッシャー10が下降し始めてからヘリウムガスが冷却室1内に供給開始されるまで第一の冷却が行われる(B)。尚、本方法のステージ12の設定温度は、15℃設定としたが、5℃〜50℃でも良い。5℃未満の場合は、ウエハ7が結露する可能性があるため、使用できない。一方、50℃より高くすると所望の冷却効果を得ることが困難となる。続いて冷却室1内の圧力が1000Paに到達するようにヘリウムガスが供給されて第二の冷却が開始し、所定の温度または、所定の時間に達するまで冷却される(C)。尚、本実施例では1000Paまで高圧化したが、400〜5000Paの範囲の圧力でも良い。400Pa以上の圧力であれば、処理室101での処理効率に影響を与えない程度の冷却時間を得るために必要な冷却効果を得ることができる。また、5000Paより高い圧力では冷却室1内の圧力を上昇させるのに時間がかかり過ぎて冷却処理効率が低下する。次に、第二の冷却が完了した後、ヘリウムガスの冷却室1への供給を止めて冷却室1内の圧力を100Paまで減圧しながら、真空搬送ロボット102への受け渡し位置までプッシャー10を上昇させ、冷却室1内の圧力が100Paに到達したことを確認後に上述のゲートバルブ(図示せず)を開けて冷却されたウエハ7を真空搬送ロボット102により冷却室1から搬出し、上述のゲートバルブを閉める(D)。図13に本方法による冷却効果を示す。本方法ではヘリウムガスを用いた降下温度が12℃/secであった。
【0023】
次にウエハ7をステージ12へ載置(接触)させて冷却する方法である「冷却方法(3)」について説明する。本冷却方法ではウエハ7をステージ12に接触させる必要があるため、ステージ12表面には凸パターン17とOリング設置用の溝16,18は設けられていない。しかし、ステージ12の表面は、実質的なウエハ7の裏面とステージ12との距離を小さくすることにより冷却効果は高まるため、鏡面加工されている。また、ステージ12の表面は鏡面加工されているのが望ましいが、鏡面加工されていなくても良い。また、図10に冷却方法(3)の冷却フロー各ステップに対する冷却室1の圧力を示し、図11は、冷却方法(3)の冷却フローの概略図を示す。本冷却方法は、冷却室1と真空搬送室103の間をそれぞれ気密に閉塞、開閉可能なゲートバルブ(図示せず)を開けて処理室101で処理された高温のウエハ7が、真空搬送ロボット102により冷却室1に搬入され、プッシャー10上に載置される。ウエハ7がプッシャー10上に載置された後、真空搬送ロボットが冷却室1より搬出し、上述のゲートバルブ(図示せず)を閉める(A)。次に、プッシャー10上にウエハ7が保持された状態で、冷却室1内の圧力が100Paから1.0Pa以下まで真空排気が行われる(B)。
【0024】
次にステージ12表面上の近接保持位置(本方法ではステージ12表面から0.3mmの高さ)までは、プッシャー10を10mm/secの速度で下降させ、続いて近接保持位置からステージ12へ接触するまでは2.0mm/secの速度で下降し、15℃に温調されたステージ12上へウエハ7を載置し、プッシャー10が下降開始してからウエハ7がステージ12に載置されるまで第一の冷却が行われる(C)。尚、本方法のステージ12の設定温度は、15℃設定としたが、5℃〜50℃でも良い。5℃未満の場合は、ウエハ7が結露する可能性があるため、使用できない。一方、50℃より高くすると所望の冷却効果を得ることが困難となる。続いてヘリウムガスを供給し、冷却室1内の圧力を1000Paまで上昇させ、第二の冷却がヘリウムが供給開始されてから、所定の温度または、所定の時間に達するまで行われる(D)。尚、本実施例では1000Paまで高圧化したが、400〜5000Paの範囲の圧力でも良い。400Pa以上の圧力であれば、処理室101での処理効率に影響を与えない程度の冷却時間を得るために必要な冷却効果を得ることができる。また、5000Paより高い圧力では冷却室1内の圧力を上昇させるのに時間がかかり過ぎて冷却処理効率が低下する。次に第二の冷却が完了した後、ヘリウムガスの冷却室1への供給を止めて冷却室1内の圧力を100Paまで減圧しながら、真空搬送ロボット102への受け渡し位置までプッシャー10を上昇させ、冷却室1内の圧力が100Paに到達したことを確認後に上述のゲートバルブ(図示せず)を開けて冷却されたウエハ7を真空搬送ロボット102により冷却室1から搬出し、上述のゲートバルブを閉める(E)。本方法による冷却結果は、ヘリウムガス適用時の場合17℃/secであった。
【0025】
以上、上述した本発明の3つの冷却方法の冷却速度は、10℃/sec以上を達成している。また、10℃/secの冷却速度であれば、例えば300℃の高温ウエハを100℃に冷却するのに20secで冷却できることになる。この冷却時間であれば、熱処理やプラズマ処理等を行う処理室101での処理時間より短いため、本発明の冷却処理時間がボトルネックになることはない。よって、本発明の冷却により、熱処理やプラズマ処理等のスループットを低下させることはなく、ウエハズレ起因による異物の発生及び抑制できる。また、処理工程が異なる様々なウエハに対して、上述の近接保持による冷却方法である冷却方法(1)と冷却方法(2)は適宜選択可能であり、最適な冷却処理が可能となる。
【0026】
[実施例2]
一般的な半導体製造装置では、プラズマ処理や熱処理された高温のウエハ22は、搬送室24の搬送ロボット25を介して搬出されるため、処理済みのウエハ22から発生するアウトガスが搬送室24内で拡散し、処理前ウエハに異物が付着したり、汚染される。
【0027】
この問題を解決するために、図12に示すようにプラズマ処理室や熱処理室にゲートバルブを2個設けて、更に冷却室内にプラズマ処理室から冷却室へウエハを搬送する専用ロボットを設け、未処理ウエハと処理済みウエハの専用カセットを設けることで解決できる。尚、図12の真空処理装置の概略図で示される第一の冷却室31と第二の冷却室35は実施例1の冷却室1と同様の構造であり、また、同様の冷却方法で冷却できる。
【0028】
以下、本実施例について説明する。第一のゲートバルブ23が開き、搬送室24の搬送ロボット25が未処理のウエハ22を未処理ウエハ専用カセット21から搬出後、第二のゲートバルブ26が開き、未処理のウエハ22は第一のプラズマ処理室27に搬送されて処理される。次に第一のプラズマ処理室27での処理後のウエハ22は、第三のゲートバルブ28が開いた後、第一の冷却室31に設けられた冷却室搬送用ロボット29により、第一の冷却室31に搬入され、実施例1の3つの冷却方法により冷却される。第一の冷却室31で冷却されたウエハ22は、第四のゲートバルブ30が開き、搬送室24の搬送ロボット25により、第一の冷却室31から搬出される。次に第一の冷却室から搬出されたウエハ22は第五のゲートバルブ32が開いた後、処理済みウエハ専用カセット33に搬入される。また、この上述のウエハ22の熱処理から冷却までの一連の処理の流れは、搬送室24を介して、軸対象に搭載された第二のプラズマ処理室34と実施例1の3つの冷却方法で冷却可能な第二の冷却室35においても、同様に行われる。本実施例により、搬送室24では、高温のウエハ22が滞在することなく、常時、低温状態のウエハ22が搬送室24に搬送されるため、処理済みの高温のウエハ22から発生するアウトガスが搬送室24を介して、未処理のウエハ22へ暴露されないため、異物の付着や汚染を防止でき、搬送室24内壁への汚れを低減することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 冷却室
2 真空容器
3 スリーブ
4 ガス供給口
5 アルミニウム製シャワープレート
6 石英製シャワープレート
7,22 ウエハ
8 圧力調整用バルブ
9 ドライポンプ
10 プッシャー
11 支持体
12 ステージ
13 冷媒導入管
14 サーキュレータ
15 モータ
16,18 溝
17 凸パターン
19 Oリング
20 開放管
21 未処理ウエハ専用カセット
23 第一のゲートバルブ
24 搬送室
25 搬送ロボット
26 第二のゲートバルブ
27 第一のプラズマ処理室
28 第三のゲートバルブ
29 冷却室搬送用ロボット
30 第四のゲートバルブ
31 第一の冷却室
32 第五のゲートバルブ
33 処理済みウエハ専用カセット
34 第二のプラズマ処理室
35 第二の冷却室
101 処理室
102 真空搬送ロボット
103 真空搬送室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を処理する処理室と、前記処理室で処理された高温の前記被処理体を冷却する冷却室と、真空搬送ロボットを内部に設置し前記処理室と前記冷却室とを接続した真空搬送室とを備える真空処理装置において、
前記冷却室は、前記冷却室内を減圧にする排気手段と、前記冷却室にガスを供給するガス供給手段と、前記冷却室内の圧力を制御する圧力制御手段と、前記高温の被処理体を支持する支持手段と、前記支持手段に支持された被処理体を近接保持する載置台とを具備し、
前記載置台は、前記載置台表面の温度を前記高温の被処理体を冷却できる温度に温調する温調手段を有し、
前記支持手段は昇降速度可変手段を有することを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
被処理体を処理する処理室と、前記処理室で処理された高温の前記被処理体を冷却する冷却室と、真空搬送ロボットを内部に設置し前記処理室と前記冷却室とを接続した真空搬送室とを備える真空処理装置において、
前記冷却室は、前記冷却室内を減圧にする排気手段と、前記冷却室にガスを供給するガス供給手段と、前記冷却室内の圧力を制御する圧力制御手段と、前記高温の被処理体を支持する支持手段と、前記支持手段に支持された被処理体を載置する載置台とを具備し、
前記載置台は、前記載置台表面の温度を前記高温の被処理体を冷却できる温度に温調する温調手段を有し、
前記支持手段は昇降速度可変手段を有することを特徴とする真空処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の真空処理装置において、
前記載置台は、前記載置台表面に加工された凸パターンを有することを特徴とする真空処理装置。
【請求項4】
被処理体を処理する処理室と、前記処理室で処理された高温の前記被処理体を冷却する冷却室と、真空搬送ロボットを内部に設置し前記処理室と前記冷却室とを接続した真空搬送室とを備える真空処理装置を用いた真空処理方法において、
前記真空搬送ロボットにより前記処理室で処理された高温の前記被処理体を前記冷却室に搬入し、
前記冷却室に搬入された被処理体を支持手段により支持し、
ガスを前記冷却室に供給し、
前記支持手段により支持された被処理体を所望の温度に温調された前記載置台に近接保持することを特徴とする真空処理方法。
【請求項5】
請求項4記載の真空処理方法において、
前記載置台への近接保持は凸パターンまたは、前記支持手段を用いて前記載置台に近接保持することを特徴とする真空処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−89591(P2012−89591A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233192(P2010−233192)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】