説明

短波長放射線発生のための放射線源

【課題】短波長放射線発生のための放射線源において、放射線透過を実質的に減少させることなくバッファガスによりコリメータ光学系の保護を効果的に増加させる。
【解決手段】放射線を真空室の放射線出口開口に指向させる少なくとも1つの光学要素をデブリから保護することを保証するために、放射線放出プラズマを包囲し、バッファガスのための少なくとも1つの供給ライン及び1つの排出ラインを備えた真空室が、バッファガスによる様々な大きさの粒子減速を有するチャンバ領域を有する。粒子減速は、少なくとも光学要素が配置された第1チャンバ領域において他のチャンバ領域におけるよりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は短波長放射線を発生させるための放射線源に関する。放射線を真空室の放射線出口開口に指向させる少なくとも1つの光学要素をデブリから保護することを保証するために、放射線放出プラズマが、バッファガスの少なくとも1つの供給ライン及び1つの排出ラインを備えた真空室で囲まれている。
【背景技術】
【0002】
所望の短波長放射線に加えて、プラズマベースの放射線源、特にレーザ放射線で励起されたプラズマも高エネルギー粒子(デブリ)を放出する。これら粒子は、放射線の利用のために設けられた光学要素(特に、コレクタ光学系)の損傷と寿命の縮小をもたらす。
【0003】
バッファガスを用いてデブリを減少させるとき、バッファガスの密度と光路の長さに依存して、所望の放射線の大部分は、反射光学系として構成されたコレクタ光学系を介して意図した領域に達する前にバッファガスを通ってプラズマにより放出された放射線が進むべき経路に沿って吸収される。結局、放射線源の効率が減少する。
【0004】
加えて、プラズマからコレクタ光学系までの1方向のビーム束の非常に大きい発散角度であるが、反対方向(プラズマからコレクタ光学系の中間焦点まで)の小さい発散角度だけをもたらす要求により、バッファガス密度が増加したときに生じる増加した吸収損失と改良された保護との衝突が悪化する。
【0005】
放射線源の効率が開発の主なねらいであるので、適切な保護を考慮し吸収損失を適当に保つためのバッファガス密度に対する妥協は許容できる解決法ではない。
【0006】
別な満足のいかない解決法は特許文献1に示されており、利点はバッファガスと作動ガスの混合を防ぎ、プラズマソースと光学要素が、バッファガス(例えば、アルゴン)の流れが放射方向と垂直に指向した領域で互いに空間的に分離されていることである。
【0007】
【特許文献1】EP 1329772 A2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これに基づき、本発明の目的は、放射線透過を実質的に減少させることなくバッファガスによりコリメータ光学系の保護を効果的に増加させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
短波長放射線の発生のための前記のタイプの放射線源において、真空室がバッファガスにより様々な大きさの粒子減速を有するチャンバ領域を有し、粒子減速は、少なくとも光学要素が配置された第1チャンバ領域において他のチャンバ領域におけるよりも大きいことにより、前述の目的は本発明により達成される。
【0010】
十分な保護を保証する一方で合理的な吸収損失を維持するためにバッファガス密度に関して妥協せずに、本発明は、異なる保護基準で部分スペースを形成することで機能要素に適合した様々な程度の保護をもたらすことを基礎とする。
【0011】
チャンバ領域において様々な程度の粒子減速を生じさせる様々な装置がある。
【0012】
第1の構成のバリエーションでは、チャンバ領域は異なるバッファガス密度を有し、最も高いバッファガス密度は光学要素が配置されたチャンバ領域に存する。
【0013】
バッファガスのための供給ラインが、光学要素の表面におけるガス出口開口がプラズマの方向に出ている複数の部分ラインを有すると、光学要素の付近のバッファガス密度は真空室の残りのスペースにおけるよりも高くなり有利である。
【0014】
前記の装置の代わりとして、真空室は互いに隣接して位置した2つのチャンバ領域を有してもよい。プラズマと光学要素を有する第1チャンバ領域は放射線を通す流れ抵抗によって放射線出口開口を備えた第2チャンバ領域と分離している。バッファガスのための供給ラインの第1チャンバ領域との連結、バッファガスのための排出ラインの第2チャンバ領域との連結を介して、排出ラインがポンプ装置と連絡し、第2チャンバ領域が流れ抵抗を介して汲み上げられるときに2つのチャンバ領域の間に密度勾配があり、第1チャンバ領域のバッファガス密度は第2チャンバ領域におけるよりも高い。
【0015】
さらに本発明は、磁力線が光学要素の光軸と垂直に指向した磁場を生じさせるように光学要素が位置したチャンバ領域に、例えば1組のヘルムホルツコイル又は永久磁石などのコイル装置が配置されるように構成することができる。
【0016】
光学要素の方向と放射線出口開口の方向のプラズマから生じる異なる開口角度を実現するために、プラズマから光学要素までの距離とプラズマから放射線出口開口までの距離の比は1:6より大きいと有利である。
【0017】
本発明を概略図に則して以下により完全に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に示された放射線源は、真空室1において、レーザ放射線で誘発されたプラズマ2を有する。プラズマ2により放出された放射線Sは、光学要素により真空室1内の放射線出口開口4に向けられている。光学要素は真空室1に配置され、コレクタミラー3として構成されている。コレクタミラー3を用いてプラズマ2を映すことにより中間焦点が生成される。この中間焦点は放射線出口開口4に集中しており、半導体露光装置の露光光学系とのインターフェースとして働く。このために放射線源(好ましくは、EUV波長領域のために設計された)は設けられる。プラズマ2を発生させるためにレーザ放射線が向けられたレーザ及びターゲットフローは示されていない。
【0019】
コレクタミラー3までプラズマ2により放出された放射線Sは、やはりプラズマ2から発された高エネルギー粒子がコレクタミラー3への損傷が防がれる程度にバッファガスの原子との衝突により減速する経路を進む。
【0020】
放射線Sは、プラズマ2からコレクタミラー3までの経路及びコレクタミラー3から放射線出口開口4までの経路上でバッファガスに吸収される。しかし、放射線出口開口4に達するまでに異なる密度領域のために大きさの変化する粒子減速の結果、吸収が進行的に減少することが識別される。
【0021】
プラズマ2からの高エネルギー粒子の運動エネルギーが、次式のように、バッファガスの密度及び距離により指数関数的に減少するので、プラズマ2からコレクタミラー3までの距離とバッファガスρ(均一分布を有する)の密度は、広範囲に生じる最大初期エネルギーを有する粒子がその距離を進んだ後に減速(サーマライズ)するように選択される。
kin(s,ρ):e−ρo・s
【0022】
ρ・a=κのとき、放射線の透過はT=e−a・ρo・(a+b)である。
【0023】
図1に示された配置では、異なるバッファガス密度を有するチャンバ領域5,6が生成され、バッファガスのために真空室1に設けられた供給ライン7が複数の部分ライン7.1に分かれている。これらのラインはコレクタミラー3を通ってガイドされ、ガス出口開口8としてミラー面9を出る。もちろん、ガス出口開口8の面はミラー面9に比べて小さくなければならない。バッファガスは連続的に供給され、真空ポンプ10により汲み上げられるので、これはガスフローになる。このガスフローの、ミラー面9で最大密度を有するチャンバ領域5のバッファガス密度ρ(s)は、プラズマ2から放射線出口開口4まで延びるチャンバ領域6におけるよりも高い。
【0024】
考えられるバッファガスは主に不活性ガス、又はターゲット材料などの関与する反応生成物とのガス状若しくは非粘着性結合を形成するガスである。さらに、バッファガスは所望の波長領域の必要なガス密度において低い吸収を有しなければならない。低い放射線吸収を有する粒子の減速に関する最良の特徴を有するアルゴンを使用するのが好ましい。
【0025】
バッファガスの汲み上げ速度は、供給ラインを介して連続的に供給される例えばキセノン(図示せず)などの作用媒体の最小の割合に調整され、またキセノンが特にEUV放射線に対して高い自己吸収を有するので相応して高くなるように選択されなければならない。
【0026】
図2に従う第2の装置では、バッファガスに対してかなりの流れ抵抗を示す部材を用いて真空室1を空間的に分割することで、互いに隣接して配置された2つのチャンバ領域11,12が作られ、直線状に伝播する放射線は幾何学的けられ(幾何学的口径食)を除いて妨げられずに進むことができる。
【0027】
流れ抵抗13として示された部材はプラズマ2及びコリメータミラー3から等距離に配置されると有利である。
【0028】
バッファガスの供給ライン14は、コリメータミラー3が位置するチャンバ領域11に設けられている。バッファガスを高い汲み上げ速度で再び真空室1から取り除くための真空ポンプ10が、他のチャンバ領域12に連結している。
【0029】
このようにして、空間的に限定された高めの吸収を有する高エネルギー粒子の十分な減速のための高いバッファガス密度がコリメータミラー3を備えたチャンバ領域11において再び保証され、光路に沿う最小の吸収を有する低めのバッファガス密度が他のチャンバ領域12において保証される。
【0030】
チャンバ領域12の低めの吸収が流れ抵抗13による幾何学的けられからの損失を補償するときに前記のタイプの配置は特に重要である。
【0031】
流れ抵抗13は、例えば小さいガラスチューブの格子(毛細管配列)又は放射線方向と平行に延びるプレート方向を有する特別に配置されたプレート(フォイルトラップ)から形成される。明確のために、13.1で示されたプレートの1つだけが示されている。
【0032】
本発明の第3の構成では、真空室1、特にコレクタミラー3が位置するチャンバ領域15はさらに、例えばヘルムホルツコイル16で発生した磁場により貫かれている。その磁力線Mは光軸O−Oと垂直に指向し、それでイオンとしてプラズマを出す高エネルギー粒子は、プラズマ2からコレクタミラー3までの幾何学的距離より長い軌道B(円又は螺旋軌道)に沿って力を加えられる。従って、放射線の経路でなく粒子の経路だけが増加するので、低めの全体のバッファガス密度はバッファガス原子との衝突数の増加による大きめの粒子減速に十分である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】光学要素を介したガッファガス供給を備えた放射線源を示す。
【図2】隣接するチャンバ領域の間に流れ抵抗を備えた放射線源を示す。
【図3】バッファガスで満たされ、偏向電荷のために磁場で貫通された放射線源を示す。
【符号の説明】
【0034】
1 真空室
2 プラズマ
3 コレクタミラー
4 放射線出口開口
5 チャンバ領域
6 チャンバ領域
7 供給ライン
7.1 部分ライン
8 ガス出口開口
9 ミラー面
10 真空ポンプ
11 チャンバ領域
12 チャンバ領域
13 流れ抵抗
14 供給ライン
15 チャンバ領域
16 ヘルムホルツコイル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
短波長放射線を発生させるための放射線源であって、
放射線を真空室内の放射線出口開口に指向させる少なくとも1つの光学要素のためにデブリに対する保護を保証するために、放射線放出プラズマがバッファガスのための少なくとも1つの供給ラインと排出ラインを備えた真空室で囲まれており、
真空室がバッファガスによる様々な大きさの粒子減速を有するチャンバ領域を有し、
粒子減速が、少なくとも光学要素が配置された第1チャンバ領域において他のチャンバ領域におけるよりも大きい放射線源。
【請求項2】
様々な大きさの粒子減速があるチャンバ領域が異なるバッファガス密度を有し、最も高いバッファガス密度は光学要素が配置されたチャンバ領域に存する請求項1に記載の放射線源。
【請求項3】
バッファガスのための供給ラインが、光学要素の表面におけるガス出口開口がプラズマの方向に出ている複数の部分ラインを有する請求項2に記載の放射線源。
【請求項4】
真空室は互いに隣接して位置した2つのチャンバ領域を有し、プラズマと光学要素を有する第1チャンバ領域は、放射線を通す流れ抵抗によって放射線出口開口を備えた第2チャンバ領域と分離している請求項1に記載の放射線源。
【請求項5】
バッファガスのための供給ラインが第1チャンバ領域と連結し、ポンプ装置と連絡したバッファガスのための排出ラインが第2チャンバ領域と連結している請求項4に記載の放射線源。
【請求項6】
磁力線(M)が光学要素の光軸(O−O)と垂直に指向した磁場を生じさせるように光学要素が位置したチャンバ領域にコイル装置が配置されている請求項1に記載の放射線源。
【請求項7】
コイル装置が1組のヘルムホルツコイルで形成されている請求項6に記載の放射線源。
【請求項8】
永久磁石がコイル装置のために設けられた請求項6に記載の放射線源。
【請求項9】
プラズマから光学要素までの距離とプラズマから放射線出口開口までの距離の比が1:6より大きい請求項1〜8のいずれか一項に記載の放射線源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−286623(P2006−286623A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−64269(P2006−64269)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(502369126)イクストリーメ テクノロジース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (37)
【Fターム(参考)】