眼球障害の処置のためのPAI−1の発現および活性インヒビター
本発明は、1つの実施形態において、患者における緑内障または高IOPを処置するための方法に関し、その方法は、PAI−1発現またはPAI−1活性を阻害する薬剤を含む有効量の組成物を患者に投与する工程を包含する。本発明の別の実施形態は、PAI−1関連の眼球障害を処置する必要のある被験体においてそれを処置する方法であり、その方法は、PAI−1の活性または発現を阻害する薬剤を含む有効量の組成物を患者に投与する工程を包含する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願との相互参照)
本出願は、2007年10月31日に出願された、米国特許出願第11/931,393号の同時継続出願の一部継続出願であり、米国特許法§120に基づき、その優先権を主張する。この米国特許出願の内容は参照により本明細書中に援用される。本出願はまた、2008年4月26日に出願された米国仮特許出願第61/048,176号に対する優先権を米国特許法§119に基づき主張し、この仮特許出願の内容は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、概して、眼球障害に対する処置、より詳細には、PAI−1の発現または活性のダウンレギュレーションを介してIOPを低下させる薬剤および/または緑内障を処置するかもしくは予防する薬剤の使用(それによって、組織プラスミノゲンアクチベーター(t−PA)および/またはウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(u−PA)の活性のPAI媒介性阻害が改善される)に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
原発開放隅角緑内障(POAG)は、処置されずに放置されると進行性の視野喪失を引き起こす、罹患頻度が高く被害の大きい眼疾患である。緑内障患者の大部分は、高い眼内圧(IOP)を示し、現在の多くの処置は、IOP上昇を低下させることまたは正常なIOPを維持することに向けられている。
【0004】
高レベルのプラスミノゲンアクチベーターインヒビター−1(PAI−1)は、癌、肥満症および糖尿病をはじめとした種々の疾患状態に関与するとみられる。高レベルのPAI−1は、緑内障患者の房水中で検出されている(Danら、Archives of Ophthalmology,Vol.123:220−224,2005)。PAI−1レベルは、他の内因性刺激の中でもサイトカインTGFβ(Binderら、News Physiol Science,Vol.17:56−61,2002)によって上昇する。PAI−1は、組織プラスミノゲンアクチベーター(t−PA)およびウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(u−PA)の両方の活性を阻害する。t−PAとu−PAの両方は、プラスミノゲンを線維素溶解カスケードにおける重要な中間体であるプラスミンに変換することを触媒する(Wuら、Current Drug Targets,Vol.2:27−42,2002)。プラスミンは、ある特定のプロマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)を、それらの活性な細胞外マトリックス(ECM)分解型に変換することを促進すると知られている(Heら、PNAS,Vol.86:2632−2636,1989)。PAI−1は、接着レセプターとして作用する細胞表面インテグリンと、ECMの構成要素であるビトロネクチンとの会合も調節する(Zhouら、Nature Structural Biology,Vol.10(7):541−544,2003)。したがって、PAI−1は、非眼球組織における接着の低下と細胞の剥離の増加の両方に関連している。ヒト眼球組織も、t−PAおよび/またはu−PAを様々な程度で発現する;しかしながら、線維柱帯(TM)が主にt−PAを発現すると報告されている(非特許文献1;非特許文献2)。また、t−PAは、ヒト房水(AH)中に存在する優勢な形態であるとみられる。
【0005】
IOPの低下および/またはPOAGの処置に有効であると証明された薬物治療としては、房水生成を減少させる薬剤と房水流出率を増加させる薬剤の両方が挙げられる。そのような治療は、通常、可能性のある2つの経路;局所的(眼への直接的な適用)または経口的のうちの1つによって投与される。しかしながら、薬学的な眼圧低下アプローチは、様々な望ましくない副作用を示す。例えば、ピロカルピンなどの縮瞳薬は、視界のぼやけ、頭痛および他の負の視覚的副作用を引き起こし得る。全身投与される炭酸脱水酵素インヒビターは、悪心、消化不良、疲労および代謝性アシドーシスも引き起こし得る。ある特定のプロスタグランジンは、充血、眼のかゆみ、ならびに睫毛および眼周囲皮膚の黒ずみを引き起こす。そのような負の副作用は、患者の服薬遵守の低下または治療の終了に導くことがあり、視力が悪化し続ける。さらに、既存のある特定の緑内障治療法で処置されても全く十分に反応しない個体が存在する。ゆえに、緑内障および高眼圧症などの眼球障害を処置するための他の治療薬が必要とされている。
【0006】
2006年12月15日に出願され、特許文献1として公開された米国特許出願番号第11/931,393号は、線維柱帯細胞の喪失を予防する手段、究極的には、眼内圧を低下させる手段として、ビトロネクチンに対するPAI−1の結合を制御する薬剤の潜在的な使用が開示している。本発明は、組織プラスミノゲンアクチベーター(t−PA)および/またはウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(u−PA)に対するPAI−1の効果の阻害に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許公開第2008/0107644号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Shumanら、IOVS,Vol.29:401−405,1988
【非特許文献2】Tripathiら、Exp Eye Research,Vol.51:545−552,1990
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の簡単な要旨)
本発明の実施形態は、PAI−1の発現または活性を阻害することにより、眼球疾患を処置することおよび/またはIOPを低下させることに関する。1つの実施形態は、患者における緑内障または高IOPを処置するための方法を提供し、その方法は、PAI−1発現を阻害する薬剤またはPAI−1が組織プラスミノゲンアクチベーター(t−PA)もしくはウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(u−PA)の活性を阻害することを妨げる薬剤を含む有効量の組成物を患者に投与する工程を包含する。
【0010】
本発明の別の実施形態は、PAI−1関連の眼球障害を処置する方法であり、その方法は、PAI−1発現および/またはt−PAもしくはu−PAの活性に対するPAI−1の効果を阻害する薬剤を含む有効量の組成物を投与する工程を包含する。
【0011】
ある特定のこれらの実施形態において、その薬剤は、チプラクスチニン(tiplaxtinin)(PAI−039)、ジアプラシニン(diaplasinin)(PAI−749)、ZK−4044、WAY−140312、HP−129、T−686、XR5967、XR334、XR330、XR5118、アレプラシニン(aleplasinin)(PAZ−417)、T−2639、S35225、SK216、SK116、2−[2−メトキシ−6−[[[3−(トリフルオロメチル)−4−[4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1−ピペラジニル]フェニル]アミノ]メチル]フェノキシ]−5−ニトロ安息香酸(本明細書中で「化合物39」とも呼ばれる;Yeら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,Vol.14(3):761−765,2004)およびそれらの組み合わせである。他の実施形態は、SB202190、U0126、SP600125、ビスインドリルマレイミドI、ロットレリン(rottlerin)、SB431542およびSIS3などの薬剤を使用し得る。なおも他の実施形態では、スタチン剤(例えば、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン)が薬剤として使用され得る。PAI−1抗体およびペプチド模倣物もまた、ある特定の実施形態において使用され得る。そのような薬剤の組み合わせもまた企図される。
【0012】
なおも別の実施形態は、緑内障または高IOPに対する処置として使用される化合物を製造する方法であり、その方法は、PAI−1の発現または活性を阻害するとみられる候補物質を提供する工程、緑内障または高PAI−1に苦しんでいる被験体の線維柱帯において、その候補物質がPAI−1の量を、その候補物質の活性なコンフォメーションで減少させる能力を評価することによって化合物を選択する工程、および選択された化合物を製造する工程を包含する。
【0013】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、眼科学的に許容可能な保存剤、界面活性剤、増粘剤、浸透促進剤、ゲル化剤、疎水性基剤、ビヒクル、緩衝剤、塩化ナトリウム、水およびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物をさらに含む。
【0014】
なおも他の実施形態において、β−遮断薬、プロスタグランジンアナログ、炭酸脱水酵素インヒビター、α2アゴニスト、縮瞳薬、神経保護薬、rhoキナーゼインヒビターおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物が、組成物の一部として、または別個の投与として、投与され得る。
【0015】
前述の簡単な要約は、本発明のある特定の実施形態の特徴および技術的優位性を大まかに記載している。追加の特徴および技術的優位性は、以下の発明の詳細な説明に記載される。本発明に特有であると考えられる新規特徴は、任意の添付の図面と関連して考えると、発明の詳細な説明からより十分に理解されるだろう。しかしながら、本明細書中に提供される図面は、本発明の説明を助けるか、または本発明の理解を発展させることを補助するために意図されるものであり、本発明の範囲の定義であると意図されるものではない。
【0016】
添付の図面とともに以下の説明を参照することによって、本発明およびその利点のより完全な理解が得られることがある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、ヒト線維柱帯(GTM−3)細胞上清中のPAI−1レベルに対するTGFβ2の濃度依存的効果(24h)を示している実験結果のグラフである。データは、平均およびSEM,n=3として表されている。*1元配置分散分析の後のダネット検定による対応するビヒクル群に対してp<0.05。
【図2】図2は、様々な時間にわたるTGFβ2(5ng/mL)による処理ありまたは処理なしのGTM−3細胞上清中のPAI−1レベルを示している実験結果のグラフである。データは、平均およびSEM,n=3として表されている。*スチューデントのt検定による対応するビヒクル時点群に対してp<0.05。
【図3】図3は、処理されたGTM−3細胞培養物の上清中の総PAI−1含有量および活性PAI−1含有量に対するTGFβ2の効果を示しているグラフである。比較のために、TNFαおよびデキサメタゾンの効果を含める。データは、試験薬剤に24時間曝露した後の平均およびSEMである;「0」という値は、このアッセイの検出限界未満の発現レベルを示している。
【図4】図4は、GTM−3細胞培養物中の活性PAI−1に対するPAI−1阻害の効果を要約している2つの棒グラフを示している。
【図5】図5は、処理されたGTM−3細胞培養物の上清中における、TGFβ2によって媒介される総PAI−1タンパク質レベルの増加に対するPAI−1合成インヒビター(T−2639)の効果を示しているグラフである。
【図6】図6は、I型TGFβレセプターインヒビターSB431542の存在下または非存在下におけるTGFβ2(5ng/mL)の効果のグラフを示している。上のパネル:様々なHTM細胞株におけるSB431542(10μM)の効果。下のパネル:GTM−3細胞に対するSB431542の用量依存的効果。データは、試験薬剤に24時間曝露した後の平均およびSEMである。(*は、p<0.001を示しているか、または**は、p<0.05を示している(これらは、1元配置分散分析の後のボンフェローニ検定による、各々のTGFβ2処理コントロール群に対するものである))。
【図7】図7は、Smad3インヒビターSIS3(Jinninら、Molecular Pharmacology,Vol.69:597−607,2006)の存在下または非存在下におけるTGFβ2(5ng/mL)の効果のグラフを示している。上のパネル:様々なHTM細胞株におけるSIS3(10μM)の効果。下のパネル:GTM−3細胞に対するSIS3の用量依存的効果。データは、試験薬剤に24時間曝露した後の平均およびSEMである(*は、1元配置分散分析の後のボンフェローニ検定による、各々のTGFβ2処理コントロール群に対するp<0.001を示している)。
【図8】図8は、TGFβ2によって刺激されたGTM−3(上のパネル)およびSGTM2697(下のパネル)細胞に対する様々な細胞内シグナル伝達経路の酵素インヒビターの効果のグラフを示している。使用したインヒビター:SB202190(p38 MAPKインヒビター)、U0126(MEK1/2インヒビター)、SP600125(JNKインヒビター)、ビスインドリルマレイミドI(「Bis I」;PKCα、β、δ、ζインヒビター)およびロットレリン(PKCδインヒビター)。データは、試験薬剤に24時間曝露した後の平均およびSEMである。(*は、1元配置分散分析の後のボンフェローニ検定による、TGFβ2処理コントロール群に対するp<0.001を示している);そして
【図9】図9は、TGFβ2によって刺激されたGTM−3細胞に対するスタチンの効果のグラフを示している。上のパネル:様々なスタチン(10μM)の効果。下のパネル:アトルバスタチンの用量依存的効果。データは、試験薬剤に24時間曝露した後の平均およびSEMである。(*は、p<0.001を示しているか、または**は、p<0.01を示している(これらは、1元配置分散分析の後のボンフェローニ検定による、TGFβ2処理コントロール群に対するものである))。
【図10】図10は、細胞外マトリックスのクリアランスの代用アッセイにおける化合物(チプラクスチニン、ジアプラシニンおよび「化合物39」)の効果を示している一連のグラフである。試験された化合物は、6つの異なるHTM細胞株の各々からの上清アリコート中において、基礎(無処理)活性に対して明らかな増加を誘発した。
【図11】図11は、Balb/cJマウスにおいてAd.TGFβ2によって誘導される眼内圧の上昇に対してPAI−1がt−PAおよびu−PAの活性を阻害する能力を妨げる2つの化合物(チプラクスチニンおよびジアプラシニン)の効果を示している実験結果の2つのグラフを示している。IOPの低下は、Adv.TGFβ2注射に対して、PAI−1インヒビターの事前投薬と事後投薬の両方によって達成された。
【図12】図12は、Balb/cJマウスにおいてAdv.PAI−1によって誘導される眼内圧の上昇に対するPAI−1のこれらの同じ2つのインヒビター(チプラクスチニンおよびジアプラシニン)の効果を示している実験結果の2つのグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
本発明のある特定の実施形態は、以下のスキームに示されるような、t−PAおよびu−PAに対するPAI−1活性ならびに/またはPAI−1発現を妨害することによって緑内障などの眼球障害におけるPAI−1の効果を標的化するための方法であり、
【0019】
【化1】
ここで、TGFβ2(または他の刺激)は、PAI−1遺伝子転写を促進した後、PAI−1タンパク質発現を増加させ、活性PAI−1のレベルを上昇させる。活性PAI−1は、t−PAおよび/またはu−PAによる、プラスミノゲンからプラスミンへの変換を阻害する。その後のプラスミンレベルの低下は、線維素溶解能を低下させ、細胞外マトリックス(ECM)の蓄積を増加させる。ECMの蓄積は、流出抵抗を高め、究極的には、IOPを高める。本発明の実施形態は、PAI−1発現の阻害ならびに/またはt−PAおよび/もしくはu−PAに対するPAI−1活性の妨害が、有用な緑内障治療であることを認める。
【0020】
PAI−1の発現または活性を阻害する様々な化合物が、当該分野で公知である。米国特許出願第11/611,312号(Fleenorら、2006年12月15日に出願され、米国特許公開第2008/0107644号として公開)および米国特許第7,351,407号(Fleenorら、2008年4月1日発行)は、PAI−1の発現または活性を阻害する化合物として有用であり得る化合物を開示しており、それらの全体が本明細書によって参考として援用される。
【0021】
本発明のPAI−1インヒビターとしては、PAI−039(チプラクスチニン)(Crandallら、Arterioscler Thrombosis Vascular Biology Journal,Vol.26(10):2209−2215,2006);PAI−749(ジアプラシニン)(Gardellら、Molecular Pharmacology,Vol.72(4):897−906,2007);ZK4044(Liangら、Thrombosis Research,Vol.115(4):341−350,2005);WAY−140312(Crandallら、Journal Thrombosis Haemostasis,Vol.2(8):1422−1428,2004);HP−129(フェンドサール)(Gilsら、Thrombosis Haemostasis,Vol.88(1):137−143,2002);T−686(Murakamiら、Japanese Journal of Pharmacology,Vol.75(3):291−294,1997);PAZ−417(アレプラシニン)(Zhaoら、Cell Research,Vol.18:803−804,2008);T−2639(Miyazakiら、Biorganic & Medicinal Chemistry Letters,Vol.18:6419−6422,2008);S−35225(Rupinら、Thrombosis Research,Vol.122:265−270,2008;SK−216およびSK−116(Mutohら、Carcinogenesis,Vol.29(4):824−829,2008);ならびに2−[2−メトキシ−6−[[[3−(トリフルオロメチル)−4−[4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1−ピペラジニル]フェニル]アミノ] メチル]フェノキシ]−5−ニトロ安息香酸(「化合物39」;(Yeら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,Vol.14(3):761−765,2004)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
他の小分子(例えば、ピペラジンおよびメントール誘導体(Yeら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,Vol.14(3):761−765,2004;Yeら、Biorganic & Medicinal Chemistry Letters,Vol.13(19):3361−3365,2003))、PAI−1抗体(Verbekeら、Journal of Thrombosis and Haemostasis,Vol.2(2):289−297,2004;van Giezenら、Thrombosis and Haemostasis,Vol.77(5):964−969,1997;およびAbrahamssonら、Thrombosis and Haemostasis,Vol.75(1):118−126,1996)およびパイオニン(paionin)−4(Mathiasenら、Molecular Pharmacology,Vol.74(3):641−653,2008)などのタンパク質薬剤もまた、本発明のある特定の実施形態において、PAI−1の発現または活性を阻害する化合物として使用され得る。
【0023】
他の実施形態は、SB202190、HP−129、U0126、SP600125、ビスインドリルマレイミドI、ロットレリン、SB431542およびSIS3などの薬剤を使用し得る。なおも他の実施形態では、スタチン剤(例えば、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン)が薬剤として使用され得る。PAI−1の発現または活性を阻害する好ましい化合物は、チプラクスチニン、ジアプラシニン、化合物39およびT−2639である。
【0024】
PAI−1の発現または活性を阻害する本発明の化合物は、送達するために様々なタイプの眼用処方物に組み込まれ得る。それらの化合物は、当業者に周知の手法を用いて、眼に直接送達され得る(例えば:局所用で眼球用の液滴または軟膏;緩効性デバイス(例えば、盲嚢に埋め込まれるか、または強膜に隣接してもしくは眼内に埋め込まれる、薬学的な薬物送達スポンジ);眼周囲、結膜、テノン嚢下(sub−tenons)、前房内、硝子体内または管内注射)か、または全身的に送達され得る(例えば:経口的、静脈内、皮下または筋肉内注射;非経口、経皮または経鼻送達)。本発明のPAI−1の発現または活性のインヒビターが、眼内挿入物または埋め込み型デバイスとして製剤化され得ることがさらに企図される。
【0025】
本明細書中に開示されるPAI−1の発現または活性のインヒビターは、眼に送達するために、好ましくは局所用眼用処方物に組み込まれる。それらの化合物は、眼科学的に許容可能な保存剤、界面活性剤、増粘剤、浸透促進剤、緩衝剤、塩化ナトリウムおよび水と併用することにより、水性で無菌の眼用懸濁剤または液剤が形成され得る。眼用液剤処方物は、生理的に許容可能な等張性の水性緩衝液に化合物を溶解することによって調製され得る。さらに、眼用液剤は、化合物の溶解を助ける眼科学的に許容可能な界面活性剤を含み得る。さらに、眼用液剤は、その結膜嚢における処方物の貯留を改善するために、粘度を増加させる薬剤(例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど)を含み得る。ゲル化剤(ゲラン(gellan)ゴムおよびキサンタンガムを含むがこれらに限定されない)もまた使用され得る。無菌の眼用軟膏処方物を調製するために、活性成分を、適切なビヒクル(例えば、鉱油、液体ラノリンまたは白色ワセリン)中において保存剤と混合する。無菌の眼用ゲル処方物は、類似の眼用調製物に対して公開されている調合に従って、例えば、carbopol−974などの併用から調製される親水性基剤中で化合物を懸濁することによって、調製され得る;保存剤および等張化剤が、組み込まれ得る。
【0026】
PAI−1の発現または活性のインヒビターは、好ましくは、約4〜8のpHを有する局所用の眼用懸濁剤または液剤として製剤化される。それらの化合物は、緑内障患者の中で、高IOPを起こしている患者および/または正常なIOPレベルを維持している患者においてIOPを低下させるのに十分な量で局所用の懸濁剤または液剤に含められる。そのような量は、「IOPを制御するのに有効な量」またはより単純に「有効量」と本明細書中で呼ばれる。それらの化合物は、通常、0.01〜5重量/体積パーセント(「w/v%」)の量でこれらの処方物中に含められるが、好ましくは、0.25〜2w/v%の量で含められる。したがって、局所的適用(topical presentation)の場合、熟練の臨床医の裁量に従って、1〜2滴のこれらの処方物が、1日あたり1〜4回、眼の表面に送達され得る。
【0027】
PAI−1の発現または活性のインヒビターは、高IOPまたは緑内障を処置する他の薬剤(例えば、rhoキナーゼインヒビター、β−遮断薬、プロスタグランジンアナログ、炭酸脱水酵素インヒビター、α2アゴニスト、縮瞳薬、セロトニン作動性アゴニストおよび神経保護薬であるがこれらに限定されない)と併用しても使用され得る。
【0028】
本明細書中で使用されるとき、「PAI−1の発現または活性のインヒビター」は、そのようなインヒビターならびにそれらの薬学的に許容可能な塩を包含する。PAI−1の発現または活性のインヒビターの薬学的に許容可能な塩は、PAI−1の発現または活性の阻害活性を保持し、ヒトの身体にとって許容可能である塩である。本明細書中の薬剤が、アミノ置換基またはカルボキシ置換基を有し得るので、塩は、酸性塩または塩基性塩であり得る。塩は、酸(例えば、酢酸、安息香酸、桂皮酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グリコール酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、硝酸、シュウ酸、リン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸など)を用いて形成され得る。塩は、塩基(例えば、第一級、第二級または第三級アミン、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛など)を用いて形成され得る。
【0029】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含められる。以下の実施例に開示される手法が、本発明の実施において十分に機能すると本発明者らによって発見された手法であり、ゆえにその実施のための好ましい様式を構成すると考えることができることは、当業者によって認識されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に鑑みて、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示される特定の実施形態において多くの変更を行うことができること、および依然として多くの変更が同様または類似の結果をもたらすことができることを認識するべきである。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
PAI−1の発現または活性のインヒビターは、その生物学的活性を測定するためにも使用され得る、結合アッセイまたは機能アッセイを用いて選択され得る。そのようなアッセイは、以前に報告された方法を用いて当業者によって開発され得る。PAI−1の発現または活性のインヒビターを選択するための他の有用なアッセイを実施例2〜5に示す。
【0031】
ある特定のPAI−1の発現または活性のインヒビターがIOPを安全に低下させる能力は、インビボアッセイを用いて評価され得る。カニクイザルを用いる1つのそのようなアッセイでは、0.1%プロパラカインによる軽い角膜麻酔の後にAlcon空気眼圧計を用いてIOPを測定する(Sharifら、Journal Ocular Pharmacology & Therapeutics,Vol.17(4):305−317,2001;Mayら、Journal of Pharmacology & Experimental Therapeutics,Vol.306(1):301−309,2003)。各測定後に1または2滴の食塩水で眼をすすぐ。ベースラインのIOPを測定した後、試験化合物を、1または2つの30μLのアリコートとして、選択された眼に滴下注入する。続いて、1、3および6時間後にIOP測定を行う。すべての動物の右眼にレーザー線維柱帯形成術を行うことにより、高眼圧症を誘導する。すべての左眼は、正常であり、ゆえに正常なIOPを有する。
【0032】
New Zealand Albinoウサギを用いる別のアッセイでは、0.1%プロパラカインによる軽い角膜麻酔の後にMentor Classic 30空気眼圧計を用いてIOPを測定する。各測定後に1または2滴の食塩水で眼をすすぐ。ベースラインのIOPを測定した後、試験化合物を、1つの30μLのアリコートとして、各動物の片眼もしくは両眼に滴下注入するか、または化合物を片眼に、かつビヒクルを反対側の眼に滴下注入する。続いて、0.5、1、2、3、4および5時間後にIOP測定を行う。
【0033】
(実施例2)
以前に報告されているように、ヒトTM細胞を死後のヒトドナー組織から単離し、特徴づけ、そして培養した。形質転換された(GTM−3)細胞株の作製および特徴付けは、Pangらによって以前に報告されたとおりであった(Current Eye Research,Vol.13(1):51−63,1994)。TM細胞培養物の24ウェルプレートを24時間にわたって血清欠乏にした後、さらに24時間(または記載されるとおり)無血清培地中でTGFβ2とともにインキュベートした。処理された培養物からの上清のアリコートを、ヒトPAI−1 ELISAキット(Imubind;American Diagnostica Inc.,Greenwich,CT)を用いて、分泌されたPAI−1含有量について定量化した。このELISAは、不顕性と活性の両方のPAI−1、ならびにPAI−1複合体を検出する(最小検出限界は50pg/mLである)。
【0034】
図1は、TGFβ2が線維柱帯細胞培養物(GTM−3)においてPAI−1含有量を増加させることを示しているグラフである。PAI−1によって媒介される効果は、TM組織を含む様々な組織において、以前に観察された細胞外マトリックス材料のTGFβ2媒介性の蓄積の一因となり得る。図2は、そのようなTGFβ2媒介性のPAI−1の増加が、TGFβ2で処理された細胞培養物において持続していることを実証している。したがって、TGFβ2処理は、TM細胞上清においてPAI−1の濃度依存的かつ時間依存的な蓄積をもたらすとみられる。PAI−1レベルは、TGFβ2に応答して徐々に上昇し、処理の約24時間後に一定レベルに達する。
【0035】
(実施例3)
トランスフォーミング成長因子−ベータ(TGFβ)は、多岐にわたる遺伝子およびタンパク質産物の生成、ひいては複数の細胞プロセスを制御する。ヒト線維柱帯(HTM)細胞をTGFβ2アイソフォームでエキソビボ処理することにより、おそらく眼球の細胞外マトリックス(ECM)蓄積の一因である重要なメディエーターであるプラスミノゲンアクチベーターインヒビター−1(PAI−1)の発現が変化することを研究が示している。TM領域におけるECMの過度の癒着(disproportionate accretion)は、房水(AH)流出に対するより高い抵抗を与え、その結果として、原発開放隅角緑内障において見られるような高い眼内圧をもたらし得る。さらに、ヒトPOAG眼から回収されるAHにおけるTGFβ2とPAI−1の両方のレベルは、緑内障でない眼と比べて高い。さらに、エキソビボヒト前方セグメントは、TGFβ2で灌流されたときに房水流出率の低下に応答する。
【0036】
本研究では、以前に報告されたように(Pangら、Current Eye Research,Vol.13(1):51−63,1994)ヒトTM細胞を単離し、特徴付け、そして培養した。これらのアッセイのために、プレーティングされた細胞を24時間にわたって血清欠乏にした後、無血清培地中で試験薬剤とともにさらに24時間インキュベートした。次いで、ヒトPAI−1 ELISAキット(Imubind;American Diagnostica Inc.,Greenwich,CT)を用いる総PAI−1含有量の定量化のために、処理された培養物からの上清のアリコートを取り出した。このELISAは、不顕性と活性の両方のPAI−1、ならびにPAI−1複合体を検出する(最小検出限界は50pg/mLである)。ウロキナーゼに対する活性PAI−1の結合を定量化するELISAキット(Molecular Innovations,Southfield,MI)を用いて、細胞上清中の活性PAI−1含有量を評価した。不顕性および複合型のPAI−1は、ウロキナーゼに結合しないので、それらはこのアッセイによって検出されない。このアッセイの予想される検出限界は、約0.045U/mLである(ここで、1単位は、約1.34ngの活性PAI−1と等しい)。
【0037】
図3〜9は、上記プロトコルを用いて行われたインビトロ実験の結果を示している。本研究におけるGTM−3細胞による平均基礎PAI−1分泌は、33.9±1.5ng/mL/24h(n=233)だった。TGFβ2は、GTM−3細胞上清のPAI−1含有量を時間および用量依存的様式で増加させた。5ng/mLのTGFβ2で24時間処理することにより、PAI−1レベルが12.02±0.03倍上昇した。
【0038】
HTM細胞のPAI−1総タンパク質レベルは、眼内圧上昇に関連する因子(TGFβ2、TNFα、デキサメタゾン)によってインビトロにおいてアップレギュレートされる。活性PAI−1レベルもまた、TGFβ2によって上昇する(図3)。図4は、チプラクスチニンが、TGFβ2で処理されたGTM−3培養物において活性PAI−1レベルを低下させることを示している。TGFβ2によって刺激されたPAI−1レベルは、基準(Smad媒介性)と非基準(Smad非依存性)の両方のシグナル伝達経路のインヒビターによって有意に(p<0.05)ダウンレギュレートされた。図5は、処理されたGTM−3細胞培養物の上清中の総PAI−1タンパク質レベルのTGFβ2媒介性の増加に対するPAI−1合成インヒビター(T−2639)の効果を示しているグラフである。TGFβ2媒介性の基準(Smad)シグナル伝達経路のインヒビター(SB431542およびSIS3)は、ヒト線維柱帯(HTM)細胞培養物において総PAI−1のインビトロ発現を阻止する(図6および7)。TGFβ2媒介性の非基準(Smad非依存性)シグナル伝達経路のインヒビター(SB202190、U0126、SP600125、ビスインドリルマレイミドIおよびロットレリン)もまた、HTM細胞培養物において総PAI−1のインビトロ発現を妨げる。現在までに同定されているそのようなシグナル伝達経路としては、p38MAPK、MEK1/2、JNKおよびPKCδが挙げられる(図8)。
【0039】
スタチン剤による処理もまた、HTM細胞培養物において総PAI−1のインビトロ発現を減少させる(図9)。全体の応答は、SB431542(TGFβ1型レセプターインヒビター;1μM)およびロットレリン(PKCδインヒビター;10μM)などの薬剤による完全な阻害から、SB202190(p38 MAPKインヒビター;100nM)、SP600125(c−JunN末端キナーゼインヒビター;1μM)および様々なスタチン剤による部分的な阻害まで様々だった。
【0040】
(実施例4)
細胞外マトリックスのクリアランスに対する本発明の化合物の効果を評価するために研究を行った。チプラクスチニン、ジアプラシニンおよび化合物39の存在下または非存在下において、ヒトTM細胞を24時間処理する。次いで、細胞上清アリコートを、IRDye 800RSで標識されたカゼイン(Li−Cor Biosciences)とともに2時間インキュベートした後、蓄積された蛍光分解産物をOdyssey Infrared Imaging System(Li−Cor Biosciences)で検出する。図10は、チプラクスチニン、ジアプラシニンおよび化合物39が、6つの異なるHTM細胞株の各々からの上清アリコートにおいて、基礎(無処理)活性に対して明らかな増加を誘発したことを示している。したがって、これらの化合物による処理は、線維柱帯細胞によるマトリックスタンパク質の分解を増大させる。
【0041】
(実施例5)
本発明の化合物のインビボ効果を評価するために、マウスモデルを用いた。BALB/cJマウスの各々の片側の眼の硝子体内にAd5.CMV.hPAI−1またはAd.CMV.hTGFβ2226/228を注射した。注射されない反対側の眼をコントロールとした。意識のある動物のIOPを、選択された時点において反跳式(rebound)眼圧計(TonoLab(登録商標))によって測定した。グラフに記載されている時間枠において毎日の局所的投薬(bid)によって、試験薬剤を投与した。
【0042】
図11は、t−PAおよびu−PAに対するPAI−1の阻害活性を阻害する化合物(チプラクスチニンおよびジアプラシニン)の効果を示している実験結果の2つのグラフを示している。これらの化合物は、Balb/CマウスにおいてAd.TGFβ2によって誘導される眼内圧の上昇をほぼ完全に逆転させる。Adv.TGFβ2注射に対して、PAI−1インヒビターの事前投薬と事後投薬の両方によってIOP低下が達成された。
【0043】
図12は、t−PAおよびu−PAに対するPAI−1の阻害活性を妨げる2つの化合物(チプラクスチニンおよびジアプラシニン)の効果を示している実験結果の2つのグラフを示している。両方の薬剤が、Balb/cJマウスにおいてAd.PAI−1によって誘導される眼内圧の上昇を低下させた。
【0044】
(実施例6)
【表A】
【0045】
(実施例7)
【表B】
【0046】
本発明およびその実施形態を詳細に記載してきた。しかしながら、本発明の範囲は、本明細書中に記載されるいかなるプロセス、製造、物質の組成、化合物、手段、方法および/または工程の特定の実施形態にも限定されないと意図される。様々な改変、置換およびバリエーションが、本発明の精神および/または本質的な特徴から逸脱することなく、開示される材料に対して行われ得る。したがって、実質的に同じ機能を果たすか、または本明細書中に記載される実施形態と実質的に同じ結果を達成する、より最近の改変、置換および/またはバリエーションが、本発明のそのような関連する実施形態に従って利用され得ることを本開示から当業者は容易に理解するだろう。したがって、以下の特許請求の範囲は、それらの範囲内に、本明細書中に開示されるプロセス、製造、物質の組成、化合物、手段、方法および/または工程に対する改変、置換およびバリエーションを包含すると意図される。
【0047】
(参考文献)
以下の参考文献は、それらの全体が本明細書によって参考として援用される:
【0048】
【数1】
【0049】
【数2】
【0050】
【数3】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願との相互参照)
本出願は、2007年10月31日に出願された、米国特許出願第11/931,393号の同時継続出願の一部継続出願であり、米国特許法§120に基づき、その優先権を主張する。この米国特許出願の内容は参照により本明細書中に援用される。本出願はまた、2008年4月26日に出願された米国仮特許出願第61/048,176号に対する優先権を米国特許法§119に基づき主張し、この仮特許出願の内容は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、概して、眼球障害に対する処置、より詳細には、PAI−1の発現または活性のダウンレギュレーションを介してIOPを低下させる薬剤および/または緑内障を処置するかもしくは予防する薬剤の使用(それによって、組織プラスミノゲンアクチベーター(t−PA)および/またはウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(u−PA)の活性のPAI媒介性阻害が改善される)に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
原発開放隅角緑内障(POAG)は、処置されずに放置されると進行性の視野喪失を引き起こす、罹患頻度が高く被害の大きい眼疾患である。緑内障患者の大部分は、高い眼内圧(IOP)を示し、現在の多くの処置は、IOP上昇を低下させることまたは正常なIOPを維持することに向けられている。
【0004】
高レベルのプラスミノゲンアクチベーターインヒビター−1(PAI−1)は、癌、肥満症および糖尿病をはじめとした種々の疾患状態に関与するとみられる。高レベルのPAI−1は、緑内障患者の房水中で検出されている(Danら、Archives of Ophthalmology,Vol.123:220−224,2005)。PAI−1レベルは、他の内因性刺激の中でもサイトカインTGFβ(Binderら、News Physiol Science,Vol.17:56−61,2002)によって上昇する。PAI−1は、組織プラスミノゲンアクチベーター(t−PA)およびウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(u−PA)の両方の活性を阻害する。t−PAとu−PAの両方は、プラスミノゲンを線維素溶解カスケードにおける重要な中間体であるプラスミンに変換することを触媒する(Wuら、Current Drug Targets,Vol.2:27−42,2002)。プラスミンは、ある特定のプロマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)を、それらの活性な細胞外マトリックス(ECM)分解型に変換することを促進すると知られている(Heら、PNAS,Vol.86:2632−2636,1989)。PAI−1は、接着レセプターとして作用する細胞表面インテグリンと、ECMの構成要素であるビトロネクチンとの会合も調節する(Zhouら、Nature Structural Biology,Vol.10(7):541−544,2003)。したがって、PAI−1は、非眼球組織における接着の低下と細胞の剥離の増加の両方に関連している。ヒト眼球組織も、t−PAおよび/またはu−PAを様々な程度で発現する;しかしながら、線維柱帯(TM)が主にt−PAを発現すると報告されている(非特許文献1;非特許文献2)。また、t−PAは、ヒト房水(AH)中に存在する優勢な形態であるとみられる。
【0005】
IOPの低下および/またはPOAGの処置に有効であると証明された薬物治療としては、房水生成を減少させる薬剤と房水流出率を増加させる薬剤の両方が挙げられる。そのような治療は、通常、可能性のある2つの経路;局所的(眼への直接的な適用)または経口的のうちの1つによって投与される。しかしながら、薬学的な眼圧低下アプローチは、様々な望ましくない副作用を示す。例えば、ピロカルピンなどの縮瞳薬は、視界のぼやけ、頭痛および他の負の視覚的副作用を引き起こし得る。全身投与される炭酸脱水酵素インヒビターは、悪心、消化不良、疲労および代謝性アシドーシスも引き起こし得る。ある特定のプロスタグランジンは、充血、眼のかゆみ、ならびに睫毛および眼周囲皮膚の黒ずみを引き起こす。そのような負の副作用は、患者の服薬遵守の低下または治療の終了に導くことがあり、視力が悪化し続ける。さらに、既存のある特定の緑内障治療法で処置されても全く十分に反応しない個体が存在する。ゆえに、緑内障および高眼圧症などの眼球障害を処置するための他の治療薬が必要とされている。
【0006】
2006年12月15日に出願され、特許文献1として公開された米国特許出願番号第11/931,393号は、線維柱帯細胞の喪失を予防する手段、究極的には、眼内圧を低下させる手段として、ビトロネクチンに対するPAI−1の結合を制御する薬剤の潜在的な使用が開示している。本発明は、組織プラスミノゲンアクチベーター(t−PA)および/またはウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(u−PA)に対するPAI−1の効果の阻害に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許公開第2008/0107644号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Shumanら、IOVS,Vol.29:401−405,1988
【非特許文献2】Tripathiら、Exp Eye Research,Vol.51:545−552,1990
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の簡単な要旨)
本発明の実施形態は、PAI−1の発現または活性を阻害することにより、眼球疾患を処置することおよび/またはIOPを低下させることに関する。1つの実施形態は、患者における緑内障または高IOPを処置するための方法を提供し、その方法は、PAI−1発現を阻害する薬剤またはPAI−1が組織プラスミノゲンアクチベーター(t−PA)もしくはウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(u−PA)の活性を阻害することを妨げる薬剤を含む有効量の組成物を患者に投与する工程を包含する。
【0010】
本発明の別の実施形態は、PAI−1関連の眼球障害を処置する方法であり、その方法は、PAI−1発現および/またはt−PAもしくはu−PAの活性に対するPAI−1の効果を阻害する薬剤を含む有効量の組成物を投与する工程を包含する。
【0011】
ある特定のこれらの実施形態において、その薬剤は、チプラクスチニン(tiplaxtinin)(PAI−039)、ジアプラシニン(diaplasinin)(PAI−749)、ZK−4044、WAY−140312、HP−129、T−686、XR5967、XR334、XR330、XR5118、アレプラシニン(aleplasinin)(PAZ−417)、T−2639、S35225、SK216、SK116、2−[2−メトキシ−6−[[[3−(トリフルオロメチル)−4−[4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1−ピペラジニル]フェニル]アミノ]メチル]フェノキシ]−5−ニトロ安息香酸(本明細書中で「化合物39」とも呼ばれる;Yeら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,Vol.14(3):761−765,2004)およびそれらの組み合わせである。他の実施形態は、SB202190、U0126、SP600125、ビスインドリルマレイミドI、ロットレリン(rottlerin)、SB431542およびSIS3などの薬剤を使用し得る。なおも他の実施形態では、スタチン剤(例えば、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン)が薬剤として使用され得る。PAI−1抗体およびペプチド模倣物もまた、ある特定の実施形態において使用され得る。そのような薬剤の組み合わせもまた企図される。
【0012】
なおも別の実施形態は、緑内障または高IOPに対する処置として使用される化合物を製造する方法であり、その方法は、PAI−1の発現または活性を阻害するとみられる候補物質を提供する工程、緑内障または高PAI−1に苦しんでいる被験体の線維柱帯において、その候補物質がPAI−1の量を、その候補物質の活性なコンフォメーションで減少させる能力を評価することによって化合物を選択する工程、および選択された化合物を製造する工程を包含する。
【0013】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、眼科学的に許容可能な保存剤、界面活性剤、増粘剤、浸透促進剤、ゲル化剤、疎水性基剤、ビヒクル、緩衝剤、塩化ナトリウム、水およびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物をさらに含む。
【0014】
なおも他の実施形態において、β−遮断薬、プロスタグランジンアナログ、炭酸脱水酵素インヒビター、α2アゴニスト、縮瞳薬、神経保護薬、rhoキナーゼインヒビターおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物が、組成物の一部として、または別個の投与として、投与され得る。
【0015】
前述の簡単な要約は、本発明のある特定の実施形態の特徴および技術的優位性を大まかに記載している。追加の特徴および技術的優位性は、以下の発明の詳細な説明に記載される。本発明に特有であると考えられる新規特徴は、任意の添付の図面と関連して考えると、発明の詳細な説明からより十分に理解されるだろう。しかしながら、本明細書中に提供される図面は、本発明の説明を助けるか、または本発明の理解を発展させることを補助するために意図されるものであり、本発明の範囲の定義であると意図されるものではない。
【0016】
添付の図面とともに以下の説明を参照することによって、本発明およびその利点のより完全な理解が得られることがある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、ヒト線維柱帯(GTM−3)細胞上清中のPAI−1レベルに対するTGFβ2の濃度依存的効果(24h)を示している実験結果のグラフである。データは、平均およびSEM,n=3として表されている。*1元配置分散分析の後のダネット検定による対応するビヒクル群に対してp<0.05。
【図2】図2は、様々な時間にわたるTGFβ2(5ng/mL)による処理ありまたは処理なしのGTM−3細胞上清中のPAI−1レベルを示している実験結果のグラフである。データは、平均およびSEM,n=3として表されている。*スチューデントのt検定による対応するビヒクル時点群に対してp<0.05。
【図3】図3は、処理されたGTM−3細胞培養物の上清中の総PAI−1含有量および活性PAI−1含有量に対するTGFβ2の効果を示しているグラフである。比較のために、TNFαおよびデキサメタゾンの効果を含める。データは、試験薬剤に24時間曝露した後の平均およびSEMである;「0」という値は、このアッセイの検出限界未満の発現レベルを示している。
【図4】図4は、GTM−3細胞培養物中の活性PAI−1に対するPAI−1阻害の効果を要約している2つの棒グラフを示している。
【図5】図5は、処理されたGTM−3細胞培養物の上清中における、TGFβ2によって媒介される総PAI−1タンパク質レベルの増加に対するPAI−1合成インヒビター(T−2639)の効果を示しているグラフである。
【図6】図6は、I型TGFβレセプターインヒビターSB431542の存在下または非存在下におけるTGFβ2(5ng/mL)の効果のグラフを示している。上のパネル:様々なHTM細胞株におけるSB431542(10μM)の効果。下のパネル:GTM−3細胞に対するSB431542の用量依存的効果。データは、試験薬剤に24時間曝露した後の平均およびSEMである。(*は、p<0.001を示しているか、または**は、p<0.05を示している(これらは、1元配置分散分析の後のボンフェローニ検定による、各々のTGFβ2処理コントロール群に対するものである))。
【図7】図7は、Smad3インヒビターSIS3(Jinninら、Molecular Pharmacology,Vol.69:597−607,2006)の存在下または非存在下におけるTGFβ2(5ng/mL)の効果のグラフを示している。上のパネル:様々なHTM細胞株におけるSIS3(10μM)の効果。下のパネル:GTM−3細胞に対するSIS3の用量依存的効果。データは、試験薬剤に24時間曝露した後の平均およびSEMである(*は、1元配置分散分析の後のボンフェローニ検定による、各々のTGFβ2処理コントロール群に対するp<0.001を示している)。
【図8】図8は、TGFβ2によって刺激されたGTM−3(上のパネル)およびSGTM2697(下のパネル)細胞に対する様々な細胞内シグナル伝達経路の酵素インヒビターの効果のグラフを示している。使用したインヒビター:SB202190(p38 MAPKインヒビター)、U0126(MEK1/2インヒビター)、SP600125(JNKインヒビター)、ビスインドリルマレイミドI(「Bis I」;PKCα、β、δ、ζインヒビター)およびロットレリン(PKCδインヒビター)。データは、試験薬剤に24時間曝露した後の平均およびSEMである。(*は、1元配置分散分析の後のボンフェローニ検定による、TGFβ2処理コントロール群に対するp<0.001を示している);そして
【図9】図9は、TGFβ2によって刺激されたGTM−3細胞に対するスタチンの効果のグラフを示している。上のパネル:様々なスタチン(10μM)の効果。下のパネル:アトルバスタチンの用量依存的効果。データは、試験薬剤に24時間曝露した後の平均およびSEMである。(*は、p<0.001を示しているか、または**は、p<0.01を示している(これらは、1元配置分散分析の後のボンフェローニ検定による、TGFβ2処理コントロール群に対するものである))。
【図10】図10は、細胞外マトリックスのクリアランスの代用アッセイにおける化合物(チプラクスチニン、ジアプラシニンおよび「化合物39」)の効果を示している一連のグラフである。試験された化合物は、6つの異なるHTM細胞株の各々からの上清アリコート中において、基礎(無処理)活性に対して明らかな増加を誘発した。
【図11】図11は、Balb/cJマウスにおいてAd.TGFβ2によって誘導される眼内圧の上昇に対してPAI−1がt−PAおよびu−PAの活性を阻害する能力を妨げる2つの化合物(チプラクスチニンおよびジアプラシニン)の効果を示している実験結果の2つのグラフを示している。IOPの低下は、Adv.TGFβ2注射に対して、PAI−1インヒビターの事前投薬と事後投薬の両方によって達成された。
【図12】図12は、Balb/cJマウスにおいてAdv.PAI−1によって誘導される眼内圧の上昇に対するPAI−1のこれらの同じ2つのインヒビター(チプラクスチニンおよびジアプラシニン)の効果を示している実験結果の2つのグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
本発明のある特定の実施形態は、以下のスキームに示されるような、t−PAおよびu−PAに対するPAI−1活性ならびに/またはPAI−1発現を妨害することによって緑内障などの眼球障害におけるPAI−1の効果を標的化するための方法であり、
【0019】
【化1】
ここで、TGFβ2(または他の刺激)は、PAI−1遺伝子転写を促進した後、PAI−1タンパク質発現を増加させ、活性PAI−1のレベルを上昇させる。活性PAI−1は、t−PAおよび/またはu−PAによる、プラスミノゲンからプラスミンへの変換を阻害する。その後のプラスミンレベルの低下は、線維素溶解能を低下させ、細胞外マトリックス(ECM)の蓄積を増加させる。ECMの蓄積は、流出抵抗を高め、究極的には、IOPを高める。本発明の実施形態は、PAI−1発現の阻害ならびに/またはt−PAおよび/もしくはu−PAに対するPAI−1活性の妨害が、有用な緑内障治療であることを認める。
【0020】
PAI−1の発現または活性を阻害する様々な化合物が、当該分野で公知である。米国特許出願第11/611,312号(Fleenorら、2006年12月15日に出願され、米国特許公開第2008/0107644号として公開)および米国特許第7,351,407号(Fleenorら、2008年4月1日発行)は、PAI−1の発現または活性を阻害する化合物として有用であり得る化合物を開示しており、それらの全体が本明細書によって参考として援用される。
【0021】
本発明のPAI−1インヒビターとしては、PAI−039(チプラクスチニン)(Crandallら、Arterioscler Thrombosis Vascular Biology Journal,Vol.26(10):2209−2215,2006);PAI−749(ジアプラシニン)(Gardellら、Molecular Pharmacology,Vol.72(4):897−906,2007);ZK4044(Liangら、Thrombosis Research,Vol.115(4):341−350,2005);WAY−140312(Crandallら、Journal Thrombosis Haemostasis,Vol.2(8):1422−1428,2004);HP−129(フェンドサール)(Gilsら、Thrombosis Haemostasis,Vol.88(1):137−143,2002);T−686(Murakamiら、Japanese Journal of Pharmacology,Vol.75(3):291−294,1997);PAZ−417(アレプラシニン)(Zhaoら、Cell Research,Vol.18:803−804,2008);T−2639(Miyazakiら、Biorganic & Medicinal Chemistry Letters,Vol.18:6419−6422,2008);S−35225(Rupinら、Thrombosis Research,Vol.122:265−270,2008;SK−216およびSK−116(Mutohら、Carcinogenesis,Vol.29(4):824−829,2008);ならびに2−[2−メトキシ−6−[[[3−(トリフルオロメチル)−4−[4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1−ピペラジニル]フェニル]アミノ] メチル]フェノキシ]−5−ニトロ安息香酸(「化合物39」;(Yeら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,Vol.14(3):761−765,2004)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
他の小分子(例えば、ピペラジンおよびメントール誘導体(Yeら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,Vol.14(3):761−765,2004;Yeら、Biorganic & Medicinal Chemistry Letters,Vol.13(19):3361−3365,2003))、PAI−1抗体(Verbekeら、Journal of Thrombosis and Haemostasis,Vol.2(2):289−297,2004;van Giezenら、Thrombosis and Haemostasis,Vol.77(5):964−969,1997;およびAbrahamssonら、Thrombosis and Haemostasis,Vol.75(1):118−126,1996)およびパイオニン(paionin)−4(Mathiasenら、Molecular Pharmacology,Vol.74(3):641−653,2008)などのタンパク質薬剤もまた、本発明のある特定の実施形態において、PAI−1の発現または活性を阻害する化合物として使用され得る。
【0023】
他の実施形態は、SB202190、HP−129、U0126、SP600125、ビスインドリルマレイミドI、ロットレリン、SB431542およびSIS3などの薬剤を使用し得る。なおも他の実施形態では、スタチン剤(例えば、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン)が薬剤として使用され得る。PAI−1の発現または活性を阻害する好ましい化合物は、チプラクスチニン、ジアプラシニン、化合物39およびT−2639である。
【0024】
PAI−1の発現または活性を阻害する本発明の化合物は、送達するために様々なタイプの眼用処方物に組み込まれ得る。それらの化合物は、当業者に周知の手法を用いて、眼に直接送達され得る(例えば:局所用で眼球用の液滴または軟膏;緩効性デバイス(例えば、盲嚢に埋め込まれるか、または強膜に隣接してもしくは眼内に埋め込まれる、薬学的な薬物送達スポンジ);眼周囲、結膜、テノン嚢下(sub−tenons)、前房内、硝子体内または管内注射)か、または全身的に送達され得る(例えば:経口的、静脈内、皮下または筋肉内注射;非経口、経皮または経鼻送達)。本発明のPAI−1の発現または活性のインヒビターが、眼内挿入物または埋め込み型デバイスとして製剤化され得ることがさらに企図される。
【0025】
本明細書中に開示されるPAI−1の発現または活性のインヒビターは、眼に送達するために、好ましくは局所用眼用処方物に組み込まれる。それらの化合物は、眼科学的に許容可能な保存剤、界面活性剤、増粘剤、浸透促進剤、緩衝剤、塩化ナトリウムおよび水と併用することにより、水性で無菌の眼用懸濁剤または液剤が形成され得る。眼用液剤処方物は、生理的に許容可能な等張性の水性緩衝液に化合物を溶解することによって調製され得る。さらに、眼用液剤は、化合物の溶解を助ける眼科学的に許容可能な界面活性剤を含み得る。さらに、眼用液剤は、その結膜嚢における処方物の貯留を改善するために、粘度を増加させる薬剤(例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど)を含み得る。ゲル化剤(ゲラン(gellan)ゴムおよびキサンタンガムを含むがこれらに限定されない)もまた使用され得る。無菌の眼用軟膏処方物を調製するために、活性成分を、適切なビヒクル(例えば、鉱油、液体ラノリンまたは白色ワセリン)中において保存剤と混合する。無菌の眼用ゲル処方物は、類似の眼用調製物に対して公開されている調合に従って、例えば、carbopol−974などの併用から調製される親水性基剤中で化合物を懸濁することによって、調製され得る;保存剤および等張化剤が、組み込まれ得る。
【0026】
PAI−1の発現または活性のインヒビターは、好ましくは、約4〜8のpHを有する局所用の眼用懸濁剤または液剤として製剤化される。それらの化合物は、緑内障患者の中で、高IOPを起こしている患者および/または正常なIOPレベルを維持している患者においてIOPを低下させるのに十分な量で局所用の懸濁剤または液剤に含められる。そのような量は、「IOPを制御するのに有効な量」またはより単純に「有効量」と本明細書中で呼ばれる。それらの化合物は、通常、0.01〜5重量/体積パーセント(「w/v%」)の量でこれらの処方物中に含められるが、好ましくは、0.25〜2w/v%の量で含められる。したがって、局所的適用(topical presentation)の場合、熟練の臨床医の裁量に従って、1〜2滴のこれらの処方物が、1日あたり1〜4回、眼の表面に送達され得る。
【0027】
PAI−1の発現または活性のインヒビターは、高IOPまたは緑内障を処置する他の薬剤(例えば、rhoキナーゼインヒビター、β−遮断薬、プロスタグランジンアナログ、炭酸脱水酵素インヒビター、α2アゴニスト、縮瞳薬、セロトニン作動性アゴニストおよび神経保護薬であるがこれらに限定されない)と併用しても使用され得る。
【0028】
本明細書中で使用されるとき、「PAI−1の発現または活性のインヒビター」は、そのようなインヒビターならびにそれらの薬学的に許容可能な塩を包含する。PAI−1の発現または活性のインヒビターの薬学的に許容可能な塩は、PAI−1の発現または活性の阻害活性を保持し、ヒトの身体にとって許容可能である塩である。本明細書中の薬剤が、アミノ置換基またはカルボキシ置換基を有し得るので、塩は、酸性塩または塩基性塩であり得る。塩は、酸(例えば、酢酸、安息香酸、桂皮酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グリコール酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、硝酸、シュウ酸、リン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸など)を用いて形成され得る。塩は、塩基(例えば、第一級、第二級または第三級アミン、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛など)を用いて形成され得る。
【0029】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含められる。以下の実施例に開示される手法が、本発明の実施において十分に機能すると本発明者らによって発見された手法であり、ゆえにその実施のための好ましい様式を構成すると考えることができることは、当業者によって認識されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に鑑みて、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示される特定の実施形態において多くの変更を行うことができること、および依然として多くの変更が同様または類似の結果をもたらすことができることを認識するべきである。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
PAI−1の発現または活性のインヒビターは、その生物学的活性を測定するためにも使用され得る、結合アッセイまたは機能アッセイを用いて選択され得る。そのようなアッセイは、以前に報告された方法を用いて当業者によって開発され得る。PAI−1の発現または活性のインヒビターを選択するための他の有用なアッセイを実施例2〜5に示す。
【0031】
ある特定のPAI−1の発現または活性のインヒビターがIOPを安全に低下させる能力は、インビボアッセイを用いて評価され得る。カニクイザルを用いる1つのそのようなアッセイでは、0.1%プロパラカインによる軽い角膜麻酔の後にAlcon空気眼圧計を用いてIOPを測定する(Sharifら、Journal Ocular Pharmacology & Therapeutics,Vol.17(4):305−317,2001;Mayら、Journal of Pharmacology & Experimental Therapeutics,Vol.306(1):301−309,2003)。各測定後に1または2滴の食塩水で眼をすすぐ。ベースラインのIOPを測定した後、試験化合物を、1または2つの30μLのアリコートとして、選択された眼に滴下注入する。続いて、1、3および6時間後にIOP測定を行う。すべての動物の右眼にレーザー線維柱帯形成術を行うことにより、高眼圧症を誘導する。すべての左眼は、正常であり、ゆえに正常なIOPを有する。
【0032】
New Zealand Albinoウサギを用いる別のアッセイでは、0.1%プロパラカインによる軽い角膜麻酔の後にMentor Classic 30空気眼圧計を用いてIOPを測定する。各測定後に1または2滴の食塩水で眼をすすぐ。ベースラインのIOPを測定した後、試験化合物を、1つの30μLのアリコートとして、各動物の片眼もしくは両眼に滴下注入するか、または化合物を片眼に、かつビヒクルを反対側の眼に滴下注入する。続いて、0.5、1、2、3、4および5時間後にIOP測定を行う。
【0033】
(実施例2)
以前に報告されているように、ヒトTM細胞を死後のヒトドナー組織から単離し、特徴づけ、そして培養した。形質転換された(GTM−3)細胞株の作製および特徴付けは、Pangらによって以前に報告されたとおりであった(Current Eye Research,Vol.13(1):51−63,1994)。TM細胞培養物の24ウェルプレートを24時間にわたって血清欠乏にした後、さらに24時間(または記載されるとおり)無血清培地中でTGFβ2とともにインキュベートした。処理された培養物からの上清のアリコートを、ヒトPAI−1 ELISAキット(Imubind;American Diagnostica Inc.,Greenwich,CT)を用いて、分泌されたPAI−1含有量について定量化した。このELISAは、不顕性と活性の両方のPAI−1、ならびにPAI−1複合体を検出する(最小検出限界は50pg/mLである)。
【0034】
図1は、TGFβ2が線維柱帯細胞培養物(GTM−3)においてPAI−1含有量を増加させることを示しているグラフである。PAI−1によって媒介される効果は、TM組織を含む様々な組織において、以前に観察された細胞外マトリックス材料のTGFβ2媒介性の蓄積の一因となり得る。図2は、そのようなTGFβ2媒介性のPAI−1の増加が、TGFβ2で処理された細胞培養物において持続していることを実証している。したがって、TGFβ2処理は、TM細胞上清においてPAI−1の濃度依存的かつ時間依存的な蓄積をもたらすとみられる。PAI−1レベルは、TGFβ2に応答して徐々に上昇し、処理の約24時間後に一定レベルに達する。
【0035】
(実施例3)
トランスフォーミング成長因子−ベータ(TGFβ)は、多岐にわたる遺伝子およびタンパク質産物の生成、ひいては複数の細胞プロセスを制御する。ヒト線維柱帯(HTM)細胞をTGFβ2アイソフォームでエキソビボ処理することにより、おそらく眼球の細胞外マトリックス(ECM)蓄積の一因である重要なメディエーターであるプラスミノゲンアクチベーターインヒビター−1(PAI−1)の発現が変化することを研究が示している。TM領域におけるECMの過度の癒着(disproportionate accretion)は、房水(AH)流出に対するより高い抵抗を与え、その結果として、原発開放隅角緑内障において見られるような高い眼内圧をもたらし得る。さらに、ヒトPOAG眼から回収されるAHにおけるTGFβ2とPAI−1の両方のレベルは、緑内障でない眼と比べて高い。さらに、エキソビボヒト前方セグメントは、TGFβ2で灌流されたときに房水流出率の低下に応答する。
【0036】
本研究では、以前に報告されたように(Pangら、Current Eye Research,Vol.13(1):51−63,1994)ヒトTM細胞を単離し、特徴付け、そして培養した。これらのアッセイのために、プレーティングされた細胞を24時間にわたって血清欠乏にした後、無血清培地中で試験薬剤とともにさらに24時間インキュベートした。次いで、ヒトPAI−1 ELISAキット(Imubind;American Diagnostica Inc.,Greenwich,CT)を用いる総PAI−1含有量の定量化のために、処理された培養物からの上清のアリコートを取り出した。このELISAは、不顕性と活性の両方のPAI−1、ならびにPAI−1複合体を検出する(最小検出限界は50pg/mLである)。ウロキナーゼに対する活性PAI−1の結合を定量化するELISAキット(Molecular Innovations,Southfield,MI)を用いて、細胞上清中の活性PAI−1含有量を評価した。不顕性および複合型のPAI−1は、ウロキナーゼに結合しないので、それらはこのアッセイによって検出されない。このアッセイの予想される検出限界は、約0.045U/mLである(ここで、1単位は、約1.34ngの活性PAI−1と等しい)。
【0037】
図3〜9は、上記プロトコルを用いて行われたインビトロ実験の結果を示している。本研究におけるGTM−3細胞による平均基礎PAI−1分泌は、33.9±1.5ng/mL/24h(n=233)だった。TGFβ2は、GTM−3細胞上清のPAI−1含有量を時間および用量依存的様式で増加させた。5ng/mLのTGFβ2で24時間処理することにより、PAI−1レベルが12.02±0.03倍上昇した。
【0038】
HTM細胞のPAI−1総タンパク質レベルは、眼内圧上昇に関連する因子(TGFβ2、TNFα、デキサメタゾン)によってインビトロにおいてアップレギュレートされる。活性PAI−1レベルもまた、TGFβ2によって上昇する(図3)。図4は、チプラクスチニンが、TGFβ2で処理されたGTM−3培養物において活性PAI−1レベルを低下させることを示している。TGFβ2によって刺激されたPAI−1レベルは、基準(Smad媒介性)と非基準(Smad非依存性)の両方のシグナル伝達経路のインヒビターによって有意に(p<0.05)ダウンレギュレートされた。図5は、処理されたGTM−3細胞培養物の上清中の総PAI−1タンパク質レベルのTGFβ2媒介性の増加に対するPAI−1合成インヒビター(T−2639)の効果を示しているグラフである。TGFβ2媒介性の基準(Smad)シグナル伝達経路のインヒビター(SB431542およびSIS3)は、ヒト線維柱帯(HTM)細胞培養物において総PAI−1のインビトロ発現を阻止する(図6および7)。TGFβ2媒介性の非基準(Smad非依存性)シグナル伝達経路のインヒビター(SB202190、U0126、SP600125、ビスインドリルマレイミドIおよびロットレリン)もまた、HTM細胞培養物において総PAI−1のインビトロ発現を妨げる。現在までに同定されているそのようなシグナル伝達経路としては、p38MAPK、MEK1/2、JNKおよびPKCδが挙げられる(図8)。
【0039】
スタチン剤による処理もまた、HTM細胞培養物において総PAI−1のインビトロ発現を減少させる(図9)。全体の応答は、SB431542(TGFβ1型レセプターインヒビター;1μM)およびロットレリン(PKCδインヒビター;10μM)などの薬剤による完全な阻害から、SB202190(p38 MAPKインヒビター;100nM)、SP600125(c−JunN末端キナーゼインヒビター;1μM)および様々なスタチン剤による部分的な阻害まで様々だった。
【0040】
(実施例4)
細胞外マトリックスのクリアランスに対する本発明の化合物の効果を評価するために研究を行った。チプラクスチニン、ジアプラシニンおよび化合物39の存在下または非存在下において、ヒトTM細胞を24時間処理する。次いで、細胞上清アリコートを、IRDye 800RSで標識されたカゼイン(Li−Cor Biosciences)とともに2時間インキュベートした後、蓄積された蛍光分解産物をOdyssey Infrared Imaging System(Li−Cor Biosciences)で検出する。図10は、チプラクスチニン、ジアプラシニンおよび化合物39が、6つの異なるHTM細胞株の各々からの上清アリコートにおいて、基礎(無処理)活性に対して明らかな増加を誘発したことを示している。したがって、これらの化合物による処理は、線維柱帯細胞によるマトリックスタンパク質の分解を増大させる。
【0041】
(実施例5)
本発明の化合物のインビボ効果を評価するために、マウスモデルを用いた。BALB/cJマウスの各々の片側の眼の硝子体内にAd5.CMV.hPAI−1またはAd.CMV.hTGFβ2226/228を注射した。注射されない反対側の眼をコントロールとした。意識のある動物のIOPを、選択された時点において反跳式(rebound)眼圧計(TonoLab(登録商標))によって測定した。グラフに記載されている時間枠において毎日の局所的投薬(bid)によって、試験薬剤を投与した。
【0042】
図11は、t−PAおよびu−PAに対するPAI−1の阻害活性を阻害する化合物(チプラクスチニンおよびジアプラシニン)の効果を示している実験結果の2つのグラフを示している。これらの化合物は、Balb/CマウスにおいてAd.TGFβ2によって誘導される眼内圧の上昇をほぼ完全に逆転させる。Adv.TGFβ2注射に対して、PAI−1インヒビターの事前投薬と事後投薬の両方によってIOP低下が達成された。
【0043】
図12は、t−PAおよびu−PAに対するPAI−1の阻害活性を妨げる2つの化合物(チプラクスチニンおよびジアプラシニン)の効果を示している実験結果の2つのグラフを示している。両方の薬剤が、Balb/cJマウスにおいてAd.PAI−1によって誘導される眼内圧の上昇を低下させた。
【0044】
(実施例6)
【表A】
【0045】
(実施例7)
【表B】
【0046】
本発明およびその実施形態を詳細に記載してきた。しかしながら、本発明の範囲は、本明細書中に記載されるいかなるプロセス、製造、物質の組成、化合物、手段、方法および/または工程の特定の実施形態にも限定されないと意図される。様々な改変、置換およびバリエーションが、本発明の精神および/または本質的な特徴から逸脱することなく、開示される材料に対して行われ得る。したがって、実質的に同じ機能を果たすか、または本明細書中に記載される実施形態と実質的に同じ結果を達成する、より最近の改変、置換および/またはバリエーションが、本発明のそのような関連する実施形態に従って利用され得ることを本開示から当業者は容易に理解するだろう。したがって、以下の特許請求の範囲は、それらの範囲内に、本明細書中に開示されるプロセス、製造、物質の組成、化合物、手段、方法および/または工程に対する改変、置換およびバリエーションを包含すると意図される。
【0047】
(参考文献)
以下の参考文献は、それらの全体が本明細書によって参考として援用される:
【0048】
【数1】
【0049】
【数2】
【0050】
【数3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における緑内障または高IOPを処置するための方法であって:
PAI−1の発現または活性を阻害する薬剤を含む有効量の組成物を該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記薬剤が:
チプラクスチニン、ジアプラシニン、アレプラシニン、フェンドサール、ZK4044、WAY−140312、T−686、T−2639、S−35225、SK−216、SK−116、SB202190、U0126、HP−129、SP600125、XR5967、XR334、XR330、XR5118、化合物39、ビスインドリルマレイミドI、ロットレリン、SB431542、SIS3、スタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、PAI−1抗体、PAI−1タンパク質インヒビター、パイオニン−4およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤が:
アレプラシニン、フェンドサール、T−2639、S−35225、SK−216、SK−116、SB202190、U0126、SP600125、化合物39、ビスインドリルマレイミドI、ロットレリン、SB431542、SIS3、スタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、PAI−1抗体、PAI−1タンパク質インヒビター、パイオニン−4およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記薬剤が:
チプラクスチニン、ジアプラシニン、ビスインドリルマレイミドI、T−2639、化合物39およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記阻害が、組織プラスミノゲンアクチベーター(t−PA)またはウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(u−PA)の活性のPAI−1阻害を妨害する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が:
眼科学的に許容可能な保存剤、界面活性剤、増粘剤、浸透促進剤、ゲル化剤、疎水性基剤、ビヒクル、緩衝剤、塩化ナトリウム、水およびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
β−遮断薬、プロスタグランジンアナログ、炭酸脱水酵素インヒビター、α2アゴニスト、縮瞳薬、神経保護薬、rhoキナーゼインヒビターおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を、前記組成物の一部としてか、または別個の投与のいずれかとして投与する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、約0.01重量/体積パーセントから約5重量/体積パーセントの前記薬剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、約0.25重量/体積パーセントから約2重量/体積パーセントの前記薬剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
PAI−1関連眼球障害を処置する必要のある被験体においてPAI−1関連眼球障害を処置する方法であって:
PAI−1の活性または発現を阻害する薬剤を含む有効量の組成物を患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項11】
前記障害が、高眼圧症または緑内障である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記薬剤が:
チプラクスチニン、ジアプラシニン、アレプラシニン、フェンドサール、ZK4044、WAY−140312、T−686、T−2639、S−35225、SK−216、SK−116、SB202190、U0126、HP−129、SP600125、XR5967、XR334、XR330、XR5118、化合物39、ビスインドリルマレイミドI、ロットレリン、SB431542、SIS3、スタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、PAI−1抗体、PAI−1タンパク質インヒビター、パイオニン−4およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記薬剤が:
アレプラシニン、フェンドサール、T−2639、S−35225、SK−216、SK−116、SB202190、U0126、SP600125、化合物39、ビスインドリルマレイミドI、ロットレリン、SB431542、SIS3、スタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、PAI−1抗体、PAI−1タンパク質インヒビター、パイオニン−4およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記薬剤が:
チプラクスチニン、ジアプラシニン、ビスインドリルマレイミドI、T−2639、化合物39およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記阻害が、組織プラスミノゲンアクチベーター(t−PA)またはウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(u−PA)の活性のPAI−1阻害を妨げる、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が:
眼科学的に許容可能な保存剤、界面活性剤、増粘剤、浸透促進剤、ゲル化剤、疎水性基剤、ビヒクル、緩衝剤、塩化ナトリウム、水およびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
β−遮断薬、プロスタグランジンアナログ、炭酸脱水酵素インヒビター、α2アゴニスト、縮瞳薬、神経保護薬、rhoキナーゼインヒビターおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を、前記組成物の一部としてか、または別個の投与のいずれかとして投与する工程をさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、約0.01重量/体積パーセントから約5重量/体積パーセントの前記薬剤を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、約0.25重量/体積パーセントから約2重量/体積パーセントの前記薬剤を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項1】
患者における緑内障または高IOPを処置するための方法であって:
PAI−1の発現または活性を阻害する薬剤を含む有効量の組成物を該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記薬剤が:
チプラクスチニン、ジアプラシニン、アレプラシニン、フェンドサール、ZK4044、WAY−140312、T−686、T−2639、S−35225、SK−216、SK−116、SB202190、U0126、HP−129、SP600125、XR5967、XR334、XR330、XR5118、化合物39、ビスインドリルマレイミドI、ロットレリン、SB431542、SIS3、スタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、PAI−1抗体、PAI−1タンパク質インヒビター、パイオニン−4およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤が:
アレプラシニン、フェンドサール、T−2639、S−35225、SK−216、SK−116、SB202190、U0126、SP600125、化合物39、ビスインドリルマレイミドI、ロットレリン、SB431542、SIS3、スタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、PAI−1抗体、PAI−1タンパク質インヒビター、パイオニン−4およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記薬剤が:
チプラクスチニン、ジアプラシニン、ビスインドリルマレイミドI、T−2639、化合物39およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記阻害が、組織プラスミノゲンアクチベーター(t−PA)またはウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(u−PA)の活性のPAI−1阻害を妨害する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が:
眼科学的に許容可能な保存剤、界面活性剤、増粘剤、浸透促進剤、ゲル化剤、疎水性基剤、ビヒクル、緩衝剤、塩化ナトリウム、水およびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
β−遮断薬、プロスタグランジンアナログ、炭酸脱水酵素インヒビター、α2アゴニスト、縮瞳薬、神経保護薬、rhoキナーゼインヒビターおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を、前記組成物の一部としてか、または別個の投与のいずれかとして投与する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、約0.01重量/体積パーセントから約5重量/体積パーセントの前記薬剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、約0.25重量/体積パーセントから約2重量/体積パーセントの前記薬剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
PAI−1関連眼球障害を処置する必要のある被験体においてPAI−1関連眼球障害を処置する方法であって:
PAI−1の活性または発現を阻害する薬剤を含む有効量の組成物を患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項11】
前記障害が、高眼圧症または緑内障である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記薬剤が:
チプラクスチニン、ジアプラシニン、アレプラシニン、フェンドサール、ZK4044、WAY−140312、T−686、T−2639、S−35225、SK−216、SK−116、SB202190、U0126、HP−129、SP600125、XR5967、XR334、XR330、XR5118、化合物39、ビスインドリルマレイミドI、ロットレリン、SB431542、SIS3、スタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、PAI−1抗体、PAI−1タンパク質インヒビター、パイオニン−4およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記薬剤が:
アレプラシニン、フェンドサール、T−2639、S−35225、SK−216、SK−116、SB202190、U0126、SP600125、化合物39、ビスインドリルマレイミドI、ロットレリン、SB431542、SIS3、スタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、PAI−1抗体、PAI−1タンパク質インヒビター、パイオニン−4およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記薬剤が:
チプラクスチニン、ジアプラシニン、ビスインドリルマレイミドI、T−2639、化合物39およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記阻害が、組織プラスミノゲンアクチベーター(t−PA)またはウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(u−PA)の活性のPAI−1阻害を妨げる、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が:
眼科学的に許容可能な保存剤、界面活性剤、増粘剤、浸透促進剤、ゲル化剤、疎水性基剤、ビヒクル、緩衝剤、塩化ナトリウム、水およびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
β−遮断薬、プロスタグランジンアナログ、炭酸脱水酵素インヒビター、α2アゴニスト、縮瞳薬、神経保護薬、rhoキナーゼインヒビターおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を、前記組成物の一部としてか、または別個の投与のいずれかとして投与する工程をさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、約0.01重量/体積パーセントから約5重量/体積パーセントの前記薬剤を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、約0.25重量/体積パーセントから約2重量/体積パーセントの前記薬剤を含む、請求項10に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2011−518828(P2011−518828A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506352(P2011−506352)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/040149
【国際公開番号】WO2009/131850
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/040149
【国際公開番号】WO2009/131850
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】
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