説明

着色感光性樹脂組成物、カラーフィルタ及びこれを備える液晶表示装置

【課題】高濃度の着色材料を含有し画素を形成する場合にも基板上に現像残渣が生じたり画素部に表面不良などが発生せず、感度に優れた高品質のカラーフィルタを提供する。
【解決手段】結合剤樹脂A、光重合性化合物B、光重合開始剤C、着色材料D及び溶剤Eを含有する着色感光性樹脂組成物であって、前記結合剤樹脂Aは、化合物A1、A2及びA3を共重合して得られる共重合体。化合物A1:以下に示す一般式を備える化合物。


化合物A2:化合物A1及び化合物A3と共重合の可能な不飽和結合を有する化合物、化合物A3:不飽和カルボン酸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は着色感光性樹脂組成物、カラーフィルタ及びこれを備える液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタは、撮像素子、液晶表示装置(LCD)などに広く利用されているもので、その応用範囲が急速に拡大しつつある。カラー液晶表示装置や撮像素子などに使われるカラーフィルタは、通常ブラックマトリックスがパターン形成された基板上に赤色、緑色及び青色の各色に相当する顔料を含有する着色感光性樹脂組成物をスピンコートにより均一に塗布した後、加熱乾燥(以下、予備焼成とも言うこともある)して形成された塗膜を露光、現像し、必要に応じてさらに加熱硬化(以下、後焼成と言うこともある)する操作を色毎に反復して各色の画素を形成することによって製造されている。このような着色感光性樹脂組成物を用いたカラーフィルタは画像形成時高解像性、基板との優れた密着性、低い現像残渣などが求められている。また、最近は色濃度の高い画素が求められており、着色感光性樹脂組成物に使われる顔料及びカーボンブラックの含有が高まっている。
【0003】
一方、前述したように着色剤の含量が高い着色感光性樹脂組成物を用いて画素を形成する時は現像工程時未露光部の基板上に現像残渣が生じたり、未露光部が完全溶解タイプではなく剥離タイプに現像されることによって、現像液フィルタを詰まらせたり、工程中に溶解されず残されている不純物が画素及び非画素部の基板にくっついてしまう問題点を抱えている。また、露光部に形成される画素の感度も不十分なことから、塗膜の表面不良が発生したり、膜硬度が足りない問題点がある。
【0004】
上記課題を改善するため、特許文献1や特許文献2では、硬化性樹脂構造にテトラヒドロピラン基を含んだりN−置換マレイミド基を導入した高Tg(ガラス転移温度)の硬化性樹脂を使用しているが、これによって透明性や耐熱黄変性能は向上するものの、高温工程では側鎖に含まれる置換基が分解することに変わりがなく、低Tgの硬化性樹脂で発生するのと同様のアウトガスが発生して、残像の原因となる問題点を抱えている。また、硬化性樹脂組成の疎水性が高い場合、同等の酸価では、極めて現像性が劣化するという問題点を抱えている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−300204号公報
【特許文献2】特開平10−300922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前述した従来の問題点を解決するために案出されたもので、その目的は高濃度着色材料を含有しても現像性に優れた着色感光性樹脂組成物を提供するところにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、前述した着色感光性樹脂組成物を用いることによって、画素を形成する際、画素部に表面不良などが発生せず、感度に優れた高品質のカラーフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための本発明は、結合剤樹脂A、光重合性化合物B、光重合開始剤C、着色材料D及び溶剤Eを含有する着色感光性樹脂組成物であって、前記結合剤樹脂Aは、下記化合物A1〜化合物A3を共重合して得られる共重合体であることを特徴とする着色感光性樹脂組成物を提供する。
【0009】
化合物A1: 下記化3の一般式で表される化合物である。そして、この化3で示す化合物は、Rは水素またはメチル基であり、Rは置換または 非置換の2価C〜Cのアルキル基またはアルケニル基であり、Aは置換または非置換のベンゼン基、シクロヘキシル基、C〜Cのアルキル基またはアルケニル基であり、この際、R及びAの置換体は独立にフッ素、塩素、ブロム、ヨード、C〜Cのアルキル基、C〜Cのパーハロゲン化アルキル基、ヒドロキシ基、C〜Cのケトン基、C〜Cのエステル基、N,N−(C〜C)アルキル置換されたアミド基またはこれら置換基の1種以上を含む調合物である。
【0010】
【化3】

【0011】
化合物A2: 化合物A2は、化合物A1及び化合物A3と共重合の可能な不飽和結合を有する化合物である。
【0012】
化合物A3: 化合物A3は、不飽和カルボン酸である。
【0013】
また、本件発明に係る着色感光性樹脂組成物に用いる前記化合物A1は、以下の化4で表される一般式の化合物のうちから選択した一以上の化合物を用いることも好ましい。この化4において、Rは水素またはメチル基であり、Rは置換または非置換の2価C〜Cのアルキル基またはアルケニル基であり、この際、Rの置換体は独立にフッ素、塩素、ブロム、ヨード、C〜Cのアルキル基、C〜Cのパーハロゲン化アルキル基、ヒドロキシ基、C〜Cのケトン基、C〜Cのエステル基、N,N−(C〜C)アルキル置換されたアミド基またはこれら置換基の1種以上を含む調合物である。
【0014】
【化4】

【0015】
また、前記結合剤樹脂Aは、前記共重合体に、不飽和結合とエポキシ基を1分子中に有する化合物A4をさらに反応させて得られる不飽和基含有樹脂であることを特徴とする着色感光性樹脂組成物を提供する。
【0016】
また、前記化合物A1及び化合物A3と共重合の可能な不飽和結合を有する化合物A2は、芳香族ビニル化合物またはN−置換マレイミドであることを特徴とする着色感光性樹脂組成物を提供する。
【0017】
前記結合剤樹脂Aの構成成分の合計モル数に対する前記化合物A1、化合物A2及び化合物A3のそれぞれから誘導される構成成分の比率は、化合物A1から誘導される構成単位は2〜50モル%であり、化合物A2から誘導される構成単位は2〜50モル%であり、化合物A3から誘導される構成単位は2〜70モル%であることを特徴とする着色感光性樹脂組成物を提供する。
【0018】
また、前記化合物A4から誘導される構成成分の比率は、前記結合剤樹脂A内の(化合物A3)から誘導される構成成分のモル数に対して5〜80モル%であることを特徴とする着色感光性樹脂組成物を提供する。
【0019】
また、本発明は基板の上部に着色感光性樹脂組成物を塗布し、所定パターンに露光、現像して形成されるカラー層を含んでなるカラーフィルタにおいて、前記着色感光性樹脂組成物は前述した着色感光性樹脂組成物であることを特徴とするカラーフィルタを提供する。
【0020】
本発明は前述したカラーフィルタを備えた液晶表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高濃度着色材料を含有しても現像性に優れた着色感光性樹脂組成物を提供することができる。また、前記着色感光性樹脂組成物を用いて画素を形成する際、画素部に表面不良などが発生せず、感度に優れた着色感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を詳述する。本発明は結合剤樹脂A、光重合性化合物B、光重合開始剤C、着色材料D及び溶剤Eを含有する着色感光性樹脂組成物であって、前記結合剤樹脂Aは、下記化合物A1、化合物A2及び化合物A3を共重合して得られる共重合体であることを特徴とする着色感光性樹脂組成物に関する。特に制限されないが、前記着色感光性樹脂組成物に含まれる溶剤Eには、任意にその他の添加剤Fが溶解または分散されていることが好ましい。以下、結合剤樹脂A、光重合性化合物B、光重合開始剤C、着色材料D及び溶剤Eの順に述べる。
【0023】
結合剤樹脂A: 前記結合剤樹脂Aは、通常、光や熱の作用による反応性及びアルカリ溶解性を有し、着色材料の分散媒として働く。本件発明において、結合剤樹脂Aは、化合物A1、化合物A2及び化合物A3の重合(これは共重合も含む概念である)で得られうる構成単位を含む共重合体であり、本件発明における大きな特徴部である。
【0024】
本発明に係る結合剤樹脂Aは、前記化合物A1、化合物A2及び化合物A3の重合(これは共重合も含む概念である)で得られうる構成単位を含む共重合体であることを特徴とする。前記結合剤樹脂Aは、前記単量体以外も別の単量体を追加して共に重合可能である。すなわち、前記化合物A1〜化合物A3以外の単量体がさらに含まれて共重合される場合にも本発明に含まれる。以下、化合物A1、化合物A2及び化合物A3を順に述べる。
【0025】
[化合物A1]
この化合物A1は、以下の化5の一般式で表される化合物である。この化5において、Rは水素またはメチル基であり、Rは置換または非置換の2価C〜Cのアルキル基またはアルケニル基であり、Aは置換または非置換のベンゼン基、シクロヘキシル基、C〜Cのアルキル基またはアルケニル基であり、この際、R及びAの置換体は独立にフッ素、塩素、ブロム、ヨード、C〜Cのアルキル基、C〜Cのパーハロゲン化アルキル基、ヒドロキシ基、C〜Cのケトン基、C〜Cのエステル基、N,N−(C〜C)アルキル置換されたアミド基またはこれらの置換基の1種以上を含む調合物である。
【0026】
【化5】

【0027】
本発明の実施形態において、前記化5(=化1)で表される化合物A1の具体的な例を下記化6〜化9に示す。
【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

【0031】
【化9】

【0032】
前記化合物A1のさらに具体的な例としては、2−フェニルチオエチル(メタ)アクリレート、ヘキシルチオエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
特に、前記化学式1で表される化合物A1は、下記化10で表される化合物のうち少なくとも一つ以上が選択されるのがより好ましい。下記化10の化合物を用いて画素を形成する際、現像性及び表面現像がさらに優れるからである。この化10において、R、Rは、化1において説明したアルキル基と同じである
【0034】
【化10】

【0035】
さらに具体的な例としては、2−フェニルチオエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
[化合物A2]
この化合物A2は、化合物A1及び化合物A3と共重合の可能な不飽和結合を有する化合物を用いる。本発明における化合物A2としては、芳香族ビニル化合物、N−置換マレイミド系化合物、不飽和カルボン酸の非置換または置換アルキルエステル、脂環式置換基を含む不飽和カルボン酸エステル化合物、カルボン酸ビニルエステル系、オキセタン基を含む不飽和オキセタニル系などが挙げられる。前記化合物のうち、芳香族ビニル化合物、N−置換マレイミド系化合物が感度及び密着性の向上面においてより好ましい。これらはそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
前記化合物A2のうち芳香族ビニル化合物としては、ビニルトルエン、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明では特に前記ビニルトルエンを追加単量体として使って結合剤樹脂を製造し、前記製造された結合剤樹脂を含有する着色感光性樹脂組成物の性能をテストしたところ、感度及び密着性などの効果に優れることを見出した。
【0038】
また、前記N−置換マレイミド系化合物としては、下記の化11で表される化合物を例示することができる。
【0039】
【化11】

【0040】
この化11において、Rはヘテロ原子が含まれるか含まれないC〜C20の脂肪族または芳香族炭化水素である。前記Rの具体的な例としては、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられ、特にベンジル基及びシクロヘキシル基が好ましく、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
また、前記不飽和カルボン酸の非置換または置換アルキルエステル化合物系としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
また、前記脂環式置換基を含む不飽和カルボン酸エステル化合物系としては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、メンチル(メタ)アクリレート、シクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロへキセニル(メタ)アクリレート、シクロヘプテニル(メタ)アクリレート、シクロオクテニル(メタ)アクリレート、ペンタジエニル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ピナニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ピネニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
前記カルボン酸ビニルエステル系化合物としては、アセト酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
前記オキセタン基を含む不飽和オキセタニル系化合物としては、3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−トリフロロメチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−ペンタフロロエチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2,2−ジフロロオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2,2,4−トリフロロオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2,2,4,4−テトラフロロオキセタン、3−(メタクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、2−エチル−3−(メタクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシエチル)−2−トリフロロメチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシエチル)−2−ペンタフロロエチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン、2,2−ジフロロ−3−(メタクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシエチル)−2,2,4−トリフロロオキセタン、3−(メタクリロイルオキシエチル)−2,2,4,4−テトラフロロオキセタンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
[化合物A3]
化合物A3は、不飽和カルボキシル基を有する化合物であり、重合可能な不飽和二重結合を有するカルボン酸化合物であれば、特段の制限はなく、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的な一例として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボキシル酸類;フマル酸、メサコン酸、イタコン酸などのジカルボキシル酸類;及びこれらジカルボン酸の無水物;ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなどの両末端にカルボキシル基と水酸基を有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。このうちアクリル酸、メタクリル酸が共重合反応性及び現像液に対する溶解性に優れることから好ましい。
【0046】
[結合剤樹脂Aにおける各化合物から誘導される構成単位]
本発明で使用される結合剤樹脂Aは、化合物A1〜化合物A3を共重合して得られる共重合体であり、化合物A1〜化合物A3のそれぞれの化合物から誘導される構成単位の比率は、前記共重合体を構成する構成成分の合計モル数に対し、モル分率で以下の組成範囲のものが望ましい。
【0047】
化合物A1から誘導される構成単位:2〜50モル%
化合物A2から誘導される構成単位:2〜50モル%
化合物A3から誘導される構成単位:2〜70モル%
【0048】
[化合物A1〜化合物A3を共重合させる結合剤樹脂Aの調整方法]
本発明の実施形態において、前記共重合体の製造方法としては、て得られる場合であれば別に制限されず、従来公知の各種の重合方法が使用可能であり、公知の重合方法のうち溶液重合法がより好ましい。また、重合温度や重合時間は導入される単量体の種類や比率、目標結合剤樹脂分子量及び酸価によって異なるが、好ましくは60℃〜130℃で1〜10時間重合させる。そして、前記工程において重合開始剤の一部または全量をフラスコに投入することもでき、化合物A1、化合物A2及び化合物A3の一部または全量をフラスコに投入することもできる。
【0049】
また、前記工程で溶媒を用いる場合は、通常のラジカル重合反応時使用される溶媒を用いることができ、具体的にはテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエチル、ジエチレングリコールジメチルエチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロフォルム、ジメチルスルホシキドなどが挙げられる。これら溶媒は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
また、前記工程に使われる重合開始剤としては、通常使用される重合開始剤を添加することができ、別に制限されない。具体的には、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などの窒素化合物が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
また、分子量や分子量分布を制御するため、例えばn−ドデシルメルカプト、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸メチルなどのメルカプト系連鎖移動剤、α−メチルスチレンダイマーなどを連鎖移動剤として使用することもできる。前記α−メチルスチレンダイマーまたはメルカプト化合物の使用量は化合物A1、化合物A2及び化合物A3の合計量に対して質量を基準にして0.005〜5%である。また、前記重合条件は製造設備や重合による熱熱量などを考慮して投入方法や反応温度を適宜調整することもできる。
【0052】
[化合物A4]
本発明の実施形態の着色感光性樹脂組成物に含有される結合剤樹脂Aは、化合物A1、化合物A2及び化合物A3を共重合して得られる共重合体に対して、1分子中に不飽和結合とエポキシ基を有する化合物A4をさらに反応させることによって得られものを使用することも好ましい。前記共重合体に化合物A4を付加することによって、結合剤樹脂に光硬化性/熱硬化性を与えることができる。
【0053】
本発明の前記1分子中に不飽和結合とエポキシ基を有する化合物A4の具体的な例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロへキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのうちグリシジル(メタ)アクリレートがより好ましく使用される。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
[化合物A4を含む結合剤樹脂Aにおける各化合物から誘導される構成単位]
また、前記結合剤樹脂A内の化合物A4から誘導される構成単位の比率は、前記結合剤樹脂A内の化合物A3から誘導される構成成分のモル数に対して5〜80モル%であることが好ましく、10〜70モル%がより好ましい。化合物A4の組成比が前記範囲内にあれば十分な光硬化性や熱硬化性が得られて感度と鉛筆硬度が両立し信頼性に優れ、好ましい。
【0055】
[化合物A1〜化合物A3の共重合体に化合物A4を添加する結合剤樹脂Aの調整方法]
本発明の実施形態において、結合剤樹脂Aは、前記化合物A1、化合物A2及び化合物A3を共重合して得られる共重合体と化合物A4を、例えば以下のような方法で反応させることによって製造することができる。
【0056】
フラスコ内雰囲気を窒素から空気に置換し、前記光重合体化合物A3から誘導される構成単位に対してモル分率で5〜80モル%の化合物A4、カルボキシル基とエポキシ基の反応触媒として、例えばトリスジメチルアミノメチルフェノールを化合物A1〜化合物A4の合計量に対して質量基準に0.01〜5%及び重合禁止剤として、例えばヒドロキノンを化合物A1〜化合物A4の合計量に対して質量基準に0.001〜5%をフラスコ内に入れ60〜130℃で1〜10時間反応させることによって、前記共重合体と化合物A4を反応させることができる。また、重合条件と同様に製造設備や重合による発熱量などを考慮して投入方法や反応温度を適宜調整することもできる。
【0057】
本発明の結合剤樹脂Aは着色感光性樹脂組成物の全体固形分総100質量対比10〜80質量部で含まれることが好ましく、20〜70質量部で含まれるのがより好ましい。前記範囲であれば現像時に残渣が残らず求める塗膜を形成することができるので、好ましい。
【0058】
また、本発明の結合剤樹脂Aは特に制限されないが、そのポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000〜100,000の範囲が好ましく、5,000〜50,000の範囲の方がより好ましい。結合剤樹脂Aの重量平均分子量が3,000〜100,000の範囲にあると、現像時に膜減少が発生しにくく、非画素部分の抜け性が良好な傾向があり、好ましい。
【0059】
結合剤樹脂Aの分子量分布[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は1.5〜6.0が好ましく、1.8〜4.0のものがより好ましい。分子量分布[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]が1.5〜6.0であると、現像性に優れることから、好ましい。
【0060】
光重合性化合物B: 本発明の着色感光性樹脂組成物に含有される光重合性化合物Bは、光及び後述する光重合開始剤の作用で重合できる化合物であって、単官能単量体、2官能単量体、その他の多官能単量体などが挙げられる。
【0061】
本発明に使われる光重合性化合物Bは着色感光性樹脂組成物の現像性、感度、密着性、表面問題などを改良するために官能基の構造や官能基数が異なる2つまたはそれ以上の光重合性化合物を混合して使用でき、その範囲に制限がない。
【0062】
単官能単量体の具体例としては、ノニルフェニルカルビトールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−エチルへキシルカルビトールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、N−ビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0063】
2官能単量体の具体例としては、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイルオキシエチル)エーテル、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0064】
その他の多官能単量体の具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシレート化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシレート化ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロポキシレート化ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。中でも、2官能以上の多官能単量体が好ましく用いられる。
【0065】
光重合性化合物Bは、結合剤樹脂A及び光重合性化合物Bの合計100質量部に対して、通常1〜60質量部、好ましくは5〜50質量部の範囲で使用される。光重合性化合物Bが前記基準にして1〜60質量部の範囲であれば画素部の強度や平滑性が良好になる傾向がり、好ましい。
【0066】
光重合開始剤C: 本発明の着色感光性樹脂組成物に含有される光重合開始剤Cは限られないが、トリアジン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミタゾール系化合物及びオキシム化合物よりなる群から選ばれる1種以上の化合物である。前記光重合開始剤Cを含有する着色感光性樹脂組成物は高感度であり、この組成物を使って形成される膜はその画素部の強度や表面平滑性が良好になる。
【0067】
また、光重合開始剤Cに光重合開始補助剤(C−1)を併用すれば、これらを含有する着色感光性樹脂組成物はさらに高感度になって、この組成物を使用してカラーフィルタを形成するときの生産性が向上されることから好ましい。
【0068】
前記トリアジン系化合物としては、例えば2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ピペロニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0069】
また、前記アセトフェノン系化合物としては、例えばジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタル、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オンのオリゴマなどが挙げられる。アセトフェノン系化合物としては、例えば下記化12で表される化合物が挙げられる。
【0070】
【化12】

【0071】
上記化12のうち、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、C〜C12のアルキル基によって置換されていてもよいフェニル基、C〜C12のアルキル基により置換されていてもよいベンジル基またはC〜C12のアルキル基により置換されていてもよいナフチル基を示す。
【0072】
上記化12で表される化合物の具体例としては、2−メチル−2−アミノ(4−モルホリノフェニル)エタン−1−オン、2−エチル−2−アミノ(4−モルホリノフェニル)エタン−1−オン、2−プロピル−2−アミノ(4−モルホリノフェニル)エタン−1−オン、2−ブチル−2−アミノ(4−モルホリノフェニル)エタン−1−オン、2−メチル−2−アミノ(4−モルホリノフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−2−アミノ(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−エチル−2−アミノ(4−モルホリノフェニル)プロパン−1−オン、2−エチル−2−アミノ(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−メチル−2−メチルアミノ(4−モルホリノフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−2−ジメチルアミノ(4−モルホリノフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−2−ジエチルアミノ(4−モルホリノフェニル)プロパン−1−オンなどが挙げられる。
【0073】
前記ビイミダゾール化合物としては、例えば2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,3−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(アルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(トリアルコキシフェニル)ビイミダゾール、4,4’,5,5’ 位置のフェニル基がカルボアルコキシ基によって置換されているイミダゾール化合物などが挙げられる。これらのうち2,2’ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール,2,2’−ビス(2,3−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾールが好ましく用いられる。
【0074】
オキシム化合物としては、下記化13、化14、化15で表される化合物などが挙げられる。
【0075】
【化13】

【0076】
【化14】

【0077】
【化15】

【0078】
また、本発明の効果を損なわない程度であれば、この分野において通常用いられているその他の光重合開始剤などをさらに併用することができる。その他の光重合開始剤としては、例えばベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アントラセン系化合物、多官能チオール化合物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
【0079】
ベンゾイン系化合物としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0080】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えばベンゾフェノン、0−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0081】
チオキサントン系化合物としては、例えば2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。
【0082】
アントラセン系化合物としては、例えば9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセンなどが挙げられる。
【0083】
多官能チオール化合物としては、例えばトリス−(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル−イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリトリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート、ジペンタエリトリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネートなどが挙げられる。
【0084】
その他、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアントラキノン、ベンジル、9,10−フェナントレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物などをその他の光重合開始剤として挙げられる。
【0085】
また、光重合開始剤Cには光重合開始補助剤(C−1)を組み合わせて用いることもでき、アミン化合物、カルボン酸化合物が好ましく使用される。
【0086】
光重合開始補助剤のうちアミン化合物の具体例としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの脂肪族アミン化合物、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルへキシル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(通称:ミヒラーズケトン)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどの芳香族アミン化合物が挙げられる。アミン化合物としては芳香族アミン化合物が好適に用いられる。
【0087】
カルボン酸化合物の具体例としては、フェニルチオ酢酸、メチルフェニルチオ酢酸、エチルフェニルチオ酢酸、メチルエチルフェニルチオ酢酸、ジメチルフェニルチオ酢酸、メトキシフェニルチオ酢酸、ジメトキシフェニルチオ酢酸、クロロフェニルチオ酢酸、ジクロロフェニルチオ酢酸、N−フェニルグリシン、フェノキシ酢酸、ナフチルチオ酢酸、N−ナフチルグリシン、ナフトキシ酢酸などの芳香族へテロアセト酸類が挙げられる。
【0088】
光重合開始剤Cの使用量は、結合剤樹脂A及び光重合性化合物Bの合計100質量部に対して、通常0.1〜40質量部、好ましくは1〜30質量部であり、光重合開始補助剤(C−1)の使用量は前記基準に、通常0.1〜50質量部、好ましくは1〜40質量部である。
【0089】
光重合開始剤Cの使用量が前記範囲であると、着色感光性樹脂組成物が高感度化して、この組成物を使って形成した画素部の強度や、この画素部の表面における平滑性が良好になる傾向があり、好ましい。また、光重合開始補助剤(C−1)の使用量が前記範囲にあれば着色感光性樹脂組成物の感度がさらに高くなり、この組成物を使用して形成されるカラーフィルタの生産性が向上される傾向があり、好ましい。
【0090】
着色材料D: 本発明で使われる着色材料Dは、通常の顔料として、顔料分散レジストに通常使用される有機顔料または無機顔料であることが望ましい。必要に応じて染料を使用することができ、本発明に含まれる。
【0091】
無機顔料としては、金属酸化物や金属錯塩などの金属化合物が挙げられ、具体的には鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモンなどの金属の酸化物または複合金属酸化物などが挙げられる。
【0092】
前記有機顔料及び無機顔料として具体的には、色指数(The society of Dyers and Colourists出版)でピグメントに分類されている化合物が挙げられ、より具体的には、以下のようなカラーインデックス(C.I.)番号の顔料が挙げられるが、必ずこれらに限定されるわけではない。
【0093】
C.I. ピグメントイエロー20、24、31、53、83、86、93、94、109、110、117、125、137、138、139、147、148、150、153、154、166、173、180及び185
【0094】
C.I. ピグメントオレンジ 13、31、36、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65、及び71
【0095】
C.I. ピグメントレッド 9、97、105、122、123、144、149、166、168、176、177、180、192、215、216、224、242、254、255及び264
【0096】
C.I. ピグメントバイオレット 14、19、23、29、32、33、36、37及び38
【0097】
C.I. ピグメントブルー 15(15:3、15:4、15:6など)、21、28、60、64及び76
【0098】
C.I. ピグメントグリーン 7、10、15、25、36、47及び58
【0099】
C.I ピグメントブラウン 28
【0100】
C.I ピグメントブラック1及び7など
【0101】
これら着色材料Dは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。着色材料Dの含有量は、着色感光性樹脂組成物中の全体固形分量を基準にして、通常3〜60質量%、好ましくは5〜55質量%の範囲である。着色材料Dの含有量が前記基準に3〜60質量%の範囲であれば、薄膜を形成しても画素の色濃度が十分であり、現像時、非画素部の抜け性が低下しないため、残渣が発生しにくい傾向があり、好ましい。
【0102】
溶剤E: 本発明の着色感光性樹脂組成物に含有される溶剤Eは特に制限されず、着色感光性樹脂組成物の分野で使用されている各種有機溶剤を使用することができる。
【0103】
その具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチルングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテートなどのアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル類などが挙げられる。
【0104】
前記溶剤のうち、塗布性、乾燥性面から好ましくは前記溶剤中で沸点が100℃〜200℃の有機溶剤が挙げられ、より好ましくはアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ケトン類、3−エトキシプロピオン酸エチルや、3−メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類が挙げられ、さらに好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチルなどが挙げられる。これら溶剤Eは、それぞれ単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0105】
本発明の着色感光性樹脂組成物中の溶剤Eの含有量は、それを含む着色感光性樹脂組成物全体量に対して、質量分率で、通常60〜90質量%、好ましくは70〜85質量%である。溶剤Eの含有量が前記基準に60〜90質量%の範囲であると、ロールコータ、スピンコータ、スリットアンドスピンコータ、スリットコータ(ダイコータとも呼ばれることがある)、インクジェットなどの塗布装置で塗布した時塗布性が良好になる傾向があり、好ましい。
【0106】
添加剤F: 本発明の着色感光性樹脂組成物には必要に応じて、充填剤、他の高分子化合物、硬化剤、顔料分散剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤などの添加剤Fを併用することもできる。
【0107】
ここで言う充填剤の具体例としては、ガラス、シリカ、アルミナなどが挙げられる。
【0108】
そして、ここで言う他の高分子化合物の具体例としては、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂などの硬化性樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリフルオロアルキルアクリレート、ポリエステル、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0109】
硬化剤は、深部硬化及び機械的強度をアップするために使われ、硬化剤としてはエポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0110】
前記硬化剤においてエポキシ化合物としては、例えばビスフェノールA系エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ビスフェノールF系エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールF系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、その他芳香族系エポキシ樹脂、脂環族系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系樹脂、グリシジルアミン系樹脂、またはこのエポキシ樹脂のブロム化誘導体、エポキシ樹脂及びそのブロム化誘導体以外の脂肪族、脂環族または芳香族エポキシ化合物、ブタジエン(共)重合体エポキシ化物、イソプレン(共)重合体エポキシ化物、グリシジル(メタ)アクリレート(共)重合体、トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0111】
前記硬化剤においてオキセタン化合物としては、例えばカーボネートビスオキセタン、キシレンビスオキセタン、アジペートビスオキセタン、テレフタレートビスオキセタン、シクロへキサンジカルボン酸ビスオキセタンなどが挙げられる。
【0112】
前記硬化剤において硬化剤と共にエポキシ化合物のエポキシ基、オキセタン化合物のオキセタン骨格を改環重合可能にする硬化補助化合物を含める。硬化補助化合物としては、例えば多価カルボン酸類、多価カルボン酸無水物類、酸発生剤などが挙げられる。
【0113】
カルボン酸無水物として、エポキシ樹脂硬化剤として市販中のものを利用できる。そのエポキシ樹脂硬化剤としては、例えば商品名(アデカハードナEH−700)(アデカ工業(株)製)、商品名(リカシットHH)(新日本理化(株)製)、商品名(MH−700)(新日本理化(株)製)などが挙げられる。前記硬化剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0114】
顔料分散剤としては、市販の界面活性剤を用いることができ、例えば、シリコン系、 フッ素系、エステル系、アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性などの界面活性剤などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。前記界面活性剤として、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコールジエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、3級アミン変性ポリウレタン類、ポリエチレンアミン類などがあり、その他の商品名としてKP(信越化学工業(株)製)、ポリフロー(POLYFLOW)(共栄化学(株)製)、エフトップ(EFTOP)(トーケムプロダクツ社製)、メガファック (MEGAFAC)(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラード(Flourad)(住友スリエム(株)製)、アサヒガード(Asahi guard)、サーフロン(Surflon)(以上、旭硝子(株)製)、ソルスパース(SOLSPERSE)(ゼネカ(株)製)、EFKA(EFKAケミカルス社製)、PB821(味の素(株)製)などが挙げられる。
【0115】
密着促進剤として、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。これら密着促進剤はそれぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0116】
レジスト固形分対比濃度は、通常0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜2質量%である。
【0117】
酸化防止剤として具体的には、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどヒンダードフェノール系が挙げられる。
【0118】
紫外線吸収剤として具体的には、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0119】
凝集防止剤として具体的には、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0120】
本発明の着色感光性樹脂組成物は、例えば、以下のような方法に基づき調製することができる。着色材料Dを予め溶剤Eと混合し、着色材料の平均粒子径が0.2μm以下程度となるまでビーズミルなどを用いて分散させる。この際、必要に応じて顔料分散剤が使われ、また結合剤樹脂Aの一部または全部が配合されることもある。得られた分散液(以下、ミルベースと言うことがある)に、結合剤樹脂Aの残り、光重合性化合物B及び光重合開始剤C、必要に応じて使われるその他の成分、必要に応じて追加の溶剤を所定の濃度になるようにさらに添加し、目的の着色感光性樹脂組成物を得る。
【0121】
[着色感光性樹脂組成物のパターン形成方法]
以下、本発明に係る着色感光性樹脂組成物のパターン形成方法を説明する。本発明に係る着色感光性樹脂組成物のパターン形成方法は、前述した着色感光性樹脂組成物を基材上に塗布する段階、前記着色感光性樹脂組成物の一部領域を選択的に露光する段階、及び前記着色感光性樹脂組成物の露光領域または非露光領域を除去する段階を含んでなる。
【0122】
その一例として、以下のようにして基材上に塗布し、光硬化及び現像を行ってパターンを形成するようになり、ブラックマトリックスまたは着色画素(着色画像)で使用できるようになる。
【0123】
まず、本発明の組成物を基材(制限されない。通常はガラスあるいはシリコンウェーハ)または先に形成された着色感光性樹脂組成物の固形分を含む層上に塗布して予備乾燥することによって溶剤などの揮発成分を除去して平滑な塗膜を得る。この際の塗膜の厚さは概略1〜3μm程度である。こうして得られた塗膜に目的とするパターンを得るためにマスクを通じて特定領域に紫外線を照射する。この際、露光部全体に均一に平行光線が照射され、マスクと基板が正確に位置合わせするようにマスクアライナーやステッパなどの装置を使用するのが望ましい。また、その後、硬化が終了された塗膜をアルカリ水溶液に接触させて非露光領域を溶解させ現像することによって目的のパターンを製造できるようになる。現像後、必要に応じて150〜230℃で10〜60分ほどの後乾燥を施すことができる。
【0124】
パターニング露光後の現像に使用する現像液は、通常、アルカリ性化合物と界面活性剤を含む水溶液である。アルカリ性化合物は、無機及び有機アルカリ性化合物のいずれでもよい。
【0125】
無機アルカリ性化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、アンモニアなどが挙げられる。
【0126】
また、有機アルカリ性化合物の具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エタノールアミンなどが挙げられる。これら無機 及び有機アルカリ性化合物はそれぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0127】
アルカリ現像液中のアルカリ性化合物の好ましい濃度は0.01〜10質量%の範囲であり、より好ましくは0.03〜5質量%である。
【0128】
アルカリ現像液中の界面活性剤は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤またはカチオン系界面活性剤のいずれでも使用可能である。
【0129】
ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、その他のポリオキシエチレン誘導体、オキシエチレン/オキシプロピレンブロック共重合体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。
【0130】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウムやオレイルアルコール硫酸エステルナトリウムなどの高級アルコール硫酸エステル塩類、ラウリル硫酸ナトリウムやラウリル硫酸アンモニウムなどのアルキル硫酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムやドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類などが挙げられる。
【0131】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、ステアリルアミン塩酸塩やラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアミン塩または4級アンモニウム塩などが挙げられる。これらの界面活性剤は、それぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0132】
アルカリ現像液中の界面活性剤の濃度は、通常0.01〜10質量%、 好ましくは0.05〜8質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0133】
[本発明に係るカラーフィルタ]
以下、本発明に係るカラーフィルタを説明する。本発明に係るカラーフィルタは、前述した着色感光性樹脂組成物を所定のパターンに露光、現像して形成されるカラー層を含んでなることを特徴とする。
【0134】
着色感光性樹脂組成物のパターン形成方法は前述したようであり、詳しい説明は省く。前述したように、着色感光性樹脂溶液の塗布、乾燥、得られる乾燥塗膜へのパターン化露光、そして現像との各操作を経て感光性樹脂組成物中の着色材料の色に相当する画素またはブラックマトリックスが得られ、またこのような操作をカラーフィルタに必要とする色の数ほど反復することによってカラーフィルタが得られる。カラーフィルタの構成及び製造方法は、本技術分野において公知であることから、それにより詳しい説明は省く。
【0135】
カラーフィルタは、通常、ブラックマトリックス及び赤色、緑色及び青色の3原色画素を基板上に配置したものであるが、ある色に相当する着色材料を含む本発明の着色感光性樹脂組成物を使用して前記操作を行うことによって、その色のブラックマトリックスまたは画素を得て、他の色についても目的とする色に相当する着色材料を含む本発明の着色感光性樹脂組成物を用いて同様の操作を行い、ブラックマトリックス及び3原色画素を基板上に配置することができる。勿論、ブラックマトリックス及び3原色のうちいずれか1色、2色または3色にのみ、本発明の感光性樹脂組成物を適用することもできる。
【0136】
また、遮光層であるブラックマトリックスは、本発明の着色(黒色で着色される)感光性樹脂を使用できるが、例えばクロム層などで形成されていることもあるので、ブラックマトリックスの形成に本発明の着色感光性樹脂組成物を用いる必要はない。
【0137】
本発明の着色感光性樹脂組成物を用いて製造されたカラーフィルタは、面内の膜厚差が少なく、例えば1〜3μmの膜厚で、面内膜厚差を0.15μm以下、さらには0.05μm以下とすることができる。従って、こうして得られるカラーフィルタは平滑性に優れるものであり、またこれをカラー液晶表示装置に組み込むことにより、優れた品質の液晶表示装置を高い歩留りで製造できる。
【0138】
本発明は前述したカラーフィルタを備えた液晶表示装置も権利に含んでいる。本発明の液晶表示装置は、前述したカラーフィルタを備えたことを除けば、本技術分野において公知の構成を含む。すなわち、本発明のカラーフィルタを適用可能な液晶表示装置は全て本発明に含まれる。一例として、薄膜トランジスタ(TFT)素子、画素電極及び配向層を備えた対向電極基板を所定の間隔で対向させ、この間隙部に液晶材料を注入して液晶層とした透過型の液晶表示装置が挙げられる。また、カラーフィルタの基板と着色層との間に反射層を設けた反射型の液晶表示装置もある。
【0139】
別の一例として、カラーフィルタの透明電極上に合わせられたTFT(薄膜トランジスタ:Thin Film Transistor)基板、及びTFT基板がカラーフィルタと重畳する位置に固定されたバックライトを含む液晶表示装置が挙げられる。前記TFT基板はカラーフィルタの周辺表面を取り囲む光防止樹脂(light−proof resin)よりなる外部フレーム、外部フレーム内に付されたネマチック液晶よりなる液晶層、液晶層の各領域ごとに提供された多数の画素電極、画素電極が形成された透明ガラス基板、及び透明ガラス基板の露出された表面上に形成された偏光板が備えられる。
【0140】
偏光板は垂直に横切る偏光方向を有し、ポリビニルアルコールのような有機材料で構成されている。多数の画素電極はそれぞれTFT基板のガラス基板上に形成された複数の薄膜トランジスタと連結されている。もし、特定の画素電極に所定の電位差が適用されれば、所定の電圧が特定画素電極と透明電極との間に適用される。従って、電圧によって形成された電気場が液晶層の特定画素電極に該当する領域の配向を変わらせる。
【実施例】
【0141】
以下のように、本発明を実施例に基づきさらに詳述するが、あくまでも例示であって、本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されない。本発明の範囲は特許請求の範囲に記載されており、さらに特許請求の範囲の記載と均等な意味及び範囲内での全ての変更を含んでいる。また、以下で、含有量を示す“%”及び“部”は別に言及しない限り、質量基準である。
【0142】
<樹脂Aの合成>
攪拌機、温度計付き還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたフラスコを用意し、一方モノマー滴下ロートとして、2−フェニルチオエチルアクリレート52g(0.25モル)、ベンジルメタクリレート44g(0.25モル)、メタクリル酸12.9g(0.15モル)、ビニルトルエン41.3g(0.35モル)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート4g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)40gを投入した後、攪拌混合して用意し、連鎖移動剤滴下槽として、n−ドデカンチオール6g、PGMEA24gを入れて攪拌混合したものを用意した。その後フラスコにPGMEA395gを導入し、フラスコ内雰囲気を空気から窒素にした後、攪拌しつつフラスコの温度を90℃まで昇温した。次いで、モノマー及び連鎖移動剤を滴下ロートから滴下を開始した。滴下は、90℃を保ちながら、それぞれ2時間行い、1時間後に110℃まで昇温して8時間反応を続け、固形分酸価が70mgKOH/gの樹脂Aを得た。GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は23,000で、分子量分布(Mw/Mn)は2.4であった。
【0143】
<樹脂Bの合成>
攪拌機、温度計付き還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたフラスコを用意し、一方モノマー滴下ロートとして、2−フェニルチオエチルアクリレート52g(0.25モル)、ベンジルメタアクリレート26.4g(0.15モル)、メタクリル酸21.5g(0.25モル)、ビニルトルエン41.3g(0.35モル)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート4g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)40gを投入した後、攪拌混合して用意し、連鎖移動剤滴下槽として、n−ドデカンチオール6g、PGMEA24gを入れて攪拌混合したものを用意した。その後フラスコにPGMEA395gを導入し、フラスコ内雰囲気を空気から窒素にした後、攪拌しつつフラスコの温度を90℃まで昇温した。次いで、モノマー及び連鎖移動剤を滴下ロートから滴下を開始した。滴下は、90℃を保ちながら、それぞれ2時間行い、1時間後に110℃まで昇温して5時間維持した後、ガス導入管を導入させ、酸素/窒素=5/95(v/v)混合ガスのバブリングを開始した。次いで、グリシジルメタクリレート21.3g(0.15モル)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)0.4g、トリエチルアミン0.8gをフラスコ内に投入して110℃で8時間反応を続け、固形分酸価が75mgKOH/gの樹脂Bを得た。GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は19,000で、分子量分布(Mw/Mn)は2.4であった。
【0144】
<樹脂Cの合成>
攪拌機、温度計付き還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたフラスコを用意し、一方モノマー滴下ロートとして、2−フェニルチオエチルアクリレート52g(0.25モル)、メチルメタクリレート15g(0.15モル)、メタクリル酸21.5g(0.25モル)、ベンジルマレイミド65.4g(0.35モル)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート4g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)40gを投入した後、攪拌混合して用意し、連鎖移動剤滴下槽として、n−ドデカンチオール6g、PGMEA24gを入れて攪拌混合したものを用意した。その後フラスコにPGMEA395gを導入し、フラスコ内雰囲気を空気から窒素にした後、攪拌しつつフラスコの温度を90℃まで昇温した。次いで、モノマー及び連鎖移動剤を滴下ロートから滴下を開始した。滴下は、90℃を保ちながら、それぞれ2時間行い、1時間後に110℃まで昇温して5時間維持した後、ガス導入管を導入させて、酸素/窒素=5/95(v/v)混合ガスのバブリングを開始した。次いで、 グリシジルメタクリレート21.3g(0.15モル)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)0.4g、トリエチルアミン0.8gをフラスコ内に投入して110℃で8時間反応を続け、固形分酸価が73mgKOH/gの樹脂Cを得た。GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は18,000で、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。
【0145】
<樹脂Dの合成>
攪拌機、温度計付き還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたフラスコを用意し、一方モノマー滴下ロートとして、ベンジルメタアクリレート88g(0.5モル)、メタクリル酸12.9g(0.15モル)、ビニルトルエン41.3g(0.35モル)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート4g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)40gを投入した後、攪拌混合して用意し、連鎖移動剤滴下槽として、n−ドデカンチオール6g、PGMEA24gを入れて攪拌混合したものを用意した。その後フラスコにPGMEA395gを導入し、フラスコ内雰囲気を空気から窒素にした後、攪拌しつつフラスコの温度を90℃まで昇温した。次いで、モノマー及び連鎖移動剤を滴下ロートから滴下を開始した。滴下は、90℃を保ちながら、それぞれ2時間行い、1時間後に110℃まで昇温して8時間反応を行い、固形分酸価が70mgKOH/gの樹脂Dを得た。GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は21,000で、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。
【0146】
<樹脂Eの合成>
攪拌機、温度計付き還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたフラスコを用意し、一方モノマー滴下ロートとして、ベンジルメタアクリレート70.4g(0.4モル)、メタクリル酸21.5g(0.25モル)、ビニルトルエン41.3g(0.35モル)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート4g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)40gを投入した後、攪拌混合して用意し、連鎖移動剤滴下槽として、n−ドデカンチオール6g、PGMEA24gを入れて攪拌混合したものを用意した。その後フラスコにPGMEA395gを導入し、フラスコ内雰囲気を空気から窒素にした後、攪拌しつつ、フラスコの温度を90℃まで昇温した。次いで、モノマー及び連鎖移動剤を滴下ロートから滴下を開始した。滴下は、90℃を保ちながら、それぞれ2時間行い、1時間後に110℃まで昇温して5時間維持した後、ガス導入管を導入させて、酸素/窒素=5/95(v/v)混合ガスのバブリングを開始した。次いで、グリシジルメタクリレート21.3g(0.15モル)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)0.4g、トリエチルアミン0.8gをフラスコ内に投入して110℃で8時間反応を続け、固形分酸価が75mgKOH/gの樹脂Eを得た。GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は16,300で、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。
【0147】
前記結合剤重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定についてはGPC法を用いて以下の条件下で行った。
【0148】
装置 : HLC−8120GPC(東ソー(株)製)
カラム : TSK−GELG4000HXL+TSK−GELG2000HXL(直列接続)
カラム温度 : 40℃
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流速 : 1.0ml/分
注入量 : 50μl
検出機 : RI
測定試料濃度 : 0.6質量%(溶媒=テトラヒドロフラン)
校正用標準物質 : TSK STANDARD POLYSTYRENE F−40、F−4、F−1、A−2500、A−500(東ソー(株)製)
【0149】
前記で得られた重量平均分子量及び数平均分子量の比を分子量分布(Mw/Mn)とした。
【0150】
[実施例1]
下記表1に記載された各成分のうち、予め着色材料Dの顔料及び添加剤Fである顔料分散剤の合計量が顔料、顔料分散剤及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの混合物に対して、20質量%となるように混合し、ビーズミルを用いて顔料を十分に分散させた後、ビーズミルを分離し、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの残量を含む残りの成分を加えて混合することによって着色感光性樹脂組成物を得た。
【0151】
その後、2インチ角のガラス基板(コーニング社製、#1737)を中性洗剤、水及びアルコールで順次洗浄してから乾燥した。このガラス基板上に、本発明に係る着色感光性樹脂組成物(表1)を100mJ/cmの露光量(365nm)で露光し、現像工程を省略した時の焼成後の膜厚が2.0μmとなるようにスピンコートし、次にクリーンオーブン中、100℃で3分間予備乾燥した。冷却後、この着色感光性樹脂組成物を塗布した基板と石英ガラス製のフォトマスク(透過率を1〜100%の範囲で階段状に変わらせるパターンと1μmから50μmまでのライン/スペースパターンを有する)との間隔を100μmとし、ウシオ電機(株)製の超高圧水銀ランプ(商品名USH−250D)を用いて大気雰囲気下、100mJ/cmの露光量(365nm)で光照射した。その後、非イオン系界面活性剤0.12%と水酸化カリウム0.06%を含む水系現像液に前記塗膜を26℃で所定時間浸漬して現像し、水洗後、220℃で30分間乾燥した。得られた画素部では表面荒れが見られなかった。また、非画素部には基板上に現像残渣及び未現像不良が発生しなかった。そして、現像しても表面荒れのないパターンを形成するために必要な最低必要露光量は60mJ/cmであった。
【0152】
【表1】

【0153】
[実施例2]
実施例1の樹脂Aを樹脂Bに変更する以外は、実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表2に示す。
【0154】
[実施例3]
実施例1の樹脂Aを樹脂Cに変更する以外は、実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表2に示す。
【比較例】
【0155】
[比較例1]
実施例1樹脂Aを樹脂Dに変更する以外は、実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表2に示す。
【0156】
[比較例2]
実施例1の樹脂Aを樹脂Eに変更する以外は、実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表2に示す。
【0157】
【表2】

【0158】
前記表2から本発明の結合剤樹脂を含む実施例の着色感光性樹脂組成物は高感度で現像性に優れたカラーフィルタが得られることが分かった。一方、比較例の着色感光性樹脂組成物の場合、感度、現像性に劣って高品質のカラーフィルタが得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明によれば、高濃度着色材料を含有しても現像性に優れ、感度に優れた着色感光性樹脂組成物を提供することができるため、当該着色感光性樹脂組成物の用途は液晶表示装置等のカラーフィルターに限定されることはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤樹脂A、光重合性化合物B、光重合開始剤C、着色材料D及び溶剤Eを含有する着色感光性樹脂組成物であって、
前記結合剤樹脂Aは、下記化1に示す化合物A1、化合物A2と化合物A3とを共重合して得られる共重合体であることを特徴とする着色感光性樹脂組成物。
化合物A1:以下の化1に示す一般式で表される化合物。
【化1】


(化1において、Rは水素またはメチル基であり、Rは置換または非置換の2価C〜Cのアルキル基またはアルケニル基であり、Aは置換または非置換のベンゼン基、シクロヘキシル基、C〜Cのアルキル基またはアルケニル基であり、この際、R及びAの置換体は独立にフッ素、塩素、ブロム、ヨード、C〜Cのアルキル基、C〜Cのパーハロゲン化アルキル基、ヒドロキシ基、C〜Cのケトン基、C〜Cのエステル基、N,N−(C〜C)アルキル置換されたアミド基またはこれら置換基の1種以上を含む調合物である。)
化合物A2: 化合物A1及び化合物A3と共重合の可能な不飽和結合を有する化合物
化合物A3: 不飽和カルボン酸
【請求項2】
前記化合物A1は、下記化2の一般式で表される化合物のうち少なくとも一つ以上が選択されることを特徴とする請求項1に記載の着色感光性樹脂組成物。
【化2】


(化2において、Rは水素またはメチル基であり、Rは置換または非置換の2価C〜Cのアルキル基またはアルケニル基であり、この際、Rの置換体は独立にフッ素、塩素、ブロム、ヨード、C〜Cのアルキル基、C〜Cのパーハロゲン化アルキル基、ヒドロキシ基、C〜Cのケトン基、C〜Cのエステル基、N,N−(C〜C)アルキル置換されたアミド基またはこれら置換基の1種以上を含む調合物である。)
【請求項3】
前記結合剤樹脂Aは、前記共重合体に1分子中に不飽和結合とエポキシ基を有する化合物A4をさらに反応させて得られる不飽和基含有樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記化合物A1及び化合物A3と共重合の可能な不飽和結合を有する化合物A2は、芳香族ビニル化合物またはN−置換マレイミドであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記結合剤樹脂Aの構成成分の合計モル数に対する前記化合物A1、化合物A2及び化合物A3のそれぞれから誘導される構成成分の比率は、化合物A1から誘導される構成単位は2〜50モル%であり、化合物A2から誘導される構成単位は2〜50モル%であり、化合物A3から誘導される構成単位は2〜70モル%であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記化合物A4から誘導される構成成分の比率は、前記結合剤樹脂A内の化合物A3から誘導される構成成分のモル数に対して5〜80モル%であることを特徴とする 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項7】
基板の上部に着色感光性樹脂組成物を塗布し、所定のパターンに露光、現像して形成されるカラー層を含んでなるカラーフィルタにおいて、
前記着色感光性樹脂組成物は請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物であることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項8】
請求項7に記載のカラーフィルタを備える液晶表示装置。

【公開番号】特開2009−75591(P2009−75591A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242267(P2008−242267)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(501341451)東友ファインケム株式会社 (17)
【氏名又は名称原語表記】Dongwoo Fine−Chem Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】740−30 Sinheung−dong,Iksan−si,Jeollabuk−do,Korea
【Fターム(参考)】