説明

真空成膜装置、真空成膜方法および有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法

【課題】真空チャンバ内のパーティクルに起因する不具合の発生を確実に防止することのできる真空成膜装置、真空成膜方法および、この真空成膜を用いた有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】真空チャンバ11内で素子基板2に成膜を行うマスク蒸着装置10において、パーティクルモニタ17によって真空チャンバ11内のパーティクルを監視し、パーティクル量が所定値未満のときには真空チャンバ11内で成膜処理を行う。これに対して、パーティクル量が所定値以上のときには、ガス導入装置14による真空チャンバ11内への窒素ガスの導入と、低真空用真空引き装置15による真空チャンバ11内の真空引きとを行う清浄化処理を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバ内で基板に成膜を行う真空成膜装置、真空成膜方法および、この真空成膜を用いた有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス装置、液晶装置、半導体装置などを製造する際、各種薄膜を、真空蒸着、スパッタ蒸着、CVD、イオンプレーティングなどといった真空雰囲気中で形成することが多く、かかる真空成膜は、真空チャンバ内で行われる。真空チャンバ内は、真空状態にあるため、パーティクルが存在しないはずであるが、真空チャンバ内を真空引きする際にパーティクルが発生することがあり、かかるパーティクルが基板に付着すると歩留まりや信頼性の低下を発生させる。
【0003】
そこで、真空チャンバ内をパーティクルモニタで監視しながら、真空引きの条件を最適化することにより、真空引きの際にパーティクルが発生するのを防止することが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−166732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、真空チャンバ内でのパーティクルの発生は、真空引きの他、ロードロック室の開閉や基板の搬出入等が原因で発生することもあり、パーティクルの発生を皆無にすることは不可能である。そこで、定期的にモニタ用基板に成膜を行い、その表面をサーフェススキャナーで検査し、その結果をフィードバックする方法が採用されていることが多いが、この方法では、モニタ用基板による検査の間に成膜された基板にパーティクルが付着している可能性を排除できない。
【0005】
特に、有機エレクトロルミネッセンス装置を製造する際、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層を含む機能層を形成する際に1μm程度のパーティクルが付着すると、有機エレクトロルミネッセンス素子が短絡することが多く、その結果、発光不良になってしまう。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、真空チャンバ内のパーティクルに起因する不具合の発生を確実に防止することのできる真空成膜装置、真空成膜方法および、この真空成膜を用いた有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、基板に対して成膜を行う真空チャンバを備えた真空成膜装置において、前記真空チャンバ内のパーティクルを監視するパーティクルモニタと、前記真空チャンバ内にガスを導入するガス導入装置と、前記真空チャンバ内を真空引きする真空引き装置と、前記パーティクルモニタによる監視結果において、パーティクル量が所定値以上のときには、前記ガス導入装置による前記真空チャンバ内へのガスの導入と、前記真空引き装置による前記真空チャンバ内の真空引きとを行わせる制御部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明では、真空チャンバ内で基板に成膜を行う真空成膜方法において、前記真空チャンバ内のパーティクルを監視し、パーティクルの監視結果において、パーティクル量が所定値未満のときには前記真空チャンバ内で成膜処理を行い、パーティクルの監視結果において、パーティクル量が所定値以上のときには、前記真空チャンバ内へのガスの導入と当該真空チャンバ内の真空引きとを行う清浄化処理を自動的に実施することを特徴とする。
【0009】
本発明では、真空チャンバ内のパーティクルを監視し、パーティクルの監視結果において、パーティクル量が所定値未満のときには真空チャンバ内で成膜処理を行い、パーティクルの監視結果において、パーティクル量が所定値以上のときには、真空チャンバ内へのガスの導入と当該真空チャンバ内の真空引きとを行う清浄化処理を実施するため、常に、真空チャンバ内にパーティクルがない状態あるいは極めて少ない状態下で成膜を行うことができる。それ故、真空チャンバ内のパーティクルに起因する不具合の発生を確実に防止することができ、歩留まりの向上および検査時間の大幅低減を図ることができる。また、本発明によれば、リアルタイムにパーティクルを監視できるので、真空チャンバで発生したイベントとパーティクルの発生との関連から、パーティクルの発生源の推定にも可能である。
【0010】
本発明において、前記清浄化工程を行う際、前記真空チャンバ内は、前記成膜処理時の高真空状態より真空度が低い低真空状態に保持することが好ましい。このように構成すると、前記清浄化工程を行った後、成膜を再開する際、真空チャンバを短時間のうちに高真空状態とすることができる。それ故、前記清浄化工程を行った場合でも生産性が大きく低下することを防止することができる。本発明における「高真空」「低真空」とは、あくまで相対的な真空度の工程を意味するもので、真空度の絶対値を規定するものではない。
【0011】
本発明において、前記清浄化工程では、例えば前記ガスの導入と前記真空チャンバ内の真空引きとを同時に行う。また、本発明において、前記清浄化工程では、前記ガスの導入と前記真空チャンバ内の真空引きと交互に行ってもよい。このように構成すると、真空チャンバ内に対流を強く起こすことができるので、パーティクルの排出を効率よく行うことができる。
【0012】
本発明を適用した真空成膜方法は、有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法におおいて、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層を含む機能層を形成するのに適用すると効果的である。有機エレクトロルミネッセンス装置を製造する際、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層を含む機能層を形成する際に1μm程度のパーティクルが付着しただけでも、有機エレクトロルミネッセンス素子に短絡が発生して有機エレクトロルミネッセンス素子が発光不良になるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図面を参照して、本発明を適用した真空成膜装置、真空成膜方法、および有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を説明する。
【0014】
(有機エレクトロルミネッセンス装置の構成)
図1は、有機エレクトロルミネッセンス装置の要部断面図である。図1に示す有機エレクトロルミネッセンス装置1は、カラー表示装置として用いられる電子デバイス装置であり、素子基板2の基体である基板2aには、感光性樹脂からなる隔壁7で囲まれた複数の領域に画素が構成されている。複数の画素は各々、有機エレクトロルミネッセンス素子3を備えており、有機エレクトロルミネッセンス素子3は、陽極として機能するITO(Indium Tin Oxide)膜からなる画素電極3aと、この画素電極3aからの正孔を注入/輸送する正孔注入輸送層3bと、有機エレクトロルミネッセンス材料からなる発光層3cと、電子を注入/輸送する電子注入輸送層3dと、アルミニウムやアルミニウム合金からなる陰極3eとを備えている。陰極3eの側には、有機エレクトロルミネッセンス素子3が水分や酸素により劣化するのを防止するための封止基板8が封止層9により接着されている。また、素子基板2上には、画素電極3aに電気的に接続された駆動用トランジスタ5aなどを含む回路部5が有機エレクトロルミネッセンス素子3の下層側に形成されている。
【0015】
ここで、有機エレクトロルミネッセンス素子3は各々、赤(R)、緑(G)、青(B)の光を出射するように構成される。それには、有機エレクトロルミネッセンス素子3において、発光層3cは、各色に対応する光を出射可能な発光材料により形成される。また、単独の発光材料からなる発光層3cによって、RGB各色の特性を得るのは難しいことが多いので、ホスト材料に蛍光色素をドーピングした発光層3cを形成し、蛍光色素からのルミネッセンスを発光色として取り出すこともある。このようなホスト材料とドーパント材料の組み合わせとしては、例えば、トリス(8−キノリラート)アルミニウムとクマリン誘導体との組み合わせ、アントラセン誘導体とスチリルアミン誘導体との組み合わせ、アントラセン誘導体とナフタセン誘導体との組み合わせ、トリス(8−キノリラート)アルミニウムとジシアノピラン誘導体との組み合わせ、ナフタセン誘導体とジインデノペリレンとの組み合わせなどがある。
【0016】
(有機エレクトロルミネッセンス装置1の製造方法)
素子基板2を形成するにあたっては、単品サイズの基板に以下の工程を施す方法の他、素子基板2を多数取りできる大型基板に以下の工程を施した後、単品サイズの素子基板2に切断する方法が採用されるが、以下の説明では、サイズの問わず、素子基板2と称して説明する。
【0017】
有機エレクトロルミネッセンス装置1を製造するには、素子基板2に対して蒸着法やスパッタ法による成膜工程、レジストマスクを用いてのパターニング工程などといった半導体プロセスを利用して各層が形成される。但し、正孔注入輸送層3b、発光層3c、電子注入輸送層3dなどは、水分や酸素により劣化しやすい有機機能層であるため、正孔注入輸送層3b、発光層3c、電子注入輸送層3dを形成する際、さらには、電子注入輸送層3dの上層に陰極3eを形成する際、レジストマスクを用いてのパターニング工程を行うと、レジストマスクをエッチング液や酸素プラズマなどで除去する際に正孔注入輸送層3b、発光層3c、電子注入輸送層3dが水分や酸素により劣化してしまう。そこで、本形態では、正孔注入輸送層3b、発光層3c、電子注入輸送層3dを形成する際、さらには陰極3eを形成する際には、以下に詳述するマスク蒸着法を利用して素子基板2に所定形状の薄膜を形成し、レジストマスクを用いてのパターニング工程を行わない。
【0018】
(マスク蒸着装置の構成例)
図2は、本発明を適用したマスク蒸着装置10(真空成膜装置)の構成を示す概略構成図である。図2に示すように、マスク蒸着装置10では、真空チャンバ11内の上方位置に、素子基板2(被処理基板)および蒸着用マスク31を保持する基板ホルダ18が配置されている。素子基板2および蒸着用マスク31は、素子基板2の下面側(被成膜面側)の所定位置に蒸着用マスク31を重ねた状態で基板ホルダ18により保持され、成膜時、この状態で、矢印Aで示すように回転する。蒸着用マスク31には、素子基板2に対する成膜パターンに対応するマスク開口部32が形成されている。真空チャンバ11内の下方位置には、素子基板2に向けて蒸着分子や蒸着原子を供給する蒸着源12が配置されており、蒸着源12は、蒸着材料を内部に保持する坩堝121、坩堝121内の蒸着材料を加熱するためのヒータ122、および坩堝121の上部開口を開閉するシャッタ123などを備えている。
【0019】
また、真空チャンバ11には、ガス導入管141、ガス導入用制御バルブ142、窒素(N2)ガスなどの不活性ガスを貯えたボンベ(図示せず)などのガス導入装置14が設けられており、ガス導入管141は真空チャンバ11内に連通している。また、真空チャンバ11内において、ガス導入管141の開口位置付近にはガス拡散板148が配置されている。
【0020】
また、真空チャンバ11には、2系統の真空引き装置が設けられている。2つの真空引き装置のうちの一方は、低真空用真空引き装置15であって、低真空用吸引管151、低真空用制御バルブ152、およびドライポンプからなる低真空用ポンプ153を備えている。低真空用吸引管151は真空チャンバ11内に連通している。他方の真空引き装置は、高真空用真空引き装置16であり、高真空用吸引管161、高真空用制御バルブ162、およびクライオポンプやターブ分子ポンプからなる高真空用ポンプ163を備えている。高真空用吸引管161は真空チャンバ11内に連通している。
【0021】
ここで、ガス導入用制御バルブ142、低真空用制御バルブ152、および高真空用制御バルブ162は各々、制御部19によって開閉が制御される。このため、真空チャンバ11では、制御部19による制御の下、窒素ガスの導入、低真空引きおよび高真空引きが自動的に行われる。
【0022】
さらに、本形態では、真空チャンバ11に対しては、真空チャンバ11内にセンサ部170を備えたパーティクルモニタ17が設けられており、パーティクルモニタ17での検出結果(監視結果)は、制御部19に入力される。また、制御部19は、パーティクルモニタ17に対して、真空チャンバ11内のパーティクル量を間欠的あるいは連続的に監視させるとともに、以下に詳述するように、パーティクルモニタ17による監視結果において、真空チャンバ11内のパーティクル量が所定値未満の場合には、素子基板2に対する成膜を行わせる一方、真空チャンバ11内のパーティクル量が所定値以上の場合には、ガス導入装置14による真空チャンバ11内へのガスの導入と、低真空用真空引き装置15による真空チャンバ内の真空引きとを行わせる清浄化処理を自動的に実施させる。
【0023】
なお、本形態では、マスク蒸着装置10にパーティクルモニタ17を配置したため、パーティクルモニタ17への成膜を防止することを目的に、パーティクルモニタ17に対して遮蔽板178を設けておく。パーティクルモニタ17としては、いわゆるダークフィールドセンサとブライトフィールドセンサのいずれを用いてもよい。ダークフィールドセンサの測定原理は光散乱方式で、1個の粒子がレーザー光線を通過すると、光散乱が1回起こり、90度の散乱光を受光素子で受光して電気信号(に変換する。そして。変換された信号を増幅後処理し、粒子計数を行う。これに対して、ブライトフィールドセンサでは、レーザー光源が1つで、レーザービームを2分割し、2個の受光素子で別々に受光する。粒子がレーザー光線を通過することによる光の減衰量を電気信号(電圧パルス)に変換する。従って、真空チャンバ11内でプラズマを発生させる場合でも、各受光素子から出力される電気信号にノイズキャンセルを行い、粒子の信号のみを読み取ることができる。
【0024】
(成膜動作)
図3(a)、(b)は各々、本形態のマスク蒸着装置10(真空成膜装置)における成膜処理および清浄化処理の内容を示すタイミングチャート図である。なお、図3(a)、(b)において縦軸は、真空チャンバ11内の真空度(圧力)を示しているが、目盛などは任意である。
【0025】
本形態のマスク蒸着装置10(真空成膜装置)において、制御部19は、パーティクルモニタ17に対して、新たな素子基板2が真空チャンバ11に搬入される度に、あるいは成膜後の素子基板2が真空チャンバ11から搬出されて次の素子基板2が真空チャンバ11に搬入される直前に、真空チャンバ11内のパーティクル量を監視させる。また、制御部19は、パーティクルモニタ17に対して、真空チャンバ11内のパーティクル量を連続的に監視させることもある。
【0026】
そして、制御部19は、パーティクルモニタ17による監視結果において、真空チャンバ11内のパーティクル量が所定値未満、例えば、1μm以上のパーティクルが3個未満のときには、素子基板2に対する成膜を行わせる。その間、真空チャンバ11内は、1×10-5Paの高真空状態に保持される。なお、真空チャンバ11内においてスパッタ蒸着やイオンプレーティングが行われる場合、真空チャンバ11内は、1×10-1Pa〜数Paの状態に保持される。その間、低真空用制御バルブ152は閉状態にある。
【0027】
これに対して、図3(a)に示すように、時刻T0において、制御部19がパーティクルモニタ17による監視結果において真空チャンバ11内のパーティクル量が所定値以上、例えば、1μm以上のパーティクルが3個以上である異常時であると判断したときには、以降の成膜動作を中断する。例えば、新たな素子基板2が真空チャンバ11に搬入されるのを停止させる。あるいは、真空チャンバ11に素子基板2が搬入された後、成膜前であれば、素子基板2に対する成膜を中止させる。
【0028】
次に、制御部19は、まず、高真空用制御バルブ162を閉状態とした後、ガス導入用制御バルブ142を開状態にして、窒素ガスを真空チャンバ11内に導入させる。また、ガス導入用制御バルブ142を開状態にすると同時に、低真空用制御バルブ152を開状態とする。その際、真空チャンバ11内の真空バルブが低くなりすぎると、成膜を再開する際に真空引きに長い時間がかかるので、窒素ガスの導入量は、真空チャンバ11内で窒素ガスの流れが発生するレベル、例えば真空チャンバ11内の真空度が数10Pa程度となるレベルとする。その結果、真空チャンバ11内では窒素ガスの対流が発生するとともに、パーティクルが窒素ガスとともに真空チャンバ11から排出される。
【0029】
そして、所定の時間が経過した時点(時刻T11)、あるいは、制御部19がパーティクルモニタ17による監視結果において真空チャンバ11内のパーティクル量が所定値未満になったと判断した時点(時刻T11)で、ガス導入用制御バルブ142を閉状態にする。次に、時刻T12において、低真空用制御バルブ152を閉状態にする一方、高真空用制御バルブ162を開状態にする。そして、真空チャンバ11内が高真空状態になった時点(時刻T1)で成膜を再開する。
【0030】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、真空チャンバ11内のパーティクルを監視し、パーティクルの監視結果において、パーティクル量が所定値未満のときには真空チャンバ11内で成膜処理を行い、パーティクル量が所定値以上のときには、真空チャンバ11内への窒素ガスの導入と、低真空用真空引き装置15による真空チャンバ11内の真空引きとを行う清浄化処理を自動的に実施する。このため、常に、真空チャンバ11内にパーティクルがない状態あるいは極めて少ない状態下で成膜を行うことができる。それ故、真空チャンバ11内のパーティクルに起因する不具合の発生を確実に防止することができる。また、リアルタイムにパーティクルを監視できるので、真空チャンバ11で発生したイベントとパーティクルの発生との関連から、パーティクルの発生源の推定にも可能である。
【0031】
特に有機エレクトロルミネッセンス装置1を製造する際、有機エレクトロルミネッセンス素子3の発光層3cを含む機能層を形成する際に1μm程度のパーティクルが付着しただけでも、有機エレクトロルミネッセンス素子3に短絡が発生して有機エレクトロルミネッセンス素子3が発光不良になるが、本形態によれば、かかる不具合の発生を確実に防止することができる。
【0032】
(その他の実施の形態)
上記実施の形態において、清浄化工程では、窒素ガスの導入と真空引きとを同時に行ったが、図3(b)に示すように、清浄化工程では、ガスの導入と真空チャンバ11内の真空引きと交互に行ってもよい。すなわち、時刻T0において、制御部19がパーティクルモニタ17による監視結果において真空チャンバ11内のパーティクル量が所定値以上、例えば、1μm以上のパーティクルが3個以上であると判断したときには、以降の成膜動作を中断する。そして、高真空用制御バルブ162を閉状態とした後、ガス導入用制御バルブ142を開状態にして、窒素ガスを真空チャンバ11内に導入する。次に、時刻T21において、ガス導入用制御バルブ142を閉状態にするとともに、低真空用制御バルブ152を開状態とする。次に、時刻T22において、ガス導入用制御バルブ142を開状態にするとともに、低真空用制御バルブ152を閉状態とする。次に、時刻T23において、ガス導入用制御バルブ142を閉状態にするとともに、低真空用制御バルブ152を開状態とする。次に、時刻T24において、ガス導入用制御バルブ142を開状態にするとともに、低真空用制御バルブ152を閉状態とする。次に、時刻T25において、ガス導入用制御バルブ142を閉状態にするとともに、低真空用制御バルブ152を開状態とする。その際も、真空チャンバ11内の真空バルブが低くなりすぎると、成膜を再開する際に真空引きに長い時間がかかるので、窒素ガスの導入量は、真空チャンバ11内で窒素ガスの流れが発生するレベル、例えば真空チャンバ11内の真空度が数10Pa程度となるレベルとする。次に、時刻T26において、低真空用制御バルブ152を閉状態にする一方、高真空用制御バルブ162を開状態にする。そして、真空チャンバ11内が高真空状態になった時点(時刻T1)で成膜を再開する。
【0033】
(他の実施の形態)
上記形態では、本発明をマスク蒸着装置に適用した例を中心に説明したが、マスクを用いない真空蒸着装置や、スパッタ蒸着装置、さらには、CVD装置やイオンプレーティング装置に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】有機エレクトロルミネッセンス装置の要部断面図である。
【図2】本発明を適用したマスク蒸着装置(真空成膜装置)の構成を示す概略構成図である。
【図3】図3(a)、(b)は各々、本発明を適用したマスク蒸着装置(真空成膜装置)における成膜処理および清浄化処理の内容を示すタイミングチャート図である。
【符号の説明】
【0035】
10・・マスク蒸着装置(真空成膜装置)、14・・ガス導入装置、15・・低真空用真空引き装置、16・・高真空用真空引き装置、17・・パーティクルモニタ、19・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して成膜を行う真空チャンバを備えた真空成膜装置において、
前記真空チャンバ内のパーティクルを監視するパーティクルモニタと、
前記真空チャンバ内にガスを導入するガス導入装置と、
前記真空チャンバ内を真空引きする真空引き装置と、
前記パーティクルモニタによる監視結果において、パーティクル量が所定値以上のときには、前記ガス導入装置による前記真空チャンバ内へのガスの導入と、前記真空引き装置による前記真空チャンバ内の真空引きとを行わせる制御部と、
を有することを特徴とする真空成膜装置。
【請求項2】
真空チャンバ内で基板に成膜を行う真空成膜方法において、
前記真空チャンバ内のパーティクルを監視し、
パーティクルの監視結果において、パーティクル量が所定値未満のときには前記真空チャンバ内で成膜処理を行い、
パーティクルの監視結果において、パーティクル量が所定値以上のときには、前記真空チャンバ内へのガスの導入と当該真空チャンバ内の真空引きとを行う清浄化処理を自動的に実施することを特徴とする真空成膜方法。
【請求項3】
前記清浄化工程を行う際、前記真空チャンバ内は、前記成膜処理時の高真空状態より真空度が低い低真空状態に保持することを特徴とする請求項2に記載の真空成膜方法。
【請求項4】
前記清浄化工程では、前記ガスの導入と前記真空チャンバ内の真空引きとを同時に行うことを特徴とする請求項2または3に記載の真空成膜方法。
【請求項5】
前記清浄化工程では、前記ガスの導入と前記真空チャンバ内の真空引きと交互に行うことを特徴とする請求項2または3に記載の真空成膜方法。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れか一項に規定する真空成膜方法によって、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層を含む機能層を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−240016(P2008−240016A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78422(P2007−78422)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】