説明

眼画像撮影装置およびそれを用いた認証装置

【課題】最適な距離に被写体を位置させることが容易で、誘導のために複雑な構成を用いる必要のない眼画像撮影装置および認証装置を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも被写体の眼を撮影する第1の撮影部3と、第1の撮影部3と合焦範囲が異なり、かつ、第1の撮影部3の撮影方向と略同一の方向を撮影するように配置された第2の撮影部4と、第1の撮影部3および第2の撮影部4で撮影された画像に、眼が撮影されているか否かを判定する眼検出部16と、眼検出部16で眼が撮影されていると判定された画像を出力する出力部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被認証者の少なくとも眼を含む画像を撮影する眼画像撮影装置およびそれを用いた認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、入退出管理装置や個人情報等の重要な情報が記憶された情報装置等、高いセキュリティ性が求められる装置におけるアクセス時の本人認証の方法として、人体の指紋、虹彩、眼底血管、顔の特徴、手や腕の血管パターン等、その被認証者固有の情報、いわゆるバイオメトリクス情報を用いた様々な認証方法が実用化されてきている。
【0003】
その中でも、本人認証率の高さや、他人受入率の低さ等の信頼性の高さから、眼の虹彩部分の皺の模様の違いを利用した認証方法(以下、このような方法を虹彩認証方法と記す)が提案され、特に高いセキュリティ性を必要とする機器において実用化されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
このような虹彩認証方法は、被認証者の眼の部分の画像(以下、この画像を眼画像と記す)から虹彩の部分を選択的にコード化し、得られた情報を認証情報として、あらかじめ登録された情報(以下、登録認証情報と記す)と比較照合し、互いに一致すると判定された場合には、被認証者があらかじめ登録された者であると認証する方法である。
【0005】
このような虹彩認証方法を用いた虹彩認証装置においては、被認証者の鮮明な眼画像を撮影するために、一般的には、望遠レンズが搭載されることが多い。しかしながら、光学系として望遠レンズを搭載するだけでは、画角が狭いので、被認証者の眼に位置あわせを行って、正確に撮影することが難しいという課題があった。
【0006】
このような課題に鑑みて、比較的画角の広いレンズ系を有するWカメラと、比較的画角の狭いレンズ系を有する、可動なNカメラとを備え、Wカメラによって被写体の顔全体を撮影して、その画像から眼の位置を検出し、検出された眼の方向にNカメラを向けて撮影を行うことにより、眼の拡大画像を撮影することができる技術が提案されてきている(例えば、特許文献2を参照。)。このような技術によれば、ズームレンズ等の複雑な光学系の不要な構成を実現することができた。
【特許文献1】特許第3307936号公報
【特許文献2】特開平10−40386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のような従来の虹彩認証装置においては、コストに鑑みて、Nカメラの光学系として、比較的望遠の単焦点レンズを用いることが望ましい。この場合には、その被写界深度が非常に浅いために、被認証者を合焦可能な適切な距離範囲(以下、合焦範囲と記す)に正確に誘導する必要があった。しかしながら、一般的に、人間の距離方向の感覚は、水平方向および垂直方向の感覚と比べて非常に鈍いものであるとされており、ある程度継続的に虹彩認証装置を用いても、なかなか最適な距離に自らを位置させることが難しく、誘導のために音声誘導等の複雑な構成を用いる必要があるという課題があった。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、最適な距離に被写体を位置させることが容易で、誘導のために複雑な構成を用いる必要のない眼画像撮影装置および認証装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の眼画像撮影装置は、少なくとも被写体の眼を撮影する第1の撮影部と、第1の撮影部と合焦範囲が異なり、かつ、第1の撮影部の撮影方向と略同一の方向を撮影するように配置された第2の撮影部と、第1の撮影部および第2の撮影部で撮影された画像に、眼が撮影されているか否かを判定する眼判定部と、眼判定部で眼が撮影されていると判定された画像を出力する出力部とを備えたことを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、互いに合焦範囲の異なる、第1の撮影部と第2の撮影部とが互いに略同一の方向を撮影するように配置されているので、被写体の鮮鋭な画像が撮影される合焦範囲が広がることにより、最適な距離に被写体を位置させることが容易で、誘導のために複雑な構成を用いる必要のない眼画像撮影装置を提供できる。
【0011】
また、第1の撮影部および第2の撮影部で撮影された画像の画質を判定し、画質がよいと判定された画像を出力部に出力する画質判定部を備えた構成であってもよい。
【0012】
このような構成によれば、さらに、第1の撮影部および第2の撮影部で撮影された画像のうち、画質がよいと判定された画像を出力することができる。
【0013】
また、第1の撮影部の撮影方向を変換する撮影方向変換部を備えた構成であってもよい。
【0014】
このような構成によれば、さらに、第1の撮影部の撮影方向と第2の撮影部の撮影方向とを異ならせて配置して、撮影方向変換部によって、それらの撮影方向を一致させることの可能な構成を実現できる。
【0015】
さらに、撮影方向変換部は、第2の撮影部の撮影方向上に配置されたハーフミラーを有する構成であってもよい。
【0016】
このような構成によれば、さらに、撮影方向変換部としてハーフミラーを用いた簡易な構成を実現できる。
【0017】
また、第1の撮影部および第2の撮影部のいずれかを撮影させるよう制御する撮影制御部を備えた構成であってもよい。
【0018】
このような構成によれば、さらに、必要に応じて第1の撮影部および第2の撮影部を切り替えて撮影を行うことの可能な構成を実現することができる。
【0019】
また、撮影制御部は、第1の撮影部および第2の撮影部を交互に撮影させる構成であってもよい。
【0020】
このような構成によれば、さらに、交互に撮影を行うことにより、第1の撮影部および第2の撮影部のいずれかで撮影された画像を出力することが可能となり、良好な画像を撮影できる可能性を高くすることができる。
【0021】
また、第2の撮影部は、第1の撮影部よりもより遠方に合焦範囲を有し、第2の撮影部によって撮影された画像の合焦値と所定の閾値との関係を判定する合焦値判定部を備え、撮影制御部は、第2の撮影部によって撮影を開始し、合焦値判定部によって、第2の撮影部によって撮影された画像の合焦値が所定の閾値を越えた後に、所定の閾値未満となるような変化を示したと判定されたときに、第2の撮影部による撮影から第1の撮影部による撮影に切り替える構成であってもよい。
【0022】
このような構成によれば、さらに、より遠くに合焦範囲を有する第2の撮影部から撮影を開始することで被写体をより迅速に撮影することができる可能性を高くすることができるとともに、その合焦値を検知して、その値が閾値を越えた後に、閾値未満となるような変化を示したときには、被写体がより接近したものとしてより近くに合焦範囲を有する第1の撮影部に撮影を行わせることのできる構成を実現することができる。
【0023】
また、第2の撮影部は、第1の撮影部よりもより遠方に合焦範囲を有し、第2の撮影部によって撮影された画像における虹彩径と所定の閾値との関係を判定する虹彩径判定部を備え、撮影制御部は、第2の撮影部によって撮影を開始し、虹彩径判定部によって、第2の撮影部によって撮影された画像における虹彩径が所定の閾値を越えるような変化を示したと判定されたときに、第2の撮影部による撮影から第1の撮影部による撮影に切り替える構成であってもよい。
【0024】
このような構成によれば、さらに、より遠くに合焦範囲を有する第2の撮影部から撮影を開始することで被写体をより迅速に撮影することができる可能性を高くすることができるとともに、その画像から虹彩径を検知して、その値が閾値を越えるような変化を示したときには、被写体がより接近したものとしてより近くに合焦範囲を有する第1の撮影部に撮影を行わせることのできる構成を実現することができる。
【0025】
また、被写体の少なくとも眼を照射する照射部を備えた構成であってもよい。
【0026】
このような構成によれば、さらに、被写体の眼のコントラストのよい画像を撮影することの可能な構成を実現できる。
【0027】
また、被写体の少なくとも眼に光線を照射する照射部と、撮影制御部の撮影制御に同期して、照射部の照射する光量を制御する光量制御部とを備えた構成であってもよい。
【0028】
このような構成によれば、さらに、交互に撮影を行うとともに、そのときに、撮影を行っている撮影部の違いによって、照射部の光量を最適に制御することのできる構成を実現できる。
【0029】
さらに、光量制御部は、第1の撮影部および第2の撮影部のうち、より近接する範囲を合焦範囲とする撮影部が撮影を行っているときに、照射部の照射する光量を弱めるような制御を行う構成であってもよい。
【0030】
このような構成によれば、さらに、より近接する範囲を合焦範囲とする撮影部が撮影を行うときに、光量を弱くするので、低消費電力化を図ることのできる構成を実現できる。
【0031】
また、被写体が所定の距離に近接したか否かを検知する距離検知部を備え、第1の撮影部および第2の撮影部の少なくとも一方の撮影部は、距離検知部が、被写体が所定の距離に近接したことを検知したときに、撮影を開始する構成であってもよい。このような構成によれば、さらに、距離検知部が被写体が所定の距離に近接したことを検知した後に撮影が開始されるので、低消費電力化を図ることができる構成を実現できる。
【0032】
次に、本発明の認証装置は、本発明の眼画像撮影装置と、眼画像撮影装置の出力部から出力された画像を用いて所定の認証処理を行う認証処理部を備えたことを特徴としている。
【0033】
このような構成により、互いに合焦範囲の異なる、第1の撮影部と第2の撮影部とが互いに略同一の方向を撮影するように配置されているので、被写体の鮮鋭な画像が撮影される合焦範囲が広がることにより、最適な距離に被写体を位置させることが容易で、誘導のために複雑な構成を用いる必要のない認証装置を提供することができる。
【0034】
また、認証処理部は、眼画像撮影装置の出力部から出力された画像から、所定の認証情報を作成する認証情報作成部と、あらかじめ登録された登録認証情報と認証情報作成部で作成された認証情報とを比較照合する照合部と、照合部での比較照合の結果、登録認証情報と認証情報作成部で作成された認証情報とが一致すると判定された場合に、被写体があらかじめ登録された者であると認証する認証部とを有する構成であってもよい。
【0035】
このような構成によれば、さらに、画像から作成した認証情報を用いて認証を行うので、画像を直接比較する構成と比較して、少ない情報で正確な認証を行うことの可能な構成を実現できる。
【0036】
さらに、認証情報作成部は、被写体の少なくとも眼を含む画像から、所定の方法で眼の虹彩部分の画像の認証情報を作成し、登録認証情報は、あらかじめ登録された者の眼の虹彩部分の画像から所定の方法で作成された情報である構成であってもよい。
【0037】
このような構成によれば、さらに、眼の虹彩の部分の画像を用いて認証情報を作成して、その認証情報を用いて認証処理を行うので、高精度な認証の可能な構成を実現することができる。
【発明の効果】
【0038】
以上述べたように、本発明によれば、最適な距離に被写体を位置させることが容易で、誘導のために複雑な構成を用いる必要のない眼画像撮影装置および認証装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0040】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態における認証装置1について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態における認証装置1の機能について説明するための図である。図1においては、説明を簡単にするために、認証装置1の主要な構成要素について示している。
【0041】
本発明の第1の実施の形態における認証装置1は、被写体40の眼画像を撮影部によって撮影する眼画像撮影装置であるとともに、その眼画像を用いて虹彩認証処理を行うことにより、本人認証を行うことのできる虹彩認証装置である。
【0042】
本発明の第1の実施の形態における認証装置1は、それぞれが被写体40の反射像を透過する光学系と光像を電気信号として出力する撮像部とを有する、第1の撮影部3および第2の撮影部4の二つの撮影部を備えている。また、第2の撮影部4の光学系の光軸方向は、被写体40の眼80の方向(図1におけるZ軸方向)を向くように配置されており、第1の撮影部3の光学系の光軸方向は、第2の撮影部4の光軸方向と平行な方向(Z軸方向)になるように設けられている。さらに、鏡部41は、第1の撮影部3の光軸方向に対して45°の角度をなして配置され、図1における下方向から上方向に向かう方向(図1におけるY軸方向)の光線を第1の撮影部3の光学系に向けて(−Z軸方向に)反射するように設けられている。また、ハーフミラーである撮影方向変換部42が、鏡部41と平行、かつ第2の撮影部4の撮影光軸方向に対して45°の入射角となるように設けられている。このような構成により、被写体40からの反射光は、撮影方向変換部42によって、約半分の光線が撮影方向変換部42を透過して第2の撮影部4に撮影され、残りの半分の光線は撮影方向変換部42において反射されて、さらには、鏡部41において全反射されて、第1の撮影部3に撮影される。すなわち、本発明の第1の実施の形態における認証装置1では、第1の撮影部3の撮影方向と、第2の撮影部4の撮影方向とは、図1に示したように略一致する。なお、本発明の第1の実施の形態における撮影方向変換部42としては、後述する近赤外領域の光線について、半透過特性を有するハーフミラーを用いることができる。鏡部41としては、後述する近赤外領域の光線について、全反射する鏡を用いることができる。
【0043】
本発明の第1の実施の形態における認証装置1の第1の撮影部3は、図1に示した合焦範囲Aにおいて焦点が合った画像を得ることのできる単焦点の光学系を備えており、第2の撮影部4は、図1における合焦範囲Bにおいて焦点が合った画像を得ることのできる単焦点の光学系を備えている。なお、実用的には、第1の撮影部3の有する光学系および第2の撮影部4の有する光学系としては、それぞれ、略等しい倍率の画像を得ることのできる光学系を用いれば、後述する画像処理を行う際に、リサイズ等の前処理が不要であるので望ましい。
【0044】
図1に示したように、本発明の第1の実施の形態における認証装置1によれば、領域Aを合焦範囲とする第1の撮影部3および領域Bを合焦範囲とする第2の撮影部4をそれぞれ略同軸上を撮影するような構成としたことによって、領域Cに示した広い領域において、被写体40の眼80の画像を撮影することが可能となる。よって、被写体40に対して、距離方向(Z軸方向)に特段複雑な誘導を行うことなく、被写体40に対して、水平方向(X軸方向)および垂直方向(Y軸方向)について、鏡部を有する誘導部51に自らの眼80を映させるという比較的簡易な方法で誘導を行うことにより、被写体の眼画像を撮影することが可能である。
【0045】
次に、本発明の第1の実施の形態における認証装置1の構成について、さらに詳細に説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態における認証装置1の構成を示すブロック図である。
【0046】
図2に示したように、本発明の第1の実施の形態における認証装置1は、被写体40に対して、その眼80を水平方向および垂直方向に、第1の撮影部3および第2の撮影部4の光軸上に配置させるための誘導部51、誘導部51によって誘導された被写体40の眼80を撮影するための前述した鏡部41、撮影方向変換部42、第1の撮影部3および第2の撮影部4、第1の撮影部3および第2の撮影部4から出力された画像を切り替えてキャプチャ処理部14に出力する切替部48、切替部48から出力された画像のうち、認証処理に用いることのできる画像を選択して認証処理部17に送る処理(以下、この処理をキャプチャ処理と記す)を行うキャプチャ処理部14、キャプチャ処理部14でキャプチャ処理された画像を用いて虹彩認証処理を行う認証処理部17、認証処理部17で認証処理された結果、被写体40があらかじめ登録された者であるか否かの出力を行う出力部23、被写体40を照射する第1の光源部27および第2の光源部28、第1の光源部27および第2の光源部28を点滅駆動する光源駆動部13、被写体40までの距離を測定する測距センサ部2、ならびに、測距センサ部2に接続され、キャプチャ処理部14、認証処理部17、切替部48および光源駆動部13それぞれを制御する制御部50を備えている。
【0047】
本発明の第1の実施の形態における認証装置1のキャプチャ処理部14および認証処理部17は、制御部50からの指示により、それぞれの処理を繰り返して行うことが可能である。
【0048】
キャプチャ処理部14は、第1の撮影部3または第2の撮影部4から出力された画像のうち、切替部48によって選択された画像からその画質を判定する画質判定部15、および、画質判定部15で画質がよいと判定された画像の中に眼80があるか否かを検出する眼検出部16を有している。
【0049】
画質判定部15としては、例えば、画像の中から所定の高周波成分を積算して、その高周波成分の量が所定の閾値よりも大きければ、その画像の焦点が合っていると判定する合焦値判定部を用いることができる。他にも、画質判定部15としては、画像の平均輝度を測定して画像が明るすぎたり暗すぎたりしないか等の評価を行う輝度評価部等、各種の画質評価を行う処理ブロックを用いることが可能である。さらに、これらの処理ブロックを組み合わせて用いることも可能である。
【0050】
また、眼検出部16の機能を実現する方法としては、例えば、画像中に、瞳孔や黒目の部分と推定される丸い領域(例えば、丸くて周辺と比較して輝度の低下した領域)が存在するか否かを、画質判定部15から出力された画像と所定の大きさの黒い(輝度の低い)画像とのパターンマッチング処理を行う方法や、瞳孔候補の中心座標を中心として、所定の半径を持つ円の円周上の輝度の積算値を求め、その積算値の半径に対する変化量が所定の閾値以内の場合に、その瞳孔候補が瞳孔であると判定する方法を用いることができる。なお、詳細な説明は省略するが、画質判定部15および眼検出部16それぞれの処理は、ソフトウェアおよびハードウェアのいずれによっても実現することが可能であり、ハードウェア化することにより、約33msの周期でキャプチャ処理を行うことが可能となる。
【0051】
認証処理部17は、キャプチャ処理部14において、画質判定部15で画質がよいと判定され、かつ、眼検出部16で画像の中に瞳孔や黒目の部分が存在すると判定された画像について認証処理を行う。本発明の第1の実施の形態における認証装置1の認証処理部17は、キャプチャ処理部14から出力された画像から虹彩の部分を切り出す虹彩検出部18、虹彩検出部18で切り出された虹彩の部分の画像から、所定の方法で認証処理に用いるべき認証情報を作成する認証情報作成部19、あらかじめ登録された者の登録認証情報を記憶する記憶部21、記憶部21に記憶された登録認証情報と認証情報作成部19によって作成された認証情報とを比較照合する照合部20、および、照合部20での照合結果にもとづいて、被写体40があらかじめ登録された者であるとして認証できるか否かを判定する認証結果判定部22を有する。なお、詳細な説明は省略するが、虹彩検出部18、認証情報作成部19、照合部20および認証結果判定部22それぞれの処理は、ソフトウェアおよびハードウェアのいずれによっても実現することが可能であり、ハードウェア化することにより、約200msの周期で認証処理を行うことが可能となる。
【0052】
ここで、虹彩検出部18における画像から虹彩を検出する方法、認証情報作成部19において虹彩部分の画像から認証情報を作成する方法、照合部20における比較照合の方法、および、認証結果判定部22における認証結果の判定方法については、例えば前述の特許文献1に開示された方法を用いることができる。なお、本発明の認証装置は、認証処理部17における認証処理の方法を上述の方法に限定されるものではない。例えば、認証処理部17において、認証情報を作成せずに、キャプチャ処理部14から送られた画像と記憶部21にあらかじめ記憶された画像とを直接比較して照合を行う方法を用いることも可能である。しかしながら、処理の迅速性や信頼性等に鑑みると、実用的には前述の特許文献1に記載された方法を用いることが望ましい。
【0053】
また、本発明の実施の形態における認証装置1の出力部23としては、例えば、液晶ディスプレイ装置等の公知の表示手段や、音声にて認証結果を被写体40に報知することのできる手段や、さらに、外部に接続されたサーバ装置等に対して信号を送信することのできる手段等、各種の公知の出力手段を用いることが可能である。
【0054】
また、測距センサ部2としては、赤外線を用いて物体までの距離を測定することのできるセンサを用いることができる。本発明の実施の形態においては、20cmから100cmまでの距離の測定が可能なセンサを用い、被写体40が所定の距離(例えば、80cm)以内に近づいた場合に、その旨を示す信号を制御部50に送るものとする。本発明の実施の形態における測距センサ部2は、その発する赤外線の光軸が、第1の撮影部3および第2の撮影部4の撮影光軸の方向と略同じ方向を向くように配置されている。
【0055】
また、第1の撮影部3および第2の撮影部4としては、被写体40の眼80の虹彩部分をコントラストよく撮影するために、それぞれ望遠レンズを搭載し、第1の光源部27または第2の光源部28によって被写体40の眼80に照射された近赤外光(波長約700〜1000nm程度の光線のことをいう)を撮影可能な白黒カメラを用いることができる。本発明の第1の実施の形態においては、水平画角6.8°、最大口径比11.0の固定焦点の望遠レンズ系を搭載し、解像度がVGAのCCDを搭載した白黒カメラを二台用いた。
【0056】
本発明の第1の実施の形態における第1の撮影部3および第2の撮影部4は、そのレンズ面から被写体40の眼80までの望ましい撮像距離Dが350mm±30mmであり、そのときの撮影範囲は、水平41.6mm×垂直31.2mmである。本発明の第1の実施の形態における認証装置1においては、第1の撮影部3および第2の撮影部4の望ましい撮像距離Dが等しいが、実際には図1に示したように、第1の撮影部3の合焦範囲Aと第2の撮影部4の合焦範囲Bとを異ならせることが可能である。これは、例えば、第1の撮影部3については、そのレンズ面から鏡部41までの距離(本実施の形態においては20mm)と鏡部41から撮影方向変換部42を通って筐体までの距離(本実施の形態では50mm)とを差し引いた距離(本実施の形態においては280mm±30mm)が合焦範囲Aとなるからである。また、第2の撮影部4については、そのレンズ面から撮影方向変換部42を通って筐体までの距離(本実施の形態においては20mm)を差し引いた距離(本実施の形態においては330mm±30mm)が合焦範囲Bとなる。
【0057】
よって、本発明の第1の実施の形態における認証装置1においては、同じ仕様の撮影部を二つ用いることで、より広い範囲C(本実施の形態においては、250mmから360mmまで)で焦点の合った画像を撮影することが可能となる。
【0058】
また、本発明の第1の実施の形態における認証装置1は、虹彩認証装置であり、被写体40の眼80の虹彩の模様を鮮明に撮影する必要がある。そこで、本発明の第1の実施の形態における認証装置1の第1の光源部27および第2の光源部28としては、被写体40の眼80付近を照射するように配置された、近赤外光を照射する光源を用いた。
【0059】
これらの光源部は、制御部50から制御された光源駆動部13によって、第1の撮影部3が撮影を行っているときには、第1の光源部27が点灯し、第2の撮影部4が撮影を行っているときには、第2の光源部28が点灯するように駆動される。また、合焦範囲がより近接する第1の撮影部3によって撮影が行われているときに点灯する第1の光源部27から発生される光量が、第2の光源部28が発生する光量よりも小さくなるように調整されている。このような構成とすることにより、本発明の第1の実施の形態における認証装置1によれば、より近い範囲に合焦する第1の撮影部3が撮影を行っているときには少ない光量で撮影を行い、より遠い範囲に合焦する第2の撮影部4が撮影を行っているときには、より多くの光量で撮影を行い、撮影される画像の明るさを比較的均一にすることができる。よって、後述する画像処理を行う際に、コントラスト調整等の前処理を省くことができるとともに、常に第2の光源部28によって被写体40を照射する構成と比較して、低消費電力化を図ることができる。なお、第1の光源部27および第2の光源部28の光量の調整は、例えば、光源駆動部13から第1の光源部27または第2の光源部28に印加される電圧の調整や電圧を印加するときのパルス幅の調整等によって行うことが可能である。
【0060】
本発明の第1の実施の形態における認証装置1の誘導部51の構成について説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態における認証装置1の誘導部51の構成について説明するための図である。
【0061】
図3(a)に示したように、本発明の第1の実施の形態における認証装置1は、誘導部51として、いわゆる可視光を反射して、赤外光を透過するコールドミラーを用いることが可能である。誘導部51として、コールドミラーを用いることにより、図3(b)に示したように、被写体40は、自らの眼80が誘導部51上に映るような位置に移動することにより、自らの眼80を水平方向および垂直方向に最適な位置に移動させることができる。このとき、自らの眼80の黒目の部分が映るような位置に、円形状のマーク部52を付しておくことにより、さらに、水平方向(X軸方向)および垂直方向(Y軸方向)に、より正確な位置あわせが可能となる。なお、マーク部52を設けるか否かは任意である。
【0062】
なお、本発明の第1の実施の形態における認証装置1の誘導部51を用いた場合においては、被写体40と認証装置1との間の距離(Z方向)を最適な位置に誘導することは難しいが、本発明の第1の実施の形態における認証装置1によれば、第1の撮影部3と第2の撮影部4とを有することにより、より広い合焦範囲を実現することができるので、距離方向の誘導を行う必要性を著しく低くすることが可能となる。
【0063】
ここで、本発明の第1の実施の形態における認証装置1の動作について詳細に説明する。図4は、本発明の第1の実施の形態における認証装置1の動作ステップを示すフローチャートである。
【0064】
まず、本発明の第1の実施の形態の認証装置1においては、制御部50が、測距センサ部2を起動させ、測距センサ部2は、被写体40が所定の距離範囲内に入ったか否かの検知を開始する(S1)。
【0065】
測距センサ部2は、被写体40が所定の距離範囲内に入るまで、検知を続行し(S2)、被写体40が所定の距離範囲内に入った場合には、その旨を制御部50に通知し、制御部50は、切替部48に命じて、より遠くに合焦範囲を有する第2の撮影部4に撮影を開始させる(S3)。ここで、第2の撮影部4に撮影を開始させる理由は、一般的に、被写体40は、遠くから近くに移動してくることが多いので、より遠くに合焦範囲を有する第2の撮影部4から撮影を行ったほうが、第1の撮影部3から撮影を行う場合と比較して、被写体40の画像がキャプチャされる可能性が高いからである。なお、このとき、制御部50は、光源駆動部13に指示して、第2の光源部28を点灯させる。
【0066】
第2の撮影部4で撮影された画像は、切替部48を通じてキャプチャ処理部14に送られて、前述のキャプチャ処理がなされる(S4)。
【0067】
キャプチャ処理部14において、画質がよく、かつ、眼80が映っていると判定された画像が得られた(キャプチャされた)場合には、ステップS9に進み、キャプチャされなかった場合には、制御部50は、第2の光源部28を消灯させた後に、切替部48に命じて、第2の撮影部4からの出力を停止させて第1の撮影部3からの出力を開始させるとともに、第1の光源部27を点灯させる(S6)。
【0068】
第1の撮影部3で撮影された画像は、切替部48を通じてキャプチャ処理部14に送られて、前述のキャプチャ処理がなされる(S7)。
【0069】
キャプチャ処理部14において、画質がよく、かつ、眼80が映っていると判定された画像が得られた(キャプチャされた)場合には、ステップS9に進み、キャプチャされなかった場合には、制御部50は、切替部48に命じて、第1の撮影部3からの出力を終了させ、第1の光源部27を消灯した後に、ステップS3に戻って、第2の撮影部4からの出力を開始する(S8)。
【0070】
図4のステップS8においてキャプチャされた画像は、認証処理部17に送られて、前述の認証処理が行われる(S9)。
【0071】
その結果、被写体40があらかじめ登録された者であると認証された場合には、ステップS11に進んで、その結果を出力部23から出力して処理を終了し(S11)、一方、被写体40があらかじめ登録された者ではないとして、認証できない場合には、その旨を出力部23から出力して処理を終了するか、または、ステップS3に戻って、再度眼画像の撮影を行う(S10)。
【0072】
このように、本発明の第1の実施の形態における認証装置1によれば、被写体40の眼画像を撮影することができるとともに、その眼画像を用いて虹彩認証方法を用いた本人認証を行うことができる。
【0073】
以上述べたように、本発明の第1の実施の形態における認証装置1によれば、互いに合焦範囲の異なる第1の撮影部3および第2の撮影部4を、撮影光軸が略一致するように配置して被写体40の眼80の撮影を行うので、合焦範囲を広く取ることができ、被写体40に対して複雑な距離方向の誘導を行うことなく、自然に眼画像の撮影が可能な構成を実現することができる。
【0074】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態における認証装置101の構成について説明する。図5は、本発明の第2の実施の形態における認証装置101の構成を示すブロック図である。
【0075】
図5に示したように、本発明の第2の実施の形態における認証装置101の構成が本発明の第1の実施の形態における認証装置1の構成と異なるところは、キャプチャ処理部14の画質判定部15の出力である合焦値を所定の閾値と比較してその結果を判定する合焦値判定部44を備えたところである。合焦値判定部44も制御部50によって制御されているものとする。他の構成要素については、本発明の第1の実施の形態における認証装置1の構成と同様であるので、同様の構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0076】
本発明の第2の実施の形態においては、画質判定部15の画質判定方法として、前述の方法のうち、画像の中から所定の高周波成分を積算して、その高周波成分の量が所定の閾値よりも大きければ、その画像の焦点が合っていると判定する方法を用いるものとする。そして、画質判定部15から合焦値判定部44に対しては、画像の中から所定の高周波成分を積算した合焦度を示す値(合焦値)が画像毎に出力され、合焦値判定部44においては、その合焦値を用いて後述のような判定処理を行う。
【0077】
ここで、本発明の第2の実施の形態における認証装置101の動作について説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態における認証装置101の動作について説明するためのフローチャートである。
【0078】
まず、本発明の第2の実施の形態の認証装置101においては、制御部50が、測距センサ部2を起動させ、測距センサ部2は、被写体40が所定の距離範囲内に入ったか否かの検知を開始する(S21)。
【0079】
測距センサ部2は、被写体40が所定の距離範囲内に入るまで、検知を続行し(S22)、被写体40が所定の距離範囲内に入った場合には、その旨を制御部50に通知し、制御部50は、切替部48に命じて、より遠くに合焦範囲を有する第2の撮影部4に撮影を開始させる(S23)。ここで、第2の撮影部4に撮影を開始させる理由は、一般的に、被写体40は、遠くから近くに移動してくることが多いので、より遠くに合焦範囲を有する第2の撮影部4から撮影を行ったほうが、第1の撮影部3から撮影を行う場合と比較して、被写体40の画像がキャプチャされる可能性が高いからである。なお、このとき、制御部50は、光源駆動部13に指示して、第2の光源部28を点灯させる。
【0080】
第2の撮影部4で撮影された画像は、切替部48を通じてキャプチャ処理部14に送られて、前述のキャプチャ処理がなされる(S24)。
【0081】
キャプチャ処理部14において、画質がよく、かつ、眼80が映っていると判定された画像が得られた(キャプチャされた)場合には、ステップS31に進み、キャプチャされなかった場合には、制御部50は、合焦値判定部44に画質判定部15で算出された合焦値を読み出させ、以下のような判定を行わせる(S26)。
【0082】
ここで、本発明の第2の実施の形態における認証装置101の合焦値判定部44の処理について説明する。図7は、本発明の第2の実施の形態における認証装置101の合焦値判定部44の処理について説明するための図である。図7には、横軸に認証装置101から被写体40までの距離をとり、縦軸にそのときの画質判定部15で算出される合焦値をとったときの、第2の撮影部4によって撮影された画像から算出された合焦値の変化81と第1の撮影部3によって撮影された画像から算出された合焦値の変化82を概念的に示している。このような関係がある場合において、被写体が、認証装置101に対して、遠くから近くに移動してくるもの、すなわち、図7における矢印D1の方向に移動してくるものとする。このとき、第2の撮影部4によって撮影された画像に対するキャプチャ処理が行われており、第2の撮影部4によって撮影された画像の合焦値は図7における右側から左側に向けて変化する。すなわち、合焦値は、一端増加した後に、減少することとなる。
【0083】
本発明の第2の実施の形態における認証装置101における合焦値判定部44は、この変化を判定する。すなわち、画質判定部15で算出された合焦値が、増加して、所定の閾値Fthを越えた後に、再度所定の閾値Fth未満となった場合に、被写体40が第2の撮影部4の合焦範囲Bよりも接近したものとして、制御部50は、撮影部を第2の撮影部4からより合焦範囲Aの接近した第1の撮影部3に切り替えさせるような指示を切替部48に対して行う。なお、所定の閾値Fthは、通常、画質判定部15において画質の良否判定に用いられる閾値を用いることが可能である。このような処理を行うことにより、被写体40が接近している場合に、第2の撮影部4の合焦範囲Bに存在している間には、眼が閉じられていたり、充分に見開かれていなかったりといった要因によって良好な眼画像がキャプチャされないような場合にも、より合焦範囲Aの近接した第1の撮影部3に撮影を切り替えてキャプチャ処理を行うことにより、第1の撮影部3の合焦範囲Aに存在している間に良好な眼画像を撮影することのできる可能性を高くすることができる。
【0084】
図6に戻って、画質判定部15で算出された合焦値が、増加して、所定の閾値Fthを越えた後に、再度所定の閾値Fth未満となったと合焦値判定部44によって判定された場合(S27)には、制御部50は切替部48に対して、第2の撮影部4で撮影された画像から第1の撮影部3で撮影された画像に出力を切り替えさせる(S28)。
【0085】
一方、ステップS27において、それ以外の場合、すなわち、画質判定部15で算出された合焦値が、増加して、所定の閾値Fthを越えた後に、再度所定の閾値Fth未満となったものではないと合焦値判定部44によって判定された場合(S27)には、被写体40が第2の撮影部4の合焦範囲Bに位置するものとして、ステップS23に戻り、制御部50は、再度、キャプチャ処理部14にキャプチャ処理を続行させる(S27)。
【0086】
ステップS28においては、制御部50が、光源駆動部13に命じて、第2の光源部28を消灯させた後に、切替部48に命じて、第2の撮影部4からの出力を停止させて第1の撮影部3からの出力を開始させるとともに、第1の光源部27を点灯させる(S28)。
【0087】
第1の撮影部3で撮影された画像は、切替部48を通じてキャプチャ処理部14に送られて、前述のキャプチャ処理がなされる(S29)。
【0088】
キャプチャ処理部14において、画質がよく、かつ、眼80が映っていると判定された画像が得られた(キャプチャされた)場合には、ステップS31に進み、キャプチャされなかった場合には、ステップS28に戻って第1の撮影部3によって撮影された画像のキャプチャ処理が行われる(S30)。
【0089】
図6のステップS30においてキャプチャされた画像は、認証処理部17に送られて、前述の認証処理が行われる(S31)。
【0090】
その結果、被写体40があらかじめ登録された者であると認証された場合には、ステップS33に進んで、その結果を出力部23から出力して処理を終了し(S33)、一方、被写体40があらかじめ登録された者ではないとして、認証できない場合には、その旨を出力部23から出力して処理を終了するか、または、ステップS23に戻って、再度眼画像の撮影を行う(S32)。
【0091】
このように、本発明の第2の実施の形態における認証装置1によれば、遠くから近づいてくる被写体40に対して、その眼画像を確実に撮影することができるとともに、その眼画像を用いて虹彩認証方法を用いた本人認証を行うことができる。
【0092】
以上述べたように、本発明の第2の実施の形態における認証装置101によっても、互いに合焦範囲の異なる第1の撮影部3および第2の撮影部4を、撮影光軸が略一致するように配置して被写体40の眼80の撮影を行うので、合焦範囲を広く取ることができ、被写体40に対して複雑な距離方向の誘導を行うことなく、自然に眼画像の撮影が可能な構成を実現することができる。
【0093】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態における認証装置201の構成について説明する。図8は、本発明の第3の実施の形態における認証装置201の構成を示すブロック図である。
【0094】
図8に示したように、本発明の第3の実施の形態における認証装置201の構成が本発明の第1の実施の形態における認証装置1の構成と異なるところは、キャプチャ処理部14の眼検出部16の出力である虹彩径の値を所定の閾値と比較してその結果を判定する虹彩径判定部45を備えるところである。虹彩径判定部45も制御部50によって制御されているものとする。他の構成要素については、本発明の第1の実施の形態における認証装置1の構成と同様であるので、同様の構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0095】
本発明の第3の実施の形態においては、眼検出部16において、画像中から眼の虹彩に相当する部分画像が検出され、出力されるものとし、虹彩径判定部45は、その虹彩に相当する部分から虹彩径を算出して、後述のように閾値とを比較してその結果を制御部50に出力する。
【0096】
ここで、本発明の第3の実施の形態における認証装置201の動作について説明する。図9は、本発明の第3の実施の形態における認証装置201の動作について説明するためのフローチャートである。
【0097】
なお、図9に示したフローチャートにおいて、図6に示した本発明の第2の実施の形態における認証装置101の動作を示すフローチャートと、同様の処理ステップの部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0098】
図9に示した本発明の第3の実施の形態における認証装置201の動作ステップと、図6に示した本発明の第2の実施の形態における認証装置101の動作ステップと異なるところは、ステップS26およびステップS27が、それぞれ、ステップS36の虹彩径算出ステップとステップS37の閾値判定ステップとに置換されているところである。
【0099】
図9のステップS24、S25において、キャプチャ処理部14で、画質がよく、かつ、眼80が映っていると判定された画像が得られた(キャプチャされた)場合には、ステップS31に進み、キャプチャされなかった場合には、制御部50は、虹彩径判定部45に眼検出部16で検出された虹彩径を算出させ、以下のような判定を行わせる(S36)。
【0100】
ここで、本発明の第3の実施の形態における認証装置201の虹彩径判定部45の処理について説明する。図10は、本発明の第3の実施の形態における認証装置201の虹彩径判定部45の処理について説明するための図である。図10には、横軸に認証装置201から被写体40までの距離をとり、縦軸にそのときの眼検出部16で検出される虹彩径の値をとったときの、第2の撮影部4によって撮影された画像から算出された虹彩径の変化91と第1の撮影部3によって撮影された画像から算出された虹彩径の変化92を概念的に示している。このような関係がある場合において、被写体40が、認証装置201に対して、遠くから近くに移動してくるもの、すなわち、図10における矢印D2の方向に移動してくるものとする。このとき、第2の撮影部4によって撮影された画像に対するキャプチャ処理が行われており、第2の撮影部4によって撮影された画像から算出された虹彩径は図10における右側から左側に向けて変化する。すなわち、虹彩径は、被写体40が接近するにしたがって増加することとなる。
【0101】
本発明の第3の実施の形態における認証装置201の虹彩径判定部45は、この変化を判定する。すなわち、眼検出部16で算出された虹彩径の値が、増加して、所定の閾値Rth以上となった場合に、被写体40が第2の撮影部4の合焦範囲Bよりも接近したものとして、制御部50は、撮影部を第2の撮影部4からより合焦範囲Aの接近した第1の撮影部3に切り替えさせるような指示を切替部48に対して行う。なお、所定の閾値Rthは、第2の撮影部4の合焦範囲Bであってもっとも近い位置(本発明の実施の形態においては、300mm)における虹彩径の値を用いることができる。このような処理を行うことにより、被写体40が接近している場合に、第2の撮影部4の合焦範囲Bに存在している間には、被写体40が眼鏡を着用していることにより光源部の反射光が虹彩上に映り込んでしまう等の悪影響によって、良好な眼画像がキャプチャされないような場合にも、より合焦範囲Aの近接した第1の撮影部3に撮影を切り替えてキャプチャ処理を行うことにより、第1の撮影部3の合焦範囲Aに存在している間に良好な眼画像を撮影することのできる可能性を高くすることができる。なお、被写体40が認証装置201に接近した場合には、光源部と被写体40がなす角度が大きくなるので、眼鏡における反射光の位置が外側に移動し、反射光が虹彩上に撮影される可能性を低減させることができる。
【0102】
図9に戻って、眼検出部16で検出された虹彩径の値が、増加して所定の閾値Rthを越えたと虹彩径判定部45によって判定された場合(S37)には、制御部50は切替部48に対して、第2の撮影部4からの画像から第1の撮影部3からの画像に出力を切り替えさせる(S28)。
【0103】
一方、ステップS37において、それ以外の場合、すなわち、眼検出部16で検出された虹彩径の値が増加して、所定の閾値Rthを越えたものではないと虹彩径判定部45によって判定された場合には、被写体40が第2の撮影部4の合焦範囲Bに位置するものとして、ステップS23に戻り、制御部50は、再度、キャプチャ処理部14にキャプチャ処理を続行させることは、本発明の第2の実施の形態における認証装置1と同様である。
【0104】
このように、本発明の第3の実施の形態における認証装置201によっても、遠くから近づいてくる被写体40に対して、その眼画像を確実に撮影することができるとともに、その眼画像を用いて虹彩認証方法を用いた本人認証を行うことができる。
【0105】
以上述べたように、本発明の第3の実施の形態における認証装置201によっても、互いに合焦範囲の異なる第1の撮影部3および第2の撮影部4を、撮影光軸が略一致するように配置して被写体40の眼80の撮影を行うので、合焦範囲を広く取ることができ、被写体40に対して複雑な距離方向の誘導を行うことなく、自然に眼画像の撮影が可能な構成を実現することができる。
【0106】
なお、本発明の第3の実施の形態においては、虹彩径判定部45が眼検出部16で検出された虹彩径(直径または半径)を所定の閾値Rthと比較する構成を用いて説明を行ったが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、眼検出部16が瞳孔を検出する場合には、虹彩径判定部45は、眼検出部16で検出された瞳孔の直径または半径を算出して、所定の閾値と比較する構成であってもよい。
【0107】
なお、本発明の実施の形態においては、認証装置1,101,201が認証処理部17の処理方法として、虹彩認証方法を用いて本人認証を行う例を挙げて説明を行ったが、本発明の認証装置は、虹彩認証装置に限定されるものではない。例えば、被認証者が自らの顔を用いて認証を行うような認証装置、例えば、顔認証や網膜認証等にも適用可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上述べたように、本発明によれば、最適な距離に被写体を位置させることが容易で、誘導のために複雑な構成を用いる必要のない眼画像撮影装置および認証装置を提供することができるという優れた効果を有するので、被認証者の少なくとも眼を含む画像を撮影する眼画像撮影装置およびそれを用いた認証装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の第1の実施の形態における認証装置の機能について説明するための図
【図2】本発明の第1の実施の形態における認証装置の構成を示すブロック図
【図3】本発明の第1の実施の形態における認証装置の誘導部の構成について説明するための図
【図4】本発明の第1の実施の形態における認証装置の動作ステップを示すフローチャート
【図5】本発明の第2の実施の形態における認証装置の構成を示すブロック図
【図6】本発明の第2の実施の形態における認証装置の動作について説明するためのフローチャート
【図7】本発明の第2の実施の形態における認証装置の合焦値判定部の処理について説明するための図
【図8】本発明の第3の実施の形態における認証装置の構成を示すブロック図
【図9】本発明の第3の実施の形態における認証装置の動作について説明するためのフローチャート
【図10】本発明の第3の実施の形態における認証装置の虹彩径判定部の処理について説明するための図
【符号の説明】
【0110】
1,101,201 認証装置
2 測距センサ部
3 第1の撮影部
4 第2の撮影部
13 光源駆動部
14 キャプチャ処理部
15 画質判定部
16 眼検出部
17 認証処理部
18 虹彩検出部
19 認証情報作成部
20 照合部
21 記憶部
22 認証結果判定部
23 出力部
27 第1の光源部
28 第2の光源部
40 被写体
41 鏡部
42 撮影方向変換部
44 合焦値判定部
45 虹彩径判定部
48 切替部
50 制御部
51 誘導部
52 マーク部
80 眼
81,82 合焦値の変化
91,92 虹彩径の変化

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも被写体の眼を撮影する第1の撮影部と、
前記第1の撮影部と合焦範囲が異なり、かつ、前記第1の撮影部の撮影方向と略同一の方向を撮影するように配置された第2の撮影部と、
前記第1の撮影部および前記第2の撮影部で撮影された画像に、眼が撮影されているか否かを判定する眼判定部と、
前記眼判定部で眼が撮影されていると判定された画像を出力する出力部とを備えたことを特徴とする眼画像撮影装置。
【請求項2】
前記第1の撮影部および前記第2の撮影部で撮影された画像の画質を判定し、画質がよいと判定された画像を前記出力部に出力する画質判定部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の眼画像撮影装置。
【請求項3】
前記第1の撮影部の撮影方向を変換する撮影方向変換部を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の眼画像撮影装置。
【請求項4】
前記撮影方向変換部は、前記第2の撮影部の撮影方向上に配置されたハーフミラーを有することを特徴とする請求項3に記載の眼画像撮影装置。
【請求項5】
前記第1の撮影部および前記第2の撮影部のいずれかを撮影させるよう制御する撮影制御部を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の眼画像撮影装置。
【請求項6】
前記撮影制御部は、前記第1の撮影部および前記第2の撮影部を交互に撮影させることを特徴とする請求項5に記載の眼画像撮影装置。
【請求項7】
前記第2の撮影部は、前記第1の撮影部よりもより遠方に合焦範囲を有し、
前記第2の撮影部によって撮影された画像の合焦値と所定の閾値との関係を判定する合焦値判定部を備え、
前記撮影制御部は、前記第2の撮影部によって撮影を開始し、前記合焦値判定部によって、前記第2の撮影部によって撮影された画像の合焦値が前記所定の閾値を越えた後に、前記所定の閾値未満となるような変化を示したと判定されたときに、前記第2の撮影部による撮影から前記第1の撮影部による撮影に切り替えることを特徴とする請求項5に記載の眼画像撮影装置。
【請求項8】
前記第2の撮影部は、前記第1の撮影部よりもより遠方に合焦範囲を有し、
前記第2の撮影部によって撮影された画像における虹彩径と所定の閾値との関係を判定する虹彩径判定部を備え、
前記撮影制御部は、前記第2の撮影部によって撮影を開始し、前記虹彩径判定部によって、前記第2の撮影部によって撮影された画像における虹彩径が前記所定の閾値を越えるような変化を示したと判定されたときに、前記第2の撮影部による撮影から前記第1の撮影部による撮影に切り替えることを特徴とする請求項5に記載の眼画像撮影装置。
【請求項9】
前記被写体の少なくとも眼を照射する照射部を備えたことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の眼画像撮影装置。
【請求項10】
前記被写体の少なくとも眼に光線を照射する照射部と、
前記撮影制御部の撮影制御に同期して、前記照射部の照射する光量を制御する光量制御部とを備えたことを特徴とする請求項5から請求項8までのいずれか1項に記載の眼画像撮影装置。
【請求項11】
前記光量制御部は、前記第1の撮影部および前記第2の撮影部のうち、より近接する範囲を合焦範囲とする撮影部が撮影を行っているときに、前記照射部の照射する光量を弱めるような制御を行うことを特徴とする請求項10に記載の眼画像撮影装置。
【請求項12】
前記被写体が所定の距離に近接したか否かを検知する距離検知部を備え、
前記第1の撮影部および前記第2の撮影部の少なくとも一方の撮影部は、前記距離検知部が、前記被写体が所定の距離に近接したことを検知したときに、撮影を開始することを特徴とする請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の眼画像撮影装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の眼画像撮影装置と、
前記眼画像撮影装置の前記出力部から出力された画像を用いて所定の認証処理を行う認証処理部を備えたことを特徴とする認証装置。
【請求項14】
前記認証処理部は、
前記眼画像撮影装置の前記出力部から出力された画像から、所定の認証情報を作成する認証情報作成部と、
あらかじめ登録された登録認証情報と前記認証情報作成部で作成された認証情報とを比較照合する照合部と、
前記照合部での比較照合の結果、前記登録認証情報と前記認証情報作成部で作成された認証情報とが一致すると判定された場合に、前記被写体があらかじめ登録された者であると認証する認証部とを有することを特徴とする請求項13に記載の認証装置。
【請求項15】
前記認証情報作成部は、前記被写体の少なくとも眼を含む画像から、所定の方法で眼の虹彩部分の画像の認証情報を作成し、
前記登録認証情報は、あらかじめ登録された者の眼の虹彩部分の画像から前記所定の方法で作成された情報であることを特徴とする請求項14に記載の認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−338236(P2006−338236A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160978(P2005−160978)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】